説明

光触媒導入組成物及び光触媒導入方法

本発明は、酸又は塩基の存在下にて、基材に共有結合可能な基を有する活性物質と、光に曝露した際に酸又は塩基を生成可能な光触媒と、ビヒクルと、を含む、組成物を提供する。活性物質はシリコーンポリマー及び/又はシリコーンオリゴマーであり、1,000グラム/モルを超える分子量を有し、かつ少なくとも1つの有機官能基を有する。本組成物は、界面活性剤、乳化剤、酸化剤、及び他の成分を更に含んでよい。基材の処理方法もまた、開示されている。本明細書に記載される組成物及び方法は、パーソナルケア製品及び消費者ケア製品用途において有益である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
酸又は塩基の存在下にて基材に共有結合可能な官能基を有するシリコーンポリマー活性物質及び/又はオリゴマー活性物質と、光に曝露した際に酸又は塩基を生成可能な光触媒と、ビヒクルと、を含む、基材の表面特性の共有結合改質のための組成物及び方法。
【背景技術】
【0002】
材料は、バルク特性及び表面特性の観点から特徴付けられ得る。材料の全体的な特性は、かなりの部分が、材料の表面特性及びバルク特性によって制御される。材料の表面特性は、材料の界面化学及び表面構造によって大部分が制御される。材料のバルク特性は、材料のバルク化学及びバルク構造によって大部分が制御される。ある種の表面特性を生じさせるために、材料の界面化学及び/又は表面構造を改質することが望ましい場合がある。加えて、ある種のバルク特性を生じさせるために、材料のバルク化学及び/又はバルク構造を改質することが望ましい場合がある。
【0003】
毛髪及び皮膚は、表面及び/又はバルク改質の観点から特に関心深い生体物質である。毛髪及び皮膚は、様々な化学的及び物理的環境に曝される。例えば、多くの場合、日常的なヘアケア行為は、洗浄、ブロー乾燥、ブラッシング、染色、パーマ、ストレートパーマ、スタイリング、などのうち1つ以上を含む。これらの活動は、健康な毛髪を特徴付ける自然な光沢及び質感の損失をもたらし得る機械的及び化学的要因に毛髪を繰り返し曝す。更に、環境要因がこれらの影響に加わり、風雨に曝された又は傷んだ毛髪への実質的な一因となり得る。皮膚も、類似の機械的、化学的及び環境要因の結果としての表面損傷を受ける。毛髪及び皮膚の表面への急性損傷は、時間とともに蓄積され、慢性損傷をもたらし得る。
【0004】
毛髪は、繊維角皮表面膜(fiber cuticle surface membrane)(「FCSM」)によって、機械的、化学的、及び環境的に媒介される損傷から自然に保護される。FCSMは、毛髪繊維の最外表面層を構成し、タンパク質及び脂質成分を含む。FCSMは、本来なら毛髪損傷への実質的な一因となり得る機械的、化学的及び環境要因に対する、高度に耐久性のある疎水性の表面保護バリアとして機能する。FCSMは、高度に架橋したケラチンタンパク質の下層(外表皮と称されることもある)に共有結合した、表面脂質単層(F層と称されることもある)を含む。F層は、ケラチン内のシステイン残基及び外表皮内のその他のタンパク質上のチオール基と18−メチル−エイコサン酸(「18−MEA」)又はその他の脂肪酸上のカルボキシル基との間に形成されたチオエステル結合を介して外表皮に結合した18−MEAなどの脂肪酸を主として含む。F層は、毛髪繊維に疎水性表面を付与し、これにより、健康な毛髪の、輝く光沢、柔らかな質感及び滑らかさをある程度向上させる。
【0005】
皮膚は、角質層によって、機械的、化学的、及び環境的に媒介される損傷から自然に保護される。角質層は、表皮の最外層である。角質層は、ケラチン、脂肪酸及びセラミドを含む脂質の多い間質内に埋め込まれた脂質劣化角質細胞を含む。角質層の脂肪酸、セラミド及びその他の脂質成分は、F層が毛髪内の外表皮に共有結合しているのと同様の方法で、エステル及びチオエステル結合を介してタンパク質成分に共有結合していると考えられている。角質層は、経皮湿分の損失を防止し、経皮吸収を調節し、かつ表皮の下層を保護するための生理学的バリアを提供するように機能する。
【0006】
ミクロ構造が異なっているにもかかわらず、F層及び角質層は共に、それぞれ毛髪及び皮膚に対して、類似の保護機能を有する。しかしながら、機械的、化学的及び環境要因によって、F層及び角質層の少なくとも一部が損失することもあり得る。例えば、永久染毛中、過酸化水素、アンモニア及び高pHの組み合わせによって、保護用F層の少なくとも一部が除去され、下層の毛髪表面が更に酸化されることで、毛髪繊維に不可逆的な生理化学的変化が生じる場合がある。繰り返し染色することで、毛髪繊維表面からF層が完全に消失し得る。その結果、F層が失われた際に、ケラチン外表皮が表面に露出することから、以前は疎水性であった毛髪繊維表面も親水性となり得る。毛髪繊維表面の、天然の保護及び潤滑特性は、その結果として減少し、毛髪は、乾燥した、ざらざらした、縮れた感触となり得、ブラッシング及び/又は髪をほぐすことが困難となり、色がよりくすんで見え、色合いが低下し、より多くの静電気を持ち、かつ、その他の機械的、化学的及び環境要因による更なる損傷を大幅に受けやすくなる。
【0007】
角質層も同様に、機械的、化学的及び環境要因に起因する損傷を受けやすい。例えば、相対的に寒冷気候の冬期数ヶ月の間、低湿度、低温、及び強風により、例えば、発赤、皮癬及び/又は剥離を特徴とする乾燥症(乾燥肌)がもたらされ得る。損傷した皮膚は、実質的に更なる損傷を受けやすく、これにより急性の症状が慢性状態へと変化し得る。
【0008】
これらの物質の表面部分への損傷によって、物質の下層にあるバルク部分に損傷が生じ得る。これによって最終的には、大量の、かつ恐らくは修復不可能な損傷をこれらの物質にもたらし得る。種々の機械的、化学的及び環境要因が、(単独で又は総合的に)毛髪及び/又は皮膚の損傷をもたらし得る。例えば、太陽光への過度な曝露、プール用水中(及びより少ない程度で、地方自治体の供給によって提供される水中)の塩素への曝露、その他の形態の水質汚染への曝露、各種形態の大気汚染への曝露、毛髪繊維間の摩擦相互作用、並びに毛髪繊維又は皮膚とその他の表面との間の摩擦相互作用が、毛髪及び皮膚の損傷をもたらし得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、毛髪繊維及び皮膚からのそれぞれF層及び角質層の損失を補うための、耐久性があるコンディショニング及び保護効果を提供する組成物及び方法が必要とされている。痛んだ毛髪及び皮膚の表面特性の共有結合修飾は、このようなアプローチの一例である。これらの物質を保護、修復、及び/又は強化する必要もある。1つ以上の活性成分を反応させてその1つ以上の活性成分の間に共有結合を生成することによって、物質表面上に局所的に活性物質を形成させることによる物質表面の改質、及び類似の方法で物質のバルク内に活性物質を形成することによる物質のバルクの改質は、有望なアプローチである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
パーソナルケア組成物であって、酸又は塩基の存在下にて1つ以上の補完的な官能基に共有結合可能な1つ以上の官能基を有する活性物質と、光に曝露した際に酸又は塩基を生成可能な光触媒と、組成物を基材に塗布するために活性物質及び光触媒を分散又は溶解させるための生理学的に許容可能なビヒクルと、を含み、
ビヒクルが、生理学的に許容可能なビヒクルであり、基材が毛髪、皮膚、爪、歯及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、
活性物質は、シリコーンポリマー及びシリコーンオリゴマーからなる群から選択され、1000グラム/モル(mole)を超える分子量を有し、かつ少なくとも1つの有機官能基を有する、パーソナルケア組成物。
【0011】
基材の処理方法であって、少なくとも1つの活性物質を基材に塗布する工程であって、活性物質は1つ以上の官能基を有し、基材は1つ以上の補完的な官能基を有する、工程と、光に曝露した際に酸又は塩基を生成可能な少なくとも1つの光触媒を基材に塗布する工程と、光触媒及び少なくとも1つの活性材料を光に曝露して、少なくとも1つの活性物質の1つ以上の官能基と、第2活性物質、基材、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される試薬との間に共有結合を形成する工程と、を含み、活性物質はシリコーンポリマー及びシリコーンオリゴマーからなる群から選択され、活性物質は1000グラム/モルを超える分子量を有し、かつ有機官能基を少なくとも1つ有する方法。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本明細書に記載される様々な実施形態は、次の添付図面を用いた以下の説明を参照することにより理解され得る。
【図1】チオエステル結合により18−MEAに共有結合したケラチン外表皮部分を含む毛髪繊維のFCSMへの損傷を示す概略図。
【図2】活性成分及び光触媒物質にて毛髪などの生理学的基材を処理するための、本明細書に記載される組成物及び方法の1つの非限定的実施形態を示す概略図。
【図3】活性成分及び光触媒物質にて毛髪などの生理学的基材を処理するための、本明細書に記載される組成物及び方法の1つの非限定的実施形態を示す概略図。
【図3A】活性成分及び光触媒物質にて毛髪などの生理学的基材を処理するための、本明細書に記載される組成物及び方法の1つの非限定的実施形態を示す概略図。
