説明

光触媒塗料及び該塗料を用いた光触媒膜の製造方法

【課題】膜硬度及び光触媒活性に優れた光触媒塗料及び該塗料を用いた光触媒膜の製造方法を提供する。膜の吸着作用が高い光触媒塗料及び該塗料を用いた光触媒膜の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の光触媒塗料は、酸化チタン粉末、バインダ及び有機溶剤をそれぞれ含む光触媒塗料の改良であり、その特徴ある構成は、添加剤としてメタクリル酸エステルモノマーを更に含むところにある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜硬度及び光触媒活性に優れた光触媒塗料及び該塗料を用いた光触媒膜の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の光触媒膜を得る方法として、チタンのアルコキシドとアルコールアミン類から調製されたチタニアゾルを基板にコーティングした後、焼成することにより光触媒膜を形成する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、基板の保護及び酸化チタン層との密着性向上のために、基板と酸化チタン層との間にアンダーコート膜を設けた2層コートタイプの塗膜の製造方法も知られている。
このうち、チタニアゾルを用いて焼成する方法では、高温で焼成処理しなければならないため、得られた光触媒膜の透明性が低下するおそれがあるだけでなく、焼成炉を必要とするためコストが高くなる問題があった。
また、低温で処理できる2層コートタイプでは、2回塗り及び乾燥が必要であるため、処理工程が多くなり、簡便な方法とはいえなかった。この2層コートタイプでは光触媒の活性を十分に引き出すために、酸化チタンの含有量を80重量%以上としなければならないため、成膜した膜の透明性が十分に得られないだけでなく、基板との密着性が十分に得られず安定した膜が形成できなくなるという問題があった。
【0003】
上記諸問題を解決する方策として本出願人は、一次粒子の平均粒径0.01〜0.1μmの超微粒子アナターゼ型酸化チタン、有機溶媒、β-ジケトン、チタネート系又はアルミネート系カップリング剤とシリカゾルからなる光触媒塗料を提案した(例えば、特許文献2参照。)。この公報に示された光触媒塗料を用いることにより、透明性、触媒活性、塗膜強度に優れた光触媒塗膜を形成することができる。
【特許文献1】特開平7−100378号公報
【特許文献2】特開平10−195341号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献2に示された光触媒塗料を用いて塗膜を形成することにより、従来の光触媒薄膜と比べて高い透明性、光触媒活性、膜強度に優れた塗膜が得られるが、光触媒の用途の拡大とともに、より高い透明性を有する塗膜を形成し得る光触媒塗料の開発が要望されている。
【0005】
一方、酸化チタン粉末の用途として、酸化チタンが有する光触媒機能を利用した有機物や有害物質の分解や、酸化チタンが有する親水性機能を利用した塗布表面の防汚又は防曇等に効果があることが知られている。近年、住宅の高気密化が進み、建材や壁紙等の内装材から放出された化学物質により室内の空気が汚染され、居住者がシックハウス症候群(化学物質過敏症)を発症するケースが多発しており、このような有害化学物質を分解することにも酸化チタンの光触媒機能を利用することができる。また、掃除がこまめにできないような場所に酸化チタンを塗布することでセルフクリーニング効果により防汚効果を賦与することができる。しかし、これまでに開発された従来の光触媒膜は、光触媒効果は高いが透明性が低いものや、膜硬度が低いため、傷が付いたり、えぐれてしまう等の不具合を生じていた。
【0006】
本発明の目的は、膜硬度及び光触媒活性に優れた光触媒塗料及び該塗料を用いた光触媒膜の製造方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、膜の吸着作用が高い光触媒塗料及び該塗料を用いた光触媒膜の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、酸化チタン粉末、バインダ及び有機溶剤をそれぞれ含む光触媒塗料の改良であり、その特徴ある構成は、添加剤としてメタクリル酸エステルモノマーを更に含むところにある。
請求項1に係る発明では、光触媒塗料に添加剤としてメタクリル酸エステルモノマーを含むことで、この塗料を塗布した基板を焼成した際に、添加剤であるメタクリル酸エステルが塗膜内から焼飛んで、この焼飛んだ箇所が膜中に膜表層に連通する連通孔(ポア)として形成される。その結果、通常の光触媒塗料を塗布焼成した光触媒膜に比べて、膜の下側に埋もれて有機物の分解等に寄与していなかった酸化チタンも有機物の分解に利用することができるため、膜の表面積が大幅に増大し、優れた光触媒活性が得られる。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明であって、酸化チタン粉末がルチル型結晶構造及びアナターゼ型結晶構造をそれぞれ含む光触媒塗料である。
