説明

光量調整装置及びこれを備えた光学機器

【課題】ストッパーで羽根部材を規制する際のリバウンド運動を緩和するとの着想に基づき光量調節する際の光量ムラを生ずることがなく、特に羽根部材の全開位置及び全閉位置で正確な光量規制が可能な光量調整装置を提供する。
【解決手段】基板に略々直線方向に移動自在に支持され上記光路開口を開閉する一対の羽根部材と、上記一対の羽根部材を互いに逆方向に作動する駆動手段と、上記基板に設けられ上記一対の羽根部材の全開及び/又は全閉位置でそれぞれの羽根部材を突当て規制するストッパー部材とを備え、上記駆動手段は、駆動回転軸と、この駆動回転軸に支持した伝動アーム部材と、この伝動アーム部材に設けた一対の伝動ピンとで構成し、上記一対の羽根部材は、それぞれ上記伝動ピンと結合する駆動連結部と、上記ストッパー部材と係合する突当て規制部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラ、ビデオカメラなどの撮影機器に、また液晶プロジェクタ、ホームシアター等の投影機器に用いられる光量を調節する光量調整装置及びこれを備えた光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にこの種の光量調整装置はカメラ、プロジェクタなどの光路に一枚若しくは複数枚の羽根部材を配置し、この羽根部材をモータなどの駆動装置で開閉することによって光量調節或いは遮閉する装置として広く用いられている。そして、羽根部材は光軸開口を有する基板(地板)に複数枚の羽根をそれぞれ回動自在に軸支して光量を制御する回動羽根構造と、基板の光軸開口に1枚若しくは2枚の羽根を摺動自在に配置する摺動羽根構造が知られている。本発明は基板に形成した光軸開口に2枚の羽根を摺動自在に配置し、この羽根を駆動モータで互いに反対方向に移動させて、光軸開口を通過する光量を調節或いは遮閉する装置に係わる。
【0003】
従来このような装置としては例えば特許文献1(実開平6−23037号公報)に開示されている。同文献には中央に光軸開口を有する基板にガイドピンを設け、このガイドピンに左右一対の羽根部材に形成したスリットを嵌合して、摺動自在に支持している。そして基板に取り付けた電磁モータの回動軸にアーム部材を設け、このアーム部材に形成した左右一対の伝動ピンに羽根部材をピンスリット結合することによって左右一対の羽根部材が反対方向に摺動するように構成している。また左右一対の羽根部材には絞り口径を形成する開口縁が形成してあり、この開口縁は光軸を中心として接近或いは離間して光軸の周囲に大小の絞り口径を形成し、また2枚の羽根を完全に閉じ合わせて光軸開口を遮閉している。
【0004】
従って、左右一対の羽根部材或いは光軸開口を遮閉したシャッタ位置若しくは最小絞り位置にストッパピンが設けられ、羽根部材の所定以上運動するのを防止している。このような装置にあって羽根部材をストッパピンで係止する際に生ずる衝撃で羽根部材が前後に振動する所謂チャタリング現象は良く知られ、従来シャッタ動作の際には2枚の羽根重なり部分を大きくして羽根の振動で規制光量に変化を生じないように配慮している。一方、カメラ装置の小型化、特に携帯端末に組込まれる光量調整装置にあっては小型化と駆動モータの消費電力が問題となり、光量調整用の羽根部材も小型でかつ駆動トルクの小さいものが要求されている。
【特許文献1】実開平6−23037号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように光軸開口に臨ませた一対の羽根部材で絞り動作或いはシャッタ動作を行う際に羽根部材をストッパピンで運動規制すると羽根部材がリバウンドして光量ムラが生ずるチャタリング現象が問題となる。このたる従来は羽根のリバウンドを抑えるように駆動部と羽根部材との間のガタつきが生じないように配慮し、或いは開閉速度を緩やかにするように配慮している。これと同時にチャタリング現象が生ずることを予定して羽根相互の重なり量を大きくするため羽根を大きくして開閉ストロークを大きくしている。従って羽根部材の形状は大型化し、その運動領域も大きくなり、同時に駆動モータも大きなトルクで大型化し、消費電力も大きくなる問題がある。
【0006】
