説明

光硬化性接着剤組成物、偏光板とその製造法、光学部材及び液晶表示装置

【課題】透湿度の低い樹脂フィルムを保護膜とする場合であっても、光照射後速やかに接着力を発現し、一定時間経過後の最終的接着力も良好で、耐久試験後も外観不良などの問題を引き起こすことがなく、粘度が低い光硬化性接着剤の提供、及び当該接着剤を用いて偏光子に保護膜が貼合された偏光板の提供。
【解決手段】ポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子に、特定4種から選ばれる透明樹脂フィルムからなる保護膜を接着するための接着剤組成物であって、(A)分子内に少なくとも2個の脂環式エポキシ基を有する化合物、(B)炭素数2〜15個を有するポリオール(但し、アルキレンオキサイド単位の繰返し数3以上のポリエーテルポリオールを除く)のポリ(メタ)アクリレート、(C)光カチオン重合開始剤及び(D)3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンを特定割合で含有する光硬化性接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板において偏光子と保護膜の貼合に用いられる光硬化性接着剤組成物、その接着剤組成物を用いて偏光子に保護膜を貼合した偏光板、及びその偏光板の製造方法に関するものである。本発明は又、この偏光板を用いた光学部材及び液晶表示装置にも関係している。
【背景技術】
【0002】
偏光板は、液晶表示装置を構成する光学部品の一つとして有用である。偏光板は通常、偏光子の両面に保護膜を積層した状態で、液晶表示装置に組み込まれて使用される。偏光子の片面にのみ保護膜を設けることも知られているが、多くの場合、もう一方の面には、単なる保護膜としてではなく、別の光学機能を有する層が、保護膜を兼ねて貼合されることになる。又偏光子の製造方法として、二色性色素により染色された一軸延伸ポリビニルアルコール樹脂フィルムをホウ酸処理し、水洗後、乾燥する方法は広く知られている。
【0003】
通常、偏光子には、上述の水洗及び乾燥後、直ちに保護膜が貼合される。これは、乾燥後の偏光子は物理的な強度が弱く、一旦これを巻き取ると、加工方向に裂けるなどの問題が生じるためである。したがって、乾燥後の偏光子は通例、直ちに水系の接着剤を塗布した後、この接着剤を介して両面同時に保護膜が貼合される。通例、保護膜としては、厚さ30〜120μmのトリアセチルセルロースフィルムが使用されている。
【0004】
偏光子と保護膜、特にトリアセチルセルロースフィルムからなる保護膜との接着には、ポリビニルアルコール系の接着剤を用いることが多いが、これに代わってウレタン系の接着剤を用いる試みもある。例えば、特開平7−120617号公報(特許文献1)には、ウレタンプレポリマーを接着剤とし、含水率の高い偏光子と、酢酸セルロース系保護膜、例えばトリアセチルセルロースフィルムとを接着することが記載されている。
【0005】
一方、トリアセチルセルロースは透湿度が高いため、この樹脂フィルムを保護膜として貼合した偏光板は、湿熱下、例えば、温度70℃、相対湿度90%のような条件下では劣化を引き起こすなどの問題があった。そこで、トリアセチルセルロースフィルムよりも透湿度の低い樹脂フィルムを保護膜とすることで、かかる問題を解決する方法も提案されており、例えば、非晶性ポリオレフィン系樹脂を保護膜とすることが知られている。具体的には、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂シートを偏光子の少なくとも一方の面に保護膜として積層することが、特開平6−51117号公報(特許文献2)に記載されている。
【0006】
このような透湿度の低い保護膜を従来の装置で貼合する場合、水を主な溶媒とする接着剤、例えば、ポリビニルアルコール水溶液を使用して、ポリビニルアルコール系の偏光子に保護膜を貼合した後、溶媒を乾燥させるいわゆるウェットラミネーションでは、十分な接着強度が得られなかったり、外観が不良になったりするなどの問題があった。これは、透湿度の低いフィルムは一般的にトリアセチルセルロースフィルムよりも疎水性であることや、透湿度が低いために溶媒である水を十分に乾燥できないことなどの理由による。
【0007】
そこで、特開2000−321432号公報(特許文献3)には、ポリビニルアルコール系の偏光子と、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂からなる保護膜とを、ポリウレタン系接着剤により接着することが提案されている。しかしながら、ポリウレタン系接着剤は、硬化に長時間を要するという問題があり、又接着力も必ずしも十分とはいえない。
【0008】
一方で、偏光子の両面に異なる種類の保護膜を貼合することも知られており、例えば、特開2002−174729号公報(特許文献4)には、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子の一方の面に、非晶性ポリオレフィン系樹脂からなる保護膜を貼合し、他方の面には、その非晶性ポリオレフィン系樹脂とは異なる樹脂、例えばトリアセチルセルロースからなる保護膜を貼合することが提案され、特開2005−208456号公報(特許文献5)には、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムの一方の面に、特定のウレタン樹脂を含む水系の第一の接着剤を介してシクロオレフィン系樹脂フィルムを積層し、他方の面には第一の接着剤とは異なる水系の第二の接着剤、例えばポリビニルアルコール系樹脂の水溶液を介して酢酸セルロース系樹脂フィルムを積層することが提案されている。
【0009】
上記特許文献4において非晶性ポリオレフィン系樹脂と呼ばれ、又上記特許文献5においてシクロオレフィン系樹脂と呼ばれているものは、ノルボルネンやその誘導体、ジメタノオクタヒドロナフタレンのような、多環式のシクロオレフィンからなるモノマーのユニットを有し、開環重合体のように二重結合が残っている場合は好ましくはそこに水素添加された熱可塑性の樹脂である。
【0010】
又、特開2004−245925号公報(特許文献6)には、芳香環を含まないエポキシ樹脂を主成分とする接着剤が開示されており、その接着剤に活性エネルギー線を照射してカチオン重合させることにより偏光子と保護膜とを接着する方法が提案されている。ここに開示されるエポキシ系の接着剤は、非晶性ポリオレフィン系樹脂及びセルロース系樹脂をはじめとする各種の透明樹脂フィルムを偏光子に貼合するのに特に有効であるものの、特にアクリル樹脂を保護膜とする場合には、その接着力が必ずしも十分でないことが明らかになってきた。
【0011】
そこで本発明者らは、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂及び非晶性ポリオレフィン系樹脂から選ばれる透湿度の低い樹脂フィルムを偏光子の保護膜とする場合に、短時間の工程で良好な接着力を発現する低粘度な光硬化性接着剤の開発を行った。その結果、芳香環を有するグリシジルエーテル型エポキシ樹脂とオキセタン化合物を含む組成物が良好な接着力を与え、特に脂環式骨格を有する(メタ)アクリレート系モノマーを5〜25重量%含有する場合に高い接着力と耐久性を発現することを見出した(特許文献7)。しかしながら、この接着剤は、生産工程自体は光照射という短時間の工程で済むものの、フィルム巻取後しばらく経過した後でないと十分な接着力を発現しないという問題があった。このため、生産工程における光照射後のフィルム取扱いが困難であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平7−120617号公報
【特許文献2】特開平6−51117号公報
【特許文献3】特開2000−321432号公報
【特許文献4】特開2002−174729号公報
【特許文献5】特開2005−208456号公報
【特許文献6】特開2004−245925号公報
【特許文献7】特開2010−209126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ポリビニルアルコール系の偏光子と透湿度の低い保護膜とをウェットラミネーションにより貼合する場合の問題を解決するため、貼合後の乾燥炉長を長くして乾燥時間をかせぐことが考えられるが、単純に乾燥炉長を長くすると、偏光子の熱劣化による変色が起きやすいという問題が生じる。そこで、乾燥温度を低くして偏光子の熱劣化を起こさないようにすることが考えられるが、この場合、十分に乾燥するためには乾燥炉長をさらに長くする必要があり、設備投資が莫大になるという問題がある。又、偏光子の両面に異なる種類の保護膜を貼合する場合は、それら保護膜の熱による収縮率が異なるため、両面の保護膜の収縮量が異なる状態で偏光子と接着することになり、乾燥後、常温に戻したとき偏光板にカールが発生しやすいという問題がある。
【0014】
かかる問題を改善するためには、ドライラミネーションによる貼合方法を採用することが考えられる。しかし、ドライラミネーション適性を有する接着剤は粘度が極めて高いため、偏光子の物理的強度が弱いという問題から、偏光子と保護膜の接着方法は保護膜に接着剤を塗工し、その後、偏光子に貼合するという方法に限定される。この方法では、貼合前に接着剤の塗工面に異物が付着した場合、異物を隠蔽することができず、貼合後は異物を起点として接着層と偏光子の間で気泡が発生するため、輝点欠陥の原因となる。
【0015】
したがって本発明の目的は、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂及び非晶性ポリオレフィン系樹脂から選ばれる透湿度の低い樹脂フィルムを保護膜とする場合であっても、光照射後速やかに接着力を発現し、一定時間経過後の最終的接着力も良好で、耐久試験後も外観不良などの問題を引き起こすことがなく、粘度が低い光硬化性接着剤を提供し、その接着剤を用いて偏光子に保護膜が貼合された偏光板を提供することにある。本発明のもう一つの目的は、この偏光板を用いて、信頼性に優れる液晶表示装置を形成しうる光学部材を提供し、さらにそれを液晶表示装置に適用することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
すなわち本発明によれば、一軸延伸され、二色性色素が吸着配向されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子に、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂及び非晶性ポリオレフィン系樹脂からなる群より選ばれる透明樹脂フィルムからなる保護膜を接着するための接着剤組成物であって、
(A)分子内に少なくとも2個の下記式(1)に示す脂環式エポキシ基を有するエポキシ化合物、
【0017】
【化1】

【0018】
(B)炭素数2〜15個を有するポリオール(但し、アルキレンオキサイド単位の繰返し数3以上のポリエーテルポリオールを除く)のポリ(メタ)アクリレート、
(C)光カチオン重合開始剤及び
(D)下記式(2)に示すオキセタン化合物を含有し、
【0019】
【化2】

【0020】
前記(A)〜(D)成分の含有割合が、組成物中に、
(A)成分:20〜80重量%
(B)成分:10〜55重量%
(C)成分:0.5〜10重量%
(D)成分:1〜25重量%
であることを特徴とする光硬化性接着剤組成物が提供される。
本発明の組成物は、(A)成分として、下記式(4)に示すエポキシ化合物が好ましい。
【0021】
【化3】

