光電極
ナノ粒状二酸化チタン光触媒を導電性基板上に作製する方法が開示されている。この方法は、二酸化チタン層の結晶化度と光活性を増大させるべく、熱処理工程を組み込んだ水熱製造を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の二酸化チタン光電極、および特に光電気化学電池に使用するための二酸化チタン光電極を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
TiO2が主要な半導体光触媒となっているが、この他にも多くの種類の半導体光触媒がある。この分野においてTiO2が優勢なのは、その光触媒酸化能力が優れていることに加えて、光腐食性ではなく、毒性がなく、そして安価であるためであり、高度に光活性のナノ粒子形にて容易に合成することができる。実際には、応用がさまざまに異なることから、いろいろな光触媒特性を有する光触媒が必要となる。これらの特性は、物質の構造パラメーター、組成パラメーター、および形態パラメーターによって決まることが知られており、種々の条件下でのさまざまな合成法によって調節することができる。
【0003】
これまでの20年にわたって、種々の形態のTiO2光触媒を製造する上で多くの合成法が開発された。最も広く使用されている合成法は、ゾルゲル法、電気化学的陽極酸化法、液体テンプレート法、および種々の水熱法である。これらの方法のうちで、ゾルゲル法は、ナノ粒状のTiO2光触媒を合成するための、最も簡単で最もよく研究されている方法である。ナノ粒状形態のTiO2を得るには、ほぼ例外なくゾルゲル法が使用されている。
【0004】
電気化学的陽極酸化法は、2001年に最初に報告された。この方法は、簡単な一段階電気化学的工程によって、高度に整然としていて垂直に整列した大規模なTiO2ナノチューブを調製することができる。引き続き熱処理を行うことで、ある範囲の用途に適した、高度に光触媒活性の形態のTiO2ナノチューブが得られる。このような形態のTiO2光触媒の魅力は、次元構造がユニークであること、新たな物理化学的性質の豊富な供給源であること、および種々の分野に対する応用可能性が極めて高いことにある。垂直に整列したナノチューブ状TiO2光陽極を使用すると、水開裂と色素増感太陽電池の光触媒効率を高めることができる、ということが広く報じられている。光触媒効率の増大に対する物理学的な根拠は、極めて整然としていて垂直に整列したナノチューブ構造によってもたらされる電子パーコレーション経路が効率的であるためとされている。ナノ粒子系の場合、ナノ粒子間の接触点における構造が不規則であると、自由電子の散乱が増大し、このため電子の移動性が低下する。したがって、電子伝達が全体的な光触媒プロセスの制限要因となることが多い。
【0005】
液体テンプレート法は、極めて広い範囲の種々のテンプレートをカバーし、非常に異なったメカニズムに基づいた変化に富んだ方法である。この方法によって、種々の形態のTiO2ナノ構造物(例えば、ナノ平面、ナノチューブ、メソポーラス、極めて整然としていて特許を得たアレイ)を得ることができる。水熱法が長年にわたって利用されているが、ごく最近になって、この方法がナノ構造化TiO2の合成に使用されている。この方法を使用して、ナノ平面状、ナノチューブ状、ナノ繊維状及びメソポーラス状の形態を含めた種々の形態のTiO2を合成することができる。
【0006】
米国特許第5525440号は、最初に導電性ガラス上に多孔質層として酸化チタンの層を作製し、そしてアニールし、次いで非多孔質の酸化チタン層を施し、最後にさらなる多孔質酸化チタン層を施し、次いでこの電極全体を500℃でアニールする、という光電気化学電池の製造を開示している。次いでこの電極を、さらなる酸化チタンの電気化学付着に付す。
【0007】
米国特許第6281429号は、ITOガラス上の二酸化チタンの透明電極を開示しており、この電極は、ある特定の手順によって決定される厚さにて作製される。
ジャパニーズ・アブストラクト(Japanese abstract)2004196644は、ゾルから二酸化チタン皮膜を作製し、次いでこの皮膜を焼結することを開示している。
【0008】
ジャパニーズ・アブストラクト59121120は、効率を向上させるべく、二酸化チタンに対する真空中での還元処理を開示している。
米国特許第629970号は、最初にナノ粒子を沈殿によって形成させ、250〜600℃の範囲に加熱し、ナノ粒子を表面上に分散させて被覆し、次いで得られた被膜を、250℃未満の温度および100〜10000バールの圧力にて処理する、という半導体酸化物の製造法を開示している。
【0009】
米国特許第6444189号は、塩基水溶液に酸性チタン塩溶液を20〜95℃の温度にて加えて、最終的なpHを2〜4に保持しつつ粒子を沈殿させることによって二酸化チタン粒子を製造する方法を開示している。
【0010】
米国特許第7224036号は、焼結を避けるために低温での加圧処理を含む、結合剤と酸化物を使用して光電変換素子を製造する方法を開示している。
国際特許出願WO2007/023543は、窒化チタン中間体を使用し、電気分解によって完了する、というプロセスを使用して酸化チタンを製造する方法を開示している。
【0011】
国際特許出願WO2007/020485は、色素改質表面(a dye modified surface)を有する酸化チタン光触媒を製造する低温法を開示している。
米国特許第5362514号は、多孔質金属酸化物で被覆されていて、ポルフィリン−フタロシアニン色素を含む光電陽極を開示している。
【0012】
米国特許第5693432号は、酸化チタンと高分子固体電解質を開示している。
米国特許第6538194号は、アナターゼ型二酸化チタンと密閉された電解質とを含み、導電性の突起物が該酸化物層で被覆されている光電極電池を開示している。
【0013】
米国特許第6685909号は、酸化モリブデンのシェルを有するナノ結晶質二酸化チタンヘテロ接合材料を開示している。
米国特許第6855202号は、分岐粒子を含む造形ナノ結晶粒子(shaped nano crystal particles)を開示している。
【0014】
国際特許出願WO2004/088305は、水サンプルの化学的酸素要求量を測定する上でTiO2光電極を使用することを開示している。該出願によれば、TiO2光触媒は、次のような一般的特性を有していなければならない:(i)光陽極を形成するよう容易に固定化される;(ii)均一性と再現性を有する導電性基板上固定化薄膜形態物(光陽極)が容易に得られる;(iii)高い量子効率、高い光触媒活性、および優れた速度論的性質をもたらす;(iv)有機化合物に対して選択的であって、極めて感受性の高い光触媒酸化をもたらす(水の酸化を凌ぐ);(v)高い酸化能力を有し、広範囲の有機化合物を非差別的な仕方で速やかに無機化する能力を有する;(vi)結晶粒界間に良好な連結性を有し、したがって100%の光電子収集効率を可能にする;(vii)安定な表面特性を有し、このため使用前に予備状態調節する必要がない;(viii)低い光腐食性と基板への高い機械的接着性をもたらし、これにより長期の安定性が確実に得られる。
【発明の概要】
【0015】
本発明の目的は、種々の用途向けの好ましい光電極を得るための、ある範囲の製造法を提供することである。
この目的を達成するために、本発明は、第1の実施態様において、a)二酸化チタンコロイド粒子を溶液中にて形成させ、pHを4未満に保持しつつ透析処理に付す;b)透析処理した溶液を水熱処理に付す;c)次いで、工程b)からのコロイドを導電性ガラス基板上にコーティングし、乾燥する;そしてd)工程c)からの被覆基板を約700℃にて焼成する;という二酸化チタン光触媒の製造法を提供する。
【0016】
この方法により、国際特許出願WO2004/088305に開示されているCOD法での使用に適した光陽極が得られる、ということが見出されている。
クロム酸洗浄工程を導入してITO基板を予備処理するのが好ましい。この追加工程により、固定化皮膜の均一性を向上させるより親水性の高い表面が得られ、その結果、得られる光陽極の再現性が向上する。この追加工程はさらに、固定化TiO2層と基板との間の機械的接着力を高めるべく適切な表面粗さをもたらし、したがって得られる光陽極の長期安定性が確実に得られる。
【0017】
光触媒の表面は極めて動的であることから、実用上、大きな問題を引き起こすことがある。なぜなら、このような動的表面は、有意義な測定ができるようになる前に、(予備状態調節することによって)安定化させるのに相当の時間を必要とするからである。光触媒の表面動的特性は、TiO2コロイドの粒径によって強い影響を受ける。一般には、コロイドの粒径が大きすぎると、より効率の低い表面エリアがもたらされ、このため光活性が低下する。しかしながら他方では、コロイドの粒径が小さすぎると、極めて動的な光活性表面がもたらされ、結晶化度が低下し、粒界のインピーダンスが増大し、そして結晶粒間の連結性が低下する。したがって、より小さな粒子から製造される光陽極は、かなり長い予備状態調節時間を必要とすることが見出されており、安定性、再現性、光触媒活性、および光電子収集効率がより低い。
【0018】
コロイドの表面化学も、得られる光触媒の表面動的特性を決定する上で重要な役割を果たす。よく知られているように、pHは、コロイド表面の化学形態に強い影響を及ぼす。pHが適切であると、安定な表面化学形態がもたらされ、これにより結晶化度が向上し、動的表面はより少なくなる。
【0019】
NazeeruddinとGratzelによって提唱されている方法を使用すると、得られるコロイドの粒径は約10nmであることが多いが、コロイド懸濁液の最終pHは制御できない。したがって本発明においては、得られる光陽極の表面動的特性をできるだけ抑えるべく、ゲル化工程と水熱処理工程との間に透析工程が導入される。透析工程を導入すると、小さな粒径のコロイドと非コロイド形態のチタニアを、コロイド溶液の残りの部分に大きな影響を及ぼすことなく容易に除去することができる。留意しておかなければならないことは、非コロイド形態のチタニア(例えば、2〜9のTi原子を有するオリゴマー形態のチタニア)は粒径がかなり小さい場合が多く、結晶化度の低下、高い粒界インピーダンス、低い結晶粒間連結性、および光電子収集効率の低下により、光活性に悪影響を及ぼすことがあるので、これらを除去することが極めて重要である、という点である。こうして得られるコロイドの粒径は8nm〜35nmの範囲であり、高性能の光陽極を得るのに最適な粒径であることが見出されている。導入される透析工程はさらに、さらなる化学種を導入する必要なしに、コロイドのpHを所望のレベルに調整するよう機能を果たす。したがってこのプロセスは、コロイド表面の化学形態を安定化させ、光触媒表面の動的作用をできるだけ抑える上で極めて有用であることが見出されている。この結果、極めて光活性の光陽極が得られる。これらの光陽極は、極めて安定であることが見出されており、広範囲の環境条件に耐えることができる。これらの光陽極は、使用前に(たとえ必要であるとしても)最小限の予備状態調節しか必要としない。これらの光陽極はさらに、水サンプル中の有機化学種の酸化によって生成される光電子をほぼ100%収集することができる。
【0020】
この方法によって得られる光陽極は、6000COD測定値を越えても機能するよう十分に安定化させることができる、ということが見出されている。これらの光陽極は、水サンプル中の有機化合物がゼロではないCODを有する場合は必ず、該有機化合物を酸化するよう、ほぼ普遍的な能力を示す。この方法は、水サンプル中に不純物として発生するおそれがある脂肪族有機分子もしくは芳香族有機分子に対して好ましい反応性を有し、したがって、水供給源中における種々の有機画分の“成分COD”を測定する上で、光電気化学的酸化における光陽極として使用することを可能にする、特定の光触媒を設計するのに役立つ。
【0021】
第2の実施態様においては、本発明は、a)ポリマーとチタン化合物とを含むテンプレート形成溶液を導電性基板上にコーティングする;b)被覆された基板を、50〜130℃の温度にて5〜170時間にわたって水熱処理に付す;c)次いで、工程b)からの処理基板を450〜650℃の温度で0.5〜5時間加熱する;という二酸化チタン光触媒の製造法を提供する。
【0022】
この製造法により、ポリマーテンプレートをベースとする秩序構造を有する光触媒活性のTiO2膜が得られる。ポリスチレンとチタンテトライソプロポキシド(TTIP)をテンプレート溶液として使用してヘキサゴナル構造を生成させるのが好ましい。最近、メソ構造のハイブリッド材料やメソポーラスな金属酸化物材料を合成するためのテンプレート法(特に、液体テンプレート法)が開発された。これらのうち、いわゆる「呼気像」法(”breath figure” method)が大きな関心を引いている。なぜならこの方法を使用すると、高度に秩序だった大規模の3Dミクロ−ヘキサゴナルアレイ(すなわち、ハニカム様構造の多孔質皮膜)を製造することができるからである。呼気像法によって得られる材料構造のユニークな特徴は、材料構造が、ミクロ規模においては、高度に秩序だった完全な3Dミクロ−ヘキサゴナル構造(0.5〜20μm)を有する一方で、ナノ規模においてはナノ多孔質構造を示す、という点にある。言い換えると、ミクロ−ヘキサゴナル構造は、ナノ多孔質構造からつくり上げられている。
【0023】
ユニークに配置構成されていて共存するこれらのミクロ−ナノ規模構造は、多くの応用に対して魅力的なものになる可能性がある。より重要なことには、このようなデュアルスケール構造(dual-scaled structures)により、多くの手段によって容易に改質が行える方法を特定の応用に適合させることが可能となる。呼気像法はこれまで、主として、単に有機物質を使用することによって形成される微小テンプレート(前駆体テンプレート)を作製するのに使用されており、しばしばジブロックコポリマーが構造誘導剤(structure directing agents)として使用される。次いで、こうして得られる前駆体テンプレートが、所望の材料を保持する“ネガティブ・インプレッション(negative impression)”テンプレートとして使用される。前駆体有機テンプレートを熱により除去した後に得られる、所望の材料に対するパターンは、前駆体テンプレートパターンに対するポジティブパターンである。
【0024】
本発明の気相水熱法(VPH)は、Ti−オキソ架橋の大きなチタニア無機ポリマーネットワークの形成をすることでより高い機械的強度を達成する。VPH処理は、サンプルを水位より高く保持するよう取り付けられたホルダーを装備した密閉オートクレーブ反応器中にて100℃未満で行うのが好ましい。このような条件化では、TTIPの大部分が、完全に加水分解された生成物(すなわちTi(OH)4)へ転化されると考えることができる。これらの好ましい反応条件はさらに、TTIP加水分解生成物の高度の縮合/重合をまねいて、H2TixO1+x・nH2OやTixO2x・mH2O(強いTi−オキソネットワークを形成する)を生成する。
【0025】
本発明のこの実施態様は、この種のテンプレートをつくり出して利用するための新たな方法を提供する。本発明の場合、テンプレートを合成する前に、機能性材料を構造誘導剤中に加える。材料組成に関して言うと、このような方法で製造されるテンプレートは、有機物質(ジブロックコポリマー)と金属酸化物(TiO2)からなるハイブリッド材料のテンプレートである。こうしたハイブリッド前駆体テンプレートは、この新たに開発された方法によってその場で、純然たるTiO23Dミクロ−ヘキサゴナルアレイに転化させることができる。この転化は、水熱(老化)プロセスや熱処理プロセスによって果たされ、これらのプロセスは、前駆体テンプレートの最初のパターンを元の状態のままにして、加水分解された有機チタンを光活性な結晶形のTiO2に転化させつつ、テンプレートの有機成分を同時に除去する、という二重の目的を果たす。本発明のアプローチは、3Dミクロ−ヘキサゴナル構造を得るのに必要とされる製造プロセスを大幅に単純化させる。さらに重要なことには、この新たな方法により、得られる構造物中の欠陥を飛躍的に減少させることができる。このアプローチはさらに、広範囲の機能性材料の使用を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、オートクレーブ処理前(左側)と処理後(右側)の、TiO2粒子の透過電子顕微鏡(TEM)像を示す。
【図2】図2は、700℃にて2時間という熱処理条件下で得られたTiO2光陽極の高解像度TEM(HRTEM)像を示す。
【図3】図3は、コロイド懸濁液からpH3.75にて形成されたTiO2皮膜の断面SEM像を示す。皮膜の推定厚さは約5ミクロンである。この皮膜は、約50nmの粒径の粒子から形成されると思われる。
【図4】図4は、コロイド懸濁液からpH3.85にて形成されたTiO2皮膜の断面走査電子顕微鏡(SEM)像を示す。皮膜の推定厚さは400nm〜600nmである。この皮膜は、約50nmの粒径の粒子から形成されると思われる。
【図5】図5は、700℃にて2時間という熱処理条件下で得られたTiO2光陽極の高解像度電界放射走査電子顕微鏡(HRFESEM)像を示す。
【図6】図6は、種々の温度にて30分焼成された電極に関して、飽和光電流の、フタル酸水素カリウムの濃度に対する依存性を示す(グラフ中の数字は焼成温度を示している)。
【図7】図7は、有機/無機ハイブリッド皮膜を純然たる無機皮膜に変換させる上での、本発明の第2の実施態様の概略図である。
【図8a】図8aは、得られるミクロ構造に及ぼすTTIPの濃度の影響を示す。カルボキシ末端ポリスチレン(CTPS)の濃度を10mg/mlに固定した。TTIPの濃度は、(a)が0(単なるCTPS);(b)が1.0mg/ml;(c)が2.5mg/ml;(d)が5.0mg/ml;(e)が10.0mg/ml。湿度70%のN2ガスの流量が200ml/分。
【図8b】図8bは、得られるミクロ構造に及ぼすTTIPの濃度の影響を示す。カルボキシ末端ポリスチレン(CTPS)の濃度を10mg/mlに固定した。TTIPの濃度は、(a)が0(単なるCTPS);(b)が1.0mg/ml;(c)が2.5mg/ml;(d)が5.0mg/ml;(e)が10.0mg/ml。湿度70%のN2ガスの流量が200ml/分。
【図8c】図8cは、得られるミクロ構造に及ぼすTTIPの濃度の影響を示す。カルボキシ末端ポリスチレン(CTPS)の濃度を10mg/mlに固定した。TTIPの濃度は、(a)が0(単なるCTPS);(b)が1.0mg/ml;(c)が2.5mg/ml;(d)が5.0mg/ml;(e)が10.0mg/ml。湿度70%のN2ガスの流量が200ml/分。
【図8d】図8dは、得られるミクロ構造に及ぼすTTIPの濃度の影響を示す。カルボキシ末端ポリスチレン(CTPS)の濃度を10mg/mlに固定した。TTIPの濃度は、(a)が0(単なるCTPS);(b)が1.0mg/ml;(c)が2.5mg/ml;(d)が5.0mg/ml;(e)が10.0mg/ml。湿度70%のN2ガスの流量が200ml/分。