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明であって、アナターゼ型結晶の(101)面の回折ピーク半値幅から求めた(101)面の面間隔d値が3.450Å〜3.562Åの範囲を満たす光触媒塗料である。
請求項3に係る発明では、このような物性を有する酸化チタン粉末を塗料中に分散することにより、硬度及び分解性能に優れた光触媒塗料が得られる。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項1に係る発明であって、メタクリル酸エステルモノマーの含有割合が塗料100重量%に対して1〜30重量%である光触媒塗料である。
請求項5に係る発明は、請求項1ないし4いずれか1項に係る発明であって、多孔質物質を更に含有する光触媒塗料である。
請求項5に係る発明では、光触媒塗料に多孔質物質を更に含有することで、膜の吸着作用が高い光触媒膜が得られる。
【0010】
請求項6に係る発明は、請求項5に係る発明であって、多孔質物質の含有割合が塗料100重量%に対して1〜50重量%である光触媒塗料である。
請求項7に係る発明は、請求項5又は6に係る発明であって、多孔質物質が粘土鉱物、ゼオライト、アパタイト又はケイ酸カルシウムである光触媒塗料である。
【0011】
請求項8に係る発明は、請求項1ないし7いずれか1項に記載の光触媒塗料を基材に塗布する工程と、塗料を塗布した基材を20℃〜50℃で仮焼成する工程と、仮焼成した基材を塗料に含まれる添加剤の沸点以上基材の融点以下で本焼成する工程とを含むことを特徴とする光触媒膜の製造方法である。
請求項9に係る発明は、基材を20℃〜50℃で仮焼成する工程と、請求項1ないし7いずれか1項に記載の光触媒塗料を仮焼成した基材に塗布する工程と、塗料を塗布した基材を塗料に含まれる添加剤の沸点以上基材の融点以下で本焼成する工程とを含むことを特徴とする光触媒膜の製造方法である。
請求項8又は9に係る発明では、上記工程を経ることで、膜硬度及び光触媒活性に優れた光触媒膜を製造することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光触媒塗料は、添加剤としてメタクリル酸エステルモノマーを含むことで、この塗料を塗布した基板を焼成した際に、添加剤であるメタクリル酸エステルが塗膜内から焼飛んで、この焼飛んだ箇所が膜中に膜表層に連通する連通孔(ポア)として形成される。その結果、通常の光触媒塗料を塗布焼成した膜に比べて、膜の下側に埋もれて有機物の分解等に寄与していなかった酸化チタンも有機物の分解に利用することができるため、膜の表面積が大幅に増大し、優れた光触媒活性が得られる。また、本発明の光触媒塗料は、酸化チタン粉末がルチル型結晶構造及びアナターゼ型結晶構造をそれぞれ含み、アナターゼ型結晶の(101)面の回折ピーク半値幅から求めた(101)面の面間隔d値が3.450Å〜3.562Åの範囲を満たす光触媒塗料である。このような物性を有する酸化チタン粉末を塗料中に分散することにより、透明性、硬度及び分解性能に優れた光触媒塗料が得られる。また、本発明の光触媒塗料は、多孔質物質を更に含有することで、膜の吸着作用が高い光触媒膜が得られる。
本発明の光触媒膜の製造方法は、前述した本発明の光触媒塗料を基材に塗布し、塗料を塗布した基材を仮焼成した後に、この仮焼成した基材を塗料に含まれる添加剤の沸点以上基材の融点以下で本焼成するか、基材を仮焼成した後に、前述した本発明の光触媒塗料を仮焼成した基材に塗布し、塗料を塗布した基材を塗料に含まれる添加剤の沸点以上基材の融点以下で本焼成することで、膜硬度及び光触媒活性に優れた光触媒膜を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に本発明を実施するための最良の形態を説明する。
本発明の光触媒塗料は、酸化チタン粉末、バインダ及び有機溶剤をそれぞれ含む光触媒塗料の改良であり、その特徴ある構成は、添加剤としてメタクリル酸エステルモノマーを更に含むところにある。光触媒塗料に添加剤としてメタクリル酸エステルモノマーを含むことで、この塗料を塗布した基板を焼成した際に、添加剤であるメタクリル酸エステルが塗膜内から焼飛んで、この焼飛んだ箇所が膜中に膜表層に連通する連通孔(ポア)として形成される。その結果、通常の光触媒塗料を塗布焼成した膜に比べて、従来膜の下側に埋もれて有機物の分解等に寄与していなかった酸化チタンも有機物の分解に利用することができるため、膜の表面積が大幅に増大し、優れた光触媒活性が得られる。
【0014】
本発明の光触媒塗料で添加剤として添加されるメタクリル酸エステルモノマーを例示すると、メタクリル酸メチルモノマー、メタクリル酸エチルモノマー、メタクリル酸ノルマルブチルモノマー、メタクリル酸セカンダリーブチルモノマー、メタクリル酸ターシャリーブチルモノマー、メタクリル酸イソブチルモノマー、メタクリル酸アリルモノマー、フェニルメタクリレートモノマー、ベンジルメタクリレートモノマー等が挙げられる。
本発明で添加剤として使用されるメタクリル酸エステルモノマーの沸点を次の表1にそれぞれ示す。
【0015】
【表1】

