説明

光記録再生装置及び光記録媒体の記録再生方法

【課題】 ホログラム型光記録媒体を用いた場合であっても、光記録再生装置の外部温度条件に左右されず、本来記録された情報と同質の情報を安定かつ速やかに再生することができる光記録再生装置及び光記録媒体の記録再生方法の提供。
【解決手段】 情報光及び参照光と、サーボ光とを光記録媒体に照射してホログラフィック記録層に情報を記録する記録手段と、
情報の記録時に、少なくとも前記光記録媒体における情報の記録位置及び情報記録時の温度を含む温度補正情報を測定し、記録する温度補正情報取得手段と、
情報を再生する前に再生位置の温度補正情報を読み込み、該温度補正情報に基づいて再生時の光記録媒体の温度と記録時の光記録媒体の温度との差が−2〜+2℃の範囲となるように調節した温度で、参照光とサーボ光とを前記光記録媒体に照射してホログラフィック記録層に記録した情報を再生する再生手段と、を有する光記録再生装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラム型光記録媒体を用いた場合であっても、光記録再生装置の外部温度条件に左右されず、本来記録された情報と同質の情報を安定かつ速やかに再生することができる光記録再生装置及び光記録媒体の記録再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高密度画像データ等の大容量の情報を書き込み可能な記録媒体の一つとして光記録媒体が挙げられる。この光記録媒体としては、例えば、光磁気ディスク、相変化型光ディスク等の書換型光記録媒体やCD−R等の追記型光記録媒体については既に実用化されているが、光記録媒体の更なる大容量化に対する要求は高まる一方である。しかし、従来より提案されている光記録媒体は全て二次元記録であり、記録容量の増大化には限界があった。そこで近時、三次元的に情報を記録可能なホログラム型の光記録媒体が注目されている。
【0003】
前記ホログラム型光記録方法は、一般に、二次元的な強度分布が与えられた情報光と、該情報光と強度がほぼ一定な参照光とを感光性の記録層内部で重ね合わせ、それらが形成する干渉縞を利用して記録層内部に光学特性の分布を生じさせることにより、情報を記録する。一方、書き込んだ情報の読み出し(再生)は、記録時と同様の配置で参照光のみを記録層に照射し、記録層内部に形成された光学特性分布に対応した強度分布を有する再生光を前記記録層から出射させることにより行われる。
このホログラム型光記録方法では、記録層内に光学特性分布が三次元的に形成されるので、一の情報光により情報が書き込まれた領域と、他の情報光により情報が書き込まれた領域とを部分的に重ね合わせること、即ち、多重記録が可能である。デジタル体積ホログラフィを利用した場合には、1スポットの信号対雑音比(S/N比)は極めて高くなるので、重ね書きによりS/N比が多少低くなっても元の情報を忠実に再現できる。その結果、多重記録回数が数百回までに及び、光記録媒体の記録容量を著しく増大させることができる(特許文献1参照)。
【0004】
このように体積ホログラフィック記録は、従来のピット(マーク)形式で情報を記録する方式と異なり、ある体積内に干渉縞を屈折率像の形で書き込むため、外部温度による記録層材料の体積収縮及び体積膨張によって、容易に屈折率像の形状が変化し、再生されるべき信号が正しく再生できないという問題がある。
【0005】
したがって本来記録された情報と同質の情報を安定に再生するためには、記録時の温度と同じ温度で再生を行うことが望まれる。例えば、記録時の温度情報を別途記録し、再生時にその記録温度情報を反映することが可能な光記録媒体の記録再生方法及び光記録再生装置が必要であり、このような光記録媒体の記録再生方法及び光記録再生装置の汎用化を図るためには、一定の管理された記録再生工程を行うことが望まれるが、これらを一括して実施可能なものは未だ提供されていないのが現状である。
【0006】
【特許文献1】特開2002−123949号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来における前記問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、ホログラム型光記録媒体を用いた場合であっても、光記録再生装置の外部温度条件に左右されず、本来記録された情報と同質の情報を安定かつ速やかに再生することを可能にする光記録再生装置及び光記録媒体の記録再生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 情報光及び参照光と、サーボ光とを光記録媒体に照射してホログラフィック記録層に情報を記録する記録手段と、
情報の記録時に、少なくとも前記光記録媒体における情報の記録位置及び情報記録時の温度を含む温度補正情報を測定し、記録する温度補正情報取得手段と、
情報を再生する前に再生位置の温度補正情報を読み込み、該温度補正情報に基づいて再生時の光記録媒体の温度と記録時の光記録媒体の温度との差が−2〜+2℃の範囲となるように調節した温度で、参照光とサーボ光とを前記光記録媒体に照射してホログラフィック記録層に記録した情報を再生する再生手段と、を有することを特徴とする光記録再生装置である。
<2> 温度補正情報取得手段が、情報の記録時の温度を測定する非接触型温度計を含む前記<1>に記載の光記録再生装置である。
<3> 非接触型温度計が、赤外線レーザー非接触型温度計である前記<2>に記載の光記録再生装置である。
<4> 情報の記録を行った光記録媒体と同一の光記録媒体上に温度補正情報を記録する前記<1>から<3>のいずれかに記載の光記録再生装置である。
<5> 光記録媒体が、互いに独立して体積ホログラフィック記録領域と、ピットパターン記録領域とを有する前記<4>に記載の光記録再生装置である。
<6> ピットパターン記録領域に記録される温度補正情報が、少なくとも体積ホログラフィック記録領域に記録された情報の光記録媒体における記録位置及び情報の記録時の温度である前記<5>に記載の光記録再生装置である。
<7> 光記録媒体に対する情報光及び参照光の照射を、該情報光の光軸と該参照光の光軸とが同軸となるようにして行い、前記情報光と前記参照光との干渉により生成される干渉パターンによって情報をホログラフィック記録層に記録する前記<1>から<6>のいずれかに記載の光記録再生装置である。
<8> 情報光及び参照光と、サーボ光とを光記録媒体に照射してホログラフィック記録層に情報を記録する記録工程と、
情報の記録時に、少なくとも前記光記録媒体における情報の記録位置及び情報の記録時の温度を含む温度補正情報を測定し、記録する温度補正情報取得工程と、
情報を再生する前に再生位置の温度補正情報を読み込み、該温度補正情報に基づいて再生時の光記録媒体の温度と記録時の光記録媒体の温度との差が−2〜+2℃の範囲となるように調節した温度で、参照光とサーボ光とを前記光記録媒体に照射してホログラフィック記録層に記録した情報を再生する再生工程と、を含むことを特徴とする光記録媒体の記録再生方法である。
<9> 光記録媒体に対し、情報光及び参照光の照射を、該情報光の光軸と該参照光の光軸とが同軸となるようにして行い、前記情報光と前記参照光との干渉により生成される干渉パターンによって情報をホログラフィック記録層に記録する前記<8>に記載の光記録媒体の記録再生方法である。
【0009】
本発明の光記録再生装置は、情報光及び参照光と、サーボ光とを光記録媒体に照射してホログラフィック記録層に情報を記録する記録手段と、
情報の記録時に、少なくとも前記光記録媒体における情報の記録位置及び情報の記録時の温度を含む温度補正情報を測定し、記録する温度補正情報取得手段と、
情報を再生する前に再生位置の温度補正情報を読み込み、該温度補正情報に基づいて再生時の光記録媒体の温度と記録時の光記録媒体の温度との差が−2〜+2℃の範囲となるように調節した温度で、参照光とサーボ光とを前記光記録媒体に照射してホログラフィック記録層に記録した情報を再生する再生手段と、を有する。
本発明の光記録再生装置においては、光記録媒体に情報を記録時の温度情報を正確に把握できる温度補正情報取得手段を有し、情報の再生時に適切な温度条件に調節することができるので、ホログラム型光記録媒体を用いた場合であっても、光記録再生装置の外部温度条件に左右されず、本来記録された情報と同質の情報を安定かつ速やかに再生することができる。
【0010】
本発明の光記録媒体の記録再生方法は、情報光及び参照光と、サーボ光とを光記録媒体に照射してホログラフィック記録層に情報を記録する記録工程と、
