説明

免疫原性組成物

本発明は、併用療法に関する。この併用療法は、感染症、癌、自己免疫疾患及び関連する病状の処置又は予防において有用であることがわかる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感染症、癌、自己免疫疾患及び関連する症状の治療又は予防において有用であることがわかる併用療法に関する。特に、併用療法は、TH-1サイトカイン特にIL-18(インターロイキン18)、及び免疫原性組成物特に抗原及びCpGアジュバントを含むワクチンの投与を含む。特に本発明は、前癌病変部又は癌の治療のための、IL-18又はその生物活性断片もしくは変異体と、腫瘍関連抗原及びCpGアジュバントを含む免疫原性組成物との使用に関する。本発明はさらに、本発明による使用に適した複合製剤及び医薬品キットに関する。これらの治療法及び医薬品製剤は、特に腫瘍の予防及び/又は治療のための、特に予防及び免疫療法の応用に適した免疫応答の刺激に有用である。
【背景技術】
【0002】
癌は、遺伝的変化によって単一の細胞から発症する疾患である。金融資産及び人材の莫大な投資にも関わらず、癌は依然として主要な死亡原因の1つである。これらの腫瘍の臨床検出は主に、手術によって原発腫瘍を除去することができる、疾患の比較的末期に起こり、多くの場合、異なる器官中に定着した微小転移の存在が既に起こっている。癌を引き起こすメカニズムの理解における大きな進歩にも関わらず、転移性癌の治療、並びに初期段階の腫瘍のより悪性及び転移性の病変に向かう進行の予防においては進歩が少ない。化学療法は多くの場合、これらの細胞を完全には除去せず、その結果再発病変の源として残る。
【0003】
TH-1型サイトカイン、例えば、IFN-γ、TNFα、IL-2、IL-12、IL-18等は、投与された抗原に対する細胞仲介免疫応答の誘導に有利に働く傾向がある。一方、高レベルのTh-2型サイトカイン(例えば、IL-4、IL-5、IL-6及びIL-10)は、体液性免疫応答の誘導に有利に働く傾向がある。インターフェロン-ガンマ(IFNg)誘導因子としても知られているインターロイキン18(IL-18)は、疾患(例えば癌)に対する患者自身の免疫系を刺激する免疫調節効果をもつ多面的サイトカインとして記載されている。IL-18は免疫応答の初期に発現され、体液性免疫応答及び細胞性免疫応答の両方に作用し、より優れたTH-1型プロファイルに向けた応答を促進する。IL-18は活性化された抗原提示細胞によって産生され、幾つかの生物活性を有することが報告されており、具体的には、ナイーヴCD4 T細胞のTh1細胞への分化を促進し、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞を刺激し、かつ活性化T細胞、主に細胞傷害性T細胞(CD8+表現型)の増殖を誘導してガンマインターフェロン(IFN-ガンマ)を分泌する(Okamura H. ら、1998、Adv. Immunol. 70: 281-312)。IL-18はまた、Fas-誘導性腫瘍死を仲介し、IL-1a及びGMCSF(Granulocyte-Macrophage Colony Stimulating Factor;顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子)の産生を促進し、抗血管形成活性を有する。
【0004】
IL-18は先天性免疫と、Th1-及びTh2-仲介性応答の双方とを刺激する能力を有する。IL-12の存在下、IL-18はTh1細胞、非極性T細胞、NK細胞、B細胞及び樹状細胞に作用し、IFNgを産生することができる。IL-12の補助がない場合、IL-18はT細胞、NK細胞、マスト細胞及び好塩基球中でIL-4及びIL-13の産生を誘導する潜在的能力を有する。
【0005】
IL-18は、内因性及びサイトカイン誘導性の抗腫瘍免疫応答の重要な構成要素であるIFN-ガンマの産生を通じて、腫瘍の退縮を誘導することが示されている。有効性は、異なる腫瘍動物モデルにおいて実証されている(Jonak Z ら, 2002, J. Immunother. 25, S20-S27; Akamatsu Sら, 2002, J. Immunother. 25, S28-S34)。他の薬剤と組み合わされたIL-18を含む組成物、特に化学療法薬と組み合わされたIL-18が記載されている(US 6,582,689)。IL-18はまた、ワクチン用アジュバントとして作用することが記載されている(WO 99/56775; WO 03/031569)。
【0006】
