説明

光量制御装置

【課題】部品点数が少なく組み立てが容易で遮光羽根を良好に揺動でき、光軸方向に装置高さを低くできて、電気−機械変換素子の効率を向上させることができる光量制御装置を提供すること。
【解決手段】遮光羽根揺動手段30により、ベースプレート10に備えた遮光羽根20を揺動させ遮光羽根20で第1の開口13を絞り通過光の光量を制御する。遮光羽根揺動手段30は、ベースプレート10に、軸線がベースプレート10に沿った平面上で、遮光羽根20の回転中心を曲率中心とする円弧状の駆動部材31と、駆動部材31を摩擦係合状態で円弧状に支持する摩擦係合部材32と、駆動部材31の端面に一端面を固着された電気−機械変換素子33と、電気−機械変換素子33の他端面に固着された被駆動ヘッド34と、被駆動ヘッド34と一体に設けられ遮光羽根20に連結されている駆動ピン35から構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御電圧を印加され伸縮する電気−機械変換素子を駆動源として開口を有するベースプレートに備えた遮光羽根を揺動させ開口の絞り通過光の光量を制御する光量制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光量制御装置としては、地板に設けられた絞り羽根がアイリスモータやステッピングモータなどの電磁モータで駆動される。しかし、電磁モータはマグネットとコイル等で構成されているので、部品点数が多く、構造が複雑になり、組立が難しく、高コストになり、小型化が難しいといった問題があり、電磁モータを使用する光量制御装置の小型化にも限界がある。
【0003】
そこで、駆動装置の駆動源として電気−機械変換素子(例えば圧電素子)を用いることが提案されている(例えば特許文献1参照)。従来の電気−機械変換素子を用いた駆動装置は、インパクト方式(IDM)やStic−Slip方式及びスムースインパクト方式(SIDM)等の方式で、一般的に知られている。
【0004】
特許文献1に記載された光量制御装置は、地板と、4枚の絞り羽根と、動輪と、地板に固定された圧電アクチュエータとによって構成される。圧電アクチュエータは、レンズ鏡筒の摺動嵌合部が摩擦係合した駆動軸と、駆動軸の一端に固着された第1圧電素子と、駆動軸の他端に固着された第2圧電素子とを備え、第1及び第2圧電素子が駆動軸の軸線方向に高速変位と低速変位とを繰り返し行うことでレンズ鏡筒が軸線方向に、大きな一定の移動量を持って移動される構成である。
【0005】
【特許文献1】特開2006−121886号公報(図19参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された光量制御装置によれば、比較的大きな摩擦嵌合部が移動することにより、その分のスペースが必要になり、また2個の圧電素子を使用するので、装置全体のサイズアップ、コストアップ及び消費電力が懸念され、また光軸方向の寸法を大きく取る構造となっている。
【0007】
本発明は、上記の事情にかんがみてなされたものであり、その目的とするところは、コンパクトな構造で部品点数が少なく組み立てが容易であり、かつ電気−機械変換素子の伸縮運動を駆動部材の円弧移動に効率良く変換して円弧移動を高速に行うことができるとともに、駆動ピンの牽引力を大きくして遮光羽根を円滑に揺動することができる光量制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の光量制御装置は、電気−機械変換素子を駆動源とする遮光羽根揺動手段により、ベースプレートに備えた第1の開口の通過光量を制御する光量制御装置において、前記遮光羽根揺動手段は、ベースプレートに、駆動部材と、前記ベースプレートに設けられていて前記駆動部材を摩擦係合状態に支持する摩擦係合部材と、前記駆動部材の端面に伸縮方向の一端面を固着されている前記電気−機械変換素子と、前記電気−機械変換素子の他端面に固着された被駆動ヘッドと、前記被駆動ヘッドと一体に設けられ、前記遮光羽根に連結されている駆動ピンを有してなり、前記駆動部材は、軸線が前記ベースプレートに沿った平面上に前記遮光羽根の回転中心を曲率中心とする円弧状に形成されており、前記摩擦係合部材は、前記円弧状の駆動部材を受承し円弧状に案内するように設けられている、ことを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、電気−機械変換素子は制御電圧の印加により伸縮し円弧状の駆動部材を円弧方向に移動させる。