説明

光触媒装置

【課題】 光触媒フィルタ・ユニットや光源ユニットが大型化した場合でも、光触媒フィルタや光源の点検、洗浄、交換といったメンテナンス作業を容易に行うことができ、構造が簡単で低コストで実現可能な光触媒装置を提供する。
【解決手段】 光触媒フィルタ30と、それを活性化するためのブラックライト27を含む略平板状の光触媒フィルタ・モジュール20を複数個、ガス流方向にほぼ直交させて相互に隣接配置して構成された光触媒フィルタ・モジュール群20Bと、モジュール群20Bのモジュール20をガス流方向への独立した並進移動が可能な状態で支持するモジュール支持構造(12、24)とを設ける。モジュール群20Bのガス導入端側またはガス排出端側に待機用スペースS1を形成する。モジュール20を適宜、待機用スペースS1に並進移動させることで、メンテナンス用スペースS2を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒フィルタと光源を備えた光触媒装置に関し、さらに言えば、装置の規模が大きくなっても、内蔵する光触媒フィルタや光源の点検、洗浄、交換等のメンテナンス作業が容易に行える光触媒装置に関する。本発明は、光触媒を用いた任意の装置、例えば、光触媒脱臭装置、光触媒殺菌(抗菌)装置、光触媒浄化装置等に適用可能である。
【背景技術】
【0002】
光触媒フィルタと、その光触媒フィルタに紫外線等の光を照射するための光源とを備えた光触媒脱臭装置は、以前から知られている。代表的な光触媒としては、酸化チタン(TiO)がある。この種の光触媒脱臭装置では、光触媒の持つ強力な酸化作用を利用して、被処理ガス中に含まれている臭気を吸着・分解する。換言すれば、光照射によって生成される光触媒の酸化作用で、被処理ガス中に含まれる有機物を水と二酸化炭素に分解し、もって当該ガス中の臭気を吸着・分解するのである。
【0003】
しかし、光触媒の酸化作用により、例えば、硫黄化合物(例えば硫化水素)は硫酸に、窒素化合物(例えばアンモニア)は硝酸になって、光触媒の表面に付着する。そして、これら付着物は、触媒毒となって光触媒フィルタの能力を低下させる。このため、定期的に点検すると共に、光触媒フィルタを取り出して水で洗浄したり焼成したりして、光触媒フィルタの能力を再生させる必要がある。また、何らかの原因で使用できなくなった光触媒フィルタを新たなものに交換せざるを得ないこともある。光源についても同様で、これを定期的に点検し、故障した、あるいは寿命に達した光源を、定期的に新しいものに交換することが必要である。
【0004】
このように、光触媒脱臭装置は、内蔵する光触媒フィルタや光源の点検、洗浄、交換等のメンテナンス作業が定期的に必要とされるから、その作業が容易に行える必要がある。そこで、以前から、そのようなメンテナンス性を改善する技術が提案されてきている。
【0005】
例えば、特許文献1(特開2001−246228号公報)に開示された光触媒装置(この装置では脱臭という限定はされていない)では、少なくとも底板と左右の側板を有するベースフレームに、紫外線照射用の光源と、フィルタ取り付け用のフィルタフレームとを取り付けてあり、光触媒フィルタはそのフィルタフレームに着脱可能に取り付けてある。光触媒フィルタのメンテナンスの際には、フィルタフレームを引き上げてベースフレームから光触媒フィルタを露出させ、光触媒フィルタを固定している固定具を外せば、光触媒フィルタの点検、洗浄、交換等を行うことができる。このため、機能が低下した際に、光触媒フィルタを光触媒装置から取り外して洗浄したり新品に交換したりすることが容易にできる。よって、光触媒装置全体を半永久的に使用することができる。(請求項1、図1〜図7、段落0006〜0009、0050〜0054を参照)。
【0006】
しかし、特許文献1に開示された光触媒装置では、紫外線照射用の光源がベースプレートに個々に取り付けられているため、フィルタフレームのように引き上げてベースフレームから露出させることができない。このため、光源の点検や交換に手間がかかるという難点がある。また、大規模な光触媒脱臭装置には適さないという難点もある。そこで、これらの難点を解消した光触媒脱臭装置の一例が、特許文献2(特開2006−334195号公報)に開示されている。
【0007】
特許文献2に開示された光触媒脱臭装置では、複数の板状の光触媒フィルタが保持体によりユニット化(一体化)され、複数の光源(例えばブラックライト)が枠体によりユニット化されている。そして、ユニット化された光触媒フィルタと光源(すなわち光触媒フィルタ・ユニットと光源ユニット)とが、複数個、ガス流れ軸線に対して直交して交互に配置されていると共に、前記ガス流れ軸線に直交する方向に独立して挿抜可能に配置されている。このため、ケーシング内部から光触媒フィルタ・ユニットあるいは光源ユニットを、前記ガス流れ軸線に直交する方向に引いて外部に抜き出せば、光触媒フィルタだけでなく光源の点検や交換をも容易に行うことができ、したがってメンテナンス作業が大幅に軽減される。また、光触媒脱臭装置全体を移動する必要性や当該装置の細かな分解作業も必要としない。よって、装置が大規模になっても、メンテナンス作業が容易である(請求項1、図1〜図3、段落0011〜0016、0022を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−246228号公報
【特許文献2】特開2006−334195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、特許文献1に開示された光触媒装置では、光触媒フィルタの点検・交換等は容易であるが、光源の点検や交換には手間がかかり、また、大規模な光触媒脱臭装置には適さないという問題がある。
【0010】
特許文献2に開示された光触媒脱臭装置では、光触媒フィルタと光源がそれぞれユニット化されていて、前記ガス流れ軸線に直交する方向に独立して挿抜可能に配置されているため、ケーシング内部から光触媒フィルタ・ユニットあるいは光源ユニットを同方向に引いて外部に抜き出すことができ、また、逆方向に差し込むことができる。したがって、それらユニットを同方向に引き出したり逆方向に差し込んだりすることが容易な範囲では、メンテナンス性は良好である。しかし、その範囲を超えて装置が大規模になり、光触媒フィルタ・ユニット及び光源ユニットの規模と重量が増加すると、それらユニットの引き出しや差し込みにも多大な労力が必要になり、メンテナンス作業が非常に困難になるという問題がある。
【0011】
例えば、光触媒フィルタ・ユニットの大きさが縦1400mm、横900mm程度の矩形板状である場合、その重量は50kg程度の大きな重量になる。また、縦1440mm、横630mm程度の矩形板状の場合でも、その重量は30kg程度になる。したがって、特許文献2の光触媒脱臭装置がこの程度まで大型化すると、作業者が一人で、前記ガス流れ軸線に直交する方向に光触媒フィルタ・ユニットや光源ユニットを手動で引き出したり差し込んだりして、光触媒フィルタや光源の点検等のメンテナンス作業を行うことは、それらユニットの移動機構に工夫をしない限り、ほぼ不可能であると思われる。光触媒フィルタ・ユニットと光源ユニットを前記ガス流れ軸線に直交する方向に独立して挿抜可能に配置する具体的構成については、特許文献2には何ら記載がない。
