説明

光硬化性樹脂の検査装置および検査方法

【課題】微量な光硬化性樹脂を高感度かつ簡便に検出可能な光硬化性樹脂の検査装置および検査方法を提供する。
【解決手段】光硬化性樹脂の検査装置は、検査対象物における光硬化性樹脂を検査するための検査装置であって、パルス光源1と、ストリークカメラ7とを備えている。パルス光源1は、プリント配線板5にパルス状の紫外光を照射するためのものである。ストリークカメラ7は、パルス光源1から照射される紫外光のパルスの幅よりも遅れた時間に、プリント配線板5における紫外光の照射部のソルダーレジスト53の残渣から生じる蛍光を検出するためのものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性樹脂の検査装置および検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光硬化性樹脂を用いた製品としてたとえばプリント配線板がある。このプリント配線板の形成においては、たとえばガラスエポキシ樹脂基板上に、Cu(銅)めっきなどで導体配線が形成される。そして、その導体配線の内のはんだ付けするための電極端子部分以外は、はんだが付かないようにソルダレジストと呼ばれる絶縁性の光硬化性樹脂で表面を被覆される。部品実装時には、露出した電極端子部と電子部品の電極部とがはんだを用いて金属間接合される。
【0003】
一般的には、電極端子部の表面にはCuめっきやAu(金)めっきなどが施され、部品電極やリード線にはAuめっきやSn(スズ)めっきなどが施され、SnAgCuはんだなどにより電極端子部に部品電極やリード線が電気的に接合される。
【0004】
部品実装時には、はんだの融点を越える温度で所定の時間の加熱が行なわれ、上記の電気的な接合が得られる。すなわち、たとえば電極端子のCuとはんだ中のSnとが金属間化合物を形成することで、機械的な強さと電気的な接続が得られている。
【0005】
ところが、電極端子部の表面に異物が付着していると、金属間化合物の生成が阻害され、機械的な強さも電気的な接続も得ることができず、機能不良が生じてしまう。この際の異物として最も多いのが、はんだが付かないように配線部分を被覆しているソルダレジストである。
【0006】
ソルダレジストは、光硬化性樹脂、あるいは光硬化性樹脂と熱硬化性樹脂との混合物である。光硬化性樹脂を用いたソルダレジストのパターン形成としては、いわゆる写真製法によるものが一般的であり、レジストの塗布、露光、現像によって、所望のレジストパターンが得られている。この場合、はんだ付けに用いる電極端子部も含めた表面全体にレジストが一様に塗布され、露光・現像によって不要な部分のレジストが除去される。
【0007】
ところが、現像前にレジストが熱的に硬化したり、現像が不十分なため、除かれるべきレジストが電極端子部の表面に残留してしまうことがある。その場合には、上述のはんだ接合不良が生じることになるため、そのようなプリント配線板を不良品として検出する必要がある。
【0008】
プリント配線板を検査する技術は、たとえば特公昭63−19855号公報(特許文献1参照)に開示されている。この公報に記載の技術は、検査光源に紫外光または青色光を用いることを特徴とし、プリント配線板の配線パターンを検査するものである。銅で形成された配線パターン以外の部分の樹脂基材は検査光源からの光の照射により蛍光を発するため、その蛍光パターンを撮像することでパターン検査が行なわれる。
【0009】
また測定対象物へのパルスレーザ光の照射により生じた蛍光を検出する技術は、たとえば特開2006−242595号公報(特許文献2参照)に開示されている。この公報に記載の技術は、PCB(PolyChlorinated Biphenyl)などのハロゲン化物の油中の濃度を分析するために、有機ハロゲン化物を含有する油を油滴または霧状にしてパルスレーザ光を照射し、その照射により発生した蛍光を検出するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特公昭63−19855号公報
【特許文献2】特開2006−242595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、光源として用いる紫外光の強度が強いにもかかわらず、残留したソルダレジストの発する蛍光の強度が微弱なため、強い紫外光に邪魔されて蛍光の検出が難しいという問題があった。