【0022】
(B)成分としては、炭素数5〜10個を有するジオール(但し、アルキレンオキサイド単位の繰返し数3以上のポリエーテルジオールを除く)のジ(メタ)アクリレートがより好ましい。又、(メタ)アクリレートとしてはアクリレートがより好ましい。
【0023】
(A)成分及び(B)成分の好ましい含有割合は、組成物中にそれぞれ35〜75重量%及び10〜35重量%である。
【0024】
さらに、本発明の組成物には、(E)成分として下記式(3)に示すオキセタン化合物を、組成物中に1〜18重量%含有することが好ましい。
【0025】
【化4】

【0026】
これらの光硬化性接着剤組成物に含まれる(B)成分等のラジカル重合性成分は、(C)成分が光で分解する際に発生するラジカルで硬化させることが可能であるが、少ない照射量で十分な反応率を得るために、(F)成分である光ラジカル重合開始剤を10重量%以下の割合で含有させることが好ましい。
【0027】
さらに、これらの光硬化性接着剤組成物は、平滑性に優れた塗布面を得るためには、(G)成分であるレベリング剤を組成物中に0.01〜0.5重量%含有することが好ましい。
【0028】
又本発明によれば、一軸延伸され、二色性色素が吸着配向されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子に、接着剤を介して、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂及び非晶性ポリオレフィン系樹脂より選ばれる透明樹脂フィルムからなる保護膜が貼合されてなる偏光板であって、その接着剤が上記いずれかの光硬化性接着剤組成物から形成されている偏光板が提供される。
【0029】
この偏光板は、偏光子と保護膜との貼合面のうち少なくとも一方に、前記いずれかの光硬化性接着剤組成物を塗布する接着剤塗布工程と、得られる接着剤層を介して偏光子と保護膜とを貼合する貼合工程と、その接着剤層を介して偏光子と保護膜とが貼合された状態で光硬化性接着剤組成物を硬化させる硬化工程とを包含する方法によって製造することができる。具体的には、偏光子に未硬化の上記光硬化性接着剤組成物を塗工したのち、その接着剤組成物塗工面に保護膜を貼合し、次いでその接着剤組成物を硬化させて接着剤層を形成する方法、保護膜に未硬化の上記光硬化性接着剤組成物を塗工したのち、その接着剤組成物塗工面に偏光子を貼合し、次いでその接着剤組成物を硬化させて接着剤層を形成する方法、偏光子と保護膜の間に未硬化の上記光硬化性接着剤組成物を流延し、偏光子と保護膜の貼合物をロール等で挟んで接着剤組成物を均一に押し広げながら圧着させたのち、その接着剤組成物を硬化させて接着剤層を形成する方法などが採用できる。
【0030】
さらに本発明によれば、上記した偏光板と他の光学機能を示す光学層とが積層されている光学部材が提供される。この場合の他の光学層は、位相差板を含むことが好ましい。この光学部材が液晶セルの片側又は両側に配置されてなる液晶表示装置も提供される。
【発明の効果】
【0031】
本発明の光硬化性接着剤組成物は、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂及び非晶性ポリオレフィン系樹脂から選ばれる透湿度の低い樹脂フィルムを保護膜とする場合であっても、光照射後速やかに接着力を発現し、一定時間経過後の最終的接着力も良好で、耐久試験後も外観不良などの問題を引き起こすことがない。この接着剤組成物は、保護膜がアクリル樹脂で構成される場合に特に有用である。又、本発明の接着剤組成物は、粘度が非常に低いため、薄く塗布して欠陥なく貼合することが容易である。この接着剤組成物を介し、偏光子と保護膜とを貼合して得られる偏光板は、その接着剤組成物が光照射という短時間の工程で硬化するだけでなく、光照射直後にも一定強度の接着力が得られることから、生産性よく製造することができる。さらに、この偏光板を他の光学層と組み合わせた光学部材は、信頼性に優れる液晶表示装置を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明では、一軸延伸され、二色性色素が吸着配向されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子に、透明樹脂フィルムからなる保護膜を接着するにあたり、特定組成の光硬化性接着剤組成物を用いる。こうして偏光子と保護膜とを、光硬化性接着剤組成物を介して貼合することにより、偏光板が得られる。この偏光板は、他の光学機能を有する光学層と積層して、光学部材とすることができる。又この光学部材は、液晶セルの少なくとも一方側に配置して、液晶表示装置とすることができる。以下、光硬化性接着剤組成物、偏光板、偏光板の製造方法、光学部材、液晶表示装置の順に説明を進めていく。
【0033】
[光硬化性接着剤組成物]
本発明では、偏光子と保護膜とを貼合するのに、特定組成の光硬化性接着剤組成物を用いる。以下、この光硬化性接着剤組成物を、単に「光硬化性接着剤」又は「組成物」と呼ぶこともある。本発明の光硬化性接着剤は、以下の(A)、(B)、(C)及び(D)の4成分を必須に含有するものである。
【0034】
(A)分子内に少なくとも2個の後記式(1)に示す脂環式エポキシ基を有するエポキシ化合物
(B)炭素数2〜15個を有するポリオール(但し、アルキレンオキサイド単位の繰返し数3以上のポリエーテルポリオールを除く)のポリ(メタ)アクリレート
(C)光カチオン重合開始剤
(D)後記式(2)に示すオキセタン化合物
【0035】
本明細書では、上記(A)のエポキシ化合物を、「(A)成分」又は「エポキシ化合物(A)」とも呼び、(B)のポリ(メタ)アクリレートを、「(B)成分」又は「ポリ(メタ)アクリレート(B)」とも呼び、(C)の光カチオン重合開始剤を、「(C)成分」又は「光カチオン重合開始剤(C)」とも呼び、上記(D)のオキセタン化合物を、「(D)成分」又は「オキセタン化合物(D)」とも呼ぶ。
【0036】
(A)〜(D)成分の組成物中の含有割合は、組成物全体を基準として、(A)成分が20〜80重量%、(B)成分が10〜55重量%、(C)成分が0.5〜10重量%及び(D)成分が1〜25重量%となるようにする。
【0037】
この光硬化性接着剤は任意に、(E)成分として後記式(3)に示すオキセタン化合物を含有することができ、1〜18重量%の含有割合とすることが好ましい。(F)成分として光ラジカル重合開始剤を含有することができ、(G)成分としてレベリング剤を含有することができる。
【0038】
本明細書では、上記(E)のオキセタン化合物を、「(E)成分」又は「オキセタン化合物(E)」とも呼び、(F)の光ラジカル重合開始剤を、「(F)成分」又は「光ラジカル重合開始剤(F)」とも呼び、(G)のレベリング剤を、「(G)成分」又は「レベリング剤(G)」とも呼ぶ。
【0039】
〈エポキシ化合物(A)〉
本発明の光硬化性接着剤において、(A)成分となるエポキシ化合物は、分子内に少なくとも2個の下記式(1)に示す脂環式エポキシ基を有するエポキシ化合物であり、一般に知られている各種の硬化性エポキシ化合物を用いることができる。
【0040】
【化5】

【0041】
(A)成分の具体例としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートのカプロラクトン変性物、多価カルボン酸と3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアルコールのエステル化物又はカプロラクトン変性物、末端に上記式(1)に示す脂環式エポキシ基を有するシリコーン系化合物等が挙げられる。
【0042】
(A)成分としては、下記式(4)に示すエポキシ化合物が、低粘度、硬化性、接着力及び耐久性に優れる点で好ましい。
【0043】
【化6】

