光電変換装置、及び光電変換装置の製造方法
【課題】発光面積や受光面積を減らすことなく、厚さ寸法を小さくでき、かつ安価に製造できる光電変換装置、及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】第一基板11、第一電極12、有機層15、第二電極16、及び第二基板17が、この順に配置される光電変換装置1であって、第一電極12と有機層15との間に補助電極13が配置され、光電変換装置1を第一基板11の厚さ方向断面で見た場合に、補助電極13の厚さ寸法は、有機層15の厚さ寸法よりも大きいことを特徴とする。
【解決手段】第一基板11、第一電極12、有機層15、第二電極16、及び第二基板17が、この順に配置される光電変換装置1であって、第一電極12と有機層15との間に補助電極13が配置され、光電変換装置1を第一基板11の厚さ方向断面で見た場合に、補助電極13の厚さ寸法は、有機層15の厚さ寸法よりも大きいことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換装置、及び光電変換装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に形成された一対の電極間に有機化合物層を有する光電変換素子を備えた光電変換装置が提案されている。光電変換素子として、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子という。)や有機薄膜太陽電池素子などを挙げることができる。有機EL素子は、電気を光に変換し、有機薄膜太陽電池素子は、光を電気に変換する素子である。
このような光電変換素子においては、水や空気が素子寿命などの性能に大きく影響を及ぼすため、光電変換素子を水や空気から保護するための封止構造が重要であり、種々の封止構造が検討されている。
【0003】
従来の封止構造としては、例えば、ガラス基板上に作製された有機EL素子を封止するために、封止基板をガラス基板に貼り合わせ、有機EL素子を密封する構造が挙げられる。基板同士を貼り合わせて有機EL素子を密封することで、有機EL素子と外気との接触が避けられ、有機EL素子の劣化が防止される。そして、このような封止構造では、気圧の変化や基板の反りなどの要因によりガラス基板と封止基板とが接触し、ガラス基板上に作製された有機EL素子が両基板間に挟まれて電気的に短絡することがある。このような短絡を防ぐため、封止基板、及びガラス基板の少なくとも一方に凹部を形成し(ザグリを設けるともいう。)、当該凹部に有機EL素子を収容して、封止基板と有機EL素子とが接触しないようにしている。
例えば、特許文献1には、凹部が形成された封止缶により有機EL素子が封止された有機EL発光装置が記載されている。この有機EL発光装置は、照明装置としても用いられる。この有機EL発光装置では、透明ガラス基板上に、透明電極が形成され、この透明電極上に所定パターンの補助電極が形成され、当該補助電極は、積層構造の絶縁層によって被覆されている。また、この透明電極上に有機EL層が形成され、絶縁層と有機EL層を被覆して対向電極が設けられている。そして、封止缶と透明ガラス基板とが接着材を介して透明ガラス基板の外周縁で接合され、有機EL素子が当該凹部に収容され、封止缶と対向電極とが接触しないようになっている。
また、特許文献2には、第1保護膜、及び第2保護膜からなる保護部により外部の水分または酸素による劣化から発光領域を保護する電界発光パネルが記載されている。この電界発光パネルは、照明の光源にも用いられる。この電界発光パネルは、基板上に、第1電極と、第1電極上に形成される補助電極と、第1電極、及び補助電極上に形成され発光領域を画定する発光層と、発光層上に形成された第2電極とを含む。保護部は、第1保護膜と第2保護膜で形成されている。
但し、特許文献2に記載の電界発光パネルでは、保護部が膜からなるので外部からの衝撃に弱い。そのため、実際にこの電界発光パネルを照明装置として用いる場合には、凹部が形成された封止基板と基板とを基板の外周縁で接合し、発光領域を当該凹部に収容し、封止基板と第2電極とが接触しないようにする封止構造が採用される。
【0004】
このように、従来の封止構造では、凹部が形成された封止基板や封止缶を用いるので、封止基板や封止缶と接合相手の基板とを接合する箇所は、当該接合相手の基板の外周縁近傍となり、この箇所で封止基板等が支持される。そのため、封止基板や封止缶を支持するための支持部材を別途配置する必要が無いので、支持部材を配置したことによる非発光部が形成されない。また、光電変換装置の製造時に、封止基板等と有機EL素子等とが接触することを防止できる。
特に、特許文献1の有機EL発光装置や特許文献2の電界発光パネルのように、有機EL素子を照明装置の光源に用いることを想定している場合には、可能な限り基板上のほぼ全面に電極や発光層を形成して発光部面積を大きくする。そして、透明電極または第1電極上には、有機EL素子の発光ムラを少なくするために補助電極を形成する。この補助電極が形成された部分は、非発光部となるため、非発光部をさらに増やさないためにも、支持部材を別途配置する封止構造は、採用されていない。よって、凹部が形成された封止基板等を用いた封止構造が主流となっている。
また、光電変換素子が有機薄膜太陽電池素子の場合も、受光部の面積を大きくする必要があるので、同様に、凹部が形成された封止基板等を採用する封止構造が主流となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−10243号公報
【特許文献2】特開2008−103305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、光電変換素子を収容できる凹部を形成するためには、封止基板や特許文献1に記載された封止缶の厚さ寸法を大きくしなければならない。そのため、当該凹部を形成した封止基板や封止缶を用いる封止構造では、光電変換装置を薄型化することができないという問題がある。
また、当該凹部を形成するための加工費用が高いという問題もある。
【0007】
本発明の目的は、厚さ寸法を小さくでき、かつ安価に製造できる光電変換装置、及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光電変換装置は、
第一基板、第一電極、有機層、第二電極、及び第二基板が、この順に配置される光電変換装置であって、
前記第一電極と前記有機層との間に補助電極が配置され、
前記光電変換装置を前記第一基板の厚さ方向断面で見た場合に、前記補助電極の厚さ寸法は、前記有機層の厚さ寸法よりも大きい
ことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、光電変換装置を第一基板の厚さ方向断面で見た場合に、第一電極と有機層との間に配置された補助電極の厚さ寸法が、有機層の厚さ寸法よりも大きい。そのため、例えば、第一基板を下、第二基板を上にして当該断面で見た場合、補助電極は、第二基板側へ隆起し、補助電極が形成された部分の有機層、及び第二電極は、当該補助電極の形状に対応して第二基板側へ隆起する。そして、この隆起する部分にて第二基板を支持することができる。すなわち、第一電極と有機層との間に当該補助電極を配置することで、当該補助電極は、補助電極としての機能だけで無く、第一基板と第二基板との間隔を保持するためのスペーサとしての機能も果たす。
よって、本発明の光電変換装置では、第一基板、及び第二基板に従来技術のザグリのような光電変換素子を収容するための凹部が不要である。ゆえに、本発明の光電変換装置は、従来の封止構造と比べて厚さ寸法を小さくでき、かつ安価に製造できる。
このように、厚さ寸法を小さくできるため、本発明の光電変換装置は、光電変換素子に有機EL素子を用いたフレキシブル照明用途にも適している。
【0010】
本発明の光電変換装置において、
前記第二電極、及び前記第二基板が接触している
ことが好ましい。
【0011】
この発明によれば、補助電極、及び第二基板の間には、有機層、及び第二電極が、この順に配置され、第二電極、及び第二基板が接触している。そのため、第二基板が有機層、及び第二電極を介して補助電極によって支持され、第一基板と第二基板との間隔が保持される。また、第一基板、及び第二基板が貼り合わされる際にも、第二基板は、当該第二電極によって支持されるので、第一基板と第二基板との間隔を保持しながら貼り合わせ作業を行い易い。
【0012】
本発明の光電変換装置において、
前記第一基板、及び前記第二基板の間には、前記有機層を封止する封止部材が前記第一基板、及び前記第二基板の外周縁に沿って配置され、
前記補助電極の厚さ寸法、及び前記封止部材の厚さ寸法は、下記式(1)を満たす
ことが好ましい。
【0013】
[数1]
0.2X < Y < 5X ・・・(1)
【0014】
但し、上記式(1)において、前記補助電極の厚さ寸法をY[μm]、前記封止部材の厚さ寸法をX[μm]とする。
【0015】
この発明によれば、補助電極の厚さ寸法Yと、封止部材の厚さ寸法Xとが上記式(1)の関係を満たすことにより、第一基板や第二基板の撓みや反りなどが生じても、第一基板と第二基板との間隔を確実に保持できる。
【0016】
本発明の光電変換装置において、
前記補助電極の厚さ寸法が、0.5μm以上30μm以下である
ことが好ましい。
【0017】
この発明によれば、補助電極の厚さ寸法Yが、0.5μm以上30μm以下であるので、上記と同様に、第一基板や第二基板の撓みや反りなどが生じても、第一基板と第二基板との間隔を確実に保持できる。
【0018】
本発明の光電変換装置において、
前記封止部材は、絶縁性材料からなる
ことが好ましい。
【0019】
この発明によれば、封止部材が絶縁性材料からなるので、第一電極と第二電極との短絡を防止できる。
【0020】
本発明の光電変換装置において、
前記補助電極が配置されない前記第一電極、及び前記第二電極の間の領域は、前記有機層が配置される発光部とされ、
前記発光部では、前記第二電極が前記第二基板と離間している
ことが好ましい。
【0021】
この発明によれば、補助電極が配置されない第一電極と第二電極との間には有機層だけが配置されるので、その部分が発光部となる。そして、発光部では、第二電極が第二基板と離間しているので、補助電極によるスペーサ機能が確実に果たされ、発光部において第二基板と第二電極との接触を防止できる。ゆえに、第二電極や有機層の損傷を防止できる。
【0022】
本発明の光電変換装置において、
前記発光部の前記第二電極、及び前記第二基板の間には、放熱部材が配置されている
ことが好ましい。
【0023】
この発明によれば、放熱部材を介して光電変換素子で発生した不要な熱を第二基板側へ効率的に伝達させることができる。
【0024】
本発明の光電変換装置において、
前記光電変換装置を前記第一基板の面に向かって見た場合、前記補助電極は、前記発光部を囲む枠状に形成されている
ことが好ましい。
【0025】
この発明によれば、補助電極が発光部を囲む枠状に形成されているので、発光部の第二電極、及び第二基板の間に放熱部材が配置されれば、放熱部材が第一基板と第二基板との接合部に配置されて第一基板と第二基板との接合が妨げられたり、光電変換装置外部へはみ出したりすることを防止できる。
さらに、放熱部材が流動性を有する場合には、放熱部材が当該枠内に配置され、当該枠外への流出を防止できる。すなわち、厚さ寸法が有機層のそれよりも大きい補助電極が枠状に形成されたことで、補助電極は、流動性の放熱部材に対して堤防の機能を果たす。
そのため、放熱部材が第一基板と第二基板との接合部へ流出して接合を妨げたり、光電変換装置外部へと流出したりすることを防止できる。
【0026】
本発明の光電変換装置において、
前記光電変換装置を前記第一基板の面に向かって見た場合、前記補助電極は、前記発光部を囲み、一部が開放されたパターン状に形成されている
ことが好ましい。
【0027】
この発明によれば、補助電極のパターンは、発光部を囲むと共に、その一部が開放されている。そのため、光電変換装置をフレキシブル用途に用いて繰り返し折り曲げなどを行っている間に第二電極が補助電極のパターンに沿って断線した場合でも、第二電極には、補助電極の一部開放されたパターンに対応して開放された部分が残る。すなわち、第二電極には、断線部分によって閉じた領域が形成されず、電気的に接続した部分が残る。ゆえに、この発明によれば、第二電極が断線しても、この開放されている部分を通じて導通が可能ゆえ、第二電極に非導通部が形成されるのを防止できる。例えば、光電変換素子が有機EL素子の場合には、非発光部分の発生を防止できる。
一方で、補助電極のパターンが枠状に形成され、開放された部分が形成されていないと、上記と同様の繰り返し折り曲げによって第二電極が補助電極の枠状のパターンに沿って断線するおそれがある。第二電極が枠状に断線してしまうと、第二電極には、断線部分によって閉じた領域が形成され、開放された部分が残らない。すなわち、第二電極には、電気的に接続していない部分が形成されてしまう。よって、第二電極の枠状に断線した部分の当該枠内に通電しなくなる。例えば、光電変換素子が有機EL素子の場合には、この第二電極の当該枠内と対応する位置の有機層が発光しなくなる。
【0028】
本発明の光電変換装置において、
前記補助電極と前記第一電極とは導通し、前記補助電極と前記有機層とは絶縁されている
ことが好ましい。
【0029】
この発明によれば、補助電極と第一電極とは電気的に導通し、補助電極と有機層とは電気的に絶縁されている。そのため、光電変換装置が有機EL素子である場合に、補助電極の枠部分周辺が線状に発光するのを防ぎ、発光部を面状に発光させることができる。また、補助電極と第二電極との短絡を防止できる。
【0030】
本発明の光電変換装置において、
前記補助電極と前記有機層との間に絶縁部が形成されている
ことが好ましい。
【0031】
この発明によれば、補助電極と有機層との間に形成された絶縁部によって補助電極と有機層との間が電気的に絶縁されている。そのため、光電変換装置が有機EL素子である場合に、上記と同様に補助電極の枠部分周辺が線状に発光するのを防ぎ、発光部を面状に発光させることができる。また、補助電極と第二電極との短絡を防止できる。
【0032】
本発明の光電変換装置において、
前記絶縁部は、ポリイミドを含む
ことが好ましい。
【0033】
この発明によれば、絶縁部がポリイミドを含むので、絶縁部の強度や耐熱性が向上する。その結果、絶縁部は、損傷や劣化し難くなるので、補助電極と有機層との導通を防止する効果が向上する。
【0034】
本発明の光電変換装置において、
前記補助電極は、銀、金、タングステン、及びネオジウムの内の少なくとも一つと樹脂とを含む
ことが好ましい。
【0035】
この発明によれば、補助電極が銀、金、タングステン、及びネオジウムの内の少なくとも一つと樹脂とを含むので、補助電極を形成するための材料をペースト状にできる。そのため、補助電極の厚さ寸法を有機層の厚さ寸法よりも大きく形成し易くできる。
【0036】
本発明の光電変換装置において、
前記第一基板は、透光性基板であり、
前記第一電極は、透明電極である
ことが好ましい。
【0037】
この発明によれば、第一基板が透光性基板であり、第一電極が透明電極であるので、第一基板側から効率的に光を取り出したり、受光したりすることができる。
【0038】
本発明の光電変換装置において、
前記第二基板は、金属である
ことが好ましい。
【0039】
この発明によれば、第二基板が金属であるので、第二電極に対する導通を確保できる。例えば、第二電極の一部が断線しても、第二基板を通じて導通させることができる。
また、第二電極を透明電極とすれば、当該第二基板を反射板として利用できる。
【0040】
本発明の光電変換装置の製造方法は、
第一基板、第一電極、有機層、第二電極、及び第二基板が、この順に配置される光電変換装置の製造方法であって、
前記第一基板の一方の面に前記第一電極を形成する工程と、
前記第一電極の上に補助電極を形成する工程と、
前記第一電極、及び前記補助電極の上に前記有機層を形成する工程と、
前記有機層の上に、前記第二電極を形成する工程と、
前記第二電極を形成した後、前記第一基板と前記第二基板とを貼り合わせて接合する工程と、を実施し、
前記光電変換装置を前記第一基板の厚さ方向断面で見た場合に、前記補助電極の厚さ寸法を前記有機層の厚さ寸法よりも大きく形成する
ことを特徴とする。
【0041】
