説明

光硬化性低収縮モノマー化合物

【課題】光硬化時に起こる体積収縮が抑制された(メタ)アクリル系モノマー化合物を提供すること。
【解決手段】−CO−NH−CH2−O−よりなるアミドメチロール構造部分を分子内に少なくとも1個含むものである(メタ)アクリル系モノマー化合物,とりわけ炭素数が5〜99個の範囲にあるものである当該モノマー化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,光硬化性モノマー化合物に関し,より詳しくは,重合時の体積収縮の抑制された光硬化性モノマー化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
硬化物の良好な透明性を生かし,光硬化性モノマーとして種々の(メタ)アクリル系モノマーが知られている。例えばエチレングリコールグリセロールジアクリレート,グリセロールプロピレンオキシドジアクリレート,エチレンオキシド付加トリメチロールプロパンジアクリレート,プロピレンオキシド付加トリメチロールプロパンジアクリレート,ペンタエリスリトールジアクリレート,エチレングリコール化ペンタエリスリトールジアクリレート等が用いられていた。(特許文献1参照)
【0003】
しかしながら,従来の光重合性の(メタ)アクリル系モノマーは,硬化に際して体積のかなりの収縮が起こり,これは,硬化物の用途によっては重大な欠点である。近年,電子機器の軽量小型化が進んでおり,フレキシブル基板もより軽薄化している。これに伴い,オーバーコートする樹脂組成物の硬化収縮の影響が,より顕著に現れるようになってきている。このため,硬化タイプのオーバーコート剤では,硬化収縮による反りの点で,要求性能を満足できない(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−246818
【特許文献2】特願2003−403958
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記背景において,本発明は,光硬化時に起こる体積収縮が抑制された(メタ)アクリル系モノマー化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的のため検討の結果,本発明者は,驚くべきことに,アミドメチロール構造部分を(メタ)アクリル系モノマーに導入して得た新規の(メタ)アクリル系モノマー化合物において,その光硬化に際して起こる硬化物の体積収縮が,そのような化学構造を導入していない対応する従来の(メタ)アクリル系モノマーに比して大幅に抑制されることを見出した。本発明は,当該発見に基づき,更に検討を加えて完成させたものである。
【0007】
すなわち,本発明は以下を提供する。
1.−CO−NH−CH2−O−よりなるアミドメチロール構造部分を分子内に少なくとも1個含むものである,(メタ)アクリル系モノマー化合物。
2.炭素数が5〜99個の範囲にあるものである,上記1の(メタ)アクリル系モノマー化合物。
3.次式(1),
【0008】
【化1】


【0009】
〔式中,R1は,水素原子又はメチル基を表し,R2は,1個又は2個以上の酸素原子が隣接炭素原子間に挿入されることにより各2個以上の炭素原子からなる複数の炭化水素基部分に分割されていてよい炭素数が1〜30個の飽和炭化水素基を表すか,炭素数6〜25個の芳香族基を表すか,又はこれらの組み合わせを表し,X1は,水素原子,ヒドロキシル基,炭素数1〜30の直鎖の又は分枝を有するアルキルオキシ基,フェノキシ基,グリシジルオキシ基,アリルオキシ基,ビニルオキシ基を表す。〕で示されるものである,上記1又は2の(メタ)アクリル系モノマー化合物。
4.次式(2),
【0010】
【化2】



【0011】
〔式中,R1は,水素原子又はメチル基を表し,Yは酸素原子又は−NH−を表し,R3は,1個又は2個以上の酸素原子が隣接炭素原子間に挿入されることにより各2個以上の炭素原子からなる複数の炭化水素基部分に分割されていてよい炭素数1〜18個の飽和炭化水素基,炭素数6〜25の芳香族基,又はこれらの2種以上の組み合わせよりなるものであり,R4は,1個又は2個以上の酸素原子が隣接炭素原子間に挿入されることにより各2個以上の炭素原子からなる複数の炭化水素基部分に分割されていてよい炭素数1〜30個の飽和炭化水素基,炭素数6〜20個の芳香族基,又はこれらの組み合わせを表し,X2は,水素原子,ヒドロキシル基,炭素数1〜30の直鎖の又は分枝を有するアルキルオキシ基,フェノキシ基,グリシジルオキシ基,アリルオキシ基又はビニルオキシ基を表す。〕で示されるものである,上記1又は2の(メタ)アクリル系モノマー化合物。
5.次式(3),
【0012】
【化3】


【0013】
〔式中,R1は,水素原子又はメチル基を表し,Yは酸素原子又は−NH−を表し,R5は,1個又は2個以上の酸素原子が隣接炭素原子間に挿入されることにより各2個以上の炭素原子からなる複数の炭化水素基部分に分割されていてよい炭素数1〜15個の飽和炭化水素基,炭素数6〜20個の芳香族基,又はこれらの2種以上の組み合わせよりなるものであり,R6は,単結合であるか,又は1個又は2個以上の酸素原子が隣接炭素原子間に挿入されることにより各2個以上の炭素原子からなる複数の炭化水素基部分に分割されていてよい炭素数1〜15個の飽和炭化水素基,炭素数6〜25個の芳香族基,又はこれらの組み合わせを表し,但し,R5及びR6は,それらの何れかの原子間で共有結合して環を形成していてもよい。〕で示されるものである,上記1又は2の(メタ)アクリル系モノマー化合物。
6.次式(4),
【0014】
【化4】


【0015】
〔式中,R1は,水素原子又はメチル基を表し,Yは,酸素原子又は−NH−の何れでもよく,破線で示した環は炭素数6〜14個の縮合環であってよい芳香族環を表す。〕で示されるものである,上記1又は2の(メタ)アクリル系モノマー化合物。
【発明の効果】
【0016】
上記構成になる本発明のアミドメチロール構造部分を有する(メタ)アクリル系モノマー化合物は,当該部分を有しない(メタ)アクリル系モノマー化合物に比して,光硬化時の体積収縮が顕著に抑制される,という効果を奏する。このため,本発明のモノマー化合物は,例えばUV硬化型インクに用いれば,従来の(メタ)アクリル系モノマーを用いた場合に比して印刷後の樹脂の収縮により基材に生ずるカールを抑制できるため,そのようなインクの製造のための材料として特に適しており,更には,高精度な造型が必要なレジスト材料やナノインプリント用材料,更には複雑・高度化した光記録媒体であるホログラムメモリー材料にも最適である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書において,「(メタ)アクリル酸」の語は,アクリル酸(H2C=CH−COOH)及びメタクリル酸(H2C=CCH3−COOH)の双方を,区別せず包括的に示す。 また,「(メタ)アクリル基「の語は,アクリル基(H2C=CH−CO−)及びメタクリル基(H2C=CCH3−CO−)の双方を,区別せず包括的に示す。また,「(メタ)アクリル系」の語は,アクリル基又はメタクリル基を有する化合物(すなわちアクリル系及びメタクリル系の化合物)を,区別せず包括的に示す。
【0018】
本明細書において,「(メタ)アクリル系モノマー化合物」とは,アクリル基又はメタクリル基を保持した,重合性の(メタ)アクリル酸の誘導体をいう。
【0019】
本発明の(メタ)アクリル系モノマー化合物は,(メタ)アクリル酸のカルボキシル基の水素原子を置換して得られる誘導体であり,当該置換基中にアミドメチロール構造部分(−CO−NH−CH2−O−)を少なくとも1個含むことを主たる特徴とする。光重合時における体積収縮が大きい従来の(メタ)アクリル系モノマーに比して,本発明の(メタ)アクリル系モノマー化合物において光硬化時の体積収縮が抑制される理由は,完全には解明されていない。しかしながら,アミドメチロール構造部分を含む本発明のモノマー化合物の光硬化後に,体積収縮の抑制と共に,アミドメチロール構造部分におけるメチレンと酸素原子との間が切断されていることが観察された。従って,本発明のアミドメチロール構造部分を有する(メタ)アクリル系モノマー化合物は,光硬化に際し,(メタ)アクリル酸由来の炭素炭素二重結合同士の重合と相まってアミドメチロール構造部分のメチレン−酸素間が切断され,これにより重合体のポリマー鎖から独立して生じた遊離の分子が,隣り合うポリマー鎖の間に入ることでそれらの接近を妨害する阻害することにより,或いは,アミドメチロール構造部分を含んだ環を備えたモノマー化合物の場合,当該環が開くことによって,重合体のポリマー鎖自体が嵩高くなることにより,重合に伴う系の体積収縮が少なくとも部分的に補填され,その結果体積収縮が抑制されるものと,強く示唆される。このことはまた,モノマー化合物1分子当たり,2個又はそれ以上のアミドメチロール構造部分を含んでもよいことを示している。同時にまた,光硬化に用いる光の照射によってポリマー鎖から独立した遊離の分子が生じ或いはモノマー化合物が有していた環が開く限り,アクリル基又はメタクリル基及びアミドメチロール構造部分の双方を分子中に含むということ以外の点に関しては,本発明の(メタ)アクリル酸系モノマー化合物は,種々の適宜な構造であってよいことを示している。
【0020】
本発明の(メタ)アクリル系モノマー化合物の分子の大きさには,明確な上限はないが,重合目的で使用されるものであるから,余りに大きな分子とするのは,目的によっては不都合であり得る。これを考慮すると,炭素数のみを指標として見るとき,本発明の(メタ)アクリル系モノマー化合物は,一般には,炭素数5〜99個の範囲にあることが好ましい。炭素数が5未満の場合にはモノマーの安定性が低くなり,また炭素数が100以上では粘度が非常に高くなるためである。炭素数は,5〜49個の範囲にあることが更に好ましい。
【0021】
また,上記の(メタ)アクリル系モノマー化合物においては,アミドメチロール構造部分がどこかに存すればよいだけであるから,当該構造部分の導入の様式については特に限定はない。従って,アミドメチロール構造の導入は,アミドメチロール構造部分を含んだ適宜の基を(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸エステルに,(メタ)アクリル基が保持できる態様で適宜導入することにより,行うことができる。例えば,(メタ)アクリル酸が有するカルボニル基部分を取り込んだ形でアミドメチロール構造部分を導入することができる。より具体的には,例えば:
(i) (メタ)アクリル酸が有するカルボキシル基とNH2−CH2−O−基を有する化合物とでアミドを形成する〔従って,(メタ)アクリル酸のカルボキシル基とのアミド結合を含む形でアミドメチロール構造を構成する〕か,又は
(ii) (メタ)アクリル酸が有するカルボキシル基利用して,エステル結合又はアミド結合の形成により側鎖を導入することができ,そのような側鎖に例えば予めアミドメチロール構造部分を設けておけば,
それによりアミドメチロール構造部分を側鎖中に有する(メタ)アクリル酸モノマー化合物を得ることができる。
【0022】
本発明の式(1)の(メタ)アクリル系モノマー化合物,
【0023】
【化5】