【図4】本明細書に記載される組成物及び方法の作用機序の1つの非限定的実施形態の略図であり、ここで、基材表面は共有結合により改質されている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書に開示されている寸法及び値は、列挙した正確な数値に厳しく制限されるものとして理解すべきではない。それよりむしろ、特に規定がない限り、こうした各寸法は、列挙された値とその値周辺の機能的に同等の範囲との両方を意味することが意図される。例えば、「40mm」として開示される寸法は、「約40mm」を意味することを意図している。
【0014】
本発明で使用する場合、用語「官能基」とは、少なくとも部分的に、構造を規定し、かつ特定の族の化合物の性質を決定する、原子又は会合した原子の群を意味する。官能基は、分子又は物質のその他の領域と比較して、特定の化学反応性の部位である分子又は物質上又は内の領域であり得る。官能基は一般に、特有の性質を有し、ある程度、分子の反応性を全体として制御することができる。官能基としては、限定するものではないが、ヒドロキシル基、チオール基、カルボニル基、カルボキシル基、スルホネート基、スルフィド基、エーテル基、ハロゲン原子、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、などが挙げられる。官能基によって概ね分類(構造上及び/又は機能上)される化合物としては、限定するものではないが、例えば、アルカン、アルケン、アルキン、芳香族化合物、ハロゲン化物、アルコール、エーテル、エステル、アミン、イミン、イミド、カルボン酸、アミド、酸ハロゲン化物、酸無水物、ニトリル、ケトン、アルデヒド、カーボネート、過酸化物、ヒドロペルオキシド、炭水化物、アセタール、エポキシド、スルホン酸、スルホン酸エステル、硫化物、スルホキシド、チオエーテル、チオシアネート、ジスルフィド、ホスホン酸、リン酸エステル、ホスフィン、アジド、アゾ化合物、ニトロ化合物、硝酸塩、ニトリル、亜硝酸塩、ニトロソ化合物、チオール、シアン酸塩、及びイソシアネートが挙げられる。
【0015】
用語「活性物質」、「活性成分」、「活性化合物」並びにこれら用語の組み合わせ及び変形は、本明細書で使用するとき、基材物質の表面及び/又はバルク特性を改質するために基材に塗布される物質を意味する。これらの用語は、同じ意味で用いられてよい。基材表面特性としては、例えば、表面疎水性/親水性、嫌油性/親油性、色、光学特性、吸収率、吸着性、結合能力、輝度、無光沢度、摩擦抵抗、耐汚染性、表面テクスチャー、臭い、耐洗浄性、湿潤性、弾性、可塑性、及び剛性を挙げることができる。基材バルク特性としては、例えば、引張り強度、剛性、吸収率、弾性、可塑性、及び生物活性を挙げることができる。
【0016】
活性物質は、酸又は塩基の存在下にて、基材の表面又はバルク内に存在する1つ以上の補完的な官能基に共有結合可能な1つ以上の官能基を有する化合物を含んでよい。活性物質は、酸又は塩基の存在下にて、分子間に共有結合を形成可能な化合物、例えば、酸又は塩基触媒重合可能なモノマーを更に含んでよい。「美容活性物質」は、過度の毒性、非相溶性、不安定性、アレルギー反応、などがなく、パーソナルケア製品にて用いるのに好適な活性物質である。
【0017】
用語「モノマー」は本明細書で使用するとき、その他のモノマー(同一の又は異なる化学構造を有してよい)に共有結合して、ポリマー又はコポリマーを形成することができる化合物を意味する。用語「ポリマー」(及び「コポリマー」)は本明細書で使用するとき、複数のモノマーを含む化合物を意味する。したがって、本明細書で使用するとき、ポリマーという用語は、二量体、三量体、オリゴマー、などを含む。
【0018】
本発明で使用するとき、用語「改質する」、「改質」、「官能化する」又は「官能化」は、基材との関係では、(1)活性成分を基材表面に共有結合させること、(2)基材物質のバルク内にて、活性成分を基材に共有結合させること、(3)2つ以上の活性成分(同一若しくは異なる化学的部分であり得る)の間に共有結合を形成すること(ここで、得られた二次的活性物質は基材表面に局在する)、及び/又は(4)2つ以上の活性物質(同一又は異なる化学的部分であり得る)の間に共有結合を形成すること(ここで、活性物質は、基材のバルク内に存在する)を意味する。
【0019】
本明細書で使用するとき、用語「ヒトの毛髪への塗布に好適」及び「ヒトの皮膚への塗布に好適」とは、そのように記載された組成物又はその構成要素が、過度の毒性、不適応性、不安定性、アレルギー反応等を伴わずに、ヒトの毛髪及び頭皮及び皮膚と接触して使用するのに好適であることを意味する。
【0020】
本明細書で使用するとき、用語「シャンプー」とは、毛髪、又は頭皮、顔、及び体を含む皮膚を洗浄するための組成物を意味する。したがって、用語「シャンプー」としては、限定するものではないが、例えば、通常の意味でのヘアシャンプー、ボディソープ、洗顔料、又はその他の表面洗浄組成物が挙げられる。加えて、用語「シャンプー」は、ヒト及び/又は動物にて使用する組成物を含む。
【0021】
用語「コンディショナー」は本明細書で使用するとき、毛髪又は皮膚を機械的、化学的、及び/又は環境要因(損傷を受けた若しくは風雨に曝された毛髪若しくは皮膚の一因となる)から保護するため、並びに/又はこのような損傷の特徴を緩和するために、毛髪、又は頭皮、顔、及び体を包含する皮膚を処理するための組成物を意味する。したがって、用語「コンディショナー」としては、限定するものではないが、例えば、通常の意味でのヘアコンディショナー(リーブイン及び/又はリンスアウト)、スキンローション、又は顔面湿潤剤が挙げられる。加えて、用語「コンディショナー」は、ヒト及び/又は動物にて使用する組成物を含む。
【0022】
用語「パーソナルケア製品」は本明細書で使用するとき、例えば、口紅、マスカラ、ルージュ、ファンデーション、頬紅、アイライナー、リップペンシル、リップグロス、その他化粧品、白粉、ボディーパウダー、日焼け止め剤、サンブロック、ネイルポリッシュ、ムース、ヘアスプレー、スタイリングジェル、ネイルコンディショナー、バスジェル、シャワージェル、ボディソープ、洗顔料、シャンプー、ヘアコンディショナー(リーブイン又はリンスアウト)、クリームリンス、毛髪染料、染毛製品、ヘアシャイン製品、ヘアセラム、毛髪縮れ防止製品、毛髪枝毛修復製品、リップクリーム、スキンコンディショナー、コールドクリーム、湿潤剤、ボディスプレー、石鹸、ボディースクラブ、剥離剤、収れん剤、スクラフィングローション、脱毛剤、パーマ液、ふけ予防配合物、制汗剤組成物、デオドラント、剃毛製品、プレシェービング製品、アフターシェービング製品、クレンザー、スキンジェル、リンス、練り歯磨き、うがい薬、又はオーラルケアストリップなどの製品を意味する。
【0023】
用語「コンシューマケア製品」は本明細書で使用するとき、例えば、軟質表面洗浄剤、硬質表面洗浄剤、ガラス洗浄剤、セラミックタイル洗浄剤、便器洗浄剤、木材洗浄剤、複表面洗浄剤(multi-surface cleaner)、表面消毒剤、食器洗い組成物、洗濯洗剤、布地コンディショナー、布地染料、表面保護剤、表面消毒剤、自動車表面処理剤、などの製品を意味する。コンシューマケア製品は、液体、ジェル、懸濁液、粉末、などの形態であってよい。コンシューマケア製品はまた、専門業者用、業務用及び/又は工業的用途に加えて、家庭又はホームケア用途のためであってもよい。
【0024】
本明細書に記載される組成物及び方法の1つの目的は、基材表面に活性物質を共有結合させることによって基材の表面及び/又はバルク特性を改質することである。本明細書に記載される組成物及び方法の別の目的は、それ自体が反応して活性化合物の2つ以上の分子間に共有結合を形成し、それにより二次的活性物質を形成可能な活性化合物にて基材を処理することによって、基材の表面及び/又はバルク特性を変更することである。本明細書に記載される組成物及び方法の更に別の目的は、基材表面に活性物質を共有結合させることによって基材の表面を官能化することである。効果的に処理するために、その分子内に複数の類似官能基を含有する物質を基材上にまず結合させ、次に最初に結合させた物質と反応させることによって別の物質/有益剤を結合する別の工程を続けることが望ましい場合がある。基材が、極めて限定された濃度の、有益剤と反応して化学結合を形成可能な官能基を含有する場合には、このことが特に有用である。例えば、リンゴ酸(2−ヒドロキシ−1,4−ジブタン酸)を基材上に最初に結合すると、基材の反応性が2倍に増大し、活性物質が引き続いて結合する。本明細書に記載される組成物及び方法の更に別の目的は、健康安全規則に容易に適合する方法で、かつ、パーソナルケア製品及び/又はコンシューマケア製品空間へと容易に導入し得る方法で、このような改質/官能化を提供することである。
【0025】
諸実施形態は概して、基材を処理するための組成物及び方法に関する。本明細書で使用するとき、用語「基材」とは、本明細書に記載される組成物及び方法にて、表面及び/又はバルクを処理するのに有用な任意の物質を意味し、例えば、毛髪繊維、皮膚、爪、歯ぐき、及び歯などの生理学的物質を含むがこれらに限定するものではない。基材とは、例えば、布地、紙、木材、プラスチック、ガラス、タイル、石、コンクリート、煉瓦、その他のセラミックス、コーティングされた又は塗装された金属表面、コーティングされたガラス、ポリマーフィルム、及び複合材料などの非生理学的物質も意味し得る。基材は更に、予め改質された表面、例えば、コーティングされた表面(例えば、ニス塗りした若しくは塗装された)又はラミネート加工された表面などを含んでよい。用語「基材」及び「物質」は、本明細書に記載される組成物及び方法によって改質される物体との関係においては、同じ意味で用いられてよい。