この発明によれば、補助電極の厚さ寸法を有機層の厚さ寸法よりも大きく形成するので、上記のとおり、補助電極は、補助電極としての機能だけで無く、第一基板と第二基板との間隔を保持するためのスペーサとしての機能も果たす。そのため、第一基板と第二基板とを接合する際も、第一基板と第二基板との間隔を保持したまま接合を行うことができる。
さらに、第一基板、及び第二基板にザグリのような凹部を形成する必要もないので、光電変換装置の厚さ寸法を小さくできるし、安価に製造できる。
【0042】
本発明の光電変換装置の製造方法において、
前記補助電極を形成する工程で、前記第一基板の面に向かって見た場合に、前記補助電極を枠状に形成し、
前記第二電極を形成する工程の後であって前記第一基板と前記第二基板とを貼り合わせて接合する工程の前に、前記補助電極の当該枠内に流動性の放熱部材を注入する工程を実施する
ことが好ましい。
【0043】
この発明によれば、補助電極を枠状に形成するので、その枠内に流動性の放熱部材を注入する際に、当該放熱部材が枠から溢れ出すことを防止できる。すなわち、厚さ寸法が有機層のそれよりも大きい補助電極が枠状に形成されたことで、当該放熱部材に対して堤防の機能を果たす。
そのため、放熱部材の注入作業が容易になる。さらに、放熱部材が第一基板と第二基板との接合部へ流出したり、光電変換装置外部へと流出したりすることを防止できる。
【0044】
本発明の光電変換装置の製造方法において、
前記補助電極を形成する工程の後であって前記有機層を形成する工程の前に、前記補助電極の上に絶縁部を形成する工程を実施し、
前記有機層と前記補助電極との間に前記絶縁部を介在させる
ことが好ましい。
【0045】
この発明によれば、有機層と補助電極との間に絶縁部が介在するので、有機層と補助電極とが電気的に絶縁された状態とすることができる。そのため、光電変換装置が有機EL素子である場合に、補助電極の枠部分周辺が線状に発光するのを防ぎ、発光部を面状に発光させることができる。
また、この発明によって製造される光電変換装置は、補助電極の厚さ寸法を有機層の厚さ寸法よりも大きく形成するので、補助電極を形成するための材料に銀ペーストなどの金属、及び樹脂を含むペースト状の材料を用いて厚さ寸法を大きく形成し易くすることがある。そして、ペースト状の材料を用いた補助電極の形成に続いて、絶縁部を形成することなく有機層を蒸着法やスパッタリング法などのように減圧下で形成しようとすると、ペースト状の材料からガスが放出して、有機層に不純物が混入するおそれがある。
しかしながら、この発明によれば、補助電極の上に絶縁部が形成されるので、補助電極の表面を絶縁部で覆うことができる。そのため、有機層の形成時に補助電極からのガス放出を防止し、有機層への不純物混入を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第一実施形態に係る光電変換装置の基板厚さ方向に沿った断面図。
【図2】前記実施形態に係る光電変換装置の製造工程を示す第一の図であって、(A)は斜視図、(B)は断面図。
【図3】前記実施形態に係る光電変換装置の製造工程を示す第二の図であって、(A)は斜視図、(B)は断面図。
【図4】前記実施形態に係る光電変換装置の製造工程を示す第三の図であって、(A)は斜視図、(B)は断面図。
【図5】前記実施形態に係る光電変換装置の製造工程を示す第四の図であって、(A)は斜視図、(B)は断面図。
【図6】前記実施形態に係る光電変換装置の製造工程を示す第五の図であって、断面図。
【図7】前記実施形態に係る光電変換装置の製造工程を示す第六の図であって、断面図。
【図8】前記実施形態に係る光電変換装置の製造工程を示す第七の図であって、断面図。
【図9】前記実施形態に係る光電変換装置の製造工程を示す第八の図であって、断面図。
【図10】本発明の第二実施形態に係る光電変換装置の基板厚さ方向に沿った断面図。
【図11】本発明の第三実施形態に係る光電変換装置の補助電極パターンを示す斜視図。
【図12】本発明の第三実施形態に係る前記補助電極パターンに対して絶縁部を形成した状態を示す斜視図。
【図13】本発明の補助電極パターンの第一の変形例を示す斜視図。
【図14】本発明の補助電極パターンの第二の変形例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0047】
[第一実施形態]
以下、本発明の第一実施形態を図面に基づいて説明する。
(光電変換装置の全体構成)
図1は、本発明の第一実施形態に係る光電変換装置1の基板厚さ方向に沿った断面図である。図2〜図9は、光電変換装置1の製造工程を説明する斜視図、もしくは断面図である。
光電変換装置1では、第一基板11、第一電極12、有機層15、第二電極16、及び第二基板17が、この順に配置される。第一電極12、有機層15、及び第二電極16で光電変換素子が構成され、第一実施形態では、光電変換素子が有機EL素子である場合について説明する。また、第一電極12と有機層15との間には、補助電極13が配置され、補助電極13と有機層15との間には、絶縁部14が形成されている。さらに、第一基板11、及び第二基板17の間には、有機層15を封止する封止部材18が第一基板11、及び第二基板17の外周縁に沿って配置されている。そして、第二電極16と第二基板17との間には、放熱部材19が備えられている。
なお、第一実施形態の説明において、上下左右の方向を示す場合は、図1の断面図のように、第一基板11を下に、第二基板17を上にした場合に基づいているものとする。
また、図2おいて、(B)の断面図は、(A)のII−II線に沿って第一基板11を切断し、矢印方向に見た場合の断面図である。同様に図1、及び図3〜9の断面図についても、図2と同じ第一基板11の位置で切断して、矢印方向に見た断面図を示すものとする。
【0048】
(第一基板)
第一基板11は、第一電極12などを支持するための平滑な板状の部材である。
第一実施形態では、第一基板11を透光性の基板とし、第一基板11側を有機EL素子の光の取出し方向とする。そのため、第一基板11の可視領域(400nm以上700nm以下)の光の透過率は、50%以上であることが好ましい。具体的には、ガラス板、ポリマー板などが挙げられる。ガラス板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英などが挙げられる。またポリマー板としては、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリエーテルサルファイド系樹脂、ポリサルフォン系樹脂などを原料として用いてなるものを挙げることができる。光電変換装置1がフレキシブル性を必要とする用途に用いられる場合は、第一基板11の材料としては、可撓性のある材料が好ましく、例えば、ポリマー板が好ましい。
また、第一基板11の寸法としては、複数の光電変換装置1を隣接配置させて照明の光源とする場合には、例えば、縦の長さ寸法がおよそ80mmから100mmまで、横の長さ寸法がおよそ80mmから100mmまで、厚さ寸法が0.1mm以上から5mmまでの板材を用いることができる。なお、大型の基板材料から複数枚の第一基板11を切り出して用いてもよい。
【0049】
第一基板11の左右の端部は、それぞれ第一電極12からの電気的取出しを行うための取出電極12Aが上部に配置される接続部11A、及び第二電極16からの電気的取出しを行うための取出電極12Bが上部に配置される接続部11Bである。
【0050】
(第一電極)
第一電極12は、有機EL素子における陽極として、正孔を有機層15に注入する役割を担うものであり、4.5eV以上の仕事関数を有することが効果的である。
第一電極12は、第一基板11上に形成される。このとき、第一基板11の接続部11Aには、陽極としての第一電極12から電気的取出しを行うための取出電極12Aが第一電極12に連続して形成される。また、第一基板11の接続部11Bには、陰極としての第二電極16から電気的取出しを行うための取出電極12Bが溝部11Cを介して形成されている。取出電極12Bは、第一電極12と電気的に接続していない。
【0051】
第一電極12に用いる材料の具体例としては、酸化インジウム錫合金(ITO)、酸化錫(NESA)、酸化インジウム亜鉛酸化物、金、銀、白金、銅などが挙げられる。
光電変換装置1では、有機層15からの発光を第一電極12側から取り出すため、第一電極12の可視領域の光の透過率を10%より大きくすることが好ましい。また、第一電極12のシート抵抗は、数百Ω/□(Ω/sq。オーム・パー・スクウェア。)以下が好ましい。第一電極12の厚さ寸法は、用いる材料にもよるが、通常10nm以上1μm以下、好ましくは10nm以上200nm以下の範囲で選択される。
【0052】
(補助電極)
補助電極13は、第一電極12に用いる透明電極材料の電気抵抗による電圧低下を防ぎ、第一電極12に電圧を供給し、第一基板11上の位置による第一電極12に供給される電圧のばらつきを小さくする。補助電極13と第一電極12との間では、両者が電気的に接続されている。また、補助電極13と有機層15との間では、後に詳述する絶縁部14によって、両者が電気的に絶縁されている。
補助電極13は、図1や図3のように、第一電極12の上であって、複数のラインが離間して形成されている。そして、補助電極13は、開口13Cを4つ有する枠状に形成され、第一電極12は、開口13Cを介して露出する。
また、取出電極12Aの上には、第一電極12から電気的取出しを行うための取出補助電極13Aが形成されている。同様にして、取出電極12Bの上には、第二電極16から電気的取出しを行うための取出補助電極13Bが形成されている。取出補助電極13Aは、補助電極13に連続して形成され、取出補助電極13Bは、溝部11Cを介して補助電極13とは連続せずに形成されている。取出補助電極13Bは、補助電極13や第一電極12と電気的に接続していない。
補助電極13の形状は、図3(A)に示すような枠の数や大きさに制限されず、補助電極13のいずれの枠も、第二電極16の面に対して閉じていればよい。すなわち、補助電極13は、堤防のように形成されていればよい。
【0053】
補助電極13の厚さ寸法は、図1の断面図で見た場合、有機層15の厚さ寸法よりも大きい。
そして、補助電極13の厚さ寸法をY[μm]とし、後に詳述する封止部材18の厚さ寸法をX[μm]としたときに、前記式(1)を満たすことが好ましい。さらには、補助電極13の厚さ寸法は、1μm以上50μm以下とするのが好ましい。
補助電極13の巾寸法や補助電極13同士の間隔は、素子構成や第一電極12の導電率、補助電極13の枠の形状や数に応じて適宜設定される。しかしながら、補助電極13が形成された部分は、第一基板11の面に向かって見た場合、発光しない部分(非発光部15B)なので、発光面積を大きくする観点からすると、補助電極13の巾寸法は、小さい方が好ましく、補助電極13のライン間隔は、大きい方が好ましい。
補助電極13の抵抗率は、10−4Ωcm以下が好ましい。
【0054】
このように、補助電極13は、第一電極12と有機層15との間に形成され、その厚さ寸法は有機層15の厚さ寸法よりも大きい。そのため、図1の断面図に見られるように、補助電極13の部分は、第二基板17側に隆起しており、有機層15、及び第二電極16も補助電極13の形状に対応する形状を有し、第二電極16は、補助電極13の部分で第二基板17と接している。よって、補助電極13は、第二電極16、及び有機層15を介して第二基板17を支持し、第一基板11、及び第二基板17の間隔を保持するためのスペーサとしても機能している。
そして、第一電極12と第二電極16との間に補助電極13が配置されずに有機層15が配置される領域が第一電極12と第二電極16間に電圧が印加されたときに有機層15に電流が流れることにより発光する。つまり、当該補助電極13が配置されずに有機層15が配置される領域が発光部15Aとなる。第一電極12と第二電極16との間に補助電極13、及び有機層15が配置される領域は、第一電極12と第二電極16間に電圧が印加されたときにも後述する絶縁層14により電流が流れず、発光しない。つまり、当該補助電極13、及び有機層15が配置される領域は、非発光部15Bとなる。
【0055】
補助電極13には、公知の電極材料が用いられ、金属や合金を用いることができる。金属としては、例えば、銀(Ag)、Al(アルミニウム)、Au(金)、タングステン(W)、ネオジム(Nd)の内、少なくとも1種を含むことが好ましい。
そして、補助電極13の厚さ寸法が、有機層15の厚さ寸法よりも大きくなるように、補助電極13には、金属や合金、及び樹脂材料を含有するペースト材料を用いるのが好ましい。樹脂材料は、バインダの役割を果たすものであり、アクリル樹脂やPETなどを用いることができる。その他、ペースト状にするために粘度調整のための有機溶剤などを含有してもよい。ペースト材料としては、銀ペーストが好ましい。
【0056】
(絶縁部)
絶縁部14は、補助電極13と有機層15とが電気的に絶縁されるように、両者の間に形成されている。このとき、補助電極13と第一電極12との電気的接続は確保されている。また、絶縁部14は、補助電極13と第二電極16との短絡を防止する。補助電極13と第二電極16の間には有機層15が配置されるが、有機層15の膜厚は、1μm以下に形成されることが一般的であり、この場合に、絶縁部14は、後述する第二基板17側からの外力が光電変換装置1に加わることにより有機層15が破損して補助電極13と第二電極16とが短絡することを防止する。
絶縁部14は、補助電極13の上に、補助電極13を覆うように形成される。そして、図5(A)のように、第一電極12が、開口13Cを介して露出している。絶縁部14は、図1や図5(B)のように補助電極13の第一電極12と接していない部分(上面、及び側面)に形成され、有機層15と補助電極13とが接しないようになっている。このように、第一電極12は、開口13Cを介して露出するので、この露出する第一電極12の上に有機層15、及び第二電極16が形成されることになる。すなわち、この露出する部分が前述の発光部15Aを成す位置に相当する。
また、絶縁部14は、取出補助電極13Aの上面全体を覆わないように、取出補助電極13Aの一部を露出させて形成されている。つまり、取出補助電極13Aは、電気的取り出しが可能な程度、露出していればよい。
さらに、絶縁部14は、補助電極13側と取出補助電極13B側とで溝部11Cを介して、連続せずに形成されている。そして、絶縁部14は、取出補助電極13Bの上面全体を覆わないように、取出補助電極13Bの一部を露出させて形成されている。つまり、取出補助電極13Bも、電気的取り出しが可能な程度、露出していればよい。
なお、補助電極13が第一電極12より低抵抗である場合に、開口13Cよりも補助電極13の位置に電流が集中することがある。絶縁部14は、当該補助電極13の位置で高輝度で発光し、輝度ムラとなることを防止する。
また、補助電極13が金属や合金、及び樹脂材料を含有するペースト材料を用いた場合には、補助電極13から溶媒、樹脂材料からの放出ガス、水分、大気成分等が放出されることがある。絶縁部14は、これらのガスが有機層15に対してダメージを与えることを防止する。
【0057】
絶縁部14の厚さ寸法は、1μm以上50μm以下であることが好ましい。このような厚さ寸法とすることで、補助電極13と有機層15との電気的接続が防止され、補助電極13から有機層15へ正孔が直接注入されるのが防止される。
【0058】
絶縁部14は、電気絶縁性の材料(電気絶縁性材料)で構成されればよく、電気絶縁性材料としては、感光性ポリイミドなどの感光性樹脂、アクリル系樹脂などの光硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、及び酸化ケイ素(SiO2)や酸化アルミニウム(Al2O3)などの無機材料を挙げることができる。感光性樹脂は、ポジ型感光性樹脂でもネガ型感光性樹脂でもよい。
また、絶縁部14は、補助電極13とは異なる部材を用いて形成してもよいし、補助電極13の表面に対して処理を施して補助電極13を構成する導電性の材料を絶縁性の材料(金属酸化膜など)に変質させて形成してもよい。
【0059】
(有機層)
【0060】
有機層15は、光電変換装置1が有機EL素子であるので、発光機能を有する層として構成される。有機層15とは、有機化合物で構成される層を少なくとも一層含んだものをいう。なお、当該有機層15は、無機化合物を含んでいてもよい。
有機層15は、絶縁部14で覆われた補助電極13、及び開口13Cを介して露出する第一電極12の上に形成されている。
