説明

光触媒軽石の製造方法

【課題】天然軽石を用いてチタン化合物の分散液を混合付着させた天然軽石を内燃式流動床炉の排気側から流動床に供給し、900〜1100℃で焼成発泡して得られる光触媒軽石を、反応副産物の複雑な分離作業や廃水処理を必要とせず、短時間で効率よく連続的に製造する方法およびその製造装置とその光触媒軽石を用いた水の浄化方法を提供することを目的とする。
【解決手段】天然軽石にチタン化合物の分散液を天然軽石に混合付着させた後、内燃式媒体流動床炉で900〜1100℃で熱処理することにより、アナターゼ型の酸化チタンとして軽石に固定化して、独自の回収装置で回収することにより、ゆるみ見掛比重0.19〜0.36の光触媒軽石を短時間で連続的に効率よく製造する。この光触媒軽石を被処理水に浮かべ、紫外線を有する光を照射し、被処理水を浄化する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、チタン化合物の分散液を混合付着させた天然軽石を、内燃式媒体流動床炉を用いて900〜1100℃で焼成し、光触媒軽石を反応副産物の分離作業を必要とせず、短時間で効率よく連続的に製造する方法およびその製造装置と光触媒軽石を用いた水の浄化方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光触媒を無機多孔質粒子に固定化する技術としては、特許第2613179号に無機多孔質粒子に光半導体粒子を200〜800℃で熱処理する方法が提案されている。その特許公報の第0010段落に、焼成温度は「好ましくは、200〜800℃、特に好ましくは300〜800℃の温度で焼成するのが適当である」と明記している。
【0003】
特開平10−249210号には、10〜500μmの中空シラスバルーン及びその造粒物に光触媒粒子を固定させる熱処理温度として、公開特許公報の第0055段落に「450〜1000℃、好ましくは450〜800℃、さらに好ましくは450〜600℃で加熱させる」と明記している。更に、同段落に「1000℃より高くなると光触媒粒子の活性が低くなるので好ましくない」と明記している。
【0004】
また、特許第3234893号には、塩化チタン含有塩酸水溶液または硫酸チタン含有硫酸水溶液中に、平均粒径50μm以下の火山ガラス質堆積物粉体を分散させ、アルカリ水溶液を滴下して該粉体粒子表面に酸化チタン水和物を析出させた後、固液分離を行い、洗浄し、乾燥させたものを900〜1100℃で1〜60秒間熱処理することで50μm以下の酸化チタン被覆微細中空ガラス球状体を製造する方法が提示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
光触媒活性のある酸化チタンの結晶形態は、アナターゼ型である。特許第2613179号および特開平10−249210号では、酸化チタンの多孔質体へ固定するための熱処理温度は、800℃以下または600℃以下が好ましいとしている。これは、技法堂出版発行(1993年)の清野学著「酸化チタン−物性と応用技術」の53ページの9〜10行に酸化チタンの結晶形態における熱転移について「アナターゼは、915±15℃以上でルチルに転移し」と明記され、51ページ13行目に「酸化チタン自身は800℃以下の加熱による変質は本質的にない」ことが明記されていることからもわかるように、従来技術においては、酸化チタンの固定化のための熱処理は、800℃以下が適しているとされている。
【0006】
特許3234893号では、酸化チタンを固定化する温度が900〜1100℃としているが、これは、鹿児島県新技術開発推進協議会調査研究報告書No.38(2001年7月発行)に特許内容が示されているように、竪型の外熱式加熱炉の中を空気に随伴して火山ガス質堆積物粉体を垂直に噴き上げて製造する方式である。この従来技術では、塩化チタン含有塩酸水溶液または硫酸チタン含有硫酸水溶液を用いており、それにアルカリ水溶液を滴下してチタニア水和物を析出させている。これは、強酸の塩とアルカリの中和反応であり、必ず塩素化合物、硫酸化合物の反応副産物を生ずるので、これらの反応副産物を除去するために、ろ過、洗浄、乾燥工程が必要となる。
【0007】
そのチタニア水和物を析出させるため被覆処理と反応副産物の除去のための処理にも多くの手間と長時間を要する。同報告書によれば、水溶液中での被覆処理の最適反応時間が2時間である。反応副産物として塩化アンモニウムが生成するので、反応終了後にろ過、脱水、洗浄した後、100℃で8時間または150℃8時間の乾燥を行った後、外熱式加熱炉で熱処理することが明記されている。この従来技術は、熱処理前の工程が複雑で反応副産物や廃水を生じ、長時間の前処理を要しており、しかも50μm以下の酸化チタン被覆微細中空ガラス球状体の製造方法が示されている。この竪型の外熱式加熱炉では、1mm以上の天然軽石を発泡させることは難しいという問題点がある。
本発明者らの提案した方法(特許第2562788号、特許第3028474号、特願2001−180848号)は、製造工程の簡素化と内燃式熱媒体流動床炉の自動温度制御および複数のサイクロン集塵装置との連結により、中空ガラス球状体を得ることに成功しているが、内燃式熱媒体流動床炉へ火山ガラス原料を生ガス(圧縮空気と燃料ガス)に随伴させて流動床下部の目皿を通して供給する方式であるため、1mm以上の酸化チタンの分散液またはチタン有機化合物の分散液を混合付着させた天然軽石を生ガスに随伴させることはできなかった。
【0008】
