説明

光照射部の故障検出装置及び記録装置

【課題】半導体の発光素子が複数個直列に接続された発光素子群を有する光照射部の故障検出を簡単に行える記録装置を提供する。
【解決手段】半導体の発光素子41が複数個直列に接続された発光素子群を有する光照射部の前記各発光素子の各順方向電圧の合計値を計測する電圧計測部と、前記電圧計測部で得られる計測値の、予め設定される基準値に対する減少量から前記発光素子の故障の有無を判定する故障判定部58と、を備える光照射部の故障検出装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体の発光素子が複数個直列に接続された発光素子群を有する光照射部の故障検出装置及び該故障検出装置を有する記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から被記録材(以下、単に一例の「用紙」という場合もある)の被記録面に対して光硬化性インク(例えば紫外線(UV)硬化インク)を吐出する多数のノズル口を配列させたノズル列を有する記録ヘッドと、前記吐出された光硬化性インクに光を照射して該光硬化性インクを硬化させる複数の発光素子(例えば発光ダイオード:LED(Light Emitting Diode))を配列させた発光素子列を有する光照射部と、を備える記録装置が下記の特許文献1及び特許文献2に示すように開発されている。
【0003】
前記記録ヘッドが被記録材の搬送方向と交差する方向に往復移動するキャリッジに対して搭載されるタイプの記録装置の場合には、記録ヘッドの往路移動時と復路移動時の両方で光硬化性インクに光を照射するため、下記の特許文献1、特許文献2及び特許文献3に示すように、各色のノズル列の左右両側に前記発光素子列を有する光照射部が配置されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−104108号公報
【特許文献2】特開2004−314304号公報
【特許文献3】特開2008−143123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、記録の実行中に前記発光素子列を構成するLED等の発光素子の1つが故障すると、当該故障した発光素子が受け持つ数十個にも及ぶノズル口から吐出された光硬化性インクがすべて未硬化の状態になり、商品価値を有しない無駄な印刷物を製造してしまうことになる。
【0006】
前記特許文献1乃至特許文献3には、このように発光素子が故障した場合の対策については、何らの記述もなされていない。近時、普及している光硬化性インクによる印刷物の市場を考えれば、前記発光素子の故障の問題に対する対策を構じることは急務な課題となっている。
即ち、発光素子列を構成する発光素子の故障を簡単に検出できること、発光素子列を構成する発光素子が故障しにくいこと、また記録途中で一部の発光素子が故障しても光硬化性インクを硬化させて記録を継続できることが望まれている。
【0007】
本発明の目的は、半導体の発光素子が複数個直列に接続された発光素子群を有する光照射部の故障検出を行えるようにすること、しかもそれを簡単に行えるようにすることにある。
また、光照射部を構成する発光素子が故障しにくい、或いは、記録途中で故障しても記録を継続できる記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために本発明に係る光照射部の故障検出装置の第1の態様は、半導体の発光素子が複数個直列に接続された発光素子群を有する光照射部の前記各発光素子の各順方向電圧の合計値を計測する電圧計測部と、前記電圧計測部で得られる計測値の、予め設定される基準値に対する減少量から前記発光素子の故障の有無を判定する故障判定部と、を備えるものである。
【0009】
ここで、「予め設定される基準値」は、直列接続された発光素子の全数がN個、1個当たりの順方向電圧の平均値がVfであるとした場合、全数N個の合計の順方向電圧の値「Vf×N」である。
半導体の発光素子がショートモードで1個故障して発光できる数がN−1個になった場合、順方向電圧の合計値は「Vf×(N−1)」となる。すなわち、合計値はVfだけ小さい値になる。
従って、故障判定部において、電圧計測部で計測される計測値Vtを前記基準値「Vf×N」と比較し、その差「Vf×N−Vt」がVfより小さいときは、故障は無しと判定できる。一方、その差がVfより大きいときは、故障有りと判定できる。
【0010】
本態様によれば、複数個直列に接続された発光素子群の各発光素子の各順方向電圧の合計値を電圧計測部で電圧計測部で計測し、その計測値Vtを予め設定される基準値「Vf×N」と比較するだけで、その差の大きさから前記発光素子の故障の有無を判定することができるので、簡単に故障の有無を判定することができる。
【0011】
本発明に係る光照射部の故障検出装置の第2の態様は、前記第1の態様において、前記故障判定部は、前記発光素子の故障の有無の判定に加えて、前記基準値に基づいて故障した発光素子の数も演算して出力するように構成されていることを特徴とするものである。
【0012】
半導体の発光素子がショートモードで2個故障して発光できる数がN−2個になった場合、順方向電圧の合計値は「Vf×(N−2)」となる。同様に3個故障して発光できる数がN−3個になった場合、順方向電圧の合計値は「Vf×(N−3)」となる。
【0013】
従って、本態様によれば、前記差を求めることで故障した発光素子の数も演算して出力することができる。
【0014】
本発明に係る光照射部の故障検出装置の第3の態様は、前記第1の態様又は第2の態様において、前記基準値は温度との関係をもって設定されており、前記故障判定部は、判定時に温度情報を得て該判定に用いる前記基準値を選定するように構成されていることを特徴とするものである。
【0015】
半導体発光素子の順方向電圧は後述するように温度依存性がある。ほぼ直線の関係にある。本態様によれば、基準値は温度との関係をもって異なる温度では基準値も異なる値に設定されているので、温度依存性による影響を抑えて高精度で故障の有無を判定することができる。
【0016】
