説明

免疫グロブリンFc及びヒトアポリポタンパク質クリングル断片の融合タンパク質

免疫グロブリンFc及びヒトアポリポタンパク質クリングル断片の融合タンパク質を提供する。本発明は、血管生成抑制能及び体内安定性が増強されたFcとLK8タンパク質の融合タンパク質に係り、さらに詳しくは、血管新生抑制効果を有するLK8タンパク質とヒト免疫グロブリンIgG1のFc部分とが融合したLK8−Fc融合タンパク質及び該融合タンパク質を含む癌治療用組成物に関する。本発明によるFc接合LK8融合タンパク質は、血管生成抑制能とそれによる抗癌及び癌転移抑制能を有しながらも、体内半減期が極めて長いことから、さらに効率的で且つ経済的な癌治療剤または癌抑制剤として使用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管生成抑制能及び体内安定性が増強されたFc及びLK8タンパク質の融合タンパク質に係り、さらに詳しくは、血管新生抑制効果を有するLK8タンパク質とヒト免疫グロブリンIgG1のFc部分とが融合したLK8−Fc融合タンパク質及び該融合タンパク質を含む癌治療用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
血管新生とは、既存の血管から新たな血管が生成される過程をいうが、正常的な生理条件下においては血管内皮細胞が分裂をほとんどしない状態で維持され、例外的に、女性の生理周期を含む極めて制限的な場合に限って起こることが知られている。血管新生の調節異常は、癌、糖尿病性網膜症、リウマチ性関節炎、乾癬などをはじめとする数多くの病理学的障害を誘発する恐れがある。腫瘍の場合、癌のサイズが数mm体積までは血管の補助なしでも成長可能であるとはいえ、それ以上の体積に成長したり遠隔転移が起こるためには血管新生が必須的であることが知られている(Folkman,J.,N.Eng.J.Med.,333:1757,1995;Folkman,J.,NewEngl.J.Med.,285:1182,1971)。
【0003】
腫瘍の血管新生の開始のためには、血管形成促進因子の増加と抑制因子の減少が両立される必要がある。内因性血管形成抑制因子の代表例はアンギオスタチンであり、アンギオスタチンは、血液凝固と関連する酵素と言われるプラスミノーゲンの一部分であり、クリングル構造で構成されており、試験管内及び生体内において血管新生抑制能を有していることが報告されている(Lee, T.H. et al., J. Biol. Chem., 273: 28805, 1998; Kim et al., J. Biol. Chem., 278:11449, 2003)。前記クリングルは、約80個のアミノ酸及び3個の分子内ジスルフィド結合により形成されたタンパク質の構造領域であり、独立した折り畳み単位を構成する。クリングル構造は、プロトロンビン、ウロキナーゼ、肝細胞成長因子、アポリポタンパク質(a)などの多数のタンパク質において発見されるが、特に、プロトロンビンのクリングル、ウロキナーゼのクリングルなど多数のクリングルが血管新生抑制能を示すことが報告されている(Lee,T.H.etal.,J.Biol.Chem.,273:28805,1998;Kimetal.,J.Biol.Chem.,278:11449,2003)。
【0004】
糖タンパク質としてのアポリポタンパク質(a)は、低密度リポタンパク質(LDL)の主なタンパク質成分であるアポB−10と共有結合してリポタンパク質(a)を形成する(Fless, G.M., J. Biol. Chem., 261:8712, 1986)。リポタンパク質(a)は、生体内においてコレステロール運搬を担当し、血漿におけるリポタンパク質(a)の濃度増加は動脈硬化及び心臓疾患と関連性があることが知られている(Armstrong,V.W.etal.,Artherosclerosis,62:249,1986;Assmann,G.,Am.J.Cardiol.,77:1179,1996)。アポリポタンパク質(a)は、プラスミノーゲンクリングルIV及びクリングルVと類似性を示す2種類のクリングル領域と、不活性のプロテアーゼ様領域を含んでいる。アポリポタンパク質(a)クリングルIV様領域は、アミノ酸配列の相同性によってさらに10種の亜型(IV1〜IV10)に分けられ、それぞれは1つずつ存在するが、IV2クリングルはアポリポ(a)遺伝子の種々のヒト対立遺伝子に3〜42個の複製数で存在する。そして、最後のクリングルVはプラスミノーゲンクリングル−Vと83.5%のアミノ酸配列相同性を有する。
【0005】
本発明者らは、アポリポタンパク質(a)を構成するクリングルの一部分(クリングルKV38、以下、「LK8」タンパク質と称する。)が試験管内及び生体内において血管新生抑制能を有していることを確認し、このような効能により抗癌及び転移抑制作用を示すことを見出した(WO2001/019868:LK6、LK7、LK8及びLK68を含む血管新生抑制剤、WO2004/073730:LK8を含有する抗癌剤)。しかしながら、既存の発明によるLK8タンパク質は、体内半減期が猿の場合に僅か7〜11時間に過ぎないと認められ、抗癌効能を示すためには短い周期による反復投与を余儀なくされるという欠点があり、また、血管新生抑制剤は細胞殺傷よりは細胞成長抑制能を有しており、抗癌剤として使用するためには長期間に亘っての持続的な投与が不可避になるという欠点がある(Jain,R.K.etal.,Nat.Clin.Pract.Oncol.,3:24,2006)。