本発明は、1〜15mmの天然軽石を用いてチタン化合物の分散液を混合付着させた天然軽石を内燃式流動床炉の排気側から流動床に供給し、900〜1100℃で焼成発泡して得られるゆるみ見掛比重0.19〜0.36の光触媒軽石を、反応副産物の複雑な分離作業や廃水処理を必要とせず、短時間で効率よく連続的に製造する方法およびその製造装置とその光触媒軽石を用いた水の浄化方法を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
天然軽石に酸化チタンを固定化するためには、光触媒活性の優れたアナターゼ型の酸化チタンが光触媒機能の劣るルチル型に熱転移しないように、800℃以下で熱処理することが求められる。しかし、焼成温度800℃以下では天然軽石は焼成発泡し難く、特に南九州産の天然軽石であるシラスに含まれる軽石(シラスとは入戸火砕流堆積物のことを指す)、大隅降下軽石(鹿児島県の大隅半島に産出する降下軽石)、ボラ(霧島山起源の降下軽石。宮崎県ではひゅうが土、ひゅうがボラともいう)は、殆ど焼成発泡しない。
【0010】
本発明者らは、南九州に産出する天然軽石を用いて、アナターゼ型酸化チタンを固定化すると同時に天然軽石を焼成発泡させる技術について、鋭意研究を重ねた結果、天然軽石にチタン化合物の分散液を天然軽石に混合付着させた後、内燃式媒体流動床炉で900〜1100℃で熱処理することにより、アナターゼ型の酸化チタンとして軽石に固定化して、独自の回収装置で回収することにより、ゆるみ見掛比重0.19〜0.36の光触媒軽石を短時間で連続的に効率よく製造する方法およびその製造装置さらにその光触媒軽石を用いた水の浄化方法に関する発明を完成するに至った。
【0011】
本発明の光触媒軽石を製造する方法は、チタン化合物の分散液を混合付着させた天然軽石を内燃式流動床炉の排気側から流動床に供給し、900〜1100℃で焼成発泡することからなる。
【0012】
光触媒軽石を製造する方法は、チタン化合物の分散液を混合付着させた天然軽石を内燃式流動床炉の排気側から流動床に供給し、900〜1100℃で焼成発泡して得られる光触媒軽石を光触媒軽石回収装置で回収し、サイクロン集塵装置とバグフィルター集塵装置で光触媒微小軽石を回収することからなる。光触媒微小軽石とは、平均粒径1mm以下の光触媒軽石のことである。また、平均粒径1〜15mmの天然軽石を用いて焼成発泡して得られるゆるみ見掛比重0.19〜0.36の、1〜15mmの光触媒軽石は、新規な物質であり、これらの方法で得られたものに限定されるものではない。
【0013】
光触媒軽石を短時間で連続的に製造する方法は、チタン有機化合物の分散液を混合付着させた天然軽石を内燃式流動床炉の排気側から流動床に供給し、900〜1100℃で焼成発泡して得られる光触媒軽石を光触媒軽石回収装置で回収し、サイクロン集塵装置とバグフィルター集塵装置で光触媒微小軽石を回収することからなる。
【0014】
本発明におけるチタン化合物とは、チタン無機化合物またはチタン有機化合物である。チタン無機化合物とは、酸化チタン、塩化チタンなどがある。酸化チタンの分散液は、酸化チタンを3〜40wt%程度含有した分散液である。
【0015】
上記に記載の製造方法におけるチタン化合物の分散液は、チタン無機化合物を水または珪酸アルカリ水溶液または油に分散した液、あるいは酸化チタンを分散したチタニアゾルまたはチタニアスラリーである。上記に記載の製造方法におけるチタン化合物の分散液は、チタンアルコキシドまたはチタンキレートなどのチタン有機化合物を有機溶媒で分散した液である。
【0016】
チタン有機化合物の分散液としては、チタンテトラブトキシド、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、テトラメチルチタネートなどのチタンアルコキシド類やチタンラクテート、チタンアセチルアセトナート、チタンテトラアセチルアセトナート、ポリチタンアセチルアセトナート、チタンオクチレングリコレート、チタンエチルアセトアセテート、チタントリエタノールアミネートなどのチタンキレート類などがある。
【0017】
上記に記載の製造方法における天然軽石は、平均粒径1〜15mmである。水を浄化する方法は、上記に記載のいずれかにより製造される光触媒軽石を被処理水に浮かべ、紫外線を有する光の照射によるものであることである。紫外線を有する光とは、太陽光、アーク灯、蛍光灯、紫外線を出す蛍光灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯などのことである。
【0018】
サイクロン集塵装置は、微小軽石を含む気流を旋回運動させ、粒子に遠心力を与えて、気流から微小軽石を分離回収する装置である。ゆるみ見掛比重は、粉体または粒体のタッピングしない状態の単位体積(1cc)当たりの質量(g)の値である。静置した内容積100ccのカップに被測定物を入れ、カップの上の余分なものをブレードですりきったときの被測定物の質量(g)を100で割った値である。
【0019】
【発明の実施の形態】
南九州のシラスに含まれる軽石、大隅降下軽石、ボラは、平均粒径1mm以上の軽石で110℃乾燥後のゆるみ見掛比重が、約0.50〜0.42である。これらは、電気炉において大気中800℃以下で焼成しても殆ど膨張せず、水分の脱水量の分しか軽量せず、酸化チタンを固定化すれば更に比重が大きくなるので、ゆるみ見掛比重0.36以下の光触媒軽石は得られない。
【0020】
そこで、チタン化合物の分散液を混合付着させた天然軽石を従来技術よりも急速に焼成することによって軽石を焼成発泡させると同時にアナターゼ型の酸化チタンとして固定化する検討を重ねた。その結果、所望の光触媒軽石を得るための条件として、内燃式媒体流動床炉を用いて熱媒体や燃焼炎からの強力な赤外線加熱と熱伝導により急激に天然軽石を焼成発泡できる焼成温度が900〜1100℃の場合に、天然軽石を焼成発泡させると同時にアナターゼ型の酸化チタンとして固定化できることを見出した。
