光照射成形用のゴム型の製造方法
【課題】光吸収機能と耐熱機能との少なくとも一方が付与されたキャビティ表面層を有するゴム型を、キャビティ表面層に母型の表面形状を精度良く転写して製造することができる光照射成形用のゴム型の製造方法を提供すること。
【解決手段】塗布配置工程として、製品形状を有する母型6の表面に対して機能性ゴム材料42が塗布され、機能性ゴム材料42が塗布された母型6が型取り枠5内に配置された状態を形成する。次いで、充填工程として、機能性ゴム材料42が、完全硬化する前の所定の半硬化状態になったときに、型取り枠5内に透明又は半透明の光透過性ゴム材料41を充填する。次いで、成形工程として、機能性ゴム材料42によって、母型6の表面形状を転写したキャビティ表面層3を形成するとともに、光透過性ゴム材料41によって一般部2を形成して、ゴム型1を成形する。その後、取出工程として、母型6をゴム型1から取り出す。
【解決手段】塗布配置工程として、製品形状を有する母型6の表面に対して機能性ゴム材料42が塗布され、機能性ゴム材料42が塗布された母型6が型取り枠5内に配置された状態を形成する。次いで、充填工程として、機能性ゴム材料42が、完全硬化する前の所定の半硬化状態になったときに、型取り枠5内に透明又は半透明の光透過性ゴム材料41を充填する。次いで、成形工程として、機能性ゴム材料42によって、母型6の表面形状を転写したキャビティ表面層3を形成するとともに、光透過性ゴム材料41によって一般部2を形成して、ゴム型1を成形する。その後、取出工程として、母型6をゴム型1から取り出す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を透過させる性質を有し、透過させた光をキャビティに配置した熱可塑性樹脂に吸収させるよう構成した光照射成形用のゴム型を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂を用いて所定形状の成形品を得る方法としては、一般的には、射出成形、ブロー成形、押出成形、プレス成形等の種々の成形方法がある。
これに対し、例えば、特許文献1においては、成形型(ゴム型)のキャビティ内に溶融状態の熱可塑性樹脂を充填する際に、0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波を、成形型を介して熱可塑性樹脂に照射し、成形型を構成するゴムと熱可塑性樹脂との物性の違いにより、ゴム製の成形型に比べて、熱可塑性樹脂を積極的に加熱することが開示されている。
【0003】
また、例えば、特許文献2においては、ゴム型のキャビティ内に充填した粒子状態の熱可塑性樹脂に0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波を照射し、この熱可塑性樹脂を加熱して溶融させた後、キャビティにおいて残された空間が生じた場合には、溶融状態の熱可塑性樹脂を追加充填することが開示されている。
また、特許文献1、2等においては、ゴム型は、成形する成形品のマスターモデル(手作りの現物等)を液状のシリコーンゴム内に配置し、このシリコーンゴムを硬化させ、硬化後のシリコーンゴムからマスターモデルを取り出して作製している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−216447号公報
【特許文献2】特開2009−241455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、光の吸収性能が低い透明又は半透明の熱可塑性樹脂の成形品を成形する場合、溶融温度が高い熱可塑性樹脂の成形品を成形する場合等には、熱可塑性樹脂を加熱するために、ゴム型を介して照射する光の強度を強くする、又は光を照射する時間を長くする必要が生じる。そのため、ゴム型の劣化が早まって、その使用可能回数が少なくなる問題が生じたり、熱可塑性樹脂の成形品の劣化、表面精度の低下等の問題が生じたりすることがあった。従って、これらの問題を解決することができる新たなゴム型の改良が望まれる。
【0006】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、光吸収機能と耐熱機能との少なくとも一方が付与されたキャビティ表面層を有するゴム型を、キャビティ表面層に母型の表面形状を精度良く転写して製造することができる光照射成形用のゴム型の製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、光を透過させる性質を有し、透過させた光をキャビティに配置した熱可塑性樹脂に吸収させるよう構成した光照射成形用のゴム型を製造する方法であって、
製品形状を有する母型の表面に、光吸収機能と耐熱機能との少なくとも一方を有する機能性ゴム材料を配置するとともに、該機能性ゴム材料の周りに光透過性ゴム材料を配置する配置工程と、
上記機能性ゴム材料と上記光透過性ゴム材料とを一体的に硬化させ、上記機能性ゴム材料によって、上記母型の表面形状を転写したキャビティ表面層を形成するとともに、上記光透過性ゴム材料によって一般部を形成して、上記ゴム型を成形する成形工程と、
上記母型を上記ゴム型から取り出す取出工程と、を含むことを特徴とする光照射成形用のゴム型の製造方法にある(請求項1)。
【発明の効果】
【0008】
上記光照射成形用のゴム型の製造方法においては、光透過性ゴム材料と機能性ゴム材料とを併用することによって、熱可塑性樹脂の加熱性能とゴム型の耐久性能との少なくとも一方を向上させたゴム型を製造することができる。また、本発明においては、かかる性能を向上させたゴム型を容易に製造することができる工夫を行っている。
具体的には、まず、配置工程として、製品形状を有する母型の表面に、光吸収機能と耐熱機能との少なくとも一方を有する機能性ゴム材料を配置するとともに、機能性ゴム材料の周りに光透過性ゴム材料を配置する。次いで、成形工程として、機能性ゴム材料と光透過性ゴム材料とを一体的に硬化させ、機能性ゴム材料によって、母型の表面形状を転写したキャビティ表面層を形成するとともに、光透過性ゴム材料によって一般部を形成して、ゴム型を成形する。
【0009】
このようにして、ゴム型のキャビティの内壁面には、機能性ゴム材料が硬化して光吸収機能と耐熱機能との少なくとも一方が付与されたキャビティ表面層を形成することができる。このキャビティ表面層には、母型の表面形状を精度良く転写することができる。また、機能性ゴム材料と光透過性ゴム材料とを接触させて接合させることにより、二層のゴム材料を有するゴム型を製造することができる。
【0010】
それ故、上記光照射成形用のゴム型の製造方法によれば、光吸収機能と耐熱機能との少なくとも一方が付与されたキャビティ表面層を有するゴム型を、キャビティ表面層に母型の表面形状を精度良く転写して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1にかかる、型取り枠内に配置された母型に、機能性ゴム材料が塗布された状態を示す断面図。
【図2】実施例1にかかる、型取り枠内に光透過性ゴム材料を充填した状態を示す断面図。
【図3】実施例1にかかる、型取り枠からゴム型を取り出し、ゴム型を切り開く状態を示す断面図。
【図4】実施例1にかかる、ゴム型から母型を取り出した状態を示す断面図。
【図5】実施例1にかかる、成形したゴム型を示す断面図。
【図6】実施例1にかかる、ゴム型のキャビティ内に配置した熱可塑性樹脂に光を照射する状態を示す断面図。
【図7】実施例1にかかる、他のゴム型のキャビティ内に配置した熱可塑性樹脂に光を照射する状態を示す断面図。
【図8】実施例1にかかる、横軸に波長(nm)をとり、縦軸に光の透過率(%)をとって、透明のシリコーンゴムに黒色顔料を添加したときの光の透過率の変化を示すグラフ。
【図9】実施例1にかかる、横軸に経過時間をとり、縦軸にシリコーンゴムの硬度をとって、シリコーンゴムが硬化する過程を示すグラフ。
【図10】実施例2にかかる、母型を配置した型取り枠内に光透過性ゴム材料を充填した状態を示す断面図。
【図11】実施例2にかかる、型取り枠から光透過性ゴム材料を取り出し、光透過性ゴム材料を切り開く状態を示す断面図。
【図12】実施例2にかかる、光透過性ゴム材料から母型を取り出した状態を示す断面図。
【図13】実施例2にかかる、母型に機能性ゴム材料を塗布した状態を示す断面図。
【図14】実施例2にかかる、機能性ゴム材料を塗布した母型を再び光透過性ゴム材料の中に配置した状態を示す断面図。
【図15】実施例3にかかる、母型の表面に対してゴムシートを貼り付ける状態を示す断面図。
【図16】実施例3にかかる、ゴムシートを貼り付けた母型をシート袋内に配置した状態を示す断面図。
【図17】実施例3にかかる、シート袋によって押さえ付けられて、母型にゴムシートが密着した状態を示す断面図。
【図18】実施例4にかかる、母型の表面に対してゴムシートを貼り付け、ゴムシートを貼り付けた母型を間に挟みながらゴムプレートを複数積層して、積層体を形成した状態を示す断面図。
【図19】実施例4にかかる、積層体を加熱しながら加圧した状態を示す断面図。
【図20】参考例にかかる、母型を間に挟みながらゴムプレートを複数積層して、積層体を形成した状態を示す断面図。
【図21】参考例にかかる、積層体を加熱しながら加圧した状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上述した光照射成形用のゴム型の製造方法における好ましい実施の形態につき説明する。
上記ゴム型の製造方法において、上記光照射成形用のゴム型を透過させる光(電磁波)としては、短調波から高調波まで広い波長領域の光(電磁波)を用いることができる。
この光としては、0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波(近赤外線)を用いることができる。この場合には、0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波は、ゴム型に吸収される割合に比べて、ゴム型を透過して熱可塑性樹脂に吸収される割合が多く、ゴム型に比べて、熱可塑性樹脂をより強く加熱することが容易である。この場合には、上記ゴム型は、透明のゴム材料によって構成することができる。また、ゴム型は、光を透過させる性質を有する程度で、半透明のゴム材料から構成することもできる。
【0013】
また、上記光としては、0.01〜100mの波長領域を含む電磁波(マイクロ波、高周波)を用いることもできる。この場合には、0.01〜100mの波長領域を含む電磁波によって、ゴム型及び熱可塑性樹脂に誘電加熱が行われ、熱可塑性樹脂における誘電体損失が、ゴム型における誘電体損失よりも大きいことによって、ゴム型に比べて熱可塑性樹脂をより強く加熱することが容易である。この場合には、ゴム型は、透明又は半透明のゴム材料から構成する以外にも、種々の配色のゴム材料から構成することができる。
【0014】
また、上記光照射成形用のゴム型に光を照射する際に用いる光照射手段は、近赤外線(0.78〜2μmの波長)、マイクロ波(0.01〜1mの波長)又は高周波(1〜100mの波長)を照射する装置とすることができる。
【0015】
また、上記配置工程においては、上記機能性ゴム材料を、光吸収機能と耐熱機能との少なくとも一方を有する物質を含有させて構成し、該物質を含有する機能性ゴム材料が塗布された上記母型が型取り枠内に配置された状態を形成する塗布配置工程と、上記機能性ゴム材料が、完全硬化する前の所定の半硬化状態になったときに、上記型取り枠内に上記光透過性ゴム材料を充填する充填工程とを行うことが好ましい(請求項2)。
【0016】
この場合には、まず、塗布配置工程として、製品形状を有する母型の表面に対して、光吸収機能と耐熱機能との少なくとも一方を有する物質を含有させた機能性ゴム材料が塗布され、機能性ゴム材料が塗布された母型が型取り枠内に配置された状態を形成する。
このとき、製品形状を有する母型の表面に対して、機能性ゴム材料を塗布した後、この母型を型取り枠内に配置することができ、型取り枠内に配置した母型に対して機能性ゴム材料を塗布することもできる。また、母型は、必ずしも、機能性ゴム材料を塗布した後すぐに型取り枠内に配置する必要はなく、型取り枠外において所定の半硬化状態に硬化させた後、型取り枠内に配置することができる。
【0017】
次いで、充填工程として、機能性ゴム材料が、完全硬化する前の所定の半硬化状態になったときに、型取り枠内に透明又は半透明の光透過性ゴム材料を充填する。この機能性ゴム材料の所定の半硬化状態は、機能性ゴム材料が母型の表面に留まって、光透過性ゴム材料の中へ溶け込んでしまわない硬度であって、機能性ゴム材料が光透過性ゴム材料と一体的に接合することができる状態とする。
そして、成形工程として、機能性ゴム材料によって、母型の表面形状を転写したキャビティ表面層を形成するとともに、光透過性ゴム材料によって一般部を形成して、ゴム型を成形する。その後、取出工程として、母型をゴム型から取り出す。
【0018】
こうして、ゴム型のキャビティの内壁面には、機能性ゴム材料が硬化して光吸収機能と耐熱機能との少なくとも一方が付与されたキャビティ表面層を形成することができる。
充填工程において、機能性ゴム材料が所定の半硬化状態になったときに、この機能性ゴム材料に対して、光透過性ゴム材料を接触させて化学的に接合させることにより、二層のゴム材料を有するゴム型を製造することができる。また、キャビティ表面層には、母型の表面形状を精度良く転写することができる。
【0019】
また、上記製造方法によって成形したゴム型において、熱可塑性樹脂の加熱性能を向上させた場合には、ゴム型を介してキャビティ内の熱可塑性樹脂に照射する光の多くを、一般部を透過させてキャビティ表面層に吸収させ、このキャビティ表面層から熱可塑性樹脂を加熱することができる。これにより、例えば、光の吸収性能が低い透明又は半透明の熱可塑性樹脂の成形品を成形する場合、溶融温度が高い熱可塑性樹脂の成形品を成形する場合等であっても、熱可塑性樹脂を加熱するために、ゴム型を介して照射する光の強度を低くすることができ、又は光を照射する時間を短くすることができる。そして、ゴム型の寿命を長くし、その許容使用回数を多くすることができる。さらに、熱可塑性樹脂の成形品の劣化、この成形品の表面精度の低下等が生じないようにすることもできる。
また、上記製造方法によって成形したゴム型において、ゴム型の耐久性能を向上させた場合には、熱可塑性樹脂と接触して最も加熱される部分であるキャビティ表面層を、機能性ゴム材料の耐熱性によって保護することができる。これにより、ゴム型を介して照射する光の強度を強くすることもできる。
【0020】
また、上記充填工程においては、上記所定の半硬化状態は、上記機能性ゴム材料が、完全硬化したときの硬度に対して30〜70%の硬度になった状態とすることが好ましい(請求項3)。
