説明

光路長可変セル

【課題】簡易的な構成で、測定対象の試料の透過率又は屈折率に応じた所望の光路長に調節できる。
【解決手段】測定対象となる試料Mが収容される試料測定用空間11と、該試料測定用空間11の略中間位置に連通するように対向して形成された開口穴14とを備え、開口穴14における試料流路11との接続部分の内周面に、試料Mの透過率又は屈折率に応じて光路長を調節するための位置調節用雌ネジ部15が形成されたセル本体10と、測定光又は透過光が通過する透過部材20bが装入される外周面に位置調節用雌ネジ部15と螺合するための位置調節用雄ネジ部23が形成された保護部材20aとを備え、試料Mの透過率又は屈折率に応じた最適な光路長となるように、保護部材20aを回転により光路と同方向に移動させて光路長の調節を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的に試料の透過率又は屈折率を測定するために用いられ、試料中を透過する光の光路長の調節が可能な光路長可変セルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、試料溶液に光を照射し、その光が試料を通過する際、対象となる物質による光の吸収の程度、すなわち吸光度を測定することにより、その物質の濃度を定量的に分析する吸光度分析法が知られている。そして、対象となる物質の吸光度は、入射光の強度I0 と透過光の強度Iとの比の対数が吸光物質の厚さdに比例することを表すランベルトの法則と、溶液による光の吸光係数が濃度cに依存することを表すベールの法則とを合せたランベルト・ベールの法則(下記式1)を用いて測定している。
【0003】
log10(I0 /I)=εcd …(式1)
ここで、log10(I0 /I)を吸光度、cがモル濃度の場合のεをモル吸光係数とする。
【0004】
この測定方法を用いて対象となる物質の吸光度を測定する場合、試料溶液の濃度によって異なるため、得られる吸光度を適当な値にするために光路長の変更が必要となるが、光路長を変更する場合は測定器具の組み替えや部品の交換などを行わなければならず、作業が煩雑であった。そこで、このような手間を省くため、下記特許文献1に開示される光路長可変セルが開発されている。
【0005】
図8は、排水や環境水のCOD(化学的酸素要求量)測定値を測定するCOD測定装置に用いられる光路長可変セルの断面図である。この光路長可変型セル201は、互いに平行に配置された透明平板からなる光入射窓202aと光出射窓202bをもち被測定液が収容され又は流通するセル本体203と、対をなす平面対204a,204bをもちセル本体203内に着脱可能に挿入される透明材質の光路長変更ブロック204とを備えている。その光路長変更ブロック204が有する平面対204a,204bから、いずれかの厚さの平面対を選択してセル内の光路に挿入することで、光路長を複数段階に変更することができる。本発明の光路長可変型セル201を使用した吸光度測定方法は、測定光の光路Xに対してセル本体203を固定し、光路長変更ブロック204を測定光の光路を横切る方向に移動させることにより複数の光路長での吸光度測定を可能としている。そして、測定された吸光度が上限吸光度以下であるか否かを判定し、測定された吸光度が上限吸光度より大きいと判定したときに、光路長が短くなる方向に光路長変更ブロック204を移動させるためのモータ205を制御して光路長を変更している。
【特許文献1】特開2006−194775号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された光路長可変セルでは、光路長を可変するための駆動部(モータ205)を制御し、光路長変更ブロック204を移動させることで光路長を変更しているが、このような構成とすると光路長を変更するための構成部品が多くなって装置全体の構成が大掛かりになってしまうとともに、製造コストが嵩むという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、簡易的な構成で所望の光路長に調節可能な光路長可変セルを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、請求項1記載の光路長可変セルは、測定対象となる試料に測定光を投光する投光部と、前記測定光が前記試料を透過した透過光を受光する受光部と、該受光部で受光した前記透過光の強度に基づき前記試料の透過率又は屈折率を算出する演算部とを備えた光学的測定部を有する光学的測定装置に用いられる光路長可変セルにおいて、