【0021】
チタン化合物の分散液の混合付着は、溶液中に没して含浸させるのではなく、天然軽石に塗すように混合付着させる。これは、天然軽石の持つ高い吸油性と吸水性を利用したもので、乾燥した天然軽石を回転フィーダーの中で添加していくだけでよい。混合付着させる量は、酸化チタンとして天然軽石重量の1〜10wt%が適している。その作業は極めて単純で、余分な溶液、反応副産物、廃水を生じないので、酸化チタンの分散液またはチタン有機化合物の分散液の100%を天然軽石に混合付着させて用いるので効率がよい。混合付着後は液が滴らないので扱いが楽であり、そのまま内燃式熱媒体流動床炉に供給できるので、熱処理前の前処理が短時間で手間もかからず効率的であるという利点がある。
【0022】
本発明者らの提案した方法(特許第2562788号、特許第3028474号、特願2001−180848号)は、製造工程の簡素化と内燃式熱媒体流動床炉の自動温度制御および複数のサイクロン集塵装置との連結により、中空ガラス球状体を得ることに成功しているが、内燃式熱媒体流動床炉へ火山ガラス原料を生ガス(圧縮空気と燃料ガス)に随伴させて流動床下部の目皿を通して供給する方式であるため、1mm以上の酸化チタンの分散液またはチタン有機化合物の分散液を混合付着させた天然軽石を生ガスに随伴させることはできなかったので、原料供給方法と回収方法に独自の工夫を行った。
【0023】
図1に、原料供給装置、内燃式流動床炉、光触媒軽石回収装置を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0024】
原料供給方法は、流動床炉の排気側から天然軽石を直接投入できる原料供給用のパイプが取り付けてある。光触媒軽石は、流動床炉の直ぐ上部の側面に独自の工夫を施した光触媒軽石回収装置15により回収する。
【0025】
この光触媒軽石回収装置15には、熱媒体だけを流動床に循環させるためのスリット14と邪魔板16とを設けてある。この光触媒軽石回収装置15は、焼成発泡後の光触媒軽石を長い配管やサイクロンを通過させずに短距離で回収できるので、配管や壁面への衝突による摩滅や分裂による微粉分の混入を最小限に抑えることができる。
【0026】
天然軽石に付着していた微粉分や微小な軽石もある程度焼成発泡し、ゆるみ見掛比重が小さく粒径も小さいので排気ガスの気流に随伴されて、サイクロン集塵装置21で回収される。この微小軽石にも酸化チタンがアナターゼ型として固定化されている。ムライトボールなどの比重の大きい熱媒体13は、自重で排気ガスの流れに逆らい流動床に戻る。
【0027】
発明で用いた内燃式媒体流動床炉は、内径132mmの内筒からなる流動床炉であり、燃焼温度900℃以下ではゆるみ見掛比重0.36以下の光触媒軽石は製造できなかった。また、1100℃以上では流動床部分で軽石同士の融着が起こりやすく、それ以上では実験が困難であった。燃料ガス(ここではプロパンガス)と燃焼空気を合わせた混合ガス量45Nm3/h〜70Nm3/hの条件で、安定して光触媒軽石を回収することができた。
【0028】
以上のように独自の内燃式流動床炉と独自の回収装置を組み合わせることにより、微粉分の少ない1mm以上の光触媒軽石を、反応副産物の複雑な分離作業や廃水処理を必要とせず、短時間で効率よく連続的に製造することに成功した。
【0029】
チタン化合物の分散液を混合付着させた平均粒径2mm以下の天然軽石を流動床炉の排気側から供給した場合、天然軽石に2mm前後のものが含まれていれば、回収率は下がるものの平均粒径2mm以上の光触媒軽石を少量回収することができる。これ以外の平均粒径2mm以下の光触媒微小軽石は、サイクロン集塵装置やバグフィルター集塵装置で回収される。
【0030】
光触媒軽石回収容器2で回収された光触媒軽石の粉末X線回折測定を行った。その結果を図2に示す。チタン無機化合物の分散液およびチタン有機化合物の分散液を混合付着した場合のどちらとも、アナターゼ型の酸化チタンの回折ピークを確認し、固定化されていることを確認した。
【0031】
本発明の光触媒軽石の光触媒機能を確認するため、紫外線ランプ下と太陽光下での色素を用いた脱色試験と鹿児島県下の畜産廃水の浄化試験を行った。
【0032】
本発明により製造された平均粒径6mmの光触媒軽石をGeigy Co.Ltd.製の酸性染料イルガノールブルーBSの水溶液に投入して、紫外線カーボンアーク灯光下で12時間放置した。比較のため、色素だけの水溶液を同様に放置した。島津製作所製の吸光度計UV−2500PC型で600nmの波長の吸光度で色素濃度を測定した結果、光触媒軽石の著しい脱色効果を確認した。
【0033】
次に、上記の実験で最も脱色効果の優れてた光触媒軽石をGeigy Co.Ltd.製の酸性染料イルガノールブルーBSの水溶液を三角フラスコで蓋をして、6月初旬の晴天の午前9時にセットし、翌日の雨天の午後5時までの32時間ビル屋上に放置した。島津製作所製の吸光度計UV−2500PC型で600nmの波長の吸光度で色素濃度を測定した結果、光触媒軽石の著しい脱色効果を確認した。
【0034】
鹿児島県下の4カ所の養豚場(養豚場A沈殿漕後:曽於郡串良町,養豚場B沈殿槽内:肝属郡鹿屋市、養豚場C排水漕:肝属郡鹿屋市、養豚場Dラグーン内:肝属郡鹿屋市)から排出される淡褐色の畜産廃水を採取し、本発明の光触媒軽石を投入し、ラップで蓋をして、紫外線カーボンアーク灯光下で12時間、24時間後にサンプリングし最終的に48時間放置した。吸光度は、12時間ごとの値を測定し、生物学的酸素要求量(BOD)、全有機炭素量(TOC)は、投入前と48時間放置後について測定を行った。吸光度は、島津製作所製の吸光度計UV−2500PC型での波長スチャンにより300〜600nmの吸光度を測定したが、短波長から長波長側へ右肩下がりの吸光度を示した。そこで、酒税法におけるウイスキーなどの着色度の測定基準である波長430nmの吸光度から畜産廃水の脱色の目安として測定を行った。
