説明

光電センサ並びに物体検出及び距離測定方法

【課題】三次元走査を改良したセンサの提供。
【解決手段】光線を発信するための光送信機12と、光線を周期的に偏向させるために回転軸28を中心として回転可能な偏向ユニット16と、回転軸28に対して横向きの旋回軸を中心として偏向ユニット16を旋回させるための旋回装置と、監視領域で拡散反射又は直反射される光線から受信信号を生成するための光受信機24と、受信信号を参照して監視領域の物体を検出するために構成された評価ユニット26とを有する光電センサ、特にレーザスキャナが記載されている。旋回装置は、偏向ユニット16と結合され、回転軸28に沿った並進運動が偏向ユニット16の旋回運動を引き起こす昇降軸部材36を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1又は15のプレアンブルに記載された、光電センサ並びに物体検出及び距離測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スキャナは多様な監視目的・測定目的のために利用されている。そのために、走査ビーム又はスキャンビームが1つの領域を走査し、拡散反射又は直反射された光を評価する。物体の距離、輪郭、断面形状などに関する情報も得るために、多くの場合、物体の存在だけでなく、その距離も同時に判定される。このような種類の距離測定をするレーザスキャナは、スキャナから対象物までの、及びこれと逆向きの通過時間が測定され、光速に基づいて距離データが算出される、光通過時間原理に基づいて作動する。
【0003】
光経路を判定するために2通りの方法が知られている。パルスベースの方法は、スキャンビームに有意なパターン(例えば数ナノ秒の短いパルス)を印加し、このパターンの受信時点を判定する。位相ベースの方法では、光送信機がスキャンビームを変調し、参照値と受信されたスキャンビームとの間の位相が判定される。
【0004】
公知のレーザスキャナは、監視平面又は監視平面の1つのセグメントを周期的に走査するために、回転ミラー又はポリゴンホイールを有している。しかし多くの用途は、1つの面だけでなく、三次元の空間領域の走査を必要とする。従来の1つの解決策は、DE 197 41 730 B4に記載されているように、レーザスキャナと物体との間で相対運動を行うことにある。このことは著しいコストを必要とし、多くの用途はそのようなコントロールされた相対運動にはそもそも適していない。
【0005】
DE 10 2008 032 216 A1では、送信機、受信機、回転ミラーを含めたスキャンユニット全体が偏向テーブルの上に配置されている。そして偏向テーブルが旋回することでスキャン平面が変わり、そのようにして、全体として三次元の空間領域を監視する。このことは偏向テーブルのために著しい追加コストを必要とし、旋回運動はスキャンユニットを全体として、及びこれに伴って比較的大きな質量として動かさなくてはならない。そのうえ、一緒に動く光送信機と光受信機への無線のデータ伝送が必要である。
【0006】
さらに別の解決の取り組みとして、第2の方向へのスキャンビームの偏向を行わせる追加の偏向ユニットを利用することが知られている。例えばDE 20 2009 012 114 U1では、回転ミラーの360°の走査領域が分割される。前側の角度領域では、従来の方法で1つの面が走査される。後側の角度領域では走査ビームが複数回だけ方向転換してから、回転ミラーの偏向方向に対して横向きの方向に旋回する旋回ミラーに当たる。このように後側の角度領域を介して、面に代えて空間部分が走査される。しかし追加の旋回ミラーは設計上、小さな開口角しか有していない。しかも2つのミラーを使用することで、いっそう高いコストといっそう広い所要スペースが生じ、そのために高い光学的・機械的な費用、追加の送信信号損失と受信信号損失、及び送信チャネルと受信チャネルの分離にあたっての困難が生じる。
【0007】
DE 197 27 792 C2は追加の旋回ミラーを使用するのではなく、回転軸に対して垂直な旋回軸を中心として追加的に旋回可能である回転ミラーを利用する。互いに垂直に向き互いに噛み合う2つの歯車を介して、ただ1つの駆動モータが回転軸にも旋回軸にも作用する。伝動装置と追加の調節モータを用いて、回転運動と旋回運動との間の位相角を変えることができ、そのようにして、回転ミラーの追加の旋回を実現するとともに、三次元の空間領域を走査する。このことは、伝動装置や歯車が設計上、摩耗なしではあり得ないという理由から不都合である。さらに、偏向ユニットのような光学的に繊細な素子がすぐ近傍に配置されているこれらのコンポーネントに、潤滑剤やグリースを使用しなくてはならない。このことは光学経路における汚れにつながりかねず、そのために、保守整備の必要あるいは器具の不具合を引き起こしかねない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】DE 197 41 730 B4