【0012】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、微量な光硬化性樹脂を高感度かつ簡便に検出可能な光硬化性樹脂の検査装置および検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の光硬化性樹脂の検査装置は、検査対象物における光硬化性樹脂を検査するための検査装置であって、光源と、検出部とを備えている。光源は、検査対象物にパルス状の紫外光を照射するためのものである。検出部は、光源から照射される紫外光のパルスの幅よりも遅れた時間に、検査対象物における紫外光の照射部の光硬化性樹脂から生じる蛍光を検出するためのものである。
【0014】
本発明の光硬化性樹脂の検査方法は、検査対象物における光硬化性樹脂を検査するための検査方法であって、以下の工程を備えている。
【0015】
まず検査対象物にパルス状の紫外光が照射される。そして、検査対象物における紫外光の照射部の光硬化性樹脂から生じる蛍光が、光源から照射される紫外光のパルスの幅よりも遅れた時間に検出される。
【0016】
本発明の光硬化性樹脂の検査装置および検査方法によれば、検査対象物における紫外光の照射部の光硬化性樹脂から生じる蛍光が、光源から照射される紫外光のパルスの幅よりも遅れた時間に検出される。つまり紫外光の照射を中断しても、発光し続ける蛍光の性質を利用して、光源からの照射光とは別に蛍光のみを検出することができる。これにより、強い紫外光に邪魔されることなく蛍光を検出できるため、照射光を減衰させることなく、高感度かつ簡便に蛍光を検出し、不良を検知することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本発明によれば、微量な光硬化性樹脂を高感度かつ簡便に検出可能な光硬化性樹脂の検査装置および検査方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態1における検査装置の構成を模式的に示す図である。
【図2】測定対象物の一例であるプリント配線板の構成を概略的に示す部分拡大断面図である。
【図3】図2に示すプリント配線板にリード線がはんだで接合された様子を示す部分拡大断面図である。
【図4】紫外光のパルス幅よりも遅れた時間に照射部から生じる蛍光を測定することを説明するための図であって、紫外光のON、OFFを示す図(A)と、蛍光の発光、非発光を示す図(B)である。
【図5】本発明の実施の形態2における検査装置の構成を模式的に示す図である。
【図6】本発明の実施の形態3における検査装置の構成を模式的に示す図である。
【図7】本発明の実施の形態4における検査装置の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
(実施の形態1)
まず本実施の形態の検査装置の構成について図1を用いて説明する。
【0020】
図1を参照して、本実施の形態の検査装置は、パルス光源(光源)1と、ビームスプリッタ2と、信号トリガ3と、集光レンズ4と、カメラレンズ6と、ストリークカメラ(検出部)7とを主に有している。
【0021】
パルス光源1は、たとえばピコ秒オーダーのパルス状の紫外光(点滅する紫外光)を照射するものであって、ピコ秒パルスLED(Light Emitting Diode)などである。ビームスプリッタ2は、パルス光源1から発せられた紫外光を励起光とトリガ用光源とに分離するよう配置されている。集光レンズ4は、励起光を検査対象物の一例であるプリント配線板5の電極パッドなどの検査箇所(照射部)に集光させるよう配置されている。カメラレンズ6は、プリント配線板5にパルス光を照射した時に検査箇所から発せられる光を集光し、ストリークカメラ7へ導入するよう配置されている。信号トリガ3は、トリガ用光源をストリークカメラ7へ導入するよう配置されている。ストリークカメラ7は、たとえばピコ秒オーダーの時間分解計測が可能であって、パルス光照射後のたとえば数百ピコ秒後の光量を測定することができる。
【0022】
次に、本実施の形態の検査方法について図1〜図4を用いて説明する。
図2を参照して、まず測定対象物の一例としてプリント配線板5が準備される。このプリント配線板5は、基板51と、導体配線52と、ソルダレジスト53とを主に有している。基板51は、熱硬化性樹脂からなり、たとえばガラスエポキシ樹脂などからなっている。導体配線52は、基板51の一方表面51aおよび他方表面51b上に、Cuめっきなどで形成されている。ソルダレジスト53は紫外光硬化性樹脂などの絶縁性樹脂であり、たとえばアクリル系樹脂であって、より具体的には太陽インキ製造のソルダレジスト:PSR−4000である。このソルダレジスト53は、導体配線52のはんだ付けするための電極端子部分やスルーホールランドを除いて導体配線52および基板51の表面上を被覆している。
【0023】
