光素子
【課題】マッハツェンダ干渉計において、方向性結合器型の3dBカプラを用いつつも、出力光を任意の比率で分配可能とする。
【解決手段】クラッド12とコア18を含む光導波路11が、第1及び第2光導波路16a及び16bを備え、互いに平行に配置した第1及び第2光導波路で構成された第1及び第2方向性結合器32L及び32Rと、第1及び第2方向性結合器間に介在する第1及び第2光導波路で構成されたアーム部32Cとを有し、第1及び第2方向性結合器は、入力光に対して3dBカプラとして機能し、第1方向性結合器の第1又は第2光導波路に第1幅W1から第2幅W2まで縮小する第1幅テーパ部16T1を備え、第2方向性結合器の第1又は第2光導波路に第2幅から第1幅まで拡大する第2幅テーパ部16T2を備え、アーム部は、入力光に対して(2m+z)πの位相差(0<z<1)を与える。
【解決手段】クラッド12とコア18を含む光導波路11が、第1及び第2光導波路16a及び16bを備え、互いに平行に配置した第1及び第2光導波路で構成された第1及び第2方向性結合器32L及び32Rと、第1及び第2方向性結合器間に介在する第1及び第2光導波路で構成されたアーム部32Cとを有し、第1及び第2方向性結合器は、入力光に対して3dBカプラとして機能し、第1方向性結合器の第1又は第2光導波路に第1幅W1から第2幅W2まで縮小する第1幅テーパ部16T1を備え、第2方向性結合器の第1又は第2光導波路に第2幅から第1幅まで拡大する第2幅テーパ部16T2を備え、アーム部は、入力光に対して(2m+z)πの位相差(0<z<1)を与える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、1本の光ファイバを伝搬する波長の異なる2種の光により双方向通信を行うに当たり、発光素子から出力される光と、受光素子へと入力される光との合分波を行う光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
加入者側から局側への光伝送(上り通信)と、局側から加入者側への光伝送(下り通信)とを1本の光ファイバで行う光加入者系の通信システムにおいては、上り通信及び下り通信を異なる波長の光で行うことがある。この場合、局側及び加入者側の双方で、異なる波長の光を合分波する光素子(以下、光合分波素子とも称する。)が必要となる。
【0003】
光加入者系の通信システムで用いられる加入者側終端装置(ONU:Optical Network Unit)は、空間光学的に光軸合わせされた光合分波素子、発光素子及び受光素子を備えている。しかし、近年、光軸合わせの手間を軽減するために、光導波路により構成された光合分波素子が開発されている(例えば、特許文献1〜5参照)。この光導波路を用いた光合分波素子(以下、導波路型光素子とも称する。)では、光の伝搬経路を、予め作り込まれた光導波路内に限定するので、従来の光合分波素子におけるレンズやミラー等の光軸合わせが不要となる。さらに、導波路型光素子では、発光素子及び受光素子を、予め光合分波素子に作成されたマークを基準にして、光導波路の入出射端に位置合わせすればよい。そのため、発光素子及び受光素子に入出射される光ビームの厳密な光軸合わせの手間が大幅に省かれる。
【0004】
近年、SiO2を材料とするクラッドと、SiO2との屈折率差が大きなSiを材料とするコアとで光導波路(以下、Si光導波路とも称する。)を構成した導波路型光素子が報告されている(例えば、非特許文献1〜3参照)。
【0005】
Si光導波路は、コアの屈折率がクラッドの屈折率よりも非常に大きいために、光を光導波路に強く閉じ込めることができる。また、この大きな屈折率差を利用して、光を1μm程度の小さい曲率半径で曲げる曲線状光導波路を実現することができる。さらに、製造時に、Si電子デバイスでの加工技術を利用できるために、きわめて微細なサブミクロンの断面構造を実現できる。これらのことから、Si光導波路を用いることで、導波路型光素子を小型化することができる。
【0006】
Si光導波路を用いた導波路型光素子として、波長分離素子としても機能する1段のマッハツェンダ干渉計(以下、MZ干渉計とも称する。)が開示されている(例えば、非特許文献4参照)。この文献のMZ干渉計は、幅が徐々に変化する光導波路(以下、幅テーパ導波路とも称する。)により方向性結合器を構成している。その結果、文献のMZ干渉計は、光導波路の幅方向の寸法誤差(以下、幅誤差とも称する。)に対する耐性に優れており、また偏波無依存で動作する等の優れた特性を有している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Photonics Technology Letters vol.18,No.22,p.2392,2006年11月
【非特許文献2】Photonics Technology Letters vol.20,No.23,p.1968,2008年12月
【非特許文献3】Optics Express vol.18,No.23,p.23891,2010年11月
【非特許文献4】国際会議OFC2011予稿集、講演番号OThM3
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許4860294号明細書
【特許文献2】米国特許5764826号明細書
【特許文献3】米国特許5960135号明細書
【特許文献4】米国特許7072541号明細書
【特許文献5】特開平8−163028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、より特性の優れた多段のMZ干渉計型の波長分離素子を、この方向性結合器により構成することはできなかった。それは、この方向性結合器の機能が3dBカプラに限られているためである。すなわち、多段のMZ干渉計型の波長分離素子では、個々のMZ干渉計に任意の分配率が求められる。つまり、3dBカプラとして機能する方向性結合器でMZ干渉計を構成した場合、分配比は1:0に限定されてしまうため、2個の出力ポートに任意の強度比で光を出力することができなかった。
【0010】
この発明は、このような問題に鑑みなされた。従って、この発明では、方向性結合器型の3dBカプラを用いつつも、出力光を任意の比率で分配可能であり、それゆえ多段のMZ干渉計型の波長分離素子に用いることができるMZ干渉計としての光素子を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的の達成を図るために、発明者は鋭意検討の結果、方向性結合器のアーム部を構成する2本の導波路を伝搬する光に所定の位相差を発生させることに想到した。従って、この発明の光素子は、基板の主面側に設けられたクラッドと、クラッド中に設けられたコアとで構成された光導波路を備えている。そして、光導波路が第1及び第2光導波路を備え、これらの第1及び第2光導波路で、第1及び第2方向性結合器とアーム部とが構成されている。
【0012】
第1及び第2方向性結合器は、それぞれ、光結合可能な距離だけ離間して互いに平行に配置した第1及び第2光導波路の部分を備える。アーム部は、第1及び第2方向性結合器間に介在する第1及び第2光導波路の部分で構成されている。
【0013】
そして、第1及び第2方向性結合器は、第1波長λ1の第1光に対して3dBカプラとして機能する。さらに、第1方向性結合器を構成する第1又は第2光導波路に、光伝搬方向に垂直で主面に平行な方向に測った長さである幅が第1幅から、第1幅よりも小さい第2幅まで、光伝搬方向に沿って縮小する第1幅テーパ部が形成されている。同様に、第2方向性結合器を構成する第1又は第2光導波路に、幅が第2幅から、第1幅まで、光伝搬方向に沿って拡大する第2幅テーパ部が形成されている。
【0014】
また、アーム部は、アーム部の第1及び第2光導波路を伝搬する第1光に対して、(2m+z)πの位相差(mは0以上の整数、zは0<z<1の実数)を与えるように構成される。
【発明の効果】
【0015】
この発明の光素子は、方向性結合器のアーム部に所定の位相差を発生させるように構成している。その結果、この発明によれば、3dBカプラとして方向性結合器を用いつつも、出力光を任意の比率で分配可能であり、それゆえ多段のMZ干渉計型の波長分離素子に用いることができるMZ干渉計としての光素子が得られる
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(A)は実施形態1の光素子の構造を概略的に示す平面図であり、(B)は第1方向性結合器の拡大平面図であり、(C)は第2方向性結合器の拡大平面図であり、(D)は(A)をA−A線に沿って切断した端面図である。
【図2】(A)及び(B)は方向性結合器を伝搬する光の挙動を模式的に描いた模式図であり、(C)は実施形態1の光素子を伝搬する光の挙動を模式的に描いた模式図である。
【図3】実施形態2の光素子の構造を概略的に示す平面図である。
【図4】実施形態2の光素子を伝搬する光の挙動を模式的に描いた模式図である。
【図5】(A)及び(B)は実施形態2の光素子の変形例の構造を模式的に示す平面図である。
【図6】実施形態2の変形例の動作特性を示す特性図である。
【図7】実施形態2の変形例の動作特性を示す特性図である。
【図8】実施形態2の別の変形例の構造を模式的に示す平面図である。
【図9】実施形態3の光素子の構造を概略的に示す平面図である。
【図10】実施形態3の光素子の変形例の構造を模式的に示す平面図である。
【図11】実施形態3の光素子の別の変形例の構造を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、この発明の実施形態について説明する。なお、各図において各構成要素の形状、大きさ及び配置関係について、この発明が理解できる程度に概略的に示してある。また、以下、この発明の好適な構成例について説明するが、各構成要素の材質及び数値的条件などは、単なる好適例にすぎない。従って、この発明は、以下の実施形態に何ら限定されない。また、各図において、共通する構成要素には同符号を付し、その説明を省略することもある。
【0018】
[実施形態1]
以下、図1及び図2を参照して、実施形態1の光素子について説明する。図1(A)は、光素子の構造を概略的に示す平面図である。図1(B)は、第1方向性結合器の拡大平面図である。図1(C)は、第2方向性結合器の拡大平面図である。図1(D)は、図1(A)をA−A線に沿って切断した端面図である。図2(A)及び(B)は、方向性結合器を伝搬する光の挙動を模式的に描いた模式図である。図2(C)光素子を伝搬する光の挙動を模式的に描いた模式図である。なお、図1(A)において、光素子を構成するコア18は、クラッド12に覆われているために、直接目視することはできないが、強調のために実線で描いてある。また、図2(A)〜(C)においては、基板8及びクラッド12の描画を省略している。
【0019】
(構造)
図1(A)〜(D)を参照して、光素子10の構造について説明する。光素子10は、クラッド12とコア18とで構成される光導波路11を備えている。光導波路11はMZ干渉計32を備えている。光導波路11は、さらに、任意的な要素として入力部24と出力部26とを備えている。
【0020】
クラッド12は、基板8の主面8a側に一様な厚みで延在する膜体である。より詳細には、クラッド12は、主面8a上に設けられており、内部に包含したコア18とともに、光導波路11を構成している。
【0021】
以降、光素子の方向及び寸法に関して、光伝搬方向に垂直かつ主面8aに平行な方向を「幅方向」と称し、幅方向に沿って測った長さを「幅」と称する。また、主面8aに垂直な方向を「厚み方向」と称し、厚み方向に沿って測った長さを「厚み」と称する。同様に、光伝搬方向に沿って測った幾何学的長さを「長さ」と称する。また、所定の構造体の光伝搬方向に垂直な断面のことを「横断面」と称する。
【0022】
クラッド12を構成する材料は、例えば、屈折率が約1.44のSiO2とする。クラッド12の厚みは約3μmとする。そして、主面8aからの距離が約1.5μmの深さにコア18が配置されている。基板8への不所望な光の結合を防ぐためには、コア18と基板8との間に1μm以上の厚みのクラッド12を介在させることが好ましい。基板8は、例えば、Siを材料とする。
【0023】
コア18は、クラッド12の屈折率よりも40%以上大きな屈折率を有する材料で形成されている。この実施形態に示す例では、コア18は、屈折率が約3.5のSiとする。
【0024】
光導波路11を構成する、入力部24、MZ干渉計32及び出力部26は、この順序で接続されている。より詳細には、入力部24の入力用光導波路24aは、MZ干渉計32の第1光導波路16aの入力端IN16aに接続されている。MZ干渉計32の第1光導波路16aの出力端OUT16aは、出力部26の第1出力用光導波路26aに接続されている。MZ干渉計32の第2光導波路16bの出力端OUT16bは、出力部26の第2出力用光導波路26bに接続されている。
【0025】
光導波路11は、全ての構成要素を断面矩形状のチャネル型導波路とする。また、光導波路11は、全ての構成要素の厚みD1を300nmとする。また、後述する第1及び第2方向性結合器32L及び32Rを除いて、光導波路11は、構成要素の幅Wを300nmとする。このように、第1及び第2方向性結合器32L及び32Rを除く光導波路11の構成要素の横断面形状を幅300nm及び厚み300nmの正方形状とすることにより、第1及び第2方向性結合器32L及び32Rを除く光導波路11の構成要素を偏波無依存にすることができる。
【0026】
光導波路11を構成する入力部24は、入力用光導波路24aとダミー導波路24bとを備えている。入力用光導波路24aの一端は、クラッド12の側面から露出している。この一端から第1波長λ1の第1光Lt1が入力される。入力用光導波路24aの他端は、MZ干渉計32を構成する第1光導波路16aに接続されている。ダミー導波路24bは、一端部がクラッド12の側面から露出しており、他端部が第2光導波路16bに接続されている。ダミー導波路24bは、実質的に光素子10の動作には関係しない。
【0027】
光導波路11を構成するMZ干渉計32は、第1光導波路16aの入力端IN16aに入力された第1光Lt1を、第1及び第2光導波路16a及び16bの出力端OUT16a及びOUT16bから、任意の分配比で出力する。より詳細には、アーム部32Cにおいて第1光Lt1に生じさせる位相差φに応じた分配比で、第1光Lt1を出力端OUT16a及びOUT16bに分配して出力させる。なお、分配比とは、入力された光が、x:(1−x)(ただし、xは0<x<1)の強度比で2個の出力ポートからそれぞれ出力されるときのxのことを示す。なお、MZ干渉計32が3dBカプラとして機能する場合の分配比xは0.5となる。
【0028】
MZ干渉計32は、構造的には、並列された2本の光導波路である第1及び第2光導波路16a及び16bで構成されている。また、機能的には、第1及び第2光導波路16a及び16bにより形成された、第1及び第2方向性結合器32L及び32Rと、アーム部32Cとを備えている。
【0029】
MZ干渉計32の構造的要素である第1光導波路16aは、2個の第1直線部16aL及び16aRと、第1湾曲部16aCとを備えている。第1湾曲部16aCは、これら第1直線部16aL及び16aR間に介在している。第2光導波路16bは、2個の第2直線部16bL及び16bRと、第2湾曲部16bCとを備えている。第2湾曲部16bCは、これら第2直線部16bL及び16bR間に介在している。なお、以下の記載において、特に断らない限り、「第g直線部」又は「第g湾曲部」(g=1又は2)とは、第g直線部又は第g湾曲部を構成する第h光導波路(h=1又は2)の部分領域を示す。
【0030】
MZ干渉計32の機能的要素である第1方向性結合器32L、アーム部32C及び第2方向性結合器32Rは、この順序で直列に配置されている。第1方向性結合器32Lは、第1及び第2直線部16aL及び16bLで構成されている。また、第2方向性結合器32Rは、第1及び第2直線部16aR及び16bRで構成されている。同様に、アーム部32Cは、第1及び第2湾曲部16aC及び16bCで構成されている。
【0031】
第1方向性結合器32Lは、光結合可能な距離だけ離間して互いに並列した第1及び第2直線部16aL及び16bLで構成されている。第1直線部16aLには、幅が第1幅W1から第2幅W2(<W1)まで、光伝搬方向に沿って縮小する第1幅テーパ部16T1が形成されている。より詳細には、第1幅テーパ部16T1は、入力部24からアーム部32Cに向かうに従って、等脚台形状に幅が縮小していく。第2直線部16bLは、幅が第3幅W3であり、第1幅テーパ部16T1との間に一定の間隔Spを空けて配置されている。つまり、第2直線部16bLの側面と、第1幅テーパ部16T1の側面とは平行である。
【0032】
第2方向性結合器32Rは、光結合可能な距離だけ離間して互いに並列した第1及び第2直線部16aR及び16bRで構成されている。第2直線部16bRには、幅が第2幅W2から第1幅W1まで、光伝搬方向に沿って拡大する第2幅テーパ部16T2が形成されている。より詳細には、第2幅テーパ部16T2は、アーム部32Cから出力部26に向かうに従って、第1幅テーパ部16T1と等しい等脚台形状に幅が拡大していく。第1直線部16aRは、幅が第3幅W3であり、第2幅テーパ部16T2との間に一定の間隔Spを空けて配置されている。
【0033】
詳しくは(動作)の項で後述するが、第1及び第2方向性結合器32L及び32Rは、第1光Lt1に関して、偏波無依存な3dBカプラとして機能する。つまり、第1直線部16aLに入力された第1光Lt1は、第1方向性結合器32Lより、第1及び第2直線部16aL及び16bLにパワーが等分配されて、両直線部16aL及び16bLから1:1の分配比で出力される。第2方向性結合器32Rも同様にして、第1直線部16aRから入力された第1光Lt1を、第1及び第2直線部16aR及び16bRから1:1の分配比で出力させる。