【特許文献2】DE 10 2008 032 216 A1
【特許文献3】DE 20 2009 012 114 U1
【特許文献4】DE 197 27 792 C2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明の課題は、当分野に属するセンサについて、三次元走査の改良された可能性を見出すことにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、請求項1又は15に記載の光電センサ並びに物体検出及び距離測定方法によって解決される。このとき本発明が前提とする基本思想は、監視平面を走査するために通常設けられている偏向ユニットを追加的に可変の旋回角だけ傾動させ、それにより三次元の空間領域を検出するというものである。旋回角を調節するために、回転運動を利用する歯車や伝動装置といった摩耗が生じやすいコンポーネントではなく、それに代えて本発明では、回転軸に沿った並進運動が利用される。そのために昇降軸部材が、伝動装置なしに、偏向ユニットと結合されて上下動する。
【0011】
本発明は、ただ1つのミラーを用いて三次元の走査をするための簡素な光学的・機械的な構造が可能であるという利点を有している。少ない費用と所要スペースは、最大360°の広い3D開口角における低コストでコンパクトな解決法につながる。回転運動と旋回運動のための駆動ユニットは定置であってよいので、ケーブルレスのエネルギー供給は必要ない。送信チャネルと受信チャネルの分離が簡単な仕方で可能である。運動させるべき質量は小さいままに保たれる。偏向ユニットの運動の自由度が増大するにもかかわらず、システムは摩耗が少なく保たれる。
【0012】
昇降軸部材は回転軸と平行に配置され、特に回転軸上に配置されるのが好ましく、偏向ユニットの回転運動を一緒に行うことはない。それに応じて昇降軸部材は、回転軸の上で並進運動だけを行う定置の軸を形成する。そのために昇降軸は長く延びるように、あるいはロッドとして構成されるのが好ましい。しかしながら、偏向ユニットへの旋回運動の伝達が並進運動に基づいて行われるのでありさえすれば、これ以外の幾何形状も同様に考えられる。
【0013】
昇降軸部材は、偏向ユニットの方を向いた端部に、偏向ユニットと一緒に回転し、特にボールベアリングを介して昇降軸部材と結合された回転ディスク部材を有しているのが好ましい。回転ディスク部材により、偏向ユニットの回転にもかかわらず、並進運動によって旋回運動を伝達することができる。
【0014】
回転ディスク部材は、回転軸に対する垂線に対して一定の角度だけ傾動しているのが好ましい。別案として、回転ディスク部材が回転軸に対して垂直に向いているとき、昇降軸部材の所与の位置で、偏向ユニットの360°回転によって1つの平面がスキャンされる。それに対して、傾動した回転ディスク部材の場合には、この平面はほぼ正弦波形に湾曲し、もしくは回転軸と平行な面に投影したときに一種の三日月形を形成する。このような現象を利用して、センサの傾きを補正することができ、又は、例えば移動体に応用する場合には側方の領域で三日月形によって、偏向ユニットを1回転させるだけでそのたびに広い視野を検出することができる。傾動のみによって得られるこのような効果は、旋回装置の駆動部を作用させなくても得られる。基本構造に関してヘリコプターの揺動板で知られているように、回転ディスク部材とその連結部をさらに高いコストをかけて構成することも考えられる。それにより、回転ディスク部材の傾動角を所望の角度に合わせて調節することができ、あるいは、作動時に周期的に変えることさえできる。
【0015】
昇降軸部材と偏向ユニットの間の結合部としてロッカーアームが設けられているのが好ましく、このロッカーアームは、一方の端部では偏向ユニットに偏心的に取り付けられるとともに、他方の端部では昇降軸部材に、特に回転ディスク部材に取り付けられている。このようにロッカーアームは、昇降軸部材の並進運動を偏向ユニットの旋回角の相応の変化に変換する。
【0016】
ロッカーアームはジョイントを介して、特に板ばねジョイント又はフィルムジョイントを介して、偏向ユニット及び/又は昇降軸部材に取り付けられているのが好ましい。このようなジョイントは、偏向ユニットのさまざまな旋回角に応じて、ロッカーアームがさまざまに異なる位置をとることができるように作用する。
【0017】