【0044】
(A)成分のエポキシ化合物は、1種類を単独で用いることもできるし、2種類以上を混合して用いることもできる。
【0045】
(A)成分のエポキシ化合物の含有割合は、組成物全体を基準として、20〜80重量%の範囲とする。この範囲とすることで、光照射直後の接着力、最終的な接着力、及び耐久性を良好にすることができる。又、(A)成分の含有割合を35〜75重量%の範囲とすることにより、接着力をより良好にすることができる。
【0046】
〈ポリ(メタ)アクリレート(B)〉
本発明の光硬化性接着剤において、(B)成分となるポリ(メタ)アクリレートは、炭素数2〜15個を有するポリオール(但し、アルキレンオキサイド単位の繰返し数3以上のポリエーテルポリオールを除く)のポリ(メタ)アクリレートである。
【0047】
分子内の(メタ)アクリロイル基の数が1である(メタ)アクリレートは、冷熱サイクル耐性等の耐久性が不足し易くなる。又、炭素数2〜15個を有するポリオールであっても、アルキレンオキサイド単位の繰返し数3以上のポリエーテルポリオールから得られる(メタ)アクリレートは、冷熱サイクル耐性等の耐久性が不足し易くなる。
【0048】
(B)成分を使用することにより、組成物の粘度を下げつつ、偏光子への接着性及び耐久性が優れたものになる。ここで、(B)成分としては、炭素数5〜10個を有するジオール(但し、アルキレンオキサイド単位の繰返し数3以上のポリエーテルジオールを除く)のジ(メタ)アクリレートが、低粘度、接着力、耐久性の点でより好ましい。又、(メタ)アクリレートとしてはアクリレートが、硬化性の点で好ましい。
【0049】
(B)成分の具体例としては、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、
1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメチロールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ又はテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ又はヘキサ(メタ)アクリレート、及び水素添加ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
(B)成分はエステル骨格やイソシアヌレート骨格を有しても良い。エステル骨格を有する化合物の具体例としては、ネオペンチルグリコールとヒドロキシピバリン酸と(メタ)アクリル酸のエステル化反応生成物などが挙げられ、イソシアヌレート骨格を有する化合物の例としては、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド付加物のジ又はトリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0050】
これらのうち、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート及びネオペンチルグリコールとヒドロキシピバリン酸と(メタ)アクリル酸のエステル化反応生成物は、低粘度化、接着性及び耐久性に優れ、低臭気である点で特に好ましい。
【0051】
(B)成分の含有割合は、組成物全体を基準として、10〜55重量%の範囲とする。この割合とすることで、光照射直後の接着力、最終的な接着力、及び耐久性を良好にすることができる。又、(B)成分の含有割合を10〜35重量%の範囲とすることにより、接着力をより良好にすることができる。
【0052】
〈光カチオン重合開始剤(C)〉
本発明の光硬化性接着剤は、硬化成分として以上説明したエポキシ化合物(A)、オキセタン化合物(D)及び必要に応じて後記するオキセタン化合物を含有し、これらはいずれもカチオン重合により硬化するものであることから、(C)成分として光カチオン重合開始剤が配合される。この光カチオン重合開始剤は、可視光線、紫外線、X線、電子線等の活性エネルギー線の照射によって、カチオン種又はルイス酸を発生し、エポキシ基やオキセタニル基の重合反応を開始する。
【0053】
(C)成分として光カチオン重合開始剤を配合することにより、常温での硬化が可能となり、偏光子の耐熱性や膨張又は収縮による歪を考慮する必要が減少し、保護膜を良好に接着することができる。又、光カチオン重合開始剤は活性エネルギー線の照射で触媒的に作用するため、エポキシ化合物(A)及びオキセタン化合物(D)に混合しても、保存安定性や作業性に優れる。活性エネルギー線の照射によりカチオン種やルイス酸を生じる化合物として、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩や芳香族スルホニウム塩のようなオニウム塩、鉄−アレン錯体などを挙げることができる。
【0054】
芳香族ジアゾニウム塩としては、例えば、次のような化合物が挙げられる。
ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロホスフェート、
ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロボレートなど。
【0055】
芳香族ヨードニウム塩としては、例えば、次のような化合物が挙げられる。
ジフェニルヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、
ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
ジ(4−ノニルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロホスフェートなど。
【0056】
芳香族スルホニウム塩としては、例えば、次のような化合物が挙げられる。
トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、
トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
トリフェニルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
4,4′−ビス(ジフェニルスルホニオ)ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、
4,4′−ビス〔ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロアンチモネート、
4,4′−ビス〔ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、
7−〔ジ(p−トルイル)スルホニオ〕−2−イソプロピルチオキサントン ヘキサフルオロアンチモネート、
7−〔ジ(p−トルイル)スルホニオ〕−2−イソプロピルチオキサントン テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
4−フェニルカルボニル−4′−ジフェニルスルホニオ−ジフェニルスルフィド ヘキサフルオロホスフェート、
4−(p−tert−ブチルフェニルカルボニル)−4′−ジフェニルスルホニオ−ジフェニルスルフィド ヘキサフルオロアンチモネート、
4−(p−tert−ブチルフェニルカルボニル)−4′−ジ(p−トルイル)スルホニオ−ジフェニルスルフィド テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなど。
【0057】
鉄−アレン錯体としては、例えば、次のような化合物が挙げられる。
キシレン−シクロペンタジエニル鉄(II)ヘキサフルオロアンチモネート、
クメン−シクロペンタジエニル鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート、
キシレン−シクロペンタジエニル鉄(II)−トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メタナイドなど。
【0058】
これらの光カチオン重合開始剤は、それぞれ1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。これらのなかでも特に芳香族スルホニウム塩は、300nm以上の波長領域でも紫外線吸収特性を有することから、硬化性に優れ、良好な機械強度や接着強度を有する硬化物を与えることができるため、好ましく用いられる。
【0059】
(C)成分は、市販品を容易に入手することが可能であり、例えば、それぞれ商品名で、“カヤラッドPCI−220”、“カヤラッドPCI−620”(以上、日本化薬(株)製)、“UVI−6992”(ダウ・ケミカル社製)、“アデカオプトマーSP−150”、“アデカオプトマーSP−160”(以上、(株)ADEKA製)、“CI−5102”、“CIT−1370”、“CIT−1682”、“CIP−1866S”、“CIP−2048S”、“CIP−2064S”(以上、日本曹達(株)製)、“DPI−101”、“DPI−102”、“DPI−103”、“DPI−105”、“MPI−103”、“MPI−105”、“BBI−101”、“BBI−102”、“BBI−103”、“BBI−105”、“TPS−101”、“TPS−102”、“TPS−103”、“TPS−105”、“MDS−103”、“MDS−105”、“DTS−102”、“DTS−103”(以上、みどり化学(株)製)、“PI−2074”(ローディア社製)、“イルガキュア250”、“イルガキュアPAG103”、“イルガキュアPAG108”、“イルガキュアPAG121”、“イルガキュアPAG203”(以上、BASF社製)、“CPI−100P”、“CPI−101A”、“CPI−210S”、“CPI−110P”(以上、サンアプロ(株)製)などを挙げることができる。特に、サンアプロ(株)製の“CPI−100P”及び“CPI−110P”は、硬化性と接着性の点で、特に好ましい。
【0060】
(C)成分の含有割合は、組成物全体を基準として、0.5〜10重量%の範囲とする。その割合が0.5重量%を下回ると、接着剤の硬化が不十分になり、機械強度や接着強度が低下し、一方でその割合が10重量%を越えると、硬化物中のイオン性物質が増加することで硬化物の吸湿性が高くなり、耐久性能が低下することがあるので、好ましくない。又、(C)成分の含有割合としては、1〜5重量%が好ましく、この範囲とすることにより、透明性等の光学特性や耐久性能をより良好にすることができる。
【0061】
〈オキセタン化合物(D)〉
本発明の光硬化性接着剤において、(D)成分として下記式(2)に示すオキセタン化合物を配合する。(D)成分を含むことにより、光照射後の接着力発現速度を向上させることができる。又、塗工環境の相対湿度が約45%のときの最終的な接着力を向上させることができる。さらに、変動し得る塗工環境の相対湿度において、(D)成分を含むことにより、塗工環境の相対湿度が多少変動しても接着力を発現させることができる。
【0062】
【化7】

【0063】
(D)成分の含有割合としては、組成物全体を基準として、1〜25重量%とする必要があり、好ましくは1〜18重量%である。(D)成分を1〜25重量%の割合で含有することにより、光照射後の接着力発現速度と、塗工環境の相対湿度が約45%のときの最終的な接着力を向上させることができる。又、好ましくは18重量%以下で含有することにより、塗工環境の相対湿度が約65%になっても最終的な接着力を悪化させることなく、塗工環境の相対湿度が約45%のときの最終的な接着力と、両湿度条件での接着力発現速度を向上させることができる。(D)成分の含有割合としては、1〜12重量%がより好ましい。
【0064】
〈オキセタン化合物(E)〉
本発明の光硬化性接着剤において、(E)成分として下記式(3)に示すオキセタン化合物を配合することができる。(E)成分を含むことにより、光照射後の接着力発現速度や最終的な接着力をさらに向上させることができる。
【0065】
【化8】

