説明

光硬化性シール剤およびシール層付き部材の製造方法

【課題】耐透湿性が高く電子部品ケースのシールに優れた性能を示す光硬化性シール剤の製造方法を提供する。
【解決手段】(A)主鎖の炭素数が3〜15であり、分岐鎖を有してもよい脂肪族炭化水素の両末端に(メタ)アクリロイル基を有する1以上の2官能(メタ)アクリレート、(B)分岐鎖を有してもよい炭素数6〜20の鎖状アルキル骨格の片末端に(メタ)アクリロイル基を有する1以上の単官能(メタ)アクリレート、(C)スチレン−イソブチレンブロック共重合体、(D)光重合開始剤、および(E)シリカ粉を混合して光硬化性シール剤をつくり、このシール剤を部材上に塗布し光を照射することによりシール層をもつ電子部品ケース等の部材を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性のシール剤、およびこの光硬化性シール剤を使用したシール層をもつ部材に関し、特にハードディスクドライブをはじめとする電子回路素子や電子部品を内在した電子部品ケースのシール技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクドライブをはじめとする電子回路素子や電子部品を内在した電子部品ケースにおいては塵などの侵入を防ぐため封止用のシール材料が使用されている。シール材料としてはゴムのシートを打ち抜いて接着する方法などが採られてきたが、量産性が低くまた設計変更には新規の金型が必要となるため設計の自由度が低いものであった。
【0003】
また、近年では電子部品の小型化が進み、そのため構成部材の一体化や複合化が必要となっている。加えて信頼性の向上のためより高度な耐透湿性などのシール機能の向上が求められるようになってきている。これらの要求を満たすため、従来からあるゴム製パッキンに替え、部材上でシール剤組成物を硬化させてシール層を形成するという封止方法(CIPG)がとられるようになってきている。
【0004】
封止方法としては、一般に、封止する部材間に液状シール剤を狭持したのち、適当な方法でシール剤を硬化させるという方法(FIPG)が知られている。ハードディスクドライブをはじめとする電子機器部材のシールにおいてFIPGを用いると、シール剤の硬化時に発生する副生物や未反応物ガス等がシールした部材の内部に滞留し、これが電子回路素子や電子部品に悪影響を及ぼすことがある。そのため、電子機器部材のシールにおいてはFIPGよりもCIPGの方が作業性、信頼性の点から好ましい。また、シール剤の硬化方法としては、熱や光などのエネルギーを付与する方法が知られているが、電子回路素子や電子部品等に及ぼす影響が少なく、生産性に優れ、かつ硬化時にシール剤が形状を保持しやすい方法として光硬化が好ましい。
【0005】
従来よりある光硬化性シール剤として、不飽和ポリエステル樹脂やエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートなどのアクリル系樹脂に光重合開始剤を添加したものや、エポキシ樹脂に光重合開始剤を添加したものが用いられている。特にウレタン(メタ)アクリレートを使用したものは硬化物に柔軟性を付与しやすいため、光硬化性シール剤として使用することが提案されている(特開2005−139461号公報)。ウレタン(メタ)アクリレートを使用した光硬化性シール剤は、量産性、設計の自由度、硬化物の伸び率などに優れており、防塵を目的とするシール材料としては優れたものである。一方で、耐透湿性は十分に高いものではなく、電子部品ケースにおいて優れた耐湿シール機能を実現することができなかった。
【0006】
耐透湿性の高い光硬化性シール剤としては、メタクリロイル変性液状ポリイソプレンおよびアクリル酸エステルモノマーなどを使用した組成物が提案されている(特開2005−60465号公報)。しかしながらこの光硬化性シール剤は、可撓性付与成分であるブロック共重合体を使用しておらず、またメタクリロイル変性液状ポリイソプレンは末端2官能性でないため、硬化物は熱が加わる環境において硬くなる傾向がある。そのため衝撃や温度サイクルによる部材の動きに追従できなくなり、信頼性の高いシール機能を実現することができなかった。
【0007】
また、耐透湿性に優れた光硬化性シール剤として、イソブチレンブロックとそれ以外のブロックの共重合体を主成分とするシール剤用組成物(特開平5−295053号公報)、ガスケット材料(特開平11−323069号公報)などが提案されている。これらはシール層を形成するために、ロールや押出機、射出成形機などにより成形したのち、適用部材に貼り付けるという工程が必要であり、量産性および設計の自由度の点から問題があった。
【0008】