【0012】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的とするところは、光触媒フィルタ・ユニットや光源ユニットが、作業者が手動で容易に動かせない程度まで大型化した場合でも、光触媒フィルタまたは光源の点検、洗浄、交換といったメンテナンス作業を容易に行うことができると共に、構造が簡単で低コストで実現可能な光触媒装置を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、光触媒フィルタ・ユニットや光源ユニットが、作業者が手動で容易に動かせない程度まで大型化した場合でも、光触媒フィルタまたは光源の点検、洗浄、交換といったメンテナンス作業を、作業者が一人で実行することができる光触媒装置を提供することにある。
【0014】
ここに明記しない本発明の他の目的は、以下の説明及び添付図面から明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(1)本発明の光触媒装置は、
光触媒フィルタと、その光触媒フィルタを活性化するための光源とを含む略平板状の光触媒フィルタ・モジュールを複数個、ガス流方向にほぼ直交させて相互に隣接配置して構成された第1光触媒フィルタ・モジュール群と、
前記第1光触媒フィルタ・モジュール群の複数の前記光触媒フィルタ・モジュールを前記ガス流方向への独立した並進移動が可能な状態で支持するモジュール支持構造とを備え、
前記第1光触媒フィルタ・モジュール群のガス導入端側またはガス排出端側には、待機用スペースが形成されており、
必要に応じて、前記ガス流方向に沿って、前記第1光触媒フィルタ・モジュール群から必要な数の前記光触媒フィルタ・モジュールを前記待機用スペースに並進移動させることで、必要なメンテナンス用スペースが形成されることを特徴とするものである。
【0016】
本発明の光触媒装置は、上述した構成を有しているので、前記第1光触媒フィルタ・モジュール群中のいずれかの前記光触媒フィルタ・モジュールに含まれる前記光触媒フィルタや前記光源に対して、点検、交換、洗浄等のメンテナンス作業を行う場合には、必要に応じて、前記ガス流方向に沿って、前記第1光触媒フィルタ・モジュール群から必要な数の前記光触媒フィルタ・モジュールを前記待機用スペースに並進移動させることで、メンテナンス対象の前記光触媒フィルタ・モジュールの近傍にメンテナンス用スペースを形成することができる。
【0017】
ただし、メンテナンス対象の前記光触媒フィルタ・モジュールが、前記待機用スペースに最も近い位置にある場合には、その光触媒フィルタ・モジュールを前記待機用スペースに並進移動させることは、必ずしも必要ではない。前記待機用スペースを前記メンテナンス用スペースとして利用してメンテナンス作業を行えることがあるからである。
【0018】
また、前記光触媒フィルタ・モジュールの各々は、前記光触媒フィルタと前記光源とを含んでおり、光触媒フィルタ・ユニットと光源ユニット(例えば特許文献2に開示された光触媒脱臭装置に組み込まれているもの)を一体化した構成に相当するので、前記メンテナンス用スペースまたは前記待機用スペースから、メンテナンス対象の前記光触媒フィルタ・モジュールの前記ガス導入端側または前記ガス排出端側にアクセスできれば、前記光触媒フィルタと前記光源のいずれに対してもメンテナンス作業を行うことができる。
【0019】
さらに、前記光触媒フィルタ・モジュールの並進移動は、それらモジュールに対してほぼ直交する前記ガス流方向に行われるので、光触媒フィルタ・ユニットや光源ユニットが作業者が手動で容易に動かせない程度まで大型化した場合でも、特許文献2に開示された光触媒脱臭装置のように、それら光触媒フィルタ・モジュールに対して平行な方向に挿抜可能とするのに比べて、対応が容易である。例えば、レール等のガイド部材に滑車、ローラ、ベアリング等の転動体を併用する等により、前記光触媒フィルタ・モジュールの並進移動を容易化することで、光触媒フィルタ・ユニットや光源ユニットの大型化に容易に対応できる。
【0020】
他方、前記モジュール支持構造は、前記第1光触媒フィルタ・モジュール群中の複数の前記光触媒フィルタ・モジュールを前記ガス流方向への独立した並進移動が可能な状態で支持すればよいので、例えば、前記光触媒フィルタ・モジュールを個別にレール等のガイド部材に係合させ且つそのガイド部材に沿って移動可能とすることで、簡単な構造且つ低コストで実現できる。また、光触媒フィルタ・ユニットや光源ユニットが、作業者が手動で容易に動かせない程度まで大型化した場合でも、前記ガイド部材に滑車、ローラ、ベアリング等の転動体を併用する等すればよいので、前記モジュール支持構造は、この場合でも、簡単な構造且つ低コストで実現できる。
【0021】
よって、本発明の光触媒装置では、光触媒フィルタ・ユニットや光源ユニットが、作業者が手動で容易に動かせない程度まで大型化した場合でも、光触媒フィルタまたは光源の点検、洗浄、交換といったメンテナンス作業を容易に行うことができると共に、構造が簡単で低コストで実現可能である。
【0022】
(2) 本発明の光触媒脱臭装置の好ましい例では、前記モジュール支持構造が、前記ガス流方向に沿って延在するガイド部材と、複数の前記光触媒フィルタ・モジュールの各々に固定され且つ前記ガイド部材に並進移動可能に係合せしめられた係合部材とを含む。
【0023】
(3) 本発明の光触媒脱臭装置の他の好ましい例では、前記ガイド部材が、略水平方向に固定され、前記光触媒フィルタ・モジュールの各々が、前記係合部材によって前記ガイド部材に吊り下げられる。この例では、前記モジュール支持構造がより簡単になり、前記光触媒フィルタ・モジュールの並進移動もより容易になるという利点がある。
【0024】
(4) 本発明の光触媒脱臭装置のさらに他の好ましい例では、前記係合部材または前記ガイド部材に、前記ガイド部材または前記係合部材に接して転動する転動手段(例えば、滑車、ローラ、ベアリング等)が装着される。この例では、前記光触媒フィルタ・モジュールの並進移動がいっそう容易且つ円滑に行え、その結果、前記光触媒フィルタ・モジュールが作業者が手動で容易に動かせない程度まで大型化した場合でも、光触媒フィルタまたは光源の点検、洗浄、交換といったメンテナンス作業を、作業者が一人で実行することができるという利点がある。
【0025】
(5) 本発明の光触媒脱臭装置のさらに他の好ましい例では、前記ガイド部材が、その両端にそれぞれに設置された第1支持体及び第2支持体との間に架け渡されており、前記第1光触媒フィルタ・モジュール群が前記第1支持体に接触した状態で保持され、前記第2支持体の側に前記待機用スペースが形成される。この例では、被処理ガスが供給される一次側空間と、処理後の被処理ガスが送出される二次側空間とを仕切る隔壁(被処理ガスを透過させる開口を持つ)を、前記第1支持体として利用することができるため、前記モジュール支持構造を簡素化できるという利点がある。