【0026】
諸実施形態では、本明細書に記載される組成物は、酸又は塩基の存在下にて、基材を改質可能な活性成分、光に曝露した際に酸又は塩基を生成可能な光触媒、及び好適なビヒクル(所望により、生理学的に許容可能なビヒクルであってよい)を含む。諸実施形態では、本明細書に記載される組成物は、界面活性剤、乳化剤、酸化剤、還元剤、pH調整剤、皮膚軟化剤、湿潤剤、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、添加ポリマー、つや出し剤、エッセンシャルオイル及び/若しくは脂肪酸、潤滑剤、金属イオン封鎖剤/キレート剤、帯電防止剤、レオロジー調整剤、感触改良剤(feel agents)、充填剤、防腐剤、香料、その他の機能性成分、又はこれらの組み合わせなどの、1つ以上の任意成分を更に含んでよい。
【0027】
諸実施形態では、本明細書に記載の方法は、1つ以上の共有結合を活性成分及び/又は基材の間に形成することによって基材を処理することを含むが、ここで、共有結合は、光に曝露した際に光触媒により生成される酸又は塩基の存在下に形成される。諸実施形態では、本明細書に記載の方法は、2つ以上の活性成分分子の間に1つ以上の共有結合を形成することによって、基材を処理することを含むが、ここで、共有結合は、光に曝露した際に光触媒により生成される酸又は塩基の存在下にて形成され、活性物質は基材の表面及び/又はバルクに局在する。本発明で使用する場合、用語「分子」は、化学結合によって一体化された一定配置にある少なくとも2つの原子からなる十分に安定した基を意味する。したがって、用語「分子」は、限定するものではないが、中性分子化合物、多原子イオン、ラジカル種、生体分子、モノマー、二量体、三量体、オリゴマー、ポリマー、などを包含する。
【0028】
諸実施形態では、本明細書に記載の方法は、化合物を調製し基材に共有結合させること、又は基材表面上若しくは基材バルク内の化合物間に共有結合をその場で形成すること;基材を提供すること、1つ以上の試薬を提供すること、光触媒を提供すること、並びに基材及び1つ以上の試薬の存在下にて光触媒を光に曝露することによって基材を処理することを含むが、ここで、光触媒は酸又は塩基を発生させ、酸又は塩基は、その1つ以上の試薬間での反応及び/又はその1つ以上の試薬と基材との間での反応を触媒し、反応(単一又は複数)が共有結合を形成する。諸実施形態では、本明細書に記載の方法は、基材、酸又は塩基の存在下にて基材を改質可能な活性成分、及び光に曝露した際に酸又は塩基を生成可能な光触媒を含む系を提供すること、並びにその系を光に曝露することを含む。
【0029】
一般に、例えば、毛髪及び皮膚などの基材上に活性成分を共有結合させることは、多くの場合、実現困難であることが分かっている。このことは水が存在する場合に特に当てはまるが、水は、基材官能化が生じる前に、反応性部分を速やかに劣化させ得る。更に、水性媒体は、活性成分の基材への共有結合と競合し得る加水分解及び酸化反応を化学的に促進することが知られている。これは、例えば、生理学的に許容可能なビヒクルとして多くの場合水が使用されるパーソナルケア製品において、特定の問題を提起し得る。コンシューマケア製品も多くの場合、様々な容量にて、最も顕著には溶媒として、水を使用する。
【0030】
加えて、例えば、毛髪、皮膚、布地、ガラス及びセラミックなどの基材は、活性成分と容易に反応して共有結合を形成する特に反応性の強い化学官能基を表面上に含有しなくてよい。この比較的低い基材表面反応性により、塗布及びすすぎ洗い環境(例えば、毛髪の洗髪及びコンディショニング、皮膚の洗浄、布地の洗濯、又は硬質表面の洗浄)の実用的期間を外れる反応系がもたらされ得る。更に、製品の安全性及び環境保護に関する厳しい法的な要求事項は、例えば、毛髪、皮膚、布地、ガラス又はセラミックなどの基材を、活性成分の共有結合により処理するための組成物及び方法を提供するためのハードルを上げる。
【0031】
しかし、本明細書に記載される組成物及び方法の諸実施形態は、光を使って、例えば、活性成分を基材に共有結合させる又は2つ以上の活性成分の間で、基材物質の表面上又はバルク内にて、共有結合をその場で形成させるなどの反応を促進させる光触媒技術についてのものである。例えば、通常疎水性であるこれらの基材を補充及び/又は強化するために、様々な実施形態を使用して、損傷を受けた親水性毛髪及び/又は皮膚への長鎖アルキル基の共有結合を促進してよい。加えて、例えば、布地又は硬質表面への活性物質の共有結合を促進するために、様々な実施形態を使用することができる。更に、例えば、物質の表面及び/又はバルク特性を変更するために、基材物質の表面上及び/又はバルク内でモノマーを局所的に重合させるために、様々な実施形態を使用することができる。
【0032】
諸実施形態では、共有結合によって、傷んだ毛髪及び/又は皮膚を有する個人に、種々の大きな利益をもたらし得る。例えば、ヘアコンディショニング効果としては、特に、改良された感触、より小さい摩擦、より容易な櫛通り/ブラッシング、低減された乾燥、増大した滑らかさ、減少した縮れ、増加した光沢、低下した静電気量、並びにその他の機械的、化学的及び環境要因による損傷に対する改善された保護力を挙げることができる。皮膚コンディショニング効果としては、特に、低減された乾燥、減少した発赤、減少した皮癬、減少した剥離、並びに改善された質感及び滑らかさを挙げることができる。これらの利益の少なくともいくつかは、共有結合を介する表面改質から生じる活性物質の付着を増加させ又は目標としたものとすることによって付与することができる。本明細書に記載される組成物及び方法によって付与される利益は、不安定でない共有結合(それは、毛髪及び/又は皮膚上へ活性成分を付着又は塗布するために従前のコンディショナー内で用いられた吸収、吸着、水素結合、イオン結合、その他の静電的相互作用、及び/又はその他の一時的な非共有結合的会合と比較して、一般により強度でかつより安定している)が用いられるために、潜在的により耐久性がある。これは、従前のコンディショナーで遭遇した塗布及び再塗布の頻度を大幅に低減し得る。
【0033】
本明細書に記載される組成物及び方法の諸実施形態は、基材への活性成分の共有結合を提供するが、これは、例えば、毛髪F層又は皮膚角質層の修復及び/又は強化へのアプローチとして記載されてよい。毛髪との関係においては、理論に束縛されたり、あるいは理論に制限されたりするものではないが、図1に示すように、様々な機械的、化学的、及び/又は環境要因により介在されたプロセスによって、バージンヘアのF層が毛髪繊維からはぎ取られることがある。これらのプロセスとしては、例えば、永久染毛及び永続的パーマ処理中に一般に遭遇する酸化及び加水分解反応を挙げることができる。
【0034】
図1は、18−MEA上のカルボキシル基と外表皮内のケラチンタンパク質中のシステイン残基上のチオール基との間のチオエステル結合により18−MEAに共有結合したケラチン外表皮部分を含む毛髪繊維のFCSMを示す概略図である。加水分解及び/又は酸化プロセス(例えば、永久染毛及び永続的パーマ処理中に一般的に遭遇する、過酸化水素、アンモニア及び高pHの組み合わせによる)は、その他の機械的、化学的、及び環境要因と同様に、システイン−脂質チオエステル結合を開裂させ、システイン残基上にスルホネート基を含む露出した外表皮を残すことによって、F層の少なくとも一部を除去し得る。
【0035】
外表皮の表面にあるシステイン残基上のアニオン性スルホネート基は、任意の傷んだ毛髪繊維の表面を親水性にするが、これは、傷んだ毛髪の望ましくない特性をもたらし得る。更に、毛髪繊維がより親水性(及びしたがって、より損傷を受けている)であれば、非共有結合性相互作用及び会合による従来の疎水性コンディショニング活性物質(例えば、ジメチルシロキサン、脂肪族アルコール及び酸、並びに四級アミンなど)の付着が低減されることが観察された。したがって、本明細書に記載される組成物及び方法は、このような損傷を受けた基材を処理するための魅力的なアプローチを提供する。
【0036】
図2は、本明細書に記載される基材処理のための組成物及び方法の1つの非限定的実施形態を概略的に示す。表面スルホネート及びカルボキシル基を含む基材の存在下、ヒドロキシル基(R−OH)を有する活性成分及び光に曝露した際に酸又は塩基を生成可能な光触媒を含む組成物が提供される。光触媒を光に曝露し、これにより光触媒に酸又は塩基を形成させる。酸又は塩基は、活性物質上のヒドロキシル基と基材上のカルボキシル基との間の共有結合性エステル結合の形成を触媒する。
【0037】
図3及び図3Aは、併せて見た場合、本明細書に記載される基材処理のための組成物及び方法の1つの非限定的実施形態を概略的に示す。脂質層(F層)及びタンパク質層(外表皮)を含む毛髪繊維の一部を示す。タンパク質層は、例えば、システイン残基間にジスルフィド結合を有するケラチンなどの構造タンパク質を含む。毛髪を還元剤で処理して、ジスルフィド結合を破壊し、対応するチオール基を形成してもよい。毛髪は、1つ以上の活性成分化合物間及び/又は1つ以上の活性成分化合物とチオール基との間に共有結合を形成する反応が可能な1つ以上の化合物を含む活性成分で更に処理してよい。毛髪繊維は更に、光触媒で処理される。1つ以上の活性成分及び光触媒は、毛髪繊維基材の表面に浸透する。1つ以上の活性成分及び光触媒で処理された毛髪繊維基材を、好適な波長の光に曝露して、光触媒を活性化させ、毛髪繊維基材内の1つ以上の活性成分とチオール基との間の反応を触媒する。