この場合には、光透過性ゴム材料を充填するときの機能性ゴム材料の硬度が適切であり、機能性ゴム材料と光透過性ゴム材料とを安定して一体的に接合することができる。
また、上記所定の半硬化状態は、機能性ゴム材料が、完全硬化したときの硬度に対して40〜60%の硬度になった状態とすることが更に好ましいと考える。
【0021】
また、上記ゴム型の製造方法において、上記配置工程においては、上記母型を型取り枠内に配置するとともに、該型取り枠内に上記光透過性ゴム材料を充填する充填工程と、上記母型を、完全硬化する前の上記光透過性ゴム材料から取り出す予備取出工程と、上記機能性ゴム材料を、光吸収機能と耐熱機能との少なくとも一方を有する物質を含有させて構成し、該物質を含有する機能性ゴム材料を、上記母型の表面と、該母型の表面形状を転写した上記光透過性ゴム材料の内表面との少なくとも一方に対して塗布し、上記母型を、完全硬化する前の所定の半硬化状態である上記光透過性ゴム材料の内部に再び配置する塗布配置工程とを行うこともできる(請求項4)。
【0022】
この場合には、まず、充填工程として、製品形状を有する母型を型取り枠内に配置するとともに、型取り枠内に透明又は半透明の光透過性ゴム材料を充填する。
次いで、取出工程として、母型を、完全硬化する前の光透過性ゴム材料から取り出す。
次いで、塗布配置工程として、母型の表面と、母型の表面形状を転写した光透過性ゴム材料の内表面との少なくとも一方に対して、光吸収機能と耐熱機能との少なくとも一方を有する物質を含有させた機能性ゴム材料を塗布し、完全硬化する前の所定の半硬化状態である光透過性ゴム材料の内部に、母型を再び配置する。このとき、光透過性ゴム材料が所定の半硬化状態であることにより、機能性ゴム材料が光透過性ゴム材料の中へ溶け込んでしまうことが防止され、かつ、機能性ゴム材料が光透過性ゴム材料と一体的に接合される。
【0023】
なお、母型の表面に機能性ゴム材料を塗布する場合には、機能性ゴム材料を塗布した母型を光透過性ゴム材料の内表面に配置することになる。一方、光透過性ゴム材料の内表面に機能性ゴム材料を塗布する場合には、機能性ゴム材料を塗布した光透過性ゴム材料の内表面に、母型を配置することになる。
そして、成形工程として、機能性ゴム材料によって、母型の表面形状を転写したキャビティ表面層を形成するとともに、光透過性ゴム材料によって一般部を形成して、ゴム型を成形する。その後、再取出工程として、母型をゴム型から取り出す。
【0024】
また、塗布配置工程において、光透過性ゴム材料が所定の半硬化状態になったときに、この光透過性ゴム材料に対して、機能性ゴム材料を接触させて化学的に接合させることにより、二層のゴム材料を有するゴム型を製造することができる。また、キャビティ表面層には、母型の表面形状を精度良く転写することができる。
また、この場合において成形したゴム型も、上記他の態様の場合と同様に、優れた性能を有する。
【0025】
また、上記塗布配置工程においては、上記母型を上記光透過性ゴム材料の内部に再び配置するときの該光透過性ゴム材料の所定の半硬化状態は、該光透過性ゴム材料が、完全硬化したときの硬度に対して30〜70%の硬度になった状態とすることが好ましい(請求項5)。
この場合には、機能性ゴム材料を塗布するときの光透過性ゴム材料の硬度が適切であり、機能性ゴム材料と光透過性ゴム材料とを安定して一体的に接合することができる。
また、上記所定の半硬化状態は、光透過性ゴム材料が、完全硬化したときの硬度に対して40〜60%の硬度になった状態とすることが更に好ましいと考える。
【0026】
また、上記光吸収機能と耐熱機能との少なくとも一方を有する物質は、カーボンブラック、金属酸化物及び金属水酸化物のうちのいずれか1種又は2種以上であることが好ましい(請求項6)。
この場合には、機能性ゴム材料に光吸収機能と耐熱機能との少なくとも一方を容易に付与することができる。
【0027】
上記光吸収機能を有する物質としては、0.78〜2μmの近赤外線の波長領域を含む電磁波を吸収する種々のものを用いることができる。
光吸収機能を有する物質としては、無機系赤外線吸収剤又は有機系赤外線吸収剤のいずれを用いることもできる。無機系赤外線吸収剤としては、金属粒子、カーボンブラック、酸化錫、酸化亜鉛、酸化銅等の金属酸化物、アンチモンドープ酸化錫、インジウムドープ酸化錫、In、Ga、Al及びSbよりなる群から選ばれた少なくとも1種の元素を含有する酸化亜鉛等の金属錯体化合物などが挙げられる。
【0028】
有機系赤外線吸収剤としては、アントラキノン系色素、シアニン系色素、ポリメチン系色素、アゾメチン系色素、アゾ系色素、ポリアゾ系色素、ジイモニウム系色素、アミニウム系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、インドシアニン系色素、ナフトキノン系色素、インドールフェノール系色素、トリアリルメタン系色素、金属錯体系色素、ジチオールニッケル錯体系色素、アゾコバルト錯体系色素、スクワリリウム系色素などが挙げられる。
【0029】
上記耐熱機能を有する物質としてのカーボンブラックとしては、ランプブラック、各種ファーネスブラック、アセチレンブラック等を用いることができる。その中でも、不純物の含有による、架橋特性及びゴム物性の低下が少ないアセチレンブラックを用いることが好ましい。
【0030】
上記耐熱機能を有する物質としての金属酸化物としては、酸化ケイ素、酸化鉄、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉛、酸化銅、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化カドミウム、酸化コバルト、酸化セリウム等を用いることができる。その中でも、ゴム材料への練り込み易さ、コンパウンド内での安定性等を考慮すると、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化セリウムを用いることが好ましい。
【0031】
上記耐熱機能を有する物質としての金属水酸化物としては、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化アルミニウムを用いることができる。その中でも、水酸化物の安定性、取扱い上の安全性を考慮すると、水酸化カルシウムを用いることが好ましい。
【0032】
また、上記耐熱機能を有する物質として、カーボンブラック、金属酸化物及び金属水酸化物のうちのいずれかを、ゴム材料に対して単独で添加することによって、ゴム材料の耐熱性を向上させることができる。これ以外にも、カーボンブラック、金属酸化物及び金属水酸化物のうちのいずれかに属する2成分以上を併用することにより、ゴム材料の耐熱性を効果的に向上できる場合がある。
【0033】
キャビティ表面層を形成する際に、光吸収機能と耐熱機能との少なくとも一方を有する物質のゴム材料に対する添加量は、1成分を単独使用する場合、2成分以上を併用する場合のいずれであっても、次のようにすることができる。
ゴム材料に液状のシリコーンゴムを用いる場合には、上記物質の添加量は、キャビティ表面層を構成するゴム材料100質量部に対して、0.01〜20質量部とすることが好ましく、0.03〜15質量部とすることがより好ましく、0.05〜10質量部とすることが更に好ましく、0.1〜5質量部とすることが特に好ましい。上記物質の添加量が0.01質量部未満である場合には、ゴム材料に光吸収性又は耐熱性を付加する効果が少なくなる。一方、上記物質の添加量が20質量部を超える場合には、ゴム材料の機械的強度を維持することが困難になる。
【0034】
ゴム材料にミラブル型のシリコーンゴムを用いる場合には、上記物質の添加量は、キャビティ表面層を構成するゴム材料100質量部に対して、1〜200質量部とすることが好ましく、2〜150質量部とすることがより好ましく、5〜100質量部とすることが更に好ましく、10〜50質量部とすることが特に好ましい。上記物質の添加量が1質量部未満である場合には、ゴム材料に光吸収性又は耐熱性を付加する効果が少なくなる。一方、上記物質の添加量が200質量部を超える場合には、ゴム材料の機械的強度を維持することが困難になる。
【0035】
また、上記配置工程においては、上記母型の表面に対して、上記機能性ゴム材料からなるゴムシートを貼り付け、該ゴムシートが貼り付けられた母型が型取り枠内に配置された状態を形成する貼付配置工程と、上記型取り枠内に上記光透過性ゴム材料を充填する充填工程とを行うこともできる(請求項7)。
この場合には、機能性ゴム材料をゴムシートとすることにより、キャビティ表面層を有するゴム型を一層容易に成形することができる。
【0036】
また、上記配置工程においては、上記母型の表面に対して、上記機能性ゴム材料からなるゴムシートを貼り付ける貼付工程と、上記ゴムシートを貼り付けた母型を間に挟みながら、上記光透過性ゴム材料からなるゴムプレートを複数積層して、積層体を形成する積層配置工程とを行い、上記成形工程においては、上記積層体を加熱しながら加圧することもできる(請求項8)。
この場合には、液状の光透過性ゴム材料を用いる代わりに、固形の光透過性ゴム材料からなるゴムプレートを用いることにより、型取り枠内へのゴム材料の充填作業が不要になり、キャビティ表面層及び一般部を有するゴム型の製造が一層容易になる。
【0037】
なお、参考として、上記光照射成形用のゴム型の製造方法は、次のように構成することもできる。
すなわち、本発明の別の参考態様は、光を透過させる性質を有し、透過させた光をキャビティに配置した熱可塑性樹脂に吸収させるよう構成した光照射成形用のゴム型を製造する方法であって、製品形状を有する母型を間に挟みながら、光透過性ゴム材料からなるゴムプレートを複数積層して、積層体を形成する積層配置工程と、上記積層体を加熱しながら加圧し、上記複数のゴムプレートを一体的に硬化させて、上記ゴム型を成形する成形工程と、上記母型を上記ゴム型から取り出す取出工程と、を含むことを特徴とする光照射成形用のゴム型の製造方法にある。
この場合には、上記キャビティ表面層を形成しなくても、上記光透過性ゴム材料に、ミラブル型シリコーンゴム等の耐熱性に優れたゴム材料を用いることにより、耐熱性に優れたゴム型を成形することができる。また、この場合においても、ゴム型を構成するゴム材料には、上述した光吸収機能と耐熱機能との少なくとも一方を有する物質(例えば二酸化ケイ素等)を配合することが好ましい。
【実施例】
【0038】
以下に、本発明の光照射成形用のゴム型の製造方法にかかる実施例につき、図面を参照して説明する。
(実施例1)
本例の光照射成形用のゴム型1の製造方法においては、図6に示すごとく、光を透過させる性質を有し、透過させた光をキャビティ11に配置した熱可塑性樹脂8に吸収させて、熱可塑性樹脂8の成形品を成形するためのゴム型1を製造する。同図において、光を符号Xで示す。
具体的には、この製造方法においては、次の各工程を行うことにより熱可塑性樹脂8の成形品を成形する。
【0039】
まず、配置工程として、図1に示すごとく、製品形状を有する母型6の表面に、光吸収機能と耐熱機能との少なくとも一方を有する機能性ゴム材料42を配置するとともに、機能性ゴム材料42の周りに光透過性ゴム材料41を配置する。
より具体的には、本例の配置工程においては、塗布配置工程として、図1に示すごとく、製品形状を有する母型6の表面に対して、光吸収機能と耐熱機能との少なくとも一方を有する物質を含有させた液状の機能性ゴム材料42が塗布され、機能性ゴム材料42が塗布された母型6が型取り枠5内に配置された状態を形成する。次いで、充填工程として、図2に示すごとく、機能性ゴム材料42が、完全硬化する前の所定の半硬化状態になったときに、型取り枠5内に透明又は半透明の光透過性ゴム材料41を充填する。
【0040】
次いで、成形工程として、機能性ゴム材料42と光透過性ゴム材料41とを一体的に硬化させ、機能性ゴム材料42によって、母型6の表面形状を転写したキャビティ表面層3を形成するとともに、光透過性ゴム材料41によって一般部2を形成して、ゴム型1を成形する。その後、取出工程として、図3、図4に示すごとく、母型6をゴム型1から取り出す。
【0041】
以下に、本例の光照射成形用のゴム型1の製造方法につき、図1〜図9を参照して詳説する。
製品形状を有する母型(マスターモデル)6は、種々の方法によって成型することができ、例えば、手作りの現物とすることができる。
光透過性ゴム材料41及び機能性ゴム材料42は、いずれもシリコーンゴムの材料とすることができる。光透過性ゴム材料41は、透明又は半透明のシリコーンゴム材料から構成し、機能性ゴム材料42は、透明又は半透明のシリコーンゴム材料に対して、光吸収機能と耐熱機能との少なくとも一方を有する物質を混合して構成することができる。本例の光吸収機能と耐熱機能との少なくとも一方を有する物質は、いずれの機能も有するカーボンブラックとしての黒色顔料である。
【0042】
図1に示すごとく、本例において用いる型取り枠5は、成形後のゴム型1(ゴム材料)を離型することが容易な材質から構成することができる。この型取り枠5は、液状のゴム材料を溜めることができる器形状を有している。
母型6は、型取り枠5における底部又は側部の内側面に設けた保持部材51によって、型取り枠5内に保持するよう構成してある。図6に示すごとく、保持部材51によってゴム型1に形成される穴21は、キャビティ11内に粒子状、液状等の熱可塑性樹脂8を充填するための充填口、溶融した熱可塑性樹脂8を溢れ出させる流出口、キャビティ11内の真空引きを行うための吸引口等として利用することができる。
【0043】
図3、図4に示すごとく、取出工程において、母型6をゴム型1から取り出す際には、一対のゴム型部1A、1Bを形成するように、ゴム型1を2つに分断して切り開くことができる。ゴム型1を切り開いた部分は、一対のゴム型部1A、1Bが互いに合わさる分割面(パーティング面)12として機能させることができる。
また、図7に示すごとく、上記各工程を行って成形するゴム型1は、キャビティ11の容積を変化させるよう互いにスライド可能に組み合わせるゴム型1のいずれかのゴム型部とすることもできる。同図において、互いにスライドする方向を矢印Sで示した。この場合には、上記各工程を行ってスライド可能な一方のゴム型部1Aを成形し、さらに別に上記各工程を行ってスライド可能な他方のゴム型部1Bを成形することができる。
【0044】