【0026】
(6) 本発明の光触媒脱臭装置のさらに他の好ましい例では、前記第1光触媒フィルタ・モジュール群と前記待機用スペースが、ケーシングの内部に設けられる。この例では、前記第1光触媒フィルタ・モジュール群と前記待機用スペースの双方が、前記ケーシングの内部にあるので、前記待機用スペースが前記ケーシングの外部に設けられた場合に必要とされる開閉可能部が不要であり、したがって前記ケーシングの構成を簡素化できるという利点がある。
【0027】
(7) 本発明の光触媒脱臭装置のさらに他の好ましい例では、前記第1光触媒フィルタ・モジュール群がケーシングの内部に設けられていると共に、前記待機用スペースが前記ケーシングの外部に設けられており、前記ケーシングの前記待機用スペースに対面する箇所に開閉可能部が形成されていて、メンテナンス時には、開放された前記開閉可能部を介して必要な数の前記光触媒フィルタ・モジュールが前記待機用スペースに並進移動可能とされる。
【0028】
(8) 本発明の光触媒脱臭装置のさらに他の好ましい例では、前記光触媒フィルタ・モジュールの各々が、被処理ガスを透過させる開口を有するモジュール本体と、前記モジュール本体に固定された、前記開口と重なる位置に前記光触媒フィルタ装着用の窓を有するフィルタ・フレームと、前記窓と重なる位置に前記光源が配置されるように前記モジュール本体または前記フィルタ・フレームに固定された光源装着部材(コネクタ等)とを含む。この例では、前記光触媒フィルタ・モジュールを簡単な構成で実現できるという利点がある。
【0029】
(9) 本発明の光触媒脱臭装置のさらに他の好ましい例では、前記第1光触媒フィルタ・モジュール群の前記ガス導入端側または前記ガス排出端側に隣接して、前記光触媒フィルタを含み且つ前記光源を含まない光触媒フィルタ・モジュールが追加して設けられて、第2光触媒フィルタ・モジュール群を構成する。この例では、前記第2光触媒フィルタ・モジュール群において、その前記ガス導入端側または前記ガス排出端側に、前記光触媒フィルタを含み且つ前記光源を含まない前記光触媒フィルタ・モジュールが配置されるので、前記光源のすべてから放射される光をその両側にある前記光触媒フィルタに照射することが可能となり、したがって、前記光源に供給される電力(つまり前記光源から放射される光)を有効に利用することができるという利点がある。
【発明の効果】
【0030】
本発明の光触媒装置では、光触媒フィルタ・ユニットや光源ユニットが、作業者が手動で容易に動かせない程度まで大型化した場合でも、光触媒フィルタまたは光源の点検、洗浄、交換といったメンテナンス作業を容易に行うことができると共に、構造が簡単で低コストで実現可能である、という効果が得られる。
【0031】
前記係合部材に、前記ガイド部材に接して転動する転動手段が装着されている場合は、光触媒フィルタ・ユニットや光源ユニットが、作業者が手動で容易に動かせない程度まで大型化した場合でも、光触媒フィルタまたは光源の点検、洗浄、交換といったメンテナンス作業を、作業者が一人で実行することができる、という効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光触媒脱臭装置の運転時の構成を示す概念図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る光触媒脱臭装置のメンテナンス時の構成を示す概念図である。
【図3】(a)は本発明の第1実施形態に係る光触媒脱臭装置に使用されている光触媒フィルタ・モジュールの、光触媒フィルタとブラックライトが装着されていない状態を示す平面図、(b)はその正面図である。
【図4】(a)は図3の状態にブラックライトが装着された状態を示す平面図、(b)はその正面図である。
【図5】(a)は図3の状態に光触媒フィルタとブラックライトが装着された状態を示す平面図、(b)はその正面図である。
【図6】図5のA−A線に沿った断面図である。
【図7】(a)は本発明の第1実施形態に係る光触媒脱臭装置に使用されているモジュール支持構造の要部の構成を示す部分断面図、(b)はその部分平面図である。
【図8】本発明の第1実施形態に係る光触媒脱臭装置の運転時の全体構成を示す一部切欠側面図である。
【図9】本発明の第1実施形態に係る光触媒脱臭装置のメンテナンス時の全体構成を示す一部切欠側面図である。
【図10】本発明の第1実施形態に係る光触媒脱臭装置の運転時の全体構成を示す平面図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係る光触媒脱臭装置の運転時の全体構成を示す一部切欠側面図である。
【図12】本発明の第2実施形態に係る光触媒脱臭装置のメンテナンス時の全体構成を示す一部切欠側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の好適な実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0034】
(第1実施形態の光触媒脱臭装置の構成)
本発明の第1実施形態に係る光触媒脱臭装置1の構成の概略を、図1と図2に示す。本実施形態は、本発明を光触媒脱臭装置に適用した場合に相当するが、本発明はこれに限定されるものではない。光触媒フィルタを備えた光触媒装置であれば、光触媒脱臭装置以外の光触媒装置、例えば、光触媒殺菌(抗菌)装置、光触媒浄化装置等にも適用可能である。
【0035】
図1および図2より明らかなように、本実施形態の光触媒脱臭装置1は、矩形平板状の光触媒フィルタ・モジュール20を5個、備えている。光触媒フィルタ・モジュール20は、いずれも同じ姿勢で相互に隣接配置されていて、相互に重なり合った状態でモジュール支持体11の対向する面に接触せしめられている。光触媒脱臭装置1の運転時には、図1の状態が維持される。
【0036】
光触媒フィルタ・モジュール20の各々の上端部の幅方向の両端には、係合部材24がそれぞれ固定されている。これら係合部材24は、所定間隔を空けて水平に設置された2本の平行なガイドレール12にそれぞれ係合されている。これらモジュール20は、いずれも、このようにして、係合部材24によってガイドレール12に垂直方向に吊り下げられた状態で支持されていると共に、吊り下げられた状態のままでガイドレール12(つまりガス流方向)に沿って独立して並進移動が可能である。
【0037】
各光触媒フィルタ・モジュール20は、水平なガイドレール12に直交しているので、各モジュール20の相対的に長い辺は、垂直方向に延在し、その相対的に短い辺は、水平方向に延在している。
【0038】
両ガイドレール12の一端は、モジュール支持体11に固定され、他端は、図示されていないレール支持体13(図8を参照)に固定されている。こうして、両ガイドレール12は、モジュール支持体11とレール支持体13の間において、互いに平行な状態で水平方向に架け渡されている。
【0039】