さらに、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体と炭素数18〜25の鎖状脂肪族単官能(メタ)アクリレート等を使用した光硬化性シール剤も提案されている(特開2005−154528号公報)。しかしながら、(メタ)アクリレートが単官能のみで、かつその鎖状脂肪族部分の炭素鎖が斯くのごとく長くなると、硬化したときに緻密なネットワークが形成されにくく、弾性的要素を向上させることができない。その結果、部材上でシール剤を硬化させてシール層を形成するという用途(CIPG)には使用できなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、前述の課題を解決することにあり、特に、耐透湿性が高く、部材上にシール剤を塗布し光照射することによりCIPGシール層を形成でき、量産性および設計の自由度に優れ、またシール層が部材の動きに追従できる、信頼性の高い光硬化性シール剤およびシール層付き部材の製造方法を提供することである。
【0010】
発明の要約
本発明は、第1に、
(A)一般式(1)
【化1】

【0011】
(ここでRは主鎖の炭素数が3〜15の2価の脂肪炭化水素基であり、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基である)
で示される少なくとも1の2官能性(メタ)アクリレート、
【0012】
(B)一般式
【化2】

【課題を解決するための手段】
【0013】
(ここでRは炭素数6〜20のアルキル基であり、Rは水素原子又はメチル基である)
で示される少なくとも1の単官能(メタ)アクリレート、
(C)スチレン−イソブチレンブロック共重合体、(D)光重合開始剤、および(E)シリカ粉を必須成分として混合することを特徴とする光硬化性シール剤の製造方法である。
【0014】
上記において、各成分の量は、組成物の合計重量当り、(A)成分が0.1〜20重量%、(B)成分が40〜80重量%、(C)成分が10〜50重量%、(D)成分が0.1〜10重量%、そして(E)成分が0.1〜30重量%であることが好ましい。また(C)成分としては、トリブロック構造のスチレン−イソブチレン−スチレン共重合体が特に好ましい。
【0015】
本発明は、第2に、上記の方法で得た光硬化性シール剤をシールすべき部材の表面に塗布し、光を照射することによって硬化させてなるシール層をもつ部材の製造方法である。
上記において、部材としては、ハードディスクドライブ等の電子部品筐体が好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明で得られる光硬化性シール剤は、ハードディスクドライブをはじめとする電子回路素子や電子部品を内在した電子部品ケース等のシールにおいて、部材上でシール剤を硬化させてシール層を形成するという封止方法をとることにより量産性および設計の自由度が高く、また優れた弾性を有することから部材の動きに対する追従性が良好で、特にCIPG用途に適しており、そのため発生するアウトガスの問題も解決することができ、さらに耐透湿性に優れたシール層を形成することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の光硬化性シール剤は、(A)2官能(メタ)アクリレートおよび(B)単官能(メタ)アクリレートが、光と反応しラジカルを発生する(D)光重合開始剤により重合する反応を基本とする。なお、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートとメタクリレートの総称である。
【0018】
本発明の(A)成分の2官能(メタ)アクリレートは、光硬化性シール剤の接着強度および耐熱性を高める目的で使用される。なお、2官能とは反応に寄与する(メタ)アクリロイル基を分子中に2個有する化合物のことである。
【0019】
ここで本発明の(A)成分について説明する。(A)成分の2官能(メタ)アクリレートは、前記一般式(1)で示される化合物であり、Rは主鎖の炭素数が3〜15の2価の脂肪族炭化水素基であれば特に限定されず、直鎖状でも分岐鎖を有してもよく、また飽和結合以外に不飽和結合(二重結合)を有していてもよい。好ましいRは主鎖の炭素数が3〜15のアルキレン基である。(A)成分の2官能(メタ)アクリレートとして、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジ(メタ)アクリレート、1,14−ペンタデカンジ(メタ)アクリレート、1,15−ペンタデカンジ(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらから単独又は複数種類を選び使用することができる。これらの2官能(メタ)アクリレートは、硬化物の接着強度及び耐熱性を損なわないためには、主鎖炭化水素の炭素数は3〜15である必要がある。Rの合計炭素数は特に制限はないが、3〜20が好ましい。また、その添加量は0.l〜20重量%であることが好ましく、さらには0.5〜10重量%が好ましい。
【0020】