CpG-含有オリゴヌクレオチド(CpGジヌクレオチドが非メチル化されている)もまた、主にTh1応答を誘導する。このようなオリゴヌクレオチドは周知であり、例えば、WO 96/02555、WO 99/33488並びに米国特許第6,008,200号及び5,856,462号に記載されている。免疫賦活性DNA配列もまた、例えばSatoら、Science 273:352, 1996に記載されている。非メチル化CpGジヌクレオチド(「以下CpG」)を含む免疫賦活性オリゴヌクレオチドは全身及び粘膜の両方の経路で投与された場合にアジュバントとなることが当技術分野で公知である(WO 96/02555, EP 468520, Davis ら, J.Immunol, 1998, 160(2):870-876; McCluskie及びDavis, J.Immunol., 1998, 161(9):4463-6)。CpGは、DNA中に存在するシトシン-グアノシンジヌクレオチドモチーフの略語である。従来、BCGのDNA画分が抗腫瘍効果を及ぼすことができることが観察されていた。さらに進んだ研究論文においては、BCG遺伝子配列に由来する合成オリゴヌクレオチドが、免疫賦活効果を誘導することができる(in vitro及びin vivoの両方において)ことが示された。これらの研究論文の著者らは、中央にCGモチーフを含む特定のパリンドローム配列がこの活性をもたらしたと結論付けた。免疫賦活におけるCGモチーフの中心的役割は、後にKrieg, Nature 374, p546 1995の発表によって解明された。詳細な解析は、CGモチーフが特定の配列コンテキスト中に存在しなければならず、このような配列は、細菌DNA中にはありふれているが、脊椎動物のDNA中には稀であるということを示している。多くの場合免疫賦活配列は、プリン、プリン、C、G、ピリミジン、ピリミジンであり、ここでジヌクレオチドCGモチーフはメチル化されていないが、他の非メチル化CpG配列は、免疫賦活性であることが知られており、本発明において用いることができる。
【0007】
6つのヌクレオチドの特定の組合せ中には、パリンドローム配列が存在している。これらのモチーフの幾つかは、1つのモチーフの反復、又は異なるモチーフの組合せのいずれとしても、同一のオリゴヌクレオチド中に存在し得る。オリゴヌクレオチドを含むこれら免疫賦活配列の1つ以上の存在は、ナチュラルキラー細胞(インターフェロンγを産生し、細胞溶解活性を有する)及びマクロファージを含む多様な免疫サブセットを活性化することができる(Wooldrigeら、Vol 89 (no. 8), 1977)。しかし現在、このコンセンサス配列を有さない他の非メチル化CpG含有配列が免疫調節性であることが示されている。
【0008】
ワクチン中に製剤化された場合、CpGは通常、自由抗原と共に自由溶液中に投与され(WO 96/02555; McCluskie及びDavis,前出)、又は抗原に共有結合的にコンジュゲートし(PCT 公開番号WO 98/16247)、又は水酸化アルミニウムなどの担体と共に製剤化される((Hepatitis surface antigen) Davisら,前出; Brazolot-Millanら, Proc.Natl.Acad.Sci., USA, 1998, 95(26), 15553-8)。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、IL-18などのTH-1サイトカインと、抗原とCpGアジュバントとを含む免疫原性組成物との組み合わされた投与が、非常に有効であり、感染症、原発性及び転移性の腫瘍性疾患(すなわち癌)、自己免疫疾患及び関連する症状の効率的かつ耐容性良好な予防又は治療を提供し、腫瘍関連抗原を発現するヒト癌細胞の増殖の阻害に特に有効であるという驚くべき発見に関する。
【0010】
発明の説明
従って、安全かつ有効な量のi) 抗原又はその免疫原性誘導体及びCpGアジュバントを含む免疫原性組成物、特にワクチンと、ii) IL-18ポリペプチド又はその生物活性断片もしくは変異体とを患者に投与することを含む、患者内の抗原に対する増強された免疫応答を誘発する方法が提供される。別の実施形態において、本発明は、予め樹立された腫瘍(原発腫瘍及び転移性腫瘍)を処置すること又は癌再発を防止することを含む患者の癌の重篤性を軽減する方法を提供し、ここで該方法は、投与を必要とする患者に安全かつ有効な量のi)IL-18ポリペプチド又はその生物活性断片もしくは変異体と、ii)抗原又はその免疫原性誘導体及びCpGアジュバントを含む免疫原性組成物、特にワクチンとを投与することを含む。
【0011】
1つの実施形態において、IL-18ポリペプチドは、マウス又はヒトのIL-18ポリペプチド又はその生物活性断片もしくは変異体である。別の実施形態において、抗原は腫瘍関連抗原である。従って、1つの実施形態において、本発明は、予め樹立された腫瘍(原発腫瘍及び転移性腫瘍)を処置すること又は癌再発を防止することを含む、患者の癌の重篤性を軽減する方法に関する。癌は、特に乳癌、肺癌(特に非小細胞肺癌)、メラノーマ(黒色腫)、大腸癌、卵巣癌、前立腺癌、膀胱癌、頭頸部扁平上皮癌、胃癌及び他のGI(消化管)癌、特に食道癌、白血病、リンパ種、骨髄腫、プラズマ細胞腫であって、前記方法は、i) 腫瘍関連抗原又はその免疫原性誘導体及びCpGを含む免疫原性組成物特にワクチンと、ii) IL-18ポリペプチド又はその生物活性断片もしくは変異体とを哺乳類に投与することを含む。
【0012】
本発明はまた、(1)IL-18ポリペプチド又はその生物活性断片もしくは変異体と、(2)抗原及びCpGアジュバントを含む免疫原性組成物との個々の成分を活性成分として含み、該活性成分が、感染症、原発性腫瘍及び転移性腫瘍を含む癌、自己免疫疾患及び関連する症状の予防及び/又は治療のために、同時に、別々に又は連続的に用いられる複合製剤に関する。1つの実施形態において、複合製剤中の免疫原性組成物が、3D-MPL、QS21、QS21とコレステロールとの混合物、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、トコフェロール、及び水中油エマルション又は前記アジュバントの2種以上の組合せを含む群から選択される付加的な免疫賦活性化学物質を含む。例えば、付加的なアジュバントはQS-21などのサポニンである。
