説明

光硬化性組成物、及びインク組成物

【課題】高感度で硬化し、低粘度で、着色の少ない光硬化性組成物であり、且つ、インクジェット記録用として用いた場合においても、吐出時にノズルつまりを起こし難いインク組成物を提供する。
【解決手段】重合性化合物と、重合開始剤と、下記一般式(I)で表される化合物とを含有する光硬化性組成物。


〔前記一般式(I)中、Xは、酸素原子、硫黄原子、又はNRを表す〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性組成物、及びインク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
画像データ信号に基づき、紙などの被記録媒体に画像を形成する画像記録方法として、電子写真方式、昇華型及び溶融型熱転写方式、インクジェット方式などがある。電子写真方式は、感光体ドラム上に帯電及び露光により静電潜像を形成するプロセスを必要とし、システムが複雑となり、結果的に製造コストが高価になるなどの問題がある。また熱転写方式は、装置は安価であるが、インクリボンを用いるため、ランニングコストが高く、かつ廃材が出るなどの問題がある。
一方、インクジェット方式は、安価な装置で、且つ、必要とされる画像部のみにインクを吐出し被記録媒体上に直接画像形成を行うため、インクを効率良く使用でき、ランニングコストが安い。さらに、騒音が少なく、画像記録方式として優れている。
【0003】
紫外線などの活性放射線の照射により硬化可能なインク組成物(放射線硬化型インク組成物)、例えば、インクジェット記録用インク組成物としては、高感度で硬化し、高画質の画像を形成しうるものが求められている。高感度化を達成することにより、活性放射線の照射により高い硬化性が付与されるため、消費電力の低減や活性放射線発生器への負荷軽減による高寿命化などの他、充分な硬化が達成されることにより、未硬化の低分子物質の揮発、形成された画像強度の低下などを抑制することができるなど、種々の利点をも有することになる。
【0004】
紫外線光による硬化型インクジェット方式は、比較的低臭気であり、速乾性、インク吸収性の無い被記録媒体への記録ができる点で、近年注目されつつある。特に、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ミヒラーケトン、アントラキノン、アクリジン、フェナジン、ベンゾフェノン、2−エチルアントラキノン等が光重合開始剤として一般的に用いられてきた(例えば、非特許文献1参照。)。しかしながら、これらの光重合開始剤を用いた場合、光重合性組成物の硬化の感応度が低いので画像形成における像露光に長時間を要した。このため細密な画像の場合には、操作にわずかな振動があると良好な画質の画像が再現されず、さらに露光の光源のエネルギー放射量を増大しなければならないためにそれに伴う多大な発熱の放射を考慮する必要があった。また、インクジェット記録方式に用いられるインクとしては、保存により物性の変化あるいは沈澱物等を生じない事(溶液安定性)、ノズルの目詰まりを生じない事(吐出安定性)等の諸特性が必要である。
【0005】
一般に、放射線硬化型の重合性化合物における、放射線に対する感度を高める方法として、種々の重合開始系を使用することが開示されている(非特許文献1、特許文献1〜4)。しかし、走査露光に十分な感度と保存安定性、吐出安定性を満たした重合開始系をインクジェット記録用インクにおいて採用した例はない。
このため、低出力の放射線に対しても高感度で硬化し、高画質の画像を形成することができ、且つ、保存安定性、吐出安定性が良好な、インクジェット記録用として好適に用いられるインク組成物が切望されている。
【非特許文献1】ブルース M.モンロー(Bruce M. Monroe)ら著,ケミカル レビュー(Chemical Reviews),第93巻,(1993年),p.435−448.
【特許文献1】米国特許第4134813号明細書
【特許文献2】特開平1−253731号公報
【特許文献3】特開平6−308727号公報
【特許文献4】EP1616922A1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、放射線照射に対して高感度で硬化し、低粘度で、着色の少ない光硬化性組成物を提供することにある。
さらに、本発明の目的は、低出力の放射線照射に対しても高感度で硬化し高画質の画像を形成することができ、且つ、インクジェット記録用として用いた場合においても、吐出時にノズルつまりを起こし難いインク組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意検討を重ねた結果本発明を完成した。すなわち、前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
<1> 重合性化合物と、重合開始剤と、下記一般式(I)で表される化合物とを含有する光硬化性組成物である。
【0008】
【化1】

【0009】
前記一般式(I)中、Xは、酸素原子、硫黄原子、又はNRを表し、Rは、水素原子、アルキル基、またはアシル基を表す。nは、0〜2の整数を表す。R〜R、及びZ〜Zは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または一価の基を示す。R〜Rは、それぞれ隣接する2つが互いに結合して環を形成してもよい。
【0010】
<2> 前記一般式(I)で表される化合物が、下記一般式(II)で表される化合物である前記<1>に記載の光硬化性組成物である。
【0011】
【化2】

【0012】
前記一般式(II)中、nは、0〜2の整数を表す。R〜R、及びZ〜Zは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または一価の基を示す。R〜Rは、それぞれ隣接する2つが互いに結合して環を形成してもよい。
【0013】
<3> 前記一般式(II)で表される化合物が、下記一般式(III)で表される化合物である前記<2>に記載の光硬化性組成物である。
【0014】
【化3】

【0015】
前記一般式(III)中、R1a〜R4a、及びZ1a〜Z4aは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または一価の基を示す。R1a〜R4aは、それぞれ隣接する2つが互いに結合して環を形成してもよい。
【0016】
<4> 前記<1>〜前記<3>のいずれか1つに記載の光硬化性組成物を用いるインク組成物である。
【0017】
<5> 前記重合開始剤が、α−アミノケトン類及びアシルフォスフィンオキシド類からなる群より選択される少なくとも1つの重合開始剤である前記<4>に記載のインク組成物である。
【0018】
<6> インクジェット記録用である前記<4>または前記<5>に記載のインク組成物である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、放射線照射に対して高感度で硬化し、低粘度で、着色の少ない光硬化性組成物を提供することができる。
さらに、本発明によれば、低出力の放射線の照射に対しても高感度で硬化し高画質の画像を形成することができ、且つ、インクジェット記録用として用いた場合においても、吐出時にノズルつまりを起こし難いインク組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
〔光硬化性組成物〕
本発明の光硬化性組成物は、重合性化合物と、重合開始剤と、一般式(I)で表される化合物とを少なくとも含有する。
本発明の光硬化性組成物は、本発明の効果を損なわない限りに応じて、さらに、増感剤や、その他の成分を含有することもできる。
まず、一般式(I)で表される化合物について説明する。
【0021】
<一般式(I)で表される化合物>
本発明の光硬化性組成物は、下記一般式(I)で表される化合物を含有する。
下記一般式(I)で表される化合物(以下、「特定化合物」とも称する)は、重合開始剤や重合性化合物を含む光硬化性組成物に含有することのできる有用な化合物である。
【0022】
【化4】

【0023】
前記一般式(I)中、Xは、酸素原子、硫黄原子、又はNRを表し、Rは、水素原子、アルキル基またはアシル基を表す。nは、0〜2を表す。R〜R、Z〜Zは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または一価の基を示す。R〜Rは、それぞれ隣接する2つが互いに結合して環を形成してもよい。
【0024】
前記一般式(I)におけるXは、酸素原子、硫黄原子、又はNRを表し、Rは、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、またはアシル基を表す。前記Xは、酸素原子又は硫黄原子であることが好ましく、硫黄原子であることがより好ましい。
【0025】
前記一般式(I)におけるnは、0〜2を表す。これは、前記一般式(I)で表される構造において、Xを含む環が5員環〜7員環となり得ることを意味する。したがって、nが0の場合、Z及びZが結合する炭素原子は、前記特定化合物の分子内に存在せず、前記Xと、Z及びZが結合した炭素原子と、が直接結合して、Xを含む5員のヘテロ環を構成することになる。
【0026】
前記一般式(I)におけるR〜R、及びZ〜Zは、それぞれ独立に、水素原子、または一価の基を示す。
【0027】
前記一般式(I)におけるR〜R、又はZ〜Zとして表される一価の基の例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アルキルアミノ基、アリールアミノ基)、アシルアミノ基(アミド基)、アミノカルボニルアミノ基(ウレイド基)、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基、またはイミド基を挙げることができ、各々はさらに置換基を有していてもよい。以下に前記一価の基を更に詳しく説明する。
【0028】
前記一般式(I)におけるR〜R、又はZ〜Zとして表されるハロゲン原子は、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子が好ましい。中でも塩素原子、または臭素原子が好ましく、特に塩素原子が好ましい。
【0029】
前記一般式(I)におけるR〜R、又はZ〜Zとして表されるアルキル基は、置換もしくは無置換のアルキル基が含まれる。置換又は無置換のアルキル基は、炭素原子数が1〜30のアルキル基が好ましい。
【0030】
更に置換基を有することが可能な基であるときの置換基の例としては、炭素数1〜12の直鎖又は分岐鎖アルキル基、炭素数7〜18の直鎖又は分岐鎖アラルキル基、炭素数2〜12の直鎖又は分岐鎖アルケニル基、炭素数2〜12の直鎖又は分岐鎖アルキニル基、炭素数3〜12の直鎖又は分岐鎖シクロアルキル基、炭素数3〜12の直鎖又は分岐鎖シクロアルケニル基(例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、sec−ブチル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、2−メチルスルホニルエチル、3−フェノキシプロピル、トリフルオロメチル、シクロペンチル);
ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子);
アリール基(例えば、フェニル、4−t−ブチルフェニル、2,4−ジ−t−アミルフェニル);
ヘテロ環基(例えば、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル);
シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アミノ基;
【0031】
アルキルオキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、2−メチルスルホニルエトキシ);
アリールオキシ基(例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、3−t−ブチルオキシカルボニルフェノキシ、3−メトキシカルボニルフェニルオキシ);
【0032】
アシルアミノ基(例えば、アセトアミド、ベンズアミド、4−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)ブタンアミド);
アルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ、ブチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルブチルアミノ);
アリールアミノ基(例えば、フェニルアミノ、2−クロロアニリノ);
ウレイド基(例えば、フェニルウレイド、メチルウレイド、N,N−ジブチルウレイド);
スルファモイルアミノ基(例えば、N,N−ジプロピルスルファモイルアミノ);
【0033】
アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、オクチルチオ、2−フェノキシエチルチオ);
アリールチオ基(例えば、フェニルチオ、2−ブトキシ−5−t−オクチルフェニルチオ、2−カルボキシフェニルチオ);
【0034】
アルキルオキシカルボニルアミノ基(例えば、メトキシカルボニルアミノ);
アルキルスルホニルアミノ基及びアリールスルホニルアミノ基(例えば、メチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、p−トルエンスルホニルアミノ);
カルバモイル基(例えば、N−エチルカルバモイル、N,N−ジブチルカルバモイル);
スルファモイル基(例えば、N−エチルスルファモイル、N,N−ジプロピルスルファモイル、N−フェニルスルファモイル);
【0035】
スルホニル基(例えば、メチルスルホニル、オクチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−トルエンスルホニル);
【0036】
アルキルオキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、ブチルオキシカルボニル);
ヘテロ環オキシ基(例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ);
アゾ基(例えば、フェニルアゾ、4−メトキシフェニルアゾ、4−ピバロイルアミノフェニルアゾ、2−ヒドロキシ−4−プロパノイルフェニルアゾ);
アシルオキシ基(例えば、アセトキシ);
カルバモイルオキシ基(例えば、N−メチルカルバモイルオキシ、N−フェニルカルバモイルオキシ);
シリルオキシ基(例えば、トリメチルシリルオキシ、ジブチルメチルシリルオキシ);
アリールオキシカルボニルアミノ基(例えば、フェノキシカルボニルアミノ);
【0037】
イミド基(例えば、N−スクシンイミド、N−フタルイミド);
ヘテロ環チオ基(例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、2,4−ジ−フェノキシ−1,3,5−トリアゾール−6−チオ、2−ピリジルチオ);
スルフィニル基(例えば、3−フェノキシプロピルスルフィニル);
ホスホニル基(例えば、フェノキシホスホニル、オクチルオキシホスホニル、フェニルホスホニル);
アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル);
アシル基(例えば、アセチル、3−フェニルプロパノイル、ベンゾイル);
イオン性親水性基(例えば、カルボキシル基、スルホ基、ホスホノ基及び4級アンモニウム基)が挙げられる。
【0038】
前記一般式(I)におけるR〜R、又はZ〜Zとして表されるシクロアルキル基は、置換もしくは無置換のシクロアルキル基が含まれる。置換基又は無置換のシクロアルキル基は、炭素原子数が5〜30のシクロアルキル基が好ましい。前記シクロアルキル基の例にはシクロヘキシル、シクロペンチル、または4−n−ドデシルシクロヘキシルを挙げることができる。
【0039】
前記一般式(I)におけるR〜R、又はZ〜Zとして表されるアラルキル基は、置換もしくは無置換のアラルキル基が含まれる。置換もしくは無置換のアラルキル基としては、炭素原子数が7〜30のアラルキル基が好ましい。前記アラルキルの例にはベンジルおよび2−フェネチルを挙げることが出来る。
【0040】
前記一般式(I)におけるR〜R、又はZ〜Zとして表されるアルケニル基は、直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イルなどを挙げることが出来る。
【0041】
前記一般式(I)におけるR〜R、又はZ〜Zとして表されるアルキニル基は、炭素数2から30の置換又は無置換のアルキニル基であり、例えば、エチニル、またはプロパルギルを挙げることが出来る。
【0042】
前記一般式(I)におけるR〜R、又はZ〜Zとして表されるアリール基は、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、またはo−ヘキサデカノイルアミノフェニルである。
【0043】
前記一般式(I)におけるR〜R、又はZ〜Zとして表されるヘテロ環基は、5又は6員の置換もしくは無置換の、芳香族もしくは非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、それらは更に縮環していてもよい。更に好ましくは、炭素数3から30の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基である。
前記ヘテロ環基の例には、置換位置を限定しないで例示すると、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、トリアジン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、シンノリン、フタラジン、キノキサリン、ピロール、インドール、フラン、ベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ピラゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、ベンズオキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、ベンズイソチアゾール、チアジアゾール、イソオキサゾール、ベンズイソオキサゾール、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、イミダゾリジン、チアゾリンなどが挙げられる。
【0044】
前記一般式(I)におけるR〜R、又はZ〜Zとして表されるアルコキシ基は、置換もしくは無置換のアルコキシ基が含まれる。置換もしくは無置換のアルコキシ基としては、炭素原子数が1〜30のアルコキシ基が好ましい。前記アルコキシ基の例には、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、n−オクチルオキシ、メトキシエトキシ、ヒドロキシエトキシおよび3−カルボキシプロポキシなどを挙げることが出来る。
【0045】
前記一般式(I)におけるR〜R、又はZ〜Zとして表されるアリールオキシ基は、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基が好ましい。前記アリールオキシ基の例には、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシなどを挙げることが出来る。
【0046】
前記一般式(I)におけるR〜R、又はZ〜Zとして表されるシリルオキシ基は、炭素数3から20のシリルオキシ基が好ましく、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシなどを挙げることが出来る。
【0047】
前記一般式(I)におけるR〜R、又はZ〜Zとして表されるヘテロ環オキシ基は、炭素数2から30の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基が好ましい。前記ヘテロ環オキシ基の例には、例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシなどを挙げることが出来る。
【0048】
前記一般式(I)におけるR〜R、又はZ〜Zとして表されるアシルオキシ基は、ホルミルオキシ基、炭素数2から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基が好ましく、前記アシルオキシ基の例には、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシなどを挙げることが出来る。
【0049】
前記一般式(I)におけるR〜R、又はZ〜Zとして表されるカルバモイルオキシ基は、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基が好ましく、前記カルバモイルオキシ基の例には、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシなどを挙げることが出来る。
【0050】
前記一般式(I)におけるR〜R、又はZ〜Zとして表されるアルコキシカルボニルオキシ基は、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基が好ましく、前記アルコキシカルボニルオキシ基の例には、例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシなどを挙げることが出来る。
【0051】
前記一般式(I)におけるR〜R、又はZ〜Zとして表されるアリールオキシカルボニルオキシ基は、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基が好ましく、前記アリールオキシカルボニルオキシ基の例には、例えば、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシなどを挙げることが出来る。
【0052】
前記一般式(I)におけるR〜R、又はZ〜Zとして表されるアミノ基は、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールアミノ基が好ましく、前記アミノ基の例には、例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ、ヒドロキシエチルアミノ、カルボキシエチルアミノ、スルフォエチルアミノ、3,5−ジカルボキシアニリノなどを挙げることが出来る。
【0053】
前記一般式(I)におけるR〜R、又はZ〜Zとして表されるアシルアミノ基は、ホルミルアミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基が好ましく、前記アシルアミノ基の例には、例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノなどを挙げることが出来る。
【0054】
前記一般式(I)におけるR〜R、又はZ〜Zとして表されるアミノカルボニルアミノ基は、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ基が好ましく、前記アミノカルボニルアミノ基の例には、例えば、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノなどを挙げることが出来る。
【0055】
前記一般式(I)におけるR〜R、又はZ〜Zとして表されるアルコキシカルボニルアミノ基は、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基が好ましく、前記アルコキシカルボニルアミノ基の例には、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチルーメトキシカルボニルアミノなどを挙げることが出来る。
【0056】
前記一般式(I)におけるR〜R、又はZ〜Zとして表されるアリールオキシカルボニルアミノ基は、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基が好ましく、前記アリールオキシカルボニルアミノ基の例には、例えば、フェノキシカルボニルアミノ、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノなどを挙げることが出来る。
【0057】
前記一般式(I)におけるR〜R、又はZ〜Zとして表されるスルファモイルアミノ基は、炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基が好ましく、前記スルファモイルアミノ基の例には、例えば、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノなどを挙げることが出来る。
【0058】
前記一般式(I)におけるR〜R、又はZ〜Zとして表されるアルキル及びアリールスルホニルアミノ基は、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ基が好ましく、前記アルキルスルホニルアミノ基及びアリールスルホニルアミノ基の例には、例えば、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノなどを挙げることが出来る。
【0059】
前記一般式(I)におけるR〜R、又はZ〜Zとして表されるアルキルチオ基は、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基が好ましく、前記アルキルチオ基の例には、例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオなどを挙げることが出来る。
【0060】
前記一般式(I)におけるR〜R、又はZ〜Zとして表されるアリールチオ基は炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールチオ基が好ましく、前記アリールチオ基の例には、例えば、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオなどを挙げることが出来る。
【0061】
前記一般式(I)におけるR〜R、又はZ〜Zとして表されるヘテロ環チオ基は、炭素数2から30の置換又は無置換のヘテロ環チオ基が好ましく、前記ヘテロ環チオ基の例には、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオなどを挙げることが出来る。
【0062】
前記一般式(I)におけるR〜R、又はZ〜Zとして表されるスルファモイル基は、炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイル基が好ましく、前記スルファモイル基の例には、例えば、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル)などを挙げることが出来る。
【0063】
前記一般式(I)におけるR〜R、又はZ〜Zとして表されるアルキル及びアリールスルフィニル基は、炭素数1から30の置換又は無置換のアルキルスルフィニル基、6から30の置換又は無置換のアリールスルフィニル基が好ましく、前記アルキル及びアリールスルフィニル基の例には、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニルなどを挙げることが出来る。
【0064】
前記一般式(I)におけるR〜R、又はZ〜Zとして表されるアルキル及びアリールスルホニル基は、炭素数1から30の置換又は無置換のアルキルスルホニル基、6から30の置換又は無置換のアリールスルホニル基が好ましく、前記アルキル及びアリールスルホニル基の例には、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−トルエンスルホニルなどを挙げることが出来る。
【0065】
前記一般式(I)におけるR〜R、又はZ〜Zとして表されるアシル基は、ホルミル基、炭素数2から30の置換又は無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数4から30の置換もしくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基が好ましく、前記アシル基の例には、例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル、2―ピリジルカルボニル、2―フリルカルボニルなどを挙げることが出来る。
【0066】
前記一般式(I)におけるR〜R、又はZ〜Zとして表されるアリールオキシカルボニル基は、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基が好ましく、前記アリールオキシカルボニル基の例には、例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニルなどを挙げることが出来る。
【0067】
前記一般式(I)におけるR〜R、又はZ〜Zとして表されるアルコキシカルボニル基は、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基が好ましく、前記アルコキシカルボニル基の例には、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニルなどを挙げることが出来る。
【0068】
前記一般式(I)におけるR〜R、又はZ〜Zとして表されるカルバモイル基は、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイル基が好ましく、前記カルバモイル基の例には、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイルなどを挙げることが出来る。
【0069】
前記一般式(I)におけるR〜R、又はZ〜Zとして表されるホスフィノ基は、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィノ基が好ましく、前記ホスフィノ基の例には、例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノなどを挙げることが出来る。
【0070】
前記一般式(I)におけるR〜R、又はZ〜Zとして表されるホスフィニル基は、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニル基が好ましく、前記ホスフィニル基の例には、例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニルなどを挙げることが出来る。
【0071】
前記一般式(I)におけるR〜R、又はZ〜Zとして表されるホスフィニルオキシ基は、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニルオキシ基が好ましく、前記ホスフィニルオキシ基の例には、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシなどを挙げることが出来る。
【0072】
前記一般式(I)におけるR〜R、又はZ〜Zとして表されるホスフィニルアミノ基は、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニルアミノ基が好ましく、前記ホスフィニルアミノ基の例には、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノなどを挙げることが出来る。
【0073】
前記一般式(I)におけるR〜R、又はZ〜Zとして表されるシリル基は、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシリル基が好ましく、前記シリル基の例には、例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリルなどを挙げることが出来る。
【0074】
前記一般式(I)におけるR〜R、又はZ〜Zとして表されるイミド基は、例えば、N−スクシンイミド、N−フタルイミドなどを挙げることが出来る。
【0075】
前記一般式(I)におけるR〜R、又はZ〜Zとして表される各基が有し得る置換基の例としては、前述のアルキル基が更に有し得る置換基として挙げた置換基が挙げられる。
【0076】
また、前記一般式(I)におけるR〜Rは、それぞれ隣接する2つが互いに結合して環を形成してもよい。これらが環を形成する場合の環構造としては、5〜6員環の脂肪族環、芳香族環などが挙げられ、炭素原子以外の元素を含む複素環であってもよく、また、形成された環同士がさらに組み合わさって2核環、例えば、縮合環を形成していてもよい。さらにこれらの環構造は、前記R〜R、Z〜Zに例示した置換基をさらに有していてもよい。形成された環構造が複素環である場合のヘテロ原子の例としては、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子を挙げることができる。
【0077】
上記の中でも、前記R〜Rは、炭素数1〜8の無置換のアルキル基、炭素数1〜8の無置換のアルコキシ基、炭素数2〜8の無置換のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子、又は水素原子が好ましく、炭素数1〜4の無置換のアルキル基、炭素数1〜4の無置換のアルコキシ基、ハロゲン原子、又は水素原子がより好ましく、炭素数1〜4の無置換のアルコキシ基、ハロゲン原子又は水素原子がさらに好ましい。
【0078】
また、前記Z〜Zは、炭素数1〜4の無置換のアルキル基、炭素数2〜10の無置換のアシル基、炭素数2〜10の無置換のアシルオキシ基、ハロゲン原子、又は水素原子が好ましく、炭素数1〜2の無置換のアルキル基、炭素数2〜8の無置換のアシル基、ハロゲン原子、又は水素原子がより好ましく、炭素数1〜2の無置換のアルキル基又は水素原子がさらに好ましい。
【0079】
前記一般式(I)で表される化合物は、下記一般式(II)に示される化合物であることがより好ましい。以下、一般式(II)について詳細に説明する。
【0080】
【化5】