そこで本発明はストッパーで羽根部材を規制する際のリバウンド運動を緩和するとの着想に基づき光量調節する際の光量ムラを生ずることがなく、特に羽根部材の全開位置及び全閉位置で正確な光量規制が可能な光量調整装置の提供をその主な課題としている。同様に本発明は羽根部材の開閉ストロークを必要以上に大きくすることも、また羽根部材の全閉時の重なり量(オーバーラップ量)を大きくすることも必要とせず、小型で限られたスペース内に容易に組込むことの可能な光量調整装置の提供をその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決する為に以下の構成を採用したものである。まず本発明に係る第1の発明は、光路開口を有する基板と、上記基板に略々直線方向に移動自在に支持され上記光路開口を開閉する一対の羽根部材と、上記一対の羽根部材を互いに逆方向に作動する駆動手段と、上記基板に設けられ上記一対の羽根部材の全開及び/又は全閉位置でそれぞれの羽根部材を突当て規制するストッパー部材とを備えた光量調整装置において、上記駆動手段は、駆動回転軸と、この駆動回転軸に支持した伝動アーム部材と、この伝動アーム部材に設けた一対の伝動ピンとで構成する。そして上記一対の羽根部材にはそれぞれ上記伝動ピンと結合する駆動連結部と、上記ストッパー部材と係合する突当て規制部とを設ける。同時にこの一対の羽根部材の少なくとも一方に、上記駆動連結部と上記突当て規制部との間に弾性変形可能な緩衝部設ける。
【0008】
そしてこの緩衝部を上記突当て規制部が上記ストッパー部材に当接する際に弾性変形して突当て規制部をストッパー部材側に付勢する凹溝で構成する。これによって羽根部材にストッパー部材からリバウンド力が作用する際に緩衝部の弾性変形で羽根の突当て規制部はストッパー部材側に付勢されリバウンドを防止することとなり前述の課題を達成することが出来る。
【0009】
また一対の羽根部材は、それぞれ前記基板に設けたガイドピンと係合するスリット溝を設け、このスリット溝に沿って略直線上に摺動自在に支持する。そしてこのガイドピンで前記ストッパー部材を構成してスリット溝の端面で前根部材の突当て規制部を構成する。そこで前記緩衝部を上記ストッパー部材を構成するガイドピンと前記駆動連結部との間に配置することによって羽根の開閉と全開及び全閉時の運動規制をガイドピンで行うことが出来、構造を簡素化することが可能となる。更に、前記羽根部材は、基端部に前記駆動連結部を、先端部に前記光路開口を覆う絞り開口部を形成し、この駆動連結部と絞り開口部との間に前記突当て規制部と前記緩衝部を配置する。
【0010】
従って緩衝部の弾性変形によって羽根先端部の絞り開口部が変形することがない。そして、前記緩衝部を構成する凹溝を前記羽根部材の側縁に形成した切欠溝で構成し、この切欠溝は前記突当て規制部が前記ストッパー部材に規制された状態で前記伝動ピンの作用で羽根部材を弾性変形する長さ形状に構成する。この場合、この切欠き溝は前記突当て規制部が前記ストッパー部材に当接する位置でこの突当て規制部と前記ストッパー部材との係合点と、前記連結部と前記伝動ピンとの係合点とを結ぶ直線を過ぎる長さに形成する。これによってより大きな弾性変形と付勢力を得ることが出来る。
【0011】
また本発明に係る第2の発明は、光路開口とこの光路開口に配置され光を集光若しくは投光する光学レンズと、この光学レンズの結像を撮像する撮像手段又は上記光学レンズに投影する光学手段と、上記光学レンズを通過する光の光量を調整する光量調整装置とを備えた光学機器に於いて、前記光量調整装置は、光路開口を有する基板と、上記基板に略々直線方向に移動自在に支持され上記光路開口を開閉する一対の羽根部材と、上記一対の羽根部材を互いに逆方向に作動する駆動手段と、上記基板に設けられ上記一対の羽根部材の全開及び/又は全閉位置でそれぞれの羽根部材を突当て規制するストッパー部材とを備え、上記駆動手段は、駆動回転軸と、この駆動回転軸に支持した伝動アーム部材と、この伝動アーム部材に設けた一対の伝動ピンとで構成し、上記一対の羽根部材は、それぞれ上記伝動ピンと結合する駆動連結部と、上記ストッパー部材と係合する突当て規制部とを有し、上記一対の羽根部材の少なくとも一方は上記駆動連結部と上記突当て規制部との間に弾性変形可能な緩衝部を備え、この緩衝部は上記突当て規制部が上記ストッパー部材に当接する際に弾性変形して該突当て規制部をストッパー部材側に付勢する凹溝で構成する。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、光路開口を有する基板に一対の羽根部材を直線方向に移動自在に取り付け、この羽根部材の少なくとも1つに全開及び/又は全閉位置でストッパー部材と係合する突き当て規制部と駆動連結部との間に凹溝から成る弾性変形可能な緩衝部を設けたものであり、この緩衝部によって羽根部材がストッパー部材に突き当たった際の衝突でリバウンドする力が軽減される。
【0013】