前記試料の測定を行うために前記投光部と前記受光部との間の光路に形成される試料測定用空間と、該試料測定用空間の略中間位置に連通するように前記投光部と前記受光部とが対向して形成された開口穴とを有するセル本体と、
前記測定光又は前記透過光が通過する透過部材と、該透過部材が装入される保護部材とからなる光学窓と、
前記セル本体に対して前記保護部材を前記光路と同方向に移動させ、前記試料の透過率又は屈折率に応じた光路長に調節する光路長調節手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の光路長可変セルは、請求項1記載の光路長可変セルにおいて、前記光路長調節手段は、前記セル本体の前記開口穴における前記試料測定用空間との接続部分の内周面に形成された位置調節用雌ネジ部と、
前記保護部材の外周面に形成され、前記位置調節用雌ネジ部と螺合するための位置調節用雄ネジ部とからなり、
前記保護部材を回転により前記光路と同方向に移動させて前記試料の透過率又は屈折率に応じた光路長に調節することを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の光路長可変セルは、請求項1又は2記載の光路長可変セルにおいて、ヒートポンプシステムを循環する冷媒に混入するオイルの循環率(OCR)を測定するオイル循環率測定装置に用いられ、
前記透過部材が少なくとも近赤外光を透過する光学材料で形成されるとともに、少なくとも前記セル本体及び前記保護部材が耐圧性及び耐食性を有する金属材料で形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の光路長可変セルによれば、測定対象となる試料の透過率又は屈折率に応じて保護部材を光路と同方向に移動させて位置調節を行えるため、簡易的な構成で試料に合った最適な光路長に調節することができる。
【0012】
また、例えばCO2 ヒートポンプシステムにおけるOCR測定のような高圧下での光学的測定においても、透過部材が耐圧性を有するサファイアガラスで、また少なくともセル本体、保護部材が耐圧性及び耐食性を有する金属材料で形成されているため、このような高圧条件下であっても高性能に光学的測定を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明に係る光路長可変セルの概略を説明するための説明図であり、図2は同光路長可変セルにおける各部の構成を説明するための断面図であり、図3は同光路長可変セルの光路長を調節する際の調節方法を説明するための断面図であり、図4、図5は同光路長可変セルの取付手順を説明するための断面図であり、図6は同光路長可変セルが採用されるCO2 ヒートポンプシステムのシステム構成図であり、図7は同光路長可変セルにおける光路長調節手段の他の実施例を説明するための概略説明図である。
【0014】
なお、以下の記載では、本発明を実施するための最良の形態として、測定対象となる試料が光路長可変セル内を流れる場合について説明しているが、試料をセル内に収容した状態で透過率又は屈折率を測定することも可能である。また便宜上、透過率から吸光度を測定する場合について述べているが、これに限定されない。
【0015】
図1に示すように、本例の光路長可変セル1を備える光学的測定装置2は、光路長可変セル1と試料Mを光学的に測定する光学的測定部3とが光学手段4を介して接続されて構成されている。この光学手段4は、光学的測定部3から照射された試料Mが吸収する波長の光(以下、測定光と記す)をセル内に導くための投光側光ファイバ4aと、投光側光ファイバ4aから照射された測定光が試料Mを透過したときの光(以下、透過光と記す)を受光して光学的測定部3に導くための受光側光ファイバ4bとで構成される。各ファイバ4a、4bの先端にはファイバコネクタを介して光学レンズ4c、4dがそれぞれ装着されており、この光学レンズ4c、4d(本例では投光側光ファイバ4aには光学レンズ4cが接続され、受光側光ファイバ4bには光学レンズ4dが接続される)が光路長可変セル1に装着されている。また、光路長可変セル1は、セル内に試料Mを流入するための試料導入管5と、吸光度の測定が終了した試料Mをセル内から排出するための試料排出管6が接続されている。
