光走査装置
【課題】捻り振動を用いた光走査装置において、温度変化による走査特性の変化を自律的に抑制する。
【解決手段】光ビームを反射させる反射面を有する光反射部13と、光反射部13を捻り振動させるための回転軸となる弾性連結部16a,16bとを備え、上記回転軸を中心にして光反射部13を振動させることにより、上記反射面により反射された光ビームを走査する光走査装置において、熱アクチュエータ機構を備える。熱アクチュエータ機構は、例えば弾性連結部16a,16bと一体に構成され、熱膨張率が互いに異なる2種類の材料の部材が積層されてなる構造を有し、自身の収縮または膨張により、弾性連結部16a,16bに関して温度変化に伴うバネ定数の変化を相殺する形状に変化させることで、温度変化に伴う共振周波数の変化を抑制することができる。
【解決手段】光ビームを反射させる反射面を有する光反射部13と、光反射部13を捻り振動させるための回転軸となる弾性連結部16a,16bとを備え、上記回転軸を中心にして光反射部13を振動させることにより、上記反射面により反射された光ビームを走査する光走査装置において、熱アクチュエータ機構を備える。熱アクチュエータ機構は、例えば弾性連結部16a,16bと一体に構成され、熱膨張率が互いに異なる2種類の材料の部材が積層されてなる構造を有し、自身の収縮または膨張により、弾性連結部16a,16bに関して温度変化に伴うバネ定数の変化を相殺する形状に変化させることで、温度変化に伴う共振周波数の変化を抑制することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ビームを走査する光走査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光走査装置の小型化を目的として、MEMS(Micro Electro Mechanical System)技術を利用した光走査装置が種々提案されている。
これに対して本願出願人は、反射面が表面に形成された光反射部と、光反射部に対し所定の隙間を介して設けられた内ジンバルと、内ジンバルに対し所定の隙間を介して設けられた外ジンバルとを備え、光反射部と内ジンバルと外ジンバルとをそれぞれの回転軸を中心に捻り振動可能に構成することで、3自由度連成振動系を構成した光走査装置を提案している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このように構成された光走査装置では、光反射部に固有の周期的加振力を作用させることにより、3自由度捻り振動子を共振状態にできる。そして、光反射部と内ジンバルそれぞれの振動に対応した周期的加振力を重畳して与えることにより、光反射部と内ジンバルをそれぞれ異なる周波数および振幅で振動させ、さらに光反射部の反射面で光を反射させることで、光を2次元走査することができる。
【0004】
ところで、このような光走査装置では、図9に示すように、環境温度が変化すると3自由度捻り振動子の共振周波数の特性が変化し、これにより、走査振幅が低下するという問題があった。これは、回転軸を中心に捻り振動可能に構成するために、弾性変形可能な部材(以下「弾性変形部材」という)を上記回転軸として利用しており、環境温度の変化に応じて弾性変形部材のバネ定数が変化することに起因している。
【0005】
これに対し、環境温度が一定となるように温度制御する構成Aや、光反射部に作用させる周期的加振力(仕様共振周波数)を能動的に調整する構成B等、走査振幅の低下の防止を試みる構成が種々提案されている(例えば、特許文献2〜6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−129068号公報
【特許文献2】特許第4172627号公報
【特許文献3】特開2004−69731号公報
【特許文献4】特許第3902622号公報
【特許文献5】特許第4012535号公報
【特許文献6】特許第4487512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記構成Aを備えた光走査装置では、環境温度に応じてヒータや冷却装置を作動させる必要があるため、消費電力が増大したり、環境温度が目標温度となるまでのタイムラグが生じるため、動作が不安定になったりする可能性があった。
【0008】
また、上記構成Bを備えた光走査装置は、構成Aと比較して、ヒータや冷却装置を必要としない点で相違するものの、温度を検出する温度センサ、及び、温度検出結果に基づいて周期的加振力の調整を行うための制御回路などを用いる点で共通し、この共通点により、装置構成の複雑化に繋がってしまうという問題があった。
【0009】
本発明は、こうした問題に鑑みてなされたものであり、捻り振動を用いた光走査装置において、温度変化による走査特性の変化を自律的に抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載の光走査装置は、光ビームを反射させる反射面を有する反射部と、反射部を捻り振動させるための回転軸を構成する弾性変形部とを備え、上記回転軸を中心にして反射部を振動させることにより、前記反射面により反射された光ビームを走査する光走査装置である。
【0011】
ところで、弾性変形部を回転軸として反射部を捻り振動させる場合の共振周波数fは、下式(1)で表される。
【0012】
【数1】
なお、式(1)において、kは弾性変形部のバネ定数、Jは反射部の慣性モーメントである。そして、弾性変形部のバネ定数kは、下式(2)で表される。
【0013】
【数2】
なお、式(2)において、βは、弾性変形部の断面の形状から決まる係数である。また、aは、弾性変形部の断面の長辺の長さである。また、bは、弾性変形部の断面の短辺の長さである。また、Eは、ヤング率(横弾性係数)である。また、νは、ポアソン比である。また、lは弾性変形部の長さである。即ち、ヤング率Eが変化するとバネ定数kが変化する。
【0014】
さらに、ヤング率Eは、温度をTとして、下式(3)で表される。
【0015】
【数3】
なお、式(3)において、E0は、0℃でのヤング率である。また、Δhtは温度係数である。即ち、温度が変化するとヤング率Eは変化する。
【0016】
したがって、温度Tの変化に伴いヤング率Eが変化し、これに伴い、弾性変形部のバネ定数kが変化すると、共振周波数fが変化する。
これに対し、請求項1に記載の光走査装置では、熱膨張率が互いに異なる2種類の材料の部材が積層されてなる構造を有する熱アクチュエータ機構が、自身の収縮または膨張により、前記弾性変形部に関して温度変化に伴うバネ定数の変化を相殺する形状に変化させる構成によって、温度変化に伴う共振周波数fの変化を抑制することを可能とした。
【0017】
よって、請求項1に記載の光走査装置によれば、温度センサや制御回路などを用いることなく、温度変化による走査特性の変化を自律的に抑制することができる。なお、熱膨張率とは、温度の上昇または下降に対応して物体の長さが変化する割合であるものとする。
【0018】
例えば、図10に示すように、温度変化に伴いヤング率が変化すると共振周波数が変化する(図10の曲線L1を参照)。このときの仕様共振周波数からのずれ量をΔfaとする。一方、ヤング率が一定という条件の下で、温度変化に伴いバネ定数(ねじりバネ定数)が変化すると、共振周波数が変化する(図10の曲線L2を参照)。このときの仕様共振周波数からのずれ量をΔfbとする。
【0019】
したがって、温度変化によりヤング率とバネ定数(ねじりバネ定数)が同時に変化した場合の仕様共振周波数からのずれ量は(Δfa−Δfb)となる。このため、(Δfa−Δfb)が、許容誤差Δεより小さくなるように設計することによって(図10の曲線L3参照)、温度変化に伴う共振周波数の変化を抑制することができる。
【0020】
なお、以下では、熱アクチュエータ機構を構成する2種類の材料の部材のうち、熱膨張率が大きい方を第1弾性部材、熱膨張率が小さい方を第2弾性部材として説明する。
このように定義すると、請求項1に記載の光走査装置において、請求項2に記載のように、例えば、第1弾性部材は、シリコンを材料とする部材であり、第2弾性部材は、例えばシリコンを熱酸化することにより形成される酸化シリコンを材料とする部材である構造を採用してもよい。
【0021】
つまり、シリコン及び酸化シリコンの熱膨張率はそれぞれ、(2.6×10-6)及び(0.5×10-6)であり、熱膨張率が大きく異なる。そして、シリコンの一部を熱酸化することによって、シリコンと酸化シリコンとが積層された構造を形成することができるため、別々に形成された2つの部材を張り合わせるという工程が不要となり、製造工程を簡略化することができる。
【0022】
また、請求項1に記載の光走査装置において、請求項3に記載のように、第1弾性部材および第2弾性部材のうち一方は、自身の歪みの大きさが印加電圧によって調整可能な圧電体である構造を採用してもよい。
【0023】
このような圧電体では、外部から応力を受けない状態で一定電圧を印加したときに生じる歪みの大きさを表す場合の係数として、圧電d定数(圧電歪定数)が用いられる。この圧電歪定数のうち、d31定数は、物体の長さが変化する割合を表し、温度が高くなるほど大きくなることが知られている(例えば「塩嵜忠著『圧電材料とその応用』シーエムシー出版,2002年」参照)。
【0024】
つまり、d31定数は、熱膨張率(線膨張率)と同義的に、温度の上昇または下降に対応して物体の長さが変化する割合であるといえる。また、一定温度下での物体の歪みの大きさは、印加電圧によって調整可能である。このため、外部環境の温度変化範囲(使用温度範囲)が既知であれば、使用温度範囲における前述のずれ量(Δfa−Δfb)が許容誤差Δεより小さくなるd31定数および印加電圧(一定電圧)を選択しておくことによって、温度変化に伴う共振周波数の変化を抑制することができる。
【0025】
ところで、熱アクチュエータ機構は、温度が低くなると、熱膨張率が大きい方の部材が大きく収縮することにより、熱膨張率が異なる2つの部材との接合面を介して、熱膨張率が小さい方の部材が押し縮められ、これにより、熱膨張率が小さい方の部材の外側面が凸になるように撓む。一方、温度が高くなると、熱膨張率が大きい方の部材が大きく膨張することにより、上記接合面を介して、熱膨張率が小さい方の部材が引き伸ばされ、これにより、熱膨張率が大きい方の部材の外側面が凸になるように撓む。
【0026】
このため、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の光走査装置において、請求項4に記載のように、第1弾性部材および第2弾性部材は、捻り振動前の状態の反射面に対する垂直または平行方向に積層されている構造が好ましい。
【0027】
このような構造によれば、第1弾性部材および第2弾性部材の収縮または膨張が弾性変形部の形状変化を介して反射部に作用する方向を単純化できる分、第1弾性部材および第2弾性部材の熱膨張率(素材)や長さ、厚み(形状)等の選択に係る設計を比較的容易にすることができる。
【0028】
また、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の光走査装置において、請求項5に記載のように、熱アクチュエータ機構は、弾性変形部に設けられている構成でもよい。即ち、この構成では、弾性変形部が温度変化に伴うバネ定数の変化を相殺する形状に変化することにより、温度に応じた位置に自動的に反射部を変位させることができる。よって、この構成によれば、熱アクチュエータ機構を弾性変形部と別体に設ける場合と比較して、光走査装置の構成を簡略化することができる。
【0029】
また具体的には、請求項5に記載の光走査装置において、請求項6に記載のように、弾性変形部は、第1弾性部材および第2弾性部材が各々、上記回転軸を中心として対称となるように形成されているとよい。
【0030】
このように構成された光走査装置によれば、温度変化に伴い、弾性変形部の形状が上記回転軸に直交する方向に変化するので、設計に必要なシミュレーションを立て易くなる。なお、上記シミュレーションとしては、例えば実験モーダル解析により、弾性変形部の形状変化に伴う共振周波数を計算する手法がある。
【0031】
さらには、請求項6に記載の光走査装置において、請求項7に記載のように、弾性変形部は、第1弾性部材および第2弾性部材が各々、上記回転軸に対する直交方向に分割され、且つ、上記回転軸に対して、第1弾性部材が外側方向、第2弾性部材が内側方向に各々配置されることにより構成されてもよい。
【0032】
このように構成された光走査装置によれば、温度が低くなると、第1弾性部材が収縮することにより、弾性変形部が上記回転軸に対する内側方向に凸になるように撓むことで、バネ定数kの増加分を相殺し、温度が高くなると、第1弾性部材が膨張することにより、弾性変形部が上記回転軸に対する外側方向に凸になるように撓むことで、バネ定数kの減少分を相殺することができる。
【0033】
あるいは、請求項6に記載の光走査装置において、請求項8に記載のように、弾性変形部は、上記回転軸に対して、第1弾性部材が内側方向、第2弾性部材が外側方向に各々配置され、且つ、第1弾性部材がH状に形成されてなるH状部材と、反射部とH状部材とを連結する弾性リンク部とを有し、弾性リンク部は、H状部材の収縮または膨張に連動して、H状部材の形状が変化する反対方向に変位するように構成されてもよい。
【0034】
このように構成された光走査装置では、温度が低くなると、第1弾性部材が収縮することにより、弾性リンク部が上記回転軸に対する内側方向に傾斜することで、バネ定数kの増加分を相殺し、温度が高くなると、第1弾性部材が膨張することにより、弾性リンク部が上記回転軸に対する外側方向に傾斜することで、バネ定数kの低下分を相殺することができる。また、弾性リンク部が、H状部材の形状の変化に伴って上記回転軸に対する直交方向に生じる力を吸収することができる。よって、この構成によれば、装置の信頼性を高くすることができる。
【0035】
なお、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の光走査装置において、請求項9に記載のように、熱アクチュエータ機構は、弾性変形部に接続され、温度変化に伴う収縮または膨張による自身の変位を伝達する力学的作用により、弾性変形部の形状を変化させるように構成されてもよい。
【0036】
この場合、反射部と弾性変形部とを備える既存の構成に変更を加えることなく、熱アクチュエータ機構を配置するだけでよいため、弾性変形部が熱アクチュエータ機構を有する構成と比較して設計の自由度を向上させることができる。
【0037】
また、請求項9に記載の光走査装置において、請求項10に記載のように、弾性変形部は、熱アクチュエータ機構に接続され、温度変化に伴う熱アクチュエータ機構の力学的作用によって回転軸に対する外側方向および内側方向に変位する変位部材と、反射部と変位部材とを連結する弾性リンク部とを有し、弾性リンク部は、変位部材の変位に連動して、自身の形状が変化するものであってもよい。
【0038】
このように構成された光走査装置では、弾性リンク部が、変位部材の変位に伴って上記回転軸に対する直交方向に生じる力を吸収することができるため、装置の信頼性を高くすることができる。
【0039】
なお、請求項9または請求項10に記載の光走査装置において、請求項11に記載のように、熱アクチュエータ機構は、温度変化に伴って収縮または膨張する変形部材と、変形部材の収縮または膨張による変形部材の変位に対して、弾性変形部における反射部側の端部の変位を拡大させる作用を力学的作用として有する変位拡大部とを有するものであってもよい。
【0040】
このように構成された光走査装置では、変形部材の収縮または膨張による変位が小さい場合であっても、変形部材の構成に変更を加えることなく、変位拡大部を配置するだけでよいため、熱アクチュエータが変形部材だけからなる構成と比較して設計の自由度を向上させることができる。
【0041】
また、請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の光走査装置において、請求項12に記載のように、反射部に連結された上記弾性変形部としての第1弾性変形部材を有し、第1弾性変形部材の回転軸を第1回転軸として反射部を揺動可能に支持する第1支持部と、第1支持部に連結された上記弾性変形部としての第2弾性変形部材を有し、第2弾性変形部材の回転軸を第2回転軸として第1支持部を揺動可能に支持する第2支持部とを備え、第2回転軸は、第1回転軸と交差するように配置され、第2回転軸を中心にして第1支持部を揺動させることにより、反射面により反射された光ビームを走査するようにしてもよい。
【0042】
このように構成された光走査装置によれば、第1回転軸を中心とした揺動と、第2回転軸を中心とした揺動によって、反射部で反射する光ビームを2次元的に走査することができる。したがって、光ビームを2次元走査することができる光走査装置において、少なくとも請求項1に記載の光走査装置と同様の効果を得ることができる。
【0043】
また、請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の光走査装置において、反射部に連結された上記弾性変形部としての第1弾性変形部材を有し、第1弾性変形部材の回転軸を第1回転軸として反射部を揺動可能に支持する第1支持部と、第1支持部に連結された上記弾性変形部としての第2弾性変形部材を有し、第2弾性変形部材の回転軸を第2回転軸として第1支持部を揺動可能に支持する第2支持部と、第2支持部に連結された上記弾性変形部としての第3弾性変形部材を有し、第3弾性変形部材の回転軸を第3回転軸として第2支持部を揺動可能に支持する第3支持部とを備え、第2回転軸は、第1回転軸と交差するように配置され、第3回転軸は、第1回転軸及び第2回転軸と交差するように配置され、反射部、第1支持部、第2支持部、第3支持部、第1弾性変形部材、第2弾性変形部材、及び第3弾性変形部材が、固有の周期的外力が作用した場合に大きい回転角で捻り振動する3自由度連成振動系を構成し、3自由度連成振動系に固有の周期的外力を作用させることにより、第3回転軸を中心にして第2支持部を揺動させるとともに、第2回転軸を中心にして第1支持部を揺動させることにより、反射面により反射された光ビームを走査するようにしてもよい。
【0044】
即ち、上記の光走査装置は、第3支持部を固定端として、第1弾性変形部材、第2弾性変形部材、第3弾性変形部材に対しての捻り自由度を持つ3自由度捻り振動子になっている。
【0045】
3自由度捻り振動子は、理論上3つの振動モードを持つ。具体的には、3つの振動モードはそれぞれ異なる共振周波数を持ち、各共振周波数に対する反射部、第1支持部、第2支持部の捻り振動の角度振幅の比はそれぞれ異なる(これは振動モードと呼ばれる)。したがって、或る振動モードにおいて、第2支持部の角度振幅が大きくなると、この振動モードにおける角度振幅の比に応じて、反射部および第1支持部の角度振幅が大きくなる。
【0046】
そして、3自由度連成振動系に固有の周期的外力を作用させることにより、3自由度捻り振動子を共振状態にできる。
また、3つの振動モードの各々に対応した周波数の周期的加振力を与えれば、それぞれの振動モードを励振できる。また、複数の周波数の周期的加振力を重畳して与えれば、複数の振動モードを励振できる。
【0047】
このため、反射部の角度振幅が大きい振動モードに対応する周期的加振力と、第1支持部の角度振幅が大きい振動モードに対応する周期的加振力とを重畳して与えることにより、反射部で反射する光ビームを2次元的に走査することができる。
【0048】
したがって、このように構成された光走査装置によれば、光ビームを2次元走査することができる光走査装置において、少なくとも請求項1に記載の光走査装置と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施形態としての光走査装置1の全体構成を示す平面図である。
【図2】光走査装置1の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】熱アクチュエータ機構における温度に応じた動作の変化を示す第1の説明図である。
【図4】実施例1における熱アクチュエータ機構の構成及び動作を示す平面図である。
【図5】変形例1−1におけるにおける熱アクチュエータ機構の構成及び動作を示す平面図である。
【図6】捻りバネ部20及び弾性リンク部21の動作を示す説明図である。
【図7】変形例1−2におけるにおける熱アクチュエータ機構の構成及び動作を示す平面図である。
【図8】変形例1−3におけるにおける熱アクチュエータ機構の構成及び動作を示す平面図である。
【図9】光走査装置における周波数と振幅との関係を示すグラフである。
【図10】ヤング率及びねじりバネ定数(温度)と共振周波数との関係を示すグラフである。
【図11】実施例2における熱アクチュエータ機構の構成及び動作を示す平面図である。
【図12】変形例2−1−1における熱アクチュエータ機構の構成及び動作を示す平面図である。
【図13】変形例2−2(1)における熱アクチュエータ機構の構成及び動作を示す平面図である。
【図14】変形例2−2(2)における熱アクチュエータ機構の構成及び動作を示す平面図である。
【図15】変形例2−2(3)における熱アクチュエータ機構の構成及び動作を示す平面図である。
【図16】変形例2−2(4)における熱アクチュエータ機構の構成及び動作を示す平面図である。
【図17】変形例2−3(1)における熱アクチュエータ機構の構成及び動作を示す平面図である。
【図18】変形例2−3(2)における熱アクチュエータ機構の構成及び動作を示す平面図である。
【図19】熱アクチュエータ機構の変形例を示す構成図である。
【図20】熱アクチュエータ機構における温度に応じた動作の変化を示す第2の説明図である。
【図21】変形例2−1−2における熱アクチュエータ機構の構成及び動作を示す平面図である。
【図22】変形例2−1−3における熱アクチュエータ機構の構成及び動作を示す平面図である。
【図23】変形例2−1−4における熱アクチュエータ機構の構成及び動作を示す平面図である。
【図24】変形例2−1−5における熱アクチュエータ機構の構成及び動作を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下に、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
[全体構成]
まず、本発明の実施形態としての光走査装置1の全体構成を説明する。
【0051】
光走査装置1は、図1に示すように、光ビームを走査する光ビーム走査部2と、光ビーム走査部2を支持する支持部3と、光ビーム走査部2に回転駆動力を印加する駆動部4と、光ビーム走査部2の回転角度を検出する角度検出部5とを備える。
【0052】
光ビーム走査部2は、外ジンバル11と内ジンバル12と光反射部13と弾性連結部14a,14bと弾性連結部15a,15bと弾性連結部16a,16bと、櫛歯電極部17,18,19,20とから構成される。
