説明

光照射装置および光照射装置を具備した貯蔵装置

【課題】食品等の保存性を高め、動植物の活動代謝の活性化をはかる効果を持つ多種、多様の波長の光を照射することができる光照射装置を提供する。
【解決手段】紫外LED光源12の照射方向に、紫外光をそのまま透過する透明フィルタ13、および紫外光が照射されることで450nm近辺の青色波長を励起する蛍光材料を用いた青色フィルタ14、および紫外光が照射されることで650nm近辺の赤色波長を励起する蛍光材料を用いた赤色フィルタ15を配置して収納室11内に複数の波長の光を照射し、食品等の保存性を高める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な波長の光を、例えば食品に照射することにより、前記食品の保存性を高める光照射装置およびそれを具備した冷蔵庫等の貯蔵装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、様々な波長を持つ光の照射によって、殺菌や食品の保存性向上を図っている。例えば、紫外領域を含む波長は殺菌効果を有し、収納室内の壁面に付着している微生物の増殖機能を不活性化することで、食品の微生物によって生じる変色や腐敗臭、貯蔵品表面のネト発生を遅らせる効果がある。
【0003】
また、650nm近辺の光波長は、葉緑素を持つ野菜を保存している場合、葉の表面にある色素を用いて光合成を行う際に植物が使う色素の吸収スペクトルを持つため、クロロフィルの増量等の効果が得られることが知られている。
【0004】
しかし、野菜の種類によって最も適した光の波長は異なり、1種類の光源だけでは様々な野菜類に最適な波長を照射することはできない。
【0005】
この課題を解決する為に、赤・青・緑の3色のLEDを設け、これらの発光色や光強度の組合せを変更することで、野菜の種類に応じて照射する波長を変更する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
図8は、上記特許文献1に記載された野菜保存用照射装置を示すものである。
【0007】
図8に示すように、冷蔵庫101には、収納室102が備え付けられている。この収納室102は、引出し状に構成され、食品の出し入れを可能にしている。
【0008】
収納室102の上方には、照射板103が設置されている。この照射板103は、3つのエリア104a、104b、104cに区分されている。
【0009】
また、収納室102は、仕切り板105によって3つのエリア102a、102b、102cに区画されており、これらのエリア102a、102b、102cを、照射板3のエリア104a、104b、104cに対応させている。
【0010】
照射板103には、赤・青・緑の3種類のLEDが交互に複数配置されている。このそれぞれのLEDの発光・非発光、または光強度の調整により、様々な波長の光を照射する。
【特許文献1】特開2005−65622号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来の特許文献1に記載の野菜保存用照射装置は、複数種の波長のLEDを用いて様々な波長の光を供給することができる反面、それぞれのLEDの発光強度を調整する機能が必要である。このような制御装置は一般的に非常に複雑なものとなり実用性に欠ける。
【0012】
また、食品の入れ替え毎に光の波長の変更が必要で、使用者には食品の保存性と光の波長の関係についての特別な知識が求められ、使い勝手の良いものではない。しかも、数多くの食品において、前記光の波長による栄養素の増加については、未だ原理を解明されていないものも含めて非常に多数あり、一種一様である。
【0013】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、より簡潔な構成として簡単に操作でき、特別な知識を必要とせず、食品等の保存性を高める効果を持つ多種多様の波長の光が照射できる光照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記従来の課題を解決するために、本発明の光照射装置は、一つの光源を複数種のフィルタを通すことで、それぞれのフィルタに応じた複数の波長の光を照射することを可能とするものである。
【0015】
したがって、照射対象物が食品の場合は、食品の保存性を向上する波長の光を収納室内に照射することで、複雑な設定をせずとも多くの食品に対応することができる。
【発明の効果】
【0016】
したがって、本発明によれば、ひとつの光源、および簡易な構成で、対象物に多種多様の光を照射することができ、その対象物が食品であれば、食品の保存性を高める効果を持つ波長の光を照射することができる。
