説明

光触媒を用いた水処理方法および装置

【課題】光触媒を用いて被処理水中の有機物を効率よく分解し、脱色する水処理方法および装置を提供する。
【解決手段】被処理水を流入口5から流入させるコンクリート製水槽4内に、光触媒を担持した不織布の布帛1を設置する。太陽光により、光触媒にヒドロキシラジカルを発生させる一方、被処理水中の有機物を効率良く分解し、脱色する。脱色された処理水を放流口6より放流する。また、光触媒を担持した不織布の布帛1全体を水中で往復運動させたり振動させたりすることにより、単位時間に光触媒に接する水の量を飛躍的に増やすことができ、処理効率を高めることができる。さらに、被処理水を不織布プリーツ構造体2の上に直接流下する方法、さらに、懸濁した被処理水を散水する方法により、処理効率を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒を用いた水処理方法および装置に関し、とくに、家畜排泄物による糞尿汚水等の被処理水を処理するに際し、被処理水中の有機物を、光触媒を用いることで効果的に分解し、脱色することが可能な水処理方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の畜産は、飼育規模の拡大、担い手の減少および高齢化の進行により厳しい状況に直面しており、家畜排泄物の適正処理が困難となっている経営体が見られる。一方、地域の生活環境に関する問題も生じている。従来、家畜排泄物による糞尿汚水は、土壌浸透状態におかれ、適切な処理がなされていなかった。
【0003】
平成11年7月28日に「家畜排泄物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」が公布され、平成11年11月1日より施行された。畜産農家では地域環境と調和した健全な経営が求められ、家畜排泄物が風雨によって川や周辺の農地に流れ出したり、地下に浸透しないよう、コンクリートや遮水シートで作った貯留槽で適正に管理すること、家畜排泄物の処理の高度化を図るための施設の整備が義務づけられた。畜糞の野積みや汚水のため池、素堀貯留が禁止された。
【0004】
家畜排泄物について遵守すべき管理基準をクリアーできる施設を持たない農家に対し、施設の整備に要する期間を考慮するため、構造設備と管理方法の一部について、5年間の猶予期間が設定された。平成16年11月1日より施設の構造設備に関する基準、管理施設内における家畜排泄物の管理が適用された。
【0005】
家畜排泄物による糞尿汚水は生物処理、曝気処理、膜分離処理を組み合わせた方法で行われているが、たとえ放流基準値に達していても、最終処理水が茶褐色を呈しているため、放流するには支障がある場合が多い。
【0006】
糞尿汚水の着色の主な原因は、有機物であるフミン質(フルボ酸,フミン酸など)である。養豚においては、特に雌種豚の屎尿の着色が濃い。
【0007】
有機物を分解し、脱色する方法に、繰り返し使用可能な光触媒を使った処理方法がある。この方法によれば近紫外線を照射するだけでよく、エネルギーをあまり必要としない。光触媒を担持させた円盤状、平板状または管状のものによる池の浄化方法(特許文献1)や光触媒を担持させた筏により水を浄化する方法(特許文献2)が提案されている。ところがこれらの提案においては、光触媒を充填剤・槽内・粒子・板・筏に担持しているために、水と光触媒との接触効率が悪く、光触媒を介した分解速度が遅いという問題があった。
【0008】
特許文献3には、円板状支持体を回転させることで連続的に被処理水に浸漬後、引き上げを行う装置が提案されている。この装置では、水中で前記円板に吸着されやすい物質のみが分解されることになり、水中で前記円板に吸着されにくい物質は分解されないという問題があった。
【0009】
さらに、農業に関して、脱色のために光触媒担持体を使用する畜産排水の処理方法(特許文献4、特許文献5)や、農業用液体を多孔質体に担持させた光触媒により処理方法(特許文献6)が提案されているが、分解速度が遅く、かつ、担持体が高価であるという問題があった。
【0010】
また、閉鎖性の湖、沼、修景池、鑑賞池などでは、河川や海洋と比べ、依然として、水汚染が深刻である。現在でも、製造業、水産業などの産業排水、インクや染料の有機着色成分を含む着色排水などによる水汚染の問題がある。
