説明

光造形装置

【課題】造形液槽の液面調整を可能にしつつ、造形液槽の洗浄作業が容易であり、また、造形液槽に無駄なスペースを少なくできる光造形装置を提供する。
【解決手段】造形液槽10に入った液状の光硬化性樹脂2に光を照射して光硬化層を形成し、該光の照射を繰り返して光硬化層を積層形成して立体造形物を製造する光造形装置100において、前記造形液槽10の中に1又は複数のバルーン30を入れ、前記バルーンの30上を覆って浮上を規制する固定自在な規制板31を設け、前記規制板31の下で前記バルーン30を膨張或いは縮小させて前記造形液槽10の液面を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状の光硬化性樹脂に光を照射して光硬化させて、立体造形物を光学的に製造する光造形技術に係り、特に、光硬化性樹脂の液面を所定位置に調整する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、三次元CADに入力されたデータに基づいて光硬化性樹脂を硬化させて立体造形物を製造する光造形装置が知られている。このような光造形技術は、設計の途中で外観デザインを検証するためのモデル、部品の機能性をチェックするためのモデル、鋳型を製作するための樹脂型、金型を製作するためのベースモデルなどのような複雑な立体造形物を容易に製造できることから注目を集めている。
【0003】
光造形装置による立体造形物の製造には、一般に、造形液槽を用いた方法が採用されている。その手順は、造形液槽に液状の光硬化性樹脂を入れた後、第1に、造形液槽の液面に所望のパターンが得られるようにコンピュータで制御されたレーザー光を照射して光硬化による光硬化層を形成する。次いで第2に、その光硬化層を造形液槽内で下方に移動させて光硬化性樹脂を該光硬化層上に流動させ、該光硬化層の上に未硬化の光硬化性樹脂の層を形成する。第3に、その未硬化の光硬化性樹脂にレーザー光を照射して光硬化層を積層形成する。そして、これら第1〜第3の工程を所定の形状および寸法の立体造形物が得られるまで繰り返して該立体造形物を製造する。
【0004】
造形液槽を用いた光造形装置では、高品位な立体造形物を得るために、造形中には、造形液槽の液面の高さを、常に一定に保つ必要がある。そこで従来の光造形装置では、光硬化性樹脂を入れた造形液槽に対して所定容積のブロックを上下動可能に設け、光硬化性樹脂へのブロックの沈み込み量を制御することにより、液面の高さを所定の位置に維持している。また、この他にも、造形液槽自体を上下動させることで液面の高さを所定の位置に維持する光造形装置が知られている。
【0005】
しかしながら、造形液槽内でブロックを上下させる場合、該造形液槽内にブロックを納めるスペースを設ける必要があり、造形液槽の形状が複雑になり、また、ブロックを納めるスペースの分だけ造形液槽の容積が増える。造形液槽の容積が増えると、その分、光硬化性樹脂の量が多くなるためコストが増大する、という問題がある。
また、造形液槽自体を上下させる場合、造形液槽と光硬化性樹脂を合わせた重量は数百kg(例えば500kg)にも達するため、この重量を精度良く制御することは非常に困難で効率的ではない。
【0006】
これらの従来の技術のほかに、造形液槽内に膨張又は縮小可能に密閉された容器を固定的に配置し、この容器に液体又は気体を供給して容器の体積を増減させることで、液面の高さを所定の位置に維持した光造形装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この光造形装置によれば、ブロック或いは造形液槽を上下動するための可動機構が不要であるため、装置コストが抑えられ、また、装置が簡単になる、という利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−52436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、造形液槽の中に容器を固定的に配置した場合、次のような問題がある。
すなわち、光硬化性樹脂の交換などのために造形液槽を洗浄する際、造形液槽に容器が固定されていると、固定箇所の洗浄が面倒であり、また、この固定箇所に古い光硬化性樹脂が残留し易くなる、という問題がある。
