説明

光源装置、画像読み取り装置および画像形成装置

【課題】 所望の照度分布や配光を得ることができる光源装置を提供する。
【解決手段】 冷陰極管25とLEDアレイ26とを備えた光源を具備する画像読み取り装置において、LEDアレイ26は、冷陰極管25の照度特性分布を補間するように、個々のLEDの照度分布を設定する。照度分布の設定はLEDの大きさ、配列間隔、輝度、分光特性などの調整によって行われ、これらの調整対象を組み合わせることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿画像を読み取る画像読み取り装置、この画像読み取り装置に用いられる光源装置並びにの画像読み取り装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、スキャナあるいはファクシミリのような画像形成装置においては、原稿の画像情報を電気信号に変換するために、微細な光電変換素子を多数直線状にかつ等間隔に配置したラインセンサに画像を光学的に投影し、原稿を光電変換素子の配列と直交する方向に走査しながら順次電気信号を得るようになっている。ラインセンサに原稿を投影する方式としては、原稿をランプなどの光源で照射し、その反射光を結像レンズなどを介してラインセンサに結像するのが一般的である。光源としては、蛍光灯、ハロゲンランプといった光源が利用されていたが、近年、寿命が比較的長く、安定度の良い冷陰極管に移行してきている。冷陰極管は、先述の光源に比べて、照度が低いという欠点があったが、これも高出力化されてきており、カラースキャナやカラー複写機などにも採用されるようになってきた。一方、半導体素子であるLEDを光源として利用するアイディアも生まれ、実用化されつつあるが、いくつかの欠点も併せ持っている。一つは、照度が著しく低いこと。特に、冷陰極管と比較しても未だなお低いため、読み取りスピードの高速化には、大きな課題となっている。さらに、LEDを主走査方向にいくつもアレイ状に並べたときに各々は、点光源であることからそのつなぎ目のところで照度の落ち込みがあり結果的になめらかな照度分布が得にくいといった課題があった。
【0003】
そこで、例えば特許文献1には、光源としては、有機LEDを採用するとともに、ラインセンサを改良し、固体発光素子と光電変換素子とを透明ガラス基板上で一体化構造としてこの光電変換素子を複数個直線上に形成して配置して、読取装置の小型化を図ることが提案されている。また、特許文献2には、透過原稿をそれぞれ波長の異なる発光手段によって照射することが提案され、特許文献3には、LED光源において、LEDの搭載個数を減らすことができ、かつ良好な光出力特性が得られるようにした発明が開示されている。さらに、特許文献4には、光源を少なくとも1つの色冷陰極管とLEDで構成したハイブリット光源が提案されている。
【特許文献1】特開2000−106617号公報
【特許文献2】特開2000−253284号公報
【特許文献3】特開2001−339577号公報
【特許文献4】特開2000−32219号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、LEDアレイ光源の照度、照度分布、あるいは配光について、それぞれ目標とする特性を単独で得るためには、製造上、技術上の課題があり、実現できたとしてもコスト的に不利なものであった。
【0005】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、ハイブリッド光源を使用し、低コストで、所望の照度分布および配光特性を得ることができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、第1の手段は、光源として冷陰極管とLEDアレイとを有する光源装置において、前記冷陰極管光源の照度特性分布を補間するように前記LEDアレイの照度分布が設定されていることを特徴とする。
【0007】
第2の手段は、第1の手段において、前記LEDアレイの照度分布は、前記LEDアレイの個々のLEDの大きさを調整することによって設定されていることを特徴とする。
【0008】
第3の手段は、第1の手段において、前記LEDアレイの照度分布は、前記LEDアレイの個々のLEDの配列間隔を調整することによって設定されていることを特徴とする。
【0009】
第4の手段は、第1の手段において、前記LEDアレイの照度分布は、前記LEDアレイの個々のLEDの輝度を調整することによって設定されていることを特徴とする。
【0010】
第5の手段は、第1の手段において、前記LEDアレイの照度分布は前記LEDアレイの個々のLEDの分光特性を調整することにより設定されていることを特徴とする。
【0011】
第6の手段は、第1ないし第5のいずれかの手段において、前記冷陰極管および前記LEDアレイがそれぞれ3波長の発光特性を有することを特徴とする。
【0012】
第7の手段は、第1ないし第6のいずれかの手段に係る光源装置を画像読み取り装置が備えていることを特徴とする。
【0013】
第8の手段は、第7の手段に係る画像読み取り装置と、この画像読み取り装置によって読み取られた画像情報に基づいて記録媒体に画像を形成する画像形成手段とを画像形成装置が備えていることを特徴とする。
【0014】