前記課題を解決するために本発明に係る記録装置の第4の態様は、被記録材に対して光反応液を吐出するノズル列を有する記録ヘッドと、前記吐出された光反応液に光を照射して該光反応液を化学変化させる半導体の発光素子が前記ノズル列と同方向に並んで成る発光素子列を有する光照射部とを備え、前記光照射部は、前記発光素子列が複数列配設され、前記各発光素子列の各発光素子は、行方向に全部又は一部が直列接続され、前記直列接続された発光素子群に対して設けられた第1の態様から第3の態様のいずれか一つの光照射部の故障検出装置を備えていることを特徴とするものである。
【0017】
ここで、本明細書中で使用する「光」とは、一般に短波長側が360nm〜400nm、長波長側が760nm〜830nmとされている可視光、該可視光よりも波長の短い1nm〜380nm程度の紫外線、該可視光よりも波長の長い780nm〜1mm程度の赤外線を含む範囲に加えて、更に、前記紫外線よりも波長の短い電磁波や前記赤外線よりも波長の長い電磁波を含んだ広汎な意味で使用する。説明を単純化するためである。
従って、「光反応液」といった場合には、同じく説明を単純化するために、一般に光の範囲とされている可視光、紫外線、赤外線の範囲に加えて、これらの範囲外に属する短波長ないし長波長の電磁波に反応して、化学変化する種々の液体を意味するものとする。
また、「行方向」とは、前記ノズル列方向と交差する方向を意味する。
【0018】
本態様によれば、第1の態様から第3の態様のいずれか一つの光照射部の故障検出装置を備えているので、前記各態様に記載された作用効果に基づいて記録装置の故障対応処理が適切に行えるようになる。
【0019】
また、光照射部は、発光素子列が複数列配設され、前記各発光素子列の各発光素子は、行方向に全部又は一部が直列接続されている。
従って、行方向に全部が直列接続されて複数列の発光素子列の全てを点灯させて使用する場合は、全点灯によるトータルの光照射量が前記光反応液を化学変化させるための必要量を満たせばよいため、一つの列の発光素子が発光する照射量は、従来の一列構造の場合に比して低レベルに設定することが可能となる。これにより、各発行素子の発光に伴う負荷が軽減され、該発光素子の故障の虞を低減することができる。
【0020】
また、前記行方向に一部だけを直列接続する構成にすれば、複数列の発光素子列の全てを点灯するのではなく、一部を点灯させて使用することも可能である。
この場合は、発光素子一つ当たりの照射量は、前記全点灯の場合よりは多くなるが、従来の一列構造の場合よりは低レベルに設定することが可能であると共に、各照射毎に点灯する発光素子列の組合せを全列の中で組み換えて変更する使い方が可能となる。この使い方により、各発光素子の使用頻度(点灯頻度)が低下するので、この点からも発光に伴う負荷が軽減され、発光素子の故障の虞を低減することができる。
【0021】
次に、前記故障はオープンモードで起きる場合とショートモードで起きる場合の二通りがある。前記直列接続されている一つのグループの各発光素子は、オープンモードで故障した場合はそのグループの全ての発光素子は消灯状態となるが、ショートモードで故障したときは故障していない残りの発光素子は発光状態を続ける。
その際、そのグループを成す複数の発光素子のトータルの光照射量は前記故障した発光素子の分だけ減少する。しかし、PWM制御回路を設けて該複数の発光素子に流れる電流値を故障前よりも増やす制御が実行されるようにすれば、そのグループ内の全体としてのトータルの光照射量を、前記故障前と変わらない状態にすることが可能となる。
即ち、前記直列接続されている一つのグループの発光素子にショートモードで故障が発生しても、PWM制御回路によって電流が増加され、そのグループ内の残りの故障していない発光素子にその増加された電流が流れ、自動的にそのグループのトータルの光照射量は故障前と同等のレベルに維持される。従って、記録品質を然程低下することなく記録を継続することが可能である。
【0022】
本発明に係る記録装置の第5の態様は、前記第4の態様において、前記各発光素子列の各発光素子は、行方向に複数にグループ分けされ、各グループ毎に直列接続されていることを特徴とするものである。
【0023】
本態様によれば、前記各発光素子列の各発光素子は、行方向に複数にグループ分けされ、各グループ毎に直列接続されので、前記第1の態様による効果を一層効果的に得ることができる。
【0024】
本発明に係る記録装置の第6の態様は、前記第4の態様又は第5の態様において、前記直列接続された各発光素子に対して並列にツェナー・ダイオードが接続されていることを特徴とするものである。
【0025】
本態様によれば、前記直列接続されている一つのグループがオープンモードで故障した場合でも、前記ツェナー・ダイオードが迂回路の役割を果たし、ショートモードによる故障と同様に、故障していない残りの発光素子の発光状態を続けることができる。
即ち、オープンモードで故障してもショートモードの故障と同様に、記録品質を然程低下することなく記録を継続することが可能である。
【0026】
本発明に係る記録装置の第7の態様は、前記第4の態様又は第5の態様において、前記記録ヘッドによる記録の実行動作及び前記光照射部の動作を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記故障検出装置が前記直列接続されている各発光素子の故障を検出したときは、該故障がショートモードの故障であるか否かを判定し、ショートモードの故障であるときは、故障した発光素子の属する前記直列接続によって作られるグループを成す残りの発光素子を用いて記録を実行する第1故障時モードに移行するように構成されていることを特徴とするものである。
【0027】
ここで、「第1故障時モード」及び「第2故障時モード」は、いずれも記録装置の状態を故障発光素子のない通常時モードから移行する、予め設定されている記録実行を可能にする故障時用の動作モードを意味する。
【0028】
第1故障時モードとしては、行方向における全ての発光素子を直列接続した構成の場合は、故障した発光素子を除いた残りの発光素子による光照射で、PWM制御回路を設けて該複数の発光素子に流れる電流値を故障前よりも増やす制御が実行されるようにすれば、故障前と同レベルの照射量で記録が継続される。
