説明

光記録媒体及びその製造方法

【課題】 充分な防汚性及び密着性を有する光記録媒体を簡便で工業的に有利な方法で得られるようにする。
【解決手段】 基板と、基板上に形成された記録再生機能層とを備えた光記憶媒体に、記録再生機能層上に形成され、シリカ粒子とウレタン結合を有するオリゴマーとを含有し放射線の照射により硬化しうる組成物を硬化させてなる光透過層と、光透過層上に形成され、フッ素原子を含有するアルコキシシラン化合物及び/又はアルコキシシラン化合物の加水分解生成物を含有する防汚層とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光記録媒体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
青色レーザーを読み取りに用いる次期DVDをはじめとした光記録媒体においては、通常、記録を行なう記録再生機能層を保護するために、記録再生機能層の上に保護のための層(以下適宜、「保護層」という)を設ける。このような保護層には、低硬化収縮、高硬度などの性質が求められる他、光記録媒体の表面の汚れを防止するため、防汚性を有することが求められる。このような要求に応じ、従来、光記録媒体の表面に適切な保護層を設ける技術に関して様々な開発が行なわれてきた。
【0003】
例えば、特許文献1には、光記録媒体の表面に、ウレタンアクリレートを主成分とする光透過層と、分散無機成分粒子を含有してもよい活性エネルギー線硬化性化合物を主成分とするトップ層と、フッ素化合物を含有する光硬化性樹脂で形成された防汚層とを設け、これにより、光記録媒体に防汚性を備えさせる技術が記載されている。
さらに、特許文献2には、シリカ粒子とウレタン結合を有するオリゴマーとを用いた低収縮及び高硬度を示す組成物が提案されていて、この組成物を光記録媒体の保護層に用いてもよいことが記載されていた。
【0004】
【特許文献1】特開2004−83877号公報
【特許文献2】国際公開第2004/041888号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の技術では、光記録媒体の表面に形成する層が3層構成であるため、高コストであり、かつ作業性に劣り、実用性に乏しいという課題があった。また、本発明者らの検討によれば、トップ層を膜厚の大きいアンカー層として用いようとした場合、硬化収縮が原因で、アンカー層にクラックを生じたり、光記録媒体に反りなどの変形を生じたりする課題があることが見いだされた。さらに、トップ層と防汚層との密着性に劣ることも見出された。
【0006】
また、特許文献2記載の技術では、光記録媒体の防汚性を高めることが難しいという課題があった。
本発明は上記の課題に鑑みて創案されたもので、充分な防汚性と密着性とを、簡便で工業的に有利な方法で付与した光記録媒体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、基板と記録再生機能層とを有する光記録媒体に、シリカ粒子、及び、ウレタン結合を有するオリゴマーを含有し放射線の照射により硬化しうる組成物を硬化させてなる光透過層と、フッ素原子を含有するアルコキシシラン化合物、及び/又は、該アルコキシシラン化合物の加水分解生成物を含有する防汚層とを設けることにより、充分な防汚性、及び、光透過層と防汚層との密着性を、簡便で工業的に有利な方法で付与した光記録媒体を提供できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、本発明の要旨は、基板と、該基板上に形成された記録再生機能層と、該記録再生機能層上に形成され、下記成分Aを硬化させてなる光透過層と、該光透過層上に形成され、下記成分Bを含有する防汚層とを備えたことを特徴とする、光記録媒体に存する(請求項1)。
成分A:シリカ粒子と、ウレタン結合を有するオリゴマーとを含有し、放射線の照射により硬化しうる組成物。
成分B:フッ素原子を含有するアルコキシシラン化合物、及び/又は、該アルコキシシラン化合物の加水分解生成物。
【0009】
このとき、該成分Aに含有されるシリカ粒子が、コロイダルシリカ、又はアルコキシシランのオリゴマーの加水分解物からなるシリカ粒子であることが好ましい(請求項2)。
また、該成分Aに含有される該シリカ粒子が、0.5nm以上、50nm以下の数平均粒径を有することが好ましい(請求項3)。
【0010】
さらに、該成分Aに含有される該シリカ粒子が、シランカップリング剤で表面処理されていることが好ましい(請求項4)。
また、該成分Bに含有されるフッ素原子を含有する該アルコキシシラン化合物が、フルオロアルキル基又はフルオロアリール基を含有するシランカップリング剤であることが好ましい(請求項5)。
【0011】
また、本発明の別の要旨は、前記の光記録媒体の製造方法であって、記録再生機能層上で前記成分Aを硬化させて前記光透過層を形成する工程と、前記光透過層上に、前記成分Bと溶剤を含有する、固形分が0.01重量%以上1重量%以下の組成物を塗布し、乾燥させて前記防汚層を形成する工程とを有することを特徴とする、該光記録媒体の製造方法に存する(請求項6)。
【0012】
このとき、前記の光記録媒体の製造方法では、溶媒を含有する液体媒体中において前記シリカ粒子を調製し、前記液体媒体に前記ウレタン結合を有するオリゴマーを溶解させた後、前記液体媒体のうち溶媒を除去して、前記成分Aを調製する工程を有することが好ましい(請求項7)。
【0013】
また、前記固形分が、フッ素原子を含有するアルコキシシラン化合物、及び/又は、前記アルコキシシラン化合物の加水分解生成物を含有することが好ましい(請求項8)。
さらに、前記溶剤としては、ハロゲン系有機溶剤を用いることが好ましい(請求項9)。
【発明の効果】
【0014】
本発明の光記録媒体によれば、光記録媒体に、簡便で工業的に有利な方法によって充分な防汚性と密着性とを備えさせることができる。
また、本発明の光記録媒体の製造方法によれば、充分な防汚性と密着性とを備えた光記録媒体を、簡単で工業的に有利な方法で確実に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変形して実施することができる。
本発明の光記録媒体は、基板、記録再生機能層、光透過層及び防汚層を備える。この際、光透過層は成分A、即ち、シリカ粒子(好ましくは、アルコキシシランのオリゴマーの加水分解物からなるシリカ粒子)と、ウレタン結合を有するオリゴマーとを含有し、放射線の照射により硬化しうる組成物(以下適宜、「組成物A」という)を硬化させたものとして形成される。さらに、防汚層は成分B、即ち、フッ素原子を含有するアルコキシシラン化合物、及び/又は、該アルコキシシラン化合物の加水分解生成物を含有するものとして形成されている。
【0016】
[1.基板]
基板について制限は無く、光記録媒体の基板として公知のものを任意に用いることができる。
光情報記録媒体の基板は、一般に、光情報の記録や再生に使用するための凹凸の溝(トラッキング用溝)を一主面に形成された板として形成される。その形状は任意であるが、通常は円板形状に形成される。
【0017】
また、基板の材料は光透過性材料であれば他に制限は無い。即ち、光情報の記録や再生に用いる波長の光が透過しうる任意の素材で形成することができる。その具体例としては、ポリカーボネート樹脂、ポリメタクリレート樹脂、ポリオレフィン樹脂等の熱可塑性樹脂や、ガラスなどを用いることができる。中でもポリカーボネート樹脂は、CD−ROM等において最も広く用いられ、安価であるので最も好ましい。なお、基板の材料は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0018】
さらに、基板の寸法にも制限は無く任意である。ただし、基板の厚さは、通常0.1mm以上、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは0.5mm以上、また、通常20mm以下、好ましくは15mm以下、より好ましくは3mm以下である。中でも、1.2±0.2mm程度の厚さの基板がしばしば使用される。また、基板の外径は、一般的には120mm程度である。
また、基板の製造方法に制限は無く任意であるが、例えば、スタンパを用いた光透過性樹脂の射出成形などによって製造することができる。
【0019】
[2.記録再生機能層]
記録再生機能層は、情報信号を記録再生可能又は再生可能な機能を発揮されるように、基板上に形成された層である。この記録再生機能層の具体的な構成に制限は無く、光記録媒体の記録再生機能層として公知のものを任意に用いることができる。
【0020】
この記録再生機能層は、一層のみからなる単層構造であっても複数の層からなる積層構造であってもよい。光記録媒体が、再生専用の媒体(ROM媒体)である場合と、一度の記録のみ可能な追記型の媒体(Write Once媒体)である場合と、記録消去を繰り返し行える書き換え可能型の媒体(Rewritable媒体)である場合とによって、それぞれの目的に応じた層構成を採用することができる。
【0021】
例えば、再生専用の光記録媒体においては、記録再生機能層は、通常、金属を含有する反射層のみを備えた単層構造の層として構成される。また、この場合の記録再生機能層は、例えば、スパッタ法等により反射層を基板上に成膜することなどにより形成することができる。
【0022】
さらに、例えば、追記型の光記録媒体においては、記録再生機能層は、通常、反射層と有機色素を含有する記録層とを、この順に基板上に形成した積層構造の層として構成される。また、この場合の記録再生機能層は、例えば、スパッタ法等により反射層を形成し、その反射層上にスピンコート法等により有機色素を記録層として成膜することなどにより形成することができる。
【0023】
また、追記型の光記録媒体の記録再生機能層の別の具体例としては、反射層と、誘電体層と、記録層と、誘電体層とをこの順に基板上に形成した積層構造の層が挙げられる。なお、この場合、一般に誘電体層と記録層とは無機材料を含有する。また、このような追記型の媒体は、通常、スパッタ法により、反射層と誘電体層と記録層と誘電体層とを成膜して形成することができる。
【0024】
さらに、例えば、書き換え可能型の光記録媒体においては、記録再生機能層は、通常、反射層と、誘電体層と、記録層と、誘電体層とを、この順に基板上に形成した積層構造の層として構成される。また、このような書き換え可能型の媒体は、通常、スパッタ法により反射層、誘電体層、記録層、及び誘電体層を成膜して形成することができる。
【0025】
また、書き換え可能型の光記録媒体の記録再生機能層の別の具体例としては、光磁気記録媒体に用いられるものと同様の記録再生機能層を挙げることができる。この場合、記録再生機能層は反射層、記録層及び誘電層によって形成される。
さらに、一般に、光記録媒体には、実際に記録や再生を行なうための記録再生領域が設定されている。この記録再生領域は、通常、記録再生機能層の内径よりも大きい内径と、記録再生機能層の外径よりも小さい外径とを有する領域に設けられる。なお、この記録再生領域には、上記基板のトラッキング用溝が形成されている。
【0026】
以下、上記の記録再生機能層を構成する各層についてそれぞれ詳細に説明する。
[2−1.反射層]
反射層は、光記録媒体の記録や再生に用いられる光を反射するための層である。その具体的な構成に制限は無く、光記録媒体の反射層として公知のものを任意に用いることができる。
【0027】
反射層に使用する材料は、記録や再生に用いられる光を反射することが可能であれば任意の材料を用いることができるが、通常は反射率の大きい物質が好ましい。また、反射層の材料は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
反射層の材料として好ましいものの例を挙げると、Au、Ag、Al等の金属が挙げられる。これは、放熱効果が期待できるためである。
また、反射層自体の熱伝導度制御や耐腐蝕性の改善のため、Ta、Ti、Cr、Mo、Mg、V、Nb、Zr,Si等の金属を併用してもよい。併用する金属の量は、通常、反射層中における割合として0.01モル%以上20モル%以下である。
【0028】
なかでも、Ta及び/又はTiを15モル%以下含有するアルミニウム合金、特に、AlαTa(1-α)(ただし、0≦α≦0.15)なるアルミニウム合金は、耐腐蝕性に優れており、光記録媒体の信頼性を向上させる上で特に好ましい。
また、Agに、Mg、Ti、Au、Cu、Pd、Pt、Zn、Cr、Si、Ge、希土類元素の少なくともいずれか一種を、0.01モル%以上10モル%以下含むAg合金は、反射率、熱伝導率が高く、耐熱性も優れていて好ましい。
【0029】
また、反射層の厚さに制限は無く任意であるが、通常40nm以上、好ましくは50nm以上、また、通常300nm以下、好ましくは200nm以下である。反射層の厚さが過度に大きいと、基板に形成されたトラッキング用溝の形状が変化する虞があり、さらに、成膜に時間がかかり、材料費も増加する傾向にある。また、反射層の厚さが過度に小さいと、光透過が起こり反射層として機能しない虞があるのみならず、反射層の一部分に、膜成長初期に形成される島状構造の影響が出やすく、反射率や熱伝導率が低下することがある。
【0030】
[2−2.誘電体層]
誘電体層は、記録層の相変化に伴う蒸発や変形を防止し、相変化の際の熱拡散を制御するための層である。その具体的な構成に制限は無く、光記録媒体の誘電体層として公知のものを任意に用いることができる。
【0031】
誘電体層に使用する材料は、誘電体であれば任意の材料を用いることができるが、通常は、屈折率、熱伝導率、化学的安定性、機械的強度、密着性等に留意して選択することが好ましい。一般的には、透明性が高く高融点である金属や半導体の酸化物、硫化物、窒化物、炭化物やCa、Mg、Li等のフッ化物等の誘電体材料などを用いることができる。また、誘電体層の材料は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。さらに、上記の酸化物、硫化物、窒化物、炭化物、フッ化物などの材料は、必ずしも化学量論的組成をとる必要はなく、屈折率等の制御のために組成を制御したり、混合して用いたりすることも有効である。
【0032】
このような誘電体層の材料の具体例としては、Sc、Y、Ce、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Zn、Al、Cr、In、Si、Ge、Sn、Sb、及びTe等の金属の酸化物;Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Sb、及びPb等の金属の窒化物;Ti、Zr、Hf、V,Nb、Ta、Cr、Mo、W、Zn、B、Al、Ga、In、及びSi等の金属の炭化物、又はこれらの混合物を挙げることができる。また、Zn、Y、Cd、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、及びBi等の金属の硫化物;セレン化物もしくはテルル化物;Mg、Ca等のフッ化物、又はこれらの混合物を挙げることもできる。