【0013】
関連した態様において、本発明はまた、(1)IL-18ポリペプチド又はその生物活性断片もしくは変異体と、(2)抗原もしくはその免疫原性誘導体及びCpGアジュバントを含む免疫原性組成物との個々の成分を活性成分として含み、該活性成分が、感染症、原発性腫瘍及び転移性腫瘍を含む癌及び自己免疫疾患の予防及び/又は治療のために、同時に、別々に又は連続的に用いられる医薬品キットを提供する。
【0014】
本発明はさらに、防御免疫反応の達成又は患者の疾患の重篤性の軽減を目的とした医薬品の製造における(1)IL-18ポリペプチド又はその生物活性断片もしくは変異体と、(2)抗原もしくはその免疫原性誘導体及びCpGアジュバントを含む免疫原性組成物との両成分の安全かつ有効な量の患者への投与による使用に関する。
【0015】
本発明はさらに、疾患、特に癌の予防及び/又は治療のためにこのような免疫原性組成物を使用し、かつこのような組成物を、ヒトを含む哺乳動物中の腫瘍又は癌細胞の増殖の阻害に使用するための、免疫原性組成物を製造する方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
発明の詳細な説明
本発明の1つの形態において、免疫原性組成物中のCpGアジュバントは、少なくとも3つ、例えば少なくとも6つ以上のヌクレオチドで隔てられた1つ、又は2つ以上のジヌクレオチドCpGモチーフを含む。本発明のオリゴヌクレオチドは通常デオキシヌクレオチドである。1つの実施形態において、該オリゴヌクレオチド中のインターヌクレオチドは、ホスホロジチオエート結合又はホスホロチオエート結合であるが、ホスホジエステル及び他のインターヌクレオチド結合は、混合インターヌクレオチド結合をもつオリゴヌクレオチドを含む本発明の範囲内である。ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド又はホスホロジチオエートを作製する方法は、US5,666,153、US5,278,302及びWO95/26204に記載されている。
【0017】
例として挙げられるオリゴヌクレオチドは下記の配列を有する。配列は、ホスホロチオエート修飾されたインターヌクレオチド結合を含むことができる。
【0018】
オリゴ1(配列番号1): TCC ATG ACG TTC CTG ACG TT (CpG 1826)
オリゴ2 (配列番号2): TCT CCC AGC GTG CGC CAT (CpG 1758)
オリゴ3(配列番号3): ACC GAT GAC GTC GCC GGT GAC GGC ACC ACG
オリゴ4 (配列番号4): TCG TCG TTT TGT CGT TTT GTC GTT (CpG 2006、CpG 7909としても知られている)
オリゴ5 (配列番号): TCC ATG ACG TTC CTG ATG CT (CpG 1668)
別のCpGオリゴヌクレオチドは、配列中に重要ではない欠失又は配列への付加を有する上記の配列を含んでもよい。
【0019】
本発明において用いられているCpGオリゴヌクレオチドは、当技術分野において公知のいずれかの方法で合成されてもよい(例えば、EP468520)。従来、このようなオリゴヌクレオチドは、自動合成装置を用いて合成することができる。
【0020】
本発明において用いられているオリゴヌクレオチドは、通常デオキシヌクレオチドである。1つの実施形態において、オリゴヌクレオチド中のインターヌクレオチド結合は、ホスホロジチオエート結合又はホスホロチオエート結合であるが、ホスホジエステルは、本発明の範囲内である。混合ホスホロチオエートホスホジエステルなどの異なるインターヌクレオチド結合を含むオリゴヌクレオチドが意図されている。該オリゴヌクレオチドを安定させる他のインターヌクレオチド結合を用いてもよい。
【0021】
抗原は、腫瘍関連抗原又はその免疫原性誘導体もしくは誘導体などの感染性の生物に由来する抗原でよい。IL-18ポリペプチドは、マウス又はヒトのIL-18ポリペプチド又はその生物活性断片でよい。免疫原性組成物及びIL-18は、抗原特異的抗体の誘導において相乗的に作用することが可能であり、体液性免疫応答又は/及び通常TH-1型の免疫系に関連した細胞性免疫応答の誘導又は増強に能力を有することができる。免疫応答の増強とは、体液性免疫応答及び/又は細胞仲介性免疫応答によって、又は腫瘍の大きさ及び/又は負荷の縮小によって測定される免疫応答全体の増大を意味する。相乗効果とは、IL-18ポリペプチド又はその免疫原性断片もしくは変異体が、本発明の免疫原性組成物を用いた併用療法において投与された場合に、免疫応答を誘導することが可能であり、このような免疫原性組成物の存在は、IL-18ポリペプチド又はその免疫原性断片もしくは変異体の有効性を増強することができることを意味する。免疫応答の誘導の成果は、予防、疾患の重篤性の軽減(癌の場合、予め樹立された腫瘍、原発性もしくは転移性の癌の軽減、又は癌の再発の予防を含む)、及び/又は治療である。
【0022】