また、有機層15は、図6のように、取出補助電極13A、及び取出補助電極13Bの上面全体を覆わないように、絶縁部14の左右端部よりも内側、もしくは同じ位置まで形成されている。その結果、取出補助電極13A、及び取出補助電極13Bの上面は、電気的取り出しが可能な程度、露出している。
さらに、有機層15は、溝部11Cを介して、第一電極12側から取出電極12B側まで連続して形成されている。
【0061】
光電変換装置1における有機EL素子を構成する有機層15は、少なくとも一つの発光層を有する。そのため、有機層15は、例えば、一層の発光層で構成されていてもよいし、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、及び電子輸送層が発光層を介して積層構成されていてもよい。
【0062】
発光層には、従来の有機EL素子において使用される公知の発光材料が用いられ、赤色、緑色、青色、黄色などの単色光を示す構成のものや、それらの組み合わせによる発光色、例えば、白色発光を示す構成のものが用いられる。また、発光層を形成するにあたっては、ホストに、ドーパントとして発光材料をドーピングするドーピング法が知られている。ドーピング法で形成した発光層では、ホストに注入された電荷から効率よく励起子を生成することができる。そして、生成された励起子の励起子エネルギーをドーパントに移動させ、ドーパントから高効率の発光を得ることができる。
発光層は、蛍光発光性であっても燐光発光性であってもよい。
また、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、及び電子輸送層などを構成する材料としては、従来の有機EL素子において使用される公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。
【0063】
(第二電極)
第二電極16は、有機EL素子における陰極として、電子を有機層15に注入する役割を担うものであり、仕事関数の小さい材料が好ましい。
第二電極16は、有機層15の上に形成されている。
また、接続部11A側の第二電極16は、図7のように、取出補助電極13Aと接触して電気的に接続しないように、絶縁部14の左端部よりも内側、さらには、有機層15の左端部よりも内側、もしくは同じ位置まで形成されている。
一方、接続部11B側の第二電極16は、図7のように、絶縁部14の右端部よりもさらに外側にまで延在して形成され、取出補助電極13Bと接触して電気的に接続している。ただし、取出補助電極13Bの上面は、電気的取り出しが可能な程度、露出している。
さらに、第二電極16は、溝部11Cを介して、第一電極12側から取出電極12B側まで連続して形成されている。
【0064】
第二電極16に用いる材料の具体例としては、特に限定されないが、具体的にはインジウム、アルミニウム、マグネシウム、銀、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、アルミニウム−リチウム合金、アルミニウム−スカンジウム−リチウム合金、マグネシウム−銀合金などが使用できる。
また、第二電極16側から、有機層15からの発光を取り出す態様を採用することもできる。有機層15からの発光を第二電極16側から取り出す場合、第二電極16には、透明電極材料を用い、第二電極16の可視領域の光の透過率を10%より大きくすることが好ましい。また、このような場合は、第一電極12には、金属や合金などが用いられる。
第二電極16のシート抵抗は、数百Ω/□以下が好ましい。
第二電極16の厚さ寸法は、用いる材料にもよるが、通常10nm以上1μm以下、好ましくは50nm以上200nm以下の範囲で選択される。
【0065】
(第二基板)
第二基板17は、後に詳述する封止部材18によって第一基板11と接合される部材であって、平滑な板状の部材である。光電変換装置1における有機EL素子は、第一基板11と第二基板17とが封止部材18によって接合されて封止される。
第二基板17は、第一電極12の上に枠状に形成された補助電極13によって支持されている。上記のとおり、補助電極13の厚さ寸法は、有機層15の厚さ寸法よりも大きく形成され、図1のように、補助電極13は、第二基板17側へ隆起し、補助電極13が形成された部分の有機層15、及び第二電極16は、当該補助電極13の形状に対応して第二基板17側へ隆起している。そして、補助電極13が形成された部分で第二基板17と第二電極16とが接触して第二基板17が支持されている。
【0066】
第二基板17は、板状、フィルム状、又は箔状の部材であることが好ましい。具体的には、ガラス板、ポリマー板、ポリマーフィルム、金属板、金属箔などが挙げられる。なお、第二基板17は、本実施形態では板状の部材を用いているが、例えば、シート状物あるいはフィルム状物であってもよい。光電変換装置1がフレキシブル性を必要とする用途に用いられる場合は、第二基板17の材料としては、可撓性のある材料が好ましく、例えば、ポリマー板やポリマーフィルムが好ましい。
また、第二基板17の厚さ寸法としては、複数の光電変換装置1を隣接配置させて照明の光源とする場合には、例えば、縦の長さ寸法がおよそ80mmから100mmまで、横の長さ寸法がおよそ80mmから100mmまで、厚さ寸法が0.1mmから5mmまでの板材を用いることができる。厚さ寸法が0.1mm以下であると、空気の透過率が上昇し密封性能が低下する。
なお、大型の基板材料から複数枚の第二基板17を切り出して用いてもよい。
【0067】
(放熱部材)
放熱部材19は、有機EL素子で発生した熱を第二基板17側へ効率的に伝達させる役割を担う。
放熱部材19は、発光部15Aの第二電極16と第二基板17との間に備えられている。
第一実施形態では、放熱部材19は、流動性を有し、枠状に形成された補助電極13の開口13Cの内側に注入され、当該枠から流れ出ないように備えられている(図1、3、及び8参照)。補助電極13は、放熱部材19が、接続部11Aや接続部11Bまで流れ出さないように、堤防の役割も果たしている。そのため、光電変換装置1における補助電極13のいずれの枠も、閉じており、開放していない。
放熱部材19を注入する量としては、第一基板11と第二基板17とを貼り合わせた際に、接続部11Aや接続部11Bまで溢れ出さない程度の量にすることが好ましい。さらに、熱の伝達効率を考えると、第一基板11と第二基板17とを貼り合わせた際に第二電極16と第二基板17との間に形成される空間内が放熱部材19で充填されていて、空気が入っていない状態とするのが好ましい。
放熱部材19としては、熱伝導性が良く、かつ不活性な部材が好ましく、フッ素系オイルなどを用いることができる。
【0068】
(封止部材)
封止部材18は、第一基板11と第二基板17とを接合して、有機層15を封止するための部材である。
封止部材18は、第一基板11、及び第二基板17の外周縁に沿って配置される。そして、封止部材18は、有機層15を囲うようにして枠状に形成されている。なお、図1のように、第一基板11の上であって、第一電極12、補助電極13、取出補助電極13A、取出補助電極13Bが形成されている箇所では、封止部材18は、第一基板11と直接に接触しておらず、第一電極12、補助電極13、取出補助電極13A、取出補助電極13Bのいずれかと接触して接合する。それ以外の箇所では、封止部材18は、第一基板11と直接に接触して接合する。
【0069】
封止部材18が設けられる幅(接合幅)は、光電変換装置1を狭額縁構造とする観点から、第一基板11と第二基板17との接合強度を確保できる範囲で狭くするのが好ましい。例えば、縦の長さ100mm、横の長さ100mm、厚さ0.7mmの板状ガラス部材の場合は、0.5mm以上2mm以下であることが特に好ましい。
【0070】
封止部材18は、封止性、耐湿性、及び接合強度の観点から、無機化合物で構成されたものが好ましい。レーザー照射により形成することを可能にするため、低融点ガラスが好ましい。ここでいう低融点とは、融点が650℃以下のものをいう。好ましい融点としては、300℃以上600℃以下である。また、当該低融点ガラスは、ガラスと金属などを接合できる遷移金属酸化物、希土類酸化物などを成分組成に含むものが好ましく、粉末ガラス(フリットガラス)がより好ましい。粉末ガラスの組成としては、例えば、酸化ケイ素(SiO2)、酸化硼素(B2O3)、及び酸化アルミニウム(Al2O3)を主成分として含むものが好ましい。また、封止部材18として、粉末ガラスとバインダ樹脂とを混合したペースト状のガラスペーストを用いることもできる。
【0071】
(有機EL素子の製造工程)
次に、光電変換装置の製造方法を図に基づいて説明する。
【0072】
(第一基板側の製造工程)
まず、図2に示すように、第一基板11の上に第一電極12を形成し、第一基板11の接続部11Aの上に取出電極12Aを形成し、第一基板11の接続部11Bの上に取出電極12Bを形成する。このとき、溝部11Cも形成する。第一電極12、取出電極12A、及び取出電極12Bは、同じ材料で同時に形成することが好ましい。光電変換装置1では、第一電極12側から光を取り出すため、透明電極材料(ITOなど)で形成する。形成方法としては、スパッタリング法により成膜し、その後フォトリソグラフィ工程によりパターンニングする方法やマスク蒸着法などが挙げられる。
【0073】
次に、図3に示すように、第一電極12の上に補助電極13を形成し、取出電極12Aの上に取出補助電極13Aを形成し、取出電極12Bの上に取出補助電極13Bを形成する。このとき、補助電極13が、4つの開口13Cを有する枠状となるように形成する。さらに、取出補助電極13Bは、溝部11Cを介して補助電極13とは連続しないように形成する。
補助電極13、取出補助電極13A、及び取出補助電極13Bは、同じ材料で同時に形成することが好ましい。
形成方法としては、真空蒸着、スパッタリング、プラズマ、イオンプレーティングなどの乾式成膜法やスクリーン印刷、インクジェット印刷、スピンコーティング、ディッピング、フローコーティングなどの湿式成膜法などの公知の方法を採用することができる。光電変換装置1においては、補助電極13の厚さ寸法を大きくする必要があるので、金属や合金、及び樹脂材料を含有するペースト材料(銀ペーストなど)を用いたスクリーン印刷法が好ましい。
補助電極13用のペースト状材料をスクリーン印刷法にて塗布した後、当該ペースト材料を乾燥させて補助電極13、取出補助電極13A、及び取出補助電極13Bを形成する。
【0074】
次に、図4、及び図5に示すように、補助電極13の上に絶縁部14を形成する。絶縁部を形成する方法としては、スクリーン印刷、インクジェット印刷、スピンコーティング、ディッピング、フローコーティングなどの公知の湿式成膜法や、マスク蒸着法やマスクスパッタリング法などの公知の乾式成膜法が挙げられる。ここでは、湿式成膜法、及び電気絶縁性材料として、電気絶縁性の樹脂を含むポジ型のフォトレジスト材料を用いる場合について説明する。
まず、図4に示すように、補助電極13の上に絶縁部14を構成するペースト状の電気絶縁性材料を湿式成膜法で塗布する。この際、取出補助電極13Aの上面全体、及び取出補助電極13Bの上面全体を電気絶縁性材料で覆わないようにするとともに、補助電極13の上及び補助電極13の側面部が電気絶縁性材料で覆われるようにする。この塗布を行った時点では、開口13Cの内部にも電気絶縁性材料が塗布されていてもよい。
この塗布の後、第一基板11側から光を電気絶縁性材料に照射する(露光)。この時、光が、開口13C及び溝部11Cの内部に塗布された電気絶縁性材料には照射されるが、補助電極13の上面に塗布された電気絶縁性材料には照射されない。そのため、この露光の後、現像液によって現像すると、開口13C及び溝部11Cの内部に塗布された電気絶縁性材料の部分が除去され、未露光部分が残る。
この現像後に、加熱処理を行うことで、図5に示すように、絶縁部14が補助電極13の上面、及び側面に形成される。そのため、後に形成する有機層15と補助電極13とが接しないようになる。
なお、上記は電気絶縁性材料として、電気絶縁性の樹脂を含むポジ型のフォトレジスト材料を用いる場合について説明したが、電気絶縁性の樹脂を含む熱硬化型レジスト材料を用いて塗布されてもよい。この場合には、前記熱硬化型レジスト材料が、スクリーン印刷法により補助電極13の上及び補助電極13の側面部のみが電気絶縁材料で覆われるように塗布されるのが好ましい。スクリーン印刷法により前記熱硬化型レジスト材料を塗布する場合は、補助電極13の上部及び補助電極13の側面部の鉛直上方に対応する位置に電気絶縁材料を印刷することが好ましい。この場合に、一般的な熱硬化型レジスト材料は、平坦性を有するため、補助電極13の上部と下部との段差があるのに対し、その側面部が完全に被覆されるように成膜される。
【0075】
続いて、図6に示すように、有機層15を絶縁部14で覆われた補助電極13、及び開口13Cを介して露出する第一電極12(図5参照)の上に形成する。有機層15の形成方法としては、真空蒸着、スパッタリング、プラズマ、イオンプレーティングなどの乾式成膜法やスピンコーティング、ディッピング、フローコーティング、インクジェットなどの湿式成膜法などの公知の方法を採用することができる。この際、有機層15が所定の位置に形成されるようにマスキング手段を施して層形成を行うのが好ましい。
【0076】
次に、図7に示すように、第二電極16を有機層15の上に形成する。その際、第二電極16が、取出補助電極13Aと接触して電気的に接続しないようにするとともに、取出補助電極13Bと接触して電気的に接続されるようにする。第二電極16の形成方法としては、真空蒸着やスパッタリングなどの公知の方法を採用することができる。この際、第二電極16が所定の位置に形成されるようにマスクスパッタリングなどを行うのが好ましい。
【0077】
さらに、図8に示すように、流動性の放熱部材19を枠状に形成された補助電極13の開口13Cの内側に注入し、放熱部材19が当該枠から溢れ出ないようにする。
【0078】
(第二基板側の製造工程)
次に、第二基板17側の製造工程を説明する。この製造工程では、封止部材18としてフリットガラスを用いる。
まず、封止部材18を第二基板17の第一基板11と接合される面の上に塗布する。この際、第二基板17の外周縁に沿って封止部材18を塗布する。封止部材18の塗布幅は、接合強度を確保しうる接合幅となるように塗布する。塗布する方法としては、ディスペンサ法などが挙げられる。
なお、図9に第二基板17に対して下側に封止部材18が塗布された状態が示されているが、これは図9が第一基板11と第二基板17とを接合する状態を説明する図であるためである。したがって、実際の第二基板17側の製造工程では、第二基板17を下にして、第二基板17の上に封止部材18を塗布する。
【0079】
この製造工程で用いる封止部材18は、塗布する時点ではペースト状であり、有機溶剤を含んでいるため、有機溶剤を除去する必要がある。
そこで、封止部材18を塗布した第二基板17の面とは反対側の面に対してホットプレートなどの加熱手段を配置し、当該反対側の面から第二基板17を加熱して焼成を行う。この焼成によって、前述のアルコール成分を除去する。なお、加熱方法としては、加熱炉内に、当該第二基板17を入れる方法としてもよい。
【0080】
(貼り合わせ工程)
図9に示すように、第一基板11の第一電極12などが形成された面を上に向けて、第二基板17の封止部材18が塗布された面を下に向けて、所定の接合部位に合わせて貼り合わせる。貼り合わせに際しては、正確な部位で接合するために位置決め治具などを用いてもよい。
続いて、第二基板17を上にした状態で封止部材18が塗布された部位に対してレーザー照射などを行い、当該部位を局所的に加熱する。この加熱によって、封止部材18を溶融させ、封止部材18と接する部材(第一基板11など)とを接合し、有機層15を封止する。接合する際には、放射温度計を使用し、封止部材18の温度が600℃になるよう、レーザー出力、及びレーザー移動速度を調整する。
このようにして、光電変換装置1が製造される。
【0081】
以上のような第一実施形態によれば、次のような作用効果を奏する。
(1)光電変換装置1を第一基板11の厚さ方向断面で見た場合に、補助電極13の厚さ寸法が、有機層15の厚さ寸法よりも大きい。そのため、第二基板17は、第一電極12の上に枠状に形成された補助電極13によって支持されている。すなわち、第一電極12と有機層15との間に補助電極13を配置することで、補助電極13は、従来の補助電極としての機能だけで無く、第一基板11と第二基板17との間隔を保持するためのスペーサとしての機能も果たす。光電変換装置1では、第一基板11、及び第二基板17に従来の封止構造で採用される光電変換素子を収容するための凹部を形成する必要がない。すなわち、第二基板17は、有機層15の発光部に接触することはないため、有機層15を押し潰すことなく光電変換装素子を封止することができる。ゆえに、光電変換装装置1は、従来の封止構造をとることなく、安全に光電変換素子を封止することができ、厚さ寸法も従来に比べて小さくすることができる。
