説明

光電圧センサ

【課題】 空間に配置する光学部品の点数を減らし、空間の伝播距離をより短くすることで結合効率の高い光電圧センサを提供することを目的とする。
【解決手段】 送光側シングルモードファイバと、送光コリメータと、偏光子と、λ/4素子と、ポッケルス素子と、検光子と、受光コリメータと、受光側シングルモードファイバとを具備する光電圧センサにおいて、前記受光コリメータに内蔵する光ファイバは偏波面保存ファイバであり、前記検光子はファイバ偏光子であり、このファイバ偏光子の一端の光学軸は、前記偏波面保持ファイバの光学軸と一致させて融着接続され、前記光ファイバ偏光子の他端の光学軸は、前記受光側シングルモードファイバに融着接続されていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は光電圧センサに関する。
【背景技術】
【0002】
アナログ信号によるセンシングでは、一般にマルチモードファイバが信号伝送に使用されている。この場合、信号の伝送距離が比較的に短いので、光学損失よりもアライメントの容易さが重視され、シングルモードファイバよりマルチモードファイバが採用されている。
【0003】
一方、最近では、センサで得られた光信号を長距離伝送させ、センサの近くには電源や信号処理回路を設置しないニーズが高まっている。この場合、伝送距離が長くなると光ファイバを敷設するコストが高くなるので、既に敷設された光ファイバ、特に通信用に敷設されているシングルモードファイバを利用することが要求される。したがって、センサ自体もシングルモードファイバや偏波面保持ファイバを用いて構成する必要がある(例えば、参照文献1参照)。
【0004】
しかしながら、シングルモードファイバを構成要素とするセンサは、シングルモードファイバから空間に出射した光は、いくつかの光学部品を経由して、測定による情報を重畳させた後、空間から再びシングルモードファイバに入射するが、この際、空間の伝播距離が長くなることによるビーム径の広がりによって、受光時の結合が低下し、十分なS/Nが得られないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−824892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、空間に配置する光学部品の点数を減らし、空間の伝播距離をより短くすることで結合効率の高い光電圧センサを提供し、既設のシングルモードファイバを有効に活用できる光電圧センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、実施形態の光電圧センサは、光源より伝搬してきた光をセンサに導く送光側シングルモードファイバと、この送光側シングルモードファイバを伝搬した光を平行な光として空間に出射する送光コリメータと、この送光コリメータから出た光を直線偏光に変換する偏光子と、この偏光子から出射した光を円偏光に変換するλ/4素子と、このλ/4素子から出射した光に印加電圧に応じたポッケルス効果により変調を与えるポッケルス素子と、このポッケルス素子から出射した光を内蔵された光ファイバに結合する受光コリメータと、この受光コリメータから出た光の一成分を取り出す光ファイバ偏光子と、この光ファイバ偏光子で受けた光を光電変換素子を含む受信器に接続された光ファイバに導く受光側シングルモードファイバと、を具備し、前記光ファイバ偏光子の一端の光学軸は、前記受光コリメータに内蔵された光ファイバの光学軸と一致させて融着接続され、前記光ファイバ偏光子の他端の光学軸は、前記受光側シングルモードファイバに融着接続されていることを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態による光電圧センサの構成を示す概略図。
【図2】第1の実施形態による光電圧センサ内部の構成を示す概略図。
【図3】偏波面保存ファイバの融着の角度を示す概略図。
【図4】第2の実施形態による光電圧センサ内部の構成を示す概略図。
【図5】第2の実施形態による光電圧センサ内部の構成を示す概略図。
【図6】偏波面保存ファイバの融着の角度を示す概略図。
【図7】第3の実施形態による光電圧センサ内部の構成を示す概略図。
【図8】第4の実施形態による光電圧センサ内部の構成を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明を実施するための実施形態について説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
第1の実施形態の光電圧センサを図1、図2および図3を参照して説明する。
【0011】