また、各発光素子が行方向に一部だけが直列接続されている場合は、故障した発光素子の属するグループ以外の発光素子の使用が可能であり、これらの発光素子の照射量を増やすことで、一層照射量を減少することなく記録が継続される。
【0029】
第2故障時モードとしては、故障した発光素子の属するグループを除いて行方向における残りの発光素子だけで記録が可能な状態であるときは記録を実行することになるが、具体的には発光素子列が列数として過剰に設けられている場合は、行方向における他の不使用だった発光素子をONに切り換えることで記録の継続を行える。
【0030】
本態様によれば、制御部が故障の仕方に応じた適切な制御を実行することができ、以って発光素子の一部に故障が発生しても記録を継続することが可能である。
尚、故障した発光素子の属するグループが全て消灯状態では、残りの行方向における発行素子だけでは光照射量の総和が想定されている最低品質の記録実行であっても足りない場合は、或いはユーザーの選択によってこの場合において記録を実行しないことが予め選択されている場合は、当該第2故障時モードにおいて、記録は実行せず、その時点で終了となる制御が実行される。
【0031】
本発明に係る記録装置の第8の態様は、前記第6の態様において、前記記録ヘッドによる記録の実行動作及び前記光照射部の動作を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記故障検出装置が前記直列接続されている各発光素子の故障を検知したときは、故障した発光素子の属する前記直列接続によって作られるグループを成す残りの発光素子を用いて記録を実行する第1故障時モードに移行するように構成されていることを特徴とするものである。
【0032】
本態様によれば、オープンモードで故障してもショートモードの故障と同様の制御を実行できるので、制御構造が単純化できると共に、記録品質を低下することなく記録を継続することが可能である。
【0033】
本発明に係る記録装置の第9の態様は、前記第4の態様から第8の態様のいずれか一つの態様において、前記複数列配設されている発光素子列は、前記ノズル列と同方向に所定ピッチで配設されている各発光素子の前記ノズル列の方向における位置が各列間で一致するように配置されていることを特徴とするものである。
【0034】
本態様によれば、前記第4の態様から第8の態様のいずれか一つの態様の作用効果に加えて、各発光素子の前記ノズル列の方向における位置が各列間で一致するように配置されているので、行方向において点灯する発光素子列の組合せが変更されても、照射される反応液が受けるトータルの光照射量については前記配置に基いて変らない。よって、記録品質のバラツキの発生を防止することができる。
【0035】
本発明に係る記録装置の第10の態様は、前記第4の態様から第8の態様のいずれか一つの態様において、前記複数列配設されている発光素子列は、前記ノズル列と同方向に所定ピッチで配設されている各発光素子の前記ノズル列の方向における位置が各列間で位相を所定ピッチずらして配置されていることを特徴とするものである。
【0036】
本態様によれば、前記第9の態様と構成を共通にする部分については基本的に第9の態様と同様の作用効果が得られる。
いずれかの発光素子列の発光素子に故障が発生した場合は、前記故障した発光素子の隣の発光素子列における前記故障した発光素子と隣り合う位置にある、前記ノズル列の方向に隣接する2個の発光素子、更にその隣の発光素子列の対応する位置の発光素子によって、前記故障した発光素子の光照射量を補うことが可能である。
【0037】
また、本態様では、第9の態様と違って、各発光素子の前記ノズル列の方向における位置が各列間で位相を所定ピッチずらして配置されている。すなわち、各発光素子列において列方向に隣接する二つの発光素子の境界の位置が、第9の態様のように同じ位置ではなく、ずれている。従って、各ノズル口から吐出された反応液に対して各発光素子から照射される光の照射量の均一性の観点において、第4の態様と違って前記境界の位置の影響が分散されて出にくくなり、均一性が向上するという効果が得られる。
【0038】
前記各態様において、前記光反応液は紫外線(UV)硬化インクであり、前記発光素子は紫外線(UV)を照射する発光ダイオード(LED)であるものが具体例として挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る実施例1の記録装置の内部構造の概略構成を示す要部正面図。
【図2】本発明に係る実施例1の記録装置の内部構造の概略構成を示す要部平面図。
【図3】本発明に係る実施例1の記録装置の発光素子列を拡大して示す模式図。
【図4】本発明に係る実施例1の記録装置の通常時モード実行時の動作の流れを示すフローチャート。
【図5】本発明に係る光照射部の故障検出装置の構成を説明する構成図。
【図6】半導体発光素子の順方向電圧の温度依存性を説明する図。
【図7】上記実施例1の複数の発光素子列の行方向における各発光素子の接続構造を示す回路構成図で、(A)は全てが直列接続された場合、(B)は一部が直列接続された場合、(C)はグループ毎に直列接続された場合を示す。
【図8】本発明に係る実施例1の記録装置の故障時モード実行時の動作の流れを示すフローチャート。
【図9】本発明に係る実施例2の複数の発光素子列の行方向における各発光素子の接続構造を示す回路構成図で、(A)は全てが直列接続された場合、(B)は一部が直列接続された場合、(C)はグループ毎に直列接続された場合を示す。
【図10】本発明に係る実施例2の記録装置の故障時モード実行時の動作の流れを示すフローチャート。
【図11】本発明に係る実施例3の記録装置の発光素子列の配列態様(A)〜(C)を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図1から図8に示す実施例1と、図9から図10に示す実施例2と、図11に示す実施例3によって、本発明の記録装置1の構成と、該記録装置1の作動態様について具体的に説明する。