【特許文献1】特開平11-151486号公報
【特許文献2】特開平11-104629号公報
【特許文献3】特開平10-202257号公報
【特許文献4】特開2002-11483号公報
【特許文献5】特開2003-24957号公報
【特許文献6】特開2004-82095号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、かかる現状に鑑み、光触媒を担持させた不織布の布帛を用いることで、とくにそれを水中に浮遊させた状態で用いることで、エネルギーをあまり必要とせず水処理費用を低く抑える一方、被処理水と光触媒との接触の効率を上げることにより、家畜排泄物による糞尿汚水中等における有機物を高い速度で効率よく分解し、脱色まで可能とすることが可能な水処理方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の課題を解決するために、本発明者らが鋭意研究した結果、被処理水中に存在する有機物を分解する光触媒反応は、光触媒表面で生成したヒドロキシラジカルが不織布の布帛の表面で有機物と反応して起きることに注目した。さらに、固定化光触媒の表面積を大きくするためには光触媒を担持した不織布の布帛とすることが好ましいこと、さらに加えて単位時間当たりに光触媒担持不織布の布帛表面に接触する水の量を多くすることが好ましいことが解明された。
【0013】
この解明結果に基づき、上述の課題を解決するための、本発明に係る第1の手段は、被処理水中の有機物を分解して脱色する処理方法であって、被処理水中に、光触媒を担持した不織布の布帛を浸漬し、光(とくに、紫外線を含有する光)を照射することで、前記被処理水中の有機物を分解することにより脱色することを特徴とする光触媒を用いた水処理方法である。
【0014】
第2の手段は、前記光触媒を担持した不織布の布帛を、前記被処理水中に浮遊させた状態で往復運動させることを特徴とする第1の手段に記載の光触媒を用いた水処理方法である。
【0015】
第3の手段は、前記光触媒を担持した不織布の布帛を、前記被処理水中で振動させることを特徴とする第1の手段に記載の光触媒を用いた水処理方法である。
【0016】
第4の手段は、前記被処理水を攪拌する攪拌手段を有することを特徴とする第1〜3の手段のいずれかに記載の光触媒を用いた水処理方法である。
【0017】
第5の手段は、前記被処理水を、前記光触媒を担持した不織布の布帛の上に散水する散水手段を有することを特徴とする第1〜4の手段のいずれかに記載の光触媒を用いた水処理方法である。
【0018】
第6の手段は、前記紫外線を含有する照射光が、太陽光、蛍光灯、ブラックライト、殺菌灯、水銀灯、ハロゲンランプ及び白熱ランプの光より成る群から選ばれる少なくとも一種の光であることを特徴とする第1〜5の手段のいずれかに記載の光触媒を用いた水処理方法である。
【0019】
第7の手段は、前記被処理水が、家畜排泄物による糞尿汚水を含む排水、生活排水、下水処理場排水、廃棄物処理施設排水、農業排水、ゴルフ場排水、着色排水より成る群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする第1〜6の手段のいずれかに記載の光触媒を用いた水処理方法である。
【0020】
第8の手段は、前記光触媒を担持した不織布の布帛が、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミドより成る群から選ばれる少なくとも一種の繊維からなり、前記繊維表面に光触媒粉末を露出させ、かつ、前記繊維を不織布の布帛に加工した構造体であることを特徴とする第1〜7の手段のいずれかに記載の光触媒を用いた水処理方法である。繊維を構成するポリエステルとしては例えばポリエチレンテレフタレートを、ポリオレフィンとしてはポリプロピレンやポリエチレンを、ポリアミドとしては各種ナイロンを、用いることができる。
【0021】
第9の手段は、前記光触媒を担持した不織布の布帛がプリーツ構造体であることを特徴とする第1〜8の手段のいずれかに記載の光触媒を用いた水処理方法である。
【0022】
第10の手段は、前記光触媒が酸化チタンからなる第1〜9の手段のいずれかに記載の光触媒を用いた水処理方法である。
【0023】