【0053】
これらのうち光反射部13は、ミラー31とミラー支持枠32とから構成される。ミラー31は、円形状であり、アルミ薄膜の鏡面部が表面に形成される。またミラー支持枠32は、円形枠状であり、枠内にミラー31が配置されて固定される。
【0054】
また内ジンバル12は、矩形枠状であり、枠内に光反射部13が配置される。また外ジンバル11は、矩形枠状であり、枠内に内ジンバル12が配置される。
また弾性連結部16aは、弾性変形可能な材料で構成されており、内ジンバル12の枠内に配置され、光反射部13と内ジンバル12とを連結する。また弾性連結部16bは、弾性変形可能な材料で構成されており、内ジンバル12の枠内に配置され、光反射部13を挟んで弾性連結部16aと反対側において、光反射部13と内ジンバル12とを連結する。なお、弾性連結部16aおよび弾性連結部16bは、光反射部13の重心JSを通る同一直線上に配置されており、光反射部13の回転軸hとなる。これにより光反射部13は、回転軸hを中心に捻り振動可能に構成される。
【0055】
また弾性連結部15aは、弾性変形可能な材料で構成されており、外ジンバル11の枠内に配置され、内ジンバル12と外ジンバル11とを連結する。また弾性連結部15bは、弾性変形可能な材料で構成されており、外ジンバル11の枠内に配置され、内ジンバル12を挟んで弾性連結部15aと反対側において、内ジンバル12と外ジンバル11とを連結する。なお、弾性連結部15aおよび弾性連結部15bは、光反射部13と内ジンバル12との重心JSを通る同一直線上に配置されており、光反射部13の回転軸jとなる。これにより内ジンバル12は、回転軸jを中心に捻り振動可能に構成される。
【0056】
また弾性連結部14aは、弾性変形可能な材料で構成されており、外ジンバル11の上辺11aと支持部3とを連結する。また弾性連結部14bは、弾性変形可能な材料で構成されており、外ジンバル11を挟んで弾性連結部14aと反対側において、外ジンバル11の下辺11bと支持部3とを連結する。なお、弾性連結部14aおよび弾性連結部14
bは、光反射部13と内ジンバル12と外ジンバル11との重心JSを通る同一直線上に配置されており、外ジンバル11の回転軸iとなる。これにより外ジンバル11は、回転軸iを中心に捻り振動可能に構成される。
【0057】
また櫛歯電極部17は、外ジンバル11の左辺11cに沿って櫛歯状に形成されている。さらに櫛歯電極部18は、櫛歯電極部17の上方において、左辺11cに沿って櫛歯状に形成されている。
【0058】
また櫛歯電極部19は、外ジンバル11の右辺11dに沿って櫛歯状に形成されている。さらに櫛歯電極部20は、櫛歯電極部19の上方において、右辺11dに沿って櫛歯状に形成されている。
【0059】
次に支持部3は、上辺11aと連結されていない側の弾性連結部14aの端部と連結される上側支持部3aと、下辺11bと連結されていない側の弾性連結部14bの端部と連結される下側支持部3bとから構成される。
【0060】
さらに駆動部4は、櫛歯電極部17と一定間隔を空けて噛み合う櫛歯状に形成された櫛歯電極部4aと、櫛歯電極部19と一定間隔を空けて噛み合う櫛歯状に形成された櫛歯電極部4bとから構成される。
【0061】
また角度検出部5は、櫛歯電極部18と一定間隔を空けて噛み合う櫛歯状に形成された櫛歯電極部5aと、櫛歯電極部20と一定間隔を空けて噛み合う櫛歯状に形成された櫛歯電極部5bとから構成される。
【0062】
次に、光走査装置1の電気的構成について説明する。
光走査装置1は、図2に示すように、光ビーム走査部2を回転駆動するための駆動信号としてのパルス電圧を出力する駆動信号発生回路41と、駆動信号発生回路41により出力された駆動信号を増幅して櫛歯電極部4a,4bに印加する増幅回路42と、櫛歯電極部5a,5bと櫛歯電極部19,20との間の静電容量を電圧値に変換するC−V変換回路43a,43b(以下、C−V変換回路43a,43bをまとめてC−V変換回路43ともいう)と、光ビームの発光源となる半導体レーザ44と、C−V変換回路43から出力される電圧をモニタし、この電圧値に基づいて半導体レーザ44を制御するとともに駆動信号発生回路41を制御する制御回路45とを備える。
【0063】
次に、光走査装置1の動作原理を説明する。
光走査装置1は、支持部3を固定端として、回転軸i,j,hに対しての捻り自由度を持つ3自由度捻り振動子になっている。
【0064】
3自由度捻り振動子は、理論上3つの振動子を持つ。即ち、3つの振動モードはそれぞれ異なる共振周波数を持ち、各共振周波数に対する各フレームの捻り振動の角度振幅の比はそれぞれ異なる(これは振動モードと呼ばれる)。以下、これら3つの振動モードをそれぞれ、振動モード1、振動モード2、振動モード3という。
【0065】
なお、櫛歯電極部4a,4bに電圧を印加すると、櫛歯電極部17,19との間に静電気力が発生する。また、外ジンバル11が1周期振動する間に櫛歯電極部17,19は櫛歯電極部4a,4bに2回最接近する。このため、共振周波数の2倍に近い周期的静電気力が加われば、3自由度捻り振動子を共振状態にできる(以下、共振状態にするための加振力を周期的加振力という)。また、櫛歯電極部17,19が櫛歯電極部4a,4bに接近する毎に、周期的加振力を作用させることができる。
【0066】
そして、振動モード1、振動モード2、振動モード3の各々に対応した周波数の周期的加振力を与えれば、それぞれの振動モードを励振できる。また、複数の周波数の周期的加振力を重畳して与えれば、複数の振動モードを同時に励振できる。
【0067】
ここで、例えば、
振動モード1の共振周波数f1を1000Hz、
振動モード2の共振周波数f2を5000Hz,
振動モード3の共振周波数f3を40000Hz、
振動モード1における外ジンバル11、内ジンバル12、光反射部13の振幅比r1を「1:−20:0.5」、
振動モード2における外ジンバル11、内ジンバル12、光反射部13の振幅比r2を「1:0.01:−50」、
振動モード3における外ジンバル11、内ジンバル12、光反射部13の振幅比r3を「1:0.02:−0.03」、
として設計した場合の、3自由度捻り振動子の動作を説明する。
【0068】
なお、各振動モードにおける振幅比は、左から外ジンバル11、内ジンバル12、光反射部13の順で記述している。例えば、上記の振幅比r1は、外ジンバル11の振幅が「1」とすると、内ジンバル12の振幅が「−20」、光反射部13の振幅が「0.5」となることを示す。
【0069】
また、3自由度捻り振動子の共振状態においては、理論上、各フレーム間(外ジンバル11−内ジンバル12間、内ジンバル12−光反射部13間)の位相角は0度または180度となる。そこで、振幅比を記述する際に、位相角の差が0度の場合は符合を「+」、180度の場合は符合を「−」とする。例えば、上記の振幅比r1は、外ジンバル11と光反射部13との位相角の差が0度となり、外ジンバル11と内ジンバル12との位相角の差が180度となることを示す。
【0070】
そして、各振動モードの共振周波数と振幅比を上記のように設計すると、例えば、振動モード1では、主に内ジンバル12と、内ジンバル12に繋がった光反射部13とが1000Hzで大きく捻り振動する。また例えば、振動モード2では、主に光反射部13が5000Hzで大きく捻り振動する。
【0071】
このため、例えば、光反射部13の鏡面部分でレーザ光を反射させるとともに、振動モード1と振動モード2とを同時に励振させることにより、振動モード2を主走査方向(5000Hz)、振動モード1を副走査方向(1000Hz)として、2次元的にレーザ光を走査することができる。
【0072】
次に、光走査装置1の動作について説明する。
制御回路45による制御に基づいて駆動信号発生回路41が駆動信号を出力すると、増幅回路42によりこの駆動信号の電圧値が増幅されて櫛歯電極部4a,4bに印加される。これにより、櫛歯電極部4a,4bと、櫛歯電極部17,19との間にパルス電圧が印加されて周期的に変化する静電引力が生じ、弾性連結部14a,14bが弾性変形してねじれることにより、光ビーム走査部2が弾性連結部14a,14bを回転軸iとして往復振動する。
【0073】
ここで、駆動信号発生回路41は、光反射部13の角度振幅が、外ジンバル11および内ジンバル12よりも大きい振動モードの共振周波数の2倍の周波数の駆動信号を出力するようになっており、これにより、光ビーム走査部2と弾性連結部14a,14bとからなる振動系が共振し、光ビーム走査部2が共振周波数で往復振動する。
【0074】
なお、光ビーム走査部2が往復振動すると、その動力によって、弾性連結部15a,15bが弾性変形してねじれることにより、外ジンバル11および内ジンバル12が弾性連結部15a,15bを回転軸jとして往復振動するとともに、弾性連結部16a,16bが弾性変形してねじれることにより、内ジンバル12および光反射部13が弾性連結部16a,16bを回転軸hとして往復振動する。
【0075】
そして、この状態で光反射部13に半導体レーザ44から光ビームが照射されると、その光ビームが光反射部13の鏡面で反射されることにより出射されるとともに、光反射部13の往復振動に伴い、光反射部13の回転角度に応じた方向に走査される。
【0076】
一方、外ジンバル11の往復振動に伴い、櫛歯電極部5a,5bと櫛歯電極部18,20との距離も周期的に変化する。これにより、櫛歯電極部5a,5bと櫛歯電極部18,20との間の静電容量が、外ジンバル11の回転角度に応じて変化する。そして制御回路45は、これらの静電容量に基づき、外ジンバル11の回転角度を検出する、なお上述したように、3自由度捻り振動子の共振状態においては、理論上、各フレーム間の位相角は0度または180度であるため、外ジンバル11の回転角度を検出することにより、光反射部13の回転角度を検出することができる。
【0077】
ところで、弾性連結部16a,16bまたは弾性連結部15a,15bまたは弾性連結部14a,14bを単独で回転軸(回転軸hまたは回転軸jまたは回転軸i)として光反射部13のミラー31を捻り振動させる場合の共振周波数fは、下式(1)で表される。以下では、弾性連結部16a,16bを回転軸hとしてミラー31を捻り振動させる場合を代表して説明するが、弾性連結部15a,15b、弾性連結部14a,14bも同様である。
【0078】
【数1】
なお式(1)において、kは弾性連結部16a,16bのバネ定数、Jはミラー31の慣性モーメントである。
【0079】
そして、弾性連結部16a,16bのバネ定数kは、下式(2)で表される。
【0080】
【数2】
なお、式(2)において、βは、弾性連結部16a,16bの断面の形状から決まる係数である。また、aは、弾性連結部16a,16bの断面の長辺の長さである。また、bは、弾性連結部16a,16bの断面の短辺の長さである。また、Eは、ヤング率(横弾性係数)である。また、νはポアソン比である。また、lは弾性連結部16a,16bの長さである。即ち、バネ定数kは、ヤング率Eに比例する。
【0081】
さらに、ヤング率Eは、温度をTとして、下式(3)で表される。
【0082】
【数3】
なお式(3)において、E0は、0℃でのヤング率である。また、Δhtは温度係数である。即ち、温度Tが高くなるほどヤング率Eは低下し、温度Tが低くなるほどヤング率Eは増加する。
【0083】
したがって、温度Tの上昇に伴いヤング率Eが低下し、弾性連結部16a,16bのバネ定数kが低下すると、共振周波数fが低下する。また、温度Tの下降に伴いヤング率Eが増加し、弾性連結部16a,16bのバネ定数kが増加すると、共振周波数fが増加する。
【0084】
これに対し、光走査装置1では、熱膨張率が互いに異なる2種類の材料の部材が積層されてなる構造を有し、温度変化に伴う自身の収縮または膨張により、温度変化に伴うバネ定数k(ヤング率E)の変化を相殺する形状に弾性連結部16a,16bの形状を変化させる熱アクチュエータ機構Xをさらに備える。
【0085】
[熱アクチュエータ機構]
以下、熱アクチュエータ機構Xの構成と動作について説明する。
熱アクチュエータ機構Xは、図3(a)に示すように、シリコンを材料として棒状に形成された第1棒状部材51と、酸化シリコンを材料として棒状に形成された第2棒状部材52とが、その長手方向に直交する方向(以下、積層方向D1という)に沿って積層されて構成されている。また熱アクチュエータ機構Xは、温度が室温である状況下で、第1棒状部材51および第2棒状部材52が初期形状として例えば直線状となるように形成されている。なお、熱アクチュエータ機構Xの初期形状はこれに限るものではない。
【0086】
なお、シリコンおよび酸化シリコンの熱膨張率はそれぞれ、(2.6×10-6)および(0.5×10-6)である。このため、温度が室温より低い状況下では、図3(b)に示すように、シリコンは、酸化シリコンよりも大きく収縮する(矢印D2を参照)。これにより、熱アクチュエータ機構Xは、温度が室温より低くなると、第1棒状部材51と第2棒状部材52との接合面を挟んで第2棒状部材52(酸化シリコン)の外側面が凸になるように撓む。
【0087】
一方、温度が室温より高い状況下では、図3(c)に示すように、シリコンは、酸化シリコンよりも大きく膨張する(矢印D3を参照)。これにより、熱アクチュエータ機構Xは、温度が室温より高くなると、第1棒状部材51と第2棒状部材52との接合面を挟んで第1棒状部材51(シリコン)の外側面が凸になるように撓む。
【0088】
以下では、このような熱アクチュエータ機構Xの構成と動作とを利用して、温度変化に伴うバネ定数kの変化を相殺する形状に弾性連結部16a,16bの形状を変化させる各種の態様を、熱アクチュエータ機構Xの変形例の説明後に例示する。
【0089】
[熱アクチュエータ機構の変形例]
上記例では、第1棒状部材51がシリコンを材料とする部材であり、第2棒状部材52が例えばシリコンを熱酸化することにより形成される酸化シリコンを材料とする部材である構成について説明したが、例えば、以下のような熱アクチュエータ機構Xの構成も考えられる。
【0090】
本変形例の熱アクチュエータ機構Xは、図19(a)−(c)に示すように、シリコンを材料として棒状に形成された第2棒状部材52としてのシリコン部材52aと、第2棒状部材52の表面に積層方向D1に沿って積層された第1棒状部材51としての圧電体部材51aとから構成されている。
【0091】
圧電体部材51aは、絶縁体からなる薄膜圧電素子51bと、薄膜圧電素子51bの表面に積層方向D1に沿って積層された2つの電極51c,51dと有している。なお、電極51c,51dは、薄膜圧電素子51bに比べてさらに厚みが小さく形成されている。
【0092】
また、本実施形態の圧電体部材51aでは、2つの電極51c,51dのうち、シリコン部材52aの上面と薄膜圧電素子51bの下面とに接する方の電極51cとして白金(Pt)が用いられ、薄膜圧電素子51bの上面に接する方の電極51dとして金(Au)が用いられる。そして、Auの電極51dを正極、Ptの電極51cを負極(GND)として、一定電圧が印加されるように構成されている。
【0093】
このように構成された圧電体部材51aでは、例えば温度が室温である状況下において、一対の電極51d,51c間に一定電圧が印加されると、薄膜圧電素子51bが膨張する。この印加電圧を調整することにより、図20(b)に示すように、室温状況下における圧電体部材51aの歪みの大きさを初期値として決めることができる。
【0094】
一方、このように外部から応力を受けない状態で一定電圧を印加したときに生じる歪みの大きさを表す場合の係数として、圧電d定数(圧電歪定数)が定義されている。特に、この圧電歪定数のうち、d31定数は、薄膜圧電素子51bの長さが変化する割合を表し、温度が高くなるほど大きくなることが知られている(例えば「塩嵜忠著『圧電材料とその応用』シーエムシー出版,2002年」参照)。
【0095】
つまり、d31定数は、一定値ではなく、温度依存性を有している。このため、温度が室温より高い状況下では、図20(a)に示すように、薄膜圧電素子51bを室温時の状態から膨張させることができる(矢印D4を参照)。これにより、熱アクチュエータ機構Xでは、温度が室温よりも高くなると、圧電体部材51aとシリコン部材52aとの接合面を挟んで圧電体部材51aの外側面が初期値よりも大きく凸になるように撓む。
【0096】
一方、温度が室温より低い状況下では、図20(c)に示すように、薄膜圧電素子51bを室温時の状態から収縮させることができる(矢印D5を参照)。これにより、熱アクチュエータ機構Xでは、温度が室温よりも低くなると、圧電体部材51aとシリコン部材52aとの接合面を挟んで圧電体部材51aの外側面が初期値よりも小さく凸になるように撓む。
【0097】
なお、以下の実施例および変形例では、説明の重複を避けるため、熱アクチュエータ機構Xが第1棒状部材51および第2棒状部材52を有する構成を前提に説明し、第1棒状部材51を圧電体部材51a、第2棒状部材52をシリコン部材52aにそれぞれ置き換え可能であるものとする。
【0098】
[実施例1]
本実施例1では、熱アクチュエータ機構Xが、弾性連結部16a,16bに形成されている場合を代表して説明する。なお、熱アクチュエータ機構Xは、前述の式(1)〜(3)で説明した通り、弾性連結部15a,15b、弾性連結部14a,14bについても同様の考え方によって適用される。
【0099】
本実施例1の弾性連結部16a,16bは各々、図4(a)に示すように、一対の熱アクチュエータ機構Xの両端部が光反射部13と内ジンバル12とに接続されて構成される。また一対の熱アクチュエータ機構Xは各々、回転軸hを中心に所定距離だけ離間して配置されるとともに、第1棒状部材51および第2棒状部材52が各々、回転軸hを中心として対称となるように配置される。即ち、一対の熱アクチュエータ機構Xは、回転軸hに
対する直交方向に割り箸が割られたように分割され、各々が互いに平行に配置されて構成される。また一対の熱アクチュエータ機構Xは、回転軸hに対して、第1棒状部材51が外側方向、第2棒状部材52が内側方向に各々配置されてなる。
【0100】
なお、図4(a)に示す熱アクチュエータ機構Xでは、第1棒状部材51および第2棒状部材52が、動作前の停止した状態のミラー31の表面に対して、積層方向D1が平行となるように各々配置されているが、動作前の停止した状態のミラー31の表面に対して、積層方向D1が垂直となるように各々配置されてもよい。但し、この場合、第1棒状部材51および第2棒状部材52のうち、一方がミラー31の表面に対して垂直且つ順方向、他方がミラーの表面に対して垂直且つ逆方向に各々配置されることになる。また、このような置き換えは、以下の変形例および実施例においても適宜行うことができるが、説明の重複を避けるために以下の変形例についてはその説明を省略する。
【0101】
このように構成された弾性連結部16a,16bでは、図4(b)に示すように、例えば、温度が室温である状況下で、第1棒状部材51および第2棒状部材52が直線状になる。一方、温度が室温より低くなると、第1棒状部材51と第2棒状部材52との接合面を挟んで第2棒状部材52(酸化シリコン)の外側面が凸になるように撓み、温度が室温より高くなると、第1棒状部材51と第2棒状部材52との接合面を挟んで第1棒状部材51(シリコン)の外側面が凸になるように撓む。
【0102】
このため、低温時には、一対の熱アクチュエータ機構Xが、回転軸hに対する内側方向に凸となるように変形することにより、回転軸hを中心とする弾性連結部16a,16bの径の平均値(曲率)が減少し、これにより弾性連結部16a,16bのねじり剛性(ねじりバネ定数)が低下する。即ち、弾性連結部16a,16bのねじりばね定数が減少することによって、温度低下に伴うバネ定数k(ヤング率E)の増加分が相殺され、これにより温度低下に伴う共振周波数fの変化を抑制することができる。
【0103】
また、高温時には、一対の熱アクチュエータ機構Xが、回転軸hに対する外側方向に凸となるように変形することにより、回転軸hを中心とする弾性連結部16a,16bの径の平均値(曲率)が増加し、これにより弾性連結部16a,16bのねじり剛性(ねじりバネ定数)が増大する。即ち、弾性連結部16a,16bのねじりバネ定数が増加することによって、温度上昇に伴うバネ定数k(ヤング率E)の減少分が相殺され、これにより温度上昇に伴う共振周波数fの変化を抑制することができる。
【0104】
したがって、本実施例1の熱アクチュエータ機構Xによれば、自身の収縮または膨張により、温度変化に伴うバネ定数kの変化を相殺する形状に弾性連結部16a,16bの形状を変化させることができ、これにより温度変化に伴う共振周波数fの変化を抑制することで、温度変化による走査特性の変化を抑制することができる。
【0105】
例えば図10に示すように、温度変化に伴いヤング率E(バネ定数k)が変化すると共振周波数が変化する(図10の曲線L1を参照)。このときの仕様共振周波数からのずれ量をΔfaとする。一方、ヤング率Eが一定という条件の下で、温度変化に伴いミラー31の回転軸h周りのバネ定数(ねじりバネ定数)が変化すると、共振周波数が変化する(図10の曲線L2を参照)。このときの仕様共振周波数からのずれ量をΔfbとする。
【0106】
したがって、温度変化によりヤング率E(バネ定数k)とねじりバネ定数(ねじり剛性)が同時に変化した場合の仕様共振周波数からのずれ量は(Δfa−Δfb)となる。このため、(Δfa−Δfb)が、許容誤差Δεより小さくなるように設計することによって(図10の曲線L3を参照)、温度変化に伴う共振周波数fの変化を抑制することができる。
【0107】
また熱アクチュエータXは、熱膨張率が互いに異なる材料からなる第1棒状部材51と第2棒状部材52を積層して構成されている。したがって、温度が低くなると、熱膨張率が大きい第1棒状部材51が大きく収縮することにより、熱アクチュエータXが、第1棒状部材51と第2棒状部材52との接合面を挟んで、熱膨張率が小さい第2棒状部材52の外側面が凸になるように撓む。一方、温度が高くなると、熱膨張率が大きい第1棒状部材51が大きく膨張することにより、熱膨張率が大きい第1棒状部材51の外側面が凸になるように撓む。これにより、弾性連結部16a,16bの形状を、温度に応じた形状に自律的に変化させることができる。
【0108】
これにより、温度を検出する温度センサ、および温度検出結果に基づいて温度補正を行う制御回路などを用いることなく、温度変化に伴う共振周波数fの変化を抑制することができるため、光走査装置1の構成を簡略化することができる。
【0109】
また、熱膨張率が互いに異なる材料からなる第1棒状部材51および第2棒状部材は、シリコンを材料とするシリコン部材と、シリコンを熱酸化することにより形成される酸化シリコンを材料とする酸化シリコン部材である。シリコンおよび酸化シリコンの熱膨張率はそれぞれ、(2.6×10-6)および(0.5×10-6)であり、熱膨張率が大きく異なる。そして、シリコンの一部を熱酸化することによって、シリコンと酸化シリコンが積層された構造を形成することができるため、別々に形成された2つの部材を張り合わせるという工程が不要となり、製造工程を簡略化することができる。