【0082】
(2)光電変換装置1は、第一基板11、及び第二基板17に当該凹部を形成する必要が無いので、安価に製造できる。
【0083】
(3)光電変換装置1では、第一基板11上に有機層15の形成領域とは別にリブやスペーサなどを形成するための領域を確保しなくてもよいので、有機層15の形成領域を広く取ることができる。ゆえに、発光面積を大きくすることができる。
【0084】
(4)発光部15Aにおいて第二電極16が第二基板17と離間しているので、補助電極13によるスペーサ機能が確実に果たされ、発光部15Aにおいて第二基板17と第二電極16との接触が防止される。そのため、第二電極16や有機層15の損傷が防止される。
【0085】
(5)非発光部15Bでは、第二電極16が第二基板17と接触することで、第二基板17が支持され、第一基板11と第二基板17との間隔を保持できる。そして、第一基板、及び第二基板が貼り合わされる際にも、第二基板は、当該第二電極によって支持されるので、第一基板と第二基板との間隔を保持しながら貼り合わせ作業を行い易い。
【0086】
(6)補助電極13が枠状に形成されているので、流動性の放熱部材19を当該枠内部に注入すれば、枠外に流れ出ない。そのため、放熱部材19が第一基板11と第二基板17との接合部へ流出したり、さらには光電変換装置1の外部へと流出したりすることを防止できる。
【0087】
(7)補助電極13と第一電極12との間では電気的に接続され、補助電極13と有機層15との間では絶縁部14によって電気的に絶縁されている。電気的に絶縁されていない場合は、補助電極13の枠部分周辺の有機層15が優先的に発光するため、線状に発光するおそれがある。しかし、電気的に絶縁されている場合は、第一電極12に対応する有機層15の部分が発光するので、発光部15Aを面状に発光させることができる。
【0088】
(8)フリットガラスで構成される封止部材18で第一基板11と第二基板17とを接合して有機層15を封止するので、接合幅を狭めても、接合強度が高く、封止性能に優れた狭額縁構造の光電変換装置1を得ることができる。
【0089】
[第二実施形態]
次に本発明に係る第二実施形態について、図面に基づいて説明する。
第二実施形態に係る光電変換装置2は、図10に示すように、補助電極13と有機層15との間に絶縁部が形成されていない点を除いて、第一実施形態の光電変換装置1と同様の構成である。第二実施形態の説明において第一実施形態と同一の構成要素は同一符号を付して説明を省略もしくは簡略にする。
光電変換装置2では、補助電極13が形成された部分周辺の有機層15が優先的に発光する傾向にある。そのため、補助電極13の枠を構成するライン間隔を小さくすることで、発光する箇所同士が近くなり、発光部を面状に発光させることができる。
【0090】
このような第二実施形態によれば、第一実施形態における(1)から(6)まで、及び(8)と同じ効果を奏するとともに、以下の効果を奏する。
【0091】
(9)絶縁部を形成する必要がないため、光電変換装置2は、光電変換装置1に比べて、簡略な工程で製造できる。
【0092】
[第三実施形態]
次に本発明に係る第三実施形態について、図面に基づいて説明する。
第三実施形態に係る光電変換装置は、図11に示すように、第一実施形態における補助電極13の形状と異なる点を除いて、第一実施形態の光電変換装置1と同様の構成である。第三実施形態の説明において第一実施形態と同一の構成要素は同一符号を付して説明を省略もしくは簡略にする。
第三実施形態に係る光電変換装置において、補助電極33によって形成される補助電極パターンは、第一実施形態に係る補助電極13のように枠状ではなく、フォークの先端のような形状となっている。すなわち、複数本の補助電極33のラインが略平行に第一基板11の一辺側から対辺側に向かって伸びている。そして、補助電極33のラインの先端33Dは、隣のラインの先端33Dと連結していない。すなわち、当該補助電極パターンは、補助電極13の4つの枠のように第二電極16の面に対して閉じた領域が形成されているのではなく、いずれも開放されている。
【0093】
第三実施形態に係る光電変換装置において、放熱部材を第二電極16と第二基板17との間に注入する場合は、放熱部材が流れ出さないように、粘度の高いペースト状の材料を用いたり、補助電極33とは別に図示しない堤防部を設けたりすればよい。堤防部は、第一基板11と第二基板17との接合部に放熱部材が到達しないように設ければよい。例えば、上記ラインの先端33Dを連結して補助電極33の開放している部分を閉じるように設ける。但し、この堤防部の厚さ寸法は、堤防部の上面が第二電極16と接触しない程度にする。
【0094】
第三実施形態においても、第一実施形態と同様にして、取出電極12Aの上には、陽極としての第一電極12から電気的取出しを行うための取出補助電極33Aが形成されている。また、取出電極12Bの上には、陰極としての第二電極16から電気的取出しを行うための取出補助電極33Bが形成されている。取出補助電極33Aは、補助電極33に連続して形成され、取出補助電極33Bは、溝部11Cを介して補助電極33とは連続せずに形成されている。取出補助電極33Bは、補助電極33や第一電極12と電気的に接続していない。
【0095】
第三実施形態においても、図12に示すように、第一実施形態と同様にして、補助電極33の上に絶縁部34が形成され、補助電極33のラインの先端33Dも絶縁部34に覆われており、有機層15と補助電極33との間が電気的に絶縁されるようになっている。
【0096】
このような第三実施形態によれば、第一実施形態における(1)から(5)まで、(7)、及び(8)と同じ効果を奏するとともに、以下の効果を奏する。
【0097】
(10)補助電極33の補助電極パターンは、補助電極13の4つの枠のように閉じた領域が形成されているのではなく、いずれも開放されている。そのため、光電変換装置をフレキシブル用途に用いて繰り返し折り曲げなどを行っている間に、第二電極16が補助電極33の補助電極パターンに沿って断線した場合でも、第二電極16に非導通部が形成されることなく、当該開放されている部分を通じて導通が可能になる。ゆえに、非発光部分の発生を長期にわたって防止できる。
【0098】
一方で、補助電極13の補助電極パターンが枠状になって、閉じた領域が形成されていると、同様に繰り返し折り曲げにより第二電極16が当該枠に沿って断線した場合には、第二電極16の面内に枠状の断線部分が形成されることになる。この場合、当該枠内は、非導通部となるので、この非導通部と対応する位置の有機層15が発光しなくなるおそれがある。但し、第二基板17を金属とすれば、当該枠内に対して第二基板17を介して導通させることができるので、当該枠に沿って断線した場合でも有機層15を発光させることができる。
【0099】
[変形例]
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲で以下に示される変形をも含むものである。
【0100】
第三実施形態の補助電極33の補助電極パターンの他の形態として、図13に示すような、くし歯状の補助電極43の補助電極パターンであったり、図14に示すような渦巻状の補助電極53の補助電極パターンであったりしてもよい。すなわち、どちらの形状も、閉じた領域が形成されずに、開放されている形状である。なお、図13、及び図14において第一実施形態と同一の構成要素は同一符号を付しており、説明を省略する。
補助電極のパターンは、その他、網目状、直線もしくは曲線のストライプ状、又は櫛型などに配置したものでもよい。さらに、正三角形、二等辺三角形、直角三角形などの三角形、正方形、長方形、菱形、平行四辺形、台形などの四角形、六角形、八角形などのn角形、円、楕円、星形、ハニカム形などを組み合わせた幾何学図形のラインパターンを規則的に組み合わせて配置したものでもよいし、不規則な形状、不規則なパターンなどで構成してもよい。
【0101】
第一実施形態の光電変換装置1の光取出し方向が、第一基板11と反対側である第二基板17側である場合は、上記の透光性の第一基板11に加えて、シリコン基板、金属基板などの不透明基板を用いることもできる。
【0102】
また、第一実施形態で説明した製造工程のように光電変換装置1を個別に製造するのでなく、多数個取りで製造してもよい。
例えば、470mm×370mmの1枚の第一基板から、80mm×80mmのサイズの光電変換装置を製造する場合で考えれば、各光電変換装置間の距離を考慮して、20個の光電変換装置1を製造できる。
この場合の製造工程としては、例えば次のようにして行うことができる。
当該第一基板上に、第一実施形態で説明したように、第一電極から順に形成し、当該第一基板と同サイズの第二基板を減圧下で貼り合わせて接合する。その後、大気圧下で、貼り合わせ後の基板をレーザーでカットして、各光電変換装置1を取り出す。
【0103】
光電変換装置に用いられる光電変換素子として、上記実施形態では有機EL素子を例示して説明したが、これに限られず、有機薄膜太陽電池素子や色素増感太陽電池素子などの気密を保持する必要のある素子に適用される。このような太陽電池素子は、受光面積を減らすことなく、厚さ寸法を小さくでき、かつ安価に製造できる。
有機薄膜太陽電池素子の場合、第一基板11側を光の入射面とした場合に、第一基板11側から順に、透明導電膜、P型有機半導体、N型有機半導体、導電膜を積層させた構造とすることができる。透明導電膜は、第一基板11側からの光が太陽電池層(P型有機半導体及びN型有機半導体)に到達できるよう、透明の電極部材を用いることができ、ITO(酸化インジウム錫)、ZnO(酸化亜鉛)、SnO2(酸化錫)などの材料から形成される透明電極とすることができる。
導電膜は、反射膜として、光の吸収が少なく反射の高いアルミ、金、銀、チタンなどの金属電極を用いることができる。また、それらの金属同士の多層構造電極、あるいはそれらの金属と別の金属や上記透明電極材のような導電性酸化物や導電性の有機物との多層構造の電極を反射膜として用いても良い。その他の構成は、上記実施形態と同じものを採用することができる。
【0104】
上記実施形態では、放熱部材19が流動性を有するものとして説明したが、流動性を有していなくても、有機層15で発生した熱を第二基板17側へ伝達できるように、第二基板17と第二電極16との間に備えることが可能な放熱部材であればよい。
また、放熱部材19を備えずに、第二基板17と第二電極16との間に不活性ガスを注入してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明の光電変換装置は、発光面積が大きく、厚さ寸法が小さいため、通常の有機EL装置や有機薄膜太陽電池として用いるだけでなく、フレキシブル有機EL照明やフレキシブル太陽電池などに用いることができる。
【符号の説明】
【0106】
1,2…光電変換装置
11…第一基板
12…第一電極
13,33,43,53…補助電極
14,34…絶縁部
15…有機層
15A…発光部
16…第二電極
17…第二基板
18…封止部材
19…放熱部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換装置、及び光電変換装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に形成された一対の電極間に有機化合物層を有する光電変換素子を備えた光電変換装置が提案されている。光電変換素子として、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子という。)や有機薄膜太陽電池素子などを挙げることができる。有機EL素子は、電気を光に変換し、有機薄膜太陽電池素子は、光を電気に変換する素子である。
このような光電変換素子においては、水や空気が素子寿命などの性能に大きく影響を及ぼすため、光電変換素子を水や空気から保護するための封止構造が重要であり、種々の封止構造が検討されている。
【0003】
従来の封止構造としては、例えば、ガラス基板上に作製された有機EL素子を封止するために、封止基板をガラス基板に貼り合わせ、有機EL素子を密封する構造が挙げられる。基板同士を貼り合わせて有機EL素子を密封することで、有機EL素子と外気との接触が避けられ、有機EL素子の劣化が防止される。そして、このような封止構造では、気圧の変化や基板の反りなどの要因によりガラス基板と封止基板とが接触し、ガラス基板上に作製された有機EL素子が両基板間に挟まれて電気的に短絡することがある。このような短絡を防ぐため、封止基板、及びガラス基板の少なくとも一方に凹部を形成し(ザグリを設けるともいう。)、当該凹部に有機EL素子を収容して、封止基板と有機EL素子とが接触しないようにしている。
例えば、特許文献1には、凹部が形成された封止缶により有機EL素子が封止された有機EL発光装置が記載されている。この有機EL発光装置は、照明装置としても用いられる。この有機EL発光装置では、透明ガラス基板上に、透明電極が形成され、この透明電極上に所定パターンの補助電極が形成され、当該補助電極は、積層構造の絶縁層によって被覆されている。また、この透明電極上に有機EL層が形成され、絶縁層と有機EL層を被覆して対向電極が設けられている。そして、封止缶と透明ガラス基板とが接着材を介して透明ガラス基板の外周縁で接合され、有機EL素子が当該凹部に収容され、封止缶と対向電極とが接触しないようになっている。
また、特許文献2には、第1保護膜、及び第2保護膜からなる保護部により外部の水分または酸素による劣化から発光領域を保護する電界発光パネルが記載されている。この電界発光パネルは、照明の光源にも用いられる。この電界発光パネルは、基板上に、第1電極と、第1電極上に形成される補助電極と、第1電極、及び補助電極上に形成され発光領域を画定する発光層と、発光層上に形成された第2電極とを含む。保護部は、第1保護膜と第2保護膜で形成されている。
但し、特許文献2に記載の電界発光パネルでは、保護部が膜からなるので外部からの衝撃に弱い。そのため、実際にこの電界発光パネルを照明装置として用いる場合には、凹部が形成された封止基板と基板とを基板の外周縁で接合し、発光領域を当該凹部に収容し、封止基板と第2電極とが接触しないようにする封止構造が採用される。
【0004】
このように、従来の封止構造では、凹部が形成された封止基板や封止缶を用いるので、封止基板や封止缶と接合相手の基板とを接合する箇所は、当該接合相手の基板の外周縁近傍となり、この箇所で封止基板等が支持される。そのため、封止基板や封止缶を支持するための支持部材を別途配置する必要が無いので、支持部材を配置したことによる非発光部が形成されない。また、光電変換装置の製造時に、封止基板等と有機EL素子等とが接触することを防止できる。
特に、特許文献1の有機EL発光装置や特許文献2の電界発光パネルのように、有機EL素子を照明装置の光源に用いることを想定している場合には、可能な限り基板上のほぼ全面に電極や発光層を形成して発光部面積を大きくする。そして、透明電極または第1電極上には、有機EL素子の発光ムラを少なくするために補助電極を形成する。この補助電極が形成された部分は、非発光部となるため、非発光部をさらに増やさないためにも、支持部材を別途配置する封止構造は、採用されていない。よって、凹部が形成された封止基板等を用いた封止構造が主流となっている。
また、光電変換素子が有機薄膜太陽電池素子の場合も、受光部の面積を大きくする必要があるので、同様に、凹部が形成された封止基板等を採用する封止構造が主流となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−10243号公報
【特許文献2】特開2008−103305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、光電変換素子を収容できる凹部を形成するためには、封止基板や特許文献1に記載された封止缶の厚さ寸法を大きくしなければならない。そのため、当該凹部を形成した封止基板や封止缶を用いる封止構造では、光電変換装置を薄型化することができないという問題がある。
また、当該凹部を形成するための加工費用が高いという問題もある。
【0007】
