説明

光送信器

【課題】本発明は、光送信システムを大型にすることなく、受信器へ伝送される各波長の光信号の強度を均一化できる光送信器を提供することを目的とする。
【解決手段】本願の発明に係る光送信器10は、それぞれ異なる波長のレーザ光を出射し、該レーザ光の強度が可変である複数のレーザ素子12a、12bと、該レーザ光を変調して光信号とする変調器14a、14bと、該光信号を多重化した多重化光信号を光ファイバアンプ20へ出力する合波器18と、該光ファイバアンプ20により増幅された多重化光信号である増幅後光信号の強度の波長依存をなくすように該複数のレーザ素子12a、12bの該レーザ光の強度を変化させるコントローラ17と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば光送信システムに用いられる光送信器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数のレーザ素子と光マルチプレクサを有する光送信システムが開示されている。この光送信システムは、各波長の光信号の損失がばらつくことにより当該光信号の強度がばらつくのを防ぐものである。具体的には、光信号をモニタリングする制御回路が、光信号の強度を一定に保つように複数のレーザ素子を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−261205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、光送信器により多重化された光信号は、光ファイバアンプで増幅されてから受信器へ伝送される。光ファイバアンプによる光信号の信号増幅率は波長ごとに異なる。つまりある波長の光信号は大きな信号増幅率で増幅され、別の波長の光信号は小さな信号増幅率で増幅される。従って、受信器へ伝送される各波長の光信号の強度を均一化できない問題があった。また、受信器へ伝送される光信号の強度を均一化するためにアッテネータなどを用いると光送信システムが大型になる問題があった。
【0005】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、光送信システムを大型にすることなく、受信器へ伝送される各波長の光信号の強度を均一化できる光送信器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の発明に係る光送信器は、それぞれ異なる波長のレーザ光を出射し、該レーザ光の強度が可変である複数のレーザ素子と、該レーザ光を変調して光信号とする変調器と、該光信号を多重化した多重化光信号を光ファイバアンプへ出力する合波器と、該光ファイバアンプにより増幅された多重化光信号である増幅後光信号の強度の波長依存をなくすように該複数のレーザ素子の該レーザ光の強度を変化させるコントローラと、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、光送信器に配置されたコントローラがレーザ素子の出力を調整することで、増幅後の光信号の強度における波長依存を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1に係る光送信器などを示すブロック図である。
【図2】コントローラが備えるメモリの記憶内容を示す図である。
【図3】コントローラによるレーザ素子の制御を示すフローチャートである。
【図4】コントローラによってレーザ素子のレーザ光強度が変更される前後の光ファイバアンプの出力を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る光送信器などを示すブロック図である。
【図6】送信器の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る光送信器などを示すブロック図である。本発明の実施の形態1に係る光送信器10は、それぞれ異なる波長のレーザ光を出射するレーザ素子12a、及びレーザ素子12bを備えている。レーザ素子12aのレーザ光の波長はλ1であり、レーザ素子12bのレーザ光の波長はλ2である。レーザ素子12a、12bは、レーザ光の強度及び波長が可変である。レーザ素子12aは変調器14aに接続されている。変調器14aはレーザ光を変調して光信号とするものである。レーザ素子12bは変調器14bに接続されている。
【0010】
変調器14aは光強度モニタ16aに接続されている。変調器14bは光強度モニタ16bに接続されている。光強度モニタ16a、16bは光信号の強度を検出するものである。光強度モニタ16a、16bは合波器18に接続されている。合波器18は、波長の異なる光信号を多重化するものである。合波器18で多重化された光信号を「多重化光信号」と称する。合波器18は光ファイバアンプ20に接続されている。合波器18は多重化光信号を光ファイバアンプ20へ出力する。光ファイバアンプ20は多重化光信号の伝送距離を伸ばすために、多重化光信号を増幅する。光ファイバアンプ20により増幅された多重化光信号は「増幅後光信号」と称する。
【0011】