【0038】
諸実施形態では、活性成分は、酸又は塩基の存在下で重合可能な1つ以上のモノマーであってよい。毛髪繊維は、光触媒及びモノマーを含む組成物で処理され、これは、少なくとも部分的に繊維に浸透する。光に曝露した際に、光触媒は活性化し、それによって酸又は塩基を発生させるが、これがモノマーの重合を触媒し、それによってポリマーをその場で形成し、これが、チオール基とポリマーとの間に形成された共有結合によって、毛髪繊維に所望により結合し得る。
【0039】
他の実施形態(図示せず)では、ポリマーは、毛髪繊維に共有結合しない。例えば、その場で形成されたポリマーは、毛髪繊維の表面上にて又は毛髪繊維の細孔内にて、物理的に不動化されてよい。その場で形成されたポリマーはまた、基材の表面及び/又はバルクとの、例えば、吸着、吸収、静電相互作用、摩擦相互作用、立体相互作用、及び/又はサイズ排除効果などの物理的及び/又は化学的相互作用によって毛髪繊維と会合してよい。
【0040】
諸実施形態では、モノマーは、スチレン、又は例えば、α−メチルスチレンなどのスチレン誘導体であってよい。モノマーは、その場重合(基材の表面上にて及び/又は基材のバルク内にて)によりコポリマーが生成されるように、異なるモノマーの混合物を含んでもよい。
【0041】
本明細書に記載される組成物及び方法の諸実施形態では、光触媒は、光に曝露した際に脱プロトン化する光酸であってよい。プロトン(例えば、ヒドロニウムイオンの形態で溶媒和し得る)は、例えば、エステル化反応又はチオエステル化反応によって共有結合の形成を触媒し得る。本明細書に記載される組成物及び方法の諸実施形態では、光触媒は、光に曝露した際に水酸化物アニオンを発生させる光塩基であってよい。水酸化物アニオンは、例えば、エステル化反応又はチオエステル化反応により、共有結合の形成を触媒し得る。諸実施形態では、光酸又は光塩基の作用機構は、アレニウス型又はブレンステッド・ローリー型の酸又は塩基系に限定されず、むしろ、光に曝露した際に触媒活性化するルイス型の酸又は塩基も含んでよい。本明細書に記載される組成物及び方法は、この文脈に限定されない。
【0042】
エステル化反応は一般に、可逆的である。水などの相対的に中性の媒体の場合、エステル結合の加水分解の逆反応で、対応するヒドロキシル及びカルボキシル含有部分になるのとは対照的に、可逆性のエステル化反応では、エステル結合及び水の形成に熱力学的に有利に働かない場合がある。チオエステル化系は一般に、同様な反応を示す。このため、従前系での(例えば、従前のコンディショナーでの)活性成分と基材との間での共有結合の形成は、例えば、毛髪又は皮膚などの基材処理との関係においては、非現実的であった。
【0043】
加えて、エステル化又はチオエステル化反応の酸又は塩基触媒反応は一般に、パーソナルケア製品との関係では非現実的であるが、これは、比較的高い又は比較的低いpHを有することなく、基材の表面にて又はバルク内にて、十分な酸又は塩基濃度を生成することが困難であることによる。比較的高い又は比較的低いpHを有する製品の使用は一般に、不適当であるが、これは、このような酸性及び苛性の物質が、生理学的に受け入れられない可能性があるためである。
【0044】
本明細書に記載される組成物及び方法は、これらの制限を克服する。光触媒を使用することで、基材表面にて又は基材物質のバルク内にて、触媒と活性成分との共存が可能となる。しかし、光触媒は、光に曝露するまでは活性化しない。例えば、光酸触媒は、好適な波長の光に曝露した際に、pKaの減少を示す。例えば、光塩基触媒は、好適な波長の光に曝露した際に、pKbの増大を示す場合がある。光に曝露した際の酸又は塩基強度それぞれの増大は、基材表面でのプロトン又は水酸化物濃度の局部的な増大をもたらし、これにより、例えば、迅速なエステル化又はチオエステル化が促進される。更に、プロトン又は水酸化物の濃度が、基材表面に短時間局在するために(周囲の媒体中に拡散する前に)、バルクpHは、基本的には、光触媒反応による影響を受けず、使用される光触媒の量を用いた場合に、ほぼ中性にとどまり得る。このことは、例えば、パーソナルケア製品、及び各種コンシューマケア製品用途などの生理学的用途にとって有利である。加えて、酸性又は塩基性触媒反応の一時的な局部的性質は、共有結合が高pH又は低pHに敏感な場合のプロセス中に生成される共有結合の安定性にも寄与する。
【0045】
したがって、本明細書に記載される組成物及び方法の諸実施形態における活性成分と基材との間にエステル及び/又はチオエステル共有結合を形成する反応の光触媒作用は、例えば、毛髪及び皮膚における、それぞれF層及び角質層の修復及び/又は強化などの基材処理に対して、効率的、制御可能、安定的及び生理学的に許容可能なアプローチを提供する。
【0046】
図4は、光酸触媒との関係で、本明細書に記載される組成物及び方法の作用機序(mechanism of use)の1つの非限定的実施形態の略図である。第1工程では、活性成分であり得る試薬及び光酸触媒を含む試薬溶液が提供される。試薬溶液は、シャンプー、コンディショナー、その他のパーソナルケア製品又はコンシューマケア製品を含み得る。第2工程では、試薬溶液は、例えば、皮膚、毛髪、布地、又は硬質表面であり得る基材に塗布される。試薬溶液の成分は、基材表面上に付着する。第3工程では、試薬溶液及び基材を含む系を光に曝露する。光は、光触媒の脱プロトン化を引き起こす。第4工程では、試薬と基材表面との間で、光酸で触媒されたエステル化反応が生じる。第5工程では、未反応の触媒、試薬、及びプロトンは、基材表面から拡散し、システムから除去される。第6工程では、改質/官能化された基材を乾燥させる。第7工程では、改質/官能化された基材を洗浄し、すすぎ洗いする。改質/官能化された基材は、洗浄及びすすぎ洗い後に共有結合した試薬を実質的に保持する。
【0047】
本明細書に記載される組成物及び方法は、制御された方法で、材料特性のその場及び局部的改質を促進する。活性成分は、光酸又は光塩基反応系内にて、共有結合的に変更される(例えば、活性成分間で及び/又は活性成分と基材物質との間で共有結合を形成することによって、二次的活性物質を形成することにより)。
【0048】
改質される基材は、噴霧、浸漬、展着、コーティング、すすぎ洗い、又は組成物を基材表面上に又は基材物質のバルク内に導入する任意の他の好適な手段により処理されてよい。諸実施形態では、基材表面及び/又はバルクに確実で十分な改質をするためには、試薬溶液によって基材表面全体が確実に濡れていることが重要である。活性物質が、ビヒクル内で少なくとも部分的に不溶性である場合、例えば、ビヒクル内の活性物質の滴径又は粒径を最小化することによって、活性物質と基材との間の接触を極大化することが重要である。諸実施形態では、基材表面の単一部分のみ又は複数部分に試薬溶液を導入することが望ましい場合がある。その他の実施形態では、光触媒を活性化するのに好適な波長の光で、基材表面の単一部分のみ又は複数部分を照射するのが望ましい場合がある。共有結合改質は、試薬溶液と接触しかつ光触媒を活性化するのに好適な波長の光で照射された基材表面(及び下層にあるバルク)領域上でのみ生じる。これにより、表面及び/又はバルク改質の場所及び程度を制御することができる。
【0049】
本明細書に記載された酸又は塩基光触媒共有結合改質/官能化機序は可逆性であってもよい。例えば、エステル化及び/又はチオエステル化反応によって、共有結合により改質又は官能化された基材表面は、酸性界面活性剤水溶液と接触させてよい。あるいは、アルカリ性界面活性剤溶液を用いてよい。これらの溶液は、活性成分を基材に結合させているエステル及び/又はチオエステル結合の加水開裂を促進し、それによって活性成分を除去し得る。
【0050】
この除去性は、適切な条件下で可逆性である、活性成分−基材結合に限定されている。例えば、光酸触媒エステル化の場合、試薬及び触媒が、基材近傍に存在し、かつ適切な光に曝露された場合に、エステル結合が形成される。照射時の高濃度プロトンにより、そのまま維持されるエステル結合が形成するが、これは、発生したプロトンが媒体のバルク内へ速やかに拡散するためである。低含有量の光酸によって、安定しかつほぼ中性pHのバルク水溶液が得られる。これらの条件下で、エステル結合は、非常にゆっくりした速度で加水分解される。しかし、極めて低い(又は極めて高い)pHの水溶液で処理すると、エステル結合はより速やかに破壊されて、元の未改質基材表面が得られる。
【0051】
共有結合にて結合した活性物質の除去は、改質又は官能化された基材を、光触媒(光酸又は光塩基)を含む組成物で処理することによっても達成することができる。これにより、基材からの活性成分の除去タイミングの制御が改善される。これは、周辺光の影響を受けずに、適切な装置により提供された特定波長の光の下で、酸又は塩基種を生成可能なように、光触媒を選択した場合に実現することができる。
【0052】
本明細書に記載される、組成物の各種成分及び付随する方法のそれぞれ、並びに好ましい及び任意の成分について、詳細に記述される。
【0053】
活性成分
