説明

光起電薄膜装置の製造方法および光起電薄膜装置

【課題】太陽電池での使用に適した光起電薄膜装置を、簡単かつ低コストに製造できるようにする。また、できるかぎり効率的かつ低コストに大面積の光起電モジュールを形成できることが望ましい。
【解決手段】直径約3nm〜約30nmのナノスケールの粒子を含む懸濁液を透明な基板上へ塗布することにより、金属カルコゲナイド化合物半導体層を形成し、基板上に塗布される金属カルコゲナイド化合物半導体層の厚さを約150nm〜約2000nmまたは約2500nmとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光エネルギを電気エネルギへ変換する光起電モジュールの分野に関連しており、特に、光起電薄膜装置の製造方法、ならびに、この方法にしたがって製造される光起電薄膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
独国公開第102004012303号明細書から、水素ガスを光電化学的に形成する反応セルが公知である。ここでは、水素を含む電解質で充填されたケーシングが設けられており、このケーシング内に、ドープされた半導体材料、例えばTiOまたはSrTiOから形成されている第1の電極と、貴金属または半貴金属から形成されているかまたは第1の電極とは反対の導電型にドープされた半導体材料から形成されている第2の電極とが設けられている。2つの電極は相互に電気的に接続されており、動作中、光源からの光を受ける。反応セルは2つのチャンバへ分割され、そこにイオン伝導可能なように相互に接続された2つの電極が配置される。ガス出射口を介してチャンバ内部に生じた水素が放出される。
【0003】
また、欧州特許第1232530号明細書からは、UV光を検出する半導体素子が公知である。ここでは、基板がUV光を吸収する金属カルコゲナイド化合物半導体の材料を含む半導体として設けられており、半導体と金属とがショットキーコンタクトを形成している。ナノ結晶の金属カルコゲナイド化合物半導体層を有する半導体は、一方側で電気コンタクト層または金属基板に導電接続され、他方側でUV光に対して少なくとも部分的に透明な金属層に接続されている。
【0004】
さらに、国際公開第2009/0112397号明細書からは、金属カルコゲナイド化合物半導体層すなわちTiO層および金属層から形成される光起電薄膜装置が公知である。ここでは、表面をナノパターニングされた銀層に可視光が入射して、プラズマ共鳴が誘導される。しかし、実験によれば、当該のプラズマ共鳴は電荷担体の分離に寄与しないことが判明している。なぜなら、誘導された振動は銀層とTiO層とのあいだのショットキーバリアの広がりに対して垂直ではなく平行に延在するからである。しかも、プラズマ共鳴は入射光の入射角をきわめて正確に調整しないかぎり得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国公開第102004012303号明細書
【特許文献2】欧州特許第1232530号明細書
【特許文献3】国際公開第2009/0112397号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の基礎とする課題は、太陽電池での使用に適した光起電薄膜装置を、簡単かつ低コストに製造できるようにすることである。ここで、できるかぎり効率的かつ低コストに大面積の光起電モジュールを形成できることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、直径約3nm〜約30nmのナノスケールの粒子を含む懸濁液を透明な基板上へ塗布することにより、金属カルコゲナイド化合物半導体層を形成し、基板上に塗布される金属カルコゲナイド化合物半導体層の厚さを約150nm〜約2000nmまたは約2500nmとすることにより解決される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】光感応領域、TCO端子および金属端子を有するモノセルベースの光起電薄膜装置の概略図である。
【図2】図1の装置の断面図である。
【図3】3つのセルが直列に接続されたマルチセルベースの光起電薄膜装置の断面図である。
【図4】複数のセルが直列に接続された光起電薄膜装置の平面図である。
【図5】複数のセルが直列および並列に接続された光起電薄膜装置の平面図である。
【図6】複数のセルが直列および並列に接続され、さらにバイパスダイオードの接続された光起電薄膜装置の平面図である。
【図7】光起電ダブルセル装置の断面図である。