図2においてはスルーホールランド52bが示されており、このスルーホールランド52bは、基板51を貫通するスルーホール51Aを中心に環状に延在する形状を有しており、一方表面51a上および他方表面51b上の各々に形成されている。この一方表面51a上のスルーホールランド52bと他方表面51b上のスルーホールランド52bとは、スルーホール51Aの内周面に形成された導体配線52の筒部52cにより電気的に接続されている。なおスルーホールランド52bの外周部には導体配線52の配線部52aが接続されている。
【0024】
このスルーホールランド52bには、図3に示すようにスルーホール51A内にリード部61が挿入された状態ではんだ62によりリード部61が接合される。この部品実装時には、はんだの融点を越える温度で所定の時間の加熱が行なわれることで、スルーホールランド52bのCuとはんだ62中のSnとが金属間化合物を形成することで、機械的な強さと電気的な接続が得られている。
【0025】
ところが、スルーホールランド52の表面(たとえば図2の領域R1)にソルダレジストなどの異物が付着していると、金属間化合物の生成が阻害され、機械的な強さも電気的な接続も得ることができず、機能不良が生じてしまう。そこで、このソルダレジスト53の形成時に生じたソルダレジストの残渣があるか否かが本実施の形態の検査装置を用いて検査される。
【0026】
図1を参照して、上記の検査対象物の一例である図2に示すプリント配線板5が本実施の形態の検査装置にセットされる。この状態で、プリント配線板5に対して、パルス光源1からピコ秒オーダーのパルス状の紫外光が発せられる。たとえば355nmのピコ秒パルスレーザにて、250nm〜420nmの波長を有する紫外光が発せられる。ビームスプリッタ2で励起光とトリガ用光源に分離され、励起光は集光レンズ4でプリント配線板上の電極パッド、スルーホールランドなどの検査箇所に集光される。このパルス状の紫外光の照射時に検査箇所から発せられる光が、カメラレンズ6を用いてストリークカメラ7へ導入される。一方、ビームスプリッタ2で分離されたトリガ用光源は信号トリガ3を通じてストリークカメラ7へ導かれる。
【0027】
ここでプリント配線板5の電極端子部やスルーホールランド52bなど、ソルダレジスト53の開口部に、極微量なソルダレジスト53の残渣があった場合、そのソルダレジスト53の残渣が紫外光に励起されて蛍光を発する。蛍光は紫外励起後ナノ秒オーダーの寿命を持って発光し続ける。
【0028】
図4(A)に示すように検査箇所への紫外光の照射がOFFされた後も、図4(B)に示すように蛍光は時間Td(遅延時間:delay time)の間、発光し続ける。つまりパルス光源1から照射される紫外光のパルスの幅よりも遅れた時間Tdに蛍光が発光し続けるため、この時間Tdの蛍光がストリークカメラ7により検出される。なお図4(A)および図4(B)では、紫外光のパルス幅よりも遅れた時間がわかりやすいように、説明の便宜上、パルス波形を矩形で表したが、パルス波形はこれ以外のローレンツ波形などであってもよい。
【0029】
ストリークカメラ7は、ピコ秒オーダーの時間分解計測が可能であるので、パルス光照射後数百ピコ秒後の光量を測定することができる。このため、検査箇所にレジストなど感光性樹脂の残渣がなければ、金属電極のみが存在するため、蛍光を発することは無く、パルス光照射の数百ピコ秒後は光は検出されない。一方、検査箇所に感光性樹脂の残渣があれば、蛍光を発するため、パルス光照射の数百ピコ秒後であっても蛍光が検出される。
【0030】
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。
本実施の形態によれば、上記のとおりパルス光源1から照射される紫外光のパルスの幅よりも遅れた時間Tdに、プリント配線板5における紫外光の照射部から生じる蛍光が検出される。つまりプリント配線板5への紫外光の照射を中断しても、発光し続ける蛍光の性質を利用して、パルス光源1からの照射光とは別に蛍光のみを検出することができる。これにより、強い紫外光に邪魔されることなく蛍光のみを検出できるため、照射光を減衰させることなく、高感度の光量計を用いても、十分な感度で測定することができる。よって、目視、あるいは光学顕微鏡などを用いても確認できないような極微量のレジスト残りであっても検知することができる。また微量なレジスト残りの検査について、高感度でかつ、インライン検査が可能な簡便な検出が可能となる。
【0031】
これによりプリント配線板5の端子部に微量に残留したソルダレジストを、ソルダレジスト53の現像後の検査や外観検査において確実に検出することが可能となり、出荷製品の品質を高めることができる。また、プリント配線板5の配線パターン形成時や、半導体デバイス製造時の現像残り検査として用いた場合、製造不良を未然に防ぐことができ、製造コストを削減できる。