【0016】
本発明の酸化チタン粉末はルチル型結晶構造及びアナターゼ型結晶構造をそれぞれ含むことが好ましい。この場合、酸化チタン粉末が次の式(1)で示されるアナターゼ含有量を70%〜95%の割合で満たすように構成されることが好適である。
アナターゼ含有量(%)=100/(1+1.265×IR/IA) …(1)
上記式(1)においてIRはルチル型強度、IAはアナターゼ型強度である。酸化チタン粉末をX線回折により測定し、2θが24.0deg〜26.5degの間に存在するアナターゼ型を示す(101)面の回折ピークの強度と2θが27.0deg〜28.0degの間に存在するルチル型を示す(110)面の回折ピークの強度を求め、これらの測定値を上記式(1)に当てはめたとき、アナターゼ含有量が70%〜95%の割合を満たすように構成される。アナターゼ含有量は75%〜85%が特に好ましい。アナターゼ含有量が下限値未満であると触媒活性が低下する不具合を生じ、上限値を越えた酸化チタン粉末は気相法では製造が困難である。
【0017】
また、このアナターゼ型結晶の(101)面の回折ピーク半値幅から求めた(101)面の面間隔d値が3.450Å〜3.562Åの範囲を満たすと、硬度及び分解性能に優れた塗膜を形成することができる。具体的には塗料に含ませる酸化チタン粉末をX線回折により測定し、2θが24.0deg〜26.5degの間に存在する(101)面の回折ピークの半値幅から、次の式(2)に示されるブラッグの法則式を用いて結晶格子の面間隔d値を求める。ここでλはX線の波長、nは定数である。
2dsinθ=nλ ……(2)
上記式(2)から求めた面間隔d値が3.450Å〜3.562Åの範囲を満たす酸化チタン粉末を塗料中に分散することにより、硬度及び分解性能に優れた光触媒塗料が得られる。(101)面の面間隔d値は下限値が3.450Å〜3.504Å、上限値が3.531Å〜3.562Åの範囲を満たすことが好ましい。またルチル型結晶の(110)面の面間隔d値は下限値が3.200Å〜3.243Å、上限値が3.255Å〜3.280Åの範囲を満たすことが好ましい。
【0018】
本発明の光触媒塗料における添加剤であるメタクリル酸エステルモノマーの含有割合は、塗料100重量%に対して1〜30重量%が好ましい。塗料100重量%に対して1重量%未満であると、添加剤を混合した効果が得られず、30重量%を越えると、光触媒塗料を塗布した後に焼成して得られる光触媒膜に形成される連通孔が多くなりすぎてしまい、膜の強度が低下する不具合を生じる。また、光触媒塗料を塗布した後に焼成したとしても、塗料中に含まれるメタクリル酸エステルモノマーの一部が膜中に残留してしまい、光触媒活性が低下してしまうおそれがある。添加剤であるメタクリル酸エステルモノマーの含有割合は、塗料100重量%に対して8.0〜30重量%が特に好ましい。
【0019】
本発明の光触媒塗料に含まれるバインダとしては、ポリエステル系、酢酸ビニル系、ポリウレタン系、メラミン系、尿素系、アルキド系、アクリル系及びフェノール系からなる群より選ばれた非水系バインダ、酢酸ビニルエマルジョン、アクリルエマルジョン、ポリオレフィン系エマルジョン及びシリカゾルからなる群より選ばれた水系バインダ、セルロース誘導体及びポリビニルアルコールからなる群より選ばれた水溶性バインダが挙げられる。バインダとしてシリカゾルを用いた場合、シリカゾルにはアルキルシリケートの加水分解物又は部分加水分解物が使用される。シリカゾルを用いることにより、シリカゾルの均一混合作用により透明度を低下させることがなく、充分な触媒活性を得ることが出来、更にシリカゾルの作用で基材との密着性が一層向上する。
【0020】
本発明の光触媒塗料に含まれる有機溶剤としては、混合アルコール、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコールが挙げられる。混合アルコールには、メチルアルコールとエチルアルコールからなる混合液が好適である。この混合アルコールの含有割合はメチルアルコールが4〜15重量%、エチルアルコールが96〜85重量%である。メチルアルコールの含有割合が4重量%未満の場合、極めて透明な光触媒薄膜が得られず、15重量%を越えても更なる効果は得られない。光触媒塗料に含まれる溶媒の量は、塗布に適した粘度が得られればよく、特に制限されない。
【0021】
また、本発明の光触媒塗料には分散剤を更に含ませてもよい。分散剤としてはポリリン酸、ケイ酸又はポリアクリル酸のナトリウム塩、シランカップリング剤、アルミキレート、アルキルチタネート系材料、β-ジケトン類からなる群より選ばれた1種類以上の材料が挙げられる。分散剤としてβ-ジケトンを用いた場合、β-ジケトンの含有量は酸化チタン粉末に対して0.5〜10重量%である。このβ-ジケトンは、極性官能基(ケトン基)が、酸化チタン粉末及び基材表面に存在する極性基(水酸基や酸素基)に作用して、焼付け中に縮合することにより、酸化チタン粉末の最密充填が起こり、粉末間及び粉末-基板間を結合させ膜形成剤として作用し密着性を上げるのではないかと考えられる。
β-ジケトンとしては、2,4-ペンタンジオン、3-メチル-2,4-ペンタンジオン、3-イソプロピル-2,4-ペンタンジオン、2,2-ジメチル-3,5-ヘキサンジオン等が挙げられる。β-ジケトンの含有量は、酸化チタン粉末に対して1.0〜5.0重量%の割合で含有させることが好ましい。β-ジケトンの含有量が0.5重量%未満では、十分な分散性が得られず、10.0重量%を越えても更なる分散性の向上にはならない。
【0022】
また、本発明の光触媒塗料中にチタネート系カップリング剤を更に含むことが好ましい。カップリング剤は低ヘイズ化剤として作用する。カップリング剤を添加することにより、膜構造に二次凝集群を形成せず、均一な最密充填化と表面の平滑精度がより一層高められるためにヘイズが低下(透明性が向上する)すると推測される。
カップリング剤としては、下記化学式(1)〜化学式(5)に示されるようなジアルキルパイロホスフェート基やジアルキルホスファイト基を含有するチタネート系カップリング剤等が挙げられ、1種又は2種以上を使用することができる。
【0023】
【化1】