従って、1つの実施形態において、i) 感染性の生物に由来する抗原又は腫瘍関連抗原及びCpGアジュバントを含む、有効量の免疫原性組成物と、ii) IL-18又はその生物活性断片もしくは変異体とを哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物中で抗原に対する免疫応答を誘発する方法が提供される。1つの実施形態において、前記治療の双方の成分が、連続的に与えられる。すなわち、免疫原性組成物は、IL-18の投与によってプライムされた体液性免疫応答及び/又は細胞性免疫応答を高めるために用いられる。或いは、別の実施形態において、本発明による免疫原性組成物は、個体中の体液性免疫応答及び/又は細胞性免疫応答をプライムするために用いられ、該個体は連続的にIL-18を受け入れる。さらに別の実施形態において、前記治療の双方の成分は、2つの異なる部位における同時投与又は同じ製剤中への混合のいずれかを通じて同時に与えられる。当業者は、免疫原性組成物及びIL-18ポリペプチドの双方を1度に又は繰り返し与えることが可能であることを理解するだろう。
【0023】
本発明の範囲内で検討される併用療法は、いずれかの成分を単独に用いることと比較すると、少なくとも効果的であり、又は効率を向上させることができる。特に癌の分野では、併用治療は有利である。なぜなら、2つの抗癌剤を組合せ、各抗癌剤は異なる作用メカニズムを通して付加的方法で、例えば相乗的に機能し、ヒト腫瘍細胞に対する増強された細胞傷害性応答をもたらすからである。
【0024】
関連する実施形態において、 (1)IL-18ポリペプチド又はその生物活性断片もしくは変異体と、(2)抗原及びCpGアジュバントを含む免疫原性組成物とを活性成分として含み、該活性成分が、感染症及び癌の予防及び/又は治療のために、同時に、別々に又は連続的に用いられる複合製剤(例えば、医薬品キット又は医薬品マルチバイアルパック)が提供される。
【0025】
複合製剤とは、医薬製剤、又は活性成分を含有する単位剤形を1つ以上含むことができる医薬品(マルチバイアル)パックもしくはディスペンサー装置を意味する。該パックは、例えば、ブリスター包装などの金属又はプラスチックのホイルを含んでもよい。パック又はディスペンサー装置は、投与の使用説明書を伴ってもよい。IL-18ポリペプチド及び免疫原性組成物が2つの分離した組成物として投与されることが意図されている場合、これらは例えばマルチバイアルパックの形態で存在することが可能である。本発明により同時に、又は別々に、又は連続的に投与される活性成分は、既知の薬剤の単なる集合体を表すのではなく、IL-18ポリペプチドの使用という驚くほど有益な特性との新たな組合せによって、NK(ナチュラルキラー)細胞の活性化、並びにT細胞仲介型免疫応答及びサイトカイン産生を含む、免疫系の先天的成分及び適応成分の両方の刺激が可能となり、その結果前記免疫原性組成物の有効性が増大する。このことは、新しく、効果的な治療を結果として生じる。複合製剤は、キットのパーツとして指定された製剤もまた、複合製剤の成分が必ずしも、分離又は連続的適用に利用するために、例えば組成物において結合体として存在しなくてもよいということを意味することが理解される。従って、キットのパーツという表現は、構成要素の物理的分離の観点からすると、必ずしも真の組み合わせ物ではないということを意味する。
【0026】
複合製剤は、癌の治療又は予防のいずれにも用いることが可能であり、特に癌の重篤性の軽減又は癌の再発の防止に用いることができる。本明細書に記載される、併用療法の利益を受けることができる癌は、無制限な細胞の成長及び増殖、前癌病変部、原発腫瘍及び転移性の腫瘍性病変に特徴付けられるいずれかの疾患を含み、かつ、これに限定するものではないが、乳癌、肺癌(特に非小細胞肺 - NSCLC - 癌)、メラノーマ(黒色腫)、大腸癌、卵巣癌、前立腺癌、膀胱癌、頭頸部扁平上皮癌、胃癌及び他のGI(消化管)癌、特に食道癌、白血病、リンパ種、骨髄腫、プラズマ細胞腫を含む。
【0027】
ペプチド(すなわち約50以下のアミノ酸)を含む、典型的な抗原又はその誘導体及び断片は、癌(-精巣)抗原として公知のMAGE(Melanoma Antigen-encoding Genes:メラノーマ抗原コーディング遺伝子)のファミリーによってコードされる抗原を含む(Gaugler B.ら、J. Exp. Med., 1994, 179: 921; Weynants P. ら、Int. J. Cancer, 1994, 56: 826; Patard J.J.ら、Int. J. Cancer, 1995, 64: 60)。MAGEタンパク質を発現する癌は、MAGE関連腫瘍として知られている。MAGE遺伝子は密接に関連した遺伝子のファミリーに属し、X染色体上に位置してコーディング配列内に互いに64〜85%の相同性を共有するMAGE 1、MAGE 2、MAGE 3 (メラノーマ抗原コーディング遺伝子3)、MAGE 4、MAGE 5、MAGE 6、MAGE 7、MAGE 8、MAGE 9、MAGE 10、 MAGE 11、MAGE 12を含む(De Plaen E. ら、Immunogenetics, 1994, 40, 360-369)。これらの遺伝子は、MAGE A1, MAGE A2, MAGE A3, MAGE A4, MAGE A5, MAGE A6, MAGE A7, MAGE A8, MAGE A9, MAGE A 10, MAGE A11, MAGE A 12 (MAGE A ファミリー)として知られる場合もある。