情報の記録時に、少なくとも前記光記録媒体における情報の記録位置及び情報の記録時の温度を含む温度補正情報を測定し、記録する温度補正情報取得工程と、
情報を再生する前に再生位置の温度補正情報を読み込み、該温度補正情報に基づいて再生時の光記録媒体の温度と記録時の光記録媒体の温度との差が−2〜+2℃の範囲となるように調節した温度で、参照光とサーボ光とを前記光記録媒体に照射してホログラフィック記録層に記録した情報を再生する再生工程と、を含む。
本発明の光記録媒体の記録再生方法においては、情報を記録時の温度情報を正確に把握できる温度補正情報取得工程を含み、情報の再生時に適切な温度条件に調節することができるので、ホログラム型光記録媒体を用いた場合であっても、光記録再生装置の外部温度条件に左右されず、本来記録された情報と同質の情報を安定かつ速やかに再生することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、従来における諸問題を解決でき、ホログラム型光記録媒体を用いた場合であっても、光記録再生装置の外部温度条件に左右されず、本来記録された情報と同質の情報を安定かつ速やかに再生することができる光記録再生装置及び光記録媒体の記録再生方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(光記録再生装置及び光記録媒体の記録再生方法)
本発明の光記録再生装置は、記録手段と、温度補正情報取得手段と、再生手段と、を有してなり、更に必要に応じてその他の手段を有してなる。
本発明の光記録媒体の記録再生方法は、記録工程と、温度補正情報取得工程と、再生工程とを含んでなり、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
本発明の光記録媒体の記録再生方法は、本発明の光記録再生装置により好適に実施することができ、前記記録工程は前記記録手段により行うことができ、前記温度補正情報取得工程は前記温度補正情報取得手段により行うことができ、前記再生工程は前記再生手段により行うことができ、前記その他の工程は前記その他の手段により行うことができる。
【0013】
<記録手段及び記録工程>
前記記録工程は、情報光及び参照光と、サーボ光とを光記録媒体に照射してホログラフィック記録層に情報を記録する工程であり、前記記録手段により行われる。
【0014】
前記情報光及び前記参照光の光としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、光源から出射される可干渉性のあるレーザー光などが好ましい。
前記レーザー光としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、波長が、360〜850nmから選択される1種以上の波長からなるレーザー光などが挙げられる。該波長は、380〜800nmが好ましく、400〜750がより好ましく、500〜600nmが最も好ましい。
前記波長が、360nm未満であると、鮮明な立体画像が得られないことがあり、850nmを超えると、前記干渉縞が微細となり、それに対応する感光材料が得られないことがある。
前記サーボ光としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、波長が、600〜900nmの光が挙げられる。
【0015】
前記レーザー光の光源としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、固体レーザー光発振器、青色領域の半導体レーザー光発振器、液体レーザー光発振器、アルゴンなどの気体レーザー光発振器、He−Cdレーザー発振器、周波数2倍YAGレーザー発振器、He−Neレーザー発振器、Krレーザー発振器などが挙げられる。これらの中でも、気体レーザー光発振器、青色領域の半導体レーザー光発振器などが好ましい。
【0016】
前記情報光及び前記参照光の照射方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、同一の光源から出射される一のレーザー光などを分割して、情報光及び参照光として照射してもよく、異なる光源から出射される二つのレーザー光などを照射してもよい。
前記情報光と前記参照光の照射方向としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記情報光と前記参照光が異なった方向から照射されてもよく、同一方向で照射されもよい。また、前記情報光の光軸と前記参照光の光軸とが同軸となるようにして照射されるものでもよい。
【0017】
<温度補正情報取得工程及び温度補正情報取得手段>
前記温度補正情報取得工程は、情報の記録時に、少なくとも前記光記録媒体における情報の記録位置及び情報の記録時の温度を含む温度情報を測定し、記録する工程であり、温度補正情報取得手段により行われる。
【0018】
前記温度補正情報取得手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、光記録媒体の制震、面ぶれ防止、表面保護、及び正確性を期す点から、情報の記録時の温度を測定する非接触型温度計を含むことが好ましい。該非接触型温度計としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、赤外線レーザー非接触型温度計、などが挙げられる。
【0019】
前記温度補正情報取得手段により記録される情報としては、少なくとも記録された情報の前記光記録媒体における記録位置及び記録時の温度が挙げられ、更に、光記録媒体の種別、日時の情報、インデックスなどが挙げられる。
【0020】
測定した記録位置及び温度情報は、情報記録を行った光記録媒体と同一の光記録媒体上に記録してもよいし、一時的に光記録再生装置内に保存した後、別の記録媒体に記録してもよく、また、光記録媒体の識別情報と一緒に光記録再生装置内に保存してもよい。これらの中でも、光記録媒体を不特定多数の光記録再生装置で再生することが可能となる点から、情報の記録を行った光記録媒体と同一の光記録媒体上に記録することが特に好ましい。
【0021】
情報記録を行った光記録媒体と同一の光記録媒体上に記録することができる光記録媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、体積ホログラフィック記録領域と、ピットパターン記録領域とを有するものが好適である。
このように温度条件によって情報の書き込みが左右されないピットパターン記録領域に、体積ホログラフィック記録領域に記録された情報の前記光記録媒体における記録位置及び記録時の温度の情報を記録することができるので、体積ホログラフィック記録領域に記録された情報を再生する際に、前記ピットパターン記録領域に記載されている温度情報を読み込んで、再生時の温度を制御することにより、正確かつ安定な再生が可能となる。
【0022】
前記体積ホログラフィック記録領域と、前記ピットパターン記録領域とは、互いに独立した領域であることが好ましい。
ここで、「独立した領域」とは、体積ホログラフィック記録領域と、ピットパターン記録領域とが、互いに重なった部分を有しないことを意味する。重なった部分が存在するとピットパターン記録領域から情報を読み出す際に微量な発熱が生じて、本来制御すべき温度管理が適切に行えなくなることがある。
前記体積ホログラフィック記録領域と、前記ピットパターン記録領域との配置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、図1に示すように、同心円状の外周部に体積ホログラフィック記録領域201と、内周部にピットパターン記録領域202とを有する態様、また、図2に示すように、円弧状の体積ホログラフィック記録領域201と、円弧状のピットパターン記録領域202とを有する態様、などが挙げられる。なお、図1及び図2中、203は、チャッキング孔である。これらの中でも、図1に示す態様が製造適性の点から好ましい。
【0023】
前記体積ホログラフィック記録領域の面積の前記光記録媒体の全記録面積に対する面積比率は、10〜95%が好ましく、20〜90%がより好ましく、30〜80%が更に好ましい。前記面積比率が95%を超えると、ピットパターン記録領域の面積が少なくなりすぎて、体積ホログラフィック記録領域に記録されるすべての情報ごとの温度情報をピットパターン記録領域に記録することができなくなることがあり、10%未満であると、体積ホログラフィック記録領域の面積が少なくなりすぎて、大容量光記録媒体としての記録容量を確保することができないことがある。