図1に示すように、スーパールミネッセントダイオード(SLD)を用いた光源1より出射した光は、送光側シングルモードファイバ2a、既設の光ファイバケーブル3内の送光側シングルモードファイバ3a、送光側シングルモードファイバ4aを経由して、センサ5に入射する。被測定電圧による変調を受けた光は、受光側シングルモードファイバ4b、既設の光ファイバーケーブル3内の受光側シングルモードファイバ3b、受光側シングルモードファイバ2bを介して、光電変換素子6に入射し、所定の信号処理を行い出力を得る。なお、上記ファイバ間(図1の×印部)は、融着により接続される。
【0012】
図2を用いてセンサ5内部の構造を説明する。なお、図中の矢印は、偏波面の振動方向を示す。センサ5では、送光側シングルモードファイバ4aは、送光コリメータ7に内蔵された光ファイバ7aに融着接続される。送光コリメータ7を出射した空間伝播光は偏光子8を通過し直線偏光となり、λ/4素子9を通過し円偏光となり、被測定電圧が印加されたポッケルス素子10に入射する。ポッケルス素子10で被測定電圧により変調を受けた光は受光コリメータ11に入射し、受光コリメータ11に内蔵された偏波面保持ファイバ11aに結合される。さらに、偏波面保存ファイバ11aの端部は、偏波面保存ファイバで構成された光ファイバ偏光子12の一端の偏波面保存ファイバ12aに融着接続され、他端の偏波面保存ファイバ12bは、受光側シングルモードファイバ4bに融着接続され、信号が重畳した光はセンサ5を出射する。
【0013】
上記のように構成された光電圧センサは次のように作用する。本実施形態によれば、検光子として光ファイバ偏光子12を使用するので、検光子を伝播空間に配設する必要がない。したがって、空間伝播距離を減らすことができるので、ビームの広がりを極小とし、受光コリメータのアライメントがより容易になり、光学的結合を改善することができる。
【0014】
また、受光コリメータ11に内蔵された光ファイバ11aとして偏波面保存ファイバを用いるため、入射した光の伝播が光学軸上に制限されるのでモードのカップリングがなく、精度の高い測定が可能となる。
【0015】
さらに、光源1にスーパールミネッセントダイオード(SLD)を使用するので、可干渉距離が短く、レーザダイオード(LD)を光源とした場合の干渉が生じないため、より精度の高い測定が可能となる。
【0016】
さらにまた、受光コリメータ11に内蔵される偏波面保存ファイバ11aと光ファイバ偏光子の一端の偏波面保存ファイバ12aを同一種のファイバとすることで、融着点における光学損失を減らすことができる。
【0017】
ところで、ポッケルス素子10としてBGO結晶(Bi12GeO20)やBSO結晶(Bi12SiO20)などを用いることで、旋光性と電気光学効果(ポッケルス効果)のそれぞれが温度特性を有する場合は、ファイバ偏光子12の光学軸を所定の角度で回転させることで温度特性を平坦にすることが知られている。偏波面保存ファイバ11aと12aを融着するとき、例えば図3に示すように軸方向の回転により所定の角度まで回転させ融着接続させることで、温度の影響を受けない高精度な光電圧センサを供給することができる。したがって、温度の影響を受けない高精度な光電圧センサを供給することができる。よって、S/Nを確保した高精度でかつ既設のシングルモードファイバの使用が可能な光電圧センサを供給することができる。
【0018】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について図4、図5および図6を用いて説明する。第1の実施形態と同一部分には同一符号を付している。
【0019】
図4に示すように、スーパールミネッセントダイオード(SLD)を用いた光源1より出射した光は、送光側シングルモードファイバ2a、既設の光ファイバーケーブル3内の送光側シングルモードファイバ3a、送光側シングルモードファイバ4aを経由して、センサ5に入射する。被測定電圧による変調を受けた光は、センサ5の内部で2分割された後、受光側シングルモードファイバ41b、42b、既設の光ファイバーケーブル3内の受光側シングルモードファイバ31b、32b、受光側シングルモードファイバ21b、22bを経由して光電変換素子61、62に入射し、所定の信号処理を行い出力が得られる。
【0020】
図5を用いてセンサ5内部の構造を説明する。センサ5では、送光側シングルモードファイバ4aは、送光コリメータ7に内蔵された光ファイバ7aに融着接続される。送光コリメータ7を出射した空間伝播光は偏光子8を通過し直線偏光となり、λ/4素子9を通過し円偏光となり、被測定電圧が印加されたポッケルス素子10に入射する。ポッケルス素子10で被測定電圧により変調を受けた光は受光コリメータ11に入射し、受光コリメータ11に内蔵された偏波面保持ファイバ11aに結合される。さらに、偏波面保存ファイバ11aの端部は、偏波面保存ファイバで構成された光カプラ20の一端の偏波面保存ファイバ20aの光学軸と一致させ融着接続される。更に光カプラ20の他端の偏波面保存ファイバ201、202は、検光子として使用される光ファイバ偏光子121、122の一端に光学軸をあわせて融着される。この際、光ファイバ偏光子121が偏波面保存ファイバ201の2本の光学軸のうちの進相軸の光を取り出すときは、光ファイバ偏光子122は、偏波面保存ファイバの202の2本の光学軸のうちの遅相軸の光を取り出すように融着接続される。
