説明

光起電力装置およびその製造方法

【課題】透光性絶縁基板上に短冊状の単位セルが分離溝を介して直列に接続された構造の光起電力装置においても太陽光をより効率的に吸収することができる光起電力装置を得ること。
【解決手段】絶縁透光性基板2上に、透明導電性材料によって形成される表面電極層11と、光を電気に変換する半導体材料を含む光電変換層12と、導電性の材料からなる裏面電極層14と、を含むセル10が形成され、セル10の裏面電極層14を、隣接するセル10の光電変換層12との間に形成された分離溝22内で、隣接するセル10の表面電極層11と接続させて、複数のセル10が直列に接続された光起電力装置において、少なくとも分離溝22の側面および底面を被覆するように、屈折率の異なる2種類以上の材料を積層した積層光反射膜15を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光エネルギを電気エネルギに変換する光起電力装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の薄膜で構成される光起電力装置では、変換効率を向上させるために、光電変換層に吸収される光を多くすることができる構造のものが求められている。たとえば、光電変換を行う主として半導体層で構成される光電変換層の膜厚を厚くすることで光をより多く吸収できるようにする構造や、光の入射する基板上に凹凸を設けて光を拡散させるようにする構造、基板上または太陽電池の光電変換層内および積層型太陽電池の積層界面に光を拡散、反射させる層を設ける構造などが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。このような構造の光起電力装置にあっては、光の入射方向と同方向に吸収されずに透過した光に対しては光の閉じ込め効果を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3,258,680号公報
【特許文献2】特開2008−305945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では、透光性絶縁支持体上に、短冊状に形成した透明電極層を形成し、その上に光電変換層と裏面電極層を積層した後、レーザスクライブ法によって分離溝を形成して複数の短冊状セル領域に分割し、複数の短冊状セル領域を電気的に直列接続した構造の光起電力装置が提案されている(たとえば、特許文献2参照)。しかし、この特許文献2に記載の光起電力装置の裏面電極層の分離溝に面した側面から洩れる光に対する対策は、従来なされていなかった。その結果、この裏面電極の分離溝に面した側面から漏れた光の分、損失が生じてしまうという問題点があった。
【0005】
この発明は、上記に鑑みてなされたもので、透光性絶縁基板上に短冊状の単位セルが分離溝を介して直列に接続された構造の光起電力装置においても太陽光をより効率的に吸収することができる光起電力装置およびその製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、この発明にかかる光起電力装置は、透光性の基板上に、透明導電性材料によって形成される第1の電極層と、光を電気に変換する半導体材料を含む光電変換層と、導電性の材料からなる第2の電極層と、を含むセルが形成され、前記セルの前記第2の電極層を、隣接するセルの前記光電変換層との間に形成された分離溝内で、前記隣接するセルの第1の電極層と接続させて、複数の前記セルが直列に接続された光起電力装置において、少なくとも前記分離溝の側面および底面を被覆するように、屈折率の異なる2種類以上の材料を積層した積層光反射膜を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、分離溝を積層光反射膜で覆うようにしたので、レーザスクライブ法やエッチング法などの方法で分離溝を形成することで露出した光電変換層の側面から横方向に洩れる光を再び光電変換層内に戻すことができる。その結果、発電効率を向上させることができるという効果を有する。また、積層光反射膜を多層膜とすることによって、特定の波長の光に対する反射率を単層の膜の場合よりも高くすることができ、より効果的に光の閉じ込めを行い、発電効率を向上させることができるという効果も有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、この発明の実施の形態による光起電力装置の構造の一例を模式的に示す断面図である。
【図2】図2は、積層光反射膜の一部を拡大して模式的に示す断面図である。
【図3】図3は、積層光反射膜の反射率を一般的な光の多重反射モデルで計算した結果を示す図である。
【図4】図4は、アモルファスシリコンの吸収係数を示す図である。
