説明

光記録媒体

【課題】繰り返し記録耐久性に優れた光記録媒体を提供する。
【解決手段】光記録媒体は、基板と、光の照射により情報信号の記録および再生が行われる、基板上に形成された情報記録層とを備える。情報記録層は、反射層と、反射層上に形成された誘電体層と、誘電体層上に形成された記録層とを備える。誘電体層が、第1誘電体層および第2誘電体層を備え、反射層側となる第2誘電体層の熱伝導率が、記録層側となる第1誘電体層の熱伝導率比べて高く設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光記録媒体に関する。詳しくは、光の照射により情報信号の記録および再生が行われる光記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、情報記録層にレーザー光を照射することにより、情報信号の読み出しや書き込みが行われる光録媒体が広く普及している。この光記録媒体の情報記録層は、基板上に記録層や誘電体層などが積層されて構成されている。
【0003】
現在、このような光記録媒体において、できるだけ多くの情報を記録可能とすべく記録密度の高密度化が盛んに行われている。これまでの光記録媒体の高密度化は、媒体に集光される光スポット径を小さくすることにより行われている。光スポット径は、使用される光源の波長(λ)と対物レンズの開口数(NA:Numerical Aperture)によって制限されており、ほぼλ/(2NA)に比例する。したがって、高密度化を達成するためには、レーザー光の短波長化、および対物レンズの高NA化が必要とされる。波長に関しては、第1世代光ディスクでは830nmであるのに対して、現在のDVD(Digital Versatile Disc)では650nmまで短波長化されている。また、NAに関しても、第1世代光ディスクではおよそ0.45であるのに対して、DVDでは0.60まで高NA化されている。さらに最近では波長405nmの青色レーザーを光源として用い、NAを0.85まで高めた光記録媒体(Blu-ray Disc(登録商標):BD)が実用化されている。
【0004】
また、一方で、基板の片側に複数の情報記録層を形成(多層化)することにより、記録密度を高めた多層の光学記録媒体も提案されている。この多層の光記録媒体においては、複数の情報記録層の間に光学的な分離層を形成し、レーザー光の焦点を各々の層に合わせることにより、各層独立して記録や再生を行うことが可能である。波長405nm、NA0.85で構成されるBlu-ray Discフォーマットにおいても、2層の光学的情報記録層を形成することにより単層(記録容量25GB)の2倍の50GBの記録容量が達成可能となっている。
【0005】
通常、書換型のBlu-ray Discなどで用いられている記録層には、レーザー光の照射によって結晶相と非晶質相とが可逆的に変化する相変化記録材料が用いられている。この相変化記録材料では、レーザー光の照射によって熱せられた記録層の温度を急峻に低下させることにより、非晶質相(記録マーク)を形成することが可能となる。そのため、相変化記録層に対しレーザー光入射側とは反対側に設けられる反射層は熱拡散層としての役割も担っている。特に波長405nmのレーザー光が用いられている書換型のBlu-ray Discの場合には、波長405nmでの反射率と熱伝導率の大きいAg合金膜が用いられるのが一般的である(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−164965号公報(段落[0053]、段落[0103])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
書換型の光記録媒体においては、記録の度にレーザー光の照射により熱せられた相変化記録層の熱をAg合金膜で放熱するプロセスが繰り返される。そのため、記録回数が多数回に及ぶ場合に、相変化記録層に熱ダメージが蓄積することとなり、結晶相と非晶質相とを可逆的に変化する機能が失われ、繰り返し記録特性が劣化する傾向がある。
【0008】
さらには、2層以上の情報記録層を持つ多層の光記録媒体の場合には、レーザー光の入射面側から遠い情報記録層に対する情報信号の記録および再生は、レーザー光の入射面側に近い情報記録層を通して行われる。そのため、レーザー光の入射側に近い情報記録層には、入射されたレーザー光を透過するような膜設計が要求されることとなり、レーザー光の吸収の大きいAg合金膜を反射層として厚く設けることはできない。基板上に一つの情報記録層しか持たない光記録媒体の反射層は、例えば100nm程度のAg合金膜で形成されるのに対し、レーザー光の入射側に近い情報記録層の反射膜は、透過率確保の観点から、例えば10nm程度のAg合金膜で形成される。そのようなAg合金膜の膜厚が薄い情報記録層の場合には、情報の記録の際にレーザー光の照射により熱せられた相変化記録層の熱をAg合金膜で放熱することができずに、繰り返し記録特性の劣化が顕著となる。
【0009】
したがって、この発明の目的は、繰り返し記録耐久性に優れた光記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するために、第1の発明は、
基板と、
光の照射により情報信号の記録および再生が行われる、基板上に形成された情報記録層と
を備え、
情報記録層は、
反射層と、
反射層上に形成された誘電体層と、
誘電体層上に形成された記録層と
を備え、
誘電体層が、第1誘電体層および第2誘電体層を備え、
反射層側となる第2誘電体層の熱伝導率が、記録層側となる第1誘電体層の熱伝導率に比べて高い光記録媒体である。
【0011】
第2の発明は、
基板と、
光の照射により情報信号の記録および再生が行われる、基板上に形成された第1情報記録層および第2情報記録層と
を備え、
第1情報記録層に対する情報信号の記録および再生は、第2情報記録層を透過した光を第1情報記録層に照射することにより行われ、
第2情報記録層は、
反射層と、
反射層上に形成された誘電体層と、
誘電体層上に形成された記録層と
を備え、
誘電体層が、第1誘電体層および第2誘電体層を備え、
反射層側となる第2誘電体層の熱伝導率が、記録層側となる第1誘電体層の熱伝導率に比べて高い光記録媒体である。
【0012】
第3の発明は、
基板と、
光の照射により情報信号の記録および再生が行われる、基板上に形成された情報記録層と
を備え、
情報記録層は、
反射層と、
反射層上に形成された誘電体層と、
誘電体層上に形成された記録層と
を備え、
誘電体層が、ケイ素、インジウムおよびジルコニウムの酸化物を含んでいる光記録媒体である。