【0021】
検光子である光ファイバ偏光子121、122の他端の偏波面保存ファイバ121b、122bは受光側シングルモードファイバ41b、42bに融着接続され、信号が重畳した光はセンサ5を出射する。
【0022】
上記のように構成された光電圧センサは次のように作用する。本実施形態によれば、ビームスプリッタとして偏波面保存ファイバを具備する光カプラ20を使用することで、空間伝播距離を減らすことができるので、ビームの広がりを極小とし、受光コリメータのアライメントがより容易になり、光学的結合を改善することができる。また、空間で光を2分割する場合は、受光コリメータが2つ必要となるが、本実施形態では一つで済み、光学的結合を改善し製造コストも抑えることができる。
【0023】
なお、光ファイバケーブル3が受ける振動に対して、光電変換器61、62で受光した光の出力は、次式(1)、(2)のように表すことができる。
【0024】
光電変換器61側 A×(1+m+va) ・・・(1)
光電変換器61側 B×(1−m+vb) ・・・(2)
A,Bは、各々の直流分の強度
mは、印加電圧に応じた変調度
va,vbは、光ファイバケーブル3が受ける振動による光量変動に伴う出力変化
このとき、A=Bとなるように光電変換素子61、62以降の電子回路で出力を調整し、(1)と(2)の差分をとると、
(1)−(2)=A×(1+m+va)−A×(1−m+vb)
=2×A×m+A×(va−vb) ・・・(3)
2本の受光側ファイバが同一ケーブル内にある場合は、同様に振動を受けるのでva−vbとおける。
【0025】
したがって、式(3)は
(3)=2×A×m ・・・(4)
となり、振動の影響を相殺することができる。
【0026】
受光コリメータ11に内蔵された光ファイバ11aとして偏波面保存ファイバを用いるため、入射した光の伝播が光学軸上に制限されるのでモードのカップリングがなく、精度の高い測定が可能となる。
【0027】
また、光源1にスーパールミネッセントダイオード(SLD)を使用するので、可干渉距離が短く、レーザダイオード(LD)を光源とした場合の干渉が生じないため、より精度の高い測定が可能となる。
【0028】
さらに、受光コリメータ11に内蔵される偏波面保存ファイバ11aと光カプラ20に使用する偏波面保存ファイバ20aと、光ファイバ偏光子121、122の偏波面保存ファイバ112a、122aを同一種のファイバとすることで、融着点における光学損失を減らすことができる。
【0029】
ところで、ポッケルス素子10としてBGO結晶やBSO結晶など旋光性と電気光学効果(ポッケルス効果)のそれぞれが温度特性を有する場合など、光ファイバ偏光子121、122の光学軸を所定の角度で回転させることで温度特性を平坦にすることが知られている。偏波面保存ファイバ201、202を121aと122aと融着するとき、例えば図6に示すように軸方向の回転により所定の角度まで回転させ融着接続させることで、温度の影響を受けない高精度な光電圧センサを供給することができる。したがって、温度の影響を受けない高精度な光電圧センサを供給することができる。
【0030】
(第3の実施形態)
第3の実施形態について図7を用いて説明する。第1、第2の実施形態と同一部分には同一符号を付している。
【0031】
受光コリメータ11には、偏波面分離光カプラ21が融着接続されている。偏波面分離光カプラ21の偏波面保存ファイバ21aに入射した光は、分離された際、偏波面保存ファイバ211に進相軸の成分が伝播する場合に、偏波面保存ファイバ212に遅相軸の成分が伝播する。
【0032】
本実施形態の光電圧センサでは、図5における光ファイバ偏光子121、122の機能も偏波面分離光カプラ21が有するので、光ファイバ偏光子121、122を省略することができる。
【0033】
(第4の実施形態)
第4の実施形態について図8を用いて説明する。第1、第2の実施形態と同一部分には同一符号を付している。
【0034】
本実施形態の光電圧センサでは、送光コリメータ7よりも光源側に光ファイバ偏光子81を配置した。光ファイバ偏光子81の一端の偏波面保存ファイバ81aは送光側シングルモードファイバ4aと融着接続され、他端の偏波面保存ファイバ81bはコリメータ7に内蔵される偏波面保存ファイバ7aに光学軸を合わせて融着接続される。もしくは、偏波面保存ファイバ81bをコリメータ7に内蔵される偏波面保存ファイバ7aとして使用してもよい。コリメータ7より直線偏光として出射した空間伝播光は、λ/4板9を経由して円偏光となり、ポッケルス素子10に入射する。