また、本発明に係る光触媒を用いた水処理装置は、被処理水が導入、排出される水槽と、該水槽内の被処理水中に浸漬される光触媒を担持した不織布の布帛とを有することを特徴とするものからなる。
【0024】
この光触媒を用いた水処理装置においては、前記水槽が、被処理水が順次流下される複数の小水槽に分割されている構造を採用することができる。
【0025】
また、上記光触媒を用いた水処理装置には、さらに、前記光触媒を担持した不織布の布帛を前記被処理水中で往復運動または振動させる手段を有する構造を採用することが好ましい。
【0026】
さらに、この光触媒を用いた水処理装置においても、前記光触媒を担持した不織布の布帛がプリーツ構造体からなることが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る光触媒を用いた水処理方法および装置によれば、水中に設置できる光触媒を担持した不織布の布帛は、従来の光触媒を担持させた多孔質体等と比較して、安価であるので、処理費用を低減できる。
【0028】
また、この光触媒を担持した不織布の布帛は、非常に弱いトルクのモーターを用いて水中に浮遊させた状態で往復運動させることができ、あるいは、水中で振動させることができるので、単位時間あたりの被処理水との接触効率を飛躍的に向上させることができる。そして、太陽光で短時間に有機物を分解し、脱色することが可能になる。
【0029】
したがって、飼育規模の拡大、担い手の減少および高齢化の進行により厳しい状況に直面している畜産農家からの家畜排泄物による糞尿汚水の適正処理を、経営を圧迫せずに迅速に行うことができ、地域環境と調和した健全な経営が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、図を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
本発明に用いる光触媒を担持した不織布の布帛としては、水との接触を良くするために、綿状に加工した構造体にしてもよく、プリーツ状にした構造体を使用してもよい。図1に、光触媒を担持した不織布の布帛1をプリーツ構造体2に構成したものを例示する。光触媒としては、代表的には酸化チタン、とくに酸化チタンの粉末が用いられる。
【0031】
この光触媒を担持した不織布プリーツ構造体2とは、光触媒を担持した不織布の布帛1を、プリーツ状に加工したものである(図1、図2)。側面には水との接触を良くするために、通水用の穴11を開けてもよい(図2)。このプリーツ構造体2の平面形状は特に限定されないが、多数敷設する場合を考慮すると、例えば図3に示すような矩形、あるいは正方形の形状が好ましい。
【0032】
本発明の実施の形態に係る光触媒を担持した不織布の布帛1(例えば、上記の如くプリーツ構造体2に構成されたもの)を用いた水処理施設としては、例えば図4、図5に示すように構成できる。この水処理施設21は、例えばコンクリート作りで(例えば、コンクリート製水槽4の形態に構成され)、導入されてきた被処理水3が地下に浸透しない構造になっている。水処理施設21は被処理水の流入口5と処理水の放流口6を備え、仕切り壁22で区画された複数の小水槽、つまり、上流側の水槽4aから下流側の水槽4b、4c、4d、4eへ順次流下していくように、各仕切り壁22に、順次段差を持たせた堰として機能する連通孔23a、23b、23c、23dが設けられている。流入口5、連通孔23a、23b、23c、23d、放流口6は、平面的に見て図5に示すように互い違いの位置に配置されており、被処理水が各水槽4a、4b、4c、4d、4eを自然に少しずつ流れた後、放流口6から排出されるようになっている。
【0033】
流入口5より被処理水を流入すると、流路にある光触媒担持不織布布帛1(例えば、不織布プリーツ構造体2)を通過する時に、酸化チタン光触媒と接触し、紫外線を含有する光(とくに、太陽光)により、被処理水中の有機物が分解され、放流口6から処理された水が排出される(図4、図5)。
【0034】
