説明

光触媒粒子及びそれを用いたハードコート膜形成性組成物

【課題】 従来のハードコート膜の耐擦傷性、耐磨耗性を保有しつつ、指先入力タッチ面に付着した指紋等の脂汚れを分解することが可能なタッチパネルやディスプレイ等の表面保護用ハードコート膜形成性組成物を提供する。
【解決手段】 担体粒子表面に二酸化チタンと酸化アルミニウムが被覆されてなる表面に凹凸を有する光触媒粒子であって、凹部が二酸化チタンのみからなり、凸部が酸化アルミニウムのみからなることを特徴とする光触媒粒子及び該光触媒粒子を含有するハードコート膜形成性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒粒子及びそれを用いたハードコート膜形成性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、透明ハードコート膜は、各種画像表示装置、例えばLCD(液晶表示体)、タッチパネル、CRT(ブラウン管)、PDP(プラズマディスプレイパネル)、EL(エレクトロルミネッセンス)及び光ディスクにおいて、表面保護を始め、防眩性や反射防止等の目的に用いられている。
また、近年市場が増大している携帯用の情報端末への入力装置として、タッチパネルが利用されている。このタッチパネルは、ディスプレイ画面を直接指、ペン等で触れることによってデータを入力する装置である。上記タッチパネルは、約9割に抵抗膜方式が採用されている。抵抗膜方式のタッチパネルは、透明プラスチック基材の片面に錫ドープ酸化インジウム(ITO)膜等の透明導電性薄膜を積層したタッチ側プラスチック基板と、ガラス等の透明基材の片面にITO膜等の透明導電性薄膜を積層したディスプレイ側透明基板とを、絶縁スペーサーを介して、各透明導電性薄膜が向き合うように対向配置させた構造をからなる。そして、ペンや指でタッチ側プラスチック基板のタッチ入力面を押圧し、タッチ側プラスチック基板の透明導電性薄膜とディスプレイ側透明基板の透明導電性薄膜とを接触させることで入力を行う。このような抵抗膜方式タッチパネルにおいては、入力操作を繰り返すことによりタッチ側表面を損傷したり、タッチ側プラスチック基板(基材フィルム)の透明導電性薄膜が磨耗したり、クラックが発生したり、更には基材から剥離してしまう等の問題を生ずる。そこで、このような問題を解決するために一般にタッチ側表面及び透明プラスチック基材と透明導電性薄膜との間に合成樹脂からなるハードコート層を設けることが行われている。
【0003】
従来のハードコート膜は、汚れ防止や汚れ除去性を付与するためにハードコート剤にフッ素系界面活性剤を配合し、得られる硬化膜を撥水化する技術(特許文献1参照)、ポリフルオロアルキル基を有する重合性モノマーと光硬化性官能基を有する重合性モノマーとの共重合体とする等光硬化性官能基を有するフッ素系重合体を硬化成分として用いる技術(特許文献2参照)等、フッ素に由来する高い撥水性を利用して、ハードコート剤に指紋汚れ防止性を付与する技術が提案されている。しかし、得られる硬化膜は脂成分である指紋汚れを弾き、一定の汚れ付着低減効果はあるものの、完全に付着が防止できるものではなく、表面に弾かれたまま残存した指紋は光による乱反射を受けて、かえって外観上汚れが目立ちやすくなり、満足できるものではない。
これに対して、基材表面とシロキサン結合を介して親油性の被膜を形成させることで指紋と馴染みやすくし外観上の汚れを目立たなくする技術も提案されている(例えば特許文献3参照)。しかし、得られる被膜はハードコート性を有しないものであり、また、付着した指紋汚れは堆積しやすく、その拭取りが困難になるという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−1101118号公報
【特許文献2】特開2002−241446号公報
【特許文献3】特開2001−353808号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、従来のハードコート膜の耐擦傷性、耐磨耗性を保有しつつ、指先入力タッチ面に付着した指紋等の脂汚れを分解することが可能なタッチパネルやディスプレイ等の表面保護用ハードコート膜形成性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記問題を解決するために鋭意検討した結果本発明に到達した。即ち本発明は、担体粒子表面に二酸化チタンと酸化アルミニウムが被覆されてなる表面に凹凸を有する光触媒粒子であって、凹部が二酸化チタンのみからなり、凸部が酸化アルミニウムのみからなることを特徴とする光触媒粒子;該光触媒粒子、光重合性化合物及び光重合開始剤を含有してなるハードコート膜形成性組成物;該ハードコート膜形成性組成物を重合して得られるハードコート膜;である。