本発明の目的は、厚さ寸法を小さくでき、かつ安価に製造できる光電変換装置、及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光電変換装置は、
第一基板、第一電極、有機層、第二電極、及び第二基板が、この順に配置される光電変換装置であって、
前記第一電極と前記有機層との間に補助電極が配置され、
前記光電変換装置を前記第一基板の厚さ方向断面で見た場合に、前記補助電極の厚さ寸法は、前記有機層の厚さ寸法よりも大きい
ことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、光電変換装置を第一基板の厚さ方向断面で見た場合に、第一電極と有機層との間に配置された補助電極の厚さ寸法が、有機層の厚さ寸法よりも大きい。そのため、例えば、第一基板を下、第二基板を上にして当該断面で見た場合、補助電極は、第二基板側へ隆起し、補助電極が形成された部分の有機層、及び第二電極は、当該補助電極の形状に対応して第二基板側へ隆起する。そして、この隆起する部分にて第二基板を支持することができる。すなわち、第一電極と有機層との間に当該補助電極を配置することで、当該補助電極は、補助電極としての機能だけで無く、第一基板と第二基板との間隔を保持するためのスペーサとしての機能も果たす。
よって、本発明の光電変換装置では、第一基板、及び第二基板に従来技術のザグリのような光電変換素子を収容するための凹部が不要である。ゆえに、本発明の光電変換装置は、従来の封止構造と比べて厚さ寸法を小さくでき、かつ安価に製造できる。
このように、厚さ寸法を小さくできるため、本発明の光電変換装置は、光電変換素子に有機EL素子を用いたフレキシブル照明用途にも適している。
【0010】
本発明の光電変換装置において、
前記第二電極、及び前記第二基板が接触している
ことが好ましい。
【0011】
この発明によれば、補助電極、及び第二基板の間には、有機層、及び第二電極が、この順に配置され、第二電極、及び第二基板が接触している。そのため、第二基板が有機層、及び第二電極を介して補助電極によって支持され、第一基板と第二基板との間隔が保持される。また、第一基板、及び第二基板が貼り合わされる際にも、第二基板は、当該第二電極によって支持されるので、第一基板と第二基板との間隔を保持しながら貼り合わせ作業を行い易い。
【0012】
本発明の光電変換装置において、
前記第一基板、及び前記第二基板の間には、前記有機層を封止する封止部材が前記第一基板、及び前記第二基板の外周縁に沿って配置され、
前記補助電極の厚さ寸法、及び前記封止部材の厚さ寸法は、下記式(1)を満たす
ことが好ましい。
【0013】
[数1]
0.2X < Y < 5X ・・・(1)
【0014】
但し、上記式(1)において、前記補助電極の厚さ寸法をY[μm]、前記封止部材の厚さ寸法をX[μm]とする。
【0015】
この発明によれば、補助電極の厚さ寸法Yと、封止部材の厚さ寸法Xとが上記式(1)の関係を満たすことにより、第一基板や第二基板の撓みや反りなどが生じても、第一基板と第二基板との間隔を確実に保持できる。
【0016】
本発明の光電変換装置において、
前記補助電極の厚さ寸法が、0.5μm以上30μm以下である
ことが好ましい。
【0017】
この発明によれば、補助電極の厚さ寸法Yが、0.5μm以上30μm以下であるので、上記と同様に、第一基板や第二基板の撓みや反りなどが生じても、第一基板と第二基板との間隔を確実に保持できる。
【0018】
本発明の光電変換装置において、
前記封止部材は、絶縁性材料からなる
ことが好ましい。
【0019】
この発明によれば、封止部材が絶縁性材料からなるので、第一電極と第二電極との短絡を防止できる。
【0020】
本発明の光電変換装置において、
前記補助電極が配置されない前記第一電極、及び前記第二電極の間の領域は、前記有機層が配置される発光部とされ、
前記発光部では、前記第二電極が前記第二基板と離間している
ことが好ましい。
【0021】
この発明によれば、補助電極が配置されない第一電極と第二電極との間には有機層だけが配置されるので、その部分が発光部となる。そして、発光部では、第二電極が第二基板と離間しているので、補助電極によるスペーサ機能が確実に果たされ、発光部において第二基板と第二電極との接触を防止できる。ゆえに、第二電極や有機層の損傷を防止できる。
【0022】
本発明の光電変換装置において、
前記発光部の前記第二電極、及び前記第二基板の間には、放熱部材が配置されている
ことが好ましい。
【0023】
この発明によれば、放熱部材を介して光電変換素子で発生した不要な熱を第二基板側へ効率的に伝達させることができる。
【0024】
本発明の光電変換装置において、
前記光電変換装置を前記第一基板の面に向かって見た場合、前記補助電極は、前記発光部を囲む枠状に形成されている
ことが好ましい。
【0025】
この発明によれば、補助電極が発光部を囲む枠状に形成されているので、発光部の第二電極、及び第二基板の間に放熱部材が配置されれば、放熱部材が第一基板と第二基板との接合部に配置されて第一基板と第二基板との接合が妨げられたり、光電変換装置外部へはみ出したりすることを防止できる。
さらに、放熱部材が流動性を有する場合には、放熱部材が当該枠内に配置され、当該枠外への流出を防止できる。すなわち、厚さ寸法が有機層のそれよりも大きい補助電極が枠状に形成されたことで、補助電極は、流動性の放熱部材に対して堤防の機能を果たす。
そのため、放熱部材が第一基板と第二基板との接合部へ流出して接合を妨げたり、光電変換装置外部へと流出したりすることを防止できる。
【0026】
本発明の光電変換装置において、
前記光電変換装置を前記第一基板の面に向かって見た場合、前記補助電極は、前記発光部を囲み、一部が開放されたパターン状に形成されている
ことが好ましい。
【0027】
この発明によれば、補助電極のパターンは、発光部を囲むと共に、その一部が開放されている。そのため、光電変換装置をフレキシブル用途に用いて繰り返し折り曲げなどを行っている間に第二電極が補助電極のパターンに沿って断線した場合でも、第二電極には、補助電極の一部開放されたパターンに対応して開放された部分が残る。すなわち、第二電極には、断線部分によって閉じた領域が形成されず、電気的に接続した部分が残る。ゆえに、この発明によれば、第二電極が断線しても、この開放されている部分を通じて導通が可能ゆえ、第二電極に非導通部が形成されるのを防止できる。例えば、光電変換素子が有機EL素子の場合には、非発光部分の発生を防止できる。
一方で、補助電極のパターンが枠状に形成され、開放された部分が形成されていないと、上記と同様の繰り返し折り曲げによって第二電極が補助電極の枠状のパターンに沿って断線するおそれがある。第二電極が枠状に断線してしまうと、第二電極には、断線部分によって閉じた領域が形成され、開放された部分が残らない。すなわち、第二電極には、電気的に接続していない部分が形成されてしまう。よって、第二電極の枠状に断線した部分の当該枠内に通電しなくなる。例えば、光電変換素子が有機EL素子の場合には、この第二電極の当該枠内と対応する位置の有機層が発光しなくなる。
【0028】
本発明の光電変換装置において、
前記補助電極と前記第一電極とは導通し、前記補助電極と前記有機層とは絶縁されている
ことが好ましい。
【0029】
この発明によれば、補助電極と第一電極とは電気的に導通し、補助電極と有機層とは電気的に絶縁されている。そのため、光電変換装置が有機EL素子である場合に、補助電極の枠部分周辺が線状に発光するのを防ぎ、発光部を面状に発光させることができる。また、補助電極と第二電極との短絡を防止できる。
【0030】
本発明の光電変換装置において、
前記補助電極と前記有機層との間に絶縁部が形成されている
ことが好ましい。
【0031】
この発明によれば、補助電極と有機層との間に形成された絶縁部によって補助電極と有機層との間が電気的に絶縁されている。そのため、光電変換装置が有機EL素子である場合に、上記と同様に補助電極の枠部分周辺が線状に発光するのを防ぎ、発光部を面状に発光させることができる。また、補助電極と第二電極との短絡を防止できる。
【0032】
本発明の光電変換装置において、
前記絶縁部は、ポリイミドを含む
ことが好ましい。
【0033】
この発明によれば、絶縁部がポリイミドを含むので、絶縁部の強度や耐熱性が向上する。その結果、絶縁部は、損傷や劣化し難くなるので、補助電極と有機層との導通を防止する効果が向上する。
【0034】
本発明の光電変換装置において、
前記補助電極は、銀、金、タングステン、及びネオジウムの内の少なくとも一つと樹脂とを含む
ことが好ましい。
【0035】
この発明によれば、補助電極が銀、金、タングステン、及びネオジウムの内の少なくとも一つと樹脂とを含むので、補助電極を形成するための材料をペースト状にできる。そのため、補助電極の厚さ寸法を有機層の厚さ寸法よりも大きく形成し易くできる。
【0036】
本発明の光電変換装置において、
前記第一基板は、透光性基板であり、
前記第一電極は、透明電極である
ことが好ましい。
【0037】
この発明によれば、第一基板が透光性基板であり、第一電極が透明電極であるので、第一基板側から効率的に光を取り出したり、受光したりすることができる。
【0038】
本発明の光電変換装置において、
前記第二基板は、金属である
ことが好ましい。
【0039】
この発明によれば、第二基板が金属であるので、第二電極に対する導通を確保できる。例えば、第二電極の一部が断線しても、第二基板を通じて導通させることができる。
また、第二電極を透明電極とすれば、当該第二基板を反射板として利用できる。
【0040】
本発明の光電変換装置の製造方法は、
第一基板、第一電極、有機層、第二電極、及び第二基板が、この順に配置される光電変換装置の製造方法であって、
前記第一基板の一方の面に前記第一電極を形成する工程と、
前記第一電極の上に補助電極を形成する工程と、
前記第一電極、及び前記補助電極の上に前記有機層を形成する工程と、
前記有機層の上に、前記第二電極を形成する工程と、
前記第二電極を形成した後、前記第一基板と前記第二基板とを貼り合わせて接合する工程と、を実施し、
前記光電変換装置を前記第一基板の厚さ方向断面で見た場合に、前記補助電極の厚さ寸法を前記有機層の厚さ寸法よりも大きく形成する
ことを特徴とする。
【0041】
この発明によれば、補助電極の厚さ寸法を有機層の厚さ寸法よりも大きく形成するので、上記のとおり、補助電極は、補助電極としての機能だけで無く、第一基板と第二基板との間隔を保持するためのスペーサとしての機能も果たす。そのため、第一基板と第二基板とを接合する際も、第一基板と第二基板との間隔を保持したまま接合を行うことができる。
さらに、第一基板、及び第二基板にザグリのような凹部を形成する必要もないので、光電変換装置の厚さ寸法を小さくできるし、安価に製造できる。
【0042】
本発明の光電変換装置の製造方法において、
前記補助電極を形成する工程で、前記第一基板の面に向かって見た場合に、前記補助電極を枠状に形成し、
前記第二電極を形成する工程の後であって前記第一基板と前記第二基板とを貼り合わせて接合する工程の前に、前記補助電極の当該枠内に流動性の放熱部材を注入する工程を実施する
ことが好ましい。
【0043】
この発明によれば、補助電極を枠状に形成するので、その枠内に流動性の放熱部材を注入する際に、当該放熱部材が枠から溢れ出すことを防止できる。すなわち、厚さ寸法が有機層のそれよりも大きい補助電極が枠状に形成されたことで、当該放熱部材に対して堤防の機能を果たす。
そのため、放熱部材の注入作業が容易になる。さらに、放熱部材が第一基板と第二基板との接合部へ流出したり、光電変換装置外部へと流出したりすることを防止できる。
【0044】
本発明の光電変換装置の製造方法において、
前記補助電極を形成する工程の後であって前記有機層を形成する工程の前に、前記補助電極の上に絶縁部を形成する工程を実施し、
前記有機層と前記補助電極との間に前記絶縁部を介在させる
ことが好ましい。
【0045】
この発明によれば、有機層と補助電極との間に絶縁部が介在するので、有機層と補助電極とが電気的に絶縁された状態とすることができる。そのため、光電変換装置が有機EL素子である場合に、補助電極の枠部分周辺が線状に発光するのを防ぎ、発光部を面状に発光させることができる。
また、この発明によって製造される光電変換装置は、補助電極の厚さ寸法を有機層の厚さ寸法よりも大きく形成するので、補助電極を形成するための材料に銀ペーストなどの金属、及び樹脂を含むペースト状の材料を用いて厚さ寸法を大きく形成し易くすることがある。そして、ペースト状の材料を用いた補助電極の形成に続いて、絶縁部を形成することなく有機層を蒸着法やスパッタリング法などのように減圧下で形成しようとすると、ペースト状の材料からガスが放出して、有機層に不純物が混入するおそれがある。
しかしながら、この発明によれば、補助電極の上に絶縁部が形成されるので、補助電極の表面を絶縁部で覆うことができる。そのため、有機層の形成時に補助電極からのガス放出を防止し、有機層への不純物混入を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第一実施形態に係る光電変換装置の基板厚さ方向に沿った断面図。
【図2】前記実施形態に係る光電変換装置の製造工程を示す第一の図であって、(A)は斜視図、(B)は断面図。
【図3】前記実施形態に係る光電変換装置の製造工程を示す第二の図であって、(A)は斜視図、(B)は断面図。
【図4】前記実施形態に係る光電変換装置の製造工程を示す第三の図であって、(A)は斜視図、(B)は断面図。
【図5】前記実施形態に係る光電変換装置の製造工程を示す第四の図であって、(A)は斜視図、(B)は断面図。
【図6】前記実施形態に係る光電変換装置の製造工程を示す第五の図であって、断面図。
【図7】前記実施形態に係る光電変換装置の製造工程を示す第六の図であって、断面図。
【図8】前記実施形態に係る光電変換装置の製造工程を示す第七の図であって、断面図。
【図9】前記実施形態に係る光電変換装置の製造工程を示す第八の図であって、断面図。
【図10】本発明の第二実施形態に係る光電変換装置の基板厚さ方向に沿った断面図。
【図11】本発明の第三実施形態に係る光電変換装置の補助電極パターンを示す斜視図。
【図12】本発明の第三実施形態に係る前記補助電極パターンに対して絶縁部を形成した状態を示す斜視図。
【図13】本発明の補助電極パターンの第一の変形例を示す斜視図。
【図14】本発明の補助電極パターンの第二の変形例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0047】
[第一実施形態]
以下、本発明の第一実施形態を図面に基づいて説明する。
(光電変換装置の全体構成)
図1は、本発明の第一実施形態に係る光電変換装置1の基板厚さ方向に沿った断面図である。図2〜図9は、光電変換装置1の製造工程を説明する斜視図、もしくは断面図である。
光電変換装置1では、第一基板11、第一電極12、有機層15、第二電極16、及び第二基板17が、この順に配置される。第一電極12、有機層15、及び第二電極16で光電変換素子が構成され、第一実施形態では、光電変換素子が有機EL素子である場合について説明する。また、第一電極12と有機層15との間には、補助電極13が配置され、補助電極13と有機層15との間には、絶縁部14が形成されている。さらに、第一基板11、及び第二基板17の間には、有機層15を封止する封止部材18が第一基板11、及び第二基板17の外周縁に沿って配置されている。そして、第二電極16と第二基板17との間には、放熱部材19が備えられている。
なお、第一実施形態の説明において、上下左右の方向を示す場合は、図1の断面図のように、第一基板11を下に、第二基板17を上にした場合に基づいているものとする。
また、図2おいて、(B)の断面図は、(A)のII−II線に沿って第一基板11を切断し、矢印方向に見た場合の断面図である。同様に図1、及び図3〜9の断面図についても、図2と同じ第一基板11の位置で切断して、矢印方向に見た断面図を示すものとする。
【0048】
(第一基板)
第一基板11は、第一電極12などを支持するための平滑な板状の部材である。