旋回装置は、旋回駆動部の回転運動を昇降軸部材の並進運動に変換するために、カムディスクを備える旋回駆動部を有しているのが好ましい。駆動部は例えばステッピングモータである。
【0018】
昇降軸部材は、カムディスクを連結するための連結ユニットを有する平行案内部に支承されているのが好ましい。この構成では、カムディスクの回転運動に応じて回転軸に沿った昇降軸部材の位置が変化するが、平行案内部が設けられているため、回転軸に対して横向きの成分が生じることがない。
【0019】
連結ユニットは、カムディスクに平行案内部をクリアランスなしに連結するための押圧部材を有しており、ならびに、押圧部材による旋回駆動部への負荷を軽減するために、押圧部材と旋回駆動部の間に対応支持部材を有しているのが好ましい。それにより、旋回駆動部のトルク全体を旋回運動のために利用することができる。この連結により、きわめて摩耗の少ない伝達及びこれに伴って非常に高い位置変化サイクル数が得られる。
【0020】
偏向ユニットは、一緒に回転をする送信鏡胴を有しているのが好ましい。それにより送信チャネルを遮蔽し、受信チャネルへのクロストークを防止し、あるいは少なくとも抑制することができる。一緒に回転をする送信鏡胴の手前には、光送信機と偏向ユニットの間の送信経路部分のための定置の送信鏡胴が配置されているのが特別に好ましい。前者の送信鏡胴は偏向ユニットと固定的に結合されているのが好ましく、それによって回転運動と旋回運動をどちらも一緒に行う。
【0021】
センサは、偏向ユニットが回転運動や旋回運動をするときに送信鏡胴が当接する球面状の前面ガラスを有しているのが好ましい。従来使用されている円錐台形の前面ガラスでは、旋回位置によっては送信鏡胴に対して大きな隙間があくことになるため、送信光が前面ガラスに反射されて受信チャネルへ到達することになる。それに対して、球面状の前面ガラスは送信鏡胴の運動軌道に添うように曲がり、そのようにして、こうした前面ガラス反射による光学的なクロストークを防止する。
【0022】
回転軸を中心とする偏向ユニットの回転運動のために、中空シャフトを備える回転駆動部が設けられ、昇降軸部材は中空シャフトの中に配置されているのが好ましい。それにより、旋回運動と回転運動を特別にコンパクトに具体化することができる。
【0023】
特に偏向ユニットを対向する2つの側面でつかむ保持アームを備える、偏心ユニットのための保持部が中空シャフトと結合されているのが好ましい。それにより、回転運動が回転駆動部から偏向ユニットへ伝達される。
【0024】
偏向ユニット、送信鏡胴、保持部、ロッカーアーム、回転ディスク、及び/又は昇降軸部材はプラスチックで製作されているのが好ましい。それにより、一緒に回転部品あるいは移動する部品の特別に小さい質量を実現することができる。これ以外のコンポーネントも、軽量な機器を得るためにプラスチックで製作されるのが好ましい。
【0025】
評価ユニットは、旋回装置への作用によって旋回軸を中心とする偏向ユニットの優先的な角度位置を他の角度位置よりも頻繁に、又は長時間のあいだ設定するために構成されているのが好ましい。3Dレーザスキャナは、一般に、3Dカメラよりも画像検出速度が低い。可能な検出領域全体が常時走査されるのではなく、時間的にクリティカルな、もしくはその他の理由により特別に重要な角度領域(「関心領域」)がより頻繁に計測されることによって、センサの反応時間が高速化する。
【0026】
さらに評価ユニットは、受信信号を参照して、光線の送信受信の間の光通過時間を、すなわち検出された物体の距離を判定するために構成されているのが好ましい。さらに、偏向ユニットの最新の角度位置を検出するために角度測定装置が使用されるのが好ましい。このとき旋回角は、昇降軸部材の昇降との一意の関係を通じて検出し、又はカムディスクの位置を通じて検出することができる。回転角、旋回角、及び距離により、位置決定及び/又は輪郭検出のために利用することができる、検出された物体の完全な3D座標を提供することができる。
【0027】
本発明の方法は上記に類似する仕方で改良することができ、その際に、類似の利点を示す。そのような好ましい構成要件は、独立請求項に後続する従属請求項に一例として、ただし完結的にではなく記載されている。
【0028】
次に、実施形態を用いて添付の図面を参照しながら、その他の構成要件や利点に関しても本発明を詳しく説明する。図面の各図は次のものを示している。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態の走査ユニットを示す三次元の図。
【図2】図1の走査ユニットを示す断面図。
【図3】図2の断面図に対して垂直に図1の走査ユニットを示す別の断面図。