このような水処理施設21においては、光触媒担持不織布布帛1を水中に浮遊させた状態で往復運動させ、被処理水との接触効率を高め、処理効率を高めることが好ましい。例えば図6、図7に示すように、円盤9付きモーター8の回転運動を、不織布布帛1への連結棒7と滑車10とを介して、往復運動に変換することが可能である。モーター8に付設された円盤9と連結棒7との間に、円盤9の回転運動を往復運動に変換するクランク機構を設ける構成とすることも可能である(図示略)。光触媒を担持した不織布布帛1(例えば、不織布プリーツ構造体2)を水中浮遊状態で往復運動させることにより、水との接触効率を上げることができる。水との接触効率を上げる方法としては、光触媒を担持した不織布布帛1を浮遊状態で振動させることでもよい。また、この場合、太陽電池を電源とした小型モーターを用い、往復運動や振動させることもできる。さらに、光触媒を担持した不織布布帛1(とくに、剛性の高い不織布プリーツ構造体2)に帆を立てることにより、風の力を利用して往復運動や振動を行わせることもできる。
【0035】
さらに図示は省略するが、各水槽4a、4b、4c、4d、4eの少なくとも一つには、被処理水を攪拌する攪拌手段を設けておくこともできる。
【0036】
さらに、本発明の実施の形態に係る光触媒を担持した不織布の布帛1(例えば、上記の如くプリーツ構造体2に構成されたもの)を用いた流下式水処理施設24としては、例えば図8に示すように構成できる。ここで使用する不織布プリーツ構造体2は通水用の穴を開けていないものである。流下式水処理施設24は被処理水の流入口5と処理水の放流口6を備え、上流側の水槽25aに浮かした不織布プリーツ構造体の上に被処理水が流下するように、各段には多数の穴を開けた導水部26がある。水槽は順次段差を持たせ、穴の開いた高さで堰として機能し、下流側の水槽25b、25c、25d、25eへ順次流下していくように配置されており、自然に流れた後、放流口6から排出されるようになっている。光触媒を担持した不織布プリーツ構造体を被処理水が通過するため、光触媒との接触効率が各段に向上する。
【0037】
この流下式水処理施設24は、コンクリート以外に、金属やプラスチックで作ることもできる。
【0038】
さらに、本発明の他の装置形態として、光触媒を担持した不織布の布帛1(例えば、上記の如くプリーツ構造体2に構成されたもの)を用いた筏式水処理としては、例えば図9に示すように構成できる。ここで使用する不織布プリーツ構造体2は通水用の穴を開けていないものである。固定用筏31に循環ポンプ32と不織布プリーツ構造体2を水面に浮遊した状態に固定する。この装置形態は散水手段を具備する構成であるが、被処理水を循環ポンプ32により取水口33から導水管34を通して、放水口35からシャワー状態(シャワー37)で不織布プリーツ構造体2の上から散水する。電源の確保が困難な湖沼では循環ポンプ32の電源としては、太陽電池36を使用することもできる。尚、本出願の技術では、光触媒と被処理水との接触効率を高める目的で、上述した往復運動手段、振動、撹拌手段並びに散水手段を任意好適に組み合わせることができる。
【0039】
懸濁したプールや池や湖沼で光触媒担持した不織布プリーツ構造体2を固定用筏31で水面に浮かし、筏に固定した循環ポンプ32で懸濁した被処理水を不織布プリーツ構造体の上から散水することにより、懸濁物質が除去されただけでなく、光触媒と汚濁物質の接触効率が向上し、水中の有機物が酸化され、水質が改善される。水質が改善される。
【実施例】
【0040】
実施例1、比較例1
着色の被処理水として、青色のメチレンブルーの50mg/Lの濃度の水溶液0.8Lを用いた。実施例ではコンクリート作りの水槽の代わりに、小型のプラスチックパット(内容積346mm×165mm×58mm、受光面積346mm×165mm)を用いた。149mm×149mm×厚さ10mmの光触媒を担持した不織布プリーツ構造体(ポリオレフィン繊維からなる面密度50g/m2の不織布に光触媒粒子(酸化チタン粒子)の担持量が面密度18g/m2となるように担持処理後、プリーツの頂点の間隔を5mm、プリーツ高さが10mmになるように作製された構造体)2枚を、前記のプラスチックパットに入れ、被処理水の深さ14mmの条件で、平成16年11月21日の晴天日に太陽光で実験した。実施例では、40mL/minの水流を作るために、ロータリーポンプ(コールパーマー社製PA−25A)を用いて槽内循環させた。
【0041】
比較例1として、光触媒を担持した東芝セラミックス株式会社製のB−6:光触媒担持セラミックスフォーム(材質はアルミナで、寸法は150mm×150mm×厚さ10mm、多孔体でセル数は25mmに6個、重量は90gから110g)2枚を用い、青色のメチレンブルーの50mg/Lの濃度の水溶液0.8Lを、同じ条件で処理した。
