光源ユニットおよび照明装置
【課題】LED個数変更に柔軟に対応でき、安価で薄い光源ユニットを提供する。また、輝度むらや、不快グレアの発生を抑制する光源ユニットを提供する。さらに、LED自体の放射角度に対する色温度が大きく異なる場合にも、被照面での色むらを極力抑えることができる光源ユニットを提供する。
【解決手段】光源ユニット10は、複数のLEDが実装面に実装され反射性固定部材3に固定されるLED実装基板2と、実装される各LEDに対応すると共に、入射した光を対応するLEDの配光特性よりも狭配光特性で出射するレンズ機能部50を有し、各レンズ機能部50が、対応するLEDに対向するようにLED実装基板2の実装面に対向して固定されるレンズアレイ4と、レンズアレイ4に対してLED実装基板2の反対側で固定され、レンズアレイ4の各レンズ機能部50から出射する光を透過する透光性光拡散部材6とを備えた。
【解決手段】光源ユニット10は、複数のLEDが実装面に実装され反射性固定部材3に固定されるLED実装基板2と、実装される各LEDに対応すると共に、入射した光を対応するLEDの配光特性よりも狭配光特性で出射するレンズ機能部50を有し、各レンズ機能部50が、対応するLEDに対向するようにLED実装基板2の実装面に対向して固定されるレンズアレイ4と、レンズアレイ4に対してLED実装基板2の反対側で固定され、レンズアレイ4の各レンズ機能部50から出射する光を透過する透光性光拡散部材6とを備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード(LED;Light・Emitting・Diode)などの半導体発光素子を光源とした光源ユニットおよび該光源ユニットを組み込んだ照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
照明装置の被照明範囲、すなわち照明面積の調整や制限を目的として、反射体やレンズ系を用い配光角やビーム角などの配光特性を制御する構造提案が数多くなされている。光源に小型、長寿命といった特徴を持つLEDを用いた照明装置として、各LED周囲に設けた複数の凹部を有する反射体にレンズ体を選択装着することにより、目的とする配光特性を容易に作り出す効果が得られるとしているものがある(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−9826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1のように反射部材やレンズ系を用い配光角やビーム角を制御する照明装置は、LEDを配置する位置が反射体の凹部に限られる。そのため、目的の照明装置仕様(光束ランクなど)を得るため、LEDの個数や配置位置に合わせて反射体の凹部位置を調整しようとすると、結局は複数種の反射体を製造することとなり装置のコストアップに繋がっていた。さらに、この反射体は狭配光化のためにある程度凹部長さを長く(反射体厚みを厚く)する必要があり、結果、装置自体を薄型化することが困難であった。
【0005】
また、装置表面側に凸レンズアレイの凸部を向けると、装置発光面を見込んだ場合に複数凸面の陰影が出やすく光むらに見えてしまうという課題があった。
【0006】
そこで、本発明に係る光源ユニットは意匠性に優れた薄型で安価な構成の配光制御照明装置を得ることを目的とする。また、装置の配光については、光学部材(レンズアレイ)の着脱のみでビーム角でおよそ40〜60度程度の低グレアで輝度むらの少ない緩やかに狭められた配光(中角配光)と、それより広角の拡散性配光(広角配光)を切り換えて実現することも目的としている。なお、本発明中でのビーム角度は装置中心方向の光度の1/2光度となる照射角(中心を跨ぐ両角)としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る光源ユニットは、光源であるLEDが実装されたLED基板と、LED基板の発光面側から間隙を有して配置され、LED基板のLEDの実装部と対向する位置に設けられたLEDの光を集光するレンズ機能部を配列したレンズアレイと、LED基板の発光面側からレンズアレイよりも遠方に配置され、レンズ機能部を通過した光を透過し拡散する透光性光拡散部材と、を備え、レンズ機能部は、レンズアレイ上のLED実装基板と対向する面に設けられ、LEDより径の大きい断面が湾曲形状の凸部と、レンズアレイ上の透光性光拡散部材と対向する面に設けられ、凸部と中心が同軸であるすり鉢状の凹部から構成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る光源ユニットによれば、LEDの光をレンズアレイで一度狭配光化を行い、さらに透光性光拡散部材を透過させることで、やや広配光に戻す。それによりレンズアレイを装着時に光むらの低減された中角配光を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の形態1の光源ユニット10の正面図、断面図等を示す図。
【図2】実施の形態1の光源ユニット10を用いた、照明装置100を示す図。
【図3】実施の形態1の光源ユニット10(レンズアレイ4あり)及び光源ユニット10を用いた照明装置100の断面図。
【図4】実施の形態1の光源ユニット10(レンズアレイ4あり)及び光源ユニット10を用いた照明装置100の断面図。
【図5】実施の形態1の透光性光拡散部材6の湾曲を示す図。
【図6】実施の形態1の光源ユニット10に対するシミュレーションモデルを示す図。
【図7】実施の形態1の光源ユニット10に対するシミュレーションモデルを示す図。
【図8】実施の形態1の光源ユニット10のシミュレーションに使用したLEDの配光特性を示す図。
【図9】実施の形態1の「LED基板2」のみ、及び「LED基板2+レンズアレイ4」の構成条件のシミュレーションモデルの断面図。
【図10】実施の形態1の「LED基板2+レンズアレイ4+透光性光拡散部材6」、及び「LED基板2」+透光性光拡散部材6」の構成条件のシミュレーションモデルの断面図。
【図11】図9、図10の構成の違いによるシミュレーション結果を示す図。
【図12】実施の形態1の焦点距離F’が異なる構成条件のシミュレーションモデルの断面図。
【図13】図12の焦点距離F’の違いによるシミュレーション結果を示す図。
【図14】実施の形態1のLED発光面とレンズ機能部5の山頂との距離dが異なる構成条件のシミュレーションモデルの断面図。
【図15】図14の距離dが異なるシミュレーション結果を示す図。
【図16】実施の形態1の対象LEDの角度光特性測定方向を示す図
【図17】実施の形態1の対象LEDの放射角度による実測光特性を示す図。
【図18】実施の形態1の色むら低減レンズアレイ4を装着した光源ユニット10を示す図。
【図19】実施の形態1レンズ機能部5にLED光源部中央から試光線を放った場合の光線の様子を示す図。
【図20】実施の形態1の色むら低減レンズアレイ4を装着した光源ユニット10の光特性試算に用いたシミュレーションモデルを示す図。
【図21】実施の形態1の試作機に用いたレンズ機能部50形状寸法を示す図。
【図22】実施の形態1の擬似LED光源を設定し、図19のモデルを用い被照面の色温度分布特性を試算した結果一例。
【図23】図19のモデルの配光特性を試算した結果の一例を示す図。
【図24】図19のモデルの配光特性を試算した結果の一例を示す図。
【図25】実施の形態2のLED間引き状態を示す図。
【図26】実施の形態2の間引き部分を示す図。
【図27】実施の形態4の色変換部材18の取付位置を示す図。
【図28】実施の形態4の色変換部材18の取付位置を示す別の図。
【図29】実施の形態4の色変換部材18の取付位置を示すさらに別の図。
【図30】実施の形態4の色変換部19による色変換(波長変換)の特性を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図を用いて説明する。
【0011】
実施の形態1.
まず、図1から図4により、本実施の形態1の光源ユニット10および照明装置100の構成を説明する。
図1は本実施の形態1に係る光源ユニット10を示す図である。(a)は、光源ユニット10の側面図(上面図(b)の一点鎖線Aの断面)、(b)は光源ユニット10の上面図、(c)は光源ユニット10に装着するレンズアレイ4の上面図である。図1(b)は光源ユニット10の大半の使用形態に合わせ発光面を下向きとして描いている。
【0012】
図1(a)において、光源ユニット10をLED1をLED1の取り付け部であるLED実装パッドに実装したLED基板2と、その側方周囲にLED基板2を固定するように配置される反射性固定部材3、反射性固定部材3の内側でLEDアレイ発光面側に対向配置されるレンズアレイ4、さらに、図1(b)において下側となるレンズアレイ4の発光面側に距離を置いて配置される透光性光拡散部材6を配置した構成としている。このように光源ユニット10を構成することで、LED1の光をレンズアレイ4で一度狭配光化し、さらに透光性光拡散部材6を透過させることで、やや広配光に戻す。それによりレンズアレイ4を装着時に特に広角側に生じる光ノイズを打ち消し、さらに光源ユニット10の輝度むらやグレア抑制を行うことができる。なお、図1(a)では透光性光拡散部材6はLED基板2の発光面側からレンズアレイ4よりも遠方に配置されているが、すなわち、LED基板2とレンズアレイ4と透光性光拡散部材6がそれぞれ間隙を有して配置されているが、LED基板2とレンズアレイ4のみが間隙を有していればよく、レンズアレイ4と透光性光拡散部材6は接触していても良い。
また、図1(b)に示すように、LED実装パッド、およびそこに実装したLED1と、レンズ機能部5とが、照射面側から見て重なるように配置する。なお、図1(a)に示すように、LED実装パッドとレンズ機能部5とが対向するように配置する。
なお機能的に光源ユニット10自体を照明装置100と考えてもよいが、本実施の形態の構成上、光源ユニット10という名称を用い説明を行う。
【0013】
図2は本実施の形態1に係る照明装置100の図である。(a)は照明装置100の構成図を示す。(a)において、反射性固定部材3の上側にLED基板2を取り付け、下側にレンズアレイ4、透光性光拡散部材6を取り付け、光源ユニット10を構成する。そして、光源ユニット10を外側反射筐体8に取り付ける。(b)はLED基板2に反射性固定部材3を組合せた状態を図2(a)において、X方向から見た図、また(c)はレンズアレイ4の位置ずれを防ぐように周囲に4つのレンズアレイ固定部7を設けたレンズアレイ4を示したものである。この固定部7をもって図2(b)の反射性固定部材3に嵌合されるような構成とした。
【0014】
図3および図4は光源ユニット10および照明装置100において、レンズアレイ4の装着、非装着を対比するために示した図である。すなわち、図3(a)、図4(a)はそれぞれレンズアレイ4を装着、非装着の場合の光源ユニット10の断面図を示し、図3(b)、図4(b)はそれぞれレンズアレイ4を装着、非装着の場合の照明装置100の断面図を示している。
レンズアレイ4は反射性固定部材3に設けられたレンズアレイ4の設置段と、装置筐体あるいは透光性光拡散部材に設けたレンズアレイ4の固定用の突起部の間に挟みこむ形で固定される。さらに光源ユニット10の発光面を囲むように内側が拡散あるいは鏡面状の高反射性の外側反射筐体8を備え持つようにしている。本照明装置100は例えばダウンライトとして、図3(b)および図4(b)において、照射口が下になるように、図面の上側が天井面位置になるように天井開口部に組み込まれて用いられる。
【0015】
次に、本実施の形態1における光源ユニットを構成する各部品、すなわちLED1、LED基板2、レンズアレイ4、レンズ機能部5、および透光性拡散部材6の特徴点について説明する。
LED1は例えば市販の薄い表面実装型LEDであり、電極を備えたLEDパッケージ材料内に青色LEDチップを実装している。そしてその青色光に励起する蛍光体混合樹脂で表面封止した構成のもので白色光を放つようなものである。また、LED基板2はLED1の温度上昇による発効効率低下を抑える目的で、例えばアルミや銅などをベースとした金属基板、あるいはセラミック基板などで構成する。LED温度上昇幅がさほど大きくない場合には、コスト面を考慮しガラスエポキシ基板やガラスコンボジット基板等の材料を用いて構成してもよい。
【0016】
次に、LED基板2の表面は装置内の光利用効率を高めるため、高反射性白色塗料等を用いて表面加工したものを利用するとよい。LED基板2を固定し、さらにレンズアレイ4や表面透過板6の位置決めの役割も有する反射性固定部材3は、その部材内側斜面に光が入射するため、少なくともその表面が高反射性を有するように構成する。例えば樹脂材料で構成しその表面に高反射性塗料を塗布したり、高反射性光学シートを装着するなどして構成する。あるいは金属体で構成し表面メッキあるいは金属薄膜を蒸着させてもよい。また高反射ポリカーボネートのような樹脂材料で一体成形し表面を磨いて用いるなどしてもよい。
【0017】
次にレンズアレイ4は、図1(a)に示すように、LED1の発光光に対して集光効果を与えるレンズ機能部5をLED基板2上の個々のLED1実装位置に対向配置するようにする。そして、その複数のレンズ機能部5をアレイとして備えた一つのレンズアレイ4部材として構成としている。レンズアレイ4はガラス材料でもアクリルなどの透明樹脂材料でもよい。レンズ機能部5の直径は前記LED発光面全域を覆う大きさであり、集光機能を有する形状であれば狭配光化機能の役割をなすが、目的により、例えばレンズアレイ4自体の薄型化に重点を置く場合にはフレネルレンズ形状、あるいは成形性やコスト面に重点を置く場合には凸レンズ形状を選択して用意することができる。なお、本実施の形態1では、安価な装置を得ることを想定して、レンズ用金型製造費が比較的安価であるレンズ機能部5を図1(a)に示すように断面が湾曲形状の凸レンズとした場合を中心に説明する。また本装置の光特性面での主たる目的は、レンズ機能部5により集光を行い、レンズアレイ4装着時にビーム角でおよそ40〜60度程度の緩やかな配光を実現することにある。したがってレンズ機能部5には極端に大きな集光効果を与えることはせず、装置薄型化にも考慮して、レンズ機能部5の厚みを薄く抑えて狭配光化を行う。