被処理ガスは、ガイドレール12の延在方向に沿って、図中に矢印で示したガス流方向に沿って、レール支持体13の側からモジュール支持体11の側まで流動する。従って、各光触媒フィルタ・モジュール20はガス流方向に直交している。
【0040】
上述した5個の光触媒フィルタ・モジュール20のうち、モジュール支持体11から最も遠い位置にある(換言すれば、レール支持体13に最も近い位置にある)モジュール20は、複数の(ここでは8枚)光触媒フィルタ30のみを含んでおり、光源としてのブラックライト27を含んでいない。他の4個のモジュール20は、複数の(ここでは8枚)光触媒フィルタ30と複数の(ここでは4本)ブラックライト27を含んでいる。このため、本明細書では、光源としてのブラックライト27を含んでいないモジュール20を除き、光触媒フィルタ30とブラックライト27の双方を含む4個のモジュール20だけを指すときは、光触媒フィルタ・モジュール群20A(第1光触媒フィルタ・モジュール群)と呼び、5個のモジュール20の全体を指すときは、光触媒フィルタ・モジュール群20B(第2光触媒フィルタ・モジュール群)と呼ぶ。
【0041】
光触媒フィルタ・モジュール群20Bは、光触媒フィルタ・モジュール群20Aに対して、光触媒フィルタ30を含みブラックライト27を含まないモジュール20を1個、追加したものに等しい。
【0042】
光触媒フィルタ・モジュール群20Bのうちのレール支持体13に最も近い位置にあるモジュール20が、光触媒フィルタ30のみを含んでおり、光源としてのブラックライト27を含んでいないのは、このモジュール20のブラックライト27の片側にしか光触媒フィルタ30が存在せず、ブラックライト27から放射される紫外光を有効利用できないからである。他方、他のモジュール20(つまり、光触媒フィルタ・モジュール群20Aに属するモジュール20)では、ブラックライト27の両側に光触媒フィルタ30が存在するようにして、ブラックライト27から放射される紫外光をその両側にある光触媒フィルタ30に照射させ、紫外光(つまりブラックライト27への供給電力)を有効利用できるようにしている。
【0043】
図1及び図2に示すように、光触媒フィルタ・モジュール20内では、8枚の光触媒フィルタ30は、上下(垂直)方向に4段に重ねたものを2列にして配置されており、4本のブラックライト27は、ほぼ等間隔で上下(垂直)方向に配置されている。
【0044】
光触媒脱臭装置1の運転時には、図1に示すように、モジュール支持体11とレール支持体13との間において、光触媒フィルタ・モジュール群20Bのガス導入端側(ガス流方向の上流側)に、待機用スペースS1が形成されている。この状態では、モジュール群20Bの5個のモジュール20は相互に重なり合っていて、そのガス排出端にあるモジュール20がモジュール支持体11の対向面に接触している。
【0045】
光触媒脱臭装置1のメンテナンス時には、図2に示すように、必要に応じて、ガス流方向(ガイドレール12)に沿って、モジュール群20Bから必要な数のモジュール20がガス導入端側(ガス流方向の上流側)に並進移動される。この状態では、並進移動されたモジュール20と、残りの並進移動されなかったモジュール20との間に、メンテナンス用スペースS2が形成される。モジュール群20Bから5個のモジュール20がすべて並進移動された場合は、メンテナンス用スペースS2は、並進移動されたモジュール20とモジュール支持体11との間に形成される。作業者は、こうして形成されるメンテナンス用スペースS2あるいは待機用スペースS1を利用して、メンテナンス対象のモジュール20に対して必要なメンテナンス作業を行うことができる。
【0046】
なお、メンテナンス時に、モジュール群20Bに含まれるすべてのモジュール20が、待機用スペースS1に移動される必要はない。メンテナンス対象のモジュール20の近傍にメンテナンス用スペースS2が形成されれば足りるからである。例えば、2〜3個のモジュール20が待機用スペースS1中に移動されれば、移動されたモジュール20がそれまで占有していたスペースが相当広いメンテナンス用スペースS2となり、したがって、そのスペースを用いて残りの移動しなかったモジュール20のメンテナンス作業を行えることが多いからである。
【0047】
光触媒フィルタ・モジュール群20Bの中の最もガス導入端側にあるモジュール20のメンテナンス作業を行うときには、モジュール群20Bのいずれのモジュール20についても並進移動が不要なことがある。その場合には、待機用スペースS1をメンテナンス用として利用し、メンテナンス対象のモジュール20にそのガス導入端側からアクセスして、光触媒フィルタ30の点検、交換等を行えばよい。
【0048】
光触媒フィルタ・モジュール群20B、係合部材24、ガイドレール12、モジュール支持体11及びレール支持体13は、実際には、図8及び図10に示すように、ガス導入口15とガス排出口16を除いて密閉されたケーシング10の内部に配置されている。ケーシング10は、直方体状の箱型で、ベース14の上に固定されている。ケーシング10の上壁には、ケーシング10内に被処理ガスを導入するためのガス導入口15と、ケーシング10内から被処理ガスを排出するためのガス排出口16が形成されている。ガス導入口15は、ガス流方向の上流側端部に設けられている。ガス排出口16は、ガス流方向の下流側端部に設けられていて、ダクト17によってモジュール支持体11に接続されている。
【0049】
被処理ガスは、ガス導入口15からケーシング10の内部に導入され、ガス流方向の矢印に沿って(モジュール20に直交して)光触媒フィルタ・モジュール群20Bを貫通し、モジュール支持体11の内部とダクト17を通って、ガス排出口16からケーシング10の外部に排出される。
【0050】
次に、図3〜図6を参照しながら、光触媒フィルタ・モジュール20の構成について詳細に説明する。
【0051】
光触媒フィルタ・モジュール群20Bを構成する5個の光触媒フィルタ・モジュール20は、いずれも同じ構成であり、複数(ここでは8枚)の矩形板状の光触媒フィルタ30を含む光触媒フィルタ・ユニットと、複数(ここでは4本)のブラックライト27を含む光源ユニットとを結合したものに相当する。ただし、レール支持体13に最も近い位置にあるモジュール20には、光触媒フィルタ30とコネクタ28は設けられているが、ブラックライト27は装着されていない点で、他のモジュール20とは構成が異なる。
【0052】
図3(a)及び(b)に示すように、光触媒フィルタ・モジュール20は、高い剛性を持つ矩形枠状のモジュール本体21と、モジュール本体21の内側に嵌合するようにして固定されたフィルタ・フレーム22とを有している。フィルタ・フレーム22により、モジュール20の内部には8個の光触媒フィルタ装着用窓23が形成されている。ここでは、光触媒フィルタ30が正方形であるため、窓23も正方形とされている。モジュール本体21の上端部と下端部の内側には、それぞれ、ブラックライト27を接続するためのコネクタ28が4組、装着されている。
【0053】
