説明

光量調整装置

【課題】 ステッピングモータを用いた光量調整装置においてデジタルカメラなどの省エネ化を計る。
【解決手段】 PM型ステッピングモータと、所定の励磁コイルへの通電により決定されるロータマグネットの初期位置を基準としてロータマグネットの機械角(回転角度)が、ロータマグネットの着磁極数をPとして、機械角<(2×360°)/Pの条件式範囲に制限するストッパーを備えている。該ストッパー位置で絞り開放状態と絞り閉じ状態が位置決めされ2個の電磁石への通電条件で所定の絞り状態となるように絞り羽根を開閉動作させる事ができる絞り機構を備えている。前期ステッピングモータの励磁コイルへの通電条件は、1相励磁位置と2相励磁位置で絞り位置決定後、励磁コイルへの通電量を減少させる省エネモードを備えたこと。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、デジタルカメラなどに用いられる光量調節装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来のビデオカメラなどに用いられている光量調節装置は、駆動コイルへの通電量により2枚の絞り羽根を開閉動作させるガルバノ方式のアクチュエータと絞りの位置検知用のホール素子を備え絞り位置の制御出力を備えたものが公知の技術として広く用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来例のアクチュエータでは、絞りの位置検出用ホール素子やホール素子出力を用いた絞り位置の検出回路や回路調整など部品点数も多く回路も複雑で、絞り設定後も絞り閉じ方向へ付勢するクローズバネ力と常につり合う駆動コイルへの通電が常に必要とされ消費電力を低下できない欠点があった。近年デジタルスチルカメラなどに要求される省エネで安価な光量調節装置を実現する事が困難である。
【0004】
【課題を解決する為の手段】本発明は第一に、外周面に多極着磁した円筒形状のロータマグネットと、電気角で90度の位相差をもってロータマグネットと対抗配置したステータと励磁コイルからなる2個の電磁石を具備し前記各励磁コイルに交番電流を通電する事により正逆回転する2相のPM型ステッピングモータと、所定の励磁コイルへの通電により決定されるロータマグネットの初期位置を基準としてロータマグネットの機械角(回転角度)が、ロータマグネットの着磁極数をPとして、機械角<(2×360°)/Pの条件式範囲に制限するストッパーを備えている。
【0005】該ストッパー位置で絞り開放状態と絞り閉じ状態が位置決めされ2個の電磁石への通電条件で所定の絞り状態となるように絞り羽根を開閉動作させる事ができる構成としたので絞りの位置検出用のセンサーや検出回路を用いず光量調節を行う事ができる。また、前記ステッピングモータの励磁コイルへの通電条件は、1相励磁位置と2相励磁位置で絞り位置決定後、励磁コイルへの通電量を減少させる構成としたので絞り位置保持状態で消費電流を低下させる事ができる。
【0006】
【発明の実施の形態】(実施例)図1から図5に本発明の光量調節装置の動作原理をしめす。
【0007】図1において1は外周面に4極着磁されたロータマグネット、2はロータマグネットに固着された回転軸、3は回転軸2に固着されロータマグネット1とともに旋回するレバー、4は電磁石の一方の磁極となるステータA、5はステータAを励磁して磁力を発生させる励磁コイルA、6はもう一方の電磁石の磁極となるステータB、7はステータBを励磁して磁力を発生させる励磁コイルB、上記2組みの電磁石は電気角で90°の位相差をもって配置してある。
【0008】すなわち励磁コイルAと励磁コイルBへ90°位相差のある交番電流をながす事により発生する回転磁界にロータマグネットが同期して回転する2相のステッピングモータを構成している。
【0009】9は励磁コイルA5に←方向に通電した時の初期状態を基準としロータマグネット1の機械角を((2×360°)/P)以下すなわちP=4であるから機械角<180°の範囲に制限する第1ストッパー、第2ストッパーである。
【0010】図2に第1、第2ストッパーから励磁コイルAに←方向に通電することにより初期位置に設定できる動作を示す。(ロータマグネット1に矢印で第1、第2ストッパーとレバー3が当接する位置関係を代用する。)レバー3が第1ストッパー8に当接している状態から励磁コイルAに→方向に通電するとステータAに図示の如くN・S極に磁化されると図示の回転方向に回転力が生じて初期状態へ復帰する。この関係はレバー3が第2ストッパー8に当接している状態からも同様である。すなわち第1、第2ストッパーで規制するロータマグネットの機械角が((2×360°)/P)以上になると励磁コイルAに→方向に通電しても第1、第2ストッパーから初期状態へ復帰する方向の回転力は生じず逆方向に回転力を生じるため本発明に示すロータマグネット1の機械角を((2×360°)/P)以下にする必要がある。
