説明

光量調整装置及びこれを備えた光学機器

【課題】作動不良、作動不能を起こすことが無く、絞り羽根の円滑な開閉動作が可能な光量調整装置の提供。
【解決手段】この光量調整装置は、露出開口を有し所定の間隔を隔て対峙する一対の基板間に開閉可能に支持され絞り羽根を備え、絞り羽根は露出開口外に位置し二つの第1、第2貫通孔を形成した基端部と、露出開口に進退し絞りを形成する羽根部から成る羽根基板と、羽根基板の基端部を挟み込む第1、第2補助基板を備え、第1補助基板は基端部の第1貫通孔を貫通し一対の基板の一方に支持される第1軸部と、基端部の第2貫通孔に前記第2補助基板の第2軸部が貫通する第1軸孔とを有し、第2補助基板は基端部の第2貫通孔を貫通し一対の基板の他方に支持される第2軸部と、基端部の第2貫通孔に第2補助基板の第2軸部が貫通する第2軸孔とを有すると共に、第1軸部と第2軸部の軸長が一対の基板の間隔より長く設定して成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はビデオカメラ、スチールカメラなどの撮像装置、或いはプロジェクタその他の投影装置等の光学機器に内蔵され、撮影光量、投映光量などの光量を調整する光量調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の光量調整装置は、撮影光路(或いは投影光路)に露出開口を有する基板を配置し、この基板の露出開口周囲に等間隔で複数枚の光量調節羽根を開閉自在に配置して、その露出開口を大口径又は小口径に光量調整する装置として知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、基板に形成した露出開口の周囲に複数枚の羽根を配置し、光路口径を小径から大径まで相似形で開閉する虹彩絞り装置が開示されている。このような絞り装置は、多数枚の羽根で円形状に近い口径で多段階に光量調整する特徴が知られている。
【0004】
同文献には、中央に露出開口を有する光軸方向前後一対のリング状基板の間に、しかも露出開口の周囲に複数の絞り羽根を鱗状に配置し、この複数の絞り羽根を基板の一方に設けた駆動ユニットで同時に開閉する開閉機構が開示されている。
【0005】
具体的に図14及び図15で示す様に、7枚の各絞り羽根104は、樹脂一体成形により羽根部104aと基端部104bが形成されている。その基端部104bの表裏には、一対のリング状基板100、110に軸支される第1の軸部104cと第2の軸部104dが樹脂成形により一体形成されている。その第1の軸部104cはリング状基板110に設けられた軸孔110aに対し軸支され、そのリング状基板110の回転によって露出開口の回りで変位可能で、また第2の軸部104dはリング状基板100に設けられたスリットガイド100aに沿ってスライド可能にガイド支持されている。そして、各絞り羽根104は同時に作動し露出開口を小径から大径まで相似形で開閉し光量調整している。
【0006】
また特許文献2には、特許文献1と同様な開閉機構に利用可能な絞り羽根の他の形成方法が開示されている。
【0007】
その絞りはねは、図16で示す様にレーザー溶着技術を用い製作する方法で、まず羽根基板となる薄いシート材をプレス加工により羽根部105aと基端部105bから成る羽根形状に型抜きする。その型抜きした羽根に上述の第1の軸部104cと第2の軸部104dに相当する軸部105c、105dを突き当て、その接合部105f、105gにレーザーを照射して溶着している。尚、レーザー溶着をするためには型抜きした羽根はレーザー照射熱で溶解する黒色で、軸部105c、105dはレーザーを透過可能な色、材料が選択される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−203576号公報
【特許文献2】特開2009−274217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、まず特許文献1の様に絞り羽根104の羽根部104a、基端部104b、第1・第2の軸部104c、104dを樹脂加工により一体成形する場合には、上述の図17で示すように、羽根部104aの肉厚t1は樹脂成形上の条件により制限を受け、その肉厚t1は0.1mm程度が限界で、特許文献2で示す型抜きする羽根シート材の肉厚t0が0.05mm程度には薄くすることが出来ない。
【0010】