【0034】
第1及び第2幅テーパ部16T1及び16T2において、第1幅W1は、約360nmとする。また、第2幅W2は、約320nmとする。また、第3幅W3は、約320nmとする。また、第1幅テーパ部16T1と第2直線部16bLとの間の側面間の間隔Sp、及び第2幅テーパ部16T2と第1直線部16aRとの間の側面間の間隔Spは、互いに等しく、約410nmとする。また、第1及び第2幅テーパ部16T1及び16T2の全長L1、すなわち第1及び第2方向性結合器32L及び32Rの長さは、例えば約100μmとする。
【0035】
アーム部32Cは、並列された第1及び第2湾曲部16aC及び16bCで構成されている。アーム部32Cは、第1及び第2光導波路16aC及び16bCを伝搬後の第1光Lt1に与える位相差φを(2m+z)π(mは0以上の整数、zは0<z<1の実数)とする条件(以下、位相差条件とも称する。)を満足するように構成されている。つまり、アーム部32Cは、第1光Lt1に対して、0より大きくπ未満の位相差φを付与するように構成されている。
【0036】
MZ干渉計32を伝搬する第1光Lt1に関する干渉条件は、φ=2mπ及びφ=(2m+1)πで与えられる。これらの2式は、第1光Lt1に付与される位相差φが2mπ又は(2m+1)πに等しい場合に、上述の分配比xが0又は1となることを表している。つまり、位相差φが2mπの場合が分配比x=0に対応し、第1光Lt1は出力端OUT16bのみから出力される。一方、位相差φが(2m+1)πの場合が分配比x=1に対応し、第1光Lt1は出力端OUT16aのみから出力される。
【0037】
ところで、位相差φが2mπに等しいとは、上述の位相差条件でz=0の場合に対応し、位相差φが(2m+1)πに等しいとは、位相差条件でz=1の場合に対応する。このことより、発明者は、zを0<z<1とすることで、第1光Lt1に与える位相差φを2mπ<φ<(2m+1)πとできることに想到した。これにより、3dBカプラである第1及び第2方向性結合器32L及び32Rを用いているにも関わらず、光素子10は、第1光Lt1を任意の分配比xで出力できる。
【0038】
詳しくは後述するが、この実施形態では、第1光Lt1は、対称モード光及び反対称モード光としてアーム部32Cを伝搬する。従って、位相差φを付与することで、対称モード光の一部は、位相差φに応じた比率で反対称モード光に変換される。同様に、反対称モード光の一部も、位相差φに応じた比率で対称モード光に変換される。よって、第1光Lt1は、アーム部32Cを伝搬後に強度比がxの反対称モード光と、強度比が(1−x)の対称モード光との混合光として出力される。なお、以降、対称モード光及び反対称モード光の両者を総称して、両モード光とも称する。
【0039】
第1光Lt1に対して、2mπ<φ<(2m+1)πの位相差φを発生させるために、光素子10では、アーム部32Cを構成する第1及び第2湾曲部16aC及び16bCの光路長を異ならせている。なお、「光路長」とは、一般に、光導波路の幾何学的な長さPを、ある波長の光が感じる光導波路の等価屈折率qで補正した光学的な長さのことを示す。光路長をSとすると、S,P及びqの間には、下記式(1)が成り立つ。
S=P×q・・・(1)
【0040】
ここで、第1湾曲部16aCの光路長をSaとし、第2湾曲部16bCの光路長をSbとする。また、第1及び第2湾曲部16aC及び16bC間の光路長差(Sa−Sb)を、ΔS1とする。ところで、位相差φと光路長差ΔS1との間には、2πΔS1/λ1=φが成り立つので、位相差条件から、ΔS1は下記式(2)が成立するように設定すればよい。
2ΔS1/λ1=2m+z・・・(2)
【0041】
なお、第1及び第2湾曲部16aC及び16bCの長さは、式(2)から求まるΔS1と、第1光Lt1に関する第1及び第2湾曲部16aC及び16bCの等価屈折率とから、式(1)により求めればよい。
【0042】
再び、光導波路11の構成の説明に戻ると、出力部26は、第1出力用光導波路26aと第2出力用光導波路26bとを備えている。第1出力用光導波路26aの一端は、第2方向性結合器32Rの第1直線部16aRに接続されている。第2出力用光導波路26bの一端は、第2方向性結合器32Rの第2直線部16bRに接続されている。第1及び第2出力用光導波路26a及び26bからは、それぞれ、x:(1−x)の分配比で第1光Lt1が出力される。
【0043】
なお、この実施形態では、アーム部32Cを構成する第1及び第2湾曲部16aC及び16bCの長さの差を128nmとする。これは位相差条件で、mを0とし及びzを1/2とする場合に対応し、これによりπ/2の位相差φを発生させる。このときの分配比xは0.5である。
【0044】
(動作)
以下、光素子10の動作について説明する。光素子10の全体動作の説明に先立ち、まず、図2(A)及び(B)を参照して、第1及び第2方向性結合器32L及び32R単独の動作について説明する。ところで、第1及び第2方向性結合器32L及び32Rは、構造に形式的な違いがあるが、実質的に等しく動作する。そこで、以下において、両方向性結合器32L及び32Rの代表として、第1方向性結合器32Lと同様に構成された方向性結合器32Aを用いて説明する。
【0045】
一般に、方向性結合器32Aのように、幅テーパ導波路を構成要素とする方向性結合器(以下、幅テーパ方向性結合器とも称する。)では、光を入力した光導波路に応じて、光の伝搬モードが、対称モード又は反対称モードへと偏波無依存で分離されることが知られている。
【0046】
すなわち、図2(A)に示すように、第1幅テーパ部16Tを備えた第1光導波路16aの入力端IN16aから光LtIN1が入力された場合、幅テーパ導波路の作用により、出力側OUT16に、両光導波路16a及び16bに跨って分布する対称モード光LtOUT1が励起される。この対称モード光LtOUT1が、光結合しない間隔で配置された2本の光導波路、例えば、アーム部等に出力される場合、これらの光導波路に等しい強度で分配される。つまり、光LtIN1に関して、方向性結合器32Aは3dBカプラとして機能する。
【0047】
同様に、図2(B)に示すように、幅が変化しない第2光導波路16bの入力端IN16bに光LtIN2が入力された場合、幅テーパ導波路の作用により、出力側OUT16に、両光導波路16a及び16bに跨って分布する反対称モード光LtOUT2が励起される。この反対称モード光LtOUT2も、光結合しない間隔で配置された2本の光導波路に出力される場合、これらの光導波路に等しい強度で分配される。つまり、光LtIN2に関しても、方向性結合器32Aは3dBカプラとして機能する。これらより、方向性結合器32Aは、入力端IN16a及びIN16bから入力された光に関して3dBカプラとして機能する。
【0048】
方向性結合器32Aの両入力端IN16a及びIN16bの両者に光LtIN1及びLtIN2が同時に入力された場合、方向性結合器32Aの出力側OUT16には、対称モード光LtOUT1と反対称モード光LtOUT2の混合光が励起される。ここで、出力側OUT16に励起される対称モード光LtOUT1と反対称モード光LtOUT2の強度比は、光LtIN1と光LtIN2の強度比に等しくなる。
【0049】
一般に、光の伝搬に関しては、逆過程が成り立つ。よって、出力側OUT16側から、両光導波路16a及び16bに跨るように対称モード光LtOUT1と反対称モード光LtOUT2との混合光が入力された場合、対称モード光LtOUT1は、幅テーパ部16Tを有する第1光導波路16aに光を集中し、光LtIN1として入力端IN16aから出力される。また、反対称モード光LtOUT2は、等幅の光導波路である第2光導波路16bに光を集中し、光LtIN2として入力端IN16bから出力される。なお、入力された対称モード光LtOUT1と反対称モード光LtOUT2の強度比がx:(1−x)の場合、出力される光LtIN1と光LtIN2の強度比もx:(1−x)となる。
【0050】
以上を踏まえて、図2(C)を参照しながら、光素子10の全体動作を説明する。
【0051】
入力部24に入力された第1光Lt1は、入力用光導波路24aを伝搬して第1方向性結合器32Lの第1直線部16aLに、光Lt11として入力される。
【0052】
第1方向性結合器32Lは幅テーパ方向性結合器なので、第1直線部16aLに入力された光Lt11は、上述したように、出力側で対称モード光である光Lt12を励起する。
【0053】
第1方向性結合器32Lは、3dBカプラとして機能するので、このようにして励起された光Lt12は、アーム部32Cを構成する第1及び第2湾曲部16aC及び16bCのそれぞれに等分配される。アーム部32Cを構成する第1及び第2湾曲部16aC及び16bCの光路長差ΔS1は、上述のように設定されている。よって、アーム部32Cで与えられる位相差φにより、アーム部32Cを伝搬後の光Lt12は、対称モード光と反対称モード光との混合光である光Lt13となる。位相差φは上述のように設定されているので、光Lt13に含まれる対称モード光と反対称モード光との強度比は分配比に等しく、(反対称モード):(対称モード)=x:(1−x)となる。
【0054】
続いて、光Lt13は、第2方向性結合器32Rに入力される。第2方向性結合器32Rは第1方向性結合器32Lと同様に構成された幅テーパ方向性結合器である。そのため、光Lt1に含まれる対称モード光は、第2幅テーパ部16T2を備える第2直線部16bRへと強度を集中し、分配比(1−x)の光Lt15として第2出力用光導波路26bからクロス状態で出力される。同様に、第1光Lt13に含まれる反対称モード光は、第1直線部16aRへと強度を集中し、分配比xの光Lt14として第1出力用光導波路26aからバー状態で出力される。
【0055】
ここで、「クロス状態で出力」とは、入力端IN16aから入力された光が、第2光導波路16bにパワーが移行し、出力端OUT16bから出力されることを意味する。また、「バー状態で出力」とは、入力端IN16aから入力された光が、第2光導波路16bへのパワー移行が発生せず、出力端OUT16aから出力されることを意味する。
【0056】
上述した光素子10の動作は、数学的には伝達マトリクスにより説明できる。すなわち、入力端IN16aのみに入力される第1光Lt1をマトリクス表示すると、下記式(3)で表される。なお、第2直線部16bLのみに第1光Lt1が入力される場合には、下記式(3)の0と1とを入れ替えたマトリクスで表される。
【0057】
【数1】
【0058】
このとき、第1方向性結合器32Lの伝達マトリクスは、下記式(4)で表される。
【0059】
【数2】
【0060】
また、アーム部32Cの伝達マトリクスは、下記式(5)で表される。
【0061】
【数3】
【0062】
よって、MZ干渉計32全体としての動作は、式(4)及び(5)を用いて、下記式(6)として表される。
【0063】
【数4】
【0064】
式(6)は、MZ干渉計32が、第1光Lt1に関して、位相差φの値に応じて分配比xを変化可能であることを示している。例えば、位相差φがπ/2の場合には、式(6)から、下記式(7)が得られる。
【0065】
【数5】
【0066】
式(7)は、位相差φがπ/2の場合には、第1光Lt1に関して、MZ干渉計32が3dBカプラとして機能することを示している。
【0067】
なお、上述のように、第1及び第2方向性結合器32L及び32Rを除く光導波路11は、第1光Lt1に関して偏波無依存で動作する。また、上述のように、第1及び第2方向性結合器32L及び32Rも第1光Lt1に関して偏波無依存で動作する。よって、光素子10は第1光Lt1に関して偏波無依存で動作する。つまり、第1光Lt1のTE偏波成分とTM偏波成分とは、分配比xが等しい。
【0068】
このように、この実施形態の光素子10は、3dBカプラである第1及び第2方向性結合器32L及び32Rを用いているにも関わらず、第1光Lt1を任意の分配比で出力端OUT16a及びOUT16bから出力できる。よって、光素子10のMZ干渉計32を、多段のMZ干渉計型の波長分離素子を構成する要素に用いることができる。
【0069】
(変形例)
以下、光素子10の変形例について説明する。
【0070】
(変形例1)
この実施形態では、コア18として、クラッド12の屈折率よりも40%以上大きな屈折率を有する材料を用いた場合について説明した。しかし、コアに十分な強度で光を閉じ込めることができれば、コアの屈折率は、クラッドの屈折率よりも40%以上大きい必要は無い。このようなコア及びクラッドで構成された光導波路を備えた光素子も、第1光Lt1を任意の分配比で出力端OUT16a及びOUT16bから出力できる。
【0071】
(変形例2)
この実施形態では、光素子10を偏波無依存とする場合について説明した。しかし、偏波無依存性は、光素子10が満たすべき必要条件ではない。従って、幅と厚みとを変化させて、偏波依存性を発生させた光導波路で構成された光素子も本発明の範囲に含まれる。
【0072】
[実施形態2]
以下、図3〜図8を参照して、実施形態2の光素子について説明する。図3は、光素子の構造を概略的に示す平面図である。図4は、光素子を伝搬する光の挙動を模式的に描いた模式図である。図5(A)及び(B)は、変形例の構造を模式的に示す平面図である。図6及び図7は、変形例の動作特性を示す特性図である。図8は、別の変形例の構造を模式的に示す平面図である。
【0073】
なお、図3において、光素子を構成するコア18は、クラッド12に覆われているために、直接目視することはできないが、強調のために実線で描いてある。また、図8においては、基板8及びクラッド12の描画を省略している。また、以上の図面において、煩雑化を防ぐために、説明に必要ない一部の構成要素の符号を省略している。
【0074】
(構造)
図3を参照して、光素子50の構造について説明する。光素子50は、言わば実施形態1の光素子10を一構成要素として含んだものに対応する。より正確には、光素子50は、実施形態1のMZ干渉計32を第1及び第2メタ方向性結合器321及び322として備えている。よって、第1及び第2メタ方向性結合器321及び322の構成要素には、MZ干渉計32と同等の符号を付すとともに、符号に付した下付きの添字「1」又は「2」により、第1及び第2メタ方向性結合器321及び322を区別する。
【0075】
光素子50を構成する光導波路11は、光ユニット40を備えている。光ユニット40は、第1及び第2メタ方向性結合器321及び322と、メタアーム部323とで構成されている。詳しくは後述するが、光ユニット40は、全体として、2個の方向性結合器と、アーム部とを備えた1個のMZ干渉計として機能する。すなわち、第1及び第2メタ方向性結合器321及び322が2個の方向性結合器と同等に動作し、メタアーム部323がアーム部と同等に動作する。そこで、以降、光ユニット40を、メタマッハツェンダ干渉計(MMZ干渉計)40と称することもある。
【0076】
また、この実施形態では、MMZ干渉計40が波長分離素子として動作する場合について説明する。つまりMMZ干渉計40は、入力された第1波長λ1の第1光Lt1と、第1波長λ1とは異なる第2波長λ2の第2光Lt2との混合光を、波長分離してそれぞれ異なる出力ポートから出力させる。なお、この実施形態では、第1光Lt1の第1波長λ1を、光加入者系通信システムで下り通信光として一般的に用いられる1.49μmとする。また、第2光Lt2の第2波長λ2を、光加入者系通信システムで上り通信光として一般的に用いられる1.31μmとする。
【0077】
再び構成の説明に戻ると、光導波路11は、さらに、任意的な要素として実施形態1と同様に構成された入力部24と出力部26とを備えている。
【0078】
光導波路11を構成する、入力部24、第1メタ方向性結合器321,メタアーム部323,第2メタ方向性結合器322及び出力部26は、この順序で接続されている。より詳細には、入力部24の入力用光導波路24aは、第1メタ方向性結合器321の第1光導波路16a1の入力端IN16aに接続されている。第2メタ方向性結合器322の第1光導波路16a2の出力端OUT16aは、出力部26の第1出力用光導波路26aに接続されている。第2メタ方向性結合器322の第2光導波路16b2の出力端OUT16bは、出力部26の第2出力用光導波路26bに接続されている。
【0079】
そして、第1及び第2メタ方向性結合器321及び322が備える第1光導波路16a1及び16a2とメタアーム部323が備える第1光導波路16a3とが接続されており、第1及び第2メタ方向性結合器321及び322が備える第2光導波路16b1及び16b2とメタアーム部323が備える第2光導波路16b3とが接続されている。
【0080】
第1メタ方向性結合器321は、アーム部321Cが、第1光Lt1に対して、(2m+1/2)πの位相差φを与えるように構成されている。つまり、アーム部321Cは、上述した位相差条件であるφ=(2m+z)πにおいて、zを1/2に設定している。これにより、アーム部321Cは、第1光Lt1に対して、実質的にπ/2の位相差を付与する。その結果、第1メタ方向性結合器321の分配率xは0.5となり、第1メタ方向性結合器321は、第1光Lt1に関して3dBカプラとして機能する。つまり、第1メタ方向性結合器321は、実施形態1の第1方向性結合器32Lと等価に動作する。
【0081】
この位相差φを与えるために、アーム部321Cの第1及び第2湾曲部16a1C及び16b1C間の光路長差ΔS1を、z=1/2の条件で式(2)を用いて設定する。
【0082】
なお、アーム部321Cは、幅広い波長範囲の光に対して、略同等の位相差φを与えるように設計されている。よって、第1光Lt1に基づいて設計しているにも関わらず、第1メタ方向性結合器321は、第2波長λ2(≠λ1)の第2光Lt2についても、実用上十分に3dBカプラとして機能する。
