説明

光照射装置の安全性を高める安全向上用コンデンサ放電回路

【課題】低価格且つ簡易に、光照射装置の電源オフ時に電源用コンデンサを放電させることによって、光照射装置の安全性を高めることが可能な安全向上用コンデンサ放電回路を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る安全向上用コンデンサ放電回路10は、電源用コンデンサ3に接続されたリレースイッチ11及び半導体スイッチ13と、リレー制御電圧を生成するリレー制御回路12と、半導体制御信号を生成する半導体制御回路14とを備え、光照射装置1の電源オフ時に、リレー制御回路12は、リレー制御電圧の供給を停止することによってリレースイッチ11の接点を閉じさせ、半導体制御回路14は、半導体制御信号の供給を開始することによって、リレースイッチ11の接点が閉じられる前に半導体スイッチ13を導通させると共に、リレースイッチ11におけるチャタリング発生期間、半導体スイッチ13の導通を保持させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光のために要する電力を一時保存するための電源用コンデンサを備える光照射装置の安全性を高める安全向上用コンデンサ放電回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療機器や美容機器などとして、レーザやキセノンフラッシュランプなどを用いた光照射装置が用いられている。この種の光照射装置では、発光のために要する大きな電力を一時保存するために、大容量のコンデンサが用いられることがある。大容量コンデンサを用いる光照射装置では、利用者の安全性の面から、電源をオフする際に電荷が残らないように大容量コンデンサを放電させるためのコンデンサ放電回路を備えることが好ましい。
【0003】
この種のコンデンサ放電回路では、光照射装置の電源がオフ状態であっても導通状態を保持することが可能なリレースイッチを用いることが考えられる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−320617号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、機械的なリレースイッチでは、光照射装置の電源がオフ状態であっても接点を閉じ続けることができる反面、接点の開閉切替動作の際にチャタリング現象が発生してしまう。特に、リレースイッチの接点に印加される電圧が直流の高電圧である場合には、スパークが発生し、接点が溶着してしまう可能性がある。その結果、コンデンサが再充電される際に、コンデンサ放電回路における回路素子に常時電流が流れ続け、回路素子が発熱などによって破損する恐れがある。
【0005】
リレースイッチの接点におけるスパークを抑制するために、接点間にスナバ回路やバリスタなどを設けることが考えられるが、スパーク抑制効果は低い。また、接点部が真空状態であるリードタイプのリレースイッチを用い、接点の焼損を防止することが考えられるが、この種のリレースイッチは高価である。
【0006】
また、リレースイッチに代えて半導体スイッチを用いることが考えられるが、チャタリング現象が発生しない反面、光照射装置の電源がオフ状態である場合に半導体スイッチのオン状態を保持するための電源の確保が困難である。
【0007】
そこで、本発明は、低価格且つ簡易に、光照射装置の電源オフ時に電源用コンデンサを放電させることによって、光照射装置の安全性を高めることが可能な安全向上用コンデンサ放電回路を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の安全向上用コンデンサ放電回路は、発光のために要する電力を一時保存するための電源用コンデンサを備える光照射装置の安全性を高める安全向上用コンデンサ放電回路において、(a)電源用コンデンサの一対の端子にそれぞれ接続された一対の接点端子を有するリレースイッチと、(b)電源用コンデンサの一対の端子にそれぞれ接続された一対の電流端子を有する半導体スイッチと、(c)リレースイッチの一対の接点端子間の接点の開閉を制御するためのリレー