【発明の効果】
【0007】
本発明のハードコート膜形成性組成物を用いて作製したハードコート膜は、従来のハードコート膜の耐擦傷性、耐磨耗性を保有しつつ、付着した指紋等の汚れを分解することができる。したがって、タッチパネルやディスプレイ等の表面保護用ハードコート膜として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の光触媒粒子は、担体粒子表面に二酸化チタンと酸化アルミニウムを被覆して得られる表面に凹凸を有する光触媒粒子であって、凹部が二酸化チタンのみからなり、凸部が酸化アルミニウムのみからなることを特徴とする。
【0009】
担体粒子としては、光透過性粒子を有する粒子を使用することが好ましく、材質としてはシリカ及びゼオライト等が挙げられる。
【0010】
前記凹凸構造を有する光触媒を製造する方法としては、凹部が二酸化チタンであり凸部が酸化アルミニウムであれば特に制限されないが、被膜の均一性の観点から原子層堆積法を用いることが好ましい。
【0011】
原子層堆積法とは、一般的には、反応性基を表面に有する担体粒子と気体状の金属化合物とを加熱することにより反応させて担体粒子の表面に金属化合物層を形成させた後、未反応の気体状の金属化合物を取り除き、金属化合物層を形成した粒子と、水蒸気、酸素、オゾン又は亜酸化窒素とを反応させて金属化合物層を金属酸化物層へ変化させることにより、担体粒子の表面を金属酸化物層で被覆する方法である。
【0012】
反応性基としては、気体状の金属化合物と反応し得るものであれば制限がないが、反応性の観点から、活性水素を有する基が好ましく、更に好ましくは水酸基である。本発明における光透過性粒子の材質として挙げたシリカ及びゼオライトは表面に水酸基を有する。
【0013】
本発明において光透過性粒子を二酸化チタンで被覆するための気体状の金属化合物としては塩化チタン、ヨウ化チタン及びチタンアルコキシド等が挙げられるが、反応性の観点から塩化チタンが好ましい。
【0014】
本発明において光透過性粒子を酸化アルミニウムで被覆するための気体状の金属化合物としては塩化アルミニウム、ヨウ化アルミニウム及びトリメチルアルミニウム等が挙げられるが、反応性の観点からトリメチルアルミニウムが好ましい。
【0015】
反応容器としては、耐熱・耐圧容器であって、加熱装置、気体導入口及び減圧装置が設置され、気体状の金属化合物と反応しない材質のものが好ましい。
【0016】
反応容器内の水分は、金属化合物の安定性の観点から、好ましくは100ppm以下、更に好ましくは10ppm以下である。
金属化合物と光透過性粒子の表面の水酸基との反応温度(℃)は、通常700℃以下、好ましくは30〜500℃である。反応温度が700℃を超えるとアナタース型の二酸化チタンがルチル型に変化してしまい、触媒活性が低下する。
【0017】
未反応の金属化合物を取り除くには、容器内を減圧にする方法及び容器内を不活性ガス(窒素ガス及びヘリウムガス等)で置換する方法等が適用できる。
上述の通り、金属化合物層と水蒸気とを反応させることにより、金属化合物を二酸化チタン又は酸化アルミニウムに変化させることができる。ニ酸化チタンを形成させる場合の反応温度(℃)は、通常700℃以下、好ましくは30〜500℃である。反応温度が700℃を超えるとアナタース型の二酸化チタンがルチル型に変化してしまい、触媒活性が低下する。
【0018】
上記原子堆積法においては、1回の堆積工程で約0.2nmの被覆層が形成され、工程を繰り返すことにより被覆層の厚みを調整することができる。
第1回目の堆積工程で、二酸化チタンに変換される金属化合物と酸化アルミニウムに変換される金属化合物の混合物を使用し、その量を調整することにより、担体粒子表面における二酸化チタンで被覆される部分と酸化アルミニウムで被覆される部分の面積を調整することができる。
【0019】
本発明においては二酸化チタンのみからなる凹部と酸化アルミニウムのみからなる凸部を担体粒子上に形成させるため、2回目以降の堆積工程における二酸化チタンに誘導される金属化合物又は酸化アルミニウムに誘導される金属化合物は、第1回目の堆積工程で担体粒子表面を被覆した同種の金属化合物上にのみ堆積されることが必要である。この選択的な堆積は、第1回目の堆積工程後に、堆積させたい一方の金属化合物のみを金属酸化物に変換して同種の金属化合物を堆積することにより達成される。
【0020】