【0066】
(E)成分の含有割合は、1〜18重量%とすることが好ましい。この範囲とすることにより、光照射後の接着力発現速度や最終的な接着力をさらに向上させることができる。(E)成分の含有割合としては、1〜12重量%がさらに好ましい。
【0067】
〈光ラジカル重合開始剤(F)〉
本発明の光硬化性接着剤に含まれる(B)成分等のラジカル硬化性成分は、(C)成分が光で分解する際に発生するラジカルで硬化させることが可能であるが、少ない照射量で十分な反応率を得るために、(F)成分として光ラジカル重合開始剤を配合することが好ましい。(F)成分の配合割合は、組成物全体を基準として10重量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1〜3重量%である。配合量が10重量%以上であると、耐久性の低下を引き起こすことがあるため好ましくない。
【0068】
(F)成分の具体例として、例えば、次のような化合物を挙げることができる。
【0069】
4′−フェノキシ−2,2−ジクロロアセトフェノン、4′−tert−ブチル−2,2−ジクロロアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシル フェニル ケトン、α,α−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、及び2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オンの如き、アセトフェノン系光重合開始剤;
ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、及びベンゾインイソブチルエーテルの如き、ベンゾインエーテル系光重合開始剤;
ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4′−メチルジフェニルサルファイド、及び2,4,6−トリメチルベンゾフェノンの如き、ベンゾフェノン系光重合開始剤;
2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、及び1−クロロ−4−プロポキシチオキサントンの如き、チオキサントン系光重合開始剤;
2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、及びビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドの如き、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤;
1,2−オクタンジオン,1−〔4−(フェニルチオフェニル)〕−,2−(O−ベンゾイルオキシム)の如き、オキシム・エステル系光重合開始剤;
カンファーキノンなど。
【0070】
(F)成分は、1種類を単独で、又は2種類以上を所望の性能に応じて配合し、用いることができる。
(F)成分の光ラジカル重合開始剤を配合する場合、その含有割合は、組成物全体を基準として、好ましくは10重量%以下、より好ましくは0.1〜3重量%である。光ラジカル重合開始剤(F)の含有割合が10重量%より多くなりすぎると、十分な強度が得られないことがあり、又その量が不足すると、接着剤が十分に硬化しないことがある。
【0071】
〈レベリング剤(G)〉
本発明の光硬化型接着剤において、平滑性に優れた塗布面を得る目的で、(G)成分のレベリング剤を含有することが好ましい。
(G)成分としては、シリコーン系レベリング剤及び、フッ素系レベリング剤等が挙げられ、市販されている各種レベリング剤を使用することができる。
【0072】
(G)成分の好ましい含有割合は、組成物全体を基準として、0.01〜0.5重量%である。添加部数が0.01部より少ない場合はレベリング剤の添加効果が小さく、逆に0.5部より多い場合は接着性が低下することがある。
【0073】
〈その他の硬化性成分〉
本発明の光硬化型接着剤は、上述した(A)〜(G)成分の他に、その他のカチオン硬化性成分やラジカル硬化性成分を含有していてもよい。
【0074】
(A)成分、(D)成分及び(E)成分以外のカチオン硬化性成分としては、種々のエポキシ化合物やオキセタン化合物、及びビニルエーテル化合物が挙げられる。
【0075】
(A)成分以外のエポキシ化合物の具体例としては、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、末端カルボン酸ポリブタジエンとビスフェノールA型エポキシ樹脂の付加反応物、ジシクロペンタジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、4−ビニルシクロヘキセンジオキサイド、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、エポキシ化植物油、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、両末端水酸基のポリブタジエンジグリシジルエーテル、ポリブタジエンの内部エポキシ化物、スチレン−ブタジエン共重合体の二重結合が一部エポキシ化された化合物〔例えば、ダイセル化学工業(株)製の“エポフレンド”〕、及びエチレン−ブチレン共重合体とポリイソプレンのブロックコポリマーのイソプレン単位が一部エポキシ化された化合物(例えば、KRATON社製の“L−207”)などが挙げられる。
【0076】
(D)成分及び(E)成分以外のオキセタン化合物の具体例としては、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタンの如き、アルコキシアルキル基含有単官能オキセタン、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタンの如き、芳香族基含有単官能オキセタン、1,4−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシメチル〕ベンゼン、1,4−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕ベンゼン、1,3−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕ベンゼン、1,2−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕ベンゼン、4,4′−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕ビフェニル、2,2′−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕ビフェニル、3,3′,5,5′−テトラメチル−4,4′−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕ビフェニル、2,7−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕ナフタレン、ビス〔4−{(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ}フェニル〕メタン、ビス〔2−{(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ}フェニル〕メタン、2,2−ビス〔4−{(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ}フェニル〕プロパン、ノボラック型フェノール−ホルムアルデヒド樹脂の3−クロロメチル−3−エチルオキセタンによるエーテル化変性物、3(4),8(9)−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシメチル〕−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、2,3−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシメチル〕ノルボルナン、1,1,1−トリス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシメチル〕プロパン、1−ブトキシ−2,2−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシメチル〕ブタン、1,2−ビス〔{2−(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ}エチルチオ〕エタン、ビス〔{4−(3−エチルオキセタン−3−イル)メチルチオ}フェニル〕スルフィド、1,6−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕−2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロヘキサン、3−〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕プロピルトリメトキシシラン、3−〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕プロピルトリエトキシシラン、3−〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕プロピルトリアルコキシシランの加水分解縮合物、テトラキス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル〕シリケート、3−エチルオキセタン−3−イルメタノールとシランテトラオール重縮合物の縮合反応生成物などが挙げられる。
【0077】
ビニルエーテル化合物の具体例としては、シクロヘキシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテルなどが挙げられる。
【0078】
(A)成分、(D)成分及び(E)成分以外のカチオン硬化性成分の含有割合は、組成物全体を基準として、20重量%未満であることが好ましく、より好ましくは10重量%未満、特に好ましくは5重量%未満である。
【0079】
(B)成分以外のラジカル硬化性成分としては、種々の化合物が挙げられ、例えば(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、マレイミド類、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、(メタ)アクリルアルデヒド、(メタ)アクリロイルモルホリン、N−ビニル−2−ピロリドン、トリアリルイソシアヌレート、アジピン酸ジビニル、ビニルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0080】
分子内に1個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート類の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメチロールモノ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノールアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、p−クミルフェノールアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、o−フェニルフェノールアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、ノニルフェノールアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルアルコールのアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、(2−エチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチル(メタ)アクリレート、(2−イソブチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチル(メタ)アクリレート、(1,4−ジオキサスピロ[4,5]デカン−2−イル)メチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、アリル(メタ)アクリレート、N−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、N−(メタ)アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタルイミド、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0081】
又、分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(B)成分以外の(メタ)アクリレート類の具体例としては、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、炭素数16以上のウレタン(メタ)アクリレート、炭素数16以上のポリエステル(メタ)アクリレート及び炭素数16以上のエポキシ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0082】
(メタ)アクリルアミド類の具体例としては、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−(3−N,N−ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアリル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0083】
マレイミド類の具体例としては、N−メチルマレイミド、N−ヒドロキシエチルマレイミド、N−ヒドロキシエチルシトラコンイミド、N−ヒドロキシエチルシトラコンイミドとイソホロンジイソシアネートのウレタン化反応物などが挙げられる。
【0084】
(B)成分以外のラジカル硬化性成分の含有割合は、組成物全体を基準として、20重量%未満であることが好ましい。
【0085】
〈硬化性を有さないその他の成分〉
さらに、本発明の光硬化型接着剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、硬化性を有さないその他の成分を任意に配合することができ、具体的には、光増感剤、熱カチオン重合開始剤、ポリオール化合物、水などが挙げられる。
【0086】
光増感剤の具体例としては、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−イソプロピルチオキサントン、9,10−ジブトキシアントラセンなどが挙げられる。これらの中には、前記(F)成分の光ラジカル重合開始剤に該当する化合物もあるが、ここでいう光増感剤は、(C)成分の光カチオン重合開始剤に対する増感剤として機能するものである。これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0087】
光増感剤の含有割合は、組成物全体を基準として、3重量%未満であることが好ましい。
【0088】
熱カチオン重合開始剤の具体例としては、ベンジルスルホニウム塩、チオフェニウム塩、チオラニウム塩、ベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、ヒドラジニウム塩、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル、アミンイミドなどを挙げることができる。これらの開始剤は、市販品を容易に入手することが可能であり、例えば、いずれも商品名で示して、“アデカオプトンCP77”及び“アデカオプトンCP66”(以上、(株)ADEKA製)、“CI−2639”及び“CI−2624”(以上、日本曹達(株)製)、“サンエイドSI−60L”、“サンエイドSI−80L”及び“サンエイドSI−100L”(以上、三新化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0089】