前記ピットパターン記録領域の面積の光記録媒体の全記録面積に対する面積比率は、5〜90%が好ましく、10〜80%がより好ましく、20〜70%が更に好ましい。前記面積比率が5%未満であると、ピットパターン記録領域の面積が少なくなりすぎて、体積ホログラフィック記録領域に記録されるすべての情報ごとの温度情報をピットパターン記録領域に記録することができなくなることがあり、90%を超えると、体積ホログラフィック記録領域の面積が少なくなりすぎて、大容量光記録媒体としての記録容量を確保することができないことがある。
【0024】
〔体積ホログラフィック記録領域〕
前記体積ホログラフィック記録領域は、少なくとも第一の基板と、選択反射層と、ホログラフィック記録層と、第二の基板とを有してなり、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
【0025】
−ホログラフィック記録層−
前記ホログラフィック記録層は、ホログラムの原理を利用して記録再生可能なものであれば特に制限はなく、2次元などの情報を記録する比較的薄型の平面ホログラムや立体像など多量の情報を記録する体積ホログラムであってもよく、透過型及び反射型のいずれであってもよい。また、ホログラムの記録方式もいずれであってもよく、例えば、振幅ホログラム、位相ホログラム、ブレーズドホログラム、複素振幅ホログラムなどでもよい。
これらの中でも、体積ホログラフィック記録領域における情報の記録が、情報光及び参照光を同軸光束として体積ホログラフィック記録領域に照射し、前記情報光と前記参照光との干渉による干渉パターンによって情報を記録する、いわゆるコリニア方式が特に好ましい。
【0026】
前記記録層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(1)光照射で重合反応が起こり高分子化するフォトポリマー、(2)フォトリフラクティブ効果(光照射で空間電荷分布が生じて屈折率が変調する)を示すフォトリフラクティブ材料、(3)光照射で分子の異性化が起こり屈折率が変調するフォトクロミック材料、(4)ニオブ酸リチウム、チタン酸バリウム等の無機材料、(5)カルコゲン材料、などが挙げられる。
【0027】
前記(1)のフォトポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、モノマー、及び光開始剤を含有してなり、更に必要に応じて増感剤、オリゴマー等のその他の成分を含有してなる。
【0028】
前記フォトポリマーとしては、例えば、「フォトポリマーハンドブック」(工業調査会、1989年)、「フォトポリマーテクノロジー」(日刊工業新聞社、1989年)、SPIE予稿集 Vol.3010 p354−372(1997)、及びSPIE予稿集 Vol.3291 p89−103(1998)に記載されているものを用いることができる。また、米国特許第5,759,721号明細書、同第4,942,112号明細書、同第4,959,284号明細書、同第6,221,536号明細書、国際公開第97/44714号パンフレット、同第97/13183号パンフレット、同第99/26112号パンフレット、同第97/13183号パンフレット、特許第2880342号公報、同第2873126号公報、同第2849021号公報、同第3057082号公報、同第3161230号公報、特開2001−316416号公報、特開2000−275859号公報、などに記載されているフォトポリマーを用いることができる。
【0029】
前記フォトポリマーに記録光を照射して光学特性を変化させる方法としては、低分子成分の拡散を利用した方法などが挙げられる。また、重合時の体積変化を緩和するため、重合成分とは逆方向へ拡散する成分を添加してもよく、或いは、酸開裂構造を有する化合物を重合体のほかに別途添加してもよい。なお、前記低分子成分を含むフォトポリマーを用いて記録層を形成する場合には、記録層中に液体を保持可能な構造を必要とすることがある。また、前記酸開裂構造を有する化合物を添加する場合には、その開裂によって生じる膨張と、モノマーの重合によって生じる収縮とを補償させることにより体積変化を抑制してもよい。
【0030】
前記モノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル基やメタクリル基のような不飽和結合を有するラジカル重合型のモノマー、エポキシ環やオキセタン環のようなエーテル構造を有するカチオン重合型系モノマーなどが挙げられる。これらのモノマーは、単官能であっても多官能であっても構わない。また、光架橋反応を利用したものであっても構わない。
【0031】
前記ラジカル重合型のモノマーとしては、例えば、アクリロイルモルホリン、フェノキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールPO変性ジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、EO変性グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、2−ナフト−1−オキシエチルアクリレート、2−カルバゾイル−9−イルエチルアクリレート、(トリメチルシリルオキシ)ジメチルシリルプロピルアクリレート、ビニル−1−ナフトエート、N−ビニルカルバゾール、などが挙げられる。
前記カチオン重合型系モノマーとしては、例えば、ビスフェノールAエポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、グリセロールトリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサングリシジルエーテル、ビニルトリメトキシシラン、4−ビニルフェニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、下記構造式(A)〜(E)で表される化合物、などが挙げられる。
これらモノマーは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【化1】

【0032】
前記光開始剤としては、記録光に感度を有するものであれば特に制限はなく、光照射によりラジカル重合、カチオン重合、架橋反応などを引き起こす材料などが挙げられる。
前記光開始剤としては、例えば、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,1’−ビイミダゾール、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(p−メトキシフェニルビニル)−1,3,5−トリアジン、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、4,4’−ジ−t−ブチルジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、4−ジエチルアミノフェニルベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンゾイン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−2−オン、ベンゾフェノン、チオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルアシルホスフィンオキシド、トリフェニルブチルボレートテトラエチルアンモニウム、下記構造式で表されるチタノセン化合物、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、照射する光の波長に合わせて増感色素を併用しても構わない。
【化2】

【0033】
前記フォトポリマーは、前記モノマー、前記光開始剤、更に必要に応じてその他の成分を攪拌混合し、反応させることによって得られる。得られたフォトポリマーが十分低い粘度ならばキャスティングすることによって記録層を形成することができる。一方、キャスティングできない高粘度フォトポリマーである場合には、ディスペンサーを用いて下側基板にフォトポリマーを盛りつけ、このフォトポリマー上に上側基板で蓋をするように押し付けて、全面に広げて記録層を形成することができる。
【0034】
