説明

免疫原性が増加したアデノウイルスベクターをインビボで用いる方法

本発明は哺乳動物における免疫応答を誘導する方法を提供する。該方法は、アデノウイルスベクターを哺乳動物に投与することを含み、該アデノウイルスベクターは(a)天然のコクサッキーウイルスおよびアデノウイルスレセプター(CAR)結合部位が破壊された亜群Cファイバータンパク質、(b)天然のインテグリン結合部位が破壊された亜群Cペントンベースタンパク質、および(c)哺乳動物で発現して免疫応答を誘導する、アデノウイルス以外の感染性因子に由来する少なくとも1つの抗原をコードする核酸配列を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(政府委託研究および開発に関する陳述)
本発明はジェンベク.インコーポレイテッドと国立アレルギー感染病研究所を代表するアメリカ合衆国公衆衛生局との間で締結された共同研究開発契約(CRADA)番号AI−1034、およびその修正条項のもと政府支援で部分的になされた。政府は本発明において一定の権利を有するであろう。
【0002】
本発明は、哺乳動物に組換えアデノウイルスベクターを投与することを含む、哺乳動物における免疫応答を誘導する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
治療学として、または免疫応答を誘導するために適切な組織に生物学的に意味のある量のタンパク質を送達することは、薬物およびワクチンの開発に長い間障害となってきた。伝統的な薬物送達アプローチへの素晴らしい代替案であると証明されている1つの解決法は、生体内での治療因子の産生のために外来核酸配列を送達することである。遺伝子移入ベクターは理想的には広く多様な細胞型に入り、大きな核酸配列を受容する能力をもち、安全であり、かつ患者を治療するために必要な量で産生可能なものである。アデノウイルスベクターは全てのこれらの優れた性質を有し、生物学的な障害を治療または予防する多様なプロトコルに使用される。
【0004】
前記の優れた性質にもかかわらず、アデノウイルスベクターの幅広い使用は、ある細胞がアデノウイルス媒介遺伝子送達を容易に受容しないという事実によって少なくとも部分的に妨げられている。例えば、αインテグリンアデノウイルスレセプターを欠如するリンパ球はアデノウイルスの取込みについての機能が損なわれている(Silver et al., Virology 165, 377-387 (1988);Horvath et al., J.Virology, 62(1), 341-345 (1988))。この全ての細胞への感染能の欠如のために、アデノウイルスが感染できない(例えばアデノウイルスレセプターの欠如に起因する)細胞内へアデノウイルスを導入する方法を研究者が探索するという結果に至った。特に、該ウイルスは哺乳動物細胞に対するリガンド(例えばトランスフェリン)を含むDNA−ポリリジン複合体に結合させることができる(例えば、Wagner et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 89, 6099-6103 (1992);国際特許出願公開WO 95/26412)。同様に、アデノウイルスファイバータンパク質を抗体で立体的にブロックし、組織特異的抗体を化学的にウイルス粒子に連結することができる(Cotton et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89, 6094-6098 (1992))。加えて、特別な細胞型にアデノウイルスベクターを切り換える(redirect)リガンドをコードする核酸配列を挿入するために、アデノウイルスの外被タンパク質を遺伝的レベルで改変することが可能である(例えば米国特許5,543,328および5,731,190参照)。
【0005】
しかしながら、これらのアプローチは、より大きな分子(例えばポリリジン、レセプターリガンド、および抗体など)をウイルスに共有結合させる追加の工程が必要であるという点で不利である(Cotton (1992)、上述;Wagner et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 89, 6099-6103 (1992)参照)。これは得られるベクターのサイズを増し、ならびに製造コストも増す。さらに、標的粒子複合体は構造上均一ではなく、その効率はウイルス粒子、連結分子、および使用されたターゲッティング分子の相対比に敏感である。アデノウイルス感染に対して以前は抵抗性であった細胞型を選択的に標的にすることにおいては、いくぶん限定されてはいるが、アデノウイルス外被タンパク質の遺伝子操作は成功してきた。したがって、アデノウイルス媒介遺伝子治療を受容可能な細胞のレパートリーを広げるこのようなアプローチは最適でない。
【0006】
アデノウイルス媒介遺伝子治療の別の弱点は、典型的にアデノウイルスに感染した細胞型(例えば肝臓など)においてアデノウイルスベクターが毒性を有することである(例えば、O'Neal et al., Mol. Med., 6, 179-195 (2000)、Gallo-Penn et al., Blood, 7, 107-113 (2001)、およびShayakhmetov et al., J Virol., 78, 5368-5381 (2004)参照)。アデノウイルス感染の細胞毒性効果は、広い範囲の細胞型へ治療遺伝子を効率的に送達するというアデノウイルスベクターの能力をさらに妨げる。
【0007】
これらのアデノウイルスベクター遺伝子移入の弱点は、DNAワクチンとしての該ベクターの使用を困難にする。DNAワクチンには宿主細胞に抗原をコードするDNAを送達する遺伝子移入ベクターを供する。インビボで抗原性タンパク質を産生することにより、免疫システムの体液性および細胞媒介性部門が活性化される。それゆえ、体内に異種タンパク質を注入する伝統的なワクチンと比べて、抗原に対してより完全な免疫応答が生じる。
【0008】
高い効率で細胞に感染させることができ、核酸配列(特に抗原をコードする核酸配列)を宿主細胞に送達するために宿主細胞の感染範囲の選択肢を実証する、アデノウイルスベクターの使用方法が必要とされている。本発明はかかる方法を提供する。本発明の前記および他の優れた点、ならびに付加的な発明の特徴は、本明細書で提供された本発明の記載から明らかになるであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
(本発明の簡単な要旨)
本発明は哺乳動物における免疫応答の誘導方法を提供するものであり、該方法は哺乳動物に、(a)天然のコクサッキーウイルスおよびアデノウイルスレセプター(CAR)結合部位が破壊された亜群Cファイバータンパク質、(b)天然のインテグリン結合部位が破壊された亜群Cペントンベースタンパク質、ならびに(c)哺乳動物で発現して免疫応答を誘導する少なくとも1つの抗原をコードする核酸配列、を含むアデノウイルスベクターを投与することを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(発明の詳細な説明)
本発明は哺乳動物において免疫応答を誘導するための材料および方法を提供する。特に、本発明は1つ以上の抗原をコードする核酸配列の宿主細胞への送達に適したアデノウイルスベクターを提供し、1つ以上のコードされた抗原に対する免疫応答を誘導する、かかるアデノウイルスベクターの使用方法を提供する。哺乳動物において免疫応答を誘導する本発明の方法は、哺乳動物に(a)天然のCAR結合部位が破壊された亜群Cファイバータンパク質、(b)天然のインテグリン結合部位が破壊された亜群Cペントンベースタンパク質、および(c)哺乳動物で発現して免疫応答を誘導する少なくとも1つの抗原をコードする核酸配列、を含むアデノウイルスベクターを投与することを含む。ここで抗原はアデノウイルス以外の1つの感染性因子に由来する。
【0011】
アデノウイルスベクターのウイルスゲノム源として、多様な起源、全てのサブタイプ、またはサブタイプの混合物のアデノウイルスが使用可能である。アデノウイルスベクターを産生するために非ヒトアデノウイルス(例えば、サル、トリ、イヌ、ヒツジ、またはウシアデノウイルス)は使用可能であるが、好ましくは、本発明の方法のアデノウイルスベクターには、ヒトアデノウイルスをウイルスゲノム源として使用する。アデノウイルスは多様な亜群または血清型であり得る。例えば、アデノウイルスは亜群A(例えば、血清型12、18、および31)、亜群B(例えば、血清型3、7、11、14、16、21、34、35、および50)、亜群C(例えば、血清型1、2、5、および、6)、亜群D(例えば、血清型8、9、10、13、15、17、19、20、22−30、32、33、36−39、および42−48)、亜群E(例えば、血清型4)、亜群F(例えば、血清型40および41)、分類されていない血清型群(例えば、血清型49および51)、または全ての他のアデノウイルス血清型であり得る。アデノウイルス血清型1から51はAmerican Type Culture Collection(ATCC,Manassas,VA)から入手可能である。本発明の方法において、好ましくは該アデノウイルスベクターはヒト亜群C、特に血清型2、または更により望ましくは血清型5である。
【0012】
該アデノウイルスベクターはサブタイプの混合物を含み得るので、「キメラ」アデノウイルスベクターであり得る。キメラアデノウイルスベクターは、2つ以上の(例えば、2、3、4など)異なったアデノウイルス血清型由来のアデノウイルスゲノムを含み得る。本発明において、キメラアデノウイルスベクターは、2つ以上の異なるアデノウイルス血清型の各ゲノムをほぼ等量含み得る。該キメラアデノウイルスベクターゲノムが2種のアデノウイルス血清型のゲノムを含む場合、該キメラアデノウイルスベクターゲノムは、好ましくは1種の該アデノウイルス血清型のゲノムを約70%以下(例えば、約65%、約50%、または約40%)含み、該キメラアデノウイルスゲノムの残りは別の種のアデノウイルス血清型のゲノム由来である。1つの実施態様において、該キメラアデノウイルスベクターは血清型2ゲノムの一部および血清型5ゲノムの一部を含むアデノウイルスゲノムを含有し得る。例えば、かかるアデノウイルスベクターのヌクレオチド1−456が血清型2ゲノム由来であり得、他方、該アデノウイルスゲノムの残りは血清型5ゲノム由来であり得る。
【0013】
本発明のアデノウイルスベクターは、自律増殖可能であり得る。例えば、宿主細胞内でウイルスの複製を阻害しないアデノウイルスゲノムでは、該アデノウイルスベクターは突然変異(例えば、欠失、挿入、または置換)をもち得る。本発明のアデノウイルスベクターは、条件つき複製可能でもあり得る。しかしながら、好ましくは、該アデノウイルスベクターは宿主細胞中では複製欠損性である。
【0014】
「複製欠損性」とは、少なくとも1つの複製に必須な遺伝子機能を欠くアデノウイルスゲノムをアデノウイルスベクターが含むことを意味する(すなわち、アデノウイルスベクターは典型的な宿主細胞内、特に本発明の方法の過程でアデノウイルスに感染したヒト患者の細胞内で複製されないように)。本明細書で用いられる遺伝子、遺伝子機能、あるいは遺伝子領域またはゲノム領域における欠損は、核酸配列の全部または一部が欠失した遺伝子の機能が消失または損なわれる(例えば、遺伝子産物の機能が少なくとも約2倍、5倍、10倍、20倍、30倍、または50倍減少する)程度に、ウイルスゲノムの十分な遺伝物質の欠失と定義される。遺伝物質の欠失が好ましいが、付加または置換による遺伝物質の突然変異も同様に遺伝子機能を破壊するのに適する。複製に必須な遺伝子機能は、複製(例えば、増殖)に必要な遺伝子機能であり、例えば、アデノウイルスの初期領域(例えば、E1、E2、およびE4領域)、後期領域(例えば、L1−L5領域)、ウイルスパッケージングに関与する遺伝子(例えば、IVa2遺伝子)、およびウイルス関連RNA(例えば、VA−RNA1および/またはVA−RNA−2)によりコードされている。より好ましくは、複製欠損アデノウイルスベクターは、アデノウイルスゲノムの1つ以上の領域の少なくとも1つの複製に必須な遺伝子機能を欠損したアデノウイルスゲノムを含む。好ましくは、該アデノウイルスベクターはウイルス複製に必要なアデノウイルスゲノムのE1A領域、E1B領域、またはE4領域のうちの少なくとも1つの遺伝子機能が欠損している(E1欠損またはE4欠損アデノウイルスベクターと表す)。E1領域における欠損に加えて、組換えアデノウイルスは、国際特許出願公開WO 00/00628に論じられているように、主要後期プロモーター(MLP)にも変異を有し得る。最も好ましくは、アデノウイルスベクターはE1領域の少なくとも1つの複製に必須な遺伝子機能(望ましくは全ての複製に必須な遺伝子機能)およびE3領域の少なくとも1つの必須でない遺伝子機能(例えば、E3領域のXbaI欠失)が欠損している(E1/E3欠損アデノウイルスベクターと表す)。E1領域に関して、アデノウイルスベクターは、E1A領域の一部または全て、およびE1B領域の一部または全て(例えば、E1AおよびE1B領域それぞれの少なくとも1つの複製に必須な遺伝子機能)を欠損し得る。該アデノウイルスベクターがE1欠損である場合、該アデノウイルスベクターゲノムは、ヌクレオチド335から375の間のいずれかのヌクレオチド(例えば、ヌクレオチド356)で始まり、かつヌクレオチド3,310から3,350の間のいずれかのヌクレオチド(例えば、ヌクレオチド3,329)で終わり、またはさらに3,490から3,530の間のいずれかのヌクレオチド(例えば、ヌクレオチド3,510)で終わる欠失を含み得る(アデノウイルス血清型5ゲノムに基づく)。E2A欠損の場合、該アデノウイルスベクターゲノムは、ヌクレオチド22,425から22,465の間のいずれかのヌクレオチド(例えば、ヌクレオチド22,443)で始まり、かつヌクレオチド24,010から24,050の間のいずれかのヌクレオチド(例えば、ヌクレオチド24,032)で終わる欠失を含み得る(アデノウイルス血清型5ゲノムに基づく)。E3欠損の場合、該アデノウイルスベクターゲノムは、ヌクレオチド28,575から29,615の間のいずれかのヌクレオチド(例えば、ヌクレオチド28,593)で始まり、かつヌクレオチド30,450から30,490の間のいずれかのヌクレオチド(例えば、ヌクレオチド30,470)で終わる欠失を含み得る(アデノウイルス血清型5ゲノムに基づく)。アデノウイルスベクターがアデノウイルスゲノムの1つの領域において少なくとも1つの複製に必須な遺伝子機能を欠損する場合(例えば、E1またはE1/E3欠損アデノウイルスベクター)、該アデノウイルスベクターを、「単一複製欠損性」という。特に好ましい単一複製欠損性アデノウイルスベクターは、例えば、アデノウイルスベクターを増殖させるために(例えば、アデノウイルスベクター粒子を作製するために)、最大限アデノウイルスゲノムのE1領域の相補性を必要とする複製欠損性アデノウイルスベクターである。