【0024】
【化2】

【0025】
【化3】

【0026】
【化4】

【0027】
【化5】

【0028】
チタネート系カップリング剤は酸化チタン粉末に対して0.1〜5重量%の割合で含有させる。0.5〜2.0重量%の割合で含有させることが好ましい。カップリング剤の含有量が0.1重量%未満では分散性及びヘイズ低下の効果が得られず、5.0重量%を越えても更なるヘイズ低下や分散性の向上にはならない。
【0029】
また、本発明の光触媒塗料は、多孔質物質を更に含有することが好ましい。光触媒塗料に多孔質物質を更に含有することで、膜の吸着作用が高い光触媒膜が得られる。また、多孔質物質の含有割合を変動させるによって所望の膜硬度を得ることができるため、本発明の光触媒塗料で得られる光触媒膜は様々な用途に適応することができる。多孔質物質の含有割合は塗料100重量%に対して1〜50重量%が好ましい。塗料100重量%に対して1重量%未満であると、多孔質物質を混合する効果が得られず、50重量%を越えると、膜硬度が低下する不具合を生じる。多孔質物質の含有割合は、塗料100重量%に対して12〜30重量%が特に好ましい。多孔質物質としては粘土鉱物、ゼオライト、アパタイト、ケイ酸カルシウムが挙げられる。
【0030】
次に、本発明の第1の光触媒膜の製造方法を説明する。
先ず、前述した本発明の光触媒塗料を基材に塗布する。塗布方法としては、スピンコート法、ディッピング法、スプレー法等により施すことができるが、特に塗布方法は限定されない。本発明の基材に使用される材質には、ガラス、プラスチック、金属、木材、タイルを含むセラミック、セメント、コンクリート、石、繊維、紙及び皮革からなる群より選ばれる。ガラスとしては、蛍光灯、窓等の室内環境浄化(汚染物質分解)ガラス、水槽、生け簀等の水質浄化ガラス、車の防曇ガラス、CRT(ブラウン管ディスプレイ)、LCD(液晶ディスプレイ)、PDP(プラズマディスプレイパネル)画面、窓、鏡、眼鏡等の防汚ガラス、カメラ、光学機器の防汚、防黴レンズ等がある。プラスチックとしては、AV機器、コンピューター、マウス、キーボード、リモコン、フロッピーディスク、等の機器及びその周辺製品、車の内装品、家具、キッチン、風呂、洗面所等で使用する家庭用品等の使用する防汚、抗菌、防黴プラスチック等がある。金属としては、物干し台、物干し竿、キッチン、実験室等の作業台や洗い場、換気扇等に使用する防汚、抗菌、防黴ステンレス、防汚、抗菌処理ドアノブ等がある。木材の用途としては、防汚家具、公園の抗菌遊技施設等がある。タイルを含むセラミック、セメント、コンクリート、石等の建材としては、防汚処理した外壁材、屋根、床材等、室内環境浄化(汚染物質分解)性を持つ内壁材、防汚、抗菌、防黴処理した各種内装品等がある。紙としては、抗菌処理文房具等に使用できる。フィルム等の繊維としては、食品包装用透明抗菌フィルム、野菜保存用透明エチレンガス分解フィルム、環境、水質浄化用フィルム等がある。このように各種基材は、防汚、環境浄化、抗菌、防黴の効果を有するので、太陽光や蛍光灯等から発せられる紫外線の照射が可能な条件であれば、例示した以外でも多くの用途に使用することができる。無機質の下地層としてはシリカ、アルミナ等が挙げられる。本発明のコーティング材により表面被覆を行った石材加工品、壁材又は硝子は硬度に優れるとともに高い分解性能を示す。
【0031】
本発明の光触媒塗膜を形成可能な基材として、車両、車両用及び道路用ミラー、車両用ガラス、車両用照明灯とそのカバー、レンズ、照明用蛍光灯とそのカバー、ガラス、トンネル用内装材及び照明灯とそのカバー、プラスチックフィルム及びシート、プラスチック成形体、各種建材、内装材及び建物付属物、食器、換気扇、眼鏡、鏡、天然及び合成繊維及び布帛、紙、ブラウン管、カバーガラス、ゴーグル、マスクシールド、標識、看板、金属板、家電製品のハウジング、燒結金属フィルター、ガードレール、ビニールハウス、調理レンジとそのフード、流し台、衛生器具、浴槽、家具、屋外照明用固定材、室内もしくは屋外展示物と表示物、屋外用家具と遊具、屋外固定構造物、石材加工品等が挙げられる。
【0032】
次に、本発明の光触媒塗料を塗布した基材を20℃〜50℃で仮焼成する。この仮焼成工程を施さないと、添加剤と有機溶剤が同時に蒸発してしまい、塗膜にポアを形成することができない。続いて、仮焼成した基材を塗料に含まれる添加剤の沸点以上基材の融点以下で本焼成する。本焼成の温度が添加剤の沸点未満では、添加剤が十分に焼飛ばないため、形成される光触媒膜に残留してしまう不具合を生じ、本焼成の温度が基材の融点を越えると、光触媒膜は形成されるが、成型加工した基材の形状を保持することができないため好ましくない。この本焼成を施すことで、光触媒膜が形成されるとともに、添加剤であるメタクリル酸エステルが塗膜表層から焼飛んで、この焼飛んだ箇所が膜中に膜表層に連通する連通孔(ポア)として形成される。形成された連通孔により、膜の下側に埋もれて有機物の分解等に寄与していなかった酸化チタンも有機物の分解に利用することができるため、膜の表面積が大幅に増大する。このように上記工程を経ることで、膜硬度及び光触媒活性に優れた光触媒膜を製造することができる。
【0033】
また、本発明の第2の光触媒膜の製造方法では、先ず、基材を20℃〜50℃で仮焼成する。次に、前述した本発明の光触媒塗料を仮焼成した基材に塗布する。この後に続く工程は、前述した本発明の第1の光触媒膜の製造方法と同様である。
【実施例】
【0034】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
<実施例1>
市販されている酸化チタンコーティング剤(商品名:ST−K211;石原産業社製)を用意した。このST−K211の上記式(1)におけるアナターゼ含有量は77%、アナターゼ型結晶の(101)面の回折ピーク半値幅から求めた(101)面の面間隔d値は、3.358〜3.598Åであった。この酸化チタンコーティング剤に添加剤としてメタクリル酸アリルモノマーを2重量部添加し、よく混合して塗布液を調製した。調製した塗布液をスピンコーターでガラス基板に塗布し、40℃で1.5時間仮焼成し、続いて180℃で0.5時間本焼成することにより、ガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<実施例2>
添加剤であるメタクリル酸アリルモノマーの混合割合を10重量部とし、ガラス基板を150℃で0.5時間本焼成した以外は実施例1と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<実施例3>
添加剤であるメタクリル酸アリルモノマーの混合割合を20重量部とし、ガラス基板を175℃で0.5時間本焼成した以外は実施例1と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
【0035】
<比較例1>
添加剤であるメタクリル酸アリルモノマーを添加混合しない以外は実施例1と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<比較例2>
添加剤としてメタクリル酸アリルモノマーの代わりにメタクリル酸アリルポリマーを20重量部添加した以外は実施例1と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
【0036】
<比較試験1>
実施例1〜3及び比較例1,2で得られた光触媒膜形成物について、光触媒膜の鉛筆硬度及び光触媒活性をそれぞれ測定した。なお、光触媒活性は、以下に示す手順により求めた除去率を光触媒活性の指標とした。先ず、光触媒薄膜を塗布したガラス基板を1Lのガラス(パイレックス)製容器に入れて密閉した。次いで容器内に350ppm(初期濃度)のアセトアルデヒドを導入した。次に、容器を照射量1.2mW/cm2の紫外線ランプで1時間照射した。照射後の容器内部のアセトアルデヒド濃度をガス検知管(ガステック社製)で測定し、下記に示す式に基づいて除去率を求めた。
除去率[%]=[(初期濃度−光照射後の濃度)÷初期濃度]×100
実施例1〜3及び比較例1,2で得られた光触媒膜形成物について測定した結果を表2にそれぞれ示す。
【0037】
【表2】

