説明

光重合開始剤組成物、光重合性インク、インクカートリッジ

【課題】紫外線LED(UVLED)を硬化光源として用いることができ、皮膚感さ性や生殖毒性において深刻な安全面での問題がない、常温で液体の光重合開始剤組成物、該組成物を含む光重合性インク及び光重合性インクジェット用インク、該インクジェット用インクを収容したインクカートリッジの提供。
【解決手段】(1)チオキサントン化合物、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、及びp−ジメチルアミノ安息香酸−2−エチルヘキシルを含み、p−ジメチルアミノ安息香酸−2−エチルヘキシルの配合割合が23重量%以上の光重合開始剤組成物。
(2)上記光重合開始剤組成物を含む光重合性インク。
(3)上記光重合性インクを収容したインクカートリッジ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光重合開始剤組成物、該組成物を含む光重合性インク及び光重合性インクジェット用インク、該インクジェット用インクを収容したインクカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
既存の光ラジカル重合開始剤の多くは固体又は粉末状であり、インク材料として利用するためにはモノマーに均一溶解させなければならず長時間の攪拌が必要である。また、モノマーの種類や添加量によっては加温が必要な場合があり煩雑である。一方、短時間のモノマーとの攪拌で均一に溶解でき容易にインク化できる常温液体の光ラジカル重合開始剤も知られている。しかし、近年、省エネルギー化に有効な硬化光源として注目されている紫外線LED(UVLED)において、実用上使用可能な波長は365nm以上の長波長であり、このような長波長に対応できる液体の光ラジカル重合開始剤は少ない。一部知られているものも、毒性に問題があったり非常に高価であるなど実用上の問題が多い。
【0003】
例えば特許文献1にはフェニルグリオキシレートを使用することが記載されているが、代表的なフェニルグリオキシレートであって、安価で容易に入手可能なフェニルグリオキシックアシッドメチルエステル〔旧チバジャパン社(現BASF社)製:DAROCUR MBF〕は、LLNA試験(皮膚感さ性試験:詳しくは後述する)においてSI値が8.6(3未満が陰性)という非常に高い値であることが確認されており、毒性が高いため実用できない。
また、特許文献2には、多成分を組み合わせた常温液体光重合開始剤組成物が開示されている。しかし、UVLEDに対応できるものとして示されたホスフィンオキサイド系化合物は、その代表的かつ安価で容易に入手可能な化合物である2,4,6−トリメチルベンゾイルホスフィンオキサイド〔旧チバジャパン社(現BASF社)製:DAROCUR TPO〕が、MSDS(化学物質安全性データシート)において生殖毒性を示すR62のR警句が付記されていることから分かるように、毒性が高いため実用できない。また、硬化光源として高圧水銀ランプやメタルハライドランプを使用すれば、毒性の高いホスフィンオキサイド以外の化合物を用いることができるが、省エネルギー化という観点で好ましくない。
【0004】
また、特許文献3、4には、チタノセン系化合物を使用することが記載されているが、チタノセン系化合物は一般に合成法が複雑なため非常に高価であるし、容易に入手可能な市販品であるビス(η−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル〕チタニウム〔旧チバジャパン社(現BASF社)製:IRGACURE784〕はMSDSにおいて生殖毒性を示すR62のR警句が付記されていることから分かるように、毒性が高いため実用できない。
また、特許文献5には、ベンゾフェノン系化合物を使用することが記載されているが、ベンゾフェノン系化合物は、365nm以上の長波長域における反応性が不十分であり、UVLEDを適用できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、紫外線LED(UVLED)を硬化光源として用いることができ、皮膚感さ性や生殖毒性において深刻な安全面での問題がない、常温で液体の光重合開始剤組成物、該組成物を含む光重合性インク及び光重合性インクジェット用インク、該インクジェット用インクを収容したインクカートリッジの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、次の1)〜5)の発明によって解決される。
1) チオキサントン化合物、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、及び、p−ジメチルアミノ安息香酸−2−エチルヘキシルを含み、p−ジメチルアミノ安息香酸−2−エチルヘキシルの配合割合が23重量%以上である光重合開始剤組成物。
2) 前記チオキサントン化合物が2,4−ジエチルチオキサントン又はイソプロピルチオキサントンである1)に記載の光重合開始剤組成物。
3) 1)又は2)に記載の光重合開始剤組成物を含む光重合性インク。