摩擦係合部材が円弧状の駆動部材を受承し円弧状に案内するので、電気−機械変換素子が瞬速伸長と緩速収縮とを交番して行うときの、駆動部材の振動と、駆動部材と摩擦係合部材とによる摩擦係合と、摩擦係合部材の円弧方向の案内機能との協働作用により、被駆動ヘッドが摩擦係合部材に接近する方向に円弧移動し、また電気−機械変換素子が緩速伸長と瞬速収縮とを交番して行うときの、駆動部材の振動と、駆動部材と摩擦係合部材とによる摩擦係合と、摩擦係合部材の円弧方向の案内機能との協働作用により、被駆動ヘッドが摩擦係合部材から離隔する方向に円弧移動する。
したがって、駆動ピンが円弧移動し遮光羽根を揺動し、該遮光羽根が第1の開口の一部あるいは全部と重なり、第1の開口を通過する光量を制御する。
【0010】
上記構成によれば、ベースプレートに備えた遮光羽根を揺動する遮光羽根揺動手段を、駆動部材と摩擦係合部材と電気−機械変換素子と被駆動ヘッドと駆動ピンを備えて構成してベースプレートに備えたので、部品点数が少なく組み立てが容易であり、電気−機械変換素子の伸縮運動を駆動部材に良好に伝えられて遮光羽根を良好に揺動することができ、光軸方向に装置高さを低くすることが可能であるコンパクトな構造の光量制御装置を実現でき、さらに1個の電気−機械変換素子が駆動源であるので装置全体のサイズアップ、コストアップ及び消費電力を抑制できる。
【0011】
上記構成によれば、駆動部材と被駆動ヘッドとが電気−機械変換素子の伸縮方向における両側に配設され、駆動部材を摩擦係合状態に支持する摩擦係合部材がベースプレートより設けられているので、摩擦係合部材と駆動部材との間に生じた摩擦による振動が被駆動ヘッドに直接伝わることを防止でき、摩擦によって発生する振動による被駆動ヘッドへの影響を抑制することが可能となる。
【0012】
上記構成によれば、特に、駆動部材は、軸線が前記ベースプレートに沿った一平面上に前記遮光羽根の回転中心を曲率中心とする円弧状に形成されており、摩擦係合部材は、円弧状の駆動部材を受承し円弧状に案内するように設けられているので、電気−機械変換素子の伸縮運動を円弧移動に効率良く変換して円弧移動を高速に行うことができるとともに、駆動ピンの円弧方向の牽引力を大きくして、遮光羽根を円滑に揺動することができる。
【0013】
そして、遮光羽根揺動手段が、電気−機械変換素子の伸縮方向の一端面に駆動部材が一軸一体に設けられ、他端面に被駆動ヘッドが一軸一体に設けられていて、駆動部材が摩擦係合部材により摩擦係合状態に支持される構成であることに特徴があるので、電気−機械変換素子の伸縮による振動がベースプレートに伝わってしまうことがなく、駆動部材の慣性力と摩擦係合部材の摩擦係合力との差により、摩擦トルクが安定化して駆動部材と電気−機械変換素子と被駆動ヘッドが一体に移動し易い。
【0014】
上記構成によれば、遮光羽根を揺動する遮光羽根揺動手段を、駆動部材と摩擦係合部材と電気−機械変換素子と被駆動ヘッドと駆動ピンを備えて構成してベースプレートに備えたので、摩擦係合状態に支持される駆動部材と一軸一体の電気−機械変換素子を伸縮させることにより被駆動ヘッドを往復揺動させ、この往復揺動を利用してベースプレートに備えた遮光羽根を揺動して光量制御するように構成されている。
【0015】
上記構成によれば、電気−機械変換素子を駆動源とする遮光羽根揺動手段を分離独立して組み立てることができ、遮光羽根揺動手段のベースプレートへの組付けが、摩擦係合部材のベースプレートへの固定設置、及び駆動ピンの差し込み連結で実現できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、コンパクトな構造で部品点数が少なく組み立てが容易であり、かつ電気−機械変換素子の伸縮運動を駆動部材の円弧移動に効率良く変換して円弧移動を高速に行うことができるとともに、駆動ピンの牽引力を大きくして遮光羽根を円滑に揺動することができる光量制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態の光量制御装置について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る光量制御装置1を示す斜視図である。図2は、光量制御装置1の分解斜視図である。図1、図2に示すように、光量制御装置1は、ベースプレート10と、ベースプレート10に設けられた遮光羽根20と、ベースプレート10外面に設けられた遮光羽根揺動手段30とを備えてなる。