【0024】
において,R2は,1個又は2個以上の酸素原子が隣接炭素原子間に挿入されることにより各2個以上の炭素原子からなる複数の炭化水素基部分に分割されていてよい炭化水素基であって,その炭素数は,好ましくは1〜30個である。炭素数が30を超えると粘度が高くなるためである。個々の炭化水素基部分が飽和炭化水素基であるときは,R2の炭素数は,より好ましくは2〜24個,更に好ましくは2〜18個であり,個々の炭化水素基部分が芳香族基であるときは,R2の炭素数は,より好ましくは6〜25個,更に好ましくは6〜18個,特に好ましくは6〜10個の芳香族基である。R2は,これら2種以上の組み合わせよりなるものであってよい。また,X1は, 水素原子,ヒドロキシル基,炭素数1〜30の直鎖の又は分枝を有するアルキルオキシ基,フェノキシ基,グリシジルオキシ基,アリルオキシ基又はビニルオキシ基を表す。
【0025】
2の具体的例としては,炭化水素基として,メチレン,エチレン,トリメチレン,テトラメチレン,ペンタメチレン,ヘキサメチレン,ヘプタメチレン,オクタメチレン,ノナメチレン等が挙げられ,炭化水素基の隣接炭素間に酸素原子が挿入されてなる構造部分として,−CH2CH2(0CH2CH2n−であってnが1〜14の何れかの整数であるもの,及び−CH2CH2CH2(0CH2CH2CH2m−であってmが1〜9の何れかの整数であるものが挙げられ,芳香族基としてはフェニレン,ナフチレン,アントリレン,フェナントリレンが挙げられ,並びにこれら各基及び構造部分の何れか同士の組み合わせであって炭素数が6〜25個のものが挙げられるが,これらに限定されない。これらのうち,特に好ましいのは,エチレン,−CH2CH2(0CH2CH2n−であってnが1〜8の何れかの整数であるもの,フェニレン,ナフチレン,及びアントリレンである。
【0026】
また,X1部分の特に好ましい具体例は,水素原子,ヒドロキシル基,メトキシ基,エトキシ基,プロポキシ基,ブトキシ基,フェノキシ基,1−デシルペンチルオキシ基,グリシジルオキシ基,及びアリルオキシ基,である。
【0027】
本発明の式(2)の(メタ)アクリル系モノマー化合物,
【0028】
【化6】


【0029】
において,Yは,酸素原子又は−NH−の何れでもよく,R3は,1個又は2個以上の酸素原子が隣接炭素原子間に挿入されることにより各2個以上の炭素原子からなる複数の炭化水素基部分に分割されていてよい,炭素数が好ましくは1〜18個,より好ましくは2〜12個,更に好ましくは2〜6個の飽和炭化水素基,炭素数が好ましくは6〜25個,より好ましくは6〜18個,特に好ましくは6〜10個の芳香族基,又はこれらの組み合わせよりなるものとすることができ,R4は,1個又は2個以上の酸素原子が隣接炭素原子間に挿入されることにより各2個以上の炭素原子からなる複数の炭化水素基部分に分割されていてよい炭素数が好ましくは1〜30個,より好ましくは2〜18個,更に好ましくは6〜10個の飽和炭化水素基,炭素数が好ましくは6〜20個,より好ましくは6〜18個,更に好ましくは6〜10個の芳香族基,又はこれらの組み合わせよりなるものとすることができる。またX2は,水素原子,ヒドロキシル基,炭素数1〜30の直鎖の又は分枝を有するアルキルオキシ基,フェノキシ基,グリシジルオキシ基,アリルオキシ基又はビニルオキシ基であってよい。
【0030】
3の具体例としては,炭化水素基として,メチレン,エチレン,トリメチレン,テトラメチレン,ペンタメチレン,ヘキサメチレン,ヘプタメチレン,オクタメチレン,ノナメチレン,デカメチレン,ウンデカメチレン,ドデカメチレン,トリデカメチレン,テトラデカメチレン,ペンタデカメチレン,ヘキサデカメチレン,ヘプタデカメチレン,オクタデカメチレン等が挙げられ,炭化水素基の隣接炭素間に酸素原子が挿入されてなる構造部分として,−CH2CH2(0CH2CH2n−であってnが1〜8の何れかの整数であるもの,及び−CH2CH2CH2(0CH2CH2CH2m−であってmが1〜8の何れかの整数であるものが挙げられ,及び−CH2CH2CH2(0CH2CH2CH2m−であってmが1〜8の何れかの整数であるものが挙げられ,芳香族基としてはフェニレン,ナフチレン,アントリレン,フェナントリレンが挙げられ,並びにこれら各基及び構造部分の何れか同士の組み合わせであって炭素数が6〜25個のものが挙げられるが,これらに限定されない。これらのうち,特に好ましいのは,エチレン,テトラメチレン,ヘキサメチレン,−CH2CH2(0CH2CH2n−であってnが1ないし8の何れかの整数であるもの,及び−CH2CH2CH2(0CH2CH2CH2m−であってmが1〜8の何れかの整数であるものが挙げられ,芳香族基としてはフェニレン,ナフチレン,アントリレン,及びフェナントリレンが挙げられ,並びにこれら各基及び構造部分の何れか同士の組み合わせであって炭素数が6〜25個のものが挙げられるが,これらに限定されない。
【0031】
またR4の具体例としては,炭化水素基として,メチレン,エチレン,トリメチレン,テトラメチレン,ペンタメチレン,ヘキサメチレン,ヘプタメチレン,オクタメチレン,ノナメチレン等が挙げられ,炭化水素基の隣接炭素間に酸素原子が挿入されてなる構造部分として,−CH2CH2(0CH2CH2n−であってnが1〜14の何れかの整数であるもの,及び−CH2CH2CH2(0CH2CH2CH2m−であってmが1〜9の何れかの整数であるものが挙げられ,芳香族基としてはフェニレン,ナフチレン,アントリレン,フェナントリレンが挙げられ,並びにこれら各基及び構造部分の何れか同士の組み合わせであって炭素数が6〜25個のものが挙げられるが,これらに限定されない。これらのうち,特に好ましいのは,エチレン,−CH2CH2(0CH2CH2n−であってnが1〜8の何れかの整数であるもの,フェニレン,ナフチレン,アントリレンである。
また,X2の特に好ましい具体例は,水素原子,ヒドロキシル基,メトキシ基,エトキシ基,プロポキシ基,ブトキシ基,フェノキシ基,1−デシルペンチルオキシ基,グリシジルオキシ基及びアリルオキシ基であるが,これらに限定されない。
【0032】
また本発明の式(3)の(メタ)アクリル系モノマー化合物,
【0033】
【化7】


