説明

光輝性塗膜形成方法および塗装物

【課題】光輝性クリヤー塗膜中の光輝材の見え方が、ベース塗膜中に埋没せずに、光輝材含有クリヤー塗膜中の光輝材がキラキラキラキラと輝くような、特に暗黒の夜空に瞬く星のような意匠性の高い光輝感を得る塗膜を形成することができる光輝性塗膜形成方法および塗装物を提供すること。
【解決手段】被塗基材に、L値が1〜40のカラーベース塗膜層を形成した後、上記カラーベース塗膜層上に、金属被覆ガラスフレーク顔料を乾燥塗膜中に0.001〜5質量%含有する光輝性クリヤー塗膜層を形成し、次いで上記光輝性クリヤー塗膜層上にトップクリヤー塗膜層を形成する光輝性塗膜形成方法及び塗装物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光輝性塗膜形成方法およびこの方法により塗装された塗装物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車車体などの高い意匠性が必要とされる分野においては、光輝性顔料を含有する光輝性塗料を用いた塗膜が必要とされており、このような光輝性塗料の1つとして、例えば特開平9−323064号公報には、多方面反射によるキラキラキラキラした光輝感に優れ、立体的な光輝感を示す光輝性塗膜の形成方法として、(1)被塗基材に光輝材含有ベース塗膜を形成する工程、次いで(2)(A)平均粒子径(D50)が20±5μm、粒子平均厚みが0.5〜1.5μm、ロジン−ラムラー線図における勾配nが2.5以上のアルミニウムフレーク顔料または(B)金属酸化物を被覆した合成雲母粉末顔料の少なくとも1種の光輝材を樹脂固形分100重量部に対して0.005〜0.1重量部未満含有する光輝材含有クリヤー塗膜を少なくとも一層形成する工程が記載されている。
【0003】
しかしながら上記公報は、ベース塗膜に光輝材を含有しているため、クリヤー塗膜中の光輝材の見え方が、ベース塗膜中に埋没してしまい、すなわち光輝材含有クリヤー塗膜中の光輝材の特徴が埋没してしまい、天の川に瞬く星のような光輝感であり、暗黒の夜空に瞬く星のような意匠性の高い光輝感とは言えなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−323064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、光輝性クリヤー塗膜中の光輝材の見え方が、ベース塗膜中に埋没せずに、光輝材含有クリヤー塗膜中の光輝材がキラキラキラキラと輝くような、特に暗黒の夜空に瞬く星のような意匠性の高い光輝感を得る塗膜を形成することができる光輝性塗膜形成方法および塗装物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は上述の課題に鑑み鋭意研究した結果、本発明に至った。
【0007】
1.被塗基材に、L値が1〜40のカラーベース塗膜層を形成した後、上記カラーベース塗膜層上に、金属被覆ガラスフレーク顔料を乾燥塗膜中に0.001〜5質量%含有する光輝性クリヤー塗膜層を形成し、次いで上記光輝性クリヤー塗膜層上にトップクリヤー塗膜層を形成する光輝性塗膜形成方法。
【0008】
2.上記カラーベース塗膜層のL値が、1〜10である上記の光輝性塗膜形成方法。
【0009】
3.上記光輝性クリヤー塗膜層に、マイカ顔料および/またはアルミニウムフレーク顔料を金属被覆ガラスフレーク顔料と併せて乾燥塗膜中に0.001〜10質量%含有する上記の光輝性塗膜形成方法。
【0010】
4.上記トップクリヤー塗膜層が、クリヤー塗料から形成され、上記クリヤー塗料が、カルボキシル基含有ポリマーおよびエポキシ基含有ポリマーを含有する樹脂を含む塗料である上記の光輝性塗膜形成方法。
【0011】