【0110】
また、第2棒状部材52をシリコン部材52aに置き換えるとともに、第1棒状部材51として、自身の歪みの大きさが印加電圧によって調整可能な圧電体部材51aを採用することができる。この構成によれば、使用温度範囲における前述のずれ量(Δfa−Δfb)が許容誤差Δεより小さくなるように印加電圧(一定電圧)を予め調整しておくことができる点で有利である。
【0111】
なお、この構成では、前述した通り、印加電圧を調整することにより、室温状況下における圧電体部材51aの歪みの大きさを初期値として決めることができる。そして、温度が室温より高い状況下では、薄膜圧電素子51bを室温時の状態から膨張させることができる(矢印D4を参照)。これにより、熱アクチュエータ機構Xでは、温度が室温よりも高くなると、圧電体部材51aとシリコン部材52aとの接合面を挟んで圧電体部材51aの外側面が初期値よりも大きく凸になるように撓む(図20(a)参照)。
【0112】
一方、温度が室温より低い状況下では、薄膜圧電素子51bを室温時の状態から収縮させることができる(矢印D5を参照)。これにより、熱アクチュエータ機構Xでは、温度が室温よりも低くなると、圧電体部材51aとシリコン部材52aとの接合面を挟んで圧電体部材51aの外側面が初期値よりも小さく凸になるように撓む(図20(c)参照)。これにより、弾性連結部16a,16bの形状を、温度に応じた形状に自律的に変化させることができる。
【0113】
また、熱アクチュエータ機構Xでは、第1棒状部材51(またはシリコン部材52a)および第2棒状部材52(または圧電体部材51a)が、動作前の停止した状態のミラー31の表面に対して、積層方向D1が平行または垂直となるように各々配置される。
【0114】
このような構成によれば、第1棒状部材51(またはシリコン部材52a)および第2棒状部材52(または圧電体部材51a)の収縮または膨張が弾性連結部16a,16bの形状変化を介して光反射部13に作用する方向を単純化できる分、第1弾性部材および第2弾性部材の熱膨張率(素材)や長さ、厚み(形状)、圧電体部材51aの素材(d31定数)や印加電圧等の選択に係る設計を比較的容易にすることができる。
【0115】
以上説明した実施形態において、光反射部13が反射部、回転軸hが第1回転軸、回転軸jが第2回転軸、回転軸iが第3回転軸、弾性連結部16a,16bが第1弾性変形部材、弾性連結部15a,15bが第2弾性変形部材、及び弾性連結部14a,14bが第3弾性変形部材、第1棒状部材51が第1弾性部材、第2棒状部材52が第2弾性部材、圧電体部材51aが圧電体、内ジンバル12が第1支持部、外ジンバル11が第2支持部、支持部3が第3支持部の各例に相当する。
【0116】
[変形例1−1]
次に、上記実施例1の弾性連結部16a,16bに関する変形例1−1を説明する。
上記実施例1の弾性連結部16a,16bは各々、一対の熱アクチュエータ機構Xの両端部が光反射部13と内ジンバル12とに接続されて構成されていたが、図5に示す変形例1−1のように、熱アクチュエータ機構Xの両端部のうち、一方の端部と光反射部13、他方の端部と内ジンバル12とを各々連結する弾性リンク部21を備えて構成されてもよい。
【0117】
即ち、本変形例1−1の弾性連結部16a,16bは、一対の熱アクチュエータ機構Xに相当する捻りバネ部20と、捻りバネ部20の両端部を各々、光反射部13および内ジンバル12に連結する弾性リンク部21とから構成される。
【0118】
捻りバネ部20と弾性リンク部21とは、捻りバネ部20が回転軸hを中心に捻り変形するのに対し(図6(a)参照)、弾性リンク部21が1自由度で略直線動作する点で相違する(図6(b)参照)。
【0119】
このように構成された弾性連結部16a,16bによれば、弾性リンク部21を設けることにより、捻りバネ部20が温度変化に伴い変形する際の回転軸h方向の自由度が与えられ、捻りバネ部20がより変形しやすくなり、上記実施例1の効果を得やすくなる。
【0120】
しかしながら、弾性リンク部21を捻りバネ部20の両端部に各々設けると、熱アクチュエータ機構Xの自由度が増加する分、光反射部13に対して不安定な動作を引き起こす可能性もある。したがって、弾性リンク部21を、捻りバネ部20の両端部のうちの一方の端部にだけ設ける構成であってもよい。
【0121】
[変形例1−2]
次に、上記実施例1の弾性連結部16a,16bに関する変形例1−2を説明する。
上記実施例1の弾性連結部16a,16bは各々、分割された一対の熱アクチュエータ機構Xの各部が、平行に配置されて構成されていたが、図7に示す変形例1−2のように、ハの字状またはVの字状に配置されて構成されてもよい。
【0122】
即ち、本変形例1−2の弾性連結部16a,16bは、一対の熱アクチュエータ機構Xに相当する捻りバネ部20と、捻りバネ部20の一方の端部と光反射部13とを連結する第1弾性リンク部21aと、捻りバネ部20の他方の端部と内ジンバル12とを連結する第2弾性リンク部21bとから構成される。
【0123】
そして、第1弾性リンク部21aおよび第2弾性リンク部21bの各々の両端には、捻りバネ部20を構成する第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bの端部が接続される辺部が形成され、これら辺部と第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bとによって台形の形状をなすように構成される。
【0124】
このように構成された弾性連結部16a,16bによれば、捻りバネ部20の形状にトラス効果が加わり、図7の破線で示すように、回転軸hに対する垂直方向の変形自由度に対する剛性が高まり、より安定した捻り振動を得ることができる。なお、第1弾性リンク部21aの辺部と第2弾性リンク部21bの辺部とは、長さが異なっていればよく、いずれが長くてもよい。
【0125】
[変形例1−3]
次に、上記実施例1の弾性連結部16a,16bに関する変形例1−3を説明する。
上記実施例1の弾性連結部16a,16bは、一対の熱アクチュエータ機構Xが分割されて構成されていたが、図8(a)に示す変形例1−3のように、第1捻りバネ部20aと第2捻りバネ部20bとが一体に構成されてもよい。
【0126】
即ち、本変形例1−3の弾性連結部16a,16bは、一対の熱アクチュエータ機構Xに相当する第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bと、第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bの各一方の端部と光反射部13とを連結する一対の第1弾性リンク部21aと、第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bの各他方の端部と内ジンバル12とを連結する一対の第2弾性リンク部21bとから構成される。また第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bは、回転軸hに対して、第2棒状部材52が外側方向、第1棒状部材51が内側方向に各々配置されてなる。
【0127】
そして、第1捻りバネ部20aの第1棒状部材51と第2捻りバネ部20bの第1棒状部材51とが、H状となるように一体に形成されて構成される。
このようなH状部材として構成された弾性連結部16a,16bでは、図8(b)に示すように、温度が室温である状況下で、第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bが直線状になる。一方、温度が室温より低くなると、第1棒状部材51と第2棒状部材52との接合面を挟んで第2棒状部材52(酸化シリコン)の外側面が凸になるように撓み、温度が室温より高くなると、第1棒状部材51と第2棒状部材52との接合面を挟んで第1棒状部材51(シリコン)の外側面が凸になるように撓む。
【0128】
このため、低温時には、第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bが、回転軸hに対する外側方向に凸となるように変形することにより、第1弾性リンク部21aと第2弾性リンク部21bとからなる各々の弾性リンク部21が、回転軸hに対する内側方向に変位(傾斜)する。これにより、回転軸hを中心とする弾性連結部16a,16bの径の平均値(曲率)が減少することで、弾性連結部16a,16bのねじり剛性(ねじりバネ定数)が低下する。即ち、弾性連結部16a,16bのねじりばね定数が減少することによって、温度低下に伴うバネ定数k(ヤング率E)の増加分が相殺され、これにより温度低下に伴う共振周波数fの変化を抑制することができる。
【0129】
また、高温時には、第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bが、回転軸hに
対する内側方向に凸となるように変形することにより、各々の弾性リンク部21が回転軸hに対する外側方向に変位(傾斜)する。これにより、回転軸hを中心とする弾性連結部16a,16bの径の平均値(曲率)が増加することで、弾性連結部16a,16bのねじり剛性(ねじりバネ定数)が増大する。即ち、弾性連結部16a,16bのねじりバネ定数が増加することによって、温度上昇に伴うバネ定数k(ヤング率E)の減少分が相殺され、これにより温度上昇に伴う共振周波数fの変化を抑制することができる。
【0130】
したがって、このように構成された弾性連結部16a,16bによれば、弾性リンク部21を設けることにより、第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bの形状の変化に伴って回転軸hに対する直交方向に生じる力を吸収することができる。また、第1捻りバネ部20aと第2捻りバネ部20bとを一体に構成することにより、回転軸hに対する垂直方向の変形自由度に対する剛性がより高まり、さらに安定した捻り振動を得ることができる。よって、この構成によれば、装置の信頼性を高くすることができる。
【0131】
[実施例2]
次に、本実施例2では、熱アクチュエータ機構Xが、弾性連結部16a,16bと別体に構成されている場合を代表して説明する。なお、熱アクチュエータ機構Xは、前述の式(1)〜(3)で説明した通り、弾性連結部15a,15b、弾性連結部14a,14bについても同様の考え方によって適用される。
【0132】
本実施例2の弾性連結部16a,16bは各々、図11(a)に示すように、第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bを備える。また第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bの各一方の端部は、光反射部13に連結されている。また弾性連結部16a,16bは各々、第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bの各他方の端部と内ジンバル12とを連結する一対の弾性リンク部21を備えて構成される。なお、本実施例2の第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bは、熱アクチュエータ機構Xに相当しない。
【0133】
そして、熱アクチュエータ機構Xは、弾性連結部16a,16bに対して略垂直に配置される変形部材であり、一方の端部が内ジンバル12の固定端に接続され、他方の端部が弾性リンク部21を介して弾性連結部16a,16bに接続されて配置される。また熱アクチュエータ機構Xは、光反射部13に対して、第1棒状部材51が外側方向、第2棒状部材52が内側方向に各々配置されてなる。即ち、第1棒状部材51および第2棒状部材52が、動作前の停止した状態のミラー31の表面に対して、積層方向D1が平行となるように各々配置されている。
【0134】
このように配置された熱アクチュエータ機構Xによれば、図11(b)に示すように、温度が室温である状況下で、第1棒状部材51および第2棒状部材52が直線状になる。なお、この状態において第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bが設計周波数で得られる曲率になる(本実施例では初期形状として外側に撓む)ように配置されている。一方、温度が室温より低くなると、第1棒状部材51と第2棒状部材52との接合面を挟んで第2棒状部材52(酸化シリコン)の外側面が凸になるように撓み、温度が室温より高くなると、第1棒状部材51と第2棒状部材52との接合面を挟んで第1棒状部材51(シリコン)の外側面が凸になるように撓む。
【0135】
このため、低温時には、弾性リンク部21が光反射部13から遠ざかる方向に変位することにより、第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bが直線状になり、回転軸hを中心とする弾性連結部16a,16bの径の平均値(曲率)が減少する。これにより弾性連結部16a,16bのねじり剛性(ねじりバネ定数)が低下する。即ち、弾性連結部16a,16bのねじりバネ定数が減少することによって、温度低下に伴うバネ定数k(ヤング率E)の増加分が相殺され、これにより温度低下に伴う共振周波数fの変化を抑制することができる。
【0136】
また、高温時には、弾性リンク部21が光反射部13に近づく方向に変位することにより、第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bが初期形状よりも大きく外側に撓み、回転軸hを中心とする弾性連結部16a,16bの径の平均値(曲率)が増加する。これにより弾性連結部16a,16bのねじり剛性(ねじりバネ定数)が増大する。即ち、弾性連結部16a,16bのねじりバネ定数が増加することによって、温度上昇に伴うバネ定数k(ヤング率E)の減少分が相殺され、これにより温度上昇に伴う共振周波数fの変化を抑制することができる。
【0137】
[変形例2−1−1]
次に、上記実施例2の弾性連結部16a,16bに関する変形例2−1−1を説明する。
【0138】
上記実施例2の弾性連結部16a,16bは各々、第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bが別体に構成されていたが、図12に示す変形例2−1−1のように、第1捻りバネ部20aと第2捻りバネ部20bとが一体に構成されてもよい。
【0139】
即ち、本変形例2−1−1の弾性連結部16a,16bは、第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bと、第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bの各一方の端部と光反射部13とを連結する一対の第1弾性リンク部21aと、第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bの各他方の端部と弾性リンク部21とを連結する一対の第2弾性リンク部21bとから構成される。
【0140】
そして、第1捻りバネ部20aと第2捻りバネ部20bとが、H状となるように一体に形成されて構成される。すなわち、弾性連結部16a,16bがH状部材に相当する。
このように配置された熱アクチュエータ機構Xによれば、図11(b)に示すように、温度が室温である状況下で、第1棒状部材51および第2棒状部材52が直線状になる。なお、この状態において第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bは初期形状として内側に撓むように配置されている。一方、温度が室温より低くなると、第1棒状部材51と第2棒状部材52との接合面を挟んで第2棒状部材52(酸化シリコン)の外側面が凸になるように撓み、温度が室温より高くなると、第1棒状部材51と第2棒状部材52との接合面を挟んで第1棒状部材51(シリコン)の外側面が凸になるように撓む。
【0141】
このため、低温時には、弾性リンク部21が光反射部13から遠ざかる方向に変位することにより、第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bが直線状になり、回転軸hを中心とする弾性連結部16a,16bの径の平均値(曲率)が減少する。これにより弾性連結部16a,16bのねじり剛性(ねじりバネ定数)が低下する。即ち、弾性連結部16a,16bのねじりバネ定数が減少することによって、温度低下に伴うバネ定数k(ヤング率E)の増加分が相殺され、これにより温度低下に伴う共振周波数fの変化を抑制することができる。
【0142】
また、高温時には、弾性リンク部21が光反射部13に近づく方向に変位することにより、第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bが初期形状よりも大きく内側に撓み、回転軸hを中心とする弾性連結部16a,16bの径の平均値(曲率)が増加する。これにより弾性連結部16a,16bのねじり剛性(ねじりバネ定数)が増大する。即ち、弾性連結部16a,16bのねじりバネ定数が増加することによって、温度上昇に伴うバネ定数k(ヤング率E)の減少分が相殺され、これにより温度上昇に伴う共振周波数fの変化を抑制することができる。
【0143】
[変形例2−1−2]
次に、上記実施例2の弾性連結部16a,16bおよび熱アクチュエータ機構Xに関する変形例2−1−2を説明する。
【0144】
上記実施例2の弾性連結部16a,16bでは各々、第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bが、弾性リンク部21および熱アクチュエータ機構Xを介して内ジンバル12の固定端に接続されていたが、図21に示す変形例2−1−2のように、内ジンバル12の固定端のうち、回転軸hの延長上に位置する固定端61Vに弾性リンク部21を介して接続され、回転軸hに対して略垂直方向に位置する固定端61Hに熱アクチュエータ機構Xを介して接続されてもよい。
【0145】
また、上記実施例2の熱アクチュエータ機構Xでは、第1棒状部材51および第2棒状部材52が、ミラー31の表面に対して、積層方向D1が平行となるように各々配置されているが、積層方向D1が垂直となるように各々配置されてもよい。
【0146】
また、上記実施例2の熱アクチュエータ機構Xにおいて、第1棒状部材51を圧電体部材51a、第2棒状部材52をシリコン部材52aにそれぞれ置き換えてもよい。
このように構成された熱アクチュエータ機構Xでは、温度が室温である状況下では、印加電圧に応じた初期値の大きさで圧電体部材51aの外側面が凸になるように圧電体部材51aが湾曲しており、温度が室温よりも高くなると、圧電体部材51aとシリコン部材52aとの接合面を挟んで圧電体部材51aの外側面が初期値よりも大きく凸になるように湾曲する。これにより、弾性連結部16a,16b(およびこれに連動して弾性リンク部21)が固定端61Hの方向に変位する力学的作用を受けるため、弾性連結部16a,16bのねじり剛性(ねじりバネ定数)が増大する。即ち、弾性連結部16a,16bのねじりばね定数が増加することによって、共振周波数が高くなる方向に向かい、温度上昇に伴うバネ定数k(ヤング率E)の減少分が相殺されることから、温度上昇に伴う共振周波数fの変化を抑制することができる。
【0147】
一方、温度が室温よりも低くなると、圧電体部材51aとシリコン部材52aとの接合面を挟んで圧電体部材51aの外側面が初期値よりも小さく凸になるように湾曲する。これにより、弾性連結部16a,16b(およびこれに連動して弾性リンク部21)が回転軸hの方向に変位する力学的作用を受けるため、弾性連結部16a,16bのねじり剛性(ねじりバネ定数)が減少する。即ち、弾性連結部16a,16bのねじりばね定数が減少することによって、共振周波数が低くなる方向に向かい、温度低下に伴うバネ定数k(ヤング率E)の増加分が相殺されることから、温度低下に伴う共振周波数fの変化を抑制することができる。
【0148】
また、このように構成された弾性連結部16a,16bでは、弾性連結部16a,16bに連動して、弾性連結部16a,16bに対して逆向きに弾性リンク部21が変位する。このため、圧電体部材51aおよびシリコン部材52aの形状の変化に伴って回転軸hに対する直交方向に生じる力を吸収できることから、変形自由度に対する剛性が高まり、より安定した捻り振動を得ることができる。
【0149】
[変形例2−1−3]
次に、上記変形例2−1−2の弾性連結部16a,16bおよび熱アクチュエータ機構Xに関する変形例2−1−3を説明する。
【0150】
上記変形例2−1−2の弾性連結部16a,16bでは、第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bが、弾性リンク部21を介して固定端61Vに接続され、熱アクチュエータ機構Xを介して固定端61Hに接続されていたが、図22に示す変形例2−1−3のように、2種類の熱アクチュエータ機構Xを介して固定端61Hに接続されるだけでもよい。
【0151】
2種類の熱アクチュエータ機構Xは、回転軸hに対して略垂直方向となり、互いに平行となるように配置され、このうち、一方の熱アクチュエータ機構X1が、反射部13に対する弾性連結部16a,16bの反対側端部と固定端61Hとに接続され、他方の熱アクチュエータ機構X2が、弾性連結部16a,16bにおける熱アクチュエータ機構X1よりも反射部13側の部位と固定端61Hとに接続されている。
【0152】
そして、2種類の熱アクチュエータ機構Xは、ミラー31の表面に対して、積層方向D1が垂直となり、且つ積層方向D1が互いに逆向きとなるように各々配置されている。例えば、熱アクチュエータ機構X2において、圧電体部材51aが表面、シリコン部材52aが裏面となるように各々配置されている場合、熱アクチュエータX1においては、シリコン部材52aが表面、圧電体部材51aが裏面となるように各々配置されることになる。
【0153】
このように構成された熱アクチュエータ機構Xによれば、温度変化に伴って、熱アクチュエータ機構X2の湾曲による弾性連結部16a,16bにおけるミラー31の表面に対する垂直順方向への変位が、熱アクチュエータ機構X1の湾曲による弾性連結部16a,16bにおけるミラー31の表面に対する垂直逆方向への変位によって相殺されるため、反射部13の厚さ方向に対する変位を抑制することができる。これにより、反射部13のより安定した振動動作を得ることができる。
【0154】
[変形例2−1−4]
次に、上記変形例2−1−2の弾性連結部16a,16bおよび熱アクチュエータ機構Xに関するもう一つの変形例2−1−4を説明する。
【0155】
上記変形例2−1−2の弾性連結部16a,16bでは、第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bの一端が、弾性リンク部21を介して固定端61Vに接続され、熱アクチュエータ機構Xを介して固定端61Hに接続されていたが、図23に示す変形例2−1−4のように、弾性リンク部21を介して固定端61Vに接続されるだけでもよい。