【0018】
次にレンズアレイ4を配置する場合の向きについて説明する。レンズ機能部5を断面湾曲凸形状にする際、レンズアレイ4を装置発光面側に凸面を向け配置する場合と、装置内側すなわちLED発光部側に向け配置する場合が考えられるが、前者の配置では後者の配置に比較して相対的にレンズ凸部による光の陰影が外部から光むらとなって観察されやすいため、本実施の形態1では後者のレンズ配置とした。
【0019】
このように、レンズ機能部5の凸部をLED基板2と対向する方向に配置することで、意匠性が高く集光効果を有する照明装置100とすることができる。さらにできるだけ装置発光面側では厚みのある光制御部を持たせないようにすることで、必要に応じ光制御部材を装着しやすいといった利点も得られる。
【0020】
なお、LED基板2に実装するLED1としてそれ自体に集光効果を持つような例えば砲弾型のLEDを用いると、レンズアレイ4による集光効果が加わり、かなりの狭配光装置となる。そのため、さらに集光作用により各LED光軸方向の放射量が極めて高くなり、深いグレアや輝度むら(照度むら)を生み出す傾向にある。また、光源としては背の高いものになってしまい、光源ユニット10自体が厚いものになる欠点がある。したがって本装置のように薄型でかつ柔らかい集光効果を目的とする装置では発光面が略平坦状で、拡散配光特性を有するLED1が望ましい。
【0021】
次に、透光性拡散部材6の機能を説明する。本実施の形態1のように、LED基板2上に本レンズアレイ4を配置した構成では、レンズ機能部5が無い場合よりも狭配光化を実現することができる。しかし、得られるビーム角がかなり目標値より小さくなる場合や、また配光面では後述するように広角方向にノイズ成分を生じる場合が多い。そのため、本照明装置100では、それらの対策としてレンズアレイ4の発光面側の上部にさらに拡散性を有する表面透光板6を配置する構成としている。表面透光板6は、例えばプラスチック樹脂(アクリル、ポリカーボネート、PETなど)の表面をシボやサンドブラストの加工を行ったもの、あるいは樹脂内に拡散性フィラーを混合させたような材料で構成する。
【0022】
本透光性拡散部材6は、広配光化の役割と、各LEDの光軸方向の光度を抑制し、照明装置100発光面の輝度むら抑制、あるいはグレア低減といった役割を担うものである。そのため、全光線透過率とヘーズ値(曇り値)が高い材料が望ましい。実際に本照明装置100の試作品では透明性や耐熱性、耐候性、角度透過及び散乱特性を考慮して表面シボ加工を施したPET基材の材料を用いた。また、上記のような効果を得るために透過特性や光散乱特性などの異なる複数の透光性拡散部材6を重ねて用いてもよい。
【0023】
次に透光性拡散部材6の変形例として、断面湾曲形状にした場合について説明する。
図5は、透光性拡散部材6を断面湾曲形状にした場合を示した図である。
図5に示すように、透光性拡散部材6は、上述した輝度むら抑制、グレア低減という目的では、透光性拡散部材6の中央部を断面湾曲状に膨らむ形状としてもよい。それにより、発光ユニット10中心部での透光性拡散部材6とレンズアレイ4からの距離を離すことで、照明装置100の外部からみた各々のLED光源と陰影(輝度むら)を抑制することができ、意匠性を高めつつグレア低減(眩しさ抑制)も行うことができる。実際、本光源ユニット10の試作では、約φ85mmのユニット発光面に図5の透光性拡散部材6の中央部深さhをh≒5mmとした表面シボ加工を施したドーム状のアクリル部材を用いたところ、輝度むらが大きく低減することを確認した。
【0024】
また、この透光性拡散部材6を、装置に常備するような構成としておき、レンズアレイ4を着脱可能とする構成とすることで、レンズアレイ4を非装着時には、拡散性が高くビーム角が広い広角配光照明となる。また、レンズアレイ4装着時にはやや配光を狭めたビーム角が約40〜60度程度の中角配光照明を実現することができる。したがって照明用途に応じてレンズアレイ4の着脱のみにより配光角を切り換え照明することができ、照明装置100の用途範囲が一段と拡大する。
【0025】
以上のように、光源ユニット10を用いた照明装置100の配光特性は光源ユニット10構成による配光が支配的となり現れるが、外側反射筐体8は広角側に出た光りを効率的に照明に用いるように、また、遠めから装置を見込んだ際に直接発光面を目立たなくするような役割も持ち合わせる。本実施の形態では発光面が略平坦状で、拡散配光特性を有するLED1を用いることで光源ユニット10を薄型化できるため、本装置を天井面へ埋め込む際、天井裏側へ突出する領域が低く、したがって天井裏の高さ方向のスペースが狭い場合にも十分装着可能な装置を得ることができる。またその他、本光源ユニット10を用いた照明装置100自体を薄型にできるため、例えば天井面直下付け装置の場合でも薄くでき意匠性がよく、また、照明空間の演出効果の幅を高めることができる。
【0026】
次に本実施の形態に係るレンズアレイ4の作用、効果を確認し、主にレンズ機能部5の形状等の仕様を定める目的で、以下の3種類のシミュレーションを行ったのでその内容について説明する。まず、1番目のシミュレーションは湾曲凸状のレンズアレイ4を対象とし、光源ユニット10を構成する光制御部材の有無による配光特性の変化を評価するためのものである(シミュレーション1)。次に、2番目のシミュレーションは、湾曲凸状のレンズ機能部5の形状に係る後方焦点を変えた場合の配光特性を評価するためのものである(シミュレーション2)。次に、3番目のシミュレーションは、湾曲凸状のレンズ機能部5の凸部頂点からLED1発光面間の距離を変えた場合の特性を評価するためのものである(シミュレーション3)。
【0027】
(各シミュレーションで共通となる構成)
まず、各シミュレーションで共通となる構成について説明する。
図6および図7は、シミュレーションの外観モデルの図である。図6(a)は斜視図(レンズアレイ4、透光性拡散部材6なし)、図6(b)は上面図(レンズアレイ4、透光性拡散部材6なし)、図7(a)は斜視図(レンズアレイ4あり)、図7(b)はLED1とレンズ機能部5との配置関係を示す図である。
【0028】
図8は本シミュレーションに使用したLEDの配光特性を示す図である。(a)はLED部品の斜視図、(b)はLED部品の配光特性を示す。
ここでLED1の特性は日亜化学工業製NS3W183の外寸仕様(5×5×1.35mm)を用い、ほぼその配光特性と同じ拡散配光特性を用いた。またLED基板2は、およそ反射率85%の拡散性処理を施したもの、さらに反射性固定部材3は反射率約96%で内側側面が緩やかに湾曲した拡散性材料として与えた。反射性固定部材3の内径(LED基板2露出部直径)は約55mm、また外径(装置表面開口直径)は約82mmとした。LED基板2の表面から反射固定部材3の頂点までの距離は約10mmとしている。
本シミュレーションは、12個のLED1をLED基板2の上に配置し、さらにその周囲を反射性固定部材3を配置したものを共通の条件とした。図6および7において、LED部品単体の拡大図は、図8(a)で示した外観のものを用いた。LED1自体、特にレンズ機能を有するものではなく、LED封止樹脂部分が略平坦のものであり、LED配光特性は図8(b)に示したようにほぼ完全拡散発光のものである。なお、図8(a)のLED1の発光面1aの上部には、光源である印1zが示されている。
【0029】
レンズアレイ4は、ベース部(ここでは薄い板状)とレンズ機能部5からなり、レンズアレイ4はアクリル材料とし、レンズ機能部5としての断面湾曲形状の凸部をLED基板2上の各LED1の実装位置に対向させるように配置した。レンズ機能部5の直径はLED発光部、すなわちLED1の蛍光体が封止されている表面の直径、例えば図8(a)の表面で約4.5mm、よりも大きく、かつ、後述するようにLED1を装置仕様に合わせ最大数、高密度実装する際にも隣り合うレンズ凸部で重なりが生じないようにφ8mmとした(例えば図25の構成;後述する)。上記LED1自体が拡散配光性を有するため(レンズ機能を有する砲弾型形状でもよいが本装置では表面輝度むらが出やすい)、LED発光部直径よりやや大きめの直径とすることでレンズ機能部5の配置密度をある程度高めつつ、LED発光光に対するレンズ効果を十分持たせることができる。また、透光性光拡散部材6として、およそ、きもと社製拡散部材ライトアップLSE100の有する散乱特性を与えた(全光線、ヘーズはそれぞれ弊社内測定で両者90%以上の特性)。
【0030】
ここで、各LED1に対向するように湾曲凸形状のレンズ機能部5を持たせたレンズアレイ4を上記反射性固定部材3の深さ内に配置し、レンズ機能部5の直径を固定(8mm)し、レンズ後方焦点距離をパラメータとして基礎試算を行った。レンズアレイ4の平面部分の厚みは1mmとした。結果的に、装置薄型化と配光の広がりを意識して基礎計算を行い、一例ではあるが薄型化の面から焦点距離F'=10mmとし、目的の配光領域となるようにLED表面とレンズ凸面との間隔dを調整した。結果的に、目的の配光領域を実現する条件として、d≧F'ではなく、d<F'の条件で配光特性が良好となることがわかった。なお、以下で効果を説明する図5ではd=3mmの条件としている。
【0031】
(シミュレーション1)
次に、1番目のシミュレーションとして、光源ユニット10内の光制御部材6の有無による配光特性の変化を評価した結果について説明する。
図9および図10は、本シミュレーションを行った各条件を構造的に示した図である。図9(a)はLED基板2のみ、図9(b)はLED基板2+レンズアレイ4、図10(a)はLED基板2+レンズアレイ4+透光性拡散部材6、図10(b)はLED基板2+透光性拡散部材6とする構成を示す。
上記の条件で、それぞれの光学部材の構成の段階での試算を行うことで、本装置構成による配光制御効果を確認した。
【0032】
(結果)
図11は図9および図10の条件の各設定の光源ユニット10内の光制御部材(レンズアレイ4、透光性拡散部材6)の有無による配光特性変化のシミュレーション結果を示したものである。横軸は光源ユニット10の中心軸を基準とし、ある角度方向の相対光度を示したものである。
その結果、図9(a)に示すLED基板2のみの構成ではほぼ拡散状に発光している(図11のAで示す)。その上にレンズアレイ4を配置した図9(b)に示すLED基板2+レンズアレイ4の構成の場合には、その集光効果により±20度の間で発光成分が鋭くなっていることがわかる(図11のBで示す)。集光によってビーム角があまりに狭くなると、ビーム角40〜60度程度の中角程度のビーム角を目的とする照明にとっては光むらになるとも考えられる。つまりこの時点でグラフからは両角30〜60度付近の広角方向で小さく飛び出る光ノイズが発生している。さらにその上に透光性拡散部材6を配置した図10(a)に示すLED基板2+レンズアレイ4+透光性拡散部材6の構成では光ノイズが大幅低減し、中央方向の光度を抑えビーム角で約55度となり本装置の狙いとする配光特性が得られた(図11のCで示す)。
【0033】
(結論)
したがって上述したシミュレーション結果からも明らかなとおり、一度レンズアレイ4で集光化し、さらに拡散性光透過部材6を設ける構成によって光ノイズが少ないやや狭まった配光特性を有する光源ユニット10やそれを用いた照明装置100を得ることができる。なお、LED基板2のみの場合の光束に対して、LED+レンズの構成およびLED基板2+レンズアレイ4+透光性拡散部材6の構成での光束比はそれぞれ96%、81%であり、光利用効率面でも部材装着をした場合に良好な状態であることがわかった。
【0034】
また、レンズアレイ4を配置せずにLED基板2上に拡散透光板を配置したLED+拡散板(図10(b))の構成での結果は光ノイズが無い状態でとくに集光効果を持たない拡散性の強い照明光となっている(図11のDで示す)。従ってLED基板2、レンズアレイ4、透光性拡散部材6からなる構成の本装置において、レンズアレイ4を用途に応じ着脱可能とすることにより、広配光の照明とやや狭配光の照明とを切り替えて実現することが可能であり、多用途向けとして本光源ユニット10を用いることができる。また、この構成でのLED1のみの場合に比較した光束比は約86%であり、光利用効率面ではやはり良好な状態で用いることができる。
【0035】
(シミュレーション2)
次に、2番目のシミュレーションとして、レンズ機能部5の形状に係る後方焦点を変えた場合の配光特性を評価した結果について説明する。
図12はレンズ機能部5の形状に係わる後方焦点を変えた場合の配光試算を示す図である。(a)は焦点距離F'=20mm、(b)は焦点距離F'=10mm、(c)は焦点距離F'=7mmの条件を示す図である。
ここではレンズ機能部5の焦点距離を3水準設定し、レンズアレイ4の配置位置を変えずに試算を実施した。試算ではレンズ部直径を8mm固定として、各レンズ形状(曲率)に反映させるようにしている。
【0036】
(結果)
図13に図12の各条件の場合のシミュレーション結果を示す。図13に示すように焦点距離が長くても小さくても集光効果が得られにくく、焦点距離F'=10mmで中央部に光が照射させる傾向を確認した。透光性拡散部材6を装着する場合には、中央部の集光効果が高いほど、光ノイズを取り除きながら柔らかい狭配光化を実現できるため焦点距離F'=10mm程度が良好であることがわかった。
【0037】
(シミュレーション3)
次に、3番目のシミュレーションとして、レンズ機能部5の断面湾曲形状の凸部からLED1発光面間の距離を変えた場合の特性を評価した結果を示す。
図14は、レンズ機能部5の断面湾曲形状の凸部からLED1発光表面間距離を変えた場合の配光試算を示す図である。(a)は発光表面間距離をdとして、d=5.64mmの状態、(b)はd=0.64mmの状態を示す。
一方、そのような後方焦点距離F'=10mmの条件で、レンズアレイ4位置による効果を把握するため、レンズアレイ4位置を3水準設定し試算を行った。レンズ機能部5の断面湾曲形状の凸部からLED1発光表面間距離をdとして、d=0.64mm、3mm、5.64mmとした。
【0038】
(結果)
図15に図14の各条件の場合のシミュレーション結果を示す。