【0083】
第2メタ方向性結合器322は、第1メタ方向性結合器321と略同様に構成されており、実施形態1の第1方向性結合器32Rと等価に動作する。
【0084】
ここで、第1及び第2メタ方向性結合器321及び322の構成要素の配置関係について説明する。概略的には、第1及び第2メタ方向性結合器321及び322の各構成要素は、MMZ干渉計40の中心点を対称中心として、点対称に配置されている。ここで、MMZ干渉計40の中心点とは、第1及び第2方向性結合器321L,322L,321R及び322Rを構成する第1及び第2光導波路16a及び16b間の中心線と、MMZ干渉計40の全長方向の中心線とが交差する点である。
【0085】
より詳細には、「点対称の配置関係」とは、以下の2条件が成り立つような配置関係を示す。
【0086】
(条件1)
第1メタ方向性結合器321において、第1方向性結合器321Lの第1幅テーパ部16T11が第f1光導波路(f1は1又は2)に設けられ、及び第2方向性結合器321Rの第2幅テーパ部16T21が、第f2光導波路(f2は1又は2)に設けられているとする。このとき、第2メタ方向性結合器322における第1方向性結合器322Lの第1幅テーパ部16T12を第u2光導波路(u2=3−f2)に設け、及び第2方向性結合器322Rの第2幅テーパ部16T22を、第u1光導波路(u1=3−f1)に設ける。なお、図3は、f1=1,f2=2,u1=2及びu2=1の場合に対応する。
【0087】
(条件2)
第1メタ方向性結合器321のアーム部321Cにおける第1及び第2光導波路16a1C及び16b1C間の光路長差をΔS11とし、第2メタ方向性結合器322のアーム部322Cにおける第1及び第2光導波路間16a2C及び16b2Cの光路長差をΔS12とする。このとき、ΔS11及びΔS12が絶対値が等しく符号が反転するように。アーム部321C及び322Cを配置する。
【0088】
このように、第1及び第2メタ方向性結合器321及び322の各構成要素を点対称配置にすることにより、MMZ干渉計40からクロス出力される第1光Lt1のピーク波長帯域を広げることができる。
【0089】
再び構成の説明に戻ると、メタアーム部323は、概略的には、波長分離のための位相差Φを第1及び第2光Lt1及びLt2に付与する。つまり、メタアーム部323は、第1及び第2光導波路16a3及び16b3を伝搬する第1光Lt1に対して2Mπ(Mは0以上の整数)の位相差Φを与えるように構成されている。つまり、第1光Lt1をクロス出力させるために、メタアーム部323が第1光Lt1に付与する位相差Φを、干渉条件であるΦ=2Mπを満足するように設定する。
【0090】
ここで、メタアーム部323を構成する第1湾曲部16a3Cの光路長をS2aとし、第2湾曲部16b3Cの光路長をS2bとする。また、第1及び第2湾曲部16a3C及び16b3C間の光路長差(S2a−S2b)を、ΔS2とする。ところで、波長λ1の第1光Lt1に関して、位相差Φと光路長差ΔS2との間には、2πΔS2/λ1=Φが成り立つので、位相差条件から、ΔS2は下記式(8)が成立するように設定すればよい。
2ΔS2/λ1=2M・・・(8)
【0091】
第1光Lt1と同様に、第2光Lt2をバー出力させるためには、メタアーム部323が第2光Lt2に付与する位相差Φを、干渉条件であるΦ=(2M+1)πを更に満足するように設定するのが好ましい。ところで、波長λ2の第2光Lt2に関して、位相差Φと光路長差ΔS2との間には、2πΔS2/λ2=Φが成り立つので、位相差条件から、ΔS2は下記式(9)を更に満たすように設定する。
2ΔS2/λ2=2M+1・・・(9)
【0092】
なお、第1及び第2湾曲部16a3C及び16b3Cの長さは、式(8)及び式(9)を満たすように定められたΔS2と、第1及び第2光Lt1及びLt2に関する第1及び第2湾曲部16a3C及び16b3Cの等価屈折率とから、式(1)により求めればよい。
【0093】
このように構成されたメタアーム部323は、メタアーム部323の伝搬後に、第1及び第2湾曲部16a3C及び16b3Cを伝播する第1光Lt1に対して、2Mπの位相差を付与する。また、第2光Lt2に対して、(2M+1)πの位相差を付与する。
【0094】
(動作)
以下、図4を参照して、MMZ干渉計40の動作について説明する。上述のように、第1及び第2メタ方向性結合器321及び322のアーム部321C及び322Cは、第1及び第2光Lt1及びLt2に対して、実質的に等しい位相差φを付与する。その結果、第1及び第2光Lt1及びLt2が、第1及び第2メタ方向性結合器321及び322を伝搬する際の挙動は略同様となる。従って、以下においては、まず、第1光Lt1がMMZ干渉計40を伝搬する際の挙動を説明し、次に、第2光Lt2の伝搬挙動を、第1光Lt1との相違点を中心に説明する。
【0095】
入力部24及び第1メタ方向性結合器321を伝搬する第1光Lt1の挙動は、光Lt14及び光Lt15の分配比が0.5で等しい点を除き、実施形態1の(動作)の説明と同様である。よって、この項では、メタアーム部323以降における第1光Lt1の伝搬挙動について説明する。
【0096】
メタアーム部323Cを構成する第1及び第2湾曲部16a3C及び16b3Cの光路長差ΔS2は、(8)式を満たすように設定されている。よって、光Lt14及びLt15は、メタアーム部323Cの伝搬後に、2Mπの位相差が付与された光Lt16及びLt17として、第2メタ方向性結合器322へとそれぞれ出力される。
【0097】
続いて、光Lt16及びLt17は、第2メタ方向性結合器322を構成する第1方向性結合器322Lの第1及び第2直線部16a2L及び16b2Lにそれぞれ入力される。第1方向性結合器322Lは、第1方向性結合器321Lと同様に構成された幅テーパ方向性結合器であるので、第1直線部16a2Lに入力された光Lt16は、出力側で対称モード光成分を励起する。同様に、第2直線部16b2Lに入力された光Lt17は、出力側で反対称モード光成分を励起する。すなわち、第1方向性結合器322Lの出力側には、光Lt16由来の対称モード光成分と、光Lt17由来の反対称モード光成分とを1:1の強度比で混合した光Lt18が励起される。
【0098】
続いて、光Lt18は、第2メタ方向性結合器322のアーム部322Cに入力される。アーム部322Cは、第1メタ方向性結合器321のアーム部321Cと同様に構成されているので、第1及び第2光導波路16a2C及び16b2Cを伝搬する光Lt18に対して位相差φを与える。つまり、第1及び第2湾曲部16a2C及び16b2Cに等分配されてそれぞれ伝搬する光Lt18の2個の成分光の間にπ/2の位相差φを与える。その結果、これらの成分光に含まれる反対称モード光成分が対称モード光成分へと変換され、アーム部322Cから、対称モード光のみを含む光Lt19が出力される。
【0099】
続いて、光Lt19は、第2方向性結合器322Rに入力される。第2方向性結合器322Rは、第2方向性結合器321Rと同様に構成された幅テーパ方向性結合器である。よって、入力側に入力された対称モード光である光Lt19は、第2幅テーパ部16T22を有する第2直線部16b2Rに強度を集中し、出力部26の第2出力用光導波路26bから光Lt111が出力される。このように、MMZ干渉計40は第1光Lt1をクロス出力する。
【0100】
続いて、第2光Lt2がMMZ干渉計40を伝搬する際の挙動を、主に第1光Lt1との相違点を中心に説明する。第2光Lt2が第1メタ方向性結合器321を伝搬する際の挙動は第1光Lt1と同様である。
【0101】
続いて、第2光Lt2は、メタアーム部323Cに入力される。メタアーム部323Cの光路長差ΔS2は、(9)式を満たすように設定されている。よって、入力される第2光Lt2由来の光Lt14及びLt15は、メタアーム部323Cの伝搬後に、(2M+1)πの位相差Φが付与された光Lt16及びLt17として、第2メタ方向性結合器322へとそれぞれ出力される。
【0102】
第2光Lt2由来の光Lt16及びLt17が、第2メタ方向性結合器322の第1方向性結合器322Lを伝搬する際の挙動は、第1光Lt1と同様である。よって、第1方向性結合器322Lの出力側には、(2M+1)πの位相差Φがそれぞれ付与された、対称モード光成分と反対称モード光成分とを1:1の強度比で混合した、第2光Lt2由来の光Lt18が励起される。
【0103】
続いて、第2光Lt2由来の光Lt18は、第2メタ方向性結合器322のアーム部322Cに入力される。アーム部322Cは、上述のように、第1及び第2光導波路16a2C及び16b2Cを伝搬する光Lt18に対して、π/2の位相差φを与える。つまり、第1及び第2湾曲部16a2C及び16b2Cに等分配されてそれぞれ伝搬する光Lt18の2個の成分光の間にπ/2の位相差φを与える。その結果、アーム部322Cでの位相差φの付与と、メタアーム部323Cでの位相差Φの付与とが相俟って、これらの成分光に含まれる対称モード成分光が反対称モード成分光へと変換され、アーム部322Cから、第2光Lt2由来の反対称モード光のみを含む光Lt19が出力される。
【0104】
続いて、光Lt19は、第2方向性結合器322Rに入力される。第2方向性結合器322Rの入力側に入力された反対称モード光である光Lt19は、等幅なチャネル型光導波路である第1直線部16a2Rに強度を集中し、出力部26の第1出力用光導波路26aから光Lt110が出力される。このように、MMZ干渉計40は、第2光Lt2をバー出力する。
【0105】
このように、MMZ干渉計40は、方向性結合器と同等に機能するとともに、分配比をより精密に制御可能な第1及び第2メタ方向性結合器321及び322を用いて波長分離素子を構成している。よって、MMZ干渉計40は、通常の方向性結合器を用いたMZ干渉計型の波長分離素子に比べてクロストーク特性に優れている。
【0106】
また、MMZ干渉計40は、実施形態1の方向性結合器321L,321R,322L及び322Rを用いて構成されている。その結果、偏波無依存で動作するとともに、通常の方向性結合器を用いたMZ干渉計型の波長分離素子に比較して、幅誤差に対する耐性が優れている。
【0107】
(変形例)
以下、MMZ干渉計40の変形例について説明する。MMZ干渉計40は光素子10と同様の変形が可能であるとともに、さらに以下に列記する変形が可能である。
【0108】
(変形例1)
以下、図5(A)及び(B)を参照して、光素子50の変形例について説明する。なお、図5(A)及び(B)において、図3と同様の構成要素には同符号を付してその説明を適宜省略する。
【0109】
図5(A)に示した光素子50Aは、第1及び第2メタ方向性結合器321A及び322Aの中心軸C321及びC322が互いに平行となっている点、及びメタアーム部323Aの形状が異なっている点を除いて、上述の光素子50と同様に構成されている。
【0110】
すなわち、光素子50Aは、メタアーム部323Aを屈曲部として、第1及び第2メタ方向性結合器321A及び322Aをヘアピン状に折り曲げた構造を有している。このように、第1及び第2メタ方向性結合器321A及び322Aを折り曲げることにより、光素子50Aの全長を小さくすることができる。
【0111】
このように、光素子50Aと光素子50との相違点は形式的であるので、光素子50Aは光素子50と同様に動作する。
【0112】
ここで、図6及び図7を参照して、光素子50Aについて実施したシミュレーションについて説明する。なお、上述した理由により、図6及び図7の説明は、光素子50についても同様に当てはまる。
【0113】
図6は、2次元FDTD(Finite Difference Time Domain)法で求めた、光素子50Aの動作特性を示す特性図である。概略的に言えば、図6では、入力端IN16aから、波長を変化させた入力光Ltを入力し、出力端OUT16a及びOUT16bのそれぞれから出力されるバー状態光及びクロス状態光の強度比を求めている。図6において、縦軸は、バー状態光(曲線I)及びクロス状態光(曲線II)の、入力光Ltに対する光強度比(dB)であり、横軸は波長(μm)である。
【0114】
なお、図6を求めるに当たっては、光素子50Aを、第1波長λ1=1.49μmの第1光Lt1をクロス出力(分配比x=0)する波長分離素子として動作するように設計した。すなわち、メタアーム部323Aの第1及び第2光導波路間の長さの差を1.35μmに設定した。また、メタアーム部323Aに含まれる全ての屈曲部の曲率を5μmとした。ここで、屈曲部とは、メタアーム部323Aの第1及び第2光導波路が直角に屈曲された領域を示す。これ以外の数値的条件、すなわち、コア18及びクラッド12の屈折率、光素子50Aを構成する幅テーパ方向性結合器の第1〜第3幅W1〜W3、幅テーパ方向性結合器を構成する幅テーパ導波路と等幅導波路間の側面間の間隔Sp、幅テーパ方向性結合器の全長L1、及びアーム部を構成する第1及び第2湾曲部の長さの差については、既に説明した値を用いた。
【0115】
図6を参照すると、曲線Iから、波長約1.11μm及び波長約1.42μmの光(バーピーク波長と称する。)が、高い分配比で出力端OUT16aから出力されることが判る。また、曲線IIから、波長約1.25μm及び波長約1.58μmの光(クロスピーク波長と称する。)が、高い分配比で出力端OUT16bから出力されることが判る。このことより、光素子50Aは、クロスピーク波長の光とバーピーク波長の光との混合光を波長分離する波長分離素子として動作することが判る。
【0116】
図7は、図6とは異なる幅テーパ方向性結合器を用いた場合の、光素子50Aの動作特性を示す特性図である。図7を求めるための計算方法、及び幅テーパ方向性結合器以外の寸法条件等は、図6と同様である。また、図7の縦軸及び横軸と、描かれている2本の曲線I及びIIも、図6と同様の意味である。
【0117】
図7では、幅テーパ方向性結合器の全長を200μmとした。また、幅テーパ導波路と等幅導波路間の側面間の間隔Spをテーパ状に変化させている。すなわち、幅テーパ方向性結合器を構成する幅テーパ導波路の幅が狭くなるにつれて、徐々に導波路間隔を狭くしている。具体的には、幅テーパ導波路と等幅導波路間の側面間の間隔Spを500nmから300nmまで変化させている。また、幅テーパ方向性結合器の第1幅W1を340nmとし、及び第2幅W2を300nmとした。また、アーム部を構成する第1及び第2湾曲部の長さの差を170nmとした。
【0118】
図7を参照すると、曲線Iから、波長約1.25μm及び波長約1.66μmの光が、高い分配比で出力端OUT16aから出力されることが判る。また、曲線IIから、波長約1.41μmの光が、高い分配比で出力端OUT16bから出力されることが判る。
【0119】
また、図7では、バーピーク波長におけるバー状態光(曲線I)に対するクロス状態光(曲線II)の強度比、及びクロスピーク波長におけるクロス状態光(曲線II)に対するバー状態光(曲線I)の強度比が、平均的に図6よりも小さくなっていることが判る。
【0120】
このことより、図7の構成に係る光素子50Aは、図6の構成に係る光素子50Aよりも、クロストーク特性に優れた波長分離素子として動作することが判る。
【0121】
続いて、図5(B)を参照して、光素子50の別の変形例について説明する。図5(B)に示した光素子50Bは、メタアーム部323Bの形状が異なっている点を除いて、光素子50Aと同様に構成されている。すなわち、光素子50Bは、メタアーム部323Bにおける屈曲部の配置を工夫することにより、光素子50Aよりもサイズを小さくすることに成功している。
【0122】
なお、光素子50A及び50Bでは、それぞれの中心軸C321及びC322を互いに平行としているが、中心軸C321及びC322を平行とすることは、必須の条件ではない。中心軸C321及びC322が所定の角度で交差するように第1及び第2メタ方向性結合器321及び322を配置することによっても、光素子50A及び50Bのサイズを小型化できる。
【0123】
(変形例2)
この実施形態においては、第1及び第2メタ方向性結合器321及び322の分配比xを0.5に設定して3dBカプラとして動作させ、単独のMMZ干渉計40が波長分離素子を構成する場合について説明した。しかし、第1及び第2メタ方向性結合器321及び322の分配比xは、任意の値に設定できる。実施形態3で後述するように、第1及び第2メタ方向性結合器321及び322の分配比xを0.5以外の値に調整したMMZ干渉計40を用いて、いわゆる多段のMZ干渉計型の波長分離素子を構成できる。
【0124】
(変形例3)
以下、図8を参照して、光素子50の変形例について説明する。図8と図3との比較から明らかなように、光素子50Cは、第1メタ方向性結合器321の第2方向性結合器321Rと、メタアーム部323と、第2メタ方向性結合器322の第1方向性結合器322Lとからなる第1素子部分(図4で符号64で示す。)が、マルチモード光導波路52で置換されている点を除き、光素子50と同様に構成されている。
【0125】
図4を参照すると、第1素子部分64は、両モード光を含む光Lt13を、両光導波路16a及び16bを伝搬する光Lt14及びLt15へと変換し、メタアーム部323により波長に応じた位相差Φを付与した上で、再び両モード光を含む光Lt18へと変換している。つまり、第1素子部分64では、波長に応じた位相差Φを付与するために、一旦、光Lt13をシングルモード光である光Lt14及びLt15に変換し、位相差Φの付与後の光Lt16及びLt17を再変換して、両モード光を含む光Lt18を得ていた。
【0126】
一般に、マルチモード光導波路では両モード光間で伝搬定数が異なっているので、第1素子部分64をマルチモード光導波路52に置換すれば、光Lt13を光Lt14及びLt15に変換しなくても、直接、光Lt13に位相差Φを付与し、光Lt18を得ることができる。
【0127】