2つの他のタンパク質群もまた、MAGEファミリーの部分であるが、より遠く離れた関係である。これらは、MAGE B及びMAGE C群である。MAGE Bファミリーは、MAGE B1 (MAGE Xp1、及びDAM 10としても知られる)、MAGE B2 (MAGE Xp2及びDAM 6としても知られる) MAGE B3及びMAGE B4を含む。MAGE Cファミリーは現在、MAGE C1及びMAGE C2を含む。一般論としては、MAGEタンパク質は、タンパク質のC末端に向けて位置するコア配列(signature)を含むと定義することができる(例えば、309アミノ酸タンパク質であるMAGE A1に関しては、コアsignatureはアミノ酸195〜279に対応する)。
【0028】
従って、コアsignatureのコンセンサスパターンは、下のように記載され、ここでxは、小文字の残基が保存されており(保存された変異体が許容される)、大文字の残基が完全に保存されているいずれかのアミノ酸を表す。
【0029】
コア配列signature:
LixvL(2x)I(3x)g(2x)apEExiWexl(2x)m(3-4x)Gxe(3-
4x)gxp(2x)llt(3x)VqexYLxYxqVPxsxP(2x)yeFLWGprA(2x)Et(3x)kv
保存された置換は周知であり、通常配列アライメントのコンピュータープログラムにおいては、初期値スコアリングマトリクスとして設定されている。これらのプログラムは、PAM250を含む (Dayhoft M.O.ら, 1978, “A model of evolutionary changes in proteins”“Atlas of Protein sequence and structure” 5(3) M.O. Dayhoft (ed.), 345-352)中, National Biomedical Research Foundation, Washington, 及び Blosum 62 (Steven Henikoft & Jorja G. Henikoft (1992), “Amino acid substitution matricies from protein blocks”), Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89 (Biochemistry): 10915-10919。
【0030】
一般論としては、下記の群内の置換は保存された置換であるが、群間の置換は非保存的であると考えられている。群は、下のとおりである。
【0031】
i)アスパラギン酸/アスパラギン/グルタミン酸/グルタミン
ii)セリン/トレオニン
iii)リシン/アルギニン
iv)フェニルアラニン/チロシン/トリプトファン
v)ロイシン/イソロイシン/バリン/メチオニン
vi)グリシン/アラニン
一般的に、及び本発明との関連から、MAGEタンパク質は、MAGE A1のアミノ酸195〜279を有するこのコア領域とおよそ50%同一であるだろう。
【0032】
MAGE-3は、69%のメラノーマ(黒色腫)で発現しており(Gaugler B.ら, J. Exp. Med., 1994, 179: 921)、44%のNSCLC(非小細胞肺癌)(Yoshimatsu T. J Surg Oncol., 1998, 67,126-129)、75% の小細胞肺癌(SCLC) (Traversari C.ら, Gene Ther. 1997, 4: 1029-1035)、48%の頭頸部扁平上皮癌、34%の膀胱移行上皮癌、57%の食道癌、32%の大腸癌及び24%の乳癌においても検出されることができる(Van Pel A.ら, Immunol. Rev., 1995, 145: 229; Inoue H.ら, Int. J. Cancer, 1995, 63: 523; Nishimura S ら, Nihon Rinsho Meneki Gakkai Kaishi 1997, Apr, 20 (2): 95-101)。幾つかのCTLエピトープは、MHCクラスI分子HLA.A1又はHLA.A2(Van der Bruggen P.ら, Eur. J. Immunol., 1994, 24, 3038-3043)のいずれか及びHLA.B44 (Herman, J.ら, Immunogenetics, 1996, 43, 377-383)の対立遺伝子の各々に対して特異的結合モチーフを有するMAGE-3タンパク質上で同定されている。
【0033】
他の典型的な抗原又はそれに由来する誘導体もしくは断片は、WO 99/40188に開示されたMAGE抗原、PRAME (WO 96/10577)、BAGE、RAGE、LAGE 1 (WO 98/32855)、LAGE 2 (NY-ESO-1としても知られる、WO 98/14464)、XAGE (Liuら、Cancer Res, 2000, 60:4752-4755、 WO 02/18584) SAGE、及びHAGE (WO 99/53061)又はGAGE (Robbins及びKawakami, 1996, Current Opinions in Immunology 8, pps 628-636、 Van den Eyndeら、International Journal of Clinical & Laboratory Research (1997年提出)、 Correaleら(1997)、Journal of the National Cancer Institute 89, p293を含む。実際、これらの抗原は、メラノーマ、肺癌、肉腫及び膀胱癌などの広い範囲の腫瘍型において発現している。