つまりストッパーに突き当たった際に、羽根部材には衝突による反力と同時に駆動モータなどの駆動手段の慣性力を受けて緩衝部の弾性変形による弾性力が作用し、この反力に対し弾性力は逆方向に作用するため羽根のリバウンドを軽減することが出来る。従って、羽根部材はストッパー部材に突き当たった際にリバウンドが緩和され、その結果一対の羽根部材は閉鎖状態(全閉位置)で互いに重なり合うオーバーラップ量を小さくすることができ、同様に羽根の全開状態では開閉動作領域を光路開口縁に近づけることが可能であり限られた空間スペース内に羽根部材を配置することが出来る。また、その為の構成も羽根部材に凹溝などの緩衝部を形成するのみで良く簡単で安価である等の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下本発明を図示の好適な実施の形態に基づいて詳述する。図1乃至図9は本発明に係る光量調整装置を示し、図1はその外観を示す斜視図、図2はその分解斜視図、図3乃至図9はその要部の説明図である。図示の光量調整装置は、基板10、第1の羽根部材20、第2の羽根部材30、押え板40、駆動手段支持フレーム50、駆動手段60、フレームカバー70、ヨーク80で構成され、以下順次これを説明する。
【0015】
まず基板10は、合成樹脂のモールド成形で扁平形状に構成され、その中央に光路開口11が設けてある。この光路開口11の周囲には羽根部材を摺動自在に支持するガイドピン12a乃至12dと、羽根部材との摩擦を軽減する突起リブ13が一体形成してある。後述する第1の羽根部材20はガイドピン12a、12b、12c、に支持され、第2の羽根部材30はガイドピン12a、12c、12dに支持され、それぞれ略々直線方向に案内される。また、突起リブ13は羽根の移動方向に複数条の突起で形成され図示のものは光路開口11を挟んでその左右両側部に形成してある。尚、この突起リブ13は羽根部材を直線方向に移動自在に案内するのと同時に後述する羽根部材の緩衝部が容易に弾性変形するように摩擦を軽減している。
【0016】
更に上記基板10には、押え板40を係止する突起爪14及びこの押え板40を所定の間隔で離間保持する窪み溝15、駆動手段支持フレーム50を図示せぬビスで取り付けるための支持孔16及び係止爪17、駆動手段60の後述する伝動アーム64の先端部が貫通し揺動自在なスリット孔18を樹脂成形加工により一体形成している。また基板10の外形外周に沿って壁部19がフランジ状に設けられ、羽根部材20,30がスライドする許容空間を形成している。この壁部19にはその上面より若干突出した突起19aが設けてある。
【0017】
次に、上記基板10に取り付けられる一対の羽根部材について説明する。図示の羽根部材は、板厚40μから50μの黒色不透明樹脂シートをプレス加工で所定形状に打ち抜き成形で構成される。このように合成樹脂のフィルム材料で羽根部材を形成したのは加工が容易で軽量に構成することが出来、駆動装置を小型化できるためである。これと同時に合成樹脂の羽根部材は弾性変形し易い為であり、後述する緩衝部の弾性変形が得られれば合成樹脂に限らず金属薄板で形成しても良い。そこで第1の羽根部材20には、図4に示す様に基板10の光路開口11に望む絞り部21が形成してあり、この絞り部21は第2の羽根部材30の絞り部31と共に光路開口11を開閉する形状に構成する。図示の絞り部21と31とは互いに半円形状で反対方向に配置され光路開口11に大小の口径を形成するようになっている。
【0018】
また、第1の羽根部材20にはスリット孔22a乃至22cが形成してあり、基板10のガイドピン12a,12b,12cに嵌合して直線方向にスライド自在に支持される。同様にスリット孔23が形成され、後述する伝動アーム64の伝動ピン64aが係合される。このように構成された第1の羽根部材20には伝動ピン64aを係合するスリット孔23とガイドピン12bに嵌合するスリット孔22bとの間に緩衝部24が形成してある。図示の緩衝部24は羽根の外縁に切欠き溝を形成した凹溝で形成してある。従って第1の羽根部材20には伝動ピン64aと係合する駆動連結部(スリット孔23)とスリット孔22bとの間に凹溝からなる緩衝部24が形成されることとなる。そしてこのスリット孔22bの端縁は後述する羽根の全閉位置での突き当て規制部を構成することとなる。
【0019】
次に、第2の羽根部材30は、第1の羽根部材20と同様に外形形状は異なるものの、板厚40μから50μの黒色不透明樹脂シートをプレス加工で外形を抜くと同時に、図5に示す様に基板10の光路開口11を第1の羽根部材20とともに開閉する絞り部31、基板10のガイドピン12a,12c,12dが貫通しそのガイドピン12a,12c,12dにスライド自在に支持されるスリット孔32a乃至32c、および駆動手段60の後述する伝動アーム64の伝動ピン64bが貫通しスライド駆動するスリット孔33が形成されている。