【0032】
(実施の形態2)
図5を参照して、本実施の形態の検査装置の構成は、分光器8が追加された点において、図1に示す実施の形態1の構成と異なっている。この分光器8は、検査箇所からの光を分光してストリークカメラ7に導入するためのものである。この分光器8により、感光性樹脂(光硬化性樹脂)に特有な蛍光の波長の光のみを時間分解計測することができる。
【0033】
なお、本実施の形態のこれ以外の構成は、上述した実施の形態1の構成とほぼ同じであるため、同一の要素については同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0034】
蛍光を発する有機物は多数種類存在する。しかし本実施の形態によれば、分光器8により分光計測することで、レジストに特有の蛍光のみを検出することが可能となり、積算光量を測定することで微弱な蛍光であっても高精度に検出することができる。これにより実施の形態1よりも高精度にソルダレジストの残渣を検出することが可能となる。また、励起光の迷光や返り光などによる誤検出をなくすこともできる。
【0035】
(実施の形態3)
図6を参照して、本実施の形態のプリント配線板の検査装置は、蛍光の時間分解計測の手法において、いわゆるポンプ−プローブ法を用いて検出するものである。本実施の形態の検査装置は、チタン:サファイアレーザ(光源)10と、ビームスプリッタ11、18と、光学結晶12と、ミラー14、15と、レンズ16、21、23と、サファイア基板17と、分光器24、26と、検知器(検出部)25、27とを主に有している。
【0036】
チタン:サファイアレーザ10は、波長が約800nmのサブピコ秒パルス光を発振するものである。ビームスプリッタ11は、チタン:サファイアレーザ10から発せられたパルス光をポンプ光13とプローブ光19とに分離するよう配置されている。ポンプ光13には紫外光を要する。このため光学結晶12は、たとえばBBO(β-BaB24)結晶であって、チタン:サファイアレーザ10から発せられたパルス光から2倍波や3倍波を得ることにより紫外パルス光を得るためのものである。
【0037】
2つのミラー14、15は、太い矢印に示す方向に移動可能な自動ステージ(図示せず)上に据え付けられており、矢印方向に移動することで光路長を変化させることができるように構成されている。レンズ16は、ポンプ光13をプリント配線板22の検査箇所に照射するよう配置されている。
【0038】
サファイア基板17は、プローブ光19を集光させることにより白色光(400nm〜800nmの可視域のパルス光)を発生させることができるものである。ビームスプリッタ18は、この白色光よりなるプローブ光をさらに分離して、レファレンス光20を得るためのものである。レンズ21は、白色光よりなるプローブ光をプリント配線板5の検査箇所に照射するよう配置されている。
【0039】
レンズ23は、プリント配線板5に照射された白色光を分光器24へ導くように配置されている。分光器24は、白色光を分光するためのものである。検知器25は、分光器24で分光された光の強度を計測するためのものである。
【0040】
分光器26はレファレンス光20を分光するためのものである。検知器27は、分光器26で分光された光の強度を計測するためのものである。
【0041】
次に、本実施の形態のプリント配線板の検査方法について説明する。
まず、たとえば図2で示したようなプリント配線板5が準備される。このプリント配線板5が、図6に示すように本実施の形態の検査装置にセットされる。この状態で、ソルダレジスト53(図2)形成後のプリント配線板5に対して、チタン:サファイアレーザ10から、波長が約800nmのサブピコ秒パルス光(パルス幅200ps以下)が発振される。ポンプ光13には紫外光が必要であるため、光学結晶12(たとえばBBO結晶)を用いて2倍波や3倍波を得ることにより紫外パルス光が得られる。ポンプ光13は、2つのミラー14、15で光路長を適切に調整された後、レンズ16によりプリント配線板5の検査箇所に照射される。
【0042】
一方、ビームスプリッタ11を用いてプローブ光19が分離される。プローブ光19はたとえばサファイア基板17に集光させると、白色光を発生する。この白色光は400nm〜800nmの可視域のパルス光(パルス幅200ps以下)となり、レンズ21によりプリント配線板22の検査箇所に照射され、レンズ23を通じて分光器24に導かれる。白色光を分光器24で分光した光が検知器25で光強度を計測される。レジスト残渣があれば、レジストに特有な蛍光が検出されるはずである。
【0043】