図8は、横軸に波長(nm)をとり、縦軸に光の透過率(%)をとって、1mmの厚みの透明のシリコーンゴムに対して、光吸収機能及び耐熱機能を有する物質としての黒色顔料を添加したときの光の透過率の変化を示すグラフである。同図において、透明のシリコーンゴムは、200〜2200(nm)の波長の光の多くを透過させることがわかる。これに対し、黒色顔料の添加量を、ゴム材料100質量部に対して0.1質量部、0.5質量部、1質量部と増加させたとき、この添加量に比例して、光の透過率が小さくなっていることがわかる。同図において、0質量部、0.1質量部、0.5質量部、1質量部の表示は、黒色顔料の添加量を示す。
キャビティ表面層3の耐熱機能をより向上させるためには、黒色顔料の添加量を増加させることが好ましいが、この添加量が多くなるとキャビティ11内の熱可塑性樹脂8へ光を透過させることができなくなる。そのため、黒色顔料の添加量及びキャビティ表面層3の厚みは、光の透過率が10〜50(%)となるように決定することができる。
【0045】
また、図8に示すごとく、200〜2200(nm)の波長の領域である近赤外線(光、電磁波)をシリコーンゴム製のゴム型1の表面に照射すると、当該近赤外線の多くを、ゴム型1の一般部2を透過させ、ゴム型1のキャビティ表面層3及びキャビティ11内の熱可塑性樹脂8に吸収させることができることがわかる。
光透過性ゴム材料41の層からなる一般部2は、0.78〜2(μm)の波長領域を含む光(電磁波)の一部(多く)を透過させる性質を有している。機能性ゴム材料42の層からなるキャビティ表面層3は、0.78〜2(μm)の波長領域を含む光を、一般部2よりも多く吸収する性質を有している。
ゴム型1において熱可塑性樹脂8を成形する際には、0.78〜2(μm)の波長領域を含む光を発生させる(0.78〜2(μm)の波長領域内に光強度のピークを有する)ハロゲンランプ等の光照射手段7を用いることができる。
【0046】
機能性ゴム材料42及び光透過性ゴム材料41は、シリコーン主剤と硬化剤とを混合させて硬化させることができる。
機能性ゴム材料42及び光透過性ゴム材料41に用いるシリコーンゴム材料は、常温において硬化する常温硬化タイプと、所定の加熱温度において硬化する高温硬化タイプとがある。なお、高温硬化タイプのシリコーンゴム材料を用いる場合には、加熱するとともに所定の圧力をかけて硬化させる必要がある。
【0047】
図9には、横軸に経過時間をとり、縦軸にシリコーンゴムの硬度をとって、シリコーンゴムが硬化する過程をグラフにして示す。同図は、シリコーンゴムを常温(約20℃)にて放置して硬化させる場合について示す。この硬度は、JISK6253(タイプA)に準拠して求めたものである。シリコーンゴムは、1時間経過する時点で最終硬度(完全硬化したときの硬度)の約50%の硬度まで硬化し、その後、約2日の時間をかけて最終硬度(硬度約39)に到達することがわかる。
本例においては、充填工程において形成するシリコーンゴムの材料の所定の半硬化状態は、シリコーンゴムの材料が、完全硬化したときの硬度に対して30〜70%の硬度になった状態とすることができ、シリコーンゴムの材料が、完全硬化したときの硬度に対して40〜60%の硬度になった状態とすることがより好ましいと考える。
【0048】
次に、本例の光照射成形用のゴム型1の製造方法及び作用効果を、さらに具体的に説明する。
まず、図1に示すごとく、塗布配置工程として、製品形状を有する母型6の表面に対して、黒色顔料を含有させた液状の機能性ゴム材料42を塗布する。機能性ゴム材料42は、シリコーン主剤と硬化剤とを混合させたものに、黒色顔料を配合したものとする。そして、シリコーン主剤、硬化剤及び黒色顔料を混合した機能性ゴム材料42を、真空環境下において5分維持して、機能性ゴム材料42の脱泡処理を行う。そして、機能性ゴム材料42を、母型6の表面と、塗り具(ウエス、ハケ等)とに付け、母型6の表面にできるだけ均一に伸ばす。
【0049】
母型6の表面に塗布する機能性ゴム材料42の厚みは、0.01〜1mmとすることができる。この厚みは、機能性ゴム材料42における黒色顔料の含有量によって、適宜調整することができる。例えば、黒色顔料の含有量が機能性ゴム材料42の100質量部に対して約1質量部である場合には、塗布する厚みを0.01〜0.2mmの範囲内とすることができ、黒色顔料の含有量が機能性ゴム材料42の100質量部に対して約0.2質量部である場合には、塗布する厚みを0.1〜1mmの範囲内とすることができる。
【0050】
次いで、同図に示すごとく、液状の機能性ゴム材料42を塗布した母型6を型取り枠5内に配置する。
次いで、図2に示すごとく、充填工程として、液状の機能性ゴム材料42が、完全硬化する前の所定の半硬化状態になったときに、型取り枠5内に透明又は半透明の液状の光透過性ゴム材料41を充填する。この液状の機能性ゴム材料42の所定の半硬化状態は、機能性ゴム材料42が母型6の表面に留まって、光透過性ゴム材料41の中へ溶け込んでしまわない硬度であって、機能性ゴム材料42が光透過性ゴム材料41と一体的に接合することができる状態とする。
【0051】
具体的には、本例においては、光透過性ゴム材料41を充填するときの機能性ゴム材料42の所定の半硬化状態は、機能性ゴム材料42が、完全硬化したときの硬度に対して40〜60%の硬度になった状態とする。この所定の半硬化状態は、機能性ゴム材料42を、常温(約20℃)の環境下では1〜6時間、70℃に加熱した環境下では5〜30分間維持して形成することができる。なお、機能性ゴム材料42を所定の温度に加熱した場合には、この機能性ゴム材料42の温度を常温に戻した後、型取り枠5内に光透過性ゴム材料41を流し込むことが好ましい。
また、光透過性ゴム材料41は、シリコーン主剤と硬化剤とを混合させたものとする。
【0052】
そして、光透過性ゴム材料41を充填した型取り枠5を、真空環境下に2〜60分間維持して、光透過性ゴム材料41の脱泡処理を行う。また、所定の温度に加熱した環境下において、母型6、機能性ゴム材料42及び光透過性ゴム材料41が配置された型取り枠5を維持して、機能性ゴム材料42及び光透過性ゴム材料41を架橋させて、これらを硬化させるとともに一体化させる。この架橋を行う加熱環境下に維持する時間は、例えば、30℃で12時間、50℃で3時間とする。
【0053】
そして、図3に示すごとく、成形工程として、機能性ゴム材料42から、母型6の表面形状を転写したキャビティ表面層3を形成するとともに、光透過性ゴム材料41から一般部2を形成して、ゴム型1を成形する。
その後、図4に示すごとく、取出工程として、光透過性ゴム材料41が所定の硬度になったときに、ゴム型1を切り開いて、母型6を取り出す。この光透過性ゴム材料41の所定の硬度は、機能性ゴム材料42を母型6から離型することができるとともに、光透過性ゴム材料41が形状を維持することができる硬度とする。
【0054】
こうして、図5に示すごとく、ゴム型1のキャビティ11の内壁面には、機能性ゴム材料42が硬化して光吸収機能及び耐熱機能が付与されたキャビティ表面層3を形成することができる。
本例においては、充填工程において、機能性ゴム材料42が所定の半硬化状態になったときに、この機能性ゴム材料42に対して、光透過性ゴム材料41を接触させて化学的に接合させることにより、二層のゴム材料を有するゴム型1を製造することができる。また、キャビティ表面層3には、母型6の表面形状を精度良く転写することができる。
【0055】
それ故、本例の光照射成形用のゴム型1の製造方法によれば、光吸収機能及び耐熱機能が付与されたキャビティ表面層3を有するゴム型1を、キャビティ表面層3に母型6の表面形状を精度良く転写して製造することができる。
【0056】
また、上記製造方法によって成形したゴム型1によれば、熱可塑性樹脂8の加熱性能の向上として、ゴム型1を介してキャビティ11内の熱可塑性樹脂8に照射する光の多くを、一般部2を透過させてキャビティ表面層3に吸収させ、このキャビティ表面層3から熱可塑性樹脂8を加熱することができる。これにより、例えば、光の吸収性能が低い透明又は半透明の熱可塑性樹脂8の成形品を成形する場合、溶融温度が高い熱可塑性樹脂8の成形品を成形する場合等であっても、熱可塑性樹脂8を加熱するために、ゴム型1を介して照射する光の強度を低くすることができ、又は光を照射する時間を短くすることができる。そして、ゴム型1の寿命を長くし、その許容使用回数を多くすることができる。さらに、熱可塑性樹脂8の成形品の劣化、この成形品の表面精度の低下等が生じないようにすることもできる。
また、ゴム型1の耐久性能の向上として、熱可塑性樹脂8と接触して最も加熱される部分であるキャビティ表面層3を、機能性ゴム材料42の耐熱性によって保護することができる。これにより、ゴム型1を介して熱可塑性樹脂8に照射する光の強度を強くすることもできる。
【0057】
(実施例2)
本例の光照射成形用のゴム型1の製造方法においては、上記実施例1とは異なる順序でゴム型1を成形する。
本例においては、まず、図10に示すごとく、充填工程として、製品形状を有する母型6を型取り枠5内に配置するとともに、型取り枠5内に透明又は半透明の光透過性ゴム材料41を充填する。このとき、光透過性ゴム材料41は、上記実施例1と同様の構成のものを用い、適宜脱泡処理を行う。
【0058】
次いで、図11、図12に示すごとく、取出工程として、光透過性ゴム材料41が所定の硬度になったときに、光透過性ゴム材料41を切り開いて母型6を取り出す。この光透過性ゴム材料41の所定の硬度は、光透過性ゴム材料41を母型6から離型することができるとともに、光透過性ゴム材料41が形状を維持することができる硬度とする。光透過性ゴム材料41を切り開いた部分は、分割面12となる。
【0059】
次いで、図13に示すごとく、塗布配置工程として、母型6の表面と、母型6の表面形状を転写した光透過性ゴム材料41の内表面411との少なくとも一方に対して、光吸収機能及び耐熱機能を有する物質を含有させた機能性ゴム材料42を塗布する。
そして、図14に示すごとく、完全硬化する前の所定の半硬化状態である光透過性ゴム材料41の内部に、母型6を再び配置する。このとき、光透過性ゴム材料41が所定の半硬化状態であることにより、機能性ゴム材料42が光透過性ゴム材料41の中へ溶け込んでしまうことが防止され、かつ、光透過性ゴム材料41が未硬化であることにより、機能性ゴム材料42が光透過性ゴム材料41と一体的に接合される。
【0060】
母型6を光透過性ゴム材料41の内部に再び配置するときの光透過性ゴム材料41の所定の半硬化状態は、光透過性ゴム材料41が、完全硬化したときの硬度に対して40〜60%の硬度になった状態とする。このとき、光透過性ゴム材料41が所定の半硬化状態になっていることにより、機能性ゴム材料42が光透過性ゴム材料41の中へ溶け込んでしまうことが防止され、かつ、機能性ゴム材料42が光透過性ゴム材料41と一体的に接合される。
機能性ゴム材料42は、上記実施例1と同様の構成のものを用い、適宜脱泡処理を行う。
【0061】
そして、成形工程として、機能性ゴム材料42から、母型6の表面形状を転写したキャビティ表面層3を形成するとともに、光透過性ゴム材料41から一般部2を形成して、ゴム型1を成形する。その後、再取出工程として、機能性ゴム材料42が所定の硬度になったときに、母型6をゴム型1から取り出す。この機能性ゴム材料42の所定の硬度は、機能性ゴム材料42を母型6から離型することができるとともに、機能性ゴム材料42が形状を維持することができる硬度とする。
【0062】
本例においては、塗布配置工程において、光透過性ゴム材料41が所定の半硬化状態になったときに、この光透過性ゴム材料41に対して、機能性ゴム材料42を接触させて化学的に接合させることにより、二層のゴム材料を有するゴム型1を製造することができる。また、キャビティ表面層3には、母型6の表面形状を精度良く転写することができる。
【0063】
それ故、本例の光照射成形用のゴム型1の製造方法によっても、光吸収機能及び耐熱機能が付与されたキャビティ表面層3を有するゴム型1を、キャビティ表面層3に母型6の表面形状を精度良く転写して製造することができる。
また、本例において成形したゴム型1も、上記実施例1と同様に、優れた性能を有する。
本例においても、その他の構成は上記実施例1と同様であり、上記実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
【0064】
(確認試験1)
確認試験1においては、上記製造方法によって成形したゴム型1の加熱性能を確認する試験を行った。
発明品として、光透過性ゴム材料41からなる一般部2の厚みを30mmとし、機能性ゴム材料42からなるキャビティ表面層3の厚みを2mmとしたゴム型1のモデルを準備した。また、比較品として、キャビティ表面層3を有しない厚みが30mmのゴム型のモデルも準備した。
【0065】
ゴム型1の光透過性ゴム材料41には、透明シリコーン(信越化学工業(株)製KE−1606)を用い、ゴム型1の機能性ゴム材料42には、透明シリコーン(信越化学工業(株)製KE−1606)に対して黒色顔料(信越化学工業(株)製K−COLOR−BK02)を混合したものを用いた。黒色顔料は、透明シリコーン100質量部に対して0.2質量部含有させた。
加熱溶融させる熱可塑性樹脂8は、透明のアクリル樹脂とした。光照射手段7(光の照射源)としてハロゲンランプ(2.5kW)を用い、光照射手段7からゴム型1の表面までの照射距離を350mmに設定した。
【0066】
そして、光照射手段7からゴム型1に光を照射して、アクリル樹脂が溶融するまでにかかる時間(アクリル樹脂の溶融温度:230℃)を測定した。この測定した時間は、発明品については5分となり、比較品については30分となった。
この結果より、透明のアクリル樹脂(透明又は半透明の熱可塑性樹脂8)の加熱を行う際に、発明品によれば、ゴム型1におけるキャビティ表面層3からキャビティ11内の熱可塑性樹脂8を効果的に加熱できることがわかった。
【0067】
(確認試験2)
確認試験2においては、上記製造方法によって成形したゴム型1の耐熱性能を確認する試験を行った。
発明品として、光透過性ゴム材料41からなる一般部2の厚みを30mmとし、機能性ゴム材料42からなるキャビティ表面層3の厚みを5mmとしたゴム型1のモデルを準備した。また、比較品として、キャビティ表面層3を有しない厚みが30mmのゴム型のモデルも準備した。
【0068】
本確認試験においては、加熱溶融させる熱可塑性樹脂8を、透明又は半透明でないPEEK(ポリエーテル・エーテル・ケトン)樹脂とした。
ゴム型1の光透過性ゴム材料41、ゴム型1の機能性ゴム材料42及び黒色顔料は、確認試験1と同様にした。
そして、光照射手段7からゴム型1に光を照射して、PEEK樹脂を溶融(PEEK樹脂の溶融温度:365℃)させる光照射ショットを繰り返し行い、ゴム型1に亀裂等が生じたショット回数を確認した。この確認した結果は、発明品については10ショット行ってもゴム型1に亀裂が生じなかった一方で、比較品については3ショット目でゴム型1に亀裂が生じた。なお、PEEK樹脂が溶融するまでには5分かかった。