【0035】
光触媒軽石を投入した紫外線カーボンアーク灯光下での4カ所の畜産廃液の0、12,24、48時間後の430nmの吸光度の推移を図3に示す。いずれも、放置時間が長くなるほど、吸光度が小さくなり、原液を100%とすると2〜55%まで脱色効果があり、光触媒軽石が畜産廃水に対して脱色効果を発揮することを見出した。
【0036】
光触媒軽石を投入した紫外線カーボンアーク灯光下での4カ所の畜産廃液の0、48時間後のBODとCODの推移を図4、5に示す。いずれも、BOD、CODの値が減少しており、光触媒軽石が畜産廃水に対して浄化効果を発揮することを見出した。
【0037】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
〔実施例1〕
鹿児島県肝属郡串良町細山田産の平均粒径6mmの降下軽石を110℃で乾燥後、軽石2kgに対して石原産業製チタニアスラリーSTS21(酸化チタン含有量39.2%)を384g混合付着させたものを、950℃に制御された内燃式流動床炉の排気側から10.6kg/hで12分間投入し、光触媒軽石回収装置によりゆるみ見掛比重0.30の光触媒軽石を1757g回収し、サイクロン集塵装置とバグフィルター集塵装置で光触媒微小軽石を合わせて15g回収した。光触媒軽石の粉末X線回折測定を行った結果を図2に示す。焼成発泡後にアナターゼ型の酸化チタンの回折ピークを確認し、固定化されていることを確認した。このゆるみ見掛比重0.30の光触媒軽石10gをGeigy Co.Ltd.製の酸性染料イルガノールブルーBSの20ppm水溶液150mlに投入して、紫外線カーボンアーク灯光下で12時間放置した結果、光触媒軽石の脱色効果を確認した。
【0039】
〔比較例1〕
従来技術による比較実験として、鹿児島県肝属郡串良町細山田産の平均粒径6mmの降下軽石を110℃で乾燥後、軽石2kgに対して石原産業製チタニアスラリーSTS21(酸化チタン含有量39.2%)を384g混合付着させたもの100gを蒸発皿に入れ、950℃に制御された電気炉において1時間で昇温し、30分間950℃で保持して焼成した。焼成後のゆるみ見掛比重は、0.45であり、粉末X線回折測定を行った結果を図2R>2に示す。焼成後はアナターゼ型の酸化チタンはごくわずか認められるだけで、ルチル型の大きな回折ピークを確認し、酸化チタンとしてはほとんどがルチル型として固定化されていることを確認した。
【0040】
〔比較例2〕
熱媒体に直径1.5mmのムライトボール700gを用いて950℃に制御された内径132mmの内筒を持つ内燃式熱媒体流動床炉において、鹿児島県肝属郡串良町細山田産の平均粒径6mmの110℃で24時間乾燥した降下軽石を排気側から9.8kg/hの供給速度で80分間投入し、焼成発泡軽石回収装置によりゆるみ見掛比重0.31の焼成発泡軽石を回収した。
この焼成発泡軽石10gをGeigy Co.Ltd.製の酸性染料イルガノールブルーBSの20ppm水溶液150mlを三角フラスコで蓋をして、ビル屋上に7月31日(晴天)の午後5時から翌日の午後5時(晴天)まで24時間放置した。島津製作所製の吸光度計UV−2500PC型で600nmの波長の吸光度で色素濃度を測定した結果、19.1ppmと顕著な脱色効果が無かった。
【0041】
〔比較例3〕
熱媒体に直径1.5mmのムライトボール690gを用いて950℃に制御された内径132mmの内筒を持つ内燃式熱媒体流動床炉において、鹿児島県垂水市新城産の平均粒径3mmの110℃で24時間乾燥した降下軽石を排気側から17.8kg/hの供給速度で19分間投入し、焼成発泡軽石回収装置によりゆるみ見掛比重0.31の焼成発泡軽石を回収した。
この焼成発泡軽石10gをGeigy Co.Ltd.製の酸性染料イルガノールブルーBSの20ppm水溶液150mlを三角フラスコで蓋をして、ビル屋上に7月31日(晴天)の午後5時から翌日の午後5時(晴天)まで24時間放置した。島津製作所製の吸光度計UV−2500PC型で600nmの波長の吸光度で色素濃度を測定した結果、19.3ppmと顕著な脱色効果が無かった。
【0042】
〔実施例2〕
鹿児島県肝属郡串良町細山田産の平均粒径6mmの降下軽石を110℃で乾燥後、軽石2kgに対して石原産業製チタニアゾルSTS01(酸化チタン含有量30.2%)を303g混合付着させたものを、950℃に制御された内燃式流動床炉の排気側から10.5kg/hで12分間投入し、光触媒軽石回収装置によりゆるみ見掛比重0.31の光触媒軽石を1723g回収し、サイクロン集塵装置とバグフィルター集塵装置で光触媒微小軽石を合わせて18g回収した。回収された光触媒軽石の粉末X線回折測定を行った結果、焼成発泡後にアナターゼ型の酸化チタンの回折ピークを確認し、固定化されていることを確認した。また、ルチル型の酸化チタンはほとんど認められなかった。このゆるみ見掛比重0.31の光触媒軽石10gをGeigy Co.Ltd.製の酸性染料イルガノールブルーBSの20ppm水溶液150mlに投入して、紫外線カーボンアーク灯光下で12時間放置した結果、光触媒軽石の脱色効果を確認した。
【0043】
〔実施例3〕