制御電圧をリレースイッチの一対のコイル端子間に供給するリレー制御回路と、(d)半導体スイッチの一対の電流端子間の導通を制御するための半導体制御信号を半導体スイッチの一対の制御端子間に供給する半導体制御回路とを備え、(e)リレー制御回路は、光照射装置の電源オフ時に、リレー制御電圧の供給を停止することによって一対の接点端子間の接点を閉じさせ、(f)半導体制御回路は、光照射装置の電源オフ時に、半導体制御信号の供給を開始することによって、リレースイッチの一対の接点端子間の接点が閉じられる前に一対の電流端子を導通させると共に、リレースイッチにおけるチャタリング発生期間、一対の電流端子の導通を保持させる。
【0009】
リレースイッチでは、電源オフ時であっても接点を閉じ続けることができる反面、接点開閉時にチャタリングが発生してしまう。一方、半導体スイッチでは、チャタリングが発生せず、導通−非導通切替速度が比較的速い反面、電源オフ時に導通を保持することが困難である。この点に着目し、この安全向上用コンデンサ放電回路では、リレースイッチと半導体スイッチとを並列に接続することによって、互いの短所を互いの長所で補い合うようにしている。
【0010】
この安全向上用コンデンサ放電回路によれば、光照射装置の電源オフ時に、半導体スイッチがリレースイッチより先に導通し、リレースイッチにおけるチャタリング発生期間、導通を保持するので、リレースイッチの接点圧力が確定するまでリレースイッチの接点に流れる電流が減少する。その結果、リレースイッチにおけるチャタリングに起因する接点溶着を防止することができる。
【0011】
また、この安全向上用コンデンサ放電回路によれば、リレースイッチは、接点圧力が確定して半導体スイッチが非導通となった後も、接点を閉じ続けることができるので、電源用コンデンサの電力量を安全な値まで、好ましくはゼロまで放電し切ることができる。したがって、高価な回路素子を用いることなく、比較的簡易な回路構成で、光照射装置の電源オフ時に電源用コンデンサを放電し切ることができ、その結果、光照射装置の安全性を高めることが可能である。
【0012】
上記した半導体制御回路は、リレー制御回路からのリレー制御電圧によって充電される制御用コンデンサと、半導体スイッチの一対の制御端子を含み、光照射装置の電源オフ時に、制御用コンデンサを放電することによって放電電流を半導体制御信号として一対の制御端子に供給する放電経路とを有し、放電経路における放電時定数は、リレースイッチにおけるチャタリング発生期間より大きいことが好ましい。
【0013】
この構成によれば、光照射装置の電源オフ時に生成される制御用コンデンサの放電電流に基づいて半導体スイッチが導通する。この放電電流の放電時定数がリレースイッチにおけるチャタリング発生期間より大きいので、リレースイッチにおけるチャタリング発生期間、半導体スイッチが導通を保持することができる。
【0014】
上記した制御用コンデンサの充電時定数は、放電時定数より小さいことが好ましい。これによれば、制御用コンデンサの充電が比較的早く行われるので、光照射装置の電源がオンする際に、比較的早く電源オフ時の電源用コンデンサの放電動作に備えることができる。
【0015】
本発明の安全向上用コンデンサ放電回路は、電源用コンデンサの放電が開始されてから電源用コンデンサの電力量が所定値に達するまで、光照射装置の電源供給経路を切断するブレーカを更に備えることが好ましい。
【0016】
光照射装置の電源が再投入されると、半導体スイッチが先に非導通状態に切り替わり、リレースイッチが遅れて開状態に切り替わる。このリレースイッチの開状態への切替時にもチャタリングが発生することがある。その際、電源用コンデンサに大きな電力が残っていると、あるいは残電力に再充電電力が加算されて電源用コンデンサの電力が大きくなると、リレースイッチにおいて接点溶着が発生する可能性がある。
【0017】
しかしながら、この構成によれば、電源用コンデンサの電力量が所定値に放電されるまで、光照射装置の電源供給経路が切断されるので、電源が再投入されても、接点溶着が発生し得るまで電源用コンデンサの電力量が大きくなる前に、リレースイッチの開状態への切替を終了させることができる。