その結果、絞り羽根104の羽根部104aの撓み量が小さ過ぎ、露出開口を小口径に絞った際に羽根同士が重なり、羽根部104aが強引に反らせられることで羽根同士が食付き、円滑に開閉することが出来ない作動不良を起こし易い課題を抱えている。
【0011】
一方、特許文献2の様に絞り羽根105の羽根基板として薄いシート材(肉厚0.05mm程度)をプレス加工により羽根部105aと基端部105bから成る羽根形状に型抜き成形し、軸部105c、105dをレーザー溶着する場合には、絞り羽根105の羽根部105aの肉厚t0を0.05mm程度に薄くすることが出来、十分な撓み量を得易く、小口径の状態で羽根同士が重なり反った状態でも羽根同士間に作用する摩擦ふかを特許文献1の場合と比較して小さく抑えることが出来、羽根同士が食付き難く作動不良はかなり改善される。
【0012】
しかしながら、このレーザー溶着により作られた絞り羽根105には以下の新たな課題が生じている。まず、小口径の状態で羽根部105a同士が重なり、羽根部105aが反り上がる際に、基端部105bと軸部105c、105dの接合部105f、105gに負荷が掛かり、そのレーザー溶着部が剥がれ易いこと。
【0013】
また、上述の様な作動不能とならなくとも図17(a)で示す様に、軸部105c、105dを基端部105bにレーザー溶着する際に、溶着斑で基端部105bの平面に対し軸部105c、105dが傾斜角X1、X2と傾き易く、軸部105c、105dの基準間隔L0に対し拡がり、又は狭く成り、結果、各絞り羽根の開閉角度が異なり絞り開口形状が歪ことで絞り性能を悪化させることが有る。
【0014】
更に、羽根基板として薄いシート材を用いることで、軸部105dを支持する基端部105b自体も薄く撓み易く、図17(b)で示す様に、軸部105dの重みによって基端部105bが撓み、結果、軸部105dの先端が基板100のスリット溝孔100aのスリット面と必要以上に接触することで、作動不良を起こし易い。
【0015】
本発明は、上述の課題に鑑みて成したものので、上述の様な作動不良、作動不能といった問題を起こすことが無く、絞り羽根の円滑な開閉動作が可能な光量調整装置の提供をその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を達成するため請求項1に記載する本発明の光量調整装置では、露出開口を有し所定の間隔を隔て対峙する一対の基板と、前記一対の基板間に開閉可能に支持され、その露出開口の通過光量を調節する複数の絞り羽根と、を備え、前記絞り羽根は、前記露出開口外に位置し少なくとも二つの第1、第2の貫通孔を形成した基端部と、前記露出開口に対し進退し絞り開口を形成する羽根部から成る羽根基板と、前記羽根基板の基端部を挟み込む第1、第2の補助基板とで構成され、前記第1の補助基板は、前記基端部の第1の貫通孔を貫通し前記一対の基板の一方に支持される第1の軸部を有し、前記第2の補助基板は、前記基端部の第2の貫通孔を貫通し前記一対の基板の他方に支持される第2の軸部を有すると共に、前記第1の軸部と前記第2の軸部の軸長が前記一対の基板の間隔より長く設定している。
【0017】
また、請求項2に記載する本発明の光量調整装置では、露出開口を有し所定の間隔を隔て対峙する一対の基板と、前記一対の基板間に開閉可能に支持され、その露出開口の通過光量を調節する複数の絞り羽根と、を備え、前記絞り羽根は、前記露出開口外に位置し少なくとも二つの第1、第2の貫通孔を形成した基端部と、前記露出開口に対し進退し絞り開口を形成する羽根部から成る羽根基板と、前記羽根基板の基端部を挟み込む第1、第2の補助基板とで構成され、前記第1の補助基板は、前記基端部の第1の貫通孔を貫通し前記一対の基板の一方に支持される第1の軸部と、前記基端部の第2の貫通孔に前記第2の補助基板の第2の軸部が貫通する第1の軸孔とを有し、前記第2の補助基板は、前記基端部の第2の貫通孔を貫通し前記一対の基板の他方に支持される第2の軸部と、前記基端部の第2の貫通孔に前記第2の補助基板の第2の軸部が貫通する第2の軸孔とを有すると共に、前記第1の軸部と前記第2の軸部の軸長が前記一対の基板の間隔より長く設定している。
【0018】
また、請求項3に記載する本発明の光量調整装置では、前記請求項1及び2を構成する前記一対の基板の一方の基板は、前記複数の絞り羽根を開閉する駆動リングで、前記駆動リングには前記補助基板の第1の軸部を支持する軸孔を形成し、前記一対の基板の他方の基板は、開放径となる露出開口を設定する地板で、前記地板には前記補助基板の第2の軸部をガイドするスリット溝を形成している。
【0019】