光送信器10は、コントローラ17を備えている。コントローラ17は、機能的に言えば、増幅後光信号の強度の波長依存をなくすようにレーザ素子12a、12bのレーザ光の強度を変化させるものである。コントローラ17の具体的構成について説明する。コントローラ17はメモリ17a、取得手段17b、演算手段17c、及び調整手段17dを有している。
【0012】
メモリ17aは、光ファイバアンプ20の信号増幅率の波長依存を記憶している。図2は、コントローラ17が備えるメモリ17aの記憶内容を示す図である。メモリ17aは、レーザ素子12a、12bのとり得る波長ごとに、信号増幅率をデジタル情報化して保存したものである。
【0013】
取得手段17bは、光強度モニタ16a、16bの検出結果を取得する手段である。演算手段17cは、波長ごとに信号増幅率と強度モニタの検出結果を乗算して、増幅後光信号の強度の予測値を求める手段である。調整手段17dは、当該予測値における増幅後光信号の強度の波長依存がなくなるようにレーザ素子12a、12bのレーザ光の強度を変化させる手段である。取得手段17b、演算手段17c、及び調整手段17dは例えばマイコンで構成される。
【0014】
図3は、コントローラによるレーザ素子の制御を示すフローチャートである。図3に沿って、本発明の実施の形態1に係る光送信器10の動作を説明する。まず、このコントローラ17が、光ファイバアンプ20による波長λ1とλ2の光信号の信号増幅率を、メモリ17aから読み出す(ステップ21)。波長λ1の光信号に対する信号増幅率はA1であり、波長λ2の光信号に対する信号増幅率はA2である。次いで、取得手段17bによって光強度モニタ16a、16bの検出した光信号の強度を取得する(ステップ22)。波長λ1の光信号の光強度はS1であり、波長λ2の光信号の強度はS2である。
【0015】
次いで演算手段17cにより、増幅後光信号の強度の予測値を演算する(ステップ23)。演算結果は「予測値」と称する。予測値は、波長毎に演算する。波長λ1の予測値(P1)は、A1とS1を乗算して求める。波長λ2の予測値(P2)は、A2とS2を乗算して求める。
【0016】
ここで、光ファイバアンプ20による信号増幅率は波長依存性があるので、P1とP2は異なった値となる。そこで、調整手段17dが、P1とP2が同等になるようにレーザ素子12a、12bのレーザ光の強度を変化させる(ステップ24)。具体的には、調整手段17dは、P1とP2が同等となるためのレーザ素子12aのレーザ光の強度(最適レーザ光強度O1)とレーザ素子12bのレーザ光の強度(最適レーザ光強度O2)を演算する。そして、レーザ素子12aのレーザ光の強度がO1となり、レーザ素子12bのレーザ光の強度がO2となるようにレーザ素子12a、12bを制御する。
【0017】
図4は、コントローラによってレーザ素子のレーザ光の強度が変更される前後の光ファイバアンプの出力を示す図である。図4Aは、コントローラ17によるレーザ素子12a、12bの制御後の光ファイバアンプ20の出力を示す。図4Bは、コントローラ17による当該制御前の光ファイバアンプ20の出力を示す。コントローラ17によって、レーザ素子12a、12bのレーザ光の強度を変えた結果、増幅後光信号の強度を各波長間で均一化できた。なお、図4の破線は、λ1、λ2以外の波長の光信号の強度も均一化できることを示す。
【0018】
このように、本発明の実施の形態1に係る光送信器10によれば、レーザ素子12a、12bのレーザ光の強度を調整することにより、受信器へ伝送される増幅後光信号を波長依存なく均一化することができる。また、上述したレーザ素子12a、12bの制御のために必要となるコントローラ17及び光強度モニタ16a、16bは、光送信器10の内部に形成したため、光送信器10、及び光ファイバアンプ20を含む光送信システムの構成を簡素にできる。光送信器10内部で上述の効果を得るための全ての処理が完結するので、光送信器10の光出力を測定するスペクトルモニタ等の測定手段を光送信システムに組み込む必要がなくなり、光送信システムを廉価に製造できる。
【0019】
本発明の実施の形態1に係る光送信器10では、レーザ素子の数を2つとしたが本発明はこれに限定されない。本発明は複数のレーザ素子がそれぞれ異なる波長のレーザ光を出射する場合において、増幅後光信号の強度の波長依存を解消するものである。従って、レーザ素子の数は複数であれば特に限定されない。ところで、レーザ素子の総数すなわち、光ファイバアンプへの入力数を変化させると、光ファイバアンプの信号増幅率が変化する。従って、メモリ17aには、光ファイバアンプへの入力数(レーザ素子の総数)ごとに区別された信号増幅率のテーブルを記憶することが望ましい。そして、光ファイバアンプへの入力数に応じたテーブルを用いてレーザ素子を制御すれば、さらに精度の高い制御ができる。なお、メモリに前述のテーブルを記憶せずに、コントローラ内で光ファイバへの入力数を変数として当該入力数に応じた信号増幅率を演算してもよい。このようにすると、入力数の変化に対応するために光通過帯域フィルタやピーク値検出手段を光送信システム内に組み込む必要がなくなるので、光送信システムの構成を簡素にできる。
【0020】
本発明の実施の形態1のメモリ17aには、信号増幅率の波長依存をデジタル情報化したテーブルを記憶したが、信号増幅率の波長依存をデジタル信号処理可能な近似式及びその係数としてメモリに記憶してもよい。
【0021】
実施の形態2.