鹿児島県肝属郡串良町細山田産の平均粒径6mmの降下軽石を110℃で乾燥後、軽石2kgに対して石原産業製チタニアゾルSTS02(酸化チタン含有量30.2%)を330g混合付着させたものを、950℃に制御された内燃式流動床炉の排気側から10.3kg/hで12分間投入し、光触媒軽石回収装置によりゆるみ見掛比重0.28の光触媒軽石を1738g回収し、サイクロン集塵装置とバグフィルター集塵装置で光触媒微小軽石を合わせて17g回収した。回収された光触媒軽石の粉末X線回折測定を行った結果、焼成発泡後にアナターゼ型の酸化チタンの回折ピークを確認し、固定化されていることを確認した。また、ルチル型の酸化チタンはほとんど認められなかった。このゆるみ見掛比重0.28の光触媒軽石10gをGeigy Co.Ltd.製の酸性染料イルガノールブルーBSの20ppm水溶液150mlに投入して、紫外線カーボンアーク灯光下で12時間放置した結果、光触媒軽石の脱色効果を確認した。
【0044】
〔実施例4〕
鹿児島県肝属郡串良町細山田産の平均粒径6mmの降下軽石を110℃で乾燥後、軽石2kgに対して昭和電工製ナノチタニアゾルNTB−100(酸化チタン含有量10%)を387g混合付着させたものを、950℃に制御された内燃式流動床炉の排気側から10.4kg/hで12分間投入し、光触媒軽石回収装置によりゆるみ見掛比重0.28の光触媒軽石を1674g回収し、サイクロン集塵装置とバグフィルター集塵装置で光触媒微小軽石を合わせて28g回収した。回収された光触媒軽石の粉末X線回折測定を行った結果、焼成発泡後にアナターゼ型の酸化チタンの回折ピークを確認し、固定化されていることを確認した。このゆるみ見掛比重0.28の光触媒軽石10gをGeigy Co.Ltd.製の酸性染料イルガノールブルーBSの20ppm水溶液150mlに投入して、紫外線カーボンアーク灯光下で12時間放置した結果、光触媒軽石の脱色効果を確認した。
【0045】
〔実施例5〕
鹿児島県肝属郡串良町細山田産の平均粒径6mmの降下軽石を110℃で乾燥後、軽石2kgに対して松本製薬製チタンキレート(チタンラクテート)TC−310(チタン含有量8.2%)を200g混合付着させたものを、950℃に制御された内燃式流動床炉の排気側から10.3kg/hで12分間投入し、光触媒軽石回収装置によりゆるみ見掛比重0.19の光触媒軽石を1855g回収し、サイクロン集塵装置とバグフィルター集塵装置で光触媒微小軽石を合わせて14g回収した。回収された光触媒軽石の粉末X線回折測定を行った結果、焼成発泡後にアナターゼ型の酸化チタンの回折ピークを確認し、固定化されていることを確認した。このゆるみ見掛比重0.19の光触媒軽石10gをGeigy Co.Ltd.製の酸性染料イルガノールブルーBSの20ppm水溶液150mlに投入して、紫外線カーボンアーク灯光下で12時間放置した結果、光触媒軽石の脱色効果を確認した。
【0046】
〔実施例6〕
鹿児島県肝属郡串良町細山田産の平均粒径6mmの降下軽石を110℃で乾燥後、軽石2kgに対して松本製薬製チタンキレート(チタンアセチルアセトナート)TC−100(チタン含有量9.9%)を200g混合付着させたものを、950℃に制御された内燃式流動床炉の排気側から10.1kg/hで13分間投入し、光触媒軽石回収装置によりゆるみ見掛比重0.19の光触媒軽石を1879g回収し、サイクロン集塵装置とバグフィルター集塵装置で光触媒微小軽石を合わせて18g回収した。回収された光触媒軽石の粉末X線回折測定を行った結果、焼成発泡後にアナターゼ型の酸化チタンの回折ピークを確認し、固定化されていることを確認した。このゆるみ見掛比重0.19の光触媒軽石10gをGeigy Co.Ltd.製の酸性染料イルガノールブルーBSの20ppm水溶液150mlに投入して、紫外線カーボンアーク灯光下で12時間放置した結果、光触媒軽石の脱色効果を確認した。
【0047】
〔実施例7〕
鹿児島県肝属郡串良町細山田産の平均粒径6mmの降下軽石を110℃で乾燥後、軽石2kgに対して松本製薬製チタンアルコキシド(テトラノルマルブチルチタネート)TA−25(チタン含有量19.5%)を219g混合付着させたものを、950℃に制御された内燃式流動床炉の排気側から10.0kg/hで13分間投入し、光触媒軽石回収装置によりゆるみ見掛比重0.23の光触媒軽石を1880g回収し、サイクロン集塵装置とバグフィルター集塵装置で光触媒微小軽石を合わせて27g回収した。回収された光触媒軽石の粉末X線回折測定を行った結果、焼成発泡後にアナターゼ型の酸化チタンの回折ピークを確認し、固定化されていることを確認した。このゆるみ見掛比重0.23の光触媒軽石10gをGeigy Co.Ltd.製の酸性染料イルガノールブルーBSの20ppm水溶液150mlに投入して、紫外線カーボンアーク灯光下で12時間放置した結果、光触媒軽石の脱色効果を確認した。
【0048】
〔実施例8〕
鹿児島県肝属郡串良町細山田産の平均粒径6mmの降下軽石を110℃で乾燥後、軽石2kgに対してAldrich Chemical Company製チタンアルコキシド(チタンテトラブトキシド)(純度97%)を210g混合付着させたものを、950℃に制御された内燃式流動床炉の排気側から9.8kg/hで13分間投入し、光触媒軽石回収装置によりゆるみ見掛比重0.24の光触媒軽石を1910g回収し、サイクロン集塵装置とバグフィルター集塵装置で光触媒微小軽石を合わせて20g回収した。回収された光触媒軽石の粉末X線回折測定を行った結果、焼成発泡後にアナターゼ型の酸化チタンの回折ピークを確認し、固定化されていることを確認した。このゆるみ見掛比重0.24の光触媒軽石10gをGeigy Co.Ltd.製の酸性染料イルガノールブルーBSの20ppm水溶液150mlに投入して、紫外線カーボンアーク灯光下で12時間放置した結果、光触媒軽石の脱色効果を確認した。
【0049】
〔実施例9〕