熱カチオン重合開始剤の含有割合は、組成物全体を基準として、3重量%未満であることが好ましい。
【0090】
ポリオール化合物の具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエーテルポリオール化合物、ポリエステルポリオール化合物、ポリカプロラクトンポリオール化合物、ポリカーボネートポリオール化合物などを挙げることができる。
【0091】
ポリオール化合物の配合割合は、組成物全体を基準として、10重量%未満であることが好ましい。
【0092】
本発明の光硬化型接着剤の粘度は、偏光板の製造工程で使用可能な塗布性、すなわち薄膜でも平滑性に優れた塗布面を得るために、25℃に於ける粘度が150mPa・s以下であることが好ましく、100mPa・s以下であることがより好ましい。さらに好ましくは、50mPa・s以下である。
【0093】
本発明の光硬化型接着剤には、乾燥度の高い偏光子への接着力を良好にするために、少量の水を添加しても良い。この場合、水の添加量は、組成物全体を基準として、3重量%未満であることが好ましく、1重量%未満であることがより好ましい。
【0094】
これらの他にも、本発明の効果を損なわない限り、イオントラップ剤、酸化防止剤、光安定剤、連鎖移動剤、粘着付与剤、熱可塑性樹脂、金属酸化物微粒子、消泡剤、色素、有機溶剤などを配合することもできる。
【0095】
[偏光板]
以上説明した光硬化性接着剤は、一軸延伸され、二色性色素が吸着配向されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子に保護膜を接着するために用いられ、こうして偏光子に保護膜が貼合されて偏光板となる。すなわち本発明に係る偏光板は、一軸延伸され、二色性色素が吸着配向されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子に、保護膜を貼合したものである。保護膜は、偏光子の片面にだけ貼合してもよいし、偏光子の両面に貼合してもよい。偏光子の両面に保護膜を貼合する場合、それぞれの保護膜は、同じ種類の樹脂からなるものであってもよいし、異なる種類の樹脂からなるものであってもよい。
【0096】
〈偏光子〉
偏光子を構成するポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂として、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニル及びこれと共重合可能な他のモノマーの共重合体などが例示される。酢酸ビニルに共重合される他のモノマーとしては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類などが挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85〜100モル%、好ましくは98〜100モル%の範囲である。このポリビニルアルコール系樹脂は、さらに変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタールなども使用し得る。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1,000〜10,000、好ましくは1,500〜10,000の範囲である。
【0097】
偏光板は、このようなポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色して、その二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、ホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程、及びこれらの工程が施されて二色性色素が吸着配向された一軸延伸ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに保護膜を貼合する工程を経て、製造される。
【0098】
一軸延伸は、二色性色素による染色の前に行ってもよいし、二色性色素による染色と同時に行ってもよいし、二色性色素による染色の後に行ってもよい。一軸延伸を二色性色素による染色後に行う場合、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前に行ってもよいし、ホウ酸処理中に行ってもよい。又もちろん、これらの複数の段階で一軸延伸を行うことも可能である。一軸延伸するには、周速の異なるロール間で一軸に延伸してもよいし、熱ロールを用いて一軸に延伸してもよい。又、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、溶剤により膨潤した状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。延伸倍率は、通常4〜8倍程度である。
【0099】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色するには、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、二色性色素を含有する水溶液に浸漬すればよい。二色性色素として、具体的にはヨウ素又は二色性染料が用いられる。
【0100】
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は通常、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液におけるヨウ素の含有量は通常、水100重量部あたり0.01〜0.5重量部程度であり、ヨウ化カリウムの含有量は通常、水100重量部あたり0.5〜10重量部程度である。この水溶液の温度は、通常20〜40℃程度であり、又、この水溶液への浸漬時間は、通常30〜300秒程度である。
【0101】
一方、二色性色素として二色性染料を用いる場合は通常、水溶性二色性染料を含む水溶液にポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液における二色性染料の含有量は通常、水100重量部あたり1×10-3〜1×10-2重量部程度である。この水溶液は、硫酸ナトリウムなどの無機塩を含有していてもよい。この水溶液の温度は、通常20〜80℃程度であり、又、この水溶液への浸漬時間は、通常30〜300秒程度である。
【0102】
二色性色素による染色後のホウ酸処理は、染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液に浸漬することにより行われる。ホウ酸水溶液におけるホウ酸の含有量は通常、水100重量部あたり2〜15重量部程度、好ましくは5〜12重量部程度である。二色性色素としてヨウ素を用いる場合、このホウ酸水溶液はヨウ化カリウムを含有するのが好ましい。ホウ酸水溶液におけるヨウ化カリウムの含有量は通常、水100重量部あたり2〜20重量部程度、好ましくは5〜15重量部である。ホウ酸水溶液への浸漬時間は、通常100〜1,200秒程度、好ましくは150〜600秒程度、さらに好ましくは200〜400秒程度である。ホウ酸水溶液の温度は、通常50℃以上であり、好ましくは50〜85℃である。
【0103】
ホウ酸処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムは通常、水洗処理される。水洗処理は、例えば、ホウ酸処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬することにより行われる。水洗後は乾燥処理が施されて、偏光子が得られる。水洗処理における水の温度は、通常5〜40℃程度であり、浸漬時間は、通常2〜120秒程度である。その後に行われる乾燥処理は通常、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターを用いて行われる。乾燥温度は、通常40〜100℃である。乾燥処理における処理時間は、通常120〜600秒程度である。
【0104】
こうして、二色性色素であるヨウ素又は二色性染料が吸着配向されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子が得られる。
【0105】
〈保護膜〉
次いで、この偏光子は、先に説明した光硬化性接着剤を用いて、その片面又は両面に保護膜が貼合される。偏光子の保護膜として従来から広く採用されているトリアセチルセルロースフィルムは、概ね400g/m2/24hr程度の透湿度を有するが、本発明では、偏光子の少なくとも一方の面に貼合される保護膜として、かかるトリアセチルセルロースよりも低い透湿度を示す樹脂であって、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂又は非晶性ポリオレフィン系樹脂が採用される。
【0106】
保護膜に用いられるポリエステル樹脂の種類は特に限定されるものでないが、機械的性質、耐溶剤性、耐スクラッチ性、コストなどの面で、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。ポリエチレンテレフタレートとは、繰返し単位の80モル%以上がエチレンテレフタレートで構成される樹脂を意味し、他の共重合成分に由来する構成単位を含んでいてもよい。他の共重合成分としては、イソフタル酸、p−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸、4,4′−ジカルボキシジフェニル、4,4′−ジカルボキシベンゾフェノン、ビス(4−カルボキシフェニル)エタン、アジピン酸、セバシン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、及び1,4−ジカルボキシシクロヘキサンの如き、ジカルボン酸成分;プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリテトラメチレングリコールの如き、ジオール成分が挙げられる。これらのジカルボン酸成分やジオール成分は、必要に応じてそれぞれ2種類以上を組み合わせて用いることもできる。又、上記ジカルボン酸成分やジオール成分とともに、p−ヒドロキシ安息香酸の如き、ヒドロキシカルボン酸を併用することも可能である。他の共重合成分として、アミド結合、ウレタン結合、エーテル結合、カーボネート結合等を有するジカルボン酸成分及び/又はジオール成分が少量用いられてもよい。
【0107】
ポリエステル樹脂の製造法としては、テレフタル酸とエチレングリコール(さらには必要に応じて他のジカルボン酸及び/又は他のジオール)を直接反応させる、いわゆる直接重合法、テレフタル酸のジメチルエステルとエチレングリコール(さらには必要に応じて他のジカルボン酸のジメチルエステル及び/又は他のジオール)とをエステル交換反応させる、いわゆるエステル交換反応法など、任意の方法を採用することができる。又、ポリエステル樹脂は、必要に応じて公知の添加剤を含有していてもよい。含有し得る添加剤としては、例えば、滑剤、ブロッキング防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、耐光剤、耐衝撃性改良剤などを挙げることができる。ただし、偏光フィルムに積層される保護フィルムとして透明性が必要とされるため、これら添加剤の量は最小限にとどめておくことが好ましい。
【0108】
上記原料樹脂をフィルム状に成形し、一軸延伸又は二軸延伸処理を施すことにより、延伸されたポリエステル樹脂からなる保護フィルムを作製することができる。延伸処理を施すことにより、機械的強度の高いフィルムを得ることができる。延伸されたポリエステル樹脂フィルムの作製方法は任意であり、特に限定されるものではないが、上記原料樹脂を溶融し、シート状に押出成形された無配向フィルムを、ガラス転移温度以上の温度においてテンターで横延伸後、熱固定処理を施す方法を挙げることができる。
【0109】
保護膜としてポリエステル樹脂を使用する場合、良好な接着性を得るために、接着剤を塗布する前にコロナ処理を実施するか、或いは表面易接着処理層を有するポリエステル樹脂フィルムを使用することが好ましい。
【0110】
保護膜に用いられるポリカーボネート樹脂は、炭酸とグリコール又はビスフェノールから形成されるポリエステルである。なかでも、分子鎖にジフェニルアルカンを有する芳香族ポリカーボネートは、耐熱性、耐候性及び耐酸性に優れているため、好ましく使用される。このようなポリカーボネートとして、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(別名ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)イソブタン、又は1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンの如き、ビスフェノール類から誘導されるポリカーボネートが例示される。
【0111】
ポリカーボネート樹脂フィルムの製造法としては、流延製膜法、溶融押出法など、いずれの方法を用いてもよい。具体的な製造法の例として、ポリカーボネート樹脂を適当な有機溶剤に溶解してポリカーボネート樹脂溶液とし、これを金属支持体上に流延してウェブを形成し、そのウェブを前記金属支持体から剥ぎ取った後、剥ぎ取られたウェブを熱風乾燥してフィルムを得る方法を挙げることができる。
【0112】
保護膜に用いられるアクリル樹脂も特に限定されないが、一般にはメタクリル酸エステルを主たるモノマーとする重合体であり、これに少量の他のコモノマー成分が共重合されている共重合体であることが好ましい。アクリル樹脂の主成分となるメタクリル酸エステルは、通常アルキルメタクリレートであり、特にメチルメタクリレートが好ましく用いられる。又コモノマー成分としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチル−ヘキシルアクリレートなどが一般に使用される。さらに、スチレンの如き、芳香族ビニル化合物や、アクリロニトリルの如き、ビニルシアン化合物などをコモノマー成分とすることもある。
【0113】
アクリル樹脂の製造法としては、通常の塊状重合、懸濁重合、乳化重合など、任意の方法を採用することができる。これらのなかでも特に、重合系内に水溶性成分が存在しない塊状重合が好ましく採用される。又、好適なガラス転移温度を得るため、又は好適なフィルムへの成形性を示す粘度を得るために、重合時に連鎖移動剤を使用することが好ましい。連鎖移動剤の量は、モノマーの種類及び組成に応じて適宜決定すればよい。又、アクリル樹脂は、必要に応じて公知の添加剤を含有していてもよい。公知の添加剤として例えば、滑剤、ブロッキング防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、耐光剤、耐衝撃性改良剤、界面活性剤などを挙げることができる。ただし、偏光フィルムに積層される保護フィルムとして透明性が必要とされるため、これら添加剤の量は最小限にとどめておくことが好ましい。
【0114】
アクリル樹脂フィルムの製造方法としては、溶融流延法、Tダイ法やインフレーション法のような溶融押出法、カレンダー法など、いずれの方法を用いてもよい。なかでも、原料樹脂を、例えばTダイから溶融押出し、得られるフィルム状物の少なくとも片面をロール又はベルトに接触させて製膜する方法は、表面性状の良好なフィルムが得られる点で好ましい。
【0115】