更に、請求項4に記載する本発明の光学機器では、撮影レンズと、その撮影レンズを通過する光量を調整する光量調整装置と、この光量調整装置によって調整され撮影レンズを通過する光量を受光する受光手段とを備えた光学機器であって、前記光量調整装置は前記請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光量調整装置を備えている。
【発明の効果】
【0020】
本発明の請求項1に記載の光量調整装置では、露出開口を有し所定の間隔を隔て対峙する一対の基板と、前記一対の基板間に開閉可能に支持され、その露出開口の通過光量を調節する複数の絞り羽根と、を備え、前記絞り羽根は、前記露出開口外に位置し少なくとも二つの第1、第2の貫通孔を形成した基端部と、前記露出開口に対し進退し絞り開口を形成する羽根部から成る羽根基板と、前記羽根基板の基端部を挟み込む第1、第2の補助基板とで構成され、前記第1の補助基板は、前記基端部の第1の貫通孔を貫通し前記一対の基板の一方に支持される第1の軸部を有し、前記第2の補助基板は、前記基端部の第2の貫通孔を貫通し前記一対の基板の他方に支持される第2の軸部を有すると共に、前記第1の軸部と前記第2の軸部の軸長が前記一対の基板の間隔より長く設定し、第1の補助基板と第2の補助基板と羽根基板を挟み込み、更にその第1の補助基板と第2の補助基板を一対の基板で挟み込む二重の挟み込み構造とすることによって以下の効果を呈する。
【0021】
第1の効果として本発明では、第1、第2の軸部を単に羽根基板の第1、第2の貫通孔にそれぞれ嵌合するだけで済み、従来の様に羽根基板に第1、第2の軸部を接着や溶着によって固定する必要が無い。
【0022】
第2の効果として本発明では、接着や溶着によって固定する必要が無いために、従来製品の様に接着や溶着をするためにその接着面や溶着面が剥がれ難い黒色顔料(カーボンブラック)を素材に練り混んだ特殊な羽根基板を用いざるを得なかったのに対し、従来の絞り装置で仕様する素材表面に黒色顔料(カーボンブラック)をコーティングした一般的な羽根基板をも使うことが出来、コスト面でもメリットが高い。
【0023】
第3の効果として本発明では、第1、第2の軸部が羽根基板に対し軸方向にがたついたとしても絞り羽根の開閉動作には支障が無く、作動不良、作動不能といった問題を起こすことが無く、絞り羽根の円滑な開閉動作が可能な光量調整装置を提供することが出来る。
【0024】
本発明の請求項2に記載の光量調整装置では、露出開口を有し所定の間隔を隔て対峙する一対の基板と、前記一対の基板間に開閉可能に支持され、その露出開口の通過光量を調節する複数の絞り羽根と、を備え、前記絞り羽根は、前記露出開口外に位置し少なくとも二つの第1、第2の貫通孔を形成した基端部と、前記露出開口に対し進退し絞り開口を形成する羽根部から成る羽根基板と、前記羽根基板の基端部を挟み込む第1、第2の補助基板とで構成され、前記第1の補助基板は、前記基端部の第1の貫通孔を貫通し前記一対の基板の一方に支持される第1の軸部と、前記基端部の第2の貫通孔に前記第2の補助基板の第2の軸部が貫通する第1の軸孔とを有し、前記第2の補助基板は、前記基端部の第2の貫通孔を貫通し前記一対の基板の他方に支持される第2の軸部と、前記基端部の第2の貫通孔に前記第2の補助基板の第2の軸部が貫通する第2の軸孔とを有すると共に、前記第1の軸部と前記第2の軸部の軸長が前記一対の基板の間隔より長く設定し、第1の補助基板と第2の補助基板と羽根基板を挟み込み、更にその第1の補助基板と第2の補助基板を一対の基板で挟み込む二重の挟み込み構造とすることによって、上記請求項1で示す第1乃至第3の効果に加え、第1、第2の軸部が互いに逆側から羽根基板を貫通支持し第1、第2の軸部により羽根基板を位置規制することで、羽根基板が第1、第2の軸部に対し位置ズレすることが無く、特に小口径の絞り開口において適正な露出制御が行える光量調整装置を提供することが出来る。
【0025】
本発明の請求項3に記載の光量調整装置では、前記請求項1及び2を構成する前記一対の基板の一方の基板は、前記複数の絞り羽根を開閉する駆動リングで、前記駆動リングには前記補助基板の第1の軸部を支持する軸孔を形成し、前記一対の基板の他方の基板は、開放径となる露出開口を設定する地板で、前記地板には前記補助基板の第2の軸部をガイドするガイド凹溝を形成しているので、このガイド凹溝の底面によるガイド溝を覆うことで地板からの光漏れが防止され、より適正な露出制御が行える光量調整装置を提供することが出来る。
【0026】