【0015】
本発明のアデノウイルスベクターは、該アデノウイルスベクターがアデノウイルスゲノムの2つ以上の領域のそれぞれにおいて1つ以上の複製に必須な遺伝子機能を欠損していることを意味する「多重複製欠損性」であり得る。例えば、前述のE1欠損またはE1/E3欠損アデノウイルスベクターは、E4領域(E1/E4欠損またはE1/E3/E4欠損アデノウイルスベクターと表す)、および/またはE2領域(E1/E2欠損またはE1/E2/E3欠損アデノウイルスベクターと表す)、好ましくはE2A領域(E1/E2A欠損またはE1/E2A/E3欠損アデノウイルスベクターと表す)の少なくとも1つの複製に必須な遺伝子機能をさらに欠損し得る。全E4領域を欠失したアデノウイルスベクターは、より低い宿主免疫応答を誘発し得る。E4欠損の場合、アデノウイルスベクターゲノムは、例えばヌクレオチド32,805から32,845の間のいずれかのヌクレオチド(例えば、ヌクレオチド32,826)で始まり、例えばヌクレオチド35,540から35,580の間のいずれかのヌクレオチド(例えば、ヌクレオチド35,561)で終わる欠失(アデノウイルス血清型5ゲノムに基づく)を含み得、随意でE1領域(例えば、ヌクレオチド356から3,329またはヌクレオチド356から3,510)の欠失が追加され(アデノウイルス血清型5ゲノムに基づく)、および/またはE3領域(例えば、ヌクレオチド28,594から30,469またはヌクレオチド28,593から30,470)の欠失が追加される(アデノウイルス血清型5ゲノムに基づく)。
【0016】
本発明のアデノウイルスベクターがE2A領域の複製に必須な遺伝子機能を欠損しているならば、ベクターはE2A領域の完全な欠失を好ましくは含まず、該欠失は好ましくは長さが約230塩基対未満である。一般的に、アデノウイルスのE2A領域はDBP(DNA結合タンパク質)、つまりDNA複製に必要なポリペプチドをコードしている。DBPはウイルスの血清型により473から529のアミノ酸で構成される。DBPは、幅のあるNtドメインを伴う球形のCtからなる長楕円として存在する非対称タンパク質であると信じられている。Ctドメインは、核酸に結合し、亜鉛に結合して、DNA鎖伸長のレベルでDNA合成の機能を担っているというDBPの能力に関与していることを研究は示している。しかしながら、Ntドメインは転写および転写後レベルの両方で後期遺伝子発現に機能していると信じられており、タンパク質の効率的な核局在性を担い、かつそれ自身の発現の増大にも関与し得る。アミノ酸2から38のNtドメインにおける欠失は、この領域がDBP機能にとって重要であることを示している(Brough et al., Virology, 196, 269-281 (1993))。DBPのCt領域をコードするE2A領域における欠失がウイルスの複製に効果を示さないのに対して、DBPのNtドメインのアミノ酸2から38をコードするE2A領域の欠失はウイルスの複製機能を損なう。いかなる多重複製欠損性アデノウイルスベクターも、アデノウイルスゲノムのE2A領域の当該部分を含んでいることが好ましい。詳しくは、例えば、保持されているE2A領域の所望の部分は、E2A領域の5’末端で定義されるアデノウイルスゲノムのE2A領域の一部であり、特に血清型Ad5のアデノウイルスゲノムのE2A領域のAd5(23816)からAd5(24032)の位置である。現在のE2A細胞株ではウイルスの増殖の所望のレベルを提供できるように相補されていないため、アデノウイルスゲノムの当該部分が望ましくはアデノウイルスベクター中に含まれる。
【0017】
上記の欠失はアデノウイルス血清型5ゲノムに関して記載されているが、アデノウイルス血清型2と5との間のゲノムの相似性に基づいて、当業者は必要以上の実験をせずにアデノウイルス血清型2ゲノムの同じ領域に相当するヌクレオチドを確定させることができる。
【0018】
本発明の方法の1つの実施態様において、アデノウイルスベクターはE1およびE4領域のそれぞれの1つ以上の複製に必須な遺伝子機能を欠損したアデノウイルスゲノムを含み得(すなわち、アデノウイルスベクターはE1/E4欠損アデノウイルスベクターである)、好ましくはアデノウイルスゲノムから欠失したE4領域を有する全コーディング領域を伴う領域である。言い換えると、E4領域の全てのオープンリーディングフレーム(ORF)が取り除かれる。アデノウイルスベクターのE4領域は天然のE4プロモーター、ポリアデニル化配列、および/または右側逆位末端配列(ITR)を保持し得る。
【0019】
多重複製欠損性(特にE1およびE4領域の複製に必須な遺伝子機能において)の場合、単一複製欠損性アデノウイルスベクター(特にE1欠損アデノウイルスベクター)により達成されるのと同様に、アデノウイルスベクターは相補細胞株でウイルスの成長をもたらすスペーサー配列を含む。スペーサー配列は、いかなるヌクレオチド配列も所望の長さの配列も含むことができる。かかる配列は少なくとも約15塩基対(例えば、約15塩基対から12,000塩基対の間)、好ましくは約100塩基対から10,000塩基対、より好ましくは約500塩基対から約8,000塩基対、なおより好ましくは約1,500塩基対から約6,000塩基対、および最も好ましくは約2,000から約3,000塩基対の長さである。スペーサーエレメント配列は、アデノウイルスゲノムに関してコーディングまたは非コーディングおよび天然または非天然であり得るが、欠損領域の複製に必須な機能は回復させない。スペーサーエレメントは好ましくはアデノウイルスゲノムのE4領域に位置する。アデノウイルスベクターにおけるスペーサーの使用は、米国特許5,851,806に記載されている。
【0020】
少なくともE4欠損アデノウイルスベクターはインビボで限られた時間で高レベルで導入遺伝子を発現することが観察され、少なくともE4欠損アデノウイルスベクターにおける導入遺伝子の発現の持続がトランス活性化因子(例えば米国特許6,225,113、6,649,373、および6,660,521、米国特許出願公開2002/0031823 A1、および国際特許出願公開WO 00/34496に記載されるように、とりわけ、例えばHSV ICP0、Ad pTP、CMV−IE2、CMV−IE86、HIV tat、HTLV−tax、HBV−X、AAV Rep 78、HSV ICP0様に機能するU205骨肉腫細胞株由来の細胞性因子、または神経成長因子により誘導されるPC12細胞中の細胞性因子)の作用を通じて改変され得ることが観察されている。上記を考慮して、多重欠損性アデノウイルスベクター(例えば、少なくともE4欠損アデノウイルスベクター)または第2の発現ベクターは、核酸配列の発現が持続するように改変するトランス作用因子をコードする核酸配列を含むことができる。免疫寛容を生じる時、抗原DNAの持続的発現が所望され得る。
【0021】
望ましくは、アデノウイルスベクターは、複製(すなわち、増殖)のために、アデノウイルスゲノムのE1、E2A、および/またはE4領域の複製に必須な遺伝子機能の相補が最大限必要である。しかしながら、アデノウイルスベクターが欠損をとどめており増殖させることが可能である限り(例えば、相補細胞および/または破壊された複製に必須な遺伝子機能をコードする外来DNA(例えば、ヘルパーアデノウイルス)を用いて)、アデノウイルスゲノムは施術者に望まれるように1つ以上の複製に必須な遺伝子機能を破壊して改変することが可能である。これに関して、アデノウイルスゲノムの初期領域のみ、アデノウイルスゲノムの後期領域のみ、ならびにアデノウイルスゲノムの初期および後期両領域の複製に必須な遺伝子機能において、アデノウイルスベクターは欠損であり得る。多重複製欠損性アデノウイルスベクターを含む適切な複製欠損性アデノウイルスベクターは、米国特許5,837,511;5,851,806;5,994,106;6,127,175;および6,482,616;米国特許出願公開2001/0043922 A1、2002/0004040 A1、2002/0031831 A1、2002/0110545 A1、および2004/0161848 A1、ならびに国際特許出願公開WO 94/28152、WO 95/02697、WO 95/16772、WO 95/34671、WO 96/22378、WO 97/12986、WO 97/21826、およびWO 03/022311に開示されている。理想的には、複製欠損性アデノウイルスベクターは、実質的に自律増殖可能アデノウイルス(RCA)の混入がない組成物(例えば、医薬組成物)の形態で存在する(例えば、医薬組成物はRCA混入が約1%未満)。最も望ましくは、該組成物はRCAの混入がない。RCAの混入がないアデノウイルスベクター組成物およびストックは、米国特許5,944,106、米国特許出願公開2002/0110545 Al、ならびに国際特許出願公開WO 95/34671に記載されている。
【0022】
例えばアデノウイルスゲノムのE1、E3、およびE4領域の全てまたは一部を除去することにより、得られたアデノウイルスベクターは、アデノウイルスキャプシド中にパッケージングする能力を保持しつつ、外来核酸の挿入を可能にする。該核酸配列はアデノウイルスゲノムのE1領域、E3領域、またはE4領域に位置し得る。実際、核酸配列の発現を妨げたりアデノウイルスベクターのパッケージングを妨害したりしない限りは、核酸配列はアデノウイルスゲノム中のどこにでも挿入することができる。
【0023】
もしアデノウイルスベクターが複製欠損性でなければ、理想的にはアデノウイルスベクターは標的組織内でベクターの複製を制限するように操作される。例えば、アデノウイルスベクターは、施術者により事前に決定された状況下で複製するように設計された条件つき複製アデノウイルスベクターであり得る。例えば複製に必須な遺伝子機能(例えばアデノウイルス初期領域にコードされる遺伝子機能)が誘導可能、抑制可能、または組織特異的転写制御配列(例えばプロモーター)に機能可能に連結し得る。当該実施態様において、複製は転写制御配列と相互作用する特定の因子の存在または不在を必要とする。自己免疫疾患の治療において、例えば、継続的な抗原産生を得て免疫細胞産生を制御するリンパ節でアデノウイルスベクターの複製を制御することは好都合であり得る。条件つき複製アデノウイルスベクターは米国特許5,998,205にさらに記載されている。
【0024】
本発明は、少なくとも一部は、天然の細胞表面レセプターへの結合を欠損しているアデノウイルスベクター、特に亜群Cアデノウイルスベクターが、天然の結合を保持しているアデノウイルスベクターと同じ程度に効率良く、コードされた抗原に対する免疫応答を惹起するという驚くべき観察結果に基づいて予想される。このことは、これらのアデノウイルスベクターが別の経路で細胞に入ることを示唆する。2つ以上の亜群Cアデノウイルス外被タンパク質は、細胞表面への付着を媒介すると信じられている(例えば、ファイバーおよびペントンベース)。亜群Cアデノウイルスは、コクサッキーウイルスおよびアデノウイルスレセプター(CAR)へのアデノウイルスファイバータンパク質の結合、ならびに細胞表面に位置するインテグリンへのペントンタンパク質の結合により細胞に形質導入する。亜群Cアデノウイルスはまた、主要組織適合性複合体−I(MHC−I)α2ドメインならびにファイバータンパク質のノブ領域およびシャフト領域によりヘパリン硫酸グリコサミノグリカンとそれぞれ結合することができる(例えば、Hong et al., EMBO J., 16, 2294-2306 (1997)およびDechecchi et al., J. Virol., 75, 8772-8780 (2001)参照)。
【0025】