【0033】
なかでも、光記録媒体の繰り返し記録特性を考慮すると、誘電体の混合物により誘電体層を形成することが好ましい。例えば、ZnSや希土類硫化物等のカルコゲン化合物と、酸化物、窒化物、炭化物、フッ化物等の耐熱化合物との混合物で誘電体層を形成することなどが挙げられる。また、例えば、ZnSを主成分とする耐熱化合物の混合物や、希土類の硫酸化物、特にY22Sを主成分とする耐熱化合物の混合物などは、好ましい誘電体層組成の一例である。より具体的には、ZnS−SiO2、SiN、SiO2、TiO2、CrN、TaS2、Y22S等を挙げることができる。これら材料の中でも、ZnS−SiO2は、成膜速度の速さ、膜応力の小ささ、温度変化による体積変化率の小ささ及び優れた耐候性から広く利用される。
【0034】
さらに、誘電体層の厚さに制限は無く任意であるが、通常1nm以上、また、通常500nm以下である。1nm以上とすることで、基板や記録層の変形防止効果を十分確保することができ、誘電体層としての役目を十分果たすことができる。また、500nm以下とすれば、誘電体層としての役目を十分果たしつつ、誘電体層自体の内部応力や基板との弾性特性の差等が顕著になって、クラックが発生するということを防止できる。
【0035】
[2−3.記録層]
記録層は、その相変化により情報を記録するための層である。その具体的な構成に制限は無く、光記録媒体の記録層として公知のものを任意に用いることができる。
記録層に使用する材料は、公知のものを任意に用いることができ、さらに、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
その具体例を挙げると、GeSbTe、InSbTe、AgSbTe、AgInSbTe等の組成の化合物が挙げられる。なかでも、{(Sb2Te3(1-x)(GeTe)x(1-y)Sby(ただし、0.2≦x≦0.9、0≦y≦0.1)合金、または、{SbxTe(1-x)y(1-y)(ただし、0.6≦x≦0.9、0.7≦y≦1。また、Mは、Ge、Ag、In、Ga、Zn、Sn、Si、Cu、Au、Pd、Pt、Pb、Cr、Co、O、S、Se、V、Nb、Taより選ばれる少なくとも1種の原子を表わす)合金を主成分とする薄膜は、結晶・非晶質いずれの状態も安定でかつ、両状態間の高速の相変化(相転移)が可能であり、好ましい。さらに、これらの材料は、繰り返しオーバーライトを行なった時に偏析が生じにくいといった利点があり、最も実用的な材料である。
【0036】
また、記録層の材料として、上記の無機化合物に代えて又は併用して、有機色素を用いても良い。この有機色素の具体例としては、大環状アザアヌレン系色素(フタロシアニン色素、ナフタロシアニン色素、ポルフィリン色素など)、ピロメテン系色素、ポリメチン系色素(シアニン色素、メロシアニン色素、スクワリリウム色素など)、アントラキノン系色素、アズレニウム系色素、含金属アゾ系色素、含金属インドアニリン系色素などが挙げられる。これらの有機色素の中でも、含金属アゾ系色素は、記録感度に優れ、かつ、耐久性、耐光性に優れるため好ましい。
【0037】
さらに、記録層に使用される有機色素は、350〜900nm程度の可視光〜近赤外域に最大吸収波長λmaxを有し、青色〜近マイクロ波レーザーでの記録に適する色素化合物が好ましい。通常CD−Rに用いられるような波長770〜830nm程度の近赤外レーザー(代表的には780nm,830nmなど)や、DVD−Rに用いられるような波長620〜690nm程度の赤色レーザー(代表的には635nm、650nm、680nmなど)、あるいは波長410nmや515nmなどのいわゆるブルーレーザーなどでの記録に適する色素がより好ましい。
【0038】
また、記録層の膜厚に制限は無く任意であるが、その下限は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上である。このような範囲とすれば、記録層のアモルファス状態と結晶状態との十分な光学的コントラストを得ることができる。また、記録層の膜厚の上限は、通常30nm以下、好ましくは20nm以下である。このような範囲とすれば、記録層を透過した光が反射層で反射することによる光学的コントラストの増加を得ることができ、また、熱容量を適当な値に制御することができるので高速記録を行なうことも可能となる。
【0039】
特に、記録層の膜厚を10nm以上20nm以下とすれば、より高速での記録及びより高い光学的コントラストを両立することができるようになる。また、記録層の厚さをこのような範囲にすることにより、相変化に伴う体積変化を小さくし、記録層自身及び記録層の上下と接する他の層に対して、繰り返しオーバーライトによる繰り返し体積変化の影響を小さくすることができる。さらに、記録層の不可逆な微視的変形の蓄積が抑えられ、ノイズが低減され、繰り返しオーバーライト耐久性が向上する。
【0040】
[2−4.その他]
反射層、記録層、誘電体層などの記録再生機能層は、任意の方法で形成することができるが、通常はスパッタリング法などによって形成される。スパッタリング法においては、記録層用ターゲット、誘電体層用ターゲット、必要な場合には反射層材料用ターゲットを同一真空チャンバー内に設置したインライン装置で層形成を行なうことが、各層間の酸化や汚染を防ぐ点で望ましい。また、生産性の面からも優れている。また、有機色素などにより層形成を行なう場合には、スピンコート法などにより層形成を行なうことができる。
【0041】
ところで、本発明の光記録媒体では、上述したような基板と記録再生機能層とを有する媒体に光透過層と防汚層とを設けるのであるが、このような媒体の中でも、ブルーレーザーを用いる次世代高密度光記録媒体が好ましい。したがって、本発明の光記録媒体の記録や再生に用いる光の波長に制限は無く任意であるが、通常350nm以上、好ましくは380nm以上、また、通常800nm以下、好ましくは450nm以下の波長の光を用いる光記録媒体として形成することが望ましい。
【0042】
[3.光透過層]
光透過層は、記録再生機能層の保護などのため、記録再生機能層上に形成される層である。また、本発明の光記録媒体において、光透過層は、組成物Aを硬化させて形成されるものである。
ここで、組成物Aとは、シリカ粒子(以下適宜、「微小シリカ粒子」という場合がある。)と、ウレタン結合を有するオリゴマー(以下適宜、「ウレタンオリゴマー」という場合がある。)とを含有し、放射線の照射により硬化しうる組成物である。また、組成物Aには、適宜、その他の無機成分(以下適宜、「併用無機成分」という場合がある。)を含有させても良い。
【0043】
[3−1.微小シリカ粒子]
組成物Aが含有する微小シリカ粒子の粒径は、本発明の効果を著しく損なわない範囲において任意である。ただし、組成物Aの微小シリカ粒子の数平均粒径の下限値は、通常0.5nm以上、好ましくは1nm以上である。数平均粒径が小さすぎると、超微粒子である微小シリカ粒子の凝集性が極端に増大して、組成物Aを硬化させた際に、硬化させた組成物A、即ち、光透過層の透明性や機械的強度が極端に低下したり、量子効果による特性が顕著でなくなったりする虞がある。また、組成物Aの微小シリカ粒子の数平均粒径の上限値は、通常50nm以下、好ましくは40nm以下、より好ましくは30nm以下、さらに好ましくは15nm以下、特に好ましくは12nm以下である。
【0044】
また、組成物A中においては、所定の粒径を有する微小シリカ粒子の割合が所定の範囲に収まることが望ましい。具体的には、組成物Aの微小シリカ粒子のうち、粒径が通常30nmより大きく、好ましくは15nmより大きい微小シリカ粒子が、組成物Aに対して、通常1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下であることが望ましい。または、同様の範囲の粒径を有する微小シリカ粒子が、光透過層に対して、通常1体積%以下、好ましくは0.5体積%以下であることが望ましい。組成物Aが上記の所定範囲の粒径を有する微小シリカ粒子を多く含有していると、光の散乱が大きくなるので透過率が低下し、好ましくない。
【0045】
なお、上記の数平均粒径の決定には、透過型電子顕微鏡(TEM)観察像より測定される数値を用いる。即ち、観察される微小シリカ粒子像と同面積の円の直径をシリカ粒子像の粒径と定義する。こうして決定される粒径を用い、例えば公知の画像データの統計処理手法により上記数平均粒径を算出する。この際、かかる統計処理に使用する超微粒子像の数(統計処理データ数)はできるだけ多いことが望ましい。例えば、再現性の点で、無作為に選ばれた微小シリカ粒子像の個数として通常50個以上、好ましくは80個以上、より好ましくは100個以上とすることが望ましい。また、硬化した組成物A中に占める微小シリカ粒子の体積%の計算は、上記のように測定される粒径を直径とする球の体積で換算する。
【0046】
ところで、従来からある通常のシリカ粒子は、一般にその粒径分布がブロードで、例えば50nmより大きな粒径の粒子を含んでいるために、透明性が不良となることが多く、また、シリカ粒子が沈降しやすい。大きな粒径のシリカ粒子を分離したもの(いわゆるカット品)も知られているが、それらは2次凝集しやすい傾向があり、透明性が損なわれるものがほとんどである。
【0047】
これに対し、組成物Aでは、微小シリカ粒子を含有させている。
このような微小シリカ粒子としては、特に制限はないが、例えば、コロイダルシリカやアルコキシシランのオリゴマーの加水分解からなるシリカ粒子を挙げることができる。
【0048】
まず、コロイダルシリカについて説明する。コロイダルシリカは、通常、無水ケイ酸の超微粒子を、水または有機溶媒に分散させた状態のものである。ここで、コロイダルシリカの一次粒子径は、通常1nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常200nm以下、好ましくは80nm以下の範囲とすることが望ましい。コロイダルシリカの一次粒径が上記範囲の下限を下回るとシリカ成分が保存中や製造工程中においてゲル化を起こしやすく、また、一次粒子径が上限を上回ると光透過層の透明性が低下する傾向にある。
【0049】
また、無水ケイ酸の超微粒子の分散に使用される分散媒の具体例としては公知のものを任意に用いることができ、例えば水;メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−プロパノール、2−ブタノール、n−ブタノールなどのアルコール系溶剤;エチレングリコールなどの多価アルコール系溶剤;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどの多価アルコール誘導体;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコールなどのケトン系溶剤;2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレートなどのモノマー類等が挙げられる。この中でも、炭素数3以下のアルコール系溶剤が特に好ましい。なお、上記分散媒は1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。また、コロイダルシリカは、公知の方法で製造することもできるが、市販もされている。
【0050】
次に、アルコキシシランのオリゴマーの加水分解からなるシリカ粒子について説明する。アルコキシシランのオリゴマーの加水分解という特定の合成法によれば、非常に小さな粒径の微小シリカ粒子が安定して得られ、且つ、その微小シリカ粒子は凝集しにくい性質を有している。したがって、この合成法により得られたシリカ粒子を組成物Aの微小シリカ粒子として用いれば、組成物Aを硬化させた場合でも、高い透明性を得ることができる利点がある。
【0051】
ここで、加水分解物とは、少なくとも加水分解反応を含む反応により得られる生成物を指し、例えば脱水縮合などを伴っていてもよい。また、加水分解反応は、脱アルコール反応も含むものとする。
アルコキシシランは、ケイ素原子にアルコキシ基が結合した化合物であって、これらは、また加水分解反応及び脱水縮合反応(或いは脱アルコール縮合)によりアルコキシシラン多量体(オリゴマー)を生成する。組成物Aの微小シリカ粒子の原料に用いるアルコキシシランの種類に制限は無く任意であるが、後述する水や溶媒に対してアルコキシシランオリゴマーが相溶性を有するために、このアルコキシシランのアルキル基の炭素数は多すぎないことが好ましく、通常1以上、また、通常5以下、好ましくは3以下である。組成物Aの微小シリカ粒子の原料に用いるアルコキシシランの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等が挙げられる。
【0052】
また、組成物Aの微小シリカ粒子は、通常、上記のアルコキシシランのオリゴマーを出発原料として得られる。アルコキシシラン単量体(モノマー)を出発原料としないのは、アルコキシシラン単量体の粒径の制御が難しいこと、上記粒径の分布がブロードになりやすく粒径が揃い難いこと等の傾向があるため、組成物Aを透明にできなくなる虞があるためであり、また、アルコキシシラン単量体には毒性を有する種類のものがあるので安全衛生上好ましくないためである。
【0053】
上記のアルコキシシランのオリゴマーは、公知の任意の製造方法により製造されたアルコキシシランオリゴマーを用いることができるが、例えば、特開平7−48454号公報に記載の方法等によって行うことができる。
さらに、組成物Aの微小シリカ粒子の原料として用いるアルコキシシランオリゴマーは、加水分解時に用いる溶媒や水に対して相溶性があることが好ましい。加水分解工程の際、相分離が起きるのを防ぐためである。
【0054】
また、微小シリカ粒子の原料として用いるアルコキシシランオリゴマーの分子量に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常100以上、好ましくは200以上、より好ましくは300以上、また、通常1500以下、好ましくは1200以下、より好ましくは1000以下が望ましい。この範囲から外れると、微小シリカ粒子を形成する際に白濁やゲル化を起こしやすくなる傾向があるためである。
なお、原料に用いるアルコキシシランオリゴマーは、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0055】
アルコキシシランオリゴマーの加水分解の方法に制限は無く任意の方法により行なうことができるが、例えば、特定の溶媒中にてアルコキシシランオリゴマーに一定量の水を加え、触媒を作用させることによって行なうことができる。この加水分解反応により、組成物Aの微小シリカ粒子を得ることができる。