【0020】
このように構成された第2の羽根部材30には伝動ピン64bを係合するスリット孔33とガイドピン12dに嵌合するスリット孔32cとの間に緩衝部34が形成してある。図示の緩衝部34は羽根の外縁に切り欠き溝を形成した凹溝で形成してある。従って第2の羽根部材30には伝動ピン64bと係合する駆動連結部(スリット孔33)とスリット孔32cとの間に凹溝からなる緩衝部34が形成されることとなる。そしてこのスリット孔32cの端縁は後述する羽根の全閉位置での突き当て規制部を構成することとなる。
【0021】
次に、図2及び図6に示す押え板40は、アルミのシート材をプレス加工と曲げ加工により成形されたもので、上述の基板10をカバーリングした際に、基板10の光路開口11とほぼ同径の光路開口41、基板10の突起爪14と係合する係止孔42、基板10の窪み溝15と位置決めされ、基板10との間に羽根部材20,30が移動自在な許容空間スペースを形成する高さ位置決め突起43、基板10の壁部19より突出した突起19aにより横方向の位置決めをする水平位置決め突起44、基板10のスリット孔18を貫通し羽根部材20,30を駆動する駆動手段60の後述する伝動アーム64の揺動を妨げ無いように開口したスリット状の逃げ孔45、基板10の支持孔16が貫通する貫通穴46、羽根部材20の許容空間スペースの高さ方向を規制する突出量が高いガイドリブ47、羽根部材30の許容空間スペースの高さ方向を規制する突出量がガイドリブ47より小さい低いガイドリブ48、基板10のガイドピン12a乃至12dの逃げ孔49がそれぞれ形成されている。
【0022】
次に、図2及び図7に示す駆動手段支持フレーム50は、駆動手段60を基板10に取り付ける為のもので、基板10の係止爪17に係止される係止孔51、基板10の支持孔16に図示せぬビスによりビス止めされるビス孔52を形成し基板10に固定支持される。また、中央部位に駆動手段60を回転止めする止め溝53、駆動手段60の後述する伝動アーム64が貫通し揺動するスリット状の逃げ孔54、駆動手段60を包み込む側壁55を形成している。
【0023】
次に、図2及び図8に示す駆動手段60及びヨーク80は、電導コイル61、この電導コイル61を巻回するための外周に凹環溝を形成したコイル枠62、コイル枠62の内部に回動自在に支持されたN、Sの2極に着磁されたマグネットロータ63、マグネットロータ63に一体形成されコイル枠62より左右から外部に突出した伝動アーム64と伝動アーム64と一体に形成された伝動ピン64a,64b、駆動手段支持フレーム50の止め溝53に回転止めされる突起65から成る。また同駆動手段60を外部磁界より遮蔽及びマグネットロータ63の磁気回路を形成するヨーク80から成る。
【0024】
次に、図2及び図9に示すフレームカバー70は、駆動手段支持フレーム50に固定支持された駆動手段60を支える側壁71、ヨーク80の取り付け位置を位置決めする位置決め孔72を形成するとともに駆動手段支持フレーム50をカバーリングする。
【0025】
次に、以上説明した各部品の組立工程について図2に基づき説明する。まず、基板10の突起リブ13上に羽根部材20を載置すべく基板10のガイドピン12a、12b、12cに羽根部材20のスリット孔22a、22b、22cをそれぞれ同時に差し込みセットする。その上から同様に羽根部材30を載置すべく基板10のガイドピン12a、12c、12dに羽根部材30のスリット孔32a、32b、32cをそれぞれ同時に差し込みセットする。
【0026】
そして、その上から押え板40を、更に駆動手段支持フレーム50を基板10に取り付ける。その際に図示せぬセット冶工具で基板10、羽根部材20,30及び押え板40の各部材に設けた組立時の位置決め孔P1乃至P4の中心が一致するように位置決めする。この状態で駆動手段60の伝動アーム64が羽根部材20、30のスリット孔23、33に貫通するように嵌め込んだ後、駆動手段60の突起65を駆動手段支持フレーム50の止め溝53に指し込み若干回転させ固定する。駆動手段60を駆動手段支持フレーム50に取り付け後、フレームカバー70の位置決め孔72を駆動手段60に嵌合した状態で、フレームカバー70の側壁71とヨーク80の接触部をボンドで接着することで装置の組立が完成する。
【0027】