【0034】
において,Yは酸素原子又は−NH−の何れでもよく,R5は,炭素数が好ましくは1〜15個,より好ましくは1〜8個,更に好ましくは1〜4個の飽和炭化水素基若しくは該飽和炭化水素基を構成する炭素原子のうち1組若しくは2組以上の隣接炭素間に酸素原子が挿入されてなる構造部分,炭素数が好ましくは6〜25個,より好ましくは6〜18個,更に好ましくは6〜10個の芳香族基,又はこれらの2種以上の組み合わせよりなるものであり,R6は,単結合であるか,又は炭素数が好ましくは1〜12個,より好ましくは1〜8個,更に好ましくは1〜4個の飽和炭化水素基若しくは該飽和炭化水素基を構成する炭素原子のうち1組若しくは2組以上の隣接炭素間に酸素原子が挿入されてなる構造部分,炭素数が好ましくは6〜25個,より好ましくは6〜18個,更に好ましくは6〜10個の芳香族基,又はこれらの組み合わせである。またR5及びR6は,それらの何れかの原子間(炭素−炭素間,又は炭素−水素間等)で共有結合して環を形成していてもよい。
【0035】
5の具体例としては,メチレン,エチレン,プロピレン,ブチレン,ペンチレン,ヘキシレン,ヘプチレン,オクチレンが挙げられるが,これに限定されない。これらのうち,特に好ましいのは,メチレン,エチレン,プロピレン,ブチレンである。
【0036】
またR6の具体例としては,単結合,炭化水素基としてメチレン,エチレン,トリメチレン,テトラメチレン,ペンタメチレン,ヘキサメチレン,ヘプタメチレン,オクタメチレン,ノナメチレン,ウンデカメチレン,ドデカメチレン等が挙げられ,炭化水素基の隣接炭素間に酸素原子が挿入されてなる構造部分として,−CH2CH2(0CH2CH2n−であってnが1〜5の何れかの整数であるもの,及び−CH2CH2CH2(0CH2CH2CH2m−であってmが1〜3の何れかの整数であるものが挙げられ,芳香族基としてはフェニレン,ナフチレン,アントリレン,フェナントリレンが挙げられ,並びにこれら各基及び構造部分の何れか同士の組み合わせであって炭素数が6〜25個のものが挙げられるが,これらに限定されない。
【0037】
また本発明の式(4)の(メタ)アクリル系モノマー化合物,
【0038】
【化8】


【0039】
において,Yは酸素原子又は−NH−の何れでもよく,破線で示した炭素数6〜14個の縮合環であってよい芳香族環としては,ベンゼン環,ナフタレン環,アントラセン環,フェナントレン環が挙げられるが,これらに限定されない。これらのうち,ベンゼン環,ナフタレン環が特に好ましい。また,当該芳香環における(メタ)アクリル系側鎖の結合位置は,限定されない。
【0040】
上記式(4)の化合物の具体例には,次のものが含まれる。
【化9】


【0041】
〔本発明の合成方法の概要〕
以下に,本発明のモノマー化合物の一般的合成方法の概略を示す。
(A)式(1)の化合物の合成
【0042】
【化10】


【0043】
式(1)で示されるエーテル化合物は,N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド誘導体とアルコール又はポリオキシアルキレングリコールモノエーテル化合物を,酸触媒存在下,脱水反応により合成することができる。酸触媒としては,塩酸,硫酸等の無機酸,酢酸,シュウ酸等の有機酸等,エーテル化を促進する触媒が挙げられる。アルコール又はポリオキシアルキレングリコールモノエーテル化合物とN-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド誘導体との反応は,無溶媒で行うこともできるが,溶媒を使用して,系内を均一にすることにより,反応中の温度調整等が容易になる。溶媒としては,ベンゼン,トルエン等の芳香族炭化水素,酢酸エチル,酢酸ブチル等のエステル,アセトン,メチルイソブチルケトン等のケトン,ジクロロメタン,ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素,テトラヒドロフラン,1,4−ジオキサン等のエーテル,アセトニトリル,ニトロベンゼン,ニトロメタン等の非プロトン性有機溶媒等が挙げられる。なかでも,トルエン等の芳香族炭化水素や,酢酸エチル等のエステルを好適に用いることができる。反応温度は,原料であるアルコール又はポリオキシアルキレングリコールモノエーテル化合物及び酸触媒の種類にもよるが,30〜110℃程度が好ましい。反応液のpHは,反応速度と原料の安定性の観点から,3〜7が好ましい。反応時間は特に限定されないが,反応の終点は,例えば,液体クロマトグラフィー〈LC〉のチャートにおいて,反応混合物中の目的化合物の面積比率が10%以上になり,2,3時間前の目的化合物の面積比率と変化が無くなった時点を反応の終点とみなす。反応終了後,溶媒を減圧下で留去して濃縮した後,析出した固体をろ別することにより,生成した式(1)で表される(メタ)アクリルモノマーを単離することができる。反応溶液から単離した(メタ)アクリルモノマーの粗生成物は,ベンゼン,トルエン,キシレン等の芳香族炭化水素,ヘキサン,ヘプタン,オクタン等の脂肪族炭化水素溶媒を用いて洗浄することが好ましい。例えば,反応生成物を溶媒に溶解させ,ろ過し,得られたろ液を濃縮して,粗生成物を洗浄することができる。本発明においては,合成により得られた〈メタ〉アクリルモノマーを,更にカラムクロマトグラフィーにより精製する精製工程に供することが好ましい。カラムクロマトグラフィーの展開溶媒は,例えば,炭化水素系溶媒を用いた後,該炭化水素系溶媒とエステル系溶媒との混合液を用い,更にエステル系溶媒の単一溶媒を用いることが好ましい。ここで,炭化水素系溶媒としてはヘキサン,シクロヘキサン,ヘプタン,オクタン,ベンゼン,トルエン,キシレン等が挙げられる。またエステル系溶媒としては,酢酸エチル,酢酸ブチル等が挙げられる。炭化水素系溶媒とエステル系溶媒の混合液における両者の体積比は,目的物を単離して溶出しやすいものを考慮して適宜選択する。
【0044】
(B)式(2)の化合物の合成
【0045】
【化11】