したがって、本発明の方法において、細胞表面レセプターへのアデノウイルス外被タンパク質の天然の結合は妨げられない。詳しくは、アデノウイルスベクターは天然のコクサッキーウイルスおよびアデノウイルスレセプター(CAR)結合部位が破壊された亜群Cファイバータンパク質、ならびに天然のインテグリン結合部位が破壊された亜群Cペントンベースタンパク質を含む。「亜群C」ファイバータンパク質およびペントンベースタンパク質は、ファイバーおよびペントンベースアミノ酸配列の少なくとも約75%(例えば、約85%、約95%、または約100%)が亜群Cアデノウイルスに由来することを意味する。好ましくは亜群Cファイバータンパク質およびペントンベースタンパク質はそれぞれ少なくとも約90%(例えば、約95%、約99%、または約100%)が亜群Cアデノウイルスに由来するアミノ酸配列を含む。最も好ましくは、亜群Cファイバータンパク質およびペントンベースタンパク質はそれぞれ少なくとも約100%が亜群Cアデノウイルス由来であるアミノ酸配列を含む。
【0026】
宿主細胞に対する天然の結合(例えば、CARへの結合)を変化させるいかなる適切な技術も供され得る。例えば、異なるファイバー長は細胞への天然の結合を解除するように利用することができる。これはペントンベースまたはファイバーノブに対する結合配列の追加により、随意に達成することができる。結合配列の当該追加は、二重特異的または多重特異的結合配列により直接的または間接的に行われることができる。代わりの実施態様において、アデノウイルスファイバータンパク質はファイバーシャフト中のアミノ酸の数を減少するように改変することができ、それによって「短シャフト化」ファイバーを生み出す(例えば、米国特許5,962,311に記載のように)。
【0027】
さらに別の実施態様において、変異した核酸残基を組み込んだ(またはそれによりコードされたファイバータンパク質を有する)アデノウイルスベクターがその天然の基質に結合する能力を低下させるように、天然の基質結合に関連するアミノ酸残基をコードする核酸残基の変換、追加、または欠失が可能である(例えば、国際特許出願公開WO 00/15823;Einfeld et al., J. Virol., 75(23), 11284-11291 (2001);およびvan Beusechem et al., J. Virol., 76(6), 2753-2762 (2002)参照)。この点において、アデノウイルスベクターの天然のCARおよびインテグリン結合部位(例えばアデノウイルスファイバータンパク質のノブドメインおよびアデノウイルスペントンベースに位置するArg−Gly−Asp(RGD)配列など)はそれぞれ、除去または破壊され得る。ファイバータンパク質が三量体化されることができる限り、ノブとCARとの間の相互作用を媒介または援助する亜群Cファイバータンパク質のいかなる適切なアミノ酸残基(残基類)も変異または除去され得る。同様に、ファイバータンパク質が三量体化する能力を保持する限り、アミノ酸をファイバーノブに付加し得る。適切な残基は、血清型5ファイバーノブドメインの外側に曝されたループ(例えばABループ、DEループ、およびFGループ)内にアミノ酸を含む(例えば、Roelvink et al., Science, 286, 1568-1571 (1999)、および米国特許6,455,314にさらに記載されている)。ペントンベースとインテグリンとの相互作用において媒介または援助する亜群Cペントンベースタンパク質のいかなる適切なアミノ酸残基(残基類)も変異または除去され得る。例えば、適切な残基はAd5ペントンベースタンパク質の超可変領域に位置する5つのRGDアミノ酸配列モチーフの1つ以上を含む(例えば、米国特許5,731,190に記載)。亜群Cペントンベースタンパク質の天然のインテグリン結合部位はまた、天然のRGDアミノ酸配列がαインテグリンレセプターと結合するために立体構造的に近づけないように天然のRGDモチーフをコードする核酸配列を改変することによっても破壊され得る(例えば、アデノウイルスペントンベースタンパク質をコードする核酸配列内にまたは隣接させてDNA配列を挿入することによる)。好ましくは、アデノウイルスベクターは、それぞれCARおよびインテグリンに結合しない亜群Cファイバータンパク質および亜群Cペントンベースタンパク質を含む。あるいは、アデノウイルスベクターは、それぞれCARおよびインテグリンと結合するが、対応する野生型亜群C外被タンパク質よりも低いアフィニティで結合する亜群Cファイバータンパク質および亜群Cペントンベースタンパク質を含む。もし改変されたアデノウイルスファイバータンパク質およびペントンベースタンパク質が同じ血清型の無改変アデノウイルスファイバータンパク質およびペントンベースタンパク質よりも少なくとも約5倍、10倍、20倍、30倍、50倍、または100倍低いアフィニティでCARおよびインテグリンとそれぞれ結合するならば、アデノウイルスベクターはCARおよびインテグリンへの結合低下を示す。
【0028】
細胞表面レセプターへのアデノウイルス外被タンパク質の天然の結合を破壊することは、自然または獲得宿主免疫システムと相互作用することがあまりできないようにもし得る。既存の免疫はさておき、アデノウイルスベクター投与は炎症を誘導し、自然免疫および獲得免疫のメカニズムの両方を活性化させる。アデノウイルスベクターは、ベクターの初期投与後に導入遺伝子の発現の期間を限定する抗原特異的(例えば、T細胞依存的)免疫応答を活性化する。さらに、アデノウイルスベクターに曝されることが、アデノウイルスベクターのその後の投与量から遺伝子発現を妨げ得るB細胞による中和抗体の産生を刺激する(Wilson & Kay, Nat. Med., 3(9), 887-889 (1995))。実際、ベクターの反復投与の効果は宿主の免疫によって厳しく限定され得る。体液性免疫の刺激に加えて、細胞媒介免疫機能が生体からのウイルスのクリアランスに関与している。ウイルスの急速なクリアランスは自然免疫メカニズムが貢献し(例えば、Worgall et al., Human Gene Therapy, 8, 37-44 (1997)参照)、肝臓中で見られるクッパー細胞が関与しているようである。したがって、天然の結合が除かれた亜群Cファイバータンパク質および亜群Cペントンベースタンパク質を含むアデノウイルスベクターは、望ましくは宿主の免疫システムにより認識されず、それにより、Ad5に対する既存の免疫を克服し、宿主によるベクターの寛容性が増す。
【0029】
アデノウイルスベクターはまた、基質(すなわち、リガンド)に結合する非天然のアミノ酸配列を含有するキメラ外被タンパク質も含み得る(例えば、CAR、αインテグリンレセプター以外の細胞性レセプター)。本発明の方法はアデノウイルスベクターを、天然の細胞表面レセプターと結合する能力を保持する対応するアデノウイルスによって自然感染しない宿主細胞に結合し、望ましくは感染させることができるので、本発明の方法は選択的に標的細胞に結合する非天然のアミノ酸配列を含有する「標的化」アデノウイルスベクターの使用に特に適している。それにより、アデノウイルスベクターに感染した細胞型のレパートリーがさらに広がる。キメラアデノウイルス外被タンパク質の非天然アミノ酸配列は、天然の結合を保持する亜群Cファイバータンパク質およびペントンベースタンパク質を含むアデノウイルスベクターまたは非天然アミノ酸配列を持たない対応するアデノウイルスのいずれかによって自然感染しない宿主細胞にキメラ外被タンパク質を含むアデノウイルスベクターが結合し、望ましくは感染することを可能にし(すなわち、宿主細胞は対応する野生型アデノウイルスによって感染しない)、非天然アミノ酸配列を持たない対応するアデノウイルスよりも強いアフィニティで対応するアデノウイルスに自然感染する宿主細胞に結合することを可能にし、または標的でない細胞よりも強いアフィニティで特定の標的細胞に結合することを可能にする。「非天然の」アミノ酸配列は、アデノウイルス外被タンパク質中に自然には存在しないアミノ酸配列、またはアデノウイルス外被中には見られるがキャプシド内の非天然の位置に存在しているアミノ酸配列を含み得る。「選択的に結合する」とは、非天然のアミノ酸配列があるレセプター(例えば、αvβ3インテグリン)に対して、非天然のリガンドが別のレセプター(例えば、αvβ1インテグリン)に結合するよりも少なくとも約3倍の強いアフィニティ(例えば、少なくとも約5倍、10倍、15倍、20倍、25倍、35倍、45倍、または50倍強いアフィニティ)で結合することを意味する。
【0030】
望ましくは、アデノウイルスベクターは、野生型アデノウイルス外被タンパク質よりも効率よく免疫細胞に結合する能力をキメラ外被タンパク質に与える非天然のアミノ酸配列を含むキメラ外被タンパク質を含んでいる。詳しくは、アデノウイルスベクターは、非天然のアミノ酸配列を含むキメラアデノウイルスファイバータンパク質を含み得、該アミノ酸配列は免疫細胞による、好ましくは抗原提示細胞(例えば、樹状細胞、単球、およびマクロファージ)によるアデノウイルスベクターの取込みを促進する。好ましい実施態様において、アデノウイルスベクターは、CRGDC(配列番号1)、CXCRGDCXC(配列番号2)(ここでXは任意のアミノ酸を意味する)およびCDCRGDCFC(配列番号3)を含むが、これに限定されないRGDモチーフを含むアミノ酸配列(例えば、非天然のアミノ酸配列)を含むキメラファイバータンパク質を含み、該ファイバータンパク質は樹状細胞へのアデノウイルスベクターの形質導入効率を高める。RGDモチーフ、またはいかなる非天然のアミノ酸配列リガンドも、好ましくはアデノウイルスファイバーノブ領域、理想的にはアデノウイルスノブの外側に曝されたループ(例えば、HIループ)に挿入される。非天然のアミノ酸配列はまた、アデノウイルスファイバータンパク質のC末端に(随意にスペーサー配列を介して)付加され得る。スペーサー配列は好ましくは100から200の間のアミノ酸を含み、意図した機能をもち得る(が、必ずしも必要ではない)。
【0031】
樹状細胞が所望の標的細胞である場合、非天然のアミノ酸配列は典型的に樹状細胞表面に見られるタンパク質(例えば、接着タンパク質、ケモカインレセプター、補体レセプター、共刺激タンパク質、サイトカインレセプター、高レベル抗原提示分子、ホーミングタンパク質、マーカータンパク質、抗原取り込みレセプター、シグナル伝達タンパク質、ウイルスレセプターなど)を認識してもよい。樹状細胞でのかかる潜在的なリガンド結合部位の例は、αβインテグリン、αβインテグリン、2A1、7−TMレセプター、CD1、CD11a、CD11b、CD11c、CD21、CD24、CD32、CD4、CD40、CD44変異体、CD46、CD49d、CD50、CD54、CD58、CD64、ASGPR、CD80、CD83、CD86、E−カドヘリン、インテグリン、M342、MHC−I、MHC−II、MIDC−8、MMR、OX62、p200−MR6、p55、S100、TNF−Rなどを含む。樹状細胞が標的にされている場合、リガンドが好ましくはCD40細胞表面タンパク質を認識する(例えば、CD40に(二重)特異的な抗体断片により、またはCD40Lポリペプチド由来のドメインによる)。
【0032】
マクロファージが所望の標的である場合、非天然のアミノ酸配列が典型的にマクロファージの細胞表面で見られるタンパク質(例えば、ホスファチジルセリンレセプター、ビトロネクチンレセプター、インテグリン、接着レセプター、シグナル伝達および/または炎症に関与するレセプター、マーカー、サイトカインを誘導するレセプター、または病原体によるチャレンジでアップレギュレートされるレセプター、B群スカベンジャーレセプターのシステインリッチ(SRCR)スーパーファミリーのメンバー、シアル酸結合レセプター、Fcレセプターファミリーのメンバー、B7−1およびB7−2表面分子、リンパ球レセプター、白血球レセプター、抗原提示分子、など)を認識してもよい。適切なマクロファージ表面の標的タンパク質の例は、ヘパリン硫酸プロテオグリカン、αβインテグリン、αβインテグリン、B7−1、B7−2、CD11c、CD13、CD16、CD163、CD1a、CD22、CD23、CD29、Cd32、CD33、CD36、CD44、CD45、CD49e、CD52、CD53、CD54、CD71、CD87、CD9、CD98、Igレセプター、Fcレセプタータンパク質(例えば、Fcα、Fcγ、Fcεのサブタイプなど)、葉酸レセプターb、HLAクラスI、シアロアドヘリン、siglec−5、ならびにトールライクレセプター−2(TLR2)を含むが、これに限定されない。
【0033】
B細胞が所望の標的である場合、リガンドがB細胞表面に典型的に見られるタンパク質(例えばインテグリンおよび他の接着分子、補体レセプター、インターロイキンレセプター、食細胞レセプター、免疫グロブリンレセプター、活性マーカー、トランスフェリンレセプター、スカベンジャーレセプターのシステインリッチ(SRCR)スーパーファミリーのメンバー、成長因子レセプター、セレクチン、MHC分子、TNF−レセプター、ならびにTNF−R関連因子)を認識することが可能である。典型的なB細胞表面タンパク質の例は、β−グリカン、B細胞抗原レセプター(BAC)、B7−2、B細胞レセプター(BCR)、C3dレセプター、CD1、CD18、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD35、CD40、CD5、CD6、CD69、CD69、CD71、CD79a/CD79b二量体、CD95、エンドグリン、Fas抗原、ヒトIgレセプター、Fcレセプタータンパク質(例えば、Fca、Fcg、Fcεのサブタイプなど)、IgM、gp200−MR6、成長ホルモンレセプター(GH−R)、ICAM−1、ILT2、CD85、MHCクラスIおよびII分子、トランスフォーミング成長因子レセプター(TGF−R)、αβインテグリン、ならびにαβインテグリンを含む。