アクリル樹脂は、フィルムへの製膜性やフィルムの耐衝撃性などの観点から、衝撃性改良剤であるアクリル系ゴム粒子を含有していてもよい。ここでいうアクリル系ゴム粒子とは、アクリル酸エステルを主体とする弾性重合体を必須成分とする粒子であり、実質的にこの弾性重合体のみからなる単層構造のものや、この弾性重合体を1つの層とする多層構造のものが挙げられる。かかる弾性重合体の例として、アルキルアクリレートを主成分とし、これに共重合可能な他のビニルモノマー及び架橋性モノマーを共重合させた架橋弾性共重合体が挙げられる。弾性重合体の主成分となるアルキルアクリレートとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルへキシルアクリレートなど、アルキル基の炭素数が1〜8程度のものが挙げられ、特に炭素数4以上のアルキル基を有するアクリレートが好ましく用いられる。このアルキルアクリレートに共重合可能な他のビニルモノマーとしては、分子内に重合性炭素−炭素二重結合を1個有する化合物を挙げることができ、より具体的には、メチルメタクリレートの如き、メタクリル酸エステル、スチレンの如き、芳香族ビニル化合物、アクリロニトリルの如き、ビニルシアン化合物などが挙げられる。又、架橋性モノマーとしては、分子内に重合性炭素−炭素二重結合を少なくとも2個有する架橋性の化合物を挙げることができ、より具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート及びブタンジオールジ(メタ)アクリレートの如き、多価アルコールの(メタ)アクリレート類、アリル(メタ)アクリレートの如き、(メタ)アクリル酸のアルケニルエステル、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。
【0116】
さらに、ゴム粒子を含まないアクリル樹脂からなるフィルムと、ゴム粒子を含むアクリル樹脂からなるフィルムとの積層物を、保護膜とすることもできる。
【0117】
保護膜としてアクリル樹脂を使用する場合、本発明の組成物を使用するとコロナ処理なしでも良好な接着性を得ることが可能であるが、接着剤の塗布性を良好にしたり、接着性をより良好にしたりする目的で、接着剤を塗布する前にコロナ処理を実施してもよい。
【0118】
保護膜に用いられる非晶性ポリオレフィン系樹脂は、通常、ノルボルネンやその誘導体、ジメタノオクタヒドロナフタレンのような、多環式の環状オレフィンから導かれる重合単位を有するものであり、開環重合体のように二重結合が残っている場合は好ましくはそこに水素添加された熱可塑性の樹脂である。非晶性ポリオレフィン系樹脂は、環状オレフィンと鎖状オレフィンとの共重合体であってもよく、又、極性基が導入されていてもよい。なかでも、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂が代表的である。市販されている非晶性ポリオレフィン系樹脂の例を挙げると、JSR(株)の“アートン”、日本ゼオン(株)の“ZEONEX”及び“ZEONOR”、三井化学(株)の“APO”及び“アペル”などがある。非晶性ポリオレフィン系樹脂を製膜してフィルムとする際、製膜には、溶剤キャスト法、溶融押出法など、公知の方法が適宜に用いられる。
【0119】
保護膜として非晶性ポリオレフィン系樹脂を使用する場合、良好な接着性を得るために、接着剤を塗布する前にコロナ処理を実施することが好ましい。
【0120】
液晶表示装置の視認側に用いられる偏光板にあっては、その視認側、すなわち液晶セルと反対側に配置される保護膜には、防眩性を付与することができる。この場合は、保護膜の視認側となる表面、すなわち偏光子に貼合される面とは反対側の面に、表面凹凸を有する防眩層を設けるのが一般的である。防眩層は一般に、活性エネルギー線硬化性樹脂にエンボス法で凹凸を付与したり、活性エネルギー線硬化性樹脂にそれとは異なる屈折率を有する微粒子を配合して硬化させることにより凹凸を付与したりする方法で形成される。又保護膜をアクリル樹脂で構成する場合は、バインダーとなるアクリル樹脂中にそれとは異なる屈折率を有する微粒子が配合された光拡散層と、かかる微粒子が配合されていないアクリル樹脂からなる透明層との積層フィルムで保護膜を構成するのも有効である。この場合、上記の光拡散層と上記の透明層との2層からなる積層フィルムを、その光拡散層側で偏光子に貼合する形態や、上記の光拡散層の両面を上記の透明層で挟んだ3層構造の積層フィルムを、その一方の透明層で偏光子に貼合する形態などが採用できる。さらには、このような光拡散層を含むことで防眩性が付与されたアクリル樹脂積層フィルムを保護膜とする場合でも、その視認側となる表面、すなわち偏光子に貼合される面とは反対側の面に、上記の如き防眩層を設けて、防眩性能をより一層高めることも有効である。
【0121】
前述したとおり、特にアクリル樹脂フィルムを保護膜とする場合、先の特許文献6(特開2004−245925号公報)に示される芳香環を含まないエポキシ樹脂単体では、接着性が必ずしも十分でなかったところ、本発明の組成物は、かかるアクリル樹脂フィルムを保護膜とする場合でも良好な接着力を与える。そこで本発明は、アクリル樹脂フィルムを保護膜とする場合に特に有用である。
【0122】
本発明では、偏光子の少なくとも一方の面に、以上説明したポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂及び非晶性ポリオレフィン系樹脂から選ばれる透明樹脂フィルムからなる保護膜が、先に説明した光硬化性接着剤を介して貼合される。偏光子の片面にのみ保護膜を貼合する場合は、例えば、偏光子の他面に、液晶セルなどの他の部材に貼合するための粘着剤層を直接設けるなどの形態をとることもできる。
【0123】
一方、偏光子の両面に保護膜を貼合する場合、それぞれの保護膜は同じ種類のものであってもよいし、異なる種類のものであってもよい。具体的には例えば、偏光子の両面にポリエステル樹脂フィルムを保護膜として貼合する形態、偏光子の両面にポリカーボネート樹脂を保護膜として貼合する形態、偏光子の両面にアクリル樹脂を保護膜として貼合する形態、偏光子の両面に非晶性ポリオレフィン系樹脂を保護膜として貼合する形態、偏光子の片面に、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂及び非晶性ポリオレフィン系樹脂から選ばれるいずれかの透明樹脂フィルムを保護膜として貼合し、偏光子の他面には、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂及び非晶性ポリオレフィン系樹脂から選ばれるいずれかであって、上記片面の保護膜とは異なる透明樹脂フィルムを保護膜として貼合する形態などを採用することができる。さらに、偏光子の片面に、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂及び非晶性ポリオレフィン系樹脂から選ばれるいずれかの透明樹脂フィルムを保護膜として貼合し、偏光子の他面には、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂及び非晶性ポリオレフィン系樹脂のいずれとも異なる透明樹脂フィルムを保護膜として貼合する形態を採用することもできる。偏光子の両面に保護膜を貼合する場合、2枚の保護膜を段階的に片面ずつ貼合してもよいし、両面を一段階で貼合しても構わない。
【0124】
偏光子の両面に保護膜を貼合する場合であって、それらの一方を、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂及び非晶性ポリオレフィン系樹脂とは異なる他の樹脂フィルムとする場合、当該他の樹脂の好適な例として、セルロース系樹脂を挙げることができる。又、偏光子の一方の面に貼合されるポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂及び非晶性ポリオレフィン系樹脂からなる保護膜は、本発明に従って、先に説明した光硬化性接着剤を介して接着されるが、偏光子の他方の面に貼合される保護膜は、他の接着剤を介して接着されてもよい。例えば、偏光子の一方の面にセルロース系樹脂フィルムのような透湿度の比較的高い樹脂フィルムからなる保護膜を設ける場合、かかる透湿度の高い樹脂フィルムの貼合面には、ポリビニルアルコール系接着剤など、エポキシ系以外の接着剤を用いてもよい。ただ、本発明による光硬化性接着剤は、ここに例示するセルロース系樹脂フィルムに対しても高い接着力を与えるので、偏光子の両面で同じ接着剤を用いるほうが、操作が簡単になるので有利である。
【0125】
一方の保護膜として用いられうるセルロース系樹脂は、セルロースの部分又は完全エステル化物であって、例えば、セルロースの酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、それらの混合エステルなどを挙げることができる。具体的には、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどが挙げられる。このようなセルロースエステル系樹脂からなるフィルムの市販品の例を挙げると、富士フイルム(株)製の“フジタックTD80”、“フジタックTD80UF”及び“フジタックTD80UZ”、コニカミノルタオプト(株)製の“KC8UX2M”及び“KC8UY”などがある。又、光学補償機能が付与されたセルロース系樹脂フィルムを用いることもできる。かかる光学補償フィルムとして例えば、セルロース系樹脂に位相差調整機能を有する化合物を含有させたフィルム、セルロース系樹脂フィルムの表面に位相差調整機能を有する化合物が塗布されたもの、セルロース系樹脂フィルムを一軸又は二軸に延伸して得られるフィルムなどが挙げられる。市販されているセルロース系の光学補償フィルムの例を挙げると、富士フイルム(株)製の“ワイドビューフィルム WV BZ 438”及び“ワイドビューフィルム WV EA”、コニカミノルタオプト(株)社製の“KC4FR−1”及び“KC4HR−1”などがある。
【0126】
ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂及び非晶性ポリオレフィン系樹脂とは異なる他の樹脂であって、一方の保護膜として用いられうる透湿度の低い透明樹脂の例として、ポリサルホン樹脂、脂環式ポリイミド樹脂などが挙げられる。
【0127】
保護膜は、偏光子への貼合に先立って、貼合面に、ケン化処理、コロナ処理、プライマ処理、アンカーコーティング処理などの易接着処理が施されてもよい。又、保護膜の偏光子への貼合面と反対側の表面には、ハードコート層、反射防止層、防眩層などの各種処理層を有していてもよい。保護膜の厚みは、通常5〜200μm程度の範囲であり、好ましくは10〜120μm、さらに好ましくは10〜85μmである。
【0128】
[偏光板の製造方法]
本発明の偏光板は、先に説明した偏光子と、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂及び非晶性ポリオレフィン系樹脂から選ばれる透明樹脂フィルムからなる保護膜との貼合面のうち少なくとも一方に、先に説明した光硬化性接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、得られる接着剤層を介して偏光子と保護膜とを貼合する貼合工程と、この接着剤層を介して偏光子と保護膜とが貼合された状態で光硬化性接着剤を硬化させる硬化工程とを包含する方法によって製造することができる。
【0129】
〈接着剤塗布工程〉
接着剤塗布工程では、偏光子と保護膜との貼合面のうち少なくとも一方に、先に説明した光硬化性接着剤が塗布される。偏光子又は保護膜の表面に直接光硬化性接着剤を塗布する場合、その塗布方法に特別な限定はない。例えば、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、カンマコーター、グラビアコーターなど、種々の塗工方式が利用できる。又、偏光子と保護膜の間に先に説明した光硬化性接着剤を流延させたのち、ロール等で加圧して均一に押し広げる方法も利用できる。
接着剤塗布工程の雰囲気温度は、15〜30℃であることが好ましく、20〜25℃であることが特に好ましい。また、塗布雰囲気の相対湿度は、80%以下であることが好ましく、より好ましくは70%以下、さらに好ましくは30〜70%、特に好ましくは40〜60%である。
【0130】
〈貼合工程〉
こうして光硬化性接着剤を塗布した後は、貼合工程に供される。この貼合工程では、例えば、先の塗布工程で偏光子の表面に光硬化性接着剤を塗布した場合は、そこに保護膜が重ね合わされ、先の塗布工程で保護膜の表面に光硬化性接着剤を塗布した場合は、そこに偏光子が重ね合わされる。又、偏光子と保護膜の間に光硬化性接着剤を流延させた場合は、その状態で偏光子と保護膜が重ね合わされる。偏光子の両面に保護膜を貼合する場合であって、両面とも本発明の光硬化性接着剤を用いる場合は、偏光子の両面にそれぞれ、光硬化性接着剤を介して保護膜が重ね合わされる。そして通常は、この状態で両面(偏光子の片面に保護膜を重ね合わせた場合は、偏光子側と保護膜側、又偏光子の両面に保護膜を重ね合わせた場合は、その両面の保護膜側)からロール等で挟んで加圧することになる。ここでロールの材質は、金属やゴム等を用いることが可能である。両面に配置されるロールは、同じ材質であってもよいし、異なる材質であってもよい。
【0131】
〈硬化工程〉
以上のように、未硬化の光硬化性接着剤を介して偏光子と保護膜が貼合された状態のものは、次いで硬化工程に供される。この硬化工程では、光硬化性接着剤に活性エネルギー線を照射して、エポキシ化合物、(メタ)アクリレート及びオキセタン化合物等を含む接着剤層を硬化させ、偏光子と保護膜とを接着させる。偏光子の片面に保護膜を貼合した場合、活性エネルギー線は、偏光子側、保護膜側のどちらから照射してもよい。又、偏光子の両面に保護膜を貼合する場合は、偏光子の両面にそれぞれ光硬化性接着剤を介して保護膜を貼合した状態で、どちらか一方の保護膜側から活性エネルギー線を照射し、両面の光硬化性接着剤を同時に硬化させるのが有利である。ただし、どちらか一方の保護膜に紫外線吸収剤が配合されている場合(例えば、紫外線吸収剤が配合されたセルロース系樹脂フィルムを一方の保護膜とする場合)であって、活性エネルギー線が紫外線である場合は、通常、他方の紫外線吸収剤が配合されていない保護膜側から紫外線が照射される。
【0132】
活性エネルギー線としては、可視光線、紫外線、X線、電子線などを用いることができるが、取扱いが容易で硬化速度も十分であることから、一般には紫外線が好ましく用いられる。活性エネルギー線の光源は特に限定されないが、波長400nm以下に発光分布を有する、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ、LEDランプなどを用いることができる。
【0133】
光硬化性接着剤への光照射強度は、目的とする組成物毎に決定されるものであって、やはり特に限定されないが、重合開始剤の活性化に有効な波長領域の照射強度が、UV−B(280〜320nmの中波長域紫外線)として1〜3,000mW/cm2となるようにすることが好ましい。照射強度が1mW/cm2を下回ると、反応時間が長くなりすぎ、一方でその照射強度が3,000mW/cm2を超えると、ランプから輻射される熱及び光硬化性接着剤の重合時の発熱によって、光硬化性接着剤の黄変や偏光子の劣化を生じる可能性がある。
【0134】
光硬化性接着剤への光照射時間は、硬化する組成物毎に制御されるものであって、やはり特に限定されないが、照射強度と照射時間の積で表される積算光量がUV−Bで10〜5,000mJ/cm2となるように設定されることが好ましい。積算光量が10mJ/cm2を下回ると、重合開始剤に由来する活性種の発生が十分でなく、接着剤層の硬化が不十分となる可能性があり、一方でその積算光量が5,000mJ/cm2を超えると、照射時間が非常に長くなり、生産性向上には不利なものとなる。
【0135】