【0019】
ベースプレート10は、ベースプレート本体11と底蓋12とで構成されている。
ベースプレート本体11は、ほぼ正方形の上面部11aと、上面部11aの側縁に垂下するL字脚11b、直線脚11c及びコーナ脚11dとを備え、上面部11aには、略中央にすり鉢状斜面を有する円錐穴13aが形成されているとともに上側長穴14aが開口され、かつ内面隅部より一体に垂下するボス部であるピボット軸15を有している(図2、図5参照)。上側長穴14aは、L字脚11bと直線脚11cと円錐穴13aとの間に位置されかつピボット軸15の中心を曲率半径の中心とする円弧状長穴に形成されている。
底蓋12は、ベースプレート本体11の上面部に対応するほぼ正方形であり、円穴13bと下側長穴14bと軸穴16とを有している。円穴13bは、円錐穴13aの最小径より若干大きく形成され底蓋12の略中央に位置している。下側長穴14bは、ベースプレート本体11の上側長穴14aに対応して若干大きく開口されている。
【0020】
遮光羽根20は、アーム形状に形成され、両端に開口された軸穴21と連結穴22とを有し、及び中程に開口された第2の開口23を有している(図2、図5参照)。第2の開口23は、ベースプレート本体11の円錐穴13aの最小径よりも小さく形成されている。なお、連結穴22は、長穴として設けた円穴としても良い。
【0021】
そして、ベースプレート本体11のピボット軸15に遮光羽根20の丸穴部である軸穴21を嵌合して、遮光羽根20をベースプレート本体11内に収容し、底蓋12の周縁部をベースプレート本体11の周壁部下端(L字脚11b、直線脚11c、コーナ脚11d)に当接され(図2、図5、図9参照)、ねじ等の止着具(不図示)によりベースプレート本体11と底蓋12は止着されている。軸穴16は、ピボット軸15に被嵌し該ピボット軸15を支持している。
【0022】
上記構成のように、ベースプレート本体11と底蓋12とが重ね合わされることにより、ベースプレート本体11の下部開口が底蓋12で閉じられ、かつピボット軸15が遮光羽根20の軸穴21と底蓋12の円穴13bに係入されている。これにより、遮光羽根20が、ピボット軸15を回転中心として揺動可能な状態ベースプレート11に収容されている(図2、図6、図8参照)。
また、ベースプレート本体11と底蓋12とが重ね合わされることにより、円錐穴13aと円穴13bとによってベースプレート10に対し貫通状態に第1の開口13が形成されるとともに、上側長穴14aと下側長穴14bとによってベースプレート本体11に対し貫通状態に長穴14が形成される(図2参照)。
さらに、ベースプレート本体11と底蓋12とが重ね合わされることにより、ベースプレート11の三方の側面にスリット窓17〜19が形成されている(図2、図5参照)。
【0023】
遮光羽根揺動手段30は、ベースプレート本体11の上面部11aに備えられる。遮光羽根揺動手段30は、駆動部材31と、摩擦係合部材32と、圧電素子等の電気−機械変換素子33と、被駆動ヘッド34と、駆動ピン35から構成されている。この構成によれば、電気−機械変換素子33を駆動源とする遮光羽根揺動手段30を分離独立して組み立てることができ、遮光羽根揺動手段30のベースプレート10への組付けが、摩擦係合部材32のベースプレート10への固定設置及び駆動ピン35の差し込み連結で実現できる。この構成の遮光羽根揺動手段30を採用すると、ベースプレート10の厚み方向に対する寸法を小さく抑えられ、光軸方向に装置高さを低くすることができて装置全体のサイズアップ、コストアップ及び消費電力を抑制できる。
【0024】