さらに、造形液槽の中で容器の真上のスペースは、この容器が直下に存在することで、製造可能な立体造形物の高さを制限してしまうため、立体造形物の高さによっては、この容器の真上のスペースがデットスペースになる、という問題がある。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、造形液槽の液面調整を可能にしつつ、造形液槽の洗浄作業が容易であり、また、造形液槽に無駄なスペースを少なくできる光造形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、造形液槽に入った液状の光硬化性樹脂に光を照射して光硬化層を形成し、該光の照射を繰り返して光硬化層を積層形成して立体造形物を製造する光造形装置において、前記造形液槽の中に1又は複数のバルーンを入れ、前記バルーンの上を覆って浮上を規制する固定自在な規制部材を設け、或いは、前記バルーンに浮上を規制する重りを設け、前記規制部材の下で、或いは、前記造形液槽の床面の上で前記バルーンを膨張或いは縮小させて前記造形液槽の液面を調整することを特徴とする。
【0011】
また本発明は、上記光造形装置において、前記規制部材の固定位置を、前記造形液槽の複数の深さ位置に調整する調整手段を備えることを特徴とする。
【0012】
また本発明は、上記光造形装置において、前記規制部材に、下側に入り込んだ気泡を上側に逃がす貫通部を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、造形液槽の中に入れたバルーンを、該バルーンを覆う固定自在な規制部材、或いは、重りにより浮上を規制する構成としたため、造形液槽の洗浄時にバルーンを容易に取り出すことができ洗浄作業が容易となる。
また、造形液槽内では、バルーンが規制部材の下、或いは、造形液槽の床面の上に配置されるため、バルーンの上のスペースを造形スペースに使用することができ、造形液槽内の無駄なスペースを少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光造形装置の外観構成を示す図である。
【図2】造形液槽及び液面調整のための構成を示す図である。
【図3】規制板の固定位置調整を示す図である。
【図4】バルーンへの空気供給/排出時間と液面の上下動量との関係を示す図であり、(A)は空気供給時間と液面上昇量との関係を示し、(B)は空気排気時間と液面下降量との関係を示す。
【図5】液面調整に要する時間の実験結果を示す図であり、(A)はバルーンを用いた液面調整の実験結果を示し、(B)はブロックを用いた従来の液面調整の実験結果を示す。
【図6】本発明の第2実施形態に係る造形液槽及び液面調整のための構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
[第1実施形態]
図1は、本実施形態に係る光造形装置100の外観構成を示す図である。
この図に示すように、光造形装置100は、大別して、液状の光硬化性樹脂2(図2)が満たされる造形液槽10と、当該光硬化性樹脂2に対して上方から光を照射する光照射装置20とを備えている。上記造形液槽10の内部には、造形テーブル11が昇降機構25により昇降可能に配置されている。
造形テーブル11は、立体造形物を製造する際に、図2に示すように、造形液槽10に入った液状の光硬化性樹脂2の液面12から所定距離dだけ引き下げられた位置に配置され、当該造形テーブル11の面上に、立体造形物の1層分に相当する液状の光硬化性樹脂層、すなわち、未硬化の光硬化性樹脂層を形成する。
【0016】
光造形装置100が立体造形物を製造する際には、図示せぬ制御コンピュータにより制御された光照射装置20が造形液槽10の液面12に対して光を照射することで光硬化性樹脂層を光硬化させて、立体造形物の1層分に相当する光硬化層を形成する。その後、造形テーブル11を更に所定距離dだけ引き下げて、先に形成した光硬化層の上面に1層分の未硬化の光硬化性樹脂層を形成し、上記と同様に、光照射装置20が液面に光を照射することで、先に形成した光硬化層の上に新たに1層分の光硬化層を積層形成する。各光硬化層を形成する際には、製造対象の立体造形物の造形データに基づいて光照射装置20が所定パターンの光を液面に照射することで各光硬化層が所定パターンに形成され、かかる光硬化層を積層形成することで目的の立体造形物が製造される。上記造形データは、立体造形物を複数にスライスしたときの各スライス体のCADデータに基づいて生成される。