後述の実施の形態において、光源は光源15に、冷陰極管は冷陰極管25に、LEDアレイはLEDアレイ26にそれぞれ対応している。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、所望の照度分布、配光を得ることができ、高画質化を図ることができる。また、冷陰極管光源に要求される仕様を広く取ったり、開発期間を短縮したりすることが可能となり、トータル的なコストダウンも期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0017】
図1は本発明の実施形態に係る画像読み取り装置としてのスキャナの斜視図、図2は図1のスキャナの原稿台部分を示す平面図、図3はシーロスルー方式でADFを使用するときの第1走行体の読み取り位置を示す図、図4はフラットベッド方式で原稿を読み取る際の第1走行体と第2走行体との関係を示す図である。
【0018】
スキャナは、スキャナ本体1と、このスキャナ本体1の上面を覆うカバー部2と、カバー部2に装着されたシートスルー型のADF(自動原稿送り装置)3とから構成されている。スキャナ本体1は、筐体11、原稿台であるコンタクトガラス12と、シートスルーで原稿を読み取る際の読み取り窓13と、シェーディング補正のための基準白板14と、原稿に照射する光源15を備えた第1走行体16と、この第1走行体16からの反射光をCCD基板17に導く第2走行体18とから構成されている。なお、図示していないが、第2走行体17とCCD基板17との間にはレンズブロックからなる集光レンズが配設されている。
【0019】
第1走行体16は、原稿を照射する光源15と、原稿からの反射光を第2走行体18に送る第1のミラー21とを備えている。この第1走行体16は、コンタクトガラス12で原稿を読み取るときは、コンタクトガラス12上に固定された原稿に対し、図示しない駆動モータによって駆動されて副走査方向に移動して原稿をスキャンし、ADF3を利用して複数枚の原稿をシートスルー方式で連続して読み取る時は、図3に示すように、読み取り窓13の下に固定され、読み取り窓13上を通過する原稿を読み取ることによりスキャンを行う。このとき原稿は矢印Aの方向に引き出される。
【0020】
第2走行体18は第2および第3のミラー22,23を備え、これらのミラー22,23によって第1走行体16からの反射光がCCD基板17に導かれ、CCD基板17で電気信号に変換される。
【0021】
光源15は、図4に示すように、冷陰極管25とLEDアレイ26とから構成されている。これら冷陰極管25とLEDアレイ26とは第1走行体16の上部に配設されている。冷陰極管25には光開口部25aが斜めに開けられている。これら冷陰極管25とLEDアレイ26とは、シートスルー方式の場合には、必ずしも同一の走行体上に各光源を配置する必要はなく、例えば、第1走行体16には冷陰極管25を、そして筐体11にLEDアレイ26をというように分割して配置してもよい。光源15から原稿に照射された光は、反射光として第一走行体16の第1のミラー21に導かれる。第1のミラー21に落ちた鏡像は、さらに第2走行体18の第2および第3のミラー22,23で反射を繰り返し、CCD基板17のCCDに結像するレンズ(図示しない)に導かれる。19は読み取り窓13における背景板である。
【0022】
このように、光源15は冷陰極管25とLEDアレイ26と組み合わせることにより、それぞれの短所を補い、長所を採用することができる。すなわち、冷陰極管25の光源とLEDアレイ26の光源とを比較してみると、LEDアレイ26は冷陰極管25に比較して軽量、低消費電力(低電圧駆動)、小型化可能(レイアウトの自由度大)、長寿命、点灯立ち上がり時間短、デザインに自由度があるなどの長所がある反面、低照度で照度分布のばらつきが大きいという短所がある。一方、冷陰極管はLEDアレイに比較して、ガラスのため重く、消費電力大(高電圧駆動)、ノイズも大きく、レイアウトの自由度小、寿命は普通で、立ち上がり時間長(暗黒始動特性)、デザインの自由度小などの短所があるが、照度は高く、照度の分布はなめらかであると言う長所を備えている。そこで、このようなそれぞれの短所を補い、長所を採用することにハイブリット化のメリットが存在する。そのため本発明では、冷陰極管の照度分布や分光分布などの諸特性に応じて、アレイ状のLED光源を構成する個々のLEDの特性を組み合わせることによって短所を補完し、理想的な光源特性を得ている。
【0023】
図5は冷陰極管とLEDアレイの主走査方向の照度分布を示すグラフである。光源は一般的な照度分布としてフラットな分布が好ましい。しかしながら、冷陰極管は、例えば図5に示すように、主走査方向に沿って見ると、両端部の照度が中央部の照度より低い場合がある。そこで、このような照度分布の冷陰極管25に対しては、LEDアレイ26は長手方向両端部の照度を高くして、光源15全体ではその長手方向すなわち主走査方向の照度がほぼ同じになるようにLEDアレイ26を構成する個々のLEDの形状や配置を変えることによって、ハイブリッド光源のメリットを引き出すようにしている。
【0024】
図6はLEDアレイの形状や間隔を主走査方向に沿って変える一例を示す図である。この図6の実施例では、LEDアレイ26の主走査方向の照度をほぼ同じにするため、個々のLED26aの大きさを
1)両端部では大きくする。
2)個々のLED26aの配置間隔を変えて照度を落とす。
3)あるいは単品LED26aの形状を変えて照度を調整する。
という3種類の具体的な方法を示している。これにより図7に示すような、輝度分布を有するLEDアレイが提供される。図6では3種類の照度調整の方法を示しているが、3種類全てを使用する必要がないことは勿論である。