実施例1から実施例8で製造した平均粒径6mmの光触媒軽石10gをGeigy Co.Ltd.製の酸性染料イルガノールブルーBSの20ppm水溶液150mlに投入して、紫外線カーボンアーク灯光下で12時間放置した。比較のため、色素だけの20ppm水溶液を同様に放置した。島津製作所製の吸光度計UV−2500PC型で600nmの波長の吸光度で色素濃度を測定した結果、色素だけの水溶液が28.7ppmであった。このとき、サンプルビーカーに蓋をしていなかったので、紫外線カーボンアーク灯光の発する熱で水分が蒸発して色素濃度が高くなっている。このような色素濃度が大きくなる条件下であったが、光触媒軽石を投入したものは、実施例1から8の光触媒軽石を投入した物がそれぞれ、2.9ppm(実施例1)、13.3ppm(実施例2)、12.4ppm(実施例3)、19.5ppm(実施例4)、19.0ppm(実施例5)、26.6ppm(実施例6)、25.8ppm(実施例7)、21.2ppm(実施例8)とそれぞれ減少し、光触媒軽石の脱色効果を確認した。
【0050】
〔実施例10〕
実施例1のゆるみ見掛比重0.30の光触媒軽石10gをGeigy Co.Ltd.製の酸性染料イルガノールブルーBSの20ppm水溶液150mlを三角フラスコで蓋をして、6月初旬の晴天時の午前9時にセットし、翌日の雨天時の午後5時までの間屋外に放置した。島津製作所製の吸光度計UV−2500PC型で600nmの波長の吸光度で色素濃度を測定した結果、色素だけの水溶液は16.8ppmと多少の脱色が見られたが、光触媒軽石を投入したものは、0.8ppmと著しい脱色効果を確認した。
【0051】
〔実施例11〕
鹿児島県下の4カ所の養豚場(養豚場A沈殿漕後:曽於郡串良町,養豚場B沈殿槽内:肝属郡鹿屋市、養豚場C排水漕:肝属郡鹿屋市、養豚場Dラグーン内:肝属郡鹿屋市)から排出される淡褐色の畜産廃水200mlを採取し、実施例1のゆるみ見掛比重0.30の光触媒軽石を10g投入し、ラップで蓋をして、紫外線カーボンアーク灯光下で12時間、24時間後に10ccずつサンプリングし最終的に48時間放置した。吸光度は、12時間ごとの値を測定し、生物学的酸素要求量(BOD)、全有機炭素量(TOC)は、投入前と48時間放置後について測定を行った。吸光度は、島津製作所製の吸光度計UV−2500PC型での波長スチャンにより300〜600nmの吸光度を測定したが、短波長から長波長側へ右肩下がりの吸光度を示した。そこで、酒税法におけるウイスキーなどの着色度の測定基準である波長430nmの吸光度から畜産廃水の脱色の目安として測定を行った。光触媒軽石を投入した紫外線カーボンアーク灯光下での4カ所の畜産廃液の0、12,24、48時間後の430nmの吸光度の推移を図3に示す。いずれも、放置時間が長くなるほど、吸光度が小さくなり、原液を100%とすると2〜55%まで脱色効果があり、光触媒軽石が畜産廃水に対して脱色効果を発揮することを見出した。光触媒軽石を投入した紫外線カーボンアーク灯光下での4カ所の畜産廃液の0、48時間後のBODとCODの推移を図4、5に示す。いずれも、BOD、CODの値が減少しており、光触媒軽石が畜産廃水に対して浄化効果を発揮することを見出した。
【0052】
〔実施例12〕
鹿児島県肝属郡串良町細山田産の平均粒径6mmの降下軽石を110℃で乾燥した軽石2kgに対して、和光純薬工業(株)製和光一級のアナターゼ型酸化チタン粉末100gと日本化学工業(株)製珪酸カリウム100gと水400gを混合した酸化チタン分散液600gを混合付着させたものを、950℃に制御された内燃式流動床炉の排気側から13.0kg/hで12分間投入し、光触媒軽石回収装置によりゆるみ見掛比重0.36の光触媒軽石を1066g回収し、サイクロン集塵装置とバグフィルター集塵装置で光触媒微小軽石を合わせて112g回収した。光触媒軽石の粉末X線回折測定を行った結果を図6に示す。焼成発泡後にアナターゼ型の酸化チタンの回折ピークを確認し、固定化されていることを確認した。このゆるみ見掛比重0.36の光触媒軽石10gをGeigy Co.Ltd.製の酸性染料イルガノールブルーBSの20ppm水溶液150mlを三角フラスコで蓋をして、ビル屋上に7月31日(晴天)の午後5時から翌日の午後5時(晴天)まで24時間放置した結果、9.7ppmに減少し、光触媒軽石の優れた脱色効果を確認した。
【0053】
〔実施例13〕
鹿児島県肝属郡串良町細山田産の平均粒径3mmの降下軽石を110℃で乾燥した軽石2kgに対して、和光純薬工業(株)製和光一級のアナターゼ型酸化チタン粉末100gと日本化学工業(株)製珪酸カリウム100gと水400gを混合した酸化チタン分散液600gを混合付着させたものを、950℃に制御された内燃式流動床炉の排気側から8.7kg/hで18分間投入し、光触媒軽石回収装置によりゆるみ見掛比重0.33の光触媒軽石を1430g回収し、サイクロン集塵装置とバグフィルター集塵装置で光触媒微小軽石を合わせて246g回収した。光触媒軽石の粉末X線回折測定を行った結果を図6に示す。焼成発泡後にアナターゼ型の酸化チタンの回折ピークを確認し、固定化されていることを確認した。このゆるみ見掛比重0.33の光触媒軽石10gをGeigy Co.Ltd.製の酸性染料イルガノールブルーBSの20ppm水溶液150mlを三角フラスコで蓋をして、ビル屋上に7月31日(晴天)の午後5時から翌日の午後5時(晴天)まで24時間放置した結果、9.7ppmに減少し、光触媒軽石の優れた脱色効果を確認した。
【0054】
〔実施例14〕