その結果、距離が短すぎると装置として狭配光が得られにくく、一方距離が長すぎる狭配光効果は有するものの、広角ノイズ成分と中心配光成分との間の山谷の差が大きくなり、その上に拡散板を配置したとしてもノイズ成分が目立ちやすい傾向となる。
【0039】
(結論)
したがってビーム角40〜55度程度で、光ノイズの発生しにくい厚さ10mm程度の薄型の照明ユニット、あるいはそれを備えた装置を得るためには、本試算結果より一条件例として、レンズアレイ4のLEDに対向する湾曲凸レンズの後方焦点距離をおよそF'=10mmとし、レンズ頂点とLED発光表面間距離をdとして、本レンズアレイ4をおよそd=3mmの位置に配置することがよいことがわかった。また、同じくレンズ直径をφ8mmとして他条件でも解析を進めた結果、上記からレンズ背面とLED表面との間の距離dに対して焦点距離をF'=9〜15mm程度、d≒2〜4mm程度にしても上述したような配光制御効果が得られることがわかった。
【0040】
次に、光源ユニット10において、レンズアレイ4のレンズ機能部5の形状自体に色むらを低減させる特徴を持たせる場合の構成例およびその作用を図16から図24を用いて説明する。
【0041】
(背景)
まず、色むらの低減に係る構成を必要とする背景について説明する。
LED1の構成は様々なものがあり、LED1のパッケージ形状、LED1のベアチップ配置、蛍光体適用方法(ベアチップ上にコーティング、封止樹脂混合などがあり後者では均一拡散する方法や沈降させるような方法がある)により、LED1の発光角度(LED1を見込む角度)により発光スペクトル、色度、色温度などの色合いが大きく異なる場合がある。
【0042】
ここで、シミュレーション1〜3で実装を想定したLED(日亜化学工業製NS6W183;昼白色)の実測光角度特性について、その測定方向と測定結果の一例をそれぞれ図16、図17に示す。図16はLEDチップの集中実装領域に対する測定方向を示す図であり、LEDチップの長辺に対して垂直となる方向をA方向、LEDチップの長辺に対して水平となる方向をB方向として示している。図17(a)は角度による実測相関色温度特性を示すもので、測定方向によらず放射角度により相関色温度4700〜5300K程度の明らかな色温度の違いが認められる。つまり、JIS Z9112の光源色の区分上は昼白色領域にはあるが、上下限がほぼ隣接する領域の白色と昼光色に近く、認識する色の違いも大きい。また、図17(b)の結果は放射角が0度、36度、72度方向の分光特性を示したもので、こちらも放射角度の違いにより分光形状(特に青色波長領域と黄色波長領域の強度比)に大きな差異が生じることを示している。
【0043】
つまり発光角度による色味の差の大きいLED1を光源ユニット10に適用した場合、レンズアレイ4のレンズ機能部5の効果により集光させる際、LED光色や演色性などの種類によっては被照面の中心領域と周辺領域で色味が異なり色むらとして確認される場合がある。特に本照明装置100をダウンライトなどの装置として用いる場合には、例えば装置が白色系の壁面付近に設置された場合、照明光が壁面に投光された際に、青味がかった光と黄色味がかった光の色コントラストが現れることがある。これを色むらと呼ぶ。この色むらが照明装置100の設置空間の雰囲気にマッチしないなどの違和感を与える場合がある。
【0044】
(構成)
次に、本実施の形態1において色むらを低減する、凸部31(上述した湾曲凸形状)と、凸部31を形成する面と反対面側に凹部32を有するレンズ機能部50の構成について、図18から図21を用いて説明する。
図18は色むらを低減するレンズ機能部50を組み込んだ光源ユニット10の断面図である。図18は実施の形態1で説明した図1に対応している。
空間的な色温度の大きな変化(色むら)を低減するレンズ機能部50の形状を検討した。その結果、図18に示すように、レンズ機能部50はLED基板2と対向する面に設けられ、LED1発光面より径の大きい湾曲形状の凸部31と、レンズ機能部50上の透光性光拡散部材6と対向する面に設けられ、断面湾曲形状の凸部31と中心が同軸であるすり鉢状の凹部を有する凹部32を有する構成することで色むら低減効果が得られた。この凹部32は、例えば図21に示すように、周縁部がその周囲に比べて隆起しており、中央部が円錐形にくりぬかれた凹形状をしている。また、凹部32は例えば図21に示すように、底面の径が凸部31と同一で、円錐形にくりぬかれた凹形状の高さ(深さ)は凹部32周縁部が隆起している頂上の高さよりも低い。
なお、以降の記載においてはレンズ機能部5は凸部31のみを有し、レンズ機能部50は凸部31および凹部32を有するものとする。
【0045】
そのようなレンズ機能部50を通過する光線の様子について図19に示す。図19(a)には色むら対策前のレンズ機能部5、また、図19(b)には色むら対策後のレンズ機能部50を対象とし、LED発光表面中心からレンズ機能部5およびレンズ機能部50の下部に広げた試光線を与え、光線の進み方の例を示した。本構成によると、レンズ機能部50は、凹部32中央のすり鉢状の凹部での光屈折により光軸中央方向に進む青みのある光を周辺方向に、凹部32周縁の隆起している部分の平面での光屈折により黄色みのある光を光軸方向に制御し、混色効果を高めることで被照面色むらを低減する効果が得られる。また凹部32の平坦面で反射される光の成分は、LED基板2とレンズ機能部50との空間に拡散して広がるため、混色され器具照明光の一部として利用される。
【0046】
つまり、上述したような構成のレンズ機能部50を用いることで、LED1から発光される光の光線を凹部32表面での屈折透過及び反射させることにより、凸部31を通る分光の異なる光線を交差させ混色性を高めることができ、被照面色むらを低減させることができる。
【0047】
そのような発光角度による色温度の差の大きい特性を模擬した簡易的な擬似LED光源を用い、本実施の形態3に係る光源ユニット10を対象に、レンズ機能部50の凹部32の有無に対する被照面上の色温度分布を評価するために、4番目のシミュレーションを実施した。
【0048】
(シミュレーション4)
擬似LED光源は、LED1の放射角による色温度の違いを強調させるため、放射角度領域を大きく2つに分け、それぞれに異なる分光特性(相関色温度も異なる)を与えた。2つの分光特性は実測結果を元にLED光軸(0度)での特性と、側方放射(72度)の特性とした。ここで、放射領域A(放射角0〜18度)は、図17(a)に示した0度の分光(青みの強い5280K)を設定した場合を示す。また、放射領域B(放射角18〜90度)は、図17(b)に示した72度の分光(黄味の強い4770K)を設定した場合を示す。
なお、上記領域Aと領域Bの放射強度比は、実測強度に基づき3次元的な光の広がりを考慮し、さらにそれら合成光は拡散配光になるように設定した。
【0049】
(構成)
図20および図21は本シミュレーションを行った各条件のうち、凸部31および凹部32を有するレンズ機能部50の構造を示した図である。
シミュレーションにおいては、凸部31と凹部32との底面を空間的な光制御領域を等しくする同じ直径の円形とし、かつ、凹部32の周縁が隆起した平坦面であるとともに、凹部32中央が円錐状にくりぬかれた形状であるような形状とした。また各LED1の発光面中心軸が各凹部32の円錐頂点を通るようにレンズアレイ4を構成した。
上述した凹部32の形状寸法を本薄型光源ユニット10に対応するように定め、図21に示すように、各部寸法をk=4mm、h1=0.7mm、h2=0.5mmとしてシミュレーションを行った。このとき、実施の形態1のシミュレーションで使用した光源ユニット10の外寸と等しい寸法の図20の構成の光源ユニット10のモデルを用いた。
【0050】
擬似LED光源を用い、まずシミュレーション1〜3に使用したシミュレーションモデルを用い、光源ユニット10からその中心軸に沿って1m離した距離に□5mの受光面を配置し、その面上の色温度分布状態(面上の器具中心軸と交差する点を通る直線上の分布)を試算した。
【0051】
(結果)
図22は上述した条件の場合のシミュレーション結果を示す。図22には、(1)擬似LED1を実装したLED基板2のみの結果、(2)LED基板2+凸部31を有するレンズ機能部5着用時の結果と、それに加え(3)LED基板2+凸部31および凹部32を有するレンズ機能部50着用時の構成での色温度分布試算結果を示した。なお、図22に限らず図中の丸印で囲んだ数字と明細書中の括弧書きの数字とは対応関係にある。
その結果、図22中の(1)で示した擬似LED1を実装したLED基板2のみのシミュレーション結果では、被照面約−0.5〜0.5mの間にピーク5200Kで色温度が高くなる領域が生じた(周辺色温度約4800Kとの差が400K)。一方で、図22中の(2)で示した擬似LED基板2+レンズ機能部5のシミュレーション結果ではピークがやや抑えられ5100K(周辺色温度約4800Kとの差300K)となり、レンズ機能部5装着時にはやや色温度差(色むら)が緩和される傾向にあることがわかる。ただし、それでも色温度差が大きく、器具構成で前提としている上述の拡散板(透光性光拡散部材6)を装着した場合でもその色むらが確認されやすい。それに対して図22中に示した(3)LED基板2+レンズ機能部50は凹部32による透過反射作用により、レンズ機能部5中心の光透過を抑える効果を有し、結果中心方向に進む青色光の光量を減少させ、受光面中心でかなりの色温度差を生じていいたピークを4900Kほどまで低下させることができ、大きな色むら低減機能があることがわかった。
【0052】
このとき各条件での−1.5〜1.5m受光領域での平均色温度、標準偏差を確認したところ、図22に示した(1)、(2)、(3)の条件に対してそれぞれ平均4868K(偏差154K)、4823K(96K)、4809K(50K)であった。とくに標準偏差から見れば被照面での空間的な色温度分布のばらつきを低く抑えることができるため、凹部32の形状が色むら抑制に一定の効果を有するといえる。実際にレンズ機能部50を配列したレンズアレイ4を組み込んだ光源ユニット10について試作評価を行ったところ、被照面色分布について目視と実測でほぼ同じ色むら低減効果が確認された。
【0053】
ここで図20のレンズ機能部50を用いた際の配光特性を図23に示す。図23の(4)はLED基板2+レンズ機能部50着用時のユニット配光特性、また、図23に示す(5)はLED基板2+レンズ機能部50+透光性拡散部材6(前述のきもと社製ライトアップLSE100(総厚み115μm)と同シリーズのLSE188(総厚み203μm);カタログ上の光学特性は同じ)の条件での配光特性を示す。図23に示す(5)は本光源ユニット10で想定している構成(中角指定)であるが、ビーム角が約50度の結果となり、本装置の目的とする配光特性が得られた。なお、やはり本装置の基本仕様形態のひとつである、レンズアレイ4を装着しない場合(広角仕様)は実施の形態1の図11の条件Dに示したとおりの特性となる。なお、シミュレーション上で上記2種拡散シート部材(LSE100、LSE188)の光学散乱データを与えてもほぼ同様の配光特性、色温度分布特性が得られた。なお、透過性光拡散部材6は上記のようにレンズアレイ4の有無により中角、広角を満たせるようなものであれば、必ずしも上記例と同じ物とする必要はない。
【0054】
図24は、(1)擬似LED1を実装したLED基板2のみの結果、(4)LED基板2+レンズ機能部50+透光性拡散部材6着用時の構成の結果、(5)LED基板2+透光性拡散部材6着用時での色温度分布試算結果を示した。
発光ユニット10のレンズアレイ4の装着の有無による色温度分布を試算したところ図24のようになった。(4)LED基板2+レンズ機能部50+透光性拡散部材6の構成とした場合には光軸周辺での色温度変化幅は緩和される方向にある。また、(6)LED基板+拡散板(レンズアレイ非装着時)の場合の結果も示すが、やや中心部でなだらかに色温度が高くなる傾向にあるものの、そもそもの擬似LED光源で与えた色温度幅に比較すればかなり色むらが抑えられる傾向にある。
【0055】
なお、本シミュレーション上ではレンズアレイ装着時、レンズアレイ凸部とLED発光面との間隔は約3mmとしているが、器具の用途等により図14の結果のようにその距離を狭くすると広配光に、またそれより広くすると狭配光となる方向に調整可能である。以上のように図18〜21に示した構成のレンズアレイ4と、上記のような拡散板(透光性光拡散部材6)を備えた発光ユニット構成とすることで被照面の生じる色むらを大きく低減することができ、本来目的のようにレンズアレイを装着した場合には中角配光(ビーム角40〜60度程度)を、また、レンズアレイを装着しない場合には広角配光(ビーム角90度程度)を実現可能な発光ユニット及び照明装置を得ることができる。
【0056】
(結論)
このレンズ機能部50の凹部32の形状の略寸法をもう一度整理すると、対象LED1の発光面が直径約4mmであるのに対し、LED1を実装したLED基板2と対向する面側に設けたレンズ機能部5とLED基板2と対向しない面側に設けた凹部32の直径を8mm、凹部32周縁の隆起している凸部の頂上の高さを0.7mm、凹部32中央の円錐状にくりぬかれている箇所の直径を4mm、高さ(深さ)を0.3mmとし、LED1対向側領域の断面湾曲形状のレンズ機能部5の焦点距離を、LED1発光面表面と湾曲レンズ機能部5頂点との間隔(約0.3mm)より長い10mm程度としている。
【0057】
そのような外寸形状にすることで、実施の形態1の図17で示したような色むら現象を生じさせる角度放射特性を有するNS6W183(昼白色)のようなLED1を対象光源として用いる際にも、色むらを低減できる薄型光源ユニット10を得ることができる。なおシミュレーション上では凹部32の円錐深さは0.2〜0.6mm程度としても低減効果が得られたが、0.5mmの付近で相対的に良好な色むら低減効果を示した。また本試算のベース部厚みは1.0mmとしたが、例えばやや厚みが異なっても(例えば0.5〜1.5mm程度)、本説明の効果が失われることはない。
【0058】