前記(2)のフォトリフラクティブ材料としては、フォトリフラクティブ効果を示すものであるならば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電荷発生材、及び電荷輸送材を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0035】
前記電荷発生材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン、又はそれらの誘導体等のフタロシアニン色素/顔料;ナフタロシアニン色素/顔料;モノアゾ、ジスアゾ、トリスアゾ等のアゾ系色素/顔料;ペリレン系染料/顔料;インジゴ系染料/顔料;キナクリドン系染料/顔料;アントラキノン、アントアントロン等の多環キノン系染料/顔料;シアニン系染料/顔料;TTF−TCNQで代表されるような電子受容性物質と電子供与性物質とからなる電荷移動錯体;アズレニウム塩;C60及びC70で代表されるフラーレン並びにその誘導体であるメタノフラーレン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
前記電荷輸送材は、ホール又はエレクトロンを輸送する材料であり、低分子化合物であってもよく、又は高分子化合物であってもよい。
前記電荷輸送材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、インドール、カルバゾール、オキサゾール、インオキサゾール、チアゾール、イミダゾール、ピラゾール、オキサアジアゾール、ピラゾリン、チアチアゾール、トリアゾール等の含窒素環式化合物、又はその誘導体;ヒドラゾン化合物;トリフェニルアミン類;トリフェニルメタン類;ブタジエン類;スチルベン類;アントラキノンジフェノキノン等のキノン化合物、又はその誘導体;C60及びC70等のフラーレン並びにその誘導体;ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン等のπ共役系高分子又はオリゴマー;ポリシラン、ポリゲルマン等のσ共役系高分子又はオリゴマー;アントラセン、ピレン、フェナントレン、コロネン等の多環芳香族化合物、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0037】
前記フォトリフラクティブ材料を用いて記録層を形成方法としては、例えば、前記フォトリフラクティブ材料を溶媒中に溶解乃至は分散させてなる塗布液を用いて塗膜を形成し、この塗膜から溶媒を除去することにより記録層を形成することができる。また、加熱して流動化させた前記フォトリフラクティブ材料を用いて塗膜を形成し、この塗膜を急冷することにより記録層を形成することもできる。
【0038】
前記(3)のフォトクロミック材料は、フォトクロミック反応を起こす材料であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アゾベンゼン化合物、スチルベン化合物、インジゴ化合物、チオインジゴ化合物、スピロピラン化合物、スピロオキサジン化合物、フルキド化合物、アントラセン化合物、ヒドラゾン化合物、桂皮酸化合物、などが挙げられる。これらの中でも、光照射によりシス−トランス異性化により構造変化を起こすアゾベンゼン誘導体、スチルベン誘導体、光照射により開環−閉環の構造変化を起こすスピロピラン誘導体、スピロオキサジン誘導体が特に好ましい。
【0039】
前記(5)のカルコゲン材料としては、例えば、カルコゲン元素を含むカルコゲナイドガラスと、このカルコゲナイドガラス中に分散されており光の照射によりカルコゲナイドガラス中に拡散可能な金属からなる金属粒子とを含む材料、などが挙げられる。
前記カルコゲナイドガラスは、S、Te又はSeのカルコゲン元素を含む非酸化物系の非晶質材料から構成されるものであり、金属粒子の光ドープが可能なものであれば特に限定されない。
前記カルコゲン元素を含む非晶質材料としては、例えば、Ge−S系ガラス、As−S系ガラス、As−Se系ガラス、As−Se−Ce系ガラス等が挙げられ、これらの中ではGe−S系ガラスが好ましい。前記カルコゲナイドガラスとしてGe−S系ガラスを用いる場合には、ガラスを構成するGe及びSの組成比は照射する光の波長に応じて任意に変化させることができるが、主としてGeSで表される化学組成を有するカルコゲナイドガラスが好ましい。
前記金属粒子は、光の照射によりカルコゲナイドガラス中に光ドープされる特性を有するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Al、Au、Cu、Cr、Ni、Pt、Sn、In、Pd、Ti、Fe、Ta、W、Zn、Ag等が挙げられる。これらの中では、Ag、Au又はCuが光ドープをより生じやすい特性を有しており、Agは光ドープを顕著に生じるため特に好ましい。
前記カルコゲナイドガラスに分散されている金属粒子の含有量としては、前記記録層の全体積基準で0.1〜2体積%が好ましく、0.1〜1.0体積%がより好ましい。前記金属粒子の含有量が0.1体積%未満であると、光ドープによる透過率変化が不充分となって記録の精度が低下することがあり、2体積%を超えると、記録材料の光透過率が低下して光ドープを充分に生じさせることが困難となることがある。
【0040】
前記記録層は、材料に応じて公知の方法に従って形成することができるが、例えば、蒸着法、湿式成膜法、MBE(分子線エピタキシー)法、クラスターイオンビーム法、分子積層法、LB法、印刷法、転写法、などにより好適に形成することができる。これらの中でも、蒸着法、湿式成膜法が好ましい。
【0041】
前記蒸着法としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができるが、例えば、真空蒸着法、抵抗加熱蒸着、化学蒸着法、物理蒸着法、などが挙げられる。該化学蒸着法としては、例えば、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、ガスソースCVD法、などが挙げられる。
【0042】
前記湿式成膜法による前記記録層の形成は、例えば、前記記録層材料を溶剤に溶解乃至分散させた溶液(塗布液)を用いる(塗布し乾燥する)ことにより、好適に行うことができる。該湿式成膜法としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、インクジェット法、スピンコート法、ニーダーコート法、バーコート法、ブレードコート法、キャスト法、ディップ法、カーテンコート法などが挙げられる。
【0043】
前記記録層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、150〜1,000μmが好ましく、200〜750μmがより好ましく、300〜600μmが更に好ましい。この範囲において、製造適性が高く、かつ良好なボリュームホログラフィック光情報記録を行うことが可能である。前記厚みが1,000μmを超えると、コスト面及び製造方法の面で困難が生じることがあり、150μm未満であると、信号強度と多重性能との両立を図ることができないことがある。
【0044】
−基板−
前記基板としては、その形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記形状としては、例えば、ディスク形状、カード形状平板状、シート状などが挙げられ、前記構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、前記大きさとしては、前記光記録媒体の大きさ等に応じて適宜選択することができる。
【0045】
前記基板の材料としては、特に制限はなく、無機材料及び有機材料のいずれをも好適に用いることができるが、光記録媒体の機械的強度を確保できるものであり、記録及び再生に用いる光が基板を通して入射する透過型の場合は、用いる光の波長領域で十分に透明であることが必要である。
前記無機材料としては、例えば、ガラス、石英、シリコン、などが挙げられる。
前記有機材料としては、例えば、トリアセチルセルロース等のアセテート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリノルボルネン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、プラスチックフィルムラミネート紙、合成紙などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、成形性、光学特性、コストの点から、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂が好ましい。