本発明の活性物質としては、次のi)、ii)及びiii)の特徴を有するシリコーンオリゴマー又はポリマーが挙げられる:i)一実施形態では1000グラム/モルを超える分子量を有し、他の実施形態では、50,000グラム/モルを超える分子量を有する;ii)限定するものではないがヒドロキシル、アミノ、カルボキシル基及び/又はこれらのうちの任意の組み合わせが挙げられる、少なくとも1つ(及び一実施形態では複数)の有機官能基を有する;並びにiii)シリコーンポリマーの置換の程度及び性質、並びに分子量は、所望の基材改質及び適用条件に応じて適切に選択することができる。例えば、疎水性の増加が所望される場合、シリコーンオリゴマー又はポリマー中のケイ素原子(silicone atoms)の、2%未満を有機基で置換することができる。シリコーンコポリマーは、以下のような構造を有するものが挙げられる、有機アルコール基(一級又は二級)を含有する、モノマー由来のものであり得る。
R1−[Si(CH2)(R3−CH2OH)−O]n−[Si(CH2)2−O]m−R2
式中、R1、R2はメチルであり;R3は−CH2CH2CH2−(OCH2CH2O)q−Hであり、ただし、q≧1である。
【0054】
毛髪改質は、痛んだ毛髪をシリコーンオリゴマー又はポリマー活性物質で処理することで達成することができる。8−ヒドロキシキノリンなどの光酸生成体を用いる、エマルション、分散体、及び/又は溶液状態のこのような活性物質での処理は、損傷を受けた毛髪に耐久性のある(例えば複数回のシャンプー洗浄サイクル後にも持続するなど)利益をもたらし得る。耐久性のある利益の例としては、毛髪軟化(湿った及び乾いた毛髪の軟化)、櫛通りの良さ、抗縮れ、髪型及び髪色保持、保湿、及び光沢が挙げられる。
【0055】
表面改質方法は、シリコーンポリマーと基材との間の共有結合の形成を伴う。結合は、オリゴマー又はポリマーの一級又は二級アルコールと、毛髪基材の適合性のある官能基(例えばカルボン酸基は縮合に寄与する)と、の酸触媒反応により形成される。
【0056】
好適なシリコーンオリゴマー及び/又はポリマーとしては、アルコキシアルカノール基を有するシリコーンオリゴマー又はポリマーが挙げられる。一実施形態では、シリコーンオリゴマー及び/又はポリマーは、以下の構造を有するビス−ヒドロキシエトキシプロピルジメチコンである。
【0057】
【化1】

【0058】
好適なビス−ヒドロキシエトキシプロピルジメチコンとしては、限定するものではないが、Dow Corningから5562 Carbinol Fluidとして、MomentiveからBaysilone OF OH 702 Eとして入手可能な材料が挙げられる。
【0059】
光触媒
光触媒は、光に曝露した際に減少(又は増加)するpKa(又はpKb)値を有する任意の酸、塩基(又はこれらの複合体)であり得る。光は、pKa又はpKbのそれぞれ減少又は増大を得るための任意の好適な波長の光であり得る。例えば、光は、周辺光、太陽光、白色光、蛍光、LED光、レーザー光線、などであり得る。光は、電磁スペクトルに従う任意の分類のもの、例えば、可視光、近紫外線若しくは遠紫外線、又は近赤外線若しくは遠赤外線であってよい。当業者であれば、採用した1つ以上の光触媒の特性に応じて適切な光波長が決定されることは容易に理解するであろう。
【0060】
加えて、好適な光は、基材表面を照らすことが可能な任意の供給源から提供されてよい。例えば、周辺太陽光、白色光、蛍光、などは、好適な波長の光を提供し得る。したがって、光は、ランプ及びポータブル又は電池駆動による光などの従来の供給源により提供されてよい。加えて、特定の装置が、本明細書に記載された組成物及び方法で用いるために開発又は適合されてもよい。例えば、好適な波長の光を提供するLEDを組み込むように構成されたヘアブラシを使用して、毛髪繊維の表面を共有結合的に改質してよい。諸実施形態では、レーザーを使用して、例えば、基材表面の共有結合改質の正確なターゲティングを提供してもよい。
【0061】
諸実施形態では、光触媒は、例えば、芳香族ヒドロキシ化合物、スルホン化ピレン化合物、オニウム塩、ジアゾメタン誘導体、ビススルホン誘導体、ジスルホノ(disulfuno)誘導体、ニトロベンジルスルホネート誘導体、スルホン酸エステル誘導体、N−ヒドロキシイミドのスルホン酸エステル、又はこれらの組み合わせなどの光酸である。
【0062】
光酸触媒としては、例えば、8−ヒドロキシキノリン、8−ヒドロキシキノリンサルフェート、8−キノリノール−1−オキシド、5−ヒドロキシキノリン、6−ヒドロキシキノリン、7−ヒドロキシキノリン、5−ヨード−7−スルホ−8−ヒドロキシキノリン、5−フルオロ−8−ヒドロキシキノリン、5−フルオロ−7−クロロ−8−ヒドロキシキノリン、5−フルオロ−7−ブロモ−8−ヒドロキシキノリン、5−フルオロ−7−ヨード−8−ヒドロキシキノリン、7−フルオロ−8−ヒドロキシキノリン、5−クロロ−8−ヒドロキシキノリン、5,7−ジクロロ−8−ヒドロキシキノリン、5−クロロ−7−ブロモ(brono)−8−ヒドロキシキノリン、5−クロロ−7−ヨード−8−ヒドロキシキノリン、7−クロロ−8−ヒドロキシキノリン、5−ブロモ−8−ヒドロキシキノリン、5−ブロモ−7−クロロ−8−ヒドロキシキノリン、5,7−ジブロモ−8−ヒドロキシキノリン、5−ブロモ−7−ヨード−8−ヒドロキシキノリン、7−ブロモ−8−ヒドロキシキノリン、5−ヨード−8−ヒドロキシキノリン、5−ヨード−7−クロロ−8−ヒドロキシキノリン、5,7−ジヨード−8−ヒドロキシキノリン、7−ヨード−8−ヒドロキシキノリン、5−スルホン酸−8−ヒドロキシキノリン、7−スルホン酸−8−ヒドロキシキノリン、5−スルホン酸−7−ヨード−8−ヒドロキシキノリン、5−チオシアノ−8−ヒドロキシキノリン、5−クロロ−8−ヒドロキシキノリン、5−ブロモ−8−ヒドロキシキノリン、5,7−ジブロモ−8−ヒドロキシキノリン、5−ヨード−8−ヒドロキシキノリン、5,7−ジヨード−8−ヒドロキシキノリン、7−アザインドール、7−シアノ−2−ナフトール、8−シアノ−2−ナフトール、5−シアノ−2−ナフトール、1−ヒドロキシ−3,6,8−ピレントリスルホン酸、トランス−3−ヒドロキシスチルベン、2−ヒドロキシメチルフェノール、又はペラルゴニジンなどのヒドロキシ置換芳香族を挙げることができる。
【0063】
光酸触媒としては、例えば、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムペルフルオロ−1−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムペルフルオロ−1−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウム−9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムニトレート、ジフェニルヨードニウムp−トルエンスルホネート、ジフェニルヨードニウムトリフレート、(4−メチルフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフレート、(4−メチルチオフェニル)メチルフェニルスルホニウムトリフレート、2−ナフチルジフェニルスルホニウムトリフレート、(4−フェノキシフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフレート、(4−フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフレート、チオビス(トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート)、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート塩、トリフェニルスルホニウムペルフルオロ−1−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムトリフレート、トリス(4−tert−ブチルフェニル)スルホニウムペルフルオロ−1−ブタンスルホネート、トリス(4−tert−ブチルフェニル)スルホニウムトリフレート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムp−トルエンスルホネート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフレート、(4−ブロモフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフレート、(tert−ブトキシカルボニルメトキシナフチル)ジフェニルスルホニウムトリフレート、(tert−ブトキシカルボニルメトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフレート、(4−tert−ブチルフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフレート、(4−クロロフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフレート、(4−フルオロフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフレート、[4−[(2−ヒドロキシテトラデシル)オキシ]フェニル]フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、(4−ヨードフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフレート、(4−メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフレート、ジフェニルヨードヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードヘキサフルオロアルセネート、ジフェニルヨードヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルp−メトキシフェニルトリフレート、ジフェニルp−トルエニルトリフレート、ジフェニルp−イソブチルフェニルトリフレート、ジフェニルp−t−ブチルフェニルトリフレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムトリフレート、ジブチルナフチルスルホニウムトリフレート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、(p−tert−ブトキシフェニル)フェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムp−トルエンスルホネート、(p−tert−ブトキシフェニル)フェニルヨードニウムp−トルエンスルホネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、(p−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(p−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリス(p−tert−ブトキシフェニル)−スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムp−トルエンスルホネート、(p−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムp−トルエンスルホネート、ビス(p−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウムp−トルエンスルホネート、トリス(p−tert−ブトキシフェニル)スルホニウムp−トルエンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムブタンスルホネート、トリメチル−スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリメチルスルホニウムp−トルエンスルホネート、シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)−スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウムp−トルエンスルホネート、ジメチルフェニル−スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジメチルフェニル−スルホニウムp−トルエンスルホネート、ジシクロヘキシルフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジシクロヘキシルフェニルスルホニウムp−トルエンスルホネート、トリナフチルスルホニウムトリフルオロメタン−スルホネート、シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、(2−ノルボルニル)メチル(2−オキソシクロ−ヘキシル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、エチレンビス−[メチル(2−オキソシクロペンチル)スルホニウムトリフルオロメタン−スルホネート]、又は1,2’−ナフチルカルボニルメチルテトラヒドロチオフェニウムトリフレートなどのオニウム塩を挙げてもよい。
【0064】
光酸触媒としては、例えば、ビス(ベンゼンスルホニル)−ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(キシレンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)−ジアゾメタン、ビス(シクロペンチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソブチルスルホニル)−ジアゾメタン、ビス(sec−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n−プロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソプロピルスルホニル)−ジアゾメタン、ビス(tert−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n−アミルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソアミルスルホニル)−ジアゾメタン、ビス(sec−アミルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(tert−アミルスルホニル)ジアゾメタン、1−シクロヘキシルスルホニル−1−(tert−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、1−シクロヘキシルスルホニル−1−(tert−アミルスルホニル)ジアゾメタン、又は1−tert−アミルスルホニル−1−(tert−ブチルスルホニル)ジアゾメタンなどのジアゾメタン誘導体を挙げてもよい。
【0065】
光酸触媒としては、例えば、ビス−o−(p−トルエンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(pートルエンスルホニル)−α−ジフェニルグリオキシム、ビス−o−(pートルエンスルホニル)−α−ジシクロヘキシル−グリオキシム、ビス−o−(pートルエンスルホニル)−2,3−ペンタンジオン−グリオキシム、ビス−o−(pートルエンスルホニル)−2−メチル−3,4−ペンタン−ジオングリオキシム、ビス−o−(n−ブタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(n−ブタンスルホニル)−α−ジフェニルグリオキシム、ビス−o−(n−ブタンスルホニル)−α−ジシクロヘキシルグリオキシム、ビス−o−(n−ブタン−スルホニル)−2,3−ペンタンジオングリオキシム、ビス−o−(n−ブタン−スルホニル)−2−メチル−3,4−ペンタンジオングリオキシム、ビス−o−(メタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(トリフルオロ−メタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(1,1,1−トリフルオロエタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(tert−ブタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(ペルフルオロオクタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(シクロヘキサン−スルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(ベンゼンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(p−フルオロベンゼンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(p−tert−ブチルベンゼンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(キシレンスルホニル)−α−ジメチル−グリオキシム、又はビス−o−(カンファースルホニル)−α−ジメチルグリオキシムなどのグリオキシム誘導体を挙げてもよい。
【0066】
光酸触媒としては、例えば、ビスナフチルスルホニルメタン、ビストリフルオロメチルスルホニルメタン、ビスメチルスルホニルメタン、ビスエチルスルホニルメタン、ビスプロピルスルホニルメタン、ビスイソプロピルスルホニルメタン、ビス−p−トルエンスルホニルメタン、ビスベンゼンスルホニルメタン、2−シクロヘキシル−カルボニル−2−(p−トルエンスルホニル)プロパン(β−ケトスルホン誘導体)、2−イソプロピル−カルボニル−2−(p−トルエンスルホニル)プロパン(β−ケトスルホン誘導体)などのビススルホン誘導体を挙げてもよい。
【0067】
光酸触媒としては、例えば、ジフェニルジスルホン又はジシクロヘキシルジスルホンなどのジスルホノ誘導体を挙げてもよい。
【0068】
光酸触媒としては、例えば、2,6−ジニトロベンジルp−トルエンスルホネート又は2,4−ジニトロベンジルp−トルエンスルホネートなどのニトロベンジルスルホネート誘導体を挙げてもよい。
【0069】
光酸触媒としては、例えば、1,2,3−トリス(メタンスルホニルオキシ)ベンゼン、1,2,3−トリス(トリフルオロ−メタンスルホニルオキシ)ベンゼン、又は1,2,3−トリス(p−トルエンスルホニルオキシ)ベンゼンなどのスルホン酸エステル誘導体を挙げてもよい。
【0070】