【図8e】図8eは、得られるミクロ構造に及ぼすTTIPの濃度の影響を示す。カルボキシ末端ポリスチレン(CTPS)の濃度を10mg/mlに固定した。TTIPの濃度は、(a)が0(単なるCTPS);(b)が1.0mg/ml;(c)が2.5mg/ml;(d)が5.0mg/ml;(e)が10.0mg/ml。湿度70%のN2ガスの流量が200ml/分。
【図9a】図9aは、得られるミクロ構造に及ぼすCTPS濃度の影響を示す。TTIPの濃度を4.0mg/mlに固定した。CTPSの濃度は、(a)が2.0mg/ml;(b)が10mg/ml;(c)が15mg/ml;(d)が20mg/ml。湿度70%のN2ガスの流量が200ml/分。
【図9b】図9bは、得られるミクロ構造に及ぼすCTPS濃度の影響を示す。TTIPの濃度を4.0mg/mlに固定した。CTPSの濃度は、(a)が2.0mg/ml;(b)が10mg/ml;(c)が15mg/ml;(d)が20mg/ml。湿度70%のN2ガスの流量が200ml/分。
【図9c】図9cは、得られるミクロ構造に及ぼすCTPS濃度の影響を示す。TTIPの濃度を4.0mg/mlに固定した。CTPSの濃度は、(a)が2.0mg/ml;(b)が10mg/ml;(c)が15mg/ml;(d)が20mg/ml。湿度70%のN2ガスの流量が200ml/分。
【図9d】図9dは、得られるミクロ構造に及ぼすCTPS濃度の影響を示す。TTIPの濃度を4.0mg/mlに固定した。CTPSの濃度は、(a)が2.0mg/ml;(b)が10mg/ml;(c)が15mg/ml;(d)が20mg/ml。湿度70%のN2ガスの流量が200ml/分。
【図10】図10は、得られるミクロ構造に及ぼすN2の流量の影響を示す。TTIPの濃度は2.0mg/mlであり、CTPSの濃度は10.0mg/mlである。流量は、(a)が200ml/分;(b)が400ml/分;(c)が600ml/分;(d)が800ml/分。(e)と(f)が4000ml/分。N2ガスの湿度が80%。
【図11】図11は、最適な実験条件下にて得られた一組の典型的なSEM像を示す。
【図12】図12は、前処理されていない前駆体テンプレートから、(a)550℃にて2時間の熱処理前に得られたSEM像と、(b)550℃にて2時間の熱処理後に得られたSEM像を示す。
【図13】図13は、前駆体テンプレートから、(a)UV処理前に得られたSEM像、(b)24時間のUV処理後に得られたSEM像、および(c)550℃にて2時間の熱処理後に得られたSEM像、を示す。
【図14】図14は、前駆体テンプレートから得られたSEM像を示す。像(a)、(b)、および(c)は、100℃にて湿度100%で72時間水熱処理した後のテンプレートの、それぞれ上面図、断面図、および拡大断面図であり、像(d)、(e)、および(f)は、550℃にて2時間熱処理した後のUV処理テンプレートの、それぞれ上面図、断面図、および拡大断面図である。
【図15】図15は、種々の拡大率での光陽極のSEM像を示す。
【図16】図16は、得られた光陽極のHRTEM像(a)と(b)、および得られた光陽極の電子回折パターン(c)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
実施例1 ゾルゲル法
光陽極の製造
材料
酸化インジウムスズ(ITO)導電性スライドガラス(5〜15オーム/スクェア)がデルタテクノロジー社(USA)から市販されており、これらを導電性基板として使用した。チタンブトキシド(97%純度、アルドリッチ社)は、受け入れたままの状態で使用した。他のすべての化学薬品は分析用等級であって、特に明記しない限りアルドリッチ社から購入した。溶液はすべて、高純度の脱イオン水(ミリポア社、18Mオーム/cm)を使用して調製した。
【0028】
TiO2ゾルの合成
工程1: TiO2コロイドの合成
(1)特別に設計された500mlの三角フラスコ中にて、300mlの蒸留水中に2.0mlの濃硝酸を加えることによって混合物Aを調製する。(2)25.0mlのチタンブトキシド中に8.0mlの2−プロパノールを加えることによって混合物Bを調製する。(3)激しく攪拌しながら、混合物A中に混合物Bを滴下することによって加水分解を行う。加水分解されたチタニア溶液Cは白色スラリーである。(4)加熱プレートによって溶液Cの温度を80℃に徐々に上げることによってゲル化を行う。次いでこの溶液を、激しく攪拌しながら80℃の一定温度に10時間保持すると、半透明のコロイド懸濁液が生成する。(5)ゲル化の後に、0.45ミクロンのフィルターを使用して濾過プロセスを施して、大きな固体粒子を除去する。(6)次いで濾過した溶液を、12,000〜20,000DaのMWCO(分子量カットオフ)を含む透析膜チューブ中に移す。(7)組み込んだ透析膜チューブを、10リットルの脱イオン水(pH=5.5)を満たした容器中に、一定の攪拌状態にて24〜48時間静置することによって透析を行う。透析プロセス時に、透析膜チューブ内のコロイド溶液のpHをモニターしつつ、脱イオン水を頻繁に取り替える。このプロセスは、いったんコロイド溶液のpHが3.5より高い値(好ましくはpH=3.8)に達したら終了する。(8)透析処理したコロイド溶液を、熱水処理のために熱水反応器(サーマル・ボンブ(thermal-bomb))中に移す。(9)熱水処理(オートクレーブ堆積)は、密閉された熱水反応器中にて、200℃の一定温度で10時間以上(好ましくは12時間)行う。この熱水処理によりTiO2コロイドが得られ、これは次の工程にすぐに使用できる。
【0029】
工程2: TiO2ゾルの製造
(10)水熱処理したコロイド溶液を、80℃未満で真空蒸発法により濃縮して、固形分が5%より高い所望の濃度(好ましくは固形分6.0%)にする。(11)次いで、濃縮した溶液にカーボワックス等の増粘剤を加える。添加量は、(コロイドの重量)/(カーボワックスの重量)の比に基づいて決定され、一般には1%(w/w)より大きく、好ましくは30%(w/w)である。こうした値にすることで、いつでも固定化できる状態の、最終的なTiO2ゾル溶液が得られる。
【0030】
導電性基板の製造
(12)ITO導電性スライドガラスをカットして、所望のサイズおよび形状にする。(13)この基板を、洗浄剤、脱イオン水、クロム酸洗浄液、脱イオン水、そして最後に純粋エタノールで逐次洗浄することにより前処理した。クロム酸洗浄工程時にITO導電性層が破壊されないよう注意しなければならない。クロム酸洗浄液による処理時間は、40秒未満(好ましくは15秒)でなければならない。(14)次いで処理したスライドガラスを、ほこりのないクリーンな環境にて風乾する。固定化の前に導電性のチェックを行って、基板に対する顕著な損傷(処理プロセスから生じる損傷)がないことを確認する。
【0031】
固定化
(15)処理した導電性基板上へのTiO2コロイドの固定化を、ディップコーティング法により行う。処理したITOスライドガラスをディップコーティング機上に配置してから、適切な容器中にて適正な量のTiO2ゾル溶液中に浸漬する。コーティングは、基板をTiO2ゾル溶液から一定の速度(好ましくは2mm/秒)で引き出すことによって果たされる。(16)引き続き、コーティングしたスライドガラスをほこりの無いオーブン中にて、100℃で10分乾燥する。(17)乾燥したスライドガラスを、高温のか焼炉中に450℃にて30分静置する。(18)こうして得られるスライドガラスを、再びディップコーティング機上に配置する。(19)プロセス(15)を繰り返して、第2の層のコーティングを仕上げる。(20)プロセス(16)を繰り返す。(21)このようにして得られる、TiO2の2層を有するスライドガラスを、最終的に700℃にて0.5時間以上(好ましくは2時間)焼成し、これによりいつでも使用できる状態の光陽極が得られる。
【0032】
TiO2コロイドの特性決定
周知のように、非晶質のTiO2は、光の照射下にて電子/正孔再結合中心として作用する幾つかの構造上の欠陥のために光触媒反応性をもたない。光陽極を製造する場合は、良好な結晶化度を有するナノ粒子(コロイド)を使用してスタートするのが好ましい。ブトキシドを加水分解すると、すぐに一次粒子の大きな凝集体の白色沈殿物が生成する。これらの凝集体は、単分散粒子(コロイド)を得るために解膠する必要があり、単分散粒子はさらに、非コロイド形態のチタニアを含有することがある。これらの好ましくない非コロイド形態のチタニアを、透析プロセスによって除去する。非コロイド形態のチタニアの除去は極めて重要なことである。なぜなら、このような形態のチタニアは、しばしばサイズが極めて小さく(例えば、オリゴマー形態のチタニアは2〜9のTi原子を有する)、したがって結晶化度が低いこと、粒界のインピーダンスが高いこと、結晶粒間の連結性が低いこと、そして光電子の収集効率が低いことのために、得られる光陽極の光活性に悪影響を及ぼすことがある。こうして得られるコロイドのサイズは8nm〜10nmの範囲であり、高性能の光陽極を得るのに最適のサイズであることが分かっている。透析プロセスはさらに、コロイドのpHを所望のレベルに調整するという目的も果たす。このプロセスはコロイド表面上の化学形態を安定化させ、このことは、光触媒表面の動的な影響をできるだけ抑える上で有用である。このプロセスの後、おそらくは過剰なヒドロキシル基および/または非化学量論的なTi−O−Ti橋かけ結合が存在するために、得られる粒子が十分に結晶化されないことがある。したがって、加水分解とゲル化の後に得られるTiO2コロイド粒子の結晶化度を高めるために、コロイド懸濁液を、オートクレーブ中にて水熱処理に付す。図1は、オートクレーブ処理前と処理後のTiO2コロイドのTEM像を示す。オートクレーブ処理前では、TiO2コロイドの表面が粗く、4nm〜8nmの範囲の粒径を有することが分かる。粒子が十分に結晶化されていない。しかしながらオートクレーブ処理後では、像から明確に分かるように、粒子の表面がより良好な状態で画定されており、8nm〜10nmの範囲の粒径を有するナノ結晶がはっきり認められる。
【0033】
TiO2光陽極の特性決定
TiO2ナノ粒子で被覆した皮膜を、空気中にて種々の温度で種々の持続時間にわたって焼成した。この処理の目的は、一方では、ITO基板とナノ粒子との間の、およびナノ粒子間のより良好な電気接触(連結性)を得ること、ならびに基板とTiO2ナノ粒子との間の機械的強度と接着性を向上させることにある。他方においては、光陽極の光触媒性能は、結晶構造を変え、結晶化度を高め、そして粒子間の連結性を変えることによる熱処理を施すことで改良することができる。皮膜を500℃〜850℃の種々の温度で焼成してから、X線回折とSEMによって特性決定した。
【0034】
アナターゼ(101)平面の回折ピークの強度は、焼成温度が高くなるにつれて増大する(したがって結晶化度が向上し、粒径が大きくなる、ということを示している)ということが分かった。焼成温度と焼成時間が増大するにつれて半ピーク幅が減少することも観察された。これは、結晶化度が向上していること、ならびに焼成温度および/または焼成時間の増大により一次粒子間の凝集度が増大(すなわち粒子が成長)していることを示している。
【0035】
クリスタライトのサイズは、XRDの線幅の拡大から、シェーラー(Scherer)の式に従って概算することができる。
種々の焼成温度にて焼成した、処理された光陽極の粒径と相の組成を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
700℃で2時間焼成することで最良の結晶化度(相の組成は、アナターゼが97%でルチルが3%と概算)が得られる、ということが見出された。XRDによるナノ粒子の概算粒径は17nmであることがわかっている。留意しておかねばならないことは、このようにして導き出される粒径は、一次粒子の粒径、二次粒子の粒径、および二次粒子中における一次粒子間の凝集度を推定するための指針として役立つにすぎない、という点である。これは、一次粒子の結晶化度、および二次粒子中における一次粒子間の凝集度が、回折ピークの強度に影響を及ぼすからである。このことをさらに実証するために、HRTEMを使用して、結晶化度のレベルと粒径に直接アクセスした。図2は、700℃で2時間熱処理した後に得られた光陽極のHRTEM像を示す。この像は、ほぼ完全な結晶線を含む極めて明確に画定された(101)面(すなわち、101面の原子層間の距離が、それぞれの結晶粒子内である)を明らかにしており、結晶化度が高いことを示している。この像はまた、一次粒子サイズが7nm〜10nm(すなわち、元のコロイドのサイズに近い)であることを示している。700℃で2時間焼成処理して得られる光陽極の表面モルホロジーを、HRFESEMによって調べた(図5を参照)。極めて多孔質のナノ構造を有する表面モルホロジーが観察された。一次粒子の形状(コロイド粒子に類似)を観察することができる。二次粒子のサイズは、かなり類似している(20nm〜40nmの範囲)ことが見出された。興味あることに、X線回折から導き出されるサイズは、SEM像において観察される二次粒子のサイズに類似している。上記の顕微鏡法とXRDの知見に基づいて、XRDから導き出される粒径の変化は、凝集度と凝集体中における一次粒子間の結晶化度を表わしている、と推論することができる。
【0038】
光電気化学的特性
ブランクの電解質溶液から得られる飽和光電流(Isph)は、水の光触媒酸化の速度を示す。光陽極を600℃未満の温度で焼成したとき、水の酸化よって生じるIsphは、焼成温度が変わっても実質的に不変のままであるということが見出された。このことは、水の酸化に対する光触媒活性が同等である、ということを示している。600℃以上の温度で焼成した光陽極の場合、電極焼成温度を上げるとIsphが増大し、水の酸化に対する光触媒効率がアップしていることを示している。したがって、600℃以上で焼成した電極に対するIsphの増大は、結晶化度および/または一次粒子間の凝集度の変化によるものではないと思われる。その代わりに、焼成温度の変化によるIsphの変化が、結晶形の変化と一致すると思われる。表1に示すように、電極を700℃で焼成するとルチル相が存在するようになり(わずかな量にすぎないが)、焼成温度がより高くなるにつれて、ルチル相のパーセンテージが増大する。知られているように、光触媒による、水の酸化からの酸素の発生は、TiO2のアナターゼ相よりもルチル相の場合のほうがより速い。ここに記載の結果により、犠牲電子受容体(sacrificial electron acceptor)が使用されるとき、水の光触媒酸化に対しては、TiO2のルチル相のほうがアナターゼ形よりはるかに活性が高い、ということが確認される。こうした水の酸化増進に関して根底にあるメカニズムは、ルチル相が、表面結合したヒドロキシル基を化合させてO2分子の生成を容易にすることができる、という事実によるものであると思われる。ルチル形と比較して、アナターゼ形のTiO2への酸素の吸着がより容易であって、吸着量がより多いという事実により、この議論が裏付けられる。あるいは上記の説明に加えて、もう一つの可能性は、同じ電極上にルチル形とアナターゼ形(異なったバンドギャップを有する)の両方が共存することに関係する。2相間の接触が起こると、光誘起生成された電子/正孔対の一時的・空間的な隔離が容易になり、したがってこれら電子/正孔対の寿命が増大する。十分に実証されているように、異なったバンドギャップを有するカップリング半導体は、光電子と光正孔対の寿命を延ばすことによって光触媒の光触媒反応性を向上させることができる。上記のゾルゲル法にしたがって製造した幾つかのTiO2光陽極を、水サンプル中のCODを分析する目的で、特許明細書WO2004/088305に開示の方法にしたがって、光陽極の機能的寿命(functional lifetime)に関して実験室にて試験した。ある1つの光陽極センサーは、合計して3000より多いサンプルに対し、2週間以上の連続時間にわたって約10分ごとに適切にサンプルを分析してから、TiO2皮膜の物理的浸食によって最終的には機能しなくなった。同じ方法で製造した光陽極のSEMプロフィールを図4に示す。別の光陽極を同様に試験した。この光陽極は、5週間以上にわたって約10分の間隔にて約6500の水サンプルを分析してから、機能しなくなった。同じ方法で製造した光陽極のSEMプロフィールを図3に示す。留意しておかねばならないのは、これら2つのセンサーが2つの異なった製造バッチのメンバーであり、わずかに異なるものの(主にpHに関して)、上記した製造パラメーターの範囲内で製造された、という点である。この結果、図3と4から明らかなように、TiO2層の厚さとモルホロジーが異なっている。
【0039】
有機物質の光触媒酸化
溶液中にフタル酸水素カリウムが存在すると、得られる光電流は、低電位範囲における印加電位バイアスの増大とともに増大し、より高い印加電位において飽和に達する。より高い電位での飽和光電流(Isph)は、TiO2表面での光正孔の最大捕捉速度を表わしており、この最大捕捉速度は、溶液中のフタル酸水素カリウムの濃度(C)によって決まる。Isphに及ぼす光陽極焼成温度の影響を調べた。図6は、種々の温度にて焼成された電極に対するIsph−Cの関係を示す。いずれの場合も、Isphは、低濃度(すなわち50uM未満)においてフタル酸水素カリウムの濃度とともに直線的に増大する。この飽和光電流の直線的増大は、溶液を攪拌すると光電流が増大することで実証されるように、有機化合物の物質移動の制約によるものと考えることができる。Isphは、より高いフタル酸水素カリウム濃度において飽和に達する傾向にあるが、場合によっては、抑制効果によってわずかに低下することもある。光電流軸に対する切片は、ブランクの電解質溶液から水の光酸化によって生じるブランクの飽和光電流(Iblank)を示している。これらのブランクの飽和光電流は、600℃未満の温度で焼成した電極に対しては不変のままであり、650℃より高い温度で焼成した電極に対しては増大した。
【0040】
興味あることに、600℃未満の温度で焼成した電極の場合、ブランクの飽和光電流は実質的に不変のままであるけれども、Isph−C曲線の線形範囲は、電極の焼成温度が高くなるにつれて広がる。同じ光度での照射下において、最大飽和光電流の差は、TiO2表面での水とフタル酸水素カリウムによる光正孔の捕捉の差を表わしている。前述したように、これらの温度で焼成した電極はアナターゼ形のTiO2のみで構成されており、これらの電極間で変化する物理的パラメーターは、結晶化度の増大と粒子間の凝集度だけである。したがって、このような改良により、光電子/正孔対が強力な電子移動吸着質によって捕捉される前に、光電子/正孔対の再結合の程度を下げることが可能となるということを特に考えれば、より良好な結晶化度とより良好な粒子間連結性が、広がった線形範囲の原因である可能性が高い。非晶質のTiO2が、多くの表面欠陥と構造欠陥のためにわずかな光触媒反応性しかもたない、という事実がこの主張を裏付ける。
【0041】