加水分解に用いる溶媒は、アルコキシシランオリゴマーの加水分解が可能であれば任意であるが、例えばアルコール類、グリコール誘導体、炭化水素類、エステル類、ケトン類、エーテル類等のうち1種類ないし2種類以上を組み合わせて使用することができ、中でもアルコール類及びケトン類が特に好ましい。
【0056】
ここで、アルコール類の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、オクタノール、n−プロピルアルコール、アセチルアセトンアルコール等が挙げられる。
また、ケトン類の具体例としてはアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。
さらに、親水性である微小シリカ粒子を安定に存在させるためには、これらアルコール類やケトン類の炭素数は小さいほうが好ましい。特に好ましくはメタノール、エタノール、アセトンである。中でもアセトンは沸点が低く溶媒を除去する工程に要する時間が比較的短くてすむ利点がある。
【0057】
また、上記のアルコキシシランオリゴマーの加水分解反応に用いる水の量に制限は無く、加水分解ができる限り任意である。ただし、アルコキシシランオリゴマーが有するアルコキシ基のモル数に対して、通常0.05倍以上、好ましくは0.3倍以上のモル数の水を用いることが望ましい。水の量が少なすぎると、微小シリカ粒子が十分な大きさに成長せず、従って微小シリカ粒子が所望の特性を発現しにくくなる傾向となる。但し、上限値は通常1倍以下である。多すぎるとアルコキシシランオリゴマーがゲルを形成しやすくなる。
【0058】
また、加水分解に際して用いる触媒に制限は無く、上記加水分解が可能である限り任意の触媒を用いることができる。例えば、金属キレート化合物、有機酸、金属アルコキシド、ホウ素化合物等を用いることができる。中でも、金属キレート化合物及び有機酸が好ましい。なお、加水分解に用いる触媒は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0059】
上記触媒として用いる金属キレート化合物の具体例としては、アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)、チタニウムテトラキス(アセチルアセトナート)、チタニウムビス(イソプロポキシ)ビス(アセチルアセトナート)、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトナート)、ジルコニウムビス(ブトキシ)ビス(アセチルアセトナート)及びジルコニウムビス(イソプロポキシ)ビス(アセチルアセトナート)等が挙げられ、これらの中から1種類ないし2種類以上を組み合わせて用いることができるが、とりわけアルミニウムトリス(アセチルアセトナート)が好ましく用いられる。
【0060】
また、上記触媒として用いる有機酸の具体例としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、マレイン酸等が挙げられ、これらの中から1種類ないし2種類以上を組み合わせて用いることができるが、とりわけマレイン酸が好ましく用いられる。マレイン酸を用いた場合は、放射線により組成物Aを硬化させた場合に得られる光透過層の色相が良好で、黄色みが小さい傾向があるという利点があり、好ましい。
【0061】
これら触媒成分の使用量は、その作用を十分に発揮する範囲であれば特に制限はないが、通常アルコキシシランオリゴマー100重量部に対して、通常0.1重量部以上、好ましくは0.5重量部以上を用いることが望ましい。但し、あまり多量でも作用は変わらないため、通常10重量部以下とするが、好ましくは5重量部以下である。
【0062】
さらに、加水分解を行なう場合の温度条件に制限は無く、加水分解が進行する限り任意であるが、通常10℃以上、好ましくは30℃以上、また、通常90℃以下、好ましくは70℃以下の温度とすることが望ましい。この範囲の下限を下回ると微小シリカ粒子が形成される反応が十分に進行しなくなる虞があり、逆に上限を上回ると、アルコキシシランのオリゴマーのゲル化反応が起こりやすくなる虞があるためである。
また、加水分解を行なう加水分解時間にも制限は無いが、通常は30分から1週間である。
【0063】
ところで、本発明においては、組成物Aに用いるシリカ粒子として、アルコキシシランのオリゴマーの加水分解物からなる微小シリカ粒子を用いることで、従来一般に充填成分として用いられているシリカ粒子に比べて、遙かに粒径の揃った微細な超微粒子を光透過層に含有させられるという利点がある。また、上記のアルコキシシランオリゴマーの加水分解物からなる微小シリカ粒子は凝集しにくい性質も有しているため、組成物A中で微小シリカ粒子を均一に分散させることができ、ひいては光透過層中においても微小シリカ粒子を均一に分散させることが可能となる。これによれば、微小シリカ粒子を大量に使用しても放射線透過性を損なうことがないので、光透過層や光記録媒体の寸法安定性や機械的強度を高めるために十分な量の微小シリカ粒子を使用できる。さらに、このような特定の製法により得られる微小シリカ粒子と、後述するシランカップリング剤等による微小シリカ粒子の表面処理とを併用し、これにウレタンオリゴマーを用いることで、より大量の微小シリカ粒子を凝集させずに分散させられる利点がある。
したがって、上記の微小シリカ粒子を用いた光透過層は、透明性、寸法安定性、機械的強度、密着性等を兼ね備えた優れた性質を有する利点がある。
【0064】
[3−2.併用無機成分]
組成物Aには、微小シリカ粒子以外に、その他の無機成分(併用無機成分)を含有させることもできる。併用無機成分には特に制限はなく、本発明の効果を著しく損なわない範囲において任意の無機物質を用いることができる。併用無機成分としては、例えば、無色の金属、無色の金属酸化物などが挙げられる。具体例としては、銀、パラジウム、アルミナ、ジルコニア、水酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、上述した微小シリカ粒子以外のシリカ粒子、炭酸カルシウム、粘土鉱物粉末等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、アルミナ、酸化亜鉛、微小シリカ粒子以外のシリカ粒子、酸化チタンである。なお、併用無機成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0065】
併用無機成分の製造法としては特に制限は無く任意の方法を用いることができる。ただし、併用無機成分は小さい粒径を有していることが好ましいため、その粒子の粒径を小さくできる方法を経て製造されたものが好ましい。具体例としては、併用無機成分の市販品をボールミル等の粉砕機で粉砕する方法;併用無機成分をゾルゲル法で製造する方法などが挙げられる。中でも、ゾルゲル法で製造するものが好ましい。
【0066】
また、組成物Aに含有させる併用無機成分の粒径は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常は、上記の通り、併用無機成分は粒径が小さい超微粒子である事が好ましい。併用無機成分の粒径の下限値は、数平均粒径で、通常0.5nm以上、好ましくは1nm以上である。数平均粒径が小さすぎると、超微粒子の凝集性が極端に増大して、光透過層の透明性や機械的強度が極端に低下したり、量子効果による特性が顕著でなくなる虞がある。また、併用無機成分の粒径の上限値は、数平均粒径で、通常50nm以下、好ましくは40nm以下、より好ましくは30nm以下、さらに好ましくは15nm未満、特に好ましくは12nm以下である。
【0067】
さらに、組成物A中においては、微小シリカ粒子と同様、所定の粒径を有する併用無機成分の割合が所定の範囲に収まることが望ましい。具体的には、組成物A中の併用無機成分のうち、粒径が通常30nmより大きく、好ましくは15nmより大きい併用無機成分が、組成物Aに対して、通常1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下であることが望ましい。または、同様の範囲の粒径を有する併用無機成分が、光透過層に対して、通常1体積%以下、好ましくは0.5体積%以下であることが望ましい。組成物Aが上記の所定範囲の粒径を有する併用無機成分を多く含有していると、光の散乱が大きくなるので透過率が低下し、好ましくない。これらの数平均粒径の決定方法としては、前述と同様の方法が挙げられる。
【0068】
[3−3.無機成分の組成]
組成物A中において、上記微小シリカ粒子と併用無機成分とを合わせた無機成分全体(以下適宜、「分散無機成分」という)の含有量は、光透過層の寸法安定性や硬度特性を高めるために、含有可能な範囲で多量に含ませることが好ましい。具体的には、組成物Aに対して、分散無機成分を、通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上含有させることが望ましい。または、光透過層に対して、分散無機成分を、通常2体積%以上、好ましくは5体積%以上含有させることが望ましい。
【0069】
但し、光透過層の透明性や機械的強度を高く保つためには多すぎないことが好ましく、組成物Aに対して、分散無機成分の含有量を、通常60重量%以下、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下とすることが望ましい。または、光透過層に対して、分散無機成分の含有量を、通常30体積%以下、好ましくは20体積%以下、より好ましくは15体積%以下とすることが望ましい。
【0070】
さらに、分散無機成分中に占める、上記微小シリカ粒子の含有割合は、特に制限は無く任意であるが、通常50重量%以上、好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、また、通常100重量%以下である。
【0071】
[3−4.表面処理]
上記の微小シリカ粒子を含め、分散無機成分は、必要に応じて、粒子表面を表面処理により保護することが好ましい。
通常、上記分散無機成分、特に上述のように形成した組成物Aの微小シリカ粒子は極性が強く、水やアルコール等に対して相溶性を有し、ウレタンオリゴマーには相溶性を有しない場合がある。このため、ウレタンオリゴマーに分散させた場合に凝集を起こしたり白濁を起こしたりする虞がある。
【0072】
そこで、分散無機成分に対して表面処理剤を用いて、分散無機成分の粒子の表面を疎水化することにより分散無機成分にウレタンオリゴマーに対する相溶性を持たせて、凝集や白濁を防ぐものである。なお、この際用いる表面処理剤としては、例えば親水性官能基及び疎水性官能基を有するものを用いることができ、具体的には、分散剤、界面活性剤、カップリング剤等を用いることができる。なお、表面処理剤は1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
表面処理の方法に制限は無く、上記の凝集や白濁を防止することができれば他に制限は無いが、例えば、上記の分散剤や界面活性剤の使用、又は、カップリング剤等で表面を修飾する方法などが好ましく用いられる。
【0073】
分散剤としては公知のものを任意に用いることができ、例えば、各種インク、塗料、電子写真用トナーなどの微粒子分散液に使用される、高分子分散剤から選択して使用することができる。このような高分子分散剤としては、アクリル系高分子分散剤、ウレタン系高分子分散剤等から適宜選択して使用される。具体例としては、商品名で、例えば、EFKA(エフカ アディティブス社製)、Disperbyk{ビックケミー(BYK)社製}、ディスパロン{楠本化成(株)社製}等を挙げることができる。
また、分散剤の使用量は任意であるが、分散無機成分に対して、通常10重量%以上、好ましくは20重量%以上、また、通常500重量%以下、好ましくは300重量%以下である。
【0074】
さらに、界面活性剤としても公知のものを任意に用いることができ、例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、又は両性系の高分子或いは低分子の各種非水系界面活性剤から選択して用いることができる。具体例としては、スルホン酸アミド系(アベシアピグメンツ&アジティブス社製「ソルスパース3000」)、ハイドロステアリン酸系(アベシアピグメンツ&アジティブス社製「ソルスパース17000」)、脂肪酸アミン系、ε−カプロラクトン系(アベシアピグメンツ&アジティブス社製「ソルスパース24000」)、1,2−ヒドロキシステアリン酸多量体、牛脂ジアミンオレイン酸塩(ライオンアクゾ社製「デュオミンTDO」)などが挙げられる。
また、界面活性剤の使用量も任意であるが、分散無機成分に対して、通常10重量%以上、好ましくは20重量%以上、また、通常500重量%以下、好ましくは300重量%以下である。
【0075】
さらに、分散無機成分のなかでも特に微小シリカ粒子は、シランカップリング剤で表面処理する事が好ましい。シランカップリング剤は、ケイ素原子にアルコキシ基及び官能基を有するアルキル基が結合した構造の化合物で、シリカ粒子の表面を疎水化する役割を持つ。即ち、シランカップリング剤を用いて微小シリカ粒子の表面処理を行なう場合、シランカップリング剤のアルコキシ基と微小シリカ粒子表面上のヒドロキシ基との間で脱アルコール反応が起こり、Si−O−Si結合を生じることとなる。
【0076】
シランカップリング剤としては、その目的を達成するものであれば特に限定されず任意のものを用いることができるが、放射線硬化性官能基を有するトリアルコキシシランが特に好ましい。その具体例としては、エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0077】
また、シランカップリング剤の使用量は、上記の凝集や白濁を防止できる限り任意であるが、微小シリカ粒子に対して、通常1重量%以上、好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上が望ましい。シランカップリング剤の使用量が少なすぎると、微小シリカ粒子表面が十分に疎水化されず、ウレタンオリゴマーとの均一な混合に支障を来す場合がある。逆に多すぎると微小シリカ粒子と結合しないシランカップリング剤が組成物Aに多量に混入することになり、得られる光透過層の透明性、機械物性等に悪影響を及ぼしやすくなるため好ましくない。したがって、シリカカップリング剤の使用量の上限は、通常400重量%以下、好ましくは350重量%以下、より好ましくは300重量%以下である。
【0078】