【0034】
別の実施態様において、アデノウイルスベクターは、真核細胞の特異的なタイプを選択しないキメラウイルス外被タンパク質を含み得る。キメラ外被タンパク質は、内部外被タンパク質配列の中にもしくは代わりに非天然のアミノ酸配列を挿入することで、または外被タンパク質のN末端もしくはC末端に非天然のアミノ酸配列が付着することで、野生型の外被タンパク質とは異なる。例えば、約5から約9のリジン残基(好ましくは7リジン残基)を含むリガンドを、機能をもたないスペーサー配列を介してアデノウイルスファイバータンパク質のC末端に付着させる。この実施態様において、キメラウイルス外被タンパク質は野生型のウイルス外被よりも幅広い範囲の真核細胞に効率的に結合する(例えば、米国特許6,465,253および国際特許出願公開WO 97/20051に記載)。かかるアデノウイルスベクターは抗原の幅広い産生を確実にし得る。
【0035】
潜在的な宿主細胞を認識するアデノウイルスベクターの能力は、外被タンパク質の遺伝的操作なしに(すなわち、二重特異性分子の使用を通じて)改変することができる。例えば、アデノウイルスとペントンベース結合ドメインおよび特定の細胞表面結合部位に選択的に結合するドメインを含む二重特異性分子とを複合体にすることが、特定の細胞型に対するアデノウイルスベクターのターゲッティングを可能にする。同じように、非遺伝的手段により、抗原をアデノウイルス粒子の表面に結合することができる。
【0036】
非天然のアミノ酸配列は、キメラアデノウイルス外被タンパク質を形成するアデノウイルス外被タンパク質に結合可能である。それゆえ、例えば、非天然のアミノ酸配列をファイバータンパク質、ペントンベースタンパク質、ヘキソンタンパク質、タンパク質IX、VI、またはIIIaなどと結合、挿入、または付加することができる。かかるタンパク質の配列および組換えタンパク質中で該タンパク質を用いる方法は当該分野でよく知られている(例えば、米国特許5,543,328;5,559,099;5,712,136;5,731,190;5,756,086;5,770,442;5,846,782;5,962,311;5,965,541;5,846,782;6,057,155;6,127,525;6,153,435;6,329,190;6,455,314;6,465,253;6,576,456;6,649,407;6,740,525、ならびに国際特許出願公開WO 96/07734、WO 96/26281、WO 97/20051、WO 98/07877、WO 98/07865、WO 98/40509、WO 98/54346、WO 00/15823、WO 01/58940、およびWO 01/92549参照)。キメラアデノウイルス外被タンパク質は当該分野で知られた標準的な組換えDNA技術を使用して産出することができる。好ましくは、キメラアデノウイルス外被タンパク質をコードする核酸配列は、アデノウイルスゲノム中に位置し、かつ野生型アデノウイルスにおいて外被タンパク質の発現を制御するプロモーターに機能可能に連結される。あるいは、キメラアデノウイルス外被タンパク質をコードする核酸配列は、アデノウイルスゲノム中に位置し、かつキメラ外被タンパク質の効率的発現に必要とされる遺伝的エレメントを含む発現カセットの一部である。
【0037】
キメラアデノウイルス外被タンパク質の外被タンパク質部分は、リガンドドメインが付加された完全長のアデノウイルス外被タンパク質であってもよく、例えば、内部で、またはN末端および/またはC末端で切り取られていてもよい。非天然アミノ酸の存在を含む修飾がなされているが、キメラ外被タンパク質は、好ましくはアデノウイルスカプシド中に組み込まれ得る。非天然のアミノ酸配列がファイバータンパク質に付加される場合、好ましくは該アミノ酸配列は、ウイルスのタンパク質間またはファイバー単量体間の相互作用を邪魔しない。したがって、非天然のアミノ酸配列は好ましくは、それ自体オリゴマー化ドメイン(例えば、アデノウイルスファイバーの三量体化ドメインに逆の相互作用が可能な)ではない。好ましくは、非天然のアミノ酸配列は、ビリオン(ウイルス粒子)タンパク質に付加され、基質、細胞表面レセプターまたは免疫細胞に容易に曝されるような様式で(例えば、アデノウイルスタンパク質のNまたはC末端で、基質に面する残基に付加されて、ペプチドスペーサー上に位置して)取り込まれ、非天然アミノ酸配列が最大限に曝される。理想的には、非天然のアミノ酸配列は、ファイバータンパク質のC末端でアデノウイルスファイバータンパク質中に組み込まれ(およびスペーサーを介して付加され)、またはファイバーの曝露されたループ(例えばHIループ)中に組み込まれ、キメラ外被タンパク質を生じる。非天然のアミノ酸配列がペントンベースの部分に付加または置換される場合、好ましくは該アミノ酸配列は基質と接触することを確実にするための超可変領域内にある。非天然のアミノ酸配列がヘキソンに付加される場合、好ましくは該アミノ酸配列は超可変領域内にある(Miksza et al., J. Virol., 70(3), 1836-44 (1996))。非天然のアミノ酸がpIXの部分に付加または置換される場合、好ましくは該アミノ酸配列はpIXのC末端内にある。アデノウイルス粒子の表面から離れて非天然アミノ酸配列を伸張させるためにスペーサー配列を用いることは、非天然アミノ酸配列をレセプターに結合させるのにより利用可能である点、および非天然アミノ酸とアデノウイルスファイバーモノマーとの間のいかなる立体的相互作用も低下させ得るという点で有利であり得る。
【0038】
細胞性レセプターに対する非天然のアミノ酸配列の結合アフィニティは、いかなる適切なアッセイによっても決定され得る。多くの該アッセイは既知であり、かつアデノウイルス外被タンパク質中に組み込まれる非天然のアミノ酸配列を選択するのに有用である。望ましくは、宿主細胞の形質導入レベルは相対的結合効率の決定に利用される。したがって、例えば、細胞表面上にαvβ3インテグリンを提示している宿主細胞(例えば、MDAMB435細胞)が、キメラ外被タンパク質および非天然のアミノ酸配列を持たない対応するアデノウイルスを含むアデノウイルスベクターに曝露され得る。そして、その後、形質導入効率を比較して相対的結合アフィニティを決定し得る。同様に、細胞表面にαvβ3インテグリンを提示している宿主細胞(例えば、MDAMB435細胞)および細胞表面に主にαvβ1を提示している宿主細胞(例えば、293細胞)の両方がキメラ外被タンパク質を含むアデノウイルスベクターに曝露され得、その後、形質導入効率を比較して結合アフィニティを決定し得る。
【0039】
別の実施態様において(例えば、特異的に操作された細胞型中での精製または増殖を促進するための)、非天然のアミノ酸(例えば、リガンド)は細胞表面のタンパク質以外の化合物と結合することができる。したがって、リガンドは、血液および/またはリンパ球由来タンパク質(例えば、アルブミン)、ポリアミノ酸のような合成ペプチド配列(例えば、ポリリジン、ポリヒスチジンなど)、人工ペプチド配列(例えば、FLAG)、ならびにRGDペプチド断片と結合することができる(Pasqualini et al., J. Cell. Biol., 130, 1189 (1995))。リガンドは非ペプチド基質(例えば、プラスチック(例えば、Adey et al., Gene, 156, 27 (1995))、ビオチン(Saggio et al., Biochem. J., 293, 613 (1993))、DNA配列(Cheng et al., Gene, 171, 1 (1996); Krook et al., Biochem. Biophys., Res. Commun., 204, 849 (1994))、ストレプトアビジン(Geibel et al., Biochemistry, 34, 15430 (1995); Katz, Biochemistry, 34, 15421 (1995))、ニトロストレプトアビジン(Balass et al., Anal, Biochem., 243, 264 (1996))、ヘパリン(Wickham et al., Nature Biotechnol., 14, 1570-73 (1996))、または他の潜在的な基質)にさえも結合可能である。
【0040】
アデノウイルスベクターに対する適切な改変は、米国特許5,543,328;5,559,099;5,712,136;5,731,190;5,756,086;5,770,442;5,846,782;5,871,727;5,885,808;5,922,315;5,962,311;5,965,541;6,057,155;6,127,525;6,153,435;6,329,190;6,455,314;6,465,253;6,576,456;6,649,407;および6,740,525;米国特許出願公開2001/0047081 A1、2002/0099024 A1、2002/0151027 A1、2003/0022355 A1、および2003/0099619 A1、ならびに国際特許出願WO 96/07734、WO 96/26281、WO 97/20051、WO 98/07865、WO 98/07877、WO 98/40509、WO 98/54346、WO 00/15823、WO 01/58940、およびWO 01/92549に記載されている。
【0041】
本発明のアデノウイルスベクターは、哺乳動物で発現して免疫応答を誘導する抗原をコードする核酸配列を含む。哺乳動物において、「抗原」は免疫応答の引き金になる分子である。「免疫応答」は、例えば、抗体産生および/または免疫エフェクター細胞の活性化を伴い得る。本発明における抗原は、いかなるタンパク性分子(ウイルス起源、細菌起源、寄生虫起源、真菌起源、原生動物起源、プリオン起源、細胞起源、もしくは細胞外起源のタンパク質またはペプチドを含む)のいかなるサブユニットも含み得、該分子は理想的には哺乳動物で免疫応答を誘発し、好ましくは保護免疫を導く。抗原は自己抗原、すなわち外来の侵入者であるかのように生体が反応する自己のタンパク質でもあり得る。
【0042】
抗原はいかなる適切な感染性因子から任意に由来、入手、または基づいてもよい。「感染性因子」は動物に、好ましくはヒトに病気を引き起こすいかなる微生物も意味する。抗原はある源から単離された場合、源に「由来」し、いかなる適切な方法でも(例えば、欠失、置換(突然変異)、または配列への他の修飾により)改変され得る。その源から単離される場合、抗原は源から「得られる」。抗原が源の抗原と高い相同性を有するが合成の手法(例えば、ポリヌクレオチド合成、定方向進化など)によって得られる場合、抗原は源に「基づく」。適切な感染因子は、例えば、ウイルス、バクテリア、真菌、および原生動物、およびその遺伝子産物の一部を含む。最も好ましくは、抗原がアデノウイルス以外の感染性因子に由来する。抗原をコードする核酸配列は、核酸配列のタイプまたはいかなる特定の起源にも限定されない。核酸配列は任意に組換えDNAであり得、ゲノムDNAであり得、または潜在的抗原エピトープのDNAライブラリーから得ることができる。
【0043】
1つの実施態様では、抗原はウイルスの抗原である。ウイルス抗原は以下のウイルスファミリーのいずれかのウイルスを含むいずれのウイルスからも単離できるが、これに限定されない。該ウイルスは、アレナウイルス科、アルテリウイルス属、アストロウイルス科、バキュロウイルス科、バドナウイルス属、バルナウイルス科、ビルナウイルス科、ブロモウイルス科、ブニヤウイルス科、カルシウイルス科、カピロウイルス属、カーラウイルス属、カリモウイルス属、サーコウイルス科、クロステロウイルス属、コモウイルス科、コロナウイルス科(例えば、重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルスのようなコロナウイルス)、コルチコウイルス科、シストウイルス科、デルタウイルス属、ダイアントウイルス属、エナモウイルス属、フィロウイルス科(例えば、マールブルグウイルスおよびエボラウイルス(例えば、ザイール、レストン、アイボリーコースト、またはスーダン系統))、フラビウイルス科、(例えば、C型肝炎ウイルス、デング熱ウイルス1、デング熱ウイルス2、デング熱ウイルス3、およびデング熱ウイルス4)、ヘパドナウイルス科(例えば、B型肝炎ウイルス)、ヘルペスウイルス科(例えば、ヒトヘルペスウイルス1、3、4、5、および6、ならびにサイトメガロウイルス)、ハイポウイルス科、イリドウイルス科、レビウイルス科、リポスリクスウイルス科、ミクロウイルス科、オルトミクソウイルス科(例えば、A型およびB型インフルエンザウイルス)、パポバウイルス科、パラミクソウイルス科(例えば、麻疹、ムンプスおよびヒトRSウイルス)、パルボウイルス科、ピコルナウイルス科(例えば、エンテロウイルス、ポリオウイルス、ライノウイルス、ヘパトウイルスおよびアフトウイルス)、プラスモディウム科(例えば、熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫および四日熱マラリア原虫)、ポックスウイルス科(例えば、ワクシニアウイルス)、レオウイルス科(例えば、ロタウイルス)、レトロウイルス科(例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)1およびHIV2のようなレンチウイルス)、ラブドウイルス科、およびトティウイルス科である。好ましくは、本発明の方法の少なくとも1つの抗原がレトロウイルスの抗原である。レトロウイルス抗原は、例えば、gag、env、またはpolタンパク質の全部または一部などのHIV抗原であり得る。HIVのいかなるクレード(クレード A、B、C、MNなどを含む)も抗原選択に適合する。同様に好ましくは、アデノウイルスベクターによりコードされる少なくとも1つの抗原は、SARSウイルス抗原のようなコロナウイルス抗原である。本発明の方法に適したSARSウイルス抗原は、例えば、SARSウイルスのEタンパク質、Mタンパク質、およびスパイクタンパク質の全部または一部を含む。また、適したウイルス抗原はデング熱Mタンパク質、デング熱Eタンパク質、デング熱D1NS1、デング熱D1NS2、およびデング熱D1NS3の全部または一部も含む。本明細書中で具体的に列挙される抗原性のペプチドは、本発明において使用され得るあらゆるウイルスタンパク質の単なる例示である。