鹿児島県肝属郡串良町細山田産の平均粒径3mmの降下軽石を110℃で乾燥した軽石2kgに対して石原産業製チタニアスラリーSTS21(酸化チタン含有量39.2%)を402g混合付着させたものを、950℃に制御された内燃式流動床炉の排気側から5.5kg/hで26分間投入し、光触媒軽石回収装置によりゆるみ見掛比重0.35の光触媒軽石を1604g回収し、サイクロン集塵装置とバグフィルター集塵装置で光触媒微小軽石を合わせて342g回収した。光触媒軽石の粉末X線回折測定を行った結果、焼成発泡後にアナターゼ型の酸化チタンの回折ピークを確認し、固定化されていることを確認した。このゆるみ見掛比重0.35の光触媒軽石10gをGeigy Co.Ltd.製の酸性染料イルガノールブルーBSの20ppm水溶液150mlを三角フラスコで蓋をして、ビル屋上に7月31日(晴天)の午後5時から翌日の午後5時(晴天)まで24時間放置した結果、2.4ppmに減少し、光触媒軽石の優れた脱色効果を確認した。
【0055】
〔実施例15〕
鹿児島県肝属郡串良町細山田産の平均粒径3mmの降下軽石を110℃で乾燥した軽石2002gに対して石原産業製チタニアゾルSTS02(酸化チタン含有量30.2%)を402g混合付着させたものを、950℃に制御された内燃式流動床炉の排気側から9.0kg/hで16分間投入し、光触媒軽石回収装置によりゆるみ見掛比重0.32の光触媒軽石を1364g回収し、サイクロン集塵装置とバグフィルター集塵装置で光触媒微小軽石を合わせて484g回収した。回収された光触媒軽石の粉末X線回折測定を行った結果、焼成発泡後にアナターゼ型の酸化チタンの回折ピークを確認し、固定化されていることを確認した。このゆるみ見掛比重0.32の光触媒軽石10gをGeigy Co.Ltd.製の酸性染料イルガノールブルーBSの20ppm水溶液150mlを三角フラスコで蓋をして、ビル屋上に7月31日(晴天)の午後5時から翌日の午後5時(晴天)まで24時間放置した結果、13.9ppmに減少し、光触媒軽石の優れた脱色効果を確認した。
【0056】
〔実施例16〕
鹿児島県垂水市新城産の平均粒径1mmの降下軽石を110℃で乾燥した軽石2kgに対して、和光純薬工業(株)製和光一級のアナターゼ型酸化チタン粉末100gと日本化学工業(株)製珪酸カリウム100gと水400gを混合した酸化チタン分散液600gを混合付着させたものを、950℃に制御された内燃式流動床炉の排気側から13.8kg/hで11分間投入し、光触媒軽石回収装置により光触媒軽石を271g回収し、サイクロン集塵装置でゆるみ見掛比重0.52の光触媒微小軽石を1571gとバグフィルター集塵装置で光触媒微小軽石を60g回収した。ゆるみ見掛比重0.52の光触媒微小軽石の粉末X線回折測定を行った結果、アナターゼ型の酸化チタンの回折ピークを確認し、固定化されていることを確認した。このゆるみ見掛比重0.52の光触媒微小軽石10gをGeigy Co.Ltd.製の酸性染料イルガノールブルーBSの20ppm水溶液150mlを三角フラスコで蓋をして、ビル屋上に7月31日(晴天)の午後5時から翌日の午後5時(晴天)まで24時間放置した結果、4.5ppmに減少し、光触媒微小軽石の優れた脱色効果を確認した。
【0057】
〔実施例17〕
鹿児島県垂水市新城産の平均粒径1mmの降下軽石を110℃で乾燥した軽石2kgに対して石原産業製チタニアスラリーSTS21(酸化チタン含有量39.2%)を400g混合付着させたものを、950℃に制御された内燃式流動床炉の排気側から14.4kg/hで10分間投入し、光触媒軽石回収装置により光触媒軽石を340g回収し、サイクロン集塵装置でゆるみ見掛比重0.48の光触媒微小軽石を1646gとバグフィルター集塵装置で光触媒微小軽石を76g回収した。このゆるみ見掛比重0.48の光触媒微小軽石の粉末X線回折測定を行った結果、焼成発泡後にアナターゼ型の酸化チタンの回折ピークを確認し、固定化されていることを確認した。このゆるみ見掛比重0.48の光触媒軽石10gをGeigy Co.Ltd.製の酸性染料イルガノールブルーBSの20ppm水溶液150mlを三角フラスコで蓋をして、ビル屋上に7月31日(晴天)の午後5時から翌日の午後5時(晴天)まで24時間放置した結果、0.1ppmに減少し、光触媒微小軽石の優れた脱色効果を確認した。
【0058】
〔実施例18〕
鹿児島県垂水市新城産の平均粒径1mmの降下軽石を110℃で乾燥した軽石2002gに対して石原産業製チタニアゾルSTS02(酸化チタン含有量30.2%)を400g混合付着させたものを、950℃に制御された内燃式流動床炉の排気側から14.4kg/hで10分間投入し、光触媒軽石回収装置により光触媒軽石を382g回収し、サイクロン集塵装置でゆるみ見掛比重0.41の光触媒微小軽石を1602gとバグフィルター集塵装置で光触媒微小軽石を72g回収した。このゆるみ見掛比重0.41の光触媒微小軽石の粉末X線回折測定を行った結果、焼成発泡後にアナターゼ型の酸化チタンの回折ピークを確認し、固定化されていることを確認した。このゆるみ見掛比重0.41の光触媒微小軽石10gをGeigy Co.Ltd.製の酸性染料イルガノールブルーBSの20ppm水溶液150mlを三角フラスコで蓋をして、ビル屋上に7月31日(晴天)の午後5時から翌日の午後5時(晴天)まで24時間放置した結果、0.1ppmに減少し、光触媒軽石の優れた脱色効果を確認した。
【0059】
〔実施例19〕
実施例12から実施例18で製造した光触媒軽石または光触媒微小軽石10gをGeigy Co.Ltd.製の酸性染料イルガノールブルーBSの20ppm水溶液150mlを三角フラスコで蓋をして、ビル屋上に7月31日(晴天)の午後5時から翌日の午後5時(晴天)まで24時間放置した。比較のため、酸化チタンの固定化されていない比較例2と比較例3の焼成発泡軽石を同様にセットし、24時間放置した。島津製作所製の吸光度計UV−2500PC型で600nmの波長の吸光度で色素濃度を測定した結果、酸化チタンの固定化されていない焼成発泡軽石の水溶液は、19.1ppm(比較例2)、19.3ppm(比較例3)とほとんど脱色していなかった。光触媒軽石を投入したものは、それぞれ、9.7ppm(実施例12:光触媒軽石)、9.7ppm(実施例13:光触媒軽石)、2.4ppm(実施例14:光触媒軽石)、13.9ppm(実施例15:光触媒軽石)、4.5ppm(実施例16:光触媒微小軽石)、0.1ppm(実施例17:光触媒微小軽石)、0.1ppm(実施例18:光触媒微小軽石)と優れた脱色効果を確認した。