【0011】図3に初期状態から励磁コイルA/Bの通電によりロータマグネット1が回転位置を設定する動作をしめす。
【0012】(1)→(2)ロータマグネット1を初期位置に復帰させるために励磁コイルAに←方向に通電する。次に励磁コイルBに図示(2)方向に通電するとともに励磁コイルAの通電をOFFするとロータマグネット1は図示(2)の矢印方向(右)へ回転しステータBの磁極とロータマグネットの磁極が対抗した■位置で停止する。
【0013】(1)→(3)ロータマグネット1を初期位置に復帰させるために励磁コイルAに←方向に通電する。次に励磁コイルBに図示(3)の方向に通電するとともに励磁コイルAの通電をOFFするとロータマグネット1は図示(3)の矢印方向(左)へ回転しステータBの磁極とロータマグネットの磁極が対抗した■位置で停止する。回転角の位置規制を■位置■位置よりも狭い範囲に設けておけば3ポジションの位置が励磁コイルA・Bの通電条件だけで決定できる。
【0014】図1〜図3に示す実施例1では励磁コイルの通電は1相励磁で説明してあるが1−2相励磁で行えば更に停止位置を簡単に増やす事ができる。
【0015】図4は2相のステッピングモータの励磁コイルA・Bの制御入力をマイクロステップ(擬似正弦波)駆動入力とした時の通電波形を示す。
【0016】レバー3の初期位置は励磁コイルBがSIN100%の入力となっている時である。
【0017】初期位置に対して電気角でθ°回転させるには図の通電波形からわかるように励磁コイルAと励磁コイルBの通電量の比を、励磁コイルA=SIN(θ―90)
励磁コイルB=SIN(θ)
で求められる比に設定すれば、レバーの停止位置を略制御する事ができる。
【0018】即ち励磁コイルAと励磁コイルBの通電量の比に対応してレバーの位置が決定できるので任意の絞り値に設定が可能になる。また、マイクロステップ駆動波形の分割数は機器の必要精度に応じて選択して決定すれば最適な絞り値の選択が可能である。
【0019】図5は図3の動作説明に対応して光量調節装置に適用した場合の概略構成図である。図5において、10は2相のステッピングモータである。11はステッピングモータの回転軸2に固着されるレバーでステッピングモータ10に設けられている2個のストッパー12とレバー11とでステッピングモータは回転位置規制される。
【0020】上記位置規制範囲は前述の機械角<((2×360°)/P)に設定されている。
【0021】ステッピングモータ10の通電入力は端子10aより励磁コイルA、Bに供給され通電方法は、前述で詳細に説明した通りである。レバー11はステッピングモータ10の回転軸2と圧入或いは接着により固着されていて絞り羽根13の2個所の長溝13cと系合し絞り羽根の直進移動ガイド15によってレバー11が回転する事により絞り羽根13を進退移動できる。閉状態はステッピングモータが励磁コイルAに図3に示す(1)の通電条件により初期位置の状態を決定する。
【0022】次に、励磁コイルBに図3に示す(2)、(3)の通電条件により絞り開放状態・絞り閉じ状態を決定する。絞り開放は(2)の通電条件により絞り羽根13が開動作する事によりレバー11が反時計方向に回転しストッパー12で位置規制され不図示の光学機器の絞り開放径14で開放状態を設定する。この時絞り羽根の13aによってできる開口部は絞り開放径よりも大径となっている。閉じ状態は(3)の通電条件によりレバー11が時計方向に回転しストッパー12で位置規制され絞り閉じ状態が決定される。
【0023】図3と図5の対応は以下の通りである。
【0024】図3 ⇔ 図5初期位置 ⇔ 絞り小絞り位置位置 ⇔ 絞り開放位置位置 ⇔ 絞り閉じ位置図6は、実施例1をデジタルカメラなどに応用した場合のフローチャートを示す。
【0025】ST101電源投入後、モードSWが撮影モードかどうか判断する。ST102撮影モードであれば、絞りを図3、図4に示す条件の初期位置に設定する。ST103絞りを開放位置に設定する。ST104露出決定の為のスイッチであるレリーズ1がonされたかどうかを判断する。ST105レリーズ1onの場合マイコンのROMに予めプログラムされている露出決定処理を実行し絞りを開放か小絞り方向で最適絞り位置に設定する指示を出す。