【0013】
第4の発明は、
基板と、
光の照射により情報信号の記録および再生が行われる、基板上に形成された第1情報記録層および第2情報記録層と
を備え、
第1情報記録層に対する情報信号の記録および再生は、第2情報記録層を透過した光を第1情報記録層に照射することにより行われ、
第2情報記録層は、
反射層と、
反射層上に形成された誘電体層と、
誘電体層上に形成された記録層と
を備え、
誘電体層が、ケイ素、インジウムおよびジルコニウムの酸化物を含んでいる光記録媒体である。
【0014】
第1の発明では、記録層と反射層との間に第1誘電体層および第2誘電体層を形成し、反射層側となる第2誘電体層の熱伝導率を、記録層側となる第1誘電体層の熱伝導率に比べて高くしている。これにより、光の照射により熱せられた記録層の熱を反射層へと速やかに逃がすことが可能となり、繰り返し記録耐久性を向上することができる。
【0015】
第2の発明では、第2の情報記録層において、記録層と反射層との間に第1誘電体層および第2誘電体層を形成し、反射層側となる第2誘電体層の熱伝導率を、記録層側となる第1誘電体層の熱伝導率に比べて高くしている。したがって、第2情報記録層を透過する光の透過率を制御するために、反射層の膜厚を薄くした場合にも、光の照射により熱せられた記録層の熱を反射層へと速やかに逃がすことが可能となる。したがって、従来、繰り返し記録耐久性の劣化が顕著であった多層光記録媒体においても、繰り返し記録耐久性を向上することができる。
【0016】
第3の発明では、記録層と反射層との間に誘電体層を形成し、この誘電体層がケイ素、インジウムおよびジルコニウムの酸化物を含んでいる。これにより、光の照射により熱せられた記録層の熱を反射層へと速やかに逃がすことが可能となり、繰り返し記録耐久性を向上することができる。
【0017】
第4の発明では、第2の情報記録層において、この誘電体層がケイ素、インジウムおよびジルコニウムの酸化物を含んでいる。したがって、第2情報記録層を透過する光の透過率を制御するために、反射層の膜厚を薄くした場合にも、光の照射により熱せられた記録層の熱を反射層へと速やかに逃がすことが可能となる。したがって、従来、繰り返し記録耐久性の劣化が顕著であった多層光記録媒体においても、繰り返し記録耐久性を向上することができる。
【0018】
第1および第2の発明において、記録層が、光の照射により情報信号を繰り返し記録可能な記録層であることが好ましい。この記録層が、ビスマス、ゲルマニウムおよびテルルを含んでいることが好ましい。また、第1誘電体層および第2誘電体層が、ケイ素、インジウムおよびジルコニウムの酸化物を含み、第2誘電体層に含まれるインジウムの酸化物の比率が、第1誘電体層に含まれるインジウムの酸化物の比率に比して大きいことが好ましい。このようにすることで、反射層側となる第2誘電体層の熱伝導率を、記録層側となる第1誘電体層の熱伝導率に比べて高くできる。また、ビスマス、ゲルマニウムおよびテルルを含む記録層と、ケイ素、インジウムおよびジルコニウムの酸化物を含む第1誘電体層および第2誘電体層とを組み合わせた場合には、記録層の結晶生成を制御し、より良好な信号特性を得ることができる。
【0019】
第3および第4の発明において、記録層が、光の照射により情報信号を繰り返し記録可能な記録層であることが好ましい。この記録層が、ビスマス、ゲルマニウムおよびテルルを含んでいることが好ましい。ビスマス、ゲルマニウムおよびテルルを含む記録層と、ケイ素、インジウムおよびジルコニウムの酸化物を含む誘電体層とを組み合わせることで、記録層の結晶生成を制御し、より良好な信号特性を得ることができる。
【0020】
第2および第4の発明において、第1情報記録層が、ゲルマニウム、アンチモンおよびテルルを含む記録層を備え、第2情報記録層が、ビスマス、ゲルマニウムおよびテルルを含む記録層を備えていることが好ましい。このような構成を有する第1情報信号層と第2情報信号層とを組み合わせことで、優れた記録特性を得ることができる。
【0021】
第1〜第4の発明において、光が入射する入射面と、該入射面とは反対側の裏面とを有し、入射面から裏面に向けて記録層、誘電体層、反射層がこの順序で積層されていることが好ましい。また、情報記録層、または第1情報記録層もしくは第2情報記録層上には、保護層が形成されていることが好ましい。保護層は、基板、薄膜、またはフィルムもしくはシートであることが好ましい。情報信号を記録および再生するためのレーザー光が保護層の側から照射される場合、保護層は、レーザー光を透過可能であることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、この発明によれば、光記録媒体の繰り返し記録耐久性を向上することができる。特に、多層の情報記録層を備える光記録媒体において繰り返し記録耐久性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、この発明の第1の実施形態による光記録媒体の一構成例を示す断面図である。
【図2】図2は、第1情報記録層の一構成例を示す断面図である。
【図3】図3は、第2情報記録層の一構成例を示す断面図である。
【図4】図4は、この発明の第2の実施形態による光記録媒体の一構成例を示す断面図である。
【図5】図5は、この発明の第2の実施形態による光記録媒体の情報記録層の一構成例を示す断面図である。
【図6】図6は、この発明の第3の実施形態による光記録媒体の第2情報記録層の一構成例を示す断面図である。
【図7】図7は、この発明の第4の実施形態による光記録媒体の情報記録層の一構成例を示す断面図である。
【図8】図8は、実施例1、2および比較例1の光記録媒体の繰り返し記録耐久性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態について図面を参照しながら以下の順序で説明する。
1.第1の実施形態(2層光記録媒体の例)
2.第2の実施形態(単層光記録媒体の例)
3.第3の実施形態(反射層−記録層間に単層の誘電体層を備える2層光記録媒体の例)
4.第4の実施形態(反射層−記録層間に単層の誘電体層を備える単層光記録媒体の例)
【0025】
<1.第1の実施形態>
[光記録媒体の構成]
図1は、この発明の第1の実施形態による光記録媒体の一構成例を示す。この光記録媒体は、データの消去や書換が可能である書換型の光記録媒体であり、図1に示すように、第1情報記録層(L0層)2、中間層3、第2情報記録層(L1層)4、保護層であるカバー層5がこの順次で基板1上に積層された構成を有する。
【0026】