【0034】
1つの実施形態において、前立腺癌抗原又は前立腺特異的分化抗原(PSA)、PAP、 PSCA (PNAS 95(4) 1735 - 1740 1998)、PSMAなどの前立腺抗原又はプロステースとして知られる抗原が用いられている。
【0035】
1つの実施形態において、前立腺抗原は、P501S又はその断片である。P501Sは、プロステインとも名付けられ(Xu ら、Cancer Res. 61, 2001, 1563-1568)、WO98/37814の配列番号113として公知であり、553アミノ酸タンパク質である。免疫原性断片及びその部分は、上記に参照された特許出願に開示されているとおり20もしくは少なくとも20、50もしくは少なくとも50、又は100もしくは少なくとも100の連続アミノ酸を含み、本発明によって明確に意図されている。用いられうる断片は、WO 98/50567 (PS108抗原)に開示されており、前立腺癌関連タンパク質として(WO 99/67384の配列番号9)に開示されている。他の断片は、完全長P501Sタンパク質のアミノ酸51〜553、34〜553又は55〜553である。特に、構築物1、2及び3(図2を参照されたい。配列番号27〜32)は、明示的に意図されており、酵母系において発現することが可能である。例えばこのようなポリペプチドをコードするDNA配列は、酵母系で発現されることが可能である。
【0036】
プロステースは、前立腺特異的セリンプロテアーゼ(トリプシン様)であり、254アミノ酸長であって、保存されたセリンプロテアーゼの触媒三連構造H-D-S及び、潜在的な分泌機能を示すアミノ末端前プロペプチド配列を有する(P. Nelson, Lu Gan, C. Ferguson, P. Moss, R. linas, L. Hood及びK. Wand, “Molecular cloning and characterisation of prostase, an androgen-regulated serine protease with prostate restricted expression, In Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1999) 96, 3114-3119)。推定糖鎖付加部位が記載されている。予測構造は、他の公知のセリンプロテアーゼに非常に似ており、成熟ポリペプチドが折り畳まれて単独のドメインとなることを示している。成熟タンパク質は、224アミノ酸長で、少なくとも1つのA2エピトープを有し、天然にプロセシングされることが示されている。プロステースヌクレオチド配列並びに推定ポリペプチド配列及びホモログは、Fergusonら(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1999, 96, 3114-3119)及び国際特許出願WO 98/12302(及びまた対応認可特許 米国第5,955,306号)、WO 98/20117 (及びまた 対応認可特許米国第5,840,871号及び米国第5,786,148号) (前立腺特異的カリクレイン)及びWO 00/04149 (P703P)に開示されている。
【0037】
他の前立腺特異的抗原は、WO98/37418及びWO/004149から公知である。別の前立腺特異的抗原は、STEAP (PNAS 96 14523 14528 7-12 1999)である。
【0038】
他の腫瘍関連抗原は、Plu -1 J Biol. Chem 274 (22) 15633 -15645, 1999、HASH -1、HASH-2 (Alders,M. ら、Hum. Mol. Genet. 1997, 6, 859-867)、クリプト(Cripto)(Salomonら、 Bioassays 199, 21 61 -70、米国特許第5654140号)、CASB616 (WO 00/53216)、クリプティン(Criptin)(US 5,981,215)を含む本発明との関連で有用である。さらに、癌治療におけるワクチンと特に関連性がある抗原はまた、チロシナーゼ、テロメラーゼ、P53、NY-Br1.1 (WO 01/47959)及びWO 00/43420、B726 (WO 00/60076、配列番号469及び463; WO 01/79286、配列番号474及び475)、P510 (WO 01/34802 配列番号537及び538)などに開示されているそれらの断片及びスルビビン(survivin)を含む。
【0039】