例えば、まず、第1回目の堆積工程で2種類の金属化合物(トリメチルアルミニウム及び塩化チタン)を用い、担体粒子の表面に2種類の金属化合物の被覆層を形成させる。引き続き、凸部を形成する金属化合物(トリメチルアルミニウム)のみを金属酸化物(酸化アルミニウム)に変換する気体(例えば亜酸化窒素)を使用し、凸部を形成する金属化合物(トリメチルアルミニウム)を金属酸化物(酸化アルミニウム)に変換する。続いて凸部を形成する金属化合物(トリメチルアルミニウム)を導入し、金属酸化物(酸化アルミニウム)の表面を金属化合物(トリメチルアルミニウム)に変換する。この工程を繰り返すことで、凸部の金属酸化物(酸化アルミニウム)の厚みを厚くすることができる。
続いて凹部となる金属化合物(塩化チタン)のみを金属酸化物(二酸化チタン)に変換する気体(例えば酸素)を導入し、凹部を形成する金属化合物(塩化チタン)を金属酸化物(二酸化チタン)に変換する。続いて凹部を形成する金属化合物(塩化チタン)を導入し、金属酸化物(二酸化チタン)の表面を金属化合物(塩化チタン)に変換する。この工程を繰り返すことで、凹部の金属酸化物(二酸化チタン)の厚みを厚くすることができる。
【0021】
上記選択的堆積工程を繰り返して、最終的に二酸化チタンに変換される金属化合物による堆積工程より酸化アルミニウムに変換される金属化合物による堆積工程を多くすることにより、酸化アルミニウムからなる凸部と二酸化チタンからなる凹部を表面に有する粒子を得ることができる。
【0022】
本発明の光触媒粒子を含有する後述のハードコート膜形成性組成物を光硬化して得られるハードコート膜は、その表面に前記凹凸構造を有する光触媒粒子が存在することにより、指紋等の汚れが二酸化チタンにより分解され、かつ、その凹凸構造により二酸化チタンが直接ハードコート層を形成する樹脂と接触することがなく樹脂の劣化を防ぐことができる。
【0023】
担体粒子を被覆するニ酸化チタン部分の膜厚は、特に限定されないが、触媒活性の観点から、4〜30オングストロームであることが好ましく、更に好ましくは8〜20オングストローム、特に好ましくは10〜16オングストロームである。
【0024】
担体粒子を被覆する酸化アルミニウム部分の膜厚は、樹脂の分解を防止するという観点から、二酸化チタン部分の膜厚より厚いことが必要があり、好ましくは8〜60オングストローム、更に好ましくは16〜40オングストローム、特に好ましくは20〜32オングストロームで、かつ二酸化チタン部分との膜厚との差が好ましくは4〜30オングストローム、更に好ましくは8〜20オングストローム、特に好ましくは10〜16となる値である。
本発明におけるニ酸化チタン部分及び酸化アルミニウム部分の膜厚は実施例に記載の方法で測定される。
【0025】
本発明のハードコート膜形成性組成物は、本発明の光触媒粒子、光重合性化合物、光重合開始剤及び必要により有機溶剤を含有する。
光重合性化合物としては、光重合性モノマー、光重合性プレポリマー及びこれらの混合物が挙げられる。
【0026】
光重合性モノマーとしては、例えば1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸オキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート及びカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能アクリレートが挙げ等れる。これらの光重合性モノマーは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0027】
光重合性プレポリマーとしては、ラジカル重合型光重合性プレポリマー及びカチオン重合型光重合性プレポリマーが挙げられる。
【0028】
ラジカル重合型光重合性プレポリマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート系、エポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系及びポリオール(メタ)アクリレート系プレポリマー等が挙げられる。
【0029】
ポリエステル(メタ)アクリレート系プレポリマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、又は、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
エポキシ(メタ)アクリレート系プレポリマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラックエポキシ樹脂のオキシラン環と、(メタ)アクリル酸との反応でエステル化することにより得ることができる。
ウレタン(メタ)アクリレート系プレポリマーは、例えばポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸との反応でエステル化することにより得ることができる。