【0042】
正午12時に実験を開始し、日没後にメチレンブルーの濃度を測定した。結果を表1に示す。メチレンブルーの濃度は波長665nmの吸光度を測定して求めた。
【0043】
【表1】

【0044】
光触媒を担持した比較例1に係るセラミックスフォームの場合と比較して、本発明の実施例1に係る光触媒を担持した不織布プリーツ構造体を使うと、明らかに、メチレンブルーの分解の速度が速いことがわかる。
【0045】
実施例2、比較例2
養豚場の糞尿汚水の脱色試験を行った。被処理水は、養豚農場の糞尿を含む水を曝気処理した後の黄褐色に着色した汚水0.8Lを用いた。149mm×149mm×厚さ10mmの光触媒を担持した(実施例1で用いたプリーツ構造体と同じ)不織布プリーツ構造体2枚を、プラスチックパット(内容積346mm×165mm×58mm、受光面積346mm×165mm)に入れ、被処理水の深さ14mmで、平成16年11月23日から25日の晴天日に、太陽光で実験した。ロータリーポンプ(コールパーマー社製PA−25A)を用い、水流は40mL/minで槽内循環させた。
【0046】
比較例2として、厚さ10mmの光触媒を担持した東芝セラミックス株式会社製B−6:光触媒担持セラミックスフォーム(材質はアルミナで、寸法は150mm×150mm×厚さ10mm、多孔体でセル数は25mmに6個、重量は90gから110g)2枚を用い、養豚農場の糞尿を含む汚水を曝気処理後の黄褐色に着色した汚水0.8Lを、同じ条件で処理した。
【0047】
正午12時に実験を開始した。白金・コバルト法により色度を測定した。黄褐色の白金・コバルト色度標準液(1000度:ヘキサクロロ白金(IV)酸カリウム2.49gと塩化コバルト(II)六水和物2.00gをとり、濃塩酸200 mLを加え、水を加えて全量を1000mLにする)を薄めて、各色度の溶液を作り、試料と各色度の溶液を390 nmの吸光度で測定し、比較して求めた。ただし、養豚場の汚水には懸濁物が混ざっているので、毎分12000回転で4分間遠心分離し、懸濁物を分離後に、被処理水の吸光度を測定した。2日と半日間の処理結果を表2に示す。
【0048】
【表2】

【0049】
養豚場の糞尿の汚水の脱色も、本発明の光触媒担持した不織布プリーツ構造体を使った方が、光触媒担持したセラミックスフォームを使った場合よりも、効果的であることが確認された。
【0050】
実施例3、参考実施例3
着色の被処理水として、青色のメチレンブルーの20mg/Lの濃度の水溶液1.4Lを用いた。149mm×149mm×厚さ23mmの光触媒を担持した不織布の布帛1の(プリーツの山高さを23mmにした以外、実施例1で用いた不織布プリーツ構造体と同様な)不織布プリーツ構造体2枚全体を、プラスチックパット(内容積346mm×165mm×58mm、受光面積346mm×165mm)に入れ、被処理水の深さ30mmで、浮遊状態で連結棒7により60回転/minで円盤9付きモーター8(オリエンタルモーター株式会社製のスピードコントロールモーターで、モーターユニットUS590−501Cとギヤヘッド5GU3.6KB)を回転させ、2cm往復運動させた。平成16年11月28日の晴天日に、太陽光で実験した。ロータリーポンプ(コールパーマー社製PA−25A)を用い、水流は40mL/minで、槽内循環させた。参考実施例3として、光触媒を担持した不織布プリーツ構造体2枚を往復運動させないで、同じ条件で処理した。結果を表3に示す。
【0051】
正午12時に実験を開始した。メチレンブルーの濃度を測定した。結果を表3に示す。メチレンブルーの濃度は波長665nmの吸光度を測定して求めた。
【0052】
【表3】

【0053】
光触媒担持した不織布プリーツ構造体を使い、さらに、往復運動させると、明らかに、メチレンブルーの分解の速度が速いことがわかる。
【0054】
実施例4、参考実施例4