【0018】
なお、所定値とは、接点溶着が発生し得るまで電源用コンデンサの電力量が大きくなる前に、リレースイッチの開状態への切替を終了させることができる電力量であり、電源用コンデンサの充電時定数、リレースイッチの最大定格電力及び接点開閉切替速度などから定まる値である。
【0019】
上記したブレーカは、電源用コンデンサの放電電流が流れる一対のコイル端子と光照射装置の電源供給経路に直列に接続された一対の接点端子とを有し、放電電流に基づいて一対の接点端子の導通を切断するリレースイッチを含むことが好ましい。
【0020】
この構成によれば、簡易な回路構成で、上記したように電源再投入時のリレースイッチにおける接点溶着を防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、低価格且つ簡易に、光照射装置の電源オフ時に電源用コンデンサを放電させることによって、光照射装置の安全性を高めることが可能な安全向上用コンデンサ放電回路を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係るコンデンサ放電回路を備えた光照射装置を示す回路図である。図1に示す光照射装置1は、本実施形態では美容機器であり、キセノンフラッシュランプ光を肌に照射することによって、肌のしみや、そばかす、しわを除去したり、脱毛を施したりすることができる。そのために、光照射装置1は、主要部2と、電源用コンデンサ3と、本発明の実施形態に係るコンデンサ放電回路10とを備えている。
【0024】
主要部2は、電力変換回路を有しており、コンデンサ放電回路10におけるブレーカ15を含む電源供給経路Aを介して受ける商用電力(AC入力)を直流電力に変換する。主要部2は、この直流電力を用いて電源用コンデンサ3を充電すると共に、この直流電力をコンデンサ放電回路10に供給する。
【0025】
また、主要部2は、キセノンフラッシュランプと光照射スイッチとを有しており、光照射スイッチの押下操作に基づいて電源用コンデンサ3に一時保存された電力をキセノンフラッシュランプに供給して、キセノンフラッシュランプにパルス光を発生させる。
【0026】
電源用コンデンサ3は、キセノンフラッシュランプにパルス光を発生させるために必要な電力を一時保存する。電源用コンデンサ3は、本実施形態では約数万μFと大容量であり、電源用コンデンサ3の端子間電圧は100V以上にも達する。したがって、電源用コンデンサ3の電力を早く放電するためには、その放電電流を約数Aにする必要がある。
【0027】
コンデンサ放電回路10は、光照射装置1の主電源(図示せず)がオフ状態であるときに、電源用コンデンサ3の電荷を放電する。そのために、コンデンサ放電回路10は、リレースイッチ11と、リレー制御回路12と、半導体スイッチ13と、半導体制御回路14と、ブレーカ15とを備えている。
【0028】
リレースイッチ11の一対の接点端子11a,11bは、それぞれ電源用コンデンサ3の一対の端子に接続されている。具体的には、一方の接点端子11aは電源用コンデンサ3の一方の端子に接続されており、他方の接点端子11bは抵抗素子16及びブレーカ15の一対のコイル端子15c,15dを介して電源用コンデンサ3の他方の端子に接続されている。なお、抵抗素子16は、電源用コンデンサ3の放電電流を制限するために設けられている。
【0029】
リレースイッチ11は、一対の接点端子11a,11b間に接点を有し、一対のコイル端子11c,11d間のコイルに流れる電流に応じてこの接点を開閉する。一対のコイル端子11c,11dは、それぞれリレー制御回路12の出力端子に接続されている。また、一対のコイル端子11c,11d間には、ダイオード17が接続されている。具体的には、ダイオード17のカソードが一方のコイル端子11cに接続されており、アノードが他方のコイル端子11dに接続されている。ダイオード17は、一対のコイル端子11c,11d間のコイルに発生する逆起電力を抑制するために設けられている。
【0030】