この結果より、PEEK樹脂(透明又は半透明でなく溶融温度が高い熱可塑性樹脂8)の加熱を行う際に、発明品によれば、ゴム型1の耐久性を向上できることがわかった。
【0069】
(実施例3)
本例は、キャビティ表面層3を形成するための機能性ゴム材料42として、固形のゴムシート420を用いたゴム型1の製造方法についての例である。
本例の配置工程においては、図15〜図17に示すごとく、母型6の表面に対して、機能性ゴム材料42からなるゴムシート420を貼り付け、ゴムシート420が貼り付けられた母型6が型取り枠5内に配置された状態を形成する貼付配置工程と、型取り枠5内に液状の光透過性ゴム材料41を充填する充填工程とを行う。
本例で用いるゴムシート420は、ミラブル型シリコーンゴムと呼ばれる高粘度のシリコーンゴムのコンパウンド(種々の添加物を含有する混合物)によって構成されている。ゴムシート420は、高粘度であることによって固形状に形成されている。
【0070】
図15に示すごとく、貼付配置工程において、ゴムシート420としては、粘土状のゴム材料100質量部に硬化剤(C−23N,0.3質量部)を混入し、これをロールで練ってシート状にしたものを用いる。そして、このゴムシート420を、母型6の表面の全体に貼り付ける。次いで、図16に示すごとく、ゴムシート420を貼り付けた母型6を、可とう性を有するシート材から袋状に形成したシート袋52内に配置し、このシート袋52内を吸引ポンプ53によって吸引する。また、母型6に貼り付けたゴムシート420とシート袋52との間には、フェルト等の通気性を有するシートを配置しておく。
【0071】
上記吸引を行うとき、シート袋52内の空気が排気されてシート袋52内が真空状態になる。そして、図17に示すごとく、シート袋52の外気と内気との差圧によってシート袋52がしぼみ、シート袋52によって押さえ付けられて、母型6にゴムシート420が密着する。このとき、母型6の表面形状がゴムシート420に転写される。
このシート袋52の吸引を行う際には、母型6に貼り付けたゴムシート420の加熱を行い、ゴムシート420を、完全硬化する前の所定の半硬化状態にする。この半硬化状態は、上記実施例1に示した状態と同様である。また、ゴムシート420の加熱は、例えば100〜110℃で5〜10分間行うことができる。
【0072】
次いで、半硬化状態のゴムシート420が貼り付けられた母型6を、型取り枠5内に配置する(上記実施例1の図1参照)。
次いで、充填工程として、型取り枠5内に液状の光透過性ゴム材料41を充填する(上記実施例1の図2参照)。この光透過性ゴム材料41は、一般的な液状のシリコーンゴム(例えばRTV(Room Temperature Vulcanizing)型のシリコーンゴム)を用いることができる。光透過性ゴム材料41の充填を行う際には、型取り枠5を真空容器内に配置し、型取り枠5内を真空状態にして行うことができる。そして、この型取り枠5を、真空環境下に所定時間維持して、光透過性ゴム材料41の脱泡処理を行う。
その後、成形工程において、型取り枠5を、所定の加熱環境下(例えば120℃の環境下に30分間)に維持し、光透過性ゴム材料41を硬化させる。そして、取出工程として、光透過性ゴム材料41が所定の硬度になったときに、母型6をゴム型1から取り出す。
【0073】
こうして、ゴムシート420から、母型6の表面形状を転写したキャビティ表面層3を形成するとともに、光透過性ゴム材料41から一般部2を形成して、ゴム型1を成形する。また、母型6をゴム型1から取り出す際に、ゴム型1を複数に分割し、各ゴム型部1A、1Bに分割面12が形成される。
本例においては、機能性ゴム材料42をゴムシート420とすることにより、キャビティ表面層3を有するゴム型1を一層容易に成形することができる。また、機能性ゴム材料42に、耐熱性に優れるミラブル型シリコーンゴムを用いたことにより、カーボンブラック等の物質を添加しなくても、シリコーンゴムに容易に耐熱性能を付加することができる。ただし、ミラブル型シリコーンゴムに、カーボンブラック、二酸化ケイ素等の物質を添加することにより、機能性ゴム材料42の光吸収性、耐熱性等をより向上させることができる。
【0074】
また、特に、ゴム型1において、光の吸収性能が低い透明、半透明、白色等の熱可塑性樹脂の成形を行う場合には、機能性ゴム材料42からなるゴムシート420に光吸収性を有する物質等を添加することができる。また、機能性ゴム材料42と光透過性ゴム材料41とは、いずれもミラブル型シリコーンゴムから構成することができる。
本例においても、ゴム型1の製造方法のその他の構成は、上記実施例1と同様であり、上記実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
【0075】
(実施例4)
本例は、キャビティ表面層3を形成するための機能性ゴム材料42として、固形のゴムシート420を用い、かつ、一般部2を形成するための光透過性ゴム材料41として、固形のゴムプレート410を用いたゴム型1の製造方法についての例である。
図18に示すごとく、本例の配置工程においては、母型6の表面に対して、機能性ゴム材料42からなるゴムシート420を貼り付ける貼付工程と、ゴムシート420を貼り付けた母型6を間に挟みながら、光透過性ゴム材料41からなるゴムプレート410を複数積層して、積層体40を形成する積層配置工程とを行う。
【0076】
本例の機能性ゴム材料42及び光透過性ゴム材料41は、いずれもミラブル型シリコーンゴムから構成することができる。機能性ゴム材料42からなるゴムシート420は、ミラブル型シリコーンゴムに光吸収性を有する物質を添加したものから形成することができ、光透過性ゴム材料41からなるゴムプレート410は、一般的なミラブル型シリコーンゴムから形成することができる。
【0077】
図18に示すごとく、ゴムプレート410は、母型6の形状(成形するゴム型1の形状)に応じて、ゴムシート420を貼り付けた母型6が占有するスペースを避けるようにして、母型6の積層方向Eの一方面側及び他方面側に、適宜長さに切断したものを配置し、積層することができる。ゴムプレート410は、母型6の積層方向Eに直交する方向の周りを囲んで、母型6の内側に配置されるものと、外側に配置されるものとがある。
【0078】
また、積層配置工程において、ゴムシート420を貼り付けた母型6の周りに複数のゴムプレート410を積層して配置する際には、母型6とゴムプレート410との間には、若干の隙間が形成されてもよい。この若干の隙間は、成形工程において、積層体40を加熱しながら加圧する際に埋められる。
【0079】
そして、図19に示すごとく、本例の成形工程においては、積層体40を圧縮型54内に配置し、積層体40を加熱しながら圧縮型54を移動させて、積層体40を加圧する。圧縮型54は、積層体40の積層方向Eに位置する一対の型部541と、積層体40の積層方向Eに直交する方向の回りを囲む囲い型部542とを有している。そして、囲い型部542によって周囲をガイドした状態で、120℃の加熱環境下において30分間、一対の型部541によって積層体40を圧縮するように加圧する。このとき、複数のゴムプレート410同士の間に形成された隙間から空気が脱泡される。また、各ゴムプレート410同士が密着して一体化するとともに、ゴムプレート410とゴムシート420とが密着して一体的に硬化する。
その後、本例の取出工程において、ゴムプレート410による一般部2が所定の硬度になったときに、一般部2及びキャビティ表面層3を複数のゴム型部1A、1Bに分割して、ゴム型1から母型6を取り出す。
【0080】
本例においては、液状の光透過性ゴム材料41を用いる代わりに、固形の光透過性ゴム材料41からなるゴムプレート410を用いることにより、型取り枠5内へのゴム材料の充填作業が不要になり、キャビティ表面層3を有するゴム型1を一層容易に製造することができる
本例においても、ゴム型1の製造方法のその他の構成は、上記実施例1、3と同様であり、上記実施例1、3と同様の作用効果を得ることができる。
【0081】
(参考例)
本例は、キャビティ表面層を形成せず、ミラブル型シリコーンゴムのゴムプレート410を用いてゴム型1Zを製造する例である。
本例においては、図20に示すごとく、母型6を間に挟みながら、光透過性ゴム材料41からなるゴムプレート410を複数積層して、積層体40Zを形成する。
【0082】
そして、図21に示すごとく、積層体40Zを圧縮型54内に配置し、積層体40Zを加熱しながら圧縮型54を移動させて、積層体40Zを加圧する。圧縮型54は、積層体40Zの積層方向Eに位置する一対の型部541と、積層体40Zの積層方向Eに直交する方向の回りを囲む囲い型部542とを有している。そして、囲い型部542によって周囲をガイドした状態で、120℃の加熱環境下において30分間、一対の型部541によって積層体40Zを圧縮するように加圧する。このとき、複数のゴムプレート410同士の間に形成された隙間から空気が脱泡される。
【0083】
ゴムプレート410は、母型6の形状(成形するゴム型1の形状)に応じて、母型6が占有するスペースを避けるようにして、母型6の積層方向Eの一方面側及び他方面側に、適宜長さに切断したものを配置し、積層することができる。
また、母型6の周りに複数のゴムプレート410を積層して配置する際には、母型6とゴムプレート410との間には、若干の隙間が形成されてもよい。この若干の隙間は、積層体40Zを加熱しながら加圧する際に埋められる。また、積層体40Zを加熱しながら加圧する際には、各ゴムプレート410同士が密着して一体的に硬化する。
【0084】
その後、ゴムプレート410によるゴム型1Zが所定の硬度になったときに、ゴム型1Zを複数のゴム型部1A、1Bに分割して、ゴム型1Zから母型6を取り出す。
本例においては、キャビティ表面層3を形成せず、ミラブル型シリコーンゴムによってゴム型1Zの全体を成形した。ミラブル型シリコーンゴムは耐熱性に優れているため、キャビティ表面層3を形成しなくても、ゴム型1Zの耐熱性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0085】
1 光照射成形用のゴム型
1A、1B ゴム型部
11 キャビティ
2 一般部
3 キャビティ表面層
41 光透過性ゴム材料
410 ゴムプレート
42 機能性ゴム材料
420 ゴムシート
5 型取り枠
6 母型
7 光照射手段
8 熱可塑性樹脂
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を透過させる性質を有し、透過させた光をキャビティに配置した熱可塑性樹脂に吸収させるよう構成した光照射成形用のゴム型を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂を用いて所定形状の成形品を得る方法としては、一般的には、射出成形、ブロー成形、押出成形、プレス成形等の種々の成形方法がある。
これに対し、例えば、特許文献1においては、成形型(ゴム型)のキャビティ内に溶融状態の熱可塑性樹脂を充填する際に、0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波を、成形型を介して熱可塑性樹脂に照射し、成形型を構成するゴムと熱可塑性樹脂との物性の違いにより、ゴム製の成形型に比べて、熱可塑性樹脂を積極的に加熱することが開示されている。
【0003】
また、例えば、特許文献2においては、ゴム型のキャビティ内に充填した粒子状態の熱可塑性樹脂に0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波を照射し、この熱可塑性樹脂を加熱して溶融させた後、キャビティにおいて残された空間が生じた場合には、溶融状態の熱可塑性樹脂を追加充填することが開示されている。
また、特許文献1、2等においては、ゴム型は、成形する成形品のマスターモデル(手作りの現物等)を液状のシリコーンゴム内に配置し、このシリコーンゴムを硬化させ、硬化後のシリコーンゴムからマスターモデルを取り出して作製している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−216447号公報
【特許文献2】特開2009−241455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、光の吸収性能が低い透明又は半透明の熱可塑性樹脂の成形品を成形する場合、溶融温度が高い熱可塑性樹脂の成形品を成形する場合等には、熱可塑性樹脂を加熱するために、ゴム型を介して照射する光の強度を強くする、又は光を照射する時間を長くする必要が生じる。そのため、ゴム型の劣化が早まって、その使用可能回数が少なくなる問題が生じたり、熱可塑性樹脂の成形品の劣化、表面精度の低下等の問題が生じたりすることがあった。従って、これらの問題を解決することができる新たなゴム型の改良が望まれる。
【0006】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、光吸収機能と耐熱機能との少なくとも一方が付与されたキャビティ表面層を有するゴム型を、キャビティ表面層に母型の表面形状を精度良く転写して製造することができる光照射成形用のゴム型の製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、光を透過させる性質を有し、透過させた光をキャビティに配置した熱可塑性樹脂に吸収させるよう構成した光照射成形用のゴム型を製造する方法であって、
製品形状を有する母型の表面に、光吸収機能と耐熱機能との少なくとも一方を有する機能性ゴム材料を配置するとともに、該機能性ゴム材料の周りに光透過性ゴム材料を配置する配置工程と、
上記機能性ゴム材料と上記光透過性ゴム材料とを一体的に硬化させ、上記機能性ゴム材料によって、上記母型の表面形状を転写したキャビティ表面層を形成するとともに、上記光透過性ゴム材料によって一般部を形成して、上記ゴム型を成形する成形工程と、
上記母型を上記ゴム型から取り出す取出工程と、を含むことを特徴とする光照射成形用のゴム型の製造方法にある(請求項1)。
【発明の効果】
【0008】
上記光照射成形用のゴム型の製造方法においては、光透過性ゴム材料と機能性ゴム材料とを併用することによって、熱可塑性樹脂の加熱性能とゴム型の耐久性能との少なくとも一方を向上させたゴム型を製造することができる。また、本発明においては、かかる性能を向上させたゴム型を容易に製造することができる工夫を行っている。