本発明の(B)成分の単官能(メタ)アクリレートは前記一般式(2)で示される化合物であり、光硬化性シール剤の柔軟性及び硬化性を高める目的で使用される。Rは炭素数が6〜20のアルキル基であれば特に限定されず、分岐鎖を有していてもよい。具体的には、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イコサニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは、硬化物の柔軟性が目的に合うよう、1種類又は複数種類を合わせて使用することができる。
【0021】
なお、(B)成分の上記アルキル基の炭素数が小さくなりすぎると、硬化物の柔軟性が低下したり、表面の粘着性が増加するなどしてシール剤としての使用が困難となり、炭素数が大きくなりすぎると硬化性が悪くなり生産性が低下する。硬化物に適度な柔軟性および未硬化物に優れた硬化性を与えるために、炭素数6〜20のアルキル基を持つ単官能(メタ)アクリレートが好ましく、さらに炭素数8〜18のものがより好ましい。また、その添加量は40〜80重量%であることが好ましく、さらには50〜70重量%が好ましい。添加量が40重量%以下であると硬化物が硬くなり過ぎ、80重量%以上であると高温環境下での使用時に軟らかくなり過ぎ、シール性が低下してしまう。
【0022】
本発明の(C)成分のスチレン−イソブチレンブロック共重合体は、光硬化性シール剤に耐透湿性と可撓性を与える目的で使用される。(C)成分はスチレン単量体からなるポリスチレンブロックとイソブチレン単量体からなるポリイソブチレンブロックをもったブロック共重合体であればよいが、トリブロック構造のスチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体がより好ましい。本発明においては、該重合体のスチレンブロック含量が10〜40重量%であるものが好ましいが、より好ましくは15〜35重量%のものである。(C)成分の添加量は10〜50重量%であることが好ましく、さらには20〜40重量%が好ましい。添加量が10重量%未満であると、組成物に十分な耐透湿性を付与することができず、50重量%を超えると、(A)及び(B)成分中に十分に相溶あるいは分散させることができない。なおトリブロック共重合体の市販品としては、SIBSTAR072T、SIBSTAR102T(株式会社カネカ製)などがある。
【0023】
上述の(A)2官能(メタ)アクリレート、(B)単官能(メタ)アクリレート及び(C)スチレン−イソブチレンブロック共重合体を組み合わせることにより、光硬化性シール剤の硬化物は優れた弾性を有することができ、これによりCIPG用途における高いシール性が発現される。なお、それぞれの配合量は上記に記載した量から大きく外れると、必要とされる弾性を得ることが困難となる。
【0024】
本発明の(D)成分の光重合開始剤は、光硬化性シール剤を硬化させる目的で使用される。(D)成分は光照射によってラジカルを発生させる開始剤であれば特に限定されず、公知のものを使用することができる。例えば、ジメトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジエトキシアセトフェノン、アセトフェノン、プロピオフェノン、ベンゾフェノン、キサントール、フルオレイン、ベンズアルデヒド、アンスラキノン、トリフェニルアミン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、カルバゾール、2−ヒドロキシ−2−メチルフェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー、3−メチルアセトフェノン、4−メチルアセトフェノン、3−ペンチルアセトフェノン、4−メトキシアセトフェノン、3−ブロモアセトフェノン、p−ジアセチルベンゼン、3−メトキシベンゾフェノン、4−アリルアセトフェノン、4−メチルベンゾフェノン、4−クロロ−4−ベンジルベンゾフェノン、3−クロロキサントーン、3,9−ジクロロキサントーン、3−クロロ−8−ノニルキサントーン、ベンゾイル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、ベンジルメトキシケタール、2−クロロチオキサトーンなどが挙げられる。なお、添加量は0.1〜10重量%の範囲が好ましいが、0.1〜5重量%の範囲とすることがより好ましい。
【0025】