【図8】接着剤シートを含む積層体として構成された光起電薄膜装置の断面図である。
【図9】後面基板を含む絶縁ガラス接合体として構成された光起電薄膜装置の断面図である。
【図10】TCOコーティング(Pilkington社のTECガラス)されたガラス基板および20nm厚さの白金ショットキー電極上に150nm厚さのドープされたTiO層を有する光起電薄膜装置の電流電圧特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、従来技術から公知の層構造体を修正し、これをソーラーモジュールの製造のための公知の技術的手段に適切に組み込めるようにした点に特徴がある。
【0010】
本発明の方法は、簡単に実行可能であり、大面積の光起電モジュールを低コストに製造することができる。白金に変えて、パラジウムなどの低コストの材料を選択することにより、製造コストをさらに低減することができる。
【0011】
本発明の光起電薄膜装置の製造方法および光起電薄膜装置の有利な実施形態は従属請求項に記載されている。
【実施例】
【0012】
以下に、本発明を図示の実施例に則して説明する。ただし、本発明の実施例は本発明を限定するものではない。
【0013】
図1には、光感応領域3、TCO端子(transparent conductive oxide terminal)4および金属端子5のショットキーコンタクトを備えたモノセルをベースとした、薄膜の光起電薄膜装置1の平面図が示されている。
【0014】
半導体材料としてnドープされたTiOおよび薄い白金ショットキー電極が選択される場合、端子4,5で約0.4Vの電圧が得られる。典型的な効率を3%〜12%とすると、こうしたモノセルは大面積のフォーマットには適さない。なぜなら、TCO、インジウム錫酸化物ITO、アンチモン錫酸化物ATO、フッ素ドープ錫酸化物FTO、亜鉛酸化物ZnOなどの層や、金や銀線などから形成される半透明の金属薄膜、および、シングルウォールカーボンナノチューブをベースとした薄膜は、太陽光に対する透過度の値を小さくしないと面抵抗≦10Ω/mが達成されないからである。
【0015】
Pilkington Specialty Glass Products社(米国Tredo, OH43697-0799)のTECガラス#8/3は、太陽光に対する透過度77%のとき面抵抗≦9Ω/mである。
【0016】
ショットキーコンタクトによって光起電が起こるように選定されている場合、電極の一方の表面は太陽光に対してできるだけ透過性を有するように形成されなければならないので、大きなセルでは、太陽光の透過度を低下させずに導電性を改善する観点から、電極を最適化しなければならない。
【0017】
ここで、有利には、いわゆるバスバー、すなわち、高い導電性を有する線路が、縁領域に配置され、電流負荷の低減に役立てられる。
【0018】
銀ペースト、銀アルミニウムペーストまたはアルミニウムペーストの形態のバスバーは、必要な設計に応じて、プリンティング法(Siebdruck)、スクリーンプリンティング法(Schablonendruck)、ディスペンサ法、インクジェット法、エアロゾルジェット法またはブラシ法を用いて塗布され、続いて熱処理にかけられる。通常のバスバーシステムは、その厚さおよび幅に応じて、数10Aまでのアンペア領域の電流を大きな温度上昇なしに導通することができる。
【0019】
図1では、左方のバスバー10がTCO端子4へ接続されており、右方のバスバー11が金属端子5へ接続されている。しかし、基本的には種々のタイプのバスバーの構成を利用することができる。
【0020】
2つの対向する縁のバスバーにTCO層を接触させ、90°ずれた2つの対向する縁のバスバーに金属層を接触させることもできる。また、4つの縁全てのTCO層にバスバーを設け、金属層は後面の全体にわたって電気的なコンタクトを形成するようにしてもよい。
【0021】
図2には、光起電薄膜装置1の断面図が示されている。ここでは、熱分解法によって被着されたTCO層6を有するガラス基板12が用いられている。基板は、Pilkington Specialty Glass Products社の#8/3,15/3.3または15/4などのTECガラスであってよい。また、真空中でコーティングされる導電性かつ透過性のガラスを使用してもよいし、ゾルゲル法またはガルバニックコーティング法によって形成された基板を用いてもよい。
【0022】
TCO層6は、右方の縁において、レーザー剥離、切削、サンドブラストまたはエッチングなどによって除去され、パターニングされる。有利には、レーザー剥離またはエッチングが用いられる。これは、レーザー剥離プロセスでは、マイクロリスが発生せず、目下のところ10cm/sec〜100cm/secの速度で実行可能であり、剥離させるべき層部分または層列部分をきわめて良好に設定できるからである。このことはエッチングプロセスにも相当する。