本発明の請求項6に記載の光学機器では、上述の請求項1乃至5の光量調整装置を搭載することで、光学機器における露出制御が適正に行うことが出来る効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係わる光量調整装置の組立分解図。
【図2】図1の装置における各部品の構成を説明するための説明図で、(a)は絞り羽根組の斜視説明図、(b)は第2基板(押さえ板)の絞り羽根載置面側から見た平面図。
【図3】図1の装置における各部品の構成を説明するための説明図で、(a)は第1基板(地板)を絞り羽根組側から見た平面図、(b)は第1基板(地板)の斜視説明図。
【図4】図1の装置の組立状態における各部品の配置関係を説明する為の断面図。
【図5】図4に示す絞り羽根組を構成する一枚の絞り羽根の構成を説明する断面図。
【図6】図5を構成する一枚の絞り羽根の分解断面図。
【図7】図5の一枚の絞り羽根の斜視図。
【図8】図4における一枚の絞り羽根の支持状態を説明するための概略図。
【図9】図7の一枚の絞り羽根の他の実施例を示す斜視図。
【図10】図1の装置における絞り羽根の開閉軌跡を示す説明図。
【図11】図1の装置における絞り羽根の作動状態説明図であり、(a)は大口径の状態図、(b)は小口径の状態図。
【図12】図1の装置における電磁駆動ユニットの説明図。
【図13】図1の装置を組み込んだ撮像装置の概念説明図。
【図14】従来の絞りユニットの構成を説明するための要部断面図。
【図15】図14に示す絞り羽根の問題を説明するための断面図。
【図16】他の従来の絞りユニットの構成を説明するための要部断面図。
【図17】図16に示す絞り羽根の問題点を説明するための断面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下図示の好適な実施の形態に基づいて本発明を説明する。図1は本発明に係わる光量調整装置Aの組立分解図である。図1に示すように光量調整装置Aは、第1基板(地板)10と、絞り羽根組20と、第2基板(駆動リング)30と、押さえ部材40で構成されている。そして、絞り羽根組20は第1基板10と第2基板30との間に開閉動可能に組み込まれている。このような構成によって絞り羽根組20は第1基板10と第2基板30にサンドイッチ状に挟持され、このサンドイッチ状にある第1基板10と第2基板30を押さえ部材40と共に固定ビスで一体化(不図示)している。
【0029】
以下、図2乃至図10に基づき各部品に関し説明する。図2(a)は絞り羽根組の斜視説明図、図2(b)は第2基板(押さえ板)の絞り羽根載置面側から見た平面図、図3(a)は第1基板を絞り羽根組側から見た平面図、図3(b)は第1基板(地板)の斜視説明図、図4は図1の装置の組立状態における各部品の配置関係を説明する為の断面図、図5は図4に示す絞り羽根組を構成する一枚の絞り羽根の構成を説明する断面図、図6は図5を構成する一枚の絞り羽根の分解断面図、図7は図5の一枚の絞り羽根の斜視図、図10は図1の装置における絞り羽根の開閉軌跡を示す説明図である。
【0030】
[第1基板の構成]
まず図3に示す第1基板10の構成について説明する。第1基板10は一般に地板と言われ装置の取り付け基準と成る部材である。
【0031】
この地板11は露出開口12を有し、撮像装置の鏡筒形状に応じた形状に構成される。この地板11は金属、樹脂などで装置に強靭性を持たせる材質・寸法に形成されている。図示の地板11は、ガラス繊維などの強化繊維を混入した合成樹脂のモールド成形で形成している。これは地板11を薄型で小型軽量に構成するためである。
【0032】
地板11は中央部に露出開口12が設けられ、開口周縁は絞り羽根21を支持する羽根支持面11x(平坦面若しくは凹凸面)を形成し、この支持面11xに絞り羽根を開閉方向に案内(運動規制)するガイド凹溝13が形成してある。このガイド凹溝13の構成については後述する。図示14は押さえ板41を固定する連結突起であり、突起内部にネジ穴が形成してある。尚、ガイド凹溝13は基板を貫通した孔では無く、絞り羽根21の第2の軸部24aをスライド自在にガイドするガイド面と露出開口12以外から光が漏れない様に遮蔽する底面を形成しているが、従来装置では一般的な貫通したガイド溝であっても良い。
【0033】
[絞り羽根組の構成]