4) インクジェット用である3)に記載の光重合性インク。
5) 4)に記載の光重合性インクジェット用インクを収容したインクカートリッジ。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、UVLEDを硬化光源として用いることができ、皮膚感さ性や生殖毒性において深刻な安全面での問題がない、常温で液体の光重合開始剤組成物、該組成物を含む光重合性インク及び光重合性インクジェット用インク、該インクジェット用インクを収容したインクカートリッジを提供できる。
また、常温で液体の光重合開始剤組成物であるから、これを用いてインクを製造する際の取り扱いが容易であるし、各成分材料は安価な市販品を容易に調達できるという利点もある。
更に、インクの製造に際し、省エネルギーなUVLEDによる乾燥工程を採用できるため、一般的な無溶剤型の光重合性インクの特徴である揮発性有機化合物(VOC)を放出しないという利点をそのまま有しつつ、消費エネルギーを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】インクカートリッジのインク袋の一例を示す概略図。
【図2】インク袋を収容したインクカートリッジを示す概略図。
【図3】インクジェット記録装置(印刷装置)の一例の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、上記本発明について詳しく説明する。
本発明の光重合開始剤組成物は、チオキサントン化合物、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン及びp−ジメチルアミノ安息香酸−2−エチルヘキシルを含むが、これらの成分のうち、p−ジメチルアミノ安息香酸−2−エチルヘキシルのみが常温で液体の材料である。そこで、常温で液体の光重合開始剤組成物とするため、該成分の配合割合を23重量%以上とする。しかし、該成分単独では光重合開始剤の機能がないため、使用する温度環境や必要とする硬化性、他の配合成分の種類や比率等を総合的に考慮して配合割合を決める。通常は23〜40重量%程度の範囲から選択するが、好ましくは23〜30重量%程度である。
【0010】
チオキサントン化合物としては、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントンが挙げられる。2,4−ジエチルチオキサントンの市販品としては、日本化薬社製:DETX−S、LAMBSON社製:Speedcure DETX、大同化成工業社製:UV−CURE DETXなどがある。また、イソプロピルチオキサントンの市販品としては、lamberti社製:ESACURE ITX、LAMBSON社製:Speedcure ITXなどがある。
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンの市販品としては、LAMBSON社製:Speedcure 84、大同化成工業社製:UV−CURE#174、旧チバジャパン社(現BASF社)製:Irgacure184などがある。
p−ジメチルアミノ安息香酸−2−エチルヘキシルの市販品としては、lamberti社製:ESACURE EHA、LAMBSON社製:Speedcure EHA、大同化成工業社製:UV−CURE EHA、旧チバジャパン社(現BASF社)製:DAROCUR EHAなどがある。
【0011】
上記市販品は、いずれも皮膚感さ性や生殖毒性に問題のないものであるが、例えば「旧チバジャパン社(現BASF社)製:Irgacure184」及び「DAROCUR EHA」は、MSDSにおいて皮膚感さ性陰性又は皮膚感さ性なしと評価されており、併記されたR警句にも生殖毒性を示すものはない。
また、「日本化薬社製:DETX−S」は皮膚感さ性試験であるLLNA試験におけるSI値が1.4と陰性であり、CAS番号からR警句を調査できるARIEL WEBINSIGHT(https://webinsight.arielresearch.com/Home.aspx)においても皮膚感さ性や生殖毒性を示すR警句の付記はない。同じく「lamberti社製:ESACURE ITX」についても同調査による皮膚感さ性や生殖毒性を示すR警句の付記はない。
なお、上記「LLNA試験」とは、OECDテストガイドライン429として定められる皮膚感さ性試験であり、文献(例えば「機能材料」2005年9月号、Vol.25、No.9、P55)に示されるように、皮膚感さ性の程度を示すStimulation Index(SI値)が3未満の場合に感さ性について問題なしと判断するものである。また、MSDS(化学物質安全性データシート)において、皮膚感さ性陰性又は皮膚感さ性なしと評価されたものは、当然上記SI値を満たすものである。
【0012】
光重合性インク材料として、本発明の常温で液体の光重合開始剤を使用すれば、インク製造時の作業性が良くなり、製造工程を簡略化できるため、インク製造にかかる時間やコストを低減できる。しかし、皮膚感さ性や生殖毒性に問題がない光重合開始剤であれば、常温で液体でないものでも、作業性を損なわない範囲で併用することもできる。このような光重合開始剤としては、例えば以下のようなものが挙げられる。