リレー制御回路12は、主要部2から直流電力を受けて、リレースイッチ11の一対の接点端子11a,11b間の接点の開閉を制御するためのリレー制御電圧を生成し、リレースイッチ11の一対のコイル端子11c,11d間に供給する。具体的には、リレー制御回路12は、光照射装置1の主電源オン時には、リレー制御電圧を生成することによってリレースイッチ11の一対の接点端子11a,11b間の接点を開き、光照射装置1の主電源オフ時には、リレー制御電圧の生成を停止することによってリレースイッチ11の一対の接点端子11a,11b間の接点を閉じる。
【0031】
半導体スイッチ13の一対の電流端子13a,13bは、それぞれ電源用コンデンサ3の一対の端子に接続されている。具体的には、一方の電流端子13aは電源用コンデンサ3の一方の端子に接続されており、他方の電流端子13bは抵抗素子16及びブレーカ15の一対のコイル端子15a,15bを介して電源用コンデンサ3の他方の端子に接続されている。すなわち、半導体スイッチ13は、リレースイッチ11に並列に接続されている。
【0032】
半導体スイッチ13は、本実施形態ではフォトカップラーであり、一方の制御端子13cから他方の制御端子13dへ向けて電流が流れるときに、一対の電流端子13a,13bを導通させる。一対の制御端子13c,13dは、それぞれ半導体制御回路14の出力端子に接続されている。
【0033】
ここで、導通時の半導体スイッチ13の一対の電流端子13a,13b間のインピーダンスは、接点が閉じているときのリレースイッチ11の一対の接点端子11a,11b間のインピーダンスの約10倍以下であることが好ましい。一般的には、接点が閉じているときのリレースイッチ11の一対の接点端子11a,11b間のインピーダンスは数mΩ程度であり、導通時の半導体スイッチ13の一対の電流端子13a,13b間のインピーダンスは数十mΩ程度である。
【0034】
半導体制御回路14の入力端子は、それぞれリレー制御回路12の出力端子に接続されている。半導体制御回路14は、リレー制御回路12からリレー制御電圧を受けて、半導体スイッチ13の一対の電流端子13a,13b間の導通を制御するための半導体制御信号を生成し、半導体スイッチ13の一対の制御端子13c,13d間に供給する。
【0035】
具体的には、半導体制御回路14は、光照射装置1の主電源オン時には、半導体制御信号の供給を停止することによって半導体スイッチ13の一対の電流端子13a,13b間を非導通とし、光照射装置1の主電源オフ時には、半導体制御信号の供給を開始することによって、リレースイッチ11の一対の接点端子11a,11b間の接点が閉じる前に半導体スイッチ13の一対の電流端子13a,13bを導通すると共に、リレースイッチ11におけるチャタリング発生期間、半導体スイッチ13の一対の電流端子13a,13bの導通を保持する。
【0036】
本実施形態では、半導体制御回路14は、ダイオード21,22と、抵抗素子23,24と、制御用コンデンサ25とを有している。
【0037】
ダイオード21のアノードはリレー制御回路12のプラス出力端子に接続されており、カソードとリレー制御回路12のマイナス出力端子との間には抵抗素子23が接続されている。また、ダイオード21のカソードは抵抗素子24を介して制御用コンデンサ25の一方の端子に接続されており、制御用コンデンサ25の他方の端子は、半導体スイッチ13のマイナス制御端子13dに接続されている。また、制御用コンデンサ25の他方の端子にはダイオード22のアノードが接続されており、ダイオード22のカソードはリレー制御回路12のマイナス出力端子及び半導体スイッチ13のプラス制御端子13cに接続されている。
【0038】
このようにして、リレー制御回路12からリレー制御電圧が供給されると、ダイオード21と、抵抗素子24と、制御用コンデンサ25と、ダイオード22とで形成される充電経路Cによって制御用コンデンサ25が充電される。一方、リレー制御回路12からリレー制御電圧の供給が停止されると、制御用コンデンサ25と、抵抗素子24と、抵抗素子23と、半導体スイッチ13の一対の制御端子13c,13dとで形成される放電経路Dによって制御用コンデンサ25が放電される。
【0039】
すなわち、半導体制御回路14は、光照射装置1の電源オフ時に、制御用コンデンサ25の放電電流を半導体制御信号として半導体スイッチ13の一対の制御端子13c,13dに供給する。
