説明

光源装置および光走査装置

【課題】 光源装置のアパーチャを構成する部材で発生する虞のあるサージ電流の影響により発光素子や回路部品の耐久性を損なうことのないようにする。
【解決手段】 光源装置120は、半導体レーザ(発光素子)121と、カップリングレンズ122と、ホルダ(保持部材)123と、回路基板124と、アパーチャを有する遮蔽部材125とを備える。ホルダ123は、半導体レーザ121とカップリングレンズ122とを保持し、遮蔽部材125は、回路基板124の接地部124Bに電気的に接続している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置および光走査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、レーザプリンタなどの画像形成装置には、感光体上に静電潜像を形成するための光学系の一部として、光走査装置が設けられている。光走査装置は、光源装置と、当該光源装置から出射された光ビームを偏向させて感光体表面(被走査面)を走査させる偏向器と、前記偏光器により偏向された光ビームを被走査面に結像させる結像光学系とを主に備える。
【0003】
このような光走査装置の光源装置としては、発光源としての半導体レーザ(発光素子)と、当該半導体レーザより出射されるレーザ光(光ビーム)を集光するコリメートレンズ(カップリングレンズ)と、そのコリメートレンズを通過したレーザ光を規制するアパーチャと、半導体レーザの制御駆動回路部とを有するユニットとして提供されるものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−177176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の光源装置において、発光素子や制御駆動回路部は接地されているが、アパーチャを有する金属性の板金部材は、接地されることなく電気的に浮遊した状態で配置されることがある。その場合、アパーチャを構成する部材で発生したサージ電流の影響が発光素子や制御駆動回路部に誘導されてしまう虞がある。その結果、発光素子や回路部品等が徐々に破壊されていくことになり、光源装置の寿命が短くなるという問題があった。
【0006】
この問題に着目した本発明者は、アパーチャを構成する部材で発生する虞のあるサージ電流によって静電気に弱い発光素子や回路部品の耐久性が損なわれることのない光源装置およびそのような光源装置を備えた光走査装置を提供しようとする研究の過程で本発明を創案するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様としての光源装置は、発光素子と、前記発光素子から出射される光ビームを集光するカップリングレンズと、前記発光素子と前記カップリングレンズとを保持する保持部材と、前記発光素子を駆動する駆動部を有する回路基板と、前記カップリングレンズを通過した光ビームを規制するアパーチャを有する遮蔽部材とを備えた光源装置であって、前記遮蔽部材は、前記回路基板の接地部に電気的に接続していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
前記光源装置によれば、アパーチャを有する遮蔽部材が回路基板の接地部に電気的に接続しているので、発光素子の周辺(アパーチャ側)が接地電位でシールドされることになり、電磁環境適合性(EMC)を高めることができる。したがって、発光素子や回路部品の耐久性が向上し、光源装置、ひいてはこのような光源装置を備える光走査装置の寿命を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】画像形成装置の一例としてのレーザプリンタの断面図である。
【図2】光走査装置の平面図である。
【図3】光走査装置の断面図である。
【図4】光源装置の分解斜視図である。
【図5】(a)は遮蔽部材を取り外して示す光源装置内部の平面図、(b)は図2に示した光源装置の縦断面図である。
【図6】ホルダ(保持部材)の保護部形状を説明するための前面図である。
【図7】ホルダのLD取付部側から見た斜視図である。
【図8】(a)は光源装置のアパーチャ側から見た斜視図、(b)は光源装置の回路基板背面側から見た斜視図である。
【図9】カップリングレンズをホルダに位置決めし固定する工程を示す斜視図である。
【図10】ホルダに保持された半導体レーザ(発光素子)と回路基板とを電気的に接続する工程を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。以下の説明では、まず、画像形成装置の一例としてのレーザプリンタ1の概略構成について説明した後、光走査装置100および光源装置120の特徴部分に係る構成についてそれぞれ詳細に説明する。
