説明

光硬化性組成物、その組成物の反射防止膜を有する反射防止フィルム、及びこれを備えたディスプレイ用光学フィルタ

【課題】 本発明は、優れた反射防止効果を有すると共に、耐擦傷性にも優れた反射防止膜の形成に有利な光硬化性組成物を提供すること。
【解決手段】 少なくとも2個の光重合性基を有する化合物、無機酸化物微粒子、少なくとも1個の光重合性基を有するシランカップリング剤、カチオン系光重合開始剤及びラジカル系光重合開始剤を含む光硬化性組成物;この組成物の反射防止膜を有する反射防止フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶ディスプレイ、有機EL(電界発光)ディスプレイ、表面電界型ディスプレイ(SED)を含む電界放出型ディスプレイ(FED)等の各種ディスプレイの前面フィルタ等に有用な反射防止膜、さらには建築物、車両等の窓ガラス、或いはショーケース等の展示用設備のガラス等に設けられる反射防止膜の形成に好適に使用される光硬化性組成物、この組成物から得られる反射防止膜、及び反射防止膜を有する反射防止フィルム、並びにこれを備えたディスプレイ用光学フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶ディスプレイ、有機EL(電界発光)ディスプレイ、表面電界型ディスプレイ(SED)を含む電界放出型ディスプレイ(FED)等の各種ディスプレイの前面フィルタ、さらには建築物、車両等の窓ガラス、或いはショーケース等の展示用設備のガラス等には、光の反射を防止して画像の視認性を向上させるために反射防止フィルムが使用されている。
【0003】
このような反射防止フィルムは、マイクログラビア塗工法等の湿式法による成膜法を用いることにより、低コストで製造することができる。塗工型反射防止フィルムとしては、例えば、透明なプラスチックフィルムの表面に、ハードコート層、高屈折率層及び低屈折率層をこの順で積層したものが用いられている。また、高屈折率層とハードコート層とを兼ねた導電性高屈折率ハードコート層を透明フィルム上に形成し、その上に低屈折率層を形成したものも知られている。
【0004】
しかしながら、湿式法では、低屈折率成分の屈折率をより低下させること、及び高屈折率成分の屈折率をより向上させることが難しく、良好な反射防止特性を得ることが困難である。特に、低屈折率層をより低い屈折率とすることが極めて難しく、従来より、低屈折率層の低屈折率化について種々検討がなされている。
【0005】
通常、塗工型反射防止フィルムの低屈折率層材料としては、アルキル基の水素原子の一部がフッ素原子で置換されたフッ素樹脂が多く使用されている(例えば、特許文献1(特開平9−203801号公報))。
【0006】
フッ素樹脂を用いた低屈折率層の屈折率は低いが、屈折率を低くするためには、フッ素樹脂のフッ素置換されたアルキル鎖を長くしなければならない。しかしながら、アルキル鎖を長くすると形成される低屈折率層の膜強度が低下するという問題がある。
【0007】
塗工型低屈折率層としては、粒子径1〜100nmの屈折率(n)の低い微粒子をバインダで固化させる方法も提案されている。このうち、シリカ微粒子(n=1.47)をアクリル系バインダで固化させたものは、膜強度は高いものの、シリカ微粒子の屈折率が1.47程度と比較的高いため、通常のバインダでは、形成される低屈折率層の屈折率を1.49以下にすることは不可能である。
【0008】
また、バインダとして2官能以上の多官能アクリル樹脂を用い、多孔質シリカ微粒子を配合した低屈折率層を湿式法で成膜することも提案されている(特許文献2(特開2003−261797号公報)、特許文献3(特開2003−262703号公報)、特許文献4(特開2003−266602号公報))。
【0009】
しかしながら、2官能以上のアクリル樹脂を多孔質シリカ微粒子と混合して成膜した膜は膜強度が非常に劣り、単に2官能以上のアクリル樹脂を多孔質シリカ微粒子と混合しても、耐擦傷性のある低屈折率層を形成することはできない。また、これらの公報では、ポーラスシリカではなく多孔質シリカ微粒子を用いているが、多孔質シリカではシリカの屈折率を十分に下げることができず、このため、低屈折率層の屈折率も十分に低い値とはならない。
【0010】
【特許文献1】特開平9−203801号公報
【特許文献2】特開2003−261797号公報
【特許文献3】特開2003−262703号公報
【特許文献4】特開2003−266602号公報
【特許文献5】特開2005−181543号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述のように、反射防止膜に使用される、屈折率が低く、耐擦傷性に優れた低屈折率層は得られていない。また、高屈折率層についても同様である。
【0012】
前述の、反射防止膜を形成するためにシリカ等の無機微粒子を2官能以上の多官能アクリル樹脂等のバインダで固化させる際に、シリカ等とバインダの相溶性を向上させるためにシランカップリング剤で表面処理シリカの使用して耐擦傷性の向上を図ることも提案されている(特許文献5(特開2005−181543号公報))。しかしながら、本発明の検討によれば、表面処理の工程が煩雑であり、また表面処理状態によっては反射防止膜形成組成物の貯蔵安定性が低下する場合があるとの問題があることが分かった。