【0046】
アミド誘導体と(メタ)アクリル酸ハライドとを反応させてアミド(メタ)アクリルモノマーを得ることができる。(メタ)アクリル酸ハライドの具体例としては,(メタ)アクリル酸クロリド,(メタ)アクリル酸ブロミド,(メタ)アクリル酸アイオダイド等が挙げられ,これらの中では,反応性やコスト面の観点から,(メタ)アクリル酸クロリドが好ましい。アミド誘導体と(メタ)アクリル酸ハライドとの反応は,溶媒中,有機塩基触媒の存在下で行うことが好ましい。具体的には,例えば,アミド誘導体,有機塩基触媒及び溶媒を混合した後,混合液の温度を適度な反応温度に調整した後,(メタ)アクリル酸ハライドを滴下しながら,攪拌して行うことができる。有機塩基触媒としては,トリエチルアミン,トリブチルアミン,トリペンチルアミン,N,N−ジメチルアニリン,N,N−ジエチルアニリン,ピリジン,キノリン等が挙げられ,これらの中ではトリエチルアミンが好ましい。溶媒としては,ベンゼン,トルエン等の芳香族炭化水素,酢酸エチル,酢酸ブチル等のエステル,アセトン,メチルイソブチルケトン等のケトン,メタノール,エタノール,プロパノール,ブタノール等のアルコール,ジクロロメタン,ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素,テトラヒドロフラン,1,4−ジオキサン等のエーテル,アセトニトリル,ニトロベンゼン,ニトロメタン等の非プロトン性有機溶媒等が挙げられる。反応温度は,反応効率の観点から,0〜50℃が好ましく,5〜20℃がより好ましい。また,反応系内の圧力は,特に限定されず,常圧であってもよい。反応時間は特に限定されないが,アミド誘導体と(メタ)アクリル酸ハライドとの反応により生成する,アミド(メタ)アクリルモノマーの生成率が変化しなくなった時点まで行うことが好ましい。アミド(メタ)アクリルモノマーの生成率は,液体クロマトグラフィーにより確認することができる。反応終了後,例えば,得られた反応溶液から,抽出,濃縮等の分離操作により,アミド(メタ)アクリルモノマーを単離することができる。
【0047】
N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド誘導体は,例えば,パラホルムアルデヒドと,上記のアミド(メタ)アクリルモノマーとを,メチロール化触媒の存在下で反応させて得られる。メチロール化触媒としては,ピリジン,トリエチルアミン,ジオクチルメチルアミン,トリエタノールアミン,トリイソプロパノールアミン等の有機アミン化合物等が挙げられる。反応は,溶媒中で行うことが好ましい。溶媒としては,ベンゼン,トルエン等の芳香族炭化水素,酢酸エチル,酢酸ブチル等のエステル,アセトン,メチルイソブチルケトン等のケトン,メタノール,エタノール,プロパノール,ブタノール等のアルコール,ジクロロメタン,ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素,テトラヒドロフラン,1,4−ジオキサン等のエーテル,アセトニトリル,ニトロベンゼン,ニトロメタン等の非プロトン性有機溶媒等が挙げられ,これらの中では,原料の溶解性が高いアルコールが好ましい。アミド〈メタ〉アクリルモノマーとパラホルムアルデヒドとの反応は,例えば,アミド〈メタ〉アクリルモノマー,パラホルムアルデヒド,メチロール化触媒,更に必要に応じて溶媒を攪拌下で混合することによって行うことができる。反応温度は,反応速度を向上させる観点及び副生成物の生成を抑制する観点から,0〜90℃が好ましく,10〜60℃がより好ましい。また,反応系内の圧力は,特に限定されず,常圧であってもよい。反応液のpHは,反応速度を向上させる観点から,7〜12が好ましい。反応時間は特に限定されないが,N-ヒドロキシメチルアミド誘導体の転化率芽20%以上となるまで行うことが好ましい。反応終了後,得られた反応溶液から,目的化合物の含有率が低い固形物を適宜除去した後,溶媒を留去することにより,N-ヒドロキシメチルアミド誘導体を主成分とする混合体が得られる。なお,N-ヒドロキシメチルアミド誘導体には,極めて微量のメチロール化触媒が残存していることがある。かかるメチロール化触媒が存在している場合であっても,その含有量は極めて微量であることから,実用上,特に大きな支障を生じることはないが,より純度の高いN-ヒドロキシメチルアミド誘導体を得るために,該誘導体を単蒸留やカラムクロマトグラフィーにより精製して用いてもよい。
【0048】
上記のN−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド誘導体とアルコールもしくはポリオキシアルキレングリコールモノエーテル化合物を酸触媒存在下,脱水反応により式(2)で示されるアミド(メタ)アクリレートを合成することができる。酸触媒としては,塩酸,硫酸等の無機酸,酢酸,シュウ酸等の有機酸等のエーテル化を促進する触媒が挙げられる。アルコールもしくはポリオキシアルキレングリコールモノエーテル化合物とN−ヒドロキシメチルアミド誘導体との反応は,無溶媒で行うこともできるが,溶媒を使用して,系内を均一にすることにより反応中の温度調整等が容易になる。溶媒としては,ベンゼン,トルエン等の芳香族炭化水素,酢酸エチル,酢酸ブチル等のエステル,アセトン,メチルイソブチルケトン等のケトン,ジクロロメタン,ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素,テトラヒドロフラン,1,4−ジオキサン等のエーテル,アセトニトリル,ニトロベンゼン,ニトロメタン等の非プロトン性有機溶媒等が挙げられる。なかでも,トルエン等の芳香族炭化水素や,酢酸エチル等のエステルを好適に用いることができる反応温度は,原料であるアルコールもしくはポリオキシアルキレングリコールモノエーテル化合物及び酸触媒の種類にもよるが,30〜110℃程度が好ましい。反応液のpHは,反応速度と原料の安定性の観点から,3〜7が好ましい。反応時間は特に限定されないが,反応の終点は,例えば,液体クロマトグラフィー(LC)のチャートにおいて,反応混合物中の目的化合物の面積比率が10%以上になり,2,3時間前の目的化合物の面積比率と変化が無くなった時点を反応の終点とみなす。反応終了後,溶媒を減圧下で留去して濃縮した後,析出した固体をろ別することにより,生成した式(2)で表されるアミド(メタ)アクリレートを単離することができる。反応溶液から単離したアミド(メタ)アクリレートの粗生成物は,ベンゼン,トルエン,キシレン等の芳香族炭化水素,ヘキサン,ヘプタン,オクタン等の脂肪族炭化水素溶媒を用いて,洗浄することが好ましい。例えば,反応生成物を溶媒に溶解させ,ろ過し,得られたろ液を濃縮して,粗生成物を洗浄することができる。本発明においては,合成により得られたアミド(メタ)アクリルモノマーを,更に,カラムクロマトグラフィーにより精製する精製工程に供することが好ましい。カラムクロマトグラフィーの展開溶媒は,例えば,炭化水素系溶媒を用いた後,該炭化水素系溶媒とエステル系溶媒との混合液を用い,更にエステル系溶媒の単一溶媒を用いることが好ましい。ここで,炭化水素系溶媒としてはヘキサン,シクロヘキサン,ヘプタン,オクタン,ベンゼン,トルエン,キシレン等が挙げられる。またエステル系溶媒としては,酢酸エチル,酢酸ブチル等が挙げられる。炭化水素系溶媒とエステル系溶媒の混合液における両者の体積比は,目的物を単離して溶出しやすいものを考慮して適宜選択する。
【0049】
(C)式(3)の化合物の合成
【0050】
【化12】


【0051】
先ず,N−ヒドロキシメチルアクリルアミドと式(5),
【0052】
【化13】


【0053】
で示されるアルコールとを酸触媒存在下,脱水反応させて,アルケニルアクリルモノマーを得ることができる。式(5)で示されるアルコールの具体例としては,アリルアルコール,3−ブテン−1−オール,4−ペンテン−1−オール,5−ヘキセン−1−オール,2−アリルフェノール,1−フェニル−3−ブテン−1−オール,2−フェニル−4−ペンテン−2−オール,エチレングリコールモノビニルエーテル,ジエチレングリコールモノビニルエーテル,エチレングリコールモノアリルエーテル等が挙げられる。酸触媒としては,塩酸,硫酸等の無機酸,酢酸,シュウ酸等の有機酸等のエーテル化を促進する触媒が挙げられる。上記の反応は,無溶媒で行うこともできるが,溶媒を使用して,系内を均一にすることにより反応中の温度調整等が容易になる。溶媒としては,ベンゼン,トルエン等の芳香族炭化水素,酢酸エチル,酢酸ブチル等のエステル,アセトン,メチルイソブチルケトン等のケトン,ジクロロメタン,ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素,テトラヒドロフラン,1,4−ジオキサン等のエーテル,アセトニトリル,ニトロベンゼン,ニトロメタン等の非プロトン性有機溶媒等が挙げられる。なかでも,トルエン等の芳香族炭化水素や,酢酸エチル等のエステルを好適に用いることができる。反応温度は,原料であるアルコール及び酸触媒の種類にもよるが,30〜110℃程度が好ましい。反応液のpHは,反応速度と原料の安定性の観点から,3〜7が好ましい。反応時間は特に限定されないが,反応の終点は,例えば,液体クロマトグラフィー(LC)のチャートにおいて,反応混合物中の目的化合物の面積比率が10%以上になり,2,3時間前の目的化合物の面積比率と変化が無くなった時点を反応の終点とみなす。反応終了後,溶媒を減圧下で留去して濃縮した後,析出した固体をろ別することにより,生成したアルケニルアクリルモノマーを単離することができる。反応溶液から単離したアルケニルアクリルモノマーの粗生成物は,ベンゼン,トルエン,キシレン等の芳香族炭化水素,ヘキサン,ヘプタン,オクタン等の脂肪族炭化水素溶媒を用いて,洗浄することが好ましい。例えば,反応生成物を溶媒に溶解させ,ろ過し,得られたろ液を濃縮して,粗生成物を洗浄することができる。本発明においては,合成により得られたアルケニルアクリルモノマーを,更に,カラムクロマトグラフィーにより精製する精製工程に供することが好ましい。カラムクロマトグラフィーの展開溶媒は,例えば,炭化水素系溶媒を用いた後,該炭化水素系溶媒とエステル系溶媒との混合液を用い,更にエステル系溶媒の単一溶媒を用いることが好ましい。ここで,炭化水素系溶媒としてはヘキサン,シクロヘキサン,ヘプタン,オクタン,ベンゼン,トルエン,キシレン等が挙げられる。またエステル系溶媒としては,酢酸エチル,酢酸ブチル等が挙げられる。炭化水素系溶媒とエステル系溶媒の混合液における両者の体積比は,目的物を単離して溶出しやすいものを考慮して適宜選択する。
【0054】
上記で得られたアルケニルアクリルモノマーを,溶媒存在下に水素化ホウ素ナトリウム及び環化触媒で処理することにより,式(3)で示される環状アミド(メタ)アクリルモノマーを得ることができる。環化触媒の具体例としては,酢酸パラジウム(II),塩化パラジウム(II),ビストリフェニルホスフィンパラジウム(II)ジクロリド等が挙げられる。反応は,無溶媒で行うこともできるが,溶媒を使用して,系内を均一にすることにより反応中の温度調整等が容易になる。溶媒としては,ベンゼン,トルエン等の芳香族炭化水素,酢酸エチル,酢酸ブチル等のエステル,アセトン,メチルイソブチルケトン等のケトン,ジクロロメタン,ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素,テトラヒドロフラン,1,4−ジオキサン等のエーテル,アセトニトリル,ニトロベンゼン,ニトロメタン等の非プロトン性有機溶媒等が挙げられる。なかでも,トルエン等の芳香族炭化水素や,酢酸エチル等のエステルを好適に用いることができる。反応温度は,原料であるアルケニルアクリルモノマー及び触媒の種類にもよるが,5〜25℃程度が好ましい。反応時間は特に限定されないが,反応の終点は,例えば,液体クロマトグラフィー(LC)のチャートにおいて,反応混合物中の目的化合物の面積比率が10%以上になり,2,3時間前の目的化合物の面積比率と変化が無くなった時点を反応の終点とみなす。反応終了後,溶媒を減圧下で留去して生成した環状アミド(メタ)アクリルモノマーを得ることができる。
【0055】
(D)式(4)の化合物の合成
【化14】