なお、上記の試算結果をもって実際に試作評価を行ったところ、本試算結果とほぼ同様の傾向を持つ光特性を示し、実際の装置としても目的の機能を有することを確認できた。なおシミュレーションや試作ではLED実装数な装置サイズなども幾つか試行しており、ほぼ同様の特性を示した。
【0059】
以上のように、本実施の形態1に係る光源ユニット10は、LED基板2の発光面側から間隙を有してLED1の光を集光するレンズ機能部5またはレンズ機能部50を配列したレンズアレイ4を配置し、さらにLED基板2の発光面側からレンズアレイ4よりも遠方に拡散性透光部材6を配置することで、レンズアレイ4装着時にはレンズにより集光した光に柔らかい拡散効果を与え、目的の中間配光角を実現できる。さらに拡散性透光部材6は、それが無い場合に生じる広角側のノイズ光成分を抑えることができる。
【0060】
また、従来例のような中間リフレクタ(反射体)を必要とせず、かつ、反射体に従来例のような深い凹部が不要であり安価で薄型の器具を提供できる。
【0061】
また、レンズアレイ4を着脱可能とすることで着脱により配光角の切り替えができる。つまり、レンズアレイ4を着脱可能とする構成とすることで、レンズアレイ4非装着時には拡散性が高くビーム角が広い広配光照明、またレンズアレイ4装着時にはやや配光を狭めたビーム角が約40〜60度程度の狭配光照明を実現することができる。したがって照明用途に応じてレンズアレイ4の着脱のみにより配光角を切り換え照明することができ、用途範囲が一段と拡大する。
【0062】
また、発光面が略平坦状で、拡散配光特性を有するLED1を用いることで、集光機能を有する砲弾型のような樹脂モールドLED1を用いた場合よりも照明装置100厚みを小さくすることができる。また、砲弾型のLED1をさらに凸レンズアレイ4で集光すると、一般照明用途で用いる際には不快グレア(非常に眩しい)や、大きな輝度むら(あるいは照度むら)も発生しやすいという欠点があるが発光面が略平坦状のLED1ならそのような現象の発生を低減させることができる。
【0063】
また、レンズアレイ4の凸部31及び凹部32はレンズ製造の観点からみると比較的成形しやすい形状であり、低コストで金型を製造できるため生産性よく安価な器具を提供できる。
【0064】
また、レンズ機能部5の直径はLED1の発光部径よりも大きく、かつ、レンズ機能部5のレンズ機能部5の頂点とLED1表面との間の距離が、レンズ機能部5の後方焦点距離より短いことで、レンズ機能部5のレンズ機能部5の径をLED1発光部径より大きめとすることで、LED1発光光の大半がレンズ機能部5の作用を受け集光される。また、レンズ部直径をLED発光部径に比較し、やや大きめ程度に抑えることで、LED実装密度が高い場合にも、それに合わせレンズ配置することができ集光効果を与えることができる。凸レンズアレイ4を外側に向け配置した場合よりも集光効果はやや劣るものの、外側を平坦面にできる上記メリットを有し、さらに目的とする配光角を得るための集光性能を得ることができる。本来であれば凸レンズを器具外側に向け配置するのが集光効果がよいが、本構成でも所定条件によりそれに遜色ない集光効果が得られる。
【0065】
また、レンズ機能部50は透光性拡散部材6と対向する領域にレンズ機能部5の中心軸を同じくするすり鉢状の凹形状からなる凹部32を有する。これによって、LED1から発光される光の光線を凹部32の表面形状により屈折透過あるいは反射させることができる。そのため空間的な光の振る舞いとしては、例えばレンズ機能部50を通る分光の異なる光線が相互に交わる機会が増えるため、LED1自体の放射角度に対する色温度が大きく異なる場合にも被照面色むらを低減させることができる。
【0066】
また、凹部32は底面の径がレンズ機能部5と同一で周縁部が周囲に比べて隆起しており、中央部が円錐形にくりぬかれた形状である。これによって、凹部32中央の円錐型にくりぬかれた平面上での光屈折により、光軸中央方向に進む青みのある光を周辺方向に、凹部32周縁の隆起している部分での光屈折により、黄色みのある光を光軸方向に制御し、混色効果を高めることで被照面色むらを低減することができる。また凹部32周縁の隆起している部分で反射される光の成分は、LED基板2とレンズ機能部50との空間に拡散し広がるため混色され器具照明光の一部として利用される。
なお、シミュレーションでは凹部32は円錐形にくりぬかれた形状だったが、凸部31と凹部32の中心軸が同一であれば、凹部32の形状は正確な円錐状でなくともよい。つまり、すり鉢状に中央に向かってなだらかに凹んでいればよい。
【0067】
実施の形態2.
本実施の形態2に係る光源ユニット10においては、コスト低減およびLED1実装密度向上のために、LEDの実装数に関係なく共通のレンズアレイ4を使用する場合について説明する。
【0068】
本実施の形態2に係る光源ユニット10の構成では最大実装可能LEDの各々の配置に合わせ、レンズ機能部5の個数や位置を定めたレンズアレイ4とするように構成した。このような構成によりLED1の実装数限界を想定した上での個数調整が可能になる。したがって本ユニットを用いた装置を利用する照明空間に合わせ、装置構成や周囲部品を変更することなくLED1実装数を変えることで光束調整を簡単に行える特徴がある。またこの際レンズ機能部5は個々のLED1に対して作用するため、LED1の数が変更になっても個々のLED単位でみれば、実装数に関係ない配光特性を与えることができる。
【0069】
図25はLED基板2上のLED1の実装数を変更した図である。(a)は19個実装した図、(b)は14個実装した図、(c)は9個実装した図を示す。
図25(a)には上記シミュレーションで用いたモデル同様に反射性固定部材3の内径約55mm、また外径約82mmの条件で、上述したLEDを最大実装数の19個場合とした例である。LED数の調整を行ったものを図16(b)、(c)に示すが、装置配光や外観を考慮しLEDを中央部のみに配置(図25(c)の9個)、あるいは中央より周辺に多く実装配置(図25(b)の14個)するようなことが容易に実現できる。ただし、実際にはLED数の調整を行った場合でも、LEDへ問題なく電力供給する必要がある。
【0070】
図26はLED基板2の上面図中におけるLED実装部の拡大図である。この図26により、LED基板2において、LEDの実装数を変更可能にするための方法について説明する。
すなわち、それぞれのLED1はLED基板2上の電源供給線(配線パターン)上に直並列実装されるが、例えば、図26に示すように、LED実装用パッド16に並列にチップ抵抗用パッド21を備えるように構成し、LEDを実装しない部分は、装置全LEDへの電気供給を絶たないようにLEDと同程度の負荷としてチップ抵抗17(LEDへの供給電流が変わらないもの)を実装する。このようにすることでLEDの数によらず安定した電気供給を行うことができ、所望のLED配置で必要な光束を得ることができる。よって通常図25(a)のような個数を標準としておき、ニーズにあわせて図25(b)や(c)のようにLED配置(配光)や実装個数(光束)を簡単に調整することができる。
【0071】
以上のように、本実施の形態2に係る光源ユニット10は、実施の形態1で得られる全ての効果に加え、LED基板2は、実装用パッド21と並列してチップ抵抗用パッド16を有し、LED基板2の発光面側から距離を置いて配置され、LED基板2上の個々のLED1実装位置に対向するように凸部を有するレンズ機能部5を有するレンズアレイ4を備えることで、予め増灯対応(大光束化)のLED個数とLED実装位置を考慮した、狭配光化可能な共通レンズ部品を用いて狭配光化を実現でき、また、LED個数変更にも柔軟に対応することができる。
また、LED実装個数の変更時(例えば、所望の器具光束ランク(低コスト)に合わせLEDを間引き実装等する場合)にレンズアレイ4の仕様を変更する必要がない。
【0072】
実施の形態3.
実施の形態1および実施の形態2に係る光源ユニット10ではこれまで述べたとおりレンズアレイ4により配光調整を行うことを可能にしているが、色変換部材の装着により相関色温度や色度を変えることも可能である。ここで用いる説明図では湾曲凸レンズアレイを用いた発光ユニットを対象に説明しているが、先の実施形態で述べたとおり湾曲凸部の反対側表面に凹形状を設けたレンズアレイを備えた発光ユニットにも同様な手段にて、同様の効果を得ることができる。
【0073】
図27から図28には色変換部材18を装置内に位置変えて配置した図を示している。各図において(a)は側面図、(b)は発光面を見込んだ図、(c)は上面図を示す。また、図29は色変換部19の色変換(波長変換)の特性を示す図である。
図27はLED発光面側の近傍に色変換部材18を配置した例である。色変換部材18のうち色変換の機能を有する領域(色変換部19)は例えば無機蛍光体などの長寿命の色変換材料を用いた構成としている。そのような材料は、例えば図29に示したように昼白色LED(5000K)の主に短波長側光を吸収し長波長側へ波長変換する機能を有するため、結果照明色を白色光(4000K)に色変換するような効果を有する。
【0074】
本材料は例えば色変換部材の主材を薄手のポリカーボシートやPET、アクリル樹脂などとし、蛍光体をバインドした透光性材料を色変換部として印刷、塗布、貼り付けるなどして構成する。あるいは上記取材に開口部を空けその部分を埋める(嵌め込む)ように配置させる。図では埋め込み加工の例で示している。
【0075】
図27の構成ではLED発光面にだけ色変換部材18が配置され効率的に色温度変換を行うことができ、通常そのような色変換部を通った光は拡散性の強い光となるため、LED自体が拡散配光であればその色変換光も同様に拡散光となる。そのため本変換部材を可能な限り薄手なものとすれば、効率的な色変換機能を果たすことになる。結果その色変換光がレンズアレイ4をとおり配光調整されることになる。
【0076】
上記のような構成の色変換部材18は、例えば図28のように装置外側のレンズアレイ4表面近傍、あるいは図29のように表面透過板に接するような位置に設置してもよい。この場合は色変換部材が光を拡散させる性質があるため、表面透過板6を外して使用することも可能である。また、全体に色変換機能を持つ色変換材料としても色変換材料が無い場合と同様にやや狭配光化する集光効果を有し、本装置で目的とするレベルのビーム角絞りを保った色変換部材として使用することができる。
【0077】
なお、本装置の透光性拡散部材6の表面または表面近傍等に、以上説明した色変換を行う色変換部材の他、プリズムシートやルーバなどの配光制御部材なども含めた光学特性変換部材を設けることもでき、様々な照明シーンに対応させた照明演出効果を持たせることができる。
【0078】
また、本発明は、以上説明した実施の形態に限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有するものにより可能である。
また、各実施の形態は、適宜組み合わせて実現しても構わない。
【符号の説明】
【0079】
1 LED、2 LED基板、3 反射性固定部材、4 レンズアレイ、5、50 レンズ機能部、6 透光性光拡散部材、7 レンズアレイ固定部、8 外側反射筐体、10 光源ユニット、15 電源供給線(配線パタン)、16 LED実装用パッド、17 チップ抵抗、18 色変換部材、19 色変換部、21 チップ抵抗用パッド、31 凸部、32 凹部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード(LED;Light・Emitting・Diode)などの半導体発光素子を光源とした光源ユニットおよび該光源ユニットを組み込んだ照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
照明装置の被照明範囲、すなわち照明面積の調整や制限を目的として、反射体やレンズ系を用い配光角やビーム角などの配光特性を制御する構造提案が数多くなされている。光源に小型、長寿命といった特徴を持つLEDを用いた照明装置として、各LED周囲に設けた複数の凹部を有する反射体にレンズ体を選択装着することにより、目的とする配光特性を容易に作り出す効果が得られるとしているものがある(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−9826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1のように反射部材やレンズ系を用い配光角やビーム角を制御する照明装置は、LEDを配置する位置が反射体の凹部に限られる。そのため、目的の照明装置仕様(光束ランクなど)を得るため、LEDの個数や配置位置に合わせて反射体の凹部位置を調整しようとすると、結局は複数種の反射体を製造することとなり装置のコストアップに繋がっていた。さらに、この反射体は狭配光化のためにある程度凹部長さを長く(反射体厚みを厚く)する必要があり、結果、装置自体を薄型化することが困難であった。
【0005】
また、装置表面側に凸レンズアレイの凸部を向けると、装置発光面を見込んだ場合に複数凸面の陰影が出やすく光むらに見えてしまうという課題があった。
【0006】
そこで、本発明に係る光源ユニットは意匠性に優れた薄型で安価な構成の配光制御照明装置を得ることを目的とする。また、装置の配光については、光学部材(レンズアレイ)の着脱のみでビーム角でおよそ40〜60度程度の低グレアで輝度むらの少ない緩やかに狭められた配光(中角配光)と、それより広角の拡散性配光(広角配光)を切り換えて実現することも目的としている。なお、本発明中でのビーム角度は装置中心方向の光度の1/2光度となる照射角(中心を跨ぐ両角)としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る光源ユニットは、光源であるLEDが実装されたLED基板と、LED基板の発光面側から間隙を有して配置され、LED基板のLEDの実装部と対向する位置に設けられたLEDの光を集光するレンズ機能部を配列したレンズアレイと、LED基板の発光面側からレンズアレイよりも遠方に配置され、レンズ機能部を通過した光を透過し拡散する透光性光拡散部材と、を備え、レンズ機能部は、レンズアレイ上のLED実装基板と対向する面に設けられ、LEDより径の大きい断面が湾曲形状の凸部と、レンズアレイ上の透光性光拡散部材と対向する面に設けられ、凸部と中心が同軸であるすり鉢状の凹部から構成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る光源ユニットによれば、LEDの光をレンズアレイで一度狭配光化を行い、さらに透光性光拡散部材を透過させることで、やや広配光に戻す。それによりレンズアレイを装着時に光むらの低減された中角配光を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の形態1の光源ユニット10の正面図、断面図等を示す図。