【0040】
ここで、放電経路Dの放電時定数は、制御用コンデンサ25と抵抗素子24,23とによって決定され、この放電時定数は、リレースイッチ11におけるチャタリング発生期間より大きく設定されている。一方、充電経路Cの充電時定数は、制御用コンデンサ25と抵抗素子24とによって決定され、放電経路Dの放電時定数より小さくなっている。
【0041】
なお、ダイオード21は、制御用コンデンサ25の放電電流がリレー制御回路12へ回り込むことを防止するために設けられており、ダイオード22は、半導体スイッチ13の一対の制御端子13c,13d間に過大な逆電圧が加わることを防止するために設けられている。
【0042】
ブレーカ15は、本実施形態ではリレースイッチである。ブレーカ15の一対の接点端子15a,15bは、光照射装置1の電源供給経路Aに直列に接続されている。ブレーカ15は、一対のコイル端子15c,15dに電流が流れていないときに一対の接点端子15a,15b間の接点を閉じ、一対のコイル端子15c,15dに電源用コンデンサ3の放電電流が流れているときに一対の接点端子15a,15b間の接点を開く。すなわち、ブレーカ15は、電源用コンデンサ3の放電が開始されてから電源用コンデンサ3が放電し切るまで、光照射装置1の電源供給経路Aを切断し続ける。
【0043】
次に、本実施形態の光照射装置1及び本実施形態のコンデンサ放電回路10の動作を説明する。
【0044】
図2は、図1に示すコンデンサ放電回路の各部信号波形を示すタイミングチャートである。図2(a)には、リレースイッチ11の一対の接点端子11a,11b間の接点の開閉状態が示されており、ハイレベルが閉状態を示し、ローレベルが開状態を示している。図2(b)には、制御用コンデンサ25の充放電電流I25(極性は図1の矢印に対応)が示されており、図2(c)には、半導体スイッチ13の一対の電流端子13a,13b間の電流I13(極性は図1の矢印に対応)が示されており、図2(d)には、電源用コンデンサ3の充放電電流I3(極性は図1の矢印に対応)が示されている。図2(e)には、ブレーカ15の一対の接点端子15a,15b間の接点の開閉状態が示されており、ハイレベルが閉状態を示し、ローレベルが開状態を示している。
(光照射装置1の主電源オン時)
【0045】
まず、電源用コンデンサ3が放電し切られている状態、すなわちブレーカ15の一対の接点端子15a,15b間の接点が閉じられている状態において、主電源がオン状態とされ、商用電力が光照射装置1の主要部2に供給されると、主要部2によって、電源用コンデンサ3が充電されると共にコンデンサ放電回路10に直流電力が供給される。
【0046】
すると、リレー制御回路12によってリレー制御電圧が生成され、リレースイッチ11の一対の接点端子11a,11b間の接点では開状態が保持される。また、半導体制御回路14によって半導体制御信号が生成されず、すなわち放電経路D及び半導体スイッチ13の一対の制御端子13c,13d間に制御用コンデンサ25の放電電流が流れず、半導体スイッチ13の一対の電流端子13a,13b間では非導通状態が保持される。なお、半導体制御回路14では、充電経路Cに充電電流が流れ、制御用コンデンサ25が充電される。
【0047】
ここで、主要部2における光照射スイッチの押下操作が行われると、電源用コンデンサ3に一時保存された電力が主要部2におけるキセノンフラッシュランプに供給され、パルス光が出力される。パルス光の出力が終了すると、再び電源用コンデンサ3が充電され、次の光照射スイッチの押下操作、すなわちパルス光出力に備える。
(光照射装置1の主電源オフ時)
【0048】
図2における時点t1において、主電源がオフ状態とされると、主要部2の動作が停止し、電源用コンデンサ3の充電が停止されると共に、コンデンサ放電回路10への直流電力の供給が停止される。
【0049】