【0046】
前記基板としては、適宜合成したものであってもよいし、市販品を使用してもよい。
前記基板の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.1〜5mmが好ましく、0.3〜2mmがより好ましい。前記基板の厚みが、0.1mm未満であると、ディスク保存時の形状の歪みを抑えられなくなることがあり、5mmを超えると、ディスク全体の重量が大きくなってドライブモーターなどにより回転して用いる場合には、過剰な負荷をかけることがある。
【0047】
前記基板には、半径方向に線状に延びる複数の位置決め領域としてのアドレス−サーボエリアが所定の角度間隔で設けられ、隣り合うアドレス−サーボエリア間の扇形の区間がデータエリアになっている。アドレス−サーボエリアには、サンプルドサーボ方式によってフォーカスサーボ及びトラッキングサーボを行うための情報とアドレス情報とが、予めエンボスピット(サーボピット)等によって記録されている(プリフォーマット)。なお、フォーカスサーボは、反射膜の反射面を用いて行うことができる。トラッキングサーボを行うための情報としては、例えば、ウォブルピットを用いることができる。
【0048】
−反射膜−
前記反射膜は、前記基板のサーボピットパターン表面に形成される。
前記反射膜の材料としては、記録光や参照光に対して高い反射率を有する材料を用いることが好ましい。使用する光の波長が400〜780nmである場合には、例えば、Al、Al合金、Ag、Ag合金、などを使用することが好ましい。使用する光の波長が650nm以上である場合には、Al、Al合金、Ag、Ag合金、Au、Cu合金、TiN、などを使用することが好ましい。
なお、前記反射膜として、光を反射すると共に、追記及び消去のいずれかが可能な光記録媒体、例えば、DVD(ディジタル ビデオ ディスク)などを用い、ホログラムをどのエリアまで記録したかとか、いつ書き換えたかとか、どの部分にエラーが存在し交替処理をどのように行ったかなどのディレクトリ情報などをホログラムに影響を与えずに追記及び書き換えすることも可能となる。
【0049】
前記反射膜の形成は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、各種気相成長法、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマCVD法、光CVD法、イオンプレーティング法、電子ビーム蒸着法などが用いられる。これらの中でも、スパッタリング法が、量産性、膜質等の点で優れている。
前記反射膜の厚みは、十分な反射率を実現し得るように、50nm以上が好ましく、100nm以上がより好ましい。
【0050】
−選択反射層−
前記選択反射層は、前記基板のサーボピット上又は前記反射層上に設けられる。
前記選択反射層は、複数種の光線の中から特定の波長の光のみを反射する、波長選択反射機能を有する。特に、入射角が変化しても選択反射波長にずれが生じることなく、情報光及び参照光による光記録媒体の反射膜からの乱反射を防止し、ノイズの発生を防止する機能もあり、前記光記録媒体に前記選択反射層を積層することにより、高解像度、回折効率の優れた光記録が得られる。
前記選択反射層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ダイクロイックミラー層、色材含有層、誘電体蒸着層、単層又は2層以上のコレステリック層及び必要に応じて適宜選択したその他の層の少なくともいずれかを積層した積層体により形成される。
前記選択反射層は、直接記録層など共に、前記基板上に塗布などにより積層してもよく、フィルムなどの基材上に積層して選択反射層を作製し、これを基板上に積層しても構わない。
【0051】
前記その他の層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、第一ギャップ層、第二ギャップ層などが挙げられる。
【0052】
前記第一ギャップ層は、必要に応じて前記選択反射層と前記反射膜との間に設けられ、第二の基板表面を平滑化する目的で形成される。また、記録層内に生成されるホログラムの大きさを調整するのにも有効である。即ち、前記記録層は、参照光及び情報光の干渉領域をある程度の大きさに形成する必要があるので、前記記録層とサーボピットパターンとの間にギャップを設けることが有効となる。
前記第一ギャップ層は、例えば、サーボピットパターンの上から紫外線硬化樹脂等の材料をスピンコート等で塗布し、硬化させることにより形成することができる。また、フィルタ層として透明基材の上に塗布形成したものを使用する場合には、該透明基材が第一ギャップ層としても働くことになる。
前記第一ギャップ層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1〜100μmが好ましい。
【0053】
前記第二ギャップ層は、必要に応じて記録層又は光分解性記録層と選択反射層との間に設けられる。該第二ギャップ層は、情報光及び参照光がフォーカシングするポイントの部分をフォトポリマーで埋めていると、過剰露光がされた場合に、モノマーの過剰消費が起こり、多重記録能力が低下することがあり、この弊害を防止する機能がある。
前記第二ギャップ層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリスチレン(PS)、ポリスルホン(PSF)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリメタクリル酸メチル=ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のような透明樹脂フィルム、又は、JSR社製商品名ARTONフィルムや日本ゼオン社製商品名ゼオノアのような、ノルボルネン系樹脂フィルム、などが挙げられる。これらの中でも、等方性の高いものが好ましく、TAC、PC、商品名ARTON、及び商品名ゼオノアが特に好ましい。
前記第二ギャップ層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1〜200μmが好ましい。
【0054】
〔ピットパターン記録領域〕
前記ピットパターン記録領域は、少なくとも第一の基板と、ピットパターン記録層と、第二の基板とをこの順に有してなり、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
前記ピットパターン記録領域における情報の記録及び再生は、DVD、CDなど同じ方式を採用することができるが、DVD方式であることが記録容量の点から好ましい。
前記第1及び第2基板としては、上記体積ホログラフィック記録領域と同じものが用いられる。
【0055】
−色素含有記録層−
前記ピットパターン記録層は、色素含有記録層であることが好ましい。
前記色素含有記録層は、レーザー光の照射により何らかの光学的変化を生じさせ、その変化により情報を記録するものであり、その材料としては有機色素を主成分とするものを用いる。ここで、主成分とは、記録再生に必要十分な量の有機色素を含有することを意味するが、通常は、必要に応じて適宜添加する少量の添加剤を除き、有機色素のみを用いることが好ましい。
前記有機色素としては、例えば、アゾ系色素、ホルマザン系色素、ジピロメテン系色素、(ポリ)メチン系色素、ナフタロシアニン系色素、フタロシアニン系色素、テトラアザポルフィリン系色素、スクアリリウム系色素、クロコニウム系色素、ピリリウム系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系(インダンスレン系)色素、キサンテン系色素、トリフェニルメタン系色素、アズレン系色素、テトラヒドロコリン系色素、フェナンスレン系色素、トリフェノチアジン系色素、又はこれらの金属錯体などが挙げられる。これらの1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせても構わない。
これらの中でも、アゾ(金属キレート)色素、ホルマザン(金属キレート)色素、スクアリリウム(金属キレート)色素、ジピロメテン(金属キレート)色素、トリメチンシアニン色素、テトラアザポルフィリン色素が特に好ましい。
【0056】