【図5】図5は、シミュレーションで求めたアモルファスシリコン太陽電池の量子効率を示す図である。
【図6−1】図6−1は、この実施の形態による光起電力装置の製造方法の手順の一例を模式的に示す断面図である(その1)。
【図6−2】図6−2は、この実施の形態による光起電力装置の製造方法の手順の一例を模式的に示す断面図である(その2)。
【図6−3】図6−3は、この実施の形態による光起電力装置の製造方法の手順の一例を模式的に示す断面図である(その3)。
【図6−4】図6−4は、この実施の形態による光起電力装置の製造方法の手順の一例を模式的に示す断面図である(その4)。
【図6−5】図6−5は、この実施の形態による光起電力装置の製造方法の手順の一例を模式的に示す断面図である(その5)。
【図6−6】図6−6は、この実施の形態による光起電力装置の製造方法の手順の一例を模式的に示す断面図である(その6)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、この発明の実施の形態にかかる光起電力装置およびその製造方法を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、以下の実施の形態で用いられる光起電力装置の断面図は模式的なものであり、層の厚みと幅との関係や各層の厚みの比率などは現実のものとは異なる。
【0010】
図1は、この発明の実施の形態による光起電力装置の構造の一例を模式的に示す断面図である。この光起電力装置1は、ガラス基板や樹脂基板などの絶縁透光性基板2上に複数の単位太陽電池セル(以下、単にセルという)10が所定の方向(図中では、左右方向)に直列に接続されている。それぞれのセル10は、表面電極層11、光電変換層12、裏面反射層13および裏面電極層14が順に積層された光電変換素子によって形成されている。あるセル10の表面電極層11は、隣接する一方の(この図1では左隣の)セル10の裏面電極層14と接続され、裏面電極層14は、隣接する他方(この図1では右隣の)セル10の表面電極層11と接続される。そして、直列に接続されたセル10の上面および側面を被覆するように積層光反射膜15が形成される。
【0011】
また、たとえば直列方向の両端のセル10の裏面電極層14上の一部には積層光反射膜15を除去して外部電極接続部が設けられ、この外部電極接続部に外部電極16が形成され、さらに外部電極16には取出配線17が取り付けられている。そして、このように形成された絶縁透光性基板2上の光電変換素子は、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)などの封止樹脂18で封止される。ここで、光電変換層12が形成される絶縁透光性基板2上の領域をセル形成領域Rというものとする。また、この光起電力装置1において、光入射側の面を表面といい、表面とは反対側の面を裏面という。以下に、光電変換素子を構成する各層の詳細について説明する。
【0012】
表面電極層11は、酸化亜鉛や酸化錫、ITO(Indium Tin Oxide)などの透明導電性材料で構成される。表面電極層11は、セル10ごとに分離溝21によって分離して形成されるが、その形成位置はセル形成領域Rとは一致しておらず、自身が属するセル形成領域Rの一部と、隣接する(この図の例では、左側に隣接する)セル形成領域Rの一部にまたがって形成される。つまり、セル形成領域Rには、そのセル形成領域Rで機能する表面電極層11と、隣接するセル形成領域Rで機能する表面電極層11とが、距離をおいて配置されている。たとえばこの図1において、あるセル形成領域Rのほぼ左半分の領域にはこのセル10の光電変換素子の一部を構成する表面電極層11が形成され、このセル形成領域Rの右側端部の領域には右に隣接するセル10の光電変換素子の一部を構成する表面電極層11が形成されている。
【0013】
光電変換層12は、pn接合またはpin接合を有し、入射する光によって発電を行う1層のまたは複数層積層された薄膜半導体層を含む層によって構成される。薄膜半導体層として、水素化アモルファスシリコン、微結晶シリコン、アモルファスシリコンゲルマニウム、微結晶シリコンゲルマニウム、アモルファス炭化シリコン、微結晶炭化シリコンなどを用いることができる。さらに、光電変換層12が、複数の薄膜半導体層の積層膜からなる場合には、異なる薄膜半導体層間に、ITOやZnOなどの透明導電性膜や、不純物をドーピングして導電性を向上させたSiO2やSiNなどの珪素化合物膜を中間層として挿入してもよい。
【0014】
裏面反射層13は、光電変換層12と裏面電極層14との間に形成されるので導電膜が好ましく、また、反射率が高いものほど好ましい。たとえば、波長650nmにおける垂直入射時の反射率が90%以上のAlやAgなどが望ましい。また、可視光領域から近赤外領域にかけてはAlよりもAgの反射率の方が高いことから、裏面反射層13としてAgを用いることが望ましい。