モジュール本体21の内側には、被処理ガスを透過させるための矩形の開口が形成されており、フィルタ・フレームの8個の窓23は、その開口と重なる位置(開口の内側)に配置されている。コネクタ28は、8個の窓23と重なる位置に4本のブラックライト27が配置されるように、モジュール本体21に固定されている。
【0054】
コネクタ28によって装着されるブラックライト27は、図4(a)及び(b)に示すように、モジュール本体21(つまりモジュール20)のほぼ全体にわたって上下方向に延在する。ブラックライト27は、モジュール本体21の短辺方向にほぼ等間隔に配置されるが、これは、ブラックライト27から放射される紫外光が、窓23に装着された8枚の光触媒フィルタ30に対して、できるだけ均等に照射されるようにするためである。
【0055】
光触媒フィルタ30は、図示しない固定具によって、各窓23に、図5(a)及び(b)と図6に示すように装着される。光触媒フィルタ30の装着については、必要に応じて取り付け及び取り外しが可能なものであれば、公知の任意の方法、任意の部材を使用できる。例えば、光触媒フィルタ30の上下に係止用突起を形成し、それら係止用突起が挿入されて係止される係止用溝を、各窓23の上縁と下縁に形成する。そして、外力を印加して光触媒フィルタ30を少し湾曲させた状態で、二つの係止用突起を窓23の二つの係止用溝にそれぞれ挿入してから外力の印加を停止する。こうして、光触媒フィルタ30の係止用突起を窓23の係止用溝に係止させるようにすれば、固定具なしで光触媒フィルタ30の装着が可能となる。光触媒フィルタ30を窓23から取り外す時は、外力を印加して光触媒フィルタ30を少し湾曲させれば、容易に取り外しできる。
【0056】
光触媒フィルタ30としては、任意の公知の光触媒フィルタが使用可能であるが、多孔質セラミックの表面に光触媒として酸化チタンの膜を形成してなるフィルタが好ましい。
【0057】
図6に明瞭に示すように、フィルタ・フレーム22は、モジュール本体21の片側(下流側)の端縁に寄せて固定され、コネクタ28はその反対側(上流側)の端縁に寄せて固定されているので、フレーム22に装着された光触媒フィルタ30とコネクタ28に装着されたブラックライト27との間には隙間があり、したがって光触媒フィルタ30とブラックライト27が相互に干渉することはない。
【0058】
モジュール本体21とフレーム22に使用される材料としては、紫外線により劣化しないステンレス鋼などが好適に使用される。
【0059】
図7(a)及び(b)は、モジュール本体21の上端部に固定された係合部材24と、ガイドレール12との係合状態を示す。
【0060】
係合部材24は、ここでは、断面が矩形で両端が開口された筒状部材であり、内部に回転軸25と滑車26が設けられている。回転軸25は、モジュール本体21の短辺に平行に延在しており、係合部材24の内部で滑車26を回転可能に支持している。ガイドレール12は、係合部材24の内部に挿通せしめられると共に、滑車26の直下に配置されるので、滑車26はガイドレール12上を回転移動することができる。モジュール20は、このようにして、吊り下げられた状態のままでガイドレール12に沿って並進移動が可能となっている。
【0061】
ガイド部材としての2本のガイドレール12と、各光触媒フィルタ・モジュール20に固定され且つ両ガイドレール12に係合せしめられた係合部材24と、係合部材24に装着された回転軸25及び滑車26は、5個の光触媒フィルタ・モジュール20をガス流方向(ガイドレール12の延在方向)への独立した並進移動が可能な状態で支持しており、「モジュール支持構造」を構成している。
【0062】
モジュール20の重量がそれほど大きくなければ、モジュール支持構造の回転軸25と滑車26は省略してもよい。この場合、回転軸25と滑車26を用いた場合よりもモジュール20の並進移動に力が余分に必要になるが、モジュール20の重量がそれほど大きくなければ、省略が可能である。そうすると、モジュール支持構造が簡単になり、コストを低下することができる利点がある。
【0063】
前記ガイド部材としては、本実施形態のようなガイドレールが好適に使用できるが、これに限定されず、モジュール20をガイドして並進移動を可能にするものであれば、任意の構成のガイド部材を使用できる。例えば、ケーシング10の天井や支持梁等に形成された溝としてもよい。この場合、その溝に挿入して係合可能な構成の係合部材が使用されることになる。
【0064】
本第1実施形態では、前記ガイド部材または前記係合部材に接して転動する転動手段として、滑車が使用されているが、これには限定されない。例えば、ローラ、ベアリング、ボール等も使用可能である。
【0065】
(第1実施形態の光触媒脱臭装置の使用状態)
次に、以上の構成を持つ第1実施形態の光触媒脱臭装置1の使用状態について説明する。
【0066】
運転時には、図1、図8及び図10に示すように、光触媒フィルタ・モジュール群20Bはモジュール支持体11の対向面に接触せしめられている。この状態でケーシング10内に被処理ガスが導入されると、被処理ガスは、レール支持体13の側(上流側)からモジュール支持体11(下流側)に向かって、モジュール群20Bに直交する方向に流動し、モジュール支持体11の内部に入る。被処理ガスは、モジュール群20Bを通過している間に、その内部にある光触媒フィルタ30によって脱臭される。こうして脱臭された被処理ガスは、ダクト17とガス排出口16を通ってケーシング10の外部に排出される。
【0067】
メンテナンス時には、ケーシング10内への被処理ガスの導入は停止される。作業者は、ケーシング10の一つの側壁に設けられたドア(図示せず)からケーシング10内に入り、光触媒フィルタ・モジュール20のメンテナンス作業を行う。この時、図2及び図9に示すように、光触媒フィルタ・モジュール群20Bから必要な数の光触媒フィルタ・モジュール20が待機用スペースS1に向かって(換言すれば、ガス流方向の上流側に)並進移動され、必要なメンテナンス用スペースS2が形成される。
【0068】
まず、モジュール群20Bの中のガス導入端(レール支持体13に最も近い位置)にあるモジュール20を点検等する際には、必ずしもモジュール20の並進移動は必要ではない。すなわち、作業者が、このモジュール20のメンテナンス作業をそのガス導入端側からアクセスして行う場合は、モジュール群20Bは運転時(図8を参照)と同じ状態に保ったままでよい。このとき、待機用スペースS1が作業用スペースS2として利用される。なお、作業者がこのモジュール20のメンテナンス作業をそのガス排出端側からアクセスして行う場合には、手動で、このモジュール20をガイドレール12に沿って上流側に並進移動させ、待機用スペースS1に一時的に置く必要がある。
【0069】
