説明

光送受信モジュール

【課題】 空中を飛散するノイズの影響を低減、あるいは電子部品が発生するノイズを低減するとともに、光送受信モジュールの筐体内の限られたスペースの中で光ファイバの余長処理を行う。
【解決手段】 余長処理トレイ102の上部に光ファイバ105aの余長処理を行う収納部201を設け、該収納部201の下部には、基板101上のグランドと電気的に接続される固定用脚202を付けたカバー状の空間を形成したシールド部200が設けられている。余長処理トレイ102は、材質は導電性のものであり、基板101に実装された電子部品105をシールドする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光送受信モジュールのノイズ低減技術に関し、特に、光ファイバの余長処理トレイによる外部からのノイズや電子部品が発生するノイズなどの低減に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光送受信モジュールの小型化が進む中で、その機能はデータ通信の高速化、多機能化が要求されている。光送受信モジュールは筐体内に複数個の光学素子を搭載しており、機種によっては光学素子の光ファイバ同士を接続し筐体内の限られたスペースの中で光ファイバの余長処理を行う必要がある。
【0003】
一方で光送受信モジュールの小型化、データ通信の高速化で電子回路の高集積化が進み、不要な周波数のノイズによる高周波回路部の特性劣化を抑制する必要がある。また、光送受信モジュールでは、送信回路、および受信回路を搭載しており、それぞれの回路から発生するノイズがお互いに干渉してしまうことがある。
【0004】
光ファイバの余長処理を行う方法として、余長処理トレイを使用する方法が広く利用されている(たとえば、特許文献1,2参照)。また、光送受信モジュールにおいてノイズの影響を小さくする方法としては、たとえば、シールドカバーを電気的に光送受信モジュールと接続する技術が広く用いられている(たとえば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2003−107249号公報
【特許文献2】特開2004−4411号公報
【特許文献3】特開平9−172286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記のような送受信モジュールにおける光ファイバの余長処理技術、およびノイズ低減技術では、次のような問題点があることが本発明者により見い出された。
【0006】
光送受信モジュールの筐体内の限られたスペースの中で空中を飛散するノイズの影響を低減、あるいは不要な周波数を発生するノイズ源を封止することができるシールド機能を有しながら、光ファイバの余長処理を行うことができるトレイを内蔵した光送受信モジュールとする必要がある。
【0007】
しかし、小型化が求められる光送受信モジュールにおいては、基板の表裏に電子部品が搭載されており、その部品の高さや面積により、光ファイバの余長処理を行うトレイを取り付けるスペースに限りがある。余長処理トレイを使用せず、基板上に光ファイバを這わせ、クランプや接着剤等で固定する方法もあるが無駄な面積を占有してしまうことになる。
【0008】
さらに、基板上の電子部品から発生するノイズを低減するシールドカバーも取り付ける必要があるが、余長処理トレイを取り付けた部分にシールドカバーを取り付けることは構造的に困難である。逆にシールドカバーを取り付けた部分に余長処理トレイを取り付けることも構造的に困難である。
【0009】
本発明の目的は、基板と電気的に接続することにより空中を飛散するノイズの影響を低減、あるいは不要な周波数を発生するノイズ源を封止することができるシールド機能を有しながら、光送受信モジュールの筐体内の限られたスペースの中で光ファイバの余長処理を行う技術を提供することにある。
【0010】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0012】
本発明は、基板と、該基板に実装された電子部品と、光ファイバの余長処理を行う余長処理トレイとにより構成された光送受信モジュールであって、余長処理トレイは、導電性の筐体からなり、基板の基準電位と電気的に接続され、電子部品のノイズをシールドするノイズシールド機能を有するものである。
【0013】
また、その他の発明の概要を簡単に示す。
【0014】
本発明の余長処理トレイは、前記基板が、余長処理トレイが電気的に接続されるグランドパッドを備え、該グランドパッドが余長処理トレイのシールド部に接続されているものである。
【0015】
また、本発明の余長処理トレイは、基板上に、電子部品を覆うように固定される箱状のシールド部と、該シールド部の上部に設けられ、光ファイバの余長処理を行う光ファイバ収納部とよりなり、シールド部は、グランドパッドと電気的に接続され、基板の基準電位と接続される固定部材を備えたものである。
【0016】
さらに、本発明の余長処理トレイは、前記電子部品が、デジタル信号を光デジタル信号に変換して出力する第1のモジュール、または光デジタル信号をデジタル信号に変換して出力する第2のモジュールのうち、少なくともいずれか1つを有しているものである。
【0017】
また、本願の発明の内容をより具体的に説明すれば以下の通りである。
【0018】