【図2】実施の形態1の光源ユニット10を用いた、照明装置100を示す図。
【図3】実施の形態1の光源ユニット10(レンズアレイ4あり)及び光源ユニット10を用いた照明装置100の断面図。
【図4】実施の形態1の光源ユニット10(レンズアレイ4あり)及び光源ユニット10を用いた照明装置100の断面図。
【図5】実施の形態1の透光性光拡散部材6の湾曲を示す図。
【図6】実施の形態1の光源ユニット10に対するシミュレーションモデルを示す図。
【図7】実施の形態1の光源ユニット10に対するシミュレーションモデルを示す図。
【図8】実施の形態1の光源ユニット10のシミュレーションに使用したLEDの配光特性を示す図。
【図9】実施の形態1の「LED基板2」のみ、及び「LED基板2+レンズアレイ4」の構成条件のシミュレーションモデルの断面図。
【図10】実施の形態1の「LED基板2+レンズアレイ4+透光性光拡散部材6」、及び「LED基板2」+透光性光拡散部材6」の構成条件のシミュレーションモデルの断面図。
【図11】図9、図10の構成の違いによるシミュレーション結果を示す図。
【図12】実施の形態1の焦点距離F’が異なる構成条件のシミュレーションモデルの断面図。
【図13】図12の焦点距離F’の違いによるシミュレーション結果を示す図。
【図14】実施の形態1のLED発光面とレンズ機能部5の山頂との距離dが異なる構成条件のシミュレーションモデルの断面図。
【図15】図14の距離dが異なるシミュレーション結果を示す図。
【図16】実施の形態1の対象LEDの角度光特性測定方向を示す図
【図17】実施の形態1の対象LEDの放射角度による実測光特性を示す図。
【図18】実施の形態1の色むら低減レンズアレイ4を装着した光源ユニット10を示す図。
【図19】実施の形態1レンズ機能部5にLED光源部中央から試光線を放った場合の光線の様子を示す図。
【図20】実施の形態1の色むら低減レンズアレイ4を装着した光源ユニット10の光特性試算に用いたシミュレーションモデルを示す図。
【図21】実施の形態1の試作機に用いたレンズ機能部50形状寸法を示す図。
【図22】実施の形態1の擬似LED光源を設定し、図19のモデルを用い被照面の色温度分布特性を試算した結果一例。
【図23】図19のモデルの配光特性を試算した結果の一例を示す図。
【図24】図19のモデルの配光特性を試算した結果の一例を示す図。
【図25】実施の形態2のLED間引き状態を示す図。
【図26】実施の形態2の間引き部分を示す図。
【図27】実施の形態4の色変換部材18の取付位置を示す図。
【図28】実施の形態4の色変換部材18の取付位置を示す別の図。
【図29】実施の形態4の色変換部材18の取付位置を示すさらに別の図。
【図30】実施の形態4の色変換部19による色変換(波長変換)の特性を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図を用いて説明する。
【0011】
実施の形態1.
まず、図1から図4により、本実施の形態1の光源ユニット10および照明装置100の構成を説明する。
図1は本実施の形態1に係る光源ユニット10を示す図である。(a)は、光源ユニット10の側面図(上面図(b)の一点鎖線Aの断面)、(b)は光源ユニット10の上面図、(c)は光源ユニット10に装着するレンズアレイ4の上面図である。図1(b)は光源ユニット10の大半の使用形態に合わせ発光面を下向きとして描いている。
【0012】
図1(a)において、光源ユニット10をLED1をLED1の取り付け部であるLED実装パッドに実装したLED基板2と、その側方周囲にLED基板2を固定するように配置される反射性固定部材3、反射性固定部材3の内側でLEDアレイ発光面側に対向配置されるレンズアレイ4、さらに、図1(b)において下側となるレンズアレイ4の発光面側に距離を置いて配置される透光性光拡散部材6を配置した構成としている。このように光源ユニット10を構成することで、LED1の光をレンズアレイ4で一度狭配光化し、さらに透光性光拡散部材6を透過させることで、やや広配光に戻す。それによりレンズアレイ4を装着時に特に広角側に生じる光ノイズを打ち消し、さらに光源ユニット10の輝度むらやグレア抑制を行うことができる。なお、図1(a)では透光性光拡散部材6はLED基板2の発光面側からレンズアレイ4よりも遠方に配置されているが、すなわち、LED基板2とレンズアレイ4と透光性光拡散部材6がそれぞれ間隙を有して配置されているが、LED基板2とレンズアレイ4のみが間隙を有していればよく、レンズアレイ4と透光性光拡散部材6は接触していても良い。
また、図1(b)に示すように、LED実装パッド、およびそこに実装したLED1と、レンズ機能部5とが、照射面側から見て重なるように配置する。なお、図1(a)に示すように、LED実装パッドとレンズ機能部5とが対向するように配置する。
なお機能的に光源ユニット10自体を照明装置100と考えてもよいが、本実施の形態の構成上、光源ユニット10という名称を用い説明を行う。
【0013】
図2は本実施の形態1に係る照明装置100の図である。(a)は照明装置100の構成図を示す。(a)において、反射性固定部材3の上側にLED基板2を取り付け、下側にレンズアレイ4、透光性光拡散部材6を取り付け、光源ユニット10を構成する。そして、光源ユニット10を外側反射筐体8に取り付ける。(b)はLED基板2に反射性固定部材3を組合せた状態を図2(a)において、X方向から見た図、また(c)はレンズアレイ4の位置ずれを防ぐように周囲に4つのレンズアレイ固定部7を設けたレンズアレイ4を示したものである。この固定部7をもって図2(b)の反射性固定部材3に嵌合されるような構成とした。
【0014】
図3および図4は光源ユニット10および照明装置100において、レンズアレイ4の装着、非装着を対比するために示した図である。すなわち、図3(a)、図4(a)はそれぞれレンズアレイ4を装着、非装着の場合の光源ユニット10の断面図を示し、図3(b)、図4(b)はそれぞれレンズアレイ4を装着、非装着の場合の照明装置100の断面図を示している。
レンズアレイ4は反射性固定部材3に設けられたレンズアレイ4の設置段と、装置筐体あるいは透光性光拡散部材に設けたレンズアレイ4の固定用の突起部の間に挟みこむ形で固定される。さらに光源ユニット10の発光面を囲むように内側が拡散あるいは鏡面状の高反射性の外側反射筐体8を備え持つようにしている。本照明装置100は例えばダウンライトとして、図3(b)および図4(b)において、照射口が下になるように、図面の上側が天井面位置になるように天井開口部に組み込まれて用いられる。
【0015】
次に、本実施の形態1における光源ユニットを構成する各部品、すなわちLED1、LED基板2、レンズアレイ4、レンズ機能部5、および透光性拡散部材6の特徴点について説明する。
LED1は例えば市販の薄い表面実装型LEDであり、電極を備えたLEDパッケージ材料内に青色LEDチップを実装している。そしてその青色光に励起する蛍光体混合樹脂で表面封止した構成のもので白色光を放つようなものである。また、LED基板2はLED1の温度上昇による発効効率低下を抑える目的で、例えばアルミや銅などをベースとした金属基板、あるいはセラミック基板などで構成する。LED温度上昇幅がさほど大きくない場合には、コスト面を考慮しガラスエポキシ基板やガラスコンボジット基板等の材料を用いて構成してもよい。
【0016】
次に、LED基板2の表面は装置内の光利用効率を高めるため、高反射性白色塗料等を用いて表面加工したものを利用するとよい。LED基板2を固定し、さらにレンズアレイ4や表面透過板6の位置決めの役割も有する反射性固定部材3は、その部材内側斜面に光が入射するため、少なくともその表面が高反射性を有するように構成する。例えば樹脂材料で構成しその表面に高反射性塗料を塗布したり、高反射性光学シートを装着するなどして構成する。あるいは金属体で構成し表面メッキあるいは金属薄膜を蒸着させてもよい。また高反射ポリカーボネートのような樹脂材料で一体成形し表面を磨いて用いるなどしてもよい。
【0017】
次にレンズアレイ4は、図1(a)に示すように、LED1の発光光に対して集光効果を与えるレンズ機能部5をLED基板2上の個々のLED1実装位置に対向配置するようにする。そして、その複数のレンズ機能部5をアレイとして備えた一つのレンズアレイ4部材として構成としている。レンズアレイ4はガラス材料でもアクリルなどの透明樹脂材料でもよい。レンズ機能部5の直径は前記LED発光面全域を覆う大きさであり、集光機能を有する形状であれば狭配光化機能の役割をなすが、目的により、例えばレンズアレイ4自体の薄型化に重点を置く場合にはフレネルレンズ形状、あるいは成形性やコスト面に重点を置く場合には凸レンズ形状を選択して用意することができる。なお、本実施の形態1では、安価な装置を得ることを想定して、レンズ用金型製造費が比較的安価であるレンズ機能部5を図1(a)に示すように断面が湾曲形状の凸レンズとした場合を中心に説明する。また本装置の光特性面での主たる目的は、レンズ機能部5により集光を行い、レンズアレイ4装着時にビーム角でおよそ40〜60度程度の緩やかな配光を実現することにある。したがってレンズ機能部5には極端に大きな集光効果を与えることはせず、装置薄型化にも考慮して、レンズ機能部5の厚みを薄く抑えて狭配光化を行う。
【0018】
次にレンズアレイ4を配置する場合の向きについて説明する。レンズ機能部5を断面湾曲凸形状にする際、レンズアレイ4を装置発光面側に凸面を向け配置する場合と、装置内側すなわちLED発光部側に向け配置する場合が考えられるが、前者の配置では後者の配置に比較して相対的にレンズ凸部による光の陰影が外部から光むらとなって観察されやすいため、本実施の形態1では後者のレンズ配置とした。
【0019】
このように、レンズ機能部5の凸部をLED基板2と対向する方向に配置することで、意匠性が高く集光効果を有する照明装置100とすることができる。さらにできるだけ装置発光面側では厚みのある光制御部を持たせないようにすることで、必要に応じ光制御部材を装着しやすいといった利点も得られる。
【0020】
なお、LED基板2に実装するLED1としてそれ自体に集光効果を持つような例えば砲弾型のLEDを用いると、レンズアレイ4による集光効果が加わり、かなりの狭配光装置となる。そのため、さらに集光作用により各LED光軸方向の放射量が極めて高くなり、深いグレアや輝度むら(照度むら)を生み出す傾向にある。また、光源としては背の高いものになってしまい、光源ユニット10自体が厚いものになる欠点がある。したがって本装置のように薄型でかつ柔らかい集光効果を目的とする装置では発光面が略平坦状で、拡散配光特性を有するLED1が望ましい。
【0021】
次に、透光性拡散部材6の機能を説明する。本実施の形態1のように、LED基板2上に本レンズアレイ4を配置した構成では、レンズ機能部5が無い場合よりも狭配光化を実現することができる。しかし、得られるビーム角がかなり目標値より小さくなる場合や、また配光面では後述するように広角方向にノイズ成分を生じる場合が多い。そのため、本照明装置100では、それらの対策としてレンズアレイ4の発光面側の上部にさらに拡散性を有する表面透光板6を配置する構成としている。表面透光板6は、例えばプラスチック樹脂(アクリル、ポリカーボネート、PETなど)の表面をシボやサンドブラストの加工を行ったもの、あるいは樹脂内に拡散性フィラーを混合させたような材料で構成する。
【0022】
本透光性拡散部材6は、広配光化の役割と、各LEDの光軸方向の光度を抑制し、照明装置100発光面の輝度むら抑制、あるいはグレア低減といった役割を担うものである。そのため、全光線透過率とヘーズ値(曇り値)が高い材料が望ましい。実際に本照明装置100の試作品では透明性や耐熱性、耐候性、角度透過及び散乱特性を考慮して表面シボ加工を施したPET基材の材料を用いた。また、上記のような効果を得るために透過特性や光散乱特性などの異なる複数の透光性拡散部材6を重ねて用いてもよい。
【0023】
次に透光性拡散部材6の変形例として、断面湾曲形状にした場合について説明する。
図5は、透光性拡散部材6を断面湾曲形状にした場合を示した図である。
図5に示すように、透光性拡散部材6は、上述した輝度むら抑制、グレア低減という目的では、透光性拡散部材6の中央部を断面湾曲状に膨らむ形状としてもよい。それにより、発光ユニット10中心部での透光性拡散部材6とレンズアレイ4からの距離を離すことで、照明装置100の外部からみた各々のLED光源と陰影(輝度むら)を抑制することができ、意匠性を高めつつグレア低減(眩しさ抑制)も行うことができる。実際、本光源ユニット10の試作では、約φ85mmのユニット発光面に図5の透光性拡散部材6の中央部深さhをh≒5mmとした表面シボ加工を施したドーム状のアクリル部材を用いたところ、輝度むらが大きく低減することを確認した。
【0024】
また、この透光性拡散部材6を、装置に常備するような構成としておき、レンズアレイ4を着脱可能とする構成とすることで、レンズアレイ4を非装着時には、拡散性が高くビーム角が広い広角配光照明となる。また、レンズアレイ4装着時にはやや配光を狭めたビーム角が約40〜60度程度の中角配光照明を実現することができる。したがって照明用途に応じてレンズアレイ4の着脱のみにより配光角を切り換え照明することができ、照明装置100の用途範囲が一段と拡大する。
【0025】