【0044】
抗原は寄生虫抗原(例えば胞子虫抗原であるが、これに限られない)であり得る。例えば、核酸配列はマラリア原虫抗原(例えば、スポロゾイト周囲タンパク質、スポロゾイト表面タンパク質、liver stage抗原、頂端膜関連タンパク質、もしくはメロゾイト表面タンパク質の全部または一部)をコードし得る。
【0045】
あるいは、または追加して、アデノウイルスベクターにコードされた少なくとも1つの抗原はバクテリアの抗原である。該抗原は以下のいかなるバクテリアに起源することもできるが、これに限られない。該バクテリアとは、アクチノミセス属、アナベナ属、バシラス属、バクテロイデス属、ブデロビブリオ属、カウロバクター属、クラミジア属、クロロビウム科、クロマチウム属、クロストリジウム属、サイトファーガ属、デイノコックス属、エシェリキア属、好塩菌属、ヘリコバクター属(Heliobacter)、ヒポミクロビウム属、メタン細菌属、ミクロコッカス属、ミオバクテリウム属(Myobacterium)、マイコプラズマ属、ミクソコッカス属、ナイセリア属、硝酸菌属、ユレモ属、プロクロロン属、プロテウス属、シュードモナス属、ロドスピリラム属(Phodospirillum)、リケッチア属、サルモネラ属、シゲラ属、スピリルム属、スピロヘータ属、スタフィロコッカス属、連鎖球菌属、ストレプトミセス属、スルホロブス属、サーモプラズマ属、硫黄菌属、およびトリポネーマ属である。好ましい実施態様において、核酸配列にコードされた少なくとも1つの抗原はシュードモナス属抗原またはヘリコバクター属抗原である。
【0046】
全体の無傷のウイルス性またはバクテリア性タンパク質は、免疫応答を生じるために必要ではないということは、高く評価されるであろう。実際、最も抗原性のあるエピトープは相対的に小さいサイズであり、かつ、それゆえ、タンパク質断片は哺乳動物の免疫システムへの曝露に供され得る。さらに、融合タンパク質は1つ以上の抗原の2つ以上の抗原エピトープ間で産生され得る。例えば、HIVエンベロープ、gp120、もしくはgp160の全部または一部を、HIV polタンパク質の全部または一部に融合し、1つのエピトープにより生じたものと比較して、HIV病原体に対するより完全な免疫応答を生じる。哺乳動物へのアデノウイルスベクターによる融合タンパク質の送達は、多数の抗原に対する免疫システムの曝露を許し、それゆえに、1つのワクチン化合物が多数の病原体または1つの病原体の多数のエピトープに対する免疫を提供することを可能にする。
【0047】
抗原をコードする核酸は、望ましくは発現カセットの一部として存在する。すなわち、該核酸は核酸配列のサブクローニングおよび回収を促進する機能(例えば、1つ以上の制限部位)、または核酸配列の発現を促進する機能(例えば、ポリアデニル化またはスプライス部位)を有する特定のヌクレオチド配列である。核酸は好ましくはアデノウイルスゲノムのE1領域(例えば、全部または一部のE1領域を置換する)またはE4領域に位置する。例えば、E1領域は抗原をコードする核酸を含むプロモーター可変発現カセットに置換され得る。発現カセットは3’−5’方向(例えば、発現カセットの転写の向きが周囲の隣接するアデノウイルスゲノムとは反対方向であるように方向付ける)に随意に挿入され得る。しかしながら、周囲のゲノムの転写の向きに関して発現カセットが5’−3’方向に挿入されることも適切である。抗原をコードする核酸を含む発現カセットに加えて、アデノウイルスベクターは他の外来核酸を含む他の発現カセットも含み得る。該カセットはアデノウイルスゲノムの欠失領域のいずれも置換し得る。アデノウイルスゲノム中への(例えば、ゲノムのE1領域中への)発現カセットの挿入は、既知の方法により(例えば、アデノウイルスゲノムの任意の位置で唯一の制限部位を導入することにより)促進され得る。上記のように、好ましくは、アデノウイルスベクターのE3領域の全部または一部が同様に欠失させられる。
【0048】
好ましくは、核酸は1つ以上のプロモーターおよび/またはエンハンサーエレメント(例えば、プロモーター可変発現カセットの一部として)と操作可能に(すなわち、転写の制御下で)連結されている。配列を一緒に機能可能に連結する技術は当業者によく知られている。「プロモーター」はRNAポリメラーゼの結合を指向させ、それによりRNA合成を促進するDNA配列である。プロモーターが核酸配列の転写を指向可能な場合、核酸配列はプロモーターに「機能可能に連結」している。プロモーターは、機能可能に連結する核酸配列に対して天然または非天然であってもよい。
【0049】
本発明に関して、いかなるプロモーターも(すなわち、自然から単離されるか組換えDNAまたは合成技術によって産生されるかに関わらず)、核酸配列の転写を提供するために使用され得る。該プロモーターは好ましくは真核(望ましくは哺乳動物)細胞中で転写指向可能である。プロモーターの機能は、ベクター上に存在する1つ以上のエンハンサーおよび/またはサイレンサーの存在によって変化され得る。「エンハンサー」は隣接する遺伝子の転写を刺激または抑制するDNAのシス作用エレメントである。転写を抑制するエンハンサーも「サイレンサー」と呼ばれる。エンハンサーは、エンハンサーがいずれの向きでも、および転写領域の下流の位置から数キロ塩基対(kb)までの距離を超えても機能し得るものであるという点で、プロモーターにおいてだけ見られる配列特異的DNA結合タンパク質に対するDNA結合部位(「プロモーターエレメント」とも呼ばれる)とは異なる。
【0050】
プロモーター領域は長さおよび配列が可変であり、かつ配列特異的DNA結合タンパク質および/またはエンハンサーもしくはサイレンサーに対して1つ以上のDNA結合部位をさらに包含することが可能である。エンハンサーおよび/またはサイレンサーは同様にプロモーター自体の外側の核酸配列上に存在し得る。望ましくは、細胞のまたはウイルスのエンハンサー(例えば、サイトメガロウイルス(CMV)即時型初期エンハンサーなど)は、プロモーターの活性を高めるためのプロモーターの近くに位置される。さらに、スプライスアクセプターおよびドナー部位は転写を高めるため、核酸配列上に存在し得る。
【0051】
いかなる適切なプロモーターまたはエンハンサー配列も、本発明の状況において使用され得る。この点に関して、抗原コード核酸配列はウイルスのプロモーターと機能可能に連結し得る。適切なウイルスのプロモーターは、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(例えばCMV即時型初期プロモーター(例えば、米国特許5,168,062および5,385,839記載))、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)由来のプロモーター(例えばHIV LTRプロモーター)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター(例えばRSV LTR)、マウス乳癌ウイルス(MMTV)プロモーター、HSVプロモーター(例えばLap2プロモーターまたはヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagner et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 78, 144-145 (1981)))、SV40またはエプスタインバーウイルス由来のプロモーター、アデノ随伴ウイルスのプロモーター(例えばp5プロモーター)、などを含む。
【0052】
あるいは、本発明は細胞性プロモーター、すなわち細胞性タンパク質の発現を促進するプロモーターを供する。本発明で使用される好ましい細胞性プロモーターは、該抗原(複数の抗原)を産生する所望の発現特性によるであろう。1つの局面では、細胞性プロモーターは好ましくは多様な細胞タイプ(例えば、本明細書に記載の免疫細胞など)で働く構成的プロモーターである。適切な構成的プロモーターは、真核細胞に共通する転写因子をコードする遺伝子、ハウスキーピング遺伝子、または構造遺伝子の発現を促進し得る。例えば、Ying Yang 1(YY1)転写因子(NMP−1、NF−E1、およびUCRBPとも称される)は、核マトリックスの本質的成分であるユビキタス核転写因子である(Guo et al., PNAS, 92, 10526-10530 (1995))。本明細書に記載のプロモーターは構成的プロモーターであると考えられるが、構成的プロモーターがアップレギュレートされ得ることは当業者に理解される。プロモーター解析は、プロモーター(ならびにTATAおよびCCAATボックスを含む)から転写開始部位に対して、基底転写に重要なエレメントがYY1遺伝子の−277から+475に存在することを示している。JEM−1(HGMWおよびBLZF−1としても知られる)も、正常または腫瘍組織で同定されたユビキタス核転写因子である(Tong et al., Leukemia, 12(11), 1733-1740 (1998)、およびTong et al., Genomics, 69(3), 380-390 (2000))。JEM−1は細胞成長の制御および成熟に関与し、かつレチノイン酸によりアップレギュレートされ得る。JEM−1プロモーターの最大活性に関わる配列は、プロモーターの転写開始部位に関してJEM−1遺伝子の−432から+101に位置した。YY1プロモーターとは異なり、JEM−1プロモーターはTATAボックスを含まない。ユビキチンプロモーター、特にUbCは、いくつかの種で機能する強力な構成的活性プロモーターである。UbCプロモーターはMarinovic et al., J. Biol. Chem., 277(19), 16673-16681 (2002)でさらに特徴付けられている。
【0053】
上記プロモーターの多くは、構成的プロモーターである。構成的プロモーターの代わりに、該プロモーターは制御可能なプロモーター(すなわち、適切なシグナルに応答してアップレギュレートおよび/またはダウンレギュレートするプロモーター)であり得る。調節可能なプロモーターまたは発現制御配列の使用は特に抗原性のタンパク質(ウイルスおよび寄生虫の抗原を含み、相補する細胞株にとって毒性であることが多い)としてDNAワクチンの開発に適用できる。1つの実施態様において、抗原コード核酸配列と機能可能に連結した調節配列は、テトラサイクリン発現システムの成分(例えば、tetオペレーター部位)を含む。例えば、抗原コード核酸配列は、1つ以上のtetオペレーター部位と機能可能に連結するプロモーターに機能可能に連結する。かかる発現カセットを含むアデノウイルスベクターは、相補細胞株(例えば、米国特許5,994,106および国際特許出願公開WO95/34671に記載の293−ORF6など)において増殖することができ、該細胞株はtetリプレッサータンパク質をコードする核酸配列を含む。相補細胞株においてtetリプレッサータンパク質を産生することにより、抗原産生は抑制され、かつ増殖はいかなる関連した抗原媒介細胞毒性もなしに進行する。適切な調節プロモーターシステムはまた、IL−8プロモーター、メタロチオネイン(metallothionine)誘導プロモーターシステム、バクテリアのlacZYA発現システム、およびT7ポリメラーゼシステムを含むが、これに限定されるものではない。さらに、異なる発達段階で選択的に活性化されるプロモーター(例えば、グロビン遺伝子は胚および成人でグロビン関連プロモーターから差次的に転写される)が供され得る。プロモーター配列は外来薬剤による調節に応答する少なくとも1つの調節配列を含み得る。調節配列は好ましくは外来薬剤(例えば、薬品、ホルモン、照射、または他の遺伝子産物)に応答するが、これに限定されるものではない。
【0054】