電気−機械変換素子33は、長方体形状の圧電素子が用いられ、制御電圧を印加されて振動(伸縮)する駆動部品である。駆動部材31は、比重が小さい強靭な材料(例えば、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)等)より断面形状が円形に形成され、かつ軸線がベースプレート10に沿った平面上に遮光羽根20の回転中心(ピボット軸15の中心)を曲率中心とする円弧状に形成されている。摩擦係合部材32は、係合固定部材32aと、押さえ板32bと、ばね部材32cとを有してなり、ベースプレート10に設けられていて駆動部材31を摩擦係合状態に支持する(図9参照)。係合固定部材32aは、ベースプレート10に固定され、凹部32a’を有し、該凹部32a’により円弧状の駆動部材31を受承し円弧状に案内する機能を有する。押さえ板32bは、駆動部材31に付勢する状態にばね部材32cによって押さえられ、係合固定部材32aの凹部32a’と共同して駆動部材31を挟んで摩擦係合状態に支持する機能を有する。電気−機械変換素子33の伸縮方向の一端面に駆動部材31の端面が固着され、他端面に、被駆動ヘッド34が固着され、もって、駆動部材31と電気−機械変換素子33と被駆動ヘッド34の配列順で一軸一体に接合されている。駆動ピン35は、被駆動ヘッド34と一体に成形されている。被駆動ヘッド34と駆動ピン35は、静止慣性力を大きく具有するために、駆動部材31と比較して比重の大きい材料により形成するのがよい。
【0025】
駆動ピン35は、ベースプレート10に設けられた上側長穴14aに摺動可能に通され、該ベースプレート10の中空部に入り、遮光羽根20に設けられた連結穴22に回転可能に嵌挿され該遮光羽根20を揺動可能にリンクされ、さらに底蓋12に設けられた下側長穴14bに通されている。
【0026】
上側長穴14aと下側長穴14bとからなる長穴14は、ベースプレート10を平面視したとき、ピボット軸15の中心を曲率中心とする円弧状長穴として形成されている。長穴14の円弧形状は、遮光羽根20と連結された駆動ピン35が、ピボット軸15を回転中心とする揺動軌跡と一致している。もって、長穴14の上側長穴14aは、駆動ピン35の円弧移動をガイドする機能を有する。さらに、長穴14は、駆動ピン35の円弧移動の範囲を制限し、長穴の両端で駆動ピン35を当接停止して、遮光羽根20の第1の開口13に対する位置決めを行う役目を果たす。つまり、長穴14の上側長穴14aは、一方の端(摩擦係合部材32から遠い側の端)に駆動ピン35を当接停止させるとき(図3、図4参照)、遮光羽根20を第1の開口13に掛からない位置へ停止させ(図4、図5参照)、また、他方の端(摩擦係合部材32に近い側の端)に駆動ピン35を当接停止させるとき(図6、図7参照)、遮光羽根20の第2の開口23を第1の開口13(円錐穴13a)と同心位置へ停止させる(図6、図8参照)。
【0027】
駆動部材31は、丸棒状であり、かつ駆動部材31のピボット軸15の中心を曲率中心とする曲率半径R1を有する円弧状に形成されている。該駆動部材31の端面に接線方向でかつ延長方向に電気−機械変換素子33と被駆動ヘッド34が一軸一体に設けられ、被駆動ヘッド34より駆動ピン35が垂下しているので、駆動部材31のピボット軸15の中心から長穴14の幅中心までの距離R2は、駆動部材31の曲率半径R1より大きくなっている(図4参照)。
【0028】
続いて、光量制御装置1の動作について説明する。
電気−機械変換素子33が瞬速収縮するときは、被駆動ヘッド34の慣性力が摩擦係合部材32による摩擦係合力よりも大きくなる。このため、被駆動ヘッド34が静止位置に止まり、摩擦係合部材32の駆動部材31を保持する位置は、電気−機械変換素子33から離間する方向に微小移動する。そして、次に電気−機械変換素子33が緩速伸長するときは、被駆動ヘッド34の慣性力が摩擦係合部材32による摩擦係合力よりも小さくなり、摩擦係合部材32の駆動部材31を保持する位置にずれは生じない。こうして、電気−機械変換素子33が一回の瞬速収縮と一回の緩速伸長を行うと、被駆動ヘッド34が摩擦係合部材32から離隔する方向に微小移動する。
したがって、長穴14の他方の端(摩擦係合部材32から近い側の端)に駆動ピン35を当接停止させた状態(図6の状態)から、電気−機械変換素子33を伸縮運動し、矢印Bに示すように、駆動ピン35を長穴14の一方の端(摩擦係合部材32から遠い側の端)に円弧移動するには、電気−機械変換素子33が瞬速収縮と緩速伸長とを交番する振動を行う。すると、図3、図4に示すように、被駆動ヘッド34が摩擦係合部材32から離隔移動し、駆動ピン35が長穴14の摩擦係合部材32から遠い側の端に当接するまで円弧移動する。それによって、図4、図5に示すように、遮光羽根20は、第1の開口13の側方へ避けて位置され、光量制御装置1は、第1の開口13の円錐穴13aによって、第1の光量(最大値)となるように制御し得る。
