説明

光/電気変換回路

【課題】光伝送による通信エラーを低減する。
【解決手段】コントロールモジュール側から入力される光信号を電気信号に変換する光−電気変換部11と、変換された電気信号をI/Oモジュール3側に送信するドライバ12と、I/Oモジュール3側から入力される電気信号を受信するレシーバ13と、受信された電気信号を光信号に変換してコントロールモジュール側に出力する電気−光変換部14と、電気信号ライン6a、6bに接続されるプルアップ抵抗部15およびプルダウン抵抗部16と、ドライバ12の駆動/停止を制御する送受信制御部17と、を備え、プルアップ抵抗部15およびプルダウン抵抗部16は、抵抗152、162の接続をON/OFFするスイッチ153、163を有し、送受信制御部17は、ドライバ12を停止させる瞬間を含む所定期間、スイッチ153、163をOFFにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光伝送に用いる光/電気変換回路に関する。
【背景技術】
【0002】
プラント等を対象とするプロセス制御システムでは、コントローラとI/Oモジュールとの間を、メタルケーブルではなく、光ケーブルで接続する場合がある(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−203584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コントローラとI/Oモジュールとの間を光ケーブルで接続した場合には、コントローラ側とI/Oモジュール側とに、それぞれ光/電気変換回路を設けることになる。光/電気変換回路には、光信号を電気信号に変換する機能と、電気信号を光信号に変換する機能とがある。光/電気変換回路は、これら二つの機能を、ドライバを駆動/停止させることで切り替える。具体的に説明すると、光/電気変換回路は、光信号を受信しているときには、ドライバを駆動させ、受信した光信号を電気信号に変換して出力する。一方、光信号が一定時間無信号状態を維持すると、光/電気変換回路は、通信が終了したとみなし、ドライバを停止させ、ドライバを停止させている間に受信する電気信号を光信号に変換して出力する。
【0005】
ところで、例えばRS485規格のレシーバおよびドライバを備える光/電気変換回路では、電気信号を伝送する際に、+の信号線と−の信号線との2本の信号線を用いる。このような光/電気変換回路では、光信号の送信を許可するタイミングでドライバを停止させる。そして、ドライバを停止させた瞬間に、それぞれの電気信号でオーバーシュートが発生し、+側の電気信号と−側の電気信号とがクロスする。これにより、それぞれの電気信号の符号が反転してしまい、ノイズが生ずる。このノイズによる信号は、光/電気変換回路内のレシーバに受信され、光信号に変換された後、光ケーブルを介して、対向するモジュール側に伝送される。
【0006】
ここで、光信号は、光ケーブルの長さに応じて遅延する。したがって、ノイズによる信号は、対向するモジュール側にタイムラグを生じて到達することになる。上述したように光/電気変換回路には、光信号と電気信号とが受信された場合に、光信号を優先して変換出力する特性がある。つまり、この場合、電気信号から光信号への変換出力が一旦停止され、光信号から変換された電気信号が優先してメタルケーブル側に送信されることになる。したがって、タイムラグを生じた光信号(ノイズ)が到達したときに、すでに逆側から正常データによる電気信号が入力されていると、その電気信号から光信号への変換出力が停止されるため、通信エラーの要因となる。
【0007】
本発明は、上述した従来技術による問題点を解消するためになされたものであり、光伝送による通信エラーを低減することができる光/電気変換回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る光/電気変換回路は、第1のモジュール側から入力される光信号を電気信号に変換する光−電気変換部と、前記光−電気変換部により変換された電気信号を第2のモジュール側に送信するドライバと、前記第2のモジュール側から入力される電気信号を受信するレシーバと、前記レシーバにより受信された電気信号を光信号に変換して前記第1のモジュール側に出力する電気−光変換部と、前記ドライバおよび前記レシーバと前記第2のモジュール側との間の電気信号ラインに接続されるプルアップ抵抗部および/またはプルダウン抵抗部と、前記ドライバの駆動/停止を制御する送受信制御部と、を備え、前記プルアップ抵抗部および/または前記プルダウン抵抗部は、第1の抵抗値と当該第1の抵抗値よりも小さい第2の抵抗値とを切り替え可能であり、前記送受信制御部は、前記ドライバを停止させる瞬間を含む所定期間、前記プルアップ抵抗部および/または前記プルダウン抵抗部の抵抗値を前記第2抵抗値に切り替える。