本発明はまた、Her-2/neu、マンマグロビン(米国特許第5,668,267号)、B305D (WO00/61753配列番号299、304、305及び315)、又はWO00/52165、WO99/33869、 WO99/19479、WO 98/45328に開示された乳癌抗原との組合せにおいて有用である。Her-2/neu抗原は、とりわけ米国特許第5,801,005号に開示されている。Her-2/neuは、細胞外ドメイン(およそアミノ酸1〜645を含む)全体又はその断片を含むことが可能であり、かつおよそC末端580アミノ酸の細胞内ドメインの少なくとも1つの免疫原性部分又は全体を含むことが可能である。特に、細胞内部分は、リン酸化ドメイン又はそのフラグメントを含むはずである。このような構築物は、WO00/44899に開示されている。1つの構築物は、ECD-PhDとして知られており、第2の構築物は、ECD デルタPhD (WO00/44899を参照) として知られており、dHER2とも名付けられている。本発明中で用いられるHer-2/neuは、ラット、マウス又はヒト由来でよい。
【0040】
特定の腫瘍抗原は、小さなペプチド抗原(すなわち、約50以下のアミノ酸)である。典型的なペプチドは、MUC-1 などのムチン由来のペプチドを含む(例えば、US 5,744,144、US 5,827,666、WO88/05054、US 4,963,484を参照)。具体的に検討されたのは、MUC-1ペプチドの少なくとも1つの反復単位を含み、又は少なくとも2つのこのような反復を含み、SM3抗体(US 6,054,438)によって認識されるMUC-1由来ペプチドである。他のムチン由来ペプチドは、MUC-5由来のペプチドを含む。
【0041】
或いは、前記抗原はIL13及びIL14などのインターロイキンであってもよい。または、抗原は全長ゴナドトロピン(性腺刺激)ホルモン放出ホルモン(GnRH、WO95/20600)などの自己ペプチドホルモンであってもよい。該GnRHは、短い10アミノ酸長のペプチドであり、多くの癌治療又は免疫去勢において有用である。他の腫瘍特異的抗原は、これに限定するものではないが、GM2及びGM3などの腫瘍特異的ガングリオシドを含む。
【0042】
抗原は、例えば以下のような、ウイルス、細菌又は寄生生物を含む、ヒトに対して病原性の源に由来しうる:ヒト免疫不全ウイルスHIV-1(例えばtat、nef、逆転写酵素、gag、gp120及びgp160)、ヒト単純ヘルペスウイルス(HSV)、例えばgDもしくはその誘導体又は前初期タンパク質、例えばHSV1又はHSV2に由来するICP27、サイトメガロウイルス((特にヒト)(例えばgBまたはその誘導体))、ロタウイルス(生-弱毒化ウイルスを含む)、エプスタインバー・ウイルス(例えばgp350又はその誘導体)、水痘・帯状疱疹ウイルス(例えばgpI、II及びIE63)、又は肝炎ウイルス、例えばB型肝炎ウイルス(例えばB型肝炎表面抗原又はその誘導体)、A型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス及びE型肝炎ウイルス、又は他のウイルス性病原体、例えばパラミクソウイルス:呼吸器合胞体ウイルス(RSウイルス)(例えばF及びGタンパク質又はその誘導体)、パラインフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、ヒトパピローマウイルス(例えばHPV6、11、16、18、..)、フラビウイルス(例えば黄熱ウイルス、デングウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス)、又はインフルエンザウイルス(全生または不活化ウイルス、スプリットインフルエンザウイルス、卵又はMDCK細胞内で培養されたもの、又は全fluウイロソーム(R. Gluck, Vaccine, 1992, 10, 915-920に記載のとおり)またはそれらの精製もしくは組換えタンパク質、例えばHA、NP、NA又はMタンパク又はそれらの組合せ)、または細菌性病原体、例えばナイセリア属細菌種(Neisseria spp)、例えばナイセリア・ゴノレエ(N. gonorrhea)及びナイセリア・メニンジティディス(N. meningitides)(例えば、莢膜多糖及びそのコンジュゲート、トランスフェリン結合タンパク質、ラクトフェリン結合タンパク質、PilC、アドヘジン);エス・ピロゲネス(S. pyogenes) (例えば、Mタンパク質又はそれらの断片、C5Aプロテアーゼ、リポテイコ酸)、エス・アガラクティエ(S. agalactiae)、エス・ミュータンス(S. mutans);エイチ・デュクレイ(H. ducreyi);モラクセラ属細菌種
(Moraxella spp)、例えばブランハメラ・カタラーリス(Branhamella catarrhalis)としても公知であるモラクセラ・カタラーリス(M catarrhalis) (例えば、高分子量又は低分子量のアドヘジン及びインベーシン);ボルデテラ属細菌種(Bordetella spp)、例えばボルテテラ・ペルツッシス(B. pertussis) (例えば、(ペルタクチン)、百日咳毒素又はその誘導体、線維状赤血球凝集素、アデニル酸シクラーゼ、線毛)、ボルテテラ・パラペルツッシス(B. parapertussis)及びボルデテラ・ブロンキセプチカ(B. bronchiseptica);マイコバクテリウム属細菌種(Mycobacterium spp.)