【0029】
上記とは逆に、電気−機械変換素子33が瞬速伸長するときは、被駆動ヘッド34の慣性力が摩擦係合部材32による摩擦係合力よりも大きくなる。このため、被駆動ヘッド34が静止位置に止まるから、このとき摩擦係合部材32の駆動部材31を保持する位置は、電気−機械変換素子33に接近する方向に微小ステップ移動した状態にずれる。そして、次に電気−機械変換素子33が緩速収縮するときは、被駆動ヘッド34の慣性力が摩擦係合部材32による摩擦係合力よりも小さくなり、摩擦係合部材32の駆動部材31を保持する位置にずれは生じない。こうして、電気−機械変換素子33が一回の瞬速伸長と一回の緩速収縮を行うと、被駆動ヘッド34が摩擦係合部材32に接近する方向に微小移動する。
したがって、長穴14の一方の端(摩擦係合部材32から遠い側の端)に駆動ピン35を当接停止させた状態(図3の状態)から、電気−機械変換素子33を伸縮運動し、矢印Aに示すように、駆動ピン35を長穴14の他方の端(摩擦係合部材32から近い側の端)に円弧移動するには、電気−機械変換素子33に瞬速伸長と緩速収縮とを交番する振動を行わせる。すると、図6、図7に示すように、被駆動ヘッド34が摩擦係合部材32に接近移動し、駆動ピン35が長穴14の摩擦係合部材32から近い側の端に当接するまで円弧移動する。それによって、図7、図8に示すように、光量制御装置1は、開口が小さい第2の開口23によって第2の光量(最小値)となるように制御し得る。
【0030】
上記実施形態では、駆動ピン35が、前記遮光羽根20の揺動端に設けられた連結穴22に係入されている構成であるので、駆動ピン35の直動でベースプレート10の遮光羽根20を揺動させる運動変換伝達機構を、特別の運動変換伝達部材を設けることなく、構成を大幅に簡素化して実現できる。
【0031】
上記実施形態では、ベースプレート本体11の内面に一体にピボット軸15が設けられ、ピボット軸15が遮光羽根20に設けられた軸穴21に嵌挿され更に底蓋12に設けられた軸穴16に嵌合された構成であるので、部品点数を最小にしてベースプレート本体11内に収容する遮光羽根20をピボット回動可能に支持でき、構成を大幅に簡素化できる。
【0032】
上記実施形態では、長穴14が、駆動部材31の移動方向に沿って設けられ駆動ピン35の移動方向をガイドする構成であるので、移動範囲をガイドする独立したガイド部材を無くし構成を簡素化できる。
【0033】
上記実施形態では、長穴14が、駆動ピン35の移動範囲を制限する構成であるので、移動範囲を制限する独立したストッパ部材を無くし構成を簡素化できる。
【0034】
上記実施形態では、遮光羽根20には、第2の開口23が設けられ、遮光羽根揺動手段30が、遮光羽根20を揺動し第2の開口23を第1の開口13に対応する位置に合わせる構成であるので、光軸に対して同心円となるように2段階に光量を絞ることができる。
【0035】
上記実施形態では、ベースプレート10は、ベースプレート本体11と底蓋12で形成され、ベースプレート本体11と底蓋12の間に遮光羽根20が配置されている構成であるので、遮光羽根20に対する保護が完全に行われかつ、ベースプレート10の両面を取付面として広く利用できる。
【0036】
〔その他の実施形態、変形例〕
以上、本発明に係る実施形態について図面を参照し説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない限度で種々の設計変更や工程の変更が可能であり、そのような変更を技術的範囲に含むものである。例えば、ピボット軸15と軸穴16は、逆転した配置でも良い。本発明の光量制御装置は、第1の開口13による第1の光量制御と、遮光羽根20に設けられた第2の開口23を第1の開口13と同心円となる位置に移動する第2の光量制御との二段階の光量制御に限定されるものではない。遮光羽根20を揺動することにより、該遮光羽根20で第1の開口13を無段階に絞ることができる構成も含まれる。さらに、遮光羽根20は、一枚羽根に限定されない、遮光羽根20と連鎖状にリンクして設けられ該遮光羽根20の揺動に連動して揺動し該遮光羽根20と共同して第1の開口13を絞ることができる構成も含まれる。駆動ピン35が長穴14の適宜の途中で停止するように設ける場合も本発明に含まれる。