5.上記の光輝性塗膜形成方法により得られた塗装物。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、被塗基材に、L値が1〜40のカラーベース塗膜層を形成した後、上記カラーベース塗膜層上に、金属被覆ガラスフレーク顔料を乾燥塗膜中に0.001〜5質量%含有し、ならびに必要に応じて配合されるマイカ顔料および/またはアルミニウムフレーク顔料を金属被覆ガラスフレーク顔料と併せて乾燥塗膜中に0.001〜10質量%含有する光輝性クリヤー塗膜層を形成し、次いで上記光輝性クリヤー塗膜層上にトップクリヤー塗膜層を形成することによって、光輝性クリヤー塗膜中の光輝材の見え方が、ベース塗膜中に埋没せずに、光輝材含有クリヤー塗膜中の光輝材がキラキラキラキラと輝くような、特に暗黒の夜空に瞬く星のような意匠性の高い光輝感を発現させることが可能となり、その結果、より高級感のある光輝感が得られる塗膜を形成することができるようになった。なお、本発明により得られる塗膜は上記光輝感を呈するため、自動車、二輪車等の乗物外板、容器外面、コイルコーティング、家電業界等の光輝性が要求される分野において好ましく使用される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の構成について詳述する。
【0014】
[光輝性塗膜形成方法]
本発明の光輝性塗膜形成方法においては、必要に応じて電着塗膜または中塗り塗膜が形成された被塗基材に、ウェットオンウェット(W/W)、またはウェットオンドライ(W/D)により、上記カラーベース塗膜層を形成することができる。なお上記W/Wとは下地塗装をした後、風乾等により乾燥し、未硬化状態または半硬化状態の下地塗膜に塗装する方法であり、これに対して、上記W/Dとは下地塗膜を焼き付けて硬化させた後、上記下地塗膜に塗装する方法である。このようにして、上記カラーベース塗膜層を形成後、さらに先のW/WまたはW/Dによりカラーベース塗膜層上に、金属被覆ガラスフレーク顔料を乾燥塗膜中に0.001〜5質量%含有し、ならびに必要に応じて配合されるマイカ顔料および/またはアルミニウムフレーク顔料を金属被覆ガラスフレーク顔料と併せて乾燥塗膜中に乾燥塗膜中に0.001〜10質量%含有する光輝性クリヤー塗膜層を形成する。このようにして形成された光輝性クリヤー塗膜層上には、トップクリヤー塗膜層として、上記トップクリヤー塗膜層をW/Wにより少なくとも一層形成する。
【0015】
[被塗基材]
上記被塗基材としては、限定されるものでなく、鉄、アルミニウム、銅またはこれらの合金等の金属類;ガラス、セメント、コンクリート等の無機材料;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂類や各種のFRP等のプラスチック材料;木材、紙や布等の繊維材料等の天然または合成材料等が挙げられる。本発明の光輝性塗膜形成方法においては、上記被塗基材に直接または下塗り塗膜を介して、L値が1〜40のカラーベース塗膜層を形成するが、本発明の光輝性塗膜形成方法により得られた塗装物が、自動車車体および部品の場合は、予め被塗基材に脱脂処理や化成処理、電着塗装等による下塗り塗装、または中塗り塗装等を施しておくのが好ましい。上記中塗り塗装は、下地の隠蔽、耐チッピング性の付与および上塗りとの密着性確保のために行われるものである。
【0016】
[カラーベース塗膜層の形成]
本発明の光輝性塗膜形成方法におけるカラーベース塗膜層は、塗膜形成用樹脂と必要に応じて架橋剤とからなるビヒクルと着色顔料、および必要に応じて光輝性顔料とを含むカラーベース塗料から形成される。このカラーベース塗料は、分散して得られる溶剤型、水性、粉体型等の種々の形態をとることができる。溶剤型塗料または水性塗料としては、一液型塗料を用いてもよいし、二液型ウレタン樹脂塗料等のような二液型塗料を用いてもよい。このような塗料には、上記成分の他に硬化触媒、表面調整剤、その他の添加剤が配合されていてもよい。このカラーベース塗膜層は、下地層を隠蔽する塗膜層である。
【0017】
本発明の光輝性塗膜形成方法において、カラーベース塗膜層を形成するのに用いられるカラーベース塗料に含まれる塗膜形成用樹脂としては、(a)アクリル樹脂、(b)ポリエステル樹脂、(c)アルキド樹脂、(d)フッ素樹脂、(e)エポキシ樹脂、(f)ポリウレタン樹脂、(g)ポリエーテル樹脂等が挙げられ、これらは、単独または2種以上を組み合わせて使用することができ、好ましくはアクリル樹脂またはポリエステル樹脂である。
【0018】