【0009】
かかる構成を採用することで、ドライバを駆動させている時には、プルアップ抵抗部および/またはプルダウン抵抗部の抵抗値を大きくすることができるため、プルアップおよび/またはプルダウンの効果を弱めて、第2のモジュール側に送信する電気信号に歪が生じないようにして通信させることができる、一方、ドライバを停止させる瞬間の直前直後の期間は、プルアップ抵抗部および/またはプルダウン抵抗部の抵抗値を小さくすることができるため、プルアップおよび/またはプルダウンの効果を強めて、ドライバ停止に起因するノイズの発生を防止することができる。また、プルアップ抵抗部および/またはプルダウン抵抗部の抵抗値を小さくしてから上記所定期間が経過した後は、プルアップ抵抗部および/またはプルダウン抵抗部の抵抗値を大きくすることができるため、プルアップおよび/またはプルダウンの効果を弱めて、第2のモジュール側から入力される電気信号に歪が生じないようにして通信することができる。
【0010】
前記送受信制御部は、前記第1のモジュール側から入力される光信号が無信号状態になった後、一つの通信が終了したとみなせる所定時間が経過したときに、前記ドライバを停止させる、こととしてもよい。また、前記送受信制御部は、前記ドライバを停止させた後、次回の通信が開始するとみなせる所定時間が経過したときに、前記ドライバを駆動させる、こととしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、光伝送による通信エラーを低減することができることが可能な光/電気変換回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態における光/電気変換回路を含む通信システムの構成を模式的に例示する図である。
【図2】光/電気変換回路の構成を例示するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態について説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、あくまでも例示であり、以下に明示しない種々の変形や技術の適用を排除するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。
【0014】
まず、図1を参照して、実施形態における光/電気変換回路を含むプロセス制御システムの構成について説明する。図1に示すように、プロセス制御システムは、プロセスを制御するコントロールモジュール4と、コントロールモジュール4とセンサ等のフィールド機器(不図示)との間の信号のやり取りを行うI/Oモジュール3と、コントロール側光/電気変換回路2と、I/O側光/電気変換回路1と、を有する。
【0015】
I/Oモジュール3は、コントロールモジュール4から受信した制御信号をフィールド機器に送信し、フィールド機器から発信される測定値等を含む信号をコントロールモジュール4に送信する。
【0016】
I/O側光/電気変換回路1とコントロール側光/電気変換回路2との間は光ケーブル5で接続される。I/Oモジュール3とI/O側光/電気変換回路1との間、およびコントロールモジュール4とコントロール側光/電気変換回路2との間、それぞれメタルケーブル6、7で接続される。
【0017】
次に、実施形態における光/電気変換回路の構成について説明する。本実施形態では、図2を参照して、I/O側光/電気変換回路1の構成について説明する。なお、本実施形態では、説明の便宜のために、I/O側光/電気変換回路1の構成について説明するが、光/電気変換回路をI/O側光/電気変換回路1に限定するものではない。コントロール側光/電気変換回路2についても、I/O側光/電気変換回路1と同様にして本発明に適用することができる。
【0018】
図2に示すように、I/O側光/電気変換回路1は、光−電気変換部11と、ドライバ12と、レシーバ13と、電気−光変換部14と、プルアップ抵抗部15と、プルダウン抵抗部16と、送受信制御部17と、を有する。
【0019】
光−電気変換部11は、コントロールモジュール4側から入力される光信号を電気信号に変換する。
【0020】
ドライバ12は、例えばRS485規格のドライバであり、光−電気変換部11により変換された電気信号をI/Oモジュール3側に送信する。
【0021】
レシーバ13は、例えばRS485規格のレシーバであり、I/Oモジュール3側から入力される電気信号を受信する。
【0022】