【0013】
従って、本発明は、優れた反射防止効果を有すると共に、耐擦傷性にも優れた反射防止膜の形成に有利で、製造が容易な光硬化性組成物を提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明は、優れた反射防止効果を有すると共に、耐擦傷性及び靱性にも優れた反射防止膜の形成に有利で、製造が容易な光硬化性組成物を提供することを目的とする。
【0015】
さらに、本発明は、優れた反射防止効果を有すると共に、耐擦傷性にも優れ、製造が容易な反射防止膜フィルムを提供することを目的とする。
【0016】
また、本発明は、優れた反射防止効果を有すると共に、耐擦傷性にも優れ、製造が容易なディスプレイ用光学フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
従って、本発明は、
少なくとも2個の光重合性基を有する化合物、
無機酸化物、
少なくとも1個の光重合性基を有するシランカップリング剤、
カチオン系光重合開始剤及び
ラジカル系光重合開始剤
を含む光硬化性組成物にある。
【0018】
本発明の光硬化性組成物の好適態様は以下の通りである。
(1)反射防止膜形成用である。反射防止膜の低屈折率層又は高屈折率層の形成に有利に使用することができる。
(2)無機酸化物微粒子が、Si、Ti、Zr、Sb、Sn、As、Nb、In、Al、W、Y、Be、Ce、Cs、La、Ho、B、P及びMoよりなる群から選ばれる1種又は2種以上の元素を含む酸化物微粒子である。例えば、SiO2、TiO2、ZrO2、Sb23、SbO2、SnO2、In23,CeO2、Al23、WO3、Y23、La23、Ho23、ITO、ATOを挙げることができる。低屈折率層用としては、SiO2が好ましく、高屈折率用としては、ITO、TiO2、ZrO2、CeO2、Al23、Y23、La23及びHo23が好ましく、特にTiO2、ITOが好ましい。
【0019】
無機酸化物微粒子の平均粒径が5〜1000nmであることが好ましい。
(3)無機酸化物微粒子が、中空のシリカ微粒子である。中空のシリカ微粒子は、中空殻状のシリカ微粒子であり、その平均粒径は10〜100nm、特に30〜80nmであることが好ましい。
(4)カチオン系光重合開始剤が、スルホニウム塩系化合物及び/又はヨードニウム塩系化合物である。
(5)光重合性基が、ラジカル重合性基(炭素炭素2重結合)であり、特に(メタ)アクリロイル基である。
(6)無機酸化物微粒子(好ましくは中空のシリカ微粒子)が、光硬化性組成物の不揮発分全量(即ち、有機溶剤を除く)に対して30〜75質量%の量で含まれている。
【0020】
本発明は、
上記光硬化性組成物の光硬化物からなる反射防止膜が透明基板上に設けられたことを特徴とする反射防止フィルムにもある。
【0021】
反射防止フィルムにおいて、反射防止膜と透明基板との間にハードコート層が設けられていることが好ましい。反射防止膜が基礎が強固となり、耐久性が向上する。
【0022】
また本発明は、
上記の反射防止フィルムを含むディスプレイ用光学フィルタにもある。
【発明の効果】
【0023】
本発明の光硬化性組成物は、低屈折率層又は高屈折率層等の反射防止膜の形成に特に有用なものであり、この組成物を用いて得られる反射防止膜は、優れた反射防止特性と耐擦傷性と兼ね備えており、しかも本発明の光硬化性組成物は、簡便に製造することができ、且つ貯蔵安定性にも優れたものである。
【0024】
即ち、本発明の光硬化性組成物は、バインダ成分としての光重合性基を有する化合物、表面処理されていない無機酸化物微粒子、シランカップリング剤、カチオン系光重合開始剤及びラジカル系光重合開始剤を含んでおり、光硬化の際、カチオン系光重合開始剤の分解による酸発生によりシランカップリング剤が無機酸化物微粒子表面に結合し、それと同時にシランカップリング剤の光重合性基がバインダ成分としての光重合性基を有する化合物の光重合性基に反応して、無機酸化物微粒子とバインダ成分が一体化し、無機酸化物微粒子を含有する強固な層が形成される。このため、本発明の組成物を用いて得られる反射防止膜は、優れた反射防止特性と耐擦傷性と兼ね備えたものであるということができる。カチオン系光重合開始剤による酸発生により形成される反射防止膜と基板との密着性も向上している。
【0025】
さらに、本発明では、シランカップリング剤で処理された無機酸化物微粒子の代わりに無機酸化物微粒子とシランカップリング剤をそのまま使用しているため、組成物の作製が容易であると共に、得られる組成物の貯蔵安定性も優れたものになっている。
【0026】
従って、本発明の反射防止膜を有する反射防止フィルムは、優れた反射防止特性と耐擦傷性、さらには良好な密着性を有しており、このため広範な用途に使用可能である。例えば、プラズマディスプレイパネル(PDP)、ブラウン管(CRT)ディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機EL(電界発光)ディスプレイ、表面電界型ディスプレイ(SED)を含む電界放出型ディスプレイ(FED)等の各種ディスプレイの前面フィルタ等に有用な反射防止膜、さらには建築物、自動車、電車の窓ガラス、或いはショーウィンドウ等の展示用設備のガラス等に使用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の光硬化性組成物は、前述のように、バインダ成分としての少なくとも2個の光重合性基を有する化合物、無機酸化物微粒子、少なくとも1個の光重合性基を有するシランカップリング剤、カチオン系光重合開始剤及びラジカル系光重合開始剤を含んでいる。