上記(a)アクリル樹脂としては、アクリル系モノマーと他のエチレン性不飽和モノマーとの共重合体を挙げることができる。上記共重合に使用し得るアクリル系モノマーとしては、アクリル酸またはメタクリル酸のメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、ラウリル、フェニル、ベンジル、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル等のエステル化物類、アクリル酸またはメタクリル酸2−ヒドロキシエチルのカプロラクトンの開環付加物類、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アクリルアミド、メタクリルアミドおよびN−メチロールアクリルアミド、多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類などがある。これらと共重合可能な上記他のエチレン性不飽和モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、イタコン酸、マレイン酸、酢酸ビニルなどがある。
【0019】
上記(b)ポリエステル樹脂としては、飽和ポリエステル樹脂や不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられ、例えば、多塩基酸と多価アルコールを加熱縮合して得られた縮合物が挙げられる。多塩基酸としては、例えば、無水フタル酸、テレフタル酸、コハク酸等の飽和多塩基酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸等の不飽和多塩基酸等が挙げられる。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール等の二価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の三価アルコール等が挙げられる。
【0020】
上記アルキド樹脂(c)としては、上記多塩基酸と多価アルコールにさらに油脂・油脂脂肪酸(大豆油、アマニ油、ヤシ油、ステアリン酸等)、天然樹脂(ロジン、コハク等)等の変性剤を反応させて変性させることによって得られたアルキド樹脂を用いることができる。
【0021】
上記フッ素樹脂(d)としては、フッ化ビニリデン樹脂、四フッ化エチレン樹脂のいずれかまたはこれらの混合体、フルオロオレフィンとヒドロキシ基含有の重合性化合およびその他の共重合可能なビニル系化合物からなるモノマーを共重合させて得られる各種フッ素系共重合体からなる樹脂を挙げることができる。
【0022】
上記エポキシ樹脂(e)としては、ビスフェノールとエピクロルヒドリンの反応によって得られる樹脂等を挙げることができる。ビスフェノールとしては、例えば、ビスフェノールA、F等が挙げられる。上記ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、エピコート828、エピコート1001、エピコート1004、エピコート1007、エピコート1009(いずれも商品名、シェルケミカル社製)等が挙げられ、またこれらを適当な鎖延長剤を用いて鎖延長したものも用いることができる。
【0023】
上記ポリウレタン樹脂(f)としては、アクリル、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート等の各種ポリオール成分とポリイソシアネート化合物との反応によって得られるウレタン結合を有する樹脂を挙げることができる。上記ポリイソシアネート化合物としては、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、およびその混合物(TDI)、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(4,4’−MDI)、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート(2,4’−MDI)、およびその混合物(MDI)、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート(NDI)、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート(TODI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ジシクロへキシルメタン・ジイソシアネート(水素化HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、へキサメチレンジイソシアネート(HDI)、水素化キシリレンジイソシアネート(HXDI)等を挙げることができる。