以上のように、光源ユニット10を用いた照明装置100の配光特性は光源ユニット10構成による配光が支配的となり現れるが、外側反射筐体8は広角側に出た光りを効率的に照明に用いるように、また、遠めから装置を見込んだ際に直接発光面を目立たなくするような役割も持ち合わせる。本実施の形態では発光面が略平坦状で、拡散配光特性を有するLED1を用いることで光源ユニット10を薄型化できるため、本装置を天井面へ埋め込む際、天井裏側へ突出する領域が低く、したがって天井裏の高さ方向のスペースが狭い場合にも十分装着可能な装置を得ることができる。またその他、本光源ユニット10を用いた照明装置100自体を薄型にできるため、例えば天井面直下付け装置の場合でも薄くでき意匠性がよく、また、照明空間の演出効果の幅を高めることができる。
【0026】
次に本実施の形態に係るレンズアレイ4の作用、効果を確認し、主にレンズ機能部5の形状等の仕様を定める目的で、以下の3種類のシミュレーションを行ったのでその内容について説明する。まず、1番目のシミュレーションは湾曲凸状のレンズアレイ4を対象とし、光源ユニット10を構成する光制御部材の有無による配光特性の変化を評価するためのものである(シミュレーション1)。次に、2番目のシミュレーションは、湾曲凸状のレンズ機能部5の形状に係る後方焦点を変えた場合の配光特性を評価するためのものである(シミュレーション2)。次に、3番目のシミュレーションは、湾曲凸状のレンズ機能部5の凸部頂点からLED1発光面間の距離を変えた場合の特性を評価するためのものである(シミュレーション3)。
【0027】
(各シミュレーションで共通となる構成)
まず、各シミュレーションで共通となる構成について説明する。
図6および図7は、シミュレーションの外観モデルの図である。図6(a)は斜視図(レンズアレイ4、透光性拡散部材6なし)、図6(b)は上面図(レンズアレイ4、透光性拡散部材6なし)、図7(a)は斜視図(レンズアレイ4あり)、図7(b)はLED1とレンズ機能部5との配置関係を示す図である。
【0028】
図8は本シミュレーションに使用したLEDの配光特性を示す図である。(a)はLED部品の斜視図、(b)はLED部品の配光特性を示す。
ここでLED1の特性は日亜化学工業製NS3W183の外寸仕様(5×5×1.35mm)を用い、ほぼその配光特性と同じ拡散配光特性を用いた。またLED基板2は、およそ反射率85%の拡散性処理を施したもの、さらに反射性固定部材3は反射率約96%で内側側面が緩やかに湾曲した拡散性材料として与えた。反射性固定部材3の内径(LED基板2露出部直径)は約55mm、また外径(装置表面開口直径)は約82mmとした。LED基板2の表面から反射固定部材3の頂点までの距離は約10mmとしている。
本シミュレーションは、12個のLED1をLED基板2の上に配置し、さらにその周囲を反射性固定部材3を配置したものを共通の条件とした。図6および7において、LED部品単体の拡大図は、図8(a)で示した外観のものを用いた。LED1自体、特にレンズ機能を有するものではなく、LED封止樹脂部分が略平坦のものであり、LED配光特性は図8(b)に示したようにほぼ完全拡散発光のものである。なお、図8(a)のLED1の発光面1aの上部には、光源である印1zが示されている。
【0029】
レンズアレイ4は、ベース部(ここでは薄い板状)とレンズ機能部5からなり、レンズアレイ4はアクリル材料とし、レンズ機能部5としての断面湾曲形状の凸部をLED基板2上の各LED1の実装位置に対向させるように配置した。レンズ機能部5の直径はLED発光部、すなわちLED1の蛍光体が封止されている表面の直径、例えば図8(a)の表面で約4.5mm、よりも大きく、かつ、後述するようにLED1を装置仕様に合わせ最大数、高密度実装する際にも隣り合うレンズ凸部で重なりが生じないようにφ8mmとした(例えば図25の構成;後述する)。上記LED1自体が拡散配光性を有するため(レンズ機能を有する砲弾型形状でもよいが本装置では表面輝度むらが出やすい)、LED発光部直径よりやや大きめの直径とすることでレンズ機能部5の配置密度をある程度高めつつ、LED発光光に対するレンズ効果を十分持たせることができる。また、透光性光拡散部材6として、およそ、きもと社製拡散部材ライトアップLSE100の有する散乱特性を与えた(全光線、ヘーズはそれぞれ弊社内測定で両者90%以上の特性)。
【0030】
ここで、各LED1に対向するように湾曲凸形状のレンズ機能部5を持たせたレンズアレイ4を上記反射性固定部材3の深さ内に配置し、レンズ機能部5の直径を固定(8mm)し、レンズ後方焦点距離をパラメータとして基礎試算を行った。レンズアレイ4の平面部分の厚みは1mmとした。結果的に、装置薄型化と配光の広がりを意識して基礎計算を行い、一例ではあるが薄型化の面から焦点距離F'=10mmとし、目的の配光領域となるようにLED表面とレンズ凸面との間隔dを調整した。結果的に、目的の配光領域を実現する条件として、d≧F'ではなく、d<F'の条件で配光特性が良好となることがわかった。なお、以下で効果を説明する図5ではd=3mmの条件としている。
【0031】
(シミュレーション1)
次に、1番目のシミュレーションとして、光源ユニット10内の光制御部材6の有無による配光特性の変化を評価した結果について説明する。
図9および図10は、本シミュレーションを行った各条件を構造的に示した図である。図9(a)はLED基板2のみ、図9(b)はLED基板2+レンズアレイ4、図10(a)はLED基板2+レンズアレイ4+透光性拡散部材6、図10(b)はLED基板2+透光性拡散部材6とする構成を示す。
上記の条件で、それぞれの光学部材の構成の段階での試算を行うことで、本装置構成による配光制御効果を確認した。
【0032】
(結果)
図11は図9および図10の条件の各設定の光源ユニット10内の光制御部材(レンズアレイ4、透光性拡散部材6)の有無による配光特性変化のシミュレーション結果を示したものである。横軸は光源ユニット10の中心軸を基準とし、ある角度方向の相対光度を示したものである。
その結果、図9(a)に示すLED基板2のみの構成ではほぼ拡散状に発光している(図11のAで示す)。その上にレンズアレイ4を配置した図9(b)に示すLED基板2+レンズアレイ4の構成の場合には、その集光効果により±20度の間で発光成分が鋭くなっていることがわかる(図11のBで示す)。集光によってビーム角があまりに狭くなると、ビーム角40〜60度程度の中角程度のビーム角を目的とする照明にとっては光むらになるとも考えられる。つまりこの時点でグラフからは両角30〜60度付近の広角方向で小さく飛び出る光ノイズが発生している。さらにその上に透光性拡散部材6を配置した図10(a)に示すLED基板2+レンズアレイ4+透光性拡散部材6の構成では光ノイズが大幅低減し、中央方向の光度を抑えビーム角で約55度となり本装置の狙いとする配光特性が得られた(図11のCで示す)。
【0033】
(結論)
したがって上述したシミュレーション結果からも明らかなとおり、一度レンズアレイ4で集光化し、さらに拡散性光透過部材6を設ける構成によって光ノイズが少ないやや狭まった配光特性を有する光源ユニット10やそれを用いた照明装置100を得ることができる。なお、LED基板2のみの場合の光束に対して、LED+レンズの構成およびLED基板2+レンズアレイ4+透光性拡散部材6の構成での光束比はそれぞれ96%、81%であり、光利用効率面でも部材装着をした場合に良好な状態であることがわかった。
【0034】
また、レンズアレイ4を配置せずにLED基板2上に拡散透光板を配置したLED+拡散板(図10(b))の構成での結果は光ノイズが無い状態でとくに集光効果を持たない拡散性の強い照明光となっている(図11のDで示す)。従ってLED基板2、レンズアレイ4、透光性拡散部材6からなる構成の本装置において、レンズアレイ4を用途に応じ着脱可能とすることにより、広配光の照明とやや狭配光の照明とを切り替えて実現することが可能であり、多用途向けとして本光源ユニット10を用いることができる。また、この構成でのLED1のみの場合に比較した光束比は約86%であり、光利用効率面ではやはり良好な状態で用いることができる。
【0035】
(シミュレーション2)
次に、2番目のシミュレーションとして、レンズ機能部5の形状に係る後方焦点を変えた場合の配光特性を評価した結果について説明する。
図12はレンズ機能部5の形状に係わる後方焦点を変えた場合の配光試算を示す図である。(a)は焦点距離F'=20mm、(b)は焦点距離F'=10mm、(c)は焦点距離F'=7mmの条件を示す図である。
ここではレンズ機能部5の焦点距離を3水準設定し、レンズアレイ4の配置位置を変えずに試算を実施した。試算ではレンズ部直径を8mm固定として、各レンズ形状(曲率)に反映させるようにしている。
【0036】
(結果)
図13に図12の各条件の場合のシミュレーション結果を示す。図13に示すように焦点距離が長くても小さくても集光効果が得られにくく、焦点距離F'=10mmで中央部に光が照射させる傾向を確認した。透光性拡散部材6を装着する場合には、中央部の集光効果が高いほど、光ノイズを取り除きながら柔らかい狭配光化を実現できるため焦点距離F'=10mm程度が良好であることがわかった。
【0037】
(シミュレーション3)
次に、3番目のシミュレーションとして、レンズ機能部5の断面湾曲形状の凸部からLED1発光面間の距離を変えた場合の特性を評価した結果を示す。
図14は、レンズ機能部5の断面湾曲形状の凸部からLED1発光表面間距離を変えた場合の配光試算を示す図である。(a)は発光表面間距離をdとして、d=5.64mmの状態、(b)はd=0.64mmの状態を示す。
一方、そのような後方焦点距離F'=10mmの条件で、レンズアレイ4位置による効果を把握するため、レンズアレイ4位置を3水準設定し試算を行った。レンズ機能部5の断面湾曲形状の凸部からLED1発光表面間距離をdとして、d=0.64mm、3mm、5.64mmとした。
【0038】
(結果)
図15に図14の各条件の場合のシミュレーション結果を示す。
その結果、距離が短すぎると装置として狭配光が得られにくく、一方距離が長すぎる狭配光効果は有するものの、広角ノイズ成分と中心配光成分との間の山谷の差が大きくなり、その上に拡散板を配置したとしてもノイズ成分が目立ちやすい傾向となる。
【0039】
(結論)
したがってビーム角40〜55度程度で、光ノイズの発生しにくい厚さ10mm程度の薄型の照明ユニット、あるいはそれを備えた装置を得るためには、本試算結果より一条件例として、レンズアレイ4のLEDに対向する湾曲凸レンズの後方焦点距離をおよそF'=10mmとし、レンズ頂点とLED発光表面間距離をdとして、本レンズアレイ4をおよそd=3mmの位置に配置することがよいことがわかった。また、同じくレンズ直径をφ8mmとして他条件でも解析を進めた結果、上記からレンズ背面とLED表面との間の距離dに対して焦点距離をF'=9〜15mm程度、d≒2〜4mm程度にしても上述したような配光制御効果が得られることがわかった。
【0040】
次に、光源ユニット10において、レンズアレイ4のレンズ機能部5の形状自体に色むらを低減させる特徴を持たせる場合の構成例およびその作用を図16から図24を用いて説明する。
【0041】
(背景)
まず、色むらの低減に係る構成を必要とする背景について説明する。
LED1の構成は様々なものがあり、LED1のパッケージ形状、LED1のベアチップ配置、蛍光体適用方法(ベアチップ上にコーティング、封止樹脂混合などがあり後者では均一拡散する方法や沈降させるような方法がある)により、LED1の発光角度(LED1を見込む角度)により発光スペクトル、色度、色温度などの色合いが大きく異なる場合がある。
【0042】
ここで、シミュレーション1〜3で実装を想定したLED(日亜化学工業製NS6W183;昼白色)の実測光角度特性について、その測定方向と測定結果の一例をそれぞれ図16、図17に示す。図16はLEDチップの集中実装領域に対する測定方向を示す図であり、LEDチップの長辺に対して垂直となる方向をA方向、LEDチップの長辺に対して水平となる方向をB方向として示している。図17(a)は角度による実測相関色温度特性を示すもので、測定方向によらず放射角度により相関色温度4700〜5300K程度の明らかな色温度の違いが認められる。つまり、JIS Z9112の光源色の区分上は昼白色領域にはあるが、上下限がほぼ隣接する領域の白色と昼光色に近く、認識する色の違いも大きい。また、図17(b)の結果は放射角が0度、36度、72度方向の分光特性を示したもので、こちらも放射角度の違いにより分光形状(特に青色波長領域と黄色波長領域の強度比)に大きな差異が生じることを示している。
【0043】
つまり発光角度による色味の差の大きいLED1を光源ユニット10に適用した場合、レンズアレイ4のレンズ機能部5の効果により集光させる際、LED光色や演色性などの種類によっては被照面の中心領域と周辺領域で色味が異なり色むらとして確認される場合がある。特に本照明装置100をダウンライトなどの装置として用いる場合には、例えば装置が白色系の壁面付近に設置された場合、照明光が壁面に投光された際に、青味がかった光と黄色味がかった光の色コントラストが現れることがある。これを色むらと呼ぶ。この色むらが照明装置100の設置空間の雰囲気にマッチしないなどの違和感を与える場合がある。
【0044】
(構成)
次に、本実施の形態1において色むらを低減する、凸部31(上述した湾曲凸形状)と、凸部31を形成する面と反対面側に凹部32を有するレンズ機能部50の構成について、図18から図21を用いて説明する。
図18は色むらを低減するレンズ機能部50を組み込んだ光源ユニット10の断面図である。図18は実施の形態1で説明した図1に対応している。
空間的な色温度の大きな変化(色むら)を低減するレンズ機能部50の形状を検討した。その結果、図18に示すように、レンズ機能部50はLED基板2と対向する面に設けられ、LED1発光面より径の大きい湾曲形状の凸部31と、レンズ機能部50上の透光性光拡散部材6と対向する面に設けられ、断面湾曲形状の凸部31と中心が同軸であるすり鉢状の凹部を有する凹部32を有する構成することで色むら低減効果が得られた。この凹部32は、例えば図21に示すように、周縁部がその周囲に比べて隆起しており、中央部が円錐形にくりぬかれた凹形状をしている。また、凹部32は例えば図21に示すように、底面の径が凸部31と同一で、円錐形にくりぬかれた凹形状の高さ(深さ)は凹部32周縁部が隆起している頂上の高さよりも低い。