【0023】
図2には示されていない別の製造方法として、ガラス基板上にまず2つのバスバーコンタクト線10,11を被着し、続いてTCO層6を全面にわたって被着し、さらに例えばレーザー剥離またはエッチングによってパターニングを行ってもよい。
【0024】
続いて、半導体のグループTiO,SrTiO,CuS,ZnO,WO,CdS,MoS,CdSeS,SnO,Pb,CdSeから選択された材料をベースとした、ナノ結晶の薄膜の半導体層7が塗布される。本発明では、乾燥時の層厚さは150nm〜約2500nm、有利には500nm〜1000nmである。製造方法として、実験室レベルでは、ディップコーティング法が用いられる。基板が大面積である場合、コーティングプロセスとしては、ブレードコーティング(Rakeln)、ローラコーティング、カーテンコーティング(Vorhanggiessen)、プリンティングまたはスプレー塗布が有利である。また、こうした層にもパターニングを行わなくてはならず、パターニングは、バスバー10,11の領域をあらかじめ覆って行われるか、または、後のエッチングないしレーザー剥離によって行われる。
【0025】
薄膜の半導体層7の上に、金属のグループRu,Rh,Pd,Ag,Os,Ir,Pt,Au,Al,Cr,Cu,Ni,Mo,Pb,Ta,Wから選択された材料をベースとして、数10nmの厚さの薄い金属層8を塗布することにより、ショットキーコンタクトが形成される。特に有利な金属は白金、金、パラジウム、ニッケルである。
【0026】
当該の金属層8もパターニングされる。このためにマスクエッチングプロセスまたはレーザー剥離プロセスが用いられる。また、数10nmの厚さの層しか必要ないのであれば、スパッタリングや蒸着などの真空プロセスも、製造にきわめて良好に適している。もちろん、適用分野に応じて、他の化学的堆積プロセスないし電気的堆積プロセスを利用してもよい。
【0027】
ショットキー電極とも称される金属層8は、基本的には、バスバー11に接続することができる。接続の可否の判断基準は、高い面抵抗による電圧降下である。通常、コストおよび動作の点から、強化されかつ導電性の高い第2の金属層9が設けられる。当該の付加的な第2の金属層9も第1の金属層8と同様にパターニングされなければならない。ここでのパターニングもマスクエッチングまたはレーザー剥離によって行われる。これに代えて、第2の金属層9を、プリンティング法(Siebdruck)、スクリーンプリンティング法(Schablonendruck)、ディスペンサ法、インクジェット法またはエアロゾルジェット法を用いて形成することもできる。
【0028】
図2のガラス基板12は、下方から太陽14の放射する光15を受ける。入射する光15の反射を低減するために、ガラス基板12にプリズム面または反射防止コーティングの形態の反射防止面13を設けることができる。
【0029】
光起電力によって生じる電圧は典型的には約0.4Vであり、バスバー10,11の端子4,5で取り出される。
【0030】
ガラス基板12として、通常、強化フロートガラス、部分的にプリテンションされたガラスTVGまたは安全ガラスESG(シングルプレート型/合わせ型)の形態のものが用いられる。通常のフロートガラスのほか、有利に、酸化鉄フリーの白色ガラスまたはソーラーガラスを利用することもできる。
【0031】
図3には、マルチセルベースの光起電薄膜装置2の断面図が示されており、ここでは光起電セルが直列に接続された3つのセル16〜18によって形成されている。それぞれ幅の狭い個々のセル16〜18が用いられる場合、付加的な第2の金属層9を省略して、第1の金属層8の役割を図示されていない直列回路に担当させることもできる。直列接続されるセルの個数は適用分野に応じて調整可能である。
【0032】
図3の実施例においても、バスバー10,11はTCO層6の被着前に被着することができる。バスバー11は、良好な導電性を有する第2の金属層9が図3に示されているようにバスバー機能を担当するのであれば、基本的には省略可能である。
【0033】
図4には、直列回路19を備えた光起電薄膜装置の平面図が示されている。この実施例では、細長い個々のセル16〜18が図3と同様に直列に接続されている。セルの個数は適用分野に応じて調整可能である。個々のセルの幅が狭くなるにつれて、TCO層6の導電性への要求は小さくなり、また、金属層8,9の導電性への要求も小さくなる。
【0034】