【0038】
表2より明らかなように、光触媒塗料に添加剤が含まれていない比較例1で形成した光触媒膜、光触媒塗料にポリマーが含まれた比較例2で形成した光触媒膜は、光触媒活性の指標としたアセトアルデヒド除去率が低い結果となった。これに対して、本発明の光触媒塗料を用いた実施例1〜3で形成した光触媒膜は、比較例1及び2で形成した光触媒膜に比べてアセトアルデヒド除去率が高い結果が得られた。
【0039】
<実施例4>
有機溶媒に4.7重量%のメチルアルコールと95.3重量%のエチルアルコールの混合アルコール200g、β-ジケトンに2,4-ペンタンジオン0.25g、上記化学式(1)に示されるチタネート系カップリング剤0.25g、酸化チタン粉末10gを混合し、ジルコニアビーズ100gにより16時間ペイントシェーカーにて分散させた。この分散液に10重量%のシリカゾル溶液11gを混合し、酸化チタンアルコール分散液を調製した。使用した酸化チタン粉末の上記式(1)におけるアナターゼ含有量は100%、アナターゼ型結晶の(101)面の回折ピーク半値幅から求めた(101)面の面間隔d値は、3.456〜3.537Åであった。この酸化チタンアルコール分散液に添加剤としてフェニルメタクリレートモノマーを1.5重量部添加し、よく混合して本発明の光触媒塗料を調製した。この光触媒塗料をスピンコーターでガラス基板に塗布し、30℃で6時間仮焼成した。続いて300℃で0.75時間本焼成することにより、ガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<実施例5>
添加剤であるフェニルメタクリレートモノマーの混合割合を8重量部とし、ガラス基板を25℃で2.5時間仮焼成し、続いてガラス基板を220℃で1時間本焼成した以外は実施例4と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<実施例6>
添加剤であるフェニルメタクリレートモノマーの混合割合を15重量部とし、ガラス基板を40℃で1.5時間仮焼成し、続いてガラス基板を235℃で0.75時間本焼成した以外は実施例4と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
【0040】
<実施例7>
酸化チタンアルコール分散液に添加剤としてベンジルメタクリレートモノマーを1重量部添加し、ガラス基板を50℃で1時間仮焼成し、続いてガラス基板を350℃で0.5時間本焼成した以外は実施例4と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<実施例8>
添加剤であるベンジルメタクリレートモノマーの混合割合を5重量部とし、ガラス基板を50℃で0.5時間仮焼成し、続いてガラス基板を270℃で0.5時間本焼成した以外は実施例7と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<実施例9>
添加剤であるベンジルメタクリレートモノマーの混合割合を18重量部とし、ガラス基板を25℃で3時間仮焼成し、続いてガラス基板を250℃で1時間本焼成した以外は実施例7と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
【0041】
<実施例10>
酸化チタンアルコール分散液に添加剤としてメタクリル酸イソブチルモノマーを3重量部添加し、ガラス基板を40℃で5時間仮焼成し、続いてガラス基板を160℃で0.5時間本焼成した以外は実施例4と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<実施例11>
添加剤であるメタクリル酸イソブチルモノマーの混合割合を12重量部とし、ガラス基板を30℃で2時間仮焼成し、続いてガラス基板を230℃で1時間本焼成した以外は実施例10と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<実施例12>
添加剤であるメタクリル酸イソブチルモノマーの混合割合を19重量部とし、ガラス基板を30℃で1.5時間仮焼成し、続いてガラス基板を180℃で1時間本焼成した以外は実施例10と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
【0042】
<実施例13>
酸化チタンアルコール分散液に添加剤としてメタクリル酸ターシャリーブチルモノマーを4重量部添加し、ガラス基板を40℃で1.5時間仮焼成し、続いてガラス基板を145℃で0.5時間本焼成した以外は実施例4と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<実施例14>
添加剤であるメタクリル酸ターシャリーブチルモノマーの混合割合を8重量部とし、ガラス基板を50℃で1時間仮焼成し、続いてガラス基板を150℃で0.5時間本焼成した以外は実施例13と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<実施例15>
添加剤であるメタクリル酸ターシャリーブチルモノマーの混合割合を14重量部とし、ガラス基板を25℃で5時間仮焼成し、続いてガラス基板を135℃で0.75時間本焼成した以外は実施例13と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
【0043】
<実施例16>
酸化チタンアルコール分散液に添加剤としてメタクリル酸セカンダリーブチルモノマーを6重量部添加し、ガラス基板を40℃で1時間仮焼成し、続いてガラス基板を150℃で1時間本焼成した以外は実施例4と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<実施例17>
添加剤であるメタクリル酸セカンダリーブチルモノマーの混合割合を13重量部とし、ガラス基板を50℃で1時間仮焼成し、続いてガラス基板を165℃で0.5時間本焼成した以外は実施例16と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<実施例18>
添加剤であるメタクリル酸セカンダリーブチルモノマーの混合割合を17重量部とし、ガラス基板を35℃で1.5時間仮焼成し、続いてガラス基板を140℃で1時間本焼成した以外は実施例16と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
【0044】
<実施例19>
酸化チタンアルコール分散液に添加剤としてメタクリル酸ノルマルブチルモノマーを5重量部添加し、ガラス基板を40℃で1時間仮焼成し、続いてガラス基板を200℃で0.5時間本焼成した以外は実施例4と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<実施例20>
添加剤であるメタクリル酸ノルマルブチルモノマーの混合割合を8重量部とし、ガラス基板を50℃で1時間仮焼成し、続いてガラス基板を170℃で1時間本焼成した以外は実施例19と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<実施例21>
添加剤であるメタクリル酸ノルマルブチルモノマーの混合割合を20重量部とし、ガラス基板を30℃で3時間仮焼成し、続いてガラス基板を185℃で0.75時間本焼成した以外は実施例19と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
【0045】
<実施例22>
酸化チタンアルコール分散液に添加剤としてメタクリル酸エチルモノマーを6重量部添加し、ガラス基板を35℃で1.5時間仮焼成し、続いてガラス基板を140℃で1時間本焼成した以外は実施例4と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<実施例23>
添加剤であるメタクリル酸エチルモノマーの混合割合を9重量部とし、ガラス基板を40℃で1時間仮焼成し、続いてガラス基板を120℃で1時間本焼成した以外は実施例22と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<実施例24>
添加剤であるメタクリル酸ノルマルブチルモノマーの混合割合を12重量部とし、ガラス基板を50℃で1時間仮焼成し、続いてガラス基板を160℃で0.5時間本焼成した以外は実施例22と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
【0046】
<実施例25>
酸化チタンアルコール分散液に添加剤としてメタクリル酸メチルモノマーを7重量部添加し、ガラス基板を50℃で1時間仮焼成し、続いてガラス基板を125℃で0.5時間本焼成した以外は実施例4と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<実施例26>
