説明

光硬化性樹脂組成物および光学材料

【課題】屈折率の向上を図ることができながら、透明性、耐熱性および取扱性の向上を図ることができる光硬化性樹脂および光学材料を提供すること。
【解決手段】本発明の光硬化性樹脂組成物は、1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、アニオン成分とカチオン成分とからなる光重合開始剤と、メチルトリメトキシシラン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタン、および、ベンジルトリエトキシシランからなる群から選択される少なくとも1種のアルコキシシラン化合物とを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性樹脂組成物および光学材料、詳しくは、光学製品に広く利用できる光硬化性樹脂組成物および光学材料に関する。
【背景技術】
【0002】
光学部品の接着剤やシーリング剤、光学レンズの材料として、種々の材料が検討されている。
【0003】
このような種々の材料のうち、光学レンズの薄型化や画像の高解像度化の観点から、高屈折率および耐熱性に優れたエポキシ樹脂を主成分とする光硬化性樹脂組成物が、注目されている。
【0004】
このような光硬化性樹脂組成物としては、例えば、エポキシ化合物、光カチオン重合開始剤、および60〜160℃の沸点を有する水酸基含有化合物(例えば、水)からなる感光性組成物が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−31438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の感光性組成物のようなエポキシ化合物を主成分とする光硬化性組成物は、光硬化後、加熱すると、黄変し透明性が低下する場合がある。また、このような光硬化性樹脂は、一般に、粘度が高く、取扱性がよくないという不具合もある。
【0007】
そこで、本発明は、屈折率の向上を図ることができながら、透明性、耐熱性および取扱性の向上を図ることができる光硬化性樹脂および光学材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の光硬化性樹脂組成物は1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、アニオン成分とカチオン成分とからなる光重合開始剤と、メチルトリメトキシシラン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタン、および、ベンジルトリエトキシシランからなる群から選択される少なくとも1種のアルコキシシラン化合物とを含有することを特徴としている。
【0009】
また、本発明の光硬化性樹脂組成物では、前記アルコキシシラン化合物の配合割合が、前記エポキシ樹脂100質量部に対して、0.5〜5質量部であることが好適である。
【0010】
また、本発明の光学材料は、上記した光硬化性樹脂組成物を、硬化させることにより得られることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂を含有するので、高屈折率を確保することができる。しかも、メチルトリメトキシシラン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタン、および、ベンジルトリエトキシシランからなる群から選択される少なくとも1種のアルコキシシラン化合物を含有するので、光硬化後、加熱しても、変色および透明性の喪失を低減することができ、また、常温において、液状となり、取扱性の向上を図ることができる。
【0012】
したがって、本発明の光硬化性樹脂組成物および光学材料は、屈折率の向上を図ることができながら、透明性、耐熱性および取扱性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(A)と、アニオン成分とカチオン成分とからなる光重合開始剤(B)と、アルコキシシラン化合物(C)とを含有する。
【0014】
エポキシ樹脂(A)としては、特に制限されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水素添加ビスフェノールF型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂、例えば、直鎖脂肪族型エポキシ樹脂、例えば、ジシクロ環型エポキシ樹脂などの脂環式エポキシ樹脂、例えば、フルオレン型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0015】