【0017】
さらには、光の照射対象物を動植物とすることにより、動植物の活動代謝を助長、活性化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
請求項1に記載の発明は、光源と、前記光源から放出された光の波長を変化させる複数のフィルタを備え、前記光源から放出された光を、前記フィルタを透過して複数の波長で対象物に照射するものである。
【0019】
かかる構成とすることにより、ひとつの光源により、複数の波長の光が生成できるため、紫外光による殺菌効果の他に、400から800nmの波長による野菜の光合成効果等、複数の観点からの保存性の向上あるいは活動のための代謝向上等の効果を得ることができる。
【0020】
つまり、様々な食品の栄養素の増加を促進する様々な波長の光を照射することで、複雑な設定をせずとも多種多様の食品の保存性向上あるいは、動植物の活動代謝の助長、向上に対応できる。
【0021】
請求項2に記載の発明は、前記光源と前記各フィルタに、相対的に移動関係をもたらす移動手段を設けたものである。
【0022】
かかる構成とすることにより、前記各フィルタに光源の光を順次照射することができ、その結果、対象物に照射する光の波長を経時的に変化させ、様々な波長の光を供給することができる。
【0023】
請求項3に記載の発明は、前記各フィルタによる光の照射量を制御する制御手段を設けたもので、対象物に適応した光照射が可能となるものである。
【0024】
請求項4に記載の発明は、前記制御手段を、比率が異なる前記各フィルタの面積としたもので、かかる構成によれば、移動手段を一様の移動速度で運転することにより、異なる波長の光の照射量が所定の比率で得られるため、移動手段の制御を簡潔なものとすることができる。
【0025】
請求項5に記載の発明は、前記制御手段を、前記移動手段による移動速度としたもので、かかる構成によれば、前記各フィルタの面積を対象物に応じて設定する必要が無く、所定の光を得る波長のフィルタを照射するときに移動速度を制御すればよいため、フィルタの構成が簡略化でき、また様々な対象物に対応できるため、汎用性が増すものである。
【0026】
請求項6に記載の発明は、前記制御手段を、前記光源による照射時間としたもので、かかる構成によれば、フィルタ面積あるいは、前記フィルタ移動速度が一定または間欠動作であっても、光源の照射時間を制御することによって対象物に応じた波長の光をその対象物に適した量で照射することができる。
【0027】
請求項7に記載の発明は、前記光源による光を、280から400nmの範囲の波長を有する紫外光としたものである。
【0028】
かかる構成とすることにより、様々な波長の光に変換する蛍光材料を前記フィルタに適用することで、紫外光に限らず多種多様の波長の光を照射することができる。
【0029】
請求項8に記載の発明は、前記光源による光を、複数の光の波長成分によって生成された白色光としたものである。
【0030】
かかる構成とすることにより、前記白色光内に含まれる波長のうち、必要な波長だけを前記フィルタを通すことにより、白色以外にも、多種、多様な波長の光を照射することができる。
【0031】
請求項9に記載の発明は、前記各フィルタに、通過光を拡散させる拡散性をもたせたもので、所定の領域に満遍なく光を照射することができる。したがって、照射斑による弊害を改善することができる。
【0032】
請求項10に記載の発明は、前記各フィルタに、通過光を直進させる直進性をもたせたもので、広域にわたって照射する光の波長の種類を区画することができ、局部的に特定波長の光を照射するときに有用である。
【0033】
請求項11に記載の発明は、前記光源、および前記フィルタによって生成された光によって照明を行うもので、照明専用の光源、あるいは補助照明として利用でき、用途展開が可能となる。
【0034】
請求項12に記載の発明は、上記光照射装置を具備した貯蔵装置とするもので、貯蔵装置の殺菌、あるいは貯蔵物の活動代謝の活性化、さらには品質維持等に適用でき、貯蔵装置の付加価値を高めることができるものである。
【0035】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0036】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における光照射装置を具備した冷蔵庫の縦断面図を示すものである。
【0037】
図1において、冷蔵庫本体1は、ABS等の樹脂体を真空成型した内箱と、プリコート鋼板等の金属材料を用いた外箱とで構成された空間に、発泡断熱体を注入してなる断熱壁を備えた筐体構造である。