すると、リレー制御回路12によるリレー制御電圧の生成が停止され、半導体制御回路14によって半導体制御信号が生成される。すなわち、放電経路D及び半導体スイッチ13の一対の制御端子13c,13d間に制御用コンデンサ25の放電電流I25が流れる(図2(b))。その結果、半導体スイッチ13の一対の電流端子13a,13b間が導通し、抵抗素子16及びブレーカ15の一対のコイル端子15c,15d間のコイルを介して、電源用コンデンサ3が放電される(図2(d))。
【0050】
時点t1から時間Δt1後、リレースイッチ11の一対の接点端子11a,11b間の接点が閉じ、チャタリングが発生する(図2(a))。しかしながら、少なくともチャタリング発生期間Δt2を含む時間Δt3、制御用コンデンサ25の放電電流I25が流れているので(図2(b))、半導体スイッチ13の一対の電流端子13a,13b間の導通が保持され(図2(c))、リレースイッチ11の接点に流れる電流が減少される。
【0051】
ここで、半導体スイッチ13の一対の電流端子13a,13b間のインピーダンスは、リレースイッチ11の一対の接点端子11a,11b間のインピーダンスに比べて大きいが、電源用コンデンサ3の放電電流が半導体スイッチ13の一対の電流端子13a,13b間に流れる期間はリレースイッチ11の接点がチャタリングによって開いているときの短期間であり、リレースイッチ11の接点が閉じているときには、半導体スイッチ13の一対の電流端子13a,13b間には電源用コンデンサ3の放電電流の1/10程度しかながれないので、半導体スイッチ13による損失は非常に小さい。
【0052】
その後、時刻t2において、制御用コンデンサ25の放電電流I25が半導体スイッチの閾値に達すると(図2(b))、半導体スイッチ13の一対の電流端子13a,13b間が非導通となる。しかしながら、リレースイッチ11の一対の接点端子11a,11b間の接点では閉状態が保持されるので、電源用コンデンサ3の放電が継続され、放電し切ることができる(図(d))。
【0053】
ところで、時刻t1〜t3では、電源用コンデンサ3の放電電流I3がブレーカ15の一対のコイル端子15c,15d間に流れ、ブレーカ15の一対の接点端子15a,15b間の接点の開状態が保持される。すなわち、電源用コンデンサ3が放電し切るまで、電源供給経路Aが切断され続ける。なお、電源用コンデンサ3の放電電流I3がリレースイッチの閾値に達する時点t3において、ブレーカ15の一対の接点端子15a,15b間の接点が閉じられ、電源の再投入が可能となる。
【0054】
その後、時点t4において、光照射装置1の主電源が再びオン状態とされると、主要部2によって、電源用コンデンサ3が再充電されると共に、リレー制御回路12によってリレー制御電圧が生成される。すると、制御用コンデンサ25が充電され、半導体スイッチ13の一対の電流端子13a,13b間では非導通が保持される。一方、リレースイッチ11の一対の接点端子11a,11b間では接点が遅れて閉じられる。
【0055】
このように、本実施形態のコンデンサ放電回路10では、電源オフ時であっても接点を閉じ続けることができる反面、接点開閉時にチャタリングが発生してしまうリレースイッチ11と、チャタリングが発生せず、導通−非導通切替速度が比較的速い反面、電源オフ時に導通を保持することが困難である半導体スイッチ13とを並列に接続することによって、互いの短所を互いの長所で補い合うようにしている。
【0056】
本実施形態のコンデンサ放電回路10によれば、光照射装置1の電源オフ時に、半導体スイッチ13がリレースイッチ11より先に導通し、リレースイッチ11におけるチャタリング発生期間、導通を保持するので、リレースイッチ11の接点圧力が確定するまでリレースイッチ11の接点に流れる電流が減少する。その結果、リレースイッチ11におけるチャタリングに起因する接点溶着を防止することができる。
【0057】
また、本実施形態のコンデンサ放電回路10によれば、リレースイッチ11は、接点圧力が確定して半導体スイッチ13が非導通となった後も、接点を閉じ続けることができるので、電源用コンデンサ3の電力量を安全な値まで、好ましくはゼロまで放電し切ることができる。したがって、高価な回路素子を用いることなく、比較的簡易な回路構成で、光照射装置1の電源オフ時に電源用コンデンサ3を放電し切ることができ、その結果、光照射装置1の安全性を高めることが可能である。