【0006】
このため、長期間に亘っての持続的な投与には多量のLK8組み換えタンパク質の産生が求められるが、これは産生コストの上昇につながり、患者にとっては高価な治療費及び治療のための長時間の投資が負担になり、LK8タンパク質を抗癌剤として開発する上で技術的難点があった。
【0007】
一方、免疫グロブリンまたはその断片と活性タンパク質との融合タンパク質の製造が、抗原性増強、精製の容易性、血中半減期の増加などを目的に行われている。その例として、免疫グロブリン断片そのものの機能及び有用タンパク質の機能を併せ持つタンパク質薬物と免疫グロブリンFcを融合させた融合タンパク質であるインターロイキン受容体(大韓民国特許登録第249572号)、INF−αとFcを結合してINF−αの血中半減期を増加させた融合タンパク質などがある。しかしながら、INF−αとFcの融合タンパク質に対しては、半減期は大幅に増加されたとはいえ、INF−α活性が低下してしまうという欠点がある(米国特許第5、723、125号公報)。
【0008】
そこで、本発明者らは、LK8タンパク質を体内に投与したとき、血管新生抑制能の減少を抑えながらも高い半減期を維持するための方法を見出すために鋭意努力した結果、LK8タンパク質のC末端にヒト免疫グロブリンIgG1のFc部分を融合してLKg−Fc融合タンパク質を製作し、その効果を調べてみた結果、Fc融合によりLK8タンパク質の自体効能に影響を与えないながらも、LK8タンパク質に比べて半減期が約40〜50倍以上に増加されるという全く予期しない効果があることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の詳細な説明】
【0009】
《技術的課題》
本発明の目的は、抗癌及び転移抑制能を有しているヒトアポリポタンパク質(a)クリングル断片であるLK8タンパク質のC末端に遺伝子融合技術を用いてヒト免疫グロブリンIgG1のFcタンパク質を融合して、生体内有用性が増強されたLK8−Fc融合タンパク質を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、前記LK8−Fc融合タンパク質を含有する癌治療用組成物を提供することにある。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、前記LK8−Fc融合タンパク質を含有する血管新生抑制用組成物を提供することにある。
【技術的解決方法】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明は、LK8タンパク質とヒト免疫グロブリンIgG1のFc部分とが融合したLK8−Fc融合タンパク質を提供する。本発明において、LK8−Fc融合タンパク質を細胞外に分泌するIgκリーダー部位をさらに含有することを特徴とすることができる。
【0013】
また、本発明は、前記LK8−Fc融合タンパク質をコードする遺伝子、前記遺伝子を含有する組み換えベクター及び前記組み換えベクターで形質転換された細胞を提供する。本発明において、前記細胞は動物細胞であることが好ましく、前記動物細胞はCHO/LK8−Fcであることが好ましい。
【0014】
さらに、本発明は、前記LK8−Fc融合タンパク質を含有する癌治療用組成物及び血管新生抑制用組成物を提供する。本発明において、前記癌は、結腸直腸癌、膵臓癌、前立腺癌、腎臓癌、黒色腫、前立腺癌の骨転移癌及び卵巣癌よりなる群から選択されることが好ましい。
【0015】
本発明の他の特徴及び具現例は、下記の詳細な説明及び特許請求の範囲から一層明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】LK8−Fc融合タンパク質をコードする遺伝子の発現ベクターであるpMSG/LK8−Fcの製造過程を示すものである。
【図2】スピナー培養時におけるCHO/LK8−Fc細胞株の成長曲線及び生存率を示すグラフである。
【図3】親和性クロマトグラフィを用いたLK8−Fc融合タンパク質の精製過程において、グリシン緩衝液の濃度と時間によるLK8−Fc融合タンパク質の溶出を示すグラフである。
【図4】ウエスタンブロットを用いて精製されたLK8−Fc融合タンパク質を確認した結果を示すものである。
【図5】LK8−Fc融合タンパク質で処理された血管内皮細胞を用いた傷移動実験において、試料処理による単位面積当たりの移動細胞数を示すグラフである。
【図6】LK8−Fc融合タンパク質で処理された血管内皮細胞を用いた傷移動実験において、試料処理による細胞移動率(%)を示すグラフである。
【図7】CAMアッセイによるLK8−Fc融合タンパク質の生体内力価を示すグラフである。
【図8】LK8−Fc融合タンパク質の薬物動態(PK)プロファイルを示すグラフである。
【図9】LK8−Fc融合タンパク質処理による腫瘍成長抑制能を示すグラフである。