次に、上述の光量調整装置の光量調整動作について説明する。光量調整装置を搭載した光学機器本体からの光量調整信号に応じ図示せぬ光量調整装置を制御する制御回路により駆動手段60の電導コイル61に電流が供給される。この供給電流の流れる方向を切り替えることで、その電導コイル61に磁界が発生し、その磁界により駆動手段60のマグネットロータ62をその供給電流の流れる方向に応じた方向に回転トルクが生じ回転する。この回転により駆動手段60の伝動アーム64が揺動し羽根部材20、30を互いに逆方向に移動し基板10の光路開口11を開閉駆動し光量を調整する。
【0028】
本発明は上述の動作の過程で緩衝部24の作用によって羽根部材のリバウンドを防止したものであり、これを図10乃至13に基づき説明する。図10は第1の羽根部材20の全開位置での羽根の挙動を、図11は全閉位置での羽根の挙動をそれぞれ示している。図示の第1の羽根部材20は基板10に設けたガイドピン12bがストッパー部材を兼ね、このガイドピン12bに係合したスリット孔22bの図示左端縁が全開時の突き当て規制部(当接面)を構成している。尚、図示のスリット孔22aは右端縁が全閉時の突き当て規制部となる。
【0029】
そこで図10(a)は、第1の羽根部材20が同図右方向に移動し開放位置にある状態を示し、図中、ガイドピン12bがスリット孔22bの左端縁と当接状態となっている。このガイドピン12bの規制により絞り部21が基板10の露光開口11に対し所定量退避した全開位置で位置規制される。この規制位置は基板10の露光開口11、ガイドピン12bと羽根部材20のスリット孔22bの各部品精度を管理することによって正確に維持されている。また同図(b)は羽根部材が開放位置に至った直後の状態を示す。
【0030】
ストッパー部材を兼ねるガイドピン12bの中心と、スリット孔23が伝動ピン64aに当接する接点とを結ぶ直線上の中間位置に緩衝部24が形成されている。この緩衝部24は羽根部材の側縁から切り欠かれた凹溝で構成されている。また、この凹溝はストッパー部材(ガイドピン12b)にスリット孔22bの端縁が規制された直後に駆動手段の慣性によって羽根部材の駆動連結部(スリット孔23)にストッパー部材の中点を結ぶ直線方向に力が作用し、緩衝部24が図示のように弾性変形する。従って凹溝の形状はこの弾性変形によって十分な弾性力が羽根部材の突き当て規制部に及ぶように設定する。そしてこの弾性変形により羽根部材20のリバウンドが吸収され、絞り部21の全開位置からのリバウンドを軽減することが出来る。
【0031】
この結果、緩衝部24を備えない場合と比較して絞り部21の露光開口11からの退避距離L1位置を設計上小さく設定することが出来、装置のコンパクト化を図ることが出来る。尚、ガイドピン12bが羽根部材20のストッパー部材を兼ねているが、他のガイドピン12a、12cのいずれか1つに設定しても、また3つのガイドピン12a、12b、12cが同時にストッパー部材として作用しても、或いは新たに基板10にピンを植設してストッパー部材としても良い。
【0032】
図11は、第1の羽根部材20の全閉時の羽根の挙動を示し、同図(a)は羽根部材20が同図左方向に移動しガイドピン12bがスリット孔22bの右端縁と当接した状態を示し、同図(b)は、駆動手段が慣性によって羽根部材の緩衝部24を弾性変形させた状態を示す。同図(a)の状態で第1の羽根部材20は、ガイドピン12bの規制により絞り部21が基板10の露光開口11の中心に対し所定量行き過ぎた進入位置で位置規制される。この進入した規制位置は基板10の露光開口11、ガイドピン12bと羽根部材20のスリット孔22bの適正な部品精度により設定される。
【0033】
また同図(b)は閉鎖位置に成った直後の状態を示すもので、ストッパー部材を兼ねるガイドピン12bの中心とスリット孔23の駆動手段60の伝動ピン64aが押圧し作用力を付与する接点とを結ぶ直線上の中間部位に羽根部材の側端部から切り欠かれた凹溝で構成された緩衝部24が形成されている。また、この凹溝の溝はストッパー部材であるガイドピン12bにスリット孔22bの端部が規制された直後に前記駆動手段と駆動連結する前記連結部の接点に加えられ前記ストッパー部材の中点を結ぶ直線方向に作用する駆動手段60の作用力により緩衝部24が図のように弾性変形し得る深さに形成している。この弾性変形により第1の羽根部材20のリバウンドが吸収され、絞り部21の退避位置からのリバウンドを軽減することが出来る。この結果、緩衝部24を有さない場合と比較して絞り部21の露光開口11からの進入距離L3を設計上小さく設定することが出来、装置のコンパクト化を図ることが出来る。
【0034】