具体的には、まず、配置工程として、製品形状を有する母型の表面に、光吸収機能と耐熱機能との少なくとも一方を有する機能性ゴム材料を配置するとともに、機能性ゴム材料の周りに光透過性ゴム材料を配置する。次いで、成形工程として、機能性ゴム材料と光透過性ゴム材料とを一体的に硬化させ、機能性ゴム材料によって、母型の表面形状を転写したキャビティ表面層を形成するとともに、光透過性ゴム材料によって一般部を形成して、ゴム型を成形する。
【0009】
このようにして、ゴム型のキャビティの内壁面には、機能性ゴム材料が硬化して光吸収機能と耐熱機能との少なくとも一方が付与されたキャビティ表面層を形成することができる。このキャビティ表面層には、母型の表面形状を精度良く転写することができる。また、機能性ゴム材料と光透過性ゴム材料とを接触させて接合させることにより、二層のゴム材料を有するゴム型を製造することができる。
【0010】
それ故、上記光照射成形用のゴム型の製造方法によれば、光吸収機能と耐熱機能との少なくとも一方が付与されたキャビティ表面層を有するゴム型を、キャビティ表面層に母型の表面形状を精度良く転写して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1にかかる、型取り枠内に配置された母型に、機能性ゴム材料が塗布された状態を示す断面図。
【図2】実施例1にかかる、型取り枠内に光透過性ゴム材料を充填した状態を示す断面図。
【図3】実施例1にかかる、型取り枠からゴム型を取り出し、ゴム型を切り開く状態を示す断面図。
【図4】実施例1にかかる、ゴム型から母型を取り出した状態を示す断面図。
【図5】実施例1にかかる、成形したゴム型を示す断面図。
【図6】実施例1にかかる、ゴム型のキャビティ内に配置した熱可塑性樹脂に光を照射する状態を示す断面図。
【図7】実施例1にかかる、他のゴム型のキャビティ内に配置した熱可塑性樹脂に光を照射する状態を示す断面図。
【図8】実施例1にかかる、横軸に波長(nm)をとり、縦軸に光の透過率(%)をとって、透明のシリコーンゴムに黒色顔料を添加したときの光の透過率の変化を示すグラフ。
【図9】実施例1にかかる、横軸に経過時間をとり、縦軸にシリコーンゴムの硬度をとって、シリコーンゴムが硬化する過程を示すグラフ。
【図10】実施例2にかかる、母型を配置した型取り枠内に光透過性ゴム材料を充填した状態を示す断面図。
【図11】実施例2にかかる、型取り枠から光透過性ゴム材料を取り出し、光透過性ゴム材料を切り開く状態を示す断面図。
【図12】実施例2にかかる、光透過性ゴム材料から母型を取り出した状態を示す断面図。
【図13】実施例2にかかる、母型に機能性ゴム材料を塗布した状態を示す断面図。
【図14】実施例2にかかる、機能性ゴム材料を塗布した母型を再び光透過性ゴム材料の中に配置した状態を示す断面図。
【図15】実施例3にかかる、母型の表面に対してゴムシートを貼り付ける状態を示す断面図。
【図16】実施例3にかかる、ゴムシートを貼り付けた母型をシート袋内に配置した状態を示す断面図。
【図17】実施例3にかかる、シート袋によって押さえ付けられて、母型にゴムシートが密着した状態を示す断面図。
【図18】実施例4にかかる、母型の表面に対してゴムシートを貼り付け、ゴムシートを貼り付けた母型を間に挟みながらゴムプレートを複数積層して、積層体を形成した状態を示す断面図。
【図19】実施例4にかかる、積層体を加熱しながら加圧した状態を示す断面図。
【図20】参考例にかかる、母型を間に挟みながらゴムプレートを複数積層して、積層体を形成した状態を示す断面図。
【図21】参考例にかかる、積層体を加熱しながら加圧した状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上述した光照射成形用のゴム型の製造方法における好ましい実施の形態につき説明する。
上記ゴム型の製造方法において、上記光照射成形用のゴム型を透過させる光(電磁波)としては、短調波から高調波まで広い波長領域の光(電磁波)を用いることができる。
この光としては、0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波(近赤外線)を用いることができる。この場合には、0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波は、ゴム型に吸収される割合に比べて、ゴム型を透過して熱可塑性樹脂に吸収される割合が多く、ゴム型に比べて、熱可塑性樹脂をより強く加熱することが容易である。この場合には、上記ゴム型は、透明のゴム材料によって構成することができる。また、ゴム型は、光を透過させる性質を有する程度で、半透明のゴム材料から構成することもできる。
【0013】
また、上記光としては、0.01〜100mの波長領域を含む電磁波(マイクロ波、高周波)を用いることもできる。この場合には、0.01〜100mの波長領域を含む電磁波によって、ゴム型及び熱可塑性樹脂に誘電加熱が行われ、熱可塑性樹脂における誘電体損失が、ゴム型における誘電体損失よりも大きいことによって、ゴム型に比べて熱可塑性樹脂をより強く加熱することが容易である。この場合には、ゴム型は、透明又は半透明のゴム材料から構成する以外にも、種々の配色のゴム材料から構成することができる。
【0014】
また、上記光照射成形用のゴム型に光を照射する際に用いる光照射手段は、近赤外線(0.78〜2μmの波長)、マイクロ波(0.01〜1mの波長)又は高周波(1〜100mの波長)を照射する装置とすることができる。
【0015】
また、上記配置工程においては、上記機能性ゴム材料を、光吸収機能と耐熱機能との少なくとも一方を有する物質を含有させて構成し、該物質を含有する機能性ゴム材料が塗布された上記母型が型取り枠内に配置された状態を形成する塗布配置工程と、上記機能性ゴム材料が、完全硬化する前の所定の半硬化状態になったときに、上記型取り枠内に上記光透過性ゴム材料を充填する充填工程とを行うことが好ましい(請求項2)。
【0016】
この場合には、まず、塗布配置工程として、製品形状を有する母型の表面に対して、光吸収機能と耐熱機能との少なくとも一方を有する物質を含有させた機能性ゴム材料が塗布され、機能性ゴム材料が塗布された母型が型取り枠内に配置された状態を形成する。
このとき、製品形状を有する母型の表面に対して、機能性ゴム材料を塗布した後、この母型を型取り枠内に配置することができ、型取り枠内に配置した母型に対して機能性ゴム材料を塗布することもできる。また、母型は、必ずしも、機能性ゴム材料を塗布した後すぐに型取り枠内に配置する必要はなく、型取り枠外において所定の半硬化状態に硬化させた後、型取り枠内に配置することができる。
【0017】
次いで、充填工程として、機能性ゴム材料が、完全硬化する前の所定の半硬化状態になったときに、型取り枠内に透明又は半透明の光透過性ゴム材料を充填する。この機能性ゴム材料の所定の半硬化状態は、機能性ゴム材料が母型の表面に留まって、光透過性ゴム材料の中へ溶け込んでしまわない硬度であって、機能性ゴム材料が光透過性ゴム材料と一体的に接合することができる状態とする。
そして、成形工程として、機能性ゴム材料によって、母型の表面形状を転写したキャビティ表面層を形成するとともに、光透過性ゴム材料によって一般部を形成して、ゴム型を成形する。その後、取出工程として、母型をゴム型から取り出す。
【0018】
こうして、ゴム型のキャビティの内壁面には、機能性ゴム材料が硬化して光吸収機能と耐熱機能との少なくとも一方が付与されたキャビティ表面層を形成することができる。
充填工程において、機能性ゴム材料が所定の半硬化状態になったときに、この機能性ゴム材料に対して、光透過性ゴム材料を接触させて化学的に接合させることにより、二層のゴム材料を有するゴム型を製造することができる。また、キャビティ表面層には、母型の表面形状を精度良く転写することができる。
【0019】
また、上記製造方法によって成形したゴム型において、熱可塑性樹脂の加熱性能を向上させた場合には、ゴム型を介してキャビティ内の熱可塑性樹脂に照射する光の多くを、一般部を透過させてキャビティ表面層に吸収させ、このキャビティ表面層から熱可塑性樹脂を加熱することができる。これにより、例えば、光の吸収性能が低い透明又は半透明の熱可塑性樹脂の成形品を成形する場合、溶融温度が高い熱可塑性樹脂の成形品を成形する場合等であっても、熱可塑性樹脂を加熱するために、ゴム型を介して照射する光の強度を低くすることができ、又は光を照射する時間を短くすることができる。そして、ゴム型の寿命を長くし、その許容使用回数を多くすることができる。さらに、熱可塑性樹脂の成形品の劣化、この成形品の表面精度の低下等が生じないようにすることもできる。
また、上記製造方法によって成形したゴム型において、ゴム型の耐久性能を向上させた場合には、熱可塑性樹脂と接触して最も加熱される部分であるキャビティ表面層を、機能性ゴム材料の耐熱性によって保護することができる。これにより、ゴム型を介して照射する光の強度を強くすることもできる。
【0020】
また、上記充填工程においては、上記所定の半硬化状態は、上記機能性ゴム材料が、完全硬化したときの硬度に対して30〜70%の硬度になった状態とすることが好ましい(請求項3)。
この場合には、光透過性ゴム材料を充填するときの機能性ゴム材料の硬度が適切であり、機能性ゴム材料と光透過性ゴム材料とを安定して一体的に接合することができる。
また、上記所定の半硬化状態は、機能性ゴム材料が、完全硬化したときの硬度に対して40〜60%の硬度になった状態とすることが更に好ましいと考える。
【0021】
また、上記ゴム型の製造方法において、上記配置工程においては、上記母型を型取り枠内に配置するとともに、該型取り枠内に上記光透過性ゴム材料を充填する充填工程と、上記母型を、完全硬化する前の上記光透過性ゴム材料から取り出す予備取出工程と、上記機能性ゴム材料を、光吸収機能と耐熱機能との少なくとも一方を有する物質を含有させて構成し、該物質を含有する機能性ゴム材料を、上記母型の表面と、該母型の表面形状を転写した上記光透過性ゴム材料の内表面との少なくとも一方に対して塗布し、上記母型を、完全硬化する前の所定の半硬化状態である上記光透過性ゴム材料の内部に再び配置する塗布配置工程とを行うこともできる(請求項4)。
【0022】
この場合には、まず、充填工程として、製品形状を有する母型を型取り枠内に配置するとともに、型取り枠内に透明又は半透明の光透過性ゴム材料を充填する。
次いで、取出工程として、母型を、完全硬化する前の光透過性ゴム材料から取り出す。
次いで、塗布配置工程として、母型の表面と、母型の表面形状を転写した光透過性ゴム材料の内表面との少なくとも一方に対して、光吸収機能と耐熱機能との少なくとも一方を有する物質を含有させた機能性ゴム材料を塗布し、完全硬化する前の所定の半硬化状態である光透過性ゴム材料の内部に、母型を再び配置する。このとき、光透過性ゴム材料が所定の半硬化状態であることにより、機能性ゴム材料が光透過性ゴム材料の中へ溶け込んでしまうことが防止され、かつ、機能性ゴム材料が光透過性ゴム材料と一体的に接合される。
【0023】
なお、母型の表面に機能性ゴム材料を塗布する場合には、機能性ゴム材料を塗布した母型を光透過性ゴム材料の内表面に配置することになる。一方、光透過性ゴム材料の内表面に機能性ゴム材料を塗布する場合には、機能性ゴム材料を塗布した光透過性ゴム材料の内表面に、母型を配置することになる。
そして、成形工程として、機能性ゴム材料によって、母型の表面形状を転写したキャビティ表面層を形成するとともに、光透過性ゴム材料によって一般部を形成して、ゴム型を成形する。その後、再取出工程として、母型をゴム型から取り出す。
【0024】
また、塗布配置工程において、光透過性ゴム材料が所定の半硬化状態になったときに、この光透過性ゴム材料に対して、機能性ゴム材料を接触させて化学的に接合させることにより、二層のゴム材料を有するゴム型を製造することができる。また、キャビティ表面層には、母型の表面形状を精度良く転写することができる。
また、この場合において成形したゴム型も、上記他の態様の場合と同様に、優れた性能を有する。
【0025】
また、上記塗布配置工程においては、上記母型を上記光透過性ゴム材料の内部に再び配置するときの該光透過性ゴム材料の所定の半硬化状態は、該光透過性ゴム材料が、完全硬化したときの硬度に対して30〜70%の硬度になった状態とすることが好ましい(請求項5)。
この場合には、機能性ゴム材料を塗布するときの光透過性ゴム材料の硬度が適切であり、機能性ゴム材料と光透過性ゴム材料とを安定して一体的に接合することができる。
また、上記所定の半硬化状態は、光透過性ゴム材料が、完全硬化したときの硬度に対して40〜60%の硬度になった状態とすることが更に好ましいと考える。
【0026】
また、上記光吸収機能と耐熱機能との少なくとも一方を有する物質は、カーボンブラック、金属酸化物及び金属水酸化物のうちのいずれか1種又は2種以上であることが好ましい(請求項6)。
この場合には、機能性ゴム材料に光吸収機能と耐熱機能との少なくとも一方を容易に付与することができる。
【0027】
上記光吸収機能を有する物質としては、0.78〜2μmの近赤外線の波長領域を含む電磁波を吸収する種々のものを用いることができる。
光吸収機能を有する物質としては、無機系赤外線吸収剤又は有機系赤外線吸収剤のいずれを用いることもできる。無機系赤外線吸収剤としては、金属粒子、カーボンブラック、酸化錫、酸化亜鉛、酸化銅等の金属酸化物、アンチモンドープ酸化錫、インジウムドープ酸化錫、In、Ga、Al及びSbよりなる群から選ばれた少なくとも1種の元素を含有する酸化亜鉛等の金属錯体化合物などが挙げられる。
【0028】
有機系赤外線吸収剤としては、アントラキノン系色素、シアニン系色素、ポリメチン系色素、アゾメチン系色素、アゾ系色素、ポリアゾ系色素、ジイモニウム系色素、アミニウム系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、インドシアニン系色素、ナフトキノン系色素、インドールフェノール系色素、トリアリルメタン系色素、金属錯体系色素、ジチオールニッケル錯体系色素、アゾコバルト錯体系色素、スクワリリウム系色素などが挙げられる。
【0029】
上記耐熱機能を有する物質としてのカーボンブラックとしては、ランプブラック、各種ファーネスブラック、アセチレンブラック等を用いることができる。その中でも、不純物の含有による、架橋特性及びゴム物性の低下が少ないアセチレンブラックを用いることが好ましい。
【0030】
上記耐熱機能を有する物質としての金属酸化物としては、酸化ケイ素、酸化鉄、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉛、酸化銅、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化カドミウム、酸化コバルト、酸化セリウム等を用いることができる。その中でも、ゴム材料への練り込み易さ、コンパウンド内での安定性等を考慮すると、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化セリウムを用いることが好ましい。