この光記録媒体では、カバー層5側から第1情報記録層2または第2情報記録層4にレーザー光を照射することによって、情報信号の記録および再生が行われる。例えば、400nm〜410nmの波長を有するレーザー光が0.84〜0.86の開口数を有する対物レンズ10により集光され、カバー層5側から第1情報記録層2または第2情報記録層4に照射されることで、情報信号の記録または再生が行われる。このような光記録媒体としては、例えばBD−RE(Blu-ray Disk ReWritable)が挙げられる。
【0027】
この光記録媒体は、レーザー光が入射される入射面と、この入射面とは反対側の裏面とを有している。そして、入射面を基準として、手前側に第2情報記録層4が配置され、奥側に第1情報記録層2が配置されている。第2情報記録層4は、第1情報記録層2に照射されるレーザー光を透過可能に構成された半透明層である。したがって、第1情報記録層2に対する情報信号の記録および再生は、第2情報記録層4を透過したレーザー光を第1情報記録層2に照射することにより行われることになる。
【0028】
以下、光記録媒体を構成する基板1、第1情報記録層2、中間層3、第2情報記録層4、カバー層5について順次説明する。
【0029】
(基板)
基板1は、中央に開口(以下センターホールと称する)が形成された円環形状を有する。この基板1の一主面は、例えば、凹凸面となっており、この凹凸面上に第1情報記録層2が成膜される。以下では、凹凸面のうち凹部をイングルーブGin、凸部をオングルーブGonと称する。
【0030】
このイングルーブGinおよびオングルーブGonの形状としては、例えば、スパイラル状、同心円状などの各種形状が挙げられる。また、イングルーブGinおよび/またはオングルーブGonが、例えば、アドレス情報を付加するためにウォブル(蛇行)されている。
【0031】
基板1の直径は、例えば120mmに選ばれる。基板1の厚さは、剛性を考慮して選ばれ、好ましくは0.3mm以上1.3mm以下から選ばれ、より好ましくは0.6mm以上1.3mm以下から選ばれ、例えば1.1mmに選ばれる。また、センタホールの径(直径)は、例えば15mmに選ばれる。
【0032】
基板1の材料としては、例えば、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂もしくはアクリル系樹脂などの樹脂材料またはガラスを使用できるが、コストなどの点を考慮すると、樹脂材料を使用することが好ましい。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、シクロオレフィンポリマー(例えばゼオネックス(登録商標))を用いることができる。
【0033】
(第1情報記録層)
図2は、第1情報記録層の一構成例を示す。図2に示すように、第1情報記録層2は、例えば、反射層11、第2誘電体層12、第1誘電体層13、記録層14、第1誘電体層15、第2誘電体層16、第3誘電体層17をこの順序で基板1上に積層してなる積層膜である。
【0034】
反射層11を構成する材料としては、例えば、Al、Ag、Au、Ni、Cr、Ti、Pd、Co、Si、Ta、W、Mo、Geなどの単体、またはこれらの合金を主成分とするものを挙げることができる。これらのうち、特にAl系、Ag系、Au系、Si系、Ge系の材料が実用性の面から好ましい。合金としては、例えばAl−Ti、Al−Cr、Al−Cu、Al−Mg−Si、Ag−Nd−Cu、Ag−Pd−Cu、Ag−Pd−Ti、Si−Bなどが好適に用いられる。これらの材料のうちから、光学特性および熱特性を考慮して設定することが好ましい。例えば、単波長領域においても高反射率を有する点を考慮すると、Al系またはAg系の材料を用いることが好ましい。
【0035】
第1誘電体層13、第2誘電体層12、第1誘電体層15、第2誘電体層16および第3誘電体層17は、記録層14を保護するとともに、光学的特性および熱的安定性などを制御する層である。これらの誘電体層を構成する誘電体材料としては、例えば、Si、In、Zr、Cr、Sn、Ta、AlもしくはNbなどの酸化物、SiもしくはAlなどの窒化物、Znなどの硫化物、またはこれらの誘電体材料を2種以上混合したものを用いることができる。具体的には、SiN、ZnS−SiO2、AlN、Al23、SiO2、Cr23、In23、ZrO2、SiO2−In23−ZrO2(以下適宜SIZと称する)、SiO2−Cr23−ZrO2(以下適宜SCZと称する)、TiO2、Nb25などを用いることができる。第1誘電体層13および第1誘電体層15が、互いに異なる材料から構成されるようにしてもよい。また、第2誘電体層12および第2誘電体層16が、互いに異なる材料から構成されるようにしてもよい。
【0036】
記録層14は、例えば、レーザー光の照射により情報信号を繰り返し記録可能な記録層である。具体的には、記録層14は、例えば、レーザー光の照射により非晶質相と結晶相との間を可逆的に変化させることにより、情報信号の記録および書き換えが行われる相変化記録層である。この相変化記録層の材料としては、例えば、共晶系相変化材料または化合物系相変化材料を用いることができる。具体的には、相変化材料としては、例えば、GeSbTe、SbTe、BiGeTe、BiGeSbTe、AgInSbTeまたはGeSnSbTeなどを主成分とした相変化材料が挙げられる。これらを主成分とした相変化材料に、必要に応じて、Ag、In、CrおよびMnなどの金属材料を1種以上添加するようにしてもよい。
【0037】
(中間層)
基板1に形成された第1情報記録層2上には、例えば、厚さ25μmを有する樹脂層としての中間層3が形成される。この中間層3は、透明性を有する樹脂材料からなり、このような材料としては、例えば、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂またはアクリル系樹脂などのプラスチック材料を用いることができる。中間層3のカバー層5側となる面は、例えば基板1と同様に、イングルーブGinおよびオングルーブGonからなる凹凸面となっている。この凹凸面上に第2情報記録層4が成膜される。
【0038】
この凹状のイングルーブGinおよび凸状のオングルーブGonの形状としては、例えば、スパイラル状、同心円状などの各種形状が挙げられる。また、イングルーブGinおよび/またはオングルーブGonが、例えば、アドレス情報を付加するためにウォブル(蛇行)されている。
【0039】
(第2情報記録層)