【0015】
これらの光電変換層12と裏面反射層13は、セル10ごとに分離溝22によって分離して形成され、その形成位置はセル形成領域Rと一致している。
【0016】
裏面電極層14は、Al,Ag,Au,Cu,Pt,Crなどから選ばれる少なくとも1つの導電性材料、または酸化亜鉛、ITO、二酸化錫などの透明導電性材料とAl,Ag,Au,Cu,Pt,Crなどから選ばれる少なくとも1つの導電性材料との積層体によって形成され、光電変換層12で発電された光電流を収集する機能を有する。
【0017】
この裏面電極層14は、セル10の配列方向の一方の側面(この図1では、右側の側面)の全面にも形成され、分離溝22の底部で隣接する(この図1では、右側に隣接する)セル10の表面電極層11と接続されている。つまり、裏面電極層14は、セル10の配列方向の一方の側面をコンフォーマルに被覆している。
【0018】
積層光反射膜15は、裏面電極層14上と、光電変換層12と裏面反射層13に形成される分離溝22の側面を覆うように、複数の材料が積層してなる多層膜によって形成される。たとえば、積層光反射膜15は、光電変換層12よりも屈折率の低い第1の材料からなる薄膜、第1の材料よりも屈折率の高い第2の材料からなる薄膜、第1の材料からなる薄膜、・・・というように屈折率の異なる薄膜を交互に複数積層することによって構成される。このように、屈折率の高い材料と低い材料とを交互に積層させることで、高い光閉じ込め効果が得られる。
【0019】
図2は、積層光反射膜の一部を拡大して模式的に示す断面図である。この図では、裏面電極層14上と分離溝22の側面に形成される積層光反射膜15が、酸化シリコン(SiOx(x=1〜2))膜151、シリコン(Si)膜152、窒化シリコン(SiNx(x=1〜2))膜153からなる場合を示している。なお、窒化シリコン膜153に代えて酸窒化シリコン(SiONx(x=1〜2))膜を用いてもよい。これらの各膜151〜153の典型的な膜厚は数〜100nmの範囲である。このような構造の積層光反射膜15は、光の閉じ込め機能に加えて、裏面電極層14と封止樹脂18との間の密着性を向上することができるとともに、酸素や水などによる裏面電極の腐食を防ぐことができる。なお、積層光反射膜15として使用される材料は、酸化シリコンや窒化シリコン、酸窒化シリコンに限られず、上記の屈折率の条件を満たすものであればよい。
【0020】
図3は、積層光反射膜の反射率を一般的な光の多重反射モデルで計算した結果を示す図である。ここでは、積層光反射膜15として、(a)75nmの酸化シリコン膜のみを用いた場合、(b)75nmの酸化シリコン膜、25nmのシリコン膜、75nmの酸化シリコン膜を三層積層した場合、および(c)75nmの酸化シリコン膜、50nmのシリコン膜、75nmの酸化シリコン膜を三層積層した場合のそれぞれの反射率について示している。
【0021】
この図に示されるように、(a)の酸化シリコン膜の場合には、450nm付近で最大の反射率55%近くを有し、波長が長くなるにつれて反射率が低減し、700nmで反射率は約10%となる。一方、(b)の積層膜の場合には、400nmでは反射率が30%程度であり、470nm付近で反射率が0になり、560nm付近で最大の反射率62%近くを有し、波長が長くなるにつれて反射率が低減するが、630nm付近では反射率が55%程度であり、700nmでの反射率は38%程度であり、800nmでの反射率は18%程度となっている。また、(c)の積層膜の場合には、400nmでは反射率が10%程度であり、500nm付近で最大の反射率65%を有し、波長が長くなるにつれて反射率が低減するが、650nm以上では、(a)の酸化シリコン膜とほぼ同様の反射率を示す。
【0022】
このように、積層させることで高い反射率と波長の選択性が得られることがわかる。また、(b)の積層膜と(c)の積層膜のように膜厚を変化させることで、この波長の選択性を変化させることができるため、適用する光電変換層12で吸収されにくい波長に適した反射率を有する積層光反射膜15を設計することで、高い変換効率を有する光起電力装置1を製造することができる。
【0023】