尚、以下の説明では、最初に図1、図2に基づいて本発明の記録装置1の基本的構成について説明し、次いで本発明の特徴的構成について前述した実施例1〜2の各実施例に基づいて順番に説明する。
【0041】
[実施例1](図1〜図8参照)
図示の記録装置1は、バンド送り印刷が可能なインクジェットプリンター1(「記録装置」と同じ符号を使用する)である。このインクジェットプリンター1には、用紙Pを搬送方向Aに所定のバンド送り量Dずつ間欠的に搬送し得る搬送手段3と、複数のノズル口7が前記搬送方向Aと同方向に並んで成るノズル列5を備えている。該ノズル列5は、前記搬送方向Aと交差する方向Bに複数配列されている。そして、該ノズル列5を形成している複数の前記ノズル口7から吐出される光反応液の一例である紫外線(UV)硬化インクCによって用紙Pの被記録面9に所望の下地11ないし画像13を形成する記録ヘッド15を備えている。
【0042】
尚、本明細書中において「バンド」とは、被記録材Pの搬送方向Aに沿って並ぶノズル列5のノズル列長に対応した幅を前記搬送方向に持った記録実行領域或いは記録実行されたものを意味する。
また、「バンド送り量」とは、前記バンドごとの記録を実行するにあたって被記録材Pを実際に搬送する送り量を意味する。
【0043】
更に、このインクジェットプリンター1は、前記記録ヘッド15を搭載して前記交差方向Bに往復移動するキャリッジ17と、前記記録ヘッド15の前記交差方向B側の側傍に並設されるように前記キャリッジ17に対して搭載され、前記各ノズル口7から吐出されたUV硬化インクCに光の一例である紫外線(UV光)Eを照射させて該UV硬化インクCを化学変化(例えば硬化)させる発光素子の一例である複数の発光ダイオード(以下、「LED」ともいう)41によって形成される発光素子列39によって構成されている光照射部19と、を備えている。
【0044】
そして、前記発光素子列39が用紙Pの搬送方向Aと交差する方向Bに複数列配設されていると共に、本実施例においては、発光素子列39Aと39Bの各発光素子41が列方向ではなく行方向に直列接続され、残りの発光素子列39Cの各発光素子41は列方向に直列接続されている。この接続構造に基く作用の詳細は後述する。
また、前記発光素子列39を形成している1つのLED41から照射されるUV光Eが、前記ノズル列5を形成している複数のノズル口7から各別に吐出されている複数のUV硬化インクCの硬化に使用されている。
本実施例では、1つのLED41から照射されるUV光Eによって約36個のノズル口7から吐出されたUV硬化インクCの硬化が一挙に賄えるように構成されている。
【0045】
図1、図2に示すように、搬送手段3は、記録実行領域23の上流位置に設けられる一対のニップローラーによって構成されている搬送用ローラー25と、前記記録実行領域23の下流位置に設けられる同じく一対のニップローラーによって構成されている排出用ローラー27と、を備えることによって一例として構成されている。
そして、前記搬送用ローラー25と排出用ローラー27を駆動するモーター29には、後述する制御部21から前記バンド送り量Dの搬送を指令する信号31が送信されて、用紙Pが前記バンド送り量Dずつ間欠的に送られるように構成されている。
【0046】
記録ヘッド15は、本実施例では、下地用のインクCを吐出する第1の記録ヘッド15Aと、画像形成用インクC2を吐出する第2の記録ヘッド15Bの二種類が設けられており、一例として図1、図2中の左方に第1の記録ヘッド15Aが配設され、図1、図2中の右方に第2の記録ヘッド15Bが配設されている。
尚、このうち第1の記録ヘッド15Aには、例えばホワイト(W)、ゴールド(G)、シルバー(S)等の下地用インクC1を吐出するノズル列5Wが設けられている。また、第2の記録ヘッド15Bには、一例としてシアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色の画像形成用インクC2を個別に吐出する4つのノズル列5C、5M、5Y、5Kが前記交差方向Bに所定の間隔を隔てて並設されている。
【0047】
そして、これらの各ノズル列5W、5C、5M、5Y、5Kには、後述する制御部21から各ノズル口7の位置に対応したインク吐出量を指令する信号31が送信されてインク吐出量の調整が図られている。
また、図示のインクジェットプリンター1では、前記ノズル列5W、5C、5M、5Y、5Kの各ノズル口7から吐出されるインクCは、前述したようにUV光Eの照射を受けて、硬化するUV硬化インクCである。
【0048】
「UV硬化インク」は、UV光Eを照射することによって硬化、定着する速硬性に優れたインクで、ヒーター加熱によって溶媒を蒸発させることによって硬化、定着する顔料インクに比べて硬化後の体積収縮率が格段に小さいという特長を有している。
また、「UV硬化インク」は、溶剤成分を含んでいないため環境に優しく、UV光Eを照射することによって瞬時に硬化するためインク吸収性の低いフィルム系の被記録材Pに好適なインクである。
【0049】
キャリッジ17は、前記交差方向Bに延びるキャリッジガイド軸37に沿って該方向Bに往復移動する前記記録ヘッド15の往復搬送手段である。
キャリッジ17を往復移動するための動力は、正逆転可能で単位ステップ毎の精密な送り制御が可能な図示しないモーターから受けており、該モーターの回転が図示しない歯付きベルトを介してキャリッジ17に伝達されるようになっている。
【0050】
光照射部19は、前記下地用インクC1を硬化させる前記第1の記録ヘッド15Aの図1、図2中、一例として左側傍に配置されている第1光照射部19Aと、前記画像形成用インクC2を硬化させる前記第2の記録ヘッド15Bの図1、図2中、一例として右側傍に配置されている第2光照射部19Bの二種類が設けられている。
そして、図示のインクジェットプリンター1では、前記二種類の光照射部19A、19Bが、用紙Pの被記録面9に吐出された前記UV硬化インクCに所定の照射量のUV光Eを照射することでUV硬化インクCの硬化、定着を実行している。
【0051】
また、前記二種類の光照射部19A、19Bは、本実施例ではそれぞれ3列の発光素子列39A、39B、39Cによって構成されており、これらの発光素子列39A、39B、39Cには、前記二種類の記録ヘッド15A、15Bにおける各ノズル列5Wと5C、5M、5Y、5Kのノズル口7の配列に対応した配列の複数のLED41が設けられている。