次に、図12は第2の羽根部材30の全開位置での羽根の挙動を、図13は全閉位置での羽根の挙動をそれぞれ示している。図示の第2の羽根部材30は基板10に設けたガイドピン12dがストッパー部材を兼ね、このガイドピン12dに係合したスリット孔32cの図示左端縁が全開時の突き当て規制部(当接面)を構成している。尚、このスリット孔32cは右端縁が全閉時の突き当て規制部となる。
【0035】
図12(a)は第2の羽根部材30が同図左方向に移動し開放位置にある状態を示すもので、図中、基板10のガイドピン12dが第2の羽根部材30のストッパー部材を兼ね、このガイドピン12dがスリット孔32cの同図右端と当接状態となっている。このガイドピン12dの規制により絞り部31が基板10の露光開口11に対し所定量退避した位置で位置規制される。この退避した全開位置は基板10の露光開口11、ガイドピン12dと第2の羽根部材30のスリット孔32cの部品精度を管理して適正な位置に設定する。
【0036】
また同図(b)は開放位置に至った直後の状態を示すもので、ストッパー部材を兼ねるガイドピン12dの中心とスリット孔33に嵌合する駆動手段60の伝動ピン64bが押圧し作用力を付与する接点とを結ぶ直線上の中間部位に羽根部材の側端部から切り欠かれた凹溝で構成された緩衝部34が形成されている。つまりこの切欠き溝は、羽根の突当て規制部がストッパー部材(ガイドピン12d)に当接する位置でこの突当て規制部と前記ストッパー部材との係合点(面若しくは線;以下同様)と、前記連結部と前記伝動ピンとの係合点とを結ぶ直線を過ぎる長さに形成してある。
【0037】
従って、この凹溝はストッパー部材であるガイドピン12dにスリット孔32cの端部が規制された直後に前記駆動手段60と駆動連結する前記連結部の接点に駆動手段60から作用する慣性力によって緩衝部34が図のように弾性変形し、この弾性変形によって羽根の突当て規制部はガイドピン12d側に付勢されることとなる。このように弾性変形により第2の羽根部材30のリバウンドが吸収され、絞り部31の退避位置からのリバウンドを軽減することが出来る。この結果、緩衝部34を有さない場合と比較して絞り部31の露光開口11からの退避距離L2を設計上小さく設定することが出来、装置のコンパクト化を図ることが出来る。
【0038】
また一方、図13(a)は第2の羽根部材30が同図右方向に移動し閉鎖位置にある状態を示し、図中、基板10のガイドピン12dが開放位置と同様に羽根部材30のストッパー部材を兼ね、このガイドピン12dがスリット孔32cの同図左端と当接状態となっている。このガイドピン12dの規制により絞り部31が基板10の露光開口11の中心に対し所定量行き過ぎた進入位置で位置規制される。この進入した規制位置は基板10の露光開口11、ガイドピン12dと第2羽根部材30のスリット孔32cの部品精度によって適切な位置に設定する。
【0039】
また同図(b)は閉鎖位置に成った直後の状態を示すもので、ストッパー部材を兼ねるガイドピン12dの中心とスリット孔33の駆動手段60の駆動ピン64bが押圧し作用力を付与する接点とを結ぶ直線上の中間部位に羽根部材の側端部から切り欠かれた凹溝で構成された緩衝部34が形成されている。また、この凹溝の溝はストッパー部材であるガイドピン12dにスリット孔32cの端部が規制された直後に前記駆動手段620と駆動連結する前記連結部の接点に加えられ前記ストッパー部材の中点を結ぶ直線方向に作用する駆動手段60の作用力により緩衝部34が図のように弾性変形し得る深さに形成している。この弾性変形により第2の羽根部材30のリバウンドが吸収され、絞り部31の退避位置からのリバウンドを軽減することが出来る。
【0040】
この結果、緩衝部34を備えない場合と比較して絞り部31の露光開口11からの進入距離L4を設計上小さく設定することが出来、同時に装置のコンパクト化を図ることが可能である。尚、ガイドピン12dが第2の羽根部材30のストッパー部材を兼ねているが、他のガイドピン12a、12cのいずれか、また3つのガイドピン12a、12c、12dが共に、更に新たに基板10にピンを植設しストッパー部材としても良い。また、前記羽根部材20、30のリバウンド防止として各羽根部材に緩衝部24、34を設けたが装置の作動速度、装置のスペック等で異なるリバウンド量に応じ、そのリバウンド量が比較的小さい場合には片方の羽根部材に緩衝部を施すことでも良い。
【0041】
次に上述の光量調整装置を用いた光学機器について説明する。図14はプロジェクタ装置を示し、ケーシング内にRGB3種類の発光LEDを一組とする複数個の白色光源からなる光源部100と、この白色光源からの光をRGB三原色に分光する分光部と、画像データ入力部からの信号に基づいて画像を形成する画像形成部と、上記分光部から画像形成部に照射した光を投光する投光部とから構成されている。