ポリオール(メタ)アクリレート系プレポリマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸との反応でエステル化することにより得ることができる。
これらの光重合性プレポリマーは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0030】
カチオン重合型光重合性プレポリマーとしては、エポキシ系樹脂が通常使用される。エポキシ系樹脂としては、例えばビスフェノールやノボラック樹脂等の多価フェノール類にエピクロルヒドリン等でエポキシ化した化合物、直鎖状オレフィン化合物や環状オレフィン化合物を過酸化物等で酸化して得られた化合物等が挙げられる。
これらの光重合性プレポリマーは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0031】
光重合開始剤としては、ラジカル重合型光重合性プレポリマーや光重合性モノマーに対しては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール及びp−ジメチルアミノ安息香酸エステル等が挙げられる。
【0032】
また、カチオン重合型光重合性プレポリマーに対する光重合開始剤としては、例えば芳香族スルホニウムイオン、芳香族オキソスルホニウムイオン及び芳香族ヨードニウムイオン等のオニウムと、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモネート及びヘキサフルオロアルセネート等の陰イオンとからなる化合物が挙げられる。
光重合開始剤は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0033】
有機溶剤としては、例えば、炭素数1〜10のアルコール(メタノール、エタノール、n−又はi−プロパノール、n−、sec−又はt−ブタノール、ベンジルアルコール及びオクタノール等)、炭素数3〜8のケトン(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、ジブチルケトン及びシクロヘキサノン等)、炭素数4〜10のエステル又はエーテルエステル(酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、エチレングリコールモノメチルアセテート及びプロピレングリコールモノメチルアセテート等)、炭素数4〜10のエーテル[エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソロブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソロブ)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソロブ)及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等]、炭素数6〜10の芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン及びキシレン等)、炭素数3〜10のアミド(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド及びN−メチルピロリドン等)、炭素数1〜4のハロゲン化炭化水素(メチレンジクロライド及びエチレンジクロライド等)、石油系溶剤(石油エーテル及び石油ナフサ等)が挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
有機溶剤の使用量は、光触媒粒子、光重合性化合物及び光重合開始剤の合計重量を基準として、通常400重量%以下、取り扱いの容易さ及び塗工安定性の観点から好ましくは25〜250重量%、更に好ましくは40〜150重量%である。
【0034】
光触媒粒子の使用量は、光重合性化合物の重量に基づいて1〜20重量%であることが好ましく、更に好ましくは2〜15重量%である。使用量が0.1重量%より少ないと分解性が低下する傾向にあり、20重量部を超えるとハードコート層の物性が低下する傾向にある。
また、光重合開始剤の使用量は、光重合性化合物の重量に基づいて0.2〜10重量%であることが好ましい。
【0035】
本発明のハードコート膜形成性組成物を硬化させるためには紫外線を使用する。光源は特に限定さす、高圧水銀ランプ、ヒュージョンHランプ及びキセノンランプ等を用いることができ、照射量は、通常100〜500mJ/cm2である。