光酸触媒としては、例えば、N−ヒドロキシスクシンイミドメタンスルホネート、N−ヒドロキシスクシンイミドトリフルオロメタンスルホネート、N−ヒドロキシスクシンイミドエタンスルホネート、N−ヒドロキシスクシンイミド1−プロパンスルホネート、N−ヒドロキシスクシンイミド2−プロパンスルホネート、N−ヒドロキシスクシンイミド1−ペンタンスルホネート、N−ヒドロキシスクシンイミド1−オクタンスルホネート、N−ヒドロキシスクシンイミドp−トルエンスルホネート、N−ヒドロキシスクシンイミドp−メトキシベンゼンスルホネート、N−ヒドロキシスクシンイミド2−クロロエタンスルホネート、N−ヒドロキシスクシンイミドベンゼンスルホネート、N−ヒドロキシスクシンイミド2,4,6−トリメチル−ベンゼンスルホネート、N−ヒドロキシスクシンイミド1−ナフタレンスルホネート、N−ヒドロキシスクシンイミド2−ナフタレンスルホネート、N−ヒドロキシ−2−フェニルスクシンイミドメタンスルホネート、N−ヒドロキシマレイミドメタンスルホネート、N−ヒドロキシマレイミドエタン−スルホネート、N−ヒドロキシ−2−フェニルマレイミドメタンスルホネート、N−ヒドロキシグルタルイミドメタンスルホネート、N−ヒドロキシグルタルイミドベンゼンスルホネート、N−ヒドロキシフタルイミドメタンスルホネート、N−ヒドロキシフタルイミドベンゼンスルホネート、N−ヒドロキシフタルイミドトリフルオロメタンスルホネート、N−ヒドロキシフタルイミドp−トルエンスルホネート、N−ヒドロキシナフタルイミドメタンスルホネート、N−ヒドロキシナフタルイミドベンゼンスルホネート、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドメタンスルホネート、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドトリフルオロメタンスルホネート、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドp−トルエンスルホネート、N−ヒドロキシナフタルイミドトリフレート、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドペルフルオロ−1−ブタンスルホネートなどのN−ヒドロキシイミドのスルホン酸エステルを挙げてもよい。
【0071】
ある実施形態では、光触媒は、8−ヒドロキシキノリンであるが、これは低pH溶液中にて光酸触媒として、又は高pH溶液中にて光塩基触媒として作用し得る。ある種のその他の実施形態では、光触媒は、8−ヒドロキシ−1,3,6−ピレントリスルホン酸三ナトリウム塩(D&Cグリーン8)である。諸実施形態では、光触媒は光塩基である。光塩基触媒としては、例えば、マラカイトグリーンなどのトリチルアルコールの誘導体を挙げることができる。光塩基触媒としては、例えば、9−ヒドロキシ−10−メチル−9−フェニル−9,10−ジヒドロアクリジンなどのアクリジン誘導体も挙げることができる。光塩基触媒としては、光活性カルバメート含有化合物も挙げることができる。
【0072】
光触媒は、本明細書に記載される組成物及び方法に、組成物の総重量に対して、0.00050重量%〜30重量%の量で存在してよい。通常、光触媒の好ましい濃度がある。光触媒の好ましい濃度は、例えば、触媒の化学構造、反応媒体、反応タイプ、及び基材を含む種々の要因にある程度依存する。
【0073】
ビヒクル
本明細書に記載される組成物は、一般に、活性物質を分散又は溶解させるのに好適なビヒクル、光触媒、及び基材表面上又は基材のバルク部分への組成物の塗布を促進する任意の他の成分を含む。ビヒクルは、溶媒、乳化剤、界面活性剤、又はその他の分散剤のうちの1つ以上を含んでよい。ビヒクルは更に、生理学的に許容可能なビヒクルでもよい。好適なビヒクルの特性は、少なくとも部分的には、組成物の他の成分及び改質される基材の特性に依存する。
【0074】
好適なビヒクルは、活性物質、光触媒、及び任意の他の成分を分散又は溶解させるように、並びに基材表面への組成物塗布を促進するように作用する。好適なビヒクルは、活性物質と基材との間の十分な接触を促進する。諸実施形態では、生理学的に許容可能なビヒクルは、任意のキャリア、溶媒、又は例えばヒトの毛髪及びヒトの皮膚などの生体組織への塗布に適した溶媒含有組成物であってもよい。諸実施形態では、生理学的に許容可能なビヒクルは、美容上又は皮膚科学的に許容可能なキャリアである。
【0075】
好適なビヒクルは、溶媒であってよい。例えば、パーソナルケア製品用途及びコンシューマケア製品用途では、水が有用な溶媒である。諸実施形態では、本明細書に記載される組成物は、組成物の総重量に対して、1重量%〜98重量%の量で水を含んでよい。水はまた、生理学的に許容可能なビヒクルである。追加の溶媒又は溶媒含有の生理学的に許容可能なビヒクルとしては、限定するものではないが、ヒドロキシル含有液体(例えば、アルコール)、シリコーン、油、炭化水素、グリコール、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸ナトリウム、及びこれらの組み合わせが挙げられる。ある実施形態では、例えば、活性物質が、少なくとも部分的に水中で不溶性である場合、生理学的に許容可能なビヒクルとして、単独で又は互いに及び/若しくは水と組み合わされて、その他の溶媒、分散剤、又は乳化剤を使用してよい。
【0076】
したがって、好適なビヒクルを一般に使用して、成分を希釈及び/又は乳化させて、本明細書に記載される組成物を形成する。好適なビヒクルは、成分(真溶液若しくはミセル溶液)を溶解してもよいし、又は成分がビヒクル(懸濁液、分散体又はエマルション)全体に分散されてもよい。懸濁液、分散体又はエマルションのビヒクルは、典型的にはこれらの連続相である。すなわち、懸濁液、分散体又はエマルションの他の成分は、分子レベルで、又は分離した若しくは疑集した粒子として、ビヒクル全体に分配される。活性物質のこのようなエマルション又は分散体の調製は、このような場合、非常に重要であり得る。小粒子は、活性物質、基材及び光酸触媒の間の密接な接触に寄与し、反応速度を増加させる。例えば、水媒体中で脂肪族アルコール及び8−ヒドロキシキノリンを使用する毛髪表面改質の場合、非常に小さい粒子(例えば、500ナノメートル未満、より好ましくは200ナノメートル未満)を含有するエマルションが、耐久性のある疎水性表面の提供において、大粒子を含有するエマルションより明らかに効果的な場合がある(例えば、実施例4対4Aに対応する図7のデータを参照のこと)。
【0077】
当業者には、適切なビヒクル(単一又は複数)が、本明細書に記載される組成物内で使用される特定の活性物質(単一又は複数)、光触媒(単一又は複数)、及びその他の任意成分(単一又は複数)に依存することが容易に明らかとなろう。
【0078】
任意構成成分
本明細書に記載される組成物及び方法は、所望により種々の成分を含んでよい。例えば、諸実施形態では、本明細書に記載される組成物及び方法は、界面活性剤、乳化剤、酸化剤、還元剤、pH調整剤、皮膚軟化剤、湿潤剤、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、添加ポリマー、つや出し剤、油及び/又は脂肪酸、潤滑剤、金属イオン封鎖剤/キレート剤、帯電防止剤、レオロジー調整剤、感触改良剤(feel agents)、充填剤、染料、防腐剤、香料、その他の機能性成分、又はこれらの組み合わせを含んでよい。特定の任意成分は、CTFA International Cosmetic Ingredient Dictionary,Tenth Edition,2004;及びMcCutcheon,Detergents and Emulsifiers,North American Edition(1986)に見い出すことができる。当業者には、利用される特定の任意成分が、少なくとも部分的には、組成物及び方法の特定の用途に依存することが容易に明らかである。
【0079】
諸実施形態では、本明細書に記載される組成物及び方法として、酸化剤(酸化剤)が挙げられる。酸化剤を加えて、例えば、基材表面を、本明細書に記載される様々な実施形態による光触媒共有結合改質/官能化の影響をより受けやすくしてもよい。酸化剤は、組成物の総重量に対して、0.00050重量%〜25重量%の量で存在してよい。好適な酸化剤としては、例えば、過酸化水素、過酸化尿素、メラミン過酸化物、過炭酸塩、アルカリ金属の臭素酸塩、過ホウ酸塩、臭素酸塩、次亜塩素酸塩、亜塩素酸塩、緑泥石、過塩素酸塩、ヨウ素酸塩、過ヨウ素酸塩、過マンガン酸塩及び過硫酸塩のうちの1つ以上が挙げられる。ある実施形態では、酸化剤は過酸化水素である。
【0080】
反応系の同一性、利用される試薬の量及び濃度、並びに反応条件は全て、少なくとも部分的には、改質される基材、利用される活性物質、及び活性物質が基材に会合する態様に依存する。これらの考察は、本明細書に記載される組成物及び方法の実施において、当業者には容易に判断可能である。
【実施例】
【0081】
以下の実施例は、本明細書に記載される組成物及び方法の態様をより明確に示すことを意図しているが、これらの範囲に制限しようとするものではない。
【0082】
(実施例1A)
プロトタイプシリコーンエマルション1Aの調製
200mLのテトラヒドロフランを含有している500mLのビーカーに、6.0グラムのシリコーンポリマー(Dow Corning(登録商標)5562 Carbinol Fluid)を加え、穏やかに混合しながら溶解させる。この溶液に、Silverson(登録商標)L4RTホモジナイザーを6000rpmで用い、高せん断下で、200mLの水を滴加する(15分かけて滴加する)。得られるエマルションを、高せん断下で更に2時間にわたって持続的に混合する。次いで、0.030グラムの8−ヒドロキシキノリンを加え、組成物を10分にわたって攪拌する。
【0083】
(実施例1B)
プロトタイプシリコーンエマルション1Bの調製