前記色素中に金属、又は金属化合物を添加することもできる。該金属又は金属化合物としては、例えば、In、Te、Bi、Se、Sb、Ge、Sn、Al、Be、TeO、SnO、As、Cd等を分散混合、或いは積層の形態で用いることもできる。
また、前記色素中に高分子材料を配合させることもできる。該高分子材料としては、例えば、アイオノマー樹脂、ポリアミド系樹脂、ビニル系樹脂、天然高分子化合物、シリコーン、液状ゴム等の種々の材料もしくはシランカップリング剤等を分散混合して用いてもよいし、あるいは特性改良の目的で安定剤(例えば、遷移金属錯体)、分散剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、可塑剤等を一緒に用いることもできる。
【0057】
前記色素含有記録層の形成は、蒸着法、スパッタリング法、CVD法又は溶液塗布法等の通常の手段によって行うことができる。前記塗布法を用いる場合には、前記色素等を有機溶剤等に溶解してスプレー法、ローラーコーティング法、ディッピング法、スピンコーティング等の慣用のコーティング法によって行うことができる。
【0058】
前記有機溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、四塩化炭素、トリクロロエタン等の脂肪族ハロゲン化炭化水素類;ベンゼン、キシレン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族類;メトキシエタノール、エトキシエタノール等のセロソルブ類;ヘキサン、ペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素類、等が挙げられる。
前記色素含有記録層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、通常100Å(10nm)〜10μmが好ましい。
【0059】
前記ピットパターン記録領域には、必要に応じて、保護層、中間層などを設けることができる。
前記保護層及び中間層は、(1)色素含有記録層の傷、ホコリ、汚れ等からの保護、(2)色素含有記録層の保存安定性の向上、(3)反射率の向上等を目的として使用される。前記保護層及び中間層の材料としては、無機材料又は有機材料が用いられる。前記無機材料としては、例えば、SiO、SiO等も用いることができる。前記有機材料としては、例えば、ポリメチルアクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ビニル樹脂、セルロース、脂肪族炭化水素樹脂、芳香族炭化水素樹脂、天然ゴム、スチレン−ブタジエン樹脂、クロロプレンゴム、ワックス、アルキッド樹脂、乾性油、ロジン等の熱軟化性樹脂、熱溶融性樹脂、紫外線硬化樹脂なども用いることができる。これらの中でも、生産性に優れた紫外線硬化樹脂が特に好ましい。
前記保護層、及び前記中間層には、上記色素含有記録層の場合と同様に、目的に応じて更に、安定剤、分散剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、可塑剤等を含有させることができる。
前記保護層及び中間層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.01〜30μmが好ましく、0.05〜10μmがより好ましい。
【0060】
ここで、本発明の光記録媒体について、図面を参照して更に詳しく説明する。
図3は、本発明の光記録媒体の体積ホログラフィック記録領域の構成の一例を示す概略断面図である。
この光記録媒体21では、ポリカーボネート樹脂からなる第一の基板1にサーボピットパターン3が形成され、該サーボピットパターン3上にアルミニウム、金、白金等でコーティングして反射膜2が設けられている。なお、図3では第一の基板1全面にサーボピットパターン3が形成されているが、周期的に形成されていてもよい。また、このサーボピットの高さは最大1750Å(175nm)であり、第一の基板を始め他の層の厚みに比べて充分に小さいものである。
第一の基板のサーボピットを設けていない側には選択反射層6としてのAgを多層蒸着したダイクロイックミラー層が設けられている。
反射膜2上に記録層4が設けられている。第一の基板1及び第二の基板5(ポリカーボネート樹脂の基板)によって、選択反射膜6、記録層4を挟むことによって光記録媒体21が構成される。
なお、ピットパターン記録領域は、サーボピットパターン3表面に色素含有記録層を形成した以外は、上記体積ホログラフィック記録領域と同様の構成である。
【0061】
本実施形態における光記録媒体21は、ディスク形状でもいいし、カード形状であってもよい。また、この光記録媒体21では、第一の基板1は0.6mm、選択反射層6は20〜30μm、ホログラフィック記録層4は500μm、第二の基板5は0.6mmの厚みであって、合計厚みは約1.6mmとなっている。
【0062】
<再生工程及び再生手段>
前記再生工程は、情報を再生する前に再生位置の温度補正情報を読み込み、該温度補正情報に基づいて再生時の光記録媒体の温度と情報の記録時の光記録媒体の温度との差が−2〜+2℃の範囲となるように調節した温度で参照光とサーボ光とを前記光記録媒体に照射してホログラフィック記録層に記録した情報を再生する工程であり、前記再生手段により行われる。
【0063】
前記再生時の光記録媒体の温度と記録時の光記録媒体の温度との差は−2〜+2℃の範囲であり、−1〜+1℃がより好ましく、−0.5〜+0.5℃が更に好ましい。この範囲において、良好な再生画像が得られる。前記調節温度が、記録時の温度情報に対し−2〜+2℃の範囲を外れると、再生像が適正に得られないことがある。
この場合、参照光は、光記録媒体の記録に用いられた参照光と同じ角度で、干渉パターンに照射して記録情報を再生することが好ましい。
再生時には、情報を再生する前に再生位置の記録位置及び温度情報を含む温度補正情報を読み込んだ後、光記録媒体上の位置情報と照合しながら、光記録媒体を適正な温度条件に調整して情報の再生が行われる。
前記光記録媒体の温度の調整方法(温度を変える方法)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ペルチェ素子、その他の冷却手段による冷却や、赤外線による加熱、ヒーター、サーマルヘッドによる加熱などが挙げられる。
【0064】
ここで、図4は、従来の通常の光記録媒体の記録再生方法を示すフローチャートである。まず、情報を記録する場合には、光記録媒体の記録する位置情報を読み出し、次いで、光記録媒体に情報を記録する。また、情報を再生する場合には、光記録媒体の再生する位置情報を検出し、次いで、光記録媒体から情報を再生する。
【0065】
図5は、本発明の光記録媒体の記録再生方法を示すフローチャートである。まず、情報を記録する場合には、光記録媒体の記録する位置情報を読み出し、温度補正情報取得手段により記録前の温度を測定し、温度情報を記録する。次いで、光記録媒体に情報を記録し、温度補正情報取得手段により記録時の温度を測定し、温度情報を記録する。これらの記録領域の位置情報、温度情報を記録し、保存する。
次に、情報を再生する場合には、まず、光記録媒体の再生する位置情報を読み出し、再生領域の位置情報を照会し、温度情報を読み込む。次いで、再生温度条件を決定し、光記録媒体の温度を調節する。次いで、光記録媒体の温度を温度補正情報取得手段により測定し、記録時の温度情報に対し−2〜+2℃の範囲の意図した温度条件になっているか判定する。意図した温度条件になっていれば、情報の再生を実高し、適切な再生ができた場合には再生終了する。なお、意図した温度条件になっていない場合には、再度温度調節を行う。ここで、意図した温度条件になっているかの判断は、前記温度補正情報取得手段を用いて光記録媒体の温度を測定することにより行うことが好ましい。
以上により、外部温度条件に左右されず、本来記録された情報と同質の情報を安定かつ速やかに再生することができる。
【0066】
ここで、本発明の光記録媒体の記録方法及び再生方法は、以下に説明する本発明の光記録再生装置を用いて行われる。
図6は、本発明の光記録再生装置の一例を示す概略図である。この図6に示す光記録再生装置は、温度測定手段として赤外線レーザー非接触計を用いた例である。情報記録時には、光記録媒体106の情報記録領域105を情報光及びサーボ光104で照射するとともに、赤外線レーザー101で情報記録領域105を照射して該領域から反射する光を赤外レーザー受光部で受光して、解析することで該情報記録領域105の情報記録時の温度を測定することができる。
【0067】