本発明の(E)成分のシリカ粉は、硬化前の液状組成物に揺変性を与えるために使用される。部材上で光硬化性シール剤を硬化させてシール層を形成するためには、一定以上の高さで塗布し硬化するまで形状を維持する必要があるため、組成物に揺変性を付与する目的でシリカ粉を添加しこれを実現する。このシリカ粉としては、平均一次粒子径が1〜100nm、好ましくは5〜50nmの微粉末シリカで、表面処理を施されたもの、表面処理を施されていないものどちらでも使用が可能である。表面処理が施されたものとして具体的には、四塩化硅素を酸水素焔中で加水分解させる際に、塩化チタニウム、塩化アルミニウム、塩化鉄等の塩化物を併存させたアルミナ含有シリカ、酸化チタン含有シリカ、酸化鉄含有シリカ等の微粉末シリカを挙げることができるが、特に親水性微粉末シリカの表面を疎水処理したものが好ましい。疎水性微粉末シリカは、通常の親水性微粉末シリカの表面をn−オクチルトリアルコキシシラン等の疎水基を有するアルキル、アリール、アラルキル系シランカップリング剤、ジメチルジクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン等のシリル化剤、末端に水酸基を有するポリジメチルシロキサン等、或いはステアリルアルコールのような高級アルコール、ステアリン酸のような高級脂肪酸で処理して得られるものである。この微粉末シリカは1種単独で或いは2種以上を混合して用いても構わない。なお、添加量は0.l〜30重量%であることが好ましく、さらには1.0〜15重量%が好ましい。
【0026】
シリカ粉の以外の他の無機充填剤、例えば炭酸カルシウムやカーボンブラックでは、本発明における(A)及び(B)成分とのなじみが悪く、(A)及び(B)成分中に十分に分散しないため揺変性を発現することができない。なお、本発明の硬化性組成物は光照射によって硬化を実現するため、シリカ粉の使用に当たっては極度に隠蔽性の高いものを選ぶと硬化性に支障を及ぼす可能性がある。
【0027】
本発明の光硬化性シール剤には、(A)から(E)成分の他に、必要に応じて別の成分を添加することができる。添加する成分を例示すると、安定剤、着色剤、熱重合開始剤、密着付与剤、老化防止剤、分散助剤などを挙げることができる。
【0028】
本発明の光硬化性シール剤の接着性を向上させるため、特に密着助剤を添加することが好ましい。密着助剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等が適用できるが、組成物の保存安定性、相溶性等からシランカップリング剤が好ましい。具体的には、分子中にエポキシ基、(メタ)アクリル基、ビニル基、カルバメート基から選ばれる少なくとも1個の官能基と、ケイ素原子結合ヒドロキシル基を有するシランカップリング剤が好ましい。これらの各成分を任意に混合し塗布可能な組成物とすることによって本発明の光硬化性シール剤を得ることができる。
【0029】
本発明のシール層をもつ部材は、前記シール剤を部材上に塗布した後、光照射することによって硬化させて形成される。塗布は任意の方法で行うことができ、光源には、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、水銀キセノンランプ、キセノンランプ、LEDなどを使用することができる。なお、照射雰囲気温度は通常10〜200℃の範囲で、照射光の波長は(D)光重合開始剤の吸収波長帯である。
【0030】
〔実施例〕
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの例により限定されるものではない。なお、シール剤の評価内容は硬化物の耐透湿性として水蒸気透過係数及び弾性として伸び率の2項目である。水蒸気透過係数の数値は小さいほど耐透湿性に優れており、0〜20g/m・24h・atmの範囲にあることが好ましい。伸び率の数値は大きいほどシール時の追従性に優れており、90重量%以上であることが好ましい。なお、伸び率及び水蒸気透過係数は以下の方法により測定した。
【0031】
[伸び率]
硬化させる前の光硬化性シール剤を厚さ1mmの均質な膜状に形成し、これに高圧水銀ランプを使用して3000mJ/cmの光を片面ずつそれぞれ両面に照射することにより硬化させ、シート状硬化物を得た。これをJIS K 6251に規定された3号形ダンベルにより打ち抜き、ダンベル形状の引張試験用試験片を作製した。この試験片を用い、万能引張試験機によりJIS K 6251号に規定された引張試験を実施することで本発明シール剤組成物の硬化物の切断時伸び(伸び率)について測定した。なお、万能引張試験機の引張速度は毎分500mmとし、伸びた部位の測定にはJIS B 7503により規定されたノギス、又は同等以上の性能のノギスにより測定した。なお、伸び率の値は試験を3回実施したときの中央値を採用した。
【0032】
[水蒸気透過係数]
硬化させる前の光硬化性シール剤を厚さ0.5mmの均質な膜状に形成し、これに高圧水銀ランプを使用して3000mJ/cmの光を片面ずつそれぞれ両面に照射することにより硬化させ、シート状硬化物を得た。このシートを15.2cmの円形になるよう切り抜き試験片とし、差圧式蒸気透過率測定装置(GTR−30XA3B、GTRテック社製)にて水蒸気透過係数の測定を実施した。
【実施例1】
【0033】