【0011】
<レーザプリンタの概略構成>
図1に示すように、レーザプリンタ1は、本体ケーシング2内に、用紙Pを供給する給紙部3と、光走査装置100と、用紙P上にトナー像を転写するプロセスカートリッジ5と、用紙P上に転写されたトナー像を熱定着させる定着装置8とを主に備えている。
【0012】
なお、以下、レーザプリンタ1の構成要素の配置や作用を説明するにあたり、方向は、レーザプリンタ1を使用するユーザを基準にした方向により表示するものとする。すなわち、図1における右側を「前」、左側を「後」とし、手前側を「左」、奥側を「右」とする。また、図1における上下方向を「上下」とする。
【0013】
給紙部3は、本体ケーシング2内の下部に設けられ、用紙Pを収容する給紙トレイ31と、用紙Pの前側を持ち上げる用紙押圧板32と、給紙ローラ33と、給紙パッド34と、紙粉取りローラ35,36と、レジストローラ37とを主に備えている。給紙トレイ31内の用紙Pは、用紙押圧板32によって給紙ローラ33に寄せられ、給紙ローラ33と給紙パッド34によって1枚ずつ分離され、紙粉取りローラ35,36およびレジストローラ37を通ってプロセスカートリッジ5に向けて搬送される。
【0014】
光走査装置100は、本体ケーシング2内の上部に配置され、画像データに基づくレーザ光(光ビーム:鎖線参照)を出射し、感光体の一例としての感光体ドラム61の表面を露光して静電潜像を形成するように構成されている。光走査装置100の詳細な構成については後述する。
【0015】
プロセスカートリッジ5は、光走査装置100の下方に配置され、本体ケーシング2に設けられたフロントカバー21を開いたときにできる開口から本体ケーシング2に対して着脱可能に装着される構成となっている。このプロセスカートリッジ5は、ドラムユニット6と、現像ユニット7とから構成されている。
【0016】
ドラムユニット6は、ドラムケース60内に、感光体ドラム61と、帯電器62と、転写ローラ63とを主に備えている。また、現像ユニット7は、ドラムユニット6に対して着脱可能に装着される構成となっており、現像ケース70内に、現像ローラ71と、供給ローラ72と、層厚規制ブレード73と、トナーを収容するトナー収容部74とを主に備えている。
【0017】
プロセスカートリッジ5では、感光体ドラム61の表面が、帯電器62により一様に帯電された後、光走査装置100からのレーザ光の高速走査によって露光されることで、感光体ドラム61上に画像データに基づく静電潜像が形成される。また、トナー収容部74内のトナーは、供給ローラ72を介して現像ローラ71に供給され、現像ローラ71と層厚規制ブレード73との間に進入して一定厚さの薄層として現像ローラ71上に担持される。
【0018】
現像ローラ71上に担持されたトナーは、現像ローラ71から感光体ドラム61上に形成された静電潜像に供給される。これにより、静電潜像が可視像化され、感光体ドラム61上にトナー像が形成される。その後、感光体ドラム61と転写ローラ63との間を用紙Pが搬送されることで感光体ドラム61上のトナー像が用紙P上に転写される。
【0019】
定着装置8は、プロセスカートリッジ5の後方に設けられ、加熱ローラ81と、加熱ローラ81との間で用紙Pを挟持する加圧ローラ82と、定着後の用紙Pを搬送する搬送ローラ83とを主に備えている。用紙P上に転写されたトナーは、加熱ローラ81と加圧ローラ82との間を用紙Pが搬送されることで熱定着される。トナー像が熱定着された用紙Pは、搬送ローラ83によって排出経路23に搬送され、排出経路23から排出ローラ24によって排紙トレイ22上に排出される。
【0020】
<光走査装置の詳細構成>
次に、光走査装置100の詳細な構成について説明する。図2および図3に示すように、光走査装置100は、樹脂製のスキャナフレーム110内に、光源装置120と、光源装置から出射されたレーザ光(光ビーム)を偏向させる偏向器の一例としてのポリゴンミラー130と、ポリゴンミラー130により偏向されたレーザ光を感光体ドラム61の表面(被走査面)に結像させる結像光学系とを主に備えている。本実施形態では、結像光学系は、fθレンズ150と、シリンドリカルレンズ160と、ミラー170,180とから構成されている。
【0021】
光源装置120は、感光体ドラム61の表面を画像データに従って露光するためのレーザ光(光ビーム)を出射する装置である。光源装置120の詳細な構成については後述する。
【0022】
ポリゴンミラー130は、光源装置120の下流側に配置され、六角柱の各側面に反射ミラーが形成されている。このポリゴンミラー130は、高速回転しながら光源装置120からのレーザ光を反射して主走査方向に偏向および等角速度で走査させる。