図7は、本発明の一実施形態に係る光記録再生装置の全体構成図である。なお、図示を省略しているが、この光記録再生装置には温度補正情報取得手段として、図6に示すような温度補正情報取得装置が設けられており、また、温度調節機構として、光記録媒体が収納され記録再生を行う閉じられた空間にペルチェ冷却素子及び電熱器が設けられており、光記録媒体の再生位置の温度情報をあらかじめ読み取り、上記閉じられた空間内の温度を適宜制御することによって、再生時の光記録媒体の温度と記録時の光記録媒体の温度との差が−2〜+2℃の範囲となるように調節された温度でホログラフィック記録層に記録された情報を再生することができるようになっている。
この光記録装置100は、光記録媒体20が取り付けられるスピンドル81と、該スピンドル81を回転させるスピンドルモータ82と、光記録媒体20の回転数を所定の値に保つようにスピンドルモータ82を制御するスピンドルサーボ回路83とを備えている。
また、光記録再生装置100は、光記録媒体20に対して情報光と参照光とを照射して情報を記録すると共に、光記録媒体20に対して再生用参照光を照射し、再生光を検出して、光記録媒体20に記録されている情報を再生するためのピックアップ31と、このピックアップ31を光記録媒体20の半径方向に移動可能とする駆動装置84とを備えている。
【0068】
光記録再生装置100は、ピックアップ31の出力信号よりフォーカスエラー信号FE、トラッキングエラー信号TE、及び再生信号RFを検出するための検出回路85と、この検出回路85によって検出されるフォーカスエラー信号FEに基づいて、ピックアップ31内のアクチュエータを駆動して対物レンズ(不図示)を光記録媒体20の厚み方向に移動させてフォーカスサーボを行うフォーカスサーボ回路86と、検出回路85によって検出されるトラッキングエラー信号TEに基づいてピックアップ31内のアクチュエータを駆動して対物レンズを光記録媒体20の半径方向に移動させてトラッキングサーボを行うトラッキングサーボ回路87と、トラッキングエラー信号TE及び後述するコントローラからの指令に基づいて駆動装置84を制御してピックアップ31を光記録媒体20の半径方向に移動させるスライドサーボを行うスライドサーボ回路88とを備えている。
【0069】
光記録再生装置100は、更に、ピックアップ31内の後述するCMOS又はCCDアレイの出力データをデコードして、光記録媒体20のデータエリアに記録されたデータを再生したり、検出回路85からの再生信号RFより基本クロックを再生したりアドレスを判別したりする信号処理回路89と、光記録再生装置100の全体を制御するコントローラ90と、該コントローラ90に対して種々の指示を与える操作部91とを備えている。
コントローラ90は、信号処理回路89より出力される基本クロックやアドレス情報を入力すると共に、ピックアップ31、スピンドルサーボ回路83、及びスライドサーボ回路88等を制御するようになっている。スピンドルサーボ回路83は、信号処理回路89より出力される基本クロックを入力するようになっている。コントローラ90は、CPU(中央処理装置)、ROM(リード オンリ メモリ)、及びRAM(ランダム アクセス メモリ)を有し、CPUが、RAMを作業領域として、ROMに格納されたプログラムを実行することによって、コントローラ90の機能を実現するようになっている。
【0070】
本発明の光記録媒体の記録方法及び再生方法に使用される光記録再生装置は、情報を記録時の温度情報を正確に把握できる温度補正情報取得手段を有し、情報の再生時に適切な温度条件に調節することができるので、ホログラム型光記録媒体を用いた場合であっても、外部温度条件に左右されず、本来記録された情報と同質の情報を安定かつ速やかに再生することができる。
【実施例】
【0071】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0072】
(製造例1)
−光記録媒体の作製−
以下のようにして、体積ホログラフィック記録領域と、ピットパターン記録領域とを有する光記録媒体を作製した。
【0073】
−−第一の基板の作製−−
前記第一の基板としては、直径120mm、内径15mm、板厚0.6mmのDVD+RW用に用いられている一般的なポリカーボネート樹脂製基板を使用した。この基板表面には、サーボピットパターンが形成されており、そのトラックピッチは0.74μmであり、溝深さは140nm、溝幅は300nmである。
【0074】
−−第二の基板の作製−−
直径120mm、内径15mm、厚み0.6mmのポリカーボネート樹脂製の第二の基板を作製した。
【0075】
まず、第一の基板のサーボピットパターン表面に反射層を形成した。反射層の材料には銀(Ag)を用い、DCマグネトロンスパッタリング法により、厚み150nmのAg反射層を形成した。
次に、該反射層上の外径120mm〜内径40mmの領域に粘着シートを貼り付けてマスキングした状態で、非マスキング領域(ピットパターン記録領域)に下記構造式で表される有機色素(シアニン色素)と、退色防止剤としてp−ジメトキシテトラシアノキノジメタンを有機色素の10質量%加え、固形分濃度を2.5質量%として、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノールで溶解した色素塗布液を調製した。この塗布液を前記基板上にスピンコートして、90℃にて30分間乾燥して、厚み200nmの色素含有記録層を形成した。
【0076】
【化3】

【0077】
次に、粘着シートを剥がし、全面にUV硬化樹脂(SD640:大日本インキ化学工業株式会社製)をスピンコートして、厚み20μmの第1ギャップ層を形成した。
得られた第1ギャップ層上に、下記のようにして作製した選択反射層を設けた。
−選択反射層の作製−
まず、ポリカーボネートフィルム(三菱瓦斯化学株式会社製、商品名ユーピロン)厚み100μm上に、DCマグネトロンスパッタリング法により、層数が30、厚み3μmのAg膜からなるダイクロイックミラー層を蒸着により形成し、前記第一の基板に積層するため、該第一の基板と同形状のディスクに打ち抜き加工した。
【0078】
次に、保護層(第二ギャップ層)として、UV硬化樹脂(SD640:大日本インキ化学工業株式会社製)をスピンコートにより厚み20μmになるように選択反射層上に塗工した。
次に、外径40mm、内径15mm、厚み500μmのPET樹脂製スペーサーを、内径が第一の基板及び第二の基板の内径と一致するように挟んで、図5に示すように第一の基板1と第二の基板5とをスペーサー10を介して接着した。この時、第一の基板1は選択反射層及び保護層などが積層されている側が貼り合わせの内側になるように接着した。
前記スペーサーによって500μmの間隔で連結された第一の基板と第二の基板とを上下より平行に固定し、この二枚の間の間隙に、ポシラティオ(Liquid Control社から入手可能な液混合注入装置)を用いて、下記のホログラフィック記録層塗布液を充填し、硬化させた。以上により、図1に示すような製造例1の光記録媒体を作製した。
【0079】
−ホログラフィック記録層塗布液の調製−
下記組成からなる記録層塗布液を、タンクAとタンクBに分けてそれぞれ窒素雰囲気下で調製した。
<記録層塗布液の組成>
〔タンクA〕
・ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットトリマー・・・292.0g
・ヘキサメチレンジイソシアネート ・・・97.4g
・トリブロモフェニルアクリレート・・・64.22g
・イルガキュア784・・・14g
・3,5ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシトルエン・・・210g
〔タンクB〕
・PolyFoxTMT・・・817.9g
・ポリプロピレンオキサイドトリオール(平均分子量1,000)・・・517.9g
・ターシャリーブチルペルオキサイド・・・580μl
・ジブチルラウレートスズ・・・10.2g
【0080】
(実施例1〜21)
−記録層への情報の記録−
図6に示すような赤外線レーザー非接触温度計を有する、図7に示すようなコリニア方式光情報記録再生評価装置(パルステック(株)製、SHOT−1000)に温度制御機構、及び非接触型温度計にて記録時の温度を測定できる機構を設けた改造装置A−1を用いて、製造例1で得られた光記録媒体に照射し、表1に示すように記録時の温度条件を変えてホログラフィック記録層に情報を記録した。この際、製造例1の光記録媒体の色素含有記録層に対し、汎用のDVDデータ記録再生装置を用いて、該当する光記録媒体に対して行われた情報記録の記録位置及び記録時の測定された温度などの温度補正情報を記録した。