なお、以降の記載においてはレンズ機能部5は凸部31のみを有し、レンズ機能部50は凸部31および凹部32を有するものとする。
【0045】
そのようなレンズ機能部50を通過する光線の様子について図19に示す。図19(a)には色むら対策前のレンズ機能部5、また、図19(b)には色むら対策後のレンズ機能部50を対象とし、LED発光表面中心からレンズ機能部5およびレンズ機能部50の下部に広げた試光線を与え、光線の進み方の例を示した。本構成によると、レンズ機能部50は、凹部32中央のすり鉢状の凹部での光屈折により光軸中央方向に進む青みのある光を周辺方向に、凹部32周縁の隆起している部分の平面での光屈折により黄色みのある光を光軸方向に制御し、混色効果を高めることで被照面色むらを低減する効果が得られる。また凹部32の平坦面で反射される光の成分は、LED基板2とレンズ機能部50との空間に拡散して広がるため、混色され器具照明光の一部として利用される。
【0046】
つまり、上述したような構成のレンズ機能部50を用いることで、LED1から発光される光の光線を凹部32表面での屈折透過及び反射させることにより、凸部31を通る分光の異なる光線を交差させ混色性を高めることができ、被照面色むらを低減させることができる。
【0047】
そのような発光角度による色温度の差の大きい特性を模擬した簡易的な擬似LED光源を用い、本実施の形態3に係る光源ユニット10を対象に、レンズ機能部50の凹部32の有無に対する被照面上の色温度分布を評価するために、4番目のシミュレーションを実施した。
【0048】
(シミュレーション4)
擬似LED光源は、LED1の放射角による色温度の違いを強調させるため、放射角度領域を大きく2つに分け、それぞれに異なる分光特性(相関色温度も異なる)を与えた。2つの分光特性は実測結果を元にLED光軸(0度)での特性と、側方放射(72度)の特性とした。ここで、放射領域A(放射角0〜18度)は、図17(a)に示した0度の分光(青みの強い5280K)を設定した場合を示す。また、放射領域B(放射角18〜90度)は、図17(b)に示した72度の分光(黄味の強い4770K)を設定した場合を示す。
なお、上記領域Aと領域Bの放射強度比は、実測強度に基づき3次元的な光の広がりを考慮し、さらにそれら合成光は拡散配光になるように設定した。
【0049】
(構成)
図20および図21は本シミュレーションを行った各条件のうち、凸部31および凹部32を有するレンズ機能部50の構造を示した図である。
シミュレーションにおいては、凸部31と凹部32との底面を空間的な光制御領域を等しくする同じ直径の円形とし、かつ、凹部32の周縁が隆起した平坦面であるとともに、凹部32中央が円錐状にくりぬかれた形状であるような形状とした。また各LED1の発光面中心軸が各凹部32の円錐頂点を通るようにレンズアレイ4を構成した。
上述した凹部32の形状寸法を本薄型光源ユニット10に対応するように定め、図21に示すように、各部寸法をk=4mm、h1=0.7mm、h2=0.5mmとしてシミュレーションを行った。このとき、実施の形態1のシミュレーションで使用した光源ユニット10の外寸と等しい寸法の図20の構成の光源ユニット10のモデルを用いた。
【0050】
擬似LED光源を用い、まずシミュレーション1〜3に使用したシミュレーションモデルを用い、光源ユニット10からその中心軸に沿って1m離した距離に□5mの受光面を配置し、その面上の色温度分布状態(面上の器具中心軸と交差する点を通る直線上の分布)を試算した。
【0051】
(結果)
図22は上述した条件の場合のシミュレーション結果を示す。図22には、(1)擬似LED1を実装したLED基板2のみの結果、(2)LED基板2+凸部31を有するレンズ機能部5着用時の結果と、それに加え(3)LED基板2+凸部31および凹部32を有するレンズ機能部50着用時の構成での色温度分布試算結果を示した。なお、図22に限らず図中の丸印で囲んだ数字と明細書中の括弧書きの数字とは対応関係にある。
その結果、図22中の(1)で示した擬似LED1を実装したLED基板2のみのシミュレーション結果では、被照面約−0.5〜0.5mの間にピーク5200Kで色温度が高くなる領域が生じた(周辺色温度約4800Kとの差が400K)。一方で、図22中の(2)で示した擬似LED基板2+レンズ機能部5のシミュレーション結果ではピークがやや抑えられ5100K(周辺色温度約4800Kとの差300K)となり、レンズ機能部5装着時にはやや色温度差(色むら)が緩和される傾向にあることがわかる。ただし、それでも色温度差が大きく、器具構成で前提としている上述の拡散板(透光性光拡散部材6)を装着した場合でもその色むらが確認されやすい。それに対して図22中に示した(3)LED基板2+レンズ機能部50は凹部32による透過反射作用により、レンズ機能部5中心の光透過を抑える効果を有し、結果中心方向に進む青色光の光量を減少させ、受光面中心でかなりの色温度差を生じていいたピークを4900Kほどまで低下させることができ、大きな色むら低減機能があることがわかった。
【0052】
このとき各条件での−1.5〜1.5m受光領域での平均色温度、標準偏差を確認したところ、図22に示した(1)、(2)、(3)の条件に対してそれぞれ平均4868K(偏差154K)、4823K(96K)、4809K(50K)であった。とくに標準偏差から見れば被照面での空間的な色温度分布のばらつきを低く抑えることができるため、凹部32の形状が色むら抑制に一定の効果を有するといえる。実際にレンズ機能部50を配列したレンズアレイ4を組み込んだ光源ユニット10について試作評価を行ったところ、被照面色分布について目視と実測でほぼ同じ色むら低減効果が確認された。
【0053】
ここで図20のレンズ機能部50を用いた際の配光特性を図23に示す。図23の(4)はLED基板2+レンズ機能部50着用時のユニット配光特性、また、図23に示す(5)はLED基板2+レンズ機能部50+透光性拡散部材6(前述のきもと社製ライトアップLSE100(総厚み115μm)と同シリーズのLSE188(総厚み203μm);カタログ上の光学特性は同じ)の条件での配光特性を示す。図23に示す(5)は本光源ユニット10で想定している構成(中角指定)であるが、ビーム角が約50度の結果となり、本装置の目的とする配光特性が得られた。なお、やはり本装置の基本仕様形態のひとつである、レンズアレイ4を装着しない場合(広角仕様)は実施の形態1の図11の条件Dに示したとおりの特性となる。なお、シミュレーション上で上記2種拡散シート部材(LSE100、LSE188)の光学散乱データを与えてもほぼ同様の配光特性、色温度分布特性が得られた。なお、透過性光拡散部材6は上記のようにレンズアレイ4の有無により中角、広角を満たせるようなものであれば、必ずしも上記例と同じ物とする必要はない。
【0054】
図24は、(1)擬似LED1を実装したLED基板2のみの結果、(4)LED基板2+レンズ機能部50+透光性拡散部材6着用時の構成の結果、(5)LED基板2+透光性拡散部材6着用時での色温度分布試算結果を示した。
発光ユニット10のレンズアレイ4の装着の有無による色温度分布を試算したところ図24のようになった。(4)LED基板2+レンズ機能部50+透光性拡散部材6の構成とした場合には光軸周辺での色温度変化幅は緩和される方向にある。また、(6)LED基板+拡散板(レンズアレイ非装着時)の場合の結果も示すが、やや中心部でなだらかに色温度が高くなる傾向にあるものの、そもそもの擬似LED光源で与えた色温度幅に比較すればかなり色むらが抑えられる傾向にある。
【0055】
なお、本シミュレーション上ではレンズアレイ装着時、レンズアレイ凸部とLED発光面との間隔は約3mmとしているが、器具の用途等により図14の結果のようにその距離を狭くすると広配光に、またそれより広くすると狭配光となる方向に調整可能である。以上のように図18〜21に示した構成のレンズアレイ4と、上記のような拡散板(透光性光拡散部材6)を備えた発光ユニット構成とすることで被照面の生じる色むらを大きく低減することができ、本来目的のようにレンズアレイを装着した場合には中角配光(ビーム角40〜60度程度)を、また、レンズアレイを装着しない場合には広角配光(ビーム角90度程度)を実現可能な発光ユニット及び照明装置を得ることができる。
【0056】
(結論)
このレンズ機能部50の凹部32の形状の略寸法をもう一度整理すると、対象LED1の発光面が直径約4mmであるのに対し、LED1を実装したLED基板2と対向する面側に設けたレンズ機能部5とLED基板2と対向しない面側に設けた凹部32の直径を8mm、凹部32周縁の隆起している凸部の頂上の高さを0.7mm、凹部32中央の円錐状にくりぬかれている箇所の直径を4mm、高さ(深さ)を0.3mmとし、LED1対向側領域の断面湾曲形状のレンズ機能部5の焦点距離を、LED1発光面表面と湾曲レンズ機能部5頂点との間隔(約0.3mm)より長い10mm程度としている。
【0057】
そのような外寸形状にすることで、実施の形態1の図17で示したような色むら現象を生じさせる角度放射特性を有するNS6W183(昼白色)のようなLED1を対象光源として用いる際にも、色むらを低減できる薄型光源ユニット10を得ることができる。なおシミュレーション上では凹部32の円錐深さは0.2〜0.6mm程度としても低減効果が得られたが、0.5mmの付近で相対的に良好な色むら低減効果を示した。また本試算のベース部厚みは1.0mmとしたが、例えばやや厚みが異なっても(例えば0.5〜1.5mm程度)、本説明の効果が失われることはない。
【0058】
なお、上記の試算結果をもって実際に試作評価を行ったところ、本試算結果とほぼ同様の傾向を持つ光特性を示し、実際の装置としても目的の機能を有することを確認できた。なおシミュレーションや試作ではLED実装数な装置サイズなども幾つか試行しており、ほぼ同様の特性を示した。
【0059】
以上のように、本実施の形態1に係る光源ユニット10は、LED基板2の発光面側から間隙を有してLED1の光を集光するレンズ機能部5またはレンズ機能部50を配列したレンズアレイ4を配置し、さらにLED基板2の発光面側からレンズアレイ4よりも遠方に拡散性透光部材6を配置することで、レンズアレイ4装着時にはレンズにより集光した光に柔らかい拡散効果を与え、目的の中間配光角を実現できる。さらに拡散性透光部材6は、それが無い場合に生じる広角側のノイズ光成分を抑えることができる。
【0060】
また、従来例のような中間リフレクタ(反射体)を必要とせず、かつ、反射体に従来例のような深い凹部が不要であり安価で薄型の器具を提供できる。
【0061】
また、レンズアレイ4を着脱可能とすることで着脱により配光角の切り替えができる。つまり、レンズアレイ4を着脱可能とする構成とすることで、レンズアレイ4非装着時には拡散性が高くビーム角が広い広配光照明、またレンズアレイ4装着時にはやや配光を狭めたビーム角が約40〜60度程度の狭配光照明を実現することができる。したがって照明用途に応じてレンズアレイ4の着脱のみにより配光角を切り換え照明することができ、用途範囲が一段と拡大する。
【0062】
また、発光面が略平坦状で、拡散配光特性を有するLED1を用いることで、集光機能を有する砲弾型のような樹脂モールドLED1を用いた場合よりも照明装置100厚みを小さくすることができる。また、砲弾型のLED1をさらに凸レンズアレイ4で集光すると、一般照明用途で用いる際には不快グレア(非常に眩しい)や、大きな輝度むら(あるいは照度むら)も発生しやすいという欠点があるが発光面が略平坦状のLED1ならそのような現象の発生を低減させることができる。
【0063】
また、レンズアレイ4の凸部31及び凹部32はレンズ製造の観点からみると比較的成形しやすい形状であり、低コストで金型を製造できるため生産性よく安価な器具を提供できる。
【0064】
また、レンズ機能部5の直径はLED1の発光部径よりも大きく、かつ、レンズ機能部5のレンズ機能部5の頂点とLED1表面との間の距離が、レンズ機能部5の後方焦点距離より短いことで、レンズ機能部5のレンズ機能部5の径をLED1発光部径より大きめとすることで、LED1発光光の大半がレンズ機能部5の作用を受け集光される。また、レンズ部直径をLED発光部径に比較し、やや大きめ程度に抑えることで、LED実装密度が高い場合にも、それに合わせレンズ配置することができ集光効果を与えることができる。凸レンズアレイ4を外側に向け配置した場合よりも集光効果はやや劣るものの、外側を平坦面にできる上記メリットを有し、さらに目的とする配光角を得るための集光性能を得ることができる。本来であれば凸レンズを器具外側に向け配置するのが集光効果がよいが、本構成でも所定条件によりそれに遜色ない集光効果が得られる。
【0065】
また、レンズ機能部50は透光性拡散部材6と対向する領域にレンズ機能部5の中心軸を同じくするすり鉢状の凹形状からなる凹部32を有する。これによって、LED1から発光される光の光線を凹部32の表面形状により屈折透過あるいは反射させることができる。そのため空間的な光の振る舞いとしては、例えばレンズ機能部50を通る分光の異なる光線が相互に交わる機会が増えるため、LED1自体の放射角度に対する色温度が大きく異なる場合にも被照面色むらを低減させることができる。
【0066】
また、凹部32は底面の径がレンズ機能部5と同一で周縁部が周囲に比べて隆起しており、中央部が円錐形にくりぬかれた形状である。これによって、凹部32中央の円錐型にくりぬかれた平面上での光屈折により、光軸中央方向に進む青みのある光を周辺方向に、凹部32周縁の隆起している部分での光屈折により、黄色みのある光を光軸方向に制御し、混色効果を高めることで被照面色むらを低減することができる。また凹部32周縁の隆起している部分で反射される光の成分は、LED基板2とレンズ機能部50との空間に拡散し広がるため混色され器具照明光の一部として利用される。
なお、シミュレーションでは凹部32は円錐形にくりぬかれた形状だったが、凸部31と凹部32の中心軸が同一であれば、凹部32の形状は正確な円錐状でなくともよい。つまり、すり鉢状に中央に向かってなだらかに凹んでいればよい。
【0067】
実施の形態2.