【0016】
光学的測定部3は、例えばハロゲンランプなどの光源で構成され光路長可変セル1内の試料Mに透過させる測定光を投光側光ファイバ4aを介して投光する投光部3aと、例えばフォトダイオード等の受光素子で構成され試料Mに対して照射された光を受光側光ファイバ4bを介して受光する受光部3bと、受光部3bで受光した透過光の強度に基づく電気信号から試料Mの吸光度を算出する演算部3cとを備えて構成される。光学的測定装置3は、測定対象となる試料Mに投光した測定光が試料Mを透過したときの透過光を受光し、この透過光の強度に基づく吸光度を測定している。
【0017】
次に、図2を参照しながら、本例の光路長可変セル1の構成について説明する。光路長可変セル1は、セル本体10、光学窓20、支持部材30、押さえ部材40、蓋部材50とで構成される。以下、各構成について詳細に説明する。
【0018】
セル本体10は、例えばSUS(好ましくはSUS316)、真鍮、テフロン(登録商標)などの耐圧性及び/又は耐食性を有する材料からなり、測定対象となる試料Mを収容するための所定径を有する試料測定用空間11が形成されている。試料測定用空間11の一端(図中左側)には、試料Mをセル本体10内に導入するための導入側開口部12が、他端(図中右側)には試料Mをセル本体10から排出するための排出側開口部13が設けられ、この導入側開口部12には試料Mを導入する試料導入管5が、排出側開口部13には試料Mを排出する試料排出管6がそれぞれ配管接続される。
【0019】
また、試料測定用空間11の略中間位置に連通するように所定径を有する開口穴14(本例では図中上側の開口穴14を投光側開口穴14a、図中下側の開口穴14を受光側開口穴14bとする)が対向して形成され、この2つの開口穴14a、14bが光学的測定部3からの測定光や試料Mを透過した透過光が通過する光路として機能する。そして、投光側開口穴14aには、光学的測定部3からの測定光を投光する投光側光ファイバ4aが、受光側開口穴14bには試料Mを透過した透過光を受光する受光側光ファイバ4bがそれぞれ接続される。また、開口穴14における試料測定用空間11との接続部分の内周面には、後述する保護部材20aと螺合し、測定する試料Mの吸光度に応じて光路長を調節するための光路長調節手段としての位置調節用雌ネジ部15が形成されているとともに、開口穴14におけるファイバ接続部分の外周面には、蓋部材50を螺合するための蓋部材用ネジ部16が形成されている。
【0020】
光学窓20は、例えばSUS(好ましくはSUS316)、真鍮、テフロン(登録商標)などの耐圧性及び/又は耐食性を有する材料からなり、外径は開口穴14に装入する装入部品として開口穴14と略同径を有し、内径は後述する透過部材20bが装入可能なように透過部材20bと略同径の収納部21が形成された略カップ形状を成す保護部材20aと、少なくとも近赤外光を透過する例えば耐圧性及び耐食性を有するサファイアガラスや耐食性を有する石英ガラスなどの光学材料からなり、保護部材20aに装入する装入部品として保護部材20aの収納部21と略同径を有する円板形状を成し、保護部材20aの装入位置調節が終了後に装入される透過部材20bとで構成される。また、保護部材20aの収納部21の閉塞側には、光を通過させるための光通過穴22が形成されている。さらに、保護部材20aにおける光通過穴22形成側の外周面には、開口穴14に形成された位置調節用雌ネジ部15と螺合するための光路長調節手段としての位置調節用雄ネジ部23が形成されている。また、保護部材20aの収納部21の開口端外周には、ピンや専用の治具などを差し込んで保護部材20aを回動させて着脱若しくは位置調節するための着脱用穴24が形成されている。すなわち、保護部材20aは、開口穴14に装入した後、開口穴14に形成された位置調節用雌ネジ部15と螺合することで装着される。
【0021】
ここで、図3を参照しながら、光学窓20の装着位置の調節方法について説明する。測定対象となる試料Mによって吸光度が異なるため、測定する試料Mに合せて光路長を調節する必要がある。そこで、図示のように、投光側開口穴14a又は受光側開口穴14bの少なくとも一方の保護部材20aを所定方向に回転させ、その装入位置を図中上下方向に調節することで、測定する試料Mに最適な光路長に調節することができる。