なお、プローブ光をさらにビームスプリッタ18で分離し、レファレンス光20を得るようにしておくことで、プローブ光強度の光強度の揺らぎをキャンセルすることが可能になり、より高感度な蛍光検出が可能になる。
【0044】
本実施の形態においても、実施の形態1と同様、パルス光のパルス幅よりも遅れた時間に、プリント配線板5における紫外光の照射部から生じる蛍光が検出される。つまりプリント配線板5への紫外光の照射を中断しても、発光し続ける蛍光の性質を利用して、チタン:サファイアレーザ10からの照射光とは別に蛍光のみを検出することができる。これにより、強い紫外光に邪魔されることなく蛍光のみを検出できるため、照射光を減衰させることなく、高感度の光量計を用いても、十分な感度で測定することができる。よって、極微量のレジスト残りであっても検知することができる。
【0045】
なお蛍光を白色光から分けるため、図6の分光器24、26を蛍光波長に合わせておき、検知器25、27のフォトンカウンタの差分がとられる。レファレンス光20側に減光(ND:Neutral Density)フィルターなどの可変フィルターが組み込まれ、検知器25、27の差分がゼロとなるように調整が行なわれる。差分を取った信号がロックインアンプなどを通じて増幅されることで、蛍光のわずかな変化を高感度に測定することが可能となる。この場合、レファレンス光20側にも光学遅延回路を設けておき、検知器25、27が光学的に同じ時間の測定をする必要がある。
【0046】
(実施の形態4)
図7を参照して、本実施の形態の検査装置は、たとえばプリント配線板などの検査対象物のスルーホール内のめっき未着部分を検出するものである。本実施の形態の検査装置は、パルス光源(光源)1と、レンズ28と、光ファイバ29、32と、対物レンズ31と、分光器8と、ストリークカメラ(検出部)7とを主に有している。
【0047】
パルス光源1は、たとえばピコ秒オーダーのパルス状の紫外光(点滅する紫外光)を照射するものであって、ピコ秒パルスLEDなどである。レンズ28は、パルス光源1から発せられた紫外光を光ファイバ29に導入するためのものである。光ファイバ29は、紫外光をプリント配線板5へ導き、かつプリント配線板5のスルーホール51Aに照射するためのものである。対物レンズ31は、スルーホール51Aを通過してくる光を集光して光ファイバ32へ導入するためのものである。光ファイバ32は、光を分光器8へ導くためのものである。分光器8は、その光を分光するためのものである。ストリークカメラ7は、たとえばピコ秒オーダーの時間分解計測が可能であって、パルス光照射後のたとえば数百ピコ秒後の光量を測定することができるものである。
【0048】
次に、本実施の形態のプリント配線板の検査方法について説明する。
まず、たとえば図2で示したようなプリント配線板5が準備される。このプリント配線板5が、図7に示すように本実施の形態の検査装置にセットされる。この状態で、ソルダレジスト53(図2)形成後のプリント配線板5のスルーホール51Aに対して、パルス光源1からピコ秒オーダーのパルス状の紫外光が発せられる。その紫外光は、レンズ28と光ファイバ29に導かれて、プリント配線板5上のスルーホール51内の検査箇所に照射される。このパルス状の紫外光の照射時に検査箇所から発せられる光が、対物レンズ31を用いて集光されて光ファイバ32へ導入される。この光ファイバ32によって光は分光器8に導入されて分光された後、ストリークカメラ7で時間分解計測される。
【0049】
ここでスルーホール51Aの内周面は図2に示すように通常、銅めっき52cが施されているが、工程異常などで領域R2に部分的に銅めっき52cが未着の領域が生じたりする。めっきが未着であると、図3に示すようにリード部を接続したときの接続信頼性が低下する。
【0050】
スルーホール51A内のめっき未着部分においては樹脂よりなる基板51が露出している。このため本実施の形態の検査装置を用いて、スルーホール51A内にピコ秒オーダーのパルス状の紫外光を照射することで、スルーホール51A内を多段反射しながら通過する紫外光によって未着部分において露出した樹脂が励起されて蛍光が生じる。この蛍光は、パルス光の照射を中断した後も紫外励起後ナノ秒オーダーの寿命を持って発光し続けるため、この蛍光を検出することで、スルーホール51A内のめっきの未着を検出することが可能である。
【0051】
ストリークカメラ7は、ピコ秒オーダーの時間分解計測が可能であるので、パルス光照射後数百ピコ秒後の光量を測定することができる。このため、検査箇所にめっき未着部分がなければ、銅めっき52cのみが存在するため、蛍光を発することは無く、パルス光照射の数百ピコ秒後は光は検出されない。一方、検査箇所にめっき未着部分があれば、蛍光を発するため、パルス光照射の数百ピコ秒後であっても蛍光が検出される。