(A)成分として2−エチル−2−ブチルプロパンジオールジアクリレート、(B)成分としてイソノニルアクリレート、(C)成分としてトリブロック構造のスチレン−イソブチレン−スチレン共重合体(スチレン含量23重量%:商品名SIBSTAR 072T 株式会社カネカ製)、(D)成分として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−〔4−(1−メチルビニル)フェニル〕プロパンのオリゴマー(商品名 ESACURE KIP 150 Lamberti社製)、(E)成分として表面無処理ヒュームドシリカ(商品名アエロジル200 日本アエロジル株式会社製)を用いた。(A)(B)(C)(D)成分を60℃に加温しながら撹拌して均一な液体を得た後、プラネタリーミキサーで(E)成分を混合して、シール剤を得た。それぞれの配合量は表1に重量部により示した。高圧水銀ランプを用いて3000mJ/cmの光を片面ずつそれぞれ照射して硬化物を作製し、水蒸気透過係数および伸び率を測定したところ、表1に示すようにいずれも良好な結果を得た。
【実施例2】
【0034】
(A)成分としてRが主鎖の炭素数が5で側鎖を持つ2官能アクリレート(2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート)を用いた他は、実施例1と同様の手順でシール剤組成物を得た。実施例1と同様に硬化物を作製し測定したところ、表1に示すように水蒸気透過係数および伸び率いずれも良好な結果を得た。
【実施例3】
【0035】
(A)成分としてRが炭素数が12のアルキレン基である2官能アクリレート(1,12−ドデカンジオールジアクリレート)を用いた他は、実施例1と同様の手順でシール剤を得た。実施例1と同様に硬化物を作製し測定したところ、表1に示すように水蒸気透過係数および伸び率いずれも良好な結果を得た。
【実施例4】
【0036】
(B)成分としてイソオクチルアクリレートとイソステアリルアクリレートの混合物を用いた他は、実施例1と同様の手順でシール剤を得た。実施例1と同様に硬化物を作製し測定したところ、表1に示すように水蒸気透過係数および伸び率いずれも良好な結果を得た。
【実施例5】
【0037】
(C)成分としてトリブロック構造のスチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(スチレン含量15重量%:SIBSTAR 102T 株式会社カネカ製)を用いた他は、実施例1と同様の手順でシール剤を得た。実施例1と同様に硬化物を作製し測定したところ、表1に示すように水蒸気透過係数および伸び率いずれも良好な結果を得た。
【実施例6】
【0038】
(C)成分としてジブロック構造のスチレン−イソブチレンブロック共重合体(スチレン含量20重量%、数平均分子量約30,000)を用いた他は、実施例1と同様の手順でシール剤を得た。実施例1と同様に硬化物を作製し測定したところ、表1に示すように水蒸気透過係数および伸び率いずれも良好な結果を得た。
【0039】
〔比較例1〕
(A)成分を使用しない他は、実施例1と同様の手順でシール剤を得た。実施例1と同様に硬化物を作製しようとしたが、硬化性が不十分であり硬化膜を形成することができなかったため評価できなかった。
【0040】
〔比較例2〕
(A)成分に代えてトリメチロールプロパントリアクリレートを用いた他は、実施例1と同様の手順でシール剤を得た。実施例1と同様に硬化物を作製し測定したところ、伸び率及び水蒸気透過係数ともに満足のいくものではなかった。
【0041】
〔比較例3〕
(A)成分に代えて1,16−ヘキサデカンジオールジアクリレートを用いた他は、実施例1と同様の手順でシール剤を得た。実施例1と同様に硬化物を作製し測定したところ、伸び率及び水蒸気透過係数ともに満足のいくものではなかった。
【0042】
〔比較例4〕
(A)成分に代えてPO変性ビスフェノールAジアクリレートを用いた他は、実施例1と同様の手順でシール剤を得た。実施例1と同様に硬化物を作製し測定したところ、伸び率及び水蒸気透過係数ともに満足のいくものではなかった。
【0043】
〔比較例5〕
(A)成分に代えて、エチレングリコールジアクリレートを用いた他は、実施例1と同様の手順でシール剤を得た。実施例1と同様に硬化物を作製し測定したところ、伸び率及び水蒸気透過係数ともに満足のいくものではなかった。
【0044】
〔比較例6〕
(B)成分に代えて1,5−ペンタンジオールアクリレートを用いた他は、実施例1と同様の手順でシール剤を得た。実施例1と同様に硬化物を作製し測定したところ、硬化物が非常に硬くなってしまい、試験片を作製することができず測定できなかった。
【0045】
〔比較例7〕
(B)成分に代えてペンチルアクリレートを用いた他は、実施例1と同様の手順でシール剤を得た。実施例1と同様に硬化物を作製し測定したところ、伸び率及び水蒸気透過係数ともに満足のいくものではなかった。
【0046】
〔比較例8〕
(B)成分に代えてパラクミルフェノキシエチレングリコールアクリレートを用いた他は、実施例1と同様の手順でシール剤を調整したところ、組成物は均一な液体とならず、シール剤を得ることができなかった。
【0047】
〔比較例9〕