次に絞り羽根組20の構成について図2(a)に基づき説明する。この絞り羽根組20は、図示すように複数の絞り羽根21(21a〜21i)で構成されている。図示の絞り羽根21は、9枚の羽根で構成され、各羽根の形状は同一形状に形成されている。図10に絞り羽根21の作動状態を示すが、基端部21xは上述の地板11に支持される。また羽根の羽根部21yは露出開口12を開閉する。このとき複数の羽根部材の羽根部21は互いに鱗状に重なり合って図11(a)の大口径から図11(b)の小口径の間で露出開口12を絞り込み光量調整を行なっている。
【0034】
この絞り羽根21(21a〜21i)について、図4乃至図7に基づき詳述する。まず、図6で示す様に、絞り羽根21は羽根基板22と補助第1基板23と補助第2基板24から構成されている。羽根基板22は、黒色顔料を練り混んだ樹脂材(ポリエステル)を圧延加工でシート状に成形したシート材をプレス加工により羽根部21yを構成する羽根部22aと基端部21xを構成する基端部22bから成る羽根形状に型抜きしたものである。その基端部22bには補助第1基板23の第1の軸部23aが貫通する位置決め孔22cと補助第2基板24の第2の軸部24aが貫通する位置決め孔22dを形成している。一方、補助第1基板23は、樹脂材(ポリカーボネット)で基端部22bの外形とほぼ相似形に成形したもので、第1の軸部23a(作動ピン)と補助第2基板24の第2の軸部24a(ガイドピン)が貫通する嵌合孔23bを形成されている。また、補助第2基板24は、補助第1基板23を逆さにしたもので同一部材が使用可能で、第2の軸部24a(ガイドピン)と補助第1基板23の第1の軸部23a(作動ピン)が貫通する嵌合孔24bを形成されている。
【0035】
そして、図5及び図7で示す様に、羽根基板22の位置決め孔22cに対し補助第1基板23の第1の軸部23aを差し込み逆側に有る補助第2基板24の嵌合孔24bに嵌合させ、補助第1基板23の第1の軸部23aを羽根基板22の逆側に突出させる。同時に、羽根基板22の位置決め孔22dに対し補助第2基板24の第2の軸部24aを差し込み逆側に有る補助第1基板23の嵌合孔23bに嵌合させ、補助第2基板24の第2の軸部24aを羽根基板22の逆側に突出させる。この様に、羽根基板22を補助第1基板23の第1の軸部23aと補助第2基板24の第2の軸部24aによって互いに相反方向からサンドイッチ支持することで、羽根基板22と補助第1基板23と補助第2基板24とは一体化され一枚の絞り羽根21を構成している。
【0036】
尚、この様に補助第1基板23と補助第2基板24によりサンドイッチ支持された羽根基板22を図4で示す様に第1基板10と第2基板30とで更にサンドイッチ支持することで、補助第1基板23の第1の軸部23aと補助第2基板24の第2の軸部24aのそれぞれは羽根基板22の位置決め孔22c、22dから外れることが無く、従来装置の様に羽根基板22に補助第1基板23と補助第2基板24をそれぞれ溶着や接着する必要が無くなり、作動不良や作動不能といった事態を招くことが無い。
【0037】
このことについて更に図8に基づき詳述する。図8は図4における一枚の絞り羽根の支持状態を説明するための概略図で、図8(a)は一体化した一枚の絞り羽根21が振動、衝撃によって羽根基板22に嵌合した補助第1基板23と補助第2基板24がいずれも羽根基板22から離れた状態を示したもので、図8(b)は一体化した一枚の絞り羽根21が予め設定した基準位置にある状態を示したもので、図8(c)は一体化した一枚の絞り羽根21が装置姿勢の影響を受け第1基板(地板)10側に変位した状態を示したもので、図8(d)は一体化した一枚の絞り羽根21が装置姿勢の影響を受け第2基板(駆動リング)30側に変位した状態を示したものである。図8(a)乃至図8(d)いずれの状態であっても、図示で示す様に補助第1基板23の第1の軸部23aは第2基板(駆動リング)30の軸孔33から外れることが無く、同様に補助第2基板24の第2の軸部24aも第1基板(地板)10のガイド凹溝13から外れることが無い。従って補助第1基板23の第1の軸部23aと補助第2基板24の第2の軸部24aによって嵌合支持される羽根基板22は、図8(a)乃至図8(d)いずれの状態であっても第1基板(地板)10と第2基板(駆動リング)30によって常に確実に支持され、結果、作動不良や作動不能といった事態を招くことが無い。
【0038】
この様な状態を維持させる為に、予め図8(a)に示す様に第1基板(地板)10と第2基板(駆動リング)30の所定な間隔L0に対し、補助第1基板23の第1の軸部23a
の軸長L1と補助第2基板24の第2の軸部24aの軸長L2が共に図8(a)乃至図8(d)いずれの状態であっても第2基板(駆動リング)30の軸孔33と第1基板(地板)10のガイド凹溝13から外れることが無い長さに予め設定してある。