【0023】
図3に示すように、fθレンズ150は、ポリゴンミラー130の下流側に配置され、ポリゴンミラー130により偏向および走査されたレーザ光が通過する走査レンズである。このfθレンズ150は、ポリゴンミラー130により等角速度で走査されたレーザ光を等速度で走査するように変換する。
【0024】
ミラー170は、fθレンズ150の下流側に配置され、fθレンズ150を通過したレーザ光を反射して、レーザ光の光路を折り返してシリンドリカルレンズ160に向けるものである。
【0025】
シリンドリカルレンズ160は、ミラー170の下流側であって、かつ、fθレンズ150の上方に配置され、ミラー170で反射されたレーザ光が通過する走査レンズである。このシリンドリカルレンズ160は、レーザ光を屈折させて副走査方向に収束する。
【0026】
ミラー180は、シリンドリカルレンズ160の下流側に配置され、シリンドリカルレンズ160を通過したレーザ光を反射して、感光体ドラム61(図1参照)に向けるものである。詳細には、ミラー180で反射されたレーザ光は、スキャナフレーム110に取り付けられたガラス板190を通過して感光体ドラム61の表面で高速走査される。
【0027】
スキャナフレーム110は、樹脂により略箱状に形成されたフレームであり、光源装置120(図2参照)、fθレンズ150、シリンドリカルレンズ160およびミラー170,180などが固定される。スキャナフレーム110は、金属フレーム200に取り付けられている。
【0028】
金属フレーム200は、金属板を折り曲げて形成したフレームである。樹脂製のスキャナフレーム110は、この金属フレーム200に取り付けられることで補強される。この金属フレーム200が本体ケーシング2に取り付けられることで、光走査装置100が本体ケーシング2内の上部に位置決めされ、固定されている(図1参照)。
【0029】
図1に示すように、本体ケーシング2は、光走査装置100が配置された金属フレーム200と、感光体ドラム61とを支持している。なお、感光体ドラム61は、装着されたプロセスカートリッジ5のケース(ドラムケース60)を介して、本体ケーシング2内の光走査装置100の下方に位置決めされた状態で支持されている。
【0030】
<光源装置の詳細構成>
次に、光源装置120の詳細な構成について説明する。図4および図5に示すように、光源装置120は、発光素子の一例としての半導体レーザ121と、カップリングレンズ122と、半導体レーザ121とカップリングレンズ122とを保持する保持部材の一例としてのホルダ123と、回路基板124と、遮蔽部材125とを主に備えている。
【0031】
なお、以下の説明においては、適宜、光源装置120から出射されるレーザ光の進行方向に対してその下流側を「前」、上流側を「後」とし、上・下・左・右については、図7に示した方向を基準とする。
【0032】
半導体レーザ121は、半導体のpn接合にキャリアを注入させて発光させる公知のレーザ光源(レーザダイオード:LD)である。半導体レーザ121は、回路基板124に実装された駆動部124Aに電気的に接続されている。駆動部124Aが、形成すべき画像データに基づく発光制御信号を入力されると、その制御信号に従って、半導体レーザ121を駆動する。
【0033】
カップリングレンズ122は、半導体レーザ121から出射される発散性のレーザ光(光ビーム)を平行もしくは略平行な光束に集光し、以降(下流)の光学系にカップリングする公知のレンズ(コリメートレンズ)である。カップリングレンズ122を通過したレーザ光は、後述する遮蔽部材125に形成されたアパーチャ126(図8(a)参照)を通過するときに、その光線束断面の範囲を規制されてポリゴンミラー130(図2参照)に向かう。
【0034】
図4〜図7に示すように、ホルダ123は、その後端部に半導体レーザ121を、前端部にカップリングレンズ122を、アラインメント調整された状態で保持するように形成された部材であり、樹脂(絶縁体)で一体成形されている。具体的には、ホルダ123は、その本体部が下側で開口した略矩形の箱形となっており、前側にカップリングレンズが取り付けられるレンズ取付部が、後側に半導体レーザが取り付けられるLD取付部が形成されている。
【0035】
ホルダ123のLD取付部およびレンズ取付部には、それぞれ、開口123Cおよび開口123Fが設けられている。このため、半導体レーザ121から出射されたレーザ光は、開口123Cから、ホルダ123の内側を通って、開口123Fを抜け、カップリングレンズ122に入射するようになっている。また、ホルダ123の左右の側壁部には、ホルダ123をスキャナフレーム110に取り付けるためのねじ挿通用の穴を有する締結部123Dが左右に突出するように形成されている。