【0042】
一般にプロジェクタへの画像入力の方法としてはRGB信号、コンポーネント信号、ハイビジョン信号、ビデオ信号等があり、RGB信号は例えばコンピュータの画像出力端子からプロジェクタに信号を送る場合であり、コンポーネント信号はDVDプレーヤ、ハイビジョン信号はハイビジョンテレビなどのチューナ、ビデオ信号はビデオデッキなどの出力端子とプロジェクタ装置とを接続する。
【0043】
図14に示すHはプロジェクタ、Sは画像を投影する為のスクリーンである。プロジェクタHには投写のための光源100が備えられ、RGB3種類の発光LEDを一組とする複数個の白色光源からなる発光素子が内蔵されている。そして光源100から射出された光は各素子自体前方に配置された対物レンズ(図示せず)によって集光され、インテグレータレンズ300及び中央部位に矩形の開口400aを備えた遮光板400でほぼ矩形の平行光とし斑の少ない光として照射する。そこで光源100とインテグレータレンズ300との間に前述の光量調整装置600が配置され、その構成は上述の光量調整装置と同一である。
【0044】
そしてこの光量調整装置600で光量調節された光は液晶パネルへの集光効率と周辺光量比を改善するインテグレータレンズ300と遮光板400を通過した光は、反射ミラー120aによりほぼ直角に折り曲げられる。この光は分光ミラーによってR、G、B三原色に分岐されるが、まずG光とR光を透過させB光のみを反射させる特性を持ったダイクロイックミラー100aにより反射分離されたB光は、さらに反射ミラー120bを介して集光レンズ500aに導かれ平行光に集光されて液晶パネル800aを透過しB光の画像として合成プリズム110に至るように構成されている。また、1段目のダイクロイックミラー100aを透過したG光とR光は、R光を透過させG光を反射させる特性を持った2段目のダイクロイックミラー100bにより反射分離されたG光は、集光レンズ500bで平行光に集光され液晶パネル800bを透過しG光の画像として合成プリズム110に至る。
【0045】
同様に2段目のダイクロイックミラー100bを透過したR光は、2枚の反射ミラー120c、120dを介して集光レンズ500cに導かれ平行光に集光されて液晶パネル800cを透過しR光の画像として合成プリズム110に至る。そこで合成プリズム110にはR、G、B三原色が1つに合成されカラー画像として投影レンズ900に導かれ、この投影レンズ900で適宜拡大され前方のスクリーンSに投写される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係る光量調整装置の外観を示す斜視図。
【図2】図1の装置の分解斜視図。
【図3】図1の装置における基板の正面平面図。
【図4】図1の装置における一方の羽根部材の正面平面図。
【図5】図1の装置における他方の羽根部材の正面平面図。
【図6】図1の装置における押え板の正面平面図。
【図7】図1の装置における駆動手段支持フレームの正面平面図。
【図8】図1の装置における駆動手段の正面平面図。
【図9】図1の装置におけるフレームカバーの正面平面図。
【図10】図1の装置における一方の羽根部材の開放状態でのリバウンド吸収状態説明図を示し、(a)は第1の羽根部材が移動し開放位置にある状態であり、(b)は第1の羽根部材が開放位置に至った直後の状態である。
【図11】図1の装置における一方の羽根部材の閉鎖状態でのリバウンド吸収状態説明図を示し、(a)は第1の羽根部材が同図左方向に移動しガイドピンがスリット孔の右端縁と当接した状態であり、(b)は駆動手段が慣性によって第1の羽根部材の緩衝部を弾性変形させた状態である。
【図12】図1の装置における他方の羽根部材の開放状態でのリバウンド吸収状態説明図を示し、(a)は第2の羽根部材が移動し開放位置にある状態であり、(b)は第2の羽根部材が開放位置に至った直後の状態である。
【図13】図1の装置における他方の羽根部材の閉鎖状態でのリバウンド吸収状態説明図を示し、(a)は第2の羽根部材が同図左方向に移動しガイドピンがスリット孔の右端縁と当接した状態であり、(b)は駆動手段が慣性によって第2の羽根部材の緩衝部を弾性変形させた状態である。
【図14】上記光量調整装置を組み込んだ光学機器の一例としてプロジェクタ装置を示す説明図。
【符号の説明】
【0047】
10 基板
12a,12b,12c,12d ガイドピン(ストッパー部材)
20 第1の羽根部材
22a,22b,22c スリット孔
23、33 スリット孔
24、34 緩衝部
30 第2の羽根部材