このように、第1素子部分64をマルチモード光導波路52に置換することにより、光素子50の構造を大幅に単純化できる。
【0128】
なお、マルチモード導波路52は、この導波路52に関する干渉条件を表す下記式(10)を用いて設計できる。
2πLMΔnM/λ1=2mMπ・・・(10)
【0129】
ここで、LMはマルチモード導波路52の全長であり、ΔnMは、マルチモード導波路52に関する両モード光間の等価屈折率差であり、及びmMは0以上の整数値を取る干渉次数である。なお、ΔnMはマルチモード導波路52の幅と厚みとから計算できる。
【0130】
ここで、波長分離すべき第1及び第2光Lt1及びLt2間の波長差(λ1−λ2)をΔλ1とすると、全長LMは、式(10)変形した下記式(11)から求めることができる。
LM=(λ12/Δλ1)×(ΔnM−λ1×(dΔnM/dλ1))・・・(11)
【0131】
このように設定された全長LMのマルチモード導波路52は、第1素子部分64と同様に動作する。
【0132】
[実施形態3]
以下、図9〜図11を参照して、実施形態3の光素子について説明する。図9は、光素子の構造を概略的に示す平面図である。図10は、変形例の構造を模式的に示す平面図である。図11は、別の変形例の構造を模式的に示す平面図である。
【0133】
なお、図9において、光素子を構成するコア18は、クラッド12に覆われているために、直接目視することはできないが、強調のために実線で描いてある。また、図10及び図11においては、基板8及びクラッド12の描画を省略している。また、以上の図面において、煩雑化を防ぐために、説明に必要ない一部の構成要素の符号を省略している。
【0134】
(構造)
図9を参照して、光素子60の構造について説明する。光素子60は、言わば、多段のMZ干渉計型の波長分離素子であり、実施形態2のMMZ干渉計40を複数個直列に接続したものに対応する。より正確には、光素子60は、MMZ干渉計40と略同様に構成された第1〜第iMMZ干渉計40−1〜40−i(iは2以上の整数)を備えている。よって、第1〜第iMMZ干渉計40−1〜40−iの構成要素には、MMZ干渉計40と同等の符号を付すとともに、符号の末尾に付した添字「−i」により、第1〜第iMMZ干渉計40−1〜40−iを区別する。
【0135】
光素子60を構成する光導波路11は、この順序で直列に配置された第1〜第iMMZ干渉計40−1〜40−iを備えている。光導波路11は、さらに、任意的な要素として実施形態1と同様に構成された入力部24と出力部26とを備えている。光素子60は、第1光Lt1をクロス状態で出力し、第2光Lt2をバー状態で出力するように構成されている。
【0136】
第1〜第iMMZ干渉計40−1〜40−iは、MMZ干渉計の第1光Lt1に関する分配比が異なっている以外は、実施形態2のMMZ干渉計40と同様に構成されている。すなわち、第1光Lt1をクロス出力するためには、個々の第1〜第iMMZ干渉計40−1〜40−iの第1光に関する分配率の和を1にすればよい。そこで、第1〜第iMMZ干渉計40−1〜40−iの第1光Lt1に関する分配率xをそれぞれ1/iとしている。なお、第2光Lt2はバー出力されるので、個々の第1〜第iMMZ干渉計40−1〜40−iの分配率を考慮する必要は無い。
【0137】
ところで、任意の第rMMZ干渉計40−r(rは1〜iの整数。)は、それぞれ2個のメタ方向性結合器321−r及び322−rを備えている。よって、第rMMZ干渉計40−rの分配率を1/iとするためには、メタ方向性結合器321−r及び322−rの分配率を1/(2i)に設定すればよい。
【0138】
あとは、実施形態1と同様にして、分配率が1/(2i)となるように、メタ方向性結合器321−rのアーム部321C−rに導入する位相差を求める。そして、この位相差からアーム部321C−rの光路長差を求め、この光路長差を達成するようにアーム部321C−rを構成する第1及び第2湾曲部16a1C−r及び16b1C−rの長さを決定する。
【0139】
ここで、互いに隣接する第j及び第(j+1)MMZ干渉計40−j及び40−(j+1)(jは1〜i−1の整数)の組み合わせを考える。そして、第j及び第(j+1)MMZ干渉計40−j及び40−(j+1)からなる構造体を第jペア構造体42−jとする。このとき、第jMMZ干渉計40−jを構成する第1及び第2光導波路16a−j及び16b−jと、第(j+1)MMZ干渉計40−(j+1)を構成する第1及び第2光導波路16a−(j+1)及び16b−(j+1)とは、図9の第jペア構造体42−jの中心点を対称中心にして、点対称に配置されている。ここで、第jペア構造体42−jの中心点とは、第jペア構造体42−jの全構成要素についての重心に対応する。
【0140】
このように、第j及び第(j+1)MMZ干渉計40−j及び40−(j+1)を点対称配置にすることにより、クロス出力される第1光Lt1のピーク波長帯域を広げることができる。
【0141】
(変形例)
以下、光素子60の変形例について説明する。光素子60は、光素子10及びMMZ干渉計40と同様の変形が可能であるとともに、さらに以下に列記する変形が可能である。
【0142】
(変形例1)
以下、図10を参照して、光素子60の変形例について説明する。図10は、図9の第jペア構造体42−jの拡大平面図である。図10を参照すると、光素子60Aは、第jペア構造体42−jにおける第2素子部分42A−j(図9)に代えて、第2素子部分42A−jと同様に機能する第j等価アーム部62−jを備えた点が、光素子60と異なっている。つまり、光素子60Aでは、隣接しあう第j及び第j+1MMZ干渉計40−j及び40−(j+1)が、1個の第j等価アーム部62−jを共有している。
【0143】
図9を参照すると、第2素子部分42A−jとは、第jMMZ干渉計40−jにおける第2メタ方向性結合器322−jのアーム部322C−j及び第2方向性結合器322R−jと、第j+1MMZ干渉計40−(j+1)における第1メタ方向性結合器321−(j+1)のアーム部321C−(j+1)及び第1方向性結合器321L−(j+1)とからなる光素子60の部分である。
【0144】
再び図10に戻ると、第j等価アーム部62−jは、並列された第1及び第2光導波路16a及び16bの部分としての第3及び第4湾曲部16a4C−j及び16b4C−jで構成されている。第j等価アーム部62−jは、第3及び第4湾曲部16a4C−j及び16b4C−jを伝搬後の第1光Lt1に、上述した位相差φとは異なる位相差φAを与えるように構成される。ここで、第j等価アーム部62−jが与える位相差φAは、第rMMZ干渉計40−r(図9)が備えるアーム部321C−rが与える位相差φの2倍の大きさとする。
【0145】
第j等価アーム部62−jが、位相差φを2倍にしたアーム部321C−rと等価である点につき、上述の伝達マトリクスを用いて説明する。ここで、図9に示した、第jMMZ干渉計40−jにおける第2メタ方向性結合器322−jと、第j+1MMZ干渉計40−(j+1)における第1メタ方向性結合器321−(j+1)とを直列に接続した直列構造体の伝達特性を伝達マトリクスM31で表す。さらに、第j等価アーム部62−jの伝達特性を伝達マトリクスM33で表す。このとき、M31は、上述の式(4)及び式(5)の伝達マトリクスMs及びMfを用いて、下記式(12)で表される。
M31=MsMfMsMsMfMs・・・(12)
【0146】
式(12)において、2項目から5項目のマトリクスの積であるMfMsMsMfが、第j等価アーム部62−jの伝達特性M33に対応する。ここで、式(12)において、MsMsは単位マトリクスとなるので、式(12)は下記式(13)のように簡単化できる。
M31=MsMfMfMs・・・(13)
【0147】
さらに、式(13)において、MfMfは、下記式(14)のように表される。
【0148】
【数6】
【0149】
ここで、式(14)のM33と、式(6)のMfとを比較すると、Mfでは各要素の位相項で位相差φに係数1/2が掛けられているが、M33の位相項では位相差φに係数が掛けられていない。つまり、位相項での係数の差により、M33は、位相差2φを与えたMfの伝達特性と等しくなる。このことより、第j等価アーム部62−jの位相差φAをアーム部321C−rの位相差φの2倍にすれば、両者が同様に動作することが判る。
【0150】
この結果を利用すると、式(12)は下記式(15)のように表される。
M31=MsM33Ms・・・(15)
【0151】
式(15)から、直列構造体と、一部を第j等価アーム部62−jで置換した直列構造体とは、伝達マトリクスが等しく同様の動作をすることがわかる。
【0152】
このように、第2素子部分42A−jを第j等価アーム部62−jで置換することにより、長さが、100μmオーダである第1及び第2方向性結合器321L−(j+1)及び322R−jを省略することができ、光素子60Aの全長を大幅に短縮することができる。
【0153】
(変形例2)
以下、主に、図11を参照して、光素子60の変形例について説明する。図11に示す光素子60Bは、言わば、図8に示したマルチモード光導波路52と、図10に示した第j等価アーム部62−jとを併用した構造に対応する。
【0154】
より詳細には、光素子60Bは、図10における第1素子部分64−j及び64−(j+1)を、それぞれマルチモード光導波路52−j及び52−(j+1)に置換したものである。
【0155】
さらに、光素子60Bでは、第1及び第2光導波路16a及び16bを、平行を保った状態で直角に屈曲させ、該屈曲部の外側と内側とで生じる光導波路16a及び16bの長さの差を利用して、アーム部321C−j及び322C−(j+1)を形成している。
【0156】
光素子60Bをこのように構成する結果、光素子60Aに比べて、より素子サイズを小型化できる。
【0157】
(変形例3)
この実施形態では、第jペア構造体42−jを構成する第1及び第2光導波路を、中心点を対称中心にして点対称に配置した場合について説明した。しかし、第jペア構造体42−jを構成する第1及び第2光導波路を点対称に配置する必要は無く、平行移動したときに互いに重なり合うように配置してもよい。このように構成しても、光素子60は、実用上十分な波長分離能力を奏する。
【符号の説明】
【0158】
8 基板
8a 主面
10,30,50,50A,50B,50C,60,60A,60B 光素子
11 光導波路
12 クラッド
18 コア
32 マッハツェンダ干渉計(MZ干渉計)
321,321−r,321A,321B,321−(j+1) 第1メタ方向性結合器
322,322−r,322A,322B,322−j 第2メタ方向性結合器
323,323A,323B,323C,323C−j,323C−(j+1) メタアーム部
22L,32L,321L,322L,322L−j,321L−j,321L−(j+1),322L−(j+1) 第1方向性結合器
22R,32R,321R,322R,322R−j,321R−j,321R−(j+1),322R−(j+1) 第2方向性結合器
22C,32C,321C,322C,321C−r,322C−j,321C−j,321C−(j+1),322C−(j+1) アーム部
16aL,16aR,16a1L,16a1R,16a2L,16a2R 第1直線部
16bL,16bR,16b1L,16b1R,16b2L,16b2R 第2直線部
16a4C−j 第3湾曲部
16b4C−j 第4湾曲部
16aC,16a1C,16a2C,16a3C,16a1C−r 第1湾曲部
16bC,16b1C,16b2C,16b3C,16b1C−r 第2湾曲部
16a,16a1,16a2,16a3,16a−j,16a−(j+1) 第1光導波路
16b,16b1,16b2,16b3,16b−j,16b−(j+1) 第2光導波路
16T,16T1,16T11,16T12 第1幅テーパ部
16T2,16T21,16T22 第2幅テーパ部
C321,C322 中心軸
IN16a,IN16b 入力端
OUT16 出力側
OUT16a,OUT16b 出力端
24 入力部
24a 入力用光導波路
24b ダミー導波路
26 出力部
26a 第1出力用光導波路
26b 第2出力用光導波路
40 光ユニット(メタマッハツェンダ(MMZ)干渉計)
40−r 第rMMZ干渉計
40−j 第jMMZ干渉計
40−(j+1) 第(j+1)MMZ干渉計
42−j 第jペア構造体
42A−j 第2素子部分
52,52−j,52−(j+1) マルチモード光導波路
62−j 第j等価アーム部
64,64−j,64−(j+1) 第1素子部分
【技術分野】
【0001】
この発明は、1本の光ファイバを伝搬する波長の異なる2種の光により双方向通信を行うに当たり、発光素子から出力される光と、受光素子へと入力される光との合分波を行う光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
加入者側から局側への光伝送(上り通信)と、局側から加入者側への光伝送(下り通信)とを1本の光ファイバで行う光加入者系の通信システムにおいては、上り通信及び下り通信を異なる波長の光で行うことがある。この場合、局側及び加入者側の双方で、異なる波長の光を合分波する光素子(以下、光合分波素子とも称する。)が必要となる。
【0003】
光加入者系の通信システムで用いられる加入者側終端装置(ONU:Optical Network Unit)は、空間光学的に光軸合わせされた光合分波素子、発光素子及び受光素子を備えている。しかし、近年、光軸合わせの手間を軽減するために、光導波路により構成された光合分波素子が開発されている(例えば、特許文献1〜5参照)。この光導波路を用いた光合分波素子(以下、導波路型光素子とも称する。)では、光の伝搬経路を、予め作り込まれた光導波路内に限定するので、従来の光合分波素子におけるレンズやミラー等の光軸合わせが不要となる。さらに、導波路型光素子では、発光素子及び受光素子を、予め光合分波素子に作成されたマークを基準にして、光導波路の入出射端に位置合わせすればよい。そのため、発光素子及び受光素子に入出射される光ビームの厳密な光軸合わせの手間が大幅に省かれる。
【0004】
近年、SiO2を材料とするクラッドと、SiO2との屈折率差が大きなSiを材料とするコアとで光導波路(以下、Si光導波路とも称する。)を構成した導波路型光素子が報告されている(例えば、非特許文献1〜3参照)。
【0005】
Si光導波路は、コアの屈折率がクラッドの屈折率よりも非常に大きいために、光を光導波路に強く閉じ込めることができる。また、この大きな屈折率差を利用して、光を1μm程度の小さい曲率半径で曲げる曲線状光導波路を実現することができる。さらに、製造時に、Si電子デバイスでの加工技術を利用できるために、きわめて微細なサブミクロンの断面構造を実現できる。これらのことから、Si光導波路を用いることで、導波路型光素子を小型化することができる。
【0006】
Si光導波路を用いた導波路型光素子として、波長分離素子としても機能する1段のマッハツェンダ干渉計(以下、MZ干渉計とも称する。)が開示されている(例えば、非特許文献4参照)。この文献のMZ干渉計は、幅が徐々に変化する光導波路(以下、幅テーパ導波路とも称する。)により方向性結合器を構成している。その結果、文献のMZ干渉計は、光導波路の幅方向の寸法誤差(以下、幅誤差とも称する。)に対する耐性に優れており、また偏波無依存で動作する等の優れた特性を有している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Photonics Technology Letters vol.18,No.22,p.2392,2006年11月
【非特許文献2】Photonics Technology Letters vol.20,No.23,p.1968,2008年12月
【非特許文献3】Optics Express vol.18,No.23,p.23891,2010年11月
【非特許文献4】国際会議OFC2011予稿集、講演番号OThM3
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許4860294号明細書
【特許文献2】米国特許5764826号明細書
【特許文献3】米国特許5960135号明細書
【特許文献4】米国特許7072541号明細書
【特許文献5】特開平8−163028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、より特性の優れた多段のMZ干渉計型の波長分離素子を、この方向性結合器により構成することはできなかった。それは、この方向性結合器の機能が3dBカプラに限られているためである。すなわち、多段のMZ干渉計型の波長分離素子では、個々のMZ干渉計に任意の分配率が求められる。つまり、3dBカプラとして機能する方向性結合器でMZ干渉計を構成した場合、分配比は1:0に限定されてしまうため、2個の出力ポートに任意の強度比で光を出力することができなかった。
【0010】
この発明は、このような問題に鑑みなされた。従って、この発明では、方向性結合器型の3dBカプラを用いつつも、出力光を任意の比率で分配可能であり、それゆえ多段のMZ干渉計型の波長分離素子に用いることができるMZ干渉計としての光素子を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的の達成を図るために、発明者は鋭意検討の結果、方向性結合器のアーム部を構成する2本の導波路を伝搬する光に所定の位相差を発生させることに想到した。従って、この発明の光素子は、基板の主面側に設けられたクラッドと、クラッド中に設けられたコアとで構成された光導波路を備えている。そして、光導波路が第1及び第2光導波路を備え、これらの第1及び第2光導波路で、第1及び第2方向性結合器とアーム部とが構成されている。
【0012】