【0022】
なお、保護部材20aの位置調節は、試料Mの流れを遮断しないように試料測定用空間11の中心位置(図2の一点鎖線)よりも開口穴14側に位置するように調節するとともに、測定誤差を極力抑えるようにするべく投光側開口穴14a、受光側開口穴14bからの移動距離を均等にすることが望ましい。また、保護部材20aの移動距離は、形成された位置調節用雄ネジ部23のピッチによって異なるため、予め位置調節用雄ネジ部23のピッチから一回転当たりの移動距離を割り出しておくことで、精密に光路長の間隔調節が可能となる。
【0023】
支持部材30は、例えばSUS(好ましくはSUS316)、真鍮、テフロン(登録商標)などの耐圧性及び/又は耐食性を有する材料からなり、外径は開口穴14に装入する装入部品として開口穴14と略同径を有し、内径は投光側光ファイバ4a、受光側光ファイバ4bに接続される光学レンズ4c、4dを収納するための貫通穴31が形成された筒形状を成している。支持部材30は、開口穴14に装入された光学窓20を支持するように装入される。また、支持部材30の所定箇所における外周面には、シールして気密性を確保するためのO−リング32や、高圧力下において常用されるバックアップリング33が装着される溝部34、35が形成されており、透過部材20bとの接触部分に形成された溝部34にはO−リング32が、他方の溝部35には順にO−リング32、バックアップリング33が、それぞれ装着される。
【0024】
押さえ部材40は、例えばSUS(好ましくはSUS316)、真鍮、テフロン(登録商標)などの耐圧性及び/又は耐食性を有する材料からなり、外径は開口穴14に装入する装入部品として開口穴14と略同径を有し、内径は貫通穴31と連通するように貫通穴31と同径の貫通穴41が形成された筒形状を成している。そして、支持部材30の貫通穴31と、押さえ部材40の貫通穴41とで、投光側光ファイバ4a、受光側光ファイバ4bに接続される光学レンズ4c、4dを収納するレンズ収納穴を構成している。押さえ部材40は、支持部材30を装入した後にセル本体10から支持部材30が外れないように押さえ付けるべく開口穴14に装入される。なお、貫通穴41の内面にはファイバコネクタを螺合するためのネジ部42が形成されている。
【0025】
蓋部材50は、例えばSUS(好ましくはSUS316)、真鍮、テフロン(登録商標)などの耐圧性及び/又は耐食性を有する材料からなり、凹型の蓋形状を成している。また、蓋部材50の内周面には、セル本体10に形成された蓋部材用ネジ部16と螺合するためのネジ部51が形成されるとともに、蓋部材50の閉塞端側には光学レンズ4c、4dを装入するための装入穴52が形成されている。蓋部材50は、光学窓20、支持部材30、押さえ部材40を順に装入した後、これらを固定するべく開口穴14を塞ぐように螺合して装着される。
【0026】
次に、図4、5を参照しながら、上述した光路長可変セル1の取付手順について説明する。なお、本例の光路長可変セル1における投光側開口穴14aと受光側開口穴14bは、その構造や装入される部品及び装入する順番が同一であるため、ここでは受光側開口穴14bへの取付手順の説明を省略し、投光側開口穴14aの取付手順のみを説明する。
【0027】
図4(a)に示すように、まず、投光側開口穴14aに保護部材20aを装入する。このとき、測定する試料Mの吸光度に応じた最適な光路長となるように、セル本体10に螺合した保護部材20aを所定方向に回転させながら上下移動させ、最適な光路長となる位置まで調節する。次に、保護部材20aの装入位置が決まると、図4(b)に示すように、透過部材20bを装入する。そして、図4(c)に示すように、溝部34にはO−リング32、溝部35にO−リング32、バックアップリング33を装着した支持部材30を投光側開口穴14aに装入する。
【0028】
そして、図5(a)〜(c)に示すように、まず装入した支持部材30の押さえとなる押さえ部材40を支持部材30の上に装入した後、蓋部材50をセル本体10に螺合する。次に、光学レンズ4cを貫通穴41に装入し、最後に不図示のファイバコネクタを貫通穴41に設けたネジ部42に螺合することにより、光学レンズ4cに投光側光ファイバ4aを接続して、光路長可変セル1の取り付けが完了する。