2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−〔4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル〕フェニル}−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モリホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン−1、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)ブタン−1−オンなど。
【0013】
光重合性インク材料に使用する光重合性モノマーとしては、皮膚感さ性や生殖毒性において深刻な問題がないものが望ましく、例えば以下の材料が挙げられる。
ポリエチレングリコールジメタクリレート〔CH=C(CH)−CO(OC)n−COC(CH)=CH(n=9〜14)〕、γ−ブチロラクトンメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート〔CH=CH−CO−(OC)n−OCOCH=CH(n≒12)〕、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエトキシ化テトラメチロールメタンテトラアクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ステアリルアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリルアミドなど。
また、使用する光重合性モノマーを適宜選定することにより、光重合性インクジェットインクを得ることもできる。
【0014】
また、単体では皮膚感さ性に多少問題があるが、光重合性インクとして問題が生じない範囲で、以下のような(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミドを併用することもできる。
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、γ−ブチロラクトンアクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ホルマール化トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリル酸安息香酸エステル、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート〔CH=CH−CO−(OC)n−OCOCH=CH(n≒4)〕、同(n≒9)、同(n≒14)、同(n≒23)〕、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクレート〔CH=C(CH)−CO−(OC)n−OCOC(CH)=CH(n≒7)〕、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、メタアクリロイルモルホリン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、エチレンオキサイド変性テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化グリセリルトリ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ポリエステルトリ(メタ)アクリレート、ポリエステルテトラ(メタ)アクリレート、ポリエステルペンタ(メタ)アクリレート、ポリエステルポリ(メタ)アクリレート、ビニルカプロラクタム、ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、ポリウレタンジ(メタ)アクリレート、ポリウレタントリ(メタ)アクリレート、ポリウレタンテトラ(メタ)アクリレート、ポリウレタンペンタ(メタ)アクリレート、ポリウレタンヘキサ(メタ)アクリレートなど。
【0015】
また、インクの着色剤としては公知の無機顔料や有機顔料を使用することができる。
ブラック顔料としては、ファーネス法又はチャネル法で製造されたカーボンブラック等が使用できる。
イエロー顔料としては、Pig.Yellow系の顔料、例えばピグメントイエロー1、ピグメントイエロー2、ピグメントイエロー3、ピグメントイエロー12、ピグメントイエロー13、ピグメントイエロー14、ピグメントイエロー16、ピグメントイエロー17、ピグメントイエロー73、ピグメントイエロー74、ピグメントイエロー75、ピグメントイエロー83、ピグメントイエロー93、ピグメントイエロー95、ピグメントイエロー97、ピグメントイエロー98、ピグメントイエロー114、ピグメントイエロー120、ピグメントイエロー128、ピグメントイエロー129、ピグメントイエロー138、ピグメントイエロー150、ピグメントイエロー151、ピグメントイエロー154、ピグメントイエロー155、ピグメントイエロー180等が使用できる。