、例えばマイコバクテリウム・ツベルクローシス(M. tuberculosis)(例えばESAT6、抗原85A, B 又は C)、マイコバクテリウム・ボビス(M. bovis)、マイコバクテリウム・レプレ(M. leprae)、マイコバクテリウム・アビウム(M. avium)、 マイコバクテリウム・パラツベルクローシス(M. paratuberculosis)、マイコバクテリウム・スメグマチス(M. smegmatis);レジオネラ属細菌種 (Legionella spp)、例えばレジオネラ・ニューモフィラ(L. pneumophila);エシェリキア属細菌種(Escherichia spp)、例えば腸管毒性大腸菌(enterotoxic E. coli)(例えば定着因子、熱不安定性毒素又はその誘導体、熱安定性毒素又はその誘導体)、腸管出血性大腸菌(enterohemorragic E. coli)、腸管病原性大腸菌(enteropathogenic E. coli)(例えば志賀毒素様毒素又はその誘導体) ;ビブリオ属細菌種(Vibrio spp)、例えばビブリオ・コレラ(V. cholera) (例えばコレラ毒素又はその誘導体);シゲラ属細菌種 (Shigella spp)、例えばシゲラ・ソンネイ (S. sonnei), シゲラ・ディセンテリエ(S. dysenteriae)、シゲラ・フレクスネリ(S. flexnerii);エルシニア属細菌種 (Yersinia spp)、例えばエルシニア・エンテロコリチカ(Y. enterocolitica)(例えば、Yopタンパク質)、エルシニア・ペスティス (Y. pestis)、エルシニア・シュードツベルクローシス(Y. pseudotuberculosis);カンピロバクター属細菌種 (Campylobacter spp)、例えばカンピロバクター・ジェジュニ(C. jejuni)(例えば、毒素、アドヘジン及びインベーシン) 及びカンピロバクター・コリ(C. coli);サルモネラ属細菌種(Salmonella spp)、例えばサルモネラ・ティフィ(S. typhi)、サルモネラ・パラティフィ(S. paratyphi)、サルモネラ・コレラスイス(S. choleraesuis)、サルモネラ・エンテリティディス(S. enteritidis);リステリア属細菌種(Listeria spp)、例えばリステリア・モノサイトゲネス(L. monocytogenes);ヘリコバクター属細菌種(Helicobacter spp)、例えばヘリコバクター・ピロリ(H. pylori) (例えば、ウレアーゼ、カタラーゼ、空砲化毒素);シュードモナス属細菌種(Pseudomonas spp)、例えばシュードモナス・エルジノーサ(P. aeruginosa);スタフィロコッカス属細菌種(Staphylococcus spp.)、例えばスタフィロコッカス・アウレウス(S. aureus)、スタフィロコッカス・エピデルミディス(S. epidermidis);エンテロコッカス属細菌種(Enterococcus spp.)、例えばエンテロコッカス・フェカーリス(E. faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(E. faecium);クロストリジウム属細菌種(Clostridium spp.)、例えばクロストリジウム・テタニ(C. tetani)(例えば破傷風毒素及びその誘導体)、クロストリジウム・ボツリナム(C. botulinum)(例えばボツリヌス毒素及びその誘導体)、クロストリジウム・ディフィシレ(C. difficile)(例えばクロストリジウム毒素A又はB及びそれらの誘導体);バシラス属細菌種 (Bacillus spp.)、例えばバシラス・アンスラシス(B. anthracis)(例えばボツリヌス毒素及びその誘導体);コリネバクテリウム属細菌種 (Corynebacterium spp.)、例えばコリネバクテリウム・ジフテリア(C. diphtheriae)(例えばジフテリア毒素及びその誘導体);ボレリア属細菌種(Borrelia spp.)、例えばボレリア・ブルグドルフェリ(B. burgdorferi)(例えばOspA、OspC、DbpA、DbpB)、 ボレリア・ガリニイ(B. garinii)(例えばOspA、OspC、DbpA、DbpB)、ボレリア・アフゼリイ(B. afzelii)(例えばOspA、OspC、DbpA、DbpB)、ボレリア・アンデルソニイ(B. andersonii) (例えばOspA、OspC、DbpA、DbpB)、ボレリア・ヘルムシイ(B. hermsii);エールリキア属細菌種(Ehrlichia spp.)、例えばエールリキア・エクイ (E. equi) 及びヒト顆粒球エールリッヒ病(Human Granulocytic Ehrlichiosis)の因子;リケッチア属細菌種(Rickettsia spp)、例えばリケッチア・リケチイ(R. rickettsii);クラミジア属細菌種(Chlamydia spp.)、例えばクラミジア・トラコマチス(C. trachomatis)(例えばMOMP、ヘパリン結合性タンパク質)、クラミジア・ニューモニエ(C. pneumoniae)(例えばMOMP、ヘパリン結合性タンパク質)、クラミジア・シッタシ(C. psittaci);レプトスピラ属細菌種(Leptospira spp.)、例えばレプトスピラ・インタロガンス(L. interrogans);トレポネーマ属細菌種 (Treponema spp.)、例えばトリポネーマ・パリダム(T. pallidum)(例えばレア(rare)外膜タンパク質)、トレポネーマ・デンチコラ(T. denticola)、