添加剤であるメタクリル酸メチルモノマーの混合割合を11重量部とし、ガラス基板を40℃で1時間仮焼成し、続いてガラス基板を200℃で0.5時間本焼成した以外は実施例25と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<実施例27>
添加剤であるメタクリル酸メチルモノマーの混合割合を16重量部とし、ガラス基板を50℃で0.5時間仮焼成し、続いてガラス基板を145℃で1時間本焼成した以外は実施例25と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
【0047】
<比較例3>
添加剤を添加混合しない以外は実施例4と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<比較例4>
添加剤としてフェニルメタクリレートモノマーの代わりにフェニルメタクリレートポリマーを8重量部添加した以外は実施例4と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<比較例5>
添加剤としてベンジルメタクリレートモノマーの代わりにベンジルメタクリレートポリマーを5重量部添加した以外は実施例7と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<比較例6>
添加剤としてメタクリル酸イソブチルモノマーの代わりにメタクリル酸イソブチルポリマーを12重量部添加した以外は実施例10と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<比較例7>
添加剤としてメタクリル酸t-ブチルモノマーの代わりにメタクリル酸t-ブチルポリマーを8重量部添加した以外は実施例13と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<比較例8>
添加剤としてメタクリル酸sec-ブチルモノマーの代わりにメタクリル酸sec-ブチルポリマーを13重量部添加した以外は実施例16と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<比較例9>
添加剤としてメタクリル酸n-ブチルモノマーの代わりにメタクリル酸n-ブチルポリマーを8重量部添加した以外は実施例19と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<比較例10>
添加剤としてメタクリル酸エチルモノマーの代わりにメタクリル酸エチルポリマーを9重量部添加した以外は実施例22と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<比較例11>
添加剤としてメタクリル酸メチルモノマーの代わりにメタクリル酸メチルポリマーを11重量部添加した以外は実施例25と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
【0048】
<実施例28>
多孔質物質であるバーミキュライトを1重量部添加して光触媒塗料を調製した以外は実施例4と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<実施例29>
多孔質物質であるバーミキュライトの混合割合を16重量部とした以外は実施例28と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<実施例30>
多孔質物質であるバーミキュライトの混合割合を42重量部とした以外は実施例28と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
【0049】
<実施例31>
多孔質物質であるカオリナイトを2重量部添加して光触媒塗料を調製した以外は実施例8と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<実施例32>
多孔質物質であるカオリナイトの混合割合を20重量部とした以外は実施例31と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<実施例33>
多孔質物質であるカオリナイトの混合割合を50重量部とした以外は実施例31と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
【0050】
<実施例34>
多孔質物質であるスメクタイトを5重量部添加して光触媒塗料を調製した以外は実施例10と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<実施例35>
多孔質物質であるスメクタイトの混合割合を13重量部とした以外は実施例34と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<実施例36>
多孔質物質であるスメクタイトの混合割合を40重量部とした以外は実施例34と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
【0051】
<実施例37>
多孔質物質であるタルクを6重量部添加して光触媒塗料を調製した以外は実施例14と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<実施例38>
多孔質物質であるタルクの混合割合を30重量部とした以外は実施例37と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<実施例39>
多孔質物質であるタルクの混合割合を45重量部とした以外は実施例37と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
【0052】
<実施例40>
多孔質物質であるゼオライトを4重量部添加して光触媒塗料を調製した以外は実施例16と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<実施例41>
多孔質物質であるゼオライトの混合割合を16重量部とした以外は実施例40と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<実施例42>
多孔質物質であるゼオライトの混合割合を33重量部とした以外は実施例40と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
【0053】
<実施例43>
多孔質物質であるアパタイトを3重量部添加して光触媒塗料を調製した以外は実施例22と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<実施例44>
多孔質物質であるアパタイトの混合割合を12重量部とした以外は実施例43と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<実施例45>
多孔質物質であるアパタイトの混合割合を36重量部とした以外は実施例43と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
【0054】
<実施例46>
多孔質物質であるケイ酸カルシウムを6重量部添加して光触媒塗料を調製した以外は実施例25と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<実施例47>
多孔質物質であるケイ酸カルシウムの混合割合を17重量部とした以外は実施例46と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<実施例48>
多孔質物質であるケイ酸カルシウムの混合割合を45重量部とした以外は実施例46と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
【0055】
<比較試験2>
実施例4〜48及び比較例3〜11で得られた光触媒膜形成物について、光触媒膜の鉛筆硬度及び光触媒活性をそれぞれ測定した。なお、光触媒活性は、以下に示す手順により求めた除去率を光触媒活性の指標とした。先ず、光触媒薄膜を塗布したガラス基板を1Lのガラス(パイレックス)製容器に入れて密閉した。次いで容器内に350ppm(初期濃度)のアセトアルデヒドを導入した。次に、容器を照射量1.2mW/cm2の紫外線ランプで1時間照射した。照射後の容器内部のアセトアルデヒド濃度をガス検知管(ガステック社製)で測定し、下記に示す式に基づいて除去率を求めた。
除去率[%]=[(初期濃度−光照射後の濃度)÷初期濃度]×100
実施例4〜48及び比較例3〜11で得られた光触媒膜形成物について測定した結果を表3〜表5にそれぞれ示す。
【0056】
【表3】