このようなエポキシ樹脂(A)は、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。
【0016】
このようなエポキシ樹脂(A)のなかでは、屈折率を考慮すると、好ましくは、硬化後の波長589nmにおける屈折率が、1.5〜1.7であるエポキシ樹脂が挙げられ、さらに好ましくは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0017】
また、このようなエポキシ樹脂(A)は、そのエポキシ当量が、例えば、50〜500g/eq、好ましくは、100〜300g/eqである。
【0018】
エポキシ樹脂(A)の配合割合は、光重合開始剤(B)およびアルコキシシラン化合物(C)を除く有機成分(後述)100質量部に対して、例えば、30〜100質量部、好ましくは、35〜100質量部である。
【0019】
エポキシ樹脂(A)の配合割合が、30質量部未満であると、光硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる光学材料が脆く耐熱性が低下する場合がある。一方、エポキシ樹脂(A)の配合割合が、上記範囲内であると、光学材料の耐熱性の向上を図ることができる。
【0020】
また、光重合開始剤(B)1質量部に対する、エポキシ樹脂(A)の配合割合は、例えば、10〜400質量部、好ましくは、20〜300質量部である。
【0021】
また、光硬化性樹脂組成物全量に対する、エポキシ樹脂(A)の配合割合は、例えば、20〜99質量%、好ましくは、30〜99質量%である。
【0022】
光重合開始剤(B)は、カチオン種を発生させて、エポキシ樹脂を硬化させるカチオン重合開始剤であって、例えば、アニオン成分とカチオン成分とからなるオニウム塩などが挙げられる。
【0023】
アニオン成分としては、例えば、PF、PF(CFCFなどのリン酸イオン、例えば、SbFなどのアンチモン酸イオン、例えば、トリフルオロメタンスルホナートなどのスルホン酸イオンなどが挙げられる。
【0024】
また、カチオン成分としては、例えば、芳香族スルホニウムなどのスルホニウム、芳香族ヨードニウムなどのヨードニウム、芳香族ホスホニウムなどのホスホニウム、芳香族スルホキソニウムなどのスルホキソニウムなどが挙げられる。
【0025】
このようなオニウム塩としては、例えば、上記したアニオン成分をカウンターアニオンとして有する、芳香族スルホニウム塩などのスルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩などのヨードニウム塩、芳香族ホスホニウム塩などのホスホニウム塩、芳香族スルホキソニウム塩などのスルホキソニウム塩などが挙げられる。
【0026】
このような光重合開始剤(B)は、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。
【0027】
また、このような光重合開始剤(B)のなかでは、光硬化性を考慮すると、好ましくは、芳香族スルホニウム塩が挙げられる。
【0028】
また、このような光重合開始剤(B)は、例えば、プロピレンカーボネートなどの有機溶媒に、上記したオニウム塩を溶解して、光重合開始剤溶液として調製することもできる。
【0029】
このような光重合開始剤溶液の濃度は、例えば、30〜70質量%、好ましくは、40〜60質量%である。
【0030】
光重合開始剤(B)の配合割合は、アルコキシシラン化合物(C)を除く有機成分(後述)100質量部に対して、例えば、0.05〜5質量部、好ましくは、0.05〜3質量部、さらに好ましくは、0.05〜2.5質量部である。
【0031】
光重合開始剤(B)の配合割合が、0.05質量部未満であると、光硬化性樹脂組成物の硬化性が低下し、5質量部を超過すると、光硬化性樹脂組成物を硬化させることにより得られる光学材料の透明性が低下する場合がある。一方、光重合開始剤(B)の配合割合が、上記範囲内であると、光硬化性樹脂組成物の硬化性、および、光学材料の透明性の向上を図ることができる。
【0032】
また、光硬化性樹脂組成物全量に対する、光重合開始剤(B)の配合割合は、例えば、0.05〜3質量%、好ましくは、0.1〜2質量%である。
【0033】