【0056】
アミド誘導体と(メタ)アクリル酸ハライドとを反応させて,アミド(メタ)アクリレートを得ることができる。(メタ)アクリル酸ハライドの具体例としては,(メタ)アクリル酸クロリド,(メタ)アクリル酸ブロミド,(メタ)アクリル酸アイオダイド等が挙げられ,これらの中では,反応性やコスト面の観点から,(メタ)アクリル酸クロリドが好ましい。アミド誘導体と(メタ)アクリル酸ハライドとの反応は,溶媒中,有機塩基触媒の存在下で行うことが好ましい。具体的には,例えば,アミド誘導体,有機塩基触媒及び溶媒を混合した後,混合液の温度を適度な反応温度に調整した後,(メタ)アクリル酸ハライドを滴下しながら,攪拌して行うことができる。有機塩基触媒としては,トリエチルアミン,トリブチルアミン,トリペンチルアミン,N,N−ジメチルアニリン,N,N−ジエチルアニリン,ピリジン,キノリン等が挙げられ,これらの中ではトリエチルアミンが好ましい。溶媒としては,ベンゼン,トルエン等の芳香族炭化水素,酢酸エチル,酢酸ブチル等のエステル,アセトン,メチルイソブチルケトン等のケトン,メタノール,エタノール,プロパノール,ブタノール等のアルコール,ジクロロメタン,ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素,テトラヒドロフラン,1,4−ジオキサン等のエーテル,アセトニトリル,ニトロベンゼン,ニトロメタン等の非プロトン性有機溶媒等が挙げられる。反応温度は,反応効率の観点から,0〜50℃が好ましく,5〜20℃がより好ましい。また,反応系内の圧力は,特に限定されず,常圧であってもよい。反応時間は特に限定されないが,アミド誘導体と(メタ)アクリル酸ハライドとの反応により生成する,アミド(メタ)アクリレート誘導体の生成率が変化しなくなった時点まで行うことが好ましい。アミド(メタ)アクリレート誘導体の生成率は,液体クロマトグラフィーにより確認することができる。反応終了後,例えば,得られた反応溶液から,抽出,濃縮等の分離操作により,アミド(メタ)アクリレート誘導体を単離することができる。
【0057】
N−ヒドロキシメチルアミド(メタ)アクリレート誘導体は,例えば,パラホルムアルデヒドと,上記のアミド(メタ)アクリレート誘導体とを,メチロール化触媒の存在下で反応させて得られる。メチロール化触媒としては,ピリジン,トリエチルアミン,ジオクチルメチルアミン,トリエタノールアミン,トリイソプロパノールアミン等の有機アミン化合物等が挙げられる。反応は,溶媒中で行うことが好ましい。溶媒としては,ベンゼン,トルエン等の芳香族炭化水素,酢酸エチル,酢酸ブチル等のエステル,アセトン,メチルイソブチルケトン等のケトン,メタノール,エタノール,プロパノール,ブタノール等のアルコール,ジクロロメタン,ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素,テトラヒドロフラン,1,4−ジオキサン等のエーテル,アセトニトリル,ニトロベンゼン,ニトロメタン等の非プロトン性有機溶媒等が挙げられ,これらの中では,原料の溶解性が高いアルコールが好ましい。アミド(メタ)アクリレート誘導体とパラホルムアルデヒドとの反応は,例えば,アミド(メタ)アクリレート誘導体,パラホルムアルデヒド,メチロール化触媒,更に必要に応じて溶媒を攪拌下で混合することによって行うことができる。反応温度は,反応速度を向上させる観点及び副生成物の生成を抑制する観点から,0〜90℃が好ましく,10〜60℃がより好ましい。また,反応系内の圧力は,特に限定されず,常圧であってもよい。反応液のpHは,反応速度を向上させる観点から,7〜12が好ましい。反応時間は特に限定されないが,N−ヒドロキシメチルアミド(メタ)アクリレート誘導体の転化率は20%以上となるまで行うことが好ましい。反応終了後,得られた反応溶液から,目的化合物の含有率が低い固形物を適宜除去した後,溶媒を留去することにより,N−ヒドロキシメチルアミド(メタ)アクリレート誘導体を主成分とする混合体が得られる。なお,N−ヒドロキシメチルアミド(メタ)アクリレート誘導体には,極めて微量のメチロール化触媒が残存していることがある。かかるメチロール化触媒が存在している場合であっても,その含有量は極めて微量であることから,実用上,特に大きな支障を生じることはないが,より純度の高いN-ヒドロキシメチルアミド(メタ)アクリレート誘導体を得るために,該誘導体を単蒸留やカラムクロマトグラフィーにより精製して用いてもよい。
【0058】
上記のN−ヒドロキシメチルアミド(メタ)アクリレート誘導体を酸触媒存在下,脱水反応により式(4)で示されるアミド(メタ)アクリレートを合成することができる。酸触媒としては,塩酸,硫酸等の無機酸,酢酸,シュウ酸等の有機酸等のエーテル化を促進する触媒が挙げられる。無溶媒で行うこともできるが,溶媒を使用して,系内を均一にすることにより反応中の温度調整等が容易になる。溶媒としては,ベンゼン,トルエン等の芳香族炭化水素,酢酸エチル,酢酸ブチル等のエステル,アセトン,メチルイソブチルケトン等のケトン,ジクロロメタン,ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素,テトラヒドロフラン,1,4−ジオキサン等のエーテル,アセトニトリル,ニトロベンゼン,ニトロメタン等の非プロトン性有機溶媒等が挙げられる。なかでも,トルエン等の芳香族炭化水素や,酢酸エチル等のエステルを好適に用いることができる反応温度は,原料であるN-ヒドロキシメチルアミド(メタ)アクリレート誘導体及び酸触媒の種類にもよるが,30〜110℃程度が好ましい。反応液のpHは,反応速度と原料の安定性の観点から,3〜7が好ましい。反応時間は特に限定されないが,反応の終点は,例えば,液体クロマトグラフィー(LC)のチャートにおいて,反応混合物中の目的化合物の面積比率が10%以上になり,2,3時間前の目的化合物の面積比率と変化が無くなった時点を反応の終点とみなす。反応終了後,溶媒を減圧下で留去して濃縮した後,析出した固体をろ別することにより,生成した式(4)で表されるアミド(メタ)アクリレートを単離することができる。反応溶液から単離したアミド(メタ)アクリレートの粗生成物は,ベンゼン,トルエン,キシレン等の芳香族炭化水素,ヘキサン,ヘプタン,オクタン等の脂肪族炭化水素溶媒を用いて,洗浄することが好ましい。例えば,反応生成物を溶媒に溶解させ,ろ過し,得られたろ液を濃縮して,粗生成物を洗浄することができる。本発明においては,合成により得られたアミド(メタ)アクリルモノマーを,更に,カラムクロマトグラフィーにより精製する精製工程に供することが好ましい。カラムクロマトグラフィーの展開溶媒は,例えば,炭化水素系溶媒を用いた後,該炭化水素系溶媒とエステル系溶媒との混合液を用い,更にエステル系溶媒の単一溶媒を用いることが好ましい。ここで,炭化水素系溶媒としてはヘキサン,シクロヘキサン,ヘプタン,オクタン,ベンゼン,トルエン,キシレン等が挙げられる。またエステル系溶媒としては,酢酸エチル,酢酸ブチル等が挙げられる。炭化水素系溶媒とエステル系溶媒の混合液における両者の体積比は,目的物を単離して溶出しやすいものを考慮して適宜選択する。
【実施例】
【0059】
以下,実施例を参照して本発明を更に具体的に説明するが,本発明が実施例に限定されることは意図しない。
【0060】
〔実施例1〕 メトキシポリエチレングリコールアクリルアミド(1)の合成
【0061】
【化15】