そして、これらの各LED41には、後述する制御部21から各LED41の位置に対応したUV光Eの照射量や照射の有無を指令する信号31が送信されてUV光Eの照射量の調整と照射の有無の切り換えとが行われるようになっている。
【0052】
実施例1に係るインクジェットプリンター1Aでは、前記基本的構成に加えて、前記各発光素子列39A、39B、39Cを形成している各LED41の故障を検出する光照射部の故障検出装置20と、該故障検出装置20からの故障検知情報33と予め設定されている設定情報35とに基づいて前記二種類の記録ヘッド15A、15Bの動作と前記二種類の光照射部19A、19Bの動作を通常モード43と、故障時モード45とに切り換えて実行可能な制御部21と、を備えている。
【0053】
前記故障検出装置20は、図5に示したように、LED41が複数個(ここではいずれもN個とする)直列に接続された発光素子群を有する光照射部の前記LED41の各順方向電圧の合計値を計測する電圧計測部55と、前記電圧計測部55で得られる計測値Vtの、予め設定される基準値「Vf×N」に対する減少量から前記LED41の故障の有無を判定する故障判定部58を備えるものである。図5において、符号57は定電流回路、符号59は定電圧電源を示す。故障判定の仕方は既述の通りであり、当該故障検出装置20によって、前記LED41の故障の有無の判定と故障したLEDの数を検出することができる。
【0054】
図6は、半導体発光素子であるLED41の順方向電圧Vfの温度依存性を説明する図で、横軸が温度T(℃)である。LED41の順方向電圧Vfは温度の上昇と共に直線的に減少する関係にある。通常は使用継続による発熱によってLED41の温度は当初は上昇する。しかし、放熱による冷却とのバランスによってその温度上昇は飽和して一定温度に落ち着く。その一定温度Tsatは飽和温度と称され、その飽和温度Tsatのときの順方向電圧はVfbである。従って、使用時に温度計測して前記飽和温度Tsatの情報を得れば、その温度Tsatに対応する順方向電圧Vfbを用いることが可能となり、LED41の順方向電圧Vfの温度依存性による影響を抑えて高精度で故障の有無を判定することができる。
【0055】
本実施例では、前記基準値「Vf×N」は温度との関係をもって設定されている。すなわち、前記故障判定部58は、判定時に温度情報Tsatを得て該判定に用いる前記基準値を「Vfb×N」として動作するように構成されている。従って、LED41の順方向電圧Vfの温度依存性による影響を抑えて高精度で故障の有無を判定することができる。
【0056】
一方、制御部21は、キャリッジ17の移動方向によって動作させる記録ヘッド15A、15Bと光照射部19A、19Bを適宜切り換えるようにし、動作が選択された記録ヘッド15と光照射部19に対して前述した通常時モード43と故障時モード45の二種類の動作モードが選択的に実行されるようになっている。
【0057】
尚、前記通常時モード43では、ユーザーの選択によって前記3列ずつ設けられている発光素子列39A、39B、39Cを全部使用する全部使用モード49と、前記3列の発光素子列39A、39B、39Cの一部を使用する一部使用モード51とに切り換えて使用できるように構成されている。
そして、前記全部使用モード49では、二種類設けられる光照射部19A、19Bをキャリッジ17の往路走査時と復路走査時とで切り換えて使用し、各光照射部19A、19Bの使用時に前記3列の発光素子列39A、39B、39Cを形成しているすべてのLED41をON状態にしてUV光Eの照射を実行する。
【0058】
一方、前記一部使用モード51では、二種類設けられる光照射部19A、19Bをキャリッジ17の往路走査時と復路走査時とで切り換えて使用し、各光照射部19A、19Bの使用時に前記3列の発光素子列39A、39B、39Cの内、前記直列接続されている二つ(発光素子列39A、39B)又は残りの一つ(発光素子列39C)の発光素子列39を選択し、更にその選択する対象を各照射毎に入れ換えて当該選択した発光素子列39のみのLED41をON状態にしてUV光Eの照射を実行し、他の発光素子列39のLED41をOFF状態にするようになっている。尚、発光素子列39Cの発光素子41は一つで発光素子列39A、39Bの二つ発光素子41の光照射量になるように設定されている。
尚、使用する発光素子列39を選択するに際して、現時点までの点灯回数や点灯時間等に基づいて、規則的に使用する発光素子列39を順番に切り換えるようにしても良いし、使用する発光素子列39をランダムに切り換えるようにすることも可能である。
【0059】
また、本実施例では、図3に示すように3列配設されている発光素子列39A、39B、39Cは、用紙Pの搬送方向Aに所定ピッチSで配設されている各LED41の用紙Pの搬送方向Aでの位置が各発光素子列39A、39B、39C間で一致するように整列配置されている。
【0060】
次に、図4から図8に示すフローチャート及び回路構成図に従って、(1)通常時モード実行時と、(2)故障時モード実行時とに分けて本実施例に係るインクジェットプリンター1Aの動作の流れを具体的に説明する。
【0061】
(1)通常時モード実行時(図4参照)
本実施例では、前記LED41の故障が発生していない場合には、図4に示す通常時モード43が制御部21において実行される。最初にステップS1で全部使用モード49が選択されたのか一部使用モード51が選択されたのかの判断が行われ、全部使用モード49が選択された場合には、ステップS2に移行して前述した全部使用モード49で記録が実行される。
【0062】
全部使用モード49においては、全発光素子列39A、39B、39Cの全ての点灯によるトータルの光照射量が前記光反応液を化学変化させるための必要量を満たせばよいため、一つの列の発光素子が発光する照射量は、従来の一列構造の場合に比して低レベルに設定することが可能である。これにより、各LED41の発光に伴う負荷が軽減され、該LED41の故障の虞を低減することができる。