【図10】LK8−Fc融合タンパク質処理による転移抑制能を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明においては、LK8−Fc融合タンパク質をコードする遺伝子配列を含む組み換えプラスミドpMSG/LK8−Fcを製作し、この遺伝子が形質導入されて組み換えLK8−Fc融合タンパク質を産生するCHO/LK8−Fc細胞株を確立し、前記確立されたCHO/LK8−Fc細胞株から産生されたLK8−Fc融合タンパク質によってマウスの癌組織を処理した結果、癌組織の成長及び転移を抑制するということを確認した。
【0018】
また、本発明によるLK8−Fc融合タンパク質は、Fc融合がLK8タンパク質自体の効能に影響を与えないながらも、LK8タンパク質に比べて半減期が約40〜50倍以上増加されて合計の投与タンパク量及び投与頻度の節減効果があるということを確認した。
【0019】
このような事実は、通常、有用タンパク質にFcが結合された融合タンパク質の方が母タンパク質よりも低い効能を示すか、あるいは、半減期の増加効果があまりないのに対し、本発明のLK8−Fc融合タンパク質は、既存のLK8タンパク質と同じ効能を有しながらも、遥かに高い半減期増加率を示し、当業者にとって全く予測できない効果であると言える。
【0020】
本発明において、LK8−Fc融合タンパク質は、試験管内においてbFGFにより誘導されたヒト内皮細胞の移動を阻害し、生体内において血管生成を抑制する機能を有していることを確認した。一方、LK8−Fcタンパク質を6週齢のSD雄ラット(日本チャールス・リバー株式会社)の筋肉に単回投与時に、融合したFc断片に起因して、生体内半減期が既存のLK8タンパク質に比べて約40〜50倍増加することにより、薬物の投与頻度及び投与容量を減少させても高い効能を示すということを確認した。そこで、LK8−Fc融合タンパク質の投与量をLK8タンパク質に比べて少なくとも10分の1未満
の容量にし、且つ、投与期間を少なくとも1週間に1回投与した場合でさえ、抗癌及び転移効能を期待することができる。しかしながら、上記の条件は限定的なものではなく、患者の年齢及び性別、健康状態、疾患の種類及び進行の度合いによって調節可能である。
【0021】
本発明によるLK8−Fc融合タンパク質は、既存の抗癌化学療法や放射線療法と併用した場合に相乗効果を発揮することが期待され、他の種類の血管新生抑制効果を有する製剤とも複合製剤として使用可能である。例えば、腫瘍を標的とする抗癌化学療法や放射線療法と、腫瘍周辺または腫瘍内に流入する血管を標的とするLK8−Fc融合タンパク質投与を併用すれば、腫瘍の成長及び転移がより有効に抑制可能である。また、LK8−Fc融合タンパク質と本発明のタンパク質は、異なる機序を有する他の血管新生抑制剤とも併用投与可能であり、この場合にも、有効な抗癌または転移抑制能を期待することができる。
【0022】
免疫グロブリン重鎖不変領域は4個または5個のドメインを含み、前記ドメインはCH1−ヒンジ−CH2−CH3(−CH4)からなる。重鎖ドメインのDNA配列は免疫グロブリンクラス間に交差相同性を有するが、例えば、IgGのCH2ドメインはIgA及びIgDのCH2ドメインと相同性を有し、IgM及びIgEのCH3ドメインと相同性を有する。
【0023】
本発明において使用される「Fc領域」という用語は、免疫グロブリン連鎖不変領域のカルボキシル末端部分、好ましくは、免疫グロブリン重鎖不変領域またはその一部を意味する。例えば、免疫グロブリンFc領域は、(1)CH1ドメイン、CH2ドメイン及びCH3ドメイン、(2)CH1ドメイン及びCH2ドメイン、(3)CH1ドメイン及びCH3ドメイン、(4)CH2ドメイン及びCH3ドメイン、または(5)2以上のドメインと免疫グロブリンヒンジ領域との組み合わせを含むことができる。好適な実施形態において、免疫グロブリンFc領域は、少なくとも免疫グロブリンヒンジ領域、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含み、好ましくは、CH1ドメインが欠如されている。
【0024】
重鎖不変領域が由来する好適なクラスの免疫グロブリンは、IgG(Igγ)(γサブクラス1、2、3または4)である。他のクラスの免疫グロブリンIgA(Igα)、IgD(Igδ)、IgE(Igε)及びIgM(Igμ)が利用可能である。好適な免疫グロブリン重鎖不変領域の選択については、米国特許第5、541、087号及び第5、726、044号に詳細に開示されている。特定の結果を得るために特定の免疫グロブリンクラス及びサブクラス由来の特定の免疫グロブリン重鎖不変領域配列を選択することは当業界における技術レベルに属すると考えられる。免疫グロブリンFc領域をコード化するDNA構成物の部分は、少なくともヒンジドメインの一部分を含むことが好ましく、少なくともFcγのCH3ドメインの一部分、または、IgA、IgD、IgEまたはIgMのうちいずれかの相同性ドメインを含むことが好ましい。
【0025】
用途に応じて、ヒト以外の他の種(例えば、マウスまたはラット)由来の不変領域遺伝子が使用可能である。DNA構成物において融合パトナーとして用いられる免疫グロブリンFc領域は、一般的に、任意の哺乳動物種から得られる。宿主細胞または動物においてFc領域に対する免疫反応を誘発させることが好ましくない場合、Fc領域は宿主細胞または動物と同じ種から由来したものでありうる。例えば、宿主動物または細胞がヒトである場合、ヒト免疫グロブリンFc領域が使用可能であり、同様に、宿主動物または細胞がマウスである場合、げっ歯類の免疫グロブリンFc領域が使用可能である。