第一実施形態では、第一基板11を透光性の基板とし、第一基板11側を有機EL素子の光の取出し方向とする。そのため、第一基板11の可視領域(400nm以上700nm以下)の光の透過率は、50%以上であることが好ましい。具体的には、ガラス板、ポリマー板などが挙げられる。ガラス板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英などが挙げられる。またポリマー板としては、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリエーテルサルファイド系樹脂、ポリサルフォン系樹脂などを原料として用いてなるものを挙げることができる。光電変換装置1がフレキシブル性を必要とする用途に用いられる場合は、第一基板11の材料としては、可撓性のある材料が好ましく、例えば、ポリマー板が好ましい。
また、第一基板11の寸法としては、複数の光電変換装置1を隣接配置させて照明の光源とする場合には、例えば、縦の長さ寸法がおよそ80mmから100mmまで、横の長さ寸法がおよそ80mmから100mmまで、厚さ寸法が0.1mm以上から5mmまでの板材を用いることができる。なお、大型の基板材料から複数枚の第一基板11を切り出して用いてもよい。
【0049】
第一基板11の左右の端部は、それぞれ第一電極12からの電気的取出しを行うための取出電極12Aが上部に配置される接続部11A、及び第二電極16からの電気的取出しを行うための取出電極12Bが上部に配置される接続部11Bである。
【0050】
(第一電極)
第一電極12は、有機EL素子における陽極として、正孔を有機層15に注入する役割を担うものであり、4.5eV以上の仕事関数を有することが効果的である。
第一電極12は、第一基板11上に形成される。このとき、第一基板11の接続部11Aには、陽極としての第一電極12から電気的取出しを行うための取出電極12Aが第一電極12に連続して形成される。また、第一基板11の接続部11Bには、陰極としての第二電極16から電気的取出しを行うための取出電極12Bが溝部11Cを介して形成されている。取出電極12Bは、第一電極12と電気的に接続していない。
【0051】
第一電極12に用いる材料の具体例としては、酸化インジウム錫合金(ITO)、酸化錫(NESA)、酸化インジウム亜鉛酸化物、金、銀、白金、銅などが挙げられる。
光電変換装置1では、有機層15からの発光を第一電極12側から取り出すため、第一電極12の可視領域の光の透過率を10%より大きくすることが好ましい。また、第一電極12のシート抵抗は、数百Ω/□(Ω/sq。オーム・パー・スクウェア。)以下が好ましい。第一電極12の厚さ寸法は、用いる材料にもよるが、通常10nm以上1μm以下、好ましくは10nm以上200nm以下の範囲で選択される。
【0052】
(補助電極)
補助電極13は、第一電極12に用いる透明電極材料の電気抵抗による電圧低下を防ぎ、第一電極12に電圧を供給し、第一基板11上の位置による第一電極12に供給される電圧のばらつきを小さくする。補助電極13と第一電極12との間では、両者が電気的に接続されている。また、補助電極13と有機層15との間では、後に詳述する絶縁部14によって、両者が電気的に絶縁されている。
補助電極13は、図1や図3のように、第一電極12の上であって、複数のラインが離間して形成されている。そして、補助電極13は、開口13Cを4つ有する枠状に形成され、第一電極12は、開口13Cを介して露出する。
また、取出電極12Aの上には、第一電極12から電気的取出しを行うための取出補助電極13Aが形成されている。同様にして、取出電極12Bの上には、第二電極16から電気的取出しを行うための取出補助電極13Bが形成されている。取出補助電極13Aは、補助電極13に連続して形成され、取出補助電極13Bは、溝部11Cを介して補助電極13とは連続せずに形成されている。取出補助電極13Bは、補助電極13や第一電極12と電気的に接続していない。
補助電極13の形状は、図3(A)に示すような枠の数や大きさに制限されず、補助電極13のいずれの枠も、第二電極16の面に対して閉じていればよい。すなわち、補助電極13は、堤防のように形成されていればよい。
【0053】
補助電極13の厚さ寸法は、図1の断面図で見た場合、有機層15の厚さ寸法よりも大きい。
そして、補助電極13の厚さ寸法をY[μm]とし、後に詳述する封止部材18の厚さ寸法をX[μm]としたときに、前記式(1)を満たすことが好ましい。さらには、補助電極13の厚さ寸法は、1μm以上50μm以下とするのが好ましい。
補助電極13の巾寸法や補助電極13同士の間隔は、素子構成や第一電極12の導電率、補助電極13の枠の形状や数に応じて適宜設定される。しかしながら、補助電極13が形成された部分は、第一基板11の面に向かって見た場合、発光しない部分(非発光部15B)なので、発光面積を大きくする観点からすると、補助電極13の巾寸法は、小さい方が好ましく、補助電極13のライン間隔は、大きい方が好ましい。
補助電極13の抵抗率は、10−4Ωcm以下が好ましい。
【0054】
このように、補助電極13は、第一電極12と有機層15との間に形成され、その厚さ寸法は有機層15の厚さ寸法よりも大きい。そのため、図1の断面図に見られるように、補助電極13の部分は、第二基板17側に隆起しており、有機層15、及び第二電極16も補助電極13の形状に対応する形状を有し、第二電極16は、補助電極13の部分で第二基板17と接している。よって、補助電極13は、第二電極16、及び有機層15を介して第二基板17を支持し、第一基板11、及び第二基板17の間隔を保持するためのスペーサとしても機能している。
そして、第一電極12と第二電極16との間に補助電極13が配置されずに有機層15が配置される領域が第一電極12と第二電極16間に電圧が印加されたときに有機層15に電流が流れることにより発光する。つまり、当該補助電極13が配置されずに有機層15が配置される領域が発光部15Aとなる。第一電極12と第二電極16との間に補助電極13、及び有機層15が配置される領域は、第一電極12と第二電極16間に電圧が印加されたときにも後述する絶縁層14により電流が流れず、発光しない。つまり、当該補助電極13、及び有機層15が配置される領域は、非発光部15Bとなる。
【0055】
補助電極13には、公知の電極材料が用いられ、金属や合金を用いることができる。金属としては、例えば、銀(Ag)、Al(アルミニウム)、Au(金)、タングステン(W)、ネオジム(Nd)の内、少なくとも1種を含むことが好ましい。
そして、補助電極13の厚さ寸法が、有機層15の厚さ寸法よりも大きくなるように、補助電極13には、金属や合金、及び樹脂材料を含有するペースト材料を用いるのが好ましい。樹脂材料は、バインダの役割を果たすものであり、アクリル樹脂やPETなどを用いることができる。その他、ペースト状にするために粘度調整のための有機溶剤などを含有してもよい。ペースト材料としては、銀ペーストが好ましい。
【0056】
(絶縁部)
絶縁部14は、補助電極13と有機層15とが電気的に絶縁されるように、両者の間に形成されている。このとき、補助電極13と第一電極12との電気的接続は確保されている。また、絶縁部14は、補助電極13と第二電極16との短絡を防止する。補助電極13と第二電極16の間には有機層15が配置されるが、有機層15の膜厚は、1μm以下に形成されることが一般的であり、この場合に、絶縁部14は、後述する第二基板17側からの外力が光電変換装置1に加わることにより有機層15が破損して補助電極13と第二電極16とが短絡することを防止する。
絶縁部14は、補助電極13の上に、補助電極13を覆うように形成される。そして、図5(A)のように、第一電極12が、開口13Cを介して露出している。絶縁部14は、図1や図5(B)のように補助電極13の第一電極12と接していない部分(上面、及び側面)に形成され、有機層15と補助電極13とが接しないようになっている。このように、第一電極12は、開口13Cを介して露出するので、この露出する第一電極12の上に有機層15、及び第二電極16が形成されることになる。すなわち、この露出する部分が前述の発光部15Aを成す位置に相当する。
また、絶縁部14は、取出補助電極13Aの上面全体を覆わないように、取出補助電極13Aの一部を露出させて形成されている。つまり、取出補助電極13Aは、電気的取り出しが可能な程度、露出していればよい。
さらに、絶縁部14は、補助電極13側と取出補助電極13B側とで溝部11Cを介して、連続せずに形成されている。そして、絶縁部14は、取出補助電極13Bの上面全体を覆わないように、取出補助電極13Bの一部を露出させて形成されている。つまり、取出補助電極13Bも、電気的取り出しが可能な程度、露出していればよい。
なお、補助電極13が第一電極12より低抵抗である場合に、開口13Cよりも補助電極13の位置に電流が集中することがある。絶縁部14は、当該補助電極13の位置で高輝度で発光し、輝度ムラとなることを防止する。
また、補助電極13が金属や合金、及び樹脂材料を含有するペースト材料を用いた場合には、補助電極13から溶媒、樹脂材料からの放出ガス、水分、大気成分等が放出されることがある。絶縁部14は、これらのガスが有機層15に対してダメージを与えることを防止する。
【0057】
絶縁部14の厚さ寸法は、1μm以上50μm以下であることが好ましい。このような厚さ寸法とすることで、補助電極13と有機層15との電気的接続が防止され、補助電極13から有機層15へ正孔が直接注入されるのが防止される。
【0058】
絶縁部14は、電気絶縁性の材料(電気絶縁性材料)で構成されればよく、電気絶縁性材料としては、感光性ポリイミドなどの感光性樹脂、アクリル系樹脂などの光硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、及び酸化ケイ素(SiO2)や酸化アルミニウム(Al2O3)などの無機材料を挙げることができる。感光性樹脂は、ポジ型感光性樹脂でもネガ型感光性樹脂でもよい。
また、絶縁部14は、補助電極13とは異なる部材を用いて形成してもよいし、補助電極13の表面に対して処理を施して補助電極13を構成する導電性の材料を絶縁性の材料(金属酸化膜など)に変質させて形成してもよい。
【0059】
(有機層)
【0060】
有機層15は、光電変換装置1が有機EL素子であるので、発光機能を有する層として構成される。有機層15とは、有機化合物で構成される層を少なくとも一層含んだものをいう。なお、当該有機層15は、無機化合物を含んでいてもよい。
有機層15は、絶縁部14で覆われた補助電極13、及び開口13Cを介して露出する第一電極12の上に形成されている。
また、有機層15は、図6のように、取出補助電極13A、及び取出補助電極13Bの上面全体を覆わないように、絶縁部14の左右端部よりも内側、もしくは同じ位置まで形成されている。その結果、取出補助電極13A、及び取出補助電極13Bの上面は、電気的取り出しが可能な程度、露出している。
さらに、有機層15は、溝部11Cを介して、第一電極12側から取出電極12B側まで連続して形成されている。
【0061】
光電変換装置1における有機EL素子を構成する有機層15は、少なくとも一つの発光層を有する。そのため、有機層15は、例えば、一層の発光層で構成されていてもよいし、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、及び電子輸送層が発光層を介して積層構成されていてもよい。
【0062】
発光層には、従来の有機EL素子において使用される公知の発光材料が用いられ、赤色、緑色、青色、黄色などの単色光を示す構成のものや、それらの組み合わせによる発光色、例えば、白色発光を示す構成のものが用いられる。また、発光層を形成するにあたっては、ホストに、ドーパントとして発光材料をドーピングするドーピング法が知られている。ドーピング法で形成した発光層では、ホストに注入された電荷から効率よく励起子を生成することができる。そして、生成された励起子の励起子エネルギーをドーパントに移動させ、ドーパントから高効率の発光を得ることができる。
発光層は、蛍光発光性であっても燐光発光性であってもよい。
また、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、及び電子輸送層などを構成する材料としては、従来の有機EL素子において使用される公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。
【0063】
(第二電極)
第二電極16は、有機EL素子における陰極として、電子を有機層15に注入する役割を担うものであり、仕事関数の小さい材料が好ましい。
第二電極16は、有機層15の上に形成されている。
また、接続部11A側の第二電極16は、図7のように、取出補助電極13Aと接触して電気的に接続しないように、絶縁部14の左端部よりも内側、さらには、有機層15の左端部よりも内側、もしくは同じ位置まで形成されている。
一方、接続部11B側の第二電極16は、図7のように、絶縁部14の右端部よりもさらに外側にまで延在して形成され、取出補助電極13Bと接触して電気的に接続している。ただし、取出補助電極13Bの上面は、電気的取り出しが可能な程度、露出している。
さらに、第二電極16は、溝部11Cを介して、第一電極12側から取出電極12B側まで連続して形成されている。
【0064】
第二電極16に用いる材料の具体例としては、特に限定されないが、具体的にはインジウム、アルミニウム、マグネシウム、銀、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、アルミニウム−リチウム合金、アルミニウム−スカンジウム−リチウム合金、マグネシウム−銀合金などが使用できる。
また、第二電極16側から、有機層15からの発光を取り出す態様を採用することもできる。有機層15からの発光を第二電極16側から取り出す場合、第二電極16には、透明電極材料を用い、第二電極16の可視領域の光の透過率を10%より大きくすることが好ましい。また、このような場合は、第一電極12には、金属や合金などが用いられる。
第二電極16のシート抵抗は、数百Ω/□以下が好ましい。
第二電極16の厚さ寸法は、用いる材料にもよるが、通常10nm以上1μm以下、好ましくは50nm以上200nm以下の範囲で選択される。
【0065】
(第二基板)
第二基板17は、後に詳述する封止部材18によって第一基板11と接合される部材であって、平滑な板状の部材である。光電変換装置1における有機EL素子は、第一基板11と第二基板17とが封止部材18によって接合されて封止される。
第二基板17は、第一電極12の上に枠状に形成された補助電極13によって支持されている。上記のとおり、補助電極13の厚さ寸法は、有機層15の厚さ寸法よりも大きく形成され、図1のように、補助電極13は、第二基板17側へ隆起し、補助電極13が形成された部分の有機層15、及び第二電極16は、当該補助電極13の形状に対応して第二基板17側へ隆起している。そして、補助電極13が形成された部分で第二基板17と第二電極16とが接触して第二基板17が支持されている。
【0066】
第二基板17は、板状、フィルム状、又は箔状の部材であることが好ましい。具体的には、ガラス板、ポリマー板、ポリマーフィルム、金属板、金属箔などが挙げられる。なお、第二基板17は、本実施形態では板状の部材を用いているが、例えば、シート状物あるいはフィルム状物であってもよい。光電変換装置1がフレキシブル性を必要とする用途に用いられる場合は、第二基板17の材料としては、可撓性のある材料が好ましく、例えば、ポリマー板やポリマーフィルムが好ましい。
また、第二基板17の厚さ寸法としては、複数の光電変換装置1を隣接配置させて照明の光源とする場合には、例えば、縦の長さ寸法がおよそ80mmから100mmまで、横の長さ寸法がおよそ80mmから100mmまで、厚さ寸法が0.1mmから5mmまでの板材を用いることができる。厚さ寸法が0.1mm以下であると、空気の透過率が上昇し密封性能が低下する。
なお、大型の基板材料から複数枚の第二基板17を切り出して用いてもよい。
【0067】
(放熱部材)
放熱部材19は、有機EL素子で発生した熱を第二基板17側へ効率的に伝達させる役割を担う。
放熱部材19は、発光部15Aの第二電極16と第二基板17との間に備えられている。
第一実施形態では、放熱部材19は、流動性を有し、枠状に形成された補助電極13の開口13Cの内側に注入され、当該枠から流れ出ないように備えられている(図1、3、及び8参照)。補助電極13は、放熱部材19が、接続部11Aや接続部11Bまで流れ出さないように、堤防の役割も果たしている。そのため、光電変換装置1における補助電極13のいずれの枠も、閉じており、開放していない。