【0063】
次に、ステップS3に移行して、キャリッジ17の移動方向が往路側であるのか復路側であるのかの判断が行われ、キャリッジ17の移動方向が往路側と判断された場合には、ステップS4に移行して第2の記録ヘッド15Bと第2光照射部19BをON状態にし、第1の記録ヘッド15Aと第1光照射部19AをOFF状態にして記録を実行する。
次に、ステップS5に移行して、印刷する残りの下地11または画像13があるか否かの判断が行われ、印刷する残りの下地11または画像13がないと判断された場合には、記録の実行が終了する。
【0064】
一方、前記ステップS5で印刷する残りの下地11または画像13があると判断された場合には、ステップS3に戻って、ステップS3〜S5の判断と動作が繰り返し実行される。
また、前記ステップS3でキャリッジ17の移動方向が復路側と判断された場合には、ステップS6に移行して第1の記録ヘッド15Aと第1照射部19AをON状態にし、第2の記録ヘッド15Bと第2光照射部19BをOFF状態にして記録を実行する。
【0065】
次に、ステップS7に移行して印刷する残りの下地11または画像13があるか否かの判断が行われ、印刷する残りの下地11または画像13がないと判断された場合には、記録の実行が終了する。
一方、前記ステップS7で印刷する残りの下地11または画像13があると判断された場合には、ステップS3に戻って、ステップS3、S6、S7の判断と動作と、前記ステップS3〜S5の判断と動作とが繰り返し実行される。
【0066】
また、前記ステップS1で一部使用モード51が選択された場合には、ステップS8に移行して予め設定されている設定情報35に従って、使用する発光素子列39を適宜、切り換えながら記録を実行する。
この場合は、LED41一つ当たりの照射量は、前記全点灯の場合よりは多くなるが、従来の一列構造の場合よりは、各LED41の使用頻度(点灯頻度)が低下するので、この点からも発光に伴う負荷が軽減され、LED41の故障の虞を低減することができる。
【0067】
その際、本実施例においては、各LED41の前記ノズル列5の方向における位置が各列間で一致するように配置されているので、各照射毎に点灯する発光素子列39の組合せを全3列の中で組み換えて変更しても、照射される反応液が受けるトータルの光照射量は変らない。よって、記録品質のバラツキの発生を防止することができる。
【0068】
以後は、前述したステップS3〜S7と同様のステップS9〜S13を実行し、ステップS11ないしステップS13で印刷する残りの下地11または画像13がないと判断された場合に記録の実行を終了する。
【0069】
(2)故障時モード実行時(図7〜図8参照)
先ず、本実施例においては、前記各発光素子列39A、39B、39Cの各LED41は、行方向に全部又は一部が直列接続されている。その直列接続構造を図7に示した。この図7においては発光素子列39が3列ではなく5列であるとして示してある点で前記図1乃至図3と相違するが、上記の通り、直列接続される回路構成の説明を分かり易くしたことで生じた相違であり、両者に実質的な相違はない。
【0070】
図7において、(A)は行方向の全部のLED41a、41b、41c、41d、41eが直列接続された場合、(B)は3個のLED41a、41b、41cだけ、すなわち一部が直列接続された場合、(C)は行方向における5個のLEDを3個(41a、41b、41c)と2個(41d、41e)のグループに分け、各グループ毎に直列接続された場合を示す。本実施例では(B)の直列接続構造が採用されている。
LED41が複数個(ここでは5個、3個、2個)直列に接続された発光素子群を有する光照射部の前記LED41の各順方向電圧の合計値を計測する電圧計測部55を備えている。
【0071】
尚、図7においては、代表して行方向の一行のLED41a、41b、41c、41d、41eについての回路構成図が示されているが、他の行のLED41も同じである。
【0072】
図8に示したように、ステップS1において前記故障検知装置20が前記直列接続されている各LED41a、41b、41cの群について故障の発生を検知したときは、ステップS2にて該故障がショートモードの故障であるか否かが判定される。そして、ショートモードの故障であるときは、故障したLEDの属する前記直列接続によって作られるグループを成す残りのLEDを用いて図示しないPWM制御回路によるPWM制御を受けつつ記録を実行する第1故障時モードに移行する(ステップS3)。PWM制御回路は該複数の発光素子に流れる電流値を故障前よりも増やす制御を実行するものである。
【0073】
ステップS2において、ショートモードの故障ではなく、オープンモードの故障であると判定されたときは、故障したLEDの属するグループを除いて行方向の残りのLED41d、41eだけで記録が可能な状態であるか否かが判断される(ステップS4)。そして、「可能である」ときは、前記残りの発光素子41d、41eを用いて記録を実行する第2故障時モードに移行し(ステップS5)、「可能でない」ときは記録を終了するように構成されている。
【0074】
既述の通り、発光素子列39における前記故障は、オープンモードで起きる場合とショートモードで起きる場合の二通りがある。前記各発光素子列39の各LED41は、行方向に一部(各LED41a、41b、41c)が直列接続されている。複数のLED41a、41b、41cが直列接続されているので、オープンモードで故障した場合はその列の全てのLED41a、41b、41cは消灯状態となるが、ショートモードで故障したときは故障していないLED41b、41cは発光状態を続ける。
【0075】
第1故障時モードとしては、行方向における全てのLED41a、41b、41c、41d、41eを直列接続した構成の場合は、故障したLED41aを除いた残りのLED41b、41c、41d、41eによる光照射で、然程照射量を減少することなくPWM制御を受けつつ記録が継続される。
また、各LEDが行方向に一部だけ(41a、41b、41c)が直列接続されている場合は、故障したLED41aの属するグループ以外のLED41d、41eの使用が可能であり、これらのLED41d、41eの照射量を増やすことで、一層照射量を減少することなく記録が継続される。