上部に光ファイバの余長処理を行うことができる光ファイバ収納部を設け、下部に基板上の基準電位(グランド)と電気的に接続する脚を付けたカバー状の空間を形成したトレイであり、その材質は導電性のものであり、光送受信モジュールの基板のグランド面と電気的に接続して構成される光送受信モジュールである。これにより光送受信モジュールの筐体内の限られたスペースの中でノイズシールド機能を有しながら、光ファイバの余長処理を行うことができるトレイを内蔵した光送受信モジュールとすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0020】
(1)空中を飛散するノイズの影響を低減、および不要な周波数を発生するノイズ源を封止するとともに、光ファイバの余長処理を行うことができるので、光送受信モジュールの筐体内の限られたスペースを有効に活用することができる。
【0021】
(2)上記(1)により、光送受信モジュールの小型化、および高信頼性化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0023】
図1は、本発明の一実施の形態による送受信モジュールの断面図、図2は、図1の送受信モジュールに設けられた余長処理トレイの一例を示す外観斜視図、図3は、図1の送受信モジュールに設けられた余長処理の他の例を示す外観斜視図である。
【0024】
本実施の形態において、光送受信モジュール100は、図1に示すように、基板101、余長処理トレイ102、ネジ108、上ケース106、および下ケース107などから構成されている。
【0025】
上ケース106と下ケース107で構成される筐体において、下ケース107に基板101が設置されている。基板101は、たとえば、ガラスエポキシ基材の多層プリント配線基板からなる。
【0026】
基板101の上面には、電子部品105が搭載されている。電子部品105は、たとえば、LD(Laser Diode)モジュール(第1のモジュール)などの送信用IC、PD(Photo Diode)モジュール(第2のモジュール)などの受信用IC、波形整形用ICなどの不要なノイズからシールドしたい部品からなる。あるいは、DC/DCコンバータやその周辺回路などの不要な周波数を発生する部品からなる。
【0027】
基板101は、上ケース106、および下ケース107とグランド(基準電位VSS)で接続されている。余長処理トレイ102は、たとえば、ステンレスなどの金属からなり、電子部品105から発生されるノイズが基板101上の他の回路に影響しないようにシールドしたり、あるいは基板101上の他の回路から電子部品105への不要なノイズによる影響がないようにシールドするとともに、光ファイバ105aの余長処理を行う。
【0028】
電子部品105がLDモジュール、PDモジュール、波形整形用ICなどの不要なノイズからシールドしたい部品からなる場合、光ファイバ105aは、上ケース106に設けられた光ファイバ挿入口から、筐体内に挿入され、余長処理トレイ102の上部に設けられた収納部201によって余長処理が行われた後、収納部201の下部に設けられたシールド部200によってシールドされた電子部品105に接続されている。
【0029】
ここで、余長処理トレイ102の構成について、図2を用いて説明する。
【0030】
余長処理トレイ102は、図示するように、シールド部200、ならびに該シールド部200の上部に形成された収納部(光ファイバ収納部)201から構成されている。シールド部200は、電子部品105から発生するノイズを低減するとともに、該電子部品105に影響を及ぼす空中に飛散するノイズから電子部品をシールドする。収納部201は、余長の光ファイバ105aを収納する。
【0031】
シールド部200は、下側の平面が開口された箱状からなる。シールド部200の任意の側壁には、光ファイバ105a(図1)を挿入する挿入口203が設けられている。収納部201は、該シールド部200における上側の周辺部近傍に、該上側の平面に直角をなすよう設けられた帯状部材によって形成されている。
【0032】
この帯状部材は、任意の1つのコーナ部近傍に切り込みが形成されており、この切り込みから、余長の光ファイバ105a(図1)を収納部201に収納する。収納部201では、光ファイバ105aが渦巻き状に収納されており、収納部201の外周壁を形成する帯状部材によって該光ファイバ105aが余長処理トレイ102から飛び出さないようになっている。
【0033】
また、シールド部200の下側の4つのコーナ部近傍には、余長処理トレイ102を固定用するネジ穴が形成された固定用脚(固定用部材)202が設けられている。基板101の所定の位置には、図1に示すように、4つのグランドパッド104が設けられている。このグランドパッド104は、プレーン状のグランド配線、いわゆるベタ配線などによって形成されている。
【0034】
余長処理トレイ102は、グランドパッド104と固定用脚202とが重合するように搭載されており、ネジ108によって基板101に固定されている。これにより、余長処理トレイ102が、グランドと電気的に接続されることになり、余長処理トレイ102のシールド部200に覆われた電子部品105がシールドされることになる。
【0035】
また、電子部品105に接続された光ファイバ105aは、挿入口203からシールド部200の外部に出され、収納部201の帯状部材に設けられた切り込みから、収納部201に収納される。
【0036】
このように、余長処理トレイ102にシールド部200を設けることによって、電子部品105から発生するノイズを大幅に低減するとともに、空中に飛散するノイズによる電子部品105への影響を低減することができる。
【0037】