【0031】
上記耐熱機能を有する物質としての金属水酸化物としては、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化アルミニウムを用いることができる。その中でも、水酸化物の安定性、取扱い上の安全性を考慮すると、水酸化カルシウムを用いることが好ましい。
【0032】
また、上記耐熱機能を有する物質として、カーボンブラック、金属酸化物及び金属水酸化物のうちのいずれかを、ゴム材料に対して単独で添加することによって、ゴム材料の耐熱性を向上させることができる。これ以外にも、カーボンブラック、金属酸化物及び金属水酸化物のうちのいずれかに属する2成分以上を併用することにより、ゴム材料の耐熱性を効果的に向上できる場合がある。
【0033】
キャビティ表面層を形成する際に、光吸収機能と耐熱機能との少なくとも一方を有する物質のゴム材料に対する添加量は、1成分を単独使用する場合、2成分以上を併用する場合のいずれであっても、次のようにすることができる。
ゴム材料に液状のシリコーンゴムを用いる場合には、上記物質の添加量は、キャビティ表面層を構成するゴム材料100質量部に対して、0.01〜20質量部とすることが好ましく、0.03〜15質量部とすることがより好ましく、0.05〜10質量部とすることが更に好ましく、0.1〜5質量部とすることが特に好ましい。上記物質の添加量が0.01質量部未満である場合には、ゴム材料に光吸収性又は耐熱性を付加する効果が少なくなる。一方、上記物質の添加量が20質量部を超える場合には、ゴム材料の機械的強度を維持することが困難になる。
【0034】
ゴム材料にミラブル型のシリコーンゴムを用いる場合には、上記物質の添加量は、キャビティ表面層を構成するゴム材料100質量部に対して、1〜200質量部とすることが好ましく、2〜150質量部とすることがより好ましく、5〜100質量部とすることが更に好ましく、10〜50質量部とすることが特に好ましい。上記物質の添加量が1質量部未満である場合には、ゴム材料に光吸収性又は耐熱性を付加する効果が少なくなる。一方、上記物質の添加量が200質量部を超える場合には、ゴム材料の機械的強度を維持することが困難になる。
【0035】
また、上記配置工程においては、上記母型の表面に対して、上記機能性ゴム材料からなるゴムシートを貼り付け、該ゴムシートが貼り付けられた母型が型取り枠内に配置された状態を形成する貼付配置工程と、上記型取り枠内に上記光透過性ゴム材料を充填する充填工程とを行うこともできる(請求項7)。
この場合には、機能性ゴム材料をゴムシートとすることにより、キャビティ表面層を有するゴム型を一層容易に成形することができる。
【0036】
また、上記配置工程においては、上記母型の表面に対して、上記機能性ゴム材料からなるゴムシートを貼り付ける貼付工程と、上記ゴムシートを貼り付けた母型を間に挟みながら、上記光透過性ゴム材料からなるゴムプレートを複数積層して、積層体を形成する積層配置工程とを行い、上記成形工程においては、上記積層体を加熱しながら加圧することもできる(請求項8)。
この場合には、液状の光透過性ゴム材料を用いる代わりに、固形の光透過性ゴム材料からなるゴムプレートを用いることにより、型取り枠内へのゴム材料の充填作業が不要になり、キャビティ表面層及び一般部を有するゴム型の製造が一層容易になる。
【0037】
なお、参考として、上記光照射成形用のゴム型の製造方法は、次のように構成することもできる。
すなわち、本発明の別の参考態様は、光を透過させる性質を有し、透過させた光をキャビティに配置した熱可塑性樹脂に吸収させるよう構成した光照射成形用のゴム型を製造する方法であって、製品形状を有する母型を間に挟みながら、光透過性ゴム材料からなるゴムプレートを複数積層して、積層体を形成する積層配置工程と、上記積層体を加熱しながら加圧し、上記複数のゴムプレートを一体的に硬化させて、上記ゴム型を成形する成形工程と、上記母型を上記ゴム型から取り出す取出工程と、を含むことを特徴とする光照射成形用のゴム型の製造方法にある。
この場合には、上記キャビティ表面層を形成しなくても、上記光透過性ゴム材料に、ミラブル型シリコーンゴム等の耐熱性に優れたゴム材料を用いることにより、耐熱性に優れたゴム型を成形することができる。また、この場合においても、ゴム型を構成するゴム材料には、上述した光吸収機能と耐熱機能との少なくとも一方を有する物質(例えば二酸化ケイ素等)を配合することが好ましい。
【実施例】
【0038】
以下に、本発明の光照射成形用のゴム型の製造方法にかかる実施例につき、図面を参照して説明する。
(実施例1)
本例の光照射成形用のゴム型1の製造方法においては、図6に示すごとく、光を透過させる性質を有し、透過させた光をキャビティ11に配置した熱可塑性樹脂8に吸収させて、熱可塑性樹脂8の成形品を成形するためのゴム型1を製造する。同図において、光を符号Xで示す。
具体的には、この製造方法においては、次の各工程を行うことにより熱可塑性樹脂8の成形品を成形する。
【0039】
まず、配置工程として、図1に示すごとく、製品形状を有する母型6の表面に、光吸収機能と耐熱機能との少なくとも一方を有する機能性ゴム材料42を配置するとともに、機能性ゴム材料42の周りに光透過性ゴム材料41を配置する。
より具体的には、本例の配置工程においては、塗布配置工程として、図1に示すごとく、製品形状を有する母型6の表面に対して、光吸収機能と耐熱機能との少なくとも一方を有する物質を含有させた液状の機能性ゴム材料42が塗布され、機能性ゴム材料42が塗布された母型6が型取り枠5内に配置された状態を形成する。次いで、充填工程として、図2に示すごとく、機能性ゴム材料42が、完全硬化する前の所定の半硬化状態になったときに、型取り枠5内に透明又は半透明の光透過性ゴム材料41を充填する。
【0040】
次いで、成形工程として、機能性ゴム材料42と光透過性ゴム材料41とを一体的に硬化させ、機能性ゴム材料42によって、母型6の表面形状を転写したキャビティ表面層3を形成するとともに、光透過性ゴム材料41によって一般部2を形成して、ゴム型1を成形する。その後、取出工程として、図3、図4に示すごとく、母型6をゴム型1から取り出す。
【0041】
以下に、本例の光照射成形用のゴム型1の製造方法につき、図1〜図9を参照して詳説する。
製品形状を有する母型(マスターモデル)6は、種々の方法によって成型することができ、例えば、手作りの現物とすることができる。
光透過性ゴム材料41及び機能性ゴム材料42は、いずれもシリコーンゴムの材料とすることができる。光透過性ゴム材料41は、透明又は半透明のシリコーンゴム材料から構成し、機能性ゴム材料42は、透明又は半透明のシリコーンゴム材料に対して、光吸収機能と耐熱機能との少なくとも一方を有する物質を混合して構成することができる。本例の光吸収機能と耐熱機能との少なくとも一方を有する物質は、いずれの機能も有するカーボンブラックとしての黒色顔料である。
【0042】
図1に示すごとく、本例において用いる型取り枠5は、成形後のゴム型1(ゴム材料)を離型することが容易な材質から構成することができる。この型取り枠5は、液状のゴム材料を溜めることができる器形状を有している。
母型6は、型取り枠5における底部又は側部の内側面に設けた保持部材51によって、型取り枠5内に保持するよう構成してある。図6に示すごとく、保持部材51によってゴム型1に形成される穴21は、キャビティ11内に粒子状、液状等の熱可塑性樹脂8を充填するための充填口、溶融した熱可塑性樹脂8を溢れ出させる流出口、キャビティ11内の真空引きを行うための吸引口等として利用することができる。
【0043】
図3、図4に示すごとく、取出工程において、母型6をゴム型1から取り出す際には、一対のゴム型部1A、1Bを形成するように、ゴム型1を2つに分断して切り開くことができる。ゴム型1を切り開いた部分は、一対のゴム型部1A、1Bが互いに合わさる分割面(パーティング面)12として機能させることができる。
また、図7に示すごとく、上記各工程を行って成形するゴム型1は、キャビティ11の容積を変化させるよう互いにスライド可能に組み合わせるゴム型1のいずれかのゴム型部とすることもできる。同図において、互いにスライドする方向を矢印Sで示した。この場合には、上記各工程を行ってスライド可能な一方のゴム型部1Aを成形し、さらに別に上記各工程を行ってスライド可能な他方のゴム型部1Bを成形することができる。
【0044】
図8は、横軸に波長(nm)をとり、縦軸に光の透過率(%)をとって、1mmの厚みの透明のシリコーンゴムに対して、光吸収機能及び耐熱機能を有する物質としての黒色顔料を添加したときの光の透過率の変化を示すグラフである。同図において、透明のシリコーンゴムは、200〜2200(nm)の波長の光の多くを透過させることがわかる。これに対し、黒色顔料の添加量を、ゴム材料100質量部に対して0.1質量部、0.5質量部、1質量部と増加させたとき、この添加量に比例して、光の透過率が小さくなっていることがわかる。同図において、0質量部、0.1質量部、0.5質量部、1質量部の表示は、黒色顔料の添加量を示す。
キャビティ表面層3の耐熱機能をより向上させるためには、黒色顔料の添加量を増加させることが好ましいが、この添加量が多くなるとキャビティ11内の熱可塑性樹脂8へ光を透過させることができなくなる。そのため、黒色顔料の添加量及びキャビティ表面層3の厚みは、光の透過率が10〜50(%)となるように決定することができる。
【0045】
また、図8に示すごとく、200〜2200(nm)の波長の領域である近赤外線(光、電磁波)をシリコーンゴム製のゴム型1の表面に照射すると、当該近赤外線の多くを、ゴム型1の一般部2を透過させ、ゴム型1のキャビティ表面層3及びキャビティ11内の熱可塑性樹脂8に吸収させることができることがわかる。
光透過性ゴム材料41の層からなる一般部2は、0.78〜2(μm)の波長領域を含む光(電磁波)の一部(多く)を透過させる性質を有している。機能性ゴム材料42の層からなるキャビティ表面層3は、0.78〜2(μm)の波長領域を含む光を、一般部2よりも多く吸収する性質を有している。
ゴム型1において熱可塑性樹脂8を成形する際には、0.78〜2(μm)の波長領域を含む光を発生させる(0.78〜2(μm)の波長領域内に光強度のピークを有する)ハロゲンランプ等の光照射手段7を用いることができる。
【0046】
機能性ゴム材料42及び光透過性ゴム材料41は、シリコーン主剤と硬化剤とを混合させて硬化させることができる。
機能性ゴム材料42及び光透過性ゴム材料41に用いるシリコーンゴム材料は、常温において硬化する常温硬化タイプと、所定の加熱温度において硬化する高温硬化タイプとがある。なお、高温硬化タイプのシリコーンゴム材料を用いる場合には、加熱するとともに所定の圧力をかけて硬化させる必要がある。
【0047】
図9には、横軸に経過時間をとり、縦軸にシリコーンゴムの硬度をとって、シリコーンゴムが硬化する過程をグラフにして示す。同図は、シリコーンゴムを常温(約20℃)にて放置して硬化させる場合について示す。この硬度は、JISK6253(タイプA)に準拠して求めたものである。シリコーンゴムは、1時間経過する時点で最終硬度(完全硬化したときの硬度)の約50%の硬度まで硬化し、その後、約2日の時間をかけて最終硬度(硬度約39)に到達することがわかる。
本例においては、充填工程において形成するシリコーンゴムの材料の所定の半硬化状態は、シリコーンゴムの材料が、完全硬化したときの硬度に対して30〜70%の硬度になった状態とすることができ、シリコーンゴムの材料が、完全硬化したときの硬度に対して40〜60%の硬度になった状態とすることがより好ましいと考える。
【0048】
次に、本例の光照射成形用のゴム型1の製造方法及び作用効果を、さらに具体的に説明する。
まず、図1に示すごとく、塗布配置工程として、製品形状を有する母型6の表面に対して、黒色顔料を含有させた液状の機能性ゴム材料42を塗布する。機能性ゴム材料42は、シリコーン主剤と硬化剤とを混合させたものに、黒色顔料を配合したものとする。そして、シリコーン主剤、硬化剤及び黒色顔料を混合した機能性ゴム材料42を、真空環境下において5分維持して、機能性ゴム材料42の脱泡処理を行う。そして、機能性ゴム材料42を、母型6の表面と、塗り具(ウエス、ハケ等)とに付け、母型6の表面にできるだけ均一に伸ばす。
【0049】
母型6の表面に塗布する機能性ゴム材料42の厚みは、0.01〜1mmとすることができる。この厚みは、機能性ゴム材料42における黒色顔料の含有量によって、適宜調整することができる。例えば、黒色顔料の含有量が機能性ゴム材料42の100質量部に対して約1質量部である場合には、塗布する厚みを0.01〜0.2mmの範囲内とすることができ、黒色顔料の含有量が機能性ゴム材料42の100質量部に対して約0.2質量部である場合には、塗布する厚みを0.1〜1mmの範囲内とすることができる。
【0050】
次いで、同図に示すごとく、液状の機能性ゴム材料42を塗布した母型6を型取り枠5内に配置する。
次いで、図2に示すごとく、充填工程として、液状の機能性ゴム材料42が、完全硬化する前の所定の半硬化状態になったときに、型取り枠5内に透明又は半透明の液状の光透過性ゴム材料41を充填する。この液状の機能性ゴム材料42の所定の半硬化状態は、機能性ゴム材料42が母型6の表面に留まって、光透過性ゴム材料41の中へ溶け込んでしまわない硬度であって、機能性ゴム材料42が光透過性ゴム材料41と一体的に接合することができる状態とする。
【0051】
具体的には、本例においては、光透過性ゴム材料41を充填するときの機能性ゴム材料42の所定の半硬化状態は、機能性ゴム材料42が、完全硬化したときの硬度に対して40〜60%の硬度になった状態とする。この所定の半硬化状態は、機能性ゴム材料42を、常温(約20℃)の環境下では1〜6時間、70℃に加熱した環境下では5〜30分間維持して形成することができる。なお、機能性ゴム材料42を所定の温度に加熱した場合には、この機能性ゴム材料42の温度を常温に戻した後、型取り枠5内に光透過性ゴム材料41を流し込むことが好ましい。
また、光透過性ゴム材料41は、シリコーン主剤と硬化剤とを混合させたものとする。
【0052】
そして、光透過性ゴム材料41を充填した型取り枠5を、真空環境下に2〜60分間維持して、光透過性ゴム材料41の脱泡処理を行う。また、所定の温度に加熱した環境下において、母型6、機能性ゴム材料42及び光透過性ゴム材料41が配置された型取り枠5を維持して、機能性ゴム材料42及び光透過性ゴム材料41を架橋させて、これらを硬化させるとともに一体化させる。この架橋を行う加熱環境下に維持する時間は、例えば、30℃で12時間、50℃で3時間とする。