【0028】
少なくとも2個の光重合性基を有する化合物としては、従来公知の光重合性モノマー、オリゴマー、さらには光重合性基を有するポリマーを使用することができる。光重合性基としては、ラジカル重合性基である炭素炭素2重結合を有する基、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基を挙げることができ、特に、優れた反応性から、アクリロイル基、メタクリロイル基が好ましい。カチオン重合性基としてはエポキシ基等を挙げることができ、カチオン重合性基を有する化合物は、ラジカル重合性基を有する化合物と併用しても良い。本発明では、光重合性基として、ラジカル重合性基である炭素炭素2重結合を有する基であることが好ましい。本発明では、バインダ成分(光硬化性樹脂)として、上記少なくとも2個の光重合性基を有する化合物を使用するが、光重合性基を1個有するモノマー、或いは他のポリマー等を使用することも当然可能である。
【0029】
炭素炭素2重結合を有するモノマー、オリゴマーとしては、
例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルポリエトキシ(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンモノ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、N−ビニルカプロラクタム、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、o−フェニルフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロアルキル基(直鎖又は環式)を含む(メタ)アクリレート、後述する一般式 (III)で表される(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン等の炭素炭素2重結合を1個有するモノマー;
ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジプロポキシジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリス〔(メタ)アクリロキシエチル〕イソシアヌレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、パーフルオロアルキル基(直鎖又は環式)を含むジ又はトリ(メタ)アクリレート、トリアクリロイルヘプタデカフルオロノネリルペンタエリスリトール、及び後述する一般式(I)及び(II)で表される(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート、ビニルスチレン等の炭素炭素2重結合を2個以上有するモノマー;
ポリオール化合物(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、ビスフェノールAポリエトキシジオール、ポリテトラメチレングリコール等のポリオール類、前記ポリオール類とコハク酸、マレイン酸、イタコン酸、アジピン酸、水添ダイマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の多塩基酸又はこれらの酸無水物類との反応物であるポリエステルポリオール類、前記ポリオール類とε−カプロラクトンとの反応物であるポリカプロラクトンポリオール類、前記ポリオール類と前記、多塩基酸又はこれらの酸無水物類のε−カプロラクトンとの反応物、ポリカーボネートポリオール、ポリマーポリオール等)と有機ポリイソシアネート(例えば、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、ジシクロペンタニルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4′−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2′−4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等)と水酸基含有(メタ)アクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキサン−1,4−ジメチロールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等)の反応物であるポリウレタン(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応物であるビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートオリゴマー類等;