【0039】
<他の実施例>
また、図9で示す様に、羽根基板22の位置決め孔22cに対し補助第1基板23の第1の軸部23aを差し込み嵌合させ、補助第1基板23の第1の軸部23aを羽根基板22の逆側に突出させる。同時に、羽根基板22の位置決め孔22dに対し補助第2基板24の第2の軸部24aを差し込み嵌合させ、補助第2基板24の第2の軸部24aを羽根基板22の逆側に突出させる。この様に、羽根基板22を補助第1基板23の第1の軸部23aと補助第2基板24の第2の軸部24aによって互いに相反方向からサンドイッチ支持することで、羽根基板22と補助第1基板23と補助第2基板24とは一体化され一枚の絞り羽根21を構成することも出来る。但し、補助第1基板23と補助第2基板24はそれぞれ羽根基板22に対し回転可能に支持されることから上記実施例とは異なり、補助基板が回転しても他に影響を与えない形状にする必要がある。
【0040】
[第2基板の構成]
次に第2基板30の構成について図2(b)に基づき説明する。第2基板30は一般に駆動リングと言われ駆動ユニットMの駆動を受け絞り羽根21(21a〜21i)を適宜開閉駆動する部材で有り、この駆動リング31は図1及び図4で示す様に押さえ板41に回動自在に取り付けられている。
【0041】
この駆動リング31は図示すように例えば樹脂のモールド成形で中央部に露出開口12を有するリング形状を成し、露出開口12の周縁にフランジ32と係合突起34が形成してある。フランジ32は押さえ板41の開口43に嵌合し、露出開口12の中心と一致する回転中心で回動する。
【0042】
また駆動リング31は上述のように押さえ板41に回動自在に組み込まれ、その周縁の一部には受動歯35が形成してある。この受動歯35は押さえ板41の取付座46に取付けられた後述する駆動ユニットMの駆動歯車53と噛合する位置に設けられている。
【0043】
更に駆動リング31には、各絞り羽根21a〜21iに植設された補助第1基板23の第1の軸部23a(作動ピン)と嵌合する嵌合孔33が露出開口12の周縁に設けられている。この嵌合孔33は絞り羽根21の枚数に応じて露出開口12の周縁に複数(図示のものは9個所)配置されている。
【0044】
このような構成において駆動リング31は、押さえ基板41に回動自在に支持され、駆動ユニットMの駆動歯車53によって所定角度回転することとなる。そして駆動リング31の回転は各羽根部材21a〜21iに伝達されることとなる。
【0045】
「押さえ板の構成」
押さえ板41は図3に示すように中央部に開口43を有するリング形状に形成され、前述の地板11と略々同一形状に形成されている。図示の押さえ板41は樹脂のモールド成形で、外周の一部に駆動ユニットMの取付座46が設けてある。この取付座46に後述する駆動ユニットMがビスなどで固定される。図示45は押さえ板41を地板11の連結突起14にビス止めする連結孔である。
【0046】
[駆動ユニットの構成]
図12に駆動ユニットMの一実施形態を示す。同図の駆動ユニットMはマグネットロータ50と、ステータコイル51と駆動回転軸52と、駆動歯車53と、ヨーク54で構成される所謂パルスモータである。マグネットロータ50は駆動回転軸52と永久磁石56を一体化して構成され、駆動回転軸52を挟みマグネットロータ50の周囲に等間隔にコアー55にコイル58を巻回してなるステータコイル51が設けられている。永久磁石56は外周にNS極が他極着磁形成され、駆動回転軸52には駆動歯車53が取り付けられている。
【0047】
このように構成された駆動ユニットMは押さえ板41の取付座46にブラケット57をネジなどで固定する。そして駆動歯車53を駆動リング31の受動歯35に噛合する。これによって駆動リング31は、図3時計方向と反時計方向に所定角度往復動し、絞り羽根21を開閉動する。
【0048】
[装置組立て工程の説明]
次に図1乃至図4に従って光量調整装置Aの組み立て工程を説明する。まず図1で示す様に駆動ユニットMを押さえ板41に取り付け、その駆動ユニットMを取り付けた押さえ板41を作業台にセットする。その上から図2(b)で示す様に駆動ユニットMの駆動歯車53に第2基板30の駆動リング31の受動歯35が噛合する様に駆動リング31の係合突起34を押さえ板41の開口43に差し込み、駆動リング31を押さえ板41に回動自在に取り付ける。
【0049】