【0076】
第2故障時モードとしては、故障したLED41aの属するグループを除いて、行方向における残りのLED41d、41eだけで記録が可能な状態であるときは記録を実行することになるが、具体的には発光素子列39が列数として過剰に設けられている場合は、行方向における他の不使用だったLEDをONに切り換えることで記録の継続を行える。
【0077】
本実施例によれば、制御部21が故障の仕方に応じた適切な制御を実行することができ、以ってLED41の一部に故障が発生してもPWM制御を受けつつ記録を継続することが可能である。
尚、故障したLED41aの属するグループが全て消灯状態では、残りの行方向におけるLED41d、41eだけでは光照射量の総和が想定されている最低品質の記録実行であっても足りない場合は、或いはユーザーの選択によってこの場合において記録を実行しないことが予め選択されている場合は、当該第2故障時モードにおいて、記録は実行せず、その時点で終了となる制御が実行される。
【0078】
[実施例2](図9〜図10参照)
図9は実施例2の回路構成図である。
図9において、(A)は行方向の全部のLED41a、41b、41c、41d、41eが直列接続された場合、(B)は3個のLED41a、41b、41cだけ、すなわち一部が直列接続された場合、(C)は行方向における5個のLEDを3個(41a、41b、41c)と2個(41d、41e)のグループに分け、各グループ毎に直列接続された場合を示す。本実施例では(B)の直列接続構造が採用されている。
尚、図9においては、代表して行方向の一行のLED41a、41b、41c、41d、41eについての回路構成図が示されているが、他の行の発光素子41も同じである。
【0079】
本実施例2では、前記直列接続された各LED41a、41b、41c、41d、41eに対して並列にツェナー・ダイオードZDが接続されている。
図10に示したように、前記制御部21は、前記故障検知装置20が前記直列接続されている各LED41a、41b、41cの故障を検知したときは(ステップS10)、故障したLED41aの属する前記直列接続によって作られるグループを成す残りのLED41b、41cを用いてPWM制御を受けつつ記録を実行する第1故障時モードに移行するように構成されている(ステップS11)。
【0080】
本実施例2によれば、前記直列接続されている一つのグループ(LED41a、41b、41c)がオープンモードで故障した場合でも、前記ツェナー・ダイオードZDが迂回路の役割を果たし、ショートモードによる故障と同様に、故障していない残りのLED41b、41cの発光状態をPWM制御を受けつつ続けることができる。
即ち、オープンモードで故障してもショートモードの故障と同様に、記録品質を然程低下することなく記録を継続することが可能である。
【0081】
[実施例3](図11参照)
実施例3に係るインクジェットプリンター1Bは、前記実施例1に係るインクジェットプリンター1Aと基本的に同様の構成を有しており、発光素子列39を形成しているLED41の配列が各発光素子列39A、39B、39C間で異なっている点のみで相違している。即ち、実施例2においても、各発光素子列39A、39B、39Cは、図11に示したように、複数のLED41が行方向に直列接続されている。
従って、ここでは前記実施例1と相違する各発光素子列39A、39B、39CでのLED41の配列と、該配列を採用することによって発揮されるインクジェットプリンター1Bの作用、効果に絞って説明する。
【0082】
即ち、本実施例では、3列配設されている発光素子列39A、39B、39Cにおいて、用紙Pの搬送方向Aに所定ピッチSで配設されている各LED41の用紙Pの搬送方向Aでの位置が各発光素子列39A、39B、39C間で位相を所定ピッチTずらして配置されることによって構成されている。
因みに、図11(A)では、LED41の搬送方向Aでの位置を各発光素子列39A、39B、39C間で位相を3分の1ピッチT1ずらした配列を図示しており、図11(B)では、前記位相を2分の1ピッチT2ずらした配列を図示している。また、図11(C)では、前記位相を4分の1ピッチT3ずらした配列を図示している。
【0083】
そして、このようなLED41の配列を採用した場合には、1つのLED41に故障があった時、他の発光素子列39の搬送方向Aの近傍位置の複数のLED41が、故障したLED41の光照射量の不足を補うことになる。
従って、故障したLED41の光照射量の不足を他の発光素子列39の近傍位置の複数のLED41が、その位相のずれに応じた比率で部分的に受け持って、これらの組み合わせによって、光照射量の不足を補うことになる。
【0084】
また、本実施例3では、前記実施例1と違って、各LED41の前記ノズル列5の方向における位置が各列間で位相を所定ピッチずらして配置されている。すなわち、各発光素子列39A、39B、39Cにおいて列方向に隣接する二つのLED41の境界の位置が、実施例1のように同じ位置ではなく、ずれている。従って、各ノズル口7から吐出された反応液に対して各LED41から照射される光の照射量の均一性の観点において、実施例1と違って前記境界の位置の影響が分散されて出にくくなり、均一性が向上するという効果が得られる。
【0085】
[他の実施例]
本発明に係る記録装置1は、以上述べたような構成を有することを基本とするものであるが、本願発明の要旨を逸脱しない範囲内の部分的構成の変更や省略等を行うことも勿論可能である。
【0086】
例えば、発光素子列39の数は、前記実施例1〜2において採用した3列に限らず、4列以上設けることも可能である。
【0087】
また、画像13のみを印刷するインクジェットプリンター1の場合には、画像形成用の第2の記録ヘッド15Bのみを設け、該第2の記録ヘッド15Bの方向Bの左右の側傍に、それぞれ複数列、2組の第2照射部19Bを配設することが可能である。
因みにこのような構成を採用した場合には、キャリッジ17の移動方向が往路側である時と、復路側である時とで、第2の記録ヘッド15Bと第2照射部19Bの動作のON状態とOFF状態を切り換える必要がないから制御部21でのこれらの動作制御が容易になる。