【0026】
本発明の実施に有用なヒト免疫グロブリンFc領域をコードする核酸配列及びこれを限定するアミノ酸配列は、配列番号2に示されているが、これに制限されるものではない。例えば、GenBankまたはEMBLデータベースに示されたヌクレオチド配列によりコード化されるもの、例えば、AF045536.1(Macaca fuscicularis)、AF045537.1(Macaca mulatta)、AB016710(Felix catus)、K00752(Oryctolagus cuniculus)、U03780(Sus scrofa)、Z48947(Camelus dromedarius)、X62916(Bos taurus)、L07789(Mustela vision)、X69797(Ovis aries)、U17166(Cricetulus migratorius)、X07189(Rattus rattus)、AF57619.1(Trichosurus vulpecula)またはAF035195(Monodelphis domestica)など他の免疫グロブリンFc領域配列も使用可能である。
【0027】
また、免疫グロブリン重鎖不変領域内のアミノ酸の置換または欠失が本発明の実施に有用になる場合もある。一例としては、Fc受容体に対する親和力が減少されたFc変異体を生成するために上部CH2領域にアミノ酸置換を導入することが挙げられる(Cole et al., J. Immunnol., 159:3613, 1997)。当業者であれば、周知の分子生物学技術を用いてこのような構成物を製造することができる
【0028】
本発明においては、本発明の実施に有用なFc融合タンパク質を生成するための通常の組み換えDNA技術を利用する。Fc融合構成物は、好ましくは、DNAレベルにおいて生成され、このようにして生成されたDNAを発現ベクターに挿入させ、これを発現させて本発明の融合タンパク質を産生する。
【0029】
本発明において使用される「ベクター」という用語は、宿主細胞に挿入されて宿主細胞ゲノムと組み換えられ、ここに挿入されるか、または、エピソームとして自発的に複製するコンピテントヌクレオチド配列を含む任意の核酸を意味する。このようなベクターとしては、線形核酸(linear nucleic acids)、プラスミド、ファージミッド、コスミッド、RNAベクター、ウィルスベクターなどがある。ウィルスベクターの例としては、レトロウィルス、アデノウィルス及びアデノ関連ウィルスがあるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
本発明において使用される「遺伝子発現」または標的タンパク質の「発現」という用語は、DNA配列の転写、mRNA転写体の翻訳及びFc融合タンパク質生成物の分泌を意味する。
【0031】
適切な宿主細胞を本発明のDNA配列で形質転換またはトランスフェクトさせ、これを標的タンパク質の発現及び/または分泌に使用することができる。本発明において、好適な宿主細胞としては、不死化(immortal)ハイブリドーマ細胞、NS/O骨髄腫細胞、293細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、HELA細胞及びCOS細胞がある。
【0032】
哺乳動物細胞において高発現レベルで融合タンパク質を産生するために使用されてきた1種類の発現システムは、5’から3’の方向にシグナル配列、免疫グロブリンFc領域及び標的タンパク質をはじめとする分泌カセットをコード化するDNA構成物である。
【0033】
本明細書において使用される「リーダー配列」という用語は、LK8−Fc融合タンパク質の分泌を指令し、その後、宿主細胞において翻訳後に切断される配列を意味する。本発明のリーダー配列は、小胞体膜を横切るタンパク質の輸送を開始するアミノ酸配列をコード化するポリヌクレオチドである。本発明において、好適なリーダー配列としては、抗体軽鎖リーダー配列、例えば、抗体14.18(Gillies et al., J. Immunol. Meth., 125:191, 1989)、Igκリーダー配列、抗体重鎖シグナル配列、例えば、MOPC141抗体重鎖リーダー配列(Sakano et al., Nature, 286:5774, 1980)、及び当業界に周知な任意の他のリーダー配列(Watson et al., Nucleic Acids Research, 12:5145, 1984)がある。
【0034】
本発明は、各種の癌、ウィルス疾患、その他の疾患、関連症状及びこれらの原因を、このような症状を有する哺乳動物に本発明のLK8-Fc融合タンパク質を投与することにより治療する方法を提供する。関連症状としては、血管新生により増殖及び転移される各種の固形癌が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0035】
本発明において、癌は、結腸直腸癌、膵臓癌、前立腺癌、腎臓癌、黒色腫、前立腺癌の骨転移癌または卵巣癌があるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