そして、図2(b)で示す駆動リング31に対し図2(a)で示す様に第1〜第9絞り羽根21a〜21iの各第2の軸部(作動ピン)23を駆動リング31の嵌合孔33に嵌合させながら第1〜第9絞り羽根21a〜21iを順次重ね合わせる。尚、図示する様に最後に重ねる第9絞り羽根21iの羽根部21yを第1絞り羽根21aの基端部21xの下になる様に挿し入れる。この組立を行うことで第1〜第9絞り羽根21a〜21iの何れの絞り羽根21も隣接する絞り羽根21に対し一方の絞り羽根に対しては上側に位置し、他方の絞り羽根に対しては下側に位置する状態と成る所謂鱗状に積み重ねることが出来る。この様に鱗状に積み重ねた絞り羽根を小口径に絞り込むことで図11(b)で示す様に第1〜第9絞り羽根21a〜21iの各羽根部が重ねられることで、図示小口径の状態で第1基板10の支えが無くとも絞り開口平面に対しほぼ平行に保持可能になっている。
【0050】
次いで、図1で示す様にその各絞り羽根21a〜21iの上に第1基板10を重ね合わせ、各羽根部材21の第1の軸部(ガイドピン)24aを地板11のガイド凹溝13内に収納する。
【0051】
最後に、地板11と押さえ板41を固定ビスで固定する。これによって第1基板10(地板11)、絞り羽根組20(絞り羽根21)、第2基板30(駆動リング31)、押さえ部材40(押さえ板41)が図1で示す様に順次上方に重ね合わせられ、装置一体化される。
【0052】
[絞り羽根の開閉動作]
次に、図10及び図11に従って絞り羽根の開閉動作について説明する。図11(a)は露出開口12の周囲に複数の絞り羽根21(21a〜21i)を配置し大口径の状態を示し、図11(b)は小口径の状態を示している。図示のように露出開口12の周囲には、光路中心Oを基準に所定角度隔てた位置(図示のものは9枚の羽根を角度40度ずつ隔てた位置)に複数の絞り羽根21a〜21iが鱗状に配置されている。また図10はこの複数の絞り羽根21(21a〜21i)の1枚の開閉動作状態を示すもので、各絞り羽根21(21a〜21i)は地板11に形成したガイド凹溝13にガイドピン24aが嵌合され、また各絞り羽根21(21a〜21i)に形成された作動ピン23aは駆動リング31の軸孔33に嵌合されている。
【0053】
そして駆動リング31は光路中心Oを中心に前述の駆動ユニットMによって所定角度範囲で時計方向と反時計方向に回転する。このときの羽根の開閉動作を図10に従って説明する。作動ピン23aは駆動リング31の回転で図示光路中心Oから半径Lの円弧軌跡x−xで図示c点からd点に同図時計方向に回転移動する。またガイドピン24aはガイド凹溝13に沿って図示y−7y軌跡でa点からb点に移動する。
【0054】
この作動ピン23aとガイドピン24aの移動で絞り羽根21は同図実線(大口径状態)から同図破線(小口径状態)に開閉動する。なお図示の装置は小口径状態のとき露出開口12は小絞り状態に設定され、大口径状態のときには全開状態に設定されている。従って駆動ユニットMに供給する電流に応じて絞り羽根21は、小絞り状態から全開状態に任意の開口径で開閉し、露出開口12を通過する光量を大小調整することとなる。
【0055】
[光学機器の構成]
次に上述の光量調整装置Aを用いた光学機器について図15に基づいて説明する。スチールカメラ、ビデオカメラ等のカメラ機器のレンズ鏡筒に前述の光量調整装置を組込む。図示Bは撮影光路に配置した前レンズ、Cは後レンズであり、これ等のレンズで被写体像を結像しその結像面に撮像手段Sを配置する。撮像手段SとしてはCCDなどの固体撮像素子或いは感光フィルムなどを用いる。そして制御はCPU制御回路、露出制御回路、及びシャッタ駆動回路で実行するように構成する。図示のSW1はメイン電源スイッチであり、SW2はシャッタレリーズスイッチを示す。カメラ装置としての制御には、この他オートフォーカス回路などが用いられるが良く知られた構成であるので説明を省く。
【0056】
そこでレンズ鏡筒に組込まれた前レンズBと後レンズCとの間に絞り装置Eとシャッタ装置(不図示)を組込む。この絞り装置Eには前述の絞り羽根21及び駆動ユニットMが組込まれている。そこで制御CPUは露出量、シャッタスピードなどの撮影条件を設定し、露出制御回路及びシャッタ駆動回路に指示信号を発する。まず露光量は露出制御回路が制御CPUからの指示信号で駆動装置Mのコイルに所定方向の電流を供給する。すると絞り羽根21は駆動装置Mの回転を駆動歯車53を介して作動ピン23から伝達され、最適露光量に露出開口12を絞る。
【0057】