放熱部材19を注入する量としては、第一基板11と第二基板17とを貼り合わせた際に、接続部11Aや接続部11Bまで溢れ出さない程度の量にすることが好ましい。さらに、熱の伝達効率を考えると、第一基板11と第二基板17とを貼り合わせた際に第二電極16と第二基板17との間に形成される空間内が放熱部材19で充填されていて、空気が入っていない状態とするのが好ましい。
放熱部材19としては、熱伝導性が良く、かつ不活性な部材が好ましく、フッ素系オイルなどを用いることができる。
【0068】
(封止部材)
封止部材18は、第一基板11と第二基板17とを接合して、有機層15を封止するための部材である。
封止部材18は、第一基板11、及び第二基板17の外周縁に沿って配置される。そして、封止部材18は、有機層15を囲うようにして枠状に形成されている。なお、図1のように、第一基板11の上であって、第一電極12、補助電極13、取出補助電極13A、取出補助電極13Bが形成されている箇所では、封止部材18は、第一基板11と直接に接触しておらず、第一電極12、補助電極13、取出補助電極13A、取出補助電極13Bのいずれかと接触して接合する。それ以外の箇所では、封止部材18は、第一基板11と直接に接触して接合する。
【0069】
封止部材18が設けられる幅(接合幅)は、光電変換装置1を狭額縁構造とする観点から、第一基板11と第二基板17との接合強度を確保できる範囲で狭くするのが好ましい。例えば、縦の長さ100mm、横の長さ100mm、厚さ0.7mmの板状ガラス部材の場合は、0.5mm以上2mm以下であることが特に好ましい。
【0070】
封止部材18は、封止性、耐湿性、及び接合強度の観点から、無機化合物で構成されたものが好ましい。レーザー照射により形成することを可能にするため、低融点ガラスが好ましい。ここでいう低融点とは、融点が650℃以下のものをいう。好ましい融点としては、300℃以上600℃以下である。また、当該低融点ガラスは、ガラスと金属などを接合できる遷移金属酸化物、希土類酸化物などを成分組成に含むものが好ましく、粉末ガラス(フリットガラス)がより好ましい。粉末ガラスの組成としては、例えば、酸化ケイ素(SiO2)、酸化硼素(B2O3)、及び酸化アルミニウム(Al2O3)を主成分として含むものが好ましい。また、封止部材18として、粉末ガラスとバインダ樹脂とを混合したペースト状のガラスペーストを用いることもできる。
【0071】
(有機EL素子の製造工程)
次に、光電変換装置の製造方法を図に基づいて説明する。
【0072】
(第一基板側の製造工程)
まず、図2に示すように、第一基板11の上に第一電極12を形成し、第一基板11の接続部11Aの上に取出電極12Aを形成し、第一基板11の接続部11Bの上に取出電極12Bを形成する。このとき、溝部11Cも形成する。第一電極12、取出電極12A、及び取出電極12Bは、同じ材料で同時に形成することが好ましい。光電変換装置1では、第一電極12側から光を取り出すため、透明電極材料(ITOなど)で形成する。形成方法としては、スパッタリング法により成膜し、その後フォトリソグラフィ工程によりパターンニングする方法やマスク蒸着法などが挙げられる。
【0073】
次に、図3に示すように、第一電極12の上に補助電極13を形成し、取出電極12Aの上に取出補助電極13Aを形成し、取出電極12Bの上に取出補助電極13Bを形成する。このとき、補助電極13が、4つの開口13Cを有する枠状となるように形成する。さらに、取出補助電極13Bは、溝部11Cを介して補助電極13とは連続しないように形成する。
補助電極13、取出補助電極13A、及び取出補助電極13Bは、同じ材料で同時に形成することが好ましい。
形成方法としては、真空蒸着、スパッタリング、プラズマ、イオンプレーティングなどの乾式成膜法やスクリーン印刷、インクジェット印刷、スピンコーティング、ディッピング、フローコーティングなどの湿式成膜法などの公知の方法を採用することができる。光電変換装置1においては、補助電極13の厚さ寸法を大きくする必要があるので、金属や合金、及び樹脂材料を含有するペースト材料(銀ペーストなど)を用いたスクリーン印刷法が好ましい。
補助電極13用のペースト状材料をスクリーン印刷法にて塗布した後、当該ペースト材料を乾燥させて補助電極13、取出補助電極13A、及び取出補助電極13Bを形成する。
【0074】
次に、図4、及び図5に示すように、補助電極13の上に絶縁部14を形成する。絶縁部を形成する方法としては、スクリーン印刷、インクジェット印刷、スピンコーティング、ディッピング、フローコーティングなどの公知の湿式成膜法や、マスク蒸着法やマスクスパッタリング法などの公知の乾式成膜法が挙げられる。ここでは、湿式成膜法、及び電気絶縁性材料として、電気絶縁性の樹脂を含むポジ型のフォトレジスト材料を用いる場合について説明する。
まず、図4に示すように、補助電極13の上に絶縁部14を構成するペースト状の電気絶縁性材料を湿式成膜法で塗布する。この際、取出補助電極13Aの上面全体、及び取出補助電極13Bの上面全体を電気絶縁性材料で覆わないようにするとともに、補助電極13の上及び補助電極13の側面部が電気絶縁性材料で覆われるようにする。この塗布を行った時点では、開口13Cの内部にも電気絶縁性材料が塗布されていてもよい。
この塗布の後、第一基板11側から光を電気絶縁性材料に照射する(露光)。この時、光が、開口13C及び溝部11Cの内部に塗布された電気絶縁性材料には照射されるが、補助電極13の上面に塗布された電気絶縁性材料には照射されない。そのため、この露光の後、現像液によって現像すると、開口13C及び溝部11Cの内部に塗布された電気絶縁性材料の部分が除去され、未露光部分が残る。
この現像後に、加熱処理を行うことで、図5に示すように、絶縁部14が補助電極13の上面、及び側面に形成される。そのため、後に形成する有機層15と補助電極13とが接しないようになる。
なお、上記は電気絶縁性材料として、電気絶縁性の樹脂を含むポジ型のフォトレジスト材料を用いる場合について説明したが、電気絶縁性の樹脂を含む熱硬化型レジスト材料を用いて塗布されてもよい。この場合には、前記熱硬化型レジスト材料が、スクリーン印刷法により補助電極13の上及び補助電極13の側面部のみが電気絶縁材料で覆われるように塗布されるのが好ましい。スクリーン印刷法により前記熱硬化型レジスト材料を塗布する場合は、補助電極13の上部及び補助電極13の側面部の鉛直上方に対応する位置に電気絶縁材料を印刷することが好ましい。この場合に、一般的な熱硬化型レジスト材料は、平坦性を有するため、補助電極13の上部と下部との段差があるのに対し、その側面部が完全に被覆されるように成膜される。
【0075】
続いて、図6に示すように、有機層15を絶縁部14で覆われた補助電極13、及び開口13Cを介して露出する第一電極12(図5参照)の上に形成する。有機層15の形成方法としては、真空蒸着、スパッタリング、プラズマ、イオンプレーティングなどの乾式成膜法やスピンコーティング、ディッピング、フローコーティング、インクジェットなどの湿式成膜法などの公知の方法を採用することができる。この際、有機層15が所定の位置に形成されるようにマスキング手段を施して層形成を行うのが好ましい。
【0076】
次に、図7に示すように、第二電極16を有機層15の上に形成する。その際、第二電極16が、取出補助電極13Aと接触して電気的に接続しないようにするとともに、取出補助電極13Bと接触して電気的に接続されるようにする。第二電極16の形成方法としては、真空蒸着やスパッタリングなどの公知の方法を採用することができる。この際、第二電極16が所定の位置に形成されるようにマスクスパッタリングなどを行うのが好ましい。
【0077】
さらに、図8に示すように、流動性の放熱部材19を枠状に形成された補助電極13の開口13Cの内側に注入し、放熱部材19が当該枠から溢れ出ないようにする。
【0078】
(第二基板側の製造工程)
次に、第二基板17側の製造工程を説明する。この製造工程では、封止部材18としてフリットガラスを用いる。
まず、封止部材18を第二基板17の第一基板11と接合される面の上に塗布する。この際、第二基板17の外周縁に沿って封止部材18を塗布する。封止部材18の塗布幅は、接合強度を確保しうる接合幅となるように塗布する。塗布する方法としては、ディスペンサ法などが挙げられる。
なお、図9に第二基板17に対して下側に封止部材18が塗布された状態が示されているが、これは図9が第一基板11と第二基板17とを接合する状態を説明する図であるためである。したがって、実際の第二基板17側の製造工程では、第二基板17を下にして、第二基板17の上に封止部材18を塗布する。
【0079】
この製造工程で用いる封止部材18は、塗布する時点ではペースト状であり、有機溶剤を含んでいるため、有機溶剤を除去する必要がある。
そこで、封止部材18を塗布した第二基板17の面とは反対側の面に対してホットプレートなどの加熱手段を配置し、当該反対側の面から第二基板17を加熱して焼成を行う。この焼成によって、前述のアルコール成分を除去する。なお、加熱方法としては、加熱炉内に、当該第二基板17を入れる方法としてもよい。
【0080】
(貼り合わせ工程)
図9に示すように、第一基板11の第一電極12などが形成された面を上に向けて、第二基板17の封止部材18が塗布された面を下に向けて、所定の接合部位に合わせて貼り合わせる。貼り合わせに際しては、正確な部位で接合するために位置決め治具などを用いてもよい。
続いて、第二基板17を上にした状態で封止部材18が塗布された部位に対してレーザー照射などを行い、当該部位を局所的に加熱する。この加熱によって、封止部材18を溶融させ、封止部材18と接する部材(第一基板11など)とを接合し、有機層15を封止する。接合する際には、放射温度計を使用し、封止部材18の温度が600℃になるよう、レーザー出力、及びレーザー移動速度を調整する。
このようにして、光電変換装置1が製造される。
【0081】
以上のような第一実施形態によれば、次のような作用効果を奏する。
(1)光電変換装置1を第一基板11の厚さ方向断面で見た場合に、補助電極13の厚さ寸法が、有機層15の厚さ寸法よりも大きい。そのため、第二基板17は、第一電極12の上に枠状に形成された補助電極13によって支持されている。すなわち、第一電極12と有機層15との間に補助電極13を配置することで、補助電極13は、従来の補助電極としての機能だけで無く、第一基板11と第二基板17との間隔を保持するためのスペーサとしての機能も果たす。光電変換装置1では、第一基板11、及び第二基板17に従来の封止構造で採用される光電変換素子を収容するための凹部を形成する必要がない。すなわち、第二基板17は、有機層15の発光部に接触することはないため、有機層15を押し潰すことなく光電変換装素子を封止することができる。ゆえに、光電変換装装置1は、従来の封止構造をとることなく、安全に光電変換素子を封止することができ、厚さ寸法も従来に比べて小さくすることができる。
【0082】
(2)光電変換装置1は、第一基板11、及び第二基板17に当該凹部を形成する必要が無いので、安価に製造できる。
【0083】
(3)光電変換装置1では、第一基板11上に有機層15の形成領域とは別にリブやスペーサなどを形成するための領域を確保しなくてもよいので、有機層15の形成領域を広く取ることができる。ゆえに、発光面積を大きくすることができる。
【0084】
(4)発光部15Aにおいて第二電極16が第二基板17と離間しているので、補助電極13によるスペーサ機能が確実に果たされ、発光部15Aにおいて第二基板17と第二電極16との接触が防止される。そのため、第二電極16や有機層15の損傷が防止される。
【0085】
(5)非発光部15Bでは、第二電極16が第二基板17と接触することで、第二基板17が支持され、第一基板11と第二基板17との間隔を保持できる。そして、第一基板、及び第二基板が貼り合わされる際にも、第二基板は、当該第二電極によって支持されるので、第一基板と第二基板との間隔を保持しながら貼り合わせ作業を行い易い。
【0086】
(6)補助電極13が枠状に形成されているので、流動性の放熱部材19を当該枠内部に注入すれば、枠外に流れ出ない。そのため、放熱部材19が第一基板11と第二基板17との接合部へ流出したり、さらには光電変換装置1の外部へと流出したりすることを防止できる。
【0087】
(7)補助電極13と第一電極12との間では電気的に接続され、補助電極13と有機層15との間では絶縁部14によって電気的に絶縁されている。電気的に絶縁されていない場合は、補助電極13の枠部分周辺の有機層15が優先的に発光するため、線状に発光するおそれがある。しかし、電気的に絶縁されている場合は、第一電極12に対応する有機層15の部分が発光するので、発光部15Aを面状に発光させることができる。
【0088】
(8)フリットガラスで構成される封止部材18で第一基板11と第二基板17とを接合して有機層15を封止するので、接合幅を狭めても、接合強度が高く、封止性能に優れた狭額縁構造の光電変換装置1を得ることができる。
【0089】
[第二実施形態]
次に本発明に係る第二実施形態について、図面に基づいて説明する。
第二実施形態に係る光電変換装置2は、図10に示すように、補助電極13と有機層15との間に絶縁部が形成されていない点を除いて、第一実施形態の光電変換装置1と同様の構成である。第二実施形態の説明において第一実施形態と同一の構成要素は同一符号を付して説明を省略もしくは簡略にする。
光電変換装置2では、補助電極13が形成された部分周辺の有機層15が優先的に発光する傾向にある。そのため、補助電極13の枠を構成するライン間隔を小さくすることで、発光する箇所同士が近くなり、発光部を面状に発光させることができる。
【0090】
このような第二実施形態によれば、第一実施形態における(1)から(6)まで、及び(8)と同じ効果を奏するとともに、以下の効果を奏する。
【0091】
(9)絶縁部を形成する必要がないため、光電変換装置2は、光電変換装置1に比べて、簡略な工程で製造できる。
【0092】
[第三実施形態]
次に本発明に係る第三実施形態について、図面に基づいて説明する。
第三実施形態に係る光電変換装置は、図11に示すように、第一実施形態における補助電極13の形状と異なる点を除いて、第一実施形態の光電変換装置1と同様の構成である。第三実施形態の説明において第一実施形態と同一の構成要素は同一符号を付して説明を省略もしくは簡略にする。
第三実施形態に係る光電変換装置において、補助電極33によって形成される補助電極パターンは、第一実施形態に係る補助電極13のように枠状ではなく、フォークの先端のような形状となっている。すなわち、複数本の補助電極33のラインが略平行に第一基板11の一辺側から対辺側に向かって伸びている。そして、補助電極33のラインの先端33Dは、隣のラインの先端33Dと連結していない。すなわち、当該補助電極パターンは、補助電極13の4つの枠のように第二電極16の面に対して閉じた領域が形成されているのではなく、いずれも開放されている。
【0093】
第三実施形態に係る光電変換装置において、放熱部材を第二電極16と第二基板17との間に注入する場合は、放熱部材が流れ出さないように、粘度の高いペースト状の材料を用いたり、補助電極33とは別に図示しない堤防部を設けたりすればよい。堤防部は、第一基板11と第二基板17との接合部に放熱部材が到達しないように設ければよい。例えば、上記ラインの先端33Dを連結して補助電極33の開放している部分を閉じるように設ける。但し、この堤防部の厚さ寸法は、堤防部の上面が第二電極16と接触しない程度にする。
【0094】
第三実施形態においても、第一実施形態と同様にして、取出電極12Aの上には、陽極としての第一電極12から電気的取出しを行うための取出補助電極33Aが形成されている。また、取出電極12Bの上には、陰極としての第二電極16から電気的取出しを行うための取出補助電極33Bが形成されている。取出補助電極33Aは、補助電極33に連続して形成され、取出補助電極33Bは、溝部11Cを介して補助電極33とは連続せずに形成されている。取出補助電極33Bは、補助電極33や第一電極12と電気的に接続していない。
【0095】
第三実施形態においても、図12に示すように、第一実施形態と同様にして、補助電極33の上に絶縁部34が形成され、補助電極33のラインの先端33Dも絶縁部34に覆われており、有機層15と補助電極33との間が電気的に絶縁されるようになっている。
【0096】
このような第三実施形態によれば、第一実施形態における(1)から(5)まで、(7)、及び(8)と同じ効果を奏するとともに、以下の効果を奏する。
【0097】