【0024】
上記ポリエーテル樹脂(g)としては、エーテル結合を有する重合体または共重合体であり、ポリオキシエチレン系ポリエーテル、ポリオキシプロピレン系ポリエーテル、もしくはポリオキシブチレン系ポリエーテル、またはビスフェノールAもしくはビスフェノールFなどの芳香族ポリヒドロキシ化合物から誘導されるポリエーテル等の1分子当たりに少なくとも2個の水酸基を有するポリエーテル樹脂が挙げられる。また上記ポリエーテル樹脂とコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸等の多価カルボン酸類、または、これらの酸無水物等の反応性誘導体とを反応させて得られるカルボキシル基含有ポリエーテル樹脂が挙げられる。
【0025】
また、上記塗膜形成用樹脂には、硬化性を有するタイプとラッカータイプがあるが、通常硬化性を有するタイプのものが使用される。
【0026】
硬化性を有するタイプの場合には、アミノ樹脂、(ブロック)ポリイソシアネート化合物、アミン系、ポリアミド系、イミダゾール類、イミダゾリン類、多価カルボン酸等の架橋剤と混合して使用され、加熱または常温で硬化反応を進行させることができる。また、硬化性を有しないラッカータイプの塗膜形成用樹脂を、硬化性を有するタイプと併用することも可能である。
【0027】
上記ビヒクルが架橋剤を含む場合、塗膜形成用樹脂と架橋剤との割合としては、固形分換算で塗膜形成用樹脂が90〜50重量%、架橋剤が10〜50重量%であり、好ましくは塗膜形成用樹脂が85〜60重量%であり、架橋剤が15〜40重量%である。架橋剤が10重量%未満では(塗膜形成用樹脂が90重量%を超えると)、塗膜中の架橋が十分でない。一方、架橋剤が50重量%を超えると(塗膜形成用樹脂が50重量%未満では)、塗料の貯蔵安定性が低下するとともに硬化速度が大きくなるため、塗膜外観が悪くなる。
【0028】
上記カラーベース塗料に含まれる着色顔料として、従来から塗料用として常用されている有機顔料や無機顔料を挙げることができる。例えば、有機顔料としては、アゾレーキ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ系顔料、ペリレン系顔料、キノフタロン系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属錯体顔料等が挙げられ、また、無機顔料としては、黄色酸化鉄、ベンガラ、二酸化チタン、カーボンブラック等が挙げられる。一方、上記カラーベース塗料に含有される光輝性顔料としては、従来から塗料用として常用されている、例えば、アルミニウムフレーク顔料、着色アルミニウムフレーク顔料、グラファイト顔料、マイカ顔料、金属チタンフレーク、ステンレスフレーク、板状酸化鉄、フタロシアニンフレークまたは金属被覆ガラスフレーク等が挙げられる。
【0029】
また上記カラーベース塗料においては、これから得られる塗膜のL値が1〜40となるように、上記着色顔料、および必要に応じて光輝性顔料の種類ならびに量を選択して添加する。L値が40を超えると、光輝性クリヤー塗膜中の金属被覆ガラスフレーク顔料、ならびに必要に応じて配合されるマイカ顔料および/またはアルミニウムフレーク顔料の輝きが、ベース塗膜の明度により効果が低減してしまい、光輝材含有クリヤー塗膜中の金属被覆ガラスフレーク顔料、ならびに必要に応じて配合されるマイカ顔料および/またはアルミニウムフレーク顔料がキラキラキラキラと輝くような光輝感を発現できない恐れがある。好ましいL値は、1〜10である。ここで、L値とはJIS Z28722に規定する三刺激値X,Y,Zから求められるハンターの色差式における明度指数を意味する。
【0030】
上記着色顔料、および必要に応じて配合される光輝性顔料の含有量(塗料固形分100重量部に対する顔料の固形分重量割合:PWC)は、50%未満が好ましく、30%未満がより好ましい。50%を超えると塗膜外観が低下する。またタルク、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、シリカ等の各種体質顔料等を併用することができる。