電気−光変換部14は、レシーバ13により受信された電気信号を光信号に変換してコントロールモジュール4側に出力する。
【0023】
プルアップ抵抗部15は、ドライバ12およびレシーバ13とI/Oモジュール3側との間の電気信号ライン6のうち、+側の電気信号ライン6aに接続される。
【0024】
プルアップ抵抗部15は、第1の抵抗値を有する抵抗151と、第1の抵抗値よりも小さい第2の抵抗値を有する抵抗152と、抵抗152と電源154との接続をON/OFFするスイッチ153と、を含む。抵抗151、152の一端側は電源154に接続され、抵抗151、152の他端側は+側の電気信号ライン6aに接続される。
【0025】
電源154の電圧としては、例えば、5Vを設定することができる。第1の抵抗値としては、例えば、1kΩを設定することができ、第2の抵抗値としては、例えば、240Ωを設定することができる。
【0026】
プルダウン抵抗部16は、ドライバ12およびレシーバ13とI/Oモジュール3側との間の電気信号ライン6のうち、−側の電気信号ライン6bに接続される。
【0027】
プルダウン抵抗部16は、第1の抵抗値を有する抵抗161と、第1の抵抗値よりも小さい第2の抵抗値を有する抵抗162と、抵抗162とグランド(GND)との接続をON/OFFするスイッチ163と、を含む。抵抗161、162の一端側はグランドに接続され、抵抗161、162の他端側は−側の電気信号ライン6bに接続される。
【0028】
送受信制御部17は、ドライバ12の駆動/停止を制御するとともに、プルアップ抵抗部15に含まれるスイッチ153およびプルダウン抵抗部16に含まれるスイッチ163のON/OFFをそれぞれ切り替える。以下に具体的に説明する。
【0029】
送受信制御部17は、コントロールモジュール4側から入力される光信号が無信号状態になった後、一つの通信が終了したとみなせる所定時間が経過したときに、ドライバ12を停止させる。送受信制御部17は、ドライバ12を停止させる瞬間を含む所定期間、プルアップ抵抗部15に含まれるスイッチ153およびプルダウン抵抗部16に含まれるスイッチ163をONに切り替える。
【0030】
スイッチ153およびスイッチ163をONに切り替えることで、プルアップ抵抗部15およびプルダウン抵抗部16の抵抗値を小さくすることができるため、プルアップおよびプルダウンの効果を強めることができる。これにより、ドライバ12を停止させた瞬間に、+側の電気信号と−側の電気信号とで発生するオーバーシュートを抑制することができるため、+側の電気信号と−側の電気信号とがクロスしてしまうことを防止することができる。
【0031】
上記ドライバ12を停止させる瞬間を含む所定期間としては、例えば、ドライバ12停止時に発生するノイズ信号が、ドライバ12とI/Oモジュール3との間に存在し得る期間を設定することができる。これにより、ドライバ12停止に起因するノイズの発生を抑制することが可能となる。
【0032】
上記一つの通信が終了したとみなせる所定時間は、例えば、コントロールモジュール4に含まれるCPUのクロック周波数や制御信号の発信間隔等を考慮して、コントロールモジュール4側からの一つの制御信号の送信が終了したと判定可能な時間に適宜設定することができる。
【0033】
送受信制御部17は、スイッチ153およびスイッチ163をONに切り替えてから上記所定期間が経過したときに、スイッチ153およびスイッチ163をOFFに切り替える。スイッチ153およびスイッチ163をOFFに切り替えることで、プルアップ抵抗部15およびプルダウン抵抗部16の抵抗値を大きくすることができるため、プルアップおよびプルダウンの効果を弱めることができる。これにより、I/Oモジュール3側から入力される電気信号に歪が生じないようにして通信することができる。
【0034】
送受信制御部17は、ドライバ12を停止させた後、次回の通信が開始するとみなせる所定時間が経過したときに、ドライバ12を駆動させる。上記次回の通信が開始するとみなせる所定時間は、例えば、コントロールモジュール4に含まれるCPUのクロック周波数や制御信号の発信間隔等を考慮して、コントロールモジュール4側から、次回の通信が開始されると判定可能な時間に適宜設定することができる。
【0035】
ここで、光ケーブルは、メタルケーブルに比べて、劣化し易く、減衰率が増加し易い傾向にある。したがって、光ケーブルを用いて通信を行う設備では、使用期間を少しでも長くするために、光ケーブルが劣化して減衰率が増加してしまうことを予め想定し、光ケーブルの劣化により光伝送レベルが低下しても受信可能なように、光/電気の変換レベルの閾値を低めに設定し、マージンを持たせている。このような設備で、光ケーブルの劣化が進むと、正常な光信号が低い変換レベルで電気信号に変換されるため、変換時の歪が大きくなる。このような状況で、プルアップやプルダウンを強めてしまうと、電気信号の歪が増長され、通信エラーが発生し易くなってしまう。