【図4】偏向ユニットの旋回角位置が変化したときの、図2に対応する走査ユニットの断面図。
【図5】偏向ユニットの旋回角位置がさらに変化したときの、図2に対応する走査ユニットの断面図。
【図6】図2に円で示している領域の部分拡大図。
【図7】図6の図面を示す、同図に符号AAで示す線に沿った断面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、本発明によるセンサの実施形態として、レーザスキャナの走査ユニット10を三次元の図面で示している。外部からは見ることができない部材も理解できるようにするために、以下の説明は、図2の第1の断面図と、第1の断面に対して垂直に、かつ中心部からずれた視点で見た図3の第2の断面図も同時に援用することとし、どの図面でも同じ符号は同じ構成要素を表している。
【0031】
例えばレーザのような光送信機12により生成される光線が送信光学系14によって集束され、次いで、可動の偏向ユニット16によって監視領域へと偏向される。レーザスキャナの内部では、こうして成立する送信経路は、受信経路への光学的なクロストークを防止するために、2部分からなる送信鏡胴18,20により遮蔽されている。送信鏡胴の定置の部分18は光送信機12に直接後続しており、送信光学系14ならびに偏向ユニット16までの送信経路を取り囲んでいる。送信鏡胴の一緒に回転をする部分20は偏向ユニット16に配置されており、これと一緒に動いて、偏向ユニットの位置とともに変化する送信経路を取り囲む。一緒に回転をする部分20は、縦長で幅が狭く、角が丸くなった外側輪郭を持つ開口部を有している。
【0032】
発信された光線が監視領域で物体に当たると、光の一部が拡散反射又は直反射されて、受信経路で再びレーザスキャナまで戻ってくる。この光の部分は同じく偏向ユニット16に当たって方向転換し、次いで受信光学系22によって、例えばフォトダイオードのような光受信機24へ集束される。
【0033】
光受信機24は入射光に基づいて受信信号を生起し、引き続いてこの受信信号が電子工学的に評価される。その役目をする評価ユニット26は、図面では種々の回路基板構造の形態で示されており、電力供給、データ交換、制御等のために追加の接続部を有しているが、その詳細は本発明の理解にとっては重要ではない。
【0034】
評価ユニット26では、監視領域の物体に当たって拡散反射された光線の発信から光の一部の受信までの光通過時間が判定される。この光通過時間を基にして、光速を用いて、レーザスキャナから物体までの距離が推定される。
【0035】
偏向ユニット16は、回転軸28を中心として連続的に回転する回転ミラーとして構成されているのが好ましい。そのために偏向ユニット16は、保持部30を介して、図示しない駆動部の中空シャフト32と接続されている。通常、回転軸28は同時に光送信機12及び光受信機24の光軸でもある。回転軸28に対する偏向ユニット16のそのつどの角度位置は、同じく図示しないエンコーダを介して検出される。光送信機12により生成される光線は、このような回転運動によって走査平面をくまなく照らす。
【0036】
回転軸28を中心とする回転に追加して、偏向ユニット16は回転軸28に対して垂直を向く旋回軸34を中心として旋回する。この旋回運動を図解するために、図4と図5には走査ユニット10が図2に対応する2つの別の断面図で示されており、ここでは偏向ユニットは−15°と+15°の旋回角をとっている。
【0037】
旋回軸34は、例えば偏向ユニット16における保持部30の2つの保持アームの作用点によって規定される。それにより、回転軸28を中心とする回転運動に基づいて生じる走査平面が傾動する。したがって、旋回速度に対する回転速度の比率に応じて、走査をする光線のさまざまに異なる軌道で三次元の空間領域が監視される。例えば、旋回速度が回転速度に対して比較的遅いとき、走査はいわば螺旋状になり、このとき速度比率が螺旋線の稠密さを規定する。
【0038】
偏向ユニット16の旋回は、回転軸28に沿って上下動をする旋回ユニットによって行われる。中空シャフト32の内部の回転をしない昇降軸部材36の並進運動が、偏向ユニット16に偏心的に取り付けられたロッカーアーム38によって、旋回運動へと変換される。一緒に回転をするロッカーアーム38と、並進運動を除いて定置である昇降軸部材36との間の中間部材としての役目をするのが、偏向ユニット16のほうを向く昇降軸部材36の端部にボールベアリングを備える回転ディスク部材40である。ロッカーアーム38は、さまざまな旋回角のためのさまざまな位置をクリアランスなくとれるようにするために、両方の端部で例えば板ばねジョイントやフィルムジョイントのようなジョイントを介して結合されている。ロッカーアーム38は、疲労破壊を回避するために、結合個所でわずかな撓みしか生じないように構成されて取り付けられている。