本発明の組成物は、特定の分子に適した任意の経路により投与可能である。本発明の組成物は、任意の適切な手段を用いて動物に直接的に(例えば、注射、皮下注入または組織位置への局所的投与のように局所的に)、または全身的に(例えば、非経口または経口的に)提供可能である。組成物が非経口、例えば、静脈、皮下、目、腹腔、筋肉内、口腔、直腸、膣内、眼窩内、大脳内、脊髄内、心室内、鞘内、嚢内、関節包内、鼻腔内、または煙霧質投与(aerosol administration)により提供される場合、組成物は、水性または生理的に相溶性を示す流体懸濁液または溶液部分を含むことが好ましい。このため、担体または賦形剤は生理的に許容可能なものであって、所望の組成物を患者に伝達する以外にも、患者の電解質及び/または体積バランスに悪影響を及ぼさなければならない。このため、このような製剤用流体媒質は標準生理塩水を含むことができる。
【0037】
本発明によるLK8−Fc融合タンパク質の容量は0.03〜300mg/mであることが好ましく、0.3〜30mg/mであることがさらに好ましい。しかしながら、最適投与量は、治療の対象となる疾患と副作用の存否によって異なってくる。ところが、最適投与量は、通常の実験により決定することができる。融合タンパク質の投与は、周期的な丸剤注入、または外部貯蔵器(例えば、静脈袋(i.v. bag))または内部貯蔵器(例えば、生体分解性インプラント)からの連続した静脈または腹腔注射により行うことができる。また、本発明の融合タンパク質は、多数の相異なる生物学的活性分子と共に標的受容体に投与することができる。しかしながら、融合タンパク質及びその他の分子間の最適な組み合わせ、投与方式及び投与量は、当業者の技術レベルに属する通常の実験により決定することができる。
【0038】
本発明による血管新生抑制剤は、血管生成と関連する様々な病変、すなわち、様々な腫瘍及び腫瘍の転移、リウマチ性関節炎、糖尿性網膜症、乾癬などの治療剤として適用可能である。この場合にも、本発明によるLK8−Fc融合タンパク質は、当該疾患と関連する他の治療剤と併用可能である。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例により詳述する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に制限されないことは当業界において通常の知識を持った者にとって自明である。
【0040】
《実施例1:LK8−Fc融合タンパク質を発現する組み換えベクターの製造》
LK8とFcを融合させた融合タンパク質をコード化するベクターを製造するために、本発明者らは、既に製造したLK8遺伝子(配列番号1)を含むベクターであるpET11Bベクター(WO2001/019868)を鋳型として用いたPCRによりLK8遺伝子を得た。また、pRC13−Hpaベクター(大韓民国登録特許第467706号)を鋳型として用いたPCRによりFcをコード化する遺伝子(配列番号2)を得た。それぞれのPCR反応に用いられたプライマーは、下記表1に示した。
【0041】
具体的に、前記PCRは、鋳型DNAを94℃において5分間反応させた後、94℃において30秒、56℃において30秒及び72℃において1分という過程を30回繰り返し行い、最後に、72℃において5分間伸張させる過程により行われた。このとき、クローニングを容易に行うために、各プライマーには制限酵素切断部位を挿入して、生成されるPCR産物に制限酵素切断部位を持たせた。
【0042】
前記PCRにより生成された2本の遺伝子断片を、産生されるタンパク質が細胞外に円滑に分泌されることを補助するために、Igκリーダー配列を含有しているpSecTag(Invitrogen, USA)ベクターに挿入した。具体的には、LK8遺伝子断片及びpSecTagベクターをSfiI及びBamHIで切断した後、LK8遺伝子断片をpSecTagベクターにライゲートしてpSecTag−LK8を製作し、Fc遺伝子断片をBamHI及びXhoIで切断し、pSecTag−LK8をBamHI及びXhoIで切断した後にライゲートしてpSecTag/LK8−Fcを製作した。
【0043】
前記プラスミドpSecTag/LK8−Fcにおいて、Igκリーダー配列、LK8遺伝子及びFc遺伝子を制限酵素で切断して、動物細胞発現用ベクターであるpMSGベクター(KCCM10202、大韓民国公開特許10−2002−0010327)に挿入した。すなわち、pMSGベクター及びpSecTag−LK8−Fcプラスミドを制限酵素NheI及びXhoIを用いて切断した後、切断されたIgκ−LK8−Fc断片をpMSGベクターに挿入してpMSG/LK8−Fcを製造した(図1)。
【0044】
【表1】

【0045】
《実施例2:LK8−Fc融合タンパク質を多量発現する動物細胞株の確立》