【0062】
攪拌機,温度計,コンデンサー及び空気導入管を備えた1リットル容のセパラブルフラスコに,常温下,オクタエチレングリコールモノメチルエーテル(ユニオックス(登録商標:日油製))209g(0.54モル),N−ヒドロキシメチルアクリルアミド50g(0.50モル)及びトルエン60gを仕込み,シュウ酸0.2g(1.6ミリモル)を加えた。得られた溶液のpHは3.3であった。常圧下,液温が90〜100℃になるように加温した後,21時間反応させた。反応終了後,N−ヒドロキシメチルアクリルアミドの転化率は96.6モル%であった。次いで,得られた反応液を,減圧下にて,液温が50〜60℃になるように加温した後,トルエンを2時間かけて留去して濃縮した。得られた濃縮物を30℃まで冷却した。固体が析出した後,固体をろ別し,粗生成物を247g得た。粗生成物をオープンカラムクロマトグラフィーにより精製した。固定相としてアルミナを用い,ヘキサン単一溶液600mLにより展開した後,ヘキサンと酢酸エチルの混合液(ヘキサン/酢酸エチル=80/20(体積比))3000mLにより展開し,更に酢酸エチル単一溶液2000mLにより展開して,目的とするアクリルアミドモノマー(1)240g(純度97.5%)を得た。アクリルアミドモノマー(1)の構造は,JEOL−JNM−AL300−FTNMRスペクトルメーター(日本電子(株)製)を用いた1H−NMR測定(300MHz,CDCl3)により同定した。
〔ピークの帰属〕
3.38 ppm:ポリエチレングリコールメチルエーテルのメチル基
3.55 ppm:ポリエチレングリコールメチルエーテルのエチレングリコール基
4.79〜4.86 ppm:メチロール基
5.68 ppm,6.08〜6.24 ppm及び6.27〜6.38 ppm:アクリロイル基
【0063】
〔比較例1〕 メトキシポリエチレングリコールアクリレート(1)
メトキシポリエチレングリコールアクリレート(共栄社株式会社製,商品名:ライトアクリレート130A)を用いた。
【0064】
〔実施例2〕 イソアルコキシポリエチレングリコールアクリルアミド(2)の合成
【0065】
【化16】


【0066】
攪拌機,温度計,コンデンサー及び空気導入管を備えた1リットル容のセパラブルフラスコに,常温下,ポリオキシエチレン(C12〜C14)エーテル(ファインサーフ290(登録商標:青木油脂製))389g(0.50モル),N−ヒドロキシメチルアクリルアミド50g(0.50モル)及びトルエン60gを仕込み,シュウ酸5.3g(42ミリモル)を加えた。得られた溶液のpHは4.0であった。常圧下,液温が90〜100℃になるように加温した後,6時間反応させた。反応終了後,N−ヒドロキシメチルアクリルアミドの転化率は100.0モル%であった。次いで,得られた反応液を,減圧下にて,液温が50〜60℃になるように加温した後,トルエンを2時間かけて留去して濃縮した。得られた濃縮物を30℃まで冷却した。固体が析出した後,固体をろ別し,粗生成物を375g得た。粗生成物をオープンカラムクロマトグラフィーにより精製した。固定相としてアルミナを用い,ヘキサン単一溶液600mLにより展開した後,ヘキサンと酢酸エチルの混合液(ヘキサン/酢酸エチル=80/20(体積比))3000mLにより展開し,更に酢酸エチル単一溶液2000mLにより展開して,目的とするアクリルアミドモノマー(1) 347g(純度92.7%)を得た。アクリルアミドモノマー(2)の構造は,JEOL−JNM−AL300−FTNMRスペクトルメーター(日本電子(株)製)を用いた1H−NMR測定(300MHz,CDCl3)により同定した。
〔ピークの帰属〕
0.86〜0.92 ppm:イソアルコキシ部位のメチル基
1.26〜1.51 ppm:イソアルコキシ部位のアルキル基
3.24 ppm:イソアルコキシ部位のメチン基
3.54〜3.75 ppm:ポリエチレングリコールメチルエーテルのエチレングリコール基
4.84〜4.86 ppm:メチロール基
5.67 ppm,6.15〜6.28 ppm及び6.33〜6.39 ppm:アクリロイル基
【0067】
〔比較例2〕 イソアルコキシポリエチレングリコールアクリレート(3)の合成
【0068】
【化17】


【0069】
攪拌機,温度計,冷却管及び空気導入管を備えた100ミリリットル容の5口フラスコに,ポリオキシエチレン(C12〜C14)エーテル(ファインサーフ290(登録商標:青木油脂製))20.0g,テトラヒドロフラン20.0g及びトリエチルアミン2.7gを投入した後,攪拌して,混合液の温度が20℃以下となるまで冷却した。混合液の温度が20℃を超えないように,アクリル酸クロリド2.3gを徐々に滴下しながら攪拌した。混合液中に生成した目的の化合物(3)の生成率が99.0%以上となった時点で反応を終了した。得られた反応液に精製水20gと酢酸エチル40gを添加し,攪拌した後,静置して水層と有機層とに分離し,有機層を抽出した。更に,分離した水層に酢酸エチル40gを添加する抽出分離を2回行った。計3回抽出分離して得られた有機層を混合した後,エバポレーターを用い,55℃,0.06MPa減圧条件下にて有機層を濃縮して酢酸エチルを除去することにより粗生成物22.7gを得た。粗生成物を,アルミナを充填剤とするカラムクロマトグラフィーにより精製した。展開溶媒として酢酸エチルとヘキサンとの混合溶媒(酢酸エチル/ヘキサン(体積比)=80/20)を用い,目的の化合物(3)18.9g(純度:98.9%)を得た(収率:88.5%)。アクリルモノマー(3)の構造は,JEOL−JNM−AL300−FTNMRスペクトルメーター(日本電子(株)製)を用いた1H−NMR測定(300MHz,CDCl3)により同定した。
〔ピークの帰属〕
0.96 ppm:イソアルコキシ部位のメチル基
1.29〜1.42 ppm:イソアルコキシ部位のアルキル基
3.22 ppm:イソアルコキシ部位のメチン基
3.54〜4.32 ppm:ポリエチレングリコールメチルエーテルのエチレングリコール基
5.80 ppm,6.05 ppm及び6.43 ppm:アクリロイル基
【0070】
〔実施例3〕 N−(2−フェノキシ−エトキシメチル)−アクリルアミド(E4)の合成
【0071】
【化18】


【0072】
攪拌機,温度計,コンデンサー及び空気導入管を備えた300ミリリットル容のセパラブルフラスコに,常温下,エチレングリコールモノフェニルエーテル54.7g,N−ヒドロキシメチルアクリルアミド40.0g及びトルエン48gを仕込み,シュウ酸0.6gを加えた。得られた溶液のpHは4.0であった。常圧下,液温が90〜100℃になるように加温した後,6時間反応させた。反応終了後,N−ヒドロキシメチルアクリルアミドの転化率は98.2%であった。次いで,得られた反応液を,減圧下にて,液温が50〜60℃になるように加温した後,トルエンを2時間かけて留去して濃縮した。得られた濃縮物を30℃まで冷却した。固体が析出した後,固体をろ別し,粗生成物を99.5g得た。粗生成物をオープンカラムクロマトグラフィーにより精製した。固定相としてアルミナを用い,ヘキサン単一溶液600mLにより展開した後,ヘキサンと酢酸エチルの混合液(ヘキサン/酢酸エチル=80/20(体積比))3000mLにより展開し,更に酢酸エチル単一溶液2000mLにより展開して,目的とするアクリルアミドモノマー(4) 97.2g(純度95.4%)を得た。アクリルアミドモノマー(4)の構造は,JEOL−JNM−AL300−FTNMRスペクトルメーター(日本電子(株)製)を用いた1H−NMR測定(300MHz,CDCl3)により同定した。
〔ピークの帰属〕
3.89〜3.94 ppm:フェノキシエチレン部位のエチレン基
4.07〜4.12 ppm:フェノキシエチレン部位のエチレン基
4.93 ppm:メチロール基
5.72 ppm,6.12〜6.18 ppm及び6.22〜6.38 ppm:アクリロイル基
6.65 ppm:アミド基
6.88〜7.32 ppm:フェニル基
【0073】
〔比較例3〕 フェノキシエチルアクリレート(1)
フェノキシエチルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製,商品名:ビスコート#192)を用いた。
【0074】
〔実施例4〕 4−アクリロイルアミド−N−(2−プロポキシ−エトキシメチル)−ベンズアミド(E5)の合成
【0075】
【化19】