アルコキシシラン化合物(C)は、ケイ素にアルコキシ基が結合した化合物であって、メチルトリメトキシシラン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタン、ベンジルトリエトキシシランが挙げられる。
【0034】
アルコキシシラン化合物(C)の配合割合は、エポキシ樹脂(A)100質量部に対して、例えば、0.5〜8質量部、好ましくは、0.5〜6質量部である。
【0035】
アルコキシシラン化合物(C)の配合割合が、0.5質量部未満であれば、光硬化性樹脂組成物を硬化させることにより得られる光学材料の透明性の向上を図ることができず、8質量部を超過すると、光学材料が脆くなるという不具合が生じる場合がある。一方、アルコキシシラン化合物(C)の配合割合が、上記範囲内であると、光学材料の透明性および機械強度の向上を図ることができる。
【0036】
また、光重合開始剤(B)1質量部に対する、アルコキシシラン化合物(C)の配合割合は、例えば、0.5〜15質量部、好ましくは、1〜10質量部である。
【0037】
また、光硬化性樹脂組成物全量に対する、アルコキシシラン化合物(C)の配合割合は、例えば、0.1〜8質量%、好ましくは、0.5〜5質量%である。
【0038】
このような光硬化性樹脂組成物は、例えば、エポキシ樹脂(A)と、光重合開始剤(B)と、アルコキシシラン化合物(C)とを、例えば、加熱溶融混合することによって、調製される。
【0039】
加熱溶融混合する条件としては、加熱温度が、例えば、40〜150℃、好ましくは、40〜130℃である。
【0040】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、好ましくは、さらに、芳香脂肪族化合物(D)を含有する。
【0041】
芳香脂肪族化合物(D)は、水酸基が結合する脂肪族基が、芳香族環に結合する芳香脂肪族化合物であって、水酸基が結合する脂肪族基としては、例えば、炭素数1〜18の直鎖状または分岐状のヒドロキシアルキル基、例えば、炭素数1〜5のヒドロキシアルキレン基と、芳香族環の炭素原子1〜4つとで形成する、ヒドロキシ5〜6員環などが挙げられ、芳香族環としては、例えば、炭素数6〜18の芳香族環が挙げられる。
【0042】
より具体的には、このようなヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシn−プロピル基、ヒドロキシイソプロピル基、ヒドロキシn−ブチル基、ヒドロキシイソブチル基、ヒドロキシsec−ブチル基、ヒドロキシtert−ブチル基、ヒドロキシn−ヘキシル基などの炭素数1〜18の直鎖状または分岐状のヒドロキシアルキル基が挙げられる。
【0043】
また、このようなヒドロキシ5〜6員環としては、例えば、ヒドロキシシクロペンタン環、ヒドロキシシクロヘキサン環、(ヒドロキシメチル)−シクロペンタン環、(ヒドロキシメチル)−シクロヘキサン環、(ヒドロキシエチル)−シクロペンタン環などの炭素数5〜18の5〜6員環が挙げられる。
【0044】
また、このような芳香族環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ビフェニル環などの炭素数6〜18の芳香族環が挙げられる。
【0045】
このような脂肪族基は、芳香族環に、例えば、1〜4置換される。
【0046】
このような芳香脂肪族化合物(D)としては、例えば、1−インダノール(下記化学式(1))、2−インダノール(下記化学式(2))、9−フルオレニルメタノール(下記化学式(3))などのベンゼンシクロアルキルアルコール化合物、例えば、2−(1−ナフチル)エタノール(下記化学式(4))、1−(1−ナフチル)エタノール(下記化学式(5))、2−ナフチルメタノール(下記化学式(6))などのナフタレンアルキルアルコール化合物、例えば、2−フェニルエチルアルコール(下記化学式(7))、2−フェニル−2−プロパノ―ル(下記化学式(8))、2−メチル−1−フェニル−2−プロパノ―ル(下記化学式(9))、1,4−ビス(2−ヒドロキシエチル)ベンゼン(下記化学式(10))、1−フェニル−2−プロパノ―ル(下記化学式(11))などのベンゼンアルキルアルコール化合物、例えば、4−ヒドロキシメチルビフェニル(下記化学式(12))、4−(1−ヒドロキシエチル)ビフェニル(下記化学式(13))、2−(4−ビフェニル)−2−プロパノ―ル(下記化学式(14))などのビフェニルアルキルアルコール化合物などが挙げられる。
化学式(1):
【0047】
【化1】