【0036】
ホルダ123の後端部(LD取付部)には、図7に示すように、半導体レーザ121の発光面側端部をホルダ123の後方から嵌入可能な形状のソケット部123Aが形成されている。ソケット部123Aの開口周縁部には、上下2箇所に、接着剤を保持するための切欠部123Bが設けられている。LD取付部の開口123Cは、ソケット部123Aの底部(前方)中央に形成されている。
【0037】
ホルダ123の前端部(レンズ取付部)には、図4および図5に示すように、カップリングレンズ122がその半導体レーザ121側の面の周縁部で固定(接着)される固定面123Eと、その固定面123Eの周囲に間隔をおいてカップリングレンズ122を囲むように配置された保護部123Gとが形成されている。なお、図5、図6および後で参照する図9、図10において、カップリングレンズ122を接着する接着剤は、実際の寸法比率によらず誇張して示した。
【0038】
固定面123Eは、光軸方向においてカップリングレンズ122の半導体レーザ121側の面と対向する面である。具体的には、開口123Fの縁部に隣接する左右2箇所(光軸に対して対称な位置)に前方に膨出する膨出部が形成されており、当該膨出部の前端に形成された平面部が固定面123Eとなる。2つの固定面123Eの間隔は、固定面123Eに接着されるカップリングレンズ122の部分が半導体レーザ121から出射されるレーザ光が透過する領域の外側となるような大きさとなっている。
【0039】
保護部123Gは、カップリングレンズ122が取り付けられるとその側面の周囲を部分的に覆う位置に2つ設けられている。保護部123Gは、カップリングレンズ122の光軸に直交する方向においてカップリングレンズ122から離間し、かつカップリングレンズ122のレーザ光の出射側の面よりも前方(レーザ光の進行方向下流側)に突出している。
【0040】
図6に示すように、カップリングレンズ122の側面と保護部123Gとの間の距離L1は、カップリングレンズ122の半径Rよりも大きい(L1>R)。これら2つの保護部123Gはそれぞれカップリングレンズ122の光軸方向に見て略コの字形に形成されている。なお、突出する保護部123Gの前端部は、カップリングレンズ122の光軸に直交する平面内にあり、この前端部を下向きにしたときに、当該前端部を支持脚部として、ホルダ123を水平面上に安定的に載置可能な形状とされている。
【0041】
本実施形態では、保護部123Gの前端部を構成する平面上に、小突起123Kが設けられている。これは、後述する半導体レーザ121のリードピンに回路基板124をはんだ付けする工程において、対応する位置決め孔が設けられた専用作業台にホルダ123を位置決め配置するために利用される。なお、この小突起123Kは、そのような専用作業台を用いてはんだ付けする場合のみに設けられるオプションである。小突起123Kは、ホルダ123の「支持脚部」としての機能を有する端部を構成するものではない。
【0042】
2つの保護部123Gの間には、カップリングレンズ122の側面を露出させる開放部123H(図5(a)参照)が形成されている。開放部123Hは、カップリングレンズ122をホルダ123の固定面123Eに固定する際、後述するチャック300(図9参照)が、カップリングレンズ122の側面を把持して、固定面123E近くの所定位置に位置決めできるようにするためのものである。
【0043】
そのため、開放部123Hに隔てられた保護部123G間の距離L2は、カップリングレンズ122の光軸方向と直交する方向における位置決め時にチャック300と干渉しないように、カップリングレンズ122の直径Dよりもやや大きくなるよう設計されている(L2>D)。特に、本実施形態において、開放部123Hは、カップリングレンズ122の半導体レーザ121側の面よりも後方まで(半導体レーザ121側に)延びているので、チャック300によるカップリングレンズ122の光軸方向の位置決めが保護部123Gに妨げられることなく容易かつ円滑に実施可能である。
【0044】
回路基板124の表面には、図4、図5、図8および図10に示すように、半導体レーザ121を駆動する駆動部(ドライバチップ)124Aなどの回路や素子が実装されている。半導体レーザ121は、この回路基板124にはんだ付け(図10の符号124c参照)されることで、駆動部124Aに電気的に接続されている。また、回路基板124の背面側の遮蔽部材125に係合する2箇所の切欠部周りが接地部124Bとなっている。
【0045】