【0156】
但し、第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bの略中央部が、棒状部材63を介して固定端61Hに接続されている。ここで、棒状部材63は、固定端61Hに対する略垂直方向に配置された部材である。なお、弾性連結部16a,16bでは、第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bの他端が、さらに別の弾性リンク部21を介して反射部13に接続されてもよい。
【0157】
また、熱アクチュエータ機構Xは、前述の棒状部材63と、圧電体部材51aおよびシリコン部材52aとを備えて構成される。このうち、圧電体部材51aおよびシリコン部材52aは、自身の長手方向が回転軸hに対する垂直方向(棒状部材63と同方向)となるように配置され、棒状部材63よりも固定端61V側において第1捻りバネ部20aと第2捻りバネ部20bとに接続されている。つまり、圧電体部材51aおよびシリコン部材52aは、棒状部材63と固定端61V側の弾性リンク部21との間に配置されている。
【0158】
このように構成された熱アクチュエータ機構Xでは、温度が室温である状況下では、印加電圧に応じた初期値の大きさで圧電体部材51aの外側面が凸になるように圧電体部材51aが湾曲しており、温度が室温よりも高くなると、圧電体部材51aとシリコン部材52aとの接合面を挟んで圧電体部材51aの外側面が初期値よりも大きく凸になるように湾曲する。これにより、弾性連結部16a,16b(およびこれに連動して固定端61V側の弾性リンク部21)が回転軸hに対する内側方向に変位する。すると、弾性連結部16a,16bでは、棒状部材63との接合部を支点として反射部13側の端部(およびこれに連動して反射部13側の弾性リンク部21)が回転軸hに対する外側方向に変位する。このとき、反射部13側の弾性リンク部21の変位は、弾性連結部16a,16bにおける圧電体部材51aおよびシリコン部材52aと棒状部材63との距離に対する、棒状部材63と反射部13側の弾性リンク部21との距離の比に応じた分だけ拡大されることになる。このように、圧電体部材51aの湾曲による変位に比べて、反射部13側の弾性リンク部21が固定端61Hの方向への変位を拡大する力学的作用を受けるため、弾性連結部16a,16bのねじり剛性(ねじりバネ定数)が効率的に増大する。即ち、弾性連結部16a,16bのねじりばね定数がこのように増加することによって、共振周波数が高くなる方向に向かい、温度上昇に伴うバネ定数k(ヤング率E)の減少分が相殺されることから、温度上昇に伴う共振周波数fの変化を抑制することができる。
【0159】
一方、温度が室温よりも低くなると、圧電体部材51aとシリコン部材52aとの接合面を挟んで圧電体部材51aの外側面が初期値よりも小さく凸になるように湾曲する。これにより、弾性連結部16a,16b(およびこれに連動して固定端61V側の弾性リンク部21)が回転軸hに対する外側方向に変位する。すると、弾性連結部16a,16bでは、棒状部材63との接合部を支点として反射部13側の端部(およびこれに連動して反射部13側の弾性リンク部21)が回転軸hに対する内側方向に変位する。このとき、反射部13側の弾性リンク部21の変位は、弾性連結部16a,16bにおける圧電体部材51aおよびシリコン部材52aと棒状部材63との距離に対する、棒状部材63と反射部13側の弾性リンク部21との距離の比に応じた分だけ拡大されることになる。このように、圧電体部材51aの湾曲による変位に比べて、反射部13側の弾性リンク部21が回転軸hの方向への変位を拡大する力学的作用を受けるため、弾性連結部16a,16bのねじり剛性(ねじりバネ定数)が効率的に減少する。即ち、弾性連結部16a,16bのねじりばね定数がこのように減少することによって、共振周波数が低くなる方向に向かい、温度低下に伴うバネ定数k(ヤング率E)の増加分が相殺されることから、温度低下に伴う共振周波数fの変化を抑制することができる。
【0160】
なお、本変形例2−1−4において、圧電体部材51aおよびシリコン部材52aが変形部材に相当し、棒状部材63が変位拡大部に相当する。
[変形例2−1−5]
次に、上記変形例2−1−4の弾性連結部16a,16bおよび熱アクチュエータ機構Xに関する変形例2−1−5を説明する。
【0161】
上記変形例2−1−4の弾性連結部16a,16bでは、第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bの略中央部が、棒状部材63を介して固定端61Hに接続されていたが、図24に示す変形例2−1−5のように、第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bの一端が固定端61Vに接続され、第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bの他端が反射部13に接続されてもよい。
【0162】
但し、第1捻りバネ部20aの略中央部と第2捻りバネ部20bの略中央部とが熱アクチュエータ機構Xに接続されている。
熱アクチュエータ機構Xは、圧電体部材51aおよびシリコン部材52aからなり、自身の長手方向が回転軸h方向となるように配置された変形部材65と、第1捻りバネ部20aの略中央部(第2捻りバネ部20bの略中央部についても同様)と変形部材65とに接続された変位変換部67とを備えて構成される。
【0163】
このうち、変位変換部67は、3つの棒状部材が繋ぎ合わされた形状を有し、各端部が、変形部材65の両端と第1捻りバネ部20aの略中央部(第2捻りバネ部20bの略中央部についても同様)とに接続されている。そして、変形部材65の収縮または膨張による回転軸h方向の変位を、回転軸hに対する垂直方向(且つ、ミラー31の表面に対する平行方向)に変換し、第1捻りバネ部20aの略中央部(第2捻りバネ部20bの略中央部についても同様)に伝達するように構成されている。
【0164】
このように構成された熱アクチュエータ機構Xでは、温度が室温である状況下では、印加電圧に応じた初期値の大きさで圧電体部材51aの外側面が凸になるように圧電体部材51aが湾曲しており、温度が室温よりも高くなると、圧電体部材51aとシリコン部材52aとの接合面を挟んで圧電体部材51aの外側面が初期値よりも大きく凸になるように湾曲する。このとき、変位変換部67により、弾性連結部16a,16bの略中央部が回転軸hに対する外側方向に変位することから、弾性連結部16a,16bの径の平均値(曲率)が増加する。これにより弾性連結部16a,16bのねじり剛性(ねじりバネ定数)が増大する。即ち、弾性連結部16a,16bのねじりばね定数が増加することによって、温度上昇に伴うバネ定数k(ヤング率E)の減少分が相殺され、これにより温度上昇に伴う共振周波数fの変化を抑制することができる。
【0165】
一方、温度が室温よりも低くなると、圧電体部材51aとシリコン部材52aとの接合面を挟んで圧電体部材51aの外側面が初期値よりも小さく凸になるように湾曲する。このとき、変位変換部67により、弾性連結部16a,16bの略中央部が回転軸hに対する内側方向に変位することから、弾性連結部16a,16bの径の平均値(曲率)が低下する。これにより弾性連結部16a,16bのねじり剛性(ねじりバネ定数)が減少する。即ち、弾性連結部16a,16bのねじりバネ定数が減少することによって、温度低下に伴うバネ定数k(ヤング率E)の減少分が相殺され、これにより温度低下に伴う共振周波数fの変化を抑制することができる。
【0166】
[変形例2−2]
次に、上記実施例2の熱アクチュエータ機構Xに関する変形例2−2を説明する。
上記実施例1の熱アクチュエータ機構Xは、弾性連結部16a,16bに対して略垂直に配置され、且つ、一方の端部が内ジンバル12の固定端に接続され、他方の端部が弾性リンク部21に接続されて配置されて構成されていたが、図13(a)に示す変形例2−2(1)のように、配置されて構成されてもよい。
【0167】
即ち、本変形例2−2の熱アクチュエータ機構Xは、弾性連結部16a,16bに対して略平行に配置された第1熱アクチュエータX1および第2熱アクチュエータX2から構成される。
【0168】
また光反射部13に対する第1弾性リンク部21aの反対側端部には、弾性連結部16a,16bに対して略垂直に配置された第1可動部材25aの一方の端部片面が接続され、その端部他面には第1捻りバネ部20a(第2捻りバネ部20bも同様)の一方の端部が接続されている。また第1可動部材25aの他方の端部には、第1熱アクチュエータX1の一方の端部が接続され、第1熱アクチュエータX1の他方の端部には、光反射部13のミラー支持枠32から回転軸hに対する垂直方向に突設された突設部材27の片面が接続されている。
【0169】
また内ジンバル12(固定端)に対する第2弾性リンク部21bの反対側端部には、第1可動部材25aよりも内ジンバル12側に配置された第2可動部材25bの一方の端部方面が接続され、その端部他面には、第1捻りバネ部20a(第2捻りバネ部20bも同様)の他方の端部が接続されている。また第2可動部材25bの他方の端部には、第2熱アクチュエータX2の一方の端部が接続され、第2熱アクチュエータX2の他方の端部には、内ジンバル12の固定端から回転軸hに対する垂直方向に突設された突設部材29の片面が接続されている。
【0170】
そして、第1熱アクチュエータX1および第2熱アクチュエータX2は、回転軸hに対して、第2棒状部材52が外側方向、第1棒状部材51が内側方向に各々配置されてなる。
【0171】
このように配置された第1熱アクチュエータX1および第2熱アクチュエータX2によれば、図13(b)に示すように、温度が室温である状況下で、第1熱アクチュエータX1および第2熱アクチュエータX2が直線状になる。一方、温度が室温より低くなると、第1棒状部材51と第2棒状部材52との接合面を挟んで第2棒状部材52(酸化シリコン)の外側面が凸になるように撓み、温度が室温より高くなると、第1棒状部材51と第2棒状部材52との接合面を挟んで第1棒状部材51(シリコン)の外側面が凸になるように撓む。
【0172】
このため、低温時には、弾性連結部16a,16bが回転軸hに近づく方向に変位することにより、回転軸hを中心とする弾性連結部16a,16bの径の平均値(曲率)が減少する。これにより弾性連結部16a,16bのねじり剛性(ねじりバネ定数)が低下する。即ち、弾性連結部16a,16bのねじりばね定数が減少することによって、温度低下に伴うバネ定数k(ヤング率E)の増加分が相殺され、これにより温度低下に伴う共振周波数fの変化を抑制することができる。
【0173】
また、高温時には、弾性連結部16a,16bが回転軸hから遠ざかる方向に変位することにより、回転軸hを中心とする弾性連結部16a,16bの径の平均値(曲率)が増加する。これにより弾性連結部16a,16bのねじり剛性(ねじりバネ定数)が増大する。即ち、弾性連結部16a,16bのねじりばね定数が増加することによって、温度上昇に伴うバネ定数k(ヤング率E)の減少分が相殺され、これにより温度上昇に伴う共振周波数fの変化を抑制することができる。
【0174】
なお、本変形例2−2の熱アクチュエータ機構Xは、弾性連結部16a,16bに対して略平行に配置された第1熱アクチュエータX1および第2熱アクチュエータX2から構成されていたが、図14に示すように、第1熱アクチュエータX1および第2熱アクチュエータX2が、円弧状に形成され、光反射部13のミラー31の縁に沿って配置される構成であってもよい。また図15及び図16に示すように、第1熱アクチュエータX1および第2熱アクチュエータX2のいずれか一方だけによって構成されてもよい。
【0175】
但し、図14(変形例2−2(2))および図16(変形例2−2(4))に示す熱アクチュエータ機構X(X1,X2)は、回転軸h(又は、光反射部13の中心)に対して、第1棒状部材51が外側方向、第2棒状部材52が内側方向に各々配置されてなる点で、上記図13(変形例2−2(1))および図15(変形例2−2(3))に示す熱アクチュエータ機構Xと相違する。
【0176】
[変形例2−3]
次に、上記実施例2の弾性連結部16a,16bに関する変形例2−3を説明する。
上記実施例1の弾性連結部16a,16bは各々、第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bを備えて構成されていたが、図17(a)に示す変形例2−3(1)のように、1つの捻りバネ部20を備えて構成されてもよい。
【0177】
即ち、本変形例2−3の弾性連結部16a,16bは、捻りバネ部20と、捻りバネ部20の一方の端部と熱アクチュエータ機構Xとを連結する弾性リンク部21とから構成される。
【0178】
そして、熱アクチュエータ機構Xは、弾性連結部16a,16bに対して略垂直に配置
され、且つ、両端部が内ジンバル12の固定端に接続され、中央部が弾性リンク部21に接続されて配置される。また熱アクチュエータ機構Xは、光反射部13に対して、第2棒状部材52が外側方向、第1棒状部材51が内側方向に各々配置されてなる。
【0179】
このように配置された熱アクチュエータ機構Xによれば、図17(b)に示すように、温度が室温である状況下で、第1棒状部材51および第2棒状部材52が直線状になる。一方、温度が室温より低くなると、第1棒状部材51と第2棒状部材52との接合面を挟んで第2棒状部材52(酸化シリコン)の外側面が凸になるように撓み、温度が室温より高くなると、第1棒状部材51と第2棒状部材52との接合面を挟んで第1棒状部材51(シリコン)の外側面が凸になるように撓む。
【0180】
このため、低温時には、弾性リンク部21が光反射部13に近づく方向に変位することにより、弾性連結部16a,16bの長さが小さくなる。これにより弾性連結部16a,16bのねじり剛性(ねじりバネ定数)が低下する。即ち、弾性連結部16a,16bのねじりばね定数が減少することによって、温度低下に伴うバネ定数k(ヤング率E)の増加分が相殺され、これにより温度低下に伴う共振周波数fの変化を抑制することができる。
【0181】
また、高温時には、弾性リンク部21が光反射部13から遠ざかる方向に変位することにより、弾性連結部16a,16bの長さが大きくなる。これにより弾性連結部16a,16bのねじり剛性(ねじりバネ定数)が増大する。即ち、弾性連結部16a,16bのねじりばね定数が増加することによって、温度上昇に伴うバネ定数k(ヤング率E)の減少分が相殺され、これにより温度上昇に伴う共振周波数fの変化を抑制することができる。
【0182】
なお、本変形例2−3の熱アクチュエータ機構Xは、弾性連結部16a,16bに対して略垂直に配置されて構成されていたが、図18(a)に示すように、弾性連結部16a,16bに対して略平行に配置されて構成されてもよい。
【0183】
但し、図18(変形例2−3(2))に示す熱アクチュエータ機構Xでは、第1棒状部材51が、光反射部13に対する弾性連結部16a,16bの反対側端部と、内ジンバル12の固定端から光反射部13側に延設された延設部材28とに接続され、第2棒状部材52が、光反射部13に対して、第1棒状部材51より外側方向に配置されてなる。
【0184】
なお、第1棒状部材51は、エ字状に形成され、その上辺および下辺において、一方の端部が弾性連結部16a,16bに接続され、他方の端部が第1棒状部材51に積層されて構成されている。
【0185】
このように構成された熱アクチュエータ機構Xによれば、図18(b)に示すように、温度が室温である状況下で、第1棒状部材51および第2棒状部材52が直線状になる。一方、温度が室温より低くなると、第1棒状部材51の上辺および下辺が、光反射部13に近づく方向に凸となるように変形し、温度が室温より高くなると、第1棒状部材51の上辺および下辺が、光反射部13から遠ざかる方向に凸となるように変形する。
【0186】
このため、低温時には、第1棒状部材51に接続された弾性連結部16a,16bの長さが小さくなることにより、弾性連結部16a,16bのねじり剛性(ねじりバネ定数)が低下する。即ち、弾性連結部16a,16bのねじりばね定数が減少することによって、温度低下に伴うバネ定数k(ヤング率E)の増加分が相殺され、これにより温度低下に伴う共振周波数fの変化を抑制することができる。
【0187】
また、高温時には、第1棒状部材51に接続された弾性連結部16a,16bの長さが大きくなることにより、弾性連結部16a,16bのねじり剛性(ねじりバネ定数)が増大する。即ち、弾性連結部16a,16bのねじりばね定数が増加することによって、温度上昇に伴うバネ定数k(ヤング率E)の減少分が相殺され、これにより温度上昇に伴う共振周波数fの変化を抑制することができる。
【0188】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
【0189】
例えば上記実施形態においては、熱アクチュエータ機構Xとしてシリコンと酸化シリコンとを組み合わせたものを示した。しかし、シリコンに対して熱膨張率の異なる材料であれば、酸化シリコン以外の材料も選択可能であり、例えば、アルミ等の金属材料、ポリイミド、エポキシ等の樹脂材料を用いてもよい。
【0190】
また上記実施形態においては、3自由度連成振動系を構成する光走査装置1を適用したものを示したが、これに限らず、少なくとも光反射部13と弾性連結部14〜16のうちの1つと熱アクチュエータ機構Xとを備えるものであればよい。
【符号の説明】
【0191】
1…光走査装置、2…光ビーム走査部、3…支持部、4…駆動部、11…外ジンバル、12…内ジンバル、13…光反射部、14a,14b,15a,15b,16a,16b…弾性連結部、20…捻りバネ部、21…弾性リンク部、25a…第1可動部材、25b…第2可動部材、31…ミラー、32…ミラー支持枠、51…第1棒状部材、51a…圧電体部材、51b…薄膜圧電素子、51c,51d…電極、52…第2棒状部材、52a…シリコン部材、61V,61H…固定端、63…棒状部材、65…変形部材、67…変位変換部、X…熱アクチュエータ機構。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ビームを走査する光走査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光走査装置の小型化を目的として、MEMS(Micro Electro Mechanical System)技術を利用した光走査装置が種々提案されている。
これに対して本願出願人は、反射面が表面に形成された光反射部と、光反射部に対し所定の隙間を介して設けられた内ジンバルと、内ジンバルに対し所定の隙間を介して設けられた外ジンバルとを備え、光反射部と内ジンバルと外ジンバルとをそれぞれの回転軸を中心に捻り振動可能に構成することで、3自由度連成振動系を構成した光走査装置を提案している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このように構成された光走査装置では、光反射部に固有の周期的加振力を作用させることにより、3自由度捻り振動子を共振状態にできる。そして、光反射部と内ジンバルそれぞれの振動に対応した周期的加振力を重畳して与えることにより、光反射部と内ジンバルをそれぞれ異なる周波数および振幅で振動させ、さらに光反射部の反射面で光を反射させることで、光を2次元走査することができる。
【0004】
ところで、このような光走査装置では、図9に示すように、環境温度が変化すると3自由度捻り振動子の共振周波数の特性が変化し、これにより、走査振幅が低下するという問題があった。これは、回転軸を中心に捻り振動可能に構成するために、弾性変形可能な部材(以下「弾性変形部材」という)を上記回転軸として利用しており、環境温度の変化に応じて弾性変形部材のバネ定数が変化することに起因している。
【0005】
これに対し、環境温度が一定となるように温度制御する構成Aや、光反射部に作用させる周期的加振力(仕様共振周波数)を能動的に調整する構成B等、走査振幅の低下の防止を試みる構成が種々提案されている(例えば、特許文献2〜6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−129068号公報
【特許文献2】特許第4172627号公報
【特許文献3】特開2004−69731号公報
【特許文献4】特許第3902622号公報
【特許文献5】特許第4012535号公報
【特許文献6】特許第4487512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記構成Aを備えた光走査装置では、環境温度に応じてヒータや冷却装置を作動させる必要があるため、消費電力が増大したり、環境温度が目標温度となるまでのタイムラグが生じるため、動作が不安定になったりする可能性があった。
【0008】
また、上記構成Bを備えた光走査装置は、構成Aと比較して、ヒータや冷却装置を必要としない点で相違するものの、温度を検出する温度センサ、及び、温度検出結果に基づいて周期的加振力の調整を行うための制御回路などを用いる点で共通し、この共通点により、装置構成の複雑化に繋がってしまうという問題があった。
【0009】
本発明は、こうした問題に鑑みてなされたものであり、捻り振動を用いた光走査装置において、温度変化による走査特性の変化を自律的に抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載の光走査装置は、光ビームを反射させる反射面を有する反射部と、反射部を捻り振動させるための回転軸を構成する弾性変形部とを備え、上記回転軸を中心にして反射部を振動させることにより、前記反射面により反射された光ビームを走査する光走査装置である。
【0011】
ところで、弾性変形部を回転軸として反射部を捻り振動させる場合の共振周波数fは、下式(1)で表される。
【0012】
【数1】
なお、式(1)において、kは弾性変形部のバネ定数、Jは反射部の慣性モーメントである。そして、弾性変形部のバネ定数kは、下式(2)で表される。
【0013】
【数2】
なお、式(2)において、βは、弾性変形部の断面の形状から決まる係数である。また、aは、弾性変形部の断面の長辺の長さである。また、bは、弾性変形部の断面の短辺の長さである。また、Eは、ヤング率(横弾性係数)である。また、νは、ポアソン比である。また、lは弾性変形部の長さである。即ち、ヤング率Eが変化するとバネ定数kが変化する。
【0014】
さらに、ヤング率Eは、温度をTとして、下式(3)で表される。
【0015】
【数3】
なお、式(3)において、E0は、0℃でのヤング率である。また、Δhtは温度係数である。即ち、温度が変化するとヤング率Eは変化する。
【0016】
したがって、温度Tの変化に伴いヤング率Eが変化し、これに伴い、弾性変形部のバネ定数kが変化すると、共振周波数fが変化する。