図5には、直列回路19および並列回路20を備えた光起電薄膜装置の平面図が示されている。ここでは、細長い個々のセル16〜18が直列に接続されたセル線22〜25に分割されており、これらのセル線が端子4,5の縁(エッジ)で接続されている。セルの列の数および行の数は適用分野に応じて調整可能である。端子4,5で取り出される全電圧は、セルの列の数、すなわち、直列に接続されたセルの個数によって定まる。この実施例では、個々のセルは、均等に、パラメータのばらつきが小さくないように製造されていなければならない。これは、逆方向電流が発生してセルが破壊されるおそれを小さくするためである。
【0035】
図6には、直列回路、並列回路およびバイパスダイオード26を有する光起電薄膜装置の平面図が示されている。
【0036】
この実施例では、逆方向電流によるセルの破壊を防止するための種々の保護手段が導入されている。特に、いわゆるバイパスダイオード26が直列に接続されたセル22〜25へ接続されている。保護ダイオードであるバイパスダイオード26は、ガラス基板上に配置されている。基本的には、SMDモジュールの形態のバイパスダイオード26は直接にガラスに接触させることができるが、ガラスから離して配置することもできる。ただし、後者の場合、直列に接続された個々のセルにそれぞれ個別のコンタクトを設けなければならない。
【0037】
図7には、ダブルセル27を備えた光起電薄膜装置の断面図が示されている。
【0038】
基本的には、半導体と金属との組み合わせのショットキーダイオード効果を利用した光起電薄膜装置は、小さな電圧しか達成できない。例えば、TCOとnドープされたTiOとPtとを組み合わせた装置では約0.4Vの光起電力が形成される。こうした電圧は多くの適用分野に対してきわめて小さく、通常の薄膜構造体では処理の困難な高電流を生じさせる。
【0039】
平面状のショットキーダイオードの層が極端に薄いので、各セルがz方向すなわち上下に並べられたダブルセルでは、これらのセルの直列回路によってセル電圧を高めることが容易であり、積層のコストを小さく抑えることができ、効率が高まる。
【0040】
基本的には、ダブルセルと同様にトリプルセルを形成することもでき、その場合、端子4,5で1.2Vの電圧が取り出される。ただし、こうしたセルの積層は、入射面から遠くなるにしたがって光の吸収度が大きくなることを考え、充分な透明性が保持されるように行わなければならない。
【0041】
ダブルセル27の実施例では、第1のセルの第1の金属層8上に導電性を改善するための第2のTCO層28が配置され、この第2のTCO層28上に第2の半導体層29および第2の金属層30が配置される。導電性の高い第2の金属層9はモノセルの場合と同様に端子5または第2のバスバー11へ接続される。
【0042】
半導体として構成されたナノスケールのTiO層はUV領域において良好な吸収度を有するので、金属層を選択する際にはUV領域での吸収度ができるだけ小さくなるように注意するか、または、効率を高めるためにUV領域での吸収度のできるだけ小さいガラス基板12を選択するとよい。
【0043】
さらに、第1の半導体層の厚さ、第2の半導体層の厚さおよび場合により設けられる第3の半導体層の厚さを、均等なエネルギ収量が得られるように相互に調整すると有利である。
【0044】
上下に並べられたマルチセルの実施例においても、セルを直列および並列に接続した回路を用いることができる。
【0045】
図8には、接着剤シート38を含む積層体として構成された光起電薄膜装置の断面図が示されている。
【0046】
この装置では、EVAシート(エチレンビニルアセテートシート)またはPVBシートポリビニルブチラールシート)の形態の接着剤シートが積層のために後面基板39に設けられている。結晶の光起電モジュールを製造するプロセスでは、通常、EVAシートはポリマーサンドウィッチ積層体および比較的簡単なテーブル積層体とともに用いられ、ファサード用のガラスを製造するプロセスでは、少なくとも370nm、通常の2倍または3倍の厚さのPVBシートがガラス基板に接合されて用いられる。サンドウィッチ積層体は薄いPVFシートおよび薄いPETシートから形成された積層体であってもよいし、さらにそのあいだに水蒸気バリア層としての薄いアルミニウムシートを挟んだ積層体であってもよい。こうしたシートの典型的な例はIsovolta社のIcosolarシートである。こうしたシートを後面基板39に用いることの利点は、ガラスの厚さ3mm〜6mmに比べて重量が小さくなり、積層プロセスが簡単となることにある。
【0047】