遮蔽部材125は、金属板をプレス加工して形成したもので、図5(b)および図8に示すように、ホルダ123の前端部を覆うように延在する、アパーチャ126が設けられた第1の壁部125Aと、第1の壁部125Aの上端部からカップリングレンズ122と半導体レーザ121を覆うように延在する第2の壁部125Bと、第2の壁部125Bの後端部から、回路基板124の背面(回路や素子が実装される面の反対側の面)の一部(少なくとも半導体レーザが取り付けられた箇所を含む略中央部分)を覆うように延在する第3の壁部125Cとを有する。
【0046】
また、遮蔽部材125は、第2の壁部125Bの左右の縁部における前後2箇所からホルダ123の側壁に沿って下方に延在する4つの側帯部125Dを有する。側帯部125Dには、それぞれホルダ123の側壁部に形成された4つの嵌合突起に対応する位置に開口部が設けられており、これを利用して、遮蔽部材125がホルダ123にスナップ嵌合され、固定される。
【0047】
遮蔽部材125は、その後側の側帯部125Dの後方2箇所で、回路基板124の切欠部に係合し、回路基板124の背面側に設けられた接地部124Bにはんだ付けされ、固定される。
【0048】
<光源装置の製造プロセス>
次に、本実施形態による光源装置120の製造プロセスについて説明する。
(工程1) 加熱溶融した樹脂材料を専用の射出成形金型の内部に射出することでホルダ123を一体成形する。
【0049】
(工程2) 板金をプレス機械にかけ、剪断、打ち抜き、曲げ等の加工をすることで遮蔽部材125を成形する。
【0050】
(工程3) ホルダ123の後端部(LD取付部)に形成されたソケット部123Aに、半導体レーザ121を嵌入し、ソケット部123Aの切欠部123Bに充填した接着剤により固定する。
【0051】
(工程4) ホルダ123の前端部(レンズ取付部)に形成された固定面123Eに紫外線硬化樹脂からなる接着剤を塗布し、チャック300で把持したカップリングレンズ122を位置決めする。位置決め完了後、図9に示すように、紫外線照射器400により紫外線(UV)を照射して接着剤を硬化させ、硬化完了後、チャック300をカップリングレンズ122から退避させる。
【0052】
(工程5) 図10に示すように、ホルダ123をその後端部側を上向きにして作業台上に載置し回路基板124を半導体レーザ121のリードピンにはんだ付けする(符号124c参照)。なお、図示した実施形態においては、ホルダ123の前端部に形成された小突起123Kが作業台上に形成された位置決め孔に嵌入することで、ホルダ123が作業台上でずれずに安定的に載置される。
【0053】
(工程6) 半導体レーザ121が回路基板124にはんだ付けされた状態で、ホルダ123に、側帯部125Dを利用して、遮蔽部材125をスナップ嵌合して固定する。
【0054】
(工程7) 遮蔽部材125を、回路基板124に、図8(b)に示した2箇所の接地部124Bで、はんだ付けする。これによって、遮蔽部材125が回路基板124の接地部124Bに電気的に接続されるとともに物理的に固定される。その結果、ホルダ123とスナップ嵌合された遮蔽部材125を介して回路基板124がホルダ123に間接的に固定されることになる。
【0055】
<作用と効果>
本実施形態の特徴および作用とそれによって得られる主な利点(効果)について以下に説明する。
1.カップリングレンズのホルダへの取り付け構造
本実施形態によれば、ホルダ123は、カップリングレンズ122の光軸方向においてカップリングレンズ122の半導体レーザ121側の面と対向する固定面123Eを有し、この固定面123Eにカップリングレンズ122の半導体レーザ121側の面の一部が接着されている。
【0056】
これにより、カップリングレンズ122の半導体レーザ121側の面が、光軸方向において対向するホルダ123の固定面123Eに接着されるので、接着剤の硬化収縮によるカップリングレンズ122の変位は主としてカップリングレンズ122の光軸方向となり、半導体レーザ121とカップリングレンズ122の光軸のずれが抑制される。したがって、レンズの側面を接着する従来技術の取り付け構造に比べて、カップリングレンズ122のより正確な位置決めが可能となる。
【0057】
なお、本実施形態では、カップリングレンズ122のホルダ123への接着に、紫外線硬化樹脂を用いている。紫外線硬化樹脂は、硬化までの時間が短いので、アラインメント調整済みの状態でレンズを保持する時間を短縮できる。また、瞬間接着剤にみられるような白化現象がなく、紫外線を当てない限り硬化しないので調整前に塗布することができる。そのため、工程設計上の自由度が高いという利点がある。
【0058】
また、本実施形態によれば、接着剤を塗布する固定面123Eが、カップリングレンズ122の光軸方向からみて対称な2箇所に設定されているので、レンズの側面の一方の側にのみ接着剤を塗布する従来技術の取り付け構造に比べて、さらに光軸のずれを抑制することができる。