これに対し、請求項1に記載の光走査装置では、熱膨張率が互いに異なる2種類の材料の部材が積層されてなる構造を有する熱アクチュエータ機構が、自身の収縮または膨張により、前記弾性変形部に関して温度変化に伴うバネ定数の変化を相殺する形状に変化させる構成によって、温度変化に伴う共振周波数fの変化を抑制することを可能とした。
【0017】
よって、請求項1に記載の光走査装置によれば、温度センサや制御回路などを用いることなく、温度変化による走査特性の変化を自律的に抑制することができる。なお、熱膨張率とは、温度の上昇または下降に対応して物体の長さが変化する割合であるものとする。
【0018】
例えば、図10に示すように、温度変化に伴いヤング率が変化すると共振周波数が変化する(図10の曲線L1を参照)。このときの仕様共振周波数からのずれ量をΔfaとする。一方、ヤング率が一定という条件の下で、温度変化に伴いバネ定数(ねじりバネ定数)が変化すると、共振周波数が変化する(図10の曲線L2を参照)。このときの仕様共振周波数からのずれ量をΔfbとする。
【0019】
したがって、温度変化によりヤング率とバネ定数(ねじりバネ定数)が同時に変化した場合の仕様共振周波数からのずれ量は(Δfa−Δfb)となる。このため、(Δfa−Δfb)が、許容誤差Δεより小さくなるように設計することによって(図10の曲線L3参照)、温度変化に伴う共振周波数の変化を抑制することができる。
【0020】
なお、以下では、熱アクチュエータ機構を構成する2種類の材料の部材のうち、熱膨張率が大きい方を第1弾性部材、熱膨張率が小さい方を第2弾性部材として説明する。
このように定義すると、請求項1に記載の光走査装置において、請求項2に記載のように、例えば、第1弾性部材は、シリコンを材料とする部材であり、第2弾性部材は、例えばシリコンを熱酸化することにより形成される酸化シリコンを材料とする部材である構造を採用してもよい。
【0021】
つまり、シリコン及び酸化シリコンの熱膨張率はそれぞれ、(2.6×10-6)及び(0.5×10-6)であり、熱膨張率が大きく異なる。そして、シリコンの一部を熱酸化することによって、シリコンと酸化シリコンとが積層された構造を形成することができるため、別々に形成された2つの部材を張り合わせるという工程が不要となり、製造工程を簡略化することができる。
【0022】
また、請求項1に記載の光走査装置において、請求項3に記載のように、第1弾性部材および第2弾性部材のうち一方は、自身の歪みの大きさが印加電圧によって調整可能な圧電体である構造を採用してもよい。
【0023】
このような圧電体では、外部から応力を受けない状態で一定電圧を印加したときに生じる歪みの大きさを表す場合の係数として、圧電d定数(圧電歪定数)が用いられる。この圧電歪定数のうち、d31定数は、物体の長さが変化する割合を表し、温度が高くなるほど大きくなることが知られている(例えば「塩嵜忠著『圧電材料とその応用』シーエムシー出版,2002年」参照)。
【0024】
つまり、d31定数は、熱膨張率(線膨張率)と同義的に、温度の上昇または下降に対応して物体の長さが変化する割合であるといえる。また、一定温度下での物体の歪みの大きさは、印加電圧によって調整可能である。このため、外部環境の温度変化範囲(使用温度範囲)が既知であれば、使用温度範囲における前述のずれ量(Δfa−Δfb)が許容誤差Δεより小さくなるd31定数および印加電圧(一定電圧)を選択しておくことによって、温度変化に伴う共振周波数の変化を抑制することができる。
【0025】
ところで、熱アクチュエータ機構は、温度が低くなると、熱膨張率が大きい方の部材が大きく収縮することにより、熱膨張率が異なる2つの部材との接合面を介して、熱膨張率が小さい方の部材が押し縮められ、これにより、熱膨張率が小さい方の部材の外側面が凸になるように撓む。一方、温度が高くなると、熱膨張率が大きい方の部材が大きく膨張することにより、上記接合面を介して、熱膨張率が小さい方の部材が引き伸ばされ、これにより、熱膨張率が大きい方の部材の外側面が凸になるように撓む。
【0026】
このため、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の光走査装置において、請求項4に記載のように、第1弾性部材および第2弾性部材は、捻り振動前の状態の反射面に対する垂直または平行方向に積層されている構造が好ましい。
【0027】
このような構造によれば、第1弾性部材および第2弾性部材の収縮または膨張が弾性変形部の形状変化を介して反射部に作用する方向を単純化できる分、第1弾性部材および第2弾性部材の熱膨張率(素材)や長さ、厚み(形状)等の選択に係る設計を比較的容易にすることができる。
【0028】
また、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の光走査装置において、請求項5に記載のように、熱アクチュエータ機構は、弾性変形部に設けられている構成でもよい。即ち、この構成では、弾性変形部が温度変化に伴うバネ定数の変化を相殺する形状に変化することにより、温度に応じた位置に自動的に反射部を変位させることができる。よって、この構成によれば、熱アクチュエータ機構を弾性変形部と別体に設ける場合と比較して、光走査装置の構成を簡略化することができる。
【0029】
また具体的には、請求項5に記載の光走査装置において、請求項6に記載のように、弾性変形部は、第1弾性部材および第2弾性部材が各々、上記回転軸を中心として対称となるように形成されているとよい。
【0030】
このように構成された光走査装置によれば、温度変化に伴い、弾性変形部の形状が上記回転軸に直交する方向に変化するので、設計に必要なシミュレーションを立て易くなる。なお、上記シミュレーションとしては、例えば実験モーダル解析により、弾性変形部の形状変化に伴う共振周波数を計算する手法がある。
【0031】
さらには、請求項6に記載の光走査装置において、請求項7に記載のように、弾性変形部は、第1弾性部材および第2弾性部材が各々、上記回転軸に対する直交方向に分割され、且つ、上記回転軸に対して、第1弾性部材が外側方向、第2弾性部材が内側方向に各々配置されることにより構成されてもよい。
【0032】
このように構成された光走査装置によれば、温度が低くなると、第1弾性部材が収縮することにより、弾性変形部が上記回転軸に対する内側方向に凸になるように撓むことで、バネ定数kの増加分を相殺し、温度が高くなると、第1弾性部材が膨張することにより、弾性変形部が上記回転軸に対する外側方向に凸になるように撓むことで、バネ定数kの減少分を相殺することができる。
【0033】
あるいは、請求項6に記載の光走査装置において、請求項8に記載のように、弾性変形部は、上記回転軸に対して、第1弾性部材が内側方向、第2弾性部材が外側方向に各々配置され、且つ、第1弾性部材がH状に形成されてなるH状部材と、反射部とH状部材とを連結する弾性リンク部とを有し、弾性リンク部は、H状部材の収縮または膨張に連動して、H状部材の形状が変化する反対方向に変位するように構成されてもよい。
【0034】
このように構成された光走査装置では、温度が低くなると、第1弾性部材が収縮することにより、弾性リンク部が上記回転軸に対する内側方向に傾斜することで、バネ定数kの増加分を相殺し、温度が高くなると、第1弾性部材が膨張することにより、弾性リンク部が上記回転軸に対する外側方向に傾斜することで、バネ定数kの低下分を相殺することができる。また、弾性リンク部が、H状部材の形状の変化に伴って上記回転軸に対する直交方向に生じる力を吸収することができる。よって、この構成によれば、装置の信頼性を高くすることができる。
【0035】
なお、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の光走査装置において、請求項9に記載のように、熱アクチュエータ機構は、弾性変形部に接続され、温度変化に伴う収縮または膨張による自身の変位を伝達する力学的作用により、弾性変形部の形状を変化させるように構成されてもよい。
【0036】
この場合、反射部と弾性変形部とを備える既存の構成に変更を加えることなく、熱アクチュエータ機構を配置するだけでよいため、弾性変形部が熱アクチュエータ機構を有する構成と比較して設計の自由度を向上させることができる。
【0037】
また、請求項9に記載の光走査装置において、請求項10に記載のように、弾性変形部は、熱アクチュエータ機構に接続され、温度変化に伴う熱アクチュエータ機構の力学的作用によって回転軸に対する外側方向および内側方向に変位する変位部材と、反射部と変位部材とを連結する弾性リンク部とを有し、弾性リンク部は、変位部材の変位に連動して、自身の形状が変化するものであってもよい。
【0038】
このように構成された光走査装置では、弾性リンク部が、変位部材の変位に伴って上記回転軸に対する直交方向に生じる力を吸収することができるため、装置の信頼性を高くすることができる。
【0039】
なお、請求項9または請求項10に記載の光走査装置において、請求項11に記載のように、熱アクチュエータ機構は、温度変化に伴って収縮または膨張する変形部材と、変形部材の収縮または膨張による変形部材の変位に対して、弾性変形部における反射部側の端部の変位を拡大させる作用を力学的作用として有する変位拡大部とを有するものであってもよい。
【0040】
このように構成された光走査装置では、変形部材の収縮または膨張による変位が小さい場合であっても、変形部材の構成に変更を加えることなく、変位拡大部を配置するだけでよいため、熱アクチュエータが変形部材だけからなる構成と比較して設計の自由度を向上させることができる。
【0041】
また、請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の光走査装置において、請求項12に記載のように、反射部に連結された上記弾性変形部としての第1弾性変形部材を有し、第1弾性変形部材の回転軸を第1回転軸として反射部を揺動可能に支持する第1支持部と、第1支持部に連結された上記弾性変形部としての第2弾性変形部材を有し、第2弾性変形部材の回転軸を第2回転軸として第1支持部を揺動可能に支持する第2支持部とを備え、第2回転軸は、第1回転軸と交差するように配置され、第2回転軸を中心にして第1支持部を揺動させることにより、反射面により反射された光ビームを走査するようにしてもよい。
【0042】
このように構成された光走査装置によれば、第1回転軸を中心とした揺動と、第2回転軸を中心とした揺動によって、反射部で反射する光ビームを2次元的に走査することができる。したがって、光ビームを2次元走査することができる光走査装置において、少なくとも請求項1に記載の光走査装置と同様の効果を得ることができる。
【0043】
また、請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の光走査装置において、反射部に連結された上記弾性変形部としての第1弾性変形部材を有し、第1弾性変形部材の回転軸を第1回転軸として反射部を揺動可能に支持する第1支持部と、第1支持部に連結された上記弾性変形部としての第2弾性変形部材を有し、第2弾性変形部材の回転軸を第2回転軸として第1支持部を揺動可能に支持する第2支持部と、第2支持部に連結された上記弾性変形部としての第3弾性変形部材を有し、第3弾性変形部材の回転軸を第3回転軸として第2支持部を揺動可能に支持する第3支持部とを備え、第2回転軸は、第1回転軸と交差するように配置され、第3回転軸は、第1回転軸及び第2回転軸と交差するように配置され、反射部、第1支持部、第2支持部、第3支持部、第1弾性変形部材、第2弾性変形部材、及び第3弾性変形部材が、固有の周期的外力が作用した場合に大きい回転角で捻り振動する3自由度連成振動系を構成し、3自由度連成振動系に固有の周期的外力を作用させることにより、第3回転軸を中心にして第2支持部を揺動させるとともに、第2回転軸を中心にして第1支持部を揺動させることにより、反射面により反射された光ビームを走査するようにしてもよい。
【0044】
即ち、上記の光走査装置は、第3支持部を固定端として、第1弾性変形部材、第2弾性変形部材、第3弾性変形部材に対しての捻り自由度を持つ3自由度捻り振動子になっている。
【0045】
3自由度捻り振動子は、理論上3つの振動モードを持つ。具体的には、3つの振動モードはそれぞれ異なる共振周波数を持ち、各共振周波数に対する反射部、第1支持部、第2支持部の捻り振動の角度振幅の比はそれぞれ異なる(これは振動モードと呼ばれる)。したがって、或る振動モードにおいて、第2支持部の角度振幅が大きくなると、この振動モードにおける角度振幅の比に応じて、反射部および第1支持部の角度振幅が大きくなる。
【0046】
そして、3自由度連成振動系に固有の周期的外力を作用させることにより、3自由度捻り振動子を共振状態にできる。
また、3つの振動モードの各々に対応した周波数の周期的加振力を与えれば、それぞれの振動モードを励振できる。また、複数の周波数の周期的加振力を重畳して与えれば、複数の振動モードを励振できる。
【0047】
このため、反射部の角度振幅が大きい振動モードに対応する周期的加振力と、第1支持部の角度振幅が大きい振動モードに対応する周期的加振力とを重畳して与えることにより、反射部で反射する光ビームを2次元的に走査することができる。
【0048】
したがって、このように構成された光走査装置によれば、光ビームを2次元走査することができる光走査装置において、少なくとも請求項1に記載の光走査装置と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施形態としての光走査装置1の全体構成を示す平面図である。
【図2】光走査装置1の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】熱アクチュエータ機構における温度に応じた動作の変化を示す第1の説明図である。
【図4】実施例1における熱アクチュエータ機構の構成及び動作を示す平面図である。
【図5】変形例1−1におけるにおける熱アクチュエータ機構の構成及び動作を示す平面図である。
【図6】捻りバネ部20及び弾性リンク部21の動作を示す説明図である。
【図7】変形例1−2におけるにおける熱アクチュエータ機構の構成及び動作を示す平面図である。
【図8】変形例1−3におけるにおける熱アクチュエータ機構の構成及び動作を示す平面図である。
【図9】光走査装置における周波数と振幅との関係を示すグラフである。
【図10】ヤング率及びねじりバネ定数(温度)と共振周波数との関係を示すグラフである。
【図11】実施例2における熱アクチュエータ機構の構成及び動作を示す平面図である。
【図12】変形例2−1−1における熱アクチュエータ機構の構成及び動作を示す平面図である。
【図13】変形例2−2(1)における熱アクチュエータ機構の構成及び動作を示す平面図である。
【図14】変形例2−2(2)における熱アクチュエータ機構の構成及び動作を示す平面図である。
【図15】変形例2−2(3)における熱アクチュエータ機構の構成及び動作を示す平面図である。
【図16】変形例2−2(4)における熱アクチュエータ機構の構成及び動作を示す平面図である。
【図17】変形例2−3(1)における熱アクチュエータ機構の構成及び動作を示す平面図である。
【図18】変形例2−3(2)における熱アクチュエータ機構の構成及び動作を示す平面図である。
【図19】熱アクチュエータ機構の変形例を示す構成図である。
【図20】熱アクチュエータ機構における温度に応じた動作の変化を示す第2の説明図である。
【図21】変形例2−1−2における熱アクチュエータ機構の構成及び動作を示す平面図である。
【図22】変形例2−1−3における熱アクチュエータ機構の構成及び動作を示す平面図である。
【図23】変形例2−1−4における熱アクチュエータ機構の構成及び動作を示す平面図である。
【図24】変形例2−1−5における熱アクチュエータ機構の構成及び動作を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下に、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
[全体構成]
まず、本発明の実施形態としての光走査装置1の全体構成を説明する。
【0051】
光走査装置1は、図1に示すように、光ビームを走査する光ビーム走査部2と、光ビーム走査部2を支持する支持部3と、光ビーム走査部2に回転駆動力を印加する駆動部4と、光ビーム走査部2の回転角度を検出する角度検出部5とを備える。
【0052】
光ビーム走査部2は、外ジンバル11と内ジンバル12と光反射部13と弾性連結部14a,14bと弾性連結部15a,15bと弾性連結部16a,16bと、櫛歯電極部17,18,19,20とから構成される。
【0053】
これらのうち光反射部13は、ミラー31とミラー支持枠32とから構成される。ミラー31は、円形状であり、アルミ薄膜の鏡面部が表面に形成される。またミラー支持枠32は、円形枠状であり、枠内にミラー31が配置されて固定される。
【0054】
また内ジンバル12は、矩形枠状であり、枠内に光反射部13が配置される。また外ジンバル11は、矩形枠状であり、枠内に内ジンバル12が配置される。
また弾性連結部16aは、弾性変形可能な材料で構成されており、内ジンバル12の枠内に配置され、光反射部13と内ジンバル12とを連結する。また弾性連結部16bは、弾性変形可能な材料で構成されており、内ジンバル12の枠内に配置され、光反射部13を挟んで弾性連結部16aと反対側において、光反射部13と内ジンバル12とを連結する。なお、弾性連結部16aおよび弾性連結部16bは、光反射部13の重心JSを通る同一直線上に配置されており、光反射部13の回転軸hとなる。これにより光反射部13は、回転軸hを中心に捻り振動可能に構成される。
【0055】
また弾性連結部15aは、弾性変形可能な材料で構成されており、外ジンバル11の枠内に配置され、内ジンバル12と外ジンバル11とを連結する。また弾性連結部15bは、弾性変形可能な材料で構成されており、外ジンバル11の枠内に配置され、内ジンバル12を挟んで弾性連結部15aと反対側において、内ジンバル12と外ジンバル11とを連結する。なお、弾性連結部15aおよび弾性連結部15bは、光反射部13と内ジンバル12との重心JSを通る同一直線上に配置されており、光反射部13の回転軸jとなる。これにより内ジンバル12は、回転軸jを中心に捻り振動可能に構成される。
【0056】
また弾性連結部14aは、弾性変形可能な材料で構成されており、外ジンバル11の上辺11aと支持部3とを連結する。また弾性連結部14bは、弾性変形可能な材料で構成されており、外ジンバル11を挟んで弾性連結部14aと反対側において、外ジンバル11の下辺11bと支持部3とを連結する。なお、弾性連結部14aおよび弾性連結部14
bは、光反射部13と内ジンバル12と外ジンバル11との重心JSを通る同一直線上に配置されており、外ジンバル11の回転軸iとなる。これにより外ジンバル11は、回転軸iを中心に捻り振動可能に構成される。
【0057】
また櫛歯電極部17は、外ジンバル11の左辺11cに沿って櫛歯状に形成されている。さらに櫛歯電極部18は、櫛歯電極部17の上方において、左辺11cに沿って櫛歯状に形成されている。
【0058】
また櫛歯電極部19は、外ジンバル11の右辺11dに沿って櫛歯状に形成されている。さらに櫛歯電極部20は、櫛歯電極部19の上方において、右辺11dに沿って櫛歯状に形成されている。
【0059】
次に支持部3は、上辺11aと連結されていない側の弾性連結部14aの端部と連結される上側支持部3aと、下辺11bと連結されていない側の弾性連結部14bの端部と連結される下側支持部3bとから構成される。
【0060】
さらに駆動部4は、櫛歯電極部17と一定間隔を空けて噛み合う櫛歯状に形成された櫛歯電極部4aと、櫛歯電極部19と一定間隔を空けて噛み合う櫛歯状に形成された櫛歯電極部4bとから構成される。
【0061】
また角度検出部5は、櫛歯電極部18と一定間隔を空けて噛み合う櫛歯状に形成された櫛歯電極部5aと、櫛歯電極部20と一定間隔を空けて噛み合う櫛歯状に形成された櫛歯電極部5bとから構成される。
【0062】
次に、光走査装置1の電気的構成について説明する。
光走査装置1は、図2に示すように、光ビーム走査部2を回転駆動するための駆動信号としてのパルス電圧を出力する駆動信号発生回路41と、駆動信号発生回路41により出力された駆動信号を増幅して櫛歯電極部4a,4bに印加する増幅回路42と、櫛歯電極部5a,5bと櫛歯電極部19,20との間の静電容量を電圧値に変換するC−V変換回路43a,43b(以下、C−V変換回路43a,43bをまとめてC−V変換回路43ともいう)と、光ビームの発光源となる半導体レーザ44と、C−V変換回路43から出力される電圧をモニタし、この電圧値に基づいて半導体レーザ44を制御するとともに駆動信号発生回路41を制御する制御回路45とを備える。
【0063】
次に、光走査装置1の動作原理を説明する。
光走査装置1は、支持部3を固定端として、回転軸i,j,hに対しての捻り自由度を持つ3自由度捻り振動子になっている。
【0064】
3自由度捻り振動子は、理論上3つの振動子を持つ。即ち、3つの振動モードはそれぞれ異なる共振周波数を持ち、各共振周波数に対する各フレームの捻り振動の角度振幅の比はそれぞれ異なる(これは振動モードと呼ばれる)。以下、これら3つの振動モードをそれぞれ、振動モード1、振動モード2、振動モード3という。
【0065】
なお、櫛歯電極部4a,4bに電圧を印加すると、櫛歯電極部17,19との間に静電気力が発生する。また、外ジンバル11が1周期振動する間に櫛歯電極部17,19は櫛歯電極部4a,4bに2回最接近する。このため、共振周波数の2倍に近い周期的静電気力が加われば、3自由度捻り振動子を共振状態にできる(以下、共振状態にするための加振力を周期的加振力という)。また、櫛歯電極部17,19が櫛歯電極部4a,4bに接近する毎に、周期的加振力を作用させることができる。
【0066】
そして、振動モード1、振動モード2、振動モード3の各々に対応した周波数の周期的加振力を与えれば、それぞれの振動モードを励振できる。また、複数の周波数の周期的加振力を重畳して与えれば、複数の振動モードを同時に励振できる。
【0067】
ここで、例えば、
振動モード1の共振周波数f1を1000Hz、
振動モード2の共振周波数f2を5000Hz,
振動モード3の共振周波数f3を40000Hz、
振動モード1における外ジンバル11、内ジンバル12、光反射部13の振幅比r1を「1:−20:0.5」、
振動モード2における外ジンバル11、内ジンバル12、光反射部13の振幅比r2を「1:0.01:−50」、
振動モード3における外ジンバル11、内ジンバル12、光反射部13の振幅比r3を「1:0.02:−0.03」、
として設計した場合の、3自由度捻り振動子の動作を説明する。
【0068】