【0048】
化学式(2):
【0049】
【化2】

【0050】
化学式(3):
【0051】
【化3】

【0052】
化学式(4):
【0053】
【化4】

【0054】
化学式(5):
【0055】
【化5】

【0056】
化学式(6):
【0057】
【化6】

【0058】
化学式(7):
【0059】
【化7】

【0060】
化学式(8):
【0061】
【化8】

【0062】
化学式(9):
【0063】
【化9】

【0064】
化学式(10):
【0065】
【化10】

【0066】
化学式(11):
【0067】
【化11】

【0068】
化学式(12):
【0069】
【化12】

【0070】
化学式(13):
【0071】
【化13】

【0072】
化学式(14):
【0073】
【化14】

【0074】
このような芳香脂肪族化合物(D)は、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。
【0075】
また、このような芳香脂肪族化合物(D)のなかでは、好ましくは、2−インダノール(上記化学式(2))、2−ナフチルメタノール(上記化学式(6))、2−フェニルエチルアルコール(上記化学式(7))、1−フェニル−2−プロパノ―ル(上記化学式(11))、4−ヒドロキシメチルビフェニル(上記化学式(12))が挙げられる。
【0076】
このような芳香脂肪族化合物(D)を、光硬化性樹脂組成物に含有させるには、例えば、上記した加熱溶融混合の際に、芳香脂肪族化合物(D)を添加する。
【0077】
芳香脂肪族化合物(D)の配合割合は、芳香脂肪族化合物(D)を除く有機成分(後述)100質量部に対して、例えば、1〜20質量部、好ましくは、3〜15質量部である。
【0078】
芳香脂肪族化合物(D)の配合割合が、1質量部未満であると、光硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる光学材料の透明性の向上を図ることはできず、20質量部を超過すると、光学材料が脆くなるという不具合が生じる場合がある。一方、芳香脂肪族化合物(D)の配合割合が、上記範囲内であると、光学材料の透明性および機械強度の向上を図ることができる。
【0079】
すなわち、芳香脂肪族化合物(D)を配合することにより、光学材料の透明性の向上を図ることができる。また、光硬化性樹脂組成物の粘度を低下させることができるため、取扱性の向上を図ることもできる。特に、高屈折率のエポキシ樹脂を含有する光硬化性樹脂組成物に、芳香脂肪族化合物(D)を配合することにより、光硬化後の屈折率の低下を抑制でき、透明性と取扱性との向上を図ることができる。
【0080】
また、光硬化性樹脂組成物全量に対する、芳香脂肪族化合物(D)の配合割合は、例えば、1〜20質量%、好ましくは、5〜15質量%である。
【0081】
また、本発明の光硬化性樹脂組成物には、上記成分に加えて、有機添加剤として、例えば、オキセタン樹脂、さらに必要に応じて、ガラスなどの透明基材上に、光硬化性樹脂組成物を硬化させて光学材料を作製する場合、透明基材と、光学材料との接着性の向上を図る目的で、シラン系またはチタネート系カップリング剤、硬化性を高める目的で、アントラセンなどの光増感剤や酸増殖剤、流動性を高める目的で、一官能のエポキシ樹脂を配合してもよく、その他、目的および用途に応じて、合成ゴムやシリコーン化合物などの可撓性付与剤、酸化防止剤、消泡剤、染料などを適宜の割合で配合することもできる。また、無機添加剤として、例えば、顔料、無機充填剤などを適宜の割合で配合することもできる。
【0082】
オキセタン樹脂としては、例えば、4,4’−ビス(3−メチルオキセタン−3−イルメチルオキシメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(3−エチルオキセタン−3−イルメチルオキシメチル)ビフェニル、4−(3−エチルオキセタン−3−イルメチルオキシメチル)−4’−(3−メチルオキセタン−3−イルメチルオキシメチル)ビフェニル、4−(3−プロピルオキセタン−3−イルメチルオキシメチル)−4’−(3−メチルオキセタン−3−イルメチルオキシメチル)ビフェニルなどが挙げられる。
【0083】
このようなオキセタン樹脂は、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。
【0084】
また、このようなオキセタン樹脂のなかでは、好ましくは、4,4’−ビス(3−エチルオキセタン−3−イルメチルオキシメチル)ビフェニルが挙げられる。
【0085】
オキセタン樹脂の配合割合は、エポキシ樹脂(A)100質量部に対して、例えば、5〜250質量部、好ましくは、10〜200質量部である。
【0086】
また、光硬化性樹脂組成物全量に対する、オキセタン樹脂の配合割合は、例えば、3〜70質量%、好ましくは、5〜65質量%である。
【0087】
このようなオキセタン樹脂を配合することで、光硬化性樹脂組成物の硬化性の向上を図ることができる。
【0088】
すなわち、本発明の光硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A)と、光重合開始剤(B)と、アルコキシシラン化合物(C)と、芳香脂肪族化合物(D)と、オキセタン樹脂などの有機添加剤とからなる有機成分、および、無機添加剤からなる無機成分を含有する。