【0057】
【表4】

【0058】
【表5】

【0059】
表3〜表5より明らかなように、光触媒塗料に添加剤が含まれていない比較例3で形成した光触媒膜、光触媒塗料にポリマーが含まれた比較例4〜11で形成した光触媒膜は、光触媒活性の指標としたアセトアルデヒド除去率が低い結果となった。これに対して、本発明の光触媒塗料を用いた実施例4〜48で形成した光触媒膜は、アセトアルデヒド除去率が100%と優れた光触媒活性効果が得られた。また、添加剤を焼飛ばすことにより、形成した光触媒膜表層に連通する連通孔を形成したにもかかわらず、本発明の実施例1〜27で形成した光触媒膜は、従来の光触媒膜と同様の鉛筆硬度を有しており、実用上十分な膜硬度を有していることが判った。更に、本発明の実施例28〜48で形成した光触媒膜は、多孔質物質の含有割合を変動させることによって様々な硬さの膜が得られていることが判る。このような本発明の光触媒塗料で得られる光触媒膜は様々な用途に適応することができる。
【0060】
<実施例49〜51>
上記式(1)におけるアナターゼ含有量が65%、アナターゼ型結晶の(101)面の回折ピーク半値幅から求めた(101)面の面間隔d値が3.480〜3.549Åである酸化チタン粉末を使用した以外は実施例7〜9と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<実施例52〜54>
上記式(1)におけるアナターゼ含有量が0%である酸化チタン粉末を使用した以外は実施例10〜12と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。なお、アナターゼ型結晶の(101)面の回折ピーク半値幅から求めた(101)面の面間隔d値はアナターゼ型結晶が含まれていないため、測定不能であった。
<実施例55〜57>
上記式(1)におけるアナターゼ含有量が72%、アナターゼ型結晶の(101)面の回折ピーク半値幅から求めた(101)面の面間隔d値が3.450〜3.546Åである酸化チタン粉末を使用した以外は実施例13〜15と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<実施例58〜60>
上記式(1)におけるアナターゼ含有量が85%、アナターゼ型結晶の(101)面の回折ピーク半値幅から求めた(101)面の面間隔d値が3.460〜3.554Åである酸化チタン粉末を使用した以外は実施例16〜18と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<実施例61〜63>
上記式(1)におけるアナターゼ含有量が92%、アナターゼ型結晶の(101)面の回折ピーク半値幅から求めた(101)面の面間隔d値が3.465〜3.599Åである酸化チタン粉末を使用した以外は実施例19〜21と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<実施例64〜66>
上記式(1)におけるアナターゼ含有量が82%、アナターゼ型結晶の(101)面の回折ピーク半値幅から求めた(101)面の面間隔d値が3.488〜3.562Åである酸化チタン粉末を使用した以外は実施例22〜24と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<実施例67〜69>
上記式(1)におけるアナターゼ含有量が76%、アナターゼ型結晶の(101)面の回折ピーク半値幅から求めた(101)面の面間隔d値が3.463〜3.552Åである酸化チタン粉末を使用した以外は実施例25〜27と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
【0061】
<実施例70〜72>
上記式(1)におけるアナターゼ含有量が65%、アナターゼ型結晶の(101)面の回折ピーク半値幅から求めた(101)面の面間隔d値が3.480〜3.549Åである酸化チタン粉末を使用した以外は実施例31〜33と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<実施例73〜75>
上記式(1)におけるアナターゼ含有量が0%である酸化チタン粉末を使用した以外は実施例34〜36と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。なお、アナターゼ型結晶の(101)面の回折ピーク半値幅から求めた(101)面の面間隔d値はアナターゼ型結晶が含まれていないため、測定不能であった。
<実施例76〜78>
上記式(1)におけるアナターゼ含有量が72%、アナターゼ型結晶の(101)面の回折ピーク半値幅から求めた(101)面の面間隔d値が3.450〜3.546Åである酸化チタン粉末を使用した以外は実施例37〜39と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<実施例79〜81>
上記式(1)におけるアナターゼ含有量が85%、アナターゼ型結晶の(101)面の回折ピーク半値幅から求めた(101)面の面間隔d値が3.460〜3.554Åである酸化チタン粉末を使用した以外は実施例40〜42と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<実施例82〜84>
上記式(1)におけるアナターゼ含有量が82%、アナターゼ型結晶の(101)面の回折ピーク半値幅から求めた(101)面の面間隔d値が3.488〜3.562Åである酸化チタン粉末を使用した以外は実施例43〜45と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<実施例85〜87>
上記式(1)におけるアナターゼ含有量が76%、アナターゼ型結晶の(101)面の回折ピーク半値幅から求めた(101)面の面間隔d値が3.463〜3.552Åである酸化チタン粉末を使用した以外は実施例46〜48と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
【0062】
<比較例12>
上記式(1)におけるアナターゼ含有量が76%、アナターゼ型結晶の(101)面の回折ピーク半値幅から求めた(101)面の面間隔d値が3.463〜3.552Åである酸化チタン粉末を使用した以外は比較例3と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<比較例13>
上記式(1)におけるアナターゼ含有量が82%、アナターゼ型結晶の(101)面の回折ピーク半値幅から求めた(101)面の面間隔d値が3.488〜3.562Åである酸化チタン粉末を使用した以外は比較例4と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<比較例14>
上記式(1)におけるアナターゼ含有量が72%、アナターゼ型結晶の(101)面の回折ピーク半値幅から求めた(101)面の面間隔d値が3.450〜3.546Åである酸化チタン粉末を使用した以外は比較例5と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<比較例15>
上記式(1)におけるアナターゼ含有量が85%、アナターゼ型結晶の(101)面の回折ピーク半値幅から求めた(101)面の面間隔d値が3.460〜3.554Åである酸化チタン粉末を使用した以外は比較例6と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<比較例16>
上記式(1)におけるアナターゼ含有量が76%、アナターゼ型結晶の(101)面の回折ピーク半値幅から求めた(101)面の面間隔d値が3.463〜3.552Åである酸化チタン粉末を使用した以外は比較例7と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<比較例17>
上記式(1)におけるアナターゼ含有量が85%、アナターゼ型結晶の(101)面の回折ピーク半値幅から求めた(101)面の面間隔d値が3.460〜3.554Åである酸化チタン粉末を使用した以外は比較例8と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<比較例18>
上記式(1)におけるアナターゼ含有量が72%、アナターゼ型結晶の(101)面の回折ピーク半値幅から求めた(101)面の面間隔d値が3.450〜3.546Åである酸化チタン粉末を使用した以外は比較例9と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<比較例19>
上記式(1)におけるアナターゼ含有量が76%、アナターゼ型結晶の(101)面の回折ピーク半値幅から求めた(101)面の面間隔d値が3.463〜3.552Åである酸化チタン粉末を使用した以外は比較例10と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
<比較例20>
上記式(1)におけるアナターゼ含有量が82%、アナターゼ型結晶の(101)面の回折ピーク半値幅から求めた(101)面の面間隔d値が3.488〜3.562Åである酸化チタン粉末を使用した以外は比較例11と同様にしてガラス基板上に光触媒膜を形成した。
【0063】
<比較試験3>
実施例49〜87及び比較例12〜20で得られた光触媒膜形成物について、光触媒膜の鉛筆硬度及び光触媒活性をそれぞれ測定した。なお、光触媒活性は、以下に示す手順により求めた除去率を光触媒活性の指標とした。先ず、光触媒薄膜を塗布したガラス基板を1Lのガラス(パイレックス)製容器に入れて密閉した。次いで容器内に350ppm(初期濃度)のアセトアルデヒドを導入した。次に、容器を照射量1.2mW/cm2の紫外線ランプで実施例49〜51、実施例55〜72、実施例76〜87及び比較例12〜20については45分間照射し、実施例52〜54及び実施例73〜75については1時間照射した。照射後の容器内部のアセトアルデヒド濃度をガス検知管(ガステック社製)で測定し、下記に示す式に基づいて除去率を求めた。
除去率[%]=[(初期濃度−光照射後の濃度)÷初期濃度]×100
実施例49〜87及び比較例12〜20で得られた光触媒膜形成物について測定した結果を表6〜表8にそれぞれ示す。
【0064】
【表6】