次いで、レリーズ釦が操作されると、CCDなどの固体撮像素子の場合すでにチャージされている電荷を放出し、撮影を開始する。そこでシャッタ駆動回路は制御CPUから予め設定された露光時間の経過後、シャッタ動作開始の信号を受け駆動装置のコイルにシャッタ閉成方向の電流を供給する。このシャッタ動作の後、撮像手段SがCCD(固体撮像素子)の場合は画像処理回路に画像データが転送されメモリなどに蓄積される。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上説明する光量調整装置は、スチールカメラ、ビデオカメラ等のカメラ機器以外にも、例えば、投影レンズと、その投影レンズを通過する光で被写体を照明するプロジェクタや光学顕微鏡等の光学機器に搭載され利用されることが出来る。
【符号の説明】
【0059】
A 光量調整装置
M 駆動ユニット
10 第1基板(地板)
11 地板
12 露出開口
13 ガイド凹溝
20 絞り羽根組
21 絞り羽根
21x 基端部
21y 羽根部
22 羽根基板
23 補助第1基板
23a 第1の軸部
23b 嵌合孔
24 補助第2基板
24a 第2の軸部
24b 嵌合孔
30 第2基板(駆動リング)
31 駆動リング
33 軸孔
40 押さえ部材
41 押さえ板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
露出開口を有し所定の間隔を隔て対峙する一対の基板と、
前記一対の基板間に開閉可能に支持され、その露出開口の通過光量を調節する複数の絞り羽根と、を備え、
前記絞り羽根は、
前記露出開口外に位置し少なくとも二つの第1、第2の貫通孔を形成した基端部と、前記露出開口に対し進退し絞り開口を形成する羽根部から成る羽根基板と、
前記羽根基板の基端部を挟み込む第1、第2の補助基板とで構成され、
前記第1の補助基板は、前記基端部の第1の貫通孔を貫通し前記一対の基板の一方に支持される第1の軸部を有し、
前記第2の補助基板は、前記基端部の第2の貫通孔を貫通し前記一対の基板の他方に支持される第2の軸部を有すると共に、
前記第1の軸部と前記第2の軸部の軸長が前記一対の基板の間隔より長く設定して成ることを特徴とする光量調整装置。
【請求項2】
露出開口を有し所定の間隔を隔て対峙する一対の基板と、
前記一対の基板間に開閉可能に支持され、その露出開口の通過光量を調節する複数の絞り羽根と、を備え、
前記絞り羽根は、
前記露出開口外に位置し少なくとも二つの第1、第2の貫通孔を形成した基端部と、前記露出開口に対し進退し絞り開口を形成する羽根部から成る羽根基板と、
前記羽根基板の基端部を挟み込む第1、第2の補助基板と、で構成され、
前記第1の補助基板は、前記基端部の第1の貫通孔を貫通し前記一対の基板の一方に支持される第1の軸部と、前記基端部の第2の貫通孔に前記第2の補助基板の第2の軸部が貫通する第1の軸孔とを有し、
前記第2の補助基板は、前記基端部の第2の貫通孔を貫通し前記一対の基板の他方に支持される第2の軸部と、前記基端部の第2の貫通孔に前記第2の補助基板の第2の軸部が貫通する第2の軸孔とを有すると共に、
前記第1の軸部と前記第2の軸部の軸長が前記一対の基板の間隔より長く設定して成ることを特徴とする光量調整装置。
【請求項3】
前記一対の基板の一方の基板は、前記複数の絞り羽根を開閉する駆動リングで、
前記駆動リングには前記補助基板の第1の軸部を支持する軸孔を形成し、
前記一対の基板の他方の基板は、開放径となる露出開口を設定する地板で、
前記地板には前記補助基板の第2の軸部をガイドするガイド凹溝を形成して成る請求項1及び2に記載の光量調整装置。
【請求項4】
撮影レンズと、
その撮影レンズを通過する光量を調整する光量調整装置と、
この光量調整装置によって調整され撮影レンズを通過する光量を受光する受光手段とを備えた光学機器であって、
前記光量調整装置は前記請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光量調整装置を備えたことを特徴とする光学機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−177865(P2012−177865A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41831(P2011−41831)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000231589)ニスカ株式会社 (568)
【Fターム(参考)】