(メタ)アクリロイル基を有するアクリル樹脂{例えば、アルキル(メタ)アクリレート等の(共)重合体で(メタ)アクリロイル基が導入されたもの(例えば、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(共)重合体、この(共)重合体の水素原子の一部がフッ素で置換されたもの)}の水素原子;
を挙げることができる。
【0030】
これら化合物は1種又は2種以上、混合して使用することができる。
【0031】
炭素炭素2重結合を有するモノマー、オリゴマーにおける多官能(メタ)アクリル系化合物としては、下記一般式(I)で表される6官能(メタ)アクリル系化合物及び/又は下記一般式(II)で表される4官能(メタ)アクリル系化合物を含むことが好ましい。
【0032】
【化1】

【0033】
{上記式中、A1〜A6は各々独立に、アクリロイル基、メタクリロイル基、α−フルオロアクリロイル基、又はトリフルオロメタクリロイル基を表し、
n、m、o、p、q、rは各々独立に、0〜2の整数を表し、
1〜R6は各々独立に、炭素原子数1〜3のアルキレン基、或いは水素原子の1個以上がフッ素原子に置換された炭素原子数1〜3のフルオロアルキレン基を表す。}
【0034】
【化2】

【0035】
{上記式中、A11〜A14は各々独立に、アクリロイル基、メタクリロイル基、α−フルオロアクリロイル基、又はトリフルオロメタクリロイル基を表し、
s、t、u、vは各々独立に、0〜2の整数を表し、
11〜R14は各々独立に、炭素原子数1〜3のアルキレン基、或いは、水素原子の1個以上がフッ素原子に置換された炭素原子数1〜3のフルオロアルキレン基を表す。}
炭素炭素2重結合を有する化合物(紫外線硬化性樹脂)のラジカル性光重合開始剤として、炭素炭素2重結合を有する化合物の性質に適した任意の化合物を使用することができる。例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1、2,2−ジエトキシアセトフェノン等のアセトフェノン系、ベンジルジメチルケタール等のベンゾイン系、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系、イソプロピルチオキサントン、2−4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系、その他特殊なものとしては、メチルフェニルグリオキシレート等が使用できる。特に好ましくは、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1、ベンゾフェノン等が挙げられる。これら光重合開始剤は、必要に応じて、4−ジメチルアミノ安息香酸のごとき安息香酸系叉は、第3級アミン系などの公知慣用の光重合促進剤の1種または2種以上を任意の割合で混合して使用することができる。また、光重合開始剤のみの1種または2種以上の混合で使用することができる。特に1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバスペシャルティケミカルズ社製、イルガキュア184)、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン (チバスペシャルティケミカルズ社製、イルガキュア127)が好ましい。
【0036】
光重合開始剤の量は、光硬化性組成物の不揮発分に対して0.1〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%である。
【0037】
本発明の光硬化性組成物に用いられるカチオン性光重合開始剤としては、光を照射することにより活性化され、プロトン供与体として作用するカチオン酸を発生して、前記シランカップリング剤と無機酸化物微粒子の表面との反応を促進するものである(当然前記カチオン重合性化合物に対しては、光カチオン重合反応させうるものでもある)。例えば、ルイス酸のジアゾニウム塩、ルイス酸のヨードニウム塩、ルイス酸のスルホニウム塩等のオニウム塩等を挙げることができる。これらのカチオン性光重合開始剤は、単独で用いられても良いし、2種以上が併用されても良い。
【0038】
上記オニウム塩としては、例えば、四フッ化ホウ素のフェニルジアゾニウム塩、六フッ化リンのジフェニルヨードニウム塩、六フッ化アンチモンのジフェニルヨードニウム塩、六フッ化ヒ素のトリ−4−メチルフェニルスルホニウム塩、四フッ化アンチモンのトリ−4−メチルフェニルスルホニウム塩等を挙げることができる。また、カチオン性光重合開始剤の市販品としては、例えば、チバスペシャルティケミカルズ社製の商品名「イルガキュア250」等の「イルガキュア」シリーズ、(株)ADEKA製の「オプトマーSP」シリーズ、三新化学工業(株)製の商品名「サンエイドSI−60L」、「サンエイドSI−80L」、「サンエイドSI−100L」、「サンエイドSI−110L」、「サンエイドSI−180L」等の「サンエイド」シリーズ、サンアプロ(株)製の商品名「CPI−100P」、「CPI−101A」、「CPI−200K」、「CPI−210S」等を挙げることができる。
【0039】