図4は、アモルファスシリコンの吸収係数を示す図であり、図5は、シミュレーションで求めたアモルファスシリコン太陽電池の量子効率を示す図である。図4で、横軸は波長(nm)を示し、縦軸は吸収係数(cm-1)を示している。また、図5で、横軸は波長(nm)を示し、縦軸は量子効率を示している。なお、図4は、"Optical and Electrical Properties of Undoped Microcrystalline Silicon Deposited by the VHF-GD with Different Dilutions of Silane in Hydrogen"(Beck N., Torres P., Fric J., Remes Z., Poruba A., Stuchlikova H. A., Fejfar A., Wyrsch N., Vanecek M., Kocka J., Shah A., MRS Symp., vol. 452, 1997, p.761-766)を参考にしている。
【0024】
図4に示されるようにアモルファスシリコンでは、吸収係数が10,000cm-1となる波長(約630nm)より長波長の光に対して、光起電力装置の量子効率が0.3をきってしまい、有効に利用できていないことがわかる。そこで、吸収係数が10,000cm-1以下となる波長の光に対して高い反射率を有する積層光反射膜15を設置することで、従来構造では有効に利用できていなかった光を再び光起電力装置内に戻し、利用することができるようになる。これは、ほかの材料に対しても同様で、光電変換層12の材料に合わせて積層光反射膜15の膜厚および構成材料を設計することで反射する光の波長領域を変えることができる。
【0025】
また、図5から、波長が720nm以下であれば量子効率がある程度大きくなるので、光を電気に変換することができる。この720nmでのアモルファスシリコンの吸収係数は、図4より100cm-1である。
【0026】
以上より、光電変換層12としてアモルファスシリコンを用いる場合には、波長が630〜720nm(すなわち、吸収係数が10,000〜100cm-1)の範囲で反射率がある程度あればよい。たとえば、図3に示される積層光反射膜15の場合には、波長630nmで約55%の反射率を有し、波長800nmでも約18%の反射率を有する(b)の積層膜が、積層光反射膜15としてより望ましい。
【0027】
なお、以上の説明は、光電変換層12としてアモルファスシリコンを用いる場合であり、光電変換層12に用いる材料によってその値は変化するので、光電変換層12に用いる材料によって、反射率を高める波長範囲を予め実験によって求めておく必要がある。たとえば、光電変換層12として微結晶シリコンを用いる場合には、さらに長波長域の光、おおよそ1μmまでの光を変換することができる。この微結晶シリコンの波長1μmの場合の吸収係数は、100cm-1程度である。そのため、微結晶シリコンの場合には、吸収係数が10,000〜100cm-1(すなわち、波長が630nm〜1μm)の範囲である程度の反射率を有する積層光反射膜15を用いればよい。
【0028】
なお、上記の説明における反射率は高ければ高いほどよい。図3の(b)と(c)の積層膜のスペクトルは必ずしも最適なものではないが、たとえば(b)と(c)の積層膜のように、少なくとも630nm(吸収係数で10,000cm-1)で反射率が20%以上あることが望ましい。また、(b)の積層膜のように630〜720nmの波長範囲の全域で反射率が30%以上あることが望ましく、その範囲内に50%以上の反射率を有することがさらに望ましい。
【0029】
以上のように、積層光反射膜15は、光電変換層12を構成する材料の吸収係数が10,000cm-1以下で、量子効率が0よりも大きくなる波長範囲において、少なくとも20%以上の反射率を有するものが望ましい。
【0030】
以上のような構成によって、あるセル10の裏面電極層14が、たとえば右に隣接するセル10の表面電極層11と分離溝22内で接続され、あるセル10の表面電極層11が左に隣接する他のセル10の裏面電極層14と分離溝22内で接続され、これが繰り返されることによって、複数のセル10が直列に接続された光起電力装置1が形成される。
【0031】
ここで、このような構造の光起電力装置1における動作の概略について説明する。絶縁透光性基板2の裏面(セル10が形成されていない方の面)から太陽光が入射すると、各セル10の光電変換層12で自由キャリアが生成され、電流が発生する。各セル10で発生した電流は表面電極層11と裏面電極層14を介して隣接するセル10に流れ込み、光起電力装置1(モジュール)全体の発電電流を生成する。そして、外部電極16と取出配線17を介して光起電力装置1の外部に発電電流(光起電力)が取出される。
【0032】
また、光電変換層12で吸収されずに透過した光の一部は、裏面反射層13で光電変換層12側に反射される。また、この裏面反射層13を透過した光は、積層光反射膜15で光電変換層12側に反射される。さらに、光電変換層12に入射して分離溝22の側面に到達した光も積層光反射膜15で光電変換層12側に反射される。これらの裏面反射層13や積層光反射膜15で反射された光は、再び光電変換層12に入射して自由キャリアの生成に寄与する光となる。