【0059】
接着剤を塗布する位置は、光硬化樹脂の硬化収縮時にカップリングレンズ122に作用する力の合力がカップリングレンズ122の光軸に直交する面において釣り合うように設定するのが好ましい。したがって、光硬化樹脂がカップリングレンズ122の光軸方向から見て回転対称となる複数の位置に塗布される構成とするのが、位置決め精度の観点から有利であり、本実施形態の構成はその最もシンプルな形態を例示するものである。
【0060】
なお、本実施形態は、カップリングレンズ122のホルダ123(固定面123E)に接着される部分として、カップリングレンズ122の発光素子(半導体レーザ121)側の面における、光ビーム(レーザ光)が透過する領域の外側を有効利用しているので、レンズの機能を損なうことなく実現可能である。
【0061】
2.ホルダのレンズ取付部保護構造
従来の光源装置では、発光素子を保持したホルダにカップリングレンズをアラインメント調整して固定する際、発光素子を駆動するための回路基板を先にホルダに取り付け、発光素子にはんだ付けしていた。しかし、この方式では、発光素子単品の特性検査とアラインメント調整を同時に実施することができなかった。本実施形態によれば、ホルダ123にカップリングレンズ122をアラインメント調整して固定した後に回路基板124を取り付けることができるので、発光素子単品の特性検査をアラインメント調整時に実施することができる。
【0062】
本実施形態のようにカップリングレンズ122を、鏡筒などを介さず直接ホルダ123に固定する場合、アラインメント調整後のカップリングレンズ122が、ホルダ前端側でむきだしとなり、回路基板124をホルダ後端側の半導体レーザ121にはんだ付けする作業がやりにくくなることが問題となる。本実施形態では、ホルダ123が、カップリングレンズ122の光軸に直交する方向においてカップリングレンズ122から離間し、かつ、カップリングレンズ122の光ビーム出射側の面よりも光ビーム進行方向下流側に突出する保護部123Gを有するので、カップリングレンズ122がむきだしとならない。
【0063】
さらに、本実施形態によれば、図10に示すように、カップリングレンズ122の光軸方向に延在する保護部123Gの半導体レーザ121から遠い方の端部が、カップリングレンズ122の光軸に直交する平面内にあって、保護部123Gが、発光素子(半導体レーザ121)側の端部を上向きにしてホルダ123を水平面上に載置したときの支持脚部となるよう構成されている。それによって、半導体レーザ121を回路基板124にはんだ付けする際の作業性が向上する。
【0064】
なお、保護部123Gは、カップリングレンズ122の側面の周囲に複数設けられており、隣接する一対の保護部123G間がカップリングレンズ122の側面を露出させる開放部123Hを形成するよう配置されている。開放部123Hは、それによって隔てられた隣接する一対の保護部123G間の距離L2が、カップリングレンズ122の直径Dよりも大きくなるよう設計されているとともに、カップリングレンズ122を越えて発光素子(半導体レーザ121)側に延びている。したがって、チャック300を用いてカップリングレンズ122を位置決めする際に(図9参照)、保護部123Gが邪魔にならない。
【0065】
そして、カップリングレンズ122の側面と保護部123Gとの距離L1が、カップリングレンズ122の半径Rよりも大きくなるよう設計されている。したがって、接着剤を固定部に塗布する作業中に、誤って保護部123Gに接着剤を付着させてしまうことが起こりにくくなる。また、カップリングレンズ122を位置決めした後に紫外線照射器400を用いて紫外線硬化樹脂を硬化させて接着する際に(図9参照)、紫外線照射の邪魔にならない。
【0066】
また、本実施形態において2つ設けられている保護部123Gは、カップリングレンズ122の光軸方向に見てそれぞれ略コの字形に形成されている。これは、回路基板124に半導体レーザ121をはんだ付けする際に、ホルダ123を水平な作業面上により安定的に載置することを可能とする支持脚部として好ましい形状の一例である。
【0067】
3.回路基板のホルダへの取り付け構造
従来の光源装置においてホルダと回路基板との固定に通常用いられるM3程度のねじは、発光素子サイズと比較するとねじ頭が大きく、ホルダ小型化の制約となっていた。また、回路基板の中央付近にねじ穴を設けることにより、回路基板の片面に回路や素子を実装する場合に特に、電磁干渉(EMI)遮蔽性能が損なわれる虞もあった。さらに、ねじの締め付けトルクによるホルダの歪みを防止するためには、ホルダに締め付けトルクに抗するだけの大きな強度が必要とされる。
【0068】