第1及び第2方向性結合器は、それぞれ、光結合可能な距離だけ離間して互いに平行に配置した第1及び第2光導波路の部分を備える。アーム部は、第1及び第2方向性結合器間に介在する第1及び第2光導波路の部分で構成されている。
【0013】
そして、第1及び第2方向性結合器は、第1波長λ1の第1光に対して3dBカプラとして機能する。さらに、第1方向性結合器を構成する第1又は第2光導波路に、光伝搬方向に垂直で主面に平行な方向に測った長さである幅が第1幅から、第1幅よりも小さい第2幅まで、光伝搬方向に沿って縮小する第1幅テーパ部が形成されている。同様に、第2方向性結合器を構成する第1又は第2光導波路に、幅が第2幅から、第1幅まで、光伝搬方向に沿って拡大する第2幅テーパ部が形成されている。
【0014】
また、アーム部は、アーム部の第1及び第2光導波路を伝搬する第1光に対して、(2m+z)πの位相差(mは0以上の整数、zは0<z<1の実数)を与えるように構成される。
【発明の効果】
【0015】
この発明の光素子は、方向性結合器のアーム部に所定の位相差を発生させるように構成している。その結果、この発明によれば、3dBカプラとして方向性結合器を用いつつも、出力光を任意の比率で分配可能であり、それゆえ多段のMZ干渉計型の波長分離素子に用いることができるMZ干渉計としての光素子が得られる
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(A)は実施形態1の光素子の構造を概略的に示す平面図であり、(B)は第1方向性結合器の拡大平面図であり、(C)は第2方向性結合器の拡大平面図であり、(D)は(A)をA−A線に沿って切断した端面図である。
【図2】(A)及び(B)は方向性結合器を伝搬する光の挙動を模式的に描いた模式図であり、(C)は実施形態1の光素子を伝搬する光の挙動を模式的に描いた模式図である。
【図3】実施形態2の光素子の構造を概略的に示す平面図である。
【図4】実施形態2の光素子を伝搬する光の挙動を模式的に描いた模式図である。
【図5】(A)及び(B)は実施形態2の光素子の変形例の構造を模式的に示す平面図である。
【図6】実施形態2の変形例の動作特性を示す特性図である。
【図7】実施形態2の変形例の動作特性を示す特性図である。
【図8】実施形態2の別の変形例の構造を模式的に示す平面図である。
【図9】実施形態3の光素子の構造を概略的に示す平面図である。
【図10】実施形態3の光素子の変形例の構造を模式的に示す平面図である。
【図11】実施形態3の光素子の別の変形例の構造を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、この発明の実施形態について説明する。なお、各図において各構成要素の形状、大きさ及び配置関係について、この発明が理解できる程度に概略的に示してある。また、以下、この発明の好適な構成例について説明するが、各構成要素の材質及び数値的条件などは、単なる好適例にすぎない。従って、この発明は、以下の実施形態に何ら限定されない。また、各図において、共通する構成要素には同符号を付し、その説明を省略することもある。
【0018】
[実施形態1]
以下、図1及び図2を参照して、実施形態1の光素子について説明する。図1(A)は、光素子の構造を概略的に示す平面図である。図1(B)は、第1方向性結合器の拡大平面図である。図1(C)は、第2方向性結合器の拡大平面図である。図1(D)は、図1(A)をA−A線に沿って切断した端面図である。図2(A)及び(B)は、方向性結合器を伝搬する光の挙動を模式的に描いた模式図である。図2(C)光素子を伝搬する光の挙動を模式的に描いた模式図である。なお、図1(A)において、光素子を構成するコア18は、クラッド12に覆われているために、直接目視することはできないが、強調のために実線で描いてある。また、図2(A)〜(C)においては、基板8及びクラッド12の描画を省略している。
【0019】
(構造)
図1(A)〜(D)を参照して、光素子10の構造について説明する。光素子10は、クラッド12とコア18とで構成される光導波路11を備えている。光導波路11はMZ干渉計32を備えている。光導波路11は、さらに、任意的な要素として入力部24と出力部26とを備えている。
【0020】
クラッド12は、基板8の主面8a側に一様な厚みで延在する膜体である。より詳細には、クラッド12は、主面8a上に設けられており、内部に包含したコア18とともに、光導波路11を構成している。
【0021】
以降、光素子の方向及び寸法に関して、光伝搬方向に垂直かつ主面8aに平行な方向を「幅方向」と称し、幅方向に沿って測った長さを「幅」と称する。また、主面8aに垂直な方向を「厚み方向」と称し、厚み方向に沿って測った長さを「厚み」と称する。同様に、光伝搬方向に沿って測った幾何学的長さを「長さ」と称する。また、所定の構造体の光伝搬方向に垂直な断面のことを「横断面」と称する。
【0022】
クラッド12を構成する材料は、例えば、屈折率が約1.44のSiO2とする。クラッド12の厚みは約3μmとする。そして、主面8aからの距離が約1.5μmの深さにコア18が配置されている。基板8への不所望な光の結合を防ぐためには、コア18と基板8との間に1μm以上の厚みのクラッド12を介在させることが好ましい。基板8は、例えば、Siを材料とする。
【0023】
コア18は、クラッド12の屈折率よりも40%以上大きな屈折率を有する材料で形成されている。この実施形態に示す例では、コア18は、屈折率が約3.5のSiとする。
【0024】
光導波路11を構成する、入力部24、MZ干渉計32及び出力部26は、この順序で接続されている。より詳細には、入力部24の入力用光導波路24aは、MZ干渉計32の第1光導波路16aの入力端IN16aに接続されている。MZ干渉計32の第1光導波路16aの出力端OUT16aは、出力部26の第1出力用光導波路26aに接続されている。MZ干渉計32の第2光導波路16bの出力端OUT16bは、出力部26の第2出力用光導波路26bに接続されている。
【0025】
光導波路11は、全ての構成要素を断面矩形状のチャネル型導波路とする。また、光導波路11は、全ての構成要素の厚みD1を300nmとする。また、後述する第1及び第2方向性結合器32L及び32Rを除いて、光導波路11は、構成要素の幅Wを300nmとする。このように、第1及び第2方向性結合器32L及び32Rを除く光導波路11の構成要素の横断面形状を幅300nm及び厚み300nmの正方形状とすることにより、第1及び第2方向性結合器32L及び32Rを除く光導波路11の構成要素を偏波無依存にすることができる。
【0026】
光導波路11を構成する入力部24は、入力用光導波路24aとダミー導波路24bとを備えている。入力用光導波路24aの一端は、クラッド12の側面から露出している。この一端から第1波長λ1の第1光Lt1が入力される。入力用光導波路24aの他端は、MZ干渉計32を構成する第1光導波路16aに接続されている。ダミー導波路24bは、一端部がクラッド12の側面から露出しており、他端部が第2光導波路16bに接続されている。ダミー導波路24bは、実質的に光素子10の動作には関係しない。
【0027】
光導波路11を構成するMZ干渉計32は、第1光導波路16aの入力端IN16aに入力された第1光Lt1を、第1及び第2光導波路16a及び16bの出力端OUT16a及びOUT16bから、任意の分配比で出力する。より詳細には、アーム部32Cにおいて第1光Lt1に生じさせる位相差φに応じた分配比で、第1光Lt1を出力端OUT16a及びOUT16bに分配して出力させる。なお、分配比とは、入力された光が、x:(1−x)(ただし、xは0<x<1)の強度比で2個の出力ポートからそれぞれ出力されるときのxのことを示す。なお、MZ干渉計32が3dBカプラとして機能する場合の分配比xは0.5となる。
【0028】
MZ干渉計32は、構造的には、並列された2本の光導波路である第1及び第2光導波路16a及び16bで構成されている。また、機能的には、第1及び第2光導波路16a及び16bにより形成された、第1及び第2方向性結合器32L及び32Rと、アーム部32Cとを備えている。
【0029】
MZ干渉計32の構造的要素である第1光導波路16aは、2個の第1直線部16aL及び16aRと、第1湾曲部16aCとを備えている。第1湾曲部16aCは、これら第1直線部16aL及び16aR間に介在している。第2光導波路16bは、2個の第2直線部16bL及び16bRと、第2湾曲部16bCとを備えている。第2湾曲部16bCは、これら第2直線部16bL及び16bR間に介在している。なお、以下の記載において、特に断らない限り、「第g直線部」又は「第g湾曲部」(g=1又は2)とは、第g直線部又は第g湾曲部を構成する第h光導波路(h=1又は2)の部分領域を示す。
【0030】
MZ干渉計32の機能的要素である第1方向性結合器32L、アーム部32C及び第2方向性結合器32Rは、この順序で直列に配置されている。第1方向性結合器32Lは、第1及び第2直線部16aL及び16bLで構成されている。また、第2方向性結合器32Rは、第1及び第2直線部16aR及び16bRで構成されている。同様に、アーム部32Cは、第1及び第2湾曲部16aC及び16bCで構成されている。
【0031】
第1方向性結合器32Lは、光結合可能な距離だけ離間して互いに並列した第1及び第2直線部16aL及び16bLで構成されている。第1直線部16aLには、幅が第1幅W1から第2幅W2(<W1)まで、光伝搬方向に沿って縮小する第1幅テーパ部16T1が形成されている。より詳細には、第1幅テーパ部16T1は、入力部24からアーム部32Cに向かうに従って、等脚台形状に幅が縮小していく。第2直線部16bLは、幅が第3幅W3であり、第1幅テーパ部16T1との間に一定の間隔Spを空けて配置されている。つまり、第2直線部16bLの側面と、第1幅テーパ部16T1の側面とは平行である。
【0032】
第2方向性結合器32Rは、光結合可能な距離だけ離間して互いに並列した第1及び第2直線部16aR及び16bRで構成されている。第2直線部16bRには、幅が第2幅W2から第1幅W1まで、光伝搬方向に沿って拡大する第2幅テーパ部16T2が形成されている。より詳細には、第2幅テーパ部16T2は、アーム部32Cから出力部26に向かうに従って、第1幅テーパ部16T1と等しい等脚台形状に幅が拡大していく。第1直線部16aRは、幅が第3幅W3であり、第2幅テーパ部16T2との間に一定の間隔Spを空けて配置されている。
【0033】
詳しくは(動作)の項で後述するが、第1及び第2方向性結合器32L及び32Rは、第1光Lt1に関して、偏波無依存な3dBカプラとして機能する。つまり、第1直線部16aLに入力された第1光Lt1は、第1方向性結合器32Lより、第1及び第2直線部16aL及び16bLにパワーが等分配されて、両直線部16aL及び16bLから1:1の分配比で出力される。第2方向性結合器32Rも同様にして、第1直線部16aRから入力された第1光Lt1を、第1及び第2直線部16aR及び16bRから1:1の分配比で出力させる。
【0034】
第1及び第2幅テーパ部16T1及び16T2において、第1幅W1は、約360nmとする。また、第2幅W2は、約320nmとする。また、第3幅W3は、約320nmとする。また、第1幅テーパ部16T1と第2直線部16bLとの間の側面間の間隔Sp、及び第2幅テーパ部16T2と第1直線部16aRとの間の側面間の間隔Spは、互いに等しく、約410nmとする。また、第1及び第2幅テーパ部16T1及び16T2の全長L1、すなわち第1及び第2方向性結合器32L及び32Rの長さは、例えば約100μmとする。
【0035】
アーム部32Cは、並列された第1及び第2湾曲部16aC及び16bCで構成されている。アーム部32Cは、第1及び第2光導波路16aC及び16bCを伝搬後の第1光Lt1に与える位相差φを(2m+z)π(mは0以上の整数、zは0<z<1の実数)とする条件(以下、位相差条件とも称する。)を満足するように構成されている。つまり、アーム部32Cは、第1光Lt1に対して、0より大きくπ未満の位相差φを付与するように構成されている。
【0036】
MZ干渉計32を伝搬する第1光Lt1に関する干渉条件は、φ=2mπ及びφ=(2m+1)πで与えられる。これらの2式は、第1光Lt1に付与される位相差φが2mπ又は(2m+1)πに等しい場合に、上述の分配比xが0又は1となることを表している。つまり、位相差φが2mπの場合が分配比x=0に対応し、第1光Lt1は出力端OUT16bのみから出力される。一方、位相差φが(2m+1)πの場合が分配比x=1に対応し、第1光Lt1は出力端OUT16aのみから出力される。
【0037】
ところで、位相差φが2mπに等しいとは、上述の位相差条件でz=0の場合に対応し、位相差φが(2m+1)πに等しいとは、位相差条件でz=1の場合に対応する。このことより、発明者は、zを0<z<1とすることで、第1光Lt1に与える位相差φを2mπ<φ<(2m+1)πとできることに想到した。これにより、3dBカプラである第1及び第2方向性結合器32L及び32Rを用いているにも関わらず、光素子10は、第1光Lt1を任意の分配比xで出力できる。
【0038】
詳しくは後述するが、この実施形態では、第1光Lt1は、対称モード光及び反対称モード光としてアーム部32Cを伝搬する。従って、位相差φを付与することで、対称モード光の一部は、位相差φに応じた比率で反対称モード光に変換される。同様に、反対称モード光の一部も、位相差φに応じた比率で対称モード光に変換される。よって、第1光Lt1は、アーム部32Cを伝搬後に強度比がxの反対称モード光と、強度比が(1−x)の対称モード光との混合光として出力される。なお、以降、対称モード光及び反対称モード光の両者を総称して、両モード光とも称する。
【0039】
第1光Lt1に対して、2mπ<φ<(2m+1)πの位相差φを発生させるために、光素子10では、アーム部32Cを構成する第1及び第2湾曲部16aC及び16bCの光路長を異ならせている。なお、「光路長」とは、一般に、光導波路の幾何学的な長さPを、ある波長の光が感じる光導波路の等価屈折率qで補正した光学的な長さのことを示す。光路長をSとすると、S,P及びqの間には、下記式(1)が成り立つ。
S=P×q・・・(1)
【0040】
ここで、第1湾曲部16aCの光路長をSaとし、第2湾曲部16bCの光路長をSbとする。また、第1及び第2湾曲部16aC及び16bC間の光路長差(Sa−Sb)を、ΔS1とする。ところで、位相差φと光路長差ΔS1との間には、2πΔS1/λ1=φが成り立つので、位相差条件から、ΔS1は下記式(2)が成立するように設定すればよい。
2ΔS1/λ1=2m+z・・・(2)
【0041】
なお、第1及び第2湾曲部16aC及び16bCの長さは、式(2)から求まるΔS1と、第1光Lt1に関する第1及び第2湾曲部16aC及び16bCの等価屈折率とから、式(1)により求めればよい。
【0042】
再び、光導波路11の構成の説明に戻ると、出力部26は、第1出力用光導波路26aと第2出力用光導波路26bとを備えている。第1出力用光導波路26aの一端は、第2方向性結合器32Rの第1直線部16aRに接続されている。第2出力用光導波路26bの一端は、第2方向性結合器32Rの第2直線部16bRに接続されている。第1及び第2出力用光導波路26a及び26bからは、それぞれ、x:(1−x)の分配比で第1光Lt1が出力される。
【0043】
なお、この実施形態では、アーム部32Cを構成する第1及び第2湾曲部16aC及び16bCの長さの差を128nmとする。これは位相差条件で、mを0とし及びzを1/2とする場合に対応し、これによりπ/2の位相差φを発生させる。このときの分配比xは0.5である。
【0044】
(動作)
以下、光素子10の動作について説明する。光素子10の全体動作の説明に先立ち、まず、図2(A)及び(B)を参照して、第1及び第2方向性結合器32L及び32R単独の動作について説明する。ところで、第1及び第2方向性結合器32L及び32Rは、構造に形式的な違いがあるが、実質的に等しく動作する。そこで、以下において、両方向性結合器32L及び32Rの代表として、第1方向性結合器32Lと同様に構成された方向性結合器32Aを用いて説明する。
【0045】
一般に、方向性結合器32Aのように、幅テーパ導波路を構成要素とする方向性結合器(以下、幅テーパ方向性結合器とも称する。)では、光を入力した光導波路に応じて、光の伝搬モードが、対称モード又は反対称モードへと偏波無依存で分離されることが知られている。
【0046】
すなわち、図2(A)に示すように、第1幅テーパ部16Tを備えた第1光導波路16aの入力端IN16aから光LtIN1が入力された場合、幅テーパ導波路の作用により、出力側OUT16に、両光導波路16a及び16bに跨って分布する対称モード光LtOUT1が励起される。この対称モード光LtOUT1が、光結合しない間隔で配置された2本の光導波路、例えば、アーム部等に出力される場合、これらの光導波路に等しい強度で分配される。つまり、光LtIN1に関して、方向性結合器32Aは3dBカプラとして機能する。
【0047】
同様に、図2(B)に示すように、幅が変化しない第2光導波路16bの入力端IN16bに光LtIN2が入力された場合、幅テーパ導波路の作用により、出力側OUT16に、両光導波路16a及び16bに跨って分布する反対称モード光LtOUT2が励起される。この反対称モード光LtOUT2も、光結合しない間隔で配置された2本の光導波路に出力される場合、これらの光導波路に等しい強度で分配される。つまり、光LtIN2に関しても、方向性結合器32Aは3dBカプラとして機能する。これらより、方向性結合器32Aは、入力端IN16a及びIN16bから入力された光に関して3dBカプラとして機能する。
【0048】