【0038】
冷蔵庫本体1は、内部が複数の断熱区画に区分されており、各断熱区画空間を収納室としている。各収納室は、上から冷蔵室2、切替え室3、野菜室4、そして最下部の冷凍室5とされ、冷蔵室2は、回転式扉2aによって開閉され、切替え室3、野菜室4、冷凍室5は、引出し式の扉3a、4a、5aによって開閉される構成となっている。
【0039】
冷蔵室2は、冷蔵保存のために凍らない温度を下限に通常1〜5℃の範囲で設定されているが、収納物によって、ユーザーが自由に温度設定を切り替えることができる構成である。また、ワインや根野菜等の保鮮のために、例えば10℃前後の若干高めの温度設定とする場合もある。
【0040】
また、冷蔵室2内に設けた貯蔵ケース6は、肉魚や肉魚類加工食品、乳製品等の保鮮性向上のために、比較的低めの温度、例えば−3〜1℃の範囲で設定される。
【0041】
切替え室3は、ユーザーの設定により温度設定が変更できる構成であり、冷凍室温度帯から微凍結温度帯であるパーシャルフリージング、冷蔵温度帯まで所定の温度範囲に設定にすることができる。
【0042】
野菜室4は、冷蔵室2と同等もしくは若干高い温度設定の2℃〜7℃の範囲とすることが多い。この野菜室4において、低温高湿にするほど葉野菜の鮮度を長期間維持することが可能となる。
【0043】
冷凍室5は、冷凍保存のために通常−22〜−18℃の範囲で設定されているが、冷凍保存状態の向上のために、例えば−30℃や−25℃の低温で設定されることもある。
【0044】
本実施の形態1では、冷蔵室2、切替え室3、および野菜室4の天面にそれぞれ、照射装置7a、7b、7cを設けている。この照射装置7a、7b、7cの光源は、280から400nmの範囲の波長を有する紫外LED、または複数色のLED、または蛍光体の組合せによって構成された白色LEDであり、この照射方向に光の波長を変えるフィルタが複数設けられている。
【0045】
次に、図2により照射装置7a、7b、7cの構成について説明する。ここでは、以降の説明の便宜上、冷蔵室2、切替え室3、野菜室4を総称して収納室11とし、説明を進める。
【0046】
図2は、本発明の実施の形態1における照射装置を設けた収納室の側面概要図である。
【0047】
図2において、収納室11の天面には、適宜手段にて取付けられた紫外LED光源12が設けられている。紫外LED光源12はひとつの紫外LEDでも構成しているが、さらなる光量が必要であれば複数の紫外LEDで構成してもよい。
【0048】
紫外LED光源12の照射方向には、紫外光をそのまま透過する透明フィルタ13と、前記紫外光が照射されることで450nm近辺の青色波長を励起する蛍光材料を用いた青色フィルタ14、および前記紫外光が照射されることで650nm近辺の赤色波長を励起する蛍光材料を用いた赤色フィルタ15が図2のように交互に配置されている。このように3種類のフィルタ13、14、15を配置することで、収納室11内に3種類の波長の光を照射することができる。
【0049】
前記照射される3種類の波長光は、それぞれ直進性を有しているため、各光を区画して照射することができる。
【0050】
さらに、各フィルタ13、14、15に偏光機能を付随し、収納室11への光の拡散性を高めることで、収納室11内を満遍なく照射することが可能となる。
【0051】
ここで、それぞれの波長の光が食品にもたらす効果を例に挙げて説明する。
【0052】
まず、紫外領域の波長は、収納室11内の壁面や貯蔵品表面に付着している微生物の増殖機能を不活性化する。その結果、食品の微生物によって生じる変色や腐敗臭、貯蔵品表面のネト発生を遅らせることが可能となり、収納室11内部の衛生性を保つ効果が得られる。
【0053】
また、きのこ類や魚類には、骨や歯の成長に欠かせないビタミンとしてよく知られているビタミンDの前駆物質を多く含むものがあり、それらを保存する場合には紫外線が照射されることで分子が励起され、ビタミンDへと変換される。よって、紫外光を収納室11内に照射することで、収納室11内の特定の食品、例えばしらす干しであれば、保存前と比較してビタミンDの含有量を高めることができる。
【0054】
また、りんごや、ブルーベリー、いちご、青紫蘇、ブロッコリ、なす、紫芋等に多く含まれる生体内の赤い植物色素であるアントシアニンは、5℃から10℃程度の比較的低温下で290nmから320nmの範囲にある波長の紫外光を照射することで生成が促進される。なお、アントシアニンは、ポリフェノールの一種であり、目に良いという効果の他に、抗酸化作用による老化防止、動脈硬化抑制作用等の効果が検証されており、非常に体に良いとされている物質で、かかる波長の紫外光を照射することにより、保存中に栄養価を高めることが可能となる。