【0031】
上記カラーベース塗料は、上記成分の他に、脂肪族アミドの潤滑分散体であるポリアミドワックスや酸化ポリエチレンを主体としたコロイド状分散体であるポリエチレンワックス、沈降防止剤、硬化触媒、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、シリコーンや有機高分子等の表面調整剤、タレ止め剤、増粘剤、消泡剤、滑剤、架橋性重合体粒子(ミクロゲル)等を適宜添加して含有することができる。これらの添加剤は、通常、上記ビヒクル100重量部(固形分基準)に対して例えば、それぞれ15重量部以下の割合で配合することにより、塗料や塗膜の性能を改善することができる。
【0032】
上記カラーベース塗料が溶剤型または水性の場合、上記構成成分を、通常、溶剤に溶解または分散した態様で提供される。溶剤としては、ビヒクルを溶解または分散するものであればよく、有機溶剤、および必要に応じて水を使用し得る。有機溶剤としては、塗料分野において常用されているものを挙げることができる。例えば、トルエン、キシレン等の炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブ等のエステル類、アルコール類等を例示できる。環境面の観点から有機溶剤の使用が規制されている場合には、水を用いることが好ましい。この場合、適量の親水性有機溶剤を含有させてもよい。
【0033】
上記カラーベース塗膜層の乾燥膜厚は、10〜100μmが好ましい。10μm未満では、下地を隠蔽し難く、100μmを超えると塗膜外観不良を生じる恐れがある。より好ましくは20〜50μmである。
【0034】
[光輝性クリヤー塗膜層の形成]
本発明の光輝性塗膜形成方法における光輝性クリヤー塗膜層は、上記カラーベース塗膜層の上に、金属被覆ガラスフレーク顔料を乾燥塗膜中に0.001〜5質量%含有し、ならびに必要に応じて配合されるマイカ顔料および/またはアルミニウムフレーク顔料を金属被覆ガラスフレーク顔料と併せて乾燥塗膜中に乾燥塗膜中に0.001〜10質量%含有する光輝性クリヤー塗料によって形成される。
【0035】
上記光輝性クリヤー塗料は、溶剤型、水性、または粉体型等の種々の形態をとることができる。溶剤型塗料または水性塗料としては、一液型塗料を用いてもよいし、二液型ウレタン樹脂塗料等のような二液型塗料を用いてもよい。上記光輝性クリヤー塗料は、金属被覆ガラスフレーク顔料、ならびに必要に応じて配合されるマイカ顔料および/またはアルミニウムフレーク顔料の効果を損なわない範囲の種類と量のその他の光輝性顔料、および必要に応じて着色顔料を含有することができる。上記光輝性クリヤー塗料に含まれるビヒクル、その他の光輝性顔料、着色顔料、その他の成分は、上記カラーベース塗料で説明したものと同じである。
【0036】
上記金属被覆ガラスフレーク顔料は、平滑な表面を有するフレーク状ガラスの表面に金属が被覆形成されているものである。ここで、平滑な表面を有するフレーク状ガラスとは、溶融成形などにより製造され、表面を粗くするための処理を受けていないものである。このようなフレーク状ガラスの表面に形成された金属皮膜は、上記従来の金属箔顔料に比べて表面平滑度が高く、光沢および輝度も高い。金属皮膜の形成は、例えば無電解めっきにより行われるが、これに限られず、他の方法により形成されてもよい。
【0037】
上記金属被覆ガラスフレーク顔料は、好ましい平均粒径は、5〜80μmであり、より好ましくは、5〜40μmである。平均粒子径が、5μm未満では、キラキラキラキラと輝くような、特に暗黒の夜空に瞬く星のような意匠性の高い光輝感を得ることができず、80μmを越えると、塗膜の平滑性が不十分となる。
【0038】
上記フレーク状ガラスの基材としては、たとえば、Cガラス(耐蝕ガラス)で主成分がSiO2;65重量%、ZnO;4重量%、B23;5重量%、Na2O他;26重量%であり、厚み0.2〜3μmのものが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0039】