立体造形物の造形動作中においては、造形液槽10の液面12が略基準液面に位置するように液面調整が行われる。この液面調整について次に説明する。
【0017】
図2は、造形液槽10の液面調整のための構成を模式的に示す図である。
造形液槽10は略矩形の箱型を成し、液状の光硬化性樹脂2が入れられている。また、造形液槽10には、空気の供給或いは排出により膨張或いは縮小するバルーン30が入れられるとともに、このバルーン30の浮上を規制する規制部材としての規制板31が固定されており、液面下でバルーン30が膨張或いは縮小することで、造形液槽10の液面12の調整が行われる。
【0018】
バルーン30は、例えばLLEDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)等の樹脂製のフィルムを素材として形成された密封袋体であり、例えば130μm〜250μm程度の破裂が生じ難く、なおかつ、膨張及び縮小を妨げない程度の厚みを有している。
また、バルーン30は、造形液槽10の上面視略中央に配置されており、バルーン30の膨張或いは縮小により生じる液面12の波打ちが静定する時間の短縮化が図られている。すなわち、バルーン30を膨張或いは縮小して液面12の調整動作を行った場合でも、液面12が速やかに静定するので、立体造形物の製造時間の短縮化が図れる。
バルーン30が造形液槽10の床面10Aに沿って広がるシート状に形成されていると、さらに液面静定までの時間を短縮することができる。また、バルーン30をシート状とすることで高さが抑えられるため、造形液槽10のコンパクト化が図られる。
【0019】
規制板31は、造形液槽10の両側の内側面間に横架される板材であり、バルーン30の浮力に抗する剛性を有している。このような規制板31としては、例えば5mm程度の厚みのアルミニウム板を用いることができる。
また規制板31には、表裏に貫通する貫通部として10mm程度の径の貫通孔32が約400mmピッチで格子状に形成されている。これらの貫通孔32が設けられることで、造形液槽10に液状の光硬化性樹脂2を入れたときに規制板31の下側に入った空気が溜まることなく速やかに上側に逃がすことができる。このように規制板31の下に空気が溜まることがないから、立体造形物を製造している最中に、規制板31に溜まっていた空気が浮上して製造品質が損なわれることがない。
【0020】
造形液槽10への規制板31の固定構造について説明すると、造形液槽10の内側面には、規制板31の表裏を挟み込むようにして位置決め固定する上下一対の規制板挟持部材33A、33Bが設けられている。規制板挟持部材33A、33Bが規制板31を挟持するため、規制板31の上下動が規制されることとなり、バルーン30を膨張或いは縮小したときにガタが生じることがなく、該ガタによる液面12の乱れが防止される。
【0021】
ここで、造形液槽10の中に規制板31を固定すると、この規制板31の固定位置によって造形液槽10の実効的な深さが規定され、造形可能な立体造形物の高さが制限されてしまう。そこで、造形液槽10の内側面には、上記一対の規制板挟持部材33A、33Bが深さ方向に沿って複数位置(図示例では3箇所)に設けられており、規制板31の固定位置を多段階に調整可能にしている。これにより、図3に示すように、目的の立体造形物の高さに応じて造形液槽10の実効的な深さLを可変できる。また、各深さLに合わせて造形液槽10を個別に製造する必要もない。
【0022】
このとき、図3(C)、図3(B)に示すように、規制板31を浅い位置に固定して実効的な深さLを浅くするほど、規制板31の下側に、立体造形物の製造スペースに使用できない無駄なスペースが増える。そこで、規制板31の下の容積に応じてバルーン30の数を増やし、これらを重ねて配置することで、規制板31の下の容積に占めるバルーン30の容積が増えるため、この無駄なスペースに充填される光硬化性樹脂2の容量を抑えることができる。これに加え、本実施形態の造形液槽10ではブロックや容器を配置する分の無駄なスペースも無いため、従来よりも光硬化性樹脂2を使い切ることができる。さらに、光硬化性樹脂2を交換する際には、より使い切ってから交換できるため交換作業が容易になる。なお、複数のバルーン30を規制板31の下に横並びに配置して、規制板31の下の無駄なスペースをバルーン30で埋めても良い。