なお、各振動モードにおける振幅比は、左から外ジンバル11、内ジンバル12、光反射部13の順で記述している。例えば、上記の振幅比r1は、外ジンバル11の振幅が「1」とすると、内ジンバル12の振幅が「−20」、光反射部13の振幅が「0.5」となることを示す。
【0069】
また、3自由度捻り振動子の共振状態においては、理論上、各フレーム間(外ジンバル11−内ジンバル12間、内ジンバル12−光反射部13間)の位相角は0度または180度となる。そこで、振幅比を記述する際に、位相角の差が0度の場合は符合を「+」、180度の場合は符合を「−」とする。例えば、上記の振幅比r1は、外ジンバル11と光反射部13との位相角の差が0度となり、外ジンバル11と内ジンバル12との位相角の差が180度となることを示す。
【0070】
そして、各振動モードの共振周波数と振幅比を上記のように設計すると、例えば、振動モード1では、主に内ジンバル12と、内ジンバル12に繋がった光反射部13とが1000Hzで大きく捻り振動する。また例えば、振動モード2では、主に光反射部13が5000Hzで大きく捻り振動する。
【0071】
このため、例えば、光反射部13の鏡面部分でレーザ光を反射させるとともに、振動モード1と振動モード2とを同時に励振させることにより、振動モード2を主走査方向(5000Hz)、振動モード1を副走査方向(1000Hz)として、2次元的にレーザ光を走査することができる。
【0072】
次に、光走査装置1の動作について説明する。
制御回路45による制御に基づいて駆動信号発生回路41が駆動信号を出力すると、増幅回路42によりこの駆動信号の電圧値が増幅されて櫛歯電極部4a,4bに印加される。これにより、櫛歯電極部4a,4bと、櫛歯電極部17,19との間にパルス電圧が印加されて周期的に変化する静電引力が生じ、弾性連結部14a,14bが弾性変形してねじれることにより、光ビーム走査部2が弾性連結部14a,14bを回転軸iとして往復振動する。
【0073】
ここで、駆動信号発生回路41は、光反射部13の角度振幅が、外ジンバル11および内ジンバル12よりも大きい振動モードの共振周波数の2倍の周波数の駆動信号を出力するようになっており、これにより、光ビーム走査部2と弾性連結部14a,14bとからなる振動系が共振し、光ビーム走査部2が共振周波数で往復振動する。
【0074】
なお、光ビーム走査部2が往復振動すると、その動力によって、弾性連結部15a,15bが弾性変形してねじれることにより、外ジンバル11および内ジンバル12が弾性連結部15a,15bを回転軸jとして往復振動するとともに、弾性連結部16a,16bが弾性変形してねじれることにより、内ジンバル12および光反射部13が弾性連結部16a,16bを回転軸hとして往復振動する。
【0075】
そして、この状態で光反射部13に半導体レーザ44から光ビームが照射されると、その光ビームが光反射部13の鏡面で反射されることにより出射されるとともに、光反射部13の往復振動に伴い、光反射部13の回転角度に応じた方向に走査される。
【0076】
一方、外ジンバル11の往復振動に伴い、櫛歯電極部5a,5bと櫛歯電極部18,20との距離も周期的に変化する。これにより、櫛歯電極部5a,5bと櫛歯電極部18,20との間の静電容量が、外ジンバル11の回転角度に応じて変化する。そして制御回路45は、これらの静電容量に基づき、外ジンバル11の回転角度を検出する、なお上述したように、3自由度捻り振動子の共振状態においては、理論上、各フレーム間の位相角は0度または180度であるため、外ジンバル11の回転角度を検出することにより、光反射部13の回転角度を検出することができる。
【0077】
ところで、弾性連結部16a,16bまたは弾性連結部15a,15bまたは弾性連結部14a,14bを単独で回転軸(回転軸hまたは回転軸jまたは回転軸i)として光反射部13のミラー31を捻り振動させる場合の共振周波数fは、下式(1)で表される。以下では、弾性連結部16a,16bを回転軸hとしてミラー31を捻り振動させる場合を代表して説明するが、弾性連結部15a,15b、弾性連結部14a,14bも同様である。
【0078】
【数1】
なお式(1)において、kは弾性連結部16a,16bのバネ定数、Jはミラー31の慣性モーメントである。
【0079】
そして、弾性連結部16a,16bのバネ定数kは、下式(2)で表される。
【0080】
【数2】
なお、式(2)において、βは、弾性連結部16a,16bの断面の形状から決まる係数である。また、aは、弾性連結部16a,16bの断面の長辺の長さである。また、bは、弾性連結部16a,16bの断面の短辺の長さである。また、Eは、ヤング率(横弾性係数)である。また、νはポアソン比である。また、lは弾性連結部16a,16bの長さである。即ち、バネ定数kは、ヤング率Eに比例する。
【0081】
さらに、ヤング率Eは、温度をTとして、下式(3)で表される。
【0082】
【数3】
なお式(3)において、E0は、0℃でのヤング率である。また、Δhtは温度係数である。即ち、温度Tが高くなるほどヤング率Eは低下し、温度Tが低くなるほどヤング率Eは増加する。
【0083】
したがって、温度Tの上昇に伴いヤング率Eが低下し、弾性連結部16a,16bのバネ定数kが低下すると、共振周波数fが低下する。また、温度Tの下降に伴いヤング率Eが増加し、弾性連結部16a,16bのバネ定数kが増加すると、共振周波数fが増加する。
【0084】
これに対し、光走査装置1では、熱膨張率が互いに異なる2種類の材料の部材が積層されてなる構造を有し、温度変化に伴う自身の収縮または膨張により、温度変化に伴うバネ定数k(ヤング率E)の変化を相殺する形状に弾性連結部16a,16bの形状を変化させる熱アクチュエータ機構Xをさらに備える。
【0085】
[熱アクチュエータ機構]
以下、熱アクチュエータ機構Xの構成と動作について説明する。
熱アクチュエータ機構Xは、図3(a)に示すように、シリコンを材料として棒状に形成された第1棒状部材51と、酸化シリコンを材料として棒状に形成された第2棒状部材52とが、その長手方向に直交する方向(以下、積層方向D1という)に沿って積層されて構成されている。また熱アクチュエータ機構Xは、温度が室温である状況下で、第1棒状部材51および第2棒状部材52が初期形状として例えば直線状となるように形成されている。なお、熱アクチュエータ機構Xの初期形状はこれに限るものではない。
【0086】
なお、シリコンおよび酸化シリコンの熱膨張率はそれぞれ、(2.6×10-6)および(0.5×10-6)である。このため、温度が室温より低い状況下では、図3(b)に示すように、シリコンは、酸化シリコンよりも大きく収縮する(矢印D2を参照)。これにより、熱アクチュエータ機構Xは、温度が室温より低くなると、第1棒状部材51と第2棒状部材52との接合面を挟んで第2棒状部材52(酸化シリコン)の外側面が凸になるように撓む。
【0087】
一方、温度が室温より高い状況下では、図3(c)に示すように、シリコンは、酸化シリコンよりも大きく膨張する(矢印D3を参照)。これにより、熱アクチュエータ機構Xは、温度が室温より高くなると、第1棒状部材51と第2棒状部材52との接合面を挟んで第1棒状部材51(シリコン)の外側面が凸になるように撓む。
【0088】
以下では、このような熱アクチュエータ機構Xの構成と動作とを利用して、温度変化に伴うバネ定数kの変化を相殺する形状に弾性連結部16a,16bの形状を変化させる各種の態様を、熱アクチュエータ機構Xの変形例の説明後に例示する。
【0089】
[熱アクチュエータ機構の変形例]
上記例では、第1棒状部材51がシリコンを材料とする部材であり、第2棒状部材52が例えばシリコンを熱酸化することにより形成される酸化シリコンを材料とする部材である構成について説明したが、例えば、以下のような熱アクチュエータ機構Xの構成も考えられる。
【0090】
本変形例の熱アクチュエータ機構Xは、図19(a)−(c)に示すように、シリコンを材料として棒状に形成された第2棒状部材52としてのシリコン部材52aと、第2棒状部材52の表面に積層方向D1に沿って積層された第1棒状部材51としての圧電体部材51aとから構成されている。
【0091】
圧電体部材51aは、絶縁体からなる薄膜圧電素子51bと、薄膜圧電素子51bの表面に積層方向D1に沿って積層された2つの電極51c,51dと有している。なお、電極51c,51dは、薄膜圧電素子51bに比べてさらに厚みが小さく形成されている。
【0092】
また、本実施形態の圧電体部材51aでは、2つの電極51c,51dのうち、シリコン部材52aの上面と薄膜圧電素子51bの下面とに接する方の電極51cとして白金(Pt)が用いられ、薄膜圧電素子51bの上面に接する方の電極51dとして金(Au)が用いられる。そして、Auの電極51dを正極、Ptの電極51cを負極(GND)として、一定電圧が印加されるように構成されている。
【0093】
このように構成された圧電体部材51aでは、例えば温度が室温である状況下において、一対の電極51d,51c間に一定電圧が印加されると、薄膜圧電素子51bが膨張する。この印加電圧を調整することにより、図20(b)に示すように、室温状況下における圧電体部材51aの歪みの大きさを初期値として決めることができる。
【0094】
一方、このように外部から応力を受けない状態で一定電圧を印加したときに生じる歪みの大きさを表す場合の係数として、圧電d定数(圧電歪定数)が定義されている。特に、この圧電歪定数のうち、d31定数は、薄膜圧電素子51bの長さが変化する割合を表し、温度が高くなるほど大きくなることが知られている(例えば「塩嵜忠著『圧電材料とその応用』シーエムシー出版,2002年」参照)。
【0095】
つまり、d31定数は、一定値ではなく、温度依存性を有している。このため、温度が室温より高い状況下では、図20(a)に示すように、薄膜圧電素子51bを室温時の状態から膨張させることができる(矢印D4を参照)。これにより、熱アクチュエータ機構Xでは、温度が室温よりも高くなると、圧電体部材51aとシリコン部材52aとの接合面を挟んで圧電体部材51aの外側面が初期値よりも大きく凸になるように撓む。
【0096】
一方、温度が室温より低い状況下では、図20(c)に示すように、薄膜圧電素子51bを室温時の状態から収縮させることができる(矢印D5を参照)。これにより、熱アクチュエータ機構Xでは、温度が室温よりも低くなると、圧電体部材51aとシリコン部材52aとの接合面を挟んで圧電体部材51aの外側面が初期値よりも小さく凸になるように撓む。
【0097】
なお、以下の実施例および変形例では、説明の重複を避けるため、熱アクチュエータ機構Xが第1棒状部材51および第2棒状部材52を有する構成を前提に説明し、第1棒状部材51を圧電体部材51a、第2棒状部材52をシリコン部材52aにそれぞれ置き換え可能であるものとする。
【0098】
[実施例1]
本実施例1では、熱アクチュエータ機構Xが、弾性連結部16a,16bに形成されている場合を代表して説明する。なお、熱アクチュエータ機構Xは、前述の式(1)〜(3)で説明した通り、弾性連結部15a,15b、弾性連結部14a,14bについても同様の考え方によって適用される。
【0099】
本実施例1の弾性連結部16a,16bは各々、図4(a)に示すように、一対の熱アクチュエータ機構Xの両端部が光反射部13と内ジンバル12とに接続されて構成される。また一対の熱アクチュエータ機構Xは各々、回転軸hを中心に所定距離だけ離間して配置されるとともに、第1棒状部材51および第2棒状部材52が各々、回転軸hを中心として対称となるように配置される。即ち、一対の熱アクチュエータ機構Xは、回転軸hに
対する直交方向に割り箸が割られたように分割され、各々が互いに平行に配置されて構成される。また一対の熱アクチュエータ機構Xは、回転軸hに対して、第1棒状部材51が外側方向、第2棒状部材52が内側方向に各々配置されてなる。
【0100】
なお、図4(a)に示す熱アクチュエータ機構Xでは、第1棒状部材51および第2棒状部材52が、動作前の停止した状態のミラー31の表面に対して、積層方向D1が平行となるように各々配置されているが、動作前の停止した状態のミラー31の表面に対して、積層方向D1が垂直となるように各々配置されてもよい。但し、この場合、第1棒状部材51および第2棒状部材52のうち、一方がミラー31の表面に対して垂直且つ順方向、他方がミラーの表面に対して垂直且つ逆方向に各々配置されることになる。また、このような置き換えは、以下の変形例および実施例においても適宜行うことができるが、説明の重複を避けるために以下の変形例についてはその説明を省略する。
【0101】
このように構成された弾性連結部16a,16bでは、図4(b)に示すように、例えば、温度が室温である状況下で、第1棒状部材51および第2棒状部材52が直線状になる。一方、温度が室温より低くなると、第1棒状部材51と第2棒状部材52との接合面を挟んで第2棒状部材52(酸化シリコン)の外側面が凸になるように撓み、温度が室温より高くなると、第1棒状部材51と第2棒状部材52との接合面を挟んで第1棒状部材51(シリコン)の外側面が凸になるように撓む。
【0102】
このため、低温時には、一対の熱アクチュエータ機構Xが、回転軸hに対する内側方向に凸となるように変形することにより、回転軸hを中心とする弾性連結部16a,16bの径の平均値(曲率)が減少し、これにより弾性連結部16a,16bのねじり剛性(ねじりバネ定数)が低下する。即ち、弾性連結部16a,16bのねじりばね定数が減少することによって、温度低下に伴うバネ定数k(ヤング率E)の増加分が相殺され、これにより温度低下に伴う共振周波数fの変化を抑制することができる。
【0103】
また、高温時には、一対の熱アクチュエータ機構Xが、回転軸hに対する外側方向に凸となるように変形することにより、回転軸hを中心とする弾性連結部16a,16bの径の平均値(曲率)が増加し、これにより弾性連結部16a,16bのねじり剛性(ねじりバネ定数)が増大する。即ち、弾性連結部16a,16bのねじりバネ定数が増加することによって、温度上昇に伴うバネ定数k(ヤング率E)の減少分が相殺され、これにより温度上昇に伴う共振周波数fの変化を抑制することができる。
【0104】
したがって、本実施例1の熱アクチュエータ機構Xによれば、自身の収縮または膨張により、温度変化に伴うバネ定数kの変化を相殺する形状に弾性連結部16a,16bの形状を変化させることができ、これにより温度変化に伴う共振周波数fの変化を抑制することで、温度変化による走査特性の変化を抑制することができる。
【0105】
例えば図10に示すように、温度変化に伴いヤング率E(バネ定数k)が変化すると共振周波数が変化する(図10の曲線L1を参照)。このときの仕様共振周波数からのずれ量をΔfaとする。一方、ヤング率Eが一定という条件の下で、温度変化に伴いミラー31の回転軸h周りのバネ定数(ねじりバネ定数)が変化すると、共振周波数が変化する(図10の曲線L2を参照)。このときの仕様共振周波数からのずれ量をΔfbとする。
【0106】
したがって、温度変化によりヤング率E(バネ定数k)とねじりバネ定数(ねじり剛性)が同時に変化した場合の仕様共振周波数からのずれ量は(Δfa−Δfb)となる。このため、(Δfa−Δfb)が、許容誤差Δεより小さくなるように設計することによって(図10の曲線L3を参照)、温度変化に伴う共振周波数fの変化を抑制することができる。
【0107】
また熱アクチュエータXは、熱膨張率が互いに異なる材料からなる第1棒状部材51と第2棒状部材52を積層して構成されている。したがって、温度が低くなると、熱膨張率が大きい第1棒状部材51が大きく収縮することにより、熱アクチュエータXが、第1棒状部材51と第2棒状部材52との接合面を挟んで、熱膨張率が小さい第2棒状部材52の外側面が凸になるように撓む。一方、温度が高くなると、熱膨張率が大きい第1棒状部材51が大きく膨張することにより、熱膨張率が大きい第1棒状部材51の外側面が凸になるように撓む。これにより、弾性連結部16a,16bの形状を、温度に応じた形状に自律的に変化させることができる。
【0108】
これにより、温度を検出する温度センサ、および温度検出結果に基づいて温度補正を行う制御回路などを用いることなく、温度変化に伴う共振周波数fの変化を抑制することができるため、光走査装置1の構成を簡略化することができる。
【0109】
また、熱膨張率が互いに異なる材料からなる第1棒状部材51および第2棒状部材は、シリコンを材料とするシリコン部材と、シリコンを熱酸化することにより形成される酸化シリコンを材料とする酸化シリコン部材である。シリコンおよび酸化シリコンの熱膨張率はそれぞれ、(2.6×10-6)および(0.5×10-6)であり、熱膨張率が大きく異なる。そして、シリコンの一部を熱酸化することによって、シリコンと酸化シリコンが積層された構造を形成することができるため、別々に形成された2つの部材を張り合わせるという工程が不要となり、製造工程を簡略化することができる。
【0110】
また、第2棒状部材52をシリコン部材52aに置き換えるとともに、第1棒状部材51として、自身の歪みの大きさが印加電圧によって調整可能な圧電体部材51aを採用することができる。この構成によれば、使用温度範囲における前述のずれ量(Δfa−Δfb)が許容誤差Δεより小さくなるように印加電圧(一定電圧)を予め調整しておくことができる点で有利である。
【0111】
なお、この構成では、前述した通り、印加電圧を調整することにより、室温状況下における圧電体部材51aの歪みの大きさを初期値として決めることができる。そして、温度が室温より高い状況下では、薄膜圧電素子51bを室温時の状態から膨張させることができる(矢印D4を参照)。これにより、熱アクチュエータ機構Xでは、温度が室温よりも高くなると、圧電体部材51aとシリコン部材52aとの接合面を挟んで圧電体部材51aの外側面が初期値よりも大きく凸になるように撓む(図20(a)参照)。
【0112】
一方、温度が室温より低い状況下では、薄膜圧電素子51bを室温時の状態から収縮させることができる(矢印D5を参照)。これにより、熱アクチュエータ機構Xでは、温度が室温よりも低くなると、圧電体部材51aとシリコン部材52aとの接合面を挟んで圧電体部材51aの外側面が初期値よりも小さく凸になるように撓む(図20(c)参照)。これにより、弾性連結部16a,16bの形状を、温度に応じた形状に自律的に変化させることができる。
【0113】
また、熱アクチュエータ機構Xでは、第1棒状部材51(またはシリコン部材52a)および第2棒状部材52(または圧電体部材51a)が、動作前の停止した状態のミラー31の表面に対して、積層方向D1が平行または垂直となるように各々配置される。
【0114】
このような構成によれば、第1棒状部材51(またはシリコン部材52a)および第2棒状部材52(または圧電体部材51a)の収縮または膨張が弾性連結部16a,16bの形状変化を介して光反射部13に作用する方向を単純化できる分、第1弾性部材および第2弾性部材の熱膨張率(素材)や長さ、厚み(形状)、圧電体部材51aの素材(d31定数)や印加電圧等の選択に係る設計を比較的容易にすることができる。
【0115】
以上説明した実施形態において、光反射部13が反射部、回転軸hが第1回転軸、回転軸jが第2回転軸、回転軸iが第3回転軸、弾性連結部16a,16bが第1弾性変形部材、弾性連結部15a,15bが第2弾性変形部材、及び弾性連結部14a,14bが第3弾性変形部材、第1棒状部材51が第1弾性部材、第2棒状部材52が第2弾性部材、圧電体部材51aが圧電体、内ジンバル12が第1支持部、外ジンバル11が第2支持部、支持部3が第3支持部の各例に相当する。
【0116】
[変形例1−1]
次に、上記実施例1の弾性連結部16a,16bに関する変形例1−1を説明する。
上記実施例1の弾性連結部16a,16bは各々、一対の熱アクチュエータ機構Xの両端部が光反射部13と内ジンバル12とに接続されて構成されていたが、図5に示す変形例1−1のように、熱アクチュエータ機構Xの両端部のうち、一方の端部と光反射部13、他方の端部と内ジンバル12とを各々連結する弾性リンク部21を備えて構成されてもよい。
【0117】
即ち、本変形例1−1の弾性連結部16a,16bは、一対の熱アクチュエータ機構Xに相当する捻りバネ部20と、捻りバネ部20の両端部を各々、光反射部13および内ジンバル12に連結する弾性リンク部21とから構成される。
【0118】
捻りバネ部20と弾性リンク部21とは、捻りバネ部20が回転軸hを中心に捻り変形するのに対し(図6(a)参照)、弾性リンク部21が1自由度で略直線動作する点で相違する(図6(b)参照)。
【0119】
このように構成された弾性連結部16a,16bによれば、弾性リンク部21を設けることにより、捻りバネ部20が温度変化に伴い変形する際の回転軸h方向の自由度が与えられ、捻りバネ部20がより変形しやすくなり、上記実施例1の効果を得やすくなる。
【0120】
しかしながら、弾性リンク部21を捻りバネ部20の両端部に各々設けると、熱アクチュエータ機構Xの自由度が増加する分、光反射部13に対して不安定な動作を引き起こす可能性もある。したがって、弾性リンク部21を、捻りバネ部20の両端部のうちの一方の端部にだけ設ける構成であってもよい。
【0121】
[変形例1−2]
次に、上記実施例1の弾性連結部16a,16bに関する変形例1−2を説明する。
上記実施例1の弾性連結部16a,16bは各々、分割された一対の熱アクチュエータ機構Xの各部が、平行に配置されて構成されていたが、図7に示す変形例1−2のように、ハの字状またはVの字状に配置されて構成されてもよい。
【0122】
即ち、本変形例1−2の弾性連結部16a,16bは、一対の熱アクチュエータ機構Xに相当する捻りバネ部20と、捻りバネ部20の一方の端部と光反射部13とを連結する第1弾性リンク部21aと、捻りバネ部20の他方の端部と内ジンバル12とを連結する第2弾性リンク部21bとから構成される。
【0123】
そして、第1弾性リンク部21aおよび第2弾性リンク部21bの各々の両端には、捻りバネ部20を構成する第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bの端部が接続される辺部が形成され、これら辺部と第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bとによって台形の形状をなすように構成される。
【0124】
このように構成された弾性連結部16a,16bによれば、捻りバネ部20の形状にトラス効果が加わり、図7の破線で示すように、回転軸hに対する垂直方向の変形自由度に対する剛性が高まり、より安定した捻り振動を得ることができる。なお、第1弾性リンク部21aの辺部と第2弾性リンク部21bの辺部とは、長さが異なっていればよく、いずれが長くてもよい。
【0125】
[変形例1−3]
次に、上記実施例1の弾性連結部16a,16bに関する変形例1−3を説明する。
上記実施例1の弾性連結部16a,16bは、一対の熱アクチュエータ機構Xが分割されて構成されていたが、図8(a)に示す変形例1−3のように、第1捻りバネ部20aと第2捻りバネ部20bとが一体に構成されてもよい。