養豚場の糞尿汚水の脱色試験を行った。被処理水は、養豚農場の糞尿を含む水を曝気処理した後の黄褐色に着色した汚水を用いた。ただし、水で2倍に薄め、1.4Lを用いた。149mm×149mm×厚さ23mmの光触媒を担持した不織布プリーツ構造体2枚を、プラスチックパット(内容積346mm×165mm×58mm、受光面積346mm×165mm)に入れ、被処理水の深さ30mmで、浮遊状態で連結棒7により60回転/minで円盤9付きモーター8(オリエンタルモーター株式会社製のスピードコントロールモーターで、モーターユニットUS590−501Cとギヤヘッド5GU3.6KB)を回転させ、不織布プリーツ構造体を2cm往復運動させた。平成16年11月30日から12月2日の晴天日に、太陽光で実験した。ロータリーポンプ(コールパーマー社製PA−25A)を用い、水流は40mL/minで槽内循環させた。参考実施例4として光触媒を担持した不織布プリーツ構造体2枚を往復運動させないで同じ条件で処理した。2日と半日間の処理結果を表4に示す。
【0055】
【表4】

【0056】
光触媒担持した不織布プリーツ構造体を使い、さらに、往復運動させると、明らかに、し尿の脱色の速度が速くなることがわかる。
【0057】
実施例5
養豚場の糞尿汚水の脱色試験を行った。被処理水は、養豚農場の糞尿を含む水を曝気処理した後の黄褐色に着色した汚水を用いた。ただし、水で2倍に薄め、6.0Lを用いた。149mm×149mm×厚さ35mmの光触媒を担持した不織布の布帛1の(プリーツの山高さを35mmにした以外、実施例1で用いた不織布プリーツ構造体と同様な)通水用の穴を開けていない不織布プリーツ構造体4枚を、図8に示した4段に分かれた水槽(各水槽は容積160mm×160mm×40mm)に浮かし、ポンプにより4.0L/minで水を循環させた。各段の被処理水は導水部から不織布プリーツ構造体の上に流下するために、光触媒を担持した不織布を通過する。平成17年12月3日の晴天日に、太陽光で実験した。結果を表5に示す。
【0058】
【表5】

【0059】
光触媒担持した不織布プリーツ構造体を被処理水が通過することにより、光触媒と汚濁物質の接触効率が向上し、し尿の脱色の速度が速くなることがわかる。
【0060】
実施例6
被処理水として、CODが3.9mg/Lの濃度の懸濁した沼の水20Lを用いた。149mm×149mm×厚さ35mmの光触媒を担持した不織布の布帛1の(プリーツの山高さを35mmにした以外、実施例1で用いた不織布プリーツ構造体と同様な)不織布プリーツ構造体1枚全体を、水槽(容積445mm×240mm×300mm)に浮かし、循環ポンプ32により3.2L/minで通水用の穴を開けていない不織布プリーツ構造体2の上から散水した(図9)。平成17年11月26日の晴天日に、太陽光で実験した。結果を表6に示す。
【0061】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明に係る光触媒を用いた水処理方法および装置は、家畜排泄物による糞尿汚水を含む排水、生活排水、下水処理場排水、廃棄物処理施設排水、農業排水、ゴルフ場排水、着色排水等の分解・脱色処理に好適であり、とくに、家畜排泄物による糞尿汚水や汚濁した湖沼の水の処理に好適なものである。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施の形態に係る光触媒を担持した不織布プリーツ構造体の縦断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る光触媒を担持した不織布プリーツ構造体の側面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る光触媒を担持した不織布プリーツ構造体の平面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る水処理施設の縦断面図である。
【図5】図4の水処理施設の平面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る、不織布往復運動機構を採用した水処理施設の縦断面図である。
【図7】図6の水処理施設の平面図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る光触媒を担持した不織布プリーツ構造体を用いた流下式水処理施設の縦断面図である。
【図9】本発明の実施の形態に係わる筏式水処理の縦断面図である。
【符号の説明】
【0064】
1 光触媒を担持した不織布の布帛
2 光触媒を担持した不織布プリーツ構造体
3 被処理水
4 コンクリート製水槽
4a、4b、4c、4d、4e 水槽
5 流入口