【0016】
マゼンタ顔料としては、Pig.Red系の顔料、例えばピグメントレッド5、ピグメントレッド7、ピグメントレッド12、ピグメントレッド48(Ca)、ピグメントレッド48(Mn)、ピグメントレッド57(Ca)、ピグメントレッド57:1、ピグメントレッド112、ピグメントレッド122、ピグメントレッド123、ピグメントレッド168、ピグメントレッド184、ピグメントレッド202、ピグメントバイオレット19等が使用できる。
シアン顔料としては、Pig.Blue系の顔料、例えばピグメントブルー1、ピグメントブルー2、ピグメントブルー3、ピグメントブルー15、ピグメントブルー15:3、ピグメントブルー15:4、ピグメントブルー16、ピグメントブルー22、ピグメントブルー60、バットブルー4、バットブルー60等が使用できる。
白色顔料としては、硫酸バリウム等のアルカリ土類金属の硫酸塩、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩、微粉ケイ酸、合成ケイ酸塩等のシリカ類、ケイ酸カルシウム、アルミナ、アルミナ水和物、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、クレイ等が使用できる。
その他にも、必要に応じて物理特性などを考慮して、種々の無機顔料や有機顔料が使用できる。
【0017】
また、添加剤として、4−メトキシ−1−ナフトール、メチルハイドロキノン、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、メトキノン、ジ−t−ブチルハイドロキノン、フェノチアジン、2,2′−ジヒドロキシ−3,3′−ジ(α−メチルシクロヘキシル)−5,5′−ジメチルジフェニルメタン、p−ベンゾキノン、ジ−t−ブチルジフェニルアミン、9,10−ジ−n−ブトキシシアントラセン、4,4′−[1,10−ジオキソ−1,10−デカンジイルビス(オキシ)]ビス[2,2,6,6−テトラメチル]−1−ピペリジニルオキシなどの従来から一般的に使用されるラジカル重合禁止剤、高級脂肪酸系、シリコーン系、フッ素系などの界面活性剤、極性基含有高分子顔料分散剤などを用いることができる。
【0018】
本発明の光重合性インクは容器に収容してインクカートリッジとして用いることができる。これにより、インク交換などの作業において、インクに直接触れる必要がなく、手指や着衣の汚れなどの心配がなく、またインクへのごみ等の異物混入を防止できる。
容器としては特に制限はなく、目的に応じてその形状、構造、大きさ、材質等を適宜選択することができ、例えば、アルミニウムラミネートフィルム、樹脂フィルム等で形成されたインク袋などを有するものなどが好適である。
上記インクカートリッジについて、図1及び図2を参照して説明する。図1はインクカートリッジのインク袋241の一例を示す概略図であり、図2は図1のインク袋241をカートリッジケース244内に収容したインクカートリッジ200を示す概略図である。
図1に示すように、インク注入口242からインクをインク袋241内に充填し、該インク袋中に残った空気を排気した後、該インク注入口242を融着により閉じる。使用時には、ゴム部材からなるインク排出口243に装置本体の針を刺して装置に供給する。インク袋241は、透気性のないアルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成する。そして、図2に示すように、通常、プラスチック製のカートリッジケース244内に収容し、インクカートリッジ200として各種インクジェット記録装置に着脱可能に装着して用いる。
本発明のインクカートリッジは、インクジェット記録装置に着脱可能とすることが好ましい。これにより、インクの補充や交換を簡素化でき作業性を向上させることができる。
【0019】
また、本発明の光重合性インクジェット用インクを加温することにより液状化して印刷を行い、室温に保持した基材上でインク滴が増粘又は固体化した後に光硬化するインクジェット印刷プロセスを採用すれば、上質紙などの吸収性の基材においてもインク滴のにじみや裏抜けを抑制でき、高い画像品質を達成することができる。
また、該印刷プロセスを実施する機構を備えたインクジェット記録装置とすれば、インク供給、印刷、乾燥といった過程を一連の作業として効率化できる。
【0020】
図3に、上記のようなインクジェット記録装置(印刷装置)の一例の概略図を示す。