本実施形態によれば、回路基板124は、上述のように遮蔽部材125を介してホルダ123に固定されるので、ホルダ123に回路基板124をねじ止めする必要がない。そのため、本実施形態のようにホルダ123にカップリングレンズ122をアラインメント調整して固定した後に回路基板124を取り付ける場合であっても、ねじの締め付けトルクによるホルダ123の歪みでカップリングレンズ122がずれてしまうことがない。したがって、ねじ止め部を設けること(およびねじの締結トルクの影響を防ぐための構造)によるホルダ123の大型化が回避できる。また、ねじ穴によるEMI遮蔽性能の低下を防ぐことができる。
【0069】
4.遮蔽部材の構造
本実施形態によれば、金属板で形成された遮蔽部材125が、その第1の壁部125A、第2の壁部125B、第3の壁部125Cによって、発光素子(半導体レーザ121)と回路基板124の少なくとも一部を覆うよう構成されている。また、遮蔽部材125は、回路基板124の接地部124Bに固定されている。したがって、静電気に弱い発光素子(半導体レーザ121)や回路基板124の電子部品等がシールドされ、電磁波の影響を受けにくい。
【0070】
特に、従来、アパーチャを有する遮蔽部材が、接地されることなく電気的に浮遊した状態で設置された別部材である場合に、そこで発生されるサージ電流の影響が発光素子や回路基板上の素子等に誘導されることがあった。その結果、発光素子等が徐々に破壊されていくことになり、発光素子等の寿命が短くなるという問題があった。
【0071】
本実施形態によれば、アパーチャ126を有する遮蔽部材125(第1の壁部125A)が、接地部124Bに電気的に接続されているので、サージ電流による発光素子(半導体レーザ121)等の破壊の虞がなくなり、光源装置120の耐久性を向上させることができる。また、遮蔽部材125により、半導体レーザ121および回路基板124の周囲が接地電位でシールドされることになり、電磁環境適合性(EMC)が向上する。
【0072】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。具体的な構成については、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0073】
前記実施形態では、遮蔽部材125が、はんだ付けにより回路基板124の接地部124Bに固定されている例を示した。本発明に適合する固定方法は、この具体例に限定されない。例えば、溶接、ろう付け、導電性接着剤による接着など、固定とともに電気的な接続を実現することのできる他の公知の接合方法を採用することができる。
【0074】
前記実施形態では、カップリングレンズ122と固定面123Eとが紫外線硬化樹脂により接着される例を示した。本発明の実施に利用できる接着方法は、これに限定されず、例えば、可視光領域の光で硬化する樹脂を用いた接着や、他の公知の接着剤を用いた接着によるものであってもよい。
【0075】
前記実施形態では、カップリングレンズ122の保持部材(ホルダ123)に接着される部分が、カップリングレンズ122の光軸方向から見て対称な位置にある2点である場合を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、3点あるいはそれ以上のスポットで接着する構成も実施可能である。その場合、すべての接着スポットは、カップリングレンズ122の光軸方向から見て回転対称となる位置に配置されるのが好ましいが、その限りではない。
【0076】
前記実施形態において示した具体的な保護部123Gの構成(形状やサイズ)は、主に、その製造工程上の利便性の側面から好ましい形態として例示したものに過ぎず、本発明はそれに限定されない。例えば、保護部はひとつだけであってもよく、開放部が設けられていなくてもよい。あるいは、保護部のない構成もあり得る。また、開放部123Hは、位置決めされるカップリングレンズ122の発光素子側の面をチャック300で把持することができる程度に露出するものであればよく、必ずしも、カップリングレンズ122を越えて発光素子側に延在するものでなくてもよい。
【0077】
また、複数の保護部123Gを設ける場合でも、複数ある保護部123Gがすべて同一形状である必要はない。また、そのカップリングレンズ122の光軸方向に見た形状も略コの字形の代わりに、例えば、矩形のホルダ角部から延在するL字形であってもよく、略円弧状であってもよく、必要に応じそれらを適宜組み合わせてもよい。
【0078】
ホルダ123は、その固定面123Eと保護部123Gとを含む一体成形された樹脂部品が好ましいが、本発明はそれに限定されない。例えば、保護部123Gが設けられた構成においては、保護部123Gに加わる可能性のある外力がカップリングレンズ122ないしその接着部に伝わらない構成とするのが好ましく、保護部123Gがホルダ123と別部材で形成されて固定されるものであってもよい。