【0081】
前記一般式(II)中、nは、0〜2の整数を表す。R〜R、及びZ〜Zは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または一価の基を示す。R〜Rは、それぞれ隣接する2つが互いに結合して環を形成してもよい。
前記一般式(II)におけるR〜R、又はZ〜Zは、前記一般式(I)におけるR〜R、又はZ〜Zと同じであり、好ましい範囲も同様である。
【0082】
さらに、前記一般式(II)で表される化合物は、下記一般式(III)に示される化合物であることが好ましい。
【0083】
【化6】

【0084】
前記一般式(III)中、R1a〜R4a、及びZ1a〜Z4aは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または一価の基を示す。R1a〜R4aは、それぞれ隣接する2つが互いに結合して環を形成してもよい。
前記一般式(III)におけるR1a〜R4a、又はZ1a〜Z4aで表されるハロゲン原子および一価の基は、前記一般式(I)におけるR〜R、又はZ〜Zとして挙げたハロゲン原子および一価の基と同様である。
前記一般式(III)におけるR1a〜R4a、又はZ1a〜Z4aで表される水素原子、ハロゲン原子および一価の基として、好ましい例を以下に示す。
【0085】
前記一般式(III)におけるR1a〜R4aとしては、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アルキルアミノ基、アリールアミノ基)、アシルアミノ基(アミド基)、アミノカルボニルアミノ基(ウレイド基)、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルファモイル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基が好ましく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基(アルキルアミノ基、アリールアミノ基)、アシル基がより好ましく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基が特に好ましい。これらの1価の基各々は、さらに置換基を有していてもよい。
【0086】
前記一般式(III)におけるR1a〜R4aはそれぞれ隣接する2つが互いに結合して環を形成してもよい。これらが環を形成する場合の環構造としては、5〜6員環の脂肪族環、芳香族環などが挙げられ、炭素原子以外の元素を含む複素環であってもよく、また、形成された環同士がさらに組み合わさって2核環、例えば、縮合環を形成していてもよい。さらにこれらの環構造は、前記一般式(I)におけるR〜R、Z〜Zが有し得る置換基として挙げた置換基をさらに有していてもよい。形成された環構造が複素環である場合のヘテロ原子の例としては、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子を挙げることができる。
【0087】
前記一般式(III)におけるZ1a〜Z4aとしては、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基が好ましく、水素原子、アルキル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基がより好ましく、水素原子、アルキル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基が特に好ましい。各々は前記R〜R、Z〜Zに例示した置換基をさらに有していてもよい。前記一般式(III)中、Z2aおよびZ3aの少なくともどちらか一方は、一価の基であることがより好ましい。
【0088】
上記の中でも、前記R1a〜R4aは、炭素数1〜8の無置換のアルキル基、炭素数1〜8の無置換のアルコキシ基、炭素数2〜8の無置換のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子、又は水素原子が好ましく、炭素数1〜4の無置換のアルキル基、炭素数1〜4の無置換のアルコキシ基、ハロゲン原子、又は水素原子がより好ましく、炭素数1〜4の無置換のアルコキシ基、ハロゲン原子又は水素原子がさらに好ましい。
【0089】
また、前記Z1a〜Z4aは、炭素数1〜4の無置換のアルキル基、炭素数2〜10の無置換のアシル基、炭素数2〜10の無置換のアシルオキシ基、ハロゲン原子、又は水素原子が好ましく、炭素数1〜2の無置換のアルキル基、炭素数2〜8の無置換のアシル基、ハロゲン原子、又は水素原子がより好ましく、炭素数1〜2の無置換のアルキル基又は水素原子がさらに好ましい。
【0090】
なお、前記特定化合物は、例えば、特開2004−189695公報、「Tetrahedron」第49巻,p939(1993年)、「Journal of Organic Chemistry」 p893(1945年)、「Journal of Organic Chemistry」 p4939(1965年)、及び、EP1772774A2号明細書などに記載の公知の方法によって合成することができる。
【0091】
以下に、前記特定化合物の具体例である例示化合物〔(I−1)〜(I−54)〕を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記例示化合物の構造式は簡略構造式により記載しており、特に元素や置換基の明示がない実線等は、炭化水素基を表す。また、Meはメチル基を示し、Prはイソプロピル基を示し、Buはターシャリーブチル基を示す。後述する例示化合物についても同様である。
【0092】
【化7】

【0093】
【化8】

【0094】
【化9】

【0095】
【化10】

【0096】
下記スキームに示すように、前記一般式(I)で表される化合物は、ラジカル種もしくはカチオン種の存在下、脱保護による活性種の放出のみならず、保護基であるビニルジオキソラン部位自身も活性種として重合に作用することができることから、本発明の光硬化性組成物は、少量の前記一般式(I)で表される化合物を含有する場合であっても、高感度で硬化することができるものと考えられる。
【0097】
【化11】

【0098】
【化12】

【0099】
上記スキームに示されるように、下記一般式(IV)で表される化合物が、前記一般式(I)で表される化合物から派生して得られる。
【0100】
【化13】

【0101】
前記一般式(IV)中、Xは、酸素原子、硫黄原子、又はNRを表し、Rは、水素原子、アルキル基、またはアシル基を表す。nは、0〜2の整数を表す。R〜R、及びZ〜Zは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または一価の基を示す。R〜Rは、それぞれ隣接する2つが互いに結合して環を形成してもよい。
前記一般式(IV)におけるX、n、R〜R、及びZ〜Zの内容および好ましい範囲は、前記一般式(I)におけるX、n、R〜R、及びZ〜Zと同様である。
【0102】
以下に、前記一般式(IV)で表される化合物の具体例である例示化合物〔(I−55)〜(I−108)〕を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0103】
【化14】