【0023】
光造形装置100は、バルーン30の膨張及び縮小を制御するための構成として、図1に示すように、コンピュータ50を備え、また図2に示すように、液面センサ40と、ポンプ41と、供給用電磁弁42と、排出用電磁弁43と、圧力計44とを備えている。
【0024】
液面センサ40は、液面12の位置を検出してコンピュータ50に出力する。この液面センサ40には、赤色半導体レーザーを用いた光学式のセンサが用いられる。また、本実施形態では、液面12の高さを基準液面に対して許容値(例えば±8μm)の精度で調整すべく、液面センサ40には2μmの分解能のものが用いられている。
ポンプ41は、コンピュータ50の制御によって駆動され、バルーン30に接続されたホース45に空気を送り込む。このポンプ41には、単位時間あたり所定風量(例えば18リットル/min)の電磁式のエアーポンプが用いられる。
【0025】
供給用電磁弁42は、ホース45の途中に設けられ、コンピュータ50の制御の下、ポンプ41の駆動時に開いてポンプ41からバルーン30へ空気の流通を可能にし、ポンプ41の停止時に伴って閉じてバルーン30からの空気の流出を遮断する。
排出用電磁弁43は、ホース45から分岐して端部が開放した分岐経路45Aの途中に設けられ、コンピュータ50の制御によって開いてバルーン30の空気を排出する。
圧力計44は、ホース45の途中に設けられ、バルーン30の内部圧力を検出し、コンピュータ50に出力する。
【0026】
なお複数のバルーン30を造形液槽10に入れる場合には、ホース45を分岐させて各バルーン30に接続するとともに、ポンプ41が供給する空気をいずれかのバルーン30に選択的に送り込むための電磁弁を各バルーン30の分岐路に設ける構成としてもよい。
またバルーン30ごとに、ポンプ41、供給用電磁弁42、排出用電磁弁43及び圧力計44を設けて、それぞれのバルーン30の膨張及び縮小を互いに独立して制御する構成とすることで、液面調整の精度を高めることもできる。
【0027】
コンピュータ50は、液面センサ40及び圧力計44の検出信号をデジタル信号に変換するアナログデジタル変換部51と、これら液面センサ40及び圧力計44の検出結果に基づいて、ポンプ41、供給用電磁弁42及び排出用電磁弁43のそれぞれを制御するI/O制御部52とを備えている。
さらに詳述すると、I/O制御部52は、液面センサ40の検出結果に基づいて、液面12が基準液面から許容値(例えば±8μm)以上移動したことを検知すると、液面12の移動を許容値以内にすべく、ポンプ41を駆動して供給用電磁弁42を開いてバルーン30を膨張させ、或いは、排出用電磁弁43を開いてバルーン30を縮小させる。
【0028】
図4は、バルーン30への空気供給/排出時間と液面12の上下動量との関係を示す図であり、図4(A)は空気供給時間と液面上昇量との関係を示し、図4(B)は空気排気時間と液面下降量との関係を示す。なお、同図に示す値は、室温23℃、湿度45%及びバルーン圧力4Paの条件下で得られた実験値である。
同図に示すように、バルーン30への空気供給/排出時間と液面12の上下動量との間には相関があり、また空気供給/排出時間をms単位で制御することで、液面12をμm単位で制御できることが分かる。
【0029】
この図4に示す空気供給/排出時間と液面12の上下動量との関係は、データ化されてコンピュータ50に予め入力されている。コンピュータ50は、液面12を調整する場合、この図4に示す関係に基づいて、液面12の移動が基準液面に対して許容値(例えば±8μm)以内になる空気供給/排出時間を決定し、この空気供給/排出時間だけ供給用電磁弁42/排出用電磁弁43を開いてバルーン30への空気供給/排出を行う。