LK8−Fc融合タンパク質を産生する動物細胞株を確立するために、実施例1に従い製造されたpMSG/LK8−Fcを、DHFR(dihydrofolate reductase)遺伝子(Columbia University, USA)と共に、Dosper(Roche, Switzerland)を用いて、DHFR遺伝子が欠失された細胞株であるCHODG44細胞(Columbia university, USA)にトランスフェクさせた。次いで、10%血清を含有しているMEM−α最少培地(GIBCO、USA)において適応されたコロニーを1次選別した後、選別されたコロニーを50nM及び1μM濃度など段階的に増加されたMTX(methotrexate;ChoongWae Pharma Corporation, Korea)の濃度において継代培養しながら、MTXに対する耐性を示すコロニーの中で標的タンパク質を多量分泌する細胞株を2次選別した。選別された細胞株を、タンパク質の量産の便宜性を図るために、無血清培地であるHyQ−SFM−CHO培地(Promega, USA)含有スピナーフラスコにおいて培養し、最終的に選別された細胞株をCHO/LK8−Fcと命名した。
【0046】
《実施例3:LK8−Fc融合タンパク質の精製》
LK8−Fc融合タンパク質を精製するために、CHO/LK8−Fc細胞株に対し、実施例2の方法と同様にしてHyQ−SFM−CHO培地においてスピナー培養を行った。図2に示すように、細胞の成長及び生存率を観察しながら培養していて、培養6日目に遠心分離によって上澄液を得た後、上澄液に含まれているLK8−Fc融合タンパク質を下記の方法により精製した。LK8−Fc融合タンパク質中のFc部分がプロテインGセファロース(Amersham Pharmacia, USA)に対する親和性を有しているという点を用いて、親和性カラムクロマトグラフィを行った。具体的に、20〜100mMナトリウムホスフェイト(pH6〜8)からなる結合バッファの条件下において、上澄液に含まれているLK8−Fc融合タンパク質を前記プロテインGセファロースカラムに結合させた後、pH2〜5のグリシンバッファを用いてカラムから溶出させた(図3)。
【0047】
精製されたLK8−Fc融合タンパク質を最終的にPBSにより透析した後、4〜20%濃度勾配ゲルを用いたSDS−PAGEとウェスタンブロットにより純度を確認した(図4)。電気泳動の結果、還元性状態では分子量が約37kDaであり、非還元性状態では約75kDaであることが確認された。これは、LK8−Fc融合タンパク質中のFc部分にあるジスルフィド結合により非還元状態では二量体として存在するため、分子量が還元性状態よりも約2倍増大された形態で現れることに起因する(図4)。
【0048】
《実施例4:LK8−Fc融合タンパク質の内皮細胞移動抑制能の分析》
組み換えタンパク質LK8−Fcが血管新生抑制能を有するかどうかを分析するために、試験管内においてヒト内皮細胞であるHUVEC細胞(Human Umbilical Vein Endothelial Cell, Cambrex, USA)を用いて創傷移動分析(wounding migration assay)を実施した(Kim et al., J. Biol. Chem., 278:29000, 2003)。1.5%ゲラチンがコーティンクされた24ウェル組織培養平板の各ウェルにEGM−2(Cambrex, USA)培地で懸濁させたHUVEC細胞を入れ、細胞が90%以上に成長するまで培養した後、0.1%のFBS入りEBM−2(Cambrex, USA)培地に交換した。前記条件下において約15時間培養した後、マイクロピペットチップを用いて細胞を掻き取り、培養平板から離れた細胞をPBSにより2回洗い取った。引っ掻かれた部分は写真撮影をしておき、表示線を引いておいた。その後、8時間細胞をさらに培養し、細胞の移動抑制の度合いを観察して写真撮影した後、表示線を越えて移動した細胞の数を計数した。前記実験は3回繰り返し行い、その結果を図5及び図6に示した。図5中、X軸は処理済み試料の種類及び濃度であり、Y軸は表示線を越えて移動した細胞数を示す。また、図6は、図5のデータを百分率(%)にて示すグラフであり、具体的に、試料処理なしのPBS単独処理群における細胞移動数を各データからいずれも排除した後、bFGF単独処理群の細胞移動数を100%に換算して、LK8−Fcタンパク質を濃度別に処理時の細胞移動の相対的な阻害度を示した。LK8タンパク質を陽性対照群として使用した。
【0049】
bFGFを内皮細胞に処理すれば、細胞の移動が大いに誘導されるが、図5及び図6に示すように、LK8タンパク質を処理した場合、bFGFにより誘導された細胞の移動が抑制され、処理されたLK8タンパク質の濃度が増加するにつれて抑制能が増強された。このとき、LK8−Fc融合タンパク質をLK8タンパク質と同じモル濃度にて内皮細胞に処理した場合にも、LK8タンパク質と同様な程度にHUVECの移動を有効に抑制することが分かる。代表的に、LK8タンパク質とLK8−Fc融合タンパク質をそれぞれ1μMの濃度にて処理した場合、bFGF単独処理群に比べて、LK8タンパク質処理群及びLK8−Fc融合タンパク質処理群はそれぞれ約68%(bFGF単独処理群と比較時、p<0.005)及び約64%(bFGF単独処理群と比較時、p<0.05)の内皮細胞移動抑制能を示した。前記結果から、LK8−Fc融合タンパク質が試験管内においてLK8タンパク質と同様なレベルの内皮細胞移動抑制能を示すことを確認することができた。
【0050】
《実施例5:LK8−Fc融合タンパク質の生体内血管形成阻害能の分析》