上記フレーク状ガラスの基材の表面にめっきなどにより形成される金属皮膜としては、通常は、金、銀、ニッケル、白金、銅、パラジウム、コバルト、チタニウム等の金属皮膜が挙げられる。これらの中でも金またはニッケルは、メッキにより特に耐酸性、耐アルカリ性、耐候性、耐水性および耐塩水性に優れた金属層を形成するので好ましい。また、銀をメッキした場合も所定の表面酸化防止処理(たとえば、二酸化ケイ素のコーティング処理など)が施されていれば、通常言われているよりも高い耐候性を示すので好ましい。金属皮膜の厚みはたとえば、0.05〜0.20μm程度である。この発明で用いる金属被覆ガラスフレーク顔料は、上記フレーク状ガラスの基材の表面に金属層を2層以上有していてもよい。この場合、金属層のすべてが無電解めっきにより形成されている必要はない。
【0040】
このような金属被覆ガラスフレーク顔料は、「メタシャイン」(日本板硝子社製)で市販されている顔料が挙げられる。
【0041】
上記金属被覆ガラスフレーク顔料に、必要により配合に加えられる上記マイカ顔料は、干渉マイカ顔料や着色マイカ顔料を用いることができる。上記干渉マイカ顔料は、天然の白雲母や合成雲母の表面に二酸化チタンまたは酸化鉄の薄膜をコーティングしたもので、キラキラ感に干渉色を併せて発現させる顔料である。このような干渉マイカ顔料としては、粒径範囲が1〜60μm、好ましくは1〜40μmで、平均粒径が5〜25μmの鱗片状のものを用いることができる。なお本発明での平均粒径は、長径の平均粒径を意味する。上記干渉マイカ顔料において、被覆する二酸化チタン量または酸化鉄量(被覆厚)を調整することで、所望の干渉色を得ることができる。
【0042】
また上記着色マイカ顔料としては、天然の白雲母や合成雲母の表面に、着色顔料を薄片状にコーティングしたマイカ顔料であることが好ましい。このような着色マイカ顔料としては、粒径範囲が1〜60μm、好ましくは1〜40μmで、平均粒径5〜25μmの、鱗片状のものを用いることができる。上記着色マイカ顔料の色は、コーティングする着色顔料の種類・量(被覆厚)を調整することで、所望の干渉色を得ることができる。
【0043】
さらに必要により配合に加えられる上記アルミニウムフレーク顔料は、アルミニウムフレークをステアリン酸のような脂肪酸とともにボールミルで粉砕処理する通常の方法によって調製されたリーフィング、セミリーフィングまたはノンリーフィング系のアルミニウムフレークであってよい。また着色アルミニウムフレーク顔料を用いることによっても、目的の意匠を得ることができる。好ましい平均粒径は、1〜44μmの範囲である。
【0044】
上記金属被覆ガラスフレーク顔料、ならびに必要に応じて配合されるマイカ顔料および/またはアルミニウムフレーク顔料の光輝性クリヤー塗膜中の含有量は、上記金属被覆ガラスフレーク顔料のみの場合は、上記金属被覆ガラスフレーク顔料を乾燥塗膜中に0.001〜5質量%であり、0.001質量%未満では、キラキラキラキラと輝くような、特に暗黒の夜空に瞬く星のような意匠性の高い光輝感を得ることができず、5質量%を越えると塗膜外観が低下する。好ましくは0.01〜2質量%である。
【0045】
また上記金属被覆ガラスフレーク顔料に、マイカ顔料および/またはアルミニウムフレーク顔料を併用する場合は、乾燥塗膜中に、これらの顔料を併せて0.001〜10質量%であり、0.001質量%未満では、キラキラキラキラと輝くような、特に暗黒の夜空に瞬く星のような意匠性の高い光輝感を得ることができず、10質量%を越えると塗膜外観が低下する。好ましくは0.01〜5質量%である。
【0046】
上記金属被覆ガラスフレーク顔料とマイカ顔料および/またはアルミニウムフレーク顔料を併用する場合の固形分混合質量比率は、「金属被覆ガラスフレーク顔料」/「マイカ顔料および/またはアルミニウムフレーク顔料」=95/5〜50/50が好ましい。
【0047】
上記光輝性クリヤー塗膜層の乾燥膜厚は、5〜100μmが好ましい。5μm未満では彩度を伴う光輝感が、十分に発現できず、100μmを超えると塗膜外観が、不充分となる恐れがある。より好ましくは10〜40μmである。
【0048】
[トップクリヤー塗膜層の形成]