【0079】
前記実施形態では、光走査装置100の偏光器として、反射面が回転することでレーザ光を偏向するポリゴンミラー130を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、反射面が揺動することでレーザ光を偏向する振動ミラーなどを採用してもよい。
【0080】
前記実施形態では、光走査装置100の結像光学系として、等角速度で走査されたレーザ光をfθレンズ150によって等速度で走査するよう変換した後、ミラー170で、シリンドリカルレンズ160に入射させ、シリンドリカルレンズ160で副走査方向に収束させたレーザ光をミラー180で被走査面(感光体ドラム61)に結像させる構成を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、fθレンズ150とシリンドリカルレンズ160を、1組で、等速度で走査されたレーザ光を等速度で走査するように変換する作用とレーザ光を副走査方向に収束する作用を分担しながら行うレンズに置き換えることもできる。
【0081】
前記実施形態では、光源装置120を有する光走査装置100をレーザプリンタ1に適用した例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、複写機や複合機などの他の画像形成装置や、画像形成装置以外の測定装置、検査装置などに適用することもできる。
【符号の説明】
【0082】
120 光源装置
121 半導体レーザ(発光素子)
122 カップリングレンズ
123 ホルダ(保持部材)
124 回路基板
124A 駆動部
124B 接地部
125 遮蔽部材
125A 第1の壁部
125B 第2の壁部
125C 第3の壁部
126 アパーチャ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と、
前記発光素子から出射される光ビームを集光するカップリングレンズと、
前記発光素子と前記カップリングレンズとを保持する保持部材と、
前記発光素子を駆動する駆動部を有する回路基板と、
前記カップリングレンズを通過した光ビームを規制するアパーチャを有する遮蔽部材と
を備えた光源装置であって、
前記遮蔽部材は、前記回路基板の接地部に電気的に接続していることを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記保持部材は絶縁体であることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記遮蔽部材は金属板で形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記遮蔽部材は、
前記発光素子と対向する面を有するとともに前記アパーチャが設けられた第1の壁部と、
前記第1の壁部から前記発光素子の少なくとも一部を覆う位置まで、前記カップリングレンズを通過する光ビームの経路に沿って延在する第2の壁部と
を有することを特徴とする請求項3に記載の光源装置。
【請求項5】
前記遮蔽部材は、前記第2の壁部から前記回路基板の背面の少なくとも一部を覆うように延在する第3の壁部をさらに有することを特徴とする請求項4に記載の光源装置。
【請求項6】
前記遮蔽部材は、はんだ付け、溶接、ろう付けおよび導電性接着剤による接着のうちの少なくとも一つの方法で前記回路基板の前記接地部に固定されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項7】
前記遮蔽部材は、前記回路基板の前記接地部に固定されており、
前記遮蔽部材が前記保持部材に固定されることにより、前記回路基板は、前記遮蔽部材を介して前記保持部材に固定されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の光源装置と、
前記アパーチャにより規制された光ビームを偏向させて被走査面を走査させる偏向器と、
前記偏光器により偏向された光ビームを被走査面に結像させる結像光学系と、
を備えたことを特徴とする光走査装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−17855(P2011−17855A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161866(P2009−161866)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】