又、ベースプレート10の形状は、本発明の光量制御装置が設置される光学機器の形状に合わせて任意の形状とすることも、本発明の範囲に含まれるものである。
【0037】
本発明の光量制御装置は、構造の簡素化、小型化等を達成しており、近年小型化が要求されているデジタルカメラの光量制御装置として適用できるのは勿論のこと、その他のレンズ光学系の光量制御装置としても有用である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施形態に係る光量制御装置を示す斜視図である。
【図2】図1の光量制御装置の分解斜視図である。
【図3】図1の光量制御装置の第1の光量制御状態の斜視図である。
【図4】図3に示す第1の光量制御状態の光量制御装置の平面図である。
【図5】図3におけるV−V横断面図である。
【図6】図1の光量制御装置の第2の光量制御状態の斜視図である。
【図7】図6に示す第2の光量制御状態の光量制御装置の平面図である。
【図8】図6におけるIIX−IIX横断面図である。
【図9】図7におけるIX−IX縦断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 光量制御装置
10 ベースプレート
11 ベースプレート本体
11a 上面部
12 底蓋
13 第1の開口
13a 円錐穴
13b 円穴
14 長穴
14a 上側長穴
14b 下側長穴
15 ボス部(ピボット軸)
16 軸穴
20 遮光羽根
21 軸穴
22 連結穴
23 第2の開口
30 遮光羽根揺動手段
31 駆動部材(駆動軸)
32 摩擦係合部材
32a 固定係合部材
32b 押さえ板
32c ばね部材
33 電気−機械変換素子(圧電素子)
34 被駆動ヘッド
35 駆動ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気−機械変換素子を駆動源とする遮光羽根揺動手段により、ベースプレートに備えた遮光羽根を揺動させ該遮光羽根で前記ベースプレートに備えた第1の開口の通過光量を制御する光量制御装置において、
前記遮光羽根揺動手段は、ベースプレートに、駆動部材と、前記ベースプレートに設けられていて前記駆動部材を摩擦係合状態に支持する摩擦係合部材と、前記駆動部材の端面に伸縮方向の一端面を固着されている前記電気−機械変換素子と、前記電気−機械変換素子の他端面に固着された被駆動ヘッドと、前記被駆動ヘッドと一体に設けられ、前記遮光羽根に連結されている駆動ピンを有してなり、
前記駆動部材は、軸線が前記ベースプレートに沿った平面上に前記遮光羽根の回転中心を曲率中心とする円弧状に形成されており、
前記摩擦係合部材は、前記円弧状の駆動部材を受承し円弧状に案内するように設けられている、
ことを特徴とする光量制御装置。
【請求項2】
前記駆動ピンが、前記遮光羽根の揺動端に設けられた連結穴に係入されている、
ことを特徴とする項1に記載の光量制御装置。
【請求項3】
前記遮光羽根は、軸穴を有し、該軸穴を実質的に前記ベースプレートに固定されたボス部に被嵌されていることを特徴とする項1または2に記載の光量制御装置。
【請求項4】
前記ベースプレートには、前記駆動部材の移動方向に沿って駆動ピンを貫通させる長穴が設けられ、前記駆動ピンの移動方向をガイドすることを特徴とする項1乃至3のいずれか一に記載の光量制御装置。
【請求項5】
前記ベースプレートに設けられた長穴は、前記駆動ピンの移動範囲を制限するストッパであることを特徴とする項4に記載の光量制御装置。
【請求項6】
前記遮光羽根には、前記ベースプレートに備えられた第1の開口より小径の第2の開口が形成され、前記遮光羽根揺動手段により開口を切り替え可能であることを特徴とする項1乃至5のいずれか一に記載の光量制御装置。
【請求項7】
前記ベースプレートは、ベースプレート本体と底蓋で形成され、前記ベースプレート本体と底蓋の間に前記遮光羽根が配置されていることを特徴とする項1乃至6のいずれか一に記載の光量制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−85775(P2010−85775A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−255598(P2008−255598)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】