さらに、シランカップリング剤は、表面処理時に部分的に加水分解される場合がある。したがって、微小シリカ粒子をシランカップリング剤で表面処理した場合、その結果得られる組成物Aは、シランカップリング剤、シランカップリング剤の加水分解生成物、及び、それらの縮合物からなる群より選ばれる化合物により表面処理されている微小シリカ粒子を含むことがある。また、この他、シランカップリング剤同士及び/又はシランカップリング剤とその加水分解生成物との縮合物も存在する場合がある。
【0079】
なお、シランカップリング剤の加水分解生成物とは、シランカップリング剤が含有するアルコキシシラン基の一部又は全部が加水分解反応を経てシラノール基になり、シランカップリング剤の一部又は全部がヒドロキシシランになったものを指す。例えば、シランカップリング剤がエポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシランである場合には、エポキシシクロヘキシルエチルヒドロキシジメトキシシラン、エポキシシクロヘキシルエチルジヒドロキシメトキシシラン、エポキシシクロヘキシルエチルトリヒドロキシシランになることがそれにあたる。
また、シランカップリング剤同士及び/又はシランカップリング剤とその加水分解生成物との縮合物とは、アルコキシ基がシラノール基と脱アルコール反応を経てSi−O−Si結合を生じたもの、あるいはシラノール基が他のシラノール基と脱水反応を経てSi−O−Si結合を生じたものを指す。
【0080】
上述した表面処理剤は、それぞれの表面処理剤の種類や目的に応じた方法で用いることにより、分散無機成分の表面処理を行なうことができる。
例えば、表面処理剤として界面活性剤又は分散剤を用いる場合には、微小シリカ粒子が分散した液体媒体と表面処理剤とを混合して、室温〜60℃の温度にて30分〜2時間程度攪拌して反応させる方法や、混合して反応させたあと、室温にて数日間熟成させる方法、等が挙げられる。混合する際は、表面処理剤の溶解性が非常に高い溶媒を液体媒体として選択しないことが好ましい。表面処理剤の溶解性が非常に高い溶媒を用いた場合、分散無機成分への保護が十分に行なわれないか、もしくは、保護プロセスに多大な時間を要する虞があるためである。なお、表面処理剤の溶解性が非常に高い溶媒を液体媒体に使用した場合には、例えば、溶媒と表面処理剤との溶解度値(SP値)の差が0.5以上になる溶媒を用いると、分散無機成分への保護が十分に行われることが多い。
【0081】
また、例えば、表面処理剤としてシランカップリング剤を用いる場合には、通常、表面処理反応は室温(25℃)にて進行させる。通常は0.5〜24時間撹拌操作を行ない反応を進行させるが、100℃以下の温度で加熱してもよい。加熱すると反応速度が増し、より短時間で反応を行なわせることができる。さらに、シランカップリング剤を用いる場合には、水を混合させても良い。水は、通常、シランカップリング剤由来のアルコキシ基及びアルコキシシラン由来の残存アルコキシ基が加水分解に必要な量の範囲で混合させることが望ましい。
【0082】
さらに、シランカップリング剤は、1回で混合させても良く、2回以上に分割して混合させてもよい。シランカップリング剤を2回以上に分割して混合させる場合には、水も2回以上に分割して混合させてもよく、その量は上記シランカップリング剤への水の使用量に記載した説明と同様である。
ただし、シランカップリング剤を用いて表面処理を行なった場合には、分散無機成分とウレタンオリゴマーとを混合する前に、表面処理が十分に終了してから分散無機成分とウレタンオリゴマーとの混合を行なうことが好ましい。表面処理が十分に進行する以前に分散無機成分とウレタンオリゴマーとの混合を行なうと、ウレタンオリゴマーが均一に混ざらなかったり、その後の工程において組成物Aが白濁したりする虞があるためである。なお、シランカップリング剤を用いた表面処理が充分に終了していることの確認は、表面処理を行なっている反応液中のシランカップリング剤の残存量を測定することで行なうことができる。通常は、反応液中のシランカップリング剤の残存量が、仕込み量に対して10%以下になったときに、表面処理工程における反応が充分に終了したと判断できる。
【0083】
[3−5.ウレタンオリゴマー]
組成物Aに含まれるウレタンオリゴマーは、ウレタン結合を有する有機化合物のオリゴマーであれば他に制限は無く、任意のオリゴマーを用いることができる。ここで、組成物Aにウレタンオリゴマーを含有させることにより、組成物Aを硬化させて形成される光透過層の密着性や表面硬化度が増すという利点がある。
【0084】
ウレタンオリゴマーを用いたときに被着物(通常は、記録再生機能層)との密着性が向上する現象は、ウレタン結合の電気的極性によって、被着体との相互作用が強められることに由来すると考えられる。
また、ウレタンオリゴマーを用いたときに表面硬化度が向上する理由は明らかではないが、ウレタンオリゴマーを一定量以上含有する組成物A中においては、ウレタン結合の電気的極性に由来する分子内水素結合や分子間水素結合が形成され易いために、オリゴマーの凝集性が高められ、結果として酸素の組成物A中における自由な移動を阻害し、ラジカル重合阻害が抑制されていること等が、その主な理由であると推定される。
【0085】
さらに、ウレタンオリゴマーとしては、ウレタンオリゴマー自体が放射線硬化性官能基も有するのが好ましい。これにより、ウレタンオリゴマーが放射線硬化網目構造に組み込まれて一体となるため、放射線を照射して組成物Aを硬化させた場合の組成物Aの凝集性が増し、結果として、光透過層に凝集破壊が起きにくくなり、また、光透過層の密着性が向上する利点がある。また、酸素の自由な移動を制限する効果も高まるので、光透過層の表面硬化度も向上する利点がある。
【0086】
また、ウレタンオリゴマーは、公知の任意の方法で製造することができるが、通常は、ウレタン結合を有するモノマーをオリゴマー化することにより製造される。ウレタン結合を有するモノマーの製造方法は任意であり、例えば、クロロギ酸エステルとアンモニア又はアミンとを反応させる方法、イソシアネートとヒドロキシル基含有化合物とを反応させる方法、尿素とヒドロキシル基含有化合物とを反応させる方法等、公知の方法に準じて行えばよい。
【0087】
さらに、該モノマーが反応性基を有する場合は、それをオリゴマー化することでウレタンオリゴマーを得ることができる。通常は、分子内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物と、ヒドロキシル基を含有する化合物とを常法により付加反応させることにより、ウレタンオリゴマーを製造することができる。
【0088】
分子内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物としては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、シクロヘキサンジイソシアネート、ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等のポリイソシアネート類が挙げられる。
【0089】
これらのうち、得られる組成物の色相が良好である点で、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、シクロヘキサンジイソシアネート、ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン、イソホロンジイソシアネート等を用いることが好ましい。なお、イソシアネート基を有する化合物は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0090】
また、ヒドロキシル基を含有する化合物としては、2個以上のヒドロキシル基を含有するポリオール類が好ましく用いられる。その具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、グリセリン等のアルキルポリオール及びこれらの多量体であるポリエーテルポリオール、又はこれらのポリオールや多価アルコールと多塩基酸から合成されるポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール等のポリエステルポリオール等が挙げられる。なお、ヒドロキシル基を含有する化合物も、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0091】
さらに、これらにより得られるウレタンオリゴマーは、ヒドロキシル基を含有する化合物として該ポリエーテルポリオールを含有するものであるのが望ましい。具体的には、ウレタンオリゴマー1分子中のポリエーテルポリオールに由来する構成単位の平均含有量が、通常20重量%以上、好ましくは25重量%以上、より好ましくは30重量%以上であるのが望ましい。また、上限は特に限定しないが、通常90重量%以下、好ましくは80重量%以下、より好ましくは70重量%以下であるのが望ましい。
【0092】
このポリエーテルポリオールの含有割合が小さすぎると、硬化物として光透過層が脆くなり、また、光透過層の弾性率が高過ぎて内部応力を生じ易く、変形の原因になる傾向がある。逆に大きすぎると、硬化物として光透過層の表面硬度が低下し、傷が付き易くなる等の問題を生じ易い傾向がある。
また、イソシアネート化合物とヒドロキシル化合物との付加反応は公知の任意の方法で行なうことができる。例えば、イソシアネート化合物存在下にヒドロキシル化合物と付加反応触媒、具体的には、ジブチルスズラウレートとの混合物を50℃〜90℃の条件下で滴下することにより行なうことができる。
【0093】
特に、ウレタンアクリレートオリゴマーを合成するに際しては、上記ヒドロキシル基を含有する化合物の一部を、ヒドロキシル基及び(メタ)アクリロイル基を併せ持つ化合物にすることで製造することができる。その使用量は任意であるが、通常、全ヒドロキシル基含有化合物中の30モル%〜70モル%であり、その割合に応じて、得られるオリゴマーの分子量を制御することができる。
【0094】
また、ヒドロキシル基及び(メタ)アクリロイル基を併せ持つ化合物の具体例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジルエーテル化合物と(メタ)アクリル酸との付加反応物、グリコール化合物のモノ(メタ)アクリレート体等が挙げられる。
【0095】
さらに、分子内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物1分子と、ヒドロキシル基及び(メタ)アクリロイル基を併せ持つ化合物2分子とを付加反応させることにより、両末端に(メタ)アクリロイル基を有するウレタンオリゴマーを製造することができる。
特に、両末端に(メタ)アクリロイル基を有するウレタンオリゴマーは、得られる光透過層の密着性や表面硬化度がさらに増すという利点がある。
【0096】
また、ウレタンオリゴマーは、更に任意の酸性基を有していることが好ましい。酸性基を有することで、経時においても(即ち、時間が経過しても)被着材と光透過層との密着性が向上させることができるという利点がある。ここで、酸性基とは、酸性を有する官能基を意味する。酸性基の例としては、スルホン酸基、燐酸基、カルボキシル基、及びそれらの3級アミン化合物中和塩若しくは金属塩等が挙げられる。なかでも、カルボキシル基が最も好ましい。なお、ウレタンオリゴマーが有する酸性基は、1種であってもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で存在していても良い。
【0097】
ウレタンオリゴマーが酸性基を有するようにする場合、例えば、ウレタンオリゴマーの製造方法に用いられる原料化合物として、カルボキシル基を有するものを用いれば良い。特に、このうちでもカルボキシル基を有するヒドロキシル基含有化合物を原料化合物に用いるのが好ましい。
【0098】
カルボキシル基を有するヒドロキシル基含有化合物に制限は無く任意のものを用いることができるが、例えば、2個以上のヒドロキシル基を含有するいわゆる酸ジオール類が好ましく用いられる。その具体例としては、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールヘプタン酸、ジメチロールノナン酸、ジヒドロキシ安息香酸、等のアルカノールカルボン酸類及びこれらのカプロラクトン付加物類;又は、ポリオキシプロピレントリオールと無水マレイン酸或いは無水フタル酸とのハーフエステル化合物、等の1分子中に2個のヒドロキシル基とカルボキシル基とを有する化合物類等が挙げられる。
【0099】
また、ウレタンオリゴマーの分子量に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常500以上、好ましくは1000以上、より好ましくは1500以上、また、通常10000以下、好ましくは8000以下、より好ましくは6000以下が望ましい。この範囲の下限を下回ると硬化収縮が増大する虞があり、上回ると粘度が著しく上昇して作業性が悪化する虞があるためである。
なお、ウレタンオリゴマーは、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0100】
[3−6.その他の成分]
組成物A中には、適宜、その他の成分が含有されていてもよい。
例えば、放射線硬化性モノマー及び/又はそのオリゴマー(以下適宜、「放射線硬化性成分」という)が含有されていても良い。この放射線硬化性成分を用いることで、ウレタンオリゴマーが放射線硬化性を有していない場合であっても、組成物Aに放射線硬化性を備えさせ、放射線の照射により組成物Aを硬化させることができるようになる。
また、放射線硬化性成分の中でも、2官能又は3官能の(メタ)アクリレート化合物を用いることが好ましい。
【0101】
上記の2官能又は3官能の(メタ)アクリレート化合物としては任意のものを用いることができるが、例えば、脂鎖式ポリ(メタ)アクリレート、脂環式ポリ(メタ)アクリレート、芳香族ポリ(メタ)アクリレートが挙げられる。具体例としては、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジメタクリレート、p−ビス[β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ]キシリレン、4,4′−ビス[β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ]ジフェニルスルホン等の2価の(メタ)アクリレート類、トリメチロールプロパントリス(メタ)アクリレート、グリセリントリス(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリス(メタ)アクリレート等の3価の(メタ)アクリレート類、ペンタエリスリトールテトラキス(メタ)アクリレート等の4価の(メタ)アクリレート類、エポキシアクリレート等の不定多価の(メタ)アクリレート類等が例示される。これらのうち、架橋生成反応の制御性から、上記2価の(メタ)アクリレート類が好ましく用いられる。