本発明の実施の形態2に係る送信器は前述した実施の形態1に係る送信器との相違点を中心に説明する。図5は、本発明の実施の形態2に係る光送信器などを示すブロック図である。光送信器30は、メインコントローラ32とサブコントローラ34、35を備えている。サブコントローラ34、35は、メインコントローラ32と接続され、かつレーザ素子12a、12bのそれぞれに接続されている。サブコントローラ34、レーザ素子12a、変調器14a、及び光強度モニタ16aがアセンブリ36aを構成している。サブコントローラ35、レーザ素子12b、変調器14b、及び光強度モニタ16bがアセンブリ36bを構成している。
【0022】
メインコントローラ32は、光ファイバアンプ20の信号増幅率の波長依存を記憶したメモリ32aを有している。そして、メモリ32aの記憶を読み出し、増幅後光信号の強度の波長依存をなくすために必要な光信号の強度の補正量を演算する補正量演算手段32bを有している。さらに、この補正量をサブコントローラ34、35へ通知する通知手段32cを有している。
【0023】
サブコントローラ34は、光強度モニタ16aの検出結果を取得する取得手段34aを有している。そして、検出結果と補正量を乗算して、レーザ素子12aのレーザ光の目標強度を演算する目標強度演算手段34bを有している。目標強度とは、増幅後光信号の強度の波長依存を解消できるレーザ光の強度である。さらに、レーザ素子12aのレーザ光の強度が目標強度となるようにレーザ光の強度を変化させる調整手段34cを有している。サブコントローラ35もサブコントローラ34と同様に、光強度モニタ16bの検出結果を取得する取得手段35a、その検出結果と補正量を乗算して、レーザ素子12bのレーザ光の目標強度を演算する目標強度演算手段35bと、レーザ素子12bのレーザ光の強度が目標強度となるようにレーザ光の強度を変化させる調整手段35cを有している。なお、調整手段34c、35cはレーザ光の強度だけでなく波長も変更も可能である。このように、波長ごとに目標強度を演算する。
【0024】
図6は、送信器の動作を示すフローチャートである。図6に沿って、本発明の実施の形態2に係る光送信器30の動作を説明する。まず、補正量演算手段32bにより、メモリ32aの記憶を読み出し、増幅後光信号の強度の波長依存をなくすために必要な光信号の強度の補正量を演算する(ステップ41)。補正量は波長ごとに演算する。つまり、波長λ1の光信号の強度の補正量と、波長λ2の光信号の強度の補正量を求める。
【0025】
次いで、通知手段32cにより、補正量をサブコントローラ34、35へ通知する(ステップ42)。サブコントローラ34へ通知される補正量と、サブコントローラ35へ通知される補正量は異なる。次いで、サブコントローラ34の取得手段34aが変調器14aから出力された光信号の強度の情報を取得する。また、サブコントローラ35の取得手段35aが変調器14bから出力された光信号の強度の情報を取得する(ステップ43)。
【0026】
次いで、目標強度演算手段34bにより、検出結果と補正量を乗算して、レーザ素子12aのレーザ光の目標強度を演算する。同様に、目標強度演算手段35bにより、レーザ素子12bのレーザ光の目標強度を演算する(ステップ44)。次いで、調整手段34cにより、レーザ素子12aのレーザ光の強度が目標強度となるように当該レーザ光の強度を変化させる。同様に調整手段35cにより、レーザ素子12bのレーザ光の強度が目標強度となるように当該レーザ光の強度を変化させる(ステップ45)。
【0027】
本発明の実施の形態2に係る光送信器30によれば、実施の形態1に係る送信器と同様に増幅後光信号の強度を波長依存なく均一化できる。実施の形態1に係る送信器の場合、演算手段により増幅後光信号の強度の予測値を演算し、その後増幅後光信号の強度の波長依存をなくす最適レーザ光強度を演算した。しかしながら、実施の形態2に係る光送信器30では、増幅後光信号の強度の波長依存をなくすために必要なレーザ光の強度の補正量を演算する。そして、この補正量に基づいて、増幅後光信号の強度の波長依存をなくすための目標強度を演算する。