【0126】
即ち、本変形例1−3の弾性連結部16a,16bは、一対の熱アクチュエータ機構Xに相当する第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bと、第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bの各一方の端部と光反射部13とを連結する一対の第1弾性リンク部21aと、第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bの各他方の端部と内ジンバル12とを連結する一対の第2弾性リンク部21bとから構成される。また第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bは、回転軸hに対して、第2棒状部材52が外側方向、第1棒状部材51が内側方向に各々配置されてなる。
【0127】
そして、第1捻りバネ部20aの第1棒状部材51と第2捻りバネ部20bの第1棒状部材51とが、H状となるように一体に形成されて構成される。
このようなH状部材として構成された弾性連結部16a,16bでは、図8(b)に示すように、温度が室温である状況下で、第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bが直線状になる。一方、温度が室温より低くなると、第1棒状部材51と第2棒状部材52との接合面を挟んで第2棒状部材52(酸化シリコン)の外側面が凸になるように撓み、温度が室温より高くなると、第1棒状部材51と第2棒状部材52との接合面を挟んで第1棒状部材51(シリコン)の外側面が凸になるように撓む。
【0128】
このため、低温時には、第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bが、回転軸hに対する外側方向に凸となるように変形することにより、第1弾性リンク部21aと第2弾性リンク部21bとからなる各々の弾性リンク部21が、回転軸hに対する内側方向に変位(傾斜)する。これにより、回転軸hを中心とする弾性連結部16a,16bの径の平均値(曲率)が減少することで、弾性連結部16a,16bのねじり剛性(ねじりバネ定数)が低下する。即ち、弾性連結部16a,16bのねじりばね定数が減少することによって、温度低下に伴うバネ定数k(ヤング率E)の増加分が相殺され、これにより温度低下に伴う共振周波数fの変化を抑制することができる。
【0129】
また、高温時には、第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bが、回転軸hに
対する内側方向に凸となるように変形することにより、各々の弾性リンク部21が回転軸hに対する外側方向に変位(傾斜)する。これにより、回転軸hを中心とする弾性連結部16a,16bの径の平均値(曲率)が増加することで、弾性連結部16a,16bのねじり剛性(ねじりバネ定数)が増大する。即ち、弾性連結部16a,16bのねじりバネ定数が増加することによって、温度上昇に伴うバネ定数k(ヤング率E)の減少分が相殺され、これにより温度上昇に伴う共振周波数fの変化を抑制することができる。
【0130】
したがって、このように構成された弾性連結部16a,16bによれば、弾性リンク部21を設けることにより、第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bの形状の変化に伴って回転軸hに対する直交方向に生じる力を吸収することができる。また、第1捻りバネ部20aと第2捻りバネ部20bとを一体に構成することにより、回転軸hに対する垂直方向の変形自由度に対する剛性がより高まり、さらに安定した捻り振動を得ることができる。よって、この構成によれば、装置の信頼性を高くすることができる。
【0131】
[実施例2]
次に、本実施例2では、熱アクチュエータ機構Xが、弾性連結部16a,16bと別体に構成されている場合を代表して説明する。なお、熱アクチュエータ機構Xは、前述の式(1)〜(3)で説明した通り、弾性連結部15a,15b、弾性連結部14a,14bについても同様の考え方によって適用される。
【0132】
本実施例2の弾性連結部16a,16bは各々、図11(a)に示すように、第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bを備える。また第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bの各一方の端部は、光反射部13に連結されている。また弾性連結部16a,16bは各々、第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bの各他方の端部と内ジンバル12とを連結する一対の弾性リンク部21を備えて構成される。なお、本実施例2の第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bは、熱アクチュエータ機構Xに相当しない。
【0133】
そして、熱アクチュエータ機構Xは、弾性連結部16a,16bに対して略垂直に配置される変形部材であり、一方の端部が内ジンバル12の固定端に接続され、他方の端部が弾性リンク部21を介して弾性連結部16a,16bに接続されて配置される。また熱アクチュエータ機構Xは、光反射部13に対して、第1棒状部材51が外側方向、第2棒状部材52が内側方向に各々配置されてなる。即ち、第1棒状部材51および第2棒状部材52が、動作前の停止した状態のミラー31の表面に対して、積層方向D1が平行となるように各々配置されている。
【0134】
このように配置された熱アクチュエータ機構Xによれば、図11(b)に示すように、温度が室温である状況下で、第1棒状部材51および第2棒状部材52が直線状になる。なお、この状態において第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bが設計周波数で得られる曲率になる(本実施例では初期形状として外側に撓む)ように配置されている。一方、温度が室温より低くなると、第1棒状部材51と第2棒状部材52との接合面を挟んで第2棒状部材52(酸化シリコン)の外側面が凸になるように撓み、温度が室温より高くなると、第1棒状部材51と第2棒状部材52との接合面を挟んで第1棒状部材51(シリコン)の外側面が凸になるように撓む。
【0135】
このため、低温時には、弾性リンク部21が光反射部13から遠ざかる方向に変位することにより、第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bが直線状になり、回転軸hを中心とする弾性連結部16a,16bの径の平均値(曲率)が減少する。これにより弾性連結部16a,16bのねじり剛性(ねじりバネ定数)が低下する。即ち、弾性連結部16a,16bのねじりバネ定数が減少することによって、温度低下に伴うバネ定数k(ヤング率E)の増加分が相殺され、これにより温度低下に伴う共振周波数fの変化を抑制することができる。
【0136】
また、高温時には、弾性リンク部21が光反射部13に近づく方向に変位することにより、第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bが初期形状よりも大きく外側に撓み、回転軸hを中心とする弾性連結部16a,16bの径の平均値(曲率)が増加する。これにより弾性連結部16a,16bのねじり剛性(ねじりバネ定数)が増大する。即ち、弾性連結部16a,16bのねじりバネ定数が増加することによって、温度上昇に伴うバネ定数k(ヤング率E)の減少分が相殺され、これにより温度上昇に伴う共振周波数fの変化を抑制することができる。
【0137】
[変形例2−1−1]
次に、上記実施例2の弾性連結部16a,16bに関する変形例2−1−1を説明する。
【0138】
上記実施例2の弾性連結部16a,16bは各々、第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bが別体に構成されていたが、図12に示す変形例2−1−1のように、第1捻りバネ部20aと第2捻りバネ部20bとが一体に構成されてもよい。
【0139】
即ち、本変形例2−1−1の弾性連結部16a,16bは、第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bと、第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bの各一方の端部と光反射部13とを連結する一対の第1弾性リンク部21aと、第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bの各他方の端部と弾性リンク部21とを連結する一対の第2弾性リンク部21bとから構成される。
【0140】
そして、第1捻りバネ部20aと第2捻りバネ部20bとが、H状となるように一体に形成されて構成される。すなわち、弾性連結部16a,16bがH状部材に相当する。
このように配置された熱アクチュエータ機構Xによれば、図11(b)に示すように、温度が室温である状況下で、第1棒状部材51および第2棒状部材52が直線状になる。なお、この状態において第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bは初期形状として内側に撓むように配置されている。一方、温度が室温より低くなると、第1棒状部材51と第2棒状部材52との接合面を挟んで第2棒状部材52(酸化シリコン)の外側面が凸になるように撓み、温度が室温より高くなると、第1棒状部材51と第2棒状部材52との接合面を挟んで第1棒状部材51(シリコン)の外側面が凸になるように撓む。
【0141】
このため、低温時には、弾性リンク部21が光反射部13から遠ざかる方向に変位することにより、第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bが直線状になり、回転軸hを中心とする弾性連結部16a,16bの径の平均値(曲率)が減少する。これにより弾性連結部16a,16bのねじり剛性(ねじりバネ定数)が低下する。即ち、弾性連結部16a,16bのねじりバネ定数が減少することによって、温度低下に伴うバネ定数k(ヤング率E)の増加分が相殺され、これにより温度低下に伴う共振周波数fの変化を抑制することができる。
【0142】
また、高温時には、弾性リンク部21が光反射部13に近づく方向に変位することにより、第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bが初期形状よりも大きく内側に撓み、回転軸hを中心とする弾性連結部16a,16bの径の平均値(曲率)が増加する。これにより弾性連結部16a,16bのねじり剛性(ねじりバネ定数)が増大する。即ち、弾性連結部16a,16bのねじりバネ定数が増加することによって、温度上昇に伴うバネ定数k(ヤング率E)の減少分が相殺され、これにより温度上昇に伴う共振周波数fの変化を抑制することができる。
【0143】
[変形例2−1−2]
次に、上記実施例2の弾性連結部16a,16bおよび熱アクチュエータ機構Xに関する変形例2−1−2を説明する。
【0144】
上記実施例2の弾性連結部16a,16bでは各々、第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bが、弾性リンク部21および熱アクチュエータ機構Xを介して内ジンバル12の固定端に接続されていたが、図21に示す変形例2−1−2のように、内ジンバル12の固定端のうち、回転軸hの延長上に位置する固定端61Vに弾性リンク部21を介して接続され、回転軸hに対して略垂直方向に位置する固定端61Hに熱アクチュエータ機構Xを介して接続されてもよい。
【0145】
また、上記実施例2の熱アクチュエータ機構Xでは、第1棒状部材51および第2棒状部材52が、ミラー31の表面に対して、積層方向D1が平行となるように各々配置されているが、積層方向D1が垂直となるように各々配置されてもよい。
【0146】
また、上記実施例2の熱アクチュエータ機構Xにおいて、第1棒状部材51を圧電体部材51a、第2棒状部材52をシリコン部材52aにそれぞれ置き換えてもよい。
このように構成された熱アクチュエータ機構Xでは、温度が室温である状況下では、印加電圧に応じた初期値の大きさで圧電体部材51aの外側面が凸になるように圧電体部材51aが湾曲しており、温度が室温よりも高くなると、圧電体部材51aとシリコン部材52aとの接合面を挟んで圧電体部材51aの外側面が初期値よりも大きく凸になるように湾曲する。これにより、弾性連結部16a,16b(およびこれに連動して弾性リンク部21)が固定端61Hの方向に変位する力学的作用を受けるため、弾性連結部16a,16bのねじり剛性(ねじりバネ定数)が増大する。即ち、弾性連結部16a,16bのねじりばね定数が増加することによって、共振周波数が高くなる方向に向かい、温度上昇に伴うバネ定数k(ヤング率E)の減少分が相殺されることから、温度上昇に伴う共振周波数fの変化を抑制することができる。
【0147】
一方、温度が室温よりも低くなると、圧電体部材51aとシリコン部材52aとの接合面を挟んで圧電体部材51aの外側面が初期値よりも小さく凸になるように湾曲する。これにより、弾性連結部16a,16b(およびこれに連動して弾性リンク部21)が回転軸hの方向に変位する力学的作用を受けるため、弾性連結部16a,16bのねじり剛性(ねじりバネ定数)が減少する。即ち、弾性連結部16a,16bのねじりばね定数が減少することによって、共振周波数が低くなる方向に向かい、温度低下に伴うバネ定数k(ヤング率E)の増加分が相殺されることから、温度低下に伴う共振周波数fの変化を抑制することができる。
【0148】
また、このように構成された弾性連結部16a,16bでは、弾性連結部16a,16bに連動して、弾性連結部16a,16bに対して逆向きに弾性リンク部21が変位する。このため、圧電体部材51aおよびシリコン部材52aの形状の変化に伴って回転軸hに対する直交方向に生じる力を吸収できることから、変形自由度に対する剛性が高まり、より安定した捻り振動を得ることができる。
【0149】
[変形例2−1−3]
次に、上記変形例2−1−2の弾性連結部16a,16bおよび熱アクチュエータ機構Xに関する変形例2−1−3を説明する。
【0150】
上記変形例2−1−2の弾性連結部16a,16bでは、第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bが、弾性リンク部21を介して固定端61Vに接続され、熱アクチュエータ機構Xを介して固定端61Hに接続されていたが、図22に示す変形例2−1−3のように、2種類の熱アクチュエータ機構Xを介して固定端61Hに接続されるだけでもよい。
【0151】
2種類の熱アクチュエータ機構Xは、回転軸hに対して略垂直方向となり、互いに平行となるように配置され、このうち、一方の熱アクチュエータ機構X1が、反射部13に対する弾性連結部16a,16bの反対側端部と固定端61Hとに接続され、他方の熱アクチュエータ機構X2が、弾性連結部16a,16bにおける熱アクチュエータ機構X1よりも反射部13側の部位と固定端61Hとに接続されている。
【0152】
そして、2種類の熱アクチュエータ機構Xは、ミラー31の表面に対して、積層方向D1が垂直となり、且つ積層方向D1が互いに逆向きとなるように各々配置されている。例えば、熱アクチュエータ機構X2において、圧電体部材51aが表面、シリコン部材52aが裏面となるように各々配置されている場合、熱アクチュエータX1においては、シリコン部材52aが表面、圧電体部材51aが裏面となるように各々配置されることになる。
【0153】
このように構成された熱アクチュエータ機構Xによれば、温度変化に伴って、熱アクチュエータ機構X2の湾曲による弾性連結部16a,16bにおけるミラー31の表面に対する垂直順方向への変位が、熱アクチュエータ機構X1の湾曲による弾性連結部16a,16bにおけるミラー31の表面に対する垂直逆方向への変位によって相殺されるため、反射部13の厚さ方向に対する変位を抑制することができる。これにより、反射部13のより安定した振動動作を得ることができる。
【0154】
[変形例2−1−4]
次に、上記変形例2−1−2の弾性連結部16a,16bおよび熱アクチュエータ機構Xに関するもう一つの変形例2−1−4を説明する。
【0155】
上記変形例2−1−2の弾性連結部16a,16bでは、第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bの一端が、弾性リンク部21を介して固定端61Vに接続され、熱アクチュエータ機構Xを介して固定端61Hに接続されていたが、図23に示す変形例2−1−4のように、弾性リンク部21を介して固定端61Vに接続されるだけでもよい。
【0156】
但し、第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bの略中央部が、棒状部材63を介して固定端61Hに接続されている。ここで、棒状部材63は、固定端61Hに対する略垂直方向に配置された部材である。なお、弾性連結部16a,16bでは、第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bの他端が、さらに別の弾性リンク部21を介して反射部13に接続されてもよい。
【0157】
また、熱アクチュエータ機構Xは、前述の棒状部材63と、圧電体部材51aおよびシリコン部材52aとを備えて構成される。このうち、圧電体部材51aおよびシリコン部材52aは、自身の長手方向が回転軸hに対する垂直方向(棒状部材63と同方向)となるように配置され、棒状部材63よりも固定端61V側において第1捻りバネ部20aと第2捻りバネ部20bとに接続されている。つまり、圧電体部材51aおよびシリコン部材52aは、棒状部材63と固定端61V側の弾性リンク部21との間に配置されている。
【0158】
このように構成された熱アクチュエータ機構Xでは、温度が室温である状況下では、印加電圧に応じた初期値の大きさで圧電体部材51aの外側面が凸になるように圧電体部材51aが湾曲しており、温度が室温よりも高くなると、圧電体部材51aとシリコン部材52aとの接合面を挟んで圧電体部材51aの外側面が初期値よりも大きく凸になるように湾曲する。これにより、弾性連結部16a,16b(およびこれに連動して固定端61V側の弾性リンク部21)が回転軸hに対する内側方向に変位する。すると、弾性連結部16a,16bでは、棒状部材63との接合部を支点として反射部13側の端部(およびこれに連動して反射部13側の弾性リンク部21)が回転軸hに対する外側方向に変位する。このとき、反射部13側の弾性リンク部21の変位は、弾性連結部16a,16bにおける圧電体部材51aおよびシリコン部材52aと棒状部材63との距離に対する、棒状部材63と反射部13側の弾性リンク部21との距離の比に応じた分だけ拡大されることになる。このように、圧電体部材51aの湾曲による変位に比べて、反射部13側の弾性リンク部21が固定端61Hの方向への変位を拡大する力学的作用を受けるため、弾性連結部16a,16bのねじり剛性(ねじりバネ定数)が効率的に増大する。即ち、弾性連結部16a,16bのねじりばね定数がこのように増加することによって、共振周波数が高くなる方向に向かい、温度上昇に伴うバネ定数k(ヤング率E)の減少分が相殺されることから、温度上昇に伴う共振周波数fの変化を抑制することができる。
【0159】
一方、温度が室温よりも低くなると、圧電体部材51aとシリコン部材52aとの接合面を挟んで圧電体部材51aの外側面が初期値よりも小さく凸になるように湾曲する。これにより、弾性連結部16a,16b(およびこれに連動して固定端61V側の弾性リンク部21)が回転軸hに対する外側方向に変位する。すると、弾性連結部16a,16bでは、棒状部材63との接合部を支点として反射部13側の端部(およびこれに連動して反射部13側の弾性リンク部21)が回転軸hに対する内側方向に変位する。このとき、反射部13側の弾性リンク部21の変位は、弾性連結部16a,16bにおける圧電体部材51aおよびシリコン部材52aと棒状部材63との距離に対する、棒状部材63と反射部13側の弾性リンク部21との距離の比に応じた分だけ拡大されることになる。このように、圧電体部材51aの湾曲による変位に比べて、反射部13側の弾性リンク部21が回転軸hの方向への変位を拡大する力学的作用を受けるため、弾性連結部16a,16bのねじり剛性(ねじりバネ定数)が効率的に減少する。即ち、弾性連結部16a,16bのねじりばね定数がこのように減少することによって、共振周波数が低くなる方向に向かい、温度低下に伴うバネ定数k(ヤング率E)の増加分が相殺されることから、温度低下に伴う共振周波数fの変化を抑制することができる。
【0160】
なお、本変形例2−1−4において、圧電体部材51aおよびシリコン部材52aが変形部材に相当し、棒状部材63が変位拡大部に相当する。
[変形例2−1−5]
次に、上記変形例2−1−4の弾性連結部16a,16bおよび熱アクチュエータ機構Xに関する変形例2−1−5を説明する。
【0161】
上記変形例2−1−4の弾性連結部16a,16bでは、第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bの略中央部が、棒状部材63を介して固定端61Hに接続されていたが、図24に示す変形例2−1−5のように、第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bの一端が固定端61Vに接続され、第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bの他端が反射部13に接続されてもよい。
【0162】
但し、第1捻りバネ部20aの略中央部と第2捻りバネ部20bの略中央部とが熱アクチュエータ機構Xに接続されている。
熱アクチュエータ機構Xは、圧電体部材51aおよびシリコン部材52aからなり、自身の長手方向が回転軸h方向となるように配置された変形部材65と、第1捻りバネ部20aの略中央部(第2捻りバネ部20bの略中央部についても同様)と変形部材65とに接続された変位変換部67とを備えて構成される。
【0163】
このうち、変位変換部67は、3つの棒状部材が繋ぎ合わされた形状を有し、各端部が、変形部材65の両端と第1捻りバネ部20aの略中央部(第2捻りバネ部20bの略中央部についても同様)とに接続されている。そして、変形部材65の収縮または膨張による回転軸h方向の変位を、回転軸hに対する垂直方向(且つ、ミラー31の表面に対する平行方向)に変換し、第1捻りバネ部20aの略中央部(第2捻りバネ部20bの略中央部についても同様)に伝達するように構成されている。
【0164】