方向性結合器32Aの両入力端IN16a及びIN16bの両者に光LtIN1及びLtIN2が同時に入力された場合、方向性結合器32Aの出力側OUT16には、対称モード光LtOUT1と反対称モード光LtOUT2の混合光が励起される。ここで、出力側OUT16に励起される対称モード光LtOUT1と反対称モード光LtOUT2の強度比は、光LtIN1と光LtIN2の強度比に等しくなる。
【0049】
一般に、光の伝搬に関しては、逆過程が成り立つ。よって、出力側OUT16側から、両光導波路16a及び16bに跨るように対称モード光LtOUT1と反対称モード光LtOUT2との混合光が入力された場合、対称モード光LtOUT1は、幅テーパ部16Tを有する第1光導波路16aに光を集中し、光LtIN1として入力端IN16aから出力される。また、反対称モード光LtOUT2は、等幅の光導波路である第2光導波路16bに光を集中し、光LtIN2として入力端IN16bから出力される。なお、入力された対称モード光LtOUT1と反対称モード光LtOUT2の強度比がx:(1−x)の場合、出力される光LtIN1と光LtIN2の強度比もx:(1−x)となる。
【0050】
以上を踏まえて、図2(C)を参照しながら、光素子10の全体動作を説明する。
【0051】
入力部24に入力された第1光Lt1は、入力用光導波路24aを伝搬して第1方向性結合器32Lの第1直線部16aLに、光Lt11として入力される。
【0052】
第1方向性結合器32Lは幅テーパ方向性結合器なので、第1直線部16aLに入力された光Lt11は、上述したように、出力側で対称モード光である光Lt12を励起する。
【0053】
第1方向性結合器32Lは、3dBカプラとして機能するので、このようにして励起された光Lt12は、アーム部32Cを構成する第1及び第2湾曲部16aC及び16bCのそれぞれに等分配される。アーム部32Cを構成する第1及び第2湾曲部16aC及び16bCの光路長差ΔS1は、上述のように設定されている。よって、アーム部32Cで与えられる位相差φにより、アーム部32Cを伝搬後の光Lt12は、対称モード光と反対称モード光との混合光である光Lt13となる。位相差φは上述のように設定されているので、光Lt13に含まれる対称モード光と反対称モード光との強度比は分配比に等しく、(反対称モード):(対称モード)=x:(1−x)となる。
【0054】
続いて、光Lt13は、第2方向性結合器32Rに入力される。第2方向性結合器32Rは第1方向性結合器32Lと同様に構成された幅テーパ方向性結合器である。そのため、光Lt1に含まれる対称モード光は、第2幅テーパ部16T2を備える第2直線部16bRへと強度を集中し、分配比(1−x)の光Lt15として第2出力用光導波路26bからクロス状態で出力される。同様に、第1光Lt13に含まれる反対称モード光は、第1直線部16aRへと強度を集中し、分配比xの光Lt14として第1出力用光導波路26aからバー状態で出力される。
【0055】
ここで、「クロス状態で出力」とは、入力端IN16aから入力された光が、第2光導波路16bにパワーが移行し、出力端OUT16bから出力されることを意味する。また、「バー状態で出力」とは、入力端IN16aから入力された光が、第2光導波路16bへのパワー移行が発生せず、出力端OUT16aから出力されることを意味する。
【0056】
上述した光素子10の動作は、数学的には伝達マトリクスにより説明できる。すなわち、入力端IN16aのみに入力される第1光Lt1をマトリクス表示すると、下記式(3)で表される。なお、第2直線部16bLのみに第1光Lt1が入力される場合には、下記式(3)の0と1とを入れ替えたマトリクスで表される。
【0057】
【数1】
【0058】
このとき、第1方向性結合器32Lの伝達マトリクスは、下記式(4)で表される。
【0059】
【数2】
【0060】
また、アーム部32Cの伝達マトリクスは、下記式(5)で表される。
【0061】
【数3】
【0062】
よって、MZ干渉計32全体としての動作は、式(4)及び(5)を用いて、下記式(6)として表される。
【0063】
【数4】
【0064】
式(6)は、MZ干渉計32が、第1光Lt1に関して、位相差φの値に応じて分配比xを変化可能であることを示している。例えば、位相差φがπ/2の場合には、式(6)から、下記式(7)が得られる。
【0065】
【数5】
【0066】
式(7)は、位相差φがπ/2の場合には、第1光Lt1に関して、MZ干渉計32が3dBカプラとして機能することを示している。
【0067】
なお、上述のように、第1及び第2方向性結合器32L及び32Rを除く光導波路11は、第1光Lt1に関して偏波無依存で動作する。また、上述のように、第1及び第2方向性結合器32L及び32Rも第1光Lt1に関して偏波無依存で動作する。よって、光素子10は第1光Lt1に関して偏波無依存で動作する。つまり、第1光Lt1のTE偏波成分とTM偏波成分とは、分配比xが等しい。
【0068】
このように、この実施形態の光素子10は、3dBカプラである第1及び第2方向性結合器32L及び32Rを用いているにも関わらず、第1光Lt1を任意の分配比で出力端OUT16a及びOUT16bから出力できる。よって、光素子10のMZ干渉計32を、多段のMZ干渉計型の波長分離素子を構成する要素に用いることができる。
【0069】
(変形例)
以下、光素子10の変形例について説明する。
【0070】
(変形例1)
この実施形態では、コア18として、クラッド12の屈折率よりも40%以上大きな屈折率を有する材料を用いた場合について説明した。しかし、コアに十分な強度で光を閉じ込めることができれば、コアの屈折率は、クラッドの屈折率よりも40%以上大きい必要は無い。このようなコア及びクラッドで構成された光導波路を備えた光素子も、第1光Lt1を任意の分配比で出力端OUT16a及びOUT16bから出力できる。
【0071】
(変形例2)
この実施形態では、光素子10を偏波無依存とする場合について説明した。しかし、偏波無依存性は、光素子10が満たすべき必要条件ではない。従って、幅と厚みとを変化させて、偏波依存性を発生させた光導波路で構成された光素子も本発明の範囲に含まれる。
【0072】
[実施形態2]
以下、図3〜図8を参照して、実施形態2の光素子について説明する。図3は、光素子の構造を概略的に示す平面図である。図4は、光素子を伝搬する光の挙動を模式的に描いた模式図である。図5(A)及び(B)は、変形例の構造を模式的に示す平面図である。図6及び図7は、変形例の動作特性を示す特性図である。図8は、別の変形例の構造を模式的に示す平面図である。
【0073】
なお、図3において、光素子を構成するコア18は、クラッド12に覆われているために、直接目視することはできないが、強調のために実線で描いてある。また、図8においては、基板8及びクラッド12の描画を省略している。また、以上の図面において、煩雑化を防ぐために、説明に必要ない一部の構成要素の符号を省略している。
【0074】
(構造)
図3を参照して、光素子50の構造について説明する。光素子50は、言わば実施形態1の光素子10を一構成要素として含んだものに対応する。より正確には、光素子50は、実施形態1のMZ干渉計32を第1及び第2メタ方向性結合器321及び322として備えている。よって、第1及び第2メタ方向性結合器321及び322の構成要素には、MZ干渉計32と同等の符号を付すとともに、符号に付した下付きの添字「1」又は「2」により、第1及び第2メタ方向性結合器321及び322を区別する。
【0075】
光素子50を構成する光導波路11は、光ユニット40を備えている。光ユニット40は、第1及び第2メタ方向性結合器321及び322と、メタアーム部323とで構成されている。詳しくは後述するが、光ユニット40は、全体として、2個の方向性結合器と、アーム部とを備えた1個のMZ干渉計として機能する。すなわち、第1及び第2メタ方向性結合器321及び322が2個の方向性結合器と同等に動作し、メタアーム部323がアーム部と同等に動作する。そこで、以降、光ユニット40を、メタマッハツェンダ干渉計(MMZ干渉計)40と称することもある。
【0076】
また、この実施形態では、MMZ干渉計40が波長分離素子として動作する場合について説明する。つまりMMZ干渉計40は、入力された第1波長λ1の第1光Lt1と、第1波長λ1とは異なる第2波長λ2の第2光Lt2との混合光を、波長分離してそれぞれ異なる出力ポートから出力させる。なお、この実施形態では、第1光Lt1の第1波長λ1を、光加入者系通信システムで下り通信光として一般的に用いられる1.49μmとする。また、第2光Lt2の第2波長λ2を、光加入者系通信システムで上り通信光として一般的に用いられる1.31μmとする。
【0077】
再び構成の説明に戻ると、光導波路11は、さらに、任意的な要素として実施形態1と同様に構成された入力部24と出力部26とを備えている。
【0078】
光導波路11を構成する、入力部24、第1メタ方向性結合器321,メタアーム部323,第2メタ方向性結合器322及び出力部26は、この順序で接続されている。より詳細には、入力部24の入力用光導波路24aは、第1メタ方向性結合器321の第1光導波路16a1の入力端IN16aに接続されている。第2メタ方向性結合器322の第1光導波路16a2の出力端OUT16aは、出力部26の第1出力用光導波路26aに接続されている。第2メタ方向性結合器322の第2光導波路16b2の出力端OUT16bは、出力部26の第2出力用光導波路26bに接続されている。
【0079】
そして、第1及び第2メタ方向性結合器321及び322が備える第1光導波路16a1及び16a2とメタアーム部323が備える第1光導波路16a3とが接続されており、第1及び第2メタ方向性結合器321及び322が備える第2光導波路16b1及び16b2とメタアーム部323が備える第2光導波路16b3とが接続されている。
【0080】
第1メタ方向性結合器321は、アーム部321Cが、第1光Lt1に対して、(2m+1/2)πの位相差φを与えるように構成されている。つまり、アーム部321Cは、上述した位相差条件であるφ=(2m+z)πにおいて、zを1/2に設定している。これにより、アーム部321Cは、第1光Lt1に対して、実質的にπ/2の位相差を付与する。その結果、第1メタ方向性結合器321の分配率xは0.5となり、第1メタ方向性結合器321は、第1光Lt1に関して3dBカプラとして機能する。つまり、第1メタ方向性結合器321は、実施形態1の第1方向性結合器32Lと等価に動作する。
【0081】
この位相差φを与えるために、アーム部321Cの第1及び第2湾曲部16a1C及び16b1C間の光路長差ΔS1を、z=1/2の条件で式(2)を用いて設定する。
【0082】
なお、アーム部321Cは、幅広い波長範囲の光に対して、略同等の位相差φを与えるように設計されている。よって、第1光Lt1に基づいて設計しているにも関わらず、第1メタ方向性結合器321は、第2波長λ2(≠λ1)の第2光Lt2についても、実用上十分に3dBカプラとして機能する。
【0083】
第2メタ方向性結合器322は、第1メタ方向性結合器321と略同様に構成されており、実施形態1の第1方向性結合器32Rと等価に動作する。
【0084】
ここで、第1及び第2メタ方向性結合器321及び322の構成要素の配置関係について説明する。概略的には、第1及び第2メタ方向性結合器321及び322の各構成要素は、MMZ干渉計40の中心点を対称中心として、点対称に配置されている。ここで、MMZ干渉計40の中心点とは、第1及び第2方向性結合器321L,322L,321R及び322Rを構成する第1及び第2光導波路16a及び16b間の中心線と、MMZ干渉計40の全長方向の中心線とが交差する点である。
【0085】
より詳細には、「点対称の配置関係」とは、以下の2条件が成り立つような配置関係を示す。
【0086】
(条件1)
第1メタ方向性結合器321において、第1方向性結合器321Lの第1幅テーパ部16T11が第f1光導波路(f1は1又は2)に設けられ、及び第2方向性結合器321Rの第2幅テーパ部16T21が、第f2光導波路(f2は1又は2)に設けられているとする。このとき、第2メタ方向性結合器322における第1方向性結合器322Lの第1幅テーパ部16T12を第u2光導波路(u2=3−f2)に設け、及び第2方向性結合器322Rの第2幅テーパ部16T22を、第u1光導波路(u1=3−f1)に設ける。なお、図3は、f1=1,f2=2,u1=2及びu2=1の場合に対応する。
【0087】
(条件2)
第1メタ方向性結合器321のアーム部321Cにおける第1及び第2光導波路16a1C及び16b1C間の光路長差をΔS11とし、第2メタ方向性結合器322のアーム部322Cにおける第1及び第2光導波路間16a2C及び16b2Cの光路長差をΔS12とする。このとき、ΔS11及びΔS12が絶対値が等しく符号が反転するように。アーム部321C及び322Cを配置する。
【0088】
このように、第1及び第2メタ方向性結合器321及び322の各構成要素を点対称配置にすることにより、MMZ干渉計40からクロス出力される第1光Lt1のピーク波長帯域を広げることができる。
【0089】
再び構成の説明に戻ると、メタアーム部323は、概略的には、波長分離のための位相差Φを第1及び第2光Lt1及びLt2に付与する。つまり、メタアーム部323は、第1及び第2光導波路16a3及び16b3を伝搬する第1光Lt1に対して2Mπ(Mは0以上の整数)の位相差Φを与えるように構成されている。つまり、第1光Lt1をクロス出力させるために、メタアーム部323が第1光Lt1に付与する位相差Φを、干渉条件であるΦ=2Mπを満足するように設定する。
【0090】
ここで、メタアーム部323を構成する第1湾曲部16a3Cの光路長をS2aとし、第2湾曲部16b3Cの光路長をS2bとする。また、第1及び第2湾曲部16a3C及び16b3C間の光路長差(S2a−S2b)を、ΔS2とする。ところで、波長λ1の第1光Lt1に関して、位相差Φと光路長差ΔS2との間には、2πΔS2/λ1=Φが成り立つので、位相差条件から、ΔS2は下記式(8)が成立するように設定すればよい。
2ΔS2/λ1=2M・・・(8)
【0091】
第1光Lt1と同様に、第2光Lt2をバー出力させるためには、メタアーム部323が第2光Lt2に付与する位相差Φを、干渉条件であるΦ=(2M+1)πを更に満足するように設定するのが好ましい。ところで、波長λ2の第2光Lt2に関して、位相差Φと光路長差ΔS2との間には、2πΔS2/λ2=Φが成り立つので、位相差条件から、ΔS2は下記式(9)を更に満たすように設定する。
2ΔS2/λ2=2M+1・・・(9)
【0092】
なお、第1及び第2湾曲部16a3C及び16b3Cの長さは、式(8)及び式(9)を満たすように定められたΔS2と、第1及び第2光Lt1及びLt2に関する第1及び第2湾曲部16a3C及び16b3Cの等価屈折率とから、式(1)により求めればよい。
【0093】
このように構成されたメタアーム部323は、メタアーム部323の伝搬後に、第1及び第2湾曲部16a3C及び16b3Cを伝播する第1光Lt1に対して、2Mπの位相差を付与する。また、第2光Lt2に対して、(2M+1)πの位相差を付与する。
【0094】
(動作)
以下、図4を参照して、MMZ干渉計40の動作について説明する。上述のように、第1及び第2メタ方向性結合器321及び322のアーム部321C及び322Cは、第1及び第2光Lt1及びLt2に対して、実質的に等しい位相差φを付与する。その結果、第1及び第2光Lt1及びLt2が、第1及び第2メタ方向性結合器321及び322を伝搬する際の挙動は略同様となる。従って、以下においては、まず、第1光Lt1がMMZ干渉計40を伝搬する際の挙動を説明し、次に、第2光Lt2の伝搬挙動を、第1光Lt1との相違点を中心に説明する。
【0095】
入力部24及び第1メタ方向性結合器321を伝搬する第1光Lt1の挙動は、光Lt14及び光Lt15の分配比が0.5で等しい点を除き、実施形態1の(動作)の説明と同様である。よって、この項では、メタアーム部323以降における第1光Lt1の伝搬挙動について説明する。
【0096】
メタアーム部323Cを構成する第1及び第2湾曲部16a3C及び16b3Cの光路長差ΔS2は、(8)式を満たすように設定されている。よって、光Lt14及びLt15は、メタアーム部323Cの伝搬後に、2Mπの位相差が付与された光Lt16及びLt17として、第2メタ方向性結合器322へとそれぞれ出力される。
【0097】
続いて、光Lt16及びLt17は、第2メタ方向性結合器322を構成する第1方向性結合器322Lの第1及び第2直線部16a2L及び16b2Lにそれぞれ入力される。第1方向性結合器322Lは、第1方向性結合器321Lと同様に構成された幅テーパ方向性結合器であるので、第1直線部16a2Lに入力された光Lt16は、出力側で対称モード光成分を励起する。同様に、第2直線部16b2Lに入力された光Lt17は、出力側で反対称モード光成分を励起する。すなわち、第1方向性結合器322Lの出力側には、光Lt16由来の対称モード光成分と、光Lt17由来の反対称モード光成分とを1:1の強度比で混合した光Lt18が励起される。
【0098】
続いて、光Lt18は、第2メタ方向性結合器322のアーム部322Cに入力される。アーム部322Cは、第1メタ方向性結合器321のアーム部321Cと同様に構成されているので、第1及び第2光導波路16a2C及び16b2Cを伝搬する光Lt18に対して位相差φを与える。つまり、第1及び第2湾曲部16a2C及び16b2Cに等分配されてそれぞれ伝搬する光Lt18の2個の成分光の間にπ/2の位相差φを与える。その結果、これらの成分光に含まれる反対称モード光成分が対称モード光成分へと変換され、アーム部322Cから、対称モード光のみを含む光Lt19が出力される。
【0099】