プロモーターは組織特異的プロモーター(すなわち、所定の組織で優先的に活性化し、活性化した組織で遺伝子産物の発現をもたらすプロモーター)であり得る。本発明での使用に適した組織特異的プロモーターは、当業者によって標的組織または細胞型に基づいて選択されることが可能である。本発明の方法において使用する際に好ましい組織特異的プロモーターは免疫細胞に対して特異的(例えば、Morita et al., Gene Ther., 8, 1729-37 (2001)に記載の樹状細胞特異的Dectin−2プロモーター)である。
【0055】
さらに別の実施態様において、プロモーターはキメラプロモーターであり得る。プロモーターは、少なくとも2つの異なる源(例えば、1つの生物のゲノムの2つの異なった領域、2つの異なった生物、または合成配列を組み合せた1つの生物)から得られ、由来し、あるいは基づく、少なくとも2つの核酸配列部分を含むという点で、「キメラ」である。好ましくは、2つの異なる核酸配列部分が約40%未満、より好ましくは約25%未満、更により好ましくは約10%未満の核酸配列の相互の同一性(本明細書の他の場所に記載された方法によって決定され得る)を示す。いかなる適切なキメラプロモーターも本発明の方法において使用され得る。好ましくは、キメラプロモーターがウイルスのプロモーターの機能的部分および細胞性プロモーターの機能的部分から構成される。より好ましくは、キメラプロモーターがウイルスプロモーターの機能的部分および照射によって誘導可能な細胞性プロモーターの機能的部分を含む。最も好ましくは、キメラプロモーターがCMVプロモーターの機能的部分およびEGR−1プロモーターの機能的部分(すなわち、キメラの「CMV/EGR−1」プロモーター)を含む。CMVプロモーターの機能的部分は、好ましくはヒトCMV由来、さらに詳しくはヒトCMV即時型初期(IE)プロモーター/エンハンサー領域由来である(例えば、米国特許5,168,062および5,385,839参照)。さらに、EGR−1プロモーターの機能的部分は好ましくはEGR−1プロモーターの1つ以上のCArGドメインを含む(例えば、米国特許6,579,522および6,605,712に記載のように)。本発明の特に好ましい実施態様において、キメラプロモーターはCMV IE エンハンサー/プロモーター領域および6つのCArGドメインを含むEGR−1プロモーターの機能的部分を含む。このようにして、CMV IE エンハンサー/プロモーター領域の部分は、EGR−1プロモーターに対するエンハンサーとして機能する。キメラプロモーターは、例えばSambrook et al., Molecular Cloning, a Laboratory Manual, 2d edition, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989)、およびAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates and John Wiley & Sons, New York, N.Y. (1994)に記載のような、標準的な分子生物学的技術を用いて産生することができる。
【0056】
本発明によると、「機能的部分」は、機能可能に連結した核酸の発現(典型的には転写)を測定可能に促進し、増強し、または制御するプロモーターのいかなる部分でもある。発現のかかる制御は、いかなる適切な技術によっても、当該分野で知られたいくつかの技術によっても、RNAまたはタンパク質検出により測定され得る。かかる技術の例は、ノーザン解析(例えば、Sambrook et al.,上述、ならびにMcMasterおよびCarmichael, PNAS, 74, 4835-4838 (1977)参照)、RT−PCR(例えば、米国特許5,601,820、およびZaheer et al., Neurochem Res., 20, 1457-1463 (1995)参照)、in situハイブリダイゼーション法(例えば、米国特許5,750,340および5,506,098参照)、抗体媒介技術(例えば、米国特許4,367,110、4,452,901、および6,054,467参照)、およびレポーター遺伝子(例えばルシフェラーゼ遺伝子など)システムを用いたプロモーターアッセイ(例えば、Taira et al., Gene, 263, 285-292 (2001)参照)を含む。一般的に、真核生物発現システムはさらにSambrook et al.、上述に記載されている。
【0057】
プロモーターは、抗原(複数の抗原)の発現の所望のパターンおよびレベルと活性の特定のパターンを一致させることにより、本発明の方法で使用することを選択できる。例えば、アデノウイルスベクターは異なる抗原をコードし、はっきりと異なる発現プロファイルを示す異なるプロモーターに機能可能に連結された2つ以上の核酸配列を含み得る。例えば、1つ目のプロモーターは抗原産生の最初のピークを媒介するために選択され、それによって、コードされた抗原に対する免疫システムをプライミングする。2つ目のプロモーターは、最初のプロモーターの後数日で発現がピークになるように同じまたは異なる抗原の産生を促すために選択され、それによって、抗原に対する免疫システムを「ブースティング」する。あるいは、多数のプロモーターの望ましい側面を結びつけるキメラプロモーターを構築し得る。例えば、CMVプロモーターの活性の最初の急な変化をRSVプロモーターの活性の高メンテナンスレベルに結びつけるCMV−RSVハイブリッドプロモーターは、本発明の方法の多くの実施態様で使用されることが特に好ましい。該抗原が真核細胞に対して毒性を有しうるということにおいて、アデノウイルスベクターを増殖するために使用される相補細胞株において活性を減少させるようにプロモーターを改変する利点があり得る。
【0058】
タンパク質の産生を最適化するために、好ましくは抗原をコードする核酸配列は抗原をコードする核酸配列のコード配列の後にポリアデニル化部位をさらに含む。合成最適化配列ならびにBGH(ウシ成長ホルモン)、ポリオーマウイルス、TK(チミジンキナーゼ)、EBV(エプスタインバーウイルス)、ならびにパピローマウイルス(ヒトパピローマウイルスおよびBPV(ウシパピローマウイルス)を含む)のポリアデニル化配列を含む適切なポリアデニル化配列はいずれも使用され得る。好ましいポリアデニル化配列はSV40(ヒト肉腫ウイルス−40)のポリアデニル化配列である。同様に、好ましくは、全ての適当な転写シグナル(および必要に応じて翻訳シグナル)は、核酸配列が導入された細胞内で適切に発現するように正しく配置される。所望ならば、mRNA産生を促進するために核酸配列はスプライス部位(すなわち、スプライスアクセプターおよびスプライスドナー部位)も組み込むことが可能である。
【0059】
もし抗原をコードする核酸配列が加工もしくは分泌タンパク質またはペプチド、あるいはその細胞内で作用するタンパク質をコードしていれば、好ましくは抗原をコードする核酸配列はプロセッシング、分泌、細胞内局在等のためにさらに適切な配列を含む。抗原をコードする核酸配列は、タンパク質を分泌する細胞性機構を標的にするシグナル配列と機能可能に連結し得る。適切なシグナル配列は免疫グロブリン重鎖およびサイトカインのリーダー配列を含むが、これに限定されるものではない(例えば、Ladunga, Current Opinions in Biotechnology, 11, 13-18 (2000))。他のタンパク質修飾は、宿主細胞からタンパク質を分泌するために必要であり得、これは日常的な実験技術を用いて決定可能である。例えば、抗原およびシグナル配列をコードする発現構築物を調製することは、米国特許6,500,641にさらに記載されている。非分泌タンパク質を分泌させる方法は、例えば米国特許6,472,176および国際特許出願公開WO 02/48377にさらに記載されている。
【0060】
アデノウイルスベクターの核酸配列がコードする抗原タンパク質はまた、宿主細胞表面の抗原に結合または組み込まれるように修飾され得る。この点で、細胞表面に結合するために、抗原はgpi−アンカーのような膜アンカーを含み得る。トランスメンブレンドメインは、抗原タンパク質の末端を細胞のメンブレン内に組み込むように抗原に融合され得る。細胞表面上にペプチドを提示する他の戦略は当該分野で知られており、本発明において適当に使用される。
【0061】
本発明の方法において、アデノウイルスベクターは、好ましくは哺乳動物(例えば、ヒト)に投与され、ここで、抗原をコードする核酸配列が発現し、抗原に対する免疫応答を誘導する。免疫応答は体液性の免疫応答、細胞媒介免疫応答、または望ましくは体液性および細胞媒介免疫の組合せであり得る。理想的には、免疫応答は、その後の抗原を含む感染性因子でのチャレンジに対して保護を提供する。しかしながら、保護免疫は本発明の状況では要求されない。本発明の方法はさらに抗体産生および収穫に使用可能である。
【0062】
抗原に対して生じた免疫応答を高めるために、哺乳動物に投与されるアデノウイルスベクターまたは別の遺伝子輸送ベクターは、免疫刺激因子(例えば、サイトカイン、ケモカイン、またはシャペロン)をコードする核酸配列を含み得る。サイトカインは、例えばマクロファージコロニー刺激因子(例えば、GM−CSF)、インターフェロンアルファ(IFN−α)、インターフェロンベータ(IFN−β)、インターフェロンガンマ(IFN−γ)、インターロイキン(IL−1、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−8、IL−10、IL−12、IL−13、IL−15、IL−16、およびIL−18)、TNFファミリータンパク質、細胞間接着分子−1(ICAM−1)、リンパ球機能関連抗原−3(LFA−3)、B7−1、B7−2、FMS−関連チロシンキナーゼ3リガンド、(Flt3L)、血管作動性腸管ペプチド(VIP)、およびCD40リガンドを含む。ケモカインは、例えば、B細胞誘引ケモカイン−1(BCA−1)、フラクタルカイン、メラノーマ成長刺激性活性タンパク質(MGSA)、血液濾過CCケモカイン1(HCC−1)、インターロイキン8(IL8)、インターフェロン刺激T細胞アルファ化学誘引物質(I−TAC)、リンホタクチン、単球遊走タンパク質1(MCP−1)、単球遊走タンパク質3(MCP−3)、単球遊走タンパク質4(MCP−4)、マクロファージ由来ケモカイン(MDC)、マクロファージ炎症性タンパク質(MIP)、血小板因子4(PF4)、RANTES、BRAK、エオタキシン、エクソダス1−3等を含む。シャペロンは、例えば、熱ショックタンパク質であるHsp170、Hsc70、Hsp40を含む。サイトカインおよびケモカインは一般的にInvivogen catalog (2002), San Diego, CAなどの記事に記載される。
【0063】
本発明は哺乳動物に対する多数のアデノウイルスベクター、各アデノウイルスベクターは、1つ以上の抗原および/または免疫調節剤をコードする1つ以上の核酸配列を含むベクターを投与することを含み得る。もしアデノウイルスベクターが1つ以上の抗原をコードする核酸配列を含んでいれば、2つ以上の核酸配列は同じプロモーター(例えば、バイシストロニックな配列を形成するため)に機能可能に連結され得、2つ以上の核酸配列は同じタイプの別々のプロモーター(例えば、CMVプロモーター)に機能可能に連結され得、2つ以上の核酸配列は別々の異なるプロモーター(例えば、CMVプロモーターおよびβ-アクチンプロモーター)に機能可能に連結し得る。多数のアデノウイルスベクターは異なる抗原、同じ抗原性のタンパク質の異なるエピトープ、微生物の異なった種またはクレード由来の同じ抗原性のタンパク質、異なった微生物由来の抗原等をコードする2つ以上のアデノウイルスベクター構築物を含み得る。ある実施態様において、同じ抗原の異なる抗原または異なるエピトープをコードするアデノウイルスベクターの「カクテル」を投与することが、哺乳動物に1つのアデノウイルスベクタークローンを投与するよりもより効果的な免疫応答を提供し得るということは評価されるであろう。
【0064】
同じように、抗原をコードするアデノウイルスベクターを投与することは、哺乳動物における免疫応答を誘導する多段階療法の1つの要素であり得る。特に、本発明の方法はプライムおよびブースト免疫療法の1つの部門を代表し得る。本発明の方法は、それゆえ、アデノウイルスベクターを投与するに先立ち、少なくとも1つの抗原をコードする核酸配列を含むプライミング遺伝子移入ベクターを哺乳動物に投与することを含み得る。プライミング遺伝子移入ベクターからコードされる抗原はアデノウイルスベクターの抗原と同じまたは異なるものであり得る。次いで、アデノウイルスベクターを、所定の病原体に対して免疫応答をブーストするように投与する。アデノウイルスベクターを含む1を越えるブースティング組成物は、免疫を維持するためにいかなる適切な時間内(例えば、プライミング後少なくとも約1週間、2週間、4週間、8週間、12週間、16週間、またはそれを越えて)でも提供され得る。
【0065】
いかなる遺伝子移入ベクターも、プライミング遺伝子移入ベクターとして供され得、該ベクターはプラスミド、レトロウイルス、アデノ随伴ウイルス、ワクシニアウイルス、ヘルペスウイルス、またはアデノウイルスを含むが、これに限定されない。理想的には、プライミング遺伝子移入ベクターは、プラスミドまたはアデノウイルスベクターである。あるいは、免疫応答を抗原それ自体(例えば、抗原性タンパク質、不活性化病原体等)の投与によってプライムまたはブーストされ得る。
【0066】