【0104】
【化15】

【0105】
【化16】

【0106】
【化17】

【0107】
上記例示化合物(I−1)〜(I−108)の中でも、感度の点で、(I−1)〜(I−23)、(I−55)〜(I−65)、及び(I−97)〜(I−101)がより好ましく、(I−14)〜(I−19)、(I−63)、及び(I−97)が更に好ましく、(I−14)、(I−17)、及び(I−19)が特に好ましい。
【0108】
前記特定化合物は、一般的に使用されるチオキサントン系化合物よりも、溶剤への溶解性が高く、結晶性が低いため、光硬化性組成物を低粘度にすることができ、さらに光硬化性組成物をインク組成物に用いたとき、溶液としての安定性に優れる。したがって、前記特定化合物を含有するインク組成物を、インクジェット記録用として用いたときには、優れた吐出安定性が得られるものと考えられる。
【0109】
さらに、上記の特徴を有する前記特定化合物は、可視光領域における吸収が殆どないため、効果を発現しうる量を添加しても、光硬化性組成物(インク組成物)の色相に影響を与える懸念がないという利点をも有する。そのため、従来から用いられている同様の増感性能を有するチオキサントン等の化合物群と比較し、光硬化性組成物やインク組成物への着色を抑制することができる。
したがって、前記特定化合物は、増感色素、及び重合開始系などの用途に用いることができるが、これらを含有する硬化性組成物やインク組成物の用途に適しており、特に、例えば白色インク組成物やクリアインク組成物の利用に適している。
【0110】
前記特定化合物の含有量は、感度の点から、本発明の光硬化性組成物(全固形分)に対して、0.05質量%〜30質量%であることが好ましく、0.1質量%〜20質量%であることがより好ましい。
また、前記特定化合物の含有量について、後述する特定重合開始剤との関連において述べれば、特定重合開始剤:特定化合物(質量比)が、200:1〜1:200、好ましくは、50:1〜1:50、より好ましくは、20:1〜1:5となる量で、前記特定化合物が本発明の光硬化性組成物に含まれることが好適である。
【0111】
<重合性化合物>
本発明の光硬化性組成物は、カチオン重合性化合物やラジカル重合性化合物等の、重合性化合物を含有する。
−カチオン重合性化合物−
本発明に用いうるカチオン重合性化合物としては、後述する、放射線の照射により酸を発生する化合物から発生する酸により重合反応を開始し、硬化する化合物が好ましく、光カチオン重合性化合物として知られる各種公知のカチオン重合性のモノマーを使用することができる。カチオン重合性化合物としては、例えば、特開平6−9714号、特開2001−31892号、同2001−40068号、同2001−55507号、同2001−310938号、同2001−310937号、同2001−220526号などの各公報に記載されているエポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物などが挙げられる。
【0112】
エポキシ化合物としては、芳香族エポキシド及び脂環式エポキシドなどが挙げられる。
芳香族エポキシドとしては、少なくとも1個の芳香族核を有する多価フェノール或いはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジ又はポリグリシジルエーテルが挙げられ、例えば、ビスフェノールA或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールA或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、並びにノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0113】
脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロへキセン又はシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイド又はシクロペンテンオキサイド含有化合物が好ましく挙げられる。
脂肪族エポキシドとしては、脂肪族多価アルコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル等があり、その代表例としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル又は1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリン或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテルに代表されるポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0114】
本発明に用いることのできる単官能及び多官能のエポキシ化合物を例示する。
単官能エポキシ化合物の例としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブタジエンモノオキサイド、1,2−エポキシドデカン、エピクロロヒドリン、1,2−エポキシデカン、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、3−メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−ビニルシクロヘキセンオキサイド等が挙げられる。
【0115】
また、多官能エポキシ化合物の例としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類、1,1,3−テトラデカジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,2,5,6−ジエポキシシクロオクタン等が挙げられる。
【0116】
これらのエポキシ化合物の中でも、芳香族エポキシド及び脂環式エポキシドが、硬化速度に優れるという観点から好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。
【0117】
ビニルエーテル化合物としては、例えばエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−O−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0118】
以下に、単官能ビニルエーテルと多官能ビニルエーテルを例示する。
単官能ビニルエーテルの例としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2−ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、クロルブチルビニルエーテル、クロルエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールビニルエーテル等が挙げられる。
【0119】
また、多官能ビニルエーテルの例としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキサイドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキサイドジビニルエーテルなどのジビニルエーテル類;トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルなどの多官能ビニルエーテル類等が挙げられる。
ビニルエーテル化合物としては、ジ又はトリビニルエーテル化合物が、硬化性、被記録媒体との密着性、形成された画像の表面硬度などの観点から好ましく、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。
【0120】
本発明に使用できるオキセタン化合物としては、特開2001−220526号、同2001−310937号、同2003−341217号の各公報に記載される如き、公知のオキセタン化合物を任意に選択して使用できる。本発明のインク組成物に使用しうるオキセタン環を有する化合物としては、その構造内にオキセタン環を1〜4個有する化合物が好ましい。このような化合物を使用することで、組成物の粘度をハンドリング性の良好な範囲に維持することが容易となる。
【0121】
本発明の光硬化性組成物に使用される分子内に1〜2個のオキセタン環を有する化合物としては、下記式(1)〜(3)で示される化合物等が挙げられる。
【0122】
【化18】

【0123】
前記下記式(1)〜(3)において、Ra1は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、アリル基、アリール基、フリル基又はチエニル基を表す。分子内に2つのRa1が存在する場合、それらは同じであっても異なるものであってもよい。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、フルオロアルキル基としては、これらアルキル基の水素のいずれかがフッ素原子で置換されたものが好ましく挙げられる。
前記式(1)において、Ra2は、水素原子、炭素数1〜6個のアルキル基、炭素数2〜6個のアルケニル基、芳香環を有する基、炭素数2〜6個のアルキルカルボニル基、炭素数2〜6個のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜6個のN−アルキルカルバモイル基を表す。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、アルケニル基としては、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基等が挙げられ、芳香環を有する基としては、フェニル基、ベンジル基、フルオロベンジル基、メトキシベンジル基、フェノキシエチル基等が挙げられる。アルキルカルボニル基としては、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基等が、アルキコキシカルボニル基としては、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等が、N−アルキルカルバモイル基としては、エチルカルバモイル基、プロピルカルバモイル基、ブチルカルバモイル基、ペンチルカルバモイル基等が挙げられる。また、Ra2は置換基を有していてもよく、置換基としては、1〜6のアルキル基、フッ素原子が挙げられる。
【0124】
前記式(2)において、Ra3は、炭素数1〜15の線状又は分枝状アルキレン基、線状又は分枝状不飽和炭化水素基、カルボニル基又はカルボニル基を含むアルキレン基、カルボキシル基を含むアルキレン基、カルバモイル基を含むアルキレン基、又は、以下に示す基を表す。
アルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が挙げられ、ポリ(アルキレンオキシ)基としては、ポリ(エチレンオキシ)基、ポリ(プロピレンオキシ)基等が挙げられる。不飽和炭化水素基としては、プロペニレン基、メチルプロペニレン基、ブテニレン基等が挙げられる。
【0125】
【化19】

【0126】
前記式(2)におけるRa3が上記多価基である場合、Ra4は、水素原子、炭素数1〜4個のアルキル基、炭素数1〜4個のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、低級アルキルカルボキシル基、カルボキシル基、又はカルバモイル基を表す。
a5は、酸素原子、硫黄原子、メチレン基、NH、SO、SO、C(CF、又は、C(CHを表す。
a6は、炭素数1〜4個のアルキル基、又は、アリール基を表し、nは0〜2,000の整数である。Ra7は炭素数1〜4個のアルキル基、アリール基、又は、下記構造を有する1価の基を表す。下記式中、Ra8は炭素数1〜4個のアルキル基、又はアリール基であり、mは0〜100の整数である。
【0127】
【化20】

【0128】
前記式(1)で表される化合物としては、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(OXT−101:東亞合成(株)製)、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(OXT−212:東亞合成(株)製)、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン(OXT−211:東亞合成(株)製)が挙げられる。式(2)で表される化合物としては、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン(OXT−121:東亞合成(株))が挙げられる。また、式(3)で表される化合物としては、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル(OXT−221:東亞合成(株))が挙げられる。
【0129】
3〜4個のオキセタン環を有する化合物としては、下記式(4)で示される化合物が挙げられる。
【0130】
【化21】

【0131】
前記式(4)において、Ra1は、前記式(1)におけるのと同義である。また、多価連結基であるRa9としては、例えば、下記A〜Cで示される基等の炭素数1〜12の分枝状アルキレン基、下記Dで示される基等の分枝状ポリ(アルキレンオキシ)基又は下記Eで示される基等の分枝状ポリシロキシ基等が挙げられる。jは、3又は4である。
【0132】
【化22】

【0133】
上記Aにおいて、Ra10はメチル基、エチル基又はプロピル基を表す。また、上記Dにおいて、pは1〜10の整数である。
【0134】
また、本発明に好適に使用しうるオキセタン化合物の別の態様として、側鎖にオキセタン環を有する下記式(5)で示される化合物が挙げられる。
【0135】
【化23】

【0136】
前記式(5)において、Ra1は、前記式(1)におけるRa1と同義であり、Ra8は炭素数1〜4個のアルキル基、又はアリール基である。Ra11はメチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基又はトリアルキルシリル基であり、rは1〜4である。
【0137】
このようなオキセタン環を有する化合物については、特開2003−341217号公報、段落番号[0021]〜[0084]に詳細に記載され、ここに記載の化合物は本発明にも好適に使用しうる。
特開2004−91556号公報に記載されたオキセタン化合物も本発明に併用することができる。当該化合物は、同公報の段落番号[0022]〜[0058]に詳細に記載されている。
本発明に併用される他のオキセタン化合物の中でも、組成物の粘度と粘着性の観点から、オキセタン環を1個有する化合物を使用することが好ましい。
【0138】
本発明の光硬化性組成物にカチオン重合性化合物が用られる場合、光硬化性組成物の全固形分に対して60質量%以上含有することが好ましく、70質量%以上含有することがより好ましい。尚、カチオン重合性化合物の添加量の上限としては、95質量%以下であることが好ましい。
また更に、カチオン重合性化合物の中でもカチオン重合性単官能モノマーを50質量%以上含有することが好ましく、60質量%以上含有することがより好ましい。カチオン重合性単官能モノマーを上記範囲含有することにより、硬化膜の柔軟性が向上する効果が得られる。
【0139】
−ラジカル重合性化合物−
また、本発明の光硬化性組成物に用いうるラジカル重合性化合物としては、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物であり、分子中にラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する化合物であればどのようなものでもよく、モノマー、オリゴマー、ポリマー等の化学形態を持つものが含まれる。ラジカル重合性化合物は1種のみ用いてもよく、また目的とする特性を向上するために任意の比率で2種以上を併用してもよい。好ましくは2種以上併用して用いることが、反応性、物性などの性能を制御する上で好ましい。
【0140】
ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸及びそれらの塩、エチレン性不飽和基を有する無水物、アクリロニトリル、スチレン、更に種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタン等のラジカル重合性化合物が挙げられる。
【0141】
具体的には、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、カルビトールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、エポキシアクリレート等のアクリル酸誘導体、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、アリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン等のメタクリル誘導体、その他、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート等のアリル化合物の誘導体が挙げられ、更に具体的には、山下晋三編、「架橋剤ハンドブック」、(1981年大成社);加藤清視編、「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」(1985年、高分子刊行会);ラドテック研究会編、「UV・EB硬化技術の応用と市場」、79頁、(1989年、シーエムシー);滝山栄一郎著、「ポリエステル樹脂ハンドブック」、(1988年、日刊工業新聞社)等に記載の市販品若しくは業界で公知のラジカル重合性乃至架橋性のモノマー、オリゴマー、及びポリマーを用いることができる。
【0142】
また、ラジカル重合性化合物としては、例えば、特開平7−159983号、特公平7−31399号、特開平8−224982号、特開平10−863号、特開平9−134011号等の各公報に記載されている光重合性組成物に用いられる光硬化型の重合性化合物材料が知られており、これらも本発明の光硬化性組成物に適用することができる。
【0143】
更に、ラジカル重合性化合物として、ビニルエーテル化合物を用いることも好ましい。好適に用いられるビニルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ヒドロキシエチルモノビニルエーテル、ヒドロキシノニルモノビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−O−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
これらのビニルエーテル化合物のうち、硬化性、密着性、表面硬度の観点から、ジビニルエーテル化合物、トリビニルエーテル化合物が好ましく、特に、ジビニルエーテル化合物が好ましい。ビニルエーテル化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0144】
本発明の光硬化性組成物にラジカル重合性化合物が用いられる場合、光硬化性組成物中、ラジカル重合性化合物は60質量%以上含有することが好ましく、70質量%以上含有することがより好ましい。尚、ラジカル重合性化合物の添加量の上限としては、95質量%以下であることが好ましい。
【0145】
<重合開始剤>
本発明の光硬化性組成物は、重合開始剤を含有する。
使用する重合開始剤は、外部エネルギーを吸収して重合開始種を生成する化合物であればよく、併用する重合性化合物の種類に応じて、適宜選択することができる。
本発明の光硬化性組成物に用いることのできる重合開始剤としては、光カチオン重合の光重合開始剤、光ラジカル重合の光重合開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、或いはマイクロレジスト等に使用されている光(400nm〜200nmの紫外線、遠紫外線、特に好ましくは、g線、h線、i線、KrFエキシマレーザー光)、ArFエキシマレーザー光、電子線、X線、分子線又はイオンビームなどの照射により酸を発生する化合物を適宜選択して使用することができる。
【0146】
−放射線の照射により酸を発生する化合物−
本発明において、例えば、重合性化合物として、カチオン重合性化合物が用いられる場合、重合開始剤としては、放射線の照射により酸を発生する化合物を用いることが好ましい。これらの化合物を用いることにより、放射線の照射により発生した酸により、前記したカチオン重合性化合物の重合反応が生起し、硬化する。
【0147】
このような重合開始剤としては、放射線の照射により分解して酸を発生する、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩などのオニウム塩化合物、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾジスルホン、ジスルホン、o−ニトロベンジルスルホネート等のスルホネート化合物などを挙げることができる。
【0148】
また、その他の活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物としては、例えば、S.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal etal,Polymer,21,423(1980)等に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号、同Re27,992号、特開平3−140140号各公報等に記載のアンモニウム塩、D.C.Necker etal,Macromolecules,17,2468(1984)、C.S.Wen etal,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)、米国特許第4,069,055 号、同4,069,056号等に記載のホスホニウム塩、J.V.Crivello etal,Macromorecules,10(6),1307(1977)、Chem.&Eng.News,Nov.28,p31(1988)、欧州特許第104,143号、同第339,049号、同第410,201号、特開平2−150848号、特開平2−296514号等に記載のヨードニウム塩、
【0149】
J.V.Crivello etal,Polymer J.17,73(1985)、J.V.Crivello etal.J.Org.Chem.,43,3055(1978)、W.R.Watt etal,J.Polymer Sci.,PolymerChem.Ed.,22,1789(1984)、J.V.Crivello etal,Polymer Bull.,14,279(1985)、J.V.Crivello etal,Macromorecules,14(5),1141(1981)、J.V.Crivello etal,J.PolymerSci.,Polymer Chem.Ed.,17,2877(1979)、欧州特許第370,693号、同161,811号、同410,201号、同339,049号、同233,567号、同297,443号、同297,442号、米国特許第3,902,114号、同4,933,377号、同4,760,013号、同4,734,444号、同2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同3,604,580号、同3,604,581号、特開平7−28237号、同8−27102号等に記載のスルホニウム塩、
【0150】
J.V.Crivello etal,Macromorecules,10(6),1307(1977)、J.V.Crivello etal,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,1047(1979)等に記載のセレノニウム塩、C.S.Wen etal,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)等に記載のアルソニウム塩等のオニウム塩、米国特許第3,905,815号、特公昭46−4605号、特開昭48−36281号、特開昭55−32070号、特開昭60−239736号、特開昭61−169835号、特開昭61−169837号、特開昭62−58241号、特開昭62−212401号、特開昭63−70243号、特開昭63−298339号等に記載の有機ハロゲン化合物、K.Meier et al,J.Rad.Curing,13(4),26(1986)、T.P.Gill et al,Inorg.Chem.,19,3007(1980)、D.Astruc,Acc.Chem.Res.,19(12),377(1986)、特開平2−161445号等に記載の有機金属/有機ハロゲン化物、
【0151】
S.Hayase etal,J.Polymer Sci.,25,753(1987)、E.Reichmanis etal,J.Pholymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,23,1(1985)、Q.Q.Zhu etal,J.Photochem.,36,85,39,317(1987)、B.Amit etal,Tetrahedron Lett.,(24)2205(1973)、D.H.R.Barton etal,J.Chem.Soc.,3571(1965)、P.M.Collins etal,J.Chem.Soc.,Perkin I,1695(1975)、M.Rudinstein etal,Tetrahedron Lett.,(17),1445(1975)、J.W.Walker etal,J.Am.Chem.Soc.,110,7170(1988)、S.C.Busman etal,J.Imaging Technol.,11(4),191(1985)、H.M.Houlihan etal,Macormolecules,21,2001(1988)、P.M.Collins etal,J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,532(1972)、S.Hayase etal,Macromolecules,18,1799(1985)、E.Reichmanis etal,J.Electrochem.Soc.,Solid State Sci.Technol.,130(6)、F.M.Houlihan etal,Macromolcules,21,2001(1988)、 欧州特許第0290,750号、同046,083号、同156,535号、同271,851号、同0,388,343号、米国特許第3,901,710号、同4,181,531号、特開昭60−198538号、特開昭53−133022号等に記載のO−ニトロベンジル型保護基を有する重合開始剤、
【0152】
M.TUNOOKA etal,Polymer Preprints Japan,35(8)、G.Berner etal,J.Rad.Curing,13(4)、W.J.Mijs etal,Coating Technol.,55(697),45(1983),Akzo、H.Adachi etal,Polymer Preprints,Japan,37(3)、欧州特許第0199,672号、同84515号、同044,115号、同第618,564号、同0101,122号、米国特許第4,371,605号、同4,431,774号、特開昭64−18143号、特開平2−245756号、特開平3−140109号等に記載のイミノスルフォネ−ト等に代表される光分解してスルホン酸を発生する化合物、特開昭61−166544号、特開平2−71270号等に記載のジスルホン化合物、特開平3−103854号、同3−103856号、同4−210960号等に記載のジアゾケトスルホン、ジアゾジスルホン化合物を挙げることができる。
【0153】
また、これらの光により酸を発生する基、或いは化合物をポリマーの主鎖又は側鎖に導入した化合物、例えば、M.E.Woodhouse etal,J.Am.Chem.Soc.,104,5586(1982)、S.P.Pappas etal,J.Imaging Sci.,30(5),218(1986)、S.Kondo etal,Makromol.Chem.,Rapid Commun.,9,625(1988)、Y.Yamada etal,Makromol.Chem.,152,153,163(1972)、J.V.Crivello etal,J.PolymerSci.,Polymer Chem.Ed.,17,3845(1979)、米国特許第3,849,137号、独国特許第3,914,407号、特開昭63−26653号、特開昭55−164824号、特開昭62−69263号、特開昭63−146038号、特開昭63−163452号、特開昭62−153853号、特開昭63−146029号等に記載の化合物を用いることができる。例えば、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩等のオニウム塩、有機ハロゲン化合物、有機金属/有機ハロゲン化物、o−ニトロベンジル型保護基を有する重合開始剤、イミノスルフォネート等に代表される光分解してスルホン酸を発生する化合物、ジスルホン化合物、ジアゾケトスルホン、ジアゾジスルホン化合物を挙げることができる。
【0154】
更にV.N.R.Pillai,Synthesis,(1),1(1980)、A.Abad etal,Tetrahedron Lett.,(47)4555(1971)、D.H.R.Barton etal,J.Chem.Soc.,(C),329(1970)、米国特許第3,779,778号、欧州特許第126,712号等に記載の光により酸を発生する化合物も使用することができる。
【0155】
本発明に用いることができる重合開始剤として好ましい化合物として、下記式(b1)、(b2)、(b3)で表される化合物を挙げることができる。
【0156】
【化24】