ガス導入端にあるモジュール20以外のモジュール20のメンテナンス作業を行う際には、作業者は、必要に応じて、手動で、モジュール群20Bの中のメンテナンス作業を行うべき(メンテナンス対象の)モジュール20の上流側にある少なくとも一つのモジュール20を上流側に並進移動させる必要がある。ガス導入端にあるモジュール20以外のモジュール20に対するメンテナンス作業は、いずれも同じであるから、ここでは、図9に示すように、メンテナンス対象のモジュール20が、モジュール群20Bの中の上流側から3番目のモジュール20であって、同モジュール20のメンテナンス作業をその上流側からアクセスして行う場合について説明する(これは、メンテナンス対象のモジュール20が、モジュール群20Bの中の上流側から2番目のモジュール20であって、同モジュール20のメンテナンス作業をその下流側からアクセスして行う場合も同様である)。
【0070】
作業者は、手動で、メンテナンス対象のモジュール20の上流側にある二つのモジュール20を、ガイドレール12に沿って上流側に向かって並進移動させて待機用スペースS1に置く。すると、図9に示すように、メンテナンス対象のモジュール20の上流側近傍にメンテナンス用スペースS2が形成されるので、そのスペースS2を利用して同モジュール20の上流側からアクセスしてメンテナンス作業(例えば光触媒フィルタ30の点検・洗浄・交換、ブラックライト27の点検・交換等)を行う。この状態では、メンテナンス対象のモジュール20の上流側にある隣接するモジュール20に対して、その下流側からアクセスしてメンテナンス作業(例えば光触媒フィルタ30の裏側からの点検)を行うことも可能である。
【0071】
他のモジュール20に対するメンテナンス作業も、同様にして行う。
【0072】
このようにして、モジュール群20Bの全モジュール20についてメンテナンス作業が終了すると、作業者は、待機用スペースS1に置いていたモジュール20をすべて、ガイドレール12に沿って下流側(モジュール支持体11の側)に並進移動させ、図8に示された運転時の状態に戻す。そして、ドアからケーシング10を出たあと、ドアを閉める。その後、必要に応じて、運転を再開する。
【0073】
以上説明したように、本発明の第1実施形態の光触媒脱臭装置1では、光触媒フィルタ30と、光触媒フィルタ30を活性化するためのブラックライト27とを含む略平板状の光触媒フィルタ・モジュール20を5個、ガス流方向に直交させて相互に隣接配置して構成された光触媒フィルタ・モジュール群20Bが設けられており、また、2本のガイドレール12と、各モジュール20に固定され且つ両ガイドレール12に係合せしめられた係合部材24と、係合部材24に装着された回転軸25及び滑車26が、それらモジュール20をガス流方向(ガイドレール12の延在方向)への独立した並進移動が可能な状態で支持する「モジュール支持構造」を構成している。また、モジュール群20Bのガス導入端側(ガス流方向の上流側)に待機用スペースS1が形成されていて、必要に応じて、ガス流方向(ガイドレール12)に沿って、モジュール群20Bから必要な数のモジュール20を待機用スペースS1に並進移動させることで、必要なメンテナンス用スペースS2が形成されるようになっている。
【0074】
このため、モジュール群20B中のいずれかのモジュール20に含まれる光触媒フィルタ30やブラックライト27に対して、点検、交換、洗浄等のメンテナンス作業を行う場合には、必要に応じて、ガス流方向(ガイドレール12)に沿って、モジュール群20Bから必要な数のモジュール20を待機用スペースS1に並進移動させることで、メンテナンス対象のモジュール20の近傍にメンテナンス用スペースS2を形成することができる。
【0075】
ただし、メンテナンス対象のモジュール20が、待機用スペースS1に最も近い位置(ガス導入端)にある場合には、そのモジュール20を待機用スペースS1に並進移動させることは、必ずしも必要ではない。待機用スペースS1をメンテナンス用スペースS2として利用してメンテナンス作業を行えることがあるからである。
【0076】
また、モジュール20の各々は、光触媒フィルタ30とブラックライト27とを含んでおり、光触媒フィルタ・ユニットと光源ユニット(例えば特許文献2に開示された光触媒脱臭装置に組み込まれているもの)を一体化した構成に相当するので、メンテナンス用スペースS1または待機用スペースS2から、メンテナンス対象のモジュール20のガス導入端側またはガス排出端側にアクセスできれば、光触媒フィルタ30とブラックライト27のいずれに対してもメンテナンス作業を行うことができる(待機用スペースS1に最も近い位置(ガス導入端)にあるモジュール20は、ブラックライト27が装着されていないだけで、それ以外は他のモジュール20と同じ構成であるから、このモジュール20も光触媒フィルタ・ユニットと光源ユニットを一体化した構成を持つと言える)。
【0077】
さらに、光触媒フィルタ・ユニットと光源ユニットを一体化した構成を持つモジュール20の並進移動は、それらモジュール20に対して直交するガス流方向に行われるので、光触媒フィルタ・ユニットや光源ユニットが作業者が手動で容易に動かせない程度まで大型化した場合でも、特許文献2に開示された光触媒脱臭装置のように、それらモジュール20に対して平行な方向に挿抜可能とするのに比べて、対応が容易である。
【0078】
他方、前記モジュール支持構造は、モジュール群20B中のモジュール20をガス流方向への独立した並進移動が可能な状態で支持すればよいので、本第1実施形態のように、モジュール20を個別にガイドレール12に係合させ且つガイドレール12に沿って移動可能とすることで、簡単な構造且つ低コストで実現できる。また、ガイドレール12に滑車26を併用しているので、光触媒フィルタ・ユニットや光源ユニットが、作業者が手動で容易に動かせない程度まで大型化した場合でも、前記モジュール支持構造は、簡単な構造且つ低コストで実現できる。
【0079】
よって、本発明の第1実施形態の光触媒脱臭装置1では、光触媒フィルタ・ユニットや光源ユニットが、作業者が手動で容易に動かせない程度まで大型化した場合でも、光触媒フィルタ30またはブラックライト27の点検、洗浄、交換といったメンテナンス作業を容易に行うことができると共に、構造が簡単で低コストで実現可能である、という効果が得られる。
【0080】
特に、本第1実施形態の光触媒脱臭装置1では、ガイド部材としてのガイドレール12に転動体としての滑車26を併用しているので、モジュール20を小さい力で容易に並進移動させることができる。したがって、モジュール20が作業者が手動で容易に動かせない程度まで大型化した場合でも、光触媒フィルタ30またはブラックライト27の点検、洗浄、交換といったメンテナンス作業を、作業者が一人で実行することができる、という効果も得られる。
【0081】
なお、本第1実施形態の光触媒脱臭装置1では、光触媒フィルタ・モジュール群20Bの中で最上流位置(ガス導入端)にあるもの以外の光触媒フィルタ・モジュール20には、それぞれ、光触媒フィルタ30とブラックライト27とが装着されている。モジュール群20B中のモジュール20は、運転時には互いに重ね合わせた状態にされているので、最下流位置(ガス排出端)にあるモジュール20のブラックライト27は、当該モジュール20の光触媒フィルタ30と、それより一つ上流側にあるモジュール20の光触媒フィルタ30に対して、紫外光を照射する。最下流位置より一つ上流側にあるモジュール20のブラックライト27は、当該モジュール20の光触媒フィルタ30と、それより一つ上流側にあるモジュール20の光触媒フィルタ30に対して、紫外光を照射する。最下流位置より二つ上流側にあるモジュール20のブラックライト27は、当該モジュール20の光触媒フィルタ30と、それより一つ上流側にあるモジュール20の光触媒フィルタ30に対して、紫外光を照射する。最下流位置より三つ上流側にあるモジュール20のブラックライト27は、当該モジュール20の光触媒フィルタ30と、それより一つ上流側にあるモジュール20の光触媒フィルタ30に対して、紫外光を照射する。