より高い温度で焼成した電極では、水による光正孔捕捉速度が高まるだけでなく、フタル酸水素カリウムの濃度に対する最大Isph(IsphM)も大幅に増大する(光触媒活性の向上を示している)、ということが見出された。850℃で焼成した電極では、Isph−C曲線の線形部分の勾配は、より低い温度で焼成した電極に対して観察された勾配より小さかった。これはおそらく、皮膜の気孔率が低い(これにより電極の表面積が小さくなる)ためであろう。水サンプル中の有機汚染物の光触媒無機化等の応用において光効率をできるだけ高めるために、光陽極は、水に対してはより低い光触媒活性を示し、有機化合物の分解に対してはより高い光触媒活性を示さなければならない。残念なことに、焼成温度が高くなるにつれて、フタル酸水素カリウムに対する光触媒活性と水に対する光触媒活性の両方が増大することが見出されている。したがって、これら2つの相反するファクター間で折り合いをつけることが求められる。
【0042】
フタル酸に対する光触媒活性に及ぼす焼成温度の影響をさらに深く調べるためには、水の酸化の影響を受けることなく活性を反映するパラメーターが求められる。ある任意の光度において、飽和光電流が、高いフタル酸水素カリウム濃度範囲における最大値に達すると、全体的な光触媒酸化プロセスは、もはや物質移動の制御下にはなく、代わりに表面反応が全体のプロセスを支配する。このことは、高い濃度にて得られるIsphMが有機化合物に対する光陽極の反応性を表わしている、ということを意味する。しかしながら、有機化合物に対する電極の反応性を正確に示すためにIsphMを使用する上での問題点は、このようにして測定されるIsphMが、単に有機化合物の酸化だけによるものではない、ということである。水の酸化による光電流の成分(ブランクの光電流)も含まれ、この成分の大きさは電極の種類に応じて変わる。したがって、電極の反応性をより適切に表わすために、正味の最大IsphMは次のように定義される:
【0043】
【数1】
【0044】
ある任意の電極に対してIblankは一定であるので、ΔIsphMは、純粋に有機化合物の光触媒酸化のみによる最大光電流を示す。電極の反応性は、ΔIsphMを電極の焼成温度に対してプロットすることによって表わすことができる。
【0045】
ΔIsphMは、750℃までは電極の焼成温度に対してほぼ直線的に増大する(電極の反応性が増大していることを示している)。しかしながら、電極の焼成温度をさらに上げると、ΔIsphMの減少が起こり、電極性能の低下を示している。
【0046】
電極を異なった焼成温度にて処理すると、TiO2皮膜の幾つかの特性を変えることができる。皮膜パラメーターのこうした変化は、得られる電極の光触媒反応性に対して相反する影響を及ぼすことがある。例えば、焼成温度を高めることで表面積の減少が引き起こされると、通常は光触媒反応性が低下する。しかしながら、より高い焼成温度にて達成されるより良好な結晶化度とより良好な粒子間焼結度が、光触媒反応性を得る上で好ましい。450℃〜600℃の範囲の温度で焼成される光陽極に対するΔIsphMの増大は、主として、粒子間の連結の向上、および粒子の結晶化度のレベルの向上に帰することができるようである。このような焼成温度を超えると、ΔIsphMの増大は、ある程度は、粒子間の連結と結晶化度のさらなる向上に、しかしながら主としては、組成の変化(すなわち、ルチル相の量の増大)による。高温処理した電極に対して得られる(すなわち850℃にて生成される)大きなIsphは、有機化合物の酸化に対する光陽極の高い反応性によるのではなく、大きなIblankによるものであった。このことは、高温処理した電極が水の酸化に対して高い反応性を有する、ということを示している。
【0047】
抑制効果
CODに関して分析する場合、光陽極は、広範囲の有機化合物を、差別のない仕方で無機化することのできる高い酸化能力を必要とする。CODは集合的なパラメーターであるので、全汚染物の集合的な影響を正確に反映しなければならない。異なった光陽極は、異なった有機化合物に対して異なった酸化特性を有する、ということが見出された。結晶相およびアナターゼ相とルチル相との比は、光陽極の酸化特性に影響を及ぼす2つの重要なファクターであると思われる。これらのファクターは、主として、上記したような製造条件によって(特に、最終的な熱処理温度によって)決まる。したがって、光陽極の酸化特性に及ぼす結晶相の影響を調べた。
【0048】
知られているように、500℃未満の温度で熱処理した光陽極はアナターゼ相だけからなる。このタイプの光陽極は、単純な非芳香族化合物に対して高い光活性を有する(すなわち、単純な有機化合物を完全に酸化(無機化)することができる)ことがわかっている。しかしながら、このような種類の光陽極は芳香族化合物を無機化することができない、ということも見出されている。光陽極は、芳香族化合物を存在させることにより容易に不活性化させる(抑制する)ことができる。したがってこの点を調べるため、フタル酸、サリチル酸、およびo−クロロフェノールの3つのモデル化合物(それぞれが異なった官能基を有する)を選定した。フタル酸とサリチル酸はTiO2表面に強く吸着されることがわかっているが、o−クロロフェノールは弱い吸着物質である。正味の光電流は、かなり低い濃度範囲内においては、濃度の増大とともに直線的に増大する、ということが見出された。正味の最大光電流は約75μMに達し、次いで濃度をさらに増大させるにつれて減少した(横ばい状態になるのではなく)。濃度の増大に応じた正味の光電流の減少は、光触媒の活性部位に未反応有機物質(あるいはそれらの反応中間体)が堆積し、次いでこれらの活性部位が失活することで起こる抑制効果によるものである。
【0049】
700℃で2時間熱処理した光陽極が最良の結晶化度をもたらすことが見出され、このとき相の組成は、アナターゼ形が97%で、ルチル形が3%であると概算された。水のサンプルにおいて、低い有機物濃度範囲にて、正味の光電流と濃度との間に線形関係が観察された。しかしながら、より高い濃度においては、正味の光電流は、最大値に達した後にわずかに減少した。このことは、芳香族化合物が原因でわずかな表面不活性化が起きたことを示している。これは、500℃にて焼成した光陽極(芳香族化合物に対してかなりの抑制効果が観察された)から得られる結果とは対照的である。より重要なことに、高温で処理した光陽極に対して観察された線形範囲(すなわち、抑制効果のない範囲)は、より低温で処理した光陽極を使用して観察された線形範囲より5倍以上大きかった。このことは、高温で焼成した光陽極がより高い光触媒活性を有し、したがって、より複雑な有機化合物の完全な無機化が可能になる、ということを示している。この結果に対する明白な理由は、高温処理した光陽極がアナターゼとルチルの混合相からなっていて、これが相乗効果を生じる、というものである。アナターゼに対するEg(3.2eV)は、ルチルに対するEg(3.0eV)より0.2eV高い。このことが、光正孔からの光電子の分離を容易にするためのさらなる原動力をつくり出し、したがって再結合を抑制し、より効果的な光酸化が可能になるよう光正孔の寿命を長くする。
【0050】
最適の条件下で製造した光陽極の性能を試験し、前記したWO2004/088305に記載のように、完全分解条件(exhaustive degradation conditions)下にて評価した。
【0051】
先に提唱したように、完全分解モードを使用してCODを測定するための分析原理は、式(1)で表わすことができる:
【0052】
【数2】
【0053】
ここでQnetは、有機化合物の光触媒酸化により生じる正味の電荷であり、実験的に得ることができる。体積Vは、ある任意の光電気化学電池に対する、既知数を有する定数である。Fは、ファラデー定数である。式(1)は、完全な無機化と100%の電子収集効率が達成される場合にのみ、CODの測定に適用可能である。このことは、CODの測定に使用するのに適した光陽極がこれらの要件を満たさなければならない、ということを意味している。したがって、WO2004/088305に記載の方法を使用して得られるCOD値(実測COD値)と理論COD値とを比較することにより、分解(無機化)の程度と光陽極の光電子収集効率をひとまとめにして調べた。
【0054】
この方法は、本質的に理論COD値を測定し、この理論COD値は、サンプル中のすべての有機化合物が完全に無機化されると同時に、分解により光触媒作用的に発生した電子の100%が収集されるときにのみ得られる。
【0055】
合成サンプルを27回繰り返し注入することで0.05ppmのCODという理論検出限界が得られ、3σのシグナル対ノイズ比に基づいて算出した。しかしながら、合成サンプルから(KHPを使用して)得た実際の検出限界(すなわち実質検出限界(real detection limit))は、0.40ppmのCODであることが見出され、このとき相対標準偏差RSD%=±15%であった。グルコースベースの合成サンプルを使用して、線形範囲を調べる実験を行った。通常の光度下で(すなわち、全光度出力の75%にて)使用した薄層光電気化学電池に対しては、350ppmのCODという上部の線形範囲が観察された。全光度(100%)が使用したときは、560ppmという上部の線形範囲が得られた。
【0056】
20.0ppmのCODに相当するグルコースを含有するサンプルに対し、48時間にわたって96回の連続した分析を行うことによって再現性を評価した。このようにして得られた相対標準偏差は±0.96%であった。
【0057】
さらに、多数の注入サンプルを使用して長い使用時間にわたって、光陽極の安定性を試験した。使用した試験サンプルは、20.0ppmのCODに相当するグルコースをベースとする水サンプルであった。7日間に446回の連続した分析サイクルを行った後でも、測定されたCOD値に顕著な変化は起こらない(20.0±1.0ppm)、ということが見出された。一日当たり5回の注入にて、3週間にわたって長期間の安定性も調べた。この場合も、試験期間にわたって、測定されたCOD値に顕著な変化は起こらない、ということが見出された。
【0058】
システムが安定であることが実証されるまで、そして分析的に有用なデータを得ることができるまで、標準的な合成サンプルを予備試験することによって光陽極の予備状態調節を行う場合が多い。しかしながらこれは、任意の商業用機器に対する一般的な応用において、実施上の問題を引き起こすことがある。したがって、使用前の予備状態調節の必要性をなくすことができるかどうかについて検討を行った。この検討により、新たに開発された方法(前述)を使用して光陽極を製造したときに、安定な表面特性を有する光陽極を得ることができる、ということが明らかになった。得られる光陽極の表面安定性は、TiO2ゾルの合成時に、より小さなコロイド粒子が除去され、そしてコロイド溶液のpHが所望の値(pH=3.8)に調整されれば大幅に向上させることができる、ということが見出された。これは、合成プロセス時に透析法を導入することによって果たすことができる。
【0059】
実施例2
呼気像法
材料
酸化インジウムスズ(ITO)導電性スライドガラス(8オーム/スクェア)がデルタテクノロジー社(USA)から市販されており、これらを導電性基板として使用した。モノカルボキシ末端のポリスチレン(CTPS,MW=30,000)をサイエンスポリマー社から購入し、受け入れたままの状態で使用した。チタンテトライソプロポキシド(TTIP,97%)とクロロホルム(99%)は、シグマアルドリッチ社から市販用の製品として入手した。他の化学薬品はいずれも分析用であり、特に明記しない限りアルドリッチ社から購入した。溶液は全て、高純度の脱イオン水(ミリポア社,18Mオーム/cm)を使用して調製した。
【0060】
合成手順
図7は、モノカルボキシ末端ポリスチレン(CTPS)とチタンテトライソプロポキシド(TTIP)とを含む3Dハニカム構造ハイブリッド皮膜の作製、およびこのハイブリッド皮膜の純然たるTiO2皮膜への変換を概略的に示している。呼気像テンプレーティング法を使用して、大きめの3Dハニカム構造物を作製した。
【0061】
段階1: ハイブリッド前駆体テンプレートの作製
導電性基板の作製
(1)ITO導電性スライドガラスを所望のサイズと形状にカットする;(2)この基板を、洗浄剤、脱イオン水、アセトン、脱イオン水、および最後に高純度エタノールで順に超音波洗浄することによって前処理する;(3)処理したスライドガラスを、ちりのない清浄な環境にて空気中で乾燥する。
【0062】
テンプレート形成溶液の調製
(4)種々の量(好ましくは50mg)のモノカルボキシ末端ポリスチレンコポリマーを5.0mlのクロロホルム中に、5分間超音波処理することにより溶解した;(5)種々の量(好ましくは26.6μl)のチタンテトライソプロポキシドを上記のコポリマー溶液中に加えて、5分間超音波処理した。この結果、透明な溶液が得られた(テンプレート形成溶液:A)。
【0063】
前駆体テンプレートの作製
(6)前処理したITO基板を、特別に設計した反応チャンバー中に配置した;(7)種々の量(好ましくは30μl)の溶液Aを、微量ピペットによって基板上にキャストした;(8)直ちに、50〜100%(好ましくは83.2%)の範囲内に制御された湿度のN2ガスを基板表面上に垂直に、23℃の一定温度にて1〜20分(好ましくは8分)吹きつけた。湿度は、湿度計によって計測管理した;(9)キャストした溶液が(溶媒の蒸発により)固化した後、均一な薄膜(白色)が形成された。これをハイブリッド前駆体テンプレートとして使用する。
【0064】
段階2: ハイブリッド前駆体テンプレートの光活性TiO2光陽極への転化
老化処理(水熱処理)
(10)得られたハイブリッド前駆体テンプレートを、密閉可能な水熱反応チャンバー中の特別設計された棚上に配置した。十分な量の純粋を充填した小さな水容器も、チャンバー中に配置した;(11)チャンバーを密閉した後、チャンバーをオーブン中に、湿度100%にて50℃〜130℃の間の一定温度(好ましくは100℃)で5〜170時間(好ましくは72時間)静置した。
【0065】
ハイブリッドテンプレートの光活性3Dミクロ−ヘキサゴナルTiO2への転化
(12)水熱処理した(老化処理した)テンプレートを水熱反応チャンバーから取り出した;(13)このテンプレートを、高温のオーブン中に550℃の一定温度にて0.5〜5時間(好ましくは2時間)静置した。これにより、極めて規則正しく配列した状態の3Dミクロ−ヘキサゴナル構造を有する、ほぼ透明の光触媒活性TiO2皮膜が得られた。
【0066】
構造特性とモルホロジー特性
CTPS/TTIPハイブリッド皮膜は、同じ形成メカニズムを共有するので典型的な呼気像パターンを示す。CTPSは、呼気像パターンの形状と分布を決定するための構造誘導剤として作用するけれども、TTIPは、呼気像パターンの皮膜形成基準と寸法パラメーターを変える重要な役割を果たす。最初は、CTPS分子とTTIP分子は共に、前駆体溶液中に均一に分散される。しかしながら、呼気像形成プロセス時において、水の凝縮(クロロホルムの急速な蒸発によって引き起こされる)がいったん生じると、CTPSの自己集合が起こる。このような条件下では、TTIPの加水分解が同時に起こり、TTIPは、水の利用可能性のレベルに応じて、ある程度加水分解されることもあるし(式(2)を参照)、あるいは完全に加水分解されることもある(式(3)を参照):
【0067】
【化1】
【0068】
これらの反応は、主として、湿気を含んだN2ガスと前駆体溶液との間の界面および/または水滴と前駆体溶液との間の界面(水が豊富に存在する)等の場所で起こる。TTIPの加水分解生成物は親水性であり、こうした水の豊富な場所に堆積させることができ、結果としてチタンの分布が不均一となる。さらに、TTIPの加水分解生成物を、CTPSの親水性末端に引き付けることができる。これらの親水性末端が、自己集合プロセス時に、水の豊富な界面/場所に向かって配向し、したがってさらなるTTIP加水分解生成物がこのような場所に引き付けられるはずである。その結果、皮膜の固化が完了すると、水の豊富な界面/場所は、チタン供給源の含量が高くなる。このことは、孔の周囲の壁(フレーム)の上部がかなり厚い構造が得られていることを示している。得られる構造に対しるTTIPの影響は、TTIP加水分解生成物の部分的縮合によるものであるとも考えることができる。
【0069】
縮合/重合反応(式(4)と(5)を参照)により、Ti−オキソブリッジによるチタニアネットワーク/クラスターが形成される(CTPSの配列が変化する)ことがある。
【0070】
【化2】
【0071】
詳細な検討により、欠陥の無い周期的ハニカム構造のCTPS/TTIPハイブリッド皮膜を作製するための重要な基準は、(i)前駆体溶液中のCTPSの濃度が5mg/mlより高い;(ii)CTPSとTTIPとの比(w/w)が1.5:1より大きい;(iii)N2の流量が、100ml/分より大きく、500ml/分未満であって、相対湿度が60%より大きい;ということが明らかになった。細孔径は、上記のパラメーターに応じて3.5μm〜8μmの範囲で変わる。留意しておかねばならないことは、CTPS/TTIPハイブリッド皮膜の細孔径に及ぼす呼気像実験パラメーターの影響が、純然たるCTPS皮膜の作製の場合とは異なる、という点である。前駆体溶液中にTTIPを加えると、同じCTPS濃度の前駆体溶液を使用して得られる純然たるCTPS皮膜と比較して、より大きな細孔径が得られる。しかしながら、ある任意のCTPS濃度に対し、CTPS/TTIPの比を小さくすると細孔径が小さくなるが、得られる細孔径は、まだ純然たるCTPS皮膜の細孔径より大きい。ある任意のTTIP濃度に対し、CTPSの濃度が変わっても、得られるハイブリッド皮膜の細孔径にはほとんど影響を及ぼさない、ということが見出された。純然たるCTPS皮膜を作製する場合、流量を増大させると、通常は細孔径が小さくなるが、CTPS/TTIPハイブリッド皮膜の細孔径は、100〜500ml/分の範囲内での流量の変化に対してほとんど影響を受けない、ということが見出された。
【0072】
チタンテトライソプロポキシド(TTIP)の濃度の影響
チタンテトライソプロポキシド(TTIP)の濃度(最初のTi濃度)の影響を調べた(図8)。構造誘導剤であるカルボキシ末端ポリスチレン(CTPS)の濃度を10mg/mlにて一定に保持し、TTIPの濃度を0mg/mlから10mg/mlまで変えた。湿度70%で飽和したN2ガスを使用して呼気像を作製した。流量は、1気圧にて200ml/分であった。
【0073】
図8(a)は、TTIPが存在しない(すなわち純然たるCTPS)場合に得られた呼気像の、上面と断面のSEM像を示す。3.3μmの均一な微小孔径と6.6μmの皮膜厚さを有するほぼ完全なハニカム様微細構造物が作製された。この結果は、類似の実験条件下にて得られた先に報告された構造物と一致している。
【0074】