図3は、第2情報記録層の一構成例を示す。図3に示すように、第2情報記録層4は、例えば、透過率調整層21、反射層22、第2誘電体層23、第1誘電体層24、記録層25、第1誘電体層26、第2誘電体層27、第3誘電体層28をこの順序で中間層3上に積層してなる積層膜である。
【0040】
透過率調整層21は、第2情報記録層(L1層)の透過率を増幅する層である。透過率調整層21を構成する材料としては、例えば、TiO2、Nb25などの高屈折率材料を用いることができる。
【0041】
反射層22は、入射されたレーザー光を反射し光学特性を向上させるとともに、記録層25に吸収された熱を速やかに放熱させる層である。反射層22を構成する材料としては、例えば、Al、Ag、Au、Ni、Cr、Ti、Pd、Co、Si、Ta、W、Mo、Geなどの単体、またはこれらの合金を主成分とするものを挙げることができる。これらのうち、特にAl系、Ag系、Au系、Si系、Ge系の材料が実用性の面から好ましい。合金としては、例えばAl−Ti、Al−Cr、Al−Cu、Al−Mg−Si、Ag−Pd−Cu、Ag−Pd−Ti、Si−Bなどが好適に用いられる。これらの材料のうちから、光学特性および熱特性を考慮して設定することが好ましい。例えば、単波長領域においても高反射率を有する点を考慮すると、Al系またはAg系の材料を用いることが好ましい。
【0042】
第1誘電体層24、第2誘電体層23、第1誘電体層26、第2誘電体層27および第3誘電体層28は、記録層25を保護するとともに、光学的特性および熱的安定性などを制御する層である。これらの誘電体層を構成する誘電体材料としては、例えば、Si、In、Zr、Cr、Sn、Ta、AlもしくはNbなどの酸化物、SiもしくはAlなどの窒化物、Znなどの硫化物、またはこれらの誘電体材料を2種以上混合したものを用いることができる。具体的には、SiN、ZnS−SiO2、AlN、Al23、SiO2、Cr23、In23、ZrO2、SCZ、SIZ、TiO2、Nb25などを用いることができる。第1誘電体層24および第1誘電体層26が、互いに異なる材料から構成されるようにしてもよい。また、第2誘電体層23および第2誘電体層27が、互いに異なる材料から構成されるようにしてもよい。
【0043】
反射層22に隣接する第2誘電体層23の熱伝導率は、記録層25に隣接する第1誘電体層24の熱伝導率に比べて高く設定されている。これにより、レーザー光の照射により熱せられた記録層25の熱を速やかにAg合金へと逃がすことが可能となり、第2情報記録層4の繰り返し記録耐久性を向上することができきる。第1誘電体層24および第2誘電体層23がSiO2、In23およびZrO2を主成分とする場合、それぞれの誘電体層に含まれるIn23の比率が以下の関係を満たすことが好ましい。すなわち、記録層25に隣接する第1誘電体層24に含まれるIn23の比率をa(mol%)、反射層22に隣接する第2誘電体層23に含まれるIn23の比率をb(mol%)としたとき、a<bの関係を満たすことが好ましい。このような関係を満たすことで、第2誘電体層23の熱伝導率を第1誘電体層24の熱伝導率に比べて高く設定することができる。ここで、比率は、第1誘電体層24または第2誘電体層23に含まれるSiO2とIn23とZrO2との総量を100mol%としている。ここで、熱伝導率は、薄膜の厚さ方向の熱伝導率である。
【0044】
具体的には、第1誘電体層24および第2誘電体層23がSiO2、In23およびZrO2を主成分とする場合、第1誘電体層24が以下の式(1)の組成を有し、第2誘電体層23が以下の式(2)の組成を有することが好ましい。
(SiO2x1(In23y1(ZrO2z1 ・・・(1)
(但し、x1+y1+z1=100、5≦x1≦20、40≦y1≦60、30≦z1≦50)
(SiO2x2(In23y2(ZrO2z2 ・・・(2)
(但し、x2+y2+z2=100、5≦x2≦20、60≦y2≦90、5≦z2≦20)
【0045】
記録層25は、例えば、レーザー光の照射により情報信号を繰り返し記録可能な記録層である。具体的には、記録層25は、例えば、レーザー光の照射により非晶質相と結晶相との間を可逆的に変化させることにより、情報信号の記録および書き換えが行われる相変化記録層である。この相変化記録層の材料としては、例えば、共晶系相変化材料または化合物系相変化材料を用いることができる。具体的には、相変化材料としては、例えば、GeSbTe、SbTe、BiGeTe、BiGeSbTe、AgInSbTeまたはGeSnSbTeなどを主成分とした相変化材料が挙げられる。これらを主成分とした相変化材料に、必要に応じて、Ag、In、CrおよびMnなどの金属材料を1種以上添加するようにしてもよい。
【0046】
第1情報記録層2の記録層14として共晶系相変化材料を主成分とする相変化記録層を用い、第2情報記録層4の記録層25として化合物系相変化材料を主成分とする相変化記録層を用いることが好ましい。このような構成にする場合、共晶系相変化材料としてはGeSbTe系材料を用い、化合物系材料としてBiGeTe系材料を用いることが好ましい。このような構成を有する記録層14と記録層25とを組み合わせることで、記録特性を向上することができるからである。
【0047】
化合物系相変化材料であるBiGeTe系材料としては、以下の式(3)に示す組成を有するものが好ましい。
BixGeyTez ・・・(3)
(但し、x+y+z=100、2≦x≦10、35≦y≦45、45≦z≦55である。)
【0048】
(カバー層)
保護層であるカバー層5は、例えば、紫外線硬化樹脂などの感光性樹脂を硬化してなる樹脂層である。この樹脂層の材料としては、例えば、紫外線硬化型のアクリル系樹脂が挙げられる。また、円環形状を有する光透過性シートと、この光透過性シートを基板1に対して貼り合わせるための接着層とからカバー層を構成するようにしてもよい。光透過性シートは、記録および再生に用いられるレーザー光に対して、吸収能が低い材料からなることが好ましく、具体的には透過率90パーセント以上の材料からなることが好ましい。光透過性シートの材料としては、例えばポリカーボネート樹脂材料、ポリオレフィン系樹脂(例えばゼオネックス(登録商標))が挙げられる。光透過性シートの厚さは、好ましくは0.3mm以下に選ばれ、より好ましくは3μm〜177μmの範囲内から選ばれる。接着層は、例えば紫外線硬化樹脂または感圧性粘着剤(PSA:Pressure Sensitive Adhesive)からなる。
【0049】
カバー層5の厚さは、好ましくは10μm〜177μmの範囲内から選ばれ、例えば100μmに選ばれる。このような薄いカバー層5と、例えば0.85程度の高NA(numerical aperture)化された対物レンズとを組み合わせることによって、高密度記録を実現することができる。