(B)成分に代えてイソボルニルアクリレートを用いた他は、実施例1と同様の手順でシール剤を得た。実施例1と同様に硬化物を作製し測定したところ、硬化物が非常に硬くなってしまい、試験片を作製することができず測定できなかった。
【0048】
〔比較例10〕
(B)成分に代えてヘンエイコサニルアクリレートを用いた他は、実施例1と同様の手順でシール剤を得た。実施例1と同様に硬化物を作製し測定したところ、伸び率及び水蒸気透過係数ともに満足のいくものではなかった。
【0049】
〔比較例11〕
(C)成分に代えてメタクリロイル化液状ポリイソプレン(UC−203 株式会社クラレ製)を用いた他は、実施例1と同様の手順でシール剤を得た。実施例1と同様に硬化物を作製し測定したところ、表1に示すように水蒸気透過係数については良好な結果を得たものの伸び率は小さく、CIPGシール剤として使用できるものではなかった。
【0050】
〔比較例12〕
(C)成分に代えてスチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(クレイトンG1726 クレイトンポリマー社製)を用いた他は、実施例1と同様の手順でシール剤を得た。実施例1と同様に硬化物を作製し測定したところ、表1に示すように伸び率については良好な結果を得たものの、水蒸気透過係数については満足するものではなかった。
【0051】
〔比較例13〕
(C)成分に代えてスチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体(セプトン2063 株式会社クラレ製)を用いた他は、実施例1と同様の手順でシール剤を得た。実施例1と同様に硬化物を作製し測定したところ、表1に示すように伸び率については良好な結果を得たものの、水蒸気透過係数については満足するものではなかった。
【0052】
〔比較例14〕
(C)成分に代えてポリウレタンアクリレート(紫光UV−3700B 日本合成化学工業株式会社製)を用いた他は、実施例1と同様の手順でシール剤を得た。実施例1と同様に硬化物を作製し測定したところ、表1に示すように、伸び率及び水蒸気透過係数ともに満足するものではなかった。
【0053】
〔参考例〕
(E)成分を使用しない他は、実施例1と同様の手順でシール剤を得た。このシール剤組成物は形状保持性が悪く、塗布後にビード形状を保持できないためCIPG用途としては不適当であることが確認できた。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明から得られた光硬化性シール剤及び該シール剤付き部材は、その優れた耐透湿性及び弾性から、ハードディスクなどの電子回路素子や電子部品を内在した電子部品筐体のシールをはじめとして、その他の耐透湿性を必要とする部材おいて耐透湿シール剤として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一般式(1)
【化1】

(ここでRは主鎖の炭素数が3〜15の2価の脂肪炭化水素基であり、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基である)
で示される少なくとも1の2官能性(メタ)アクリレート、
(B)一般式
【化2】

(ここでRは炭素数が6〜20のアルキル基であり、Rは水素原子又はメチル基である)
で示される少なくとも1の単官能(メタ)アクリレート、
(C)スチレン−イソブチレンブロック共重合体、(D)光重合開始剤、および(E)シリカ粉を必須成分として混合することを特徴とする光硬化性シール剤の製造方法。
【請求項2】
前記(A)成分を0.1〜20重量%、(B)成分を40〜80重量%、(C)成分を10〜50重量%、(D)成分を0.1〜10重量%、そして(E)成分を0.1〜30重量%の範囲内で混合する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記(C)成分が、トリブロック構造のスチレン−イソブチレン−スチレン共重合体である請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の方法で製造した光硬化性シール剤を部材表面に塗布し、光を照射することによって硬化させてなるシール層をもつ部材の製造方法。
【請求項5】
部材が電子部品筐体である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
電子部品筐体がハードディスクドライブのケースである請求項5に記載の方法。

【公開番号】特開2009−96839(P2009−96839A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−267380(P2007−267380)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(000132404)株式会社スリーボンド (140)
【Fターム(参考)】