図8(a)〜(e)は、種々の濃度のTTIPが存在する場合に得られた呼気像の、上面と断面のSEM像を示す。これらの像から、TTIPが存在する場合もハニカム様呼気像が形成される、ということがわかる。しかしながら、これら微細構造物の寸法パラメーターは、明らかにTTIPの濃度によって影響を受ける。TTIPの濃度が1.0mg/mlの場合(TTIP/CTPSの濃度比=0.10)、微小孔径は6.4μmであり、厚さは6.3μmである(図8(b)を参照)。純然たるCTPS溶液の例(図8(a))と比較すると、得られる微小孔径はほぼ2倍であるが、厚さはわずかに減少している。TTIPの濃度を2.5mg/mlにさらに増大させると(TTIP/CTPSの濃度比=0.25)、4.1μmの微小孔径、および5.7μmの厚さが得られる(図8(c)を参照)。この場合、純然たるCTPSの場合と比較して微小孔径は増大したが、0.1mg/mlのTTIPの場合と比較すると減少し、厚さはさらに減少した。TTIPの濃度を5.0mg/mlにさらに増大させても(TTIP/CTPSの濃度比=0.50)、微小孔径に対してはそれほど大きな影響を及ぼさないが(4.0μm)、厚さは5.7μmにさらに減少する(図8(d)を参照)、ということが見出された。TTIPの濃度が10.0mg/mlの場合には(TTIP/CTPSの濃度比=1.0)、構造上の変形が観察された。このことから、任意のCTPS濃度について、適切なパターン形成を得るためのTTIPのある特定の濃度(またはTTIP/CTPS比)があることがわかる。構造上の変形は、このような臨界TTIP濃度(またはTTIP/CTPS比)を超えたときに起こる。
【0075】
モノカルボキシ末端ポリスチレン(CTPS)の濃度の影響
得られる呼気像に及ぼす構造誘導剤モノカルボキシ末端ポリスチレン(CTPS)の濃度の影響を調べた(図9を参照)。TTIPの濃度を4.0mg/mlにて一定に保持し、CTPSの濃度を10mg/mlから20mg/mlまで変えた。湿度70%で飽和したN2ガスを使用して呼気像を作製した。流量は、1気圧にて200ml/分であった。
【0076】
図9(a)から、かなり低い濃度(すなわち2.0mg/ml)のCTPSを使用した場合でも呼気像を得ることはできるが、これらの呼気像は、極めて規則正しい均一なハニカム様パターンの微細構造の形態をとっていない、ということがわかる。これは、構造誘導剤(CTPS)の量が、規則的なパターンの呼気像を得るための水滴を別々に保持するのに不十分であるために起こる。しかしながら図9(b)〜(d)から、極めて規則正しい配列の呼気像微細構造は、CTPSの濃度が10mg/ml以上であるときに得られる、ということがわかる。10mg/ml、15mg/ml、および20mg/mlのCTPS濃度に対して得られた微小孔径は、それぞれ3.8μm、3.4μm、および3.9μmであった。このことは、CTPS濃度の変化が微小孔径に影響を及ぼすが、その影響の程度は限られているようである、ということを示している。
【0077】
こうして得られた皮膜の厚さも測定した。10mg/ml、15mg/ml、および20mg/mlのCTPS濃度に対する皮膜の厚さは、それぞれ4.8μm、6.0μm、および8.3μmであった。このことは、CTPSの濃度の増大が皮膜の厚さにより大きな影響を及ぼす、ということを示している。
【0078】
流量の影響
よく知られているように、流量は、呼気像を作製できるかどうかを決める重要なパラメーターである。したがって図10は、得られる微細構造に及ぼす流量の影響を示す。
【0079】
この実験に対する溶液の組成は、TTIPが2.0mg/mlでCTPSが10mg/mlであった。N2ガスの湿度は70%に制御した。
200ml/分の流量を使用した場合は、4.0μmの微小孔径と4.3μmの厚さを有する通常の呼気像微細構造が得られた(図10(a)を参照)。図10(b)は、400ml/分の流量を使用した。得られた微小孔径と皮膜厚さは、それぞれ4.5μmおよび5.8μmであった。流量をさらに増大させると、微細構造の変形が起きた(図10(c)と(d)を参照)。これらの条件下では、微小孔の層がベースから分離した(すなわち、表面上に浮き上がった)。流量が極めて高いと(すなわち4000ml/分)、呼気像のパターンを壊すことがある(図10(e)と(f)を参照)。
【0080】
最適条件
すべてのファクターをひとまとめにして評価し、最終的な微細構造に及ぼす影響を、均一性、欠陥の程度、微小孔径、およびサイズ分布に関して検討することによって、最適の合成条件が得られた。これらの条件は次のとおりである:TTIPの濃度が2.0mg/ml;CTPSの濃度が10mg/ml;流量は、N2ガスの湿度が83.2%にて200ml/分。
【0081】
特に明記しない限り、後続するすべての実験に対してこれらの条件を使用した。これらの最適条件に対する一組の典型的なRFSEM像を図11に示す。
呼気像法により作製したハイブリッド前駆体テンプレートは、残留有機成分を除去するための、そしてチタン成分をその光活性結晶形に転化させるためのさらなる処理を必要とする。初期の試みでは、直接的な熱処理プロセスによってこれを達成するよう検討された。未処理のハイブリッド前駆体テンプレート(図12(a)を参照)を550℃で2時間焼成した。こうして得られるテンプレートのSEM像を図12(b)に示す。熱処理プロセス時に3Dミクロ−ヘキサゴナル構造が完全に破壊され、極めて多孔質のTiO2皮膜が得られる、ということが見出された。
【0082】
さらなる検討により、熱処理の早い段階でのCTPSの溶融が、当初の微細構造崩壊の原因である、ということが明らかになった。これは、テンプレート中のチタン成分が、十分な機械的強度をもたずにCTPSマトリックス内に捕捉されることにより起こる。テンプレートがCTPSの融点に達すると、CTPSが液状になることで3D微細構造の破壊をまねく。さらに、CTPSが蒸発するために、極めて多孔質の皮膜が得られる。適切な3D微細構造を保持するためには、前処理プロセス導入してこの問題に対処しなければならない。
【0083】
したがって、熱処理プロセス時のCTPS溶融問題を克服すべく、UV処理法を検討した。よく知られているように、UV−Cは有機物質を効果的に分解する。CTPSは有機ポリマーであり、もしUVがそれを小さな分子に分解して、これらの小さな分子が低温で蒸発しうるならば、熱処理の前にCTPSを除去することが可能になり、結果として3D微細構造を保持することができる。前駆体テンプレート(図13(a)を参照)を、24時間UV処理に付した。得られたテンプレートのSEM像を図13(b)に示す。この図から、CTPSが分解されていて、UV処理プロセスによりCTPSの大半が除去されていることがわかる。当初のパターンは保持されたけれども、チタン成分の崩壊によりほぼ2D構造に変わっている(図13(b)を参照)。
【0084】
図13(c)は、熱処理後のUV処理サンプルのSEM像を示す。構造がフラットな2D構造にさらに変わっているが、当初のパターンは明らかに保持されていることがわかる。
【0085】
水熱処理
UV処理から得られた結果は、熱処理前にCTPSを除去しても、3D微細構造を保持するという目的を達成するのに十分ではない、ということを示している。これは主として、残留しているチタン無機成分の機械的強度が弱いためである。したがって、熱処理の前にチタン無機成分をTiO2ネットワーク構造物(すなわち、一種の無機ポリマー)に転化させるために、水熱処理法が提唱された。十分な機械的強度を有するTiO2ネットワーク構造とともにこの工程が達成されれば、熱処理プロセス時におけるCTPSの溶融に関連した問題を克服できるはずであり、3D微細構造の崩壊には至らない。したがって水熱処理を、オーブン中100℃の温度および100%の湿度にて72時間行った。水熱処理後における前駆体テンプレートのSEM像の上面図、断面図、および拡大断面図(3D微細構造は、図13(a)に示されているものと同じ)を図14(a)〜(c)に示す。これらの像は、当初のテンプレートと比較して、3D微細構造の著しい変化を見せていない。次いで、この水熱処理したテンプレートを、550℃で2時間熱処理プロセスに付した。図14(d)〜(f)は、熱処理工程後における水熱処理テンプレートのSEM像の上面図、断面図、および拡大断面図を示す。高温熱処理の後でも、当初の3D微細構造がよく保持されていることからわかるように、これらの像によって水熱処理の有効性が明確に実証されている。
【0086】
さらに、熱処理後に、CTPS有機成分が除去されることで二次的なナノ多孔質構造がつくり出される、ということも見出された。この点は、非多孔質表面を示したUV処理テンプレートとは極めて対照的である。微小孔間の肉厚は、熱処理後に、有機成分の消失により減少した。呼気像で生成されるすべての光陽極を製造する上で、引き続きこれらの実験条件を使用した。
【0087】
得られた光陽極のSEM像を、異なった倍率にて図15に示す。拡大したSEM像(図15(d)を参照)から、ナノ多孔質構造となっていることが容易にわかる。この点をさらに検討した。
【0088】
図16は、得られた光電極のHRTEM像と電子回折パターンを示す。図面のHRTEM像は、完全な結晶線(すなわち、各結晶粒子内の(101)面における原子層間の距離)を有する極めて明確に画定された(101)面を示しており、結晶化度が高いことがわかる。結晶化度が高いことはさらに、同じ場所で得られた回折パターンによっても裏付けられる。これらの像はさらに、一次粒径が15nm〜20nmであることも示している。
【0089】
熱転化プロセスの有効性と得られる光陽極構造の結晶相を確認するために、X線回折パターンを得た。前駆体テンプレートとUV処理後のテンプレートからは結晶形のTiO2が得られない、ということが見出された。しかしながら、TiO2のアナターゼ相は、テンプレートが72時間水熱処理された後に現われ始め、このことは、3D微細構造の保持に関与するTiO2ネットワークの形成が、熱処理時においても変わらない、ということを示している。しかしながら結晶化は、決して完全なものとは言えない。
【0090】
熱処理したテンプレートから得られたXRDパターンは、TiO2が、550℃にて純然たるアナターゼに完全に転化されたことを示した。TiO2ルチル相のパターンは確認されなかった。
【0091】
ブルナウアー−エメット−テラー(BET)法とバレット−ジョイナー−ハレンダ(BJH)法を使用して、ナノ多孔質特性(比表面積、平均等価細孔径(mean pore equivalent diameter)、および平均細孔容積など)を調べた。サンプルのN2吸着−脱着等温線により、タイプVIの特性を示す等温線が得られた。IUPACの分類によれば、ヒステリシスループは、タイプH2(無秩序で境界のはっきりしない細孔径分布と形状分布のある例を示す)に相当する。このサンプルは、127m2/gの高い比表面積と0.77cm3/gの細孔容積を示した。細孔径分布は、8nm〜38nmの範囲内であって、約19nmのところの分布が最大であった。
【0092】
光電流応答に及ぼす光度の影響
有機物質が存在しない状態(すなわち、水の酸化だけが起こる)での光電流応答に及ぼす光度の影響を調べた。0.1MのNaNO3中に光陽極を入れ、種々の照度にてボルタモグラムを得た。各光度において、光電流応答は、印加電位とともに直線的に増大してから横ばい状態になった。飽和光電流とI−E曲線の直線部分の電位範囲はともに、光度が増大するにつれた増大した。このようにして得られる直線的なI−E関係は、電極がナノ粒状光陽極と同様に挙動するということを示している。こうした純然たる抵抗器タイプの挙動は、線形範囲内での反応速度がTiO2皮膜中の電子伝達によって制御される、ということを示している。曲線のこの部分において観察される光電流(すなわち反応速度)は、半導体皮膜中の電子を印加電位によってどの程度速く除去できるかを表わしている。任意の光度において、印加電位を増大させると、起電力の増大を引き起こし、その結果として光電流の比例的増大をもたらす(オームの法則から推測されるように)。
【0093】
飽和光電流(+0.40Vにて測定)と光度との間の関係を調べた。I−E曲線のこの範囲において、反応速度決定段階は、皮膜中の電子伝達プロセスよりはむしろ界面反応である。飽和電流を光度に対してプロットすると、直線が得られる。こうした線形依存性は、表面結合した光正孔に関する界面反応が一次反応である、という光触媒プロセスの一般的な仮説を示している。この結果も再び、ナノ粒子光陽極から得られる関係に類似している。
【0094】
有機物質の存在下での光電流応答に及ぼす光度の影響を調べた。ボルタモグラムは、45mMのグルコースと0.1MのNaNO3を含有する溶液中の光陽極にて種々の照度で得た。ボルタモグラムの特徴は、有機物質の非存在下で得られたものと定性的に類似していることがわかった。飽和光電流を光度に対してプロットすると、この場合も直線が得られ、この直線は、有機物質が存在しない場合に観察されたものと同じである。
【0095】
光電流と濃度との関係を調べた。ボルタモグラムは、0.1mMのNaNO3ブランク溶液中と、0.1mMのNaNO3中にグルコースを溶解して得られる種々のグルコース濃度の溶液中のTiO2光陽極にて、UV照射を行う場合とそうでない場合について得た。推測されるように、UV照射を行わない場合は、ブランク溶液に対しても、グルコース溶液に対しても測定可能な電流は観察されない、ということが見出された。他のいずれの場合も、グルコースI−E応答は、電位とともに直線的に増大してから、飽和光電流値に横ばい状態になった。
【0096】
正味の飽和光電流(ΔIsph)をグルコース濃度に対してプロットした。ΔIsphの値は、最大5.0mMまでは濃度とともに直線的に増大するということがわかった。この濃度未満では、光電気触媒プロセスの速度は、電極表面へのグルコースの物質移動によって制限される(すなわち、拡散律速プロセスである)。より高い濃度においては、ΔIsphの値が横ばい状態になり、この時点で反応速度は、皮膜/溶液界面反応によって、そして特に、光正孔捕捉プロセス(これらの濃度にて全体としての反応を支配する)によって制限されるようになる。留意しておかねばならないことは、これらの結果が、ナノ粒状光陽極に関して先に示したものと定性的に類似しているという点である。
【0097】
光陽極の光電子収集効率を調べた。評価は、理論的上の正味電荷と種々のグルコース濃度からの実測の正味電荷とを比較することによって行った。理論上の正味電荷のプロットおよび実測の正味電荷のプロットに対して得られた勾配は、それぞれ19.84および6.92であった。もし100%の電子収集効率が達成されていれば、実測正味電荷のプロットの勾配は、理論的に予測した勾配と同じになるはずである。実測正味電荷のプロットから得られた勾配がより小さいということは、すべての光電子の一部だけが収集されたことを示している。2つの勾配間の比は0.35であり、グルコースの酸化により生じる光電子の35%が収集されていることを示している。詳細な検討により、電子収集効率が低いのは、ナノ粒子間の連結性が不十分のためであるということが明らかになった。連結性が不十分であるのは主として、呼気像法によって製造される光陽極が極めて多孔質であるからである。
【0098】
結論
極めて整然としていて完全にパターン化された3Dミクロ−ヘキサゴナル構造を有する有機物/金属酸化物ハイブリッドテンプレートを呼気像法によって製造することができる。このようなハイブリッドテンプレートは、3Dミクロ−ヘキサゴナル構造を変えないまま、光活性の純然たるTiO2に直接転化させることができる。本発明の重要な態様は気相水熱処理法(老化)の発見にあり、この気相水熱処理法により、有機チタンハイブリッド(an organo-titanium hybrid)の、その後のさらなる熱処理時において当初の3Dミクロ−ヘキサゴナル構造を保持するに足る十分な機械的強度を有する無機チタニアネットワークへの効果的な転化が可能となる。
【0099】
こうして得られた光陽極は、極めて多孔質のナノ粒子を組み込んで構築される、極めて整然としていて完全にパターン化された3Dミクロ−ヘキサゴナル構造を有する。これによりナノ材料特性が生まれる。本発明の光陽極のユニークな構造形態と極めて高活性の表面エリアにより、広範囲の応用に対してさらなる改善と改良が可能となる。
【0100】
得られた光陽極の光電気化学的挙動は、ナノ粒状TiO2で造られた光陽極の光電気化学的挙動と類似していることがわかった。しかしながら、この新規な微細構造のTiO2光陽極はナノ粒子間の連結性が低く、したがって光電子の収集効率が低くなる。
【0101】
上記の例からわかるように、本発明は、種々のモルホロジー構造を有するTiO2光触媒を得るための2つの異なった製造法を提供する。
当業者には周知のことであるが、本発明の要旨を逸脱することなく、本明細書に記載の実施態様とは別の実施態様にて本発明を実施することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の二酸化チタン光電極、および特に光電気化学電池に使用するための二酸化チタン光電極を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
TiO2が主要な半導体光触媒となっているが、この他にも多くの種類の半導体光触媒がある。この分野においてTiO2が優勢なのは、その光触媒酸化能力が優れていることに加えて、光腐食性ではなく、毒性がなく、そして安価であるためであり、高度に光活性のナノ粒子形にて容易に合成することができる。実際には、応用がさまざまに異なることから、いろいろな光触媒特性を有する光触媒が必要となる。これらの特性は、物質の構造パラメーター、組成パラメーター、および形態パラメーターによって決まることが知られており、種々の条件下でのさまざまな合成法によって調節することができる。
【0003】
これまでの20年にわたって、種々の形態のTiO2光触媒を製造する上で多くの合成法が開発された。最も広く使用されている合成法は、ゾルゲル法、電気化学的陽極酸化法、液体テンプレート法、および種々の水熱法である。これらの方法のうちで、ゾルゲル法は、ナノ粒状のTiO2光触媒を合成するための、最も簡単で最もよく研究されている方法である。ナノ粒状形態のTiO2を得るには、ほぼ例外なくゾルゲル法が使用されている。
【0004】
電気化学的陽極酸化法は、2001年に最初に報告された。この方法は、簡単な一段階電気化学的工程によって、高度に整然としていて垂直に整列した大規模なTiO2ナノチューブを調製することができる。引き続き熱処理を行うことで、ある範囲の用途に適した、高度に光触媒活性の形態のTiO2ナノチューブが得られる。このような形態のTiO2光触媒の魅力は、次元構造がユニークであること、新たな物理化学的性質の豊富な供給源であること、および種々の分野に対する応用可能性が極めて高いことにある。垂直に整列したナノチューブ状TiO2光陽極を使用すると、水開裂と色素増感太陽電池の光触媒効率を高めることができる、ということが広く報じられている。光触媒効率の増大に対する物理学的な根拠は、極めて整然としていて垂直に整列したナノチューブ構造によってもたらされる電子パーコレーション経路が効率的であるためとされている。ナノ粒子系の場合、ナノ粒子間の接触点における構造が不規則であると、自由電子の散乱が増大し、このため電子の移動性が低下する。したがって、電子伝達が全体的な光触媒プロセスの制限要因となることが多い。
【0005】
液体テンプレート法は、極めて広い範囲の種々のテンプレートをカバーし、非常に異なったメカニズムに基づいた変化に富んだ方法である。この方法によって、種々の形態のTiO2ナノ構造物(例えば、ナノ平面、ナノチューブ、メソポーラス、極めて整然としていて特許を得たアレイ)を得ることができる。水熱法が長年にわたって利用されているが、ごく最近になって、この方法がナノ構造化TiO2の合成に使用されている。この方法を使用して、ナノ平面状、ナノチューブ状、ナノ繊維状及びメソポーラス状の形態を含めた種々の形態のTiO2を合成することができる。