【0028】
このように、実施の形態1に係る光送信器10とは異なる送信器の構成でも、実施の形態1に係る光送信器10と同様の機能を持たせることができる。本発明は、光ファイバアンプ20による信号増幅率が波長依存することを前提に、増幅後光信号の強度を波長依存なく均一化するように送信器の出力を調整するものである。従って、本発明の特徴を逸脱しない範囲において、実施の形態1、2で示した態様以外にも様々な変形を成しうる。
【0029】
なお、本発明の実施の形態2に係る光送信器30は少なくとも実施の形態1に係る光送信器10と同等の変形が可能である。そして、サブコントローラはレーザ素子と同数供給されるので、レーザ素子の数に応じてサブコントローラの数が変わる。
【符号の説明】
【0030】
10 光送信器、 12a,12b レーザ素子、 14a,14b 変調器、 16a,16b 光強度モニタ、 17 コントローラ、 17a メモリ、 17b 取得手段、 17c 演算手段、 17d 調整手段、 18 合波器、 20 光ファイバアンプ、 30 光送信器、 32 メインコントローラ、 32a メモリ、 32b 補正量演算手段、 32c 通知手段、 34,35 サブコントローラ、 34a,35a 取得手段、 34b,35b 目標強度演算手段、 34c,35c 調整手段、 36a,36b アセンブリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ異なる波長のレーザ光を出射し、前記レーザ光の強度が可変である複数のレーザ素子と、
前記レーザ光を変調して光信号とする変調器と、
前記光信号を多重化した多重化光信号を光ファイバアンプへ出力する合波器と、
前記光ファイバアンプにより増幅された多重化光信号である増幅後光信号の強度の波長依存をなくすように前記複数のレーザ素子の前記レーザ光の強度を変化させるコントローラと、
を備えたことを特徴とする光送信器。
【請求項2】
前記光信号の強度を検出する光強度モニタを有し、
前記コントローラは、
前記光ファイバアンプの信号増幅率の波長依存を記憶したメモリと、
前記光強度モニタの検出結果を取得する取得手段と、
波長ごとに前記信号増幅率と前記検出結果を乗算して、前記増幅後光信号の強度の予測値を演算する演算手段と、
前記予測値における波長依存がなくなるように前記複数のレーザ素子の前記レーザ光の強度を変化させる調整手段と、を有したことを特徴とする請求項1に記載の光送信器。
【請求項3】
前記光信号の強度を検出する光強度モニタを有し、
前記コントローラは、メインコントローラと、前記メインコントローラと接続され、かつ前記複数のレーザ素子のそれぞれに接続された複数のサブコントローラと、を有し、
前記メインコントローラは、前記光ファイバアンプの信号増幅率の波長依存を記憶したメモリと、前記メモリの記憶を読み出し、前記増幅後光信号の強度の波長依存をなくすために必要な前記光信号の強度の補正量を演算する補正量演算手段と、前記補正量を前記複数のサブコントローラへ通知する通知手段と、を有し、
前記複数のサブコントローラは、前記光強度モニタの検出結果を取得する取得手段と、波長ごとに前記検出結果と前記補正量を乗算して、前記レーザ素子の前記レーザ光の目標強度を演算する目標強度演算手段と、前記複数のレーザ素子の前記レーザ光の強度が前記目標強度となるように前記レーザ光の強度を変化させる調整手段と、を有したことを特徴とする請求項1に記載の光送信器。
【請求項4】
前記メモリは、前記複数のレーザ素子の総数ごとに区別された前記信号増幅率を記憶したことを特徴とする請求項2又は3に記載の光送信器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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