【0089】
このような光硬化性樹脂組成物は、例えば、ガラスなどの透明基板上に、ポッティングした後、所望の成形加工型を押し当てることにより、成形加工型内部に充填される。そして、光照射して、光硬化性樹脂組成物を硬化させた後、成形加工型を取り外すことで、透明基板と一体化した光学材料が得られる。
【0090】
光照射に用いられる装置としては、例えば、紫外線(ultraviolet:UV)ランプ、特定波長のシングルバンドのランプなどが挙げられる。
【0091】
光照射の条件としては、特に制限されないが、照射量が、例えば、2000〜20000mJ/cm、好ましくは、2000〜15000mJ/cmである。
【0092】
照射量が、2000mJ/cm未満であると、光硬化性樹脂組成物を十分に硬化させることができず、得られる光学材料を、透明基板上に所望の形状に成型することができない場合がある。また、20000mJ/cmを超過すると、過度の照射による光劣化が生じるという不具合がある。
【0093】
一方、照射量が、上記範囲内であると、光硬化性樹脂組成物を十分に硬化させることができるため、光学材料を、透明基板上に所望の形状に成型することでき、また、過度の照射による光劣化を防止することができる。
【0094】
さらに、透明基板と一体化した光学材料は、必要に応じて、所定の温度で加熱処理する。
【0095】
熱処理の条件としては、熱処理温度が、例えば、50〜200℃、好ましくは、80〜170℃、熱処理時間が、例えば、0.5〜3時間、好ましくは、0.5〜2時間である。
【0096】
さらに、熱処理することで、基板と、樹脂硬化物との密着性の向上を図ることができる。
【0097】
このような光硬化性樹脂組成物は、メチルトリメトキシシラン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタン、および、ベンジルトリエトキシシランからなる群から選択される少なくとも1種のアルコキシシラン化合物(C)を含有する。そのため、常温において、液状となり、取扱性の向上を図ることができる。
【0098】
また、このような光硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる光学材料は、加熱しても、変色および透明性の喪失を低減することができる。
【0099】
したがって、本発明の光硬化性樹脂組成物および光学材料は、屈折率の向上を図ることができながら、透明性、耐熱性および取扱性の向上を図ることができる。
【0100】
本発明の光硬化性樹脂組成物の用途としては、透明性および耐熱性に優れることから、例えば、光学レンズなどの光学部品用成形材料、光学部品固定用光硬化型接着剤などが挙げられる。
【0101】
より具体的には、光硬化性樹脂組成物は、ガラスなどの透明基板上で、硬化させることにより、透明基板と一体化させることができ、高品質なハイブリッドレンズとして製造することができる。
【0102】
また、高温下における、ハンダリフローにより、プリント基板に実装することができる光学部品用成形材料として製造することもできる。
【実施例】
【0103】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、何らこれらに限定されるものではない。
【0104】
実施例1〜11および比較例1、2
表1に示す処方において、各成分を配合し、溶融混合することで、光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0105】
(評価)
各実施例および比較例で調製された光硬化性樹脂組成物について、粘度測定、耐熱変色性(透明性)試験、屈折率測定を、次のように実施した。その結果を表1に示す。
(1)粘度測定
E型粘度計(東機産業社製)を使用し、各実施例および比較例で調製された光硬化性樹脂組成物の25℃における、粘度を測定した。
(2)耐熱変色性(透明性)試験
各実施例および比較例で調製された光硬化性樹脂組成物を、それぞれ、シリコーン離型処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(ダイアホイル MRF-50、三菱化学ポリエステルフィルム社製)上に、厚さ600μmとなるように成膜し、これに光照射(光量8000mJ/cm)し、一次硬化させた。その後、150℃で1時間加熱処理することにより、PETフィルムと一体化した各光学材料を得た。これら光学材料を3cm角の試験片として、それぞれ切り出し、切り出された試験片を260℃のリフロー炉に、10秒間通した後、カラーコンピューター(SM−T、スガ試験機社製)により、透過モードで、試験片のイエローインデックス値(Y.I.値)を測定した。数値は、低い値ほど変色性が低く、透明性が高いことを示しており、Y.I.値が、40以下はA、80未満はB、80以上はCと、評価した。
(3)屈折率測定
各実施例および比較例で調製された光硬化性樹脂組成物を、それぞれ1×1.5×0.5cmの透明成形型に流し込み、紫外線(UV)を16000mJで照射し、硬化させた後、成形型から取り出し、150℃において、1時間加熱処理して、各光学材料を得た。得られた光学材料の表面をグラインダーにより研磨し、屈折率計(アタゴ社製)を用いて、25℃における、光学材料の屈折率を測定した。
【0106】
【表1】