32a,32b,32c スリット孔
40 押え板
50 駆動手段支持フレーム
60 駆動手段
70 フレームカバー
80 ヨーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光路開口を有する基板と、
上記基板に略々直線方向に移動自在に支持され上記光路開口を開閉する一対の羽根部材と、
上記一対の羽根部材を互いに逆方向に作動する駆動手段と、
上記基板に設けられ上記一対の羽根部材の全開及び/又は全閉位置でそれぞれの羽根部材を突当て規制するストッパー部材とを備えた光量調整装置において、
上記駆動手段は、駆動回転軸と、この駆動回転軸に支持した伝動アーム部材と、この伝動アーム部材に設けた一対の伝動ピンとで構成され、
上記一対の羽根部材は、それぞれ上記伝動ピンと結合する駆動連結部と、上記ストッパー部材と係合する突当て規制部とを有し、
上記一対の羽根部材の少なくとも一方は、上記駆動連結部と上記突当て規制部との間に弾性変形可能な緩衝部を備え、
この緩衝部は上記突当て規制部が上記ストッパー部材に当接する際に弾性変形して該突当て規制部をストッパー部材側に付勢する凹溝で構成されていることを特徴とする光量調整装置。
【請求項2】
前記一対の羽根部材は、それぞれ前記基板に設けたガイドピンと係合するスリット溝を備え、上記ガイドピンで前記ストッパー部材が構成され、上記スリット溝の端面で前記羽根部材の突当て規制部が構成され、
前記緩衝部は上記ストッパー部材を構成するガイドピンと前記駆動連結部との間に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光量調整装置。
【請求項3】
前記羽根部材は、基端部に前記駆動連結部を、先端部に前記光路開口を覆う絞り開口部を有し、この駆動連結部と絞り開口部との間に前記突当て規制部と前記緩衝部が配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光量調整装置。
【請求項4】
前記緩衝部を構成する凹溝は、前記羽根部材の側縁に形成した切欠溝で構成され、
この切欠溝は前記突当て規制部が前記ストッパー部材に規制された状態で前記伝動ピンの作用で羽根部材を弾性変形する長さ形状に構成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかの項に記載の光量調整装置。
【請求項5】
前記凹溝は、前記羽根部材の外縁から羽根中央部に至る切欠き溝で構成され、この切欠き溝は、前記突当て規制部が前記ストッパー部材に当接する位置でこの突当て規制部と前記ストッパー部材との係合点と、前記連結部と前記伝動ピンとの係合点とを結ぶ直線を過ぎる長さに形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかの項に記載の光量調整装置。
【請求項6】
光路開口とこの光路開口に配置され光を集光若しくは投光する光学レンズと、
この光学レンズの結像を撮像する撮像手段又は上記光学レンズに投影する光学手段と、
上記光学レンズを通過する光の光量を調整する光量調整装置とを備えた光学機器に於いて、
前記光量調整装置は、
光路開口を有する基板と、
上記基板に略々直線方向に移動自在に支持され上記光路開口を開閉する一対の羽根部材と、
上記一対の羽根部材を互いに逆方向に作動する駆動手段と、
上記基板に設けられ上記一対の羽根部材の全開及び/又は全閉位置でそれぞれの羽根部材を突当て規制するストッパー部材とを備え、
上記駆動手段は、駆動回転軸と、この駆動回転軸に支持した伝動アーム部材と、この伝動アーム部材に設けた一対の伝動ピンとで構成され、
上記一対の羽根部材は、それぞれ上記伝動ピンと結合する駆動連結部と、上記ストッパー部材と係合する突当て規制部とを有し、
上記一対の羽根部材の少なくとも一方は、上記駆動連結部と上記突当て規制部との間に弾性変形可能な緩衝部を備え、
この緩衝部は上記突当て規制部が上記ストッパー部材に当接する際に弾性変形して該突当て規制部をストッパー部材側に付勢する凹溝で構成されていることを特徴とする光学機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−267227(P2006−267227A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−82078(P2005−82078)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【出願人】(000231589)ニスカ株式会社 (568)
【Fターム(参考)】