このように構成された熱アクチュエータ機構Xでは、温度が室温である状況下では、印加電圧に応じた初期値の大きさで圧電体部材51aの外側面が凸になるように圧電体部材51aが湾曲しており、温度が室温よりも高くなると、圧電体部材51aとシリコン部材52aとの接合面を挟んで圧電体部材51aの外側面が初期値よりも大きく凸になるように湾曲する。このとき、変位変換部67により、弾性連結部16a,16bの略中央部が回転軸hに対する外側方向に変位することから、弾性連結部16a,16bの径の平均値(曲率)が増加する。これにより弾性連結部16a,16bのねじり剛性(ねじりバネ定数)が増大する。即ち、弾性連結部16a,16bのねじりばね定数が増加することによって、温度上昇に伴うバネ定数k(ヤング率E)の減少分が相殺され、これにより温度上昇に伴う共振周波数fの変化を抑制することができる。
【0165】
一方、温度が室温よりも低くなると、圧電体部材51aとシリコン部材52aとの接合面を挟んで圧電体部材51aの外側面が初期値よりも小さく凸になるように湾曲する。このとき、変位変換部67により、弾性連結部16a,16bの略中央部が回転軸hに対する内側方向に変位することから、弾性連結部16a,16bの径の平均値(曲率)が低下する。これにより弾性連結部16a,16bのねじり剛性(ねじりバネ定数)が減少する。即ち、弾性連結部16a,16bのねじりバネ定数が減少することによって、温度低下に伴うバネ定数k(ヤング率E)の減少分が相殺され、これにより温度低下に伴う共振周波数fの変化を抑制することができる。
【0166】
[変形例2−2]
次に、上記実施例2の熱アクチュエータ機構Xに関する変形例2−2を説明する。
上記実施例1の熱アクチュエータ機構Xは、弾性連結部16a,16bに対して略垂直に配置され、且つ、一方の端部が内ジンバル12の固定端に接続され、他方の端部が弾性リンク部21に接続されて配置されて構成されていたが、図13(a)に示す変形例2−2(1)のように、配置されて構成されてもよい。
【0167】
即ち、本変形例2−2の熱アクチュエータ機構Xは、弾性連結部16a,16bに対して略平行に配置された第1熱アクチュエータX1および第2熱アクチュエータX2から構成される。
【0168】
また光反射部13に対する第1弾性リンク部21aの反対側端部には、弾性連結部16a,16bに対して略垂直に配置された第1可動部材25aの一方の端部片面が接続され、その端部他面には第1捻りバネ部20a(第2捻りバネ部20bも同様)の一方の端部が接続されている。また第1可動部材25aの他方の端部には、第1熱アクチュエータX1の一方の端部が接続され、第1熱アクチュエータX1の他方の端部には、光反射部13のミラー支持枠32から回転軸hに対する垂直方向に突設された突設部材27の片面が接続されている。
【0169】
また内ジンバル12(固定端)に対する第2弾性リンク部21bの反対側端部には、第1可動部材25aよりも内ジンバル12側に配置された第2可動部材25bの一方の端部方面が接続され、その端部他面には、第1捻りバネ部20a(第2捻りバネ部20bも同様)の他方の端部が接続されている。また第2可動部材25bの他方の端部には、第2熱アクチュエータX2の一方の端部が接続され、第2熱アクチュエータX2の他方の端部には、内ジンバル12の固定端から回転軸hに対する垂直方向に突設された突設部材29の片面が接続されている。
【0170】
そして、第1熱アクチュエータX1および第2熱アクチュエータX2は、回転軸hに対して、第2棒状部材52が外側方向、第1棒状部材51が内側方向に各々配置されてなる。
【0171】
このように配置された第1熱アクチュエータX1および第2熱アクチュエータX2によれば、図13(b)に示すように、温度が室温である状況下で、第1熱アクチュエータX1および第2熱アクチュエータX2が直線状になる。一方、温度が室温より低くなると、第1棒状部材51と第2棒状部材52との接合面を挟んで第2棒状部材52(酸化シリコン)の外側面が凸になるように撓み、温度が室温より高くなると、第1棒状部材51と第2棒状部材52との接合面を挟んで第1棒状部材51(シリコン)の外側面が凸になるように撓む。
【0172】
このため、低温時には、弾性連結部16a,16bが回転軸hに近づく方向に変位することにより、回転軸hを中心とする弾性連結部16a,16bの径の平均値(曲率)が減少する。これにより弾性連結部16a,16bのねじり剛性(ねじりバネ定数)が低下する。即ち、弾性連結部16a,16bのねじりばね定数が減少することによって、温度低下に伴うバネ定数k(ヤング率E)の増加分が相殺され、これにより温度低下に伴う共振周波数fの変化を抑制することができる。
【0173】
また、高温時には、弾性連結部16a,16bが回転軸hから遠ざかる方向に変位することにより、回転軸hを中心とする弾性連結部16a,16bの径の平均値(曲率)が増加する。これにより弾性連結部16a,16bのねじり剛性(ねじりバネ定数)が増大する。即ち、弾性連結部16a,16bのねじりばね定数が増加することによって、温度上昇に伴うバネ定数k(ヤング率E)の減少分が相殺され、これにより温度上昇に伴う共振周波数fの変化を抑制することができる。
【0174】
なお、本変形例2−2の熱アクチュエータ機構Xは、弾性連結部16a,16bに対して略平行に配置された第1熱アクチュエータX1および第2熱アクチュエータX2から構成されていたが、図14に示すように、第1熱アクチュエータX1および第2熱アクチュエータX2が、円弧状に形成され、光反射部13のミラー31の縁に沿って配置される構成であってもよい。また図15及び図16に示すように、第1熱アクチュエータX1および第2熱アクチュエータX2のいずれか一方だけによって構成されてもよい。
【0175】
但し、図14(変形例2−2(2))および図16(変形例2−2(4))に示す熱アクチュエータ機構X(X1,X2)は、回転軸h(又は、光反射部13の中心)に対して、第1棒状部材51が外側方向、第2棒状部材52が内側方向に各々配置されてなる点で、上記図13(変形例2−2(1))および図15(変形例2−2(3))に示す熱アクチュエータ機構Xと相違する。
【0176】
[変形例2−3]
次に、上記実施例2の弾性連結部16a,16bに関する変形例2−3を説明する。
上記実施例1の弾性連結部16a,16bは各々、第1捻りバネ部20aおよび第2捻りバネ部20bを備えて構成されていたが、図17(a)に示す変形例2−3(1)のように、1つの捻りバネ部20を備えて構成されてもよい。
【0177】
即ち、本変形例2−3の弾性連結部16a,16bは、捻りバネ部20と、捻りバネ部20の一方の端部と熱アクチュエータ機構Xとを連結する弾性リンク部21とから構成される。
【0178】
そして、熱アクチュエータ機構Xは、弾性連結部16a,16bに対して略垂直に配置
され、且つ、両端部が内ジンバル12の固定端に接続され、中央部が弾性リンク部21に接続されて配置される。また熱アクチュエータ機構Xは、光反射部13に対して、第2棒状部材52が外側方向、第1棒状部材51が内側方向に各々配置されてなる。
【0179】
このように配置された熱アクチュエータ機構Xによれば、図17(b)に示すように、温度が室温である状況下で、第1棒状部材51および第2棒状部材52が直線状になる。一方、温度が室温より低くなると、第1棒状部材51と第2棒状部材52との接合面を挟んで第2棒状部材52(酸化シリコン)の外側面が凸になるように撓み、温度が室温より高くなると、第1棒状部材51と第2棒状部材52との接合面を挟んで第1棒状部材51(シリコン)の外側面が凸になるように撓む。
【0180】
このため、低温時には、弾性リンク部21が光反射部13に近づく方向に変位することにより、弾性連結部16a,16bの長さが小さくなる。これにより弾性連結部16a,16bのねじり剛性(ねじりバネ定数)が低下する。即ち、弾性連結部16a,16bのねじりばね定数が減少することによって、温度低下に伴うバネ定数k(ヤング率E)の増加分が相殺され、これにより温度低下に伴う共振周波数fの変化を抑制することができる。
【0181】
また、高温時には、弾性リンク部21が光反射部13から遠ざかる方向に変位することにより、弾性連結部16a,16bの長さが大きくなる。これにより弾性連結部16a,16bのねじり剛性(ねじりバネ定数)が増大する。即ち、弾性連結部16a,16bのねじりばね定数が増加することによって、温度上昇に伴うバネ定数k(ヤング率E)の減少分が相殺され、これにより温度上昇に伴う共振周波数fの変化を抑制することができる。
【0182】
なお、本変形例2−3の熱アクチュエータ機構Xは、弾性連結部16a,16bに対して略垂直に配置されて構成されていたが、図18(a)に示すように、弾性連結部16a,16bに対して略平行に配置されて構成されてもよい。
【0183】
但し、図18(変形例2−3(2))に示す熱アクチュエータ機構Xでは、第1棒状部材51が、光反射部13に対する弾性連結部16a,16bの反対側端部と、内ジンバル12の固定端から光反射部13側に延設された延設部材28とに接続され、第2棒状部材52が、光反射部13に対して、第1棒状部材51より外側方向に配置されてなる。
【0184】
なお、第1棒状部材51は、エ字状に形成され、その上辺および下辺において、一方の端部が弾性連結部16a,16bに接続され、他方の端部が第1棒状部材51に積層されて構成されている。
【0185】
このように構成された熱アクチュエータ機構Xによれば、図18(b)に示すように、温度が室温である状況下で、第1棒状部材51および第2棒状部材52が直線状になる。一方、温度が室温より低くなると、第1棒状部材51の上辺および下辺が、光反射部13に近づく方向に凸となるように変形し、温度が室温より高くなると、第1棒状部材51の上辺および下辺が、光反射部13から遠ざかる方向に凸となるように変形する。
【0186】
このため、低温時には、第1棒状部材51に接続された弾性連結部16a,16bの長さが小さくなることにより、弾性連結部16a,16bのねじり剛性(ねじりバネ定数)が低下する。即ち、弾性連結部16a,16bのねじりばね定数が減少することによって、温度低下に伴うバネ定数k(ヤング率E)の増加分が相殺され、これにより温度低下に伴う共振周波数fの変化を抑制することができる。
【0187】
また、高温時には、第1棒状部材51に接続された弾性連結部16a,16bの長さが大きくなることにより、弾性連結部16a,16bのねじり剛性(ねじりバネ定数)が増大する。即ち、弾性連結部16a,16bのねじりばね定数が増加することによって、温度上昇に伴うバネ定数k(ヤング率E)の減少分が相殺され、これにより温度上昇に伴う共振周波数fの変化を抑制することができる。
【0188】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
【0189】
例えば上記実施形態においては、熱アクチュエータ機構Xとしてシリコンと酸化シリコンとを組み合わせたものを示した。しかし、シリコンに対して熱膨張率の異なる材料であれば、酸化シリコン以外の材料も選択可能であり、例えば、アルミ等の金属材料、ポリイミド、エポキシ等の樹脂材料を用いてもよい。
【0190】
また上記実施形態においては、3自由度連成振動系を構成する光走査装置1を適用したものを示したが、これに限らず、少なくとも光反射部13と弾性連結部14〜16のうちの1つと熱アクチュエータ機構Xとを備えるものであればよい。
【符号の説明】
【0191】
1…光走査装置、2…光ビーム走査部、3…支持部、4…駆動部、11…外ジンバル、12…内ジンバル、13…光反射部、14a,14b,15a,15b,16a,16b…弾性連結部、20…捻りバネ部、21…弾性リンク部、25a…第1可動部材、25b…第2可動部材、31…ミラー、32…ミラー支持枠、51…第1棒状部材、51a…圧電体部材、51b…薄膜圧電素子、51c,51d…電極、52…第2棒状部材、52a…シリコン部材、61V,61H…固定端、63…棒状部材、65…変形部材、67…変位変換部、X…熱アクチュエータ機構。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ビームを反射させる反射面を有する反射部と、
前記反射部を捻り振動させるための回転軸を構成する弾性変形部とを備え、
前記回転軸を中心にして前記反射部を振動させることにより、前記反射面により反射された光ビームを走査する光走査装置であって、
熱膨張率が互いに異なる2種類の材料の部材が積層されてなる構造を有し、自身の収縮または膨張により、前記弾性変形部に関して温度変化に伴うバネ定数の変化を相殺する形状に変化させる熱アクチュエータ機構を備えることを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
前記熱アクチュエータ機構を構成する2種類の材料の部材のうち、熱膨張率が大きい方を第1弾性部材、熱膨張率が小さい方を第2弾性部材として、
前記第1弾性部材は、シリコンを材料とする部材であり、
前記第2弾性部材は、酸化シリコンを材料とする部材であることを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記熱アクチュエータ機構を構成する2種類の材料の部材のうち、熱膨張率が大きい方を第1弾性部材、熱膨張率が小さい方を第2弾性部材として、
前記第1弾性部材および前記第2弾性部材のうち一方は、自身の歪みの大きさが印加電圧によって調整可能な圧電体であることを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記熱アクチュエータ機構を構成する2種類の材料の部材のうち、熱膨張率が大きい方を第1弾性部材、熱膨張率が小さい方を第2弾性部材として、
前記第1弾性部材および前記第2弾性部材は、捻り振動前の状態の前記反射面に対して垂直または平行に積層されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の光走査装置。
【請求項5】
前記熱アクチュエータ機構は、前記弾性変形部に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の光走査装置。
【請求項6】
前記熱アクチュエータ機構を構成する2種類の材料の部材のうち、熱膨張率が大きい方を第1弾性部材、熱膨張率が小さい方を第2弾性部材として、
前記弾性変形部は、前記第1弾性部材および前記第2弾性部材が各々、前記回転軸を中心として対称となるように形成されていることを特徴とする請求項5に記載の光走査装置。
【請求項7】
前記弾性変形部は、前記第1弾性部材および前記第2弾性部材が各々、前記回転軸に対する直交方向に分割され、且つ、前記回転軸に対して、前記第1弾性部材が外側方向、前記第2弾性部材が内側方向に各々配置されてなることを特徴とする請求項6に記載の光走査装置。
【請求項8】
前記弾性変形部は、
前記回転軸に対して、前記第1弾性部材が内側方向、前記第2弾性部材が外側方向に各々配置され、且つ、前記第1弾性部材がH状に形成されてなるH状部材と、
前記反射部と前記H状部材とを連結する弾性リンク部とを有し、
前記弾性リンク部は、該H状部材の収縮または膨張に連動して、該H状部材の形状が変化する反対方向に変位することを特徴とする請求項6に記載の光走査装置。
【請求項9】
前記熱アクチュエータ機構は、前記弾性変形部に接続され、前記温度変化に伴う収縮または膨張による自身の変位を伝達する力学的作用により、前記弾性変形部の形状を変化させることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の光走査装置。
【請求項10】
前記弾性変形部は、
前記熱アクチュエータ機構に接続され、前記温度変化に伴う該熱アクチュエータ機構の前記力学的作用によって前記回転軸に対する外側方向および内側方向に変位する変位部材と、
前記反射部と前記変位部材とを連結する弾性リンク部とを有し、
前記弾性リンク部は、前記変位部材の変位に連動して、自身の形状が変化することを特徴とする請求項9に記載の光走査装置。
【請求項11】
前記熱アクチュエータ機構は、
前記温度変化に伴って収縮または膨張する変形部材と、
前記変形部材の収縮または膨張による該変形部材の変位に対して、前記弾性変形部における前記反射部側の端部の変位を拡大させる作用を前記力学的作用として有する変位拡大部と、
を有することを特徴とする請求項9または請求項10に記載の光走査装置。
【請求項12】
前記反射部に連結された前記弾性変形部としての第1弾性変形部材を有し、該第1弾性変形部材の回転軸を第1回転軸として前記反射部を揺動可能に支持する第1支持部と、
前記第1支持部に連結された前記弾性変形部としての第2弾性変形部材を有し、該第2弾性変形部材の回転軸を第2回転軸として前記第1支持部を揺動可能に支持する第2支持部と、
を備え、
前記第2回転軸は、前記第1回転軸と交差するように配置され、
前記第2回転軸を中心にして前記第1支持部を揺動させることにより、前記反射面により反射された光ビームを走査することを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の光走査装置。
【請求項1】
光ビームを反射させる反射面を有する反射部と、
前記反射部を捻り振動させるための回転軸を構成する弾性変形部とを備え、
前記回転軸を中心にして前記反射部を振動させることにより、前記反射面により反射された光ビームを走査する光走査装置であって、
熱膨張率が互いに異なる2種類の材料の部材が積層されてなる構造を有し、自身の収縮または膨張により、前記弾性変形部に関して温度変化に伴うバネ定数の変化を相殺する形状に変化させる熱アクチュエータ機構を備えることを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
前記熱アクチュエータ機構を構成する2種類の材料の部材のうち、熱膨張率が大きい方を第1弾性部材、熱膨張率が小さい方を第2弾性部材として、
前記第1弾性部材は、シリコンを材料とする部材であり、
前記第2弾性部材は、酸化シリコンを材料とする部材であることを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記熱アクチュエータ機構を構成する2種類の材料の部材のうち、熱膨張率が大きい方を第1弾性部材、熱膨張率が小さい方を第2弾性部材として、
前記第1弾性部材および前記第2弾性部材のうち一方は、自身の歪みの大きさが印加電圧によって調整可能な圧電体であることを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記熱アクチュエータ機構を構成する2種類の材料の部材のうち、熱膨張率が大きい方を第1弾性部材、熱膨張率が小さい方を第2弾性部材として、
前記第1弾性部材および前記第2弾性部材は、捻り振動前の状態の前記反射面に対して垂直または平行に積層されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の光走査装置。
【請求項5】
前記熱アクチュエータ機構は、前記弾性変形部に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の光走査装置。
【請求項6】
前記熱アクチュエータ機構を構成する2種類の材料の部材のうち、熱膨張率が大きい方を第1弾性部材、熱膨張率が小さい方を第2弾性部材として、
前記弾性変形部は、前記第1弾性部材および前記第2弾性部材が各々、前記回転軸を中心として対称となるように形成されていることを特徴とする請求項5に記載の光走査装置。
【請求項7】
前記弾性変形部は、前記第1弾性部材および前記第2弾性部材が各々、前記回転軸に対する直交方向に分割され、且つ、前記回転軸に対して、前記第1弾性部材が外側方向、前記第2弾性部材が内側方向に各々配置されてなることを特徴とする請求項6に記載の光走査装置。
【請求項8】
前記弾性変形部は、
前記回転軸に対して、前記第1弾性部材が内側方向、前記第2弾性部材が外側方向に各々配置され、且つ、前記第1弾性部材がH状に形成されてなるH状部材と、
前記反射部と前記H状部材とを連結する弾性リンク部とを有し、
前記弾性リンク部は、該H状部材の収縮または膨張に連動して、該H状部材の形状が変化する反対方向に変位することを特徴とする請求項6に記載の光走査装置。
【請求項9】
前記熱アクチュエータ機構は、前記弾性変形部に接続され、前記温度変化に伴う収縮または膨張による自身の変位を伝達する力学的作用により、前記弾性変形部の形状を変化させることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の光走査装置。
【請求項10】
前記弾性変形部は、
前記熱アクチュエータ機構に接続され、前記温度変化に伴う該熱アクチュエータ機構の前記力学的作用によって前記回転軸に対する外側方向および内側方向に変位する変位部材と、
前記反射部と前記変位部材とを連結する弾性リンク部とを有し、
前記弾性リンク部は、前記変位部材の変位に連動して、自身の形状が変化することを特徴とする請求項9に記載の光走査装置。
【請求項11】
前記熱アクチュエータ機構は、
前記温度変化に伴って収縮または膨張する変形部材と、
前記変形部材の収縮または膨張による該変形部材の変位に対して、前記弾性変形部における前記反射部側の端部の変位を拡大させる作用を前記力学的作用として有する変位拡大部と、
を有することを特徴とする請求項9または請求項10に記載の光走査装置。
【請求項12】
前記反射部に連結された前記弾性変形部としての第1弾性変形部材を有し、該第1弾性変形部材の回転軸を第1回転軸として前記反射部を揺動可能に支持する第1支持部と、
前記第1支持部に連結された前記弾性変形部としての第2弾性変形部材を有し、該第2弾性変形部材の回転軸を第2回転軸として前記第1支持部を揺動可能に支持する第2支持部と、
を備え、
前記第2回転軸は、前記第1回転軸と交差するように配置され、
前記第2回転軸を中心にして前記第1支持部を揺動させることにより、前記反射面により反射された光ビームを走査することを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の光走査装置。
【図1】
【図2】
【図9】
【図10】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図9】
【図10】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2013−80208(P2013−80208A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−175076(P2012−175076)
【出願日】平成24年8月7日(2012.8.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年8月7日(2012.8.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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