【0006】
米国特許第5525440号は、最初に導電性ガラス上に多孔質層として酸化チタンの層を作製し、そしてアニールし、次いで非多孔質の酸化チタン層を施し、最後にさらなる多孔質酸化チタン層を施し、次いでこの電極全体を500℃でアニールする、という光電気化学電池の製造を開示している。次いでこの電極を、さらなる酸化チタンの電気化学付着に付す。
【0007】
米国特許第6281429号は、ITOガラス上の二酸化チタンの透明電極を開示しており、この電極は、ある特定の手順によって決定される厚さにて作製される。
ジャパニーズ・アブストラクト(Japanese abstract)2004196644は、ゾルから二酸化チタン皮膜を作製し、次いでこの皮膜を焼結することを開示している。
【0008】
ジャパニーズ・アブストラクト59121120は、効率を向上させるべく、二酸化チタンに対する真空中での還元処理を開示している。
米国特許第629970号は、最初にナノ粒子を沈殿によって形成させ、250〜600℃の範囲に加熱し、ナノ粒子を表面上に分散させて被覆し、次いで得られた被膜を、250℃未満の温度および100〜10000バールの圧力にて処理する、という半導体酸化物の製造法を開示している。
【0009】
米国特許第6444189号は、塩基水溶液に酸性チタン塩溶液を20〜95℃の温度にて加えて、最終的なpHを2〜4に保持しつつ粒子を沈殿させることによって二酸化チタン粒子を製造する方法を開示している。
【0010】
米国特許第7224036号は、焼結を避けるために低温での加圧処理を含む、結合剤と酸化物を使用して光電変換素子を製造する方法を開示している。
国際特許出願WO2007/023543は、窒化チタン中間体を使用し、電気分解によって完了する、というプロセスを使用して酸化チタンを製造する方法を開示している。
【0011】
国際特許出願WO2007/020485は、色素改質表面(a dye modified surface)を有する酸化チタン光触媒を製造する低温法を開示している。
米国特許第5362514号は、多孔質金属酸化物で被覆されていて、ポルフィリン−フタロシアニン色素を含む光電陽極を開示している。
【0012】
米国特許第5693432号は、酸化チタンと高分子固体電解質を開示している。
米国特許第6538194号は、アナターゼ型二酸化チタンと密閉された電解質とを含み、導電性の突起物が該酸化物層で被覆されている光電極電池を開示している。
【0013】
米国特許第6685909号は、酸化モリブデンのシェルを有するナノ結晶質二酸化チタンヘテロ接合材料を開示している。
米国特許第6855202号は、分岐粒子を含む造形ナノ結晶粒子(shaped nano crystal particles)を開示している。
【0014】
国際特許出願WO2004/088305は、水サンプルの化学的酸素要求量を測定する上でTiO2光電極を使用することを開示している。該出願によれば、TiO2光触媒は、次のような一般的特性を有していなければならない:(i)光陽極を形成するよう容易に固定化される;(ii)均一性と再現性を有する導電性基板上固定化薄膜形態物(光陽極)が容易に得られる;(iii)高い量子効率、高い光触媒活性、および優れた速度論的性質をもたらす;(iv)有機化合物に対して選択的であって、極めて感受性の高い光触媒酸化をもたらす(水の酸化を凌ぐ);(v)高い酸化能力を有し、広範囲の有機化合物を非差別的な仕方で速やかに無機化する能力を有する;(vi)結晶粒界間に良好な連結性を有し、したがって100%の光電子収集効率を可能にする;(vii)安定な表面特性を有し、このため使用前に予備状態調節する必要がない;(viii)低い光腐食性と基板への高い機械的接着性をもたらし、これにより長期の安定性が確実に得られる。
【発明の概要】
【0015】
本発明の目的は、種々の用途向けの好ましい光電極を得るための、ある範囲の製造法を提供することである。
この目的を達成するために、本発明は、第1の実施態様において、a)二酸化チタンコロイド粒子を溶液中にて形成させ、pHを4未満に保持しつつ透析処理に付す;b)透析処理した溶液を水熱処理に付す;c)次いで、工程b)からのコロイドを導電性ガラス基板上にコーティングし、乾燥する;そしてd)工程c)からの被覆基板を約700℃にて焼成する;という二酸化チタン光触媒の製造法を提供する。
【0016】
この方法により、国際特許出願WO2004/088305に開示されているCOD法での使用に適した光陽極が得られる、ということが見出されている。
クロム酸洗浄工程を導入してITO基板を予備処理するのが好ましい。この追加工程により、固定化皮膜の均一性を向上させるより親水性の高い表面が得られ、その結果、得られる光陽極の再現性が向上する。この追加工程はさらに、固定化TiO2層と基板との間の機械的接着力を高めるべく適切な表面粗さをもたらし、したがって得られる光陽極の長期安定性が確実に得られる。
【0017】
光触媒の表面は極めて動的であることから、実用上、大きな問題を引き起こすことがある。なぜなら、このような動的表面は、有意義な測定ができるようになる前に、(予備状態調節することによって)安定化させるのに相当の時間を必要とするからである。光触媒の表面動的特性は、TiO2コロイドの粒径によって強い影響を受ける。一般には、コロイドの粒径が大きすぎると、より効率の低い表面エリアがもたらされ、このため光活性が低下する。しかしながら他方では、コロイドの粒径が小さすぎると、極めて動的な光活性表面がもたらされ、結晶化度が低下し、粒界のインピーダンスが増大し、そして結晶粒間の連結性が低下する。したがって、より小さな粒子から製造される光陽極は、かなり長い予備状態調節時間を必要とすることが見出されており、安定性、再現性、光触媒活性、および光電子収集効率がより低い。
【0018】
コロイドの表面化学も、得られる光触媒の表面動的特性を決定する上で重要な役割を果たす。よく知られているように、pHは、コロイド表面の化学形態に強い影響を及ぼす。pHが適切であると、安定な表面化学形態がもたらされ、これにより結晶化度が向上し、動的表面はより少なくなる。
【0019】
NazeeruddinとGratzelによって提唱されている方法を使用すると、得られるコロイドの粒径は約10nmであることが多いが、コロイド懸濁液の最終pHは制御できない。したがって本発明においては、得られる光陽極の表面動的特性をできるだけ抑えるべく、ゲル化工程と水熱処理工程との間に透析工程が導入される。透析工程を導入すると、小さな粒径のコロイドと非コロイド形態のチタニアを、コロイド溶液の残りの部分に大きな影響を及ぼすことなく容易に除去することができる。留意しておかなければならないことは、非コロイド形態のチタニア(例えば、2〜9のTi原子を有するオリゴマー形態のチタニア)は粒径がかなり小さい場合が多く、結晶化度の低下、高い粒界インピーダンス、低い結晶粒間連結性、および光電子収集効率の低下により、光活性に悪影響を及ぼすことがあるので、これらを除去することが極めて重要である、という点である。こうして得られるコロイドの粒径は8nm〜35nmの範囲であり、高性能の光陽極を得るのに最適な粒径であることが見出されている。導入される透析工程はさらに、さらなる化学種を導入する必要なしに、コロイドのpHを所望のレベルに調整するよう機能を果たす。したがってこのプロセスは、コロイド表面の化学形態を安定化させ、光触媒表面の動的作用をできるだけ抑える上で極めて有用であることが見出されている。この結果、極めて光活性の光陽極が得られる。これらの光陽極は、極めて安定であることが見出されており、広範囲の環境条件に耐えることができる。これらの光陽極は、使用前に(たとえ必要であるとしても)最小限の予備状態調節しか必要としない。これらの光陽極はさらに、水サンプル中の有機化学種の酸化によって生成される光電子をほぼ100%収集することができる。
【0020】
この方法によって得られる光陽極は、6000COD測定値を越えても機能するよう十分に安定化させることができる、ということが見出されている。これらの光陽極は、水サンプル中の有機化合物がゼロではないCODを有する場合は必ず、該有機化合物を酸化するよう、ほぼ普遍的な能力を示す。この方法は、水サンプル中に不純物として発生するおそれがある脂肪族有機分子もしくは芳香族有機分子に対して好ましい反応性を有し、したがって、水供給源中における種々の有機画分の“成分COD”を測定する上で、光電気化学的酸化における光陽極として使用することを可能にする、特定の光触媒を設計するのに役立つ。
【0021】
第2の実施態様においては、本発明は、a)ポリマーとチタン化合物とを含むテンプレート形成溶液を導電性基板上にコーティングする;b)被覆された基板を、50〜130℃の温度にて5〜170時間にわたって水熱処理に付す;c)次いで、工程b)からの処理基板を450〜650℃の温度で0.5〜5時間加熱する;という二酸化チタン光触媒の製造法を提供する。
【0022】
この製造法により、ポリマーテンプレートをベースとする秩序構造を有する光触媒活性のTiO2膜が得られる。ポリスチレンとチタンテトライソプロポキシド(TTIP)をテンプレート溶液として使用してヘキサゴナル構造を生成させるのが好ましい。最近、メソ構造のハイブリッド材料やメソポーラスな金属酸化物材料を合成するためのテンプレート法(特に、液体テンプレート法)が開発された。これらのうち、いわゆる「呼気像」法(”breath figure” method)が大きな関心を引いている。なぜならこの方法を使用すると、高度に秩序だった大規模の3Dミクロ−ヘキサゴナルアレイ(すなわち、ハニカム様構造の多孔質皮膜)を製造することができるからである。呼気像法によって得られる材料構造のユニークな特徴は、材料構造が、ミクロ規模においては、高度に秩序だった完全な3Dミクロ−ヘキサゴナル構造(0.5〜20μm)を有する一方で、ナノ規模においてはナノ多孔質構造を示す、という点にある。言い換えると、ミクロ−ヘキサゴナル構造は、ナノ多孔質構造からつくり上げられている。
【0023】
ユニークに配置構成されていて共存するこれらのミクロ−ナノ規模構造は、多くの応用に対して魅力的なものになる可能性がある。より重要なことには、このようなデュアルスケール構造(dual-scaled structures)により、多くの手段によって容易に改質が行える方法を特定の応用に適合させることが可能となる。呼気像法はこれまで、主として、単に有機物質を使用することによって形成される微小テンプレート(前駆体テンプレート)を作製するのに使用されており、しばしばジブロックコポリマーが構造誘導剤(structure directing agents)として使用される。次いで、こうして得られる前駆体テンプレートが、所望の材料を保持する“ネガティブ・インプレッション(negative impression)”テンプレートとして使用される。前駆体有機テンプレートを熱により除去した後に得られる、所望の材料に対するパターンは、前駆体テンプレートパターンに対するポジティブパターンである。
【0024】
本発明の気相水熱法(VPH)は、Ti−オキソ架橋の大きなチタニア無機ポリマーネットワークの形成をすることでより高い機械的強度を達成する。VPH処理は、サンプルを水位より高く保持するよう取り付けられたホルダーを装備した密閉オートクレーブ反応器中にて100℃未満で行うのが好ましい。このような条件化では、TTIPの大部分が、完全に加水分解された生成物(すなわちTi(OH)4)へ転化されると考えることができる。これらの好ましい反応条件はさらに、TTIP加水分解生成物の高度の縮合/重合をまねいて、H2TixO1+x・nH2OやTixO2x・mH2O(強いTi−オキソネットワークを形成する)を生成する。
【0025】
本発明のこの実施態様は、この種のテンプレートをつくり出して利用するための新たな方法を提供する。本発明の場合、テンプレートを合成する前に、機能性材料を構造誘導剤中に加える。材料組成に関して言うと、このような方法で製造されるテンプレートは、有機物質(ジブロックコポリマー)と金属酸化物(TiO2)からなるハイブリッド材料のテンプレートである。こうしたハイブリッド前駆体テンプレートは、この新たに開発された方法によってその場で、純然たるTiO23Dミクロ−ヘキサゴナルアレイに転化させることができる。この転化は、水熱(老化)プロセスや熱処理プロセスによって果たされ、これらのプロセスは、前駆体テンプレートの最初のパターンを元の状態のままにして、加水分解された有機チタンを光活性な結晶形のTiO2に転化させつつ、テンプレートの有機成分を同時に除去する、という二重の目的を果たす。本発明のアプローチは、3Dミクロ−ヘキサゴナル構造を得るのに必要とされる製造プロセスを大幅に単純化させる。さらに重要なことには、この新たな方法により、得られる構造物中の欠陥を飛躍的に減少させることができる。このアプローチはさらに、広範囲の機能性材料の使用を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、オートクレーブ処理前(左側)と処理後(右側)の、TiO2粒子の透過電子顕微鏡(TEM)像を示す。
【図2】図2は、700℃にて2時間という熱処理条件下で得られたTiO2光陽極の高解像度TEM(HRTEM)像を示す。
【図3】図3は、コロイド懸濁液からpH3.75にて形成されたTiO2皮膜の断面SEM像を示す。皮膜の推定厚さは約5ミクロンである。この皮膜は、約50nmの粒径の粒子から形成されると思われる。
【図4】図4は、コロイド懸濁液からpH3.85にて形成されたTiO2皮膜の断面走査電子顕微鏡(SEM)像を示す。皮膜の推定厚さは400nm〜600nmである。この皮膜は、約50nmの粒径の粒子から形成されると思われる。
【図5】図5は、700℃にて2時間という熱処理条件下で得られたTiO2光陽極の高解像度電界放射走査電子顕微鏡(HRFESEM)像を示す。
【図6】図6は、種々の温度にて30分焼成された電極に関して、飽和光電流の、フタル酸水素カリウムの濃度に対する依存性を示す(グラフ中の数字は焼成温度を示している)。
【図7】図7は、有機/無機ハイブリッド皮膜を純然たる無機皮膜に変換させる上での、本発明の第2の実施態様の概略図である。
【図8a】図8aは、得られるミクロ構造に及ぼすTTIPの濃度の影響を示す。カルボキシ末端ポリスチレン(CTPS)の濃度を10mg/mlに固定した。TTIPの濃度は、(a)が0(単なるCTPS);(b)が1.0mg/ml;(c)が2.5mg/ml;(d)が5.0mg/ml;(e)が10.0mg/ml。湿度70%のN2ガスの流量が200ml/分。
【図8b】図8bは、得られるミクロ構造に及ぼすTTIPの濃度の影響を示す。カルボキシ末端ポリスチレン(CTPS)の濃度を10mg/mlに固定した。TTIPの濃度は、(a)が0(単なるCTPS);(b)が1.0mg/ml;(c)が2.5mg/ml;(d)が5.0mg/ml;(e)が10.0mg/ml。湿度70%のN2ガスの流量が200ml/分。
【図8c】図8cは、得られるミクロ構造に及ぼすTTIPの濃度の影響を示す。カルボキシ末端ポリスチレン(CTPS)の濃度を10mg/mlに固定した。TTIPの濃度は、(a)が0(単なるCTPS);(b)が1.0mg/ml;(c)が2.5mg/ml;(d)が5.0mg/ml;(e)が10.0mg/ml。湿度70%のN2ガスの流量が200ml/分。
【図8d】図8dは、得られるミクロ構造に及ぼすTTIPの濃度の影響を示す。カルボキシ末端ポリスチレン(CTPS)の濃度を10mg/mlに固定した。TTIPの濃度は、(a)が0(単なるCTPS);(b)が1.0mg/ml;(c)が2.5mg/ml;(d)が5.0mg/ml;(e)が10.0mg/ml。湿度70%のN2ガスの流量が200ml/分。
【図8e】図8eは、得られるミクロ構造に及ぼすTTIPの濃度の影響を示す。カルボキシ末端ポリスチレン(CTPS)の濃度を10mg/mlに固定した。TTIPの濃度は、(a)が0(単なるCTPS);(b)が1.0mg/ml;(c)が2.5mg/ml;(d)が5.0mg/ml;(e)が10.0mg/ml。湿度70%のN2ガスの流量が200ml/分。
【図9a】図9aは、得られるミクロ構造に及ぼすCTPS濃度の影響を示す。TTIPの濃度を4.0mg/mlに固定した。CTPSの濃度は、(a)が2.0mg/ml;(b)が10mg/ml;(c)が15mg/ml;(d)が20mg/ml。湿度70%のN2ガスの流量が200ml/分。
【図9b】図9bは、得られるミクロ構造に及ぼすCTPS濃度の影響を示す。TTIPの濃度を4.0mg/mlに固定した。CTPSの濃度は、(a)が2.0mg/ml;(b)が10mg/ml;(c)が15mg/ml;(d)が20mg/ml。湿度70%のN2ガスの流量が200ml/分。
【図9c】図9cは、得られるミクロ構造に及ぼすCTPS濃度の影響を示す。TTIPの濃度を4.0mg/mlに固定した。CTPSの濃度は、(a)が2.0mg/ml;(b)が10mg/ml;(c)が15mg/ml;(d)が20mg/ml。湿度70%のN2ガスの流量が200ml/分。
【図9d】図9dは、得られるミクロ構造に及ぼすCTPS濃度の影響を示す。TTIPの濃度を4.0mg/mlに固定した。CTPSの濃度は、(a)が2.0mg/ml;(b)が10mg/ml;(c)が15mg/ml;(d)が20mg/ml。湿度70%のN2ガスの流量が200ml/分。
【図10】図10は、得られるミクロ構造に及ぼすN2の流量の影響を示す。TTIPの濃度は2.0mg/mlであり、CTPSの濃度は10.0mg/mlである。流量は、(a)が200ml/分;(b)が400ml/分;(c)が600ml/分;(d)が800ml/分。(e)と(f)が4000ml/分。N2ガスの湿度が80%。
【図11】図11は、最適な実験条件下にて得られた一組の典型的なSEM像を示す。
【図12】図12は、前処理されていない前駆体テンプレートから、(a)550℃にて2時間の熱処理前に得られたSEM像と、(b)550℃にて2時間の熱処理後に得られたSEM像を示す。
【図13】図13は、前駆体テンプレートから、(a)UV処理前に得られたSEM像、(b)24時間のUV処理後に得られたSEM像、および(c)550℃にて2時間の熱処理後に得られたSEM像、を示す。
【図14】図14は、前駆体テンプレートから得られたSEM像を示す。像(a)、(b)、および(c)は、100℃にて湿度100%で72時間水熱処理した後のテンプレートの、それぞれ上面図、断面図、および拡大断面図であり、像(d)、(e)、および(f)は、550℃にて2時間熱処理した後のUV処理テンプレートの、それぞれ上面図、断面図、および拡大断面図である。
【図15】図15は、種々の拡大率での光陽極のSEM像を示す。
【図16】図16は、得られた光陽極のHRTEM像(a)と(b)、および得られた光陽極の電子回折パターン(c)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
実施例1 ゾルゲル法
光陽極の製造
材料