本発明の光輝性塗膜形成方法においては、光輝性クリヤー塗膜層を形成した後、その上にトップクリヤー塗膜層をW/Wにより形成する。この場合のトップクリヤー塗膜層は、下地層を隠蔽しないもので、無色透明なクリヤー塗膜であり、さらには半透明感を付与した、いわゆるカラークリヤー塗膜であってもよく、光輝性クリヤー塗膜層の上にトップクリヤー塗膜層を形成することにより、光沢向上と上記金属被覆ガラスフレーク顔料、ならびに必要に応じて配合されるマイカ顔料および/またはアルミニウムフレーク顔料の突出を防止することができる。上記トップクリヤー塗膜層はクリヤー塗料から形成されるが、このクリヤー塗料としては、上塗り用として常用されているものを挙げることができ、上記の硬化性を有する塗膜形成用樹脂と架橋剤とを混合したものを用いることができる。
【0049】
これらのクリヤー塗料は、必要に応じて、その透明性を損なわない範囲で、着色顔料、体質顔料、改質剤、紫外線吸収剤、レベリング剤、分散剤、消泡剤等の添加剤を配合することが可能である。また特公平8−19315号公報に記載されたカルボキシル基含有ポリマーとエポキシ基含有ポリマーとを含有するクリヤー塗料が、酸性雨対策およびウェットオンウェットで上記光輝性クリヤー塗膜層を塗装した際に、上記金属被覆ガラスフレーク顔料、ならびに必要に応じて配合されるマイカ顔料および/またはアルミニウムフレーク顔料の配向を乱さないという観点から好ましく用いられる。また、トップクリヤー塗膜層は、溶剤型、水性、または粉体型等の種々の形態をとることができる。溶剤型塗料または水性塗料としては、一液型塗料を用いてもよいし、二液型ウレタン樹脂塗料等のような二液型塗料を用いてもよい。
【0050】
上記トップクリヤー塗膜層の乾燥膜厚は、10〜400μmが好ましく、この範囲を外れると塗膜外観が不充分となる恐れがある。より好ましくは20〜200μmである。
【0051】
各塗膜層を形成する方法は特に限定されないが、溶剤型塗料または水性塗料を塗装する場合はスプレー法、ロールコーター法等が、粉体塗料を塗装する場合は静電塗装が好ましい。乾燥条件として、80〜160℃で所定時間焼き付けられ、塗膜を得ることができる。
【0052】
[塗装物]
本発明の塗装物は、上記光輝性塗膜形成方法により得られるものであり、L値1〜40のカラーベース塗膜層、その上層に金属被覆ガラスフレーク顔料を乾燥塗膜中に0.001〜5質量%含有し、ならびに必要に応じて配合されるマイカ顔料および/またはアルミニウムフレーク顔料を金属被覆ガラスフレーク顔料と併せて乾燥塗膜中に0.001〜10質量%含有する光輝性クリヤー塗膜層、次いでトップクリヤー塗膜層からなる複層塗膜が形成されている。これらの複層塗膜が形成された塗装物は、光輝性クリヤー塗膜中の光輝材の見え方が、ベース塗膜中に埋没せずに、光輝材含有クリヤー塗膜中の光輝材がキラキラキラキラと輝くような、特に暗黒の夜空に瞬く星のような意匠性の高い光輝感を呈する。
【実施例】
【0053】
次に、本発明を実施例および比較例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。なお、配合量は特に断りのないかぎり重量部を表す。
【0054】
[実施例1〜13、比較例1〜3]
[被塗基材の調製]
ダル鋼板(長さ300mm、幅100mmおよび厚さ0.8mm)を脱脂後、燐酸亜鉛処理剤(「サーフダインSD2000」、日本ペイント社製)を使用して化成処理した後、カチオン電着塗料(「パワートップU−50」、日本ペイント社製)を乾燥膜厚が25μmとなるように電着塗装した。次いで、160℃で30分間焼き付けた後、L値が、表1の値となるように調色したカラーベース塗料(「オルガS−90」、日本ペイント社製)を乾燥膜厚が40μmとなるようにエアースプレー塗装し、140℃で30分間焼き付けてカラーベース塗膜層を形成した。
【0055】
[光輝性クリヤー塗料の調製]
アクリル樹脂(スチレン/メチルメタクリレート/エチルメタクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/メタクリル酸の共重合体、数平均分子量約20000、水酸基価45、酸価15、固形分50重量%)と、メラミン樹脂(商品名,「ユーバン20SE」、三井化学社製、固形分60重量%)とを80:20の固形分重量比で配合して得たビヒクルに対し、金属被覆ガラスフレーク顔料、ならびに必要に応じて配合されるマイカ顔料および/またはアルミニウムフレーク顔料を表1に示す種類および割合で配合した。次いで、有機溶剤(トルエン/キシレン/酢酸エチル/酢酸ブチルの重量比=70/15/10/5)とともに攪拌機により塗装適正粘度になるように攪拌混合し、光輝性クリヤー塗料を調製した。