6 放流口
7 連結棒
8 モーター
9 円盤
10 滑車
11 通水用穴
21 水処理施設
22 仕切り壁
23a、23b、23c、23d 連通孔
24 流下式水処理施設
25a、25b、25c、25d、25e 水槽
26 導水部
31 固定用筏
32 循環ポンプ
33 取水口
34 導水管
35 放水口
36 太陽電池
37 シャワー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水中に、光触媒を担持した不織布の布帛を浸漬し、光を照射することで、前記被処理水中の有機物を分解することにより脱色することを特徴とする光触媒を用いた水処理方法。
【請求項2】
前記光触媒を担持した不織布の布帛を、前記被処理水中に浮遊させた状態で往復運動させることを特徴とする、請求項1に記載の光触媒を用いた水処理方法。
【請求項3】
前記光触媒を担持した不織布の布帛を、前記被処理水中で振動させることを特徴とする、請求項1に記載の光触媒を用いた水処理方法。
【請求項4】
前記被処理水を攪拌する攪拌手段を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の光触媒を用いた水処理方法。
【請求項5】
前記被処理水を、前記光触媒を担持した不織布の布帛の上に散水する散水手段を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の光触媒を用いた水処理方法。
【請求項6】
前記照射される光が、太陽光、蛍光灯、ブラックライト、殺菌灯、水銀灯、ハロゲンランプ及び白熱ランプの光より成る群から選ばれる少なくとも一種の光であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の光触媒を用いた水処理方法。
【請求項7】
前記被処理水が、家畜排泄物による糞尿汚水を含む排水、生活排水、下水処理場排水、廃棄物処理施設排水、農業排水、ゴルフ場排水、着色排水より成る群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の光触媒を用いた水処理方法。
【請求項8】
前記光触媒を担持した不織布の布帛が、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミドより成る群から選ばれる少なくとも一種の繊維からなり、前記繊維表面に光触媒粉末を露出させ、かつ、前記繊維を不織布の布帛に加工した構造体であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の光触媒を用いた水処理方法。
【請求項9】
前記光触媒を担持した不織布の布帛がプリーツ構造体であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の光触媒を用いた水処理方法。
【請求項10】
前記光触媒が酸化チタンからなる、請求項1〜9のいずれかに記載の光触媒を用いた水処理方法。
【請求項11】
被処理水が導入、排出される水槽と、該水槽内の被処理水中に浸漬される光触媒を担持した不織布の布帛とを有することを特徴とする光触媒を用いた水処理装置。
【請求項12】
前記水槽が、被処理水が順次流下される複数の小水槽に分割されている、請求項11の光触媒を用いた水処理装置。
【請求項13】
さらに、前記光触媒を担持した不織布の布帛を前記被処理水中で往復運動または振動させる手段を有する、請求項11または12の光触媒を用いた水処理装置。
【請求項14】
前記光触媒を担持した不織布の布帛がプリーツ構造体からなる、請求項11〜13のいずれかに記載の光触媒を用いた水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−192427(P2006−192427A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−357685(P2005−357685)
【出願日】平成17年12月12日(2005.12.12)
【出願人】(591243103)財団法人神奈川科学技術アカデミー (271)
【出願人】(591270682)
【出願人】(501132572)
【出願人】(000229542)日本バイリーン株式会社 (378)
【Fターム(参考)】