酸化インジウムスズ(ITO)導電性スライドガラス(5〜15オーム/スクェア)がデルタテクノロジー社(USA)から市販されており、これらを導電性基板として使用した。チタンブトキシド(97%純度、アルドリッチ社)は、受け入れたままの状態で使用した。他のすべての化学薬品は分析用等級であって、特に明記しない限りアルドリッチ社から購入した。溶液はすべて、高純度の脱イオン水(ミリポア社、18Mオーム/cm)を使用して調製した。
【0028】
TiO2ゾルの合成
工程1: TiO2コロイドの合成
(1)特別に設計された500mlの三角フラスコ中にて、300mlの蒸留水中に2.0mlの濃硝酸を加えることによって混合物Aを調製する。(2)25.0mlのチタンブトキシド中に8.0mlの2−プロパノールを加えることによって混合物Bを調製する。(3)激しく攪拌しながら、混合物A中に混合物Bを滴下することによって加水分解を行う。加水分解されたチタニア溶液Cは白色スラリーである。(4)加熱プレートによって溶液Cの温度を80℃に徐々に上げることによってゲル化を行う。次いでこの溶液を、激しく攪拌しながら80℃の一定温度に10時間保持すると、半透明のコロイド懸濁液が生成する。(5)ゲル化の後に、0.45ミクロンのフィルターを使用して濾過プロセスを施して、大きな固体粒子を除去する。(6)次いで濾過した溶液を、12,000〜20,000DaのMWCO(分子量カットオフ)を含む透析膜チューブ中に移す。(7)組み込んだ透析膜チューブを、10リットルの脱イオン水(pH=5.5)を満たした容器中に、一定の攪拌状態にて24〜48時間静置することによって透析を行う。透析プロセス時に、透析膜チューブ内のコロイド溶液のpHをモニターしつつ、脱イオン水を頻繁に取り替える。このプロセスは、いったんコロイド溶液のpHが3.5より高い値(好ましくはpH=3.8)に達したら終了する。(8)透析処理したコロイド溶液を、熱水処理のために熱水反応器(サーマル・ボンブ(thermal-bomb))中に移す。(9)熱水処理(オートクレーブ堆積)は、密閉された熱水反応器中にて、200℃の一定温度で10時間以上(好ましくは12時間)行う。この熱水処理によりTiO2コロイドが得られ、これは次の工程にすぐに使用できる。
【0029】
工程2: TiO2ゾルの製造
(10)水熱処理したコロイド溶液を、80℃未満で真空蒸発法により濃縮して、固形分が5%より高い所望の濃度(好ましくは固形分6.0%)にする。(11)次いで、濃縮した溶液にカーボワックス等の増粘剤を加える。添加量は、(コロイドの重量)/(カーボワックスの重量)の比に基づいて決定され、一般には1%(w/w)より大きく、好ましくは30%(w/w)である。こうした値にすることで、いつでも固定化できる状態の、最終的なTiO2ゾル溶液が得られる。
【0030】
導電性基板の製造
(12)ITO導電性スライドガラスをカットして、所望のサイズおよび形状にする。(13)この基板を、洗浄剤、脱イオン水、クロム酸洗浄液、脱イオン水、そして最後に純粋エタノールで逐次洗浄することにより前処理した。クロム酸洗浄工程時にITO導電性層が破壊されないよう注意しなければならない。クロム酸洗浄液による処理時間は、40秒未満(好ましくは15秒)でなければならない。(14)次いで処理したスライドガラスを、ほこりのないクリーンな環境にて風乾する。固定化の前に導電性のチェックを行って、基板に対する顕著な損傷(処理プロセスから生じる損傷)がないことを確認する。
【0031】
固定化
(15)処理した導電性基板上へのTiO2コロイドの固定化を、ディップコーティング法により行う。処理したITOスライドガラスをディップコーティング機上に配置してから、適切な容器中にて適正な量のTiO2ゾル溶液中に浸漬する。コーティングは、基板をTiO2ゾル溶液から一定の速度(好ましくは2mm/秒)で引き出すことによって果たされる。(16)引き続き、コーティングしたスライドガラスをほこりの無いオーブン中にて、100℃で10分乾燥する。(17)乾燥したスライドガラスを、高温のか焼炉中に450℃にて30分静置する。(18)こうして得られるスライドガラスを、再びディップコーティング機上に配置する。(19)プロセス(15)を繰り返して、第2の層のコーティングを仕上げる。(20)プロセス(16)を繰り返す。(21)このようにして得られる、TiO2の2層を有するスライドガラスを、最終的に700℃にて0.5時間以上(好ましくは2時間)焼成し、これによりいつでも使用できる状態の光陽極が得られる。
【0032】
TiO2コロイドの特性決定
周知のように、非晶質のTiO2は、光の照射下にて電子/正孔再結合中心として作用する幾つかの構造上の欠陥のために光触媒反応性をもたない。光陽極を製造する場合は、良好な結晶化度を有するナノ粒子(コロイド)を使用してスタートするのが好ましい。ブトキシドを加水分解すると、すぐに一次粒子の大きな凝集体の白色沈殿物が生成する。これらの凝集体は、単分散粒子(コロイド)を得るために解膠する必要があり、単分散粒子はさらに、非コロイド形態のチタニアを含有することがある。これらの好ましくない非コロイド形態のチタニアを、透析プロセスによって除去する。非コロイド形態のチタニアの除去は極めて重要なことである。なぜなら、このような形態のチタニアは、しばしばサイズが極めて小さく(例えば、オリゴマー形態のチタニアは2〜9のTi原子を有する)、したがって結晶化度が低いこと、粒界のインピーダンスが高いこと、結晶粒間の連結性が低いこと、そして光電子の収集効率が低いことのために、得られる光陽極の光活性に悪影響を及ぼすことがある。こうして得られるコロイドのサイズは8nm〜10nmの範囲であり、高性能の光陽極を得るのに最適のサイズであることが分かっている。透析プロセスはさらに、コロイドのpHを所望のレベルに調整するという目的も果たす。このプロセスはコロイド表面上の化学形態を安定化させ、このことは、光触媒表面の動的な影響をできるだけ抑える上で有用である。このプロセスの後、おそらくは過剰なヒドロキシル基および/または非化学量論的なTi−O−Ti橋かけ結合が存在するために、得られる粒子が十分に結晶化されないことがある。したがって、加水分解とゲル化の後に得られるTiO2コロイド粒子の結晶化度を高めるために、コロイド懸濁液を、オートクレーブ中にて水熱処理に付す。図1は、オートクレーブ処理前と処理後のTiO2コロイドのTEM像を示す。オートクレーブ処理前では、TiO2コロイドの表面が粗く、4nm〜8nmの範囲の粒径を有することが分かる。粒子が十分に結晶化されていない。しかしながらオートクレーブ処理後では、像から明確に分かるように、粒子の表面がより良好な状態で画定されており、8nm〜10nmの範囲の粒径を有するナノ結晶がはっきり認められる。
【0033】
TiO2光陽極の特性決定
TiO2ナノ粒子で被覆した皮膜を、空気中にて種々の温度で種々の持続時間にわたって焼成した。この処理の目的は、一方では、ITO基板とナノ粒子との間の、およびナノ粒子間のより良好な電気接触(連結性)を得ること、ならびに基板とTiO2ナノ粒子との間の機械的強度と接着性を向上させることにある。他方においては、光陽極の光触媒性能は、結晶構造を変え、結晶化度を高め、そして粒子間の連結性を変えることによる熱処理を施すことで改良することができる。皮膜を500℃〜850℃の種々の温度で焼成してから、X線回折とSEMによって特性決定した。
【0034】
アナターゼ(101)平面の回折ピークの強度は、焼成温度が高くなるにつれて増大する(したがって結晶化度が向上し、粒径が大きくなる、ということを示している)ということが分かった。焼成温度と焼成時間が増大するにつれて半ピーク幅が減少することも観察された。これは、結晶化度が向上していること、ならびに焼成温度および/または焼成時間の増大により一次粒子間の凝集度が増大(すなわち粒子が成長)していることを示している。
【0035】
クリスタライトのサイズは、XRDの線幅の拡大から、シェーラー(Scherer)の式に従って概算することができる。
種々の焼成温度にて焼成した、処理された光陽極の粒径と相の組成を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
700℃で2時間焼成することで最良の結晶化度(相の組成は、アナターゼが97%でルチルが3%と概算)が得られる、ということが見出された。XRDによるナノ粒子の概算粒径は17nmであることがわかっている。留意しておかねばならないことは、このようにして導き出される粒径は、一次粒子の粒径、二次粒子の粒径、および二次粒子中における一次粒子間の凝集度を推定するための指針として役立つにすぎない、という点である。これは、一次粒子の結晶化度、および二次粒子中における一次粒子間の凝集度が、回折ピークの強度に影響を及ぼすからである。このことをさらに実証するために、HRTEMを使用して、結晶化度のレベルと粒径に直接アクセスした。図2は、700℃で2時間熱処理した後に得られた光陽極のHRTEM像を示す。この像は、ほぼ完全な結晶線を含む極めて明確に画定された(101)面(すなわち、101面の原子層間の距離が、それぞれの結晶粒子内である)を明らかにしており、結晶化度が高いことを示している。この像はまた、一次粒子サイズが7nm〜10nm(すなわち、元のコロイドのサイズに近い)であることを示している。700℃で2時間焼成処理して得られる光陽極の表面モルホロジーを、HRFESEMによって調べた(図5を参照)。極めて多孔質のナノ構造を有する表面モルホロジーが観察された。一次粒子の形状(コロイド粒子に類似)を観察することができる。二次粒子のサイズは、かなり類似している(20nm〜40nmの範囲)ことが見出された。興味あることに、X線回折から導き出されるサイズは、SEM像において観察される二次粒子のサイズに類似している。上記の顕微鏡法とXRDの知見に基づいて、XRDから導き出される粒径の変化は、凝集度と凝集体中における一次粒子間の結晶化度を表わしている、と推論することができる。
【0038】
光電気化学的特性
ブランクの電解質溶液から得られる飽和光電流(Isph)は、水の光触媒酸化の速度を示す。光陽極を600℃未満の温度で焼成したとき、水の酸化よって生じるIsphは、焼成温度が変わっても実質的に不変のままであるということが見出された。このことは、水の酸化に対する光触媒活性が同等である、ということを示している。600℃以上の温度で焼成した光陽極の場合、電極焼成温度を上げるとIsphが増大し、水の酸化に対する光触媒効率がアップしていることを示している。したがって、600℃以上で焼成した電極に対するIsphの増大は、結晶化度および/または一次粒子間の凝集度の変化によるものではないと思われる。その代わりに、焼成温度の変化によるIsphの変化が、結晶形の変化と一致すると思われる。表1に示すように、電極を700℃で焼成するとルチル相が存在するようになり(わずかな量にすぎないが)、焼成温度がより高くなるにつれて、ルチル相のパーセンテージが増大する。知られているように、光触媒による、水の酸化からの酸素の発生は、TiO2のアナターゼ相よりもルチル相の場合のほうがより速い。ここに記載の結果により、犠牲電子受容体(sacrificial electron acceptor)が使用されるとき、水の光触媒酸化に対しては、TiO2のルチル相のほうがアナターゼ形よりはるかに活性が高い、ということが確認される。こうした水の酸化増進に関して根底にあるメカニズムは、ルチル相が、表面結合したヒドロキシル基を化合させてO2分子の生成を容易にすることができる、という事実によるものであると思われる。ルチル形と比較して、アナターゼ形のTiO2への酸素の吸着がより容易であって、吸着量がより多いという事実により、この議論が裏付けられる。あるいは上記の説明に加えて、もう一つの可能性は、同じ電極上にルチル形とアナターゼ形(異なったバンドギャップを有する)の両方が共存することに関係する。2相間の接触が起こると、光誘起生成された電子/正孔対の一時的・空間的な隔離が容易になり、したがってこれら電子/正孔対の寿命が増大する。十分に実証されているように、異なったバンドギャップを有するカップリング半導体は、光電子と光正孔対の寿命を延ばすことによって光触媒の光触媒反応性を向上させることができる。上記のゾルゲル法にしたがって製造した幾つかのTiO2光陽極を、水サンプル中のCODを分析する目的で、特許明細書WO2004/088305に開示の方法にしたがって、光陽極の機能的寿命(functional lifetime)に関して実験室にて試験した。ある1つの光陽極センサーは、合計して3000より多いサンプルに対し、2週間以上の連続時間にわたって約10分ごとに適切にサンプルを分析してから、TiO2皮膜の物理的浸食によって最終的には機能しなくなった。同じ方法で製造した光陽極のSEMプロフィールを図4に示す。別の光陽極を同様に試験した。この光陽極は、5週間以上にわたって約10分の間隔にて約6500の水サンプルを分析してから、機能しなくなった。同じ方法で製造した光陽極のSEMプロフィールを図3に示す。留意しておかねばならないのは、これら2つのセンサーが2つの異なった製造バッチのメンバーであり、わずかに異なるものの(主にpHに関して)、上記した製造パラメーターの範囲内で製造された、という点である。この結果、図3と4から明らかなように、TiO2層の厚さとモルホロジーが異なっている。
【0039】
有機物質の光触媒酸化
溶液中にフタル酸水素カリウムが存在すると、得られる光電流は、低電位範囲における印加電位バイアスの増大とともに増大し、より高い印加電位において飽和に達する。より高い電位での飽和光電流(Isph)は、TiO2表面での光正孔の最大捕捉速度を表わしており、この最大捕捉速度は、溶液中のフタル酸水素カリウムの濃度(C)によって決まる。Isphに及ぼす光陽極焼成温度の影響を調べた。図6は、種々の温度にて焼成された電極に対するIsph−Cの関係を示す。いずれの場合も、Isphは、低濃度(すなわち50uM未満)においてフタル酸水素カリウムの濃度とともに直線的に増大する。この飽和光電流の直線的増大は、溶液を攪拌すると光電流が増大することで実証されるように、有機化合物の物質移動の制約によるものと考えることができる。Isphは、より高いフタル酸水素カリウム濃度において飽和に達する傾向にあるが、場合によっては、抑制効果によってわずかに低下することもある。光電流軸に対する切片は、ブランクの電解質溶液から水の光酸化によって生じるブランクの飽和光電流(Iblank)を示している。これらのブランクの飽和光電流は、600℃未満の温度で焼成した電極に対しては不変のままであり、650℃より高い温度で焼成した電極に対しては増大した。
【0040】
興味あることに、600℃未満の温度で焼成した電極の場合、ブランクの飽和光電流は実質的に不変のままであるけれども、Isph−C曲線の線形範囲は、電極の焼成温度が高くなるにつれて広がる。同じ光度での照射下において、最大飽和光電流の差は、TiO2表面での水とフタル酸水素カリウムによる光正孔の捕捉の差を表わしている。前述したように、これらの温度で焼成した電極はアナターゼ形のTiO2のみで構成されており、これらの電極間で変化する物理的パラメーターは、結晶化度の増大と粒子間の凝集度だけである。したがって、このような改良により、光電子/正孔対が強力な電子移動吸着質によって捕捉される前に、光電子/正孔対の再結合の程度を下げることが可能となるということを特に考えれば、より良好な結晶化度とより良好な粒子間連結性が、広がった線形範囲の原因である可能性が高い。非晶質のTiO2が、多くの表面欠陥と構造欠陥のためにわずかな光触媒反応性しかもたない、という事実がこの主張を裏付ける。
【0041】
より高い温度で焼成した電極では、水による光正孔捕捉速度が高まるだけでなく、フタル酸水素カリウムの濃度に対する最大Isph(IsphM)も大幅に増大する(光触媒活性の向上を示している)、ということが見出された。850℃で焼成した電極では、Isph−C曲線の線形部分の勾配は、より低い温度で焼成した電極に対して観察された勾配より小さかった。これはおそらく、皮膜の気孔率が低い(これにより電極の表面積が小さくなる)ためであろう。水サンプル中の有機汚染物の光触媒無機化等の応用において光効率をできるだけ高めるために、光陽極は、水に対してはより低い光触媒活性を示し、有機化合物の分解に対してはより高い光触媒活性を示さなければならない。残念なことに、焼成温度が高くなるにつれて、フタル酸水素カリウムに対する光触媒活性と水に対する光触媒活性の両方が増大することが見出されている。したがって、これら2つの相反するファクター間で折り合いをつけることが求められる。
【0042】
フタル酸に対する光触媒活性に及ぼす焼成温度の影響をさらに深く調べるためには、水の酸化の影響を受けることなく活性を反映するパラメーターが求められる。ある任意の光度において、飽和光電流が、高いフタル酸水素カリウム濃度範囲における最大値に達すると、全体的な光触媒酸化プロセスは、もはや物質移動の制御下にはなく、代わりに表面反応が全体のプロセスを支配する。このことは、高い濃度にて得られるIsphMが有機化合物に対する光陽極の反応性を表わしている、ということを意味する。しかしながら、有機化合物に対する電極の反応性を正確に示すためにIsphMを使用する上での問題点は、このようにして測定されるIsphMが、単に有機化合物の酸化だけによるものではない、ということである。水の酸化による光電流の成分(ブランクの光電流)も含まれ、この成分の大きさは電極の種類に応じて変わる。したがって、電極の反応性をより適切に表わすために、正味の最大IsphMは次のように定義される:
【0043】
【数1】
【0044】
ある任意の電極に対してIblankは一定であるので、ΔIsphMは、純粋に有機化合物の光触媒酸化のみによる最大光電流を示す。電極の反応性は、ΔIsphMを電極の焼成温度に対してプロットすることによって表わすことができる。
【0045】
ΔIsphMは、750℃までは電極の焼成温度に対してほぼ直線的に増大する(電極の反応性が増大していることを示している)。しかしながら、電極の焼成温度をさらに上げると、ΔIsphMの減少が起こり、電極性能の低下を示している。
【0046】
電極を異なった焼成温度にて処理すると、TiO2皮膜の幾つかの特性を変えることができる。皮膜パラメーターのこうした変化は、得られる電極の光触媒反応性に対して相反する影響を及ぼすことがある。例えば、焼成温度を高めることで表面積の減少が引き起こされると、通常は光触媒反応性が低下する。しかしながら、より高い焼成温度にて達成されるより良好な結晶化度とより良好な粒子間焼結度が、光触媒反応性を得る上で好ましい。450℃〜600℃の範囲の温度で焼成される光陽極に対するΔIsphMの増大は、主として、粒子間の連結の向上、および粒子の結晶化度のレベルの向上に帰することができるようである。このような焼成温度を超えると、ΔIsphMの増大は、ある程度は、粒子間の連結と結晶化度のさらなる向上に、しかしながら主としては、組成の変化(すなわち、ルチル相の量の増大)による。高温処理した電極に対して得られる(すなわち850℃にて生成される)大きなIsphは、有機化合物の酸化に対する光陽極の高い反応性によるのではなく、大きなIblankによるものであった。このことは、高温処理した電極が水の酸化に対して高い反応性を有する、ということを示している。