【0029】
次に、図6を参照しながら、上述した光路長可変セル1の採用例について具体的に説明する。ここでは、自然冷媒としてCO2 を利用したCO2 ヒートポンプシステム101において、試料MであるCO2 に混入したオイルのオイル量の指標であるオイル循環率(OCR)の測定に使用した例である。
なお、以下で使用する光路長可変セルでは、CO2 ヒートポンプシステムのような高圧条件下であってもOCR測定を可能とするため、透過部材20bが耐圧性及び耐食性を有するサファイアガラスで形成され、セル本体10、保護部材20a、支持部材30、押さえ部材40、蓋部材50のうち少なくともセル本体10及び保護部材20aが耐圧性及び耐食性を有する金属材料であるSUS316で形成されている。
【0030】
まず、CO2 ヒートポンプシステム101について説明すると、冷媒としてCO2 を使用し、熱交換して気化した冷媒(CO2 )を高圧蒸気冷媒(CO2 )にするための圧縮機102、高圧高温冷媒(CO2 )を高圧低温冷媒(CO2 )に冷却するガスクーラ103、冷却された冷媒液(CO2 )を絞り膨張させて低圧・低温の液体混合体(蒸発冷媒(CO2 ))にするための膨張弁104、膨張によって一部蒸発した湿り蒸気冷媒(CO2 )を熱交換によって蒸発させるための蒸発器105が、この順でオイル混入の冷媒(CO2 )が流れるように一つの循環系を形成して配管接続された構成である。そして、本例の光路長可変セル1は、ガスクーラ103と膨張弁104との間に配管接続されている。
【0031】
上記のように配管接続された光路長可変セル1でOCRを測定した結果から検量線を作成するとN=32、R=0.99、σ=0.05%となった。これは、従来からの光路長固定型セルを用いて測定した測定結果から作成された検量線と比較しても遜色無く高性能に測定できることを示している。なお、ここでNは測定回数を、Rは相関係数を、σは標準偏差を表している。
【0032】
このように、上述した光路長可変セル1は、透過部材20bを装入する保護部材20aに測定対象となる試料Mに基づく光路長に調節するための位置調節用雄ネジ部23が形成され、測定する試料Mに基づき保護部材20aを所定方向に移動させて位置調節を行うことで、最適な光路長に調節することができる。
【0033】
また、CO2 ヒートポンプシステムにおけるOCR測定のような高圧下(約20Mpa)での光学的測定を行った場合であっても、透過部材20bを耐圧性及び耐食性を有するサファイアガラスで形成し、セル本体10、保護部材20a、支持部材30、押さえ部材40、蓋部材50のうち少なくともセル本体10及び保護部材20aを耐圧性及び耐食性を有する金属材料であるSUS316で形成しているため、このような高圧条件下であっても高性能に光学的測定を行うことができる。
【0034】
ところで、上述した形態では、図1、2において導入側開口部12を図中左側、排出側開口部13を図中右側、また投光側開口穴14aを図中上側、受光側開口穴14bを図中下側として説明したが、セル本体10において試料測定用空間11に対して開口穴14が対向する位置に形成されていれば、各部の形成位置は特に限定されない。
【0035】
また、試料の透過率又は屈折率に応じて光路長を調節するための光路長調節手段を、セル本体10の開口穴14に形成された位置調節用雌ネジ部15と、保護部材20aに形成された位置調節用雄ネジ部23とで構成し、開口穴14に保護部材20aを螺合してねじ込むことで試料の透過率又は屈折率に応じた光路長に可変する構造で説明した。
しかし、この光路長調節手段は、例えば図7(a)に示すように、保護部材20aの外周面に所定間隔で係止溝25を刻み、この係止溝25を開口穴14の内面に設けた凸状の係止部材26で任意の装入位置に固定する構造や、また図7(b)に示すように、開口穴14の内面に所定間隔で係止溝28を刻み、この係止溝28に保護部材20aの外面に設けた凸状の係止部材27を係止する構成とすることも可能である。
このように、光路長を調節するべく保護部材20aを光路と同方向に移動可能な構成であれば特に限定されない。
【0036】
以上、本願発明における最良の形態について説明したが、この形態による記述及び図面により本発明が限定されることはない。すなわち、この形態に基づいて当業者等によりなされる他の形態、実施例及び運用技術等はすべて本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る光路長可変セルの概略を説明するための説明図である。