【0076】
以下の工程により上記化合物E5を合成した。
(工程1) 4−アクリロイルアミノベンズアミド(E5-1)の合成
【0077】
【化20】


【0078】
攪拌機,温度計,冷却管及び空気導入管を備えた300ミリリットル容の5口フラスコに,4−アミノベンズアミド25.0g,酢酸エチル80.9g及びトリエチルアミン19.5gを投入した後,攪拌して,混合液の温度が20℃以下となるまで冷却した。混合液の温度が20℃を超えないように,アクリル酸クロリド16.6gを徐々に滴下しながら攪拌した。混合液中に生成した目的の化合物(E5-1)の生成率が95.0%以上となった時点で反応を終了した。得られた反応液に精製水20gと酢酸エチル40gを添加し,攪拌した後,静置して水層と有機層とに分離し,有機層を抽出した。更に,分離した水層に酢酸エチル40gを添加する抽出分離を2回行った。計3回抽出分離して得られた有機層を混合した後,エバポレーターを用い,55℃,0.06MPa減圧条件下にて有機層を濃縮して酢酸エチルを除去することにより粗生成物(E5-1)34.2gを得た。
【0079】
(工程2) 4−アクリロイルアミノ−N−ヒドロキシメチル−ベンズアミド(E5-2)の合成
【0080】
【化21】

【0081】
攪拌機,温度計,コンデンサー及び空気導入管を備えた100ミリリットル容のフラスコに,常温下,メタノール35gを仕込み,これに4−アクリロイルアミノベンズアミド(E5-1)14.0g及びパラホルムアルデヒド(シグマアルドリッチ社製)6.6gを液温が30〜35℃になるように加温しながら,20分間かけて少しずつ添加しながら溶解させた。次いで,トリエチルアミン28.5gを添加して,pHが9〜10の範囲内となるように調整した。これを昇温し,50〜55℃で5時間保持し,エージングを行った。得られた反応液を,吸引ろ過し,固形物を分離してろ液を得た。残渣には,目的とする4−アクリロイルアミノ−N−ヒドロキシメチル−ベンズアミドが含まれていないことをNMRにて確認した。得られたろ液を,減圧下,液温40℃にて2時間かけて濃縮し,メタノール等を除去し,4−アクリロイルアミノ−N−ヒドロキシメチル−ベンズアミド(E5-2)を22.1g得た。
【0082】
(工程3) 4−アクリロイルアミド−N−(2−プロポキシ−エトキシメチル)−ベンズアミド(E5)の合成
攪拌機,温度計,コンデンサー及び空気導入管を備えた50ミリリットル容のフラスコに,常温下,エチレングリコールモノプロピルエーテル4.7g,4−アクリロイルアミノ−N−ヒドロキシメチル−ベンズアミド(E5-2)10.0g及びトルエン12gを仕込み,シュウ酸0.3gを加えた。得られた溶液のpHは4.0であった。常圧下,液温が90〜100℃になるように加温した後,21時間反応させた。反応終了後,N−ヒドロキシメチルアクリルアミドの転化率は50.1%であった。次いで,得られた反応液を,減圧下にて,液温が50〜60℃になるように加温した後,トルエンを2時間かけて留去して濃縮した。得られた濃縮物を30℃まで冷却した。固体が析出した後,固体をろ別し,粗生成物を12.3g得た。粗生成物をオープンカラムクロマトグラフィーにより精製した。固定相としてアルミナを用い,ヘキサン単一溶液により展開した後,ヘキサンと酢酸エチルの混合液(ヘキサン/酢酸エチル=80/20(体積比))により展開し,更に酢酸エチル単一溶液により展開して,目的とするアクリルアミドモノマー(E5) 4.2g(純度97.1%)を得た。アクリルアミドモノマー(E5)の構造は,JEOL−JNM−AL300−FTNMRスペクトルメーター(日本電子(株)製)を用いた1H−NMR測定(300MHz,CDCl3)により同定した。
〔ピークの帰属〕
0.96 ppm:プロポキシ部位のメチル基
1.50 ppm:プロポキシ部位のメチレン基
3.37〜3.54 ppm:プロポキシ部位及びエトキシ部位のメチレン基
5.28 ppm:メチロール基
5.72 ppm,6.14〜6.20 ppm及び6.22〜6.38 ppm:アクリロイル基
7.82〜7.93 ppm:フェニル基
【0083】
〔比較例4〕 4−アクリロイルアミノ安息香酸2−プロポキシ−エチルエステル(E6)の合成
【0084】
【化22】


【0085】
以下の工程により上記化合物E6を合成した。
【0086】
(工程1) 4−アクリロイルアミノ安息香酸の合成(E6-1)
【0087】
【化23】


【0088】
攪拌機,温度計,冷却管及び空気導入管を備えた300ミリリットル容の5口フラスコに,4−アミノ安息香酸25.0g,酢酸エチル150g及びトリエチルアミン19.4gを投入した後,攪拌して,混合液の温度が20℃以下となるまで冷却した。混合液の温度が20℃を超えないように,アクリル酸クロリド16.5gを徐々に滴下しながら攪拌した。混合液中に生成した目的の化合物(E6-1)の生成率が95.0%以上となった時点で反応を終了した。得られた反応液に精製水20gと酢酸エチル40gを添加し,攪拌した後,静置して水層と有機層とに分離し,有機層を抽出した。更に,分離した水層に酢酸エチル40gを添加する抽出分離を2回行った。計3回抽出分離して得られた有機層を混合した後,エバポレーターを用い,55℃,0.06MPa減圧条件下にて有機層を濃縮して酢酸エチルを除去することにより粗生成物(E6-1)35.3gを得た。
【0089】
(工程2) 4−アクリロイルアミノ安息香酸 2−プロポキシ−エチルエステル(E6)の合成
攪拌機,温度計,コンデンサー及び空気導入管を備えた50ミリリットル容のフラスコに,常温下,エチレングリコールモノプロピルエーテル5.5g,4−アクリロイルアミノ安息香酸(E6-1)10.0g及びトルエン12gを仕込み,シュウ酸0.3gを加えた。得られた溶液のpHは4.0であった。常圧下,液温が90〜100℃になるように加温した後,6時間反応させた。反応終了後,4−アクリロイルアミノ安息香酸の転化率は95.8%であった。次いで,得られた反応液を,減圧下にて,液温が50〜60℃になるように加温した後,トルエンを2時間かけて留去して濃縮した。得られた濃縮物を30℃まで冷却した。固体が析出した後,固体をろ別し,粗生成物を15.1g得た。粗生成物をオープンカラムクロマトグラフィーにより精製した。固定相としてアルミナを用い,ヘキサン単一溶液により展開した後,ヘキサンと酢酸エチルの混合液(ヘキサン/酢酸エチル=80/20(体積比))により展開し,更に酢酸エチル単一溶液により展開して,目的とするアクリルアミドモノマー(E6) 5.1g(純度96.9%)を得た。アクリルアミドモノマー(E6)の構造は,JEOL−JNM−AL300−FTNMRスペクトルメーター(日本電子(株)製)を用いた1H−NMR測定(300MHz,CDCl3)により同定した。
〔ピークの帰属〕
0.96 ppm:プロポキシ部位のメチル基
1.50 ppm:プロポキシ部位のメチレン基
3.37〜4.42 ppm:プロポキシ部位及びエトキシ部位のメチレン基
5.72 ppm,6.14〜6.20 ppm及び6.22〜6.38 ppm:アクリロイル基
7.75〜7.95 ppm:フェニル基
【0090】
〔実施例5〕7−アクリロイル−2H−1,3−ベンゾオキサジン−4(3H)−オン(E7)の合成
【0091】
【化24】


【0092】
以下の工程により上記化合物E7を合成した。
(工程1) 4-アクリロイル-2-ヒドロキシベンズアミド(E7-1)の合成
【0093】
【化25】


【0094】
攪拌機,温度計,冷却管及び空気導入管を備えた1リットル容の5口フラスコに,2,4−ジヒドロキシベンズアミド100.0g,酢酸エチル575.3g及びトリエチルアミン69.4gを投入した後,攪拌して,混合液の温度が20℃以下となるまで冷却した。混合液の温度が20℃を超えないように,アクリル酸クロリド59.1gを徐々に滴下しながら攪拌した。混合液中に生成した目的の化合物(E7-1)の生成率が95.0%以上となった時点で反応を終了した。得られた反応液に精製水20gと酢酸エチル40gを添加し,攪拌した後,静置して水層と有機層とに分離し,有機層を抽出した。更に,分離した水層に酢酸エチル40gを添加する抽出分離を2回行った。計3回抽出分離して得られた有機層を混合した後,エバポレーターを用い,55℃,0.06MPa減圧条件下にて有機層を濃縮して酢酸エチルを除去することにより粗生成物(E7-1)59.5gを得た。
【0095】
(工程2) 4-アクリロイル-2-ヒドロキシ-N-ヒドロキシメチルベンズアミド(E7-2)の合成
【0096】
【化26】