シリコーンポリマー;Dow Corning(登録商標)5562 Fluidを、Momentive(登録商標)シリコーンポリマーBaysilone OF OH 702Eに変えて、実施例1Aの手順を繰り返す。
【0084】
(実施例2A)
プロトタイプシリコーンエマルション1Aに浸漬することによる毛髪処理
20cm長(4.0グラム)のヘアピースを漂白溶液で酸化し、洗浄し風乾させる。暗室にて、実施例1Aのエマルション100.0gを収容するビーカー内にヘアピースを浸漬する。ヘアピースを、15分後にビーカーから取り出し、明るい光(Aquarium 20W蛍光灯AquaRays(登録商標)型番F20WT12−AR−FS)に15分間曝露する。次いでヘアピースを100mLのメチルイソブチルケトン/トルエン(1:1)で3回すすぎ、次いでこの溶媒混合物の新しい溶液250mLに30分にわたって浸漬し、次いで吊るして空気乾燥させる。乾燥させた後、ヘアピースを洗浄シャンプー(Pantene Pro−V(登録商標)Clarifying Shampoo)で洗浄し、水道水で3.0分間完全にすすぎ、少なくとも5時間風乾させる。洗浄/すすぎ洗いを3回繰り返す。更に2つの同等のヘアピース(同一ロットから)で、手順を繰り返す。
【0085】
(実施例2B)
プロトタイプシリコーンエマルション1Bに浸漬することによる毛髪処理
プロトタイプシリコーンエマルション1Aをプロトタイプシリコーンエマルション1Bに替え、実施例2Aの手順を繰り返す。
【0086】
本明細書に記載される組成物及び方法の様々な実施形態は、主として、毛髪、皮膚及び布地基材に関連して議論される。それにもかかわらず、以下の請求項で明らかにされる本発明は任意の特定の基材への塗布に限定されるものではないことが認識されている。以下の請求項で明らかにされる本発明は、当業者により理解可能であるように、本明細書に記載される組成物及び方法による表面の処理が有用である任意の基材に関連して使用されてよい。このような基材の非限定例としては、例えば、布地、紙、木材、プラスチック、ガラス、タイル、石、コンクリート、煉瓦、その他のセラミックス、及び複合材料が挙げられる。
【0087】
相互参照される又は関連するあらゆる特許又は出願書類を含め、本明細書において引用される全ての文献は、明示的に除外ないしは制限されない限り、その全体を参考として本明細書に組み込まれる。いかなる文献の引用も、それが本明細書において開示され請求されるいずれかの発明に関する先行技術であること、又はそれが単独で若しくは他のいかなる参照とのいかなる組み合わせにおいても、このような発明を教示する、提案する、又は開示することを認めるものではない。更に、本書における用語のいずれかの意味又は定義が、参考として組み込まれた文献における同一の用語のいずれかの意味又は定義と相反する限りにおいて、本書においてその用語に与えられた定義又は意味が適用されるものとする。
【0088】
本発明の特定の実施形態が例示され、記載されてきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、他の様々な変更及び修正を実施できることが、当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内にあるそのような全ての変更及び修正を、添付の「特許請求の範囲」で扱うものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の処理方法であって、
少なくとも1つの活性物質を前記基材に塗布する工程であって、前記活性物質は、1つ以上の官能基を有し、前記基材は、1つ以上の補完的な官能基を有する、工程と、
光に曝露した際に酸又は塩基を生成可能な少なくとも1つの光触媒を前記基材に塗布する工程と、
前記光触媒及び前記少なくとも1つの活性物質を光に曝露して、前記少なくとも1つの活性物質の前記1つ以上の官能基と、第2活性物質、基材、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される試薬との間に共有結合を形成する工程と、
を含み、
前記活性物質は、シリコーンポリマー及びシリコーンオリゴマーからなる群から選択され、前記活性物質は、1000グラム/モルを超える分子量を有し、かつ少なくとも1つの有機官能基を有し、
好適なビヒクルは、前記活性物質と前記基材との間の十分な接触を促進し、
前記ビヒクルは水である、方法。
【請求項2】
前記共有結合が、前記少なくとも1つの活性物質の前記1つ以上の官能基と第2活性物質との間に存在して、生成物を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生成物が基材と更に反応する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記共有結合が、前記少なくとも1つの活性物質の前記1つ以上の官能基と前記基材との間のエステル化反応の結果である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
パーソナルケア組成物であって、
(a)酸又は塩基の存在下にて1つ以上の補完的な官能基に共有結合可能な1つ以上の官能基を有する活性物質と、
(b)光に曝露した際に酸又は塩基を生成可能な光触媒と、
(c)前記組成物を基材に塗布するために前記活性物質及び前記光触媒を分散又は溶解させるための生理学的に許容可能なビヒクルと、
を含み、前記基材が毛髪、皮膚、爪、歯及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、
前記活性物質は、シリコーンポリマー及びシリコーンオリゴマーからなる群から選択され、前記活性物質は、1000グラム/モル(mole)を超える分子量を有し、かつ少なくとも1つの有機官能基を有し、
前記生理学的に許容可能なビヒクルは水である、パーソナルケア組成物。
【請求項6】
前記活性物質が、50,000グラム/モルを超える分子量を有する、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1つの有機官能基が、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記活性物質がビス−ヒドロキシエトキシプロピルジメチコン(Hydroxyethyoxypropyl Dimethicone)である、請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
界面活性剤、乳化剤、酸化剤、pH調整成分、感触改良剤、レオロジー変性剤、充填剤、香料、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される成分を更に含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項10】
前記光触媒が、芳香族ヒドロキシル化合物、スルホン化ピレン化合物、オニウム塩、ジアゾメタン誘導体、ビススルホン誘導体、ジスルホノ誘導体、ニトロベンジルスルホネート(nitrobynzyl sulfonate)誘導体、スルホン酸エステル誘導体、N−ヒドロキシイミドのスルホン酸エステル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される光酸であり、前記光触媒に吸収される光が、紫外線、可視光、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項11】
前記光酸が芳香族ヒドロキシル化合物である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記芳香族ヒドロキシル化合物がヒドロキシル置換キノリンである、請求項10に記載の組成物、好ましくは前記ヒドロキシル置換キノリンが8−ヒドロキシキノリンである、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
前記光触媒が、ヒドロキシル置換キノリン、トリチルアルコール誘導体及びアクリジン誘導体からなる群から選択される光塩基であり、好ましくは前記光塩基はマラカイトグリーンであり、より好ましくは前記光塩基は9−ヒドロキシ−10−メチル−9−フェニル−9,10−ジヒドロアクリジンであり、かつ前記光触媒は、前記組成物の合計重量に対して0.00050重量%〜10重量%の量で存在する、請求項10に記載の組成物。
【請求項14】
前記活性物質がビス−ヒドロキシエトキシプロピル(Hydroxyethyoxypropyl)ジメチコンを含み、前記光触媒が8−ヒドロキシキノリンを含み、前記ビヒクルがラウリル硫酸ナトリウムを含み、前記組成物が水及び過酸化水素を更に含む、請求項5に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図3A】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−510864(P2013−510864A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538961(P2012−538961)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際出願番号】PCT/US2010/056287
【国際公開番号】WO2011/060110
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】