いかなる投与の経路もアデノウイルスベクターを哺乳動物に送達するために使用され得る。実際、アデノウイルスベクターを投与するために1を越える経路が使用され得るが、特定の経路が別の経路よりも、より迅速かつより有効な反応を提供し得る。好ましくは、アデノウイルスベクターは筋肉内注射によって投与される。アデノウイルスベクターの用量は、体腔内に適応させ、もしくは体腔内に染みこませ、皮膚を通して吸収され(例えば、経皮貼付による)、吸入され、口から摂取され、局所的に組織に適応され、または非経口的に投与される(例えば、静脈内、腹膜、または動脈内投与による)ことも可能である。
【0067】
アデノウイルスベクターは、制御放出または徐放を可能にするデバイスの中または表面において投与され得る(例えば、スポンジ、生体適合性の網目構造、機械的貯蔵容器、または機械的インプラント)。インプラント(例えば、米国特許5,443,505参照)、インプラント可能なデバイスのようなデバイス(例えば、米国特許4,863,457参照)、(例えば、重合体成分からなる、機械的貯蔵容器もしくはインプラントまたはデバイス)は、アデノウイルスベクターの投与に特に有用である。アデノウイルスベクターはまた、徐放性製剤(例えば、ゲルの形態、ヒアルロン酸、ゼラチン、コンドロイチン硫酸、ポリリン酸エステル(例えばビス−2−ヒドロキシエチル−テレフタレート(BHET)、および/またはポリ乳酸−グリコール酸)を含む)の形態で投与され得る(例えば、米国特許5,378,475参照)。
【0068】
哺乳動物に投与されるアデノウイルスベクターの用量は、(標的組織の大きさ、いかなる副作用の範囲、投与の特定経路等を含む)多数の要素に依存するだろう。用量は理想的にはアデノウイルスベクターの「有効量」、すなわち、哺乳動物において所望の免疫応答を誘発するアデノウイルスベクターの単回投薬を含む。所望の免疫応答は、抗体の産生、それに続くチャレンジからの保護、免疫寛容、免疫細胞活性化等を伴うことが可能である。望ましくは、アデノウイルスベクターの単回用量は少なくとも約1×10粒子(粒子ユニットとも呼ばれる)を含む。用量は好ましくはアデノウイルスベクターの少なくとも約1×10粒子(例えば、約1×10−1×1012粒子)、より好ましくは少なくとも約1×10粒子、より好ましくは少なくとも約1×10粒子(例えば、約1×10−1×1011粒子)、および最も好ましくは少なくとも約1×10粒子(例えば、約1×10−1×1010粒子)である。あるいは、用量は約1×1014粒子以下、好ましくは約1×1013粒子以下、さらにより好ましくは約1×1012粒子以下、さらにより好ましくは約1×1011粒子以下、および最も好ましくは約1×1010粒子以下(例えば、約1×10粒子以下)を含む。言い換えると、アデノウイルスベクターの1回の用量は、例えば、アデノウイルスベクターの約1×10粒子ユニット(pu)、2×10pu、4×10pu、1×10pu、2×10pu、4×10pu、1×10pu、2×10pu、4×10pu、1×10pu、2×10pu、4×10pu、1×1010pu、2×1010pu、4×1010pu、1×1011pu、2×1011pu、4×1011pu、1×1012pu、2×1012pu、または4×1012puを含み得る。
【0069】
アデノウイルスベクターは望ましくは、組成物、好ましくは担体を含む生理学的に容認できる(例えば、医薬的に容認できる)組成物、好ましくは生理学的に(例えば、医薬的に)容認できる担体およびアデノウイルスベクター(複数のアデノウイルスベクター)で投与される。いかなる適切な担体も本発明の状況で使用され得、かかる担体は当該分野でよく知られる。担体の選択は、部分的には、組成物が投与される特定の部位および組成物を投与するために使用する特定の方法により、決定されるであろう。理想的には、アデノウイルスベクターの状況において、組成物は好ましくは自律増殖可能なアデノウイルスを含まない。組成物は任意に殺菌され、または本発明のアデノウイルスベクターを除いて殺菌され得る。
【0070】
組成物の適切な処方は、抗酸化剤、バッファー、および静菌剤を含み得る水溶性および非水溶性溶液、等張滅菌溶液ならびに懸濁剤、溶解剤、増粘剤、安定剤、および保存剤を含み得る水溶性および非水溶性滅菌懸濁液を含む。処方は単回用量または複数回用量の密封容器(例えば、アンプルおよびバイアル)で行われ得、滅菌した液体担体(例えば、使用直前の水)の単なる追加を必要とする凍結乾燥した(lyophilized)状態で保存され得る。即席の溶液および懸濁液が上記の種類の滅菌粉末、顆粒、および錠剤から調製され得る。好ましくは、担体は緩衝化生理食塩水である。より好ましくは、本発明の方法に使用されるアデノウイルスベクターは、投与に先立つダメージから発現ベクターを保護するために処方される組成物で投与される。例えば、発現ベクターを調製、保存、または投与するために使用されるデバイス(例えば、ガラス製品、シリンジ、または針)で、アデノウイルスベクターの損失を減らすために該組成物は処方され得る。該組成物は、発現ベクターの光感受性および/または温度感受性を減らすために処方され得る。この目的のため、該組成物は、好ましくは医薬的に許容され得る液体担体(例えば、上記の担体、ならびにポリソルベート80、L−アルギニン、ポリビニルピロリドン、トレハロース、およびその組合せからなる群から選択される安定化剤)を含む。かかる成分の使用は、ベクターの貯蔵寿命を延長し、投与を容易にし、かつ本発明の方法の効率を良くするであろう。アデノウイルスベクターを含む組成物の処方は、例えば、米国特許6,225,289、6,514,943、米国特許出願公開No. 2003/0153065 A1、および国際特許出願公開WO 00/34444にさらに記載されている。組成物はまた、形質導入効率を増大させるためにも処方され得る。加えて、当業者はアデノウイルスベクターが別の治療学的または生物学的に活性な試薬とともに、組成物中に存在し得ることを高く評価するであろう。例えば、炎症を制御する因子(例えば、イブプロフェンまたはステロイド)は、ウイルスベクターの生体内投与に関して腫れおよび炎症を減少させるため、組成物の一部であり得る。本明細書に記載のように、免疫システム刺激因子は、抗原に対していかなる免疫応答も増大させるための投与であり得る。抗生物質(すなわち、殺菌剤および防カビ剤)は、現存する感染の治療のため、および/または将来の感染のリスクを減らすため存在し得る。該感染は例えば遺伝子移入手段関連の感染である。
【0071】
アデノウイルスベクターの構築は当分野でよく理解されている。アデノウイルスベクターは、例えば本明細書内で特定される他の引用文献と同様に米国特許5,965,358、6,168,941、6,329,200、6,383,795、6,440,728、6,447,995、6,475,757、6,573,092、および6,586,226、ならびに米国特許出願公開Nos. 2003/0170899 A1、2003/0203469 A1、および2003/0203480 A1ならびに、国際特許出願公開WO 98/53087、WO 98/56937、WO 99/15686、WO 99/54441、WO 00/12765、WO 01/77304、WO 02/29388、WO 02/31169、およびWO 03/39459において説明される方法を用いて構築および/または精製され得る。非C群アデノウイルスベクター(アデノウイルス血清型35ベクターを含む)は、例えば米国特許5,837,511および5,849,561、ならびに国際特許出願公開WO 97/12986およびWO 98/53087に説明された方法を用いて産生され得る。さらに、多数のアデノウイルスベクターが商業的に入手可能である。
【0072】
複製欠損性アデノウイルスベクターは典型的に相補細胞株で産生される。該細胞株は、ウイルスベクターストックの高力価を生じるために適当なレベルで、複製欠損性アデノウイルスベクターに存在しないがウイルスの増殖に必要である、遺伝子機能を提供する。望ましくは、相補細胞株は、アデノウイルス増殖に必要な遺伝子機能をコードするアデノウイルス核酸配列を細胞ゲノムに組み込まれた形で含む。好ましい細胞株は、複製欠損性アデノウイルスに存在しない、少なくとも1つ、好ましくは全ての複製に必須な遺伝子機能を相補する。相補細胞株は初期領域、後期領域、ウイルスのパッケージング領域、ウイルス関連RNA領域、またはその組合せによりコードされる少なくとも1つの複製に必須な遺伝子機能(全てのアデノウイルス機能を含む(例えば、アデノウイルスアンプリコンの増殖を可能にする))における欠如を相補可能である。最も好ましくは、相補細胞株はアデノウイルスゲノムのE1領域の少なくとも1つの複製に必須な遺伝子機能(例えば、2つ以上の複製に必須な遺伝子機能)における欠如(特に各E1AおよびE1B領域の複製に必須な遺伝子機能における欠如)を相補する。加えて、相補細胞株はアデノウイルスゲノムのE2(特にアデノウイルスDNAポリメラーゼおよび末端タンパク質に関する)および/またはE4領域の少なくとも1つの複製に必須な遺伝子機能における欠如を相補し得る。望ましくは、E4領域における欠如を相補する細胞は、E4−ORF6遺伝子配列を含み、かつE4−ORF6タンパク質を産生する。かかる細胞は望ましくは少なくともアデノウイルスゲノムのE4領域のORF6を含み、他のORFは含まない。該細胞株は、アデノウイルスベクターとオーバーラップしない様式で、好ましくは相補遺伝子を含むということをさらに特徴とし、このことは細胞DNAと組換するベクターゲノムの可能性を最小限にし、実質的に排除する。したがって、自律増殖可能なアデノウイルス(RCA)の存在は、ベクターストック中で避けられない場合、最小になる。よって、このことは、ある治療目的、特にワクチン目的に適する。ベクターストックにおけるRCAの欠除は、非相補細胞においてアデノウイルスベクターの複製を避ける。かかる相補細胞株の構築は、標準的な分子生物学および細胞培養技術(例えばSambrook et al.,上述、およびAusubel et al.,上述、の記載参照)を含む。
【0073】
アデノウイルスベクターを産生するための相補細胞株は、293細胞(例えば、Graham et al., J. Gen. Virol., 36, 59-72 (1977)に記載)、PER.C6細胞(例えば、国際特許出願公開WO 97/00326、ならびに米国特許5,994,128および6,033,908に記載)、および293−ORF6細胞(例えば、国際特許出願公開WO 95/34671およびBrough et al., J. Virol., 71, 9206-9213 (1997)に記載)を含むが、これに限定されない。さらなる相補細胞は、例えば、米国特許6,677,156および6,682,929、ならびに国際特許出願公開WO 03/20879に記載されている。いくつかの例では、細胞ゲノムは、複製欠損性アデノウイルスベクターの全ての欠損を相補する核酸配列、遺伝子産物を含む必要はない。複製欠損性アデノウイルスベクターで欠如した1つ以上の複製に必須な遺伝子機能は、ヘルパーウイルス(例えば、所望のアデノウイルスベクターの複製に必要な1つ以上の本質的遺伝子機能をトランスで供給するアデノウイルスベクター)により供給され得る。ヘルパーウイルスは、しばしば感染性ヘルパーウイルスのパッケージングを阻害するように操作される。例えば、アデノウイルスゲノムのE4領域の1つ以上の複製に必須な遺伝子機能はヘルパーウイルスによって提供されるが、アデノウイルスゲノムのE1領域の1つ以上の複製に必須な遺伝子機能は相補細胞によって提供される。
【実施例】
【0074】
(実施例)
以下の実施例は本発明をさらに説明するものであるが、もちろん、その分野を限定する方法として見なされるべきではない。
【0075】
(実施例1)
本実施例は、(a)天然のコクサッキーウイルスおよびアデノウイルスレセプター(CAR)結合部位が破壊されている亜群Cファイバータンパク質、(b)天然のインテグリン結合部位が破壊されている亜群Cペントンベースタンパク質、および(c)抗原をコードする核酸配列を含むアデノウイルスベクターを哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物に免疫応答を誘導する方法を実証する。
【0076】
欠失したE1領域の代わりに、CMVプロモーターに機能可能に連結した緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする核酸配列を含む、アデノウイルス血清型5 E1/E3/E4欠損アデノウイルスベクターを作製した。CARを介したアデノウイルスファイバー媒介形質導入を減少させるために、アデノウイルスファイバータンパク質のCAR結合ドメインおよびアデノウイルスペントンベースタンパク質のインテグリン結合ドメインが破壊された(Adf.DA−HA)(「二重切除」ベクター)。比較のため、野生型キャプシドタンパク質を含む対応するGFP発現アデノウイルスベクターも作製した(Adf.11D)。Adtgp140は、GFPを発現せず、かつネガティブコントロールとして供されるE1/E3/E4欠損血清型5アデノウイルスベクターである。
【0077】