活性エネルギー線を照射して光硬化性接着剤を硬化させるにあたっては、偏光子の偏光度、透過率及び色相、又保護膜の透明性といった、偏光板の諸機能が低下しない条件で硬化させることが好ましい。
【0136】
こうして得られる偏光板において、接着剤層の厚さは、通常50μm以下、好ましくは20μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。
【0137】
[光学部材]
偏光板の使用に際しては、その一方の側に、偏光機能以外の光学機能を示す光学層を積層した光学部材とすることもできる。光学部材の形成を目的に偏光板に積層する光学層には、例えば、反射層、半透過型反射層、光拡散層、位相差板、集光板、輝度向上フィルムなど、液晶表示装置等の形成に用いられる各種のものがある。前記の反射層、半透過型反射層及び光拡散層は、反射型ないし半透過型や拡散型、それらの両用型の偏光板からなる光学部材を形成する場合に用いられるものである。
【0138】
反射型の偏光板は、視認側からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置に用いられ、バックライト等の光源を省略できるため、液晶表示装置を薄型化しやすい。又半透過型の偏光板は、明所では反射型として表示し、暗所ではバックライト等の光源を用いて表示するタイプの液晶表示装置に用いられる。反射型偏光板としての光学部材は、例えば、偏光子上の保護膜にアルミニウム等の金属からなる箔や蒸着膜を付設して、反射層を形成することができる。半透過型の偏光板としての光学部材は、前記の反射層をハーフミラーとしたり、パール顔料等を含有させて光透過性を示す反射板を偏光板に接着したりすることで形成できる。一方、拡散型偏光板としての光学部材は、例えば、偏光板上の保護膜にマット処理を施す方法、微粒子含有の樹脂を塗布する方法、微粒子含有のフィルムを接着する方法など、種々の方法を用いて、表面に微細凹凸構造を形成する。
【0139】
さらに、反射拡散両用の偏光板としての光学部材の形成は、例えば、拡散型偏光板の微細凹凸構造面に、その凹凸構造が反映された反射層を設けるなどの方法により、行うことができる。微細凹凸構造の反射層は、入射光を乱反射により拡散させ、指向性やギラツキを防止し、明暗のムラを抑制しうる利点などを有する。又、微粒子を含有する樹脂層やフィルムは、入射光及びその反射光が微粒子含有層を透過する際に拡散されて、明暗ムラをより抑制しうるなどの利点も有している。表面微細凹凸構造が反映された反射層は、例えば、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等の蒸着やメッキ等の方法により、金属を微細凹凸構造の表面に直接付設することで形成できる。表面微細凹凸構造を形成するために配合する微粒子としては、例えば、平均粒径0.1〜30μmのシリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム等からなる無機系微粒子、架橋又は未架橋のポリマー等からなる有機系微粒子などが利用できる。
【0140】
他方、上記した光学層としての位相差板は、液晶セルによる位相差の補償等を目的として使用される。その例としては、各種プラスチックの延伸フィルム等からなる複屈折性フィルム、ディスコティック液晶やネマチック液晶が配向固定されたフィルム、フィルム基材上に上記の液晶層が形成されたものなどが挙げられる。この場合、配向液晶層を支持するフィルム基材として、トリアセチルセルロースなどセルロース系フィルムが好ましく用いられる。
【0141】
複屈折性フィルムを形成するプラスチックとして、例えば、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリアリレート、ポリアミド、非晶性ポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。延伸フィルムは、一軸や二軸等の適宜な方式で処理したものであってよい。又、熱収縮性フィルムとの接着下に収縮力及び/又は延伸力をかけることでフィルムの厚さ方向の屈折率を制御した複屈折性フィルムでもよい。なお、位相差板は、広帯域化など光学特性の制御を目的として、2枚以上を組み合わせて使用してもよい。
【0142】
集光板は、光路制御等を目的に用いられるもので、プリズムアレイシートやレンズアレイシート、あるいはドット付設シートなどとして、形成することができる。
【0143】
輝度向上フィルムは、液晶表示装置等における輝度の向上を目的に用いられるもので、その例としては、屈折率の異方性が互いに異なる薄膜フィルムを複数枚積層して反射率に異方性が生じるように設計された反射型直線偏光分離シート、コレステリック液晶ポリマーの配向フィルムやその配向液晶層をフィルム基材上に支持した円偏光分離シートなどが挙げられる。
【0144】
光学部材は、偏光板と、前述した反射層ないし半透過型反射層、光拡散層、位相差板、集光板、輝度向上フィルムなどから、使用目的に応じて選択される1層又は2層以上の光学層とを組み合わせ、2層又は3層以上の積層体とすることができる。その場合、光拡散層や位相差板、集光板や輝度向上フィルム等の光学層は、それぞれ2層以上を配置してもよい。なお、各光学層の配置に特に限定はない。
【0145】
光学部材を形成する各種光学層は、接着剤を用いて偏光板と一体化されるが、そのために用いる接着剤は、接着層が良好に形成されるものであれば特に限定されない。接着作業の簡便性や光学歪の発生防止などの観点から、粘着剤(感圧接着剤とも呼ばれる)を使用することが好ましい。粘着剤には、アクリル系重合体や、シリコーン系重合体、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテルなどをベースポリマーとしたものを用いることができる。なかでもアクリル系粘着剤のように、光学的な透明性に優れ、適度な濡れ性や凝集力を保持し、基材との接着性にも優れ、さらには耐候性や耐熱性などを有し、加熱や加湿の条件下で浮きや剥がれ等の剥離問題を生じないものを選択して用いることが好ましい。アクリル系粘着剤においては、メチル基やエチル基、ブチル基の如き炭素数が20以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸のアルキルエステルと、(メタ)アクリル酸やヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどからなる官能基含有アクリル系モノマーとを、ガラス転移温度が好ましくは25℃以下、さらに好ましくは0℃以下となるように配合して重合させた、重量平均分子量が10万以上のアクリル系共重合体が、ベースポリマーとして有用である。
【0146】
偏光板への粘着剤層の形成は、例えば、トルエンや酢酸エチルの如き有機溶剤に粘着剤組成物を溶解又は分散させて固形分濃度10〜40重量%の液を調製し、これを偏光板上に直接塗工して粘着剤層を形成する方式や、予めセパレートフィルム上に粘着剤層を形成しておき、それを偏光板上に移着することで粘着剤層を形成する方式などにより、行うことができる。粘着剤層の厚さは、その接着力などに応じて決定されるが、1〜50μm程度の範囲が適当である。
【0147】
又、粘着層には必要に応じて、ガラス繊維やガラスビーズ、樹脂ビーズ、金属粉やその他の無機粉末などからなる充填剤、顔料や着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などが配合されていてもよい。紫外線吸収剤には、サリチル酸エステル系化合物やベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などがある。
【0148】
[液晶表示装置]
以上のような光学部材は、液晶セルの片側又は両側に配置して、液晶表示装置とすることができる。用いる液晶セルは任意であり、例えば、薄膜トランジスタ型に代表されるアクティブマトリクス駆動型のもの、スーパーツイステッドネマチック型に代表される単純マトリクス駆動型のものなど、種々の液晶セルを使用して液晶表示装置を形成することができる。液晶セルの両側に設ける光学部材は、同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。
【実施例】
【0149】
以下に、実施例及び比較例を示して、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。例中、使用量ないし含有割合を表す%は、特記ない限り重量基準である。又、湿度の%は、23℃での相対湿度を表す。
【0150】
実施例及び比較例において、光硬化型接着剤組成物の調製に用いた各成分は次のとおりであり、以下、化合物名又はそれぞれの記号(商品名自体又はその一部)で表示する。
【0151】
(A)成分:エポキシ化合物
CEL−2021:前記式(4)に示す脂環式エポキシ化合物、ダイセル化学工業(株)製の“セロキサイド2021P”。
【0152】
(A)’成分:(A)成分以外のエポキシ化合物
jER−828:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ジャパンエポキシレジン(株)製の“jER−828”。
【0153】
(B)成分:ポリ(メタ)アクリレート化合物
HDDA:1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、共栄社化学(株)製の“ライトアクリレート1,6HX−A”。
FM−400:ネオペンチルグリコール、ヒドロキシピバリン酸並びにアクリル酸のエステル化反応生成物、日本化薬(株)製の“カヤラッドFM−400”。
M−203:トリシクロデカンジメチロールジアクリレート、東亞合成(株)製の“アロニックスM−203”。炭素数12のジオールのジアクリレート。
M−309:トリメチロールプロパントリアクリレート、東亞合成(株)製の“アロニックスM−309”。
【0154】
(B)’成分:(B)成分以外の(メタ)アクリレート化合物
M−240:ポリエチレングリコール(平均繰り返し数約4)ジアクリレート、東亞合成(株)製の“アロニックスM−240”。エーテル構造を有する平均炭素数8のジオールのジアクリレート。
HPA:2−ヒドロキシプロピルアクリレート
【0155】
(C)成分:光カチオン重合開始剤
CPI−100P:トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェートを主成分とする有効成分50%のプロピレンカーボネート溶液、サンアプロ(株)製の“CPI−100P”。表中には有効成分の部数を記載。
【0156】
(D)成分:前記式(2)に示すオキセタン化合物
OXT−101:3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、東亞合成(株)製の“アロンオキセタンOXT−101”。
【0157】
(E)成分:前記式(3)に示すオキセタン化合物
OXT−221:3−エチル−3−〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシメチル〕オキセタン、東亞合成(株)製の“アロンオキセタンOXT−221”。
【0158】
(F)成分:光ラジカル重合開始剤
Irg184: 1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニル−ケトン、BASF社製の“イルガキュア184”。
【0159】
(G)成分:レベリング剤
8019Add:東レ・ダウコーニング(株)製のシリコーン系レベリング剤“8019Additive”。
【0160】
その他の成分
プロピレンカーボネート(上記CPI−100Pから持ち込まれる溶剤)
【0161】
[光硬化型接着剤組成物の調製]
表1〜表4に示す各成分をそれぞれの割合で配合し、常法に従って攪拌混合して、光硬化性接着剤組成物を調製した。なお、前記したとおり、(C)成分として用いた“CPI−100P”は有効成分を50%含有するプロピレンカーボネート溶液であるため、表中では、(C)成分とプロピレンカーボネートを分けて表示した。すなわち、表中の“CPI−100P”の配合量は、有効成分の割合を意味し、“CPI−100P”それ自体の配合量は、(C)成分の欄に示す量とプロピレンカーボネートの欄に示す量を合わせた量である。
得られた組成物の25℃に於ける粘度は、東機産業(株)製のE型粘度計により測定した。
【0162】
[偏光板の作製]
ここでは、保護膜として次の2種類のフィルムを用いた。
延伸ノルボルネン系樹脂フィルム:厚さ70μm、商品名“ZEONORフィルム”、日本ゼオン(株)製。このフィルムにコロナ放電処理を施してから、偏光子との貼合に供した。
アクリル樹脂フィルム:厚さ80μm、商品名“テクノロイS001”、住友化学(株)製。このフィルムも、コロナ放電処理を施してから、偏光子との貼合に供した。
【0163】
上記延伸ノルボルネン系樹脂フィルムのコロナ放電処理面及びアクリル樹脂フィルムのコロナ放電処理面に、上で調製した組成物をバーコータで3μm厚に塗工した。次いで、これら2枚のフィルムの間に、ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向している偏光子を挟みこむようにして、ローラーで3枚のフィルムを同時に貼合した。こうして両面に保護膜が貼合された偏光子に、ベルトコンベア付き紫外線照射装置(ランプはアイグラフィックス(株)製高圧水銀ランプ使用)により、延伸ノルボルネン系樹脂フィルムの表面から積算光量250mJ/cm2(UV−B)で紫外線を照射し、接着剤組成物を硬化させた。
この実験を、23℃、湿度45%の条件下、及び23℃、湿度65%の条件下の2とおりで実施した。
【0164】
[評価試験]
紫外線照射後の偏光板について、以下の方法で、接着力発現速度、最終接着力及び耐久性を評価し、結果を表1〜表4にまとめた。
【0165】
〈接着力発現速度〉
紫外線照射してから3分後に、アクリル樹脂フィルムと偏光子の間を手で剥離し、その時の接着力が強いものほど、接着力発現速度に優れると評価した。接着力は、手で剥離した際の様子及び力から、以下の4水準で判定した。
◎:アクリル樹脂フィルムが材料破壊。
○:ゆっくりと注意して剥離すれば材料破壊しないが強い接着力。
△:材料破壊する強度はないが、少しの力で剥離してしまうほどの弱さでもない。
×:少しの力で剥離してしまうほど非常に弱い。
【0166】
〈最終接着力/カッター挿入試験〉
紫外線照射してから1日後に、カッターナイフの刃を、アクリル樹脂フィルムの上から斜めに挿入し、その時の様子及び力から、以下の4水準で判定した。
◎:刃が入らないか、入った場合でも強度があり、アクリル樹脂フィルムが破れた。
○:刃が入ったが抵抗力があり、アクリル樹脂フィルムが界面でスライスされた。
△:刃が入るが、界面において刃が少しの力で進行するほどの弱さでもない。
×:刃が入り、界面において刃が少しの力で進行するほど弱い。
【0167】
〈耐久性〉
23℃、湿度45%の条件下で実験し、紫外線照射してから1日以上経過した偏光板に対して、−35℃に60分置き、次に+70℃に60分置くサイクルを300回繰り返す冷熱衝撃サイクル試験を実施した。このとき、外観不良が認められなかったものを○、僅かに認められたものを△、認められたものを×と評価した。
【0168】
〈総合評価〉
上記評価を総合して、以下の6水準で評価した。
◎:×と△が1つもなく、最終接着力が少なくとも一方の条件で◎。
○A:×が1つもなく、最終接着力が一方の条件で◎となるが、△が1つある。
○B:×と△は1つもないが、最終接着力がどちらの条件でも◎とならない。
△A:×は1つもないが、最終接着力が◎とならず、△が2以上ある。
△B:湿度45%の条件では、接着力発現速度、最終接着力、および耐久性がいずれも○以上であるが、湿度65%の条件では×がある。
×:湿度45%の条件で、接着力発現速度、最終接着力、および耐久性のいずれかに×がある。
【0169】
【表1】