【0036】
そこで、本実施形態では、ドライバ12を駆動させているときには、スイッチ153およびスイッチ163をOFFに切り替えて、プルアップ抵抗部15およびプルダウン抵抗部16の抵抗値を大きくすることにしている。これにより、プルアップおよびプルダウンの効果を弱めることができるため、ドライバ12駆動時に、プルアップおよびプルダウンによって電気信号の歪が増長されてしまう状況を抑制することができる。
【0037】
上述したように、本実施形態におけるI/O側光/電気変換回路1によると、通常の光伝送時には、プルアップおよびプルダウンの効果を弱めて、電気信号の歪を低減させることができる、一方、ノイズが発生するタイミングには、プルアップおよびプルダウンの効果を強め、+側の電気信号と−側の電気信号とがクロスしてしまうことを防止することができる。これにより、光伝送による通信エラーを低減することが可能となる。
【0038】
なお、上述した実施形態におけるI/O側光/電気変換回路1は、プルアップ抵抗部15およびプルダウン抵抗部16を備えているが、いずれか一方を備えることとしてもよい。ドライバ12を停止させたときに発生するオーバーシュートによって+側の電気信号と−側の電気信号とがクロスしないように、プルアップまたはプルダウンさせることができればよい。プルダウン抵抗部16のみを備えることとした場合には、電源を省略することができ、構成を簡素化することができる。
【0039】
また、上述した実施形態では、スイッチ153、163を、抵抗152、162と電源154またはグランドとの間に設けているが、これに限定されない。例えば、スイッチ153、163を、電気信号ライン6a、6bと抵抗152、162との間に設けてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1…I/O側光/電気変換回路、2…コントロール側光/電気変換回路、3…I/Oモジュール、4…コントロールモジュール、6a…+側電気信号ライン、6b…−側電気信号ライン、11…光−電気変換部、12…ドライバ、13…レシーバ、14…電気−光変換部、15…プルアップ抵抗部、16…プルダウン抵抗部、17…送受信制御部、151、152、161、162…抵抗、153、163…スイッチ、154…電源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のモジュール側から入力される光信号を電気信号に変換する光−電気変換部と、
前記光−電気変換部により変換された電気信号を第2のモジュール側に送信するドライバと、
前記第2のモジュール側から入力される電気信号を受信するレシーバと、
前記レシーバにより受信された電気信号を光信号に変換して前記第1のモジュール側に出力する電気−光変換部と、
前記ドライバおよび前記レシーバと前記第2のモジュール側との間の電気信号ラインに接続されるプルアップ抵抗部および/またはプルダウン抵抗部と、
前記ドライバの駆動/停止を制御する送受信制御部と、を備え、
前記プルアップ抵抗部および/または前記プルダウン抵抗部は、第1の抵抗値と当該第1の抵抗値よりも小さい第2の抵抗値とを切り替え可能であり、
前記送受信制御部は、前記ドライバを停止させる瞬間を含む所定期間、前記プルアップ抵抗部および/または前記プルダウン抵抗部の抵抗値を前記第2抵抗値に切り替える、
ことを特徴とする光/電気変換回路。
【請求項2】
前記送受信制御部は、前記第1のモジュール側から入力される光信号が無信号状態になった後、一つの通信が終了したとみなせる所定時間が経過したときに、前記ドライバを停止させる、
ことを特徴とする請求項1記載の光/電気変換回路。
【請求項3】
前記送受信制御部は、前記ドライバを停止させた後、次回の通信が開始するとみなせる所定時間が経過したときに、前記ドライバを駆動させる、
ことを特徴とする請求項2記載の光/電気変換回路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−174187(P2012−174187A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38370(P2011−38370)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000006666)アズビル株式会社 (1,808)
【Fターム(参考)】