【0157】
上記式(b1)において、R201、R202及びR203は、各々独立に有機基を表す。また、上記式(b2)、および式(b3)において、R204、R205、R206、R207は各々独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
上記式(b1)〜(b3)において、Xは、非求核性アニオンを表し、好ましくはスルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン、ビス(アルキルスルホニル)アミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオン、BF、PF、SbFや以下に示す基などが挙げられ、好ましくは炭素原子を有する有機アニオンである。
【0158】
【化25】

【0159】
好ましい有機アニオンとしては下式に示す有機アニオンが挙げられる。
【0160】
【化26】

【0161】
c1は、有機基を表す。Rc1としては、炭素数1〜30のものが挙げられ、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はこれらの複数が、単結合、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SON(Rd1)−などの連結基で連結された基を挙げることができる。
【0162】
d1は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基を表し、Rc3、Rc4、Rc5は、各々独立に、有機基を表し、Rc3、Rc4、Rc5の有機基として、好ましくはRc1における好ましい有機基と同じものを挙げることができ、最も好ましくは炭素数1〜4のパーフロロアルキル基である。
また、Rc3とRc4が結合して環を形成していてもよい。Rc3とRc4が結合して形成される基としてはアルキレン基、アリーレン基が挙げられる。好ましくは炭素数2〜4のパーフロロアルキレン基である。
【0163】
c1、Rc3〜Rc5の有機基として、最も好ましくは1位がフッ素原子又はフロロアルキル基で置換されたアルキル基、フッ素原子又はフロロアルキル基で置換されたフェニル基である。フッ素原子又はフロロアルキル基を有することにより、光照射によって発生した酸の酸性度が上がり、感度が向上する。
【0164】
上記式(b1)におけるR201、R202及びR203としての有機基の炭素数は、一般的に1〜30、好ましくは1〜20である。また、R201〜R203のうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、カルボニル基を含んでいてもよい。R201〜R203の内の2つが結合して形成する基としては、アルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基)を挙げることができる。
【0165】
201、R202及びR203としての有機基の具体例としては、後述する化合物(b1−1)、(b1−2)、(b1−3)における対応する基を挙げることができる。
【0166】
なお、前記式(b1)で表される構造を複数有する化合物であってもよい。例えば、式(b1)で表される化合物のR201〜R203のうち少なくともひとつが、式(b1)で表される他の化合物におけるR201〜R203の少なくともひとつと直接、又は、連結基を介して結合した構造を有する化合物であってもよい。
【0167】
更に好ましい(b1)成分として、以下に説明する化合物(b1−1)、(b1−2)、及び(b1−3)を挙げることができる。
【0168】
化合物(b1−1)は、上記式(b1)のR201〜R203の少なくとも1つがアリール基である、アリールスルホニム化合物、即ち、アリールスルホニウムをカチオンとする化合物である。
【0169】
アリールスルホニウム化合物は、R201〜R203の全てがアリール基でもよいし、R201〜R203の一部がアリール基で、残りがアルキル基、シクロアルキル基でもよい。
【0170】
アリールスルホニウム化合物としては、例えば、トリアリールスルホニウム化合物、ジアリールアルキルスルホニウム化合物、アリールジアルキルスルホニウム化合物、ジアリールシクロアルキルスルホニウム化合物、アリールジシクロアルキルスルホニウム化合物等を挙げることができる。
【0171】
アリールスルホニウム化合物のアリール基としてはフェニル基、ナフチル基などのアリール基、インドール残基、ピロール残基、などのヘテロアリール基が好ましく、更に好ましくはフェニル基、インドール残基である。アリールスルホニム化合物が2つ以上のアリール基を有する場合に、2つ以上あるアリール基は同一であっても異なっていてもよい。
【0172】
アリールスルホニウム化合物が必要に応じて有しているアルキル基としては、炭素数1〜15の直鎖又は分岐状アルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等を挙げることができる。
アリールスルホニウム化合物が必要に応じて有しているシクロアルキル基としては、炭素数3〜15のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。
【0173】
201〜R203のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基は、アルキル基(例えば炭素数1〜15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3〜15)、アリール基(例えば炭素数6〜14)、アルコキシ基(例えば炭素数1〜15)、ハロゲン原子、水酸基、フェニルチオ基を置換基として有してもよい。好ましい置換基としては、炭素数1〜12の直鎖又は分岐状アルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数1〜12の直鎖、分岐又は環状のアルコキシ基であり、最も好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基である。置換基は、3つのR201〜R203のうち、いずれか1つに置換していてもよいし、3つ全てに置換していてもよい。また、R201〜R203がアリール基の場合に、置換基はアリール基のp−位に置換していることが好ましい。
【0174】
次に、化合物(b1−2)について説明する。
化合物(b1−2)は、式(b1)におけるR201〜R203が、各々独立に、芳香環を含有しない有機基を表す場合の化合物である。ここで芳香環とは、ヘテロ原子を含有する芳香族環も包含するものである。
201〜R203としての芳香環を含有しない有機基は、一般的に炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20である。
201〜R203は、各々独立に、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アリル基、ビニル基であり、より好ましくは直鎖、分岐、環状2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基、特に好ましくは直鎖、分岐2−オキソアルキル基である。
【0175】
201〜R203としてのアルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基)を挙げることができ、直鎖、分岐2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基がより好ましい。
【0176】
201〜R203としてのシクロアルキル基は、好ましくは、炭素数3〜10のシクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボニル基)を挙げることができ、環状2−オキソアルキル基がより好ましい。
【0177】
201〜R203の直鎖、分岐、環状2−オキソアルキル基としては、好ましくは、上記のアルキル基、シクロアルキル基の2位に>C=Oを有する基を挙げることができる。
201〜R203としてのアルコキシカルボニルメチル基におけるアルコキシ基としては、好ましくは炭素数1〜5のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基)を挙げることができる。
201〜R203は、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば炭素数1〜5)、水酸基、シアノ基、ニトロ基によって更に置換されていてもよい。
【0178】
化合物(b1−3)とは、下記式(b1−3)で表される化合物であり、フェナシルスルフォニウム塩構造を有する化合物である。
【0179】
【化27】

【0180】
上記式(b1−3)において、R1c〜R5cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、又はハロゲン原子を表す。
6c及びR7cは、各々独立に、水素原子、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
及びRは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリル基、又はビニル基を表す。
1c〜R5c中のいずれか2つ以上、R6cとR7c、及びRとRは、それぞれ結合して環構造を形成してもよい。
Zcは、非求核性アニオンを表し、式(b1)に於けるXの非求核性アニオンと同様のものを挙げることができる。
【0181】
1c〜R7cとしてのアルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、例えば炭素数1〜20個、好ましくは炭素数1〜12個の直鎖及び分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、直鎖又は分岐プロピル基、直鎖又は分岐ブチル基、直鎖又は分岐ペンチル基)を挙げることができる。
【0182】
1c〜R7cのシクロアルキル基として、好ましくは、炭素数3〜8個のシクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基)を挙げることができる。
【0183】
1c〜R5cとしてのアルコキシ基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、例えば炭素数1〜10のアルコキシ基、好ましくは、炭素数1〜5の直鎖及び分岐アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、直鎖又は分岐プロポキシ基、直鎖又は分岐ブトキシ基、直鎖又は分岐ペントキシ基)、炭素数3〜8の環状アルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基)を挙げることができる。
【0184】
1c〜R5c中のいずれか2つ以上、R6cとR7c、及びRとRが結合して形成する基としては、ブチレン基、ペンチレン基等を挙げることができる。この環構造は、酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合を含んでいてもよい。
【0185】
好ましくはR1c〜R5cのうちいずれかが直鎖状若しくは分岐状アルキル基、シクロアルキル基又は直鎖、分岐、環状アルコキシ基であり、更に好ましくはR1cからR5cの炭素数の和が2〜15である。これにより、溶剤溶解性がより向上し、保存時にパーティクルの発生が抑制されるので好ましい。
【0186】
及びRとしてのアルキル基、シクロアルキル基は、R1c〜R7cとしてのアルキル基、シクロアルキル基と同様のものを挙げることができる。
及びRは、2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基であることが好ましい。
2−オキソアルキル基は、R1c〜R5cとしてのアルキル基、シクロアルキル基の2位に>C=Oを有する基を挙げることができる。
アルコキシカルボニルメチル基におけるアルコキシ基については、R1c〜R5cとしてのアルコキシ基と同様のものを挙げることができる。
【0187】
、Rは、好ましくは炭素数4個以上のアルキル基、シクロアルキル基であり、より好ましくは6個以上、更に好ましくは8個以上のアルキル基、シクロアルキル基である。
【0188】
式(b2)、(b3)中、R204〜R207は、各々独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。Xは、非求核性アニオンを表し、式(b1)に於けるXの非求核性アニオンと同様のものを挙げることができる。
【0189】
204〜R207のアリール基としてはフェニル基、ナフチル基が好ましく、更に好ましくはフェニル基である。
204〜R207としてのアルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基)を挙げることができる。R204〜R207としてのシクロアルキル基は、好ましくは、炭素数3〜10のシクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボニル基)を挙げることができる。
204〜R207が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基(例えば炭素数1〜15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3〜15)、アリール基(例えば炭素数6〜15)、アルコキシ基(例えば炭素数1〜15)、ハロゲン原子、水酸基、フェニルチオ基等を挙げることができる。
【0190】
使用してもよい活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物として、更に、下記式(b4)、(b5)、(b6)で表される化合物を挙げることができる。
【0191】
【化28】

【0192】
式(b4)〜(b6)中、Ar及びArは、各々独立に、アリール基を表す。
206、R207及びR208は、各々独立に、炭素数1〜16のアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。
Aは、アルキレン基、アルケニレン基又はアリーレン基を表す。
【0193】
放射線の照射により酸を発生する化合物の中でも好ましいものとしては、式(b1)〜(b3)で表される化合物を挙げることができる。これらの中でも、スルホニウム塩構造を有するものが好ましく、トリアリールスルホニウム塩構造を有するものがより好ましく、トリ(クロロフェニル)スルホニウム塩構造を有するものが特に好ましい。トリ(クロロフェニル)スルホニウム塩構造を有する重合開始剤としては、例えば、重合開始剤の好ましい化合物例として以下に列挙される、化合物例(b−37)〜(b−40)が挙げられる。
本発明に用いることのできる重合開始剤(放射線の照射により酸を発生する化合物)の好ましい化合物例〔(b−1)〜(b−96)〕を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0194】
【化29】