続いて、光Lt19は、第2方向性結合器322Rに入力される。第2方向性結合器322Rは、第2方向性結合器321Rと同様に構成された幅テーパ方向性結合器である。よって、入力側に入力された対称モード光である光Lt19は、第2幅テーパ部16T22を有する第2直線部16b2Rに強度を集中し、出力部26の第2出力用光導波路26bから光Lt111が出力される。このように、MMZ干渉計40は第1光Lt1をクロス出力する。
【0100】
続いて、第2光Lt2がMMZ干渉計40を伝搬する際の挙動を、主に第1光Lt1との相違点を中心に説明する。第2光Lt2が第1メタ方向性結合器321を伝搬する際の挙動は第1光Lt1と同様である。
【0101】
続いて、第2光Lt2は、メタアーム部323Cに入力される。メタアーム部323Cの光路長差ΔS2は、(9)式を満たすように設定されている。よって、入力される第2光Lt2由来の光Lt14及びLt15は、メタアーム部323Cの伝搬後に、(2M+1)πの位相差Φが付与された光Lt16及びLt17として、第2メタ方向性結合器322へとそれぞれ出力される。
【0102】
第2光Lt2由来の光Lt16及びLt17が、第2メタ方向性結合器322の第1方向性結合器322Lを伝搬する際の挙動は、第1光Lt1と同様である。よって、第1方向性結合器322Lの出力側には、(2M+1)πの位相差Φがそれぞれ付与された、対称モード光成分と反対称モード光成分とを1:1の強度比で混合した、第2光Lt2由来の光Lt18が励起される。
【0103】
続いて、第2光Lt2由来の光Lt18は、第2メタ方向性結合器322のアーム部322Cに入力される。アーム部322Cは、上述のように、第1及び第2光導波路16a2C及び16b2Cを伝搬する光Lt18に対して、π/2の位相差φを与える。つまり、第1及び第2湾曲部16a2C及び16b2Cに等分配されてそれぞれ伝搬する光Lt18の2個の成分光の間にπ/2の位相差φを与える。その結果、アーム部322Cでの位相差φの付与と、メタアーム部323Cでの位相差Φの付与とが相俟って、これらの成分光に含まれる対称モード成分光が反対称モード成分光へと変換され、アーム部322Cから、第2光Lt2由来の反対称モード光のみを含む光Lt19が出力される。
【0104】
続いて、光Lt19は、第2方向性結合器322Rに入力される。第2方向性結合器322Rの入力側に入力された反対称モード光である光Lt19は、等幅なチャネル型光導波路である第1直線部16a2Rに強度を集中し、出力部26の第1出力用光導波路26aから光Lt110が出力される。このように、MMZ干渉計40は、第2光Lt2をバー出力する。
【0105】
このように、MMZ干渉計40は、方向性結合器と同等に機能するとともに、分配比をより精密に制御可能な第1及び第2メタ方向性結合器321及び322を用いて波長分離素子を構成している。よって、MMZ干渉計40は、通常の方向性結合器を用いたMZ干渉計型の波長分離素子に比べてクロストーク特性に優れている。
【0106】
また、MMZ干渉計40は、実施形態1の方向性結合器321L,321R,322L及び322Rを用いて構成されている。その結果、偏波無依存で動作するとともに、通常の方向性結合器を用いたMZ干渉計型の波長分離素子に比較して、幅誤差に対する耐性が優れている。
【0107】
(変形例)
以下、MMZ干渉計40の変形例について説明する。MMZ干渉計40は光素子10と同様の変形が可能であるとともに、さらに以下に列記する変形が可能である。
【0108】
(変形例1)
以下、図5(A)及び(B)を参照して、光素子50の変形例について説明する。なお、図5(A)及び(B)において、図3と同様の構成要素には同符号を付してその説明を適宜省略する。
【0109】
図5(A)に示した光素子50Aは、第1及び第2メタ方向性結合器321A及び322Aの中心軸C321及びC322が互いに平行となっている点、及びメタアーム部323Aの形状が異なっている点を除いて、上述の光素子50と同様に構成されている。
【0110】
すなわち、光素子50Aは、メタアーム部323Aを屈曲部として、第1及び第2メタ方向性結合器321A及び322Aをヘアピン状に折り曲げた構造を有している。このように、第1及び第2メタ方向性結合器321A及び322Aを折り曲げることにより、光素子50Aの全長を小さくすることができる。
【0111】
このように、光素子50Aと光素子50との相違点は形式的であるので、光素子50Aは光素子50と同様に動作する。
【0112】
ここで、図6及び図7を参照して、光素子50Aについて実施したシミュレーションについて説明する。なお、上述した理由により、図6及び図7の説明は、光素子50についても同様に当てはまる。
【0113】
図6は、2次元FDTD(Finite Difference Time Domain)法で求めた、光素子50Aの動作特性を示す特性図である。概略的に言えば、図6では、入力端IN16aから、波長を変化させた入力光Ltを入力し、出力端OUT16a及びOUT16bのそれぞれから出力されるバー状態光及びクロス状態光の強度比を求めている。図6において、縦軸は、バー状態光(曲線I)及びクロス状態光(曲線II)の、入力光Ltに対する光強度比(dB)であり、横軸は波長(μm)である。
【0114】
なお、図6を求めるに当たっては、光素子50Aを、第1波長λ1=1.49μmの第1光Lt1をクロス出力(分配比x=0)する波長分離素子として動作するように設計した。すなわち、メタアーム部323Aの第1及び第2光導波路間の長さの差を1.35μmに設定した。また、メタアーム部323Aに含まれる全ての屈曲部の曲率を5μmとした。ここで、屈曲部とは、メタアーム部323Aの第1及び第2光導波路が直角に屈曲された領域を示す。これ以外の数値的条件、すなわち、コア18及びクラッド12の屈折率、光素子50Aを構成する幅テーパ方向性結合器の第1〜第3幅W1〜W3、幅テーパ方向性結合器を構成する幅テーパ導波路と等幅導波路間の側面間の間隔Sp、幅テーパ方向性結合器の全長L1、及びアーム部を構成する第1及び第2湾曲部の長さの差については、既に説明した値を用いた。
【0115】
図6を参照すると、曲線Iから、波長約1.11μm及び波長約1.42μmの光(バーピーク波長と称する。)が、高い分配比で出力端OUT16aから出力されることが判る。また、曲線IIから、波長約1.25μm及び波長約1.58μmの光(クロスピーク波長と称する。)が、高い分配比で出力端OUT16bから出力されることが判る。このことより、光素子50Aは、クロスピーク波長の光とバーピーク波長の光との混合光を波長分離する波長分離素子として動作することが判る。
【0116】
図7は、図6とは異なる幅テーパ方向性結合器を用いた場合の、光素子50Aの動作特性を示す特性図である。図7を求めるための計算方法、及び幅テーパ方向性結合器以外の寸法条件等は、図6と同様である。また、図7の縦軸及び横軸と、描かれている2本の曲線I及びIIも、図6と同様の意味である。
【0117】
図7では、幅テーパ方向性結合器の全長を200μmとした。また、幅テーパ導波路と等幅導波路間の側面間の間隔Spをテーパ状に変化させている。すなわち、幅テーパ方向性結合器を構成する幅テーパ導波路の幅が狭くなるにつれて、徐々に導波路間隔を狭くしている。具体的には、幅テーパ導波路と等幅導波路間の側面間の間隔Spを500nmから300nmまで変化させている。また、幅テーパ方向性結合器の第1幅W1を340nmとし、及び第2幅W2を300nmとした。また、アーム部を構成する第1及び第2湾曲部の長さの差を170nmとした。
【0118】
図7を参照すると、曲線Iから、波長約1.25μm及び波長約1.66μmの光が、高い分配比で出力端OUT16aから出力されることが判る。また、曲線IIから、波長約1.41μmの光が、高い分配比で出力端OUT16bから出力されることが判る。
【0119】
また、図7では、バーピーク波長におけるバー状態光(曲線I)に対するクロス状態光(曲線II)の強度比、及びクロスピーク波長におけるクロス状態光(曲線II)に対するバー状態光(曲線I)の強度比が、平均的に図6よりも小さくなっていることが判る。
【0120】
このことより、図7の構成に係る光素子50Aは、図6の構成に係る光素子50Aよりも、クロストーク特性に優れた波長分離素子として動作することが判る。
【0121】
続いて、図5(B)を参照して、光素子50の別の変形例について説明する。図5(B)に示した光素子50Bは、メタアーム部323Bの形状が異なっている点を除いて、光素子50Aと同様に構成されている。すなわち、光素子50Bは、メタアーム部323Bにおける屈曲部の配置を工夫することにより、光素子50Aよりもサイズを小さくすることに成功している。
【0122】
なお、光素子50A及び50Bでは、それぞれの中心軸C321及びC322を互いに平行としているが、中心軸C321及びC322を平行とすることは、必須の条件ではない。中心軸C321及びC322が所定の角度で交差するように第1及び第2メタ方向性結合器321及び322を配置することによっても、光素子50A及び50Bのサイズを小型化できる。
【0123】
(変形例2)
この実施形態においては、第1及び第2メタ方向性結合器321及び322の分配比xを0.5に設定して3dBカプラとして動作させ、単独のMMZ干渉計40が波長分離素子を構成する場合について説明した。しかし、第1及び第2メタ方向性結合器321及び322の分配比xは、任意の値に設定できる。実施形態3で後述するように、第1及び第2メタ方向性結合器321及び322の分配比xを0.5以外の値に調整したMMZ干渉計40を用いて、いわゆる多段のMZ干渉計型の波長分離素子を構成できる。
【0124】
(変形例3)
以下、図8を参照して、光素子50の変形例について説明する。図8と図3との比較から明らかなように、光素子50Cは、第1メタ方向性結合器321の第2方向性結合器321Rと、メタアーム部323と、第2メタ方向性結合器322の第1方向性結合器322Lとからなる第1素子部分(図4で符号64で示す。)が、マルチモード光導波路52で置換されている点を除き、光素子50と同様に構成されている。
【0125】
図4を参照すると、第1素子部分64は、両モード光を含む光Lt13を、両光導波路16a及び16bを伝搬する光Lt14及びLt15へと変換し、メタアーム部323により波長に応じた位相差Φを付与した上で、再び両モード光を含む光Lt18へと変換している。つまり、第1素子部分64では、波長に応じた位相差Φを付与するために、一旦、光Lt13をシングルモード光である光Lt14及びLt15に変換し、位相差Φの付与後の光Lt16及びLt17を再変換して、両モード光を含む光Lt18を得ていた。
【0126】
一般に、マルチモード光導波路では両モード光間で伝搬定数が異なっているので、第1素子部分64をマルチモード光導波路52に置換すれば、光Lt13を光Lt14及びLt15に変換しなくても、直接、光Lt13に位相差Φを付与し、光Lt18を得ることができる。
【0127】
このように、第1素子部分64をマルチモード光導波路52に置換することにより、光素子50の構造を大幅に単純化できる。
【0128】
なお、マルチモード導波路52は、この導波路52に関する干渉条件を表す下記式(10)を用いて設計できる。
2πLMΔnM/λ1=2mMπ・・・(10)
【0129】
ここで、LMはマルチモード導波路52の全長であり、ΔnMは、マルチモード導波路52に関する両モード光間の等価屈折率差であり、及びmMは0以上の整数値を取る干渉次数である。なお、ΔnMはマルチモード導波路52の幅と厚みとから計算できる。
【0130】
ここで、波長分離すべき第1及び第2光Lt1及びLt2間の波長差(λ1−λ2)をΔλ1とすると、全長LMは、式(10)変形した下記式(11)から求めることができる。
LM=(λ12/Δλ1)×(ΔnM−λ1×(dΔnM/dλ1))・・・(11)
【0131】
このように設定された全長LMのマルチモード導波路52は、第1素子部分64と同様に動作する。
【0132】
[実施形態3]
以下、図9〜図11を参照して、実施形態3の光素子について説明する。図9は、光素子の構造を概略的に示す平面図である。図10は、変形例の構造を模式的に示す平面図である。図11は、別の変形例の構造を模式的に示す平面図である。
【0133】
なお、図9において、光素子を構成するコア18は、クラッド12に覆われているために、直接目視することはできないが、強調のために実線で描いてある。また、図10及び図11においては、基板8及びクラッド12の描画を省略している。また、以上の図面において、煩雑化を防ぐために、説明に必要ない一部の構成要素の符号を省略している。
【0134】
(構造)
図9を参照して、光素子60の構造について説明する。光素子60は、言わば、多段のMZ干渉計型の波長分離素子であり、実施形態2のMMZ干渉計40を複数個直列に接続したものに対応する。より正確には、光素子60は、MMZ干渉計40と略同様に構成された第1〜第iMMZ干渉計40−1〜40−i(iは2以上の整数)を備えている。よって、第1〜第iMMZ干渉計40−1〜40−iの構成要素には、MMZ干渉計40と同等の符号を付すとともに、符号の末尾に付した添字「−i」により、第1〜第iMMZ干渉計40−1〜40−iを区別する。
【0135】
光素子60を構成する光導波路11は、この順序で直列に配置された第1〜第iMMZ干渉計40−1〜40−iを備えている。光導波路11は、さらに、任意的な要素として実施形態1と同様に構成された入力部24と出力部26とを備えている。光素子60は、第1光Lt1をクロス状態で出力し、第2光Lt2をバー状態で出力するように構成されている。
【0136】
第1〜第iMMZ干渉計40−1〜40−iは、MMZ干渉計の第1光Lt1に関する分配比が異なっている以外は、実施形態2のMMZ干渉計40と同様に構成されている。すなわち、第1光Lt1をクロス出力するためには、個々の第1〜第iMMZ干渉計40−1〜40−iの第1光に関する分配率の和を1にすればよい。そこで、第1〜第iMMZ干渉計40−1〜40−iの第1光Lt1に関する分配率xをそれぞれ1/iとしている。なお、第2光Lt2はバー出力されるので、個々の第1〜第iMMZ干渉計40−1〜40−iの分配率を考慮する必要は無い。
【0137】
ところで、任意の第rMMZ干渉計40−r(rは1〜iの整数。)は、それぞれ2個のメタ方向性結合器321−r及び322−rを備えている。よって、第rMMZ干渉計40−rの分配率を1/iとするためには、メタ方向性結合器321−r及び322−rの分配率を1/(2i)に設定すればよい。
【0138】
あとは、実施形態1と同様にして、分配率が1/(2i)となるように、メタ方向性結合器321−rのアーム部321C−rに導入する位相差を求める。そして、この位相差からアーム部321C−rの光路長差を求め、この光路長差を達成するようにアーム部321C−rを構成する第1及び第2湾曲部16a1C−r及び16b1C−rの長さを決定する。
【0139】
ここで、互いに隣接する第j及び第(j+1)MMZ干渉計40−j及び40−(j+1)(jは1〜i−1の整数)の組み合わせを考える。そして、第j及び第(j+1)MMZ干渉計40−j及び40−(j+1)からなる構造体を第jペア構造体42−jとする。このとき、第jMMZ干渉計40−jを構成する第1及び第2光導波路16a−j及び16b−jと、第(j+1)MMZ干渉計40−(j+1)を構成する第1及び第2光導波路16a−(j+1)及び16b−(j+1)とは、図9の第jペア構造体42−jの中心点を対称中心にして、点対称に配置されている。ここで、第jペア構造体42−jの中心点とは、第jペア構造体42−jの全構成要素についての重心に対応する。
【0140】
このように、第j及び第(j+1)MMZ干渉計40−j及び40−(j+1)を点対称配置にすることにより、クロス出力される第1光Lt1のピーク波長帯域を広げることができる。
【0141】
(変形例)
以下、光素子60の変形例について説明する。光素子60は、光素子10及びMMZ干渉計40と同様の変形が可能であるとともに、さらに以下に列記する変形が可能である。
【0142】
(変形例1)
以下、図10を参照して、光素子60の変形例について説明する。図10は、図9の第jペア構造体42−jの拡大平面図である。図10を参照すると、光素子60Aは、第jペア構造体42−jにおける第2素子部分42A−j(図9)に代えて、第2素子部分42A−jと同様に機能する第j等価アーム部62−jを備えた点が、光素子60と異なっている。つまり、光素子60Aでは、隣接しあう第j及び第j+1MMZ干渉計40−j及び40−(j+1)が、1個の第j等価アーム部62−jを共有している。
【0143】
図9を参照すると、第2素子部分42A−jとは、第jMMZ干渉計40−jにおける第2メタ方向性結合器322−jのアーム部322C−j及び第2方向性結合器322R−jと、第j+1MMZ干渉計40−(j+1)における第1メタ方向性結合器321−(j+1)のアーム部321C−(j+1)及び第1方向性結合器321L−(j+1)とからなる光素子60の部分である。
【0144】
再び図10に戻ると、第j等価アーム部62−jは、並列された第1及び第2光導波路16a及び16bの部分としての第3及び第4湾曲部16a4C−j及び16b4C−jで構成されている。第j等価アーム部62−jは、第3及び第4湾曲部16a4C−j及び16b4C−jを伝搬後の第1光Lt1に、上述した位相差φとは異なる位相差φAを与えるように構成される。ここで、第j等価アーム部62−jが与える位相差φAは、第rMMZ干渉計40−r(図9)が備えるアーム部321C−rが与える位相差φの2倍の大きさとする。
【0145】