【0058】
また、本実施形態のコンデンサ放電回路10によれば、電源用コンデンサ3の電力が放電し切るまで、光照射装置1の電源供給経路Aが切断されるので、電源が再投入されても、接点溶着が発生し得るまで電源用コンデンサ3の電力量が大きくなる前に、リレースイッチ11の開状態への切替を終了させることができる。その結果、電源再投入時のリレースイッチ11におけるチャタリングに起因する接点溶着を防止することができる。
【0059】
また、本実施形態のコンデンサ放電回路10によれば、突然停電になった場合でも、電源オフ時と同一の動作をおこなうことができるので、光照射装置1の安全性を高めることが可能である。
【0060】
更には、本実施形態のコンデンサ放電回路10によれば、光照射装置1の電源オフ時に、リレースイッチ11によって電源用コンデンサ3を完全に放電し切ることができるので、誤って電源用コンデンサ3の端子をショートさせても大きな電流が流れることがなく、光照射装置1の安全性を高めることが可能である。
【0061】
半導体スイッチだけでは、光照射装置1の電源オフ時に、導通状態を保持することができないので、電源用コンデンサ3に電力が残留してしまい、電源用コンデンサ3がショートしてしまうと、大電流が流れてしまい危険である。半導体スイッチの制御信号として電源用コンデンサ3の電力を用いることが考えられるが、半導体スイッチの閾値程度の電力が電源用コンデンサ3に残留してしまう。
【0062】
半導体スイッチに代えてサイリスタを用いればアノード保持電流閾値まで導通状態を保持することができるが、イレギュラーな原因によってアノード電流が微小に残っている状態で電源用コンデンサ3が再充電されると、サイリスタが導通したままであるので、大電流が流れてしまい危険である。また、サイリスタでも、やはりアノード保持電流閾値に起因して電源用コンデンサ3に電力が残留してしまう。
【0063】
更に、電源用コンデンサ3の残留電荷を検出しようとした場合、小さな電圧を放電用大電流制御するための回路及び回路電源を確保するために、複雑な回路構成になってしまう。
【0064】
ところで、一般に、機械的なリレースイッチでは、その接点材料や形状、接点圧力、接点ギャップによって最大使用電圧及び最大使用電流が決定される。リレースイッチに交流電力が入力される場合、電流及び電圧がゼロになる期間が存在するので、スパークの発生が断続的であり、接点破壊の度合いが小さい。一方、リレースイッチに直流電力が入力される場合、スパークが連続して発生するので、最大使用電圧及び最大使用電流を大きく超えてしまい、接点が大きく破壊する恐れがある。しかしながら、本実施形態では、リレースイッチに直流電力が入力されても、接点破損を防止することができる。
【0065】
また、使用するリレースイッチ11の仕様では、最大使用電流を注意すればよく、最大使用電圧はそれほど注意する必要がないので、リレースイッチ11の選択が広げられる。一方、半導体スイッチ13はリレースイッチ11を補足するものであり、半導体スイッチ13に電流が流れる時間は長くても数msと短いので、半導体スイッチ13としては仕様的に最大損失の大きなものでなくてもよく、半導体スイッチ13の選択が広げられる。
【0066】
なお、本発明は上記した本実施形態に限定されることなく種々の変形が可能である。例えば、本実施形態では、半導体スイッチ13としてフォトカップラーを例示したが、半導体スイッチ13にはパワートランジスタなどが適用されてもよい。なお、半導体スイッチ13にパワーFETが用いられる場合には、半導体制御回路14は、光照射装置1の電源オフ時に、半導体スイッチ13に半導体制御信号としてパワーFETをオンさせるために必要な電圧を供給すればよい。
【0067】
また、本実施形態では、ブレーカ15としてリレースイッチを例示したが、ブレーカ15にはマイコンが用いられ、電源供給が制御されてもよい。
【0068】
また、本実施形態では、コンデンサ放電回路10を備える光照射装置1として美容機器を例示したが、本実施形態のコンデンサ放電回路10は、医療機器など、発光のために要する電力を一時保存するための電源用コンデンサを備える光照射装置全てに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施形態に係るコンデンサ放電回路を備える本実施形態の光照射装置を示す回路図である。