【0025】
図6の実施例では、個々のLEDの形状を変更や組み合わせることにより、任意の照度分布を得ているが、その場合、LEDが個別にバラバラな形状の場合、構造上アレイとして整列させにくい欠点がある。そこで、図7に示す実施例においては、個々のLEDの形状は、統一化した上で、個々のLEDの輝度を変えることにより任意の照度分布を得ている。
【0026】
図7はLEDアレイの輝度を主走査方向に沿って変える一例を示す図である。すなわち、LEDには、形状が同じであっても集光レンズの透過率やチップの出力が異なって輝度が違うものが存在する。この実施例では、そのようなLEDを組み合わせてアレイ状にし補正効果を狙ったものである。また、LEDを個々にデューティー制御(発光間隔を制御)することにより、全く同じLEDの組み合わせであってもそれぞれの輝度を変更することも可能である。
【0027】
上述した各実施例ではまた、ここでは、主走査方向での照度分布を例に説明したが、副走査方向にも照度分布は存在し、この場合の補正にも有効である。
【0028】
画像読み取り装置には原稿画像をカラーで読み取る形式のものも提供されている。カラー読み取りでは、照度だけではなく、色度(分光)も重要な特性の一つである。一般的には、三原色であるR,G,Bそれぞれの波長を発光することで、カラーの読み取りを実現している。冷陰極管では、それぞれの波長に対応した蛍光体を塗布しており、この塗布にムラがあったり、所望の分光が得にくい場合に、上述した各実施例と同様に、LEDアレイ26の光源で補完することにより必要な分光を得ることが可能である。
【0029】
図8はカラー用の画像読み取り装置における光源装置のカラー分光を示すグラフで、(a)は冷陰極管の分光状態を、(b)はLEDアレイの分光状態を示している。図8の(a)から判るように、冷陰極管では、BのレベルがRやGのレベルに比べて低いレベルにある。そこで、Bのレベルを上げて全体の分光レベルを平均化させるため、三原色用のLEDの発光波長を図8の(b)に示すようにすることによって補完することができる。さらに、個々のLEDの分光を細かく変化させることにより、冷陰極管の分光が均一でない場合にも補完が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る画像読み取り装置を備えたスキャナの一実施の形態の外観を示す斜視図である。
【図2】図1のスキャナの原稿台部分を示す平面図である。
【図3】ADF使用時における第1走行体の固定位置を説明するための図である。
【図4】第1走行体と第2走行体との関係を説明するための図である。
【図5】冷陰極管とLEDアレイの主走査方向の照度分布を示すグラフである。
【図6】LEDアレイの形状や間隔を主走査方向に沿って変更する例を示す図である。
【図7】LEDアレイの輝度を主走査方向に沿って変える一例を示す図である。
【図8】カラー用の画像読み取り装置における光源装置のカラー分光を示すグラフで、(a)は冷陰極管の分光状態を、(b)はLEDアレイの分光状態をそれぞれ示す。
【符号の説明】
【0031】
1 スキャナ本体
11 筐体
12 コンタクトガラス
13 読み取り窓13
15 光源
16 第1走行体1
17 CCD基板
18 第2走行体18
25 冷陰極管
25a 光開口部
26 LEDアレイ
26a LED

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源として冷陰極管とLEDアレイとを有する光源装置において、
前記冷陰極管光源の照度特性分布を補間するように前記LEDアレイの照度分布が設定されていることを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記LEDアレイの照度分布は、前記LEDアレイの個々のLEDの大きさを調整することによって設定されていることを特徴とする請求項1記載の光源装置。
【請求項3】
前記LEDアレイの照度分布は、前記LEDアレイの個々のLEDの配列間隔を調整することによって設定されていることを特徴とする請求項1記載の光源装置。
【請求項4】
前記LEDアレイの照度分布は、前記LEDアレイの個々のLEDの輝度を調整することによって設定されていることを特徴とする請求項1記載の光源装置。
【請求項5】
前記LEDアレイの照度分布は前記LEDアレイの個々のLEDの分光特性を調整することにより設定されていることを特徴とする請求項1記載の光源装置。
【請求項6】
前記冷陰極管および前記LEDアレイがそれぞれ3波長の発光特性を有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の光源装置を備えていることを特徴とする画像読み取り装置。
【請求項8】
請求項7記載の画像読み取り装置と、
この画像読み取り装置によって読み取られた画像情報に基づいて記録媒体に画像を形成する画像形成手段と、
を備えていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−60407(P2006−60407A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−238616(P2004−238616)
【出願日】平成16年8月18日(2004.8.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】