図3は、印刷ユニット3[各色(例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)の印刷ユニット3a、3b、3c、3dからなる]のそれぞれにより、被印刷基材供給ロール1から供給された被印刷基材2(図の左から右へ搬送)に吐出された各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)の印刷毎に、紫外線光源(硬化用光源)4a、4b、4c、4dから光照射(UV光)して硬化し、カラー画像を形成する例を示している。印刷ユニット3a、3b、3c、3dは、インク吐出部分においてはインクが液状化するように加温する機構を設けたものであり、基材保持部分(図中基材の上側又は下側の部分)においては、必要に応じて接触又は非接触で基材を室温程度に冷却する機構を設けたものである。先に印刷する色の印刷面積が小さく搬送速度も遅い場合には、後から印刷する色に対しても自然放冷により基材は室温程度に保たれるが、先に印刷する色の印刷面積が大きかったり搬送速度が速い場合には、基材温度が上昇してしまうため、必要に応じて、基材を室温程度に保持するための冷却機構を設けることが望ましい。
被印刷基材2としては、紙、フィルム、金属、あるいはこれらの複合材料等が用いられる。また、図3ではロール状の被印刷基材2を示しているが、シート状であってもよい。さらに、片面印刷だけでなく両面印刷してもよい。
印刷の高速化に際し、各色を印刷する毎に紫外線を照射するとより高い硬化性が得られるが、例えば紫外線光源4a、4b、4cを微弱なものとしたり省略したりして、複数色を印刷した後にまとめて4dにより十分量の紫外線を照射して硬化することにより、省エネ、低コスト化を図ることも可能である。
なお、図中の5は加工ユニット、6は印刷物巻き取りロールである。
【実施例】
【0021】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0022】
実施例1〜8、比較例1〜2
下記A〜Dの材料を、表1の実施例及び比較例の各欄に示す配合割合(数値は重量%)で混合し、光重合開始剤組成物を得た。
A:2,4−ジエチルチオキサントン(日本化薬社製:DETX−S)
B:イソプロピルチオキサントン(lamberti社製:ESACURE ITX)
C:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
〔旧チバジャパン社(現BASF社)製:Irgacure184〕
D:p−ジメチルアミノ安息香酸−2−エチルヘキシル
〔旧チバジャパン社(現BASF社)製:DAROCUR EHA〕
これらの光重合開始剤組成物について、25℃における外観性状が液体であるか固体であるかを目視観察した。結果を表1に示す。
次いで、トリメチロールプロパントリメタクリレート100重量部に対し、上記各光重合開始剤組成物を30重量部配合したインクを作成し、厚さ約10ミクロンの塗膜を作成した。その後、インテグレーションテクノロジー社製:UVLED(中心波長365nm)により、積算光量5000mJ/cmとなるように光照射し、塗膜の硬化状態を指触で確認し、塗膜が液状であれば未硬化、固体状であれば硬化と判定した。結果を表1に示す。
【0023】
【表1】

【符号の説明】
【0024】
1 被印刷基材供給ロール
2 被印刷基材
3 印刷ユニット
3a 各色の印刷ユニット
3b 各色の印刷ユニット
3c 各色の印刷ユニット
3d 各色の印刷ユニット
4a 紫外線光源
4b 紫外線光源
4c 紫外線光源
4d 紫外線光源
5 加工ユニット
6 印刷物巻き取りロール
200 インクカートリッジ
241 インク袋
242 インク注入口
243 インク排出口
244 カートリッジケース
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】特表2010−505977号公報
【特許文献2】特表2004−534117号公報
【特許文献3】特開昭63−150303号公報
【特許文献4】特開昭63−010602号公報
【特許文献5】特開昭59−207903号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チオキサントン化合物、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、及びp−ジメチルアミノ安息香酸−2−エチルヘキシルを含み、p−ジメチルアミノ安息香酸−2−エチルヘキシルの配合割合が23重量%以上である光重合開始剤組成物。
【請求項2】
前記チオキサントン化合物が、2,4−ジエチルチオキサントン又はイソプロピルチオキサントンである請求項1に記載の光重合開始剤組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光重合開始剤組成物を含む光重合性インク。
【請求項4】
インクジェット用である請求項3に記載の光重合性インク。
【請求項5】
請求項4に記載の光重合性インクジェット用インクを収容したインクカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−236885(P2012−236885A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105567(P2011−105567)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】