LK8−Fc融合タンパク質が生体内において血管形成を阻害するかを確認するために、有精卵の絨毛尿膜(以下、「CAM」と略称する。)におけるLK8−Fc融合タンパク質の血管形成への影響を観察した(Kim et al., J. Biol. Chem., 278:29000, 2003)。有精卵の卵白アルブミンの一部を除去した後、タンパク質処理及び観察のための窓を作った後、37℃培養器において48時間培養した。LK8−Fc融合タンパク質及びLK8タンパク質をサーマノックスカバースリップ(Nunc、USA)に載せ、乾燥させて準備した後、それぞれ胚芽CAMに注入、48時間さらに培養した後、脂肪乳液を胚芽の絨毛尿膜に注入してサーマノックス周辺の血管形成を観察した。このとき、1群当たりに60個の有精卵を使用した(図7)。
【0051】
その結果、陰性対照群であるサーマノックスに生理食塩水のみを処理した有精卵において基本的に約39.2±5.6%の毛細血管形成阻害が現れた。これに対し、それぞれ10μgのLK8タンパク質及びLK8−Fc融合タンパク質を処理した場合、約66.2%(対照群と比較時、p<0.05)及び約63.2%(対照群と比較時、p<0.05)の血管形成阻害が観察された。すなわち、それぞれ両試料の処理が統計的に有意に血管形成を抑制していることが分かり、両試料間には効果の差が観察されなかった。このため、実施例3における試験管内だけではなく、生体内においても、Fc接合LK8−Fc融合タンパク質が血管形成抑制能を有していることを確認した。
【0052】
《実施例6:LK8−Fc融合タンパク質の薬物動態(PK)分析》
LK8−Fc融合タンパク質の薬物動態(PK)を観察するために、LK8−Fc融合タンパク質及びLK8タンパク質を6週齢のSD雄ラット(日本チャールス・リバー株式会社)に単回投与後、時間別に血漿に含まれているLK8−Fc融合タンパク質の濃度を測定した。具体的に、タンパク質の探知のために、LK8−Fc融合タンパク質及びLK8タンパク質にFITC(Sigma, USA)を標識し、標識されたタンパク質であるLK8−Fc−FITCとLK8−FITCタンパク質180μgをそれぞれSDラット(1群当たりに3匹)に単回に亘って筋肉注射した。タンパク質投与後、0.017、0.051、0.085、0.17、0.51、1、2、4、6、8、24、48、72、120、168(h)の間隔にて眼内出血により200μlの血液を試料採取した後、血漿を確保した。血漿に含まれているタンパク質の濃度は、FITCの励起波長である490nmと放射波長である535nmの条件下において蛍光光度計(PerkinElmer, USA)を用いて吸光度を測定し、標準曲線を用いて濃度を算出した(表2)。
【0053】
【表2】

【0054】
表2に示すデータを用いて薬物動態(PK)を分析した結果、LK8−Fc融合タンパク質を投与した群において、LK8−Fc融合タンパク質の半減期(t1/2)は約177hrであり、体内露出度であるAUC(0−t)及びAUC(inf)はそれぞれ103、001h・pmol/m及び176、759h・pmol/mLであることが分析された(表3及び図8)。要するに、Fc融合によりLK8−Fc融合タンパク質の半減期が増加され、その結果、生体内利用率が有意に増加されたことを確認した。
【0055】
【表3】

【0056】
《実施例7:LK8−Fc融合タンパク質処理による固形癌成長抑制》
ヒト大腸癌細胞が異種移植された腫瘍モデルを用いて、LK8−Fc融合タンパク質が固形癌の生長に抑制能があるかどうかを観察した。具体的に、10%FBS(GIBCO、USA)入りDMEM(GIBCO、USA)培地において培養された約5x10個のLS174Tヒト大腸癌細胞(ATCCLS174T、USA)をBALB/cヌードマウス(日本チャールス・リバー株式会社)の背側近位中央部に皮下接種した。大腸癌細胞移植後10日経過時、LK8−Fc融合タンパク質及びLK8タンパク質を投与した。LK8−Fc融合タンパク質及びLK8タンパク質はそれぞれ35mg/kg/回及び10mg/kg/回にて処理することにより、同じモル濃度にて投与し、投与スケジュールは、LK8−Fc融合タンパク質の場合、実施例6のPK実験結果に基づいて1週間に1回投与し、LK8−Fc融合タンパク質とLK8タンパク質との効能比較のために、LK8タンパク質は、1週間に1回投与群と、以前の実験において効能が確認されたスケジュールである1日1回投与群を陽性対照群として設定して投与した。1群あたりに5匹を使用し、腫瘍を移植後約1ヶ月間癌の生長を観察した。処理過程は20日間継続され、その後、腫瘍のサイズを3〜4日おきに1回ずつ測定し、全ての実験は2回繰り返し行った。
【0057】