【0033】
つぎに、このような構造の光起電力装置1の製造方法について説明する。図6−1〜図6−6は、この実施の形態による光起電力装置の製造方法の手順の一例を模式的に示す断面図である。
【0034】
まず、絶縁透光性基板2上に酸化亜鉛、酸化錫、またはITOなどを含む透明導電性材料からなる表面電極層11をスパッタ法などの成膜方法によって形成し、フォトリソグラフィ技術やレーザスクライビングなどの方法で、所定の位置に分離溝21を形成して分離し、パターニングを行う(図6−1)。
【0035】
ついで、パターニングした表面電極層11上に、光電変換層12と裏面反射層13とを順に形成する(図6−2)。ここで、光電変換層12は、たとえばpin型の三層構造からなるアモルファスシリコン膜などの半導体薄膜からなり、CVD(Chemical Vapor Deposition)法などの成膜法によって形成される。また、裏面反射層13は、たとえばAgやAlなどの可視光域から近赤外線領域の反射率が高い膜からなり、スパッタ法や蒸着法などの成膜法によって、形成される。
【0036】
その後、表面電極層11間に形成した分離溝21とほぼ平行となるように、またこの分離溝21の位置と重ならない裏面反射層13と光電変換層12の所定の位置に分離溝22を、レーザスクライビング法やメカニカルスクライビング法、エッチング法などの方法によってライン状に加工する(図6−3)。
【0037】
ついで、裏面電極層14を裏面反射層13上と分離溝22を覆うように形成する(図6−4)。裏面電極層14として反射率が高くかつ電気伝導率の高いAgやAlなどの導電性材料や、酸化スズやITOなどの透明導電性材料とAgやAlの積層膜をスパッタ法などの成膜法によって形成することができる。このとき、裏面電極層14は、分離溝22をコンフォーマルに被覆するように形成される。
【0038】
その後、たとえば絶縁透光性基板2の裏面側からレーザ光を分離溝22に沿って照射し、分離溝22の底部と側面部に形成されている裏面電極層14のうち、一部のみが表面電極層11と接続されるように、他の部分を除去する(図6−5)。ここでは、分離溝22の底面部と右側の側面部に形成される裏面電極層14を除去する。これによって、隣接するセル10間の裏面電極層14は電気的に絶縁される。
【0039】
ついで、直列に接続された両端のセル10の外部電極接続部の形成領域上に、フィルムなどのカバー31を設置する。その後、分離溝22で一部が分離された裏面電極層14上とカバー31上に、積層光反射膜15を、分離溝22の側面と底面をコンフォーマルに被覆するように形成する(図6−6)。たとえば、積層光反射膜15が、酸化シリコンとシリコンの積層膜で構成される場合には、プラズマCVD法で、モノシラン、ジシランといったシラン系ガスに、水素、二酸化炭素を加えたものを原料ガスとして成膜を行うことによって、積層光反射膜を形成することができる。このとき、二酸化炭素の供給のオン/オフを切り替えるといった簡易な操作で、酸化シリコンとシリコンの積層膜を形成することができる。
【0040】
ついで、カバー31を除去し、積層光反射膜15上にたとえばレジストを塗布し、カバー31を除去した外部電極接続部が開口するようにフォトリソグラフィ法によって開口を設ける。その後、外部電極接続部にAgやAlなどの金属材料で外部電極16を形成し、レジストを除去する。最後に、外部電極16に取出配線17を設け、封止樹脂18によって、セル10を封止することで、図1に示される光起電力装置1が得られる。
【0041】
なお、外部電極接続部の形成に当たって、積層光反射膜15の形成前にカバー31を被せる方法を例示したが、これに限定されるものではない。たとえば、積層光反射膜15を形成した後、レジストを塗布し、フォトリソグラフィ法によって、外部電極形成位置に開口を設けたレジストマスクを形成する。そして、レジストマスクを用いて裏面電極層14が露出するまで積層光反射膜15のエッチングを行った後、外部電極16を形成してもよい。
【0042】
また、上記した積層光反射膜15の多層構造は一例であり、層構成、積層数、膜厚は適切な反射特性となるように適宜変更可能である。
【0043】
ところで、従来の光起電力装置の構造においては、光電変換層12に入射した光がその側面から分離溝22へと洩れる光を有効利用できていなかった。しかし、この実施の形態のように分離溝22の側面と底面を覆う積層光反射膜15を形成したことで、光電変換層12の側面から分離溝22へと洩れていた光を、再び光電変換層12へと戻すことで有効に利用できるとともに、裏面電極層14の保護を同時に実現することができる。
【0044】