【0081】
<再生信号評価>
次に、情報が記録された光記録媒体を一旦取り外した後、再び、上記の改造装置A−1を用い、予め、色素含有機記録層に記録された温度補正情報を汎用のDVDデータ記録再生装置によって再生し、得られた温度補正情報を用いて図5に示す再生条件設定工程を行った上で、情報を再生して、S/N比を測定した。結果を表1に示す。
【0082】
(比較例1〜6)
比較例1〜6として、温度制御機構を有さない図7に示すようなコリニア方式光情報記録再生評価装置A−2(パルステック(株)製、SHOT−1000)を用いて、表1に示すように、再生時の温度条件を変えて、情報を再生し、S/N比を測定した。結果を表1に示す。
【0083】
【表1】

表1の結果から、実施例1〜21は、再生評価機A−1を用い、再生時の光記録媒体の温度と記録時の光記録媒体の温度との差が−2〜+2℃の範囲内に留めることにより、S/N比の高い信号を再生することが可能であることがわかる。また、実施例10〜21の結果から、再生時においては、光記録媒体温度が適正に制御されているかぎり再生特性は外部温度に左右されないことがわかった。
これに対し、比較例1〜6の結果から、光記録媒体温度の補正を行わず、記録再生の温度差が規定の範囲内を逸脱すると、信号が適正に再生されないことが認められた。
【0084】
(実施例23及び比較例8〜9)
−ランダム性の評価−
次に、製造例1にて作製した各光記録媒体をそれぞれ100枚用意し、光記録媒体にはラベル等の識別可能なマークを一切つけずに、上述の方法で記録層に情報記録を行った。この際、室温及び記録時の光記録媒体温度の設定は室温を15〜30℃の範囲、光記録媒体温度を25〜40℃の範囲でランダムに設定した。記録後の光記録媒体を実施例1の100枚、比較例1の100枚の中から、各々ランダムに取り出し、上述の性能評価の方法に従い、再生評価機A−1を用いた場合には、色素含有記録層に記録された位置情報と記録温度条件を再生した上で適正な温度条件に再生装置を調整して再生を行い、S/N比を測定した(実施例22)。
また、再生評価機A−2を用いた場合には、再生温度を30℃に固定して再生を行いS/N比を測定した(比較例7)。各々100枚を全て再生した時、信号を再生できた光記録媒体数、S/N値の平均値と標準偏差を表2に示す。
【0085】
【表2】

表2の結果から、再生評価機A−1を用い、温度補正情報を光記録媒体毎に記録しておき、かつ、その情報を再生条件に反映することによって、任意に選び取った光記録媒体に対して常に安定したS/N比で信号を再生可能にできることが認められる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の光記録再生装置及び光記録媒体の記録再生方法においては、光記録再生装置の外部温度条件に左右されず、本来記録された情報と同質の情報を安定かつ速やかに再生することができるので、高感度、かつ高多重記録が可能なホログラム型の各種光記録媒体として幅広く用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】図1は、本発明の光記録媒体の一例を示す概略図である。
【図2】図2は、本発明の光記録媒体の別の一例を示す概略図である。
【図3】図3は、本発明の光記録媒体における体積ホログラフィック記録領域の一例を示す概略断面図である。
【図4】図4は、従来の光記録媒体の記録再生方法の一例を示すフローチャートである。
【図5】図5は、本発明の光記録媒体の記録再生方法の一例を示すフローチャートである。
【図6】図6は、本発明の光記録再生装置の一例を示す概略図である。
【図7】図7は、本発明の光記録媒体を搭載した本発明の光記録再生装置の全体構成の一例を表すブロック図である。
【図8】図8は、製造例1の光記録媒体における第1基板と第2基板との貼り合わせ方法を示す概略図である。
【符号の説明】
【0088】
1 第一の基板
2 反射膜
3 サーボビットパターン
4 ホログラフィック記録層
5 第二の基板
6 選択反射層
7 第二ギャップ層
8 第一ギャップ層
10 スペーサー
20 光記録媒体
31 ピックアップ
33 サーボ光
35 情報光及び参照光
35a 情報光及び参照光
81 スピンドル
82 スピンドルモータ
83 スピンドルサーボ回路
84 駆動装置
85 検出回路
86 フォーカスサーボ回路
87 トラッキングサーボ回路
88 スライドサーボ回路
89 信号処理回路
90 コントローラ
91 走査部
100 光記録再生装置
101 赤外線レーザー
102 赤外線レーザー受光部
103 赤外線レーザー光束
104 情報光、再生光、及びサーボ光
105 記録領域
106 光記録媒体
201 体積ホログラフィック記録領域
202 ピットパターン記録領域
A 入出射面
FE フォーカスエラー信号
TE トラッキングエラー信号
RF 再生信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報光及び参照光と、サーボ光とを光記録媒体に照射してホログラフィック記録層に情報を記録する記録手段と、
情報の記録時に、少なくとも前記光記録媒体における情報の記録位置及び情報の記録時の温度を含む温度補正情報を測定し、記録する温度補正情報取得手段と、
情報を再生する前に再生位置の温度補正情報を読み込み、該温度補正情報に基づいて再生時の光記録媒体の温度と記録時の光記録媒体の温度との差が−2〜+2℃の範囲となるように調節した温度で、参照光とサーボ光とを前記光記録媒体に照射してホログラフィック記録層に記録した情報を再生する再生手段と、を有することを特徴とする光記録再生装置。
【請求項2】
温度補正情報取得手段が、情報の記録時の温度を測定する非接触型温度計を含む請求項1に記載の光記録再生装置。
【請求項3】
非接触型温度計が、赤外線レーザー非接触型温度計である請求項2に記載の光記録再生装置。
【請求項4】
情報の記録を行った光記録媒体と同一の光記録媒体上に温度補正情報を記録する請求項1から3のいずれかに記載の光記録再生装置。
【請求項5】
光記録媒体が、互いに独立して体積ホログラフィック記録領域と、ピットパターン記録領域とを有する請求項4に記載の光記録再生装置。
【請求項6】
ピットパターン記録領域に記録される温度補正情報が、少なくとも体積ホログラフィック記録領域に記録された情報の光記録媒体における記録位置及び情報の記録時の温度である請求項5に記載の光記録再生装置。
【請求項7】
光記録媒体に対する情報光及び参照光の照射を、該情報光の光軸と該参照光の光軸とが同軸となるようにして行い、前記情報光と前記参照光との干渉により生成される干渉パターンによって情報をホログラフィック記録層に記録する請求項1から6のいずれかに記載の光記録再生装置。
【請求項8】
情報光及び参照光と、サーボ光とを光記録媒体に照射してホログラフィック記録層に情報を記録する記録工程と、
情報の記録時に、少なくとも前記光記録媒体における情報の記録位置及び情報の記録時の温度を含む温度補正情報を測定し、記録する温度補正情報取得工程と、
情報を再生する前に再生位置の温度補正情報を読み込み、該温度補正情報に基づいて再生時の光記録媒体の温度と記録時の光記録媒体の温度との差が−2〜+2℃の範囲となるように調節した温度で、参照光とサーボ光とを前記光記録媒体に照射してホログラフィック記録層に記録した情報を再生する再生工程と、を含むことを特徴とする光記録媒体の記録再生方法。
【請求項9】
光記録媒体に対し、情報光及び参照光の照射を、該情報光の光軸と該参照光の光軸とが同軸となるようにして行い、前記情報光と前記参照光との干渉により生成される干渉パターンによって情報をホログラフィック記録層に記録する請求項8に記載の光記録媒体の記録再生方法。

【図2】
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【図7】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−66462(P2007−66462A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−253374(P2005−253374)
【出願日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】