カチオン性光重合開始剤は、光硬化性組成物100質量部に対して0.1〜10質量部で使用することが好ましい。カチオン性光重合開始剤の量が下限未満であると、シランカップリング剤と無機酸化物微粒子との反応(さらには使用した場合は光カチオン性光重合性化合物の光カチオン重合反応)が十分に進行しなくなる。
【0040】
本発明の無機酸化物微粒子としては、本発明の微粒子を含まない光硬化性組成物の硬化層の屈折率大きく低下させるか、或いは増大させる酸化物微粒子でどのようなものでも使用することができる。無機酸化物の無機元素としては、Si、Ti、Zr、Sb、Sn、As、Nb、In、Al、W、Y、Be、Ce、Cs、La、Ho、B、P及びMoを挙げることができる。無機酸化物は、これらの元素を1種又は2種以上含む酸化物微粒子であることが好ましい。例えば、SiO2、TiO2、ZrO2、Sb23、SbO2、SnO2、In23,CeO2、Al23、WO3、Y23、La23、Ho23、ITO、ATOを挙げることができる。
【0041】
高屈折率層形成用無機酸化物としては、ITO、TiO2、ZrO2、CeO2、Al23、Y23、La23及びHo23が好ましく、特にTiO2、ZrO2が好ましい。このような酸化物の微粒子は、1種で使用しても、2種以上で使用しても良い。無機酸化物微粒子の平均粒径が5〜1000nm、特に5〜200nm、であることが好ましい。
【0042】
高屈折率層の場合における、無機酸化物微粒子割合は、光硬化性組成物全量(有機溶剤を除く)に対して30〜85質量%の量で含まれることが好ましい。無機酸化物微粒子が上記上限を超えた場合、高屈折率層の膜強度が低下し、逆に金属酸化物微粒子が少ないと屈折率を十分に高めることができない。
【0043】
このような高屈折率層の厚さは80〜5000nmが好ましい。また、この高屈折率層は屈折率1.60以上、特に1.66〜1.95であることが好ましい。
【0044】
低屈折率層形成用無機酸化物としては、SiO2が好ましい。特に中空のシリカ微粒子であることが好ましい。中空のシリカ微粒子(ポーラスシリカ微粒子ともいう)は、中空殻状のシリカ微粒子であり、その平均粒径は10〜100nm、特に30〜80nmであることが好ましい。この中空のシリカ微粒子の平均粒径が下限未満では、ポーラスシリカの屈折率を下げることが困難であり、上限を超えると光を乱反射し、また形成される低屈折率層の表面粗さが大きくなる等の問題が発生する。
【0045】
ポーラスシリカは、中空内部に屈折率の低い空気(屈折率=1.0)を有しているため、その屈折率は、通常のシリカ(屈折率=1.46)と比較して著しく低い。ポーラスシリカの屈折率は、その中空部の体積割合により決定されるが、通常1.20〜1.40程度であることが好ましい。
【0046】
なお、ポーラスシリカの屈折率:n(ポーラスシリカ)は、中空微粒子の殻部を構成するシリカの屈折率:n(シリカ)、内部の空気の屈折率:n(空気)から、次のようにして求められる。
【0047】
n(ポーラスシリカ)=n(シリカ)×シリカの体積分率
前述の如く、n(シリカ)は約1.47であり、n(空気)は1.0と非常に低いため、このようなポーラスシリカの屈折率は非常に低いものとなる。
【0048】
また、このようなポーラスシリカを用いた本発明の低屈折率層の屈折率:n(低屈折率層)は、ポーラスシリカの屈折率:n(ポーラスシリカ)とバインダ成分の屈折率:n(バインダ)とから、次のようにして求められる。
【0049】
n(低屈折率層)=
[n(ポーラスシリカ)×低屈折率層中のポーラスシリカの体積割合]+
[n(バインダ)×低屈折率層中のバインダの体積割合]
上式において、バインダの屈折率は(メタ)アクリレート系紫外線硬化樹脂では、おおむね1.47〜1.55程度であるため、低屈折率層中のポーラスシリカの体積分率を増やすことが、低屈折率層の屈折率の低減に重要な要件となる。
【0050】
本発明において、低屈折率層中のポーラスシリカの含有量は、多い程、屈折率がより低い低屈折率層を形成することができ、反射防止特性に優れた反射防止フィルムを得ることができるが、相対的にバインダ成分の含有量が減ることにより、低屈折率層の膜強度が低下し、耐擦傷性、耐久性が低下する。しかしながら、本発明ではポーラスシリカの表面がバインダ成分(紫外線硬化性樹脂)と反応して結合しているため、ポーラスシリカの配合量を増やすことによる膜強度の低下は、抑制することができ、耐擦傷性を向上させることができる。
【0051】
低屈折率層の場合における、ポーラスシリカ割合は、光硬化性組成物全量(有機溶剤を除く)に対して30〜75質量%の量で含まれていることが好ましい。ポーラスシリカが上記上限を超えた場合、低屈折率層の膜強度が低下し、逆にポーラスシリカが少ないと屈折率を十分に低下させることができない。
【0052】
またこのような範囲で使用することにより、低屈折率層の屈折率1.35〜1.45にすることが可能である。
【0053】
本発明で用いるポーラスシリカは、従来の低屈折率層に配合される一般的なシリカ微粒子(粒径5〜20nm程度)に比べて粒径が大きいため、同一のバインダ成分を用いた場合でも、シリカ微粒子を配合する場合に比べて、形成される低屈折率層の膜強度が弱くなる傾向があるが、本発明では、本発明ではポーラスシリカの表面がシランカップリング剤と反応し、これがバインダ(紫外線硬化性樹脂)と反応して結合しているため、形成される低屈折率層の膜強度は向上し、耐擦傷性も大きく向上させることができる。