各上記のアデノウイルスベクターを、マウスの後肢筋肉内に1×10粒子ユニット(pu)の用量で注射した。注射2週間後、GFPペプチドプールを脾臓細胞に接触させることにより、脾臓細胞をGFP抗原に対する反応性について分析した。GFP抗原に対して反応する免疫細胞(すなわち、CD4およびCD8Tリンパ球)の百分率を、細胞内流動分析(intracellular flow analysis)(例えば、Yang ら, J Virol., 77(1), 799-803 (2003)に記載)を用いて決定した。
【0078】
かかる分析の結果を図1Aおよび1Bに示す。二重切除ベクター(Adf.DA−HA)により導かれたGFP反応免疫細胞の百分率は、野生型キャプシドベクター(Adf.11D)により導かれたGFP免疫細胞の百分率と実質的に同じであった。
【0079】
本実施例は、天然の結合を切除した亜群Cアデノウイルスベクターの(すなわち、アデノウイルスファイバータンパク質およびペントンベースタンパク質のCAR結合およびインテグリン結合ドメインそれぞれの破壊による)哺乳動物における抗原に対する免疫応答を効率的に誘導する能力を実証する。
【0080】
(実施例2)
本実施例は、天然の結合を切除した亜群Cアデノウイルスベクターのプロフェッショナル抗原提示細胞に効率的に形質導入する能力を実証する。
【0081】
GFPの代わりにルシフェラーゼ遺伝子をコードする二重切除アデノウイルスベクター(Adf.DA−HA.luc)を、実施例1に記載のようにして作製した。Adf.DA−HA.lucの特異性は、マウス骨髄由来樹状細胞(DC)で評価された。具体的には、CD19およびCD11c樹状細胞マーカーでゲートインした細胞において、マウス骨髄(BM)樹状細胞をAdf.DA−HA.lucに感染させた。比較のため、野生型のキャプシドタンパク質を含む対応するGFP発現およびルシフェラーゼ発現アデノウイルスベクターもまた試験された。用量反応分析は、マウスまたはヒト起源のBMまたは形質細胞様樹状細胞において、異なる感染多重度(MOI)で行われた。
【0082】
Adf.DA−HA.lucは骨髄細胞(図2Aおよび2B参照)およびCd19−Cd11c+細胞(図2A参照)に容易に感染した。Adf.DA−HA.lucはまた、ヒト樹状細胞型(形質細胞様樹状細胞を含む)に形質導入された。Adf.DA−HA.lucは、これらの細胞においてインプットされたウイルス粒子当たりわずかに低いルシフェラーゼレポーター活性が測定されたように、わずかに低い形質導入効率を示したが、ベクターは感染多重度の2−logの幅に渡って同程度の活性を示した。
【0083】
かかる実施例の結果は、二重切除亜群Cアデノウイルスベクターが、ファイバーCARおよびペントンベース−インテグリン相互作用に依存せずに抗原提示細胞に形質導入し得ることを実証する。
【0084】
本明細書中で引用した刊行物、特許出願、及び特許を含む全ての参考文献は、各参考文献が、本明細書中で参考として援用されることが個別におよび具体的に示され、かつその全体が記載されているのと同じ程度に、本明細書中で参考として援用される。
【0085】
本発明を記載する文脈において(特に、添付の特許請求の範囲の文脈において)、用語「a」及び「an」及び「the」及び同様の指示語の使用は、本明細書中で他に特に明記がない限り、又は文脈に明らかに矛盾しない限り、単数と複数の両方を包含するように解釈されるべきである。「含有する(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」及び「含む(containing)」という用語は、他に特に明記がない限り、オープンエンドの用語(即ち、「〜を含むが、限定されない」ことを意味する)として解釈されるべきである。本明細書中での値の範囲の記載は、本明細書中で他に特に明記がない限り、その範囲内にある各々の別々の値を個々に言及する略記方法として働くことが単に意図され、そして各々の別々の値は、それが本明細書中で個々に列挙されているかのように本明細書中に含まれるものである。本明細書中に記載される全ての方法は、本明細書中で他に特に明記がない限り、または文脈に明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で行われ得る。本明細書中で提供される任意及び全ての例、又は例示的な言葉(例えば、「などの」)の使用は、本発明をより良く明瞭にすることが単に意図され、そして他に特に主張されない限り、本発明の範囲を制限するものではない。本明細書中の如何なる言葉も、本発明の実施に必須なものとして主張されていない要素を示すと解釈されるべきではない。
【0086】
本発明の実施に関して、本発明者らが知っている最良の形態を含む、本発明の好適な実施態様を本明細書中に記載する。もちろん、それらの好適な実施態様のバリエーションは、上記の説明を読むと、当業者に明白となるであろう。本発明者らは、当業者が適宜このようなバリエーションを用いることを予想し、そして本発明者らは、本発明が本明細書中に具体的に記載されたものとは別の状態で実施されることを意図する。従って、本発明は、適用法によって許されるように、本明細書に添付の特許請求の範囲に列挙される主題の全ての改変物及び均等物を含む。さらに、その全ての可能なバリエーションにおける上記要素の任意の組合わせは、本明細書中で他に特に明記がない限り、又は文脈に明らかに矛盾しない限り、本発明に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1A】図1Aは、アデノウイルスベクターAdtgp140、Adf.DA−HA、およびAdf.11Dにより誘発されたGFP特異的CD4+Tリンパ球の割合を示すグラフである。
【図1B】図1Bは、アデノウイルスベクターAdtgp140、Adf.DA−HA、およびAdf.11Dにより誘発されたGFP特異的CD8+Tリンパ球の割合を示すグラフである。
【図2A】図2Aは、マウス骨髄および樹状細胞における、野生型(wt)および突然変異(mut)組換えアデノウイルスベクターの形質導入効率を示すグラフである。
【図2B】図2Bは、マウス骨髄細胞または形質細胞様樹状細胞における、Adf.DA−HA.luc(mut ADV)の用量反応を示すグラフである。
【図2C】図2Cは、ヒト骨髄細胞または形質細胞様樹状細胞における、Adf.DA−HA.luc(mut ADV)の用量反応を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アデノウイルスベクターを哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物における免疫応答を誘導する方法であって、該アデノウイルスベクターは
(a)天然のコクサッキーウイルスおよびアデノウイルスレセプター(CAR)結合部位が破壊された亜群Cファイバータンパク質、
(b)天然のインテグリン結合部位が破壊された亜群Cペントンベースタンパク質、および
(c)哺乳動物で発現して免疫応答を誘導する少なくとも1つの抗原、ここで、該抗原はアデノウイルス以外の感染性因子由来である、をコードする核酸配列を含む方法。
【請求項2】
該アデノウイルスベクターが血清型2アデノウイルスベクターである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
該アデノウイルスベクターが血清型5アデノウイルスベクターである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
該アデノウイルスベクターが自律増殖可能である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
該アデノウイルスベクターが条件つき複製可能である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
該アデノウイルスベクターが複製欠損性である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
該アデノウイルスベクターが、アデノウイルスゲノムのE1領域の1つ以上の複製に必須な遺伝子機能を欠損しているアデノウイルスゲノムを含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
該アデノウイルスベクターが、アデノウイルスゲノムのE1AおよびE1B領域の全ての複製に必須な遺伝子機能を欠損しているアデノウイルスゲノムを含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
該アデノウイルスベクターが、アデノウイルスゲノムのE3領域の1つ以上の遺伝子機能を欠損しているアデノウイルスゲノムを含む、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
該アデノウイルスベクターが、アデノウイルスゲノムのE4領域の1つ以上の複製に必須な遺伝子機能を欠損しているアデノウイルスゲノムを含む、請求項6〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
スペーサー配列がアデノウイルスゲノムのE4領域に位置する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
該抗原をコードする核酸配列がアデノウイルスゲノムのE4領域に位置する、請求項10記載の方法。
【請求項13】
該抗原をコードする核酸配列がアデノウイルスゲノムのE1領域に位置する、請求項7〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
該ペントンベースタンパク質が天然のRGD配列を欠失している、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
該ペントンベースタンパク質が、αインテグリンレセプターへの結合に関して立体構造的に近づけられない天然のRGD配列を含む、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
該ファイバータンパク質がファイバーノブを欠失している、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
該ファイバータンパク質が三量体を形成する、請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
該アデノウイルスベクターが、細胞性レセプターと結合する非天然のアミノ酸配列を含むキメラアデノウイルスベクター外被タンパク質を含む、請求項1〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
該非天然のアミノ酸配列がRGDモチーフを含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
該アデノウイルスベクターが、異なる抗原をコードする多数の核酸配列を含む、請求項1〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
異なる抗原をコードする2つ以上の核酸配列が、異なるプロモーターと機能可能に連結している、請求項20記載の方法。
【請求項22】
該アデノウイルスベクターが、同じ抗原をコードする多数の核酸配列を含む、請求項1〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
同じ抗原をコードする2つ以上の核酸配列が、異なるプロモーターと機能可能に連結している、請求項22記載の方法。
【請求項24】
該感染性因子がウイルスである、請求項1〜23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
少なくとも1つの抗原が、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のクレードA、B、またはC由来のenv、gagおよびpol、ならびに前記のいずれかを含有する融合タンパク質からなる群から選択される、請求項24記載の方法。
【請求項26】
少なくとも1つの抗原が、重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルスのEタンパク質、Mタンパク質、およびスパイクタンパク質からなる群から選択される、請求項24記載の方法。
【請求項27】
該アデノウイルスベクターが免疫刺激因子をコードする核酸配列を含む、請求項1〜26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
哺乳動物がヒトである、請求項1〜27のいずれかに記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【公表番号】特表2008−511336(P2008−511336A)
【公表日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−530371(P2007−530371)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【国際出願番号】PCT/US2005/031224
【国際公開番号】WO2006/039045
【国際公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(502006782)アメリカ合衆国 (47)
【出願人】(500129085)ジェンベク、インコーポレイティッド (13)
【Fターム(参考)】