それにより、本実施の形態によれば、送受信モジュール100の耐ノイズ性を大幅に向上させながら、余長の光ファイバ105aを効率よく収納することができ、該光送受信モジュール100の信頼性を高めながら、小型化を実現することができる。
【0038】
また、本実施の形態では、余長処理トレイ102のシールド部200が、基板101に実装されたすべての電子部品105をシールドする構成としたが、たとえば、ノイズを発生する電子部品、あるいはノイズの影響を受けたくない(ノイズ源でない)電子部品のみをシールドするなど、余長処理トレイ102によるノイズシールドを局所的に行うようにしてもよい。
【0039】
図3は、ノイズを発生する電子部品のみをシールドし、その他の電子部品はシールドしない構成の余長処理トレイ102の他の例を示した外観斜視図である。
【0040】
この場合、余長処理トレイ102において、光ファイバを収納する収納部201は、図1に示す余長処理トレイ102と同じ構成となっているが、該収納部201の下部に形成されるシールド部200aは、たとえば、基板101(図1)に搭載されるDC/DCコンバータなどのノイズ発生源となる電子部品のみを局所的に覆うことによってシールドし、波形整形用ICやLDモジュールやPDモジュールなどの電子部品、および基板101に配線された配線パターンなどのノイズを発生しないものはシールドしない構成となっている。
【0041】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0042】
たとえば、前記実施の形態に記載した光送受信モジュール100は、図1の上下関係(下ケース107が上面となるように)を逆にして設置するようにしてもよい。
【0043】
また、前記実施の形態では、余長処理トレイがステンレスよりなると記載したが、該余長処理トレイの材質は、導電性のものであればよい。また、シールド部は、ノイズシールド機能が保持できればよく、無加工のものでもよいし、エンボス加工などを施したものであってもよい。あるいは、シールド部は、導電性の板状のものではなく、繊維素材のシールドメッシュなどをトレイを固定する固定用脚202に巻き付けるなどの方法でノイズシールド機能を有するようにしてもよい。
【0044】
さらに、光ファイバの余長処理トレイは、ネジ108を使用して固定されるが、該余長処理トレイがグランドパッド104と電気的に接続していれば、その固定方法については特にこだわらない。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、光送受信モジュールにおける光ファイバの余長処理、およびノイズシールド処理技術に適している。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施の形態による送受信モジュールの断面図である。
【図2】図1の送受信モジュールに設けられた余長処理トレイの一例を示す外観斜視図である。
【図3】図1の送受信モジュールに設けられた余長処理トレイの他の例を示す外観斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
100…光送受信モジュール、101…基板、102…余長処理トレイ、104…グランドパッド、105…電子部品、105a…光ファイバ、106…上ケース、107…下ケース、108…ネジ、200…シールド部、200a…シールド部、201… 収納部、202…固定用脚(固定用部材)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板に実装された電子部品と、光ファイバの余長処理を行う余長処理トレイとにより構成された光送受信モジュールであって、
前記余長処理トレイは、導電性の筐体からなり、前記基板の基準電位と電気的に接続され、前記電子部品のノイズをシールドするノイズシールド機能を有することを特徴とする光送受信モジュール。
【請求項2】
請求項1記載の光送受信モジュールにおいて、
前記基板は、前記余長処理トレイが電気的に接続されるグランドパッドを備え、
前記グランドパッドが前記余長処理トレイに接続されていることを特徴とする光送受信モジュール。
【請求項3】
請求項2記載の光送受信モジュールにおいて、
前記余長処理トレイは、
前記基板上に、前記電子部品を覆うように固定される箱状のシールド部と、
前記シールド部の上部に設けられ、前記光ファイバの余長処理を行う光ファイバ収納部とよりなり、
前記シールド部は、
前記グランドパッドと電気的に接続され、前記基板の基準電位と接続される固定部材を備えたことを特徴とする光送受信モジュール。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の光送受信モジュールにおいて、
前記電子部品は、デジタル信号を光デジタル信号に変換して出力する第1のモジュール、または光デジタル信号をデジタル信号に変換して出力する第2のモジュールのうち、少なくともいずれか1つを有していることを特徴とする光送受信モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−65017(P2006−65017A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−247885(P2004−247885)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(301005371)日本オプネクスト株式会社 (311)
【Fターム(参考)】