【0055】
例えば、収納室11を、野菜の保存に適した温度に設定し、葉緑素を持つ野菜を保存している場合、紫外光とともに可視光である400nmから800nmの範囲の波長を有する光を同時に照射することで、太陽光線に類似した光を照射することが可能となる。
【0056】
前記400nmから800nmの範囲の波長は、植物が葉の表面にある色素を用いて光合成を行う際に使う色素の吸収スペクトルで、クロロフィルの増量等の効果が得られる。特に葉緑素を持つ野菜は、450nm付近の青色波長と、650nm付近の赤色波長を同時に照射すると効果が高い。
【0057】
また、りんごや、ブルーベリー、いちご、青紫蘇、ブロッコリ、なす、紫芋等に多く含まれる生体内の赤い植物色素であるアントシアニンは、収納室11内の温度を、野菜の保存に適した温度に設定し、紫外光とともに、赤色光である650nm付近の波長の光を照射することで最も生成が促進される。
【0058】
また、特に、450nm付近の青色の波長を有するLEDを照射することで、カビの増殖を抑制することが可能であり、収納室11をより清潔に保つことができ、保存性が向上する。
【0059】
以上のように、様々な光の波長によって収納室11内の食品に保存性を高める様々な効果を与えることができる。
【0060】
本実施の形態1では、3種類(3色)のフィルタ13、14、15により、3波長の光を照射しているが、食品に効果を与える波長の光であれば、この3種類に限らず他の波長の光でも良く、またさらに数多くの波長の光をつくるフィルタを設けても良い。
【0061】
また、紫外LED光源の代わりに、複数の光の波長成分によって生成された白色LED光源を用いても良い。この場合は、フィルタ13、14、15を白色LED光源の照射光から特定の波長を通過する材料で構成することにより、白色LED光源から様々な波長の光を取り出すことができる。
【0062】
図3および図4は本発明の実施の形態1におけるフィルタの配置構成の一例を示す上面図である。
【0063】
図3、図4に示すようにフィルタ13、14、15の配置は任意であり、収納室11内を全ての波長の光が照射できるように工夫を行っている。
【0064】
図3に示す構成は、帯状のフィルタ13、14、15の3種類を並設して1ブロックとし、このブロックを2個並設した構成である。
【0065】
図4に示す構成は、矩形状のフィルタ13、14、15の3種類を所定のパターンで格子状に配置したものである。
【0066】
上記図3、図4の構成は、いずれも収納室11内に広範囲に亘って所定の波長成分を照射することができる。また、必要に応じて光拡散型のレンズあるいはカバー(いずれも図示せず)を用いてフィルタ13、14、15の波長成分をさらに広範囲に照射できるようにしてもよい。
【0067】
さらに、図3に示すように各フィルタ13、14、15のそれぞれの面積を異なる大きさとし、対象とする食品に特に大きく作用する波長成分を主体に照射する構成とすることもできる。
【0068】
例えば、光の照射によって葉緑素を持つ野菜のビタミンCの増加を図る際に、青色波長400〜500nmと赤色波長600〜700nmを同時に照射する。この場合、青色波長の光強度の割合が80%程度で最もビタミンCの含有量が多くなり、逆に赤色波長の光強度の割合が15%程度のときに最も新鮮味が増す。
【0069】
上記青色波長、赤色波長の特性から、ビタミンCの含有量と新鮮味のバランスを考慮する場合、青色波長の光強度の割合(面積割合)は、37〜70%が最適と考えられる。この最適な割合を実現するために、フィルタ13、14、15の面積比を調節すればよい。
【0070】
上記の如く対象物に応じた特定の波長を制御する手段として、各フィルタ13、14、15の光の透過率をそれぞれ変化させ、結果として光照射の割合を調節しても良い。
【0071】
また、照射装置7a、7b、7cを照明として使用することで、例えば冷蔵室2あるいは野菜室4等の収納室に専用の庫内灯を設ける必要が無くなり、コストダウンをはかることができる。
【0072】
以上のように、本実施の形態1の光照射装置は、ひとつの紫外LED光源12とこの光源12の波長を変換するフィルタ13、14、15によって、簡易な構成で、多くの食品に適応できる様々な波長の光を得ることができ、食品の特性、栄養素等を引出す光照射を行うことができるものである。
【0073】
なお、必要に応じて、光源をそれぞれのフィルタに対応して設けることもできる。かかる構成とすれば、各光源の独立した制御で、さらに異なる光照射が得られる。