【0026】ST1061相通電位置か2相通電位置の最適絞り位置の演算を行い所定の絞り位置に設定する。ST107 絞り位置設定後、励磁コイルへの通電量を低下させる(省エネモード)。ST108レリーズ2(シャッター)がonしたかどうかを判断する。NであればST107に戻り省エネモードを継続させる。ST109レリーズ2に同期して撮像素子(CCD)に画像を蓄積させる。ST110絞りを閉位置に駆動しする。
【0027】ST111絞り閉じ位置でステッピングモータへ所定時間通電保持する。ST112絞り閉じ位置でステッピングモータの通電をOFFする。ST113撮像素子(CCD)に蓄積した画像データをカメラ回路のメモリ−に格納する。ST114画像データの読み出しが完了したかどうかを判断する。完了していれば、ST101に戻る。
【0028】
【発明の効果】本発明によれば外周面に多極着磁した円筒形状のロータマグネットと、電気角で90度の位相差をもってロータマグネットと対抗配置したステータと励磁コイルからなる2個の電磁石を具備し前記各励磁コイルに交番電流を通電する事により正逆回転する2相のPM型ステッピングモータと、所定の励磁コイルへの通電により決定されるロータマグネットの初期位置を基準としてロータマグネットの機械角(回転角度)が、ロータマグネットの着磁極数をPとして、機械角<(2×360°)/Pの条件式範囲に制限するストッパーを備えている。
【0029】該ストッパー位置で絞り開放状態と絞り閉じ状態が位置決めされ2個の電磁石への通電条件で所定の絞り状態となるように絞り羽根を開閉動作させる事ができる絞り機構を備えている。
【0030】前記ステッピングモータの励磁コイルへの通電条件は、1相励磁位置と2相励磁位置で絞り位置決定後、励磁コイルへの通電量を減少させる省エネモードを備えているので光量調整装置の消費電力を低下させることができる。
【0031】以上、本提案の光量調節装置をデジタルカメラなどの絞りシャッターとして用いる事により省エネで安価な露出制御システムを構築する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1の実施例の原理図をしめした図
【図2】 第1の実施例の初期位置設定の説明図
【図3】 第1の実施例の動作説明図
【図4】 第1の実施例の通電波形の関係を示した図
【図5】 光量調整装置の構成図
【図6】 実施例1をデジタルカメラに応用した場合の動作フローチャート図
【符号の説明】
1…ロータマグネット
2…回転軸
3・11…レバー
4…ステータA
5…励磁コイルA
6…ステータB
7…励磁コイルB
8…第1ストッパー
9…第2ストッパー
10…ステッピングモータ
12・16…ストッパー
13…絞り羽根
14…絞り開放径
15…絞り羽根直進ガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】外周面に多極着磁した円筒形状のロータマグネットと、電気角で90度の位相差をもってロータマグネットと対抗配置したステータと励磁コイルからなる2個の電磁石を具備し前記各励磁コイルに交番電流を通電する事により正逆回転する2相のPM型ステッピングモータと、所定の励磁コイルへの通電により決定されるロータマグネットの初期位置を基準としてロータマグネットの機械角(回転角度)が、ロータマグネットの着磁極数をPとして、機械角<(2×360°)/Pの条件式範囲に制限するストッパーを備えている。該ストッパー位置で絞り開放状態と絞り閉じ状態が位置決めされ2個の電磁石への通電条件で所定の絞り状態となるように絞り羽根を開閉動作させる事ができる絞り機構を備えている。前記ステッピングモータの励磁コイルへの通電条件は、1相励磁位置と2相励磁位置で絞り位置決定後、励磁コイルへの通電量を減少させる省エネモードを備えた事を特徴とする光量調整装置。
【請求項2】前記光量調節装置を備えたデジタルカメラなどの画像記録装置。

【図1】
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【図4】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2003−330062(P2003−330062A)
【公開日】平成15年11月19日(2003.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−139926(P2002−139926)
【出願日】平成14年5月15日(2002.5.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】