【0102】
また、光透過層の架橋構造の耐熱性、表面硬度の向上等を目的として、3官能以上の(メタ)アクリレート類が好ましく用いられる。その具体例としては、上記に例示されたトリメチロールプロパントリス(メタ)アクリレート等の他、イソシアヌレート骨格を有する3官能(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
さらに、光透過層の接着性、密着性を向上させる目的で、水酸基を含有した(メタ)アクリレート化合物が好ましく用いられる。その具体例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0103】
また、前記に例示の(メタ)アクリレート類のうち、光透過層の透明性と低光学歪み性とをバランスよく実現する点で特に好ましいのは、下記成分I及び下記成分IIを使用することである。
成分Iは、下記式(1)で示される脂環骨格を有するビス(メタ)アクリレートである。
【0104】
【化1】

ただし、上記式(1)において、Ra及びRbは、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表わす。また、Rc及びRdは、それぞれ独立して、炭素数6以下のアルキレン基を表わす。さらに、xは1又は2を表わし、yは0又は1を表わす。
【0105】
上記式(1)で示される成分Iの具体例としては、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジアクリレート、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジメタクリレート、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=アクリレートメタクリレート及びこれらの混合物、ビス(ヒドロキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン=ジアクリレート、ビス(ヒドロキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン=ジメタクリレート、ビス(ヒドロキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン=アクリレートメタクリレート及びこれらの混合物等が挙げられる。なお、これらの成分Iは、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0106】
一方、成分IIは、下記式(2)で表される硫黄原子を有するビス(メタ)アクリレートである。
【0107】
【化2】

【0108】
ただし、上記式(2)において、Ra及びRbはそれぞれ上記式(1)におけるRa及びRbと同様のものである。
また、各Reはそれぞれ独立に炭素数1〜6のアルキレン基を表わす。
さらに、各Arはそれぞれ独立に炭素数が6〜30であるアリーレン基又はアラルキレン基を表わす。なお、各Arの水素原子は、それぞれ独立に、フッ素原子以外のハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0109】
また、各X1は、それぞれ独立に、酸素原子又は硫黄原子を表わす。
さらに、各X1が全て酸素原子の場合、X2は硫黄原子又はスルホン基(−SO2−)を表わす。一方、各X1のうち少なくとも1つが硫黄原子の場合、X2は硫黄原子、スルホン基、カルボニル基(−CO−)、並びにそれぞれ炭素数1〜12のアルキレン基、アラルキレン基、アルキレンエーテル基、アラルキレンエーテル基、アルキレンチオエーテル基及びアラルキレンチオエーテル基のいずれかを表わす。
また、j及びpはそれぞれ独立して1〜5の整数を表わし、kは0〜10の整数を表わす。また、kが0の場合は、X1は硫黄原子を表わす。
【0110】
上記式(2)で示される成分IIの具体例としては、α,α′−ビス[β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ]−p−キシレン、α,α′−ビス[β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ]−m−キシレン、α,α′−ビス[β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ]−2,3,5,6−テトラクロロ−p−キシレン、4,4′−ビス[β−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ]ジフェニルスルフィド、4,4′−ビス[β−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ]ジフェニルスルホン、4,4′−ビス[β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ]ジフェニルスルフィド、4,4′−ビス[β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ]ジフェニルスルホン、4,4′−ビス[β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ]ジフェニルケトン、2,4′−ビス[β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ]ジフェニルケトン、5,5′−テトラブロモジフェニルケトン、β,β′−ビス[p−(メタ)アクリロイルオキシフェニルチオ]ジエチルエーテル、β,β′−ビス[p−(メタ)アクリロイルオキシフェニルチオ]ジエチルチオエーテル等が挙げられる。なお、これらの成分IIは、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0111】
上述した放射線硬化性成分の中でも、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジメタクリレートは優れた透明性及び耐熱性を有し、特に好適に用いられる。
なお、放射線硬化性成分は1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0112】
また、放射線硬化性成分の使用量は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、組成物A中の上記分散無機成分以外の組成物、即ち、分散シリカ粒子、併用無機成分及びその表面処理剤以外のその他の成分に対して、通常50重量%以下、好ましくは30重量%以下が望ましい。
【0113】
さらに、例えば、組成物Aに、組成物粘度の調整などの目的で、反応性希釈剤を含有させてもよい。反応性希釈剤は、低粘度の液状化合物であって、通常、単官能の低分子化合物である。反応性希釈剤に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができるが、例えば、ビニル基又は(メタ)アクリロイル基を有する化合物や、メルカプタン類などが挙げられる。
【0114】
ただし、反応性希釈剤としては、放射線硬化性を有するものが好ましく、例えば、ビニル基又は(メタ)アクリロイル基を有する化合物などが好ましい。そのような化合物の具体例としては、芳香族ビニル系モノマー類、ビニルエステルモノマー類、ビニルエーテル類、(メタ)アクリルアミド類、(メタ)アクリル酸エステル類、ジ(メタ)アクリレート類が挙げられるが、色相や光線透過性の点で好ましいのは芳香環を有しない構造を有する化合物である。中でも(メタ)アクリロイルモルフォリン、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカン骨格を有する(メタ)アクリレート等の脂環骨格を有する(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の脂肪族(メタ)アクリレートが、良好な色相及び粘度を有する点で、特に好ましく用いられる。
【0115】
また、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基と、(メタ)アクリロイル基と、を併せ持つ化合物も、本目的に使用することができる。これらは、光透過層の被着材への密着性が向上する場合があり好ましい。
なお、反応性希釈剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0116】
また、反応性希釈剤の使用量は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、組成物A中の上記分散無機成分以外の組成物、即ち、分散シリカ粒子、併用無機成分及びその表面処理剤以外のその他の成分に対して、通常0.5重量%以上、好ましくは1重量%以上、また、通常80重量%以下、好ましくは50重量%以下である。少なすぎると希釈効果が小さくなる虞があり、一方、多すぎると光透過層が脆くなりやすく機械強度を低下させる傾向があり、また硬化収縮も大きくなるので好ましくない。
【0117】
さらに、組成物Aには、活性エネルギー線(例えば紫外線)によって進行する重合反応を開始させるために、通常、重合開始剤を含有させることが好ましい。かかる重合開始剤としては光によりラジカルを発生する性質を有する化合物であるラジカル発生剤が一般的であり、重合開始剤に制限は無く公知のものを任意に用いることができる。
【0118】
上記のラジカル発生剤の例としては、ベンゾフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等が挙げられる。これらのうち好ましいのは、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド及びベンゾフェノン等である。
なお、重合開始剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0119】
また、重合開始剤の使用量は組成物Aを硬化させることができる限り任意であるが、放射線硬化性官能基を含有するモノマー及び/又はそのオリゴマーの総和100重量部に対し、通常0.001重量部以上、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.05重量部以上である。但し通常10重量部以下、好ましくは8重量部以下である。この使用量が多すぎると重合反応が急激に進行して光透過層に光学歪みの増大をもたらす虞があるだけでなく、光透過層の色相も悪化する場合がある。また、少なすぎると組成物Aを十分に硬化させることができなくなる場合がある。
なお、電子線によって重合反応を開始させる場合には、上記重合開始剤を用いることもできるが、重合開始剤を使用しない方が好ましい。
【0120】
[3−7.光透過層の形成方法]
[3−7−1.組成物Aの調製]
光透過層は、微小シリカ粒子及びウレタンオリゴマーを少なくとも含有する組成物Aを硬化させることにより形成する。この際、まず組成物Aを調製するが、組成物Aを調製する方法に制限は無く、上記のウレタンオリゴマー中に分散無機成分を均一に分散させることができれば任意の方法を用いることができる。その方法の具体例としては、例えば、以下のような方法が挙げられる。
(1)微小シリカ粒子の粉末を調製し、適当な表面処理を施した後、適当に液状状態にしたウレタンオリゴマーに直接分散させる方法。
(2)適当に液状状態にしたウレタンオリゴマー中で微小シリカ粒子を合成する方法。
(3)液体媒体中において微小シリカ粒子を調製し、該液体媒体にウレタンオリゴマーを溶解させた後、液体媒体のうち溶媒を除去する方法。
(4)液体媒体中にウレタンオリゴマーを溶解させ、該液体媒体中において微小シリカ粒子を調製したのち液体媒体のうち溶媒を除去する方法。
(5)液体媒体中において微小シリカ粒子及びウレタンオリゴマーを調製した後、液体媒体のうち溶媒を除去する方法。
【0121】
上記の組成物Aの調製方法のうち、方法(3)が、透明性が高く保存安定性の良好なものが得られやすいので最も好ましい。
さらに、上記方法(3)においては、具体的には、(a)溶媒、表面処理剤又は希釈剤等の液体媒体中において、アルコキシシランのオリゴマーを加水分解し微小シリカ粒子を合成する工程、(b)微小シリカ粒子を表面処理する工程、(c)ウレタンオリゴマーと微小シリカ粒子とを混合させる工程、及び(d)溶媒を除去する工程、を順次行なうことが好ましい。この製造方法によれば、粒径が揃った微小シリカ粒子が高度に分散された放射線硬化性樹脂組成物を、組成物Aとしてより容易に得ることができる。
【0122】
以下、方法(3)の各工程について、さらに詳細に説明する。
上記(a)の工程では、液体媒体中で、アルコキシシランのオリゴマー、触媒及び水を共存させてアルコキシシランのオリゴマーの加水分解を行ない、微小シリカ粒子を合成する。
液体媒体は特に限定はないが、ウレタンオリゴマーと相溶性があるものが好ましい。具体的には、上述した溶媒、表面処理剤又は希釈剤等が用いられる。中でも、方法(3)においては、溶媒として、好ましくはアルコール類又はケトン類が用いられ、特に好ましくは炭素数1〜4のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン又はメチルイソブチルケトンが用いられる。また、方法(3)において、液体媒体の量は、アルコシシシランのオリゴマーに対して0.3〜10倍用いるのが好ましい。
【0123】
また、触媒としては、上述したものと同様のものが用いられる。なかでも、方法(3)においては、通常、蟻酸、マレイン酸等の有機酸;塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸;及びアセチルアセトンアルミニウム、ジブチルスズジラウレート、ジズチルスズジオクタエート等の金属錯体化合物等の加水分解触媒が使用される。触媒の使用量は、アルコシシシランのオリゴマーに対して0.1〜3重量%が好ましい。
さらに、方法(3)では、水はアルコキシシランのオリゴマーに対して通常10重量%〜50重量%が用いられる。
【0124】
次に、(b)の工程では、微小シリカ粒子を表面処理する。表面処理の具体的方法は任意であるが、通常は、分散無機成分の表面処理として上述したものと同様に、表面処理剤を用いて行なうことができる。したがって、表面処理剤としては、界面活性剤、分散剤、シランカップリング剤等が挙げられる。
【0125】
次に、(c)の工程では、ウレタンオリゴマーと微小シリカ粒子とを混合させる。ただし、上記の通り、(b)の工程でシランカップリング剤を用いて表面処理を行なった場合には、(c)の工程は、(b)の工程の反応が十分に終了してから行なうことが好ましい。また、(b)の工程の反応が充分に終了していることの確認は、反応液中のシランカップリング剤の残存量を測定することで行なうことができる。通常は、反応液中のシランカップリング剤の残存量が、仕込み量に対して10%以下になったときに、(b)の工程における反応が充分に終了したと判断できる。