【0195】
【化30】

【0196】
【化31】

【0197】
【化32】

【0198】
【化33】

【0199】
【化34】

【0200】
【化35】

【0201】
【化36】

【0202】
【化37】

【0203】
【化38】

【0204】
また、特開2002−122994号公報、段落番号〔0029〕〜〔0030〕に記載のオキサゾール誘導体、s−トリアジン誘導体なども好適に用いられる。
特開2002−122994号公報、段落番号〔0037〕〜〔0063〕に例示されるオニウム塩化合物、スルホネート系化合物も本発明に好適に使用しうる。
【0205】
−ラジカル重合開始剤−
本発明において、例えば、重合性化合物として、ラジカル重合性化合物が用いられる場合、以下に示すような従来公知のラジカル重合開始剤を用いることが好ましい。これらの化合物を用いることにより、ラジカル重合開始剤から発生したラジカル等により、前記したラジカル重合性化合物の重合反応が生起し、硬化する。
【0206】
ラジカル重合開始剤の例としては、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、p,p’−ジクロロベンゾフェノン、p,p’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−プロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,2−ジメチルプロピオイル ジフェニルフォスフィンオキサイド、2−メチル−2−エチルヘキサノイル ジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6−ジメチルベンゾイル ジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイル ジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、2,3,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,3,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメトキシベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリクロロベンゾイル ジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル ナフチルフォスフォネート、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フィニル)チタニウム、p−ジメチルアミノ安息香酸、p−ジエチルアミノ安息香酸、アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、ベンゾインパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド等が挙げられる。
【0207】
ラジカル重合開始剤としては、α−アミノケトン類、アシルフォスフィンオキシド類、アセトフェノン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ベンジル誘導体、ベンゾイン誘導体、ベンゾインエーテル誘導体、ベンジルジアルキルケタール誘導体、チオキサントン誘導体、アシルフォスフィンオキサイド誘導体、金属錯体、p−ジアルキルアミノ安息香酸、アゾ化合物、パーオキシド化合物等が一般的に知られ、中でも、α−アミノケトン類、アシルフォスフィンオキシド類、アセトフェノン誘導体、ベンジル誘導体、ベンゾインエーテル誘導体、ベンジルジアルキルケタール誘導体、チオキサントン誘導体、アシルフォスフィンオキサイド誘導体が好ましく、アセトフェノン誘導体、ベンゾインエーテル誘導体、ベンジルジアルキルケタール誘導体、アシルフォスフィンオキサイド誘導体がより好ましい。
【0208】
さらにラジカル重合開始剤の他の例としては、加藤清視著「紫外線硬化システム」(株式会社総合技術センター発行:平成元年)の第65〜148頁に記載されている光重合開始剤などを挙げることができる。
これらの光重合開始剤は1種あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、後述する増感剤と併用してもよい。
【0209】
また、光重合開始剤は、80℃まで熱分解を起こさないものであることが好ましい。80℃以下で熱分解を起こす開始剤を用いると、製品保存上問題があるため好ましくない。
【0210】
重合開始剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
光硬化性組成物中の重合開始剤の含有量は光硬化性組成物の全固形分換算で、0.1質量%〜25質量%が好ましく、より好ましくは0.5質量%〜20質量%、更に好ましくは1質量%〜18質量%である。
【0211】
−増感剤−
本発明の光硬化性組成物は、さらに増感剤を含有していてもよい。
増感剤は、単独では光照射によって活性化しないが、重合開始剤と一緒に使用した場合に重合開始剤単独で用いた場合よりも効果があるもので、一般にアミン類が用いられる。 アミン類の添加により硬化速度が速くなるのは、第1に、水素引き抜き作用により重合開始剤に水素を供給するためであり、第2に、生成ラジカルが大気中の酸素分子と結合して反応性が悪くなるのに対して、アミンが組成中に溶け込んでいる酸素を捕獲する作用があるためである。
【0212】
増感剤として、具体的には、アミン化合物(脂肪族アミン、芳香族基を含むアミン、ピペリジン、エポキシ樹脂とアミンの反応生成物、トリエタノールアミントリアクリレートなど)、尿素化合物(アリルチオ尿素、o−トリルチオ尿素など)、イオウ化合物(ナトリウムジエチルジチオホスフェート、芳香族スルフィン酸の可溶性塩など)、ニトリル系化合物(N,N−ジエチル−p−アミノベンゾニトリルなど)、リン化合物(トリ−n−ブチルホスフィン、ナトリウムジエチルジチオホスファイドなど)、窒素化合物(ミヒラーケトン、N−ニトリソヒドロキシルアミン誘導体、オキサゾリジン化合物、テトラヒドロ−1,3−オキサジン化合物、ホルムアルデヒドまたはアセトアルデヒドとジアミンの縮合物など)、塩素化合物(四塩化炭素、ヘキサクロロエタンなど)等が挙げられる。
【0213】
増感剤の使用量は、重合開始剤と増感剤の選定や組み合わせ、使用する重合性化合物等適宜選定でき、一般には、インク組成物に対し0〜10質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましく、0.2〜5質量%が特に好ましい。
【0214】
(その他の増感色素)
本発明においては、前記した特定化合物に加え、公知の増感色素を本発明の効果を損なわない限りにおいて併用することができる。その他の増感色素は、特定化合物に対して、特定化合物:他の増感色素の質量比で1:5〜100:1、好ましくは、1:1〜100:1、より好ましくは、2:1〜100:1の量で添加することが可能である。
併用しうる公知の増感色素の例としては、ベンゾフェノン、チオキサントン、特にまたイソプロピルチオキサントン、アントラキノン及び3−アシルクマリン誘導体、ターフェニル、スチリルケトン及び3−(アロイルメチレン)チアゾリン、ショウノウキノン、エオシン、ローダミン及びエリスロシンなどが挙げられる。
【0215】
併用可能な光増感剤のさらなる例は、下記のとおりである。
(1)チオキサントン
チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−ドデシルチオキサントン、2,4−ジ−エチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、1−メトキシカルボニルチオキサントン、2−エトキシカルボニルチオキサントン、3−(2−メトキシエトキシカルボニル)チオキサントン、4−ブトキシカルボニルチオキサントン、3−ブトキシカルボニル−7−メチルチオキサントン、1−シアノ−3−クロロチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−クロロチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−エトキシチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−アミノチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−フェニルスルフリルチオキサントン、3,4−ジ−〔2−(2−メトキシエトキシ)エトキシカルボニル〕チオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−(1−メチル−1−モルホリノエチル)チオキサントン、2−メチル−6−ジメトキシメチルチオキサントン、2−メチル−6−(1,1−ジメトキシベンジル)チオキサントン、2−モルホリノメチルチオキサントン、2−メチル−6−モルホリノメチルチオキサントン、n−アリルチオキサントン−3,4−ジカルボキシミド、n−オクチルチオキサントン−3,4−ジカルボキシイミド、N−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)チオキサントン−3,4−ジカルボキシイミド、1−フェノキシチオキサントン、6−エトキシカルボニル−2−メトキシチオキサントン、6−エトキシカルボニル−2−メチルチオキサントン、チオキサントン−2−ポリエチレングリコールエステル、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサントン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロリド;
【0216】
(2)ベンゾフェノン
ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、4−メトキシベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジメチルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−(4−メチルチオフェニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、メチル−2−ベンゾイルベンゾアート、4−(2−ヒドロキシエチルチオ)ベンゾフェノン、4−(4−トリルチオ)ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N,N−トリメチルベンゼンメタンアミニウムクロリド、2−ヒドロキシ−3−(4−ベンゾイルフェノキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロリド一水和物、4−(13−アクリロイル−1,4,7,10,13−ペンタオキサトリデシル)ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−〔2−(1−オキソ−2−プロペニル)オキシ〕エチルベンゼンメタンアミニウムクロリド;
【0217】
(3)3−アシルクマリン
3−ベンゾイルクマリン、3−ベンゾイル−7−メトキシクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジ(プロポキシ)クマリン、3−ベンゾイル−6,8−ジクロロクマリン、3−ベンゾイル−6−クロロクマリン、3,3’−カルボニルビス〔5,7−ジ(プロポキシ)クマリン〕、3,3’−カルボニルビス(7−メトキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3−イソブチロイルクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジメトキシクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジエトキシクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジブトキシクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジ(メトキシエトキシ)クマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジ(アリルオキシ)クマリン、3−ベンゾイル−7−ジメチルアミノクマリン、3−ベンゾイル−7−ジエチルアミノクマリン、3−イソブチロイル−7−ジメチルアミノクマリン、5,7−ジメトキシ−3−(1−ナフトイル)クマリン、5,7−ジメトキシ−3−(1−ナフトイル)クマリン、3−ベンゾイルベンゾ〔f〕クマリン、7−ジエチルアミノ−3−チエノイルクマリン、3−(4−シアノベンゾイル)−5,7−ジメトキシクマリン;
【0218】
(4)3−(アロイルメチレン)チアゾリン
3−メチル−2−ベンゾイルメチレン−β−ナフトチアゾリン、3−メチル−2−ベンゾイルメチレンベンゾチアゾリン、3−エチル−2−プロピオニルメチレン−β−ナフトチアゾリン;
【0219】
(5)アントラセン
9,10−ジメトキシ−アントラセン、9,10−ジエトキシ−アントラセン、9,10−ジメトキシ−2−エチル−アントラセン、
【0220】
(6)他のカルボニル化合物
アセトフェノン、3−メトキシアセトフェノン、4−フェニルアセトフェノン、ベンジル、2−アセチルナフタレン、2−ナフトアルデヒド、9,10−ナフトラキノン、9−フルオレノン、ジベンゾスベロン、キサントン、2,5−ビス(4−ジエチルアミノベンジリデン)シクロペンタノン、α−(パラ−ジメチルアミノベンジリデン)ケトン、例えば、2−(4−ジメチルアミノベンジリデン)インダン−1−オン又は3−(4−ジメチルアミノフェニル)−1−インダン−5−イルプロペノン、3−フェニルチオフタルイミド、N−メチル−3,5−ジ(エチルチオ)フタルイミド。
【0221】
〔インク組成物〕
本発明のインク組成物は、本発明の光硬化性組成物を用いてなる。
前記特定化合物を含有する本発明の光硬化性組成物は、低露光量でも硬化し、着色が少ないことから、インク組成物に好適に用いられ、また、低粘度である。そのため、インクジェット記録用のインク組成物用途に好適であり、インクジェット記録時のノズルつまりを防止し、被記録媒体にインクが着弾したした後のインクの硬化を向上するものである。
本発明のインク組成物に用いられる本発明の光硬化性組成物は、前記特定化合物と、重合性化合物と重合開始剤とを含有するが、本発明のインク組成物においては、前記重合開始剤が、α−アミノケトン類及びアシルフォスフィンオキシド類からなる群より選択される少なくとも1つの重合開始剤(以下「特定重合開始剤」とも称する)であることが好ましい。
以下、前記特定重合開始剤について説明する。
【0222】
−特定重合開始剤−
特定重合開始剤は、特に、前記特定化合物との関係で、最も好適に用いることのできるラジカル重合開始剤であり、α−アミノケトン類及びアシルフォスフィンオキシド類からなる群より選択されるラジカル重合開始剤である。
【0223】
特定重合開始剤であるα−アミノケトン系化合物は、以下の一般式(11)で表される化合物であることが好ましい。
【0224】
【化39】

【0225】
前記一般式(11)中、Arは、−SR13あるいは−N(R)(R)で置換されているフェニル基であり、ここで、R13は水素原子または、アルキル基を表す。
とRはそれぞれ独立して炭素数1〜8のアルキル基である。RとRは互いに結合して炭素数2〜9のアルキレン基を構成してもよい。RとRはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ置換された炭素数2〜4のアルキル基、又は、炭素数3〜5のアルケニル基を表す。ここで、RとRとは互いに結合して炭素数3〜7のアルキレン基を形成してもよく、そのアルキレン基は、アルキレン鎖中に、−O−あるいは−N(R12)−を含むものであってもよく、ここでR12は、炭素数1〜4のアルキル基を表す。
とRはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ置換された炭素数2〜4のアルキル基、又は、炭素数3〜5のアルケニル基を表す。ここで、RとRとは互いに結合して炭素数3〜7のアルキレン基を形成してもよく、そのアルキレン基は、アルキレン鎖中に、−O−あるいは−N(R12)−を含むものであってもよい。ここで、R12は前記したものと同義である。
【0226】
前記α−アミノケトン類に包含される化合物の例としては、2−メチル−1−フェニル−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(ヘキシル)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−エチル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1等が挙げられる。また、チバガイギー社製のイルガキュアシリーズ、例えばイルガキュア907、イルガキュア369、イルガキュア379等の如き市販品としても入手可能であり、これらもα−アミノケトン類に包含される化合物であり、本発明に好適に使用しうる。
【0227】
前記アシルフォスフィンオキシド類に包含される化合物は、下記一般式(12)又は、一般式(13)で表される化合物である。
【0228】
【化40】

【0229】
前記一般式(12)中、R及びRは、それぞれ独立に脂肪族基、芳香族基、脂肪族オキシ基、芳香族オキシ基、複素環基を表し、Rは、脂肪族基、芳香族基、複素環基を表す。
【0230】
前記R、R又はRで表される脂肪族基は、例えば、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基、アラルキル基、又は置換アラルキル基等が挙げられ、中でも、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アラルキル基、又は置換アラルキル基が好ましく、アルキル基、置換アルキル基が特に好ましい。また、前記脂肪族基は、環状脂肪族基でも鎖状脂肪族基でもよい。鎖状脂肪族基は分岐を有していてもよい。
【0231】
前記アルキル基としては、直鎖状、分岐状、環状のアルキル基が挙げられ、該アルキル基の炭素原子数としては、1〜30が好ましく、1〜20がより好ましい。置換アルキル基のアルキル部分の炭素原子数の好ましい範囲については、アルキル基の場合と同様である。また、前記アルキル基は、置換基を有するアルキル基、無置換のアルキル基のいずれであってもよい。前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、ネオペンチル基、イソプロピル基、イソブチル基等が挙げられる。
【0232】
前記置換アルキル基の置換基としては、カルボキシル基、スルホ基、シアノ基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、ヒドロキシ基、炭素数30以下のアルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基)、炭素数30以下のアルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、炭素数30以下のアシルアミノスルホニル基、炭素数30以下のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、ベンジルオキシ基、フェノキシエトキシ基、フェネチルオキシ基等)、炭素数30以下のアルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、メチルチオエチルチオエチル基等)、炭素数30以下のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、p−トリルオキシ基、1−ナフトキシ基、2−ナフトキシ基等)、ニトロ基、炭素数30以下のアルキル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、
【0233】
炭素数30以下のアシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等)、炭素数30以下のアシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等)、カルバモイル基(例えば、カルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、モルホリノカルボニル基、ピペリジノカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、モルホリノスルホニル基、ピペリジノスルホニル基等)、炭素数30以下のアリール基(例えば、フェニル基、4−クロロフェニル基、4−メチルフェニル基、α−ナフチル基等)、置換アミノ基(例えば、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アシルアミノ基等)、置換ウレイド基、置換ホスホノ基、複素環基等が挙げられる。ここで、カルボキシル基、スルホ基、ヒドロキシ基、ホスホノ基は、塩の状態であってもよい。その際、塩を形成するカチオンとしては、後述のM等が挙げられる。
【0234】
前記アルケニル基としては、直鎖状、分岐状、環状のアルケニル基が挙げられ、該アルケニル基の炭素原子数としては、2〜30が好ましく、2〜20がより好ましい。また、該アルケニル基は、置換基を有する置換アルケニル基、無置換のアルケニル基のいずれであってもよく、置換アルケニル基のアルケニル部分の炭素原子数の好ましい範囲はアルケニル基の場合と同様である。前記置換アルケニル基の置換基としては、前記置換アルキル基の場合と同様の置換基が挙げられる。
【0235】
前記アルキニル基としては、直鎖状、分岐状、環状のアルキニル基が挙げられ、該アルキニル基の炭素原子数としては、2〜30が好ましく、2〜20がより好ましい。また、該アルキニル基は、置換基を有する置換アルキニル基、無置換のアルキニル基のいずれであってもよく、置換アルキニル基のアルキニル部分の炭素原子数の好ましい範囲はアルキニル基の場合と同様である。置換アルキニル基の置換基としては、前記置換アルキル基の場合と同様の置換基が挙げられる。
【0236】
前記アラルキル基としては、直鎖状、分岐状、環状のアラルキル基が挙げられ、該アラルキル基の炭素原子数としては、7〜35が好ましく、7〜25がより好ましい。また、該アラルキル基は、置換基を有する置換アラルキル基、無置換のアラルキル基のいずれであってもよく、置換アラルキル基のアラルキル部分の炭素原子数の好ましい範囲はアラルキル基の場合と同様である。置換アラルキル基の置換基としては、前記置換アルキル基の場合と同様の置換基が挙げられる。
【0237】
前記R、R又はRで表される芳香族基としては、例えば、アリール基、置換アリール基が挙げられる。アリール基の炭素原子数としては、6〜30が好ましく、6〜20がより好ましい。置換アリール基のアリール部分の好ましい炭素原子数の範囲としては、アリール基と同様である。前記アリール基としては、例えば、フェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基等が挙げられる。置換アリール基の置換基としては、前記置換アルキル基の場合と同様の置換基が挙げられる。
【0238】
前記R又はRで表される脂肪族オキシ基としては、炭素数1〜30のアルコキシ基が好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、オクチルオキシ基、フェノキシエトキシ基等が挙げられる。但し、これらに限定されるものではない。
【0239】
前記R又はRで表される芳香族オキシ基としては、炭素数6〜30のアリールオキシ基が好ましく、例えば、フェノキシ基、メチルフェニルオキシ基、クロロフェニルオキシ基、メトキシフェニルオキシ基、オクチルオキシフェニルオキシ基等が挙げられる。但し、これらに限定されるものではない。
【0240】
前記R、R又はRで表される複素環基としては、N、O又はS原子を含む複素環基が好ましく、例えば、ピリジル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、ピロリル基等が挙げられる。
【0241】
【化41】