【0039】
偏向ユニットの旋回角も、図示しない角度エンコーダによって検出される。別案として、旋回角と固定的な関係にある昇降軸部材の位置が、直接的又は間接的に判定される。
【0040】
発信された光線のこのようにして拡散反射された光の一部が光受信機24で記録されると、回転角と旋回角、ならびに光通過時間法を通じて検出物体の距離も評価装置26で利用することができる。それにより、物体の位置あるいは物体の輪郭が三次元の球面座標で検出される。
【0041】
送信鏡胴の可動の部分20は、レーザスキャナの図面には示さない前面ガラスに直接当接しているが、それは前面ガラスからの反射光が光受信機24の受信経路に入るのを回避するためである。偏向ユニット16のどの旋回角でもこのことが保証されるようにするために、前面ガラスは球面状に構成されている。そうすれば、送信鏡胴の可動の部分20の丸くなった外側輪郭が、球面状の前面ガラスの内面と常に良好に接触する。
【0042】
昇降軸部材36の並進運動は、例えばステッピングモータのような旋回駆動部42によって生成される。詳しい説明のために、図6は、図2に円で示す区域を拡大して示している。図7は、線AAに沿った図6の図面の断面図を示している。
【0043】
旋回駆動部42のシャフト44が、カムディスク46を回転運動させる。昇降軸部材36は、カムディスク46に連結された平行案内部48に支承されている。このように、シャフト44の回転運動はカムディスク46を介して、平行案内部48により、昇降軸部材36の並進運動へと変換される。
【0044】
平行案内部48へのカムディスク46の連結は、弾性的に支持された押圧部材50と、カムディスク46の勾配に対して垂直な方向に押圧部材50と向かい合って配置された対応支持部材52とを介して行われる。押圧部材50と対応支持部材52はいずれもボールベアリングを含んでいる。こうして構成される二重のボールベアリング案内部で、カムディスク46が回転する。押圧部材50を介して、そのボールベアリングはカムディスク46に弾性的に押しつけられ、そのようにして連結のクリアランスのなさを保証する。対応支持部材52は、押圧部材50により生成される力を受け止めて、これをシャフト44から逸らす。それにより、旋回駆動部42に対してモーメントがなく、クリアランスもない、平行案内部48との連結が実現される。
【0045】
このように回転角と旋回角を変えることで、三次元空間のさまざまな点を検出することができる。通常、軸28を中心とする連続的な回転運動が、偏向ユニット16の可能な傾動範囲にわたっての旋回角の周期的な変化と重ね合わされ、そのようにして空間領域が規則的に走査される。あるいは、特定の空間領域又は特定の走査平面を高いレートで的確に走査するために、狭い範囲にわたってのみ旋回角を的確に変えたり、希望する値に合わせて調整することも考えられる。このような特別に関心の対象となる空間領域(関心領域)は、例えば車両の自動式のナビゲーションのときに生じる場合がある。その場合、積載荷重や起伏がさまざまであるため、中心の走査平面が中間の旋回角で車両と平行になると考えることは必ずしもできない。このような車両の傾動を、適切な旋回角領域の設定によって補正することができる。一般に、利用可能な角度範囲全体にわたっての規則的な旋回運動から意図的に外すことで、関心のある区域の選択を行うことができ、その区域が高い走査レートで検出される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光線を発信するための光送信機(12)と、光線を周期的に偏向させるために回転軸(28)を中心として回転可能な偏向ユニット(16)と、前記回転軸(28)に対して横向きの旋回軸(34)を中心として前記偏向ユニット(16)を旋回させるための旋回装置と、監視領域で拡散反射又は直反射される光線から受信信号を生成するための光受信機(24)と、受信信号を参照して監視領域の物体を検出するために構成された評価ユニット(26)とを有する光電センサ、特にレーザスキャナにおいて、
前記旋回装置は、前記偏向ユニット(16)と結合され、前記回転軸(28)に沿った並進運動が前記偏向ユニット(16)の旋回運動を引き起こす昇降軸部材(36)を有していることを特徴とする光電センサ。
【請求項2】
前記昇降軸部材(36)は前記回転軸(28)と平行に、特に前記回転軸(28)の上に配置されており、前記偏向ユニット(16)の回転運動を一緒に行わないことを特徴とする、請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