この実施の形態によれば、セル10間の光電変換層12を分離する分離溝22に積層光反射膜15を形成したので、光電変換層12で吸収されずに分離溝22が形成される側面に到達した光は、再びセル10内へと戻される。その結果、分離溝22に反射構造を有さない、従来構造の場合に比して、漏れていた光を有効利用することができるので、セル10での光電流が増大し、変換効率が向上するという効果を有する。また、積層光反射膜15によって、裏面電極層14を保護することができるという効果も有する。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上のように、本発明にかかる光起電力装置は、薄膜で構成される太陽電池に有用である。
【符号の説明】
【0046】
1 光起電力装置
2 絶縁透光性基板
10 セル
11 表面電極層
12 光電変換層
13 裏面反射層
14 裏面電極層
15 積層光反射膜
16 外部電極
17 取出配線
18 封止樹脂
21 分離溝
22 分離溝
31 カバー
151 酸化シリコン膜
152 シリコン膜
153 窒化シリコン膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性の基板上に、透明導電性材料によって形成される第1の電極層と、光を電気に変換する半導体材料を含む光電変換層と、導電性の材料からなる第2の電極層と、を含むセルが形成され、前記セルの前記第2の電極層を、隣接するセルの前記光電変換層との間に形成された分離溝内で、前記隣接するセルの第1の電極層と接続させて、複数の前記セルが直列に接続された光起電力装置において、
少なくとも前記分離溝の側面および底面を被覆するように、屈折率の異なる2種類以上の材料を積層した積層光反射膜を備えることを特徴とする光起電力装置。
【請求項2】
前記積層光反射膜は、前記セルの前記第2の電極層上にも形成されることを特徴とする請求項1に記載の光起電力装置。
【請求項3】
前記積層光反射膜は、前記光電変換層で吸収されにくい波長の光を選択的に反射する材料、膜厚、および積層数を有することを特徴とする請求項1または2に記載の光起電力装置。
【請求項4】
前記光電変換層は、それぞれpin構造を有する1つ以上の半導体薄膜からなり、
前記積層光反射膜は、前記光電変換層の吸収係数が10,000〜100cm-1に対応する波長領域で20%以上の反射率を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の光起電力装置。
【請求項5】
前記積層光反射膜は、前記半導体材料よりも屈折率の低い低屈折率材料と、前記低屈折率材料よりも屈折率の高い高屈折率材料と、が複数積層した多層膜によって構成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の光起電力装置。
【請求項6】
前記低屈折率材料は、酸化シリコン、窒化シリコンまたは酸窒化シリコンを主成分とする誘電体膜であり、
前記高屈折率材料は、前記誘電体膜よりも屈折率の高いSiを主成分とする半導体膜であることを特徴とする請求項5に記載の光起電力装置。
【請求項7】
透光性の基板上に、透明導電性材料からなる膜を形成し、各セル間を分離するようにパターニングして前記各セルの第1の電極層を形成する第1の工程と、
前記第1の電極層を形成した前記基板上に、半導体材料を含む光電変換層を形成する第2の工程と、
前記セルごとに光電変換層を分離する分離溝を形成する第3の工程と、
前記光電変換層の上面と、前記分離溝の側面および底面に導電性材料層を形成し、隣接するセル間の前記導電性材料層を分離して第2の電極層を形成する第4の工程と、
前記半導体材料で吸収されにくい光を反射するように構成された複数の材料を積層した積層光反射膜を、少なくとも前記分離溝の底面と側面を被複するように形成する第5の工程と、
を含むことを特徴とする光起電力装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図6−3】
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【図6−4】
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【図6−5】
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【図6−6】
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【公開番号】特開2010−278148(P2010−278148A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128033(P2009−128033)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】