【0052】
本実施の形態においても、実施の形態1と同様、パルス光のパルス幅よりも遅れた時間に、プリント配線板5における紫外光の照射部から生じる蛍光が検出される。つまりプリント配線板5への紫外光の照射を中断しても、発光し続ける蛍光の性質を利用して、パルス光源1からの照射光とは別に蛍光のみを検出することができる。これにより、強い紫外光に邪魔されることなく蛍光のみを検出できるため、照射光を減衰させることなく、高感度の光量計を用いても、十分な感度で測定することができる。よって、極微量のめっきの未着部分であっても検知することができる。
【0053】
またスルーホール51A内のめっきの部分的な未着は、電気的には導通が取れるため、電気検査で検出することが難しい。そのため、電気検査前に熱印加するなどしてめっきを断線させて、電気的に検出するなど、簡易的な検出方法がないのが現状である。本実施の形態によれば、光学的に未着部分を検出することができるため、従来の電気検査に比べて高精度にめっき未着を検出することが可能になる。
【0054】
なお上記の実施の形態1〜3においては、検査する樹脂としてプリント配線板5に用いられるソルダレジストインキについて説明したが、本発明はこれに限定されず、ドライフィルムレジストや、半導体製造に用いる液体レジストなど、光硬化性樹脂であれば如何なる樹脂にも適用することができる。
【0055】
また上記の実施の形態1〜4においては、パルス幅よりも遅れた時間における紫外光照射部の蛍光を測定するための検出部として、時間分解機能を有する検出器について説明したが、本発明の検出部はこれに限定されるものではなく、波長分解する方法により蛍光を測定するものであってもよい。
【0056】
また時間分解機能を有する検出部は、半値幅が数百フェムト秒という極端パルス光を試料に入射し、超高速検出器によって検出光量の時間変化を計測する機器であり、ピコ秒オーダの汎用ストリークカメラ(たとえば浜松ホトニクスのC5680など)であってもよい。また時間分解能はパルス幅よりも短いピコ秒オーダが必要であり、測定部はストリークカメラの他に、図6のように光学遅延回路を有していればフォトンカウンタであってもよい。
【0057】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0058】
1 パルス光源、2 ビームスプリッタ、3 信号トリガ、4 集光レンズ、5 プリント配線板、6 カメラレンズ、7 ストリークカメラ、8 分光器、10 パルスレーザ、11 ビームスプリッタ、12 光学結晶、13 ポンプ光、14 ミラー、15 ミラー、16 集光レンズ、17 サファイア基板、18 ビームスプリッタ、19 プローブ光、20 レファレンス光、21 レンズ、23 レンズ、24 分光器、25 検知器、26 分光器、27 検知器、28 レンズ、29 光ファイバ、30 スルーホール、31 レンズ、32 光ファイバ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物における光硬化性樹脂を検査するための検査装置であって、
前記検査対象物にパルス状の紫外光を照射するための光源と、
前記光源から照射される前記紫外光のパルスの幅よりも遅れた時間に、前記検査対象物における前記紫外光の照射部の前記光硬化性樹脂から生じる蛍光を検出するための検出部とを備えた、光硬化性樹脂の検査装置。
【請求項2】
前記検出部は時間分解機能を有するよう構成されている、請求項1に記載の光硬化性樹脂の検査装置。
【請求項3】
前記蛍光を含む前記照射部からの光を前記検出部に導入する前に分光するための分光器をさらに備えた、請求項1または2に記載の光硬化性樹脂の検査装置。
【請求項4】
前記検査対象物は、貫通孔を有する樹脂部材と、前記貫通孔の内面に形成された金属層とを含み、
前記検出部は、前記貫通孔を通過した前記紫外光の照射によって前記貫通孔内において前記金属層から露出した前記樹脂部材から生じる前記蛍光を検出できるよう構成されている、請求項1〜3のいずれかに記載の光硬化性樹脂の検査装置。
【請求項5】
検査対象物における光硬化性樹脂を検査するための検査方法であって、
前記検査対象物にパルス状の紫外光を照射する工程と、
前記検査対象物における前記紫外光の照射部の光硬化性樹脂から生じる蛍光を、前記光源から照射される前記紫外光のパルスの幅よりも遅れた時間に検出する工程とを備えた、光硬化性樹脂の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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