【0074】
(実施の形態2)
図5は、本発明の実施の形態2における照射装置の側面図である。図6は、本発明の実施の形態2における照射装置の上面図である。
【0075】
図5、図6において、収納室21の上面には、紫外LED光源22と、この紫外LED光源22の照射側と収納室21の間に位置する円板状あるいは多角形板状のフィルタ23が設けられている。フィルタ23の中心には、軸24が設けられており、この軸24はパルスモータ(以下、単にモータと称す)25の回転軸を構成している。モータ25は、紫外LED光源22とフィルタ23との間において、相対的に移動関係をもたらす移動手段である。したがって、フィルタ23は、モータ25によって回転する。モータ25および紫外LED光源22は、制御装置30によってその回転(連続回転、間欠回転)あるいは光照射のための通電が制御される。
【0076】
フィルタ23は、図6に示す如く、紫外LED光源22の紫外光をそのまま透過する透明フィルタ、および紫外光が照射されることで450nm近辺の青色波長を励起する蛍光材料を用いた青色フィルタ27、および紫外光が照射されることで650nm近辺の赤色波長を励起する蛍光材料を用いた赤色フィルタ28を具備し、各フィルタ26、27、28は軸24を中心に放射状に広がる形状であり、その面積は所定の割合に設定され、3種類が連続しないように配置されている。
【0077】
本実施の形態2においては、前述の3種類のフィルタ26、27、28を1ブロックとして2ブロックが図6に示す如く配置されている。
【0078】
フィルタ26、27、28は全て拡散性を持ち、収納室21内を満遍なく照射することができるように構成されている。
【0079】
次に、本発明の実施の形態2における照射装置の動作について、図7を用いて説明する。図7は、本発明の実施の形態2におけるフィルタの回転に伴い変化する照射波長の状態を示す特性図である。
【0080】
紫外LED光源22が点灯すると、モータ25が動作し、このモータ25に軸24を介して連結されたフィルタ23が回転する。したがって、フィルタ23を構成する透明フィルタ26、および青色フィルタ27、および赤色フィルタ28は、フィルタ23が1回転するとその全てが紫外LED22の照射側を通過する。
【0081】
例えば、各色のフィルタ26、17、28の通過順が、赤色フィルタ28、青色フィルタ27、透明フィルタ26a、赤色フィルタ28b、青色フィルタ27b、透明フィルタ26bの順に紫外LED22の照射側を通過するように配置すると、図7に示すように、照射される光の波長は経時的に変化する。また、本実施の形態2では一つ当りの赤色フィルタ26の面積を、他のフィルタ27、28の一つ当り面積の2倍としているので、モータ25の回転速度が一定の場合、赤色波長の照射時間も他の照射時間の2倍となる。この照射時間の設定は、透明、青色についても同様に設定できる。
【0082】
かかる照射時間の設定は、前述の如く各フィルタ26、27、28の各面積を一定にして、モータ25の回転を制御し、該当する波長のフィルタ照射時は、その回転速度を遅くあるいは停止する等し、停止時間の長さを制御して紫外LED22による照射時間を制御する構成としても同様の効果が期待できるものである。
【0083】
それぞれの波長の光が食品にもたらす効果については、先の実施の形態1で説明した通りである。
【0084】
さらに加えれば、紫外光の波長、及び青色波長には、ある間隔で点滅照射することで殺菌効果を増加させることも知られている。本実施の形態2では、経時的に照射される波長が変化するため、点滅照射と同様の効果が得られることも考えられる。また、フィルタ26、27、28の一部に如何なる波長も通さない遮光板を挿入することで、意図的に点滅効果を作り出すこともできる。
【0085】
本実施の形態2ではフィルタ26、27、28の3種類により、3波長の光を照射しているが、食品に効果を与える波長の光であれば、この3種に限らず他の波長の光でも良く、またさらに数多くの波長の光をつくるフィルタを設けても良い。
【0086】
また、紫外LED光源22の代わりに、複数の光の波長成分によって生成された白色LED光源を用いても良い。この場合は、各フィルタ26、27、28を白色LED光源の照射光から特定の波長を通過する材料で構成することにより、白色LED光源からは様々な波長の光を取り出すことができる。
【0087】
また、図1に示す照射装置7a、7b、7cを照明として使用することで、専用の庫内灯を設ける必要が無くなり、コストダウンにも繋がる。特に、本実施の形態2では、経時的に照射色が変化するため、イルミネーションの効果も有り、冷蔵庫の訴求性を高めることができる。