【0107】
なお、表1の略号などを以下に示す。
エポキシ樹脂(A)
A−1:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量185g/eq.、粘度1000mPa・s)
A−2:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ当量160g/eq.、粘度1300mPa・s)
A−3:フルオレン型エポキシ樹脂(エポキシ当量243g/eq.、粘度0.6Pa・s(150℃))
A−4:脂環式エポキシ樹脂(セロキサイド 2021P、エポキシ当量138g/eq.、粘度150〜400mPa・s(25℃)、ダイセル化学社製)
光重合開始剤(B):トリアリールスルホニウム系光重合開始剤(アニオン成分:PF(CFCF、カチオン成分:下記化学式(15)、濃度50質量%(溶媒:プロピレンカーボネート)
化学式(15):
【0108】
【化15】

【0109】
アルコキシシラン化合物(C)
C−1:メチルトリメトキシシラン
C−2:1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタン
C−3:ベンジルトリエトキシシラン
芳香脂肪族化合物(D)
D−1:1−フェニル−2−プロパノ―ル(上記化学式11)
D−2:2−フェニル−エチルアルコール(上記化学式7)
D−3:2−インダノール(上記化学式2)
D−4:2−ナフチルメタノール(上記化学式6)
オキセタン樹脂:4,4’−ビス(3−エチルオキセタン−3−イルメチルオキシメチル)ビフェニル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、
アニオン成分とカチオン成分とからなる光重合開始剤と、
メチルトリメトキシシラン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタン、および、ベンジルトリエトキシシランからなる群から選択される少なくとも1種のアルコキシシラン化合物とを含有することを特徴とする、光硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記アルコキシシラン化合物の配合割合が、前記エポキシ樹脂100質量部に対して、0.5〜5質量部であることを特徴とする、請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光硬化性樹脂組成物を、硬化させることにより得られることを特徴とする、光学材料。

【公開番号】特開2012−140501(P2012−140501A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292560(P2010−292560)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】