【0050】
[光記録媒体の製造方法]
次に、上述の構成を有する光記録媒体の製造方法の一例について説明する。
【0051】
まず、例えば射出成形(インジェクション)法またはフォトポリマー法(2P法:Photo Polymerization)などにより、基板1を成形する。次に、例えば、反射層11、第2誘電体層12、第1誘電体層13、記録層14、第1誘電体層15、第2誘電体層16、第3誘電体層17をこの順序で基板1上に積層する。これにより、基板1上に第1情報記録層2が形成される。これらの薄膜の形成方法としては、例えば、スパッタリング法や真空蒸着法などの真空薄膜形成技術を用いることができる。
【0052】
次に、例えばスピンコート法により紫外線硬化樹脂を第1情報記録層2上に均一に塗布する。その後、第1情報記録層2上に均一に塗布された紫外線硬化樹脂に対してスタンパの凹凸パターンを押し当て、紫外線を紫外線硬化樹脂に対して照射して硬化させた後、スタンパを剥離する。これらにより、スタンパの凹凸パターンが紫外線硬化樹脂に転写され、例えばイングルーブGinおよびオングルーブGonが設けられた中間層3が形成される。
【0053】
次に、例えば、透過率調整層21、反射層22、第2誘電体層23、第1誘電体層24、記録層25、第1誘電体層26、第2誘電体層27、第3誘電体層28をこの順序で中間層3上に積層する。これにより、中間層3上に第2情報記録層4が形成される。これらの薄膜の形成方法としては、例えば、スパッタリング法や真空蒸着法などの真空薄膜形成技術を用いることができる。
【0054】
次に、保護層であるカバー層5を第2情報記録層4上に形成する。カバー層5の形成方法としては、例えば、紫外線硬化樹脂などの感光性樹脂をカバー層5上にスピンコートし、紫外線などの光を感光性樹脂に照射することにより、カバー層5を形成する方法を用いることができる。また、光透過性シートを接着剤を用いて、基板1上の凹凸面側に貼り合わせることにより、カバー層5を形成する方法を用いることもできる。具体的には例えば、第2情報記録層4上に塗布された紫外線硬化樹脂などの感光性樹脂を用いて、光透過性シートを基板1上の凹凸面側に貼り合わせることにより、カバー層5を形成する方法を用いることができる。また、光透過性シートを、このシートの一主面に予め均一に塗布された感圧性粘着剤(PSA)を用いて、基板1上の凹凸面側に貼り合わせることにより、カバー層5を形成する方法を用いることもできる。
以上の工程により、図1に示す光記録媒体が得られる。
【0055】
上述したように、この発明の第1の実施形態では、反射層22に隣接する第2誘電体層23の熱伝導率を、記録層25に隣接する第1誘電体層24の熱伝導率よりも高くしている。これにより、レーザー光の照射により熱せられた記録層25の熱を速やかに反射層22へと逃がすことが可能となり、第2の情報記録層4の繰り返し記録耐久性を向上することができる。すなわち、多層の書換型の光記録媒体において、繰り返し記録耐久性を向上することができる。
【0056】
また、第2情報記録層4を透過するレーザー光の透過率を制御するために、反射層22の膜厚を薄くした場合にも、レーザー光の照射により熱せられた記録層25の熱を反射層22へと速やかに逃がすことが可能となる。したがって、多層の書換型の光記録媒体において、繰り返し記録耐久性を向上することができる。
【0057】
また、SiO2とIn23とZrO2とを主成分とする第1誘電体層24および第2誘電体層23を用いた場合には、これら2つの誘電体層におけるIn23の比率を調整することにより、これら2つの誘電体層の熱伝導率を容易に制御することが可能となる。具体的には、それらの誘電体層における比率は、記録層25に隣接する第1誘電体層24のIn23の比率をa(mol%)、反射層22に隣接する第2誘電体層23のIn23の比率をb(mol%)としたときに、a<bの関係を満たすように設定することが好ましい。このように設定することで、反射層22に隣接する第2誘電体層23の熱伝導率を、記録層25に隣接する第1誘電体層24の熱伝導率よりも高く設定できるからである。
【0058】
また、第1誘電体層24および第2誘電体層23としてSiO2とIn23とZrO2とを主成分とするものを用い、記録層25としてBiとGeとTeを主成分とする記録層25を用いることが好ましい。このようにすることで、記録層25の結晶生成を制御し、より良好な信号特性を得ることができる。
【0059】
<2.第2の実施形態>
第2の実施形態による光記録媒体は、単層の情報記録層を有する点において、第1の実施形態とは異なっている。なお、上述の第1の実施形態と同様の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0060】
図4は、この発明の第2の実施形態による光記録媒体の一構成例を示す。図4に示すように、この光記録媒体は、情報記録層6、保護層であるカバー層5がこの順序で基板1上に積層された構成を有する。
【0061】
図5は、情報記録層の一構成例を示す。図5に示すように、情報記録層6は、反射層11と記録層14との間に、第1誘電体層32および第2誘電体層31を備えている。第1誘電体層32、第2誘電体層31はそれぞれ、第1の実施形態における第2情報記録層4の第1誘電体層24、第1誘電体層23と同様である。
【0062】
この第2の実施形態によれば、単層の書換型の光記録媒体において、繰り返し記録耐久性を向上することができる。
【0063】
<3.第3の実施形態>
第3の実施形態による光記録媒体は、第2情報記録層以外は第1の実施形態と同様の構成を有しているので、以下では第2情報記録層について説明する。なお、上述の第1の実施形態と同様の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0064】
図6は、第3の実施形態による光記録媒体の第2情報記録層の一構成例を示す。図6に示すように、第3の実施形態における第2情報記録層7は、反射層22と記録層25との間に単層の誘電体層41を備える点において、第1の実施形態とは異なっている。
【0065】
誘電体層41は、SiO2とIn23とZrO2を主成分としている。誘電体層41に含まれるIn23の比率は、40mol%以上60mol%以下であることが好ましい。ここで、比率は、誘電体層41に含まれるSiO2とIn23とZrO2との総量を100mol%としている。より具体的には、誘電体層41が、以下の式(4)の組成を有していることが好ましい。