【0047】
抑制効果
CODに関して分析する場合、光陽極は、広範囲の有機化合物を、差別のない仕方で無機化することのできる高い酸化能力を必要とする。CODは集合的なパラメーターであるので、全汚染物の集合的な影響を正確に反映しなければならない。異なった光陽極は、異なった有機化合物に対して異なった酸化特性を有する、ということが見出された。結晶相およびアナターゼ相とルチル相との比は、光陽極の酸化特性に影響を及ぼす2つの重要なファクターであると思われる。これらのファクターは、主として、上記したような製造条件によって(特に、最終的な熱処理温度によって)決まる。したがって、光陽極の酸化特性に及ぼす結晶相の影響を調べた。
【0048】
知られているように、500℃未満の温度で熱処理した光陽極はアナターゼ相だけからなる。このタイプの光陽極は、単純な非芳香族化合物に対して高い光活性を有する(すなわち、単純な有機化合物を完全に酸化(無機化)することができる)ことがわかっている。しかしながら、このような種類の光陽極は芳香族化合物を無機化することができない、ということも見出されている。光陽極は、芳香族化合物を存在させることにより容易に不活性化させる(抑制する)ことができる。したがってこの点を調べるため、フタル酸、サリチル酸、およびo−クロロフェノールの3つのモデル化合物(それぞれが異なった官能基を有する)を選定した。フタル酸とサリチル酸はTiO2表面に強く吸着されることがわかっているが、o−クロロフェノールは弱い吸着物質である。正味の光電流は、かなり低い濃度範囲内においては、濃度の増大とともに直線的に増大する、ということが見出された。正味の最大光電流は約75μMに達し、次いで濃度をさらに増大させるにつれて減少した(横ばい状態になるのではなく)。濃度の増大に応じた正味の光電流の減少は、光触媒の活性部位に未反応有機物質(あるいはそれらの反応中間体)が堆積し、次いでこれらの活性部位が失活することで起こる抑制効果によるものである。
【0049】
700℃で2時間熱処理した光陽極が最良の結晶化度をもたらすことが見出され、このとき相の組成は、アナターゼ形が97%で、ルチル形が3%であると概算された。水のサンプルにおいて、低い有機物濃度範囲にて、正味の光電流と濃度との間に線形関係が観察された。しかしながら、より高い濃度においては、正味の光電流は、最大値に達した後にわずかに減少した。このことは、芳香族化合物が原因でわずかな表面不活性化が起きたことを示している。これは、500℃にて焼成した光陽極(芳香族化合物に対してかなりの抑制効果が観察された)から得られる結果とは対照的である。より重要なことに、高温で処理した光陽極に対して観察された線形範囲(すなわち、抑制効果のない範囲)は、より低温で処理した光陽極を使用して観察された線形範囲より5倍以上大きかった。このことは、高温で焼成した光陽極がより高い光触媒活性を有し、したがって、より複雑な有機化合物の完全な無機化が可能になる、ということを示している。この結果に対する明白な理由は、高温処理した光陽極がアナターゼとルチルの混合相からなっていて、これが相乗効果を生じる、というものである。アナターゼに対するEg(3.2eV)は、ルチルに対するEg(3.0eV)より0.2eV高い。このことが、光正孔からの光電子の分離を容易にするためのさらなる原動力をつくり出し、したがって再結合を抑制し、より効果的な光酸化が可能になるよう光正孔の寿命を長くする。
【0050】
最適の条件下で製造した光陽極の性能を試験し、前記したWO2004/088305に記載のように、完全分解条件(exhaustive degradation conditions)下にて評価した。
【0051】
先に提唱したように、完全分解モードを使用してCODを測定するための分析原理は、式(1)で表わすことができる:
【0052】
【数2】
【0053】
ここでQnetは、有機化合物の光触媒酸化により生じる正味の電荷であり、実験的に得ることができる。体積Vは、ある任意の光電気化学電池に対する、既知数を有する定数である。Fは、ファラデー定数である。式(1)は、完全な無機化と100%の電子収集効率が達成される場合にのみ、CODの測定に適用可能である。このことは、CODの測定に使用するのに適した光陽極がこれらの要件を満たさなければならない、ということを意味している。したがって、WO2004/088305に記載の方法を使用して得られるCOD値(実測COD値)と理論COD値とを比較することにより、分解(無機化)の程度と光陽極の光電子収集効率をひとまとめにして調べた。
【0054】
この方法は、本質的に理論COD値を測定し、この理論COD値は、サンプル中のすべての有機化合物が完全に無機化されると同時に、分解により光触媒作用的に発生した電子の100%が収集されるときにのみ得られる。
【0055】
合成サンプルを27回繰り返し注入することで0.05ppmのCODという理論検出限界が得られ、3σのシグナル対ノイズ比に基づいて算出した。しかしながら、合成サンプルから(KHPを使用して)得た実際の検出限界(すなわち実質検出限界(real detection limit))は、0.40ppmのCODであることが見出され、このとき相対標準偏差RSD%=±15%であった。グルコースベースの合成サンプルを使用して、線形範囲を調べる実験を行った。通常の光度下で(すなわち、全光度出力の75%にて)使用した薄層光電気化学電池に対しては、350ppmのCODという上部の線形範囲が観察された。全光度(100%)が使用したときは、560ppmという上部の線形範囲が得られた。
【0056】
20.0ppmのCODに相当するグルコースを含有するサンプルに対し、48時間にわたって96回の連続した分析を行うことによって再現性を評価した。このようにして得られた相対標準偏差は±0.96%であった。
【0057】
さらに、多数の注入サンプルを使用して長い使用時間にわたって、光陽極の安定性を試験した。使用した試験サンプルは、20.0ppmのCODに相当するグルコースをベースとする水サンプルであった。7日間に446回の連続した分析サイクルを行った後でも、測定されたCOD値に顕著な変化は起こらない(20.0±1.0ppm)、ということが見出された。一日当たり5回の注入にて、3週間にわたって長期間の安定性も調べた。この場合も、試験期間にわたって、測定されたCOD値に顕著な変化は起こらない、ということが見出された。
【0058】
システムが安定であることが実証されるまで、そして分析的に有用なデータを得ることができるまで、標準的な合成サンプルを予備試験することによって光陽極の予備状態調節を行う場合が多い。しかしながらこれは、任意の商業用機器に対する一般的な応用において、実施上の問題を引き起こすことがある。したがって、使用前の予備状態調節の必要性をなくすことができるかどうかについて検討を行った。この検討により、新たに開発された方法(前述)を使用して光陽極を製造したときに、安定な表面特性を有する光陽極を得ることができる、ということが明らかになった。得られる光陽極の表面安定性は、TiO2ゾルの合成時に、より小さなコロイド粒子が除去され、そしてコロイド溶液のpHが所望の値(pH=3.8)に調整されれば大幅に向上させることができる、ということが見出された。これは、合成プロセス時に透析法を導入することによって果たすことができる。
【0059】
実施例2
呼気像法
材料
酸化インジウムスズ(ITO)導電性スライドガラス(8オーム/スクェア)がデルタテクノロジー社(USA)から市販されており、これらを導電性基板として使用した。モノカルボキシ末端のポリスチレン(CTPS,MW=30,000)をサイエンスポリマー社から購入し、受け入れたままの状態で使用した。チタンテトライソプロポキシド(TTIP,97%)とクロロホルム(99%)は、シグマアルドリッチ社から市販用の製品として入手した。他の化学薬品はいずれも分析用であり、特に明記しない限りアルドリッチ社から購入した。溶液は全て、高純度の脱イオン水(ミリポア社,18Mオーム/cm)を使用して調製した。
【0060】
合成手順
図7は、モノカルボキシ末端ポリスチレン(CTPS)とチタンテトライソプロポキシド(TTIP)とを含む3Dハニカム構造ハイブリッド皮膜の作製、およびこのハイブリッド皮膜の純然たるTiO2皮膜への変換を概略的に示している。呼気像テンプレーティング法を使用して、大きめの3Dハニカム構造物を作製した。
【0061】
段階1: ハイブリッド前駆体テンプレートの作製
導電性基板の作製
(1)ITO導電性スライドガラスを所望のサイズと形状にカットする;(2)この基板を、洗浄剤、脱イオン水、アセトン、脱イオン水、および最後に高純度エタノールで順に超音波洗浄することによって前処理する;(3)処理したスライドガラスを、ちりのない清浄な環境にて空気中で乾燥する。
【0062】
テンプレート形成溶液の調製
(4)種々の量(好ましくは50mg)のモノカルボキシ末端ポリスチレンコポリマーを5.0mlのクロロホルム中に、5分間超音波処理することにより溶解した;(5)種々の量(好ましくは26.6μl)のチタンテトライソプロポキシドを上記のコポリマー溶液中に加えて、5分間超音波処理した。この結果、透明な溶液が得られた(テンプレート形成溶液:A)。
【0063】
前駆体テンプレートの作製
(6)前処理したITO基板を、特別に設計した反応チャンバー中に配置した;(7)種々の量(好ましくは30μl)の溶液Aを、微量ピペットによって基板上にキャストした;(8)直ちに、50〜100%(好ましくは83.2%)の範囲内に制御された湿度のN2ガスを基板表面上に垂直に、23℃の一定温度にて1〜20分(好ましくは8分)吹きつけた。湿度は、湿度計によって計測管理した;(9)キャストした溶液が(溶媒の蒸発により)固化した後、均一な薄膜(白色)が形成された。これをハイブリッド前駆体テンプレートとして使用する。
【0064】
段階2: ハイブリッド前駆体テンプレートの光活性TiO2光陽極への転化
老化処理(水熱処理)
(10)得られたハイブリッド前駆体テンプレートを、密閉可能な水熱反応チャンバー中の特別設計された棚上に配置した。十分な量の純粋を充填した小さな水容器も、チャンバー中に配置した;(11)チャンバーを密閉した後、チャンバーをオーブン中に、湿度100%にて50℃〜130℃の間の一定温度(好ましくは100℃)で5〜170時間(好ましくは72時間)静置した。
【0065】
ハイブリッドテンプレートの光活性3Dミクロ−ヘキサゴナルTiO2への転化
(12)水熱処理した(老化処理した)テンプレートを水熱反応チャンバーから取り出した;(13)このテンプレートを、高温のオーブン中に550℃の一定温度にて0.5〜5時間(好ましくは2時間)静置した。これにより、極めて規則正しく配列した状態の3Dミクロ−ヘキサゴナル構造を有する、ほぼ透明の光触媒活性TiO2皮膜が得られた。
【0066】
構造特性とモルホロジー特性
CTPS/TTIPハイブリッド皮膜は、同じ形成メカニズムを共有するので典型的な呼気像パターンを示す。CTPSは、呼気像パターンの形状と分布を決定するための構造誘導剤として作用するけれども、TTIPは、呼気像パターンの皮膜形成基準と寸法パラメーターを変える重要な役割を果たす。最初は、CTPS分子とTTIP分子は共に、前駆体溶液中に均一に分散される。しかしながら、呼気像形成プロセス時において、水の凝縮(クロロホルムの急速な蒸発によって引き起こされる)がいったん生じると、CTPSの自己集合が起こる。このような条件下では、TTIPの加水分解が同時に起こり、TTIPは、水の利用可能性のレベルに応じて、ある程度加水分解されることもあるし(式(2)を参照)、あるいは完全に加水分解されることもある(式(3)を参照):
【0067】
【化1】
【0068】
これらの反応は、主として、湿気を含んだN2ガスと前駆体溶液との間の界面および/または水滴と前駆体溶液との間の界面(水が豊富に存在する)等の場所で起こる。TTIPの加水分解生成物は親水性であり、こうした水の豊富な場所に堆積させることができ、結果としてチタンの分布が不均一となる。さらに、TTIPの加水分解生成物を、CTPSの親水性末端に引き付けることができる。これらの親水性末端が、自己集合プロセス時に、水の豊富な界面/場所に向かって配向し、したがってさらなるTTIP加水分解生成物がこのような場所に引き付けられるはずである。その結果、皮膜の固化が完了すると、水の豊富な界面/場所は、チタン供給源の含量が高くなる。このことは、孔の周囲の壁(フレーム)の上部がかなり厚い構造が得られていることを示している。得られる構造に対しるTTIPの影響は、TTIP加水分解生成物の部分的縮合によるものであるとも考えることができる。
【0069】
縮合/重合反応(式(4)と(5)を参照)により、Ti−オキソブリッジによるチタニアネットワーク/クラスターが形成される(CTPSの配列が変化する)ことがある。
【0070】
【化2】
【0071】
詳細な検討により、欠陥の無い周期的ハニカム構造のCTPS/TTIPハイブリッド皮膜を作製するための重要な基準は、(i)前駆体溶液中のCTPSの濃度が5mg/mlより高い;(ii)CTPSとTTIPとの比(w/w)が1.5:1より大きい;(iii)N2の流量が、100ml/分より大きく、500ml/分未満であって、相対湿度が60%より大きい;ということが明らかになった。細孔径は、上記のパラメーターに応じて3.5μm〜8μmの範囲で変わる。留意しておかねばならないことは、CTPS/TTIPハイブリッド皮膜の細孔径に及ぼす呼気像実験パラメーターの影響が、純然たるCTPS皮膜の作製の場合とは異なる、という点である。前駆体溶液中にTTIPを加えると、同じCTPS濃度の前駆体溶液を使用して得られる純然たるCTPS皮膜と比較して、より大きな細孔径が得られる。しかしながら、ある任意のCTPS濃度に対し、CTPS/TTIPの比を小さくすると細孔径が小さくなるが、得られる細孔径は、まだ純然たるCTPS皮膜の細孔径より大きい。ある任意のTTIP濃度に対し、CTPSの濃度が変わっても、得られるハイブリッド皮膜の細孔径にはほとんど影響を及ぼさない、ということが見出された。純然たるCTPS皮膜を作製する場合、流量を増大させると、通常は細孔径が小さくなるが、CTPS/TTIPハイブリッド皮膜の細孔径は、100〜500ml/分の範囲内での流量の変化に対してほとんど影響を受けない、ということが見出された。
【0072】
チタンテトライソプロポキシド(TTIP)の濃度の影響
チタンテトライソプロポキシド(TTIP)の濃度(最初のTi濃度)の影響を調べた(図8)。構造誘導剤であるカルボキシ末端ポリスチレン(CTPS)の濃度を10mg/mlにて一定に保持し、TTIPの濃度を0mg/mlから10mg/mlまで変えた。湿度70%で飽和したN2ガスを使用して呼気像を作製した。流量は、1気圧にて200ml/分であった。
【0073】
図8(a)は、TTIPが存在しない(すなわち純然たるCTPS)場合に得られた呼気像の、上面と断面のSEM像を示す。3.3μmの均一な微小孔径と6.6μmの皮膜厚さを有するほぼ完全なハニカム様微細構造物が作製された。この結果は、類似の実験条件下にて得られた先に報告された構造物と一致している。
【0074】
図8(a)〜(e)は、種々の濃度のTTIPが存在する場合に得られた呼気像の、上面と断面のSEM像を示す。これらの像から、TTIPが存在する場合もハニカム様呼気像が形成される、ということがわかる。しかしながら、これら微細構造物の寸法パラメーターは、明らかにTTIPの濃度によって影響を受ける。TTIPの濃度が1.0mg/mlの場合(TTIP/CTPSの濃度比=0.10)、微小孔径は6.4μmであり、厚さは6.3μmである(図8(b)を参照)。純然たるCTPS溶液の例(図8(a))と比較すると、得られる微小孔径はほぼ2倍であるが、厚さはわずかに減少している。TTIPの濃度を2.5mg/mlにさらに増大させると(TTIP/CTPSの濃度比=0.25)、4.1μmの微小孔径、および5.7μmの厚さが得られる(図8(c)を参照)。この場合、純然たるCTPSの場合と比較して微小孔径は増大したが、0.1mg/mlのTTIPの場合と比較すると減少し、厚さはさらに減少した。TTIPの濃度を5.0mg/mlにさらに増大させても(TTIP/CTPSの濃度比=0.50)、微小孔径に対してはそれほど大きな影響を及ぼさないが(4.0μm)、厚さは5.7μmにさらに減少する(図8(d)を参照)、ということが見出された。TTIPの濃度が10.0mg/mlの場合には(TTIP/CTPSの濃度比=1.0)、構造上の変形が観察された。このことから、任意のCTPS濃度について、適切なパターン形成を得るためのTTIPのある特定の濃度(またはTTIP/CTPS比)があることがわかる。構造上の変形は、このような臨界TTIP濃度(またはTTIP/CTPS比)を超えたときに起こる。
【0075】
モノカルボキシ末端ポリスチレン(CTPS)の濃度の影響
得られる呼気像に及ぼす構造誘導剤モノカルボキシ末端ポリスチレン(CTPS)の濃度の影響を調べた(図9を参照)。TTIPの濃度を4.0mg/mlにて一定に保持し、CTPSの濃度を10mg/mlから20mg/mlまで変えた。湿度70%で飽和したN2ガスを使用して呼気像を作製した。流量は、1気圧にて200ml/分であった。
【0076】
図9(a)から、かなり低い濃度(すなわち2.0mg/ml)のCTPSを使用した場合でも呼気像を得ることはできるが、これらの呼気像は、極めて規則正しい均一なハニカム様パターンの微細構造の形態をとっていない、ということがわかる。これは、構造誘導剤(CTPS)の量が、規則的なパターンの呼気像を得るための水滴を別々に保持するのに不十分であるために起こる。しかしながら図9(b)〜(d)から、極めて規則正しい配列の呼気像微細構造は、CTPSの濃度が10mg/ml以上であるときに得られる、ということがわかる。10mg/ml、15mg/ml、および20mg/mlのCTPS濃度に対して得られた微小孔径は、それぞれ3.8μm、3.4μm、および3.9μmであった。このことは、CTPS濃度の変化が微小孔径に影響を及ぼすが、その影響の程度は限られているようである、ということを示している。
【0077】
こうして得られた皮膜の厚さも測定した。10mg/ml、15mg/ml、および20mg/mlのCTPS濃度に対する皮膜の厚さは、それぞれ4.8μm、6.0μm、および8.3μmであった。このことは、CTPSの濃度の増大が皮膜の厚さにより大きな影響を及ぼす、ということを示している。
【0078】
流量の影響
よく知られているように、流量は、呼気像を作製できるかどうかを決める重要なパラメーターである。したがって図10は、得られる微細構造に及ぼす流量の影響を示す。
【0079】
この実験に対する溶液の組成は、TTIPが2.0mg/mlでCTPSが10mg/mlであった。N2ガスの湿度は70%に制御した。
200ml/分の流量を使用した場合は、4.0μmの微小孔径と4.3μmの厚さを有する通常の呼気像微細構造が得られた(図10(a)を参照)。図10(b)は、400ml/分の流量を使用した。得られた微小孔径と皮膜厚さは、それぞれ4.5μmおよび5.8μmであった。流量をさらに増大させると、微細構造の変形が起きた(図10(c)と(d)を参照)。これらの条件下では、微小孔の層がベースから分離した(すなわち、表面上に浮き上がった)。流量が極めて高いと(すなわち4000ml/分)、呼気像のパターンを壊すことがある(図10(e)と(f)を参照)。