【図2】同光路長可変セルにおける各部の構成を説明するための断面図である。
【図3】同光路長可変セルの光路長を調節する際の調節方法を説明するための断面図である。
【図4】(a)〜(c) 同光路長可変セルの取付手順を説明するための断面図である。
【図5】(a)〜(c) 同光路長可変セルの取付手順を説明するための断面図である。
【図6】同光路長可変セルが採用されるCO2 ヒートポンプシステムのシステム構成図である。
【図7】(a)〜(b) 同光路長可変セルにおける光路長調節手段の他の実施例を説明するための概略説明図である。
【図8】従来の光路長可変セルを説明するための概略構成図である。
【符号の説明】
【0038】
1 光路長可変セル
2 光学的測定装置
3 光学的測定部(3a 投光部、3b 受光部、3c 演算部)
4 光学手段(4a 投光側光ファイバ、4b 受光側光ファイバ、4c,4d 光学レンズ)
5 試料導入管
6 試料排出管
10 セル本体
11 試料測定用空間
12 導入側開口部
13 排出側開口部
14 開口穴(14a 投光側開口穴、14b 受光側開口穴)
15 位置調節用雌ネジ部
16 蓋部材用ネジ部
20 光学窓(20a 保護部材、20b 透過部材)
21 収納部
22 光通過穴
23 位置調節用雄ネジ部
24 着脱用穴
25 係止溝
26 係止部材
27 係止部材
28 係止溝
30 支持部材
31 貫通穴
32 O−リング
33 バックアップリング
34,35 溝部
40 押さえ部材
41 貫通穴
42 ネジ部
50 蓋部材
51 ネジ部
52 装入穴
101 CO2 ヒートポンプシステム
102 圧縮機
103 ガスクーラ
104 膨脹弁
105 蒸発器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象となる試料に測定光を投光する投光部と、前記測定光が前記試料を透過した透過光を受光する受光部と、該受光部で受光した前記透過光の強度に基づき前記試料の透過率又は屈折率を算出する演算部とを備えた光学的測定部を有する光学的測定装置に用いられる光路長可変セルにおいて、
前記試料の測定を行うために前記投光部と前記受光部との間の光路に形成される試料測定用空間と、該試料測定用空間の略中間位置に連通するように前記投光部と前記受光部とが対向して形成された開口穴とを有するセル本体と、
前記測定光又は前記透過光が通過する透過部材と、該透過部材が装入される保護部材とからなる光学窓と、
前記セル本体に対して前記保護部材を前記光路と同方向に移動させ、前記試料の透過率又は屈折率に応じた光路長に調節する光路長調節手段とを備えたことを特徴とする光路長可変セル。
【請求項2】
前記光路長調節手段は、前記セル本体の前記開口穴における前記試料測定用空間との接続部分の内周面に形成された位置調節用雌ネジ部と、
前記保護部材の外周面に形成され、前記位置調節用雌ネジ部と螺合するための位置調節用雄ネジ部とからなり、
前記保護部材を回転により前記光路と同方向に移動させて前記試料の透過率又は屈折率に応じた光路長に調節することを特徴とする請求項1記載の光路長可変セル。
【請求項3】
ヒートポンプシステムを循環する冷媒に混入するオイルの循環率を測定するオイル循環率測定装置に用いられ、
前記透過部材が少なくとも近赤外光を透過する光学材料で形成されるとともに、少なくとも前記セル本体及び前記保護部材が耐圧性及び耐食性を有する金属材料で形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の光路長可変セル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−180665(P2009−180665A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−21236(P2008−21236)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000133526)株式会社チノー (113)
【出願人】(598015084)学校法人福岡大学 (114)
【Fターム(参考)】