【0088】
以上のように、本実施の形態2の光照射装置では、ひとつの光源とこの光源の波長を変換するフィルタを回転動作することによって、簡易な構成で、多種、多様の食品に適応した様々な波長の光を経時的に変化させながら照射することができる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
以上の様に、本発明にかかる光照射装置は、波長が長く比較的安全な紫外A領域および紫外B領域である280nmから400nmの範囲の波長を持つ紫外LED、あるいは複数の光の波長成分によって生成された白色LEDを光源とし、この光源から照射された光の波長を400nm以上の様々な可視領域の波長へと変化させるもので、動植物の活動代謝の助長、活性化、あるいは収納室内の抗菌性を高め、さらには、食品を対象とする場合は、しらす干等の如くビタミンD前駆体を含む食品のビタミンDを増大させる等の機能性を高め、収納室の保存性能を向上させることができるものである。よって、保存性能を高めることを目的とする機器において適用することができ、例えばショーケースやクーラーボックス、業務用冷蔵庫等の保存性の向上に対して利用することができることに加え、動植物の育成環境の改善等に広く適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の実施の形態1における光照射装置を具備した冷蔵庫の縦断面図
【図2】本発明の実施の形態1における照射装置を設けた収納室の側面概要図
【図3】本発明の実施の形態1におけるフィルタ配置一例を示す上面図
【図4】本発明の実施の形態1におけるフィルタ配置一例を示す上面図
【図5】本発明の実施の形態2における照射装置の側面図
【図6】本発明の実施の形態2における照射装置の上面図
【図7】本発明の実施の形態2におけるフィルタの回転に伴い変化する照射波長の状態を示す特性図
【図8】従来例を示す冷蔵庫の野菜保存用照射装置の取付け状態を示す斜視図
【符号の説明】
【0091】
1 冷蔵庫本体
2 冷蔵室
3 切替え室
4 野菜室
5 冷凍室
6 収納ケース
7a 照射装置
7b 照射装置
7c 照射装置
11 収納室
12 紫外LED光源
13 透明フィルタ
14 青色フィルタ
15 赤色フィルタ
21 収納室
22 紫外LED光源
23 フィルタ
24 軸
25 モータ
26 透明フィルタ
27 青色フィルタ
28 赤色フィルタ
30 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、前記光源から放出された光の波長を変化させる複数のフィルタを備え、前記光源から放出された光を、前記フィルタを透過して複数の波長で対象物に照射する光照射装置。
【請求項2】
前記光源と前記各フィルタに、相対的に移動関係をもたらす移動手段を設けた請求項1に記載の光照射装置。
【請求項3】
前記各フィルタによる光の照射量を制御する制御手段を設けた請求項1または2に記載の光照射装置。
【請求項4】
前記制御手段を、比率が異なる前記各フィルタの面積とした請求項3に記載の光照射装置。
【請求項5】
前記制御手段を、前記移動手段による移動速度とした請求項3または4に記載の光照射装置。
【請求項6】
前記制御手段を、前記光源による照射時間とした請求項3から5のいずれか一項に記載の光照射装置。
【請求項7】
前記光源による光を、280から400nmの範囲の波長を有する紫外光とした請求項1から6のいずれか一項に記載の光照射装置。
【請求項8】
前記光源による光を、複数の光の波長成分によって生成された白色光とした請求項1から7のいずれか一項に記載の光照射装置。
【請求項9】
前記各フィルタに、通過光を拡散させる拡散性をもたせた請求項1から8のいずれか一項に記載の光照射装置。
【請求項10】
前記各フィルタに、通過光を直進させる直進性をもたせた請求項1から9のいずれか一項に記載の光照射装置。
【請求項11】
前記光源、および前記フィルタによって生成された光によって照明を行う請求項1から10のいずれか一項に記載の光照射装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の光照射装置を具備した貯蔵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−71509(P2008−71509A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−246530(P2006−246530)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】