【0053】
そして、図3に示すごとく、成形工程として、機能性ゴム材料42から、母型6の表面形状を転写したキャビティ表面層3を形成するとともに、光透過性ゴム材料41から一般部2を形成して、ゴム型1を成形する。
その後、図4に示すごとく、取出工程として、光透過性ゴム材料41が所定の硬度になったときに、ゴム型1を切り開いて、母型6を取り出す。この光透過性ゴム材料41の所定の硬度は、機能性ゴム材料42を母型6から離型することができるとともに、光透過性ゴム材料41が形状を維持することができる硬度とする。
【0054】
こうして、図5に示すごとく、ゴム型1のキャビティ11の内壁面には、機能性ゴム材料42が硬化して光吸収機能及び耐熱機能が付与されたキャビティ表面層3を形成することができる。
本例においては、充填工程において、機能性ゴム材料42が所定の半硬化状態になったときに、この機能性ゴム材料42に対して、光透過性ゴム材料41を接触させて化学的に接合させることにより、二層のゴム材料を有するゴム型1を製造することができる。また、キャビティ表面層3には、母型6の表面形状を精度良く転写することができる。
【0055】
それ故、本例の光照射成形用のゴム型1の製造方法によれば、光吸収機能及び耐熱機能が付与されたキャビティ表面層3を有するゴム型1を、キャビティ表面層3に母型6の表面形状を精度良く転写して製造することができる。
【0056】
また、上記製造方法によって成形したゴム型1によれば、熱可塑性樹脂8の加熱性能の向上として、ゴム型1を介してキャビティ11内の熱可塑性樹脂8に照射する光の多くを、一般部2を透過させてキャビティ表面層3に吸収させ、このキャビティ表面層3から熱可塑性樹脂8を加熱することができる。これにより、例えば、光の吸収性能が低い透明又は半透明の熱可塑性樹脂8の成形品を成形する場合、溶融温度が高い熱可塑性樹脂8の成形品を成形する場合等であっても、熱可塑性樹脂8を加熱するために、ゴム型1を介して照射する光の強度を低くすることができ、又は光を照射する時間を短くすることができる。そして、ゴム型1の寿命を長くし、その許容使用回数を多くすることができる。さらに、熱可塑性樹脂8の成形品の劣化、この成形品の表面精度の低下等が生じないようにすることもできる。
また、ゴム型1の耐久性能の向上として、熱可塑性樹脂8と接触して最も加熱される部分であるキャビティ表面層3を、機能性ゴム材料42の耐熱性によって保護することができる。これにより、ゴム型1を介して熱可塑性樹脂8に照射する光の強度を強くすることもできる。
【0057】
(実施例2)
本例の光照射成形用のゴム型1の製造方法においては、上記実施例1とは異なる順序でゴム型1を成形する。
本例においては、まず、図10に示すごとく、充填工程として、製品形状を有する母型6を型取り枠5内に配置するとともに、型取り枠5内に透明又は半透明の光透過性ゴム材料41を充填する。このとき、光透過性ゴム材料41は、上記実施例1と同様の構成のものを用い、適宜脱泡処理を行う。
【0058】
次いで、図11、図12に示すごとく、取出工程として、光透過性ゴム材料41が所定の硬度になったときに、光透過性ゴム材料41を切り開いて母型6を取り出す。この光透過性ゴム材料41の所定の硬度は、光透過性ゴム材料41を母型6から離型することができるとともに、光透過性ゴム材料41が形状を維持することができる硬度とする。光透過性ゴム材料41を切り開いた部分は、分割面12となる。
【0059】
次いで、図13に示すごとく、塗布配置工程として、母型6の表面と、母型6の表面形状を転写した光透過性ゴム材料41の内表面411との少なくとも一方に対して、光吸収機能及び耐熱機能を有する物質を含有させた機能性ゴム材料42を塗布する。
そして、図14に示すごとく、完全硬化する前の所定の半硬化状態である光透過性ゴム材料41の内部に、母型6を再び配置する。このとき、光透過性ゴム材料41が所定の半硬化状態であることにより、機能性ゴム材料42が光透過性ゴム材料41の中へ溶け込んでしまうことが防止され、かつ、光透過性ゴム材料41が未硬化であることにより、機能性ゴム材料42が光透過性ゴム材料41と一体的に接合される。
【0060】
母型6を光透過性ゴム材料41の内部に再び配置するときの光透過性ゴム材料41の所定の半硬化状態は、光透過性ゴム材料41が、完全硬化したときの硬度に対して40〜60%の硬度になった状態とする。このとき、光透過性ゴム材料41が所定の半硬化状態になっていることにより、機能性ゴム材料42が光透過性ゴム材料41の中へ溶け込んでしまうことが防止され、かつ、機能性ゴム材料42が光透過性ゴム材料41と一体的に接合される。
機能性ゴム材料42は、上記実施例1と同様の構成のものを用い、適宜脱泡処理を行う。
【0061】
そして、成形工程として、機能性ゴム材料42から、母型6の表面形状を転写したキャビティ表面層3を形成するとともに、光透過性ゴム材料41から一般部2を形成して、ゴム型1を成形する。その後、再取出工程として、機能性ゴム材料42が所定の硬度になったときに、母型6をゴム型1から取り出す。この機能性ゴム材料42の所定の硬度は、機能性ゴム材料42を母型6から離型することができるとともに、機能性ゴム材料42が形状を維持することができる硬度とする。
【0062】
本例においては、塗布配置工程において、光透過性ゴム材料41が所定の半硬化状態になったときに、この光透過性ゴム材料41に対して、機能性ゴム材料42を接触させて化学的に接合させることにより、二層のゴム材料を有するゴム型1を製造することができる。また、キャビティ表面層3には、母型6の表面形状を精度良く転写することができる。
【0063】
それ故、本例の光照射成形用のゴム型1の製造方法によっても、光吸収機能及び耐熱機能が付与されたキャビティ表面層3を有するゴム型1を、キャビティ表面層3に母型6の表面形状を精度良く転写して製造することができる。
また、本例において成形したゴム型1も、上記実施例1と同様に、優れた性能を有する。
本例においても、その他の構成は上記実施例1と同様であり、上記実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
【0064】
(確認試験1)
確認試験1においては、上記製造方法によって成形したゴム型1の加熱性能を確認する試験を行った。
発明品として、光透過性ゴム材料41からなる一般部2の厚みを30mmとし、機能性ゴム材料42からなるキャビティ表面層3の厚みを2mmとしたゴム型1のモデルを準備した。また、比較品として、キャビティ表面層3を有しない厚みが30mmのゴム型のモデルも準備した。
【0065】
ゴム型1の光透過性ゴム材料41には、透明シリコーン(信越化学工業(株)製KE−1606)を用い、ゴム型1の機能性ゴム材料42には、透明シリコーン(信越化学工業(株)製KE−1606)に対して黒色顔料(信越化学工業(株)製K−COLOR−BK02)を混合したものを用いた。黒色顔料は、透明シリコーン100質量部に対して0.2質量部含有させた。
加熱溶融させる熱可塑性樹脂8は、透明のアクリル樹脂とした。光照射手段7(光の照射源)としてハロゲンランプ(2.5kW)を用い、光照射手段7からゴム型1の表面までの照射距離を350mmに設定した。
【0066】
そして、光照射手段7からゴム型1に光を照射して、アクリル樹脂が溶融するまでにかかる時間(アクリル樹脂の溶融温度:230℃)を測定した。この測定した時間は、発明品については5分となり、比較品については30分となった。
この結果より、透明のアクリル樹脂(透明又は半透明の熱可塑性樹脂8)の加熱を行う際に、発明品によれば、ゴム型1におけるキャビティ表面層3からキャビティ11内の熱可塑性樹脂8を効果的に加熱できることがわかった。
【0067】
(確認試験2)
確認試験2においては、上記製造方法によって成形したゴム型1の耐熱性能を確認する試験を行った。
発明品として、光透過性ゴム材料41からなる一般部2の厚みを30mmとし、機能性ゴム材料42からなるキャビティ表面層3の厚みを5mmとしたゴム型1のモデルを準備した。また、比較品として、キャビティ表面層3を有しない厚みが30mmのゴム型のモデルも準備した。
【0068】
本確認試験においては、加熱溶融させる熱可塑性樹脂8を、透明又は半透明でないPEEK(ポリエーテル・エーテル・ケトン)樹脂とした。
ゴム型1の光透過性ゴム材料41、ゴム型1の機能性ゴム材料42及び黒色顔料は、確認試験1と同様にした。
そして、光照射手段7からゴム型1に光を照射して、PEEK樹脂を溶融(PEEK樹脂の溶融温度:365℃)させる光照射ショットを繰り返し行い、ゴム型1に亀裂等が生じたショット回数を確認した。この確認した結果は、発明品については10ショット行ってもゴム型1に亀裂が生じなかった一方で、比較品については3ショット目でゴム型1に亀裂が生じた。なお、PEEK樹脂が溶融するまでには5分かかった。
この結果より、PEEK樹脂(透明又は半透明でなく溶融温度が高い熱可塑性樹脂8)の加熱を行う際に、発明品によれば、ゴム型1の耐久性を向上できることがわかった。
【0069】
(実施例3)
本例は、キャビティ表面層3を形成するための機能性ゴム材料42として、固形のゴムシート420を用いたゴム型1の製造方法についての例である。
本例の配置工程においては、図15〜図17に示すごとく、母型6の表面に対して、機能性ゴム材料42からなるゴムシート420を貼り付け、ゴムシート420が貼り付けられた母型6が型取り枠5内に配置された状態を形成する貼付配置工程と、型取り枠5内に液状の光透過性ゴム材料41を充填する充填工程とを行う。
本例で用いるゴムシート420は、ミラブル型シリコーンゴムと呼ばれる高粘度のシリコーンゴムのコンパウンド(種々の添加物を含有する混合物)によって構成されている。ゴムシート420は、高粘度であることによって固形状に形成されている。
【0070】
図15に示すごとく、貼付配置工程において、ゴムシート420としては、粘土状のゴム材料100質量部に硬化剤(C−23N,0.3質量部)を混入し、これをロールで練ってシート状にしたものを用いる。そして、このゴムシート420を、母型6の表面の全体に貼り付ける。次いで、図16に示すごとく、ゴムシート420を貼り付けた母型6を、可とう性を有するシート材から袋状に形成したシート袋52内に配置し、このシート袋52内を吸引ポンプ53によって吸引する。また、母型6に貼り付けたゴムシート420とシート袋52との間には、フェルト等の通気性を有するシートを配置しておく。
【0071】
上記吸引を行うとき、シート袋52内の空気が排気されてシート袋52内が真空状態になる。そして、図17に示すごとく、シート袋52の外気と内気との差圧によってシート袋52がしぼみ、シート袋52によって押さえ付けられて、母型6にゴムシート420が密着する。このとき、母型6の表面形状がゴムシート420に転写される。
このシート袋52の吸引を行う際には、母型6に貼り付けたゴムシート420の加熱を行い、ゴムシート420を、完全硬化する前の所定の半硬化状態にする。この半硬化状態は、上記実施例1に示した状態と同様である。また、ゴムシート420の加熱は、例えば100〜110℃で5〜10分間行うことができる。
【0072】
次いで、半硬化状態のゴムシート420が貼り付けられた母型6を、型取り枠5内に配置する(上記実施例1の図1参照)。
次いで、充填工程として、型取り枠5内に液状の光透過性ゴム材料41を充填する(上記実施例1の図2参照)。この光透過性ゴム材料41は、一般的な液状のシリコーンゴム(例えばRTV(Room Temperature Vulcanizing)型のシリコーンゴム)を用いることができる。光透過性ゴム材料41の充填を行う際には、型取り枠5を真空容器内に配置し、型取り枠5内を真空状態にして行うことができる。そして、この型取り枠5を、真空環境下に所定時間維持して、光透過性ゴム材料41の脱泡処理を行う。
その後、成形工程において、型取り枠5を、所定の加熱環境下(例えば120℃の環境下に30分間)に維持し、光透過性ゴム材料41を硬化させる。そして、取出工程として、光透過性ゴム材料41が所定の硬度になったときに、母型6をゴム型1から取り出す。
【0073】
こうして、ゴムシート420から、母型6の表面形状を転写したキャビティ表面層3を形成するとともに、光透過性ゴム材料41から一般部2を形成して、ゴム型1を成形する。また、母型6をゴム型1から取り出す際に、ゴム型1を複数に分割し、各ゴム型部1A、1Bに分割面12が形成される。
本例においては、機能性ゴム材料42をゴムシート420とすることにより、キャビティ表面層3を有するゴム型1を一層容易に成形することができる。また、機能性ゴム材料42に、耐熱性に優れるミラブル型シリコーンゴムを用いたことにより、カーボンブラック等の物質を添加しなくても、シリコーンゴムに容易に耐熱性能を付加することができる。ただし、ミラブル型シリコーンゴムに、カーボンブラック、二酸化ケイ素等の物質を添加することにより、機能性ゴム材料42の光吸収性、耐熱性等をより向上させることができる。
【0074】
また、特に、ゴム型1において、光の吸収性能が低い透明、半透明、白色等の熱可塑性樹脂の成形を行う場合には、機能性ゴム材料42からなるゴムシート420に光吸収性を有する物質等を添加することができる。また、機能性ゴム材料42と光透過性ゴム材料41とは、いずれもミラブル型シリコーンゴムから構成することができる。
本例においても、ゴム型1の製造方法のその他の構成は、上記実施例1と同様であり、上記実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
【0075】
(実施例4)
本例は、キャビティ表面層3を形成するための機能性ゴム材料42として、固形のゴムシート420を用い、かつ、一般部2を形成するための光透過性ゴム材料41として、固形のゴムプレート410を用いたゴム型1の製造方法についての例である。
図18に示すごとく、本例の配置工程においては、母型6の表面に対して、機能性ゴム材料42からなるゴムシート420を貼り付ける貼付工程と、ゴムシート420を貼り付けた母型6を間に挟みながら、光透過性ゴム材料41からなるゴムプレート410を複数積層して、積層体40を形成する積層配置工程とを行う。
【0076】
本例の機能性ゴム材料42及び光透過性ゴム材料41は、いずれもミラブル型シリコーンゴムから構成することができる。機能性ゴム材料42からなるゴムシート420は、ミラブル型シリコーンゴムに光吸収性を有する物質を添加したものから形成することができ、光透過性ゴム材料41からなるゴムプレート410は、一般的なミラブル型シリコーンゴムから形成することができる。
【0077】