本実施の形態2に係る光源ユニット10においては、コスト低減およびLED1実装密度向上のために、LEDの実装数に関係なく共通のレンズアレイ4を使用する場合について説明する。
【0068】
本実施の形態2に係る光源ユニット10の構成では最大実装可能LEDの各々の配置に合わせ、レンズ機能部5の個数や位置を定めたレンズアレイ4とするように構成した。このような構成によりLED1の実装数限界を想定した上での個数調整が可能になる。したがって本ユニットを用いた装置を利用する照明空間に合わせ、装置構成や周囲部品を変更することなくLED1実装数を変えることで光束調整を簡単に行える特徴がある。またこの際レンズ機能部5は個々のLED1に対して作用するため、LED1の数が変更になっても個々のLED単位でみれば、実装数に関係ない配光特性を与えることができる。
【0069】
図25はLED基板2上のLED1の実装数を変更した図である。(a)は19個実装した図、(b)は14個実装した図、(c)は9個実装した図を示す。
図25(a)には上記シミュレーションで用いたモデル同様に反射性固定部材3の内径約55mm、また外径約82mmの条件で、上述したLEDを最大実装数の19個場合とした例である。LED数の調整を行ったものを図16(b)、(c)に示すが、装置配光や外観を考慮しLEDを中央部のみに配置(図25(c)の9個)、あるいは中央より周辺に多く実装配置(図25(b)の14個)するようなことが容易に実現できる。ただし、実際にはLED数の調整を行った場合でも、LEDへ問題なく電力供給する必要がある。
【0070】
図26はLED基板2の上面図中におけるLED実装部の拡大図である。この図26により、LED基板2において、LEDの実装数を変更可能にするための方法について説明する。
すなわち、それぞれのLED1はLED基板2上の電源供給線(配線パターン)上に直並列実装されるが、例えば、図26に示すように、LED実装用パッド16に並列にチップ抵抗用パッド21を備えるように構成し、LEDを実装しない部分は、装置全LEDへの電気供給を絶たないようにLEDと同程度の負荷としてチップ抵抗17(LEDへの供給電流が変わらないもの)を実装する。このようにすることでLEDの数によらず安定した電気供給を行うことができ、所望のLED配置で必要な光束を得ることができる。よって通常図25(a)のような個数を標準としておき、ニーズにあわせて図25(b)や(c)のようにLED配置(配光)や実装個数(光束)を簡単に調整することができる。
【0071】
以上のように、本実施の形態2に係る光源ユニット10は、実施の形態1で得られる全ての効果に加え、LED基板2は、実装用パッド21と並列してチップ抵抗用パッド16を有し、LED基板2の発光面側から距離を置いて配置され、LED基板2上の個々のLED1実装位置に対向するように凸部を有するレンズ機能部5を有するレンズアレイ4を備えることで、予め増灯対応(大光束化)のLED個数とLED実装位置を考慮した、狭配光化可能な共通レンズ部品を用いて狭配光化を実現でき、また、LED個数変更にも柔軟に対応することができる。
また、LED実装個数の変更時(例えば、所望の器具光束ランク(低コスト)に合わせLEDを間引き実装等する場合)にレンズアレイ4の仕様を変更する必要がない。
【0072】
実施の形態3.
実施の形態1および実施の形態2に係る光源ユニット10ではこれまで述べたとおりレンズアレイ4により配光調整を行うことを可能にしているが、色変換部材の装着により相関色温度や色度を変えることも可能である。ここで用いる説明図では湾曲凸レンズアレイを用いた発光ユニットを対象に説明しているが、先の実施形態で述べたとおり湾曲凸部の反対側表面に凹形状を設けたレンズアレイを備えた発光ユニットにも同様な手段にて、同様の効果を得ることができる。
【0073】
図27から図28には色変換部材18を装置内に位置変えて配置した図を示している。各図において(a)は側面図、(b)は発光面を見込んだ図、(c)は上面図を示す。また、図29は色変換部19の色変換(波長変換)の特性を示す図である。
図27はLED発光面側の近傍に色変換部材18を配置した例である。色変換部材18のうち色変換の機能を有する領域(色変換部19)は例えば無機蛍光体などの長寿命の色変換材料を用いた構成としている。そのような材料は、例えば図29に示したように昼白色LED(5000K)の主に短波長側光を吸収し長波長側へ波長変換する機能を有するため、結果照明色を白色光(4000K)に色変換するような効果を有する。
【0074】
本材料は例えば色変換部材の主材を薄手のポリカーボシートやPET、アクリル樹脂などとし、蛍光体をバインドした透光性材料を色変換部として印刷、塗布、貼り付けるなどして構成する。あるいは上記取材に開口部を空けその部分を埋める(嵌め込む)ように配置させる。図では埋め込み加工の例で示している。
【0075】
図27の構成ではLED発光面にだけ色変換部材18が配置され効率的に色温度変換を行うことができ、通常そのような色変換部を通った光は拡散性の強い光となるため、LED自体が拡散配光であればその色変換光も同様に拡散光となる。そのため本変換部材を可能な限り薄手なものとすれば、効率的な色変換機能を果たすことになる。結果その色変換光がレンズアレイ4をとおり配光調整されることになる。
【0076】
上記のような構成の色変換部材18は、例えば図28のように装置外側のレンズアレイ4表面近傍、あるいは図29のように表面透過板に接するような位置に設置してもよい。この場合は色変換部材が光を拡散させる性質があるため、表面透過板6を外して使用することも可能である。また、全体に色変換機能を持つ色変換材料としても色変換材料が無い場合と同様にやや狭配光化する集光効果を有し、本装置で目的とするレベルのビーム角絞りを保った色変換部材として使用することができる。
【0077】
なお、本装置の透光性拡散部材6の表面または表面近傍等に、以上説明した色変換を行う色変換部材の他、プリズムシートやルーバなどの配光制御部材なども含めた光学特性変換部材を設けることもでき、様々な照明シーンに対応させた照明演出効果を持たせることができる。
【0078】
また、本発明は、以上説明した実施の形態に限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有するものにより可能である。
また、各実施の形態は、適宜組み合わせて実現しても構わない。
【符号の説明】
【0079】
1 LED、2 LED基板、3 反射性固定部材、4 レンズアレイ、5、50 レンズ機能部、6 透光性光拡散部材、7 レンズアレイ固定部、8 外側反射筐体、10 光源ユニット、15 電源供給線(配線パタン)、16 LED実装用パッド、17 チップ抵抗、18 色変換部材、19 色変換部、21 チップ抵抗用パッド、31 凸部、32 凹部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源であるLEDが実装されたLED基板と、
前記LED基板の発光面側から間隙を有して配置され、前記LED基板の前記LEDの実装部と対向する位置に設けられた前記LEDの光を集光するレンズ機能部を配列したレンズアレイと、
前記LED基板の発光面側から前記レンズアレイよりも遠方に配置され、前記レンズ機能部を通過した光を透過し拡散する透光性光拡散部材と、を備え、
前記レンズ機能部は、前記レンズアレイ上の前記LED実装基板と対向する面に設けられ、前記LEDより径の大きい断面が湾曲形状の凸部と、前記レンズアレイ上の前記透光性光拡散部材と対向する面に設けられ、前記凸部と中心が同軸であるすり鉢状の凹部から構成されたことを特徴とする光源ユニット。
【請求項2】
前記凹部は周縁部が周囲に比べて隆起しており、中央部が円錐形にくりぬかれた凹形状であることを特徴とする請求項1記載の光源ユニット。
【請求項3】
前記凸部頂点と前記LEDの発光表面との間の距離が、前記凸部の後方焦点距離より短いことを特徴とする請求項2記載の光源ユニット。
【請求項4】
前記凹部は底面の径が前記凸部と同一で、前記凹部中央の深さは前記凹部の周縁から隆起している頂上までの高さよりも短いことを特徴とする請求項3記載の光源ユニット。
【請求項5】
前記LED基板の導電パターン上に個々の前記LED実装部と並列してチップ抵抗実装部を備えていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の光源ユニット。
【請求項6】
前記レンズアレイを着脱可能とすることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の光源ユニット。
【請求項7】
前記透光性光拡散部材は中央で凸となる断面湾曲形状であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の光源ユニット。
【請求項8】
前記レンズアレイまたは前記透光性拡散部材の表面または表面近傍に光学特性変換部材を備え持つことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の光源ユニット。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれかに記載の光源ユニットの発光面を囲むように内側が拡散または鏡面状の外側反射鏡体を備えたことを特徴とする照明装置。
【請求項1】
光源であるLEDが実装されたLED基板と、
前記LED基板の発光面側から間隙を有して配置され、前記LED基板の前記LEDの実装部と対向する位置に設けられた前記LEDの光を集光するレンズ機能部を配列したレンズアレイと、
前記LED基板の発光面側から前記レンズアレイよりも遠方に配置され、前記レンズ機能部を通過した光を透過し拡散する透光性光拡散部材と、を備え、
前記レンズ機能部は、前記レンズアレイ上の前記LED実装基板と対向する面に設けられ、前記LEDより径の大きい断面が湾曲形状の凸部と、前記レンズアレイ上の前記透光性光拡散部材と対向する面に設けられ、前記凸部と中心が同軸であるすり鉢状の凹部から構成されたことを特徴とする光源ユニット。
【請求項2】
前記凹部は周縁部が周囲に比べて隆起しており、中央部が円錐形にくりぬかれた凹形状であることを特徴とする請求項1記載の光源ユニット。
【請求項3】
前記凸部頂点と前記LEDの発光表面との間の距離が、前記凸部の後方焦点距離より短いことを特徴とする請求項2記載の光源ユニット。
【請求項4】
前記凹部は底面の径が前記凸部と同一で、前記凹部中央の深さは前記凹部の周縁から隆起している頂上までの高さよりも短いことを特徴とする請求項3記載の光源ユニット。
【請求項5】
前記LED基板の導電パターン上に個々の前記LED実装部と並列してチップ抵抗実装部を備えていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の光源ユニット。
【請求項6】
前記レンズアレイを着脱可能とすることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の光源ユニット。
【請求項7】
前記透光性光拡散部材は中央で凸となる断面湾曲形状であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の光源ユニット。
【請求項8】
前記レンズアレイまたは前記透光性拡散部材の表面または表面近傍に光学特性変換部材を備え持つことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の光源ユニット。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれかに記載の光源ユニットの発光面を囲むように内側が拡散または鏡面状の外側反射鏡体を備えたことを特徴とする照明装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
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【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【公開番号】特開2012−226983(P2012−226983A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93680(P2011−93680)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(390014546)三菱電機照明株式会社 (585)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(390014546)三菱電機照明株式会社 (585)
【Fターム(参考)】
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