【0088】
この他、通常時モード43と故障時モード45とで、あるいは故障したLED41の位置に応じて該故障したLED41を補填するLED41の光照射量を調整したり、複数列設けられる発光素子列39の記録ヘッド15からの離間距離に応じてLED41の光照射量を調整することも可能である。
【0089】
また、記録ヘッド15から吐出される光反応液Cは、UV硬化インクに限られない。従って、UV光以外の他の波長の光Eによって化学変化する種々の光反応液Cが採用可能であり、発光素子41もLEDに限られない。具体的には、ある波長の光Eの照射を受けることによって色を変化させる光反応液Cを利用して被記録材Pの被記録面9に画像13を形成するようなインクジェットプリンター1等に本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0090】
1 インクジェットプリンター(記録装置)、3 搬送手段、5 ノズル列、
7 ノズル口、9 被記録面、11 下地、13 画像、15 記録ヘッド、
17 キャリッジ、19 光照射部、20 故障検出装置、21 制御部、
23 記録実行領域、25 搬送用ローラー、27 排出用ローラー、
29 モーター、31 信号、33 故障検知情報、35 設定情報、
37 キャリッジガイド軸、39 発光素子列、
41 発光ダイオード(LED)(発光素子)、43 通常時モード、
45 故障時モード、47 バンド、49 全部使用モード、
51 一部使用モード、55 電圧計測部、57 定電流回路、58 故障判定部、59 定電圧電源、P 用紙(被記録材)、A 搬送方向、
B 交差する方向、C 紫外線(UV)硬化インク(インク)(光反応液)、
D バンド送り量、E 紫外線(UV光)(光)、S ピッチ、T ピッチ、
ZD ツェナー・ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体の発光素子が複数個直列に接続された発光素子群を有する光照射部の前記各発光素子の各順方向電圧の合計値を計測する電圧計測部と、
前記電圧計測部で得られる計測値の、予め設定される基準値に対する減少量から前記発光素子の故障の有無を判定する故障判定部と、を備える光照射部の故障検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載された光照射部の故障検出装置において、
前記故障判定部は、前記発光素子の故障の有無の判定に加えて、前記基準値に基づいて故障した発光素子の数も演算して出力するように構成されていることを特徴とする光照射部の故障検出装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された光照射部の故障検出装置において、
前記基準値は温度との関係をもって設定されており、
前記故障判定部は、判定時に温度情報を得て該判定に用いる前記基準値を選定するように構成されていることを特徴とする光照射装置の故障検出装置。
【請求項4】
被記録材に対して光反応液を吐出するノズル列を有する記録ヘッドと、
前記吐出された光反応液に光を照射して該光反応液を化学変化させる半導体の発光素子が前記ノズル列と同方向に並んで成る発光素子列を有する光照射部と、を備え、
前記光照射部は、前記発光素子列が複数列配設され、
前記各発光素子列の各発光素子は、行方向に全部又は一部が直列接続され、
前記直列接続された発光素子群に対して設けられた請求項1から3のいずれか一項に記載されている光照射部の故障検出装置を備えていることを特徴とする記録装置。
【請求項5】
請求項4に記載された記録装置において、
前記各発光素子列の各発光素子は、行方向に複数にグループ分けされ、各グループ毎に直列接続されていることを特徴とする記録装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載された記録装置において、
前記直列接続された各発光素子に対して並列にツェナー・ダイオードが接続されていることを特徴とする記録装置。
【請求項7】
請求項4又は5に記載された記録装置において、
前記記録ヘッドによる記録の実行動作及び前記光照射部の動作を制御する制御部を備え、
前記制御部は、
前記故障検出装置が前記直列接続されている各発光素子の故障を検出したときは、該故障がショートモードの故障であるか否かを判定し、
ショートモードの故障であるときは、故障した発光素子の属する前記直列接続によって作られるグループを成す残りの発光素子を用いて記録を実行する第1故障時モードに移行するように構成されていることを特徴とする記録装置。
【請求項8】
請求項6に記載された記録装置において、
前記記録ヘッドによる記録の実行動作及び前記光照射部の動作を制御する制御部を備え、
前記制御部は、
前記故障検出装置が前記直列接続されている各発光素子の故障を検知したときは、故障した発光素子の属する前記直列接続によって作られるグループを成す残りの発光素子を用いて記録を実行する第1故障時モードに移行するように構成されていることを特徴とする記録装置。
【請求項9】
請求項4から8のいずれか一項に記載された記録装置において、
前記複数列配設されている発光素子列は、前記ノズル列と同方向に所定ピッチで配設されている各発光素子の前記ノズル列の方向における位置が各列間で一致するように配置されていることを特徴とする記録装置。
【請求項10】
請求項4から8のいずれか一項に記載された記録装置において、
前記複数列配設されている発光素子列は、前記ノズル列と同方向に所定ピッチで配設されている各発光素子の前記ノズル列の方向における位置が各列間で位相を所定ピッチずらして配置されていることを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−4559(P2013−4559A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130988(P2011−130988)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】