【0097】
攪拌機,温度計,コンデンサー及び空気導入管を備えた200ミリリットル容のフラスコに,常温下,メタノール50.0gを仕込み,これに4−アクリロイル−2−ヒドロキシベンズアミド(E7-1)50.0g及びパラホルムアルデヒド(シグマアルドリッチ社製)21.7gを液温が30〜35℃になるように加温しながら,20分間かけて少しずつ添加しながら溶解させた。次いで,トリエチルアミン21.2gを添加して,pHが9〜10の範囲内となるように調整した。これを昇温し,50〜55℃で5時間保持し,エージングを行った。得られた反応液を,吸引ろ過し,固形物を分離してろ液を得た。得られたろ液を,減圧下,液温40℃にて2時間かけて濃縮し,メタノール等を除去し,4−アクリロイル−2−ヒドロキシ−N−ヒドロキシメチルベンズアミド(E7-2)を17.2g得た。
【0098】
(工程3) 7−アクリロイル−2H−1,3−ベンゾオキサジン−4(3H)−オン(E7)の合成
攪拌機,温度計,コンデンサー及び空気導入管を備えた50ミリリットル容のフラスコに,常温下,4−アクリロイル−2−ヒドロキシ−N−ヒドロキシメチルベンズアミド(E7-2)15.0g及びトルエン12gを仕込み,シュウ酸1.1gを加えた。得られた溶液のpHは4.0であった。常圧下,液温が90〜100℃になるように加温した後,36時間反応させた。反応終了後,4−アクリロイル−2−ヒドロキシ−N−ヒドロキシメチルベンズアミドの転化率は88.6%であった。次いで,得られた反応液を,減圧下にて,液温が50〜60℃になるように加温した後,トルエンを2時間かけて留去して濃縮した。得られた濃縮物を30℃まで冷却した。固体が析出した後,固体をろ別し,粗生成物を14.1g得た。粗生成物をオープンカラムクロマトグラフィーにより精製した。固定相としてアルミナを用い,ヘキサン単一溶液により展開した後,ヘキサンと酢酸エチルの混合液(ヘキサン/酢酸エチル=80/20(体積比))により展開し,更に酢酸エチル単一溶液により展開して,目的とするアクリルモノマー(E7)4.9g(純度97.3%)を得た。アクリルモノマー(E7)の構造は,JEOL−JNM−AL300−FTNMRスペクトルメーター(日本電子(株)製)を用いた1H−NMR測定(300MHz,CDCl3)により同定した。
〔ピークの帰属〕
5.85 ppm:メチロール部位
5.71 ppm,6.03 ppm及び6.26 ppm:アクリロイル基
6.76〜7.81 ppm:フェニル基
【0099】
〔比較例5〕 ジシクロペンテニルアクリレート(1)
ジシクロペンテニルアクリレート(日立化成株式会社製,商品名:FA-511A)を用いた。
【0100】
〔モノマー化合物の評価〕
実施例及び比較例の化合物の各々につき,以下に示す一定の手順で光硬化させ,光硬化の前後における体積収縮の大きさを,測定して相互に比較した。
【0101】
<光硬化性樹脂組成物の調製>
上記実施例及び比較例の各モノマー5.0g及び1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(商品名:IRGACURE184,チバ・ジャパン株式会社製)0.25gを混合し,光硬化用樹脂組成物を得た。
【0102】
<硬化用樹脂組成物の光硬化>
直径2cm,高さ1mmのテフロン(登録商標)製容器に調製した光硬化性樹脂組成物を0.3g加えた。メタルハライドランプにてUV露光(露光量:20500mJ)し,透明硬化樹脂を得た。
【0103】
<光硬化体積収縮率の測定>
光硬化性樹脂組成物を10mLメスシリンダーに加え,重量を測定し,液体密度を求めた。光硬化性樹脂組成物をUV硬化させて得た透明硬化樹脂の固体密度は,分析天秤(メトラー・トレド株式会社製,XS−204)を用いて求めた。得られた光硬化性樹脂組成物の液体密度及び光硬化樹脂の固体密度を測定し,式(1)より光硬化体積収縮率を求めた。
【0104】
【数1】


【0105】
<結果>
以下の表に各実施例及び比較例における,光硬化の前後の体積収縮率を示す。
【0106】
【表1】


【0107】
表1に示すように,実施例1〜5の化合物は,対応する構造であるがアミドメチロール構造部分を有しないものである比較例1〜5の化合物に比して,光硬化時における体積収縮が顕著に抑制されている。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明の(メタ)アクリル系モノマー化合物は,光硬化させることができ,このとき従来の(メタ)アクリル系モノマーに比して体積収縮が抑制される。従って,本発明は,体積収縮をできる限り回避することが求められる用途,特に,UV硬化型インク,レジスト材料,ナノインプリント用材料,ホログラムメモリー材料に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
−CO−NH−CH2−O−よりなるアミドメチロール構造部分を分子内に少なくとも1個含むものである,(メタ)アクリル系モノマー化合物。
【請求項2】
炭素数が5〜99個の範囲にあるものである,請求項1の(メタ)アクリル系モノマー化合物。
【請求項3】
次式(1),
【化1】



〔式中,R1は,水素原子又はメチル基を表し,R2は,1個又は2個以上の酸素原子が隣接炭素原子間に挿入されることにより各2個以上の炭素原子からなる複数の炭化水素基部分に分割されていてよい炭素数が1〜30個の飽和炭化水素基を表すか,炭素数6〜25個の芳香族基を表すか,又はこれらの組み合わせを表し,X1は,水素原子,ヒドロキシル基,炭素数1〜30の直鎖の又は分枝を有するアルキルオキシ基,フェノキシ基,グリシジルオキシ基、アリルオキシ基,ビニルオキシ基を表す。〕で示されるものである,請求項1又は2の(メタ)アクリル系モノマー化合物。
【請求項4】
次式(2),
【化2】



〔式中,R1は,水素原子又はメチル基を表し,Yは酸素原子又は−NH−を表し,R3は,1個又は2個以上の酸素原子が隣接炭素原子間に挿入されることにより各2個以上の炭素原子からなる複数の炭化水素基部分に分割されていてよい炭素数1〜18個の飽和炭化水素基,炭素数6〜25の芳香族基,又はこれらの2種以上の組み合わせよりなるものであり,R4は,1個又は2個以上の酸素原子が隣接炭素原子間に挿入されることにより各2個以上の炭素原子からなる複数の炭化水素基部分に分割されていてよい炭素数1〜30個の飽和炭化水素基,炭素数6〜20個の芳香族基,又はこれらの組み合わせを表し,X2は,水素原子,ヒドロキシル基,炭素数1〜30の直鎖の又は分枝を有するアルキルオキシ基,フェノキシ基,グリシジルオキシ基,アリルオキシ基又はビニルオキシ基を表す。〕で示されるものである,請求項1又は2の(メタ)アクリル系モノマー化合物。
【請求項5】
次式(3),
【化3】



〔式中,R1は,水素原子又はメチル基を表し,Yは酸素原子又は−NH−を表し,R5は,1個又は2個以上の酸素原子が隣接炭素原子間に挿入されることにより各2個以上の炭素原子からなる複数の炭化水素基部分に分割されていてよい炭素数1〜15個の飽和炭化水素基,炭素数6〜20個の芳香族基,又はこれらの2種以上の組み合わせよりなるものであり,R6は,単結合であるか,又は1個又は2個以上の酸素原子が隣接炭素原子間に挿入されることにより各2個以上の炭素原子からなる複数の炭化水素基部分に分割されていてよい炭素数1〜15個の飽和炭化水素基,炭素数6〜25個の芳香族基,又はこれらの組み合わせを表し,但し,R5及びR6は,それらの何れかの原子間で共有結合して環を形成していてもよい。〕で示されるものである,請求項1又は2の(メタ)アクリル系モノマー化合物。
【請求項6】
次式(4),
【化4】



〔式中,R1は,水素原子又はメチル基を表し,Yは,酸素原子又は−NH−の何れでもよく,破線で示した環は炭素数6〜14個の縮合環であってよい芳香族環を表す。〕で示されるものである,請求項1又は2の(メタ)アクリル系モノマー化合物。

【公開番号】特開2011−94089(P2011−94089A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−252210(P2009−252210)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【出願人】(000205638)大阪有機化学工業株式会社 (101)
【Fターム(参考)】