【0056】
[光輝性クリヤー塗膜およびトップクリヤー塗膜の形成]
カラーベースが形成された被塗基材の被塗面に、先に得た光輝性クリヤー塗料を乾燥膜厚が15μmになるようにスプレー塗装し、光輝性クリヤー塗膜を形成した。塗装は静電塗装機(「Auto REA」、ABBインダストリー社製)を用い、霧化圧2.8kg/cmで行った。塗装中のブースの雰囲気は温度25℃、湿度75%に保持した。塗装後3分間セッティングし、トップクリヤー塗料を乾燥膜厚が35μmになるように塗装し、室温で10分間セッティングし、140℃の温度で30分間焼き付け、トップクリヤー塗膜を形成した。得られた複層塗膜の光輝感を下記評価方法で評価した。結果を表1に示す。トップクリヤー塗膜の形成に使用したクリヤー塗料は、アクリル/メラミン樹脂系クリヤー塗料1(商品名:「スーパーラックO−130クリヤー」、日本ペイント社製)または、カルボキシル基含有ポリマーとエポキシ基含有ポリマーとを含有するクリヤー塗料2(「マックフローO−520クリヤー」、日本ペイント社製)の2種類である。評価結果を表1に示す。
【0057】
[評価方法]
光輝感:得られた複層塗膜からなる塗装物における光輝性クリヤー塗膜中の光輝材の見え方が、ベース塗膜中に埋没せずに、光輝材含有クリヤー塗膜中の光輝材がキラキラキラキラと輝くような、特に暗黒の夜空に瞬く星のような光輝感を発現するか否かを目視で評価した。
【0058】
3…上記光輝感が顕著にあり
2…上記光輝感が一応認められる
1…上記光輝感が認められない
【0059】
【表1】

【0060】
表1の結果から明らかのように、本実施例は、本発明の光輝性塗膜形成方法で得た塗装物であり光輝性クリヤー塗膜中の光輝材の見え方が、ベース塗膜中に埋没せずに、光輝材含有クリヤー塗膜中の光輝材がキラキラキラキラと輝くような、特に暗黒の夜空に瞬く星のような意匠性の高い光輝感を発現した。一方、比較例では、本発明の範囲を外れているため、光輝材含有クリヤー塗膜中の光輝材がキラキラキラキラと輝くような、特に暗黒の夜空に瞬く星のような意匠性の高い光輝感が得られない結果であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗基材に、L値が1〜40のカラーベース塗膜層を形成した後、前記カラーベース塗膜層上に、金属被覆ガラスフレーク顔料を乾燥塗膜中に0.001〜5質量%含有する光輝性クリヤー塗膜層を形成し、次いで前記光輝性クリヤー塗膜層上にトップクリヤー塗膜層を形成する光輝性塗膜形成方法。
【請求項2】
前記カラーベース塗膜層のL値が、1〜10である請求項1記載の光輝性塗膜形成方法。
【請求項3】
前記光輝性クリヤー塗膜層に、マイカ顔料および/またはアルミニウムフレーク顔料を金属被覆ガラスフレーク顔料と併せて乾燥塗膜中に0.001〜10質量%含有する請求項1または2記載の光輝性塗膜形成方法。
【請求項4】
前記トップクリヤー塗膜層が、クリヤー塗料から形成され、前記クリヤー塗料が、カルボキシル基含有ポリマーおよびエポキシ基含有ポリマーを含有する樹脂を含む塗料である請求項1から3いずれか1項記載の光輝性塗膜形成方法。
【請求項5】
請求項1から4いずれか1項記載の光輝性塗膜形成方法により得られた塗装物。

【公開番号】特開2009−142822(P2009−142822A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81765(P2009−81765)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【分割の表示】特願2002−245852(P2002−245852)の分割
【原出願日】平成14年8月26日(2002.8.26)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【Fターム(参考)】