図18に示すごとく、ゴムプレート410は、母型6の形状(成形するゴム型1の形状)に応じて、ゴムシート420を貼り付けた母型6が占有するスペースを避けるようにして、母型6の積層方向Eの一方面側及び他方面側に、適宜長さに切断したものを配置し、積層することができる。ゴムプレート410は、母型6の積層方向Eに直交する方向の周りを囲んで、母型6の内側に配置されるものと、外側に配置されるものとがある。
【0078】
また、積層配置工程において、ゴムシート420を貼り付けた母型6の周りに複数のゴムプレート410を積層して配置する際には、母型6とゴムプレート410との間には、若干の隙間が形成されてもよい。この若干の隙間は、成形工程において、積層体40を加熱しながら加圧する際に埋められる。
【0079】
そして、図19に示すごとく、本例の成形工程においては、積層体40を圧縮型54内に配置し、積層体40を加熱しながら圧縮型54を移動させて、積層体40を加圧する。圧縮型54は、積層体40の積層方向Eに位置する一対の型部541と、積層体40の積層方向Eに直交する方向の回りを囲む囲い型部542とを有している。そして、囲い型部542によって周囲をガイドした状態で、120℃の加熱環境下において30分間、一対の型部541によって積層体40を圧縮するように加圧する。このとき、複数のゴムプレート410同士の間に形成された隙間から空気が脱泡される。また、各ゴムプレート410同士が密着して一体化するとともに、ゴムプレート410とゴムシート420とが密着して一体的に硬化する。
その後、本例の取出工程において、ゴムプレート410による一般部2が所定の硬度になったときに、一般部2及びキャビティ表面層3を複数のゴム型部1A、1Bに分割して、ゴム型1から母型6を取り出す。
【0080】
本例においては、液状の光透過性ゴム材料41を用いる代わりに、固形の光透過性ゴム材料41からなるゴムプレート410を用いることにより、型取り枠5内へのゴム材料の充填作業が不要になり、キャビティ表面層3を有するゴム型1を一層容易に製造することができる
本例においても、ゴム型1の製造方法のその他の構成は、上記実施例1、3と同様であり、上記実施例1、3と同様の作用効果を得ることができる。
【0081】
(参考例)
本例は、キャビティ表面層を形成せず、ミラブル型シリコーンゴムのゴムプレート410を用いてゴム型1Zを製造する例である。
本例においては、図20に示すごとく、母型6を間に挟みながら、光透過性ゴム材料41からなるゴムプレート410を複数積層して、積層体40Zを形成する。
【0082】
そして、図21に示すごとく、積層体40Zを圧縮型54内に配置し、積層体40Zを加熱しながら圧縮型54を移動させて、積層体40Zを加圧する。圧縮型54は、積層体40Zの積層方向Eに位置する一対の型部541と、積層体40Zの積層方向Eに直交する方向の回りを囲む囲い型部542とを有している。そして、囲い型部542によって周囲をガイドした状態で、120℃の加熱環境下において30分間、一対の型部541によって積層体40Zを圧縮するように加圧する。このとき、複数のゴムプレート410同士の間に形成された隙間から空気が脱泡される。
【0083】
ゴムプレート410は、母型6の形状(成形するゴム型1の形状)に応じて、母型6が占有するスペースを避けるようにして、母型6の積層方向Eの一方面側及び他方面側に、適宜長さに切断したものを配置し、積層することができる。
また、母型6の周りに複数のゴムプレート410を積層して配置する際には、母型6とゴムプレート410との間には、若干の隙間が形成されてもよい。この若干の隙間は、積層体40Zを加熱しながら加圧する際に埋められる。また、積層体40Zを加熱しながら加圧する際には、各ゴムプレート410同士が密着して一体的に硬化する。
【0084】
その後、ゴムプレート410によるゴム型1Zが所定の硬度になったときに、ゴム型1Zを複数のゴム型部1A、1Bに分割して、ゴム型1Zから母型6を取り出す。
本例においては、キャビティ表面層3を形成せず、ミラブル型シリコーンゴムによってゴム型1Zの全体を成形した。ミラブル型シリコーンゴムは耐熱性に優れているため、キャビティ表面層3を形成しなくても、ゴム型1Zの耐熱性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0085】
1 光照射成形用のゴム型
1A、1B ゴム型部
11 キャビティ
2 一般部
3 キャビティ表面層
41 光透過性ゴム材料
410 ゴムプレート
42 機能性ゴム材料
420 ゴムシート
5 型取り枠
6 母型
7 光照射手段
8 熱可塑性樹脂
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を透過させる性質を有し、透過させた光をキャビティに配置した熱可塑性樹脂に吸収させるよう構成した光照射成形用のゴム型を製造する方法であって、
製品形状を有する母型の表面に、光吸収機能と耐熱機能との少なくとも一方を有する機能性ゴム材料を配置するとともに、該機能性ゴム材料の周りに光透過性ゴム材料を配置する配置工程と、
上記機能性ゴム材料と上記光透過性ゴム材料とを一体的に硬化させ、上記機能性ゴム材料によって、上記母型の表面形状を転写したキャビティ表面層を形成するとともに、上記光透過性ゴム材料によって一般部を形成して、上記ゴム型を成形する成形工程と、
上記母型を上記ゴム型から取り出す取出工程と、を含むことを特徴とする光照射成形用のゴム型の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の光照射成形用のゴム型の製造方法において、上記配置工程においては、上記機能性ゴム材料を、光吸収機能と耐熱機能との少なくとも一方を有する物質を含有させて構成し、該物質を含有する機能性ゴム材料が塗布された上記母型が型取り枠内に配置された状態を形成する塗布配置工程と、
上記機能性ゴム材料が、完全硬化する前の所定の半硬化状態になったときに、上記型取り枠内に上記光透過性ゴム材料を充填する充填工程と、を行うことを特徴とする光照射成形用のゴム型の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の光照射成形用のゴム型の製造方法において、上記充填工程においては、上記所定の半硬化状態は、上記機能性ゴム材料が、完全硬化したときの硬度に対して30〜70%の硬度になった状態とすることを特徴とする光照射成形用のゴム型の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の光照射成形用のゴム型の製造方法において、上記配置工程においては、上記母型を型取り枠内に配置するとともに、該型取り枠内に上記光透過性ゴム材料を充填する充填工程と、
上記母型を、完全硬化する前の上記光透過性ゴム材料から取り出す予備取出工程と、
上記機能性ゴム材料を、光吸収機能と耐熱機能との少なくとも一方を有する物質を含有させて構成し、該物質を含有する機能性ゴム材料を、上記母型の表面と、該母型の表面形状を転写した上記光透過性ゴム材料の内表面との少なくとも一方に対して塗布し、上記母型を、完全硬化する前の所定の半硬化状態である上記光透過性ゴム材料の内部に再び配置する塗布配置工程と、を行うことを特徴とする光照射成形用のゴム型の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の光照射成形用のゴム型の製造方法において、上記塗布配置工程においては、上記母型を上記光透過性ゴム材料の内部に再び配置するときの該光透過性ゴム材料の所定の半硬化状態は、該光透過性ゴム材料が、完全硬化したときの硬度に対して30〜70%の硬度になった状態とすることを特徴とする光照射成形用のゴム型の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の光照射成形用のゴム型の製造方法において、上記光吸収機能と耐熱機能との少なくとも一方を有する物質は、カーボンブラック、金属酸化物及び金属水酸化物のうちのいずれか1種又は2種以上であることを特徴とする光照射成形用のゴム型の製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の光照射成形用のゴム型の製造方法において、上記配置工程においては、上記母型の表面に対して、上記機能性ゴム材料からなるゴムシートを貼り付け、該ゴムシートが貼り付けられた母型が型取り枠内に配置された状態を形成する貼付配置工程と、
上記型取り枠内に上記光透過性ゴム材料を充填する充填工程と、を行うことを特徴とする光照射成形用のゴム型の製造方法。
【請求項8】
請求項1に記載の光照射成形用のゴム型の製造方法において、上記配置工程においては、上記母型の表面に対して、上記機能性ゴム材料からなるゴムシートを貼り付ける貼付工程と、
上記ゴムシートを貼り付けた母型を間に挟みながら、上記光透過性ゴム材料からなるゴムプレートを複数積層して、積層体を形成する積層配置工程と、を行い、
上記成形工程においては、上記積層体を加熱しながら加圧することを特徴とする光照射成形用のゴム型の製造方法。
【請求項1】
光を透過させる性質を有し、透過させた光をキャビティに配置した熱可塑性樹脂に吸収させるよう構成した光照射成形用のゴム型を製造する方法であって、
製品形状を有する母型の表面に、光吸収機能と耐熱機能との少なくとも一方を有する機能性ゴム材料を配置するとともに、該機能性ゴム材料の周りに光透過性ゴム材料を配置する配置工程と、
上記機能性ゴム材料と上記光透過性ゴム材料とを一体的に硬化させ、上記機能性ゴム材料によって、上記母型の表面形状を転写したキャビティ表面層を形成するとともに、上記光透過性ゴム材料によって一般部を形成して、上記ゴム型を成形する成形工程と、
上記母型を上記ゴム型から取り出す取出工程と、を含むことを特徴とする光照射成形用のゴム型の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の光照射成形用のゴム型の製造方法において、上記配置工程においては、上記機能性ゴム材料を、光吸収機能と耐熱機能との少なくとも一方を有する物質を含有させて構成し、該物質を含有する機能性ゴム材料が塗布された上記母型が型取り枠内に配置された状態を形成する塗布配置工程と、
上記機能性ゴム材料が、完全硬化する前の所定の半硬化状態になったときに、上記型取り枠内に上記光透過性ゴム材料を充填する充填工程と、を行うことを特徴とする光照射成形用のゴム型の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の光照射成形用のゴム型の製造方法において、上記充填工程においては、上記所定の半硬化状態は、上記機能性ゴム材料が、完全硬化したときの硬度に対して30〜70%の硬度になった状態とすることを特徴とする光照射成形用のゴム型の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の光照射成形用のゴム型の製造方法において、上記配置工程においては、上記母型を型取り枠内に配置するとともに、該型取り枠内に上記光透過性ゴム材料を充填する充填工程と、
上記母型を、完全硬化する前の上記光透過性ゴム材料から取り出す予備取出工程と、
上記機能性ゴム材料を、光吸収機能と耐熱機能との少なくとも一方を有する物質を含有させて構成し、該物質を含有する機能性ゴム材料を、上記母型の表面と、該母型の表面形状を転写した上記光透過性ゴム材料の内表面との少なくとも一方に対して塗布し、上記母型を、完全硬化する前の所定の半硬化状態である上記光透過性ゴム材料の内部に再び配置する塗布配置工程と、を行うことを特徴とする光照射成形用のゴム型の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の光照射成形用のゴム型の製造方法において、上記塗布配置工程においては、上記母型を上記光透過性ゴム材料の内部に再び配置するときの該光透過性ゴム材料の所定の半硬化状態は、該光透過性ゴム材料が、完全硬化したときの硬度に対して30〜70%の硬度になった状態とすることを特徴とする光照射成形用のゴム型の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の光照射成形用のゴム型の製造方法において、上記光吸収機能と耐熱機能との少なくとも一方を有する物質は、カーボンブラック、金属酸化物及び金属水酸化物のうちのいずれか1種又は2種以上であることを特徴とする光照射成形用のゴム型の製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の光照射成形用のゴム型の製造方法において、上記配置工程においては、上記母型の表面に対して、上記機能性ゴム材料からなるゴムシートを貼り付け、該ゴムシートが貼り付けられた母型が型取り枠内に配置された状態を形成する貼付配置工程と、
上記型取り枠内に上記光透過性ゴム材料を充填する充填工程と、を行うことを特徴とする光照射成形用のゴム型の製造方法。
【請求項8】
請求項1に記載の光照射成形用のゴム型の製造方法において、上記配置工程においては、上記母型の表面に対して、上記機能性ゴム材料からなるゴムシートを貼り付ける貼付工程と、
上記ゴムシートを貼り付けた母型を間に挟みながら、上記光透過性ゴム材料からなるゴムプレートを複数積層して、積層体を形成する積層配置工程と、を行い、
上記成形工程においては、上記積層体を加熱しながら加圧することを特徴とする光照射成形用のゴム型の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図9】
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【図11】
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【図16】
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【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2012−126125(P2012−126125A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244521(P2011−244521)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(396021575)テクノポリマー株式会社 (278)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(396021575)テクノポリマー株式会社 (278)
【Fターム(参考)】
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