(10)補助電極33の補助電極パターンは、補助電極13の4つの枠のように閉じた領域が形成されているのではなく、いずれも開放されている。そのため、光電変換装置をフレキシブル用途に用いて繰り返し折り曲げなどを行っている間に、第二電極16が補助電極33の補助電極パターンに沿って断線した場合でも、第二電極16に非導通部が形成されることなく、当該開放されている部分を通じて導通が可能になる。ゆえに、非発光部分の発生を長期にわたって防止できる。
【0098】
一方で、補助電極13の補助電極パターンが枠状になって、閉じた領域が形成されていると、同様に繰り返し折り曲げにより第二電極16が当該枠に沿って断線した場合には、第二電極16の面内に枠状の断線部分が形成されることになる。この場合、当該枠内は、非導通部となるので、この非導通部と対応する位置の有機層15が発光しなくなるおそれがある。但し、第二基板17を金属とすれば、当該枠内に対して第二基板17を介して導通させることができるので、当該枠に沿って断線した場合でも有機層15を発光させることができる。
【0099】
[変形例]
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲で以下に示される変形をも含むものである。
【0100】
第三実施形態の補助電極33の補助電極パターンの他の形態として、図13に示すような、くし歯状の補助電極43の補助電極パターンであったり、図14に示すような渦巻状の補助電極53の補助電極パターンであったりしてもよい。すなわち、どちらの形状も、閉じた領域が形成されずに、開放されている形状である。なお、図13、及び図14において第一実施形態と同一の構成要素は同一符号を付しており、説明を省略する。
補助電極のパターンは、その他、網目状、直線もしくは曲線のストライプ状、又は櫛型などに配置したものでもよい。さらに、正三角形、二等辺三角形、直角三角形などの三角形、正方形、長方形、菱形、平行四辺形、台形などの四角形、六角形、八角形などのn角形、円、楕円、星形、ハニカム形などを組み合わせた幾何学図形のラインパターンを規則的に組み合わせて配置したものでもよいし、不規則な形状、不規則なパターンなどで構成してもよい。
【0101】
第一実施形態の光電変換装置1の光取出し方向が、第一基板11と反対側である第二基板17側である場合は、上記の透光性の第一基板11に加えて、シリコン基板、金属基板などの不透明基板を用いることもできる。
【0102】
また、第一実施形態で説明した製造工程のように光電変換装置1を個別に製造するのでなく、多数個取りで製造してもよい。
例えば、470mm×370mmの1枚の第一基板から、80mm×80mmのサイズの光電変換装置を製造する場合で考えれば、各光電変換装置間の距離を考慮して、20個の光電変換装置1を製造できる。
この場合の製造工程としては、例えば次のようにして行うことができる。
当該第一基板上に、第一実施形態で説明したように、第一電極から順に形成し、当該第一基板と同サイズの第二基板を減圧下で貼り合わせて接合する。その後、大気圧下で、貼り合わせ後の基板をレーザーでカットして、各光電変換装置1を取り出す。
【0103】
光電変換装置に用いられる光電変換素子として、上記実施形態では有機EL素子を例示して説明したが、これに限られず、有機薄膜太陽電池素子や色素増感太陽電池素子などの気密を保持する必要のある素子に適用される。このような太陽電池素子は、受光面積を減らすことなく、厚さ寸法を小さくでき、かつ安価に製造できる。
有機薄膜太陽電池素子の場合、第一基板11側を光の入射面とした場合に、第一基板11側から順に、透明導電膜、P型有機半導体、N型有機半導体、導電膜を積層させた構造とすることができる。透明導電膜は、第一基板11側からの光が太陽電池層(P型有機半導体及びN型有機半導体)に到達できるよう、透明の電極部材を用いることができ、ITO(酸化インジウム錫)、ZnO(酸化亜鉛)、SnO2(酸化錫)などの材料から形成される透明電極とすることができる。
導電膜は、反射膜として、光の吸収が少なく反射の高いアルミ、金、銀、チタンなどの金属電極を用いることができる。また、それらの金属同士の多層構造電極、あるいはそれらの金属と別の金属や上記透明電極材のような導電性酸化物や導電性の有機物との多層構造の電極を反射膜として用いても良い。その他の構成は、上記実施形態と同じものを採用することができる。
【0104】
上記実施形態では、放熱部材19が流動性を有するものとして説明したが、流動性を有していなくても、有機層15で発生した熱を第二基板17側へ伝達できるように、第二基板17と第二電極16との間に備えることが可能な放熱部材であればよい。
また、放熱部材19を備えずに、第二基板17と第二電極16との間に不活性ガスを注入してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明の光電変換装置は、発光面積が大きく、厚さ寸法が小さいため、通常の有機EL装置や有機薄膜太陽電池として用いるだけでなく、フレキシブル有機EL照明やフレキシブル太陽電池などに用いることができる。
【符号の説明】
【0106】
1,2…光電変換装置
11…第一基板
12…第一電極
13,33,43,53…補助電極
14,34…絶縁部
15…有機層
15A…発光部
16…第二電極
17…第二基板
18…封止部材
19…放熱部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一基板、第一電極、有機層、第二電極、及び第二基板が、この順に配置される光電変換装置であって、
前記第一電極と前記有機層との間に補助電極が配置され、
前記光電変換装置を前記第一基板の厚さ方向断面で見た場合に、前記補助電極の厚さ寸法は、前記有機層の厚さ寸法よりも大きい
ことを特徴とする光電変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光電変換装置において、
前記第二電極、及び前記第二基板が接触している
ことを特徴とする光電変換装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の光電変換装置において、
前記第一基板、及び前記第二基板の間には、前記有機層を封止する封止部材が前記第一基板、及び前記第二基板の外周縁に沿って配置され、
前記補助電極の厚さ寸法、及び前記封止部材の厚さ寸法は、下記式(1)を満たす
ことを特徴とする光電変換装置。
[数1]
0.2X < Y < 5X ・・・(1)
(但し、上記式(1)において、前記補助電極の厚さ寸法をY[μm]、前記封止部材の厚さ寸法をX[μm]とする。)
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の光電変換装置において、
前記補助電極の厚さ寸法が、0.5μm以上30μm以下である
ことを特徴とする光電変換装置。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の光電変換装置において、
前記封止部材は、絶縁性材料からなる
ことを特徴とする光電変換装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の光電変換装置において、
前記補助電極が配置されない前記第一電極、及び前記第二電極の間の領域は、前記有機層が配置される発光部とされ、
前記発光部では、前記第二電極が前記第二基板と離間している
ことを特徴とする光電変換装置。
【請求項7】
請求項6に記載の光電変換装置において、
前記発光部の前記第二電極、及び前記第二基板の間には、放熱部材が配置されている
ことを特徴とする光電変換装置。
【請求項8】
請求項7に記載の光電変換装置において、
前記光電変換装置を前記第一基板の面に向かって見た場合、前記補助電極は、前記発光部を囲む枠状に形成されている
ことを特徴とする光電変換装置。
【請求項9】
請求項6又は請求項7に記載の光電変換装置において、
前記光電変換装置を前記第一基板の面に向かって見た場合、前記補助電極は、前記発光部を囲み、一部が開放されたパターン状に形成されている
ことを特徴とする光電変換装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の光電変換装置において、
前記補助電極と前記第一電極とは導通し、前記補助電極と前記有機層とは絶縁されている
ことを特徴とする光電変換装置。
【請求項11】
請求項10に記載の光電変換装置において、
前記補助電極と前記有機層との間に絶縁部が形成されている
ことを特徴とする光電変換装置。
【請求項12】
請求項11に記載の光電変換装置において、
前記絶縁部は、ポリイミドを含む
ことを特徴とする光電変換装置。
【請求項13】
請求項1から請求項12までのいずれか一項に記載の光電変換装置において、
前記補助電極は、銀、金、タングステン、及びネオジムの内の少なくとも一つと樹脂とを含む
ことを特徴とする光電変換装置。
【請求項14】
請求項1から請求項13までのいずれか一項に記載の光電変換装置において、
前記第一基板は、透光性基板であり、
前記第一電極は、透明電極である
ことを特徴とする光電変換装置。
【請求項15】
請求項1から請求項14までのいずれか一項に記載の光電変換装置において、
前記第二基板は、金属である
ことを特徴とする光電変換装置。
【請求項16】
第一基板、第一電極、有機層、第二電極、及び第二基板が、この順に配置される光電変換装置の製造方法であって、
前記第一基板の一方の面に前記第一電極を形成する工程と、
前記第一電極の上に補助電極を形成する工程と、
前記第一電極、及び前記補助電極の上に前記有機層を形成する工程と、
前記有機層の上に、前記第二電極を形成する工程と、
前記第二電極を形成した後、前記第一基板と前記第二基板とを貼り合わせて接合する工程と、を実施し、
前記光電変換装置を前記第一基板の厚さ方向断面で見た場合に、前記補助電極の厚さ寸法を前記有機層の厚さ寸法よりも大きく形成する
ことを特徴とする光電変換装置の製造方法。
【請求項17】
請求項16に記載の光電変換装置の製造方法において、
前記補助電極を形成する工程で、前記第一基板の面に向かって見た場合に、前記補助電極を枠状に形成し、
前記第二電極を形成する工程の後であって前記第一基板と前記第二基板とを貼り合わせて接合する工程の前に、前記補助電極の当該枠内に流動性の放熱部材を注入する工程を実施する
ことを特徴とする光電変換装置の製造方法。
【請求項18】
請求項16又は請求項17に記載の光電変換装置の製造方法において、
前記補助電極を形成する工程の後であって前記有機層を形成する工程の前に、前記補助電極の上に絶縁部を形成する工程を実施し、
前記有機層と前記補助電極との間に前記絶縁部を介在させる
ことを特徴とする光電変換装置の製造方法。
【請求項1】
第一基板、第一電極、有機層、第二電極、及び第二基板が、この順に配置される光電変換装置であって、
前記第一電極と前記有機層との間に補助電極が配置され、
前記光電変換装置を前記第一基板の厚さ方向断面で見た場合に、前記補助電極の厚さ寸法は、前記有機層の厚さ寸法よりも大きい
ことを特徴とする光電変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光電変換装置において、
前記第二電極、及び前記第二基板が接触している
ことを特徴とする光電変換装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の光電変換装置において、
前記第一基板、及び前記第二基板の間には、前記有機層を封止する封止部材が前記第一基板、及び前記第二基板の外周縁に沿って配置され、
前記補助電極の厚さ寸法、及び前記封止部材の厚さ寸法は、下記式(1)を満たす
ことを特徴とする光電変換装置。
[数1]
0.2X < Y < 5X ・・・(1)
(但し、上記式(1)において、前記補助電極の厚さ寸法をY[μm]、前記封止部材の厚さ寸法をX[μm]とする。)
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の光電変換装置において、
前記補助電極の厚さ寸法が、0.5μm以上30μm以下である
ことを特徴とする光電変換装置。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の光電変換装置において、
前記封止部材は、絶縁性材料からなる
ことを特徴とする光電変換装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の光電変換装置において、
前記補助電極が配置されない前記第一電極、及び前記第二電極の間の領域は、前記有機層が配置される発光部とされ、
前記発光部では、前記第二電極が前記第二基板と離間している
ことを特徴とする光電変換装置。
【請求項7】
請求項6に記載の光電変換装置において、
前記発光部の前記第二電極、及び前記第二基板の間には、放熱部材が配置されている
ことを特徴とする光電変換装置。
【請求項8】
請求項7に記載の光電変換装置において、
前記光電変換装置を前記第一基板の面に向かって見た場合、前記補助電極は、前記発光部を囲む枠状に形成されている
ことを特徴とする光電変換装置。
【請求項9】
請求項6又は請求項7に記載の光電変換装置において、
前記光電変換装置を前記第一基板の面に向かって見た場合、前記補助電極は、前記発光部を囲み、一部が開放されたパターン状に形成されている
ことを特徴とする光電変換装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の光電変換装置において、
前記補助電極と前記第一電極とは導通し、前記補助電極と前記有機層とは絶縁されている
ことを特徴とする光電変換装置。
【請求項11】
請求項10に記載の光電変換装置において、
前記補助電極と前記有機層との間に絶縁部が形成されている
ことを特徴とする光電変換装置。
【請求項12】
請求項11に記載の光電変換装置において、
前記絶縁部は、ポリイミドを含む
ことを特徴とする光電変換装置。
【請求項13】
請求項1から請求項12までのいずれか一項に記載の光電変換装置において、
前記補助電極は、銀、金、タングステン、及びネオジムの内の少なくとも一つと樹脂とを含む
ことを特徴とする光電変換装置。
【請求項14】
請求項1から請求項13までのいずれか一項に記載の光電変換装置において、
前記第一基板は、透光性基板であり、
前記第一電極は、透明電極である
ことを特徴とする光電変換装置。
【請求項15】
請求項1から請求項14までのいずれか一項に記載の光電変換装置において、
前記第二基板は、金属である
ことを特徴とする光電変換装置。
【請求項16】
第一基板、第一電極、有機層、第二電極、及び第二基板が、この順に配置される光電変換装置の製造方法であって、
前記第一基板の一方の面に前記第一電極を形成する工程と、
前記第一電極の上に補助電極を形成する工程と、
前記第一電極、及び前記補助電極の上に前記有機層を形成する工程と、
前記有機層の上に、前記第二電極を形成する工程と、
前記第二電極を形成した後、前記第一基板と前記第二基板とを貼り合わせて接合する工程と、を実施し、
前記光電変換装置を前記第一基板の厚さ方向断面で見た場合に、前記補助電極の厚さ寸法を前記有機層の厚さ寸法よりも大きく形成する
ことを特徴とする光電変換装置の製造方法。
【請求項17】
請求項16に記載の光電変換装置の製造方法において、
前記補助電極を形成する工程で、前記第一基板の面に向かって見た場合に、前記補助電極を枠状に形成し、
前記第二電極を形成する工程の後であって前記第一基板と前記第二基板とを貼り合わせて接合する工程の前に、前記補助電極の当該枠内に流動性の放熱部材を注入する工程を実施する
ことを特徴とする光電変換装置の製造方法。
【請求項18】
請求項16又は請求項17に記載の光電変換装置の製造方法において、
前記補助電極を形成する工程の後であって前記有機層を形成する工程の前に、前記補助電極の上に絶縁部を形成する工程を実施し、
前記有機層と前記補助電極との間に前記絶縁部を介在させる
ことを特徴とする光電変換装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−94348(P2012−94348A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240120(P2010−240120)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】
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