【0054】
本発明の少なくとも1個の光重合性基を有するシランカップリング剤は、ポーラスシリカ等の無機酸化物微粒子の表面と反応し、且つバインダ成分としての光重合性基を有する化合物(紫外線硬化性樹脂)と反応するものである。このような少なくとも1個の光重合性基を有するシランカップリング剤としては、紫外線硬化性樹脂と反応する(メタ)アクリロイル基、ビニル基、エポキシ基(好ましくは(メタ)アクリロイル基)等の光重合性基と、無機微粒子表面のヒドロキシル基と反応するSiに結合したアルコキシ基を有するものが好ましい。特に、下記一般式(IV)で表される末端(メタ)アクリルシランカップリング剤が好ましい。
【0055】
【化3】

【0056】
[式中、R21は水素原子、フッ素原子又はメチル基を表し、
22は炭素原子数1〜8のアルキレン基、又は、水素原子の1個以上がフッ素原子に置換された炭素原子数1〜8のフルオロアルキレン基を表し、
23〜R25は各々独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。]
このような末端(メタ)アクリルシランカップリング剤としては、例えばCH2=CH−COO−(CH23−Si−(OCH33、CH2=C(CH3)−COO−(CH23−Si−(OCH33等を挙げることができ、これらは単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0057】
また、シランカップリング剤として、下記一般式(V)で表される末端フルオロアルキルシランカップリング剤を併用しても良い。
【0058】
【化4】

【0059】
[上記一般式(V)中、R31〜R33は各々独立に、水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、yaは1〜8の整数を表し、ybは1〜3の整数を表す。]
上記末端フルオロアルキルシランカップリング剤としては例えばC817−(CH22−Si−(OCH33、C613−(CH22−Si−(OCH33等を挙げることができ、これらは単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0060】
このような末端フルオロアルキルシランカップリング剤を用いることにより、形成される低屈折率層の防汚性を高めることができる。
【0061】
本発明のシランカップリング剤は、上記光硬化性組成物100質量部に対して0.1〜10質量部、特に0.5〜5質量部使用することが好ましい。シランカップリング剤の使用量が、下限未満の場合、低又は高屈折率層の膜強度が低下し、逆に上限を超えるても膜強度が低下する。
【0062】
本発明の光硬化性組成物は、上記各種材料を撹拌混合することにより得ることができる。開始剤等を溶解させるために適宜有機溶剤を使用しても良い。さらに、各種添加剤、助剤(例、紫外線防止剤、帯電防止剤、界面活性剤、色材)等を添加しても良い。
【0063】
本発明の反射防止フィルムは、上記光硬化性組成物を含む塗布液を、透明基板に塗布、光硬化させることにより反射防止膜(低屈折率層又は高屈折率層)を形成することによって得ることができる。
【0064】
塗布の方法としては、例えば、本発明の光硬化性組成物を有機溶媒で溶液にした塗工液をグラビアコータ等によりコーティングし、その後乾燥し、次いで紫外線により硬化する方法を挙げることができる。このウェットコーティング法であれば、高速で均一に且つ安価に成膜できるという利点がある。このコーティング後に、上記のように紫外線を照射して硬化することにより密着性の向上、膜の硬度の上昇という効果が得られる。
【0065】
有機溶剤の例としては、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、トルエンキシレン等の芳香族炭化水素、プロプレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエーテル類を挙げることができる。
【0066】
紫外線硬化の場合は、光源として紫外〜可視領域に発光する多くのものが採用でき、例えば超高圧、高圧、低圧水銀灯、ケミカルランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、マーキュリーハロゲンランプ、カーボンアーク灯、白熱灯、レーザー光等を挙げることができる。照射時間は、ランプの種類、光源の強さによって一概には決められないが、数秒〜数分程度である。また、硬化促進のために、予め積層体を40〜120℃に加熱し、これに紫外線を照射してもよい。
【0067】
図1に、本発明の反射防止フィルムの実施の形態の一例を示す概略断面図を示す。図1において、透明基板11、その上に低屈折率層12が設けられている。低屈折率層12は、透明基板11の屈折率より低い屈折率を有する層である。透明基板11と低屈折率層12との界面で反射防止効果が得られる。また、図2に示すように、低屈折率層12と透明基板11との間にハードコート層13が設けられていることが好ましい。この場合は、ハードコート層13は高屈折率層である。ハードコート層13の設置により反射防止膜の基礎が強固となり、その耐久性が向上する。室内照明光等の外光は、低屈折率層12側から入射するように設置される。ディスプレイ用フィルタとして製造する場合には、透明基板の裏側にさらに種々の層が積層され、例えば近赤外線遮蔽層、色調補正フィルタ層、導電層(電磁波シールド層)、あるいは自立性の透明基板等が、所望によりさらにそれらの接着層を介して積層される。