【0242】
前記一般式(13)中のR及びR10は、それぞれ独立にアルキル基、アリール基、複素環基を表し、Rは、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環基を表す。前記R、R又はR10で表される、アルキル基、アリール基、複素環基、アルコキシ基及びアリールオキシ基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、前記一般式(12)における場合と同様の置換基が挙げられる。
【0243】
前記一般式(13)におけるアルキル基、アリール基、複素環基、アルコキシ基及びアリールオキシ基としては、前記一般式(12)における場合と同義である。
【0244】
前記一般式(12)又は(13)で表されるアシルフォスフィンオキシド系化合物としては、例えば、特公昭63−40799号公報、特公平5−29234号公報、特開平10−95788号公報、特開平10−29997号公報等に記載の化合物を挙げることができる。
【0245】
具体的なアシルフォスフィンオキシド系化合物の例としては、以下に示す化合物(例示化合物(P−1)〜(P−26))が挙げられるが、本発明においては、これらに限定されるものではない。
【0246】
【化42】

【0247】
【化43】

【0248】
【化44】

【0249】
なお、前記例示化合物中、例えば、(P−2)[2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド]は、Darocur TPO(チバ スペシャルティ ケミカルズ社製)の商品名で入手可能であり、(P−19)[ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキシド]は、Irgacure 819(チバ スペシャルティ ケミカルズ社製)の商品名で入手可能である。
【0250】
本発明のインク組成物における前記特定重合開始剤の含有量は、固形分換算で、0.1〜30質量%の範囲であることが好ましく、0.2〜20質量%の範囲であることがより好ましい。
【0251】
<その他の成分>
以下に、インクの用途に適したその他の成分について説明する。後述するその他の成分は、当然に本発明の光硬化性組成物にも好適に用いられる。
【0252】
−紫外線吸収剤−
本発明においては、得られる硬化物の耐候性向上、退色防止の観点から、紫外線吸収剤を用いることができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤、などが挙げられる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、本発明のインク組成物に対し、固形分換算で0.5質量%〜15質量%であることが好ましい。
【0253】
−酸化防止剤−
組成物の安定性向上のため、酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤としては、ヨーロッパ公開特許第223739号公報、同309401号公報、同第309402号公報、同第310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−48535号公報、同62−262047号公報、同63−113536号公報、同63−163351号公報、特開平2−262654号公報、特開平2−71262号公報、特開平3−121449号公報、特開平5−61166号公報、特開平5−119449号公報、米国特許第4814262号明細書、米国特許第4980275号明細書等に記載のものを挙げることができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、固形分換算で0.1質量%〜8質量%であることが好ましい。
【0254】
−褪色防止剤−
本発明のインク組成物には、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。前記有機系の褪色防止剤としては、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類、などが挙げられる。前記金属錯体系の褪色防止剤としては、ニッケル錯体、亜鉛錯体、などが挙げられ、具体的には、リサーチディスクロージャーNo.17643の第VIIのI〜J項、同No.15162、同No.18716の650頁左欄、同No.36544の527頁、同No.307105の872頁、同No.15162に引用された特許に記載された化合物や、特開昭62−215272号公報の127頁〜137頁に記載された代表的化合物の一般式及び化合物例に含まれる化合物を使用することができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、本発明のインク組成物に対し、固形分換算で0.1質量%〜8質量%であることが好ましい。
【0255】
−導電性塩類−
導電性塩類は、インク組成物に溶解させることで、導電性を向上させうる固体の化合物である。本発明のインク組成物をインクジェット記録用のインク組成物として用いる場合、吐出物性の制御を目的として添加されることが好ましい。本発明においては、インク組成物の保存時に析出する懸念が大きいために実質的に使用しないことが好ましいが、導電性塩類の溶解性を上げたり、インク組成物の液体成分に溶解性の高いものを用いたりすることで、溶解性が良好である場合には、適当量添加してもよい。導電性塩類の例としては、チオシアン酸カリウム、硝酸リチウム、チオシアン酸アンモニウム、ジメチルアミン塩酸塩などが挙げられる。
【0256】
−溶剤−
本発明のインク組成物が放射線硬化型インク組成物であることに鑑み、本発明のインク組成物着弾直後に速やかに反応しかつ硬化し得るよう、溶剤を含まないことが好ましい。しかし、インク組成物の硬化速度等に影響がない限り、所定の溶剤を含めることができる。本発明において、溶剤としては、有機溶剤、水が使用できる。特に、有機溶剤は、被記録媒体(紙などの支持体)との密着性を改良するために、極微量を添加し得る。有機溶剤を添加すると、VOC(Volatile Organic Compound:揮発性有機化合物)の問題が回避できるので有効である。
【0257】
溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶剤、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピルなどのエステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤などが挙げられる。
この場合、耐溶剤性やVOCの問題が起こらない範囲での添加が有効であり、その量はインク組成物全体に対し、0質量%〜5質量%が好ましく、より好ましくは、0質量%〜3質量%の範囲である。
【0258】
−高分子化合物−
本発明のインク組成物には、膜物性を調整するため、各種高分子化合物を添加することができる。
高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。これらのうち、アクリル系のモノマーの共重合によって得られるビニル系共重合が好ましい。更に、高分子結合材の共重合組成として、「カルボキシル基含有モノマー」、「メタクリル酸アルキルエステル」、又は「アクリル酸アルキルエステル」を構造単位として含む共重合体も好ましく用いられる。
【0259】
−界面活性剤−
本発明のインク組成物には、界面活性剤を添加してもよい。
界面活性剤としては、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。なお、前記界面活性剤の代わりに有機フルオロ化合物を用いてもよい。前記有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。前記有機フルオロ化合物としては、例えば、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)及び固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭62−135826号の各公報に記載されたものが挙げられる。
【0260】
−貯蔵安定剤−
本発明のインク組成物は、貯蔵安定剤を含有していてもよい。
貯蔵安定剤は、インク組成物の保存中の好ましくない重合を抑制するもので、インク組成物に溶解できるものを用いる。例としては、4級アンモニウム塩、ヒドロキシアミン類、環状アミド類、ニトリル類、置換尿素類、複素環化合物、有機酸、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノエーテル類、有機ホスフィン類、銅化合物などが挙げられ、具体的にはベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ジエチルヒドロキシルアミン、ベンゾチアゾール、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、クエン酸、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ハイドロキノンモノブチルエーテル、ナフテン酸銅などが挙げられる。
【0261】
貯蔵安定剤の使用量は用いる重合開始剤の活性や重合性化合物の重合性、貯蔵安定剤の種類に基づいて適宜調整するのが好ましいが、インク組成物中に0.005〜1質量%が好ましく、0.01〜0.5質量%がより好ましく、0.01〜0.2質量%が更に好ましい。添加量が少ないと保存安定性が劣り、添加量が多いと硬化が起こりにくいといった問題が生じる。
【0262】
この他にも、必要に応じて、例えば、pH調整剤、レベリング添加剤、マット剤、消泡剤、膜物性を調整するためのワックス類、ポリオレフィンやPET等の被記録媒体への密着性を改善するために、重合を阻害しないタッキファイヤーなどを含有させることができる。
タッキファイヤーとしては、具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6pに記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環属アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香属アルコールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などである。
【0263】
−着色剤−
本発明のインク組成物を、平版印刷版の画像部形成などの用途に適用する場合には、特に着色画像を形成することは必須ではなく、このようなインクとしての用途においては、特に着色剤は必要ないが、インク組成物により形成された画像部の視認性を向上するため、或いは、インク組成物を用いて着色画像を形成しようとするときは、着色剤を含有することができる。
【0264】
本発明に使用することのできる着色剤としては、特に制限はないが、耐候性に優れ、色再現性に富んだ(1)顔料及び(2)油溶性染料が好ましく、溶解性染料等の任意の公知の着色剤から選択して使用することができる。本発明のインク組成物又はインクジェット記録用インク組成物に好適に使用し得る着色剤は、活性放射線による硬化反応の感度を低下させないという観点からは、硬化反応である重合反応において重合禁止剤として機能しない化合物を選択することが好ましい。
【0265】
(1)顔料
本発明に使用できる顔料としては、特に限定されるわけではないが、例えばカラーインデックスに記載される下記の番号の有機又は無機顔料が使用できる。
赤あるいはマゼンタ顔料としては、例えば、Pigment Red 3、5、19、22、31、38、43、48:1、48:2、48:3、48:4、48:5、49:1、53:1、57:1、57:2、58:4、63:1、81、81:1、81:2、81:3、81:4、88、104、108、112、122、123、144、146、149、166、168、169、170、177、178、179、184、185、208、216、226、257、Pigment Violet 3、19、23、29、30、37、50、88、Pigment Orange 13、16、20、36、等が挙げられる。
青又はシアン顔料としては、例えば、Pigment Blue 1、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17−1、22、27、28、29、36、60、等が挙げられる。
緑顔料としては、例えば、Pigment Green 7、26、36、50、党が挙げられる。
黄顔料としては、例えば、Pigment Yellow 1、3、12、13、14、17、34、35、37、55、74、81、83、93、94,95、97、108、109、110、137、138、139、153、154、155、157、166、167、168、180、185、193、等が挙げられる。
黒顔料としては、例えば、Pigment Black 7、28、26、等が挙げられる。
白色顔料としては、例えば、PigmentWhite 6、18、21、等が挙げられる。
これらの顔料は、目的に応じて適宜選択して使用できる。
【0266】
(2)油溶性染料
以下に、本発明で使用することのできる油溶性染料について説明する。
本発明で使用することのできる油溶性染料とは、水に実質的に不溶な染料を意味する。具体的には、25℃での水への溶解度(水100gに溶解できる染料の質量)が1g以下であり、好ましくは0.5g以下、より好ましくは0.1g以下であるものを指す。従って、油溶性染料とは、所謂水に不溶性の顔料や油溶性色素を意味し、これらの中でも油溶性色素が好ましい。
【0267】
本発明に使用可能な油溶性染料のうち、イエロー染料としては、任意のものを使用することができる。例えば、カップリング成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類、ピラゾロン類、ピリドン類、開鎖型活性メチレン化合物類を有するアリールもしくはヘテリルアゾ染料;例えばカップリング成分として開鎖型活性メチレン化合物類を有するアゾメチン染料;例えばベンジリデン染料やモノメチンオキソノール染料等のようなメチン染料;例えばナフトキノン染料、アントラキノン染料等のようなキノン系染料;等が挙げられ、これ以外の染料種としてはキノフタロン染料、ニトロ・ニトロソ染料、アクリジン染料、アクリジノン染料等を挙げることができる。
【0268】
本発明に使用可能な油溶性染料のうち、マゼンタ染料としては、任意のものを使用することができる。例えばカップリング成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類を有するアリールもしくはヘテリルアゾ染料;例えばカップリング成分としてピラゾロン類、ピラゾロトリアゾール類を有するアゾメチン染料;例えばアリーリデン染料、スチリル染料、メロシアニン染料、オキソノール染料のようなメチン染料;ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料のようなカルボニウム染料;例えばナフトキノン、アントラキノン、アントラピリドンなどのようなキノン系染料;例えばジオキサジン染料等のような縮合多環系染料;等を挙げることができる。
【0269】
本発明に適用可能な油溶性染料のうち、シアン染料としては、任意のものを使用することができる。例えばインドアニリン染料、インドフェノール染料あるいはカップリング成分としてピロロトリアゾール類を有するアゾメチン染料;シアニン染料、オキソノール染料、メロシアニン染料のようなポリメチン染料;ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料のようなカルボニウム染料;フタロシアニン染料;アントラキノン染料;例えばカップリング成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類を有するアリールもしくはヘテリルアゾ染料;インジゴ・チオインジゴ染料;等を挙げることができる。
【0270】
前記の各染料は、クロモフォア(発色性の原子団)の一部が解離して初めてイエロー、マゼンタ、シアンの各色を呈するものであってもよく、その場合のカウンターカチオンはアルカリ金属や、アンモニウムのような無機のカチオンであってもよいし、ピリジニウム、4級アンモニウム塩のような有機のカチオンであってもよく、さらにはそれらを構造に有するポリマーカチオンであってもよい。
【0271】
以下に限定されるものではないが、好ましい具体例としては、例えば、C.I.ソルベント・ブラック 3,7,27,29及び34;C.I.ソルベント・イエロー 14,16,19,29,30,56,82,93及び162;C.I.ソルベント・レッド 1,3,8,18,24,27,43,49,51,72,73,109,122,132及び218;C.I.ソルベント・バイオレット 3;C.I.ソルベント・ブルー 2,11,25,35,38,67及び70;C.I.ソルベント・グリーン 3及び7;並びにC.I.ソルベント・オレンジ 2;等が挙げられる。
これらの中で特に好ましいものは、Nubian Black PC−0850、Oil Black HBB 、Oil Yellow 129、Oil Yellow 105、Oil Pink 312、Oil Red 5B、Oil Scarlet 308、Vali Fast Blue 2606、Oil Blue BOS(オリエント化学(株)製)、Aizen Spilon Blue GNH(保土ヶ谷化学(株)製)、NeopenYellow 075、Neopen Mazenta SE1378、Neopen Blue 808、Neopen Blue FF4012、Neopen Cyan FF4238(BASF社製)等である。
【0272】
本発明においては、油溶性染料は1種単独で用いてもよく、また、数種類を混合して用いてもよい。
また、着色剤として油溶性染料を使用する場合には、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて、他の水溶性染料、分散染料、顔料等の着色剤を併用することもできる。
【0273】
(3)分散染料
また、本発明においては、水非混和性有機溶媒に溶解する範囲で分散染料を用いることもできる。分散染料は一般に水溶性の染料も包含するが、本発明においては水非混和性有機溶媒に溶解する範囲で用いることが好ましい。分散染料の好ましい具体例としては、C.I.ディスパースイエロー 5,42,54,64,79,82,83,93,99、100,119,122,124,126,160,184:1,186,198,199,201,204,224及び237;C.I.ディスパーズオレンジ 13,29,31:1,33,49,54,55,66,73,118,119及び163;C.I.ディスパーズレッド 54,60,72,73,86,88,91,92,93,111,126,127,134,135,143,145,152,153,154,159,164,167:1,177,181,204,206,207,221,239,240,258,277,278,283,311,323,343,348,356及び362;C.I.ディスパーズバイオレット 33;C.I.ディスパーズブルー 56,60,73,87,113,128,143,148,154,158,165,165:1,165:2,176,183,185,197,198,201,214,224,225,257,266,267,287,354,358,365及び368;並びにC.I.ディスパーズグリーン 6:1及び9;等が挙げられる。
【0274】
本発明に使用することができる着色剤は、本発明のインク組成物又はインクジェット記録用インク組成物に添加された後、適度に当該インク内で分散することが好ましい。着色剤の分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等の各分散装置を用いることができる。
【0275】
また、着色剤の分散を行う際に分散剤を添加することも可能である。分散剤としては、その種類に特に制限はないが、好ましくは高分子分散剤を用いることであり、高分子分散剤としては、例えば、Zeneca社のSolsperseシリーズが挙げられる。また、分散助剤として、各種顔料に応じたシナージストを用いることも可能である。本発明において、これらの分散剤及び分散助剤は、着色剤100質量部に対し、1〜50質量部添加することが好ましい。
【0276】
着色剤は、本発明のインク組成物の調製に際して、各成分とともに直接添加により配合してもよいが、分散性向上のため、あらかじめ溶剤、又は本発明における特定の単官能(メタ)アクリル酸誘導体や、所望により併用される他の重合性化合物のような分散媒体に添加し、均一分散或いは溶解させた後、配合することもできる。
【0277】
本発明において、溶剤が硬化画像に残留する場合に懸念される画像部の耐溶剤性の経時的な低下並びに残留する溶剤のVOC(Volatile Organic Compound:揮発性有機化合物)の問題を避けるためにも、着色剤は、特定の単官能(メタ)アクリル酸誘導体を含む重合性化合物のいずれか1つ又はそれらの混合物に予め添加して、配合することが好ましい。なお、分散適性の観点のみを考慮した場合、着色剤の添加に使用する重合性化合物は、最も粘度の低いモノマーを選択することが好ましい。
【0278】
着色剤は、インク組成物の使用目的に応じて、1種又は2種以上を適宜選択して用いればよい。
なお、本発明のインク組成物中において、固体のまま存在する顔料などの着色剤を使用する際には、着色剤粒子の平均粒径は、好ましくは0.005〜0.5μm、より好ましくは0.01〜0.45μm、さらに好ましくは、0.015〜0.4μmとなるよう、着色剤、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件を設定することが好ましい。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インクの保存安定性、インク透明性及び硬化感度を維持することができるので好ましい。
【0279】
本発明のインク組成物中における着色剤の含有量は、使用目的により適宜選択されるが、インク物性、着色性を考慮すれば、一般的には、インク組成物全体の質量に対して、1〜10質量%であることが好ましく、2〜8質量%含有することがより好ましい。
【0280】
−重合禁止剤−
重合禁止剤は、保存性を高める観点から添加され得る。また、本発明のインク組成物をインクジェト記録用インク組成物として使用する場合には、40〜80℃の範囲で加熱、低粘度化して吐出することが好ましく、熱重合によるヘッド詰まりを防ぐためにも、重合禁止剤を添加することが好ましい。重合禁止剤は、本発明のインク組成物全量に対し、200〜20,000ppm添加することが好ましい。重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、ベンゾキノン、p−メトキシフェノール、TEMPO、TEMPOL、クペロンAl等が挙げられる。
【0281】
この他に、必要に応じて公知の化合物を本発明のインク組成物に添加することができる。例えば、レベリング添加剤、マット剤等を適宜選択して添加することができる。また、ポリオレフィンやPET等の被記録媒体への密着性を改善するために、重合を阻害しないタッキファイヤーを含有させることも好ましい。具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6頁に記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環属アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香属アルコールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などが挙げられる。
【0282】
本発明のインク組成物は、公知の記録方法(印刷方法)、印刷装置などに適用することで画像を形成することができる。画像を形成する際の本発明のインク組成物の粘度は、使用される記録方法、印刷装置により適宜決定されるが、一般的に、5〜100mPa・sが好ましく、10〜80mPa・sがより好ましい。また、表面張力としては、20〜60mN/mが好ましく、30〜50mN/mがより好ましい。
【0283】
本発明のインク組成物は、放射線照射により高感度で硬化し、得られた硬化物が発色性や光堅牢性に優れ、高画質の画像を形成できる点から、特に、インクジェット記録用インクとして用いられることが好ましい。このように、本発明のインク組成物をインクジェット記録用インクとして用いる場合には、該インク組成物をインクジェットプリンターにより被記録媒体に吐出し、その後、吐出されたインク組成物に放射線を照射して硬化させることで、記録を行う。
【0284】
なお、本発明のインク組成物をインクジェット用インク組成物として使用する場合には、吐出性を考慮し、吐出時の温度(例えば、40℃〜80℃、好ましくは25℃〜30℃)において、粘度が、好ましくは7mPa・s〜30mPa・sであり、より好ましくは7mPa・s〜20mPa・sである。例えば、本発明のインク組成物の室温(25℃〜30℃)における粘度は、好ましくは35〜500mPa・s、より好ましくは35mPa・s〜200mPa・sである。本発明のインク組成物は、粘度が上記範囲になるように適宜組成比を調整することが好ましい。室温での粘度を高く設定することにより、多孔質な被記録媒体を用いた場合でも、被記録媒体中へのインク浸透を回避し、未硬化の重合性化合物の低減、臭気低減が可能となる。更にインク液滴着弾時のインクの滲みを抑えることができ、その結果として画質が改善されるので好ましい。
【0285】
また、本発明のインク組成物をインクジェット用インク組成物として使用する場合には、その表面張力は、好ましくは20mN/m〜30mN/m、より好ましくは23mN/m〜28mN/mである。ポリオレフィン、PET、コート紙、非コート紙など様々な被記録媒体へ記録する場合、滲み及び浸透の観点から、20mN/m以上が好ましく、濡れ性の点はで30mN/m以下が好ましい。
【0286】
<インクジェット記録方法>
本発明のインク組成物が好ましく適用されるインクジェット記録方法について、以下説明する。
本発明のインク組成物を適用したインクジェット記録方法は、以下の2工程を含むことを特徴とする。
即ち、本発明のインク組成物を、被記録媒体(支持体、記録材料等)上にインクジェット記録装置により吐出する工程、及び、吐出されたインク組成物に活性放射線を照射してインク組成物を硬化する工程である。これらの工程を経て得られた硬化物が画像となる。
【0287】
本発明におけるインクジェット記録方法に適用しうる被記録媒体としては、特に制限はなく、通常の非コート紙、コート紙などの紙類、いわゆる軟包装に用いられる各種非吸収性樹脂材料或いは、それをフィルム状に成形した樹脂フィルムを用いることができ、各種プラスチックフィルムとしては、例えば、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、ONyフィルム、PVCフィルム、PEフィルム、TACフィルム等を挙げることができる。その他、被記録媒体材料として使用しうるプラスチックとしては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS、ポリアセタール、PVA、ゴム類などが挙げられる。また、金属類や、ガラス類も被記録媒体として使用可能である。
更に、本発明に適用しうる被記録媒体としては、平版印刷版の支持体も挙げられる。
なお、これらの被記録媒体は、インクジェット記録方法に関わらず、如何なる印刷方法にも適用することができる。
【0288】
また、本発明におけるインクジェット記録方法に適用される活性放射線には、α線、γ線、X線、紫外線、可視光線、赤外光線、電子線などが挙げられる。活性放射線のピーク波長は、200〜600nmであることが好ましく、300〜450nmであることがより好ましく、350〜420nmであることが更に好ましい。また、活性放射線の出力は、2,000mJ/cm以下であることが好ましく、より好ましくは、10〜2,000mJ/cmであり、更に好ましくは、20〜1,000mJ/cmであり、特に好ましくは、50〜800mJ/cmである。
特に、本発明のインク組成物を用いたインクジェット記録方法では、放射線照射が、発光波長ピークが350〜420nmであり、且つ、前記被記録媒体表面での最高照度が10〜2,000mW/cmとなる紫外線を発生する発光ダイオードから照射されることが好ましい。
なお、これらの放射線照射については、インクジェット記録方法に関わらず、如何なる印刷方法にも適用することができる。
【0289】
(インクジェット記録装置)
前記インクジェット記録方法に適用しうるインクジェット記録装置としては、特に制限はなく、市販のインクジェット記録装置が使用できる。
インクジェット記録装置としては、例えば、インク供給系、温度センサー、前述のような放射線放射が可能な活性放射線源を含むものが挙げられる。
インク供給系は、例えば、本発明のインク組成物を含む元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドからなるものが挙げられる。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、1pl〜100pl、好ましくは、8pl〜30plのマルチサイズドットを、例えば、320dpi×320dpi〜4000dpi×4000dpi、好ましくは、400dpi×400dpi〜1600dpi×1600dpi、より好ましくは、720dpi×720dpiの解像度で吐出できるよう駆動することができる。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
【0290】
本発明のインク組成物のような放射線硬化型インクは、吐出されるインクを一定温度にすることが望ましいことから、インク供給タンクからインクジェットヘッド部分までは、断熱及び加温を行うことができることが好ましい。温度コントロールの方法としては、特に制約はないが、例えば、温度センサーを各配管部位に複数設け、インク流量、環境温度に応じた加熱制御をすることが好ましい。温度センサーは、インク供給タンク及びインクジェットヘッドのノズル付近に設けることができる。また、加熱するヘッドユニットは、装置本体を外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断若しくは断熱されていることが好ましい。加熱に要するプリンター立上げ時間を短縮するため、或いは熱エネルギーのロスを低減するために、他部位との断熱を行うとともに、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。
【実施例】
【0291】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。「部」及び「%」は、特に断りがない限り、「質量部」及び「質量%」を表す。
なお、以下の実施例は各色のUVインクジェット用インクに係るものである。
【0292】
〔実施例1〕
以下の成分を、高速水冷式攪拌機により撹拌し、白色のUVインクジェット用インクを得た。
(白色インク組成物)
・ライトアクリレートL−A 18.4部
〔アクリル酸ラウリルエステル:単官能アクリレート〕
・Actilane 421〔Akcros社製アクリレートモノマー〕 25.0部
〔プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート:2官能アクリレート〕
・Photomer 2017〔EChem社製UV希釈剤〕 15.0部
・Solsperse 36000〔Noveon社製分散剤〕 2.0部
・MICROLITH WHITE R−A 15.0部
〔Ciba Specialty Chemicals社製顔料〕
・Genorad 16〔Rahn社製安定剤〕 0.05部
・Rapi−Cure DVE−3 8.0部
〔ISP Europe社製ビニルエーテル〕
・特定化合物〔I−14(下記構造)〕 4.0部
・Darocur TPO〔特定重合開始剤(P−2)〕 8.5部
〔Ciba Specialty Chemicals社製光重合開始剤〕
・Irgacure 907〔特定重合開始剤〕 4.0部
〔Ciba Specialty Chemicals社製光重合開始剤〕
・Byk 307〔BYK Chemie社製消泡剤〕 0.05部
【0293】
【化45】