【0080】
最適条件
すべてのファクターをひとまとめにして評価し、最終的な微細構造に及ぼす影響を、均一性、欠陥の程度、微小孔径、およびサイズ分布に関して検討することによって、最適の合成条件が得られた。これらの条件は次のとおりである:TTIPの濃度が2.0mg/ml;CTPSの濃度が10mg/ml;流量は、N2ガスの湿度が83.2%にて200ml/分。
【0081】
特に明記しない限り、後続するすべての実験に対してこれらの条件を使用した。これらの最適条件に対する一組の典型的なRFSEM像を図11に示す。
呼気像法により作製したハイブリッド前駆体テンプレートは、残留有機成分を除去するための、そしてチタン成分をその光活性結晶形に転化させるためのさらなる処理を必要とする。初期の試みでは、直接的な熱処理プロセスによってこれを達成するよう検討された。未処理のハイブリッド前駆体テンプレート(図12(a)を参照)を550℃で2時間焼成した。こうして得られるテンプレートのSEM像を図12(b)に示す。熱処理プロセス時に3Dミクロ−ヘキサゴナル構造が完全に破壊され、極めて多孔質のTiO2皮膜が得られる、ということが見出された。
【0082】
さらなる検討により、熱処理の早い段階でのCTPSの溶融が、当初の微細構造崩壊の原因である、ということが明らかになった。これは、テンプレート中のチタン成分が、十分な機械的強度をもたずにCTPSマトリックス内に捕捉されることにより起こる。テンプレートがCTPSの融点に達すると、CTPSが液状になることで3D微細構造の破壊をまねく。さらに、CTPSが蒸発するために、極めて多孔質の皮膜が得られる。適切な3D微細構造を保持するためには、前処理プロセス導入してこの問題に対処しなければならない。
【0083】
したがって、熱処理プロセス時のCTPS溶融問題を克服すべく、UV処理法を検討した。よく知られているように、UV−Cは有機物質を効果的に分解する。CTPSは有機ポリマーであり、もしUVがそれを小さな分子に分解して、これらの小さな分子が低温で蒸発しうるならば、熱処理の前にCTPSを除去することが可能になり、結果として3D微細構造を保持することができる。前駆体テンプレート(図13(a)を参照)を、24時間UV処理に付した。得られたテンプレートのSEM像を図13(b)に示す。この図から、CTPSが分解されていて、UV処理プロセスによりCTPSの大半が除去されていることがわかる。当初のパターンは保持されたけれども、チタン成分の崩壊によりほぼ2D構造に変わっている(図13(b)を参照)。
【0084】
図13(c)は、熱処理後のUV処理サンプルのSEM像を示す。構造がフラットな2D構造にさらに変わっているが、当初のパターンは明らかに保持されていることがわかる。
【0085】
水熱処理
UV処理から得られた結果は、熱処理前にCTPSを除去しても、3D微細構造を保持するという目的を達成するのに十分ではない、ということを示している。これは主として、残留しているチタン無機成分の機械的強度が弱いためである。したがって、熱処理の前にチタン無機成分をTiO2ネットワーク構造物(すなわち、一種の無機ポリマー)に転化させるために、水熱処理法が提唱された。十分な機械的強度を有するTiO2ネットワーク構造とともにこの工程が達成されれば、熱処理プロセス時におけるCTPSの溶融に関連した問題を克服できるはずであり、3D微細構造の崩壊には至らない。したがって水熱処理を、オーブン中100℃の温度および100%の湿度にて72時間行った。水熱処理後における前駆体テンプレートのSEM像の上面図、断面図、および拡大断面図(3D微細構造は、図13(a)に示されているものと同じ)を図14(a)〜(c)に示す。これらの像は、当初のテンプレートと比較して、3D微細構造の著しい変化を見せていない。次いで、この水熱処理したテンプレートを、550℃で2時間熱処理プロセスに付した。図14(d)〜(f)は、熱処理工程後における水熱処理テンプレートのSEM像の上面図、断面図、および拡大断面図を示す。高温熱処理の後でも、当初の3D微細構造がよく保持されていることからわかるように、これらの像によって水熱処理の有効性が明確に実証されている。
【0086】
さらに、熱処理後に、CTPS有機成分が除去されることで二次的なナノ多孔質構造がつくり出される、ということも見出された。この点は、非多孔質表面を示したUV処理テンプレートとは極めて対照的である。微小孔間の肉厚は、熱処理後に、有機成分の消失により減少した。呼気像で生成されるすべての光陽極を製造する上で、引き続きこれらの実験条件を使用した。
【0087】
得られた光陽極のSEM像を、異なった倍率にて図15に示す。拡大したSEM像(図15(d)を参照)から、ナノ多孔質構造となっていることが容易にわかる。この点をさらに検討した。
【0088】
図16は、得られた光電極のHRTEM像と電子回折パターンを示す。図面のHRTEM像は、完全な結晶線(すなわち、各結晶粒子内の(101)面における原子層間の距離)を有する極めて明確に画定された(101)面を示しており、結晶化度が高いことがわかる。結晶化度が高いことはさらに、同じ場所で得られた回折パターンによっても裏付けられる。これらの像はさらに、一次粒径が15nm〜20nmであることも示している。
【0089】
熱転化プロセスの有効性と得られる光陽極構造の結晶相を確認するために、X線回折パターンを得た。前駆体テンプレートとUV処理後のテンプレートからは結晶形のTiO2が得られない、ということが見出された。しかしながら、TiO2のアナターゼ相は、テンプレートが72時間水熱処理された後に現われ始め、このことは、3D微細構造の保持に関与するTiO2ネットワークの形成が、熱処理時においても変わらない、ということを示している。しかしながら結晶化は、決して完全なものとは言えない。
【0090】
熱処理したテンプレートから得られたXRDパターンは、TiO2が、550℃にて純然たるアナターゼに完全に転化されたことを示した。TiO2ルチル相のパターンは確認されなかった。
【0091】
ブルナウアー−エメット−テラー(BET)法とバレット−ジョイナー−ハレンダ(BJH)法を使用して、ナノ多孔質特性(比表面積、平均等価細孔径(mean pore equivalent diameter)、および平均細孔容積など)を調べた。サンプルのN2吸着−脱着等温線により、タイプVIの特性を示す等温線が得られた。IUPACの分類によれば、ヒステリシスループは、タイプH2(無秩序で境界のはっきりしない細孔径分布と形状分布のある例を示す)に相当する。このサンプルは、127m2/gの高い比表面積と0.77cm3/gの細孔容積を示した。細孔径分布は、8nm〜38nmの範囲内であって、約19nmのところの分布が最大であった。
【0092】
光電流応答に及ぼす光度の影響
有機物質が存在しない状態(すなわち、水の酸化だけが起こる)での光電流応答に及ぼす光度の影響を調べた。0.1MのNaNO3中に光陽極を入れ、種々の照度にてボルタモグラムを得た。各光度において、光電流応答は、印加電位とともに直線的に増大してから横ばい状態になった。飽和光電流とI−E曲線の直線部分の電位範囲はともに、光度が増大するにつれた増大した。このようにして得られる直線的なI−E関係は、電極がナノ粒状光陽極と同様に挙動するということを示している。こうした純然たる抵抗器タイプの挙動は、線形範囲内での反応速度がTiO2皮膜中の電子伝達によって制御される、ということを示している。曲線のこの部分において観察される光電流(すなわち反応速度)は、半導体皮膜中の電子を印加電位によってどの程度速く除去できるかを表わしている。任意の光度において、印加電位を増大させると、起電力の増大を引き起こし、その結果として光電流の比例的増大をもたらす(オームの法則から推測されるように)。
【0093】
飽和光電流(+0.40Vにて測定)と光度との間の関係を調べた。I−E曲線のこの範囲において、反応速度決定段階は、皮膜中の電子伝達プロセスよりはむしろ界面反応である。飽和電流を光度に対してプロットすると、直線が得られる。こうした線形依存性は、表面結合した光正孔に関する界面反応が一次反応である、という光触媒プロセスの一般的な仮説を示している。この結果も再び、ナノ粒子光陽極から得られる関係に類似している。
【0094】
有機物質の存在下での光電流応答に及ぼす光度の影響を調べた。ボルタモグラムは、45mMのグルコースと0.1MのNaNO3を含有する溶液中の光陽極にて種々の照度で得た。ボルタモグラムの特徴は、有機物質の非存在下で得られたものと定性的に類似していることがわかった。飽和光電流を光度に対してプロットすると、この場合も直線が得られ、この直線は、有機物質が存在しない場合に観察されたものと同じである。
【0095】
光電流と濃度との関係を調べた。ボルタモグラムは、0.1mMのNaNO3ブランク溶液中と、0.1mMのNaNO3中にグルコースを溶解して得られる種々のグルコース濃度の溶液中のTiO2光陽極にて、UV照射を行う場合とそうでない場合について得た。推測されるように、UV照射を行わない場合は、ブランク溶液に対しても、グルコース溶液に対しても測定可能な電流は観察されない、ということが見出された。他のいずれの場合も、グルコースI−E応答は、電位とともに直線的に増大してから、飽和光電流値に横ばい状態になった。
【0096】
正味の飽和光電流(ΔIsph)をグルコース濃度に対してプロットした。ΔIsphの値は、最大5.0mMまでは濃度とともに直線的に増大するということがわかった。この濃度未満では、光電気触媒プロセスの速度は、電極表面へのグルコースの物質移動によって制限される(すなわち、拡散律速プロセスである)。より高い濃度においては、ΔIsphの値が横ばい状態になり、この時点で反応速度は、皮膜/溶液界面反応によって、そして特に、光正孔捕捉プロセス(これらの濃度にて全体としての反応を支配する)によって制限されるようになる。留意しておかねばならないことは、これらの結果が、ナノ粒状光陽極に関して先に示したものと定性的に類似しているという点である。
【0097】
光陽極の光電子収集効率を調べた。評価は、理論的上の正味電荷と種々のグルコース濃度からの実測の正味電荷とを比較することによって行った。理論上の正味電荷のプロットおよび実測の正味電荷のプロットに対して得られた勾配は、それぞれ19.84および6.92であった。もし100%の電子収集効率が達成されていれば、実測正味電荷のプロットの勾配は、理論的に予測した勾配と同じになるはずである。実測正味電荷のプロットから得られた勾配がより小さいということは、すべての光電子の一部だけが収集されたことを示している。2つの勾配間の比は0.35であり、グルコースの酸化により生じる光電子の35%が収集されていることを示している。詳細な検討により、電子収集効率が低いのは、ナノ粒子間の連結性が不十分のためであるということが明らかになった。連結性が不十分であるのは主として、呼気像法によって製造される光陽極が極めて多孔質であるからである。
【0098】
結論
極めて整然としていて完全にパターン化された3Dミクロ−ヘキサゴナル構造を有する有機物/金属酸化物ハイブリッドテンプレートを呼気像法によって製造することができる。このようなハイブリッドテンプレートは、3Dミクロ−ヘキサゴナル構造を変えないまま、光活性の純然たるTiO2に直接転化させることができる。本発明の重要な態様は気相水熱処理法(老化)の発見にあり、この気相水熱処理法により、有機チタンハイブリッド(an organo-titanium hybrid)の、その後のさらなる熱処理時において当初の3Dミクロ−ヘキサゴナル構造を保持するに足る十分な機械的強度を有する無機チタニアネットワークへの効果的な転化が可能となる。
【0099】
こうして得られた光陽極は、極めて多孔質のナノ粒子を組み込んで構築される、極めて整然としていて完全にパターン化された3Dミクロ−ヘキサゴナル構造を有する。これによりナノ材料特性が生まれる。本発明の光陽極のユニークな構造形態と極めて高活性の表面エリアにより、広範囲の応用に対してさらなる改善と改良が可能となる。
【0100】
得られた光陽極の光電気化学的挙動は、ナノ粒状TiO2で造られた光陽極の光電気化学的挙動と類似していることがわかった。しかしながら、この新規な微細構造のTiO2光陽極はナノ粒子間の連結性が低く、したがって光電子の収集効率が低くなる。
【0101】
上記の例からわかるように、本発明は、種々のモルホロジー構造を有するTiO2光触媒を得るための2つの異なった製造法を提供する。
当業者には周知のことであるが、本発明の要旨を逸脱することなく、本明細書に記載の実施態様とは別の実施態様にて本発明を実施することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)二酸化チタンコロイド粒子を溶液中にて形成させてから、pHを4未満に保持しつつ透析処理に付す;
b)透析処理した溶液を水熱処理に付す;
c)次いで、工程b)からのコロイドを導電性ガラスの基板上にコーティングし、乾燥する;そしてd)工程c)からの被覆基板を約700℃〜800℃の温度にて焼成する;
を含む、二酸化チタン光触媒の製造方法。
【請求項2】
工程b)からのコロイドが8〜35nmの範囲の平均粒径を有する、請求項1に記載の二酸化チタン光触媒の製造方法。
【請求項3】
透析が約3.8のpHで行われ、焼成が約700℃で約2時間行われる、請求項1に記載の二酸化チタン光触媒の製造方法。
【請求項4】
基板が、洗浄剤、クロム酸、およびアルコールで順次洗浄された導電性ガラスである、請求項1、2、または3に記載の二酸化チタン光触媒の製造方法。
【請求項5】
二酸化チタン層が0.5〜20ミクロンの厚さを有する、請求項4に記載の二酸化チタン光触媒の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法によって製造される光電極。
【請求項7】
a)ポリマーとチタン化合物を含むテンプレート形成溶液を導電性基板上にコーティングする;
b)被覆された基板を、50℃〜130℃の温度にて5〜170時間水熱処理に付す;
c)次いで、工程b)からの処理基板を450℃〜650℃の温度にて0.5〜5時間加熱する;
を含む、二酸化チタン光触媒の製造方法。
【請求項8】
二酸化チタン層が0.5〜20ミクロンのサイズの整然としたヘキサゴナル構造でできている、請求項7に記載の二酸化チタン光触媒の製造方法。
【請求項9】
テンプレート溶液が、モノカルボキシ末端ポリスチレンとチタンテトライソプロポキシドを含む、請求項7または8に記載の二酸化チタン光触媒の製造方法。
【請求項10】
水熱処理が約100℃の温度で約70時間行われる、請求項9に記載の二酸化チタン光触媒の製造方法。
【請求項11】
熱処理が約550℃の温度で約2時間行われる、請求項10に記載の二酸化チタン光触媒の製造方法。
【請求項12】
請求項7〜11のいずれか一項に記載の製造方法によって製造される光電極。
【請求項1】
a)二酸化チタンコロイド粒子を溶液中にて形成させてから、pHを4未満に保持しつつ透析処理に付す;
b)透析処理した溶液を水熱処理に付す;
c)次いで、工程b)からのコロイドを導電性ガラスの基板上にコーティングし、乾燥する;そしてd)工程c)からの被覆基板を約700℃〜800℃の温度にて焼成する;
を含む、二酸化チタン光触媒の製造方法。
【請求項2】
工程b)からのコロイドが8〜35nmの範囲の平均粒径を有する、請求項1に記載の二酸化チタン光触媒の製造方法。
【請求項3】
透析が約3.8のpHで行われ、焼成が約700℃で約2時間行われる、請求項1に記載の二酸化チタン光触媒の製造方法。
【請求項4】
基板が、洗浄剤、クロム酸、およびアルコールで順次洗浄された導電性ガラスである、請求項1、2、または3に記載の二酸化チタン光触媒の製造方法。
【請求項5】
二酸化チタン層が0.5〜20ミクロンの厚さを有する、請求項4に記載の二酸化チタン光触媒の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法によって製造される光電極。
【請求項7】
a)ポリマーとチタン化合物を含むテンプレート形成溶液を導電性基板上にコーティングする;
b)被覆された基板を、50℃〜130℃の温度にて5〜170時間水熱処理に付す;
c)次いで、工程b)からの処理基板を450℃〜650℃の温度にて0.5〜5時間加熱する;
を含む、二酸化チタン光触媒の製造方法。
【請求項8】
二酸化チタン層が0.5〜20ミクロンのサイズの整然としたヘキサゴナル構造でできている、請求項7に記載の二酸化チタン光触媒の製造方法。
【請求項9】
テンプレート溶液が、モノカルボキシ末端ポリスチレンとチタンテトライソプロポキシドを含む、請求項7または8に記載の二酸化チタン光触媒の製造方法。
【請求項10】
水熱処理が約100℃の温度で約70時間行われる、請求項9に記載の二酸化チタン光触媒の製造方法。
【請求項11】
熱処理が約550℃の温度で約2時間行われる、請求項10に記載の二酸化チタン光触媒の製造方法。
【請求項12】
請求項7〜11のいずれか一項に記載の製造方法によって製造される光電極。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8a】
【図8b】
【図8c】
【図8d】
【図8e】
【図9a】
【図9b】
【図9c】
【図9d】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8a】
【図8b】
【図8c】
【図8d】
【図8e】
【図9a】
【図9b】
【図9c】
【図9d】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2011−502936(P2011−502936A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533381(P2010−533381)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【国際出願番号】PCT/AU2008/001688
【国際公開番号】WO2009/062248
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(505371265)アクア・ダイアグノスティック・プロプライエタリー・リミテッド (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【国際出願番号】PCT/AU2008/001688
【国際公開番号】WO2009/062248
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(505371265)アクア・ダイアグノスティック・プロプライエタリー・リミテッド (4)
【Fターム(参考)】
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