【0060】
【発明の効果】
以上の結果から、天然軽石から平均粒径1〜15mmの水浮揚光触媒軽石を短時間で連続的に効率よく製造する方法とその装置を開発することに成功した。
【0061】
水浮揚軽石は、光触媒機能の付与によりその付加価値を大幅に向上させることができる。酸化チタンなどの光触媒は、その粒子のごく表面しか効果を発揮しないので、その表面積をできるだけ広くし、浄化しようとする水または空気との接触面積を多くし、光を遮る他の材料で被覆しないことが重要である。その点で、本発明の光触媒軽石は、アナターゼ型の酸化チタンが直接軽石表面に接合し、直接外界と接触できる構造になっているので、効率よく光触媒機能を発揮できる。
【0062】
軽石は、連通気孔が多く比表面積が広く水に浮くので、水中で光を遮られることもなく、効率よく軽石表面に光を受けることができ、比較的透光性のあるガラス質からなるので、ある程度の内部に光が届き、表面と内部の広い面積で光触媒機能を発揮することが期待できる。また、水中においては、それ自身が回転し易いので、水の攪拌と光触媒効果が繰り返され浄化効率の向上が期待できる。
【0063】
また、畜産廃水などの悪臭物質の抑制効果についても、水面上の軽石表面から悪臭を放つ揮発物質の気化の際に、気化が起こりやすく光があたる軽石上部に光触媒が担持されていることによって、悪臭防止の面からも大きな効果が期待できることから、光触媒の担持体として水浮揚軽石は好適である。
【0064】
近年の環境志向と省エネルギー志向から、住宅、建材、塗料、プラスチック、自動車関連、陶磁器などの軽量フィラーとして、環境ホルモンやシックハウス症候群などの心配のない、これら軽石などの天然素材が見直されてきている。
【0065】
本発明によれば、従来技術で困難であった、水に浮揚する光触媒軽石を工業的に、一つの工場ラインで連続的に製造することが可能であり、世界中に賦存する天然軽石や南九州に大量に賦存する降下軽石やシラスなどの軽石堆積物を用いて、世界中の市場で求められている光触媒軽石を低コストで提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】製造装置の概念図である。
【図2】実施例1及び比較例1で得られたものの粉末X線チャートである。
【図3】実施例11の4カ所の畜産廃液の紫外線カーボンアーク灯下での0、12、24、48時間後の吸光度の推移である。
【図4】実施例11の4カ所の畜産廃液の紫外線カーボンアーク灯下での0、48時間後の生物学的酸素要求量(BOD)の推移である。
【図5】実施例11の4カ所の畜産廃液の紫外線カーボンアーク灯下での0、48時間後の化学的酸素要求量(COD)の推移である。
【図6】実施例12及び実施例13で得られた光触媒軽石の粉末X線チャートである。
【符号の説明】
1  原料ホッパー
2  光触媒軽石回収容器
3  光触媒微小軽石回収容器
4  光触媒微小軽石回収容器
5  燃料ガス
6  圧縮空気
10 防爆用磁性ボール
11 目皿
12 温度制御用熱電対
13 熱媒体
14 スリット
15 光触媒軽石回収装置
16 邪魔板
20 内燃式熱媒体流動床炉本体
21 サイクロン集塵装置
22 バグフィルター集塵装置
23 排気ブロワー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン化合物の分散液を混合付着させた天然軽石を内燃式流動床炉の排気側から流動床に供給し、900〜1100℃で焼成発泡して得られる光触媒軽石を製造する方法。
【請求項2】
チタン化合物の分散液を混合付着させた天然軽石を内燃式流動床炉の排気側から流動床に供給し、900〜1100℃で焼成発泡して得られる光触媒軽石を軽石回収装置で回収し、更に、サイクロン集塵装置とバグフィルター集塵装置で光触媒微小軽石を回収することからなる、光触媒軽石を製造する方法。
【請求項3】
チタン化合物の分散液が、チタン無機化合物を水または珪酸アルカリ水溶液または油に分散した液、あるいはチタニアゾルまたはチタニアスラリーである請求項1または請求項2記載の製造方法。
【請求項4】
チタン化合物の分散液が、チタンアルコキシドまたはチタンキレートなどのチタン有機化合物を有機溶媒で分散した液である請求項1または請求項2記載の製造方法。
【請求項5】
天然軽石が、平均粒径1〜15mmである請求項1から請求項4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
平均粒径1〜15mmの天然軽石を用いて焼成発泡して得られるゆるみ見掛比重0.19〜0.36の、1〜15mmの光触媒軽石。
【請求項7】
請求項1から請求項5に記載のいずれかにより製造される光触媒軽石および/または請求項6に記載の光触媒軽石を被処理水に浮かべ、紫外線を有する光の照射により、該被処理水を浄化する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2004−89921(P2004−89921A)
【公開日】平成16年3月25日(2004.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−257066(P2002−257066)
【出願日】平成14年9月2日(2002.9.2)
【出願人】(591155242)鹿児島県 (56)
【Fターム(参考)】