(SiO2x1(In23y1(ZrO2z1 ・・・(4)
(但し、x1+y1+z1=100、5≦x1≦20、40≦y1≦60、30≦z1≦50)
【0066】
記録層25は、化合物系相変化材料であるBiGeTe系材料を主成分とすることが好ましい。BiGeTe系材料を主成分とする記録層25と、SiO2とIn23とZrO2を主成分とする誘電体層41とを組み合わせることで、記録層25の結晶生成を制御し、より良好な信号特性を得ることができるからである。
【0067】
第3の実施形態では、反射層22と記録層25との間に、SiO2とIn23とZrO2を主成分とする単層の誘電体層41を形成している。これにより、レーザー光の照射により熱せられた記録層25の熱を反射層22へと速やかに逃がすことが可能となり、繰り返し記録耐久性を向上することができる。また、第1の実施形態に比して誘電体層の積層数を1層減らすことができるので、生産性を向上することができる。
【0068】
<4.第4の実施形態>
図7は、第4の実施形態による光記録媒体の情報記録層の一構成例を示す。なお、上述の第2の実施形態と同様の部分には同一の符号を付して説明を省略する。図7に示すように、第4の実施形態による光記録媒体は、反射層11と記録層14との間に、単層の誘電体層51が形成された情報記録層8を有する点において、第2の実施形態とは異なっている。誘電体層51は、第3の実施形態における誘電体層41と同様である。
【0069】
この第4の実施形態によれば、単層の書換型の光記録媒体において、繰り返し記録耐久性を向上することができる。また、第2の実施形態に比して誘電体層の積層数を1層減らすことができるので、生産性を向上することができる。
【実施例】
【0070】
以下、実施例によりこの発明を具体的に説明するが、この発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0071】
<1.熱伝導率の検討>
まず、SiO2、In23、ZrO2、SiO2−In23−ZrO2の熱伝導率について検討を行った。
【0072】
(試験例1)
SiO2からなる薄膜(誘電体膜)をスパッタリングにより基板上に形成した。
【0073】
(試験例2)
In23からなる薄膜(誘電体膜)をスパッタリングにより基板上に形成した。
【0074】
(試験例3)
ZrO2からなる薄膜(誘電体膜)をスパッタリングにより基板上に形成した。
【0075】
(試験例4)
SiO2−In23−ZrO2からなる薄膜(誘電体膜)をスパッタリングにより基板上に形成した。この際、薄膜の組成比が、SiO2:In23:ZrO2=15mol%:30mol%:55mol%となるように調製した。
【0076】
(試験例5)
SiO2−In23−ZrO2からなる薄膜(誘電体膜)をスパッタリングにより基板上に形成した。この際、薄膜の組成比が、SiO2:In23:ZrO2=15mol%:50mol%:35mol%となるように調製した。
【0077】
(試験例6)
SiO2−In23−ZrO2からなる薄膜(誘電体膜)をスパッタリングにより基板上に形成した。この際、薄膜の組成比が、SiO2:In23:ZrO2=15mol%:70mol%:15mol%となるように調製した。
【0078】
(熱伝導率の測定)
上述ようにして形成した薄膜の熱伝導率を、アルバック理工製TCN−2ωを用いて測定した。その結果を表1に示す。
【0079】
【表1】

【0080】
表1から以下のことがわかる。
SiO2、In23およびZrO2のうちで、In23の熱伝導率が1.31W/mKと最も高いことがわかる。また、SiO2−In23−ZrO2からなる複合誘電体では、In23の比率が多くなるにつれて熱伝導率が高くなることがわかる。
【0081】
<2.記録耐久性の検討>
次に、第2情報記録層(L1層)において記録層と反射層との間の2層の誘電体層を形成し、これらの誘電体層の熱伝導率を変化させて、光記録媒体の耐久性について検討を行った。
【0082】
(実施例1)
まず、直径φ120mm、厚さ1.1mm、トラックピッチ0.32μmの溝を有するポリカーボネート基板を形成した。次に、マグネトロンスパッタリング方式により、以下の組成および膜厚を有する反射層、第2誘電体層、第1誘電体層、記録層、第1誘電体層、第2誘電体層を基板上に順次積層した。これにより、第1情報記録層(L0層)が基板上に形成された。
第2誘電体層:SiN、40nm
第1誘電体層:ZnS−SiO2、10nm
記録層:GeSbTe、12nm
第1誘電体層:ZnS−SiO2、5nm
第2誘電体層:SiN、5nm
反射層:Ag合金、100nm
【0083】
次に、スピンコート法により紫外線硬化樹脂を第1情報記録層上に均一に塗布した。その後、第1情報記録層(L0層)上に均一に塗布された紫外線硬化樹脂に対してスタンパの凹凸パターンを押し当て、紫外線を紫外線硬化樹脂に対して照射して硬化させた後、スタンパを剥離した。これらにより、厚さ25μm、トラックピッチ0.32μmの溝を有する中間層が形成された。次に、マグネトロンスパッタリング方式により、以下の組成および膜厚を有する透過率調整層、反射層、第2誘電体層、第1誘電体層、記録層、第1誘電体層、第2誘電体層、第3誘電体層を中間層上に順次積層した。これにより、第2情報記録層(L1層)が中間層上に形成された。
第3誘電体層:SiN、30nm
第2誘電体層:ZnS−SiO2、10nm
第1誘電体層:SiO2−Cr23−ZrO2、2nm
記録層:Bi8Ge40Te52、6nm
透過率調整層:TiO2、20nm
第1誘電体層:SiO2−In23−ZrO2、2nm(但し、SiO2−In23−ZrO2の組成比は、SiO2:In23:ZrO2=15mol%:50mol%:35mol%である。)
第2誘電体層:SiO2−In23−ZrO2、8nm(但し、SiO2−In23−ZrO2の組成比は、SiO2:In23:ZrO2=15mol%:70mol%:15mol%である。)
反射層:Ag合金、10nm
【0084】
次に、この第1情報記録層(L1層)上に紫外線硬化樹脂によって厚さ75μmの光透過層をスピンコート法により形成した。
以上により、目的とする光記録媒体が得られた。
【0085】
(実施例2)
反射側の誘電体層に含まれるSiO2−In23−ZrO2の組成比が、SiO2:In23:ZrO2=15mol%:50mol%:35mol%となるよう調製する以外は実施例1と同様にして、光記録媒体を得た。
【0086】
(比較例1)
反射側の誘電体層に含まれるSiO2−In23−ZrO2の組成比が、SiO2:In23:ZrO2=15mol%:30mol%:55mol%となるよう調製する以外は実施例1と同様にして、光記録媒体を得た。