次いで、コンピュータ50は、液面センサ40の検出結果に基づいて、液面12が基準液面から許容値以内の位置に移動したか否かを判断する。液面12が基準液面から許容値以内であればコンピュータ50は液面調整動作を終了する。また液面12が基準液面から許容値以内でなければ、コンピュータ50は、再度、図4に示す関係に基づいて空気供給/排出時間を決定し、同様にしてバルーン30への空気供給/排出を行い、係る動作を、液面12が基準液面から許容値以内なるまで繰り返す。
【0030】
なお、コンピュータ50は、バルーン30に空気を供給する間、圧力計44によりバルーン30の圧力を監視し、空気供給時間に達する前であっても、バルーン30の圧力が所定の最大圧力に達したときに空気の供給を停止する。そして、複数のバルーン30が造形液槽10に入っている場合には、所定の最大圧力に達していない他のバルーン30に空気を供給することで、液面調整を行う。
【0031】
図5は、液面調整に要する時間の実験結果を示す図であり、図5(A)はバルーン30を用いた本実施形態の液面調整の実験結果を示し、図5(B)はブロックを用いた従来の液面調整の実験結果を示す。この実験結果は、基準液面から±8μm以上離れた液面12を基準液面から±8μm以内に移動させる液面調整処理を1200回前後行い、各液面調整処理に要した液面調整時間をプロットしたものである。
この図に示されるように、液面調整にバルーン30を用いた場合、従来のブロックを用いた場合に比べ、液面調整時間の平均が短縮される。さらに、バルーン30を用いた場合には、ほぼ5秒以内に液面調整が完了するのに対し、従来のブロックを用いた場合には、液面調整に5秒〜10秒以上を要することが多くなる。このように液面調整時間が短縮化されることで立体物造形に要する時間の短縮化が図られる。
【0032】
バルーン30を用いた場合に液面調整時間が短縮する理由について考察すると、ブロックを用いる場合には、通常、造形に邪魔にならないように造形液槽10の隅の方でブロックを上下させるため、上下動時に液面12に生じる波が不均一になり静定までの時間が長くなるのに対し、バルーン30を用いた場合には、造形液槽10の中心部でバルーン30の体積が増減するため、液面12に生じる波が比較的均一になり静定までの時間が短くなるためと推測される。
【0033】
以上説明した本実施形態によれば、次のような効果を奏する。
すなわち、本実施形態では、造形液槽10の中にバルーン30を入れるとともに、バルーン30の上を覆って浮上を規制する固定自在な規制板31を造形液槽10に設け、この規制板31の下でバルーン30を膨張或いは縮小させて造形液槽10の液面12を調整する構成とした。
この構成によれば、造形液槽10の中に入れたバルーン30を固定自在な規制板31で押さえ付けて浮上を規制する構成としたため、造形液槽10の洗浄時には、規制板31を取り外すことでバルーン30を容易に取り出すことができるため、造形液槽10の洗浄作業が容易となる。
また、造形液槽10内では、バルーン30が規制板31の下に配置されるため、バルーン30の上のスペースを造形スペースに使用することができ、造形液槽10内の無駄なスペースを少なくできる。さらに、この無駄なスペースに充填される光硬化性樹脂は、バルーン30の容積分だけ量が減るため、無駄になる光硬化性樹脂の量を抑えることができる。
【0034】
また本実施形態では、造形液槽10の深さ方向に沿った複数箇所のそれぞれに、規制板挟持部材33A、33Bを設け、規制板31の固定位置を造形液槽10の複数の深さ位置に調整可能とした。
これにより、目的の立体造形物の高さに応じて造形液槽10の実効的な深さLを可変でき、また、各深さLに合わせて造形液槽10を個別に製造する必要もない。さらに、規制板31の下の無駄なスペースを埋めるように1又は複数のバルーン30を配置することで、無駄になる光硬化性樹脂の量を抑えることができる。
【0035】
また本実施形態では、規制板31に、下側に入り込んだ気泡を上側に逃がす多数の貫通孔32を面内に形成したため、規制板31の下に空気が溜まることがないから、立体造形物を製造している最中に、規制板31に溜まっていた空気が浮上して製造品質が損なわれることがない。
【0036】
なお、本実施形態においては、次のような変形が可能である。
バルーン30を覆って浮上を規制する規制部材として板状の規制板31を用いたが、これに限らない。すなわち、バルーン30の浮力に耐える剛性を有するメッシュ状部材を規制部材に用いてもよく、また、複数の棒状部材を、互いに平行に或いは格子状に組んで規制部材を構成してもよい。