【0065】
【表7】

【0066】
【表8】

【0067】
表6〜表8より明らかなように、実施例49〜51、実施例55〜72、実施例76〜87で形成した光触媒膜は、ルチル型結晶構造及びアナターゼ型結晶構造をそれぞれ含み、かつアナターゼ型結晶の(101)面の回折ピーク半値幅から求めた(101)面の面間隔d値が3.450Å〜3.562Åの範囲を満たした酸化チタン粉末を用いているため、紫外線照射時間が45分間と短いにも係わらず、アセトアルデヒド除去率が100%と優れた光触媒活性効果が得られていた。また実施例52〜54及び実施例73〜75で形成した光触媒膜は、アナターゼが含まれていない酸化チタン粉末を用いた例であるが、1時間の紫外線照射で75〜90%と高い除去率が得られた。
また光触媒塗料に添加剤が含まれていない比較例12で形成した光触媒膜、光触媒塗料にポリマーが含まれた比較例13〜20で形成した光触媒膜は、ルチル型結晶構造及びアナターゼ型結晶構造をそれぞれ含み、アナターゼ型結晶の(101)面の回折ピーク半値幅から求めた(101)面の面間隔d値が3.450Å〜3.562Åの範囲を満たす酸化チタン粉末を用いているため、紫外線照射時間が45分間と短いにも係わらず、前述した比較例3〜11の結果と同等の分解性能が得られたが、未だ実用上十分とは言えない結果となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化チタン粉末、バインダ及び有機溶剤をそれぞれ含む光触媒塗料において、
添加剤としてメタクリル酸エステルモノマーを更に含むことを特徴とする光触媒塗料。
【請求項2】
酸化チタン粉末がルチル型結晶構造及びアナターゼ型結晶構造をそれぞれ含む請求項1記載の光触媒塗料。
【請求項3】
アナターゼ型結晶の(101)面の回折ピーク半値幅から求めた(101)面の面間隔d値が3.450Å〜3.562Åの範囲を満たす請求項1又は2記載の光触媒塗料。
【請求項4】
メタクリル酸エステルモノマーの含有割合が塗料100重量%に対して1〜30重量%である請求項1記載の光触媒塗料。
【請求項5】
多孔質物質を更に含有する請求項1ないし4いずれか1項に記載の光触媒塗料。
【請求項6】
多孔質物質の含有割合が塗料100重量%に対して1〜50重量%である請求項5記載の光触媒塗料。
【請求項7】
多孔質物質が粘土鉱物、ゼオライト、アパタイト又はケイ酸カルシウムである請求項5又は6記載の光触媒塗料。
【請求項8】
請求項1ないし7いずれか1項に記載の光触媒塗料を基材に塗布する工程と、
前記塗料を塗布した基材を20℃〜50℃で仮焼成する工程と、
前記仮焼成した基材を塗料に含まれる添加剤の沸点以上前記基材の融点以下で本焼成する工程と
を含むことを特徴とする光触媒膜の製造方法。
【請求項9】
基材を20℃〜50℃で仮焼成する工程と、
請求項1ないし7いずれか1項に記載の光触媒塗料を前記仮焼成した基材に塗布する工程と、
前記塗料を塗布した基材を塗料に含まれる添加剤の沸点以上前記基材の融点以下で本焼成する工程と
を含むことを特徴とする光触媒膜の製造方法。

【公開番号】特開2006−124684(P2006−124684A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−283621(P2005−283621)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
2.パイレックス
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】