【0087】
(比較例2)
第2情報信号層において反射層と記録層との間に、厚さ10nmを有する、SiO2からなる単層の誘電体層を形成する以外は、実施例1と同様にして、光記録媒体を得た。
【0088】
(比較例3)
第2情報信号層において反射層と記録層との間に、厚さ10nmを有する、In23からなる単層の誘電体層を形成する以外は、実施例1と同様にして、光記録媒体を得た。
【0089】
(比較例4)
第2情報信号層において反射層と記録層との間に、厚さ10nmを有する、ZrO2からなる単層の誘電体層を形成する以外は、実施例1と同様にして、光記録媒体を得た。
【0090】
(比較例5)
第2情報信号層において反射層と記録層との間に、以下の組成および膜厚を有する第1誘電体層および第2誘電体層を形成する以外は、実施例1と同様にして、光記録媒体を得た。
第1誘電体層:ZnS−SiO2、2nm
第2誘電体層:SiN、8nm
【0091】
(記録耐久性評価)
上述のようにして得られた実施例1、2および比較例1の光記録媒体の記録耐久性評価を以下のようにして評価した。波長400nm、NA0.85の光学系を搭載した装置を用いて、最短記録マーク長が0.149μmのランダムパターンを繰り返し記録したときのエラーレート(Symbol Error Rate:SER)を測定した。その結果を図8に示す。図8において、横軸は繰り返し回数、縦軸はエラーレート(SER)を示す。なお、図8に示すグラフにおいて、エラーレート1×10-2に引かれた直線は、エラーレートの基準値を示している。すなわち、エラーレートがこの基準値を超えると、一般的なドライブ装置などにおいてエラー訂正が困難となる。
なお、比較例2〜5の光記録媒体では、記録特性、および、保存環境下での腐食信頼性が著しく劣化したため、記録耐久性の評価は行わなかった。
【0092】
図8から以下のことがわかる。
実施例1では、繰り返し記録回数1000回においても、SERがエラー訂正不可能な基準値:SER=1×10-2を大幅に下回っている。したがって、製造のばらつきを含めて十分に余裕のある記録耐久性を確保できる。また、実施例2では、繰り返し記録回数1000回において、SERがエラー訂正不可能な基準値:SER=1×10-2を下回っている。したがって、良好な記録耐久性を確保できる。このように良好は耐久性を確保できるのは、実施例1および実施例2では、相変化記録層に発生した熱をAg合金層に速やかに流すことができるからである。
これに対して、比較例1では、繰り返し記録回数1000回において、SERがエラー訂正不可能な基準値:SER=1×10-2を大幅に上回っている。したがって、記録耐久性を確保できない。このように耐久性を確保できないのは、比較例1では、相変化記録層に発生した熱をAg合金層に速やかに流すことができないからである。
【0093】
以上の結果を総合すると以下のことがわかる。
第2情報信号層において反射層側となる第2誘電体層の熱伝導率を、記録層側となる第1誘電体層の熱伝導率よりも高くすることで、第2情報信号層の繰り返し記録特性を向上できる。
単層の情報記録層を備える光記録媒体において、記録層と反射層との間に第1誘電体層および第2誘電体層を形成し、反射層側となる第2誘電体層の熱伝導率を、記録層側となる第1誘電体層の熱伝導率よりも高くした場合にも、繰り返し記録特性を向上できる。このような効果が単層の光記録媒体でも得られることは、単層の記録媒体に比して膜厚が薄く放熱性の低い反射層(第2情報記録層の反射層)を備える多層の光記録媒体でも繰り返し記録特性が向上されることから容易に推測できる。
第1情報信号層において反射層側となる第2誘電体層の熱伝導率を、記録層側となる第1誘電体層の熱伝導率よりも高くした場合にも、同様に繰り返し記録特性を向上することができる。
第1誘電体層および第2誘電体層がSiO2−In23−ZrO2を主成分とする場合、第2誘電体層に含まれるIn23の比率が、第1誘電体層に含まれるIn23の比率に比して大きいことが好ましい。これにより、反射層側となる第2誘電体層の熱伝導率を、記録層側となる第1誘電体層の熱伝導率よりも高くすることでき、良好な繰り返し記録特性を得ることができる。
記録層と反射層との間に、SiO2−In23−ZrO2を主成分とする単層の誘電体層を形成することで、良好な繰り返し記録特性を得ることができる。
SiO2−In23−ZrO2の混合誘電体を主成分とする第1誘電体層および第2誘電体層と、BiGeTe系材料を主成分とする記録層とを組み合わせることが好ましい。このような構成を有する記録層と第1誘電体層および第2誘電体層とを組み合わせることで、良好な記録特性が得られる。また、SiO2−In23−ZrO2の混合誘電体を主成分とする単層の誘電体層と、BiGeTe系材料を主成分とする記録層とを組み合わせた場合にも、同様に良好な記録特性を得ることができる。
GeSbTe系材料を主成分とする記録層を備える第1情報記録層と、BiGeTe系材料を主成分とする記録層を備える第2情報記録層とを組み合わせることで、良好な記録特性を得ることができる。
【0094】
以上、この発明の実施形態および実施例について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施形態および実施例に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0095】
例えば、上述の実施形態および実施例において挙げた構成、方法、形状、材料および数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、形状、材料および数値などを用いてもよい。
【0096】
また、上述の実施形態の各構成は、この発明の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【0097】
また、上述の実施形態および実施例では、単層または2層の情報記録層を有する光記録媒体に対してこの発明を適用した例について説明したが、この発明はこの例に限定されるものではなく、3層以上の情報記録層を有する光記録媒体に対しても適用可能である。情報記録層を3層以上とする場合、レーザー光の入射面を基準として最も奥側となる情報記録層以外の全てまたは一部の情報記録層に対してこの発明を適用することが好ましい。
【0098】