ガラスの形態の後面基板39を使用する際には、ESG接合体が実現され、接着剤シート38としてPVBシートが用いられる。こうした構成は、特に、建築物のファサード材、屋根材、胸壁材、庇材、梁材となる場合、有利である。通常、ガラス基板として、少なくとも部分的にプリテンションされたガラスTVGまたは安全ガラスESGが用いられる。
【0048】
図9には、後面基板31およびガラスプレート12を備えた絶縁ガラス接合体として構成された光起電薄膜装置の断面図が示されている。この実施例では、光起電薄膜装置はガラスプレート12の内面に配置されている。基本的には、光起電薄膜装置をガラスプレート12の別の内面に配置することもできるのであるが、当該の別の内面は光を反射するので、入射する太陽光の強い減衰を回避するために反射防止層が設けられることがある。
【0049】
ガラスプレート12および後面基板31から形成される絶縁ガラス接合体は、従来技術にしたがって製造される。つまり、当該の絶縁ガラス接合体では、周全体にスペーサ32が設けられ、このスペーサ32の開口部36に乾燥剤33が充填される。当該のスペーサ32によって絶縁ガラス内室37が区切られる。
【0050】
スペーサ32は、ブチレンまたはポリイソブチレンPTBなどの第1の封止剤34によってガラスプレート12および後面基板31に接合されており、第2の封止剤35によってその周縁を閉鎖されている。第2の封止剤35としては、シリコーン、ポリジメチルシロキサンPDMS、ポリウレタンPUまたはポリスルフィドPSが用いられる。
【0051】
絶縁ガラス内室37には、アルゴン、キセノンまたはクリプトンなどの不活性の希ガスが絶縁ガラス接合体の外側に生じている圧力で充填されている。複数の実施例において、端子4,5はバスバー10,11によって形成される。このとき、バスバーの線路とガラスとのあいだに水蒸気の拡散が生じないように注意すべきである。また、第1の封止剤34および第2の封止剤35の下方では全ての層6〜8,28〜30が取り除かれていなければならない。なぜなら、これらの層の隙間を通して絶縁ガラス内室37へ水蒸気が拡散してしまうからである。
【0052】
絶縁ガラス接合体として構成される光起電薄膜装置の別の実施例として、ガラスプレート12の代わりに、図8に示したような安全ガラスを用いた光起電薄膜装置を用いてもよい。
【0053】
図10には、150nm厚さのドープされたTiO層の電流電圧特性曲線が示されている。このTiO層は、Pilkington社のTECガラスでTCOコーティングされたガラス基板および20nm厚さの白金ショットキー電極上に配置されている。
【符号の説明】
【0054】
1,2 光起電薄膜装置、 3 光感応領域、 4 TCO端子、 5 金属端子、 6,28 TCO層、 7,29 半導体層、 8 第1の金属層、 9,30 第2の金属層(付加的な導電層)、 10,11 バスバー、 12,31,39 基板、 13 反射防止層、 14 太陽、 15 太陽光、 16〜18 個別セル、 19 直列回路、 20 並列回路、 22〜25 セル線、 26 バイパスダイオード、 27 ダブルセル、 32 スペーサ、 33 乾燥剤、 34,35 封止剤、 36 開口部、 37 絶縁ガラス内室、 38 接着剤シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光の吸収体としての平面状の金属カルコゲナイド化合物半導体層(7)と、
該金属カルコゲナイド化合物半導体層上に被着される第1の金属層(8)と
を有しており、
前記金属カルコゲナイド化合物半導体層と前記第1の金属層のコンタクト面との接触面がショットキーコンタクトを形成している、
光起電薄膜装置(2)の製造方法において、
直径約3nm〜約30nmのナノスケールの粒子を含む懸濁液を透明な材料の基板(12)上へ塗布することにより、前記金属カルコゲナイド化合物半導体層を形成し、
前記基板上に塗布される前記金属カルコゲナイド化合物半導体層の厚さを約150nm〜約2500nmとする
ことを特徴とする光起電薄膜装置の製造方法。
【請求項2】
前記金属カルコゲナイド化合物半導体層の前記厚さを約500nm〜約1000nmとする、請求項1記載の光起電薄膜装置の製造方法。
【請求項3】
前記金属カルコゲナイド化合物半導体層を、前記基板の材料に対して、ブレードコーティング、ローラコーティング、カーテンコーティング、プリンティングまたはスプレーコーティングを行うことにより被着させる、請求項1または2記載の光起電薄膜装置の製造方法。
【請求項4】