本発明のハードコート膜形成性組成物を硬化させて得られるハードコート膜の硬度は、鉛筆硬度でH以上であれば、ハードコート膜に必要な耐スクラッチ性を備えることができる。耐スクラッチ性をより十分なものにするには、鉛筆硬度で2H以上のものが特に好適である。また、該ハードコート層の厚さは2〜20μmの範囲で選定されることが好ましく、更に好ましくは2〜15μmである。この厚さが2μm未満では耐擦傷性が低下する傾向にあり、20μmを超えるとクラックが発生する場合がある。
【実施例】
【0036】
以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれらにより制限されるものではない。以下、特に規定しない限り、%は重量%、部は重量部を示す。
【0037】
<実施例1>
(1)減圧可能な容器にシリカ粒子(日本アエロジル株式会社製、AEROSIL200)50部を入れ、密封して100℃まで加熱し、−0.2MPaまで減圧して20分間保持した。
(2)続いて、100℃に保持しながら、容器内圧力を窒素ガス(純度:99.999%)を使用して−0.05MPaにした後、塩化チタンとトリメチルアルミニウムを容器内に0MPaになるまで仕込んだ。100℃で1分間保持した後、再び−0.2MPaまで減圧した。続いて、100℃に保持しながら、窒素ガスで0MPaにした後、−0.2MPaまで減圧し、窒素ガスにより−0.05MPaにし、亜酸化窒素を容器内に0MPaになるまで仕込んだ。100℃で5分間保持した後、再び−0.2MPaまで減圧した。
(3)続いて、100℃に保持しながら、容器内圧力を窒素ガス(純度:99.999%)を使用して−0.05MPaにした後、トリメチルアルミニウムを容器内に0MPaになるまで仕込んだ。100℃で1分間保持した後、再び−0.2MPaまで減圧した。続いて、100℃に保持しながら、窒素ガスで0MPaにした後、−0.2MPaまで減圧し、窒素ガスにより−0.05MPaにし、亜酸化窒素を容器内に0MPaになるまで仕込んだ。100℃で5分間保持した後、再び−0.2MPaまで減圧した。
(4)(3)の操作を更に3回繰り返した。続いて、100℃に保持しながら、容器内圧力を窒素ガス(純度:99.999%)を使用して−0.05MPaにした後、トリメチルアルミニウムを容器内に0MPaになるまで仕込んだ。100℃で1分間保持した後、再び−0.2MPaまで減圧した。続いて、100℃に保持しながら、窒素ガスで0MPaにした後、−0.2MPaまで減圧し、窒素ガスにより−0.05MPaにし、酸素を容器内に0MPaになるまで仕込んだ。100℃で5分間保持した後、再び−0.2MPaまで減圧した。
(5)続いて、100℃に保持しながら、容器内圧力を窒素ガス(純度:99.999%)を使用して−0.05MPaにした後、塩化チタンを容器内に0MPaになるまで仕込んだ。100℃で1分間保持した後、再び−0.2MPaまで減圧した。続いて、100℃に保持しながら、窒素ガスで0MPaにした後、−0.2MPaまで減圧し、窒素ガスにより−0.05MPaにし、酸素を容器内に0MPaになるまで仕込んだ。100℃で5分間保持した後、再び−0.2MPaまで減圧した。
(6)(5)の操作を更に8回繰り返し、25℃に冷却して常圧に戻し、二酸化チタン及び酸化アルミニウムで被覆された光触媒粒子(L−1)を得た。
【0038】
<実施例2>
(3)の操作の繰り返し行わなかったことと、(5)の操作の繰り返し回数を2回に変更したこと以外は実施例1と同様にして、光触媒粒子(L−2)を得た。
【0039】
<実施例3>
(5)の操作の繰り返し回数を13回に変更したことと、(5)の操作の繰り返し回数を28回に変更したこと以外は実施例2と同様にして、光触媒粒子(L−3)を得た。
【0040】
<実施例4>
(3)の操作の繰り返し回数を3回に変更したことと(5)の操作の繰り返し回数を5回に変更したこと以外は実施例2と同様にして、光触媒粒子(L−4)を得た。
【0041】
<実施例5>
(5)の操作の繰り返し回数を18回に変更したこと以外は実施例4と同様にして、光触媒粒子(L−5)を得た。
【0042】
<比較例1>
(5)の操作の繰り返し回数を48回に変更したこと以外は実施例4と同様にして、比較用の光触媒粒子(H−1)を得た。
【0043】
<比較例2>
(1)減圧可能な容器にシリカ粒子(日本アエロジル株式会社製、AEROSIL200)50部を入れ、密封して100℃まで加熱し、−0.2MPaまで減圧して20分間保持した。
(2)続いて、100℃に保持しながら、容器内圧力を窒素ガス(純度:99.999%)を使用して−0.05MPaにした後、塩化チタンを容器内に0MPaになるまで仕込んだ。100℃で1分間保持した後、再び−0.2MPaまで減圧した。続いて、100℃に保持しながら、窒素ガスで0MPaにした後、−0.2MPaまで減圧し、窒素ガスにより−0.05MPaにし、酸素を容器内に0MPaになるまで仕込んだ。100℃で5分間保持した後、再び−0.2MPaまで減圧した。