また、上述の実施形態および実施例では、カバー層側からレーザー光を情報記録層に照射することにより情報信号の記録および再生が行われる光記録媒体に対してこの発明を適用した例について説明したが、この発明はこの例に限定されるものではない。例えば、基板上に情報記録層を有し、基板側からレーザー光を情報記録層に照射することにより情報信号の記録および再生が行われる光記録媒体に対してもこの発明は適用可能である。また、2枚の基板を貼り合わせてなり、一方の基板の側からレーザー光を基板間の情報記録層に照射することにより情報信号の記録および再生が行われる光記録媒体に対してもこの発明は適用可能である。
【0099】
また、上述の実施形態および実施例では、第1誘電体層および第2誘電体層からなる2層の誘電体層を、記録層と反射層との間に形成する例について説明したが、3層以上の誘電体層を記録層と反射層との間に形成するようにしてもよい。このような構成にする場合、記録層と反射層との間に形成された3層以上の誘電体層の熱伝導率が、記録層から反射層に向かって順次高くなるようにすることが好ましい。
【0100】
また、上述の実施形態において、信頼性などの特性を考慮して、記録層と反射層との間に誘電体層、界面層またはそれら以外の層をさらに形成するようにしてもよい。
【0101】
また、上述の実施形態および実施例では、第2情報記録層において、反射層側となる第2誘電体層の熱伝導率を、記録層側となる第1誘電体層の熱伝導率に比べて高くする構成について説明したが、この発明はこの構成に限定されるものではない。すなわち、第1情報記録層において、反射層側となる第2誘電体層の熱伝導率を、記録層側となる第1誘電体層の熱伝導率に比べて高くする構成を採用してもよい。
【0102】
また、上述の実施形態および実施例では、記録層として相変化記録層を用いる場合を例として説明したが、記録層はこれに限定されるものではなく、レーザー光の照射により情報信号を繰り返し記録可能な記録層であれば用いることが可能である。
【0103】
また、上述の実施形態において、必要に応じて、基板の裏面上に防湿膜などの薄膜を形成するようにしてもよい。この薄膜としては、例えば、単層膜または積層膜を用いることができる。積層膜としては、例えば、SiNなどからなる誘電体膜、Alなどからなる金属膜を、この順序で基板の裏面上に積層してなるものを用いることができる。ここで、裏面とは、レーザー光が入射する面とは反対側の面を示す。また、必要に応じて、防湿膜などの薄膜上にレーベル印刷層を形成するようにしてもよい。また、必要に応じて、基板の裏面を粗面化するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0104】
1 基板
2 第1情報記録層(L0層)
3 中間層
4、7 第2情報記録層(L1層)
5 カバー層
6、8 情報記録層
11、22 反射層
12、23、31 第2誘電体層
13、24、32 第1誘電体層
14、25 記録層
15、26 第1誘電体層
16、27 第2誘電体層
17、28 第3誘電体層
21 透過率調整層
41、51 誘電体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
光の照射により情報信号の記録および再生が行われる、上記基板上に形成された情報記録層と
を備え、
上記情報記録層は、
反射層と、
上記反射層上に形成された誘電体層と、
上記誘電体層上に形成された記録層と
を備え、
上記誘電体層が、第1誘電体層および第2誘電体層を備え、
上記反射層側となる上記第2誘電体層の熱伝導率が、上記記録層側となる上記第1誘電体層の熱伝導率に比べて高い光記録媒体。
【請求項2】
上記記録層が、光の照射により情報信号を繰り返し記録可能な記録層である請求項1記載の光記録媒体。
【請求項3】
上記記録層が、ビスマス、ゲルマニウムおよびテルルを含んでいる請求項2記載の光記録媒体。
【請求項4】
上記第1誘電体層および上記第2誘電体層が、ケイ素、インジウムおよびジルコニウムの酸化物を含み、
上記第2誘電体層に含まれるインジウムの酸化物の比率が、上記第1誘電体層に含まれるインジウムの酸化物の比率に比して大きい請求項3記載の光記録媒体。
【請求項5】
光が入射する入射面と、該入射面とは反対側の裏面とを有し、
上記入射面から上記裏面に向けて上記記録層、上記誘電体層、上記反射層がこの順序で積層されている請求項1記載の光記録媒体。
【請求項6】
基板と、
光の照射により情報信号の記録および再生が行われる、上記基板上に形成された第1情報記録層および第2情報記録層と
を備え、
上記第1情報記録層に対する情報信号の記録および再生は、上記第2情報記録層を透過した光を上記第1情報記録層に照射することにより行われ、
上記第2情報記録層は、
反射層と、
上記反射層上に形成された誘電体層と、
上記誘電体層上に形成された記録層と
を備え、
上記誘電体層が、第1誘電体層および第2誘電体層を備え、
上記反射層側となる上記第2誘電体層の熱伝導率が、上記記録層側となる上記第1誘電体層の熱伝導率に比べて高い光記録媒体。
【請求項7】
上記第1情報記録層が、ゲルマニウム、アンチモンおよびテルルを含む記録層を備え、
上記第2情報記録層の上記記録層が、ビスマス、ゲルマニウムおよびテルルを含んでいる請求項6記載の光記録媒体。
【請求項8】
基板と、
光の照射により情報信号の記録および再生が行われる、上記基板上に形成された情報記録層と
を備え、
上記情報記録層は、
反射層と、
上記反射層上に形成された誘電体層と、
上記誘電体層上に形成された記録層と
を備え、
上記誘電体層が、ケイ素、インジウムおよびジルコニウムの酸化物を含んでいる光記録媒体。
【請求項9】
上記記録層が、ビスマス、ゲルマニウムおよびテルルを含んでいる請求項8記載の光記録媒体。
【請求項10】
基板と、
光の照射により情報信号の記録および再生が行われる、上記基板上に形成された第1情報記録層および第2情報記録層と
を備え、
上記第1情報記録層に対する情報信号の記録および再生は、上記第2情報記録層を透過した光を上記第1情報記録層に照射することにより行われ、
上記第2情報記録層は、
反射層と、
上記反射層上に形成された誘電体層と、
上記誘電体層上に形成された記録層と
を備え、
上記誘電体層が、ケイ素、インジウムおよびジルコニウムの酸化物を含んでいる光記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−186516(P2010−186516A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−30384(P2009−30384)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】