前記昇降軸部材(36)は前記偏向ユニット(16)の方を向いた端部に、前記偏向ユニット(16)と一緒に回転し、特にボールベアリングを介して前記昇降軸部材(36)と結合された回転ディスク部材(40)を有していることを特徴とする、請求項1又は2に記載のセンサ。
【請求項4】
前記回転ディスク部材(40)は前記回転軸(28)に対する垂線に対して一定の角度だけ傾動している、請求項1〜3のうちいずれか1項に記載のセンサ。
【請求項5】
前記昇降軸部材(36)と前記偏向ユニット(16)の間の結合部としてロッカーアーム(38)が設けられており、該ロッカーアームはその一方の端部で前記偏向ユニット(16)に偏心的に取り付けられるとともに、他方の端部では前記昇降軸部材(36)に、特に前記回転ディスク部材(40)に取り付けられている、請求項1〜4のうちいずれか1項に記載のセンサ。
【請求項6】
前記ロッカーアーム(38)はジョイントを介して、特に板ばねジョイント又はフィルムジョイントを介して、前記偏向ユニット(16)及び/又は前記昇降軸部材(36)に取り付けられている、請求項5に記載のセンサ。
【請求項7】
前記旋回装置はカムディスク(46)を備える旋回駆動部(42)を有しており、それにより前記旋回駆動部の回転運動を前記昇降軸部材(36)の並進運動に変換する、請求項1〜6のうちいずれか1項に記載のセンサ。
【請求項8】
前記昇降軸部材(36)は前記カムディスク(46)の連結のための連結ユニット(50,52)を有する平行案内部(48)に支承されている、請求項7に記載のセンサ。
【請求項9】
前記連結ユニット(50,52)は前記カムディスク(46)に前記平行案内部(48)をクリアランスなしに連結するための押圧部材(50)を有しており、ならびに、前記押圧部材(50)による前記旋回駆動部(42)への負荷を軽減するために前記押圧部材(50)と前記旋回駆動部(42)の間に対応支持部材(52)を有している、請求項8に記載のセンサ。
【請求項10】
前記偏向ユニット(16)は一緒に回転する送信鏡胴(18,20)を有しており、特に前記センサは球面状の前面ガラスを有しており、前記送信鏡胴(18,20)は前記偏向ユニット(16)が回転運動及び旋回運動をするときに該前面ガラスに当接する、請求項1〜9のうちいずれか1項に記載のセンサ。
【請求項11】
前記回転軸(28)を中心とする前記偏向ユニット(16)の回転運動のために中空シャフト(32)を備える回転駆動部が設けられており、前記昇降軸部材(36)は前記中空シャフト(32)の中に配置されている、請求項1〜10のうちいずれか1項に記載のセンサ。
【請求項12】
前記偏向ユニット(16)のための保持部(30)が、特に前記偏向ユニット(16)を対向する2つの側面でつかむ保持アームにより、前記中空シャフト(32)と結合されている、請求項11に記載のセンサ。
【請求項13】
前記偏向ユニット(16)、前記送信鏡胴(18,20)、前記保持部(30)、前記ロッカーアーム(38)、前記回転ディスク(40)、及び/又は前記昇降軸部材(36)はプラスチックで製作されている、請求項1〜12のうちいずれか1項に記載のセンサ。
【請求項14】
前記評価ユニット(26)は前記旋回装置への作用によって前記旋回軸を中心とする前記偏向ユニット(16)の優先的な角度位置を他の角度位置よりも頻繁に、もしくは長時間にわたって設定するために構成されている、請求項1〜13のうちいずれか1項に記載のセンサ。
【請求項15】
監視領域の物体の検出と距離を測定する方法であって、光線が監視領域へ発信され、拡散反射又は直反射された光線の光部分が検出されて受信信号に変換され、光線の発信と光部分の受信との間の光通過時間から物体の距離が判定され、光線は監視領域としての三次元の空間領域を周期的に走査し、その走査は回転軸(28)を中心として回転するとともに前記回転軸(28)に対して横向きの旋回軸(34)を中心として旋回する偏向ユニット(16)を介して光線が案内されることによって行われるような方法において、
前記偏向ユニット(16)は、旋回のために前記回転軸(28)に沿って並進運動を行う昇降軸部材(36)を備える旋回装置によって旋回することを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−24867(P2013−24867A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−153611(P2012−153611)
【出願日】平成24年7月9日(2012.7.9)
【出願人】(591005615)ジック アーゲー (34)
【Fターム(参考)】