【0294】
<インクの評価>
得られた白色インク組成物をポリ塩化ビニル製のシート上に印刷し、そして鉄ドープ処理した紫外線ランプ(パワー120W/cm)の光線下に40m/minの速度で通過させることにより照射を行って、インクを硬化させ、印刷物を得た。
このとき、以下の評価を行った。
【0295】
−感度(積算露光量、硬化性)−
硬化における露光エネルギーを光量積算計(EIT社製UV PowerMAP)により測定した。その結果、シート上での紫外線の積算露光量は約260mJ/cmであり、高感度で硬化していることが確認された。
【0296】
−吐出安定性−
得られた白色インク組成物を室温で二週間保存後、ピエゾ型インクジェットノズルを有する市販のインクジェット記録装置を用いて、被記録媒体への記録を行い、常温で48時間連続印字したときの、ドット抜けおよびインクの飛び散りの有無を目視にて観察し、下記基準により評価した。結果を下記表1に示す。
○:ドット抜けまたはインクの飛び散りが発生しないか、発生が3回以下
△:ドット抜けまたはインクの飛び散りが4〜10回発生
×:ドット抜けまたはインクの飛び散りが11回以上発生
なお、このとき形成された画像は良好な白色を呈していた。
【0297】
評価に使用したインクジェット記録装置のインク供給系は、元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドから成り、インク供給タンクからインクジェットヘッド部分までを断熱および加温を行った。温度センサーは、インク供給タンクおよびインクジェットヘッドのノズル付近にそれぞれ設け、ノズル部分が常に70℃±2℃となるよう、温度制御を行った。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、8〜30plのマルチサイズドットを720×720dpiの解像度で射出できるよう駆動した。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
【0298】
〔実施例2〕
以下の成分を、高速水冷式攪拌機により撹拌し、シアン色のUVインクジェット用インクを得た。
(シアン色インク組成物)
・ライトアクリレートL−A 21.4部
・Actilane 421〔Akcros社製アクリレートモノマー〕 30.0部
・Photomer 2017〔EChem社製UV希釈剤〕 20.0部
・Solsperse 32000〔Noveon社製分散剤〕 0.4部
・Irgalite Blue GLVO 3.6部
〔Ciba Specialty Chemicals社製顔料〕
・Genorad 16〔Rahn社製安定剤〕 0.05部
・Rapi−Cure DVE−3〔ISP Europe社製ビニルエーテル〕
8.0部
・特定化合物〔I−14(前記構造)〕 4.0部
・Darocur TPO〔特定重合開始剤(P−2)〕 12.5部
〔Ciba Specialty Chemicals社製光重合開始剤〕
・Byk 307〔BYK Chemie社製消泡剤〕 0.05部
【0299】
<インクの評価>
製造したシアン色インク組成物をポリ塩化ビニル製のシート上に印刷し、そして鉄ドープ処理した紫外線ランプ(パワー120W/cm)の光線下に40m/minの速度で通過させることにより照射を行って、インクを硬化させ、印刷物を得た。このとき、用いたインクの感度および吐出安定性について実施例1と同様に評価した。結果を下記表1に示す。
【0300】
〔実施例3〕
以下の成分を、高速水冷式攪拌機により撹拌し、マゼンタ色のUVインクジェット用インクを得た。
(マゼンタ色インク組成物)
・ライトアクリレートL−A 15.4部
・Actilane 421〔Akcros社製アクリレートモノマー〕 36.0部
・Photomer 2017〔EChem社製UV希釈剤〕 20.0部
・Solsperse 32000〔Noveon社製分散剤〕 0.4部
・Cinquasia Mazenta RT−355 D
〔Ciba Specialty Chemicals社製顔料〕 3.6部
・Genorad 16〔Rahn社製安定剤〕 0.05部
・Rapi−Cure DVE−3 8.0部
〔ISP Europe社製ビニルエーテル〕
・特定化合物〔I−14(前記構造)〕 4.0部
・Darocur TPO〔特定重合開始剤(P−2)〕 12.5部
〔Ciba Specialty Chemicals社製光重合開始剤〕
・Byk 307〔BYK Chemie社製消泡剤〕 0.05部
【0301】
<インクの評価>
製造したマゼンタ色インク組成物をポリ塩化ビニル製のシート上に印刷し、そして鉄ドープ処理した紫外線ランプ(パワー120W/cm)の光線下に40m/minの速度で通過させることにより照射を行って、インクを硬化させ、印刷物を得た。このとき、用いたインクの感度および吐出安定性について、実施例1と同様に評価した。結果を下記表1に示す。
【0302】
〔実施例4〕
以下の成分を、高速水冷式攪拌機により撹拌し、イエロー色のUVインクジェット用インクを得た。
(イエロー色インク組成物)
・ライトアクリレートL−A 10部
・Actilane 421〔Akcros社製アクリレートモノマー〕 45.4部
・Photomer 2017〔EChem社製UV希釈剤〕 20.0部
・Solsperse 32000〔Noveon社製分散剤〕 0.4部
・Cromophtal Yellow LA 3.6部
〔Ciba Specialty Chemicals社製顔料〕
・Genorad 16〔Rahn社製安定剤〕 0.05部
・Rapi−Cure DVE−3 4.0部
〔ISP Europe社製ビニルエーテル〕
・特定化合物〔I−14(前記構造)〕 4.0部
・Darocur TPO〔特定重合開始剤(P−2)〕 12.5部
〔Ciba Specialty Chemicals社製光重合開始剤〕
・Byk 307〔BYK Chemie社製消泡剤〕 0.05部
【0303】
<インクの評価>
製造したイエロー色インクをポリ塩化ビニル製のシート上に印刷し、そして鉄ドープ処理した紫外線ランプ(パワー120W/cm)の光線下に40m/minの速度で通過させることにより照射を行って、インクを硬化させ、印刷物を得た。このとき、用いたインクの感度および吐出安定性について、実施例1と同様に評価した。結果を下記表1に示す。
【0304】
〔実施例5〕
以下の成分を、高速水冷式攪拌機により撹拌し、黒色のUVインクジェット用インクを得た。
(黒色インク組成物)
・ライトアクリレートL−A 24.4部
・Actilane 421〔Akcros社製アクリレートモノマー〕 31.0部
・Photomer 2017〔EChem社製UV希釈剤〕 20.0部
・Solsperse 32000〔Noveon社製分散剤〕 0.4部
・Microlith Black C−K 2.6部
〔Ciba Specialty Chemicals社製顔料〕
・Genorad 16〔Rahn社製安定剤〕 0.05部
・Rapi−Cure DVE−3 5.0部
〔ISP Europe社製ビニルエーテル〕
・特定化合物〔I−14(前記構造)〕 4.0部
・Darocur TPO〔特定重合開始剤(P−2)〕 12.5部
〔Ciba Specialty Chemicals社製光重合開始剤〕
・Byk 307〔BYK Chemie社製消泡剤〕 0.05部
【0305】
<インクの評価>
製造した黒色インクをポリ塩化ビニル製のシート上に印刷し、そして鉄ドープ処理した紫外線ランプ(パワー120W/cm)の光線下に40m/minの速度で通過させることにより照射を行って、インクを硬化させ、印刷物を得た。このとき、用いたインクの感度および吐出安定性について、実施例1と同様に評価した。結果を下記表1に示す。
【0306】
〔実施例6〕
以下の成分を、高速水冷式攪拌機により撹拌し、白色のUVインクジェット用インクを得た。
(白色インク組成物)
・フェノキシエチルアクリレート 25.0部
・N−ビニルカプロラクタム 15.0部
・FA−512〔下記構造〕 18.4部
・Solsperse 36000〔Noveon社製分散剤〕 2.0部
・MICROLITH WHITE R−A 15.0部
〔Ciba Specialty Chemicals社製顔料〕
・Genorad 16〔Rahn社製安定剤〕 0.05部
・Rapi−Cure DVE−3 8.0部
〔ISP Europe社製ビニルエーテル〕
・特定化合物〔I−14(前記構造)〕 4.0部
・Darocur TPO〔特定重合開始剤(P−2)〕 12.5部
〔Ciba Specialty Chemicals社製光重合開始剤〕
・Byk 307〔BYK Chemie社製消泡剤〕 0.05部
【0307】
【化46】