【0068】
また、透明基板、その上にハードコート層、さらにその上に高屈折率層及び低屈折率層がこの順で設けられることも好ましい。優れた反射防止効果が得られる。
【0069】
本発明の反射防止フィルム或いはこれを含むディスプレイ用光学フィルタに使用される材料について以下に説明する。
【0070】
透明基板は、その材料としては、透明(「可視光に対して透明」を意味する。)であれば特に制限はないが、一般にプラスチックフィルムが使用される。例えば、ポリエステル{例、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート}、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、アクリル樹脂、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン、トリアセチルセルロース樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、金属イオン架橋エチレン−メタクリル酸共重合体、ポリウレタン、セロファン等を挙げることができる。これらの中でも、加工時の負荷(熱、溶剤、折り曲げ等)に対する耐性が高く、透明性が特に高い等の点で、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等が好ましい。特に、PETが、加工性が優れているので好ましい。
【0071】
透明基板の厚さとしては、光学フィルタの用途等によっても異なるが、一般に10μm〜5mm程度が好ましい。
【0072】
本発明では、透明基板としてプラスチックフィルムを使用することにより、本発明の光学フィルタを、例えば、PDP表示装置の表面であるガラス板表面に直接貼り合わせることができる。これにより、PDP自体の軽量化、薄型化、低コスト化に寄与できる。また、PDPの前面側に透明成形体からなる前面板を設置する場合に比べると、PDPとPDP用フィルタとの間に屈折率の低い空気層をなくすことができるため、界面反射による可視光反射率の増加、二重反射などの問題を解決でき、PDPの視認性をより向上させることができる。

【実施例】
【0073】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0074】
[実施例1]
(1)反射防止膜形用塗布液の調製
下記の光硬化性組成物の配合、
(配合)
中空シリカ微粒子分散液(平均粒径55nm、20質量%IPA液;
スルーリア、触媒化成工業社製) 88.2質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 2.6質量部
2−(パーフルオロオクチル)エチルメタクリレート 7.8質量部
3−アクリロイルオキシプロピルメトキシシラン 1.4質量部
ラジカル系光重合開始剤
(イルガキュア184、チバスペシャルティケミカルズ社製) 1.2質量部
カチオン系光重合開始剤
(イルガキュア250、チバスペシャリティケミカル社製) 1.5質量部
に有機溶剤を加えて固形分が3.5質量%の反射防止膜(低屈折率層)形成用塗布液を得た。
【0075】
(2)反射防止フィルムの作製
ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ150μm)上に、ハードコート層形成用塗布液{ジペンタヘキサアクリレート(DPHA)30質量部及びイルガキュア184(チバスペシャリティケミカル社製)2質量部}を、バーコータを用いて塗布し、塗布層の表面に紫外線照射(高圧水銀灯、照射距離20cm、照射時間5秒)して、厚さ5μmのハードコート(屈折率1.5)を形成した。
【0076】
上記ハードコートの表面に前記で得られた反射防止膜形用塗布液を、バーコータを用いて塗布し、40℃で3分間乾燥させた後、塗布層の表面に紫外線照射(高圧水銀灯、照射距離20cm、照射時間5秒)して、厚さ0.1μmの反射防止膜(低屈折率層)を形成した。
【0077】
[実施例2]
(1)反射防止膜形用塗布液の調製
下記の光硬化性組成物の配合、
(配合)
中空シリカ微粒子分散液(平均粒径55nm、20質量%IPA液;
スルーリア、触媒化成工業社製) 88.2質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 1.0質量部
ペンタエリスリトールトリアクリレート 4.0質量部
フッ素含有反応性ポリマー
(オプツールAR、ダイキン工業(株)製) 5.0質量部
3−アクリロイルオキシプロピルメトキシシラン 1.8質量部
ラジカル系光重合開始剤
(イルガキュア127、チバスペシャルティケミカルズ社製) 1.2質量部
カチオン系光重合開始剤(CPI−100P(濃度50質量%)、