その結果、LK8タンパク質及びLK8−Fc融合タンパク質の処理により腫瘍の成長が低下し、LK8タンパク質処理群の中で、1日1回投与群とLK8−Fc融合タンパク質を1週間に1回投与した群は、対照群に比べて腫瘍成長抑制効果が観察された(図9)。しかしながら、LK8をLK8−Fc融合タンパク質スケジュールと同様に1週間に1回投与した場合、腫瘍成長抑制能が観察されなかった。具体的に、細胞株を移植後21日目に観察した結果、対照群である生理食塩水投与群の腫瘍体積は平均2409±591mm(±標準偏差)であるのに対し、LK8タンパク質を1日1回投与した群の腫瘍体積は1188±1022mm(±標準偏差)であり、LK8タンパク質を1週間に1回投与した群の腫瘍体積は3203±3284mm(±標準偏差)であり、LK8−Fc融合タンパク質を1週間に1回投与した群の腫瘍体積は899±773mm(±標準偏差)であった。すなわち、対照群であるサリン投与群を腫瘍成長率の平均値と比較したとき、LK8タンパク質の1日1回投与群は約50%の腫瘍生長抑制効果を示し、LK8−Fc融合タンパク質を1週間に1回投与した群は約63%の腫瘍生長抑制効果を示した。LK8−Fc融合タンパク質を1週間に1回投与した群がLK8タンパク質の1日1回投与群と同様な腫瘍成長抑制能を示し、これは、LK8−Fc融合タンパク質の増加された半減期に起因する。
【0058】
《実施例8:LK8−Fc融合タンパク質の転移抑制能分析》
LK8−Fc融合タンパク質が大腸癌細胞株の肝転移に対して抑制能があるかどうかを観察するために、BALB/cヌードマウス(日本チャールス・リバー株式会社)の脾臟に結腸癌を移植させた動物モデルを用いて、癌の肝転移の度合いを観察した。具体的に、BALB/cヌードマウスをケタミン(Sigma, USA)を用いて麻酔した後、脾臟に3x10個のLS174Tヒト大腸癌細胞を移植し、1日経過後に各LK8−Fc融合タンパク質の投与を開始した。タンパク質の投与濃度は、固形癌モデルの場合と同様に、35mg/kg/回の濃度にて実施例6のPK実験結果に基づいて1週間に1回投与した。腫瘍移植14日後、マウスを解剖して肝を摘出した後、癌を観察し、且つ、転移された癌の結節数を計数して転移の度合いを測定した。
【0059】
その結果、肝表面に転移されて生成された結節の数は、対照群であるサリン処理群の場合には単位面積あたりに120.3±35.1個(±標準偏差)であるのに対し、LK8−Fc融合タンパク質を処理した群の場合には56.8±31.9個(±標準偏差)であり、LK8−Fc融合タンパク質投与群の方が対照群に比べて転移により生成された結節の数が顕著に減少されていることが確認できた(図10)。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上、詳述したように、本発明は、LK8タンパク質とヒト免疫グロブリンIgG1のFc部分とが融合したLK8−Fc融合タンパク質を提供する効果があり、前記LK8−Fc融合タンパク質を含有する癌治療用組成物を提供する効果もある。本発明によるFc接合LK8融合タンパク質は、血管生成抑制能とそれによる抗癌及び癌転移抑制能を有しながらも、体内半減期が極めて長いことから、さらに効率的且つ経済的な癌治療剤または癌抑制剤として使用可能である。
【0061】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳述したが、当業界における通常の知識を持った者にとって、このような具体的な記述は単なる好適な実施態様に過ぎず、これにより本発明の範囲が制限されることはないという点は明らかである。よって、本発明の実質的な範囲は特許請求の範囲とこれらの等価物により定義されると言える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LK8タンパク質とヒト免疫グロブリンIgG1のFc部分とが融合したLK8−Fc融合タンパク質。
【請求項2】
LK8−Fc融合タンパク質を細胞外に分泌するIgκリーダー部位をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のLK8−Fc融合タンパク質をコードする遺伝子。
【請求項4】
請求項3に記載の遺伝子を含有する組み換えベクター。
【請求項5】
請求項4に記載の組み換えベクターで形質転換された細胞。
【請求項6】
前記細胞は動物細胞であることを特徴とする請求項5に記載の細胞。
【請求項7】
前記動物細胞はCHO/LK8−Fcであることを特徴とする請求項6に記載の細胞。
【請求項8】
請求項5に記載の細胞を培養することを特徴とするLK8−Fc融合タンパク質の製造方法。
【請求項9】
請求項1または2に記載のLK8−Fc融合タンパク質を含有する癌治療用組成物。
【請求項10】
前記癌は、結腸直腸癌、膵臓癌、前立腺癌、腎臓癌、黒色腫、前立腺癌の骨転移癌及び卵巣癌よりなる群から選択されることを特徴とする請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1または2に記載のLK8−Fc融合タンパク質を含有する血管新生抑制用組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−513471(P2010−513471A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542627(P2009−542627)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【国際出願番号】PCT/KR2007/005790
【国際公開番号】WO2008/075833
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(504385351)モガム バイオテクノロジー リサーチ インスティチュート (10)
【Fターム(参考)】