【0082】
このように、光触媒フィルタ・モジュール群20Aに属するモジュール20では、一つのモジュール20内のブラックライト27から放射された紫外光が、それらブラックライト27の両側にある光触媒フィルタ30に対して照射されるので、紫外光を有効に利用することができる。
【0083】
これに対し、光触媒フィルタ・モジュール群20Bの中で最上流位置(ガス導入端)にあるモジュール20には、それ以外のモジュール20とは異なり、光触媒フィルタ30のみが装着され、ブラックライト27は装着されていない。(ガス導入端にあるモジュール20の構成は、ブラックライト27が装着されていない点を除けば、他のモジュール20と同じである。)これは、当該モジュール20に装着されたブラックライト27は、そのモジュール20内で光触媒フィルタ30の上流側に配置されるため、モジュール群20Bの上流側で外部に露出してしまい、これらのブラックライト27から放射される紫外光を有効に利用できないからである。
【0084】
モジュール群20Bの中の最上流位置(ガス導入端)以外にあるモジュール20では、このような難点がないので、紫外光の照射効率を考慮して、光触媒フィルタ30とブラックライト27の双方が装着されている。
【0085】
従って、光触媒フィルタ・モジュール群20Bの中で最上流位置(ガス導入端)にあるモジュール20に関する上記のような紫外光の有効利用という利点を考慮しなくてよい場合は、このモジュール20に対してもブラックライト27を装着してもよいし、脱臭効果に支障がなければ、このモジュール20自体を取り除いてもよい。
【0086】
前者(モジュール群20Bの中で最上流位置にあるモジュール20にもブラックライト27を装着)の場合は、光触媒脱臭装置1に設けられた光触媒フィルタ・モジュール群20Bを構成する5個のモジュール20が、すべて、光触媒フィルタ30とブラックライト27を含むことになり、全モジュール20が同じ構成になる。
【0087】
後者(モジュール群20Bの中で最上流位置にあるモジュール20を省略)の場合は、光触媒脱臭装置1には、光触媒フィルタ・モジュール群20Aを構成する4個のモジュール20が設けられることになる。そして、上記前者の場合と同様に、それら4個のモジュール20のすべてが、光触媒フィルタ30とブラックライト27を含むことになり、全モジュール20が同じ構成になる。
【0088】
(第2実施形態の光触媒脱臭装置)
本発明の第2実施形態に係る光触媒脱臭装置1Aの全体構成の概略を図11と図12に示す。
【0089】
本第2実施形態の光触媒脱臭装置1Aの構成は、省スペース化のために、ケーシング10Aのモジュール支持体11とは反対側に取り外し可能な扉10Aaを設け、メンテナンス時にはその扉10Aaを外して、ケーシング10Aの外側にあるスペース(通路等)を利用してメンテナンス用スペースS2を生成するようになっている点を除き、上述した第1実施形態に係る光触媒脱臭装置1のそれと同じである。よって、構成が同一の部分・要素には第1実施形態に係る光触媒脱臭装置1と同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0090】
本第2実施形態の光触媒脱臭装置1Aの運転時の状態は、図11に示すとおりであり、ケーシング10Aの内部に待機用スペースS1が存在しない点を除いて、第1実施形態に係る光触媒脱臭装置1のそれと同じである。すなわち、ケーシング10Aのガス流方向の長さは、モジュール支持体11と5個の光触媒フィルタ・モジュール20(光触媒フィルタ・モジュール群20B)の同方向の長さの和より少し大きいだけであり、扉10Aaは最上流位置(ガス導入端)にあるモジュール20に近接して設けられている。このため、第1実施形態の光触媒脱臭装置1に比べて、待機用スペースS1の分だけ省スペースになっている。
【0091】
メンテナンス時には、次のように作業する。
【0092】
まず、ケーシング10Aの扉10Aaを取り外す。すると、扉10Aaのあった部分が開口するので、図23に示すように、ガイドレール12の上流側端部に補助ガイドレール37の一端を接続し、他端を補助レール支持体36で支持する。補助レール支持体36は、扉10Aaが取り付けられていた部分の外側にあってその部分に隣接するスペース内で、適当な箇所に設置される。補助ガイドレール37は、扉10Aaが取り付けられていた部分に生じた開口から水平方向に突出する。補助ガイドレール37の構成は、ガイドレール12の構成と同じである。
【0093】
メンテナンス対象のモジュール20が、モジュール群20Bの中の下流側から3番目のモジュール20である場合、作業者は、手動で、当該モジュール20の上流側にある二つのモジュール20を上流側(ケーシング10Aの外側)に向かって並進移動させる。この時、それら二つのモジュール20は、図12に示すように、ケーシング10Aの外に位置する。この並進移動により、第1実施形態と同様に、点検すべきモジュール20の上流側近傍にメンテナンス用スペースS2が形成されるので、そのメンテナンス用スペースS2を利用してメンテナンス作業(例えば光触媒フィルタ30の点検・交換やブラックライト27の点検・交換)を行うことができる。この状態では、メンテナンス対象のモジュール20の上流側にある隣接するモジュール20に対して、その下流側(裏側)からアクセスしてメンテナンス作業(例えば光触媒フィルタ30の点検)を行うことも可能である。
【0094】
メンテナンス作業が終了すると、扉10Aaをケーシング10Aの該当箇所に再度取り付け、その開口を閉鎖・密封する。その後、光触媒脱臭装置1Aの運転を開始する。
【0095】
以上説明したように、本第2実施形態の光触媒脱臭装置1Aは、ケーシング10Aのモジュール支持体11とは反対側に取り外し可能な扉10Aaを設け、メンテナンス時にはその扉10Aaを外して、ケーシング10Aの外側にあるスペース(通路等)を利用してメンテナンス用スペースS2を生成するようになっている点を除き、上述した第1実施形態に係る光触媒脱臭装置1のそれと同じであるから、第1実施形態に係る光触媒脱臭装置1と同じ効果に加えて、第1実施形態においてケーシング10の内部に存在した待機用スペースS1に相当する分だけ、省スペースが図れるという効果がある。
【0096】
(変形例)
上述した実施形態は本発明を具体化した例を示すものである。したがって、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を外れることなく種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【0097】