【0170】
【表2】

【0171】
【表3】

【0172】
【表4】

【0173】
表1及び表2に示す本発明の接着剤組成物は、総合評価が△B以上であった。
これに対して、表3及び表4に示す比較例の組成物は、総合評価が×であった。
すなわち、本発明の接着剤組成物は、偏光板の製造に適しているものであった。
【0174】
まず、表1及び表2の実施例について説明する。
(E)成分を1〜18重量%含む実施例3〜実施例5の組成物は、接着力発現速度がいずれの湿度でも◎であり、又いずれか一方の湿度における最終接着力が◎であった。すなわち、実施例3〜実施例5の組成物は、(E)成分を含まない実施例1及び実施例2の組成物に比べてより優れるものであった。実施例5の(B)成分を、炭素数5〜10のジオールのジアクリレートであるFM−400に変更した実施例8の組成物でも、実施例5と同様の結果であった。
【0175】
実施例5の組成物のHDDAの一部をHPAに置き換えた実施例7の組成物は、湿度65%での結果は実施例5より不充分となるものの、湿度45%ではとても良好であった。
又、実施例5の組成物は、(A)成分が29重量%で(B)成分が45重量%の実施例6の組成物や、(B)成分が炭素数5〜10のジオールのジ(メタ)アクリレートではない実施例9及び実施例10の組成物より、接着力発現速度や最終接着力が優れるものであった。
実施例11及び実施例12の組成物は、いずれも湿度45%で接着力の結果は良好であった。しかしながら、これらの組成物は、(D)成分の好ましい上限を超えるもので、湿度65%での接着力において、実施例11の組成物は接着力発現速度が不十分で、実施例12の組成物は、接着力発現速度と最終接着力が不十分であった。
【0176】
次に、表3及び表4の比較例について説明する。
(A)成分を(A)’成分に変更した比較例1の組成物は、最終接着力は良好であったが、接着力発現速度は不良であった。
【0177】
(A)成分と(B)成分を所定量含まない比較例2の組成物、(B)成分を含まない比較例3と比較例4の組成物、(D)成分を本発明の上限を超え含む比較例7の組成物は、いずれも接着力の評価項目はすべて不良となった。比較例7の組成物の場合、さらに耐久性にも劣るものであった。(D)成分を含まない比較例5及び比較例6の組成物は、湿度45%での接着力発現速度が不良であった。
【0178】
(B)成分を(B)’成分に代えた比較例8及び9の組成物は、いずれも、湿度45%における接着力発現速度が不十分であり、さらに湿度65%での接着力発現速度が不良であり、耐久性も不良であった。
【産業上の利用可能性】
【0179】
本発明の光硬化型接着剤組成物は、低粘度で薄膜状に塗工し易く、光照射後の偏光子と保護膜の接着力発現速度及び最終接着力に優れ、得られる偏光板の耐久性にも優れることから、偏光板の製造に好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一軸延伸され、二色性色素が吸着配向されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子に、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂及び非晶性ポリオレフィン系樹脂からなる群より選ばれる透明樹脂フィルムからなる保護膜を接着するための接着剤組成物であって、
(A)分子内に少なくとも2個の下記式(1)に示す脂環式エポキシ基を有するエポキシ化合物、
【化1】

(B)炭素数2〜15個を有するポリオール(但し、アルキレンオキサイド単位の繰返し数3以上のポリエーテルポリオールを除く)のポリ(メタ)アクリレート、
(C)光カチオン重合開始剤及び
(D)下記式(2)に示すオキセタン化合物を含有し、
【化2】

前記(A)〜(D)成分の含有割合が、組成物中に、
(A)成分:20〜80重量%
(B)成分:10〜55重量%
(C)成分:0.5〜10重量%
(D)成分:1〜25重量%
であることを特徴とする光硬化性接着剤組成物。
【請求項2】
(A)成分が下記式(4)に示すエポキシ化合物である請求項1に記載の光硬化性接着剤組成物。
【化3】

【請求項3】
(B)成分が、炭素数5〜10個を有するジオール(但し、アルキレンオキサイド単位の繰返し数3以上のポリエーテルジオールを除く)のジ(メタ)アクリレートである請求項1又は請求項2に記載の光硬化性接着剤組成物。
【請求項4】
(A)成分及び(B)成分の含有割合が、組成物中にそれぞれ35〜75重量%及び10〜35重量%である請求項1〜請求項3のいずれかに記載の光硬化性接着剤組成物。
【請求項5】
さらに、(E)成分として下記式(3)に示すオキセタン化合物を組成物中に1〜18重量%の含有割合で含む請求項1〜請求項4のいずれかに記載の光硬化性接着剤組成物。
【化4】

【請求項6】
さらに、(F)光ラジカル重合開始剤を組成物中に10重量%以下の割合で含有する請求項1〜請求項5のいずれかに記載の光硬化性接着剤組成物。
【請求項7】
さらに、(G)レベリング剤を組成物中に0.01〜0.5重量%含有する請求項1〜請求項6のいずれかに記載の光硬化性接着剤組成物。
【請求項8】
一軸延伸され、二色性色素が吸着配向されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子に、接着剤を介して、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂及び非晶性ポリオレフィン系樹脂からなる群より選ばれる透明樹脂フィルムからなる保護膜が貼合されてなる偏光板であって、前記接着剤は、請求項1〜請求項7のいずれかに記載の光硬化性接着剤組成物から形成されていることを特徴とする偏光板。
【請求項9】
一軸延伸され、二色性色素が吸着配向されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子に、接着剤を介して、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂及び非晶性ポリオレフィン系樹脂からなる群より選ばれる透明樹脂フィルムからなる保護膜を貼合し、偏光板を製造する方法であって、
前記偏光子と前記保護膜との貼合面のうち少なくとも一方に、請求項1〜請求項7のいずれかに記載の光硬化性接着剤組成物を塗布する接着剤塗布工程と、
得られる接着剤層を介して前記偏光子と前記保護膜とを貼合する貼合工程と、
前記接着剤層を介して偏光子と保護膜とが貼合された状態で前記光硬化性接着剤組成物を硬化させる硬化工程と
を包含することを特徴とする偏光板の製造方法。
【請求項10】
請求項8に記載の偏光板に他の光学層が積層されていることを特徴とする光学部材。
【請求項11】
他の光学層は、位相差板を含む請求項10に記載の光学部材。
【請求項12】
請求項10又は請求項11に記載の光学部材が、液晶セルの片側又は両側に配置されてなることを特徴とする液晶表示装置。

【公開番号】特開2012−140610(P2012−140610A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−270999(P2011−270999)
【出願日】平成23年12月12日(2011.12.12)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】