【0037】
規制板31の固定位置を複数の深さ位置に調整可能とする調整手段を、造形液槽10の深さ方向に沿った複数箇所のそれぞれに規制板挟持部材33A、33Bを設けることで実現したが、これに限らない。すなわち、造形液槽10の深さ方向に延びるように取り付けられたボールねじに規制板31を結合することで、規制板31の固定位置を無段階に調整可能としてもよい。
【0038】
[第2実施形態]
図6は、第2実施形態に係る光造形装置200の構成を示す図である。なお、同図において、第1実施形態の光造形装置100と同様な部材については同一の符号を付して説明を省略する。
この図に示すように、本実施形態では、造形液槽10の中でバルーン30の浮上を規制板31で規制するのではなく、重り35を用いて規制する点で構成を異にする。重り35は、バルーン30の製造時に予め袋内に封じたものであり、バルーン30の浮力に抗する重さ分だけ設けられている。なお、重り35をバルーン30に紐などでしっかりと括り付けてもよい。
【0039】
本実施形態によれば、第1実施形態の効果と同様に、造形液槽10の洗浄時には、バルーン30を容易に取り出すことができるため、造形液槽10の洗浄作業が容易となる。
また、造形液槽10内では、バルーン30が床面10A上に配置されるため、バルーン30の上のスペースを造形スペースに使用することができ、造形液槽10内の無駄なスペースを少なくできる。
特に本実施形態によれば、バルーン30が床面10A上に位置するため、液面12からバルーン30までの深さを大きくとることができる。
【0040】
なお、上述した各実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の趣旨の範囲内において任意に変形及び応用が可能である。
例えば、各実施形態では、バルーン30に空気を供給することで体積を変化させたが、これに限らず、液体を供給して体積を可変しても良い。
またバルーン30は、気体又は/及び液体の供給/排出に伴い、液状の光硬化性樹脂2の中で体積が可変する密封袋体であれば任意の素材を用いることができる。また、バルーン30の形状には、シート状に限らず、直方体状や球状など任意の形状を採用できる。
【符号の説明】
【0041】
2 光硬化性樹脂
10 造形液槽
10A 床面
12 液面
30 バルーン
31 規制板(規制部材)
32 貫通孔(貫通部)
33A、33B 規制板挟持部材(調整手段)
40 液面センサ
41 ポンプ
42 供給用電磁弁
43 排出用電磁弁
44 圧力計
50 コンピュータ
100、200 光造形装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形液槽に入った液状の光硬化性樹脂に光を照射して光硬化層を形成し、該光の照射を繰り返して光硬化層を積層形成して立体造形物を製造する光造形装置において、
前記造形液槽の中に1又は複数のバルーンを入れ、前記バルーンの上を覆って浮上を規制する固定自在な規制部材を設け、或いは、前記バルーンに浮上を規制する重りを設け、
前記規制部材の下で、或いは、前記造形液槽の床面の上で前記バルーンを膨張或いは縮小させて前記造形液槽の液面を調整することを特徴とする光造形装置。
【請求項2】
前記規制部材の固定位置を、前記造形液槽の複数の深さ位置に調整する調整手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の光造形装置。
【請求項3】
前記規制部材に、下側に入り込んだ気泡を上側に逃がす貫通部を形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の光造形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−789(P2011−789A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−145333(P2009−145333)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(391064429)シーメット株式会社 (38)
【Fターム(参考)】