【0308】
<インクの評価>
製造した白色インク組成物をポリ塩化ビニル製のシート上に印刷し、そして鉄ドープ処理した紫外線ランプ(パワー120W/cm)の光線下に40m/minの速度で通過させることにより照射を行って、インクを硬化させ、印刷物を得た。このとき、用いたインクの感度および吐出安定性について、実施例1と同様に評価した。結果を下記表1に示す。
【0309】
〔実施例7〕
以下の成分を、高速水冷式攪拌機により撹拌し、白色のUVインクジェット用インクを得た。
(白色インク組成物)
・フェノキシエチルアクリレート 25.0部
・N−ビニルカプロラクタム 15.0部
・FA−512〔前記構造〕 18.4部
・Solsperse 36000〔Noveon社製分散剤〕 2.0部
・MICROLITH WHITE R−A 15.0部
〔Ciba Specialty Chemicals社製顔料〕
・Genorad 16〔Rahn社製安定剤〕 0.05部
・Rapi−Cure DVE−3 8.0部
〔ISP Europe社製ビニルエーテル〕
・特定化合物〔I−17(下記構造)〕 4.0部
・Darocur TPO〔特定重合開始剤(P−2)〕 12.5部
〔Ciba Specialty Chemicals社製光重合開始剤〕
・Byk 307〔BYK Chemie社製消泡剤〕 0.05部
【0310】
【化47】

【0311】
<インクの評価>
製造した白色インク組成物をポリ塩化ビニル製のシート上に印刷し、そして鉄ドープ処理した紫外線ランプ(パワー120W/cm)の光線下に40m/minの速度で通過させることにより照射を行って、インクを硬化させ、印刷物を得た。このとき、用いたインクの感度および吐出安定性について、実施例1と同様に評価した。結果を下記表1に示す。
【0312】
〔実施例8〕
以下の成分を、高速水冷式攪拌機により撹拌し、白色のUVインクジェット用インクを得た。
(白色インク組成物)
・フェノキシエチルアクリレート 25.0部
・N−ビニルカプロラクタム 15.0部
・FA−512〔前記構造〕 18.4部
・Solsperse 36000〔Noveon社製分散剤〕 2.0部
・MICROLITH WHITE R−A 15.0部
〔Ciba Specialty Chemicals社製顔料〕
・Genorad 16〔Rahn社製安定剤〕 0.05部
・Rapi−Cure DVE−3 8.0部
〔ISP Europe社製ビニルエーテル〕
・特定化合物〔I−19(下記構造)〕 4.0部
・Darocur TPO〔特定重合開始剤(P−2)〕 12.5部
〔Ciba Specialty Chemicals社製光重合開始剤〕
・Byk 307〔BYK Chemie社製消泡剤〕 0.05部
【0313】
【化48】



【0314】
<インクの評価>
製造した白色インク組成物をポリ塩化ビニル製のシート上に印刷し、そして鉄ドープ処理した紫外線ランプ(パワー120W/cm)の光線下に40m/minの速度で通過させることにより照射を行って、インクを硬化させ、印刷物を得た。このとき、用いたインクの感度および吐出安定性について、実施例1と同様に評価した。結果を下記表1に示す。
【0315】
〔実施例9〕
以下の成分を、高速水冷式攪拌機により撹拌し、白色のUVインクジェット用インクを得た。
(白色インク組成物)
・フェノキシエチルアクリレート 25.0部
・N−ビニルカプロラクタム 15.0部
・FA−512〔前記構造〕 18.4部
・Solsperse 36000〔Noveon社製分散剤〕 2.0部
・MICROLITH WHITE R−A 15.0部
〔Ciba Specialty Chemicals社製顔料〕
・Genorad 16〔Rahn社製安定剤〕 0.05部
・Rapi−Cure DVE−3 8.0部
〔ISP Europe社製ビニルエーテル〕
・特定化合物〔I−42(下記構造)〕 4.0部
・Irgacure 2959〔特定重合開始剤〕 12.0部
〔Ciba Specialty Chemicals社製光重合開始剤〕
・Byk 307〔BYK Chemie社製消泡剤〕 0.05部
【0316】
【化49】

【0317】
<インクの評価>
製造した白色インク組成物をポリ塩化ビニル製のシート上に印刷し、そして鉄ドープ処理した紫外線ランプ(パワー120W/cm)の光線下に40m/minの速度で通過させることにより照射を行って、インクを硬化させ、印刷物を得た。このとき、用いたインクの感度および吐出安定性について、実施例1と同様に評価した。結果を下記表1に示す。
【0318】
〔比較例1〕
以下の成分を、高速水冷式攪拌機により撹拌し、比較のシアン色のUVインクジェット用インクを得た。
(比較のシアン色インク組成物)
・ライトアクリレートL−A 21.4部
・Actilane 421〔Akcros社製アクリレートモノマー〕 34.0部
・Photomer 2017〔EChem社製UV希釈剤〕 20.0部
・Solsperse 32000〔Noveon社製分散剤〕 0.4部
・Irgalite Blue GLVO 3.6部
〔Ciba Specialty Chemicals社製顔料〕
・Genorad 16〔Rahn社製安定剤〕 0.05部
・Rapi−Cure DVE−3〔ISP Europe社製ビニルエーテル〕
8.0部
・Lucirin TPO〔BASF社製光重合開始剤〕 8.5部
・Darocur TPO〔特定重合開始剤(P−2)〕 12.5部
〔Ciba Specialty Chemicals社製光重合開始剤〕
・Byk 307〔BYK Chemie社製消泡剤〕 0.05部
【0319】
<インクの評価>
製造したシアン色インクをポリ塩化ビニル製のシート上に印刷し、そして鉄ドープ処理した紫外線ランプ(パワー120W/cm)の光線下に40m/minの速度で通過させることにより照射を行って、インクを硬化させ、印刷物を得た。このとき、用いたインクの感度および吐出安定性について、実施例1と同様に評価した。結果を下記表1に示す。
【0320】
〔比較例2〕
以下の成分を、高速水冷式攪拌機により撹拌し、シアン色のUVインクジェット用インクを得た。
(シアン色インク組成物)
・ライトアクリレートL−A 21.4部
・Actilane 421〔Akcros社製アクリレートモノマー〕 30.0部
・Photomer 2017〔EChem社製UV希釈剤〕 20.0部
・Solsperse 32000〔Noveon社製分散剤〕 0.4部
・Irgalite Blue GLVO 3.6部
〔Ciba Specialty Chemicals社製顔料〕
・Genorad 16〔Rahn社製安定剤〕 0.05部
・Rapi−Cure DVE−3〔ISP Europe社製ビニルエーテル〕
8.0部
・2−クロロチオキサントン誘導体〔比較増感色素(下記構造)〕 4.0部
・Lucirin TPO〔BASF社製光重合開始剤〕 8.5部
・Darocur TPO〔特定重合開始剤(P−2)〕 12.5部
〔Ciba Specialty Chemicals社製光重合開始剤〕
・Byk 307〔BYK Chemie社製消泡剤〕 0.05部
【0321】
【化50】

【0322】
<インクの評価>
製造したシアン色インクをポリ塩化ビニル製のシート上に印刷し、そして鉄ドープ処理した紫外線ランプ(パワー120W/cm)の光線下に40m/minの速度で通過させることにより照射を行って、インクを硬化させ、印刷物を得た。このとき、用いたインクの感度および吐出安定性について、実施例1と同様に評価した。結果を下記表1に示す。
【0323】
〔比較例3〕
以下の成分を、高速水冷式攪拌機により撹拌し、シアン色のUVインクジェット用インクを得た。
(シアン色インク組成物)
・ライトアクリレートL−A 21.4部
・Actilane 421〔Akcros社製アクリレートモノマー〕 30.0部
・Photomer 2017〔EChem社製UV希釈剤〕 20.0部
・Solsperse 32000〔Noveon社製分散剤〕 0.4部
・Irgalite Blue GLVO 3.6部
〔Ciba Specialty Chemicals社製顔料〕
・Genorad 16〔Rahn社製安定剤〕 0.05部
・Rapi−Cure DVE−3〔ISP Europe社製ビニルエーテル〕
8.0部
・2,4−ジエチルチオキサントン誘導体〔比較増感色素(下記構造)〕 4.0部
・Lucirin TPO〔BASF社製光重合開始剤〕 8.5部
・Darocur TPO〔特定重合開始剤(P−2)〕 12.5部
〔Ciba Specialty Chemicals社製光重合開始剤〕
・Byk 307〔BYK Chemie社製消泡剤〕 0.05部
【0324】
【化51】

【0325】
<インクの評価>
製造したシアン色インクをポリ塩化ビニル製のシート上に印刷し、そして鉄ドープ処理した紫外線ランプ(パワー120W/cm)の光線下に40m/minの速度で通過させることにより照射を行って、インクを硬化させ、印刷物を得た。このとき、用いたインクの感度および吐出安定性について、実施例1と同様に評価した。結果を下記表1に示す。
【0326】
〔比較例4〕
以下の成分を、高速水冷式攪拌機により撹拌し、白色のUVインクジェット用インクを得た。
(白色インク組成物)
・フェノキシエチルアクリレート 25.0部
・N−ビニルカプロラクタム 15.0部
・FA−512〔前記構造〕 17.4部
・Solsperse 36000〔Noveon社製分散剤〕 2.0部
・MICROLITH WHITE R−A 15.0部
〔Ciba Specialty Chemicals社製顔料〕
・Genorad 16〔Rahn社製安定剤〕 0.05部
・Rapi−Cure DVE−3 8.0部
〔ISP Europe社製ビニルエーテル〕
・2,4−ジエチルチオキサントン誘導体〔比較増感色素(前記構造)〕 4.0部
・Lucirin TPO〔BASF社製光重合開始剤〕 8.5部
・Darocur TPO〔特定重合開始剤(P−2)〕 12.5部
〔Ciba Specialty Chemicals社製光重合開始剤〕
・Byk 307〔BYK Chemie社製消泡剤〕 0.05部
【0327】
<インクの評価>
製造した白色インクをポリ塩化ビニル製のシート上に印刷し、そして鉄ドープ処理した紫外線ランプ(パワー120W/cm)の光線下に40m/minの速度で通過させることにより照射を行って、インクを硬化させ、印刷物を得た。このとき、用いたインクの感度および吐出安定性について、実施例1と同様に評価した。結果を下記表1に示す。
【0328】
【表1】

【0329】
表1から明らかなように、本発明の実施例1〜9のインク(インク組成物)は、いずれも高感度で硬化し、吐出安定性に優れたものであった。このことから、本発明の光硬化性組成物を用いてなる本発明のインク組成物は、低粘度で低露光量でも硬化することがわかった。
また、実施例1、6〜9において印刷物に形成された画像は良好な白色を呈していることから、本発明のインク組成物を用いることで、感度と吐出安定性に優れ、さらに色再現性にも優れた白色インクが得られることがわかった。
一方、本発明における特定化合物及び比較増感色素のいずれも加えていない比較例1のインク組成物は、実施例1と同等の積算露光量260mJ/cmの条件下では硬化性が充分でなく、充分硬化させるためには330mJ/cmの高エネルギーを要した。また、増感色素として本発明における特定化合物以外のチオキサントン系化合物を加えた比較例2〜4のインク組成物は、良好な硬化性を示したが、吐出安定性が不充分であり、インク組成物の粘度の安定性が不十分であることがわかった。また比較例4の白インクは比較増感色素に由来する2,4−ジエチルチオキサントンに起因する黄着色のため、白色画像の色再現性が良好でなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性化合物と、重合開始剤と、下記一般式(I)で表される化合物とを含有する光硬化性組成物。
【化1】


〔前記一般式(I)中、Xは、酸素原子、硫黄原子、又はNRを表し、Rは、水素原子、アルキル基、またはアシル基を表す。nは、0〜2の整数を表す。R〜R、及びZ〜Zは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または一価の基を示す。R〜Rは、それぞれ隣接する2つが互いに結合して環を形成してもよい。〕
【請求項2】
前記一般式(I)で表される化合物が、下記一般式(II)で表される化合物である請求項1に記載の光硬化性組成物。
【化2】


〔前記一般式(II)中、nは、0〜2の整数を表す。R〜R、及びZ〜Zは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または一価の基を示す。R〜Rは、それぞれ隣接する2つが互いに結合して環を形成してもよい。〕
【請求項3】
前記一般式(II)で表される化合物が、下記一般式(III)で表される化合物である請求項2に記載の光硬化性組成物。
【化3】


〔前記一般式(III)中、R1a〜R4a、及びZ1a〜Z4aは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または一価の基を示す。R1a〜R4aは、それぞれ隣接する2つが互いに結合して環を形成してもよい。〕
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の光硬化性組成物を用いるインク組成物。
【請求項5】
前記重合開始剤が、α−アミノケトン類及びアシルフォスフィンオキシド類からなる群より選択される少なくとも1つの重合開始剤である請求項4に記載のインク組成物。
【請求項6】
インクジェット記録用である請求項4または請求項5に記載のインク組成物。

【公開番号】特開2009−286948(P2009−286948A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−142644(P2008−142644)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】