例えば、上述した実施形態では、光触媒フィルタ30を活性化する光源としてブラックライト27を使用しているが、ブラックライト27以外の光源を使用してもよいことは言うまでもない。また、多孔質セラミックに酸化チタン(TiSO)をコーティングしてなる光触媒フィルタ23を使用しているが、酸化チタン以外の光触媒を使用してもよいし、光触媒フィルタ23の基体を多孔質セラミック以外の材料で形成してもよいことは言うまでもない。
【0098】
また、上述した実施形態では、上位に設けた2本のガイドレール12で光触媒フィルタ・モジュール20を吊り下げるようにしているが、本発明はこれに限定されない。ガイドレール12を光触媒フィルタ・モジュール20の上位だけでなく下位にも設けてもよい。こうすれば、モジュール支持構造は上記実施形態よりも少し複雑になるが、モジュール20の並進移動が安定するという利点がある。ガイドレール12をモジュール20に係合させる位置やガイドレール12の数は、任意に変更可能である。
【0099】
ガイドレール12と光触媒フィルタ・モジュール20の係合する位置を、モジュール20の上位以外(例えば、モジュール20の下位、側面等)に変更してもよい。
【0100】
光触媒フィルタ・モジュール20の形状や構成も任意である。全体が略平板状であって、ガス流方向にほぼ直交させて相互に隣接配置することが可能であり、且つ、光触媒フィルタを装着する構造(光触媒フィルタ装着構造)と、その光触媒フィルタを活性化するための光源を装着するコネクタ等の部材(光源装着部材)とを含むものであれば足り、その形状や構成は限定されない。
【0101】
上述した実施形態では、複数の光触媒フィルタ・モジュール20とモジュール支持構造がケーシング10または10Aの内部に設置されているが、本発明はこれには限定されない。例えば、被処理ガスが供給される一次側空間と、処理後の被処理ガスが送出される二次側空間とを仕切る隔壁(被処理ガスを透過させる開口を持つ)を、モジュール支持体11として利用すると共に、複数の光触媒フィルタ・モジュール20とモジュール支持構造を一次側空間または二次側空間に配置してもよい。この場合、被処理ガスは、前記隔壁の開口を通って一次側空間から二次側空間へ流動せしめられる。
【符号の説明】
【0102】
1、1A 光触媒脱臭装置
10、10A ケーシング
10Aa ケーシングの扉
11 モジュール支持体
12 ガイドレール
13 レール支持体
14、14A ベース
15 ガス導入口
16 ガス排出口
17 ダクト
20 光触媒フィルタ・モジュール
20A 光触媒フィルタ・モジュール群
20B 光触媒フィルタ・モジュール群
21 モジュール本体
22 フィルタ・フレーム
23 光触媒フィルタ装着用窓
24 係合部材
25 回転軸
26 滑車
27 ブラックライト
28 コネクタ
30 光触媒フィルタ
36 補助レール支持体
37 補助ガイドレール
S1 待機用スペース
S2 メンテナンス用スペース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒フィルタと、その光触媒フィルタを活性化するための光源とを含む略平板状の光触媒フィルタ・モジュールを複数個、ガス流方向にほぼ直交させて相互に隣接配置して構成された第1光触媒フィルタ・モジュール群と、
前記第1光触媒フィルタ・モジュール群の複数の前記光触媒フィルタ・モジュールを前記ガス流方向への独立した並進移動が可能な状態で支持するモジュール支持構造とを備え、
前記第1光触媒フィルタ・モジュール群のガス導入端側またはガス排出端側には、待機用スペースが形成されており、
必要に応じて、前記ガス流方向に沿って、前記第1光触媒フィルタ・モジュール群から必要な数の前記光触媒フィルタ・モジュールを前記待機用スペースに並進移動させることで、必要なメンテナンス用スペースが形成されることを特徴とする光触媒装置。
【請求項2】
前記モジュール支持構造が、
前記ガス流方向に沿って延在するガイド部材と、
複数の前記光触媒フィルタ・モジュールの各々に固定され且つ前記ガイド部材に並進移動可能に係合せしめられた係合部材と
を含んでいる請求項1に記載の光触媒装置。
【請求項3】
前記ガイド部材が、略水平方向に固定されており、
前記光触媒フィルタ・モジュールの各々が、前記係合部材によって前記ガイド部材に吊り下げられた状態で支持されている請求項2に記載の光触媒装置。
【請求項4】
前記係合部材または前記ガイド部材に、前記ガイド部材または前記係合部材に接して転動する転動手段が装着されている請求項2または3に記載の光触媒装置。
【請求項5】
前記ガイド部材が、その両端にそれぞれに設置された第1支持体及び第2支持体との間に架け渡されており、
前記第1光触媒フィルタ・モジュール群が前記第1支持体に接触した状態で保持され、前記第2支持体の側に前記待機用スペースが形成されている請求項2〜4のいずれか1項に記載の光触媒装置。
【請求項6】
前記第1光触媒フィルタ・モジュール群と前記待機用スペースが、ケーシングの内部に設けられている請求項1〜5のいずれか1項に記載の光触媒装置。
【請求項7】
前記第1光触媒フィルタ・モジュール群がケーシングの内部に設けられていると共に、前記待機用スペースが前記ケーシングの外部に設けられており、
前記ケーシングの前記待機用スペースに対面する箇所に開閉可能部が形成されていて、メンテナンス時には、開放された前記開閉可能部を介して必要な数の前記光触媒フィルタ・モジュールが前記待機用スペースに並進移動可能とされる請求項1〜5のいずれか1項に記載の光触媒装置。
【請求項8】
前記光触媒フィルタ・モジュールの各々が、
被処理ガスを透過させる開口を有するモジュール本体と、
前記モジュール本体に固定された、前記開口と重なる位置に前記光触媒フィルタ装着用の窓を有するフィルタ・フレームと、
前記窓と重なる位置に前記光源が配置されるように前記モジュール本体または前記フィルタ・フレームに固定された光源装着部材とを含んでいる請求項1〜7のいずれか1項に記載の光触媒装置。
【請求項9】
さらに、前記第1光触媒フィルタ・モジュール群の前記ガス導入端側または前記ガス排出端側に隣接して設置された、前記光触媒フィルタを含み且つ前記光源を含まない光触媒フィルタ・モジュールを含んでいて、当該光触媒フィルタ・モジュールと前記第1光触媒フィルタ・モジュール群とは第2光触媒フィルタ・モジュール群を構成している請求項1〜8のいずれか1項に記載の光触媒装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−101143(P2012−101143A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249212(P2010−249212)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(390039619)株式会社レナテック (19)
【Fターム(参考)】