さらに、(c)の工程は室温(25℃)にて行なうことができるが、ウレタンオリゴマーの粘度が高い場合や、ウレタンオリゴマーの融点が室温(25℃)以上の場合は、30〜90℃に加熱して行なってもよい。混合時間は通常は30分〜5時間が好ましい。
【0126】
次に、(d)の工程においては、主として液体媒体として用いた溶媒やアルコキシシランオリゴマーの加水分解により生成したアルコールなどの溶媒の除去が行われる。ただし必要な範囲で除去されれば良く、必ずしも完全に除去されなくても良く、実質的に溶媒を含有しない程度に除去されていることが好ましい。ここで、実質的に溶媒を含有しないとは、揮発性を有するかもしくは低沸点のいわゆる有機溶剤の含有量が非常に少ない状態を言い、組成物A中の溶媒含有量が、通常5重量%以下、好ましくは3重量%以下、より好ましくは1重量%以下、さらに好ましくは0.1重量%以下のことをいう。簡易的には該有機溶剤の臭気が観測されない状態をいう。
【0127】
また、別の方法としては、組成物Aを100±15μmの膜厚でスピンコートし、70℃、1分加熱後、3J/cm2の紫外線照射又は5Mradの電子線照射、あるいは後述の表面硬化度評価方法による評価が○になる状態まで硬化した後に、硬化物である光透過層中に残存した溶媒の揮発による、泡ないし白濁を生じない事である。
表面硬化度評価方法:組成物Aに規定量の紫外線を照射後、ゴム手袋を装着した右手人差し指と親指で、親指が塗布面側になるようにサンプルを軽くはさみ、親指を塗布面から離したとき、その跡が目視にて観察されない場合を○、薄く観察される場合を△、濃く観察される場合を×とする。
【0128】
また、溶媒を除去する際には、通常は10℃〜75℃の範囲の温度条件下において、溶媒を乾燥させて除去を行なう。温度がこの範囲の下限よりも低いと溶媒の除去が十分に行なわれない虞があり、好ましくない。逆に上限よりも高いと、組成物Aがゲル化しやすくなるため好ましくない。なお、温度は段階的にコントロールしてもかまわない。
さらに、溶媒の除去時間は、1〜12時間が好ましい。
また、溶媒除去時の圧力条件は、20kPa以下、さらに好ましくは10kPa以下の減圧化で除去することが好ましい。さらに、0.1kPa以上で除去することが好ましい。また、圧力は徐々に減圧にしても構わない。
【0129】
以上説明した好ましい調製方法によれば、樹脂組成物(ウレタンオリゴマー等)に後から充填材(微小シリカ粒子等)やシランカップリング剤等の表面処理剤を添加し充填材を分散させる方法に比べて、より粒径が小さい超微粒子を、しかも大量に、凝集させることなく分散させられる利点がある。したがって、得られる放射線硬化性樹脂組成物である組成物Aは、放射線透過性を損なうことなく、樹脂の寸法安定性や機械的強度を高めるために十分な量の微小シリカ粒子が分散されたものとなる。そして、それを硬化させて得られる放射線硬化物である光透過層は、透明性、高表面硬度及び低硬化収縮性を有する。好ましくは加えて、寸法安定性及び密着性を兼ね備え、さらに好ましくは表面硬化度を併せ持つ利点がある。
【0130】
[3−7−2.組成物Aの塗布]
上記のように調製した組成物Aは、記録再生機能層上に、直接、又は、記録再生機能層上に他の層が形成されている場合は当該他の層を介して、塗布され、その後硬化させられて、光透過層が形成されることになる。この際、組成物Aの塗布方法に制限は無く、組成物Aを目的とする光透過層の厚みに合わせて所定の厚さで層形成させることができれば、任意の方法により塗布を行なうことができる。
【0131】
塗布方法の具体例としては、スピンコート法、ディップコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、スプレーコート法などが挙げられる。
また、この際、塗布された組成物Aの層の厚みに制限は無いが、通常10μm以上、好ましくは50μm以上、より好ましくは80μm以上、また、通常1mm以下、好ましくは0.5mm以下、より好ましくは0.3mm以下とすることが望ましい。この塗布された層の厚みは、通常、実質的に硬化後の光透過層の厚みと同じか、又は、硬化収縮を考慮して2%程度厚くする。
さらに、塗布は1回で行なっても良く、2回以上に分けて行なってもよいが、通常は、1回で行なう方が経済的に有利であり、好ましい。
【0132】
[3−7−3.組成物Aの硬化]
上記の記録再生機能層上に塗布されて層となっている組成物Aを硬化させて、光透過層を形成する。組成物Aを硬化させる際には、組成物Aに放射線(活性エネルギー線や電子線)を照射して組成物A中のモノマーやオリゴマーの重合反応を開始させる、いわゆる「放射線硬化」を行なう。
【0133】
組成物Aを放射線硬化により硬化させることができれば、放射線硬化の具体的な手順や条件は任意である。したがって、放射線硬化時の重合反応の形式に制限はなく、例えばラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、配位重合などの公知の任意の重合形式を用いることができる。これら重合形式の例示のうち、最も好ましい重合形式はラジカル重合である。その理由は定かではないが、重合反応の開始が重合系内で均質かつ短時間に進行することによる生成物の均質性によるものと推定される。
【0134】
上記放射線とは、必要とする重合反応を開始する重合開始剤に作用して該重合反応を開始する化学種を発生させる働きを有する電磁波(ガンマ線、エックス線、紫外線、可視光線、赤外線、マイクロ波等)又は粒子線(電子線、α線、中性子線、各種原子線等)である。
例えば、好ましく用いられる放射線の一例としては、エネルギーと汎用光源を使用可能である点とから、紫外線、可視光線及び電子線が好ましく、より好ましくは紫外線及び電子線である。
【0135】
紫外線を用いる場合、通常は、紫外線によりラジカルを発生する光ラジカル発生剤を重合開始剤とし紫外線を放射線として使用する方法が採用される。ここで、光ラジカル発生剤としては、光重合開始剤又は光開始剤と呼ばれている公知の化合物を任意に使用することができる。光ラジカル発生剤の具体例としては、例えば、ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、メチルオルトベンゾイルベンソエイト、4−フェニルベンゾフェノン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、クロロチオキサントン、t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパシ−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、メチルベンゾイルホルメート等が挙げられる。なお、光ラジカル発生剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0136】
さらに、組成物Aを波長380nm〜800nmのレーザーを光源に用いる光記録媒体等に用いる場合は、読み取りに必要なレーザー光が十分に組成物Aを硬化させた光透過層を通過することができるように、光ラジカル発生剤の種類及び使用量を適宜選択して用いることが好ましい。この場合、得られる光透過層がレーザー光を吸収し難い、短波長感光型光ラジカル発生剤を光ラジカル発生剤として使用することが特に好ましい。この短波長感光型光ラジカル発生剤の具体例としては、例えば、ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、メチルオルトベンゾイルベンゾエイト、4−フェニルベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、メチルベンゾイルホルメート等が挙げられる。なお、これらも1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0137】
組成物Aにおいて、光ラジカル発生剤の含有量に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、組成物A中の分散シリカ粒子、併用無機成分及びその表面処理剤を除くその他の成分の合計量100重量部に対して、通常0.001重量部以上、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.1重量部以上、また、通常10重量部以下、好ましくは9重量部以下、より好ましくは7重量部以下が望ましい。光ラジカル発生剤の含有量が上記範囲の下限を下回ると組成物Aの機械物性が不十分となる傾向にあり、また、上限を上回ると組成物Aの膜の放射線硬化性が不良となったり、光透過層が着色して光を利用した情報読み取りが不良となったりする傾向があるためである。
【0138】
この時、必要に応じて増感剤を併用してもよい。増感剤に制限は無く、公知の増感剤を任意に用いることができる。増感剤の具体例を挙げると、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸アミル、4−ジメチルアミノアセトフェノン等が挙げられる。なお、増感剤は1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0139】
さらに、上記紫外線は、例えば、波長が通常200〜400nmの範囲、好ましくは250〜400nmのものを用いることができる。紫外線を照射する装置としては、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、マイクロ波によって紫外線を発生させる構造の紫外線ランプ等、公知の任意の装置を好ましく用いることができる。好ましくは高圧水銀ランプである。該装置の出力は通常10〜200W/cmであり、該装置は、被照射体に対して5〜80cmの距離に設置するようにすると、被照射体の光劣化や熱劣化、熱変形等が少なく、好ましい。
【0140】
また、組成物Aは、電子線によっても好ましく硬化することができ、機械特性、特に引っ張り伸び特性に優れた硬化物を得ることができる。電子線を用いる場合、その光源および照射装置は高価であるものの、開始剤の使用を省略可能であること、及び酸素による重合阻害を受けず、したがって表面硬化度が良好となるため、好ましく用いられる場合がある。電子線照射に用いられる電子線照射装置としては、特にその方式に制限は無く任意の装置を用いることができるが、例えばカーテン型、エリアビーム型、ブロードビーム型、パルスビーム型等が挙げられる。さらに、電子線照射の際の加速電圧は、通常10〜1000kVが好ましい。
【0141】
さらに、放射線硬化時に照射する放射線の強度は、組成物Aを硬化させうる限り任意であるが、通常0.1J/cm2以上、好ましくは0.2J/cm2以上のエネルギーで照射するのが望ましい。また、通常20J/cm2以下、好ましくは10J/cm2以下、より好ましくは5J/cm2以下、さらに好ましくは3J/cm2以下、特に好ましくは2J/cm2以下のエネルギー範囲で照射するのが望ましい。放射線の強度がこの範囲内であれば、組成物Aの種類によって適宜選択可能である。例えば、組成物Aが、ウレタンオリゴマーを含めて、ウレタン結合又はヒドロキシアルキレン基を有するモノマー及び/又はそのオリゴマーを含有する放射線硬化性樹脂組成物である場合、放射線照射強度は2J/cm2以下が好ましい。かかる放射線の照射エネルギーや照射時間が極端に少ない場合は重合が不完全になり、光透過層の耐熱性、機械特性が十分に発現されない虞がある。
【0142】
また、放射線の照射時間も組成物Aを硬化させうる限り任意であるが、通常1秒以上、好ましくは10秒以上とする。ただし、逆に極端に過剰な場合は黄変等光による色相悪化に代表される劣化を生ずる場合がある。したがって、照射時間は通常3時間以下とし、反応促進と生産性の点で好ましくは1時間程度以下とする。
さらに、放射線の照射は、一段階で行なっても良く、あるいは2段階以上に分けて行なってもよい。また、その線源として通常は放射線が全方向に広がる拡散線源を用いる。
【0143】
[3−8.光透過層の物性]
上記のように形成された光透過層は、通常、溶剤等に不溶不融の性質を示し、厚膜化した際であっても光学部材の用途に有利な性質を備え、密着性、表面硬化度に優れていることが好ましい。具体的には、低い光学歪み性(低複屈折性)、高い光線透過率、寸法安定性、高密着性、高表面硬化度及び一定以上の耐熱性を示すことが好ましい。また、硬化収縮が小さいほど好ましい。
【0144】
より詳しく説明する。
光透過層の厚さに制限は無く任意に設定することができるが、通常5mm以下、好ましくは2mm以下、より好ましくは1mm以下、さらに好ましくは500μm以下であり、また、通常0.1μm以上、好ましくは1μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは50μm以上、特に好ましくは70μm以上、最も好ましくは90μm以上である。
【0145】
さらに、光透過層の透明性については、本発明の趣旨に反しない範囲において任意であるが、550nmにおける光路長0.1mm当たりの光線透過率が、通常80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは89%以上であることが望ましい。さらに望ましくは、400nmにおける光路長0.1mm当たりの光線透過率が、通常80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは89%以上である。特に好ましくは、光路長1mm当たりで上記光線透過率を有するものが好ましい。光線透過率の上限は、理想的には100%である。なお、光線透過率は、例えば、ヒューレットパッカード社製HP8453型紫外・可視吸光光度計にて室温で測定すればよい。
【0146】
また、光透過層の表面硬度も任意であるが、JIS K5400に準拠した鉛筆硬度試験による表面硬度が2B以上であるのが好ましい。さらには、HB以上であるのが好ましく、より好ましくはF以上であり、さらに好ましくはH以上である。又、7H以下であるのが好ましい。この場合、光透過層が、ガラスや金属等の無機基板上や樹脂基板で硬化された硬化物であっても上記硬度を満たすのが好ましく、さらに好ましくは、ポリカーボネート等のプラスチック基板上で硬化された硬化物においても上記硬度を満たすのが好ましい。硬度が小さすぎると、表面に傷が付きやすいため好ましくない。硬度が大きすぎること自体の問題はないが、光透過層が脆くなる傾向となり、クラックや剥離が生じやすい傾向となる。
【0147】