第j等価アーム部62−jが、位相差φを2倍にしたアーム部321C−rと等価である点につき、上述の伝達マトリクスを用いて説明する。ここで、図9に示した、第jMMZ干渉計40−jにおける第2メタ方向性結合器322−jと、第j+1MMZ干渉計40−(j+1)における第1メタ方向性結合器321−(j+1)とを直列に接続した直列構造体の伝達特性を伝達マトリクスM31で表す。さらに、第j等価アーム部62−jの伝達特性を伝達マトリクスM33で表す。このとき、M31は、上述の式(4)及び式(5)の伝達マトリクスMs及びMfを用いて、下記式(12)で表される。
M31=MsMfMsMsMfMs・・・(12)
【0146】
式(12)において、2項目から5項目のマトリクスの積であるMfMsMsMfが、第j等価アーム部62−jの伝達特性M33に対応する。ここで、式(12)において、MsMsは単位マトリクスとなるので、式(12)は下記式(13)のように簡単化できる。
M31=MsMfMfMs・・・(13)
【0147】
さらに、式(13)において、MfMfは、下記式(14)のように表される。
【0148】
【数6】
【0149】
ここで、式(14)のM33と、式(6)のMfとを比較すると、Mfでは各要素の位相項で位相差φに係数1/2が掛けられているが、M33の位相項では位相差φに係数が掛けられていない。つまり、位相項での係数の差により、M33は、位相差2φを与えたMfの伝達特性と等しくなる。このことより、第j等価アーム部62−jの位相差φAをアーム部321C−rの位相差φの2倍にすれば、両者が同様に動作することが判る。
【0150】
この結果を利用すると、式(12)は下記式(15)のように表される。
M31=MsM33Ms・・・(15)
【0151】
式(15)から、直列構造体と、一部を第j等価アーム部62−jで置換した直列構造体とは、伝達マトリクスが等しく同様の動作をすることがわかる。
【0152】
このように、第2素子部分42A−jを第j等価アーム部62−jで置換することにより、長さが、100μmオーダである第1及び第2方向性結合器321L−(j+1)及び322R−jを省略することができ、光素子60Aの全長を大幅に短縮することができる。
【0153】
(変形例2)
以下、主に、図11を参照して、光素子60の変形例について説明する。図11に示す光素子60Bは、言わば、図8に示したマルチモード光導波路52と、図10に示した第j等価アーム部62−jとを併用した構造に対応する。
【0154】
より詳細には、光素子60Bは、図10における第1素子部分64−j及び64−(j+1)を、それぞれマルチモード光導波路52−j及び52−(j+1)に置換したものである。
【0155】
さらに、光素子60Bでは、第1及び第2光導波路16a及び16bを、平行を保った状態で直角に屈曲させ、該屈曲部の外側と内側とで生じる光導波路16a及び16bの長さの差を利用して、アーム部321C−j及び322C−(j+1)を形成している。
【0156】
光素子60Bをこのように構成する結果、光素子60Aに比べて、より素子サイズを小型化できる。
【0157】
(変形例3)
この実施形態では、第jペア構造体42−jを構成する第1及び第2光導波路を、中心点を対称中心にして点対称に配置した場合について説明した。しかし、第jペア構造体42−jを構成する第1及び第2光導波路を点対称に配置する必要は無く、平行移動したときに互いに重なり合うように配置してもよい。このように構成しても、光素子60は、実用上十分な波長分離能力を奏する。
【符号の説明】
【0158】
8 基板
8a 主面
10,30,50,50A,50B,50C,60,60A,60B 光素子
11 光導波路
12 クラッド
18 コア
32 マッハツェンダ干渉計(MZ干渉計)
321,321−r,321A,321B,321−(j+1) 第1メタ方向性結合器
322,322−r,322A,322B,322−j 第2メタ方向性結合器
323,323A,323B,323C,323C−j,323C−(j+1) メタアーム部
22L,32L,321L,322L,322L−j,321L−j,321L−(j+1),322L−(j+1) 第1方向性結合器
22R,32R,321R,322R,322R−j,321R−j,321R−(j+1),322R−(j+1) 第2方向性結合器
22C,32C,321C,322C,321C−r,322C−j,321C−j,321C−(j+1),322C−(j+1) アーム部
16aL,16aR,16a1L,16a1R,16a2L,16a2R 第1直線部
16bL,16bR,16b1L,16b1R,16b2L,16b2R 第2直線部
16a4C−j 第3湾曲部
16b4C−j 第4湾曲部
16aC,16a1C,16a2C,16a3C,16a1C−r 第1湾曲部
16bC,16b1C,16b2C,16b3C,16b1C−r 第2湾曲部
16a,16a1,16a2,16a3,16a−j,16a−(j+1) 第1光導波路
16b,16b1,16b2,16b3,16b−j,16b−(j+1) 第2光導波路
16T,16T1,16T11,16T12 第1幅テーパ部
16T2,16T21,16T22 第2幅テーパ部
C321,C322 中心軸
IN16a,IN16b 入力端
OUT16 出力側
OUT16a,OUT16b 出力端
24 入力部
24a 入力用光導波路
24b ダミー導波路
26 出力部
26a 第1出力用光導波路
26b 第2出力用光導波路
40 光ユニット(メタマッハツェンダ(MMZ)干渉計)
40−r 第rMMZ干渉計
40−j 第jMMZ干渉計
40−(j+1) 第(j+1)MMZ干渉計
42−j 第jペア構造体
42A−j 第2素子部分
52,52−j,52−(j+1) マルチモード光導波路
62−j 第j等価アーム部
64,64−j,64−(j+1) 第1素子部分
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の主面側に設けられたクラッドと、該クラッド中に設けられたコアとで構成された光導波路を備えており、
該光導波路が第1及び第2光導波路を備え、
それぞれ、光結合可能な距離だけ離間して互いに並列した前記第1及び第2光導波路の部分で構成された第1及び第2方向性結合器と、
前記第1及び第2方向性結合器間に介在する前記第1及び第2光導波路の部分で構成されたアーム部とを有し、
前記第1及び第2方向性結合器は、第1波長λ1の第1光に対して3dBカプラとして機能するとともに、
前記第1方向性結合器を構成する前記第1又は第2光導波路に、光伝搬方向に垂直で前記主面に平行な方向に測った長さである幅が第1幅から、該第1幅よりも小さい第2幅まで、光伝搬方向に沿って縮小する第1幅テーパ部が形成されており、
前記第2方向性結合器を構成する前記第1又は第2光導波路に、幅が前記第2幅から、前記第1幅まで、光伝搬方向に沿って拡大する第2幅テーパ部が形成されており、
前記アーム部は、当該アーム部の前記第1及び第2光導波路を伝搬する前記第1光に対して、(2m+z)πの位相差(mは0以上の整数、zは0<z<1の実数)を与えるように構成されていること特徴とする光素子。
【請求項2】
前記第1方向性結合器において、前記第1及び第2光導波路間の間隔を光伝搬方向に沿って狭くし、前記第2方向性結合器において、前記第1及び第2光導波路間の間隔を光伝搬方向に沿って広げることを特徴とする請求項1に記載の光素子。
【請求項3】
前記アーム部を構成する前記第1及び第2光導波路間の光路長差ΔS1を、下記式(1)を満たすように設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の光素子。
2ΔS1/λ1=2m+z・・・(1)
【請求項4】
前記コアを構成する材料をSiとし、前記クラッドを構成する材料をSiO2とすることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の光素子。
【請求項5】
前記コアを構成する材料は、前記クラッドを構成する材料の屈折率よりも40%以上大きな屈折率を有していることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の光素子。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載の光素子をそれぞれ第1及び第2メタ方向性結合器として備えるとともに、
該第1及び第2メタ方向性結合器間に介在する第1及び2光導波路で構成されたメタアーム部を備え、
前記第1及び第2メタ方向性結合器の前記アーム部が、それぞれの当該アーム部を伝搬する前記第1光に対して(2m+1/2)πの位相差を与えるように構成されており、
前記メタアーム部が、当該メタアーム部を伝搬する前記第1光に対して2Mπ(Mは0以上の整数)の位相差を与え、
前記第1及び第2メタ方向性結合器が備える第1光導波路と前記メタアーム部が備える第1光導波路とが接続されており、前記第1及び第2メタ方向性結合器が備える第2光導波路と前記メタアーム部が備える第2光導波路とが接続されていることを特徴とする光素子。
【請求項7】
前記メタアーム部を構成する前記第1及び第2光導波路間の光路長差ΔS2を、下記式(2)を満たすように設定することを特徴とする請求項6に記載の光素子。
2ΔS2/λ1=2M・・・(2)
【請求項8】
前記光素子に、さらに第1波長λ1とは異なる第2波長λ2の第2光が入力され、
前記光路長差ΔS2を、前記第2光について、下記式(3)を更に満たすように設定することを特徴とする請求項7に記載の光素子。
2ΔS2/λ2=2M+1・・・(3)
【請求項9】
前記第1及び第2メタ方向性結合器の中心軸同士を、交差するか又は平行とすることを特徴とする請求項6〜8の何れか一項に記載の光素子。
【請求項10】
前記第1メタ方向性結合器において、前記第1方向性結合器の前記第1幅テーパ部が第f1光導波路(f1は1又は2)に設けられ、及び前記第2方向性結合器の前記第2幅テーパ部が、第f2光導波路(f2は1又は2)に設けられる場合に、
前記第2メタ方向性結合器における前記第1方向性結合器の前記第1幅テーパ部が第u2光導波路(u2=3−f2)に設けられ、及び前記第2方向性結合器の第2幅テーパ部が、第u1光導波路(u1=3−f1)に設けられており、
前記第1メタ方向性結合器のアーム部における第1及び第2光導波路間の光路長差と、前記第2メタ方向性結合器のアーム部における第1及び第2光導波路間の光路長差とが絶対値が等しく符号が反転していることを特徴とする請求項6〜9の何れか一項に記載の光素子。
【請求項11】
前記第1メタ方向性結合器の前記第2方向性結合器と、前記メタアーム部と、前記第2メタ方向性結合器の前記第1方向性結合器とからなる第1素子部分に代えて、当該第1素子部分と同様に機能するマルチモード光導波路を備えることを特徴とする請求項6〜10の何れか一項に記載の光素子。
【請求項12】
請求項6〜11の何れか一項に記載の光素子を第1〜第iメタマッハツエンダ干渉計(iは2以上の整数)として備えており、
前記第1〜第iメタマッハツエンダ干渉計は、この順で互いに接続されており、
第j及び第j+1メタマッハツエンダ干渉計(jは1〜i−1の整数)の第1光導波路同士が接続されており、前記第j及び第j+1メタマッハツエンダ干渉計の第2光導波路同士が接続されていることを特徴とする光素子。
【請求項13】
前記第jメタマッハツエンダ干渉計における前記第2メタ方向性結合器の前記アーム部及び前記第2方向性結合器と、前記第j+1メタマッハツエンダ干渉計における前記第1メタ方向性結合器の前記アーム部及び前記第1方向性結合器とからなる第2素子部分に代えて、当該第2素子部分と同様に機能する第j等価アーム部を備えることを特徴とする請求項12に記載の光素子。
【請求項1】
基板の主面側に設けられたクラッドと、該クラッド中に設けられたコアとで構成された光導波路を備えており、
該光導波路が第1及び第2光導波路を備え、
それぞれ、光結合可能な距離だけ離間して互いに並列した前記第1及び第2光導波路の部分で構成された第1及び第2方向性結合器と、
前記第1及び第2方向性結合器間に介在する前記第1及び第2光導波路の部分で構成されたアーム部とを有し、
前記第1及び第2方向性結合器は、第1波長λ1の第1光に対して3dBカプラとして機能するとともに、
前記第1方向性結合器を構成する前記第1又は第2光導波路に、光伝搬方向に垂直で前記主面に平行な方向に測った長さである幅が第1幅から、該第1幅よりも小さい第2幅まで、光伝搬方向に沿って縮小する第1幅テーパ部が形成されており、
前記第2方向性結合器を構成する前記第1又は第2光導波路に、幅が前記第2幅から、前記第1幅まで、光伝搬方向に沿って拡大する第2幅テーパ部が形成されており、
前記アーム部は、当該アーム部の前記第1及び第2光導波路を伝搬する前記第1光に対して、(2m+z)πの位相差(mは0以上の整数、zは0<z<1の実数)を与えるように構成されていること特徴とする光素子。
【請求項2】
前記第1方向性結合器において、前記第1及び第2光導波路間の間隔を光伝搬方向に沿って狭くし、前記第2方向性結合器において、前記第1及び第2光導波路間の間隔を光伝搬方向に沿って広げることを特徴とする請求項1に記載の光素子。
【請求項3】
前記アーム部を構成する前記第1及び第2光導波路間の光路長差ΔS1を、下記式(1)を満たすように設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の光素子。
2ΔS1/λ1=2m+z・・・(1)
【請求項4】
前記コアを構成する材料をSiとし、前記クラッドを構成する材料をSiO2とすることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の光素子。
【請求項5】
前記コアを構成する材料は、前記クラッドを構成する材料の屈折率よりも40%以上大きな屈折率を有していることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の光素子。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載の光素子をそれぞれ第1及び第2メタ方向性結合器として備えるとともに、
該第1及び第2メタ方向性結合器間に介在する第1及び2光導波路で構成されたメタアーム部を備え、
前記第1及び第2メタ方向性結合器の前記アーム部が、それぞれの当該アーム部を伝搬する前記第1光に対して(2m+1/2)πの位相差を与えるように構成されており、
前記メタアーム部が、当該メタアーム部を伝搬する前記第1光に対して2Mπ(Mは0以上の整数)の位相差を与え、
前記第1及び第2メタ方向性結合器が備える第1光導波路と前記メタアーム部が備える第1光導波路とが接続されており、前記第1及び第2メタ方向性結合器が備える第2光導波路と前記メタアーム部が備える第2光導波路とが接続されていることを特徴とする光素子。
【請求項7】
前記メタアーム部を構成する前記第1及び第2光導波路間の光路長差ΔS2を、下記式(2)を満たすように設定することを特徴とする請求項6に記載の光素子。
2ΔS2/λ1=2M・・・(2)
【請求項8】
前記光素子に、さらに第1波長λ1とは異なる第2波長λ2の第2光が入力され、
前記光路長差ΔS2を、前記第2光について、下記式(3)を更に満たすように設定することを特徴とする請求項7に記載の光素子。
2ΔS2/λ2=2M+1・・・(3)
【請求項9】
前記第1及び第2メタ方向性結合器の中心軸同士を、交差するか又は平行とすることを特徴とする請求項6〜8の何れか一項に記載の光素子。
【請求項10】
前記第1メタ方向性結合器において、前記第1方向性結合器の前記第1幅テーパ部が第f1光導波路(f1は1又は2)に設けられ、及び前記第2方向性結合器の前記第2幅テーパ部が、第f2光導波路(f2は1又は2)に設けられる場合に、
前記第2メタ方向性結合器における前記第1方向性結合器の前記第1幅テーパ部が第u2光導波路(u2=3−f2)に設けられ、及び前記第2方向性結合器の第2幅テーパ部が、第u1光導波路(u1=3−f1)に設けられており、
前記第1メタ方向性結合器のアーム部における第1及び第2光導波路間の光路長差と、前記第2メタ方向性結合器のアーム部における第1及び第2光導波路間の光路長差とが絶対値が等しく符号が反転していることを特徴とする請求項6〜9の何れか一項に記載の光素子。
【請求項11】
前記第1メタ方向性結合器の前記第2方向性結合器と、前記メタアーム部と、前記第2メタ方向性結合器の前記第1方向性結合器とからなる第1素子部分に代えて、当該第1素子部分と同様に機能するマルチモード光導波路を備えることを特徴とする請求項6〜10の何れか一項に記載の光素子。
【請求項12】
請求項6〜11の何れか一項に記載の光素子を第1〜第iメタマッハツエンダ干渉計(iは2以上の整数)として備えており、
前記第1〜第iメタマッハツエンダ干渉計は、この順で互いに接続されており、
第j及び第j+1メタマッハツエンダ干渉計(jは1〜i−1の整数)の第1光導波路同士が接続されており、前記第j及び第j+1メタマッハツエンダ干渉計の第2光導波路同士が接続されていることを特徴とする光素子。
【請求項13】
前記第jメタマッハツエンダ干渉計における前記第2メタ方向性結合器の前記アーム部及び前記第2方向性結合器と、前記第j+1メタマッハツエンダ干渉計における前記第1メタ方向性結合器の前記アーム部及び前記第1方向性結合器とからなる第2素子部分に代えて、当該第2素子部分と同様に機能する第j等価アーム部を備えることを特徴とする請求項12に記載の光素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−68909(P2013−68909A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209257(P2011−209257)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】
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