【0035】
本実施形態によれば、偏光子として光ファイバ偏光子81を使用するので、空間に偏光子を配設する必要がない。したがって偏光子によるビームの曲がりがなくなり、かつ、空間伝播距離を減らすことができるので、λ/4素子9、ポッケルス素子10および受光コリメータ11のアライメントがより容易になり、光学的結合を改善することができる。
【0036】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の意図を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0037】
1 光源
2a,3a,4a 送光側シングルモードファイバ
2b,3b,4b,21b,22b,31b,32b,41b,42b 受光側シングルモードファイバ
3 既設の光ファイバケーブル
5 センサ
6,61,62 光電変換素子
7 送光コリメータ
7a 送光コリメータに内蔵された光ファイバ
8 偏光子
9 λ/4素子
10 ポッケルス素子
11 受光コリメータ
11a 受光コリメータに内蔵された光ファイバ
12,81,121,122 光ファイバ偏光子
12a,81a,121a,122a 光ファイバ偏光子の一端の偏波面保持ファイバ
12b,81b,121b,122b 光ファイバ偏光子の他端の偏波面保持ファイバ
20 光カプラ
21 偏波面分離カプラ
20a 光カプラの一端の偏波面保持ファイバ
20b 光カプラの他端の偏波面保持ファイバ
201,202,211,212 偏波面保存ファイバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源より伝搬してきた光をセンサに導く送光側シングルモードファイバと、
この送光側シングルモードファイバを伝搬した光を平行な光として空間に出射する送光コリメータと、
この送光コリメータから出た光を直線偏光に変換する偏光子と、
この偏光子から出射した光を円偏光に変換するλ/4素子と、
このλ/4素子から出射した光に印加電圧に応じたポッケルス効果により変調を与えるポッケルス素子と、
このポッケルス素子から出射した光を内蔵された光ファイバに結合する受光コリメータと、
この受光コリメータから出た光の一成分を取り出す光ファイバ偏光子と、
この光ファイバ偏光子で受けた光を光電変換素子を含む受信器に接続された光ファイバに導く受光側シングルモードファイバと、
を具備し、
前記光ファイバ偏光子の一端の光学軸は、前記受光コリメータに内蔵された光ファイバの光学軸と一致させて融着接続され、
前記光ファイバ偏光子の他端の光学軸は、前記受光側シングルモードファイバに融着接続されていること
を特徴とする光電圧センサ。
【請求項2】
前記受光コリメータに内蔵された光ファイバおよび前記光ファイバ偏光子は、
偏波面保存ファイバであること
を特徴とする請求項1に記載の光電圧センサ。
【請求項3】
前記光源は、
スーパールミネッセントダイオードであること
を特徴とする請求項1または2に記載の光電圧センサ。
【請求項4】
前記受光コリメータに内蔵された光ファイバおよび前記光ファイバ偏光子は、
ポッケルス素子の温度特性を補正する所定の角度で融着接続されたこと
を特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光電圧センサ。
【請求項5】
光源より伝搬してきた光をセンサに導く送光側シングルモードファイバと、
この送光側シングルモードファイバを伝搬した光を平行な光として空間に出射する送光コリメータと、
この送光コリメータから出た光を直線偏光に変換する偏光子と、
この偏光子から出射した光を円偏光に変換するλ/4素子と、
このλ/4素子から出射した光に印加電圧に応じたポッケルス効果により変調を与えるポッケルス素子と、
このポッケルス素子から出た光を内蔵する光ファイバに結合する受光コリメータと、
この受光コリメータで受けた光を2つに分離する光カプラと、
分離した各々の光の一つを取り出す2組の光ファイバ偏光子と、
この光ファイバ偏光子を通過した光を光電変換素子を含む受信器に接続された光ファイバに導く2組の受光側シングルモードファイバと、
を具備し、
前記受光コリメータに内蔵する光ファイバ、前記光カプラおよび前記光ファイバ偏光子は、いずれも偏波面保存ファイバであり、各々の端部は光学軸を一致させて融着接続されていることを特徴とする光電圧センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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