さらには、組成物Aを硬化させて光透過層を形成する際の硬化収縮は小さいほど好ましく、通常3体積%以下、好ましくは2体積%以下である。硬化収縮の測定は、一般的には、基材上に組成物Aを塗布し、硬化後に発生する凹反り量を測定する方法で代替される。具体的な測定方法は、直径130mm、厚さ1.2±0.2mmの円形ポリカーボネート板上に、スピンコーターを使用して100±15μmの厚みの組成物Aの膜を形成し、規定量の放射線を照射した後、定盤の上に1時間静置する。静置後、組成物Aの硬化収縮によって生じたポリカーボネート板の凹反りを測定する。凹反りは、1mm以下が好ましく、より好ましくは0.5mm以下であり、さらに好ましくは0.1mm以下である。凹反りの下限値は、理想的には0mmである。なお、「凹反り」とは、ポリカーボネート板上に形成された組成物Aの硬化収縮に伴ってポリカーボネート板が反る際に観測される、定盤からの反り量をいう。「凹反り」の測定は、ポリカーボネート板の複数の点における上記反り量を測定し、それらの測定値を平均して得てもよい。
【0148】
また、光透過層の熱膨張の大きさも任意であるが、熱膨張が小さいほど、より良好な寸法安定性を有していることを意味し、好ましい。例えば、光透過層は、熱膨張の具体的指標の一つである線膨張係数が小さいほど好ましく、通常13×10-5/℃以下、好ましくは12×10-5/℃以下、より好ましくは10×10-5/℃以下、さらに好ましくは8×10-5/℃以下が望ましい。但し、熱膨張係数の下限値は、現実的には2×10-5/℃程度となる。なお、線膨張係数は、例えば、5mm×5mm×1mmの板状試験片を用いて、圧縮法熱機械測定(TMA;SSC/5200型;セイコーインスツルメント社製)にて加重1g、昇温速度10℃/分で測定し、40℃から100℃までの範囲を10℃刻みで線膨張係数を評価し、その平均値を代表値とすることができる。
【0149】
加えて、光透過層の密着性は高いほうが好ましい。なお、密着性の測定方法は、例えば、10cm角の光学研磨ガラス板上に、塗膜ができる量の組成物Aを垂らし、規定量の放射線を照射した後、室温で1時間放置する。硬化した組成物A部分の中央にカッターナイフでガラス表面に到達するように切り込みを入れ、室温で更に14日間放置後、切り込み部の組成物Aの硬化物(光透過層に相当)とガラス表面との界面の剥離が目視で観察されるかどうかにて評価できる。サンプル数を5とし、すべてのサンプルについて剥離が観察されなかった場合を◎、2以上のサンプルについて剥離が観察されなかった場合を○、1のサンプルのみ剥離が観察されなかった場合を△、すべてのサンプルについて剥離が目視で観察された場合を×として評価できる。密着度として好ましいのは○又は◎、さらに好ましくは◎である。又、光学研磨ガラス板上よりも、ポリカーボネート等のプラスチック基板で上記密着性を有するものがさらに好ましい。
【0150】
さらに加えて、光透過層の表面硬化度は、硬い方が好ましい。なお、表面硬化度の測定法は、規定量の紫外線を照射後、ゴム手袋を装着した右手人差し指と親指で、親指が塗布面側になるようにサンプルを軽くはさみ、親指を塗布面から離したとき、その跡が目視にて観察されない場合を○、薄く観察される場合を△、濃く観察される場合を×として測定する。表面硬度としては○が好ましい。
【0151】
また、光透過層の耐熱性については、樹脂硬化物の示差熱分析(DSC)、熱機械測定(TMA)又は動的粘弾性測定により測定されるガラス転移温度が、通常120℃以上、好ましくは150℃以上、より好ましくは170℃以上であることが望ましい。但し、ガラス転移点は、現実的には200℃以下となる。
さらに、光透過層は、各種溶剤に対して溶解しないことが好ましい。代表的にはトルエン、クロロホルム、アセトン、テトラヒドロフランといった溶剤に対して溶解しないことが好ましい。
【0152】
[4.防汚層]
防汚層は、光記録媒体に汚れが付着することを防止するため、光透過層上に形成される層である。また、防汚層は、防汚性及び潤滑機能性、即ち、撥水性及び撥油性を備えることが好ましい。そのため、本発明の光記録媒体では、防汚層は、成分Bを含有して形成されるものである。
ここで、成分Bとは、フッ素原子を含有するアルコキシシラン化合物(以下適宜、「フッ素含有アルコキシシラン化合物」という)、及び/又は、そのフッ素含有アルコキシシラン化合物の加水分解生成物である。
【0153】
[4−1.成分B]
上記の通り、成分Bとは、フッ素含有アルコキシシラン化合物、及び/又は、そのフッ素含有アルコキシシラン化合物の加水分解生成物である。
ここで、フッ素含有アルコキシシラン化合物に特に制限は無く公知の任意のものを用いることができるが、例えば、フルオロアルキル基又はフルオロアリール基を含有するシランカップリング剤が挙げられる。
【0154】
フルオロアルキル基を有するシランカップリング剤の中では、炭素数3〜12のフルオロアルキル基を有するアルコキシシランが好ましい。具体例としては、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリエトキシシラン、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン、(ヘニコサフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン、及び、これらの化合物の多量体、或いは、これらの化合物と他のアルコキシシラン化合物及び/又は水酸基含有化合物とを縮合させた変性体等が挙げられる。
【0155】
また、フルオロアリール基を有するシランカップリング剤の中では、炭素数6〜9のフルオロアリール基を有するアルコキシシランが好ましい。具体例としては、ペンタフルオロフェニルトリエトキシシラン、(ペンタフルオロフェニル)プロピルトリエトキシシラン、及び、これらの化合物の多量体、或いは、これらの化合物と他のアルコキシシラン化合物及び/又は水酸基含有化合物とを縮合させた変性体等が挙げられる。
【0156】
市販品としては、オプツールDSX(ダイキン工業社製)、フロロサーフFS−1000シリーズ、同FS−2000シリーズ、同FG−3000シリーズ、同FG−4000シリーズ、同FG−5000シリーズ(以上 フロロテクノロジー社製)、ノベックEGC−1720(住友スリーエム社製)等が挙げられる。これらの中で、オプツールDSX、フロロサーフFG−5000シリーズ中のFG−5010、ノベックEGC−1720が好ましく、ノベックEGC−1720が最も好ましい。
なお、フッ素含有アルコキシシラン化合物は1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0157】
さらに、成分Bは、フッ素含有アルコキシシラン化合物に代えて、又は、フッ素含有アルコキシシラン化合物と共に、フッ素含有アルコキシシラン化合物の加水分解物を用いるようにしても良い。通常、フッ素含有アルコキシシラン化合物は、水との加水分解反応により、水酸基を生成する。この水酸基は反応性が高いことが多く、このため、上記の加水分解物を用いた防汚層は光透過層への密着性を高めることが可能となる。
【0158】
フッ素含有アルコキシシラン化合物の加水分解反応に要する水に制限は無く、通常の水道水、純水、イオン交換水などの他、水和化合物等の水組成物を混合したものであっても良く、空気中の水でもよい。空気中の水を用いて加水分解を行なった場合、加水分解反応は緩やかに進行する。
【0159】
また、フッ素含有アルコキシシラン化合物の加水分解に際しては、触媒を用いても良い。この加水分解に用いる触媒に制限は無く任意のものを用いることができるが、例えば、金属キレート化合物、有機酸、金属アルコキシド、ホウ素化合物等の触媒成分用いることができる。なお、これらの触媒成分は1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。さらに、これらの触媒成分は、加水分解の直前にフッ素含有アルコキシシラン化合物と共存させても良く、予め少量の水とともに共存させて所望の加水分解反応を進行させるようにしてもよい。
【0160】
これら触媒成分の使用量は、その作用を十分に発揮する範囲であれば特に制限は無く任意であるが、アルコキシシランオリゴマー100重量部に対して、通常0.1重量部以上、好ましくは0.5重量部以上用いることが望ましい。但し、あまり多量でも作用は変わらないため、通常10重量部以下、好ましくは5重量部以下が望ましい。
【0161】
また、防汚層には、上記の成分B並びに溶剤の他、任意の添加剤を含有させても良い。成分Bと共に用いる添加剤に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない範囲において任意であるが、例えば、フッ素原子を含有するその他の化合物やシリコーン化合物などを用いることができる。
【0162】
また、防汚層を形成する前においては、成分B及び適宜使用される添加剤は、通常、溶剤に溶解又は分散した状態の組成物(以下適宜、「塗布用組成物」という)とする。防汚層の形成時に、通常は塗布法を用いるためである。
塗布用組成物に用いる溶媒に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常は、ハロゲン系有機溶媒を用いることが好ましく、中でも、フッ素系溶媒が特に好ましい。好ましい溶剤の具体的な市販品としては、フロリナートFC−87、フロリナートFC−72、フロリナートFC−84、フロリナートFC−77、フロリナートFC−3283、フロリナートFC−40、フロリナートFC−43、フロリナートFC−70、HFE−7100、HFE−7200(以上 住友スリーエム社製)、アサヒクリンAK−225、アサヒクリンAK−225AES、アサヒクリンAE−3000、アサヒクリンAE−3100E、クリンドライ、クリンドライα(以上 旭硝子社製)等が挙げられる。中でも、沸点が80〜170℃の範囲にあって蒸発速度が適切で、かつ塗れ広がり性が良好な点で、フロリナートFC−3283、フロリナートFC−40が最も好ましい。
【0163】
さらに、成分B及び塗布用組成物の組成も、本発明の効果を著しく損なわない範囲において任意である。
ただし、塗布用組成物中の固形分、即ち、フッ素含有アルコキシシラン化合物及び/又はその加水分解生成物、並びに、適宜用いられる固形の添加剤の重量割合は、通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、より好ましくは0.07重量%以上、また、通常1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、より好ましくは0.2重量%である。この範囲の下限を下回ると防汚層が剥離して防汚性が著しく低下する虞があり、上限を上回ると塗布性が著しく低下したり、適正濃度以上用いても効果が変わらないため経済性が低下したりする虞がある。
【0164】
[4−2.防汚層の形成]
防汚層の形成方法に制限は無く、フッ素含有アルコキシシラン化合物及び/又はその加水分解生成物を含む層を形成することができれば任意の方法を用いることができる。例えば、成分B及び溶剤並びに適宜用いられる添加剤を含む塗布用組成物を用意し、この塗布用組成物を上述した光透過層上に、直接、又は、光透過層上に他の層が形成されている場合は当該他の層を介して、塗布し、溶剤を乾燥させて、成分Bを含む防汚層を形成することができる。
【0165】
塗布用組成物を塗布する際、塗布方法に制限は無く、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法など、公知の方法を任意に用いることができる。
また、乾燥の方法も任意である。例えば、30℃〜100℃の温度で加熱してもよいが、室温で乾燥を行なっても良い。また、例えば、乾燥時間は、好ましくは1日、より好ましくは3日である。十分に乾燥することにより、防汚性と光透過層との密着性を向上させることができる。
【0166】
[4−3.防汚層の物性]
成分Bを含んで形成された防汚層は、防汚性及び密着性に優れており、したがって、本発明の光記録媒体に汚れが付着することを防止することができ、また、上記光透過層上に防汚層を設けた場合、光透過層に対する防汚層の密着性を非常に高くすることができる。
【0167】
防汚性は、定量的には純水接触角、ヘキサデカン接触角等で評価することができる。
上記の防汚層の純水接触角は、通常85度以上、好ましくは95度以上、より好ましくは100度以上である。一方、純水接触角の上限は、現実的には150度となる。
また、上記防汚層のヘキサデカン接触角は、通常40度以上、好ましくは50度以上、より好ましくは60度以上である。一方、ヘキサデカン接触角の上限は、現実的には150度となる。
【0168】
さらに、防汚性の一つとして、上記の防汚層には、指紋が付着しにくく、かつ、指紋が目立たないことが好ましい。定量的には、例えば鼻の脂を親指になじませ、その指を防汚層表面に押し付けた後、光学顕微鏡を用いてその指紋を観察したときに、その観測される油滴が好ましくは30μm以下、より好ましくは10μm以下になっているときに、指紋は付着しにくく、かつ目立たない、と評価することができる。なお、油滴は0μmとなること、つまり油滴が観察されないことが理想的である。
【0169】
一方、防汚層の密着性は、マジックはじき性を調べることで評価できる。具体的には、マジックテストにより評価できる。例えば、マジックペン(三菱PIN―03A)を用いて、通常の強さ(0.05MPa〜0.1MPa)で防汚層表面に書いたときに、マジックがはじいた場合に密着性良好、と評価できる。なお、密着性が不良の場合、マジックで書くと、その剪断応力によって防汚層が剥がれ落ちてしまい、マジックをはじかなくなる。
【0170】
また、防汚層の膜厚に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない範囲において任意であるが、通常5nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常1000nm以下、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下である。この範囲の下限を下回ると防汚性にムラができる虞があり、上限を上回ると防汚層が剥離しやすくなる虞があるためである。
【0171】
さらに、防汚層は、本発明の光記録媒体の記録や再生に用いる光の透過率が高いことが好ましい。例えば、波長550nmの光に対する透過率は、通常85%以上、好ましくは89%以上であることが望ましい。透過率の上限は理想的には100%である。
【0172】
また、上記の防汚層には、通常は防汚層形成の際に用いた溶剤が含まれる。通常、塗布用組成物に含有されていた溶剤は乾燥を行なっても除去しきれず、防汚層に残留する。したがって、例えば塗布用組成物の溶剤としてハロゲン系有機溶剤を用いた場合には、防汚層にもハロゲン系有機溶剤が含まれることになる。