前記金属カルコゲナイド化合物半導体層として、TiO,SrTiO,CuS,ZnO,WO,CdS,MoS,CdSeS,SnO,Pb,CdSeのグループに含まれるいずれかの半導体材料、有利にはTiOを用いる、請求項1から3までの光起電薄膜装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1の金属層を、Ru,Rh,Pd,Ag,Os,Ir,Pt,Au,Al,Cr,Cu,Ni,Mo,Pb,Ta,Wのグループに含まれるいずれかの金属、有利にはPt,Pd,AuまたはNiにより形成する、請求項1から4までのいずれか1項記載の光起電薄膜装置の製造方法。
【請求項6】
前記金属カルコゲナイド化合物半導体層上に被着される前記第1の金属層の厚さを約10nm〜約20nmとする、請求項1から5までのいずれか1項記載の光起電薄膜装置の製造方法。
【請求項7】
前記第1の金属層のうち前記金属カルコゲナイド化合物半導体層から遠い側の面に強化された第2の金属層(9)を被着し、該第2の金属層の材料を該第2の金属層と前記第1の金属層とのあいだにオーミックコンタクトが形成されるように選定する、請求項1から6までのいずれか1項記載の光起電薄膜装置の製造方法。
【請求項8】
前記透明な材料の基板はガラス基板であり、有利には安全ガラスの形態の強化フロートガラスまたは非強化フロートガラスであり、前記透明な材料の基板は前記金属カルコゲナイド化合物半導体層によってコーティングされる面に透光性の導電層または透明な導電層(6)を有しており、有利には該導電層はTCO層であり、特に有利にはFTO層である、請求項1から7までのいずれか1項記載の光起電薄膜装置の製造方法。
【請求項9】
複数の光起電薄膜装置をモジュラー状に並べて共通の基板(12)上に被着し、前記基板および該基板上に被着された薄膜の積層体を一体的にパターニングすることにより複数の光起電薄膜装置を形成する、請求項1から8までのいずれか1項記載の光起電薄膜装置の製造方法。
【請求項10】
前記複数の光起電薄膜装置をマトリクス状に前記基板に被着し、複数の光起電薄膜装置を、行状に直列に、また、列状に並列に接続する、請求項9記載の光起電薄膜装置の製造方法。
【請求項11】
複数の光起電薄膜装置を共通の基板(12)上に積層体(27)として上下方向に形成する、請求項1から10までのいずれか1項記載の光起電薄膜装置の製造方法。
【請求項12】
1つまたは複数の光起電薄膜装置を接着剤シート(38)および後面基板(39)によって一体に積層する、請求項1から11までのいずれか1項記載の光起電薄膜装置の製造方法。
【請求項13】
前記後面基板はフロートガラスまたは部分的にプリテンションされたフロートガラス(TVG)から形成されたガラス基板であり、該後面基板と前記金属カルコゲナイド化合物半導体層を支持するガラス基板とを共通にオートクレーブプロセスにかけて合わせ安全ガラス(VSG)を形成する、請求項12または8記載の光起電薄膜装置の製造方法。
【請求項14】
前記後面基板を薄膜のPVFシートおよびPETシートを含むポリマーサンドウィッチシートから形成し、2つのシートのあいだに水蒸気バリア層としてアルミニウムシートが挿入される、請求項12記載の光起電薄膜装置の製造方法。
【請求項15】
1つまたは複数の光起電薄膜装置を、絶縁ガラス接合体の内部に、有利には、太陽光の当たるガラスプレートの内側に、配置される、請求項1から14までのいずれか1項記載の光起電薄膜装置の製造方法。
【請求項16】
請求項1から15までのいずれか1項記載の光起電薄膜装置の製造方法にしたがって製造されることを特徴とする光起電薄膜装置。
【請求項17】
建築物のファサード材、屋根材、胸壁材、庇材または梁材として用いられる、請求項16記載の光起電薄膜装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2010−183083(P2010−183083A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24495(P2010−24495)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(509251291)チュールム ベタイリグングスゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー パテンテ ツヴァイ コマンディートゲゼルシャフト (4)
【氏名又は名称原語表記】Zylum Beteiligungsgesellschaft mbH & Co. Patente II KG
【住所又は居所原語表記】Berliner Strasse 1, D−12529 Schoenefeld/Waltersdorf, Germany
【Fターム(参考)】