サンアプロ(株)社製) 2.8質量部
に有機溶剤を加えて固形分が3.5質量%の反射防止膜(低屈折率層)形成用塗布液を得た。
【0078】
(2)反射防止フィルムの作製
ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ150μm)上に、ハードコート層形成用塗布液{ジペンタヘキサアクリレート(DPHA)30質量部及びイルガキュア184(チバスペシャリティケミカル社製)2質量部}を、バーコータを用いて塗布し、塗布層の表面に紫外線照射(高圧水銀灯、照射距離20cm、照射時間5秒)して、厚さ5μmのハードコート(屈折率1.5)を形成した。
【0079】
上記ハードコートの表面に前記で得られた反射防止膜形用塗布液を、バーコータを用いて塗布し、40℃で3分間乾燥させた後、塗布層の表面に紫外線照射(高圧水銀灯、照射距離20cm、照射時間5秒)して、厚さ0.1μmの反射防止膜(低屈折率層)を形成した。
【0080】
[比較例1]
実施例1において、シランカップリング剤(3−アクリロイルオキシプロピルメトキシシラン)及びカチオン系光重合開始剤を使用しなかった以外は、同様にして反射防止膜(低屈折率層)を形成した。
【0081】
[比較例2]
実施例1において、カチオン系光重合開始剤を使用しなかった以外は、同様にして反射防止膜(低屈折率層)を形成した。
【0082】
[実施例3](中空シリカの少ない場合)
実施例1において、中空シリカ微粒子分散液の量を30.0質量部に変更した以外は、同様にして反射防止膜(低屈折率層)を形成した。
【0083】
[実施例4](中空シリカの多い場合)
実施例1において、中空シリカ微粒子分散液の量を120.0質量部に変更した以外は、同様にして反射防止膜(低屈折率層)を形成した。
【0084】
[反射防止フィルムの評価]
(1)耐擦傷性
実施例、比較例で得られた反射防止フィルムの反射防止膜の表面に対してスチールウール試験を行った。スチールウールとして#1000を用い、荷重200gで10往復行った。
【0085】
○:傷が見られなかった
△:わずかに傷が見られた
×:多数傷が見られた
上記結果を表1に示す。
【0086】
【表1】

【0087】
上記結果から分かるように、本発明の反射防止フィルムは、耐擦傷性に優れており、また反射防止特性(目視)においても優れていた。また実施例1、比較例1及び比較例2の結果から、シランカップリング剤とカチオン系光重合開始剤の両方が使用した時にのみ耐擦傷性が向上しており、シリカ表面がバインダと結合したことが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の反射防止フィルムの実施の態様の1例の概略断面図である。
【図2】本発明の反射防止フィルムの実施の態様の別の1例の概略断面図である。
【符号の説明】
【0089】
11 透明基板
12 低屈折率層
13 ハードコート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2個の光重合性基を有する化合物、
無機酸化物微粒子、
少なくとも1個の光重合性基を有するシランカップリング剤、
カチオン系光重合開始剤及び
ラジカル系光重合開始剤
を含む光硬化性組成物。
【請求項2】
反射防止膜形成用である請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項3】
無機酸化物微粒子が、Si、Ti、Zr、Sb、Sn、As、Nb、In、Al、W、Y、Be、Ce、Cs、La、Ho、B、P及びMoよりなる群から選ばれる1種又は2種以上の元素を含む酸化物微粒子である請求項1又は2に記載の光硬化性組成物。
【請求項4】
無機酸化物微粒子が、中空のシリカ微粒子である請求項1〜3のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
【請求項5】
カチオン系光重合開始剤が、スルホニウム塩系化合物及び/又はヨードニウム塩系化合物である請求項1〜4のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
【請求項6】
光重合性基が、炭素炭素2重結合を有する基である請求項1〜5のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
【請求項7】
無機酸化物微粒子が、光硬化性組成物の不揮発分全量に対して30〜85質量%の量で含まれている請求項1〜6のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の光硬化性組成物の光硬化物からなる反射防止膜が透明基板上に設けられたことを特徴とする反射防止フィルム。
【請求項9】
請求項8に記載の反射防止フィルムを含むディスプレイ用光学フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−197155(P2009−197155A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−41348(P2008−41348)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】