ただし、防汚層中の有機溶剤の割合は通常は少ないほど好ましく、具体的には、防汚層中における溶剤の重量割合は、通常30重量%以下、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下となることが望ましい。但し、有機溶剤の下限値は、現実的には100ppmとなる。なお、本明細書においてppmとは重量を基準とした比率を表わす。
【0173】
[5.他の層]
本発明の光記録媒体には、更に別の層が設けられていてもよい。また、その形成される位置も任意であり、光記録媒体の種類、目的、用途などに応じて適切な位置に形成させることができる。
ただし、上記の防汚層は、光記録媒体の最も外側の層とすることが好ましい。より確実に汚れの付着を防止するためである。
さらに、光透過層は記録再生機能層上に直接設けることが好ましく、防汚層は光透過層上に直接設けることが好ましい。各層の密着性を高くするためである。
【0174】
光透過層と防汚層をあわせた合計膜厚は、いわゆるブルーレイディスクでは、100μm程度とされる。100μmを中心に10μm程度は、これらの層の屈折率を考慮して調整することが好ましい。また、光透過層の膜厚が合計膜厚の80%以上であることが好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。一方、防汚層の膜厚は、合計膜厚の0.1%以上であることが好ましく、1%以上であることがより好ましい。防汚層の膜厚は、合計膜厚の、通常20%以下、好ましくは20%未満、より好ましくは10%以下、特に好ましくは10%未満である。
【0175】
[6.効果等]
以上のように構成された本発明の光記録媒体は、基板と記録再生機能層とを有する光記録媒体に、成分A、即ち、シリカ粒子、及び、ウレタン結合を有するオリゴマーを含有し放射線の照射により硬化しうる組成物Aを硬化させてなる光透過層と、成分B、即ち、フッ素原子を含有するアルコキシシラン化合物、及び/又は、該アルコキシシラン化合物の加水分解生成物を含有する防汚層とを設けるようにしたため、充分な防汚性を備えることができる。さらに、光透過層は組成物Aを塗布し、放射線を照射して硬化させることで製造が可能であるため、製造が簡単であり、また、光透過層の記録再生機能層などへの密着性を高めることができる。
【0176】
以下、従来の技術と対比して、本発明の利点について詳細に説明する。
例えば特許文献2で提案されているような従来の保護層は充分な防汚性を備えていなかった。また、仮に特許文献2記載の組成物にフッ素系化合物を添加した場合であっても、光記録媒体に十分な防汚性を付与することはできなかった。しかし、本発明の光記録媒体は十分な防汚性を有している。
【0177】
さらに、例えば、特許文献1の技術では、光記録媒体の表面に形成する層が3層構成であるため、高コストであり、かつ作業性に劣り、実用性に乏しかった。しかし、本発明の光記録媒体では、防汚性をはじめとした特許文献1では3層構成で果たしていた機能を、光透過層と防汚層との2層で果たすことができるようにしたため、簡単で工業的に有利な方法での製造が可能である。
【0178】
また、本発明の光記録媒体では光透過層をウレタンオリゴマーを用いた放射線硬化により形成しているため、光透過層と記録再生層などとの密着性を向上させることができる。
さらに、従来のように光透過層(特許文献1ではトップ層)に分散無機成分を分散させない場合には光透過層と無機成分を含む防汚層との密着性が低くなる虞があったが、本発明の光記録媒体の防汚層を光透過層の表面に直接形成した場合には、防汚層と光透過層との密着性を向上させることができる。
また、従来は光透過層(例えば、特許文献1のアンカー層)を膜厚化した場合にクラックや反りが生じていたが、本発明の光記録媒体では光透過層をウレタンオリゴマーと分散無機成分とを併用して形成したので、従来のようなクラックや反りの発生を抑制することも可能である。
【実施例】
【0179】
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変形して実施することができる。
【0180】
[評価方法]
(防汚性試験)
接触角計(協和界面科学社製:CA−DT型)を用いて、純水の接触角およびヘキサデカン接触角で評価した。
(密着性試験)
マジックペン(三菱PIN―03A)を用いて、防汚層表面に、0.05MPaの強さでフリーハンドにて2cm長の直線を書いた。マジックのはじきが見られた場合を○、マジックのはじきが見られなかった場合を×とした。
【0181】
[準備]
(a)テトラメトキシシランオリゴマーの調製
アルコキシシランであるテトラメトキシシラン1170gとメタノール370gとを混合した後、0.05%塩酸111gを加え、65℃で2時間加水分解反応を行なった。
次いで、系内温度を130℃に昇温し、生成したメタノールを除去した後、窒素ガスを吹き込みながら温度を徐々に150℃まで上昇させ、そのまま3時間保ってテトラメトキシシランモノマーを除去し、テトラメトキシシランのオリゴマーを得た。
【0182】
(b)シリカゾルの調製
上記の(a)工程によって得られたテトラメトキシシランのオリゴマー122.7gにメタノール225.3gを加えて均一に撹拌した後、アセチルアセトンアルミニウムの5%メタノール溶液を24.6g加え、30分攪拌した。この溶液に脱塩水26.0gを撹拌しながら徐々に滴下させ、そのまま60℃で2時間撹拌し、微小シリカ粒子を成長させた。
次に、シランカップリング剤(表面処理剤)としてアクリロキシプロピルトリメトキシシラン119.6g、マレイン酸4.0部を加え、60℃にて2時間撹拌熟成後、脱塩水53.5g及びアクリロキシプロピルトリメトキシシラン119.6gを徐々に追加してゆき、60℃にて4時間攪拌し、微小シリカ粒子表面にシランカップリング剤を反応させて表面処理を行ない、シリカゾルを調製した。
【0183】
(c)ウレタンアクリレートオリゴマーの合成
2Lの4つ口フラスコにイソホロンジイソシアネート222.3gとジブチルスズラウレート0.06gとを入れ、オイルバスにて70〜80℃に加熱し、温度が一定になるまで静かに撹拌した。温度が一定になったら、ジメチロールブタン酸29.6gとポリテトラメチレングリコール255.0gとの混合物を滴下漏斗にて滴下し、温度を80℃に保ちながら2時間撹拌した。温度を70℃まで下げてから、ヒドロキシエチルアクリレート145.0gとメトキノン0.3gの混合物を滴下漏斗にて滴下し、滴下が終わったら温度を80℃に保ち、10時間撹拌させ、ウレタンオリゴマーとしてウレタンアクリレートオリゴマーを合成した。合成後すぐにイソボルニルアクリレート217.4gを加えて攪拌し、ウレタン樹脂組成物を調製した。
【0184】
(d)光透過層用シリカ含有組成物(成分A)の調製
500ccナスフラスコに、(b)工程で調製したシリカゾルを79.7g、及び、(c)工程で調製したウレタン樹脂組成物を53.2g、並びに、放射線硬化成分として、ポリプロピレングリコールジアクリレート(新中村化学工業株式会社製:APG400:分子量 約500)を10.6g(全樹脂成分の10重量%)、イソボルニルアクリレートを31.9g、及び、ヒドロキシエチルアクリレートを10.6g、並びに、光ラジカル発生剤として、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを2.5g、及び、ベンゾフェノンを2.5gそれぞれ添加し、室温にて2時間撹拌して透明な放射線硬化性樹脂組成物を得た。更に、この放射線硬化性樹脂組成物を、減圧下50℃で1時間エバポレーションし、放射線硬化性樹脂組成物に含まれる低沸点成分を除去して、成分Aとして光透過層用シリカ含有組成物を調製した。
【0185】
(e)光透過層形成用のシリカ非含有組成物の調製
上記の(c)工程で調製したウレタン樹脂組成物を53.2g、並びに、放射線硬化成分として、ポリプロピレングリコールジアクリレート(新中村化学工業株式会社製:APG400:分子量 約500)を10.6g(全樹脂成分の10重量%)、イソボルニルアクリレートを31.9g、及び、ヒドロキシエチルアクリレートを10.6g、並びに、光ラジカル発生剤として、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを2.5g、及び、ベンゾフェノンを2.5gそれぞれ添加し、室温にて2時間撹拌して、光透過層用シリカ非含有組成物を調製した。
【0186】
(f)防汚層用組成物αの調製
ノベックEGC1720(住友スリーエム社製;固形分濃度0.1重量%)を、防汚層用組成物αとした。なお、ノベックEGC1720の固形分が成分Bである。
【0187】
(g)防汚層用組成物βの調製
フラスコに、オプツールDSX(ダイキン工業社製;固形分濃度20重量%)0.5g、及び、溶剤であるFC−3283(住友スリーエム社製)10gを量り取り、マグネチックスターラーを用いて室温にて30分間攪拌して、防汚層用組成物β(固形分0.1重量%)を調製した。なお、オプツールDSXの固形分が成分Bである。
【0188】
[実施例1]
直径130mm、厚さ1.2mmの円形ポリカーボネート基板上に、スピンコーターを使用して100±15ミクロンの厚みにて、工程(d)で調製した光透過層用シリカ含有組成物(成分A)を塗布し、組成物膜より距離15cmの位置に設置された出力80W/cmの高圧水銀ランプにて、15秒間紫外線を照射して(照射強度は1J/cm2)組成物を硬化させ、光透過層を形成した。
【0189】
1時間室温にて放置後、スピンコーターを使用して1000回転×10秒にて、工程(f)で調製した防汚層用組成物α(成分Bを含む塗布用組成物)を塗布し、そのまま室温にて3日間放置して乾燥させ、防汚層を形成することにより、光記録媒体状積層体を作製した。
得られた光記録媒体状積層体の防汚層の防汚性試験及び密着性試験を行なった。結果を表1に示す。
【0190】
[実施例2]
防汚層用組成物αの代わりに、工程(g)で調製した防汚層用組成物β(成分Bを含む塗布用組成物)を用いた以外は実施例1と同様にして、光記録媒体状積層体を作製した。
得られた光記録媒体状積層体の防汚層の防汚性試験及び密着性試験を行なった。結果を表1に示す。
【0191】
[比較例1]
光透過層用シリカ含有組成物の代わりに、工程(e)で調製した光透過層用シリカ非含有組成物を用いた以外は実施例1と同様にして、光記録媒体状積層体を作製した。
得られた光記録媒体状積層体の防汚層の防汚性試験及び密着性試験を行なった。結果を表1に示す。
【0192】
[比較例2]
防汚層を形成しない以外は実施例1と同様にして、光記録媒体状積層体を作製した。
得られた光記録媒体状積層体の防汚層の防汚性試験及び密着性試験を行なった。結果を表1に示す。
【0193】
【表1】

【0194】
実施例1,2と比較例2とを比べると、実施例1,2の光記録媒体状積層体は、比較例2のものに比べて防汚性が遥かに優れていることが分かる。これにより、組成物Aを硬化させた光透過層と、成分Bを含む防汚層とを備えた光記録媒体状積層体が、防汚性に優れることが確認された。
また、実施例1,2と比較例1とを比べると、実施例1,2の光記録媒体状積層体は、比較例1のものに比べて防汚層の密着性に優れていることが分かる。これにより、組成物Aを硬化させた光透過層と、成分Bを含む防汚層とを備えた光記録媒体状積層体が、光透過層に対する防汚層の密着性に優れることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0195】
本発明は、光記録媒体にかかる任意の分野で広く用いることができる。特に、CD、CD−R、CD−RW、DVD、青色レーザー対応の光記録媒体などに用いて特に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
該基板上に形成された記録再生機能層と、
該記録再生機能層上に形成され、下記成分Aを硬化させてなる光透過層と、
該光透過層上に形成され、下記成分Bを含有する防汚層とを備えた
ことを特徴とする、光記録媒体。
成分A:シリカ粒子と、ウレタン結合を有するオリゴマーとを含有し、放射線の照射により硬化しうる組成物。
成分B:フッ素原子を含有するアルコキシシラン化合物、及び/又は、該アルコキシシラン化合物の加水分解生成物。
【請求項2】
該成分Aに含有される該シリカ粒子が、コロイダルシリカ、又はアルコキシシランのオリゴマーの加水分解物からなるシリカ粒子である
ことを特徴とする、請求項1記載の光記録媒体。
【請求項3】
該成分Aに含有される該シリカ粒子が、0.5nm以上、50nm以下の数平均粒径を有する
ことを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の光記録媒体。
【請求項4】
該成分Aに含有される該シリカ粒子が、シランカップリング剤で表面処理されている
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光記録媒体。
【請求項5】
該成分Bに含有されるフッ素原子を含有する該アルコキシシラン化合物が、フルオロアルキル基又はフルオロアリール基を含有するシランカップリング剤である
ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光記録媒体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の光記録媒体の製造方法であって、
記録再生機能層上で前記成分Aを硬化させて前記光透過層を形成する工程と、
前記光透過層上に、前記成分Bと溶剤を含有する、固形分が0.01重量%以上1重量%以下の組成物を塗布し、乾燥させて前記防汚層を形成する工程とを有する
ことを特徴とする、光記録媒体の製造方法。
【請求項7】
溶媒を含有する液体媒体中において前記シリカ粒子を調製し、前記液体媒体に前記ウレタン結合を有するオリゴマーを溶解させた後、前記液体媒体のうち溶媒を除去して、前記成分Aを調製する工程を有する
ことを特徴とする、請求項6記載の光記録媒体の製造方法。
【請求項8】
前記固形分が、フッ素原子を含有するアルコキシシラン化合物、及び/又は、前記アルコキシシラン化合物の加水分解生成物を含有する
ことを特徴とする、請求項6又は請求項7記載の光記録媒体の製造方法。
【請求項9】
前記溶剤が、ハロゲン系有機溶剤である
ことを特徴とする、請求項6〜8のいずれか1項に記載の光記録媒体の製造方法。

【公開番号】特開2006−164496(P2006−164496A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−324881(P2005−324881)
【出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【出願人】(501495237)三菱化学メディア株式会社 (105)
【Fターム(参考)】