(3)(2)の操作を更に4回繰り返し、25℃に冷却して常圧に戻し、二酸化チタンで被覆された比較用の光触媒粒子(H−2)を得た。
【0044】
<比較例3>
(1)減圧可能な容器にシリカ粒子(日本アエロジル株式会社製、AEROSIL200)50部を入れ、密封して100℃まで加熱し、−0.2MPaまで減圧して20分間保持した。
(2)続いて、100℃に保持しながら、容器内圧力を窒素ガス(純度:99.999%)を使用して−0.05MPaにした後、トリメチルアルミニウムを容器内に0MPaになるまで仕込んだ。100℃で1分間保持した後、再び−0.2MPaまで減圧した。続いて、100℃に保持しながら、窒素ガスで0MPaにした後、−0.2MPaまで減圧し、窒素ガスにより−0.05MPaにし、亜酸化窒素を容器内に0MPaになるまで仕込んだ。100℃で5分間保持した後、再び−0.2MPaまで減圧した。
(3)(2)の操作を更に4回繰り返し、25℃に冷却して常圧に戻し、酸化アルミニウムで被覆された比較用の光触媒粒子(H−3)を得た。
【0045】
<実施例6>
攪拌装置、温度計を取り付けた反応容器にジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(ネオマーDA−600、三洋化成工業製)100部に1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュア184、チバスペシャリティ社製)10部、有機変性ポリシロキサン[BYK−373、BYK Chemie(株)製]2部、実施例1で作製した光触媒粒子(L−1)10部を加え30rpm、55℃で2時間攪拌を行うことにより、ハードコート膜形成性組成物(Q1)を得た。
【0046】
<実施例7>
光触媒粒子(L−1)の代わりに光触媒粒子(L−2)を使用したこと以外は実施例6と同様にしてハードコート膜形成性組成物(Q2)を得た。
【0047】
<実施例8>
光触媒粒子(L−1)の代わりに光触媒粒子(L−3)を使用したこと以外は実施例6と同様にしてハードコート膜形成性組成物(Q3)を得た。
【0048】
<実施例9>
光触媒粒子(L−1)の代わりに光触媒粒子(L−4)を使用したこと以外は実施例6と同様にしてハードコート膜形成性組成物(Q4)を得た。
【0049】
<実施例10>
光触媒粒子(L−1)の代わりに光触媒粒子(L−5)を使用したこと以外は実施例6と同様にしてハードコート膜形成性組成物(Q5)を得た。
【0050】
<実施例11>
光触媒粒子(L−1)10部を光触媒粒子(L−1)1部に変更したこと以外は実施例6と同様にしてハードコート膜形成性組成物(Q6)を得た。
【0051】
<実施例12>
光触媒粒子(L−1)10部を光触媒粒子(L−1)20部に変更したこと以外は実施例6と同様にしてハードコート膜形成性組成物(Q7)を得た。
【0052】
<比較例4>
光触媒粒子(L−1)を使用しないこと以外は実施例6と同様にして比較用のハードコート膜形成性組成物(R1)を得た。
【0053】
<比較例5>
光触媒粒子(L−1)の代わりにシリカ粒子(日本アエロジル株式会社製、AEROSIL200)を使用したこと以外は実施例6と同様にして比較用のハードコート膜形成性組成物(R2)を得た。
【0054】
<比較例6>
光触媒粒子(L−1)の代わりに光触媒粒子(H−1)を使用したこと以外は実施例6と同様にして比較用のハードコート膜形成性組成物(R3)を得た。
【0055】
<比較例7>
光触媒粒子(L−1)の代わりに光触媒粒子(H−2)を使用したこと以外は実施例6と同様にしてハードコート膜形成性組成物(R4)を得た。
【0056】
<比較例8>
光触媒粒子(L−1)の代わりに光触媒粒子(H−3)を使用したこと以外は実施例6と同様にしてハードコート膜形成性組成物(R5)を得た。
【0057】
上記組成物(Q1)〜(Q7)及び(R1)〜(R5)各50部に希釈有機溶剤としてトルエン100部を加え、ディスパーザーで均一になるまで撹拌したものを、縦30cm、横30cm、厚さ80μmの酢酸セルロースフィルム[商品名「フジタック」、富士写真フィルム(株)製]の片面にバーコーターを用い、乾燥硬化後の厚みが5μmとなるように塗布して被膜層を形成させ、60℃で3分間乾燥した後、該被膜層に紫外線照射装置[フュージョンUVシステムズ(株)製]により、照射強度200mW/cm2、搬送速度15m/sの条件で紫外線を照射し、硬化処理を行ってハードコートフィルムを作製した。得られたハードコートフィルムについて下記の方法で性能評価を行った。評価結果を使用した触媒粒子の被覆層の膜厚と共に表1に示す。
【0058】
<指紋分解性>
被検体のハードコートフィルムをハードコート層表面が上になるように黒色板上に置き、ハードコート層表面に指をゆっくり押し当てて、付着した指紋の跡が24時間後に視認できるか否かを判定した。この判定は無作為に抽出した試験者10人によって行い、付着した指紋の跡を視認できなかった人数で指紋付着防止性を10点満点で表した。指紋付着性には個人差があるが、本試験は10人の試験者を無作為に選択したので、平均的な指紋分解性に対する試験と考えられる。
【0059】
<鉛筆硬度>
JIS K5400に準じ、鉛筆を45度の角度で、上から1kgの荷重をかけて5mm程度引っかき、傷の付き具合を確認した。同様の試験をハードコートフィルム作製から30日後にも行った。
【0060】
<耐擦傷性>
スチールウール#0000を用い、1cm2当たり250gの荷重をかけて30往復擦傷後、外観を目視により下記の基準で評価した。同様の試験をハードコートフィルム作製から30日後にも行った。
◎ 全く傷が付かない。
△ 引っかき傷が数本程度認められる。
× 多数の引っかき傷が認められ、表面が白濁する
<ヘーズ>
JIS K7105(1981年制定)に準拠し、ヘーズメータ[型番「haze−gard dual」、BYK gardner(株)製]を用いてヘーズ(%)を測定し、下記の基準で評価した。
◎ ヘーズが1.5未満
△ ヘーズが1.5〜3.0未満
× ヘーズが3.0〜5.0未満
【0061】
<初期密着性 >
ハードコートフィルムを作製後、直ちにJIS K5400に準じ、碁盤目試験により下記の基準で評価した(隙間間隔1mm)。
◎ 残ったマス目数が100
○ 残ったマス目数が90〜99
△ 残ったマス目数が50〜89
× 残ったマス目数が0〜49
【0062】
<二酸化チタン層及び酸化アルミニウム層の膜厚の測定法>
光触媒粒子10部をエポキシ樹脂[エピコート828、ジャパンエポキシレジン株式会社、「エピコート」は、リソリューション リサーチ ネーデルランド ベスローテン フエンノートシャップの登録商標である。]50部に均一分散させ、熱硬化促進剤としてサンアプロ社製「SA−102」0.4部を加え、90度で加熱硬化した後、硬化体をマイクロカッターで切断し、その断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し、凹部及び凸部についてそれぞれ任意の10点の厚みを測定し、この平均値を算出した。
【0063】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の光触媒粒子及びそれを用いたハードコート膜形成性組成物は、携帯電話等のディスプレイ用のハードコート剤用として極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の光触媒粒子の断面の模式図である。
【符号の説明】
【0066】
A:担体粒子、B:二酸化チタンによる被覆部分、C:酸化アルミニウムによる被覆部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体粒子表面に二酸化チタンと酸化アルミニウムが被覆されてなる表面に凹凸を有する光触媒粒子であって、凹部が二酸化チタンのみからなり、凸部が酸化アルミニウムのみからなることを特徴とする光触媒粒子。
【請求項2】
二酸化チタンからなる凹部の被覆厚みが4〜30オングストロームであり、酸化アルミニウムからなる凸部の被覆厚みが8〜60オングストロームであり、凸部と凹部の被覆厚みの差が4〜30オングストロームである請求項1記載の光触媒粒子。
【請求項3】
前記二酸化チタンと酸化アルミニウムが原子層堆積法を用いて形成されてなる請求項1又は2記載の光触媒粒子。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか記載の光触媒粒子、光重合性化合物及び光重合開始剤を含有してなるハードコート膜形成性組成物。
【請求項5】
請求項4記載のハードコート膜形成性組成物を重合して得られるハードコート膜。

【図1】
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【公開番号】特開2012−71254(P2012−71254A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217820(P2010−217820)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】