【図2】本発明の実施形態に係るコンデンサ放電回路の各部信号波形を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0070】
1…光照射装置、2…主要部、3…電源用コンデンサ、10…コンデンサ放電回路、11…リレースイッチ、11a,11b…一対の接点端子、11c,11d…一対のコイル端子、12…リレー制御回路、13…半導体スイッチ、13a,13b…一対の電流端子、13c,13d…一対の制御端子、14…半導体制御回路、15…ブレーカ、15a,15b…一対の接点端子、15c,15d…一対のコイル端子、16…抵抗素子、17…ダイオード、21,22…ダイオード、23,24…抵抗素子、25…制御用コンデンサ、A…電源供給経路、C…充電経路、D…放電経路。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光のために要する電力を一時保存するための電源用コンデンサを備える光照射装置の安全性を高める安全向上用コンデンサ放電回路において、
前記電源用コンデンサの一対の端子にそれぞれ接続された一対の接点端子を有するリレースイッチと、
前記電源用コンデンサの一対の端子にそれぞれ接続された一対の電流端子を有する半導体スイッチと、
前記リレースイッチの前記一対の接点端子間の接点の開閉を制御するためのリレー制御電圧を前記リレースイッチの一対のコイル端子間に供給するリレー制御回路と、
前記半導体スイッチの前記一対の電流端子間の導通を制御するための半導体制御信号を前記半導体スイッチの一対の制御端子間に供給する半導体制御回路と、
を備え、
前記リレー制御回路は、前記光照射装置の電源オフ時に、前記リレー制御電圧の供給を停止することによって前記一対の接点端子間の接点を閉じさせ、
前記半導体制御回路は、前記光照射装置の電源オフ時に、前記半導体制御信号の供給を開始することによって、前記リレースイッチの前記一対の接点端子間の接点が閉じられる前に前記一対の電流端子を導通させると共に、前記リレースイッチにおけるチャタリング発生期間、前記一対の電流端子の導通を保持させる、
安全向上用コンデンサ放電回路。
【請求項2】
前記半導体制御回路は、
前記リレー制御回路からの前記リレー制御電圧によって充電される制御用コンデンサと、
前記半導体スイッチの前記一対の制御端子を含み、前記光照射装置の電源オフ時に、前記制御用コンデンサを放電することによって放電電流を前記半導体制御信号として前記一対の制御端子に供給する放電経路と、
を有し、
前記放電経路における放電時定数は、前記リレースイッチにおけるチャタリング発生期間より大きい、
請求項1に記載の安全向上用コンデンサ放電回路。
【請求項3】
前記制御用コンデンサの充電時定数は、前記放電時定数より小さい、
請求項2に記載の安全向上用コンデンサ放電回路。
【請求項4】
前記電源用コンデンサの放電が開始されてから前記電源用コンデンサの電力量が所定値に達するまで、前記光照射装置の電源供給経路を切断するブレーカを更に備える、
請求項1〜3の何れか1項に記載の安全向上用コンデンサ放電回路。
【請求項5】
前記ブレーカは、前記電源用コンデンサの放電電流が流れる一対のコイル端子と前記光照射装置の電源供給経路に直列に接続された一対の接点端子とを有し、該放電電流に基づいて該一対の接点端子の導通を切断するリレースイッチを含む、
請求項4に記載の安全向上用コンデンサ放電回路。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−194224(P2008−194224A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−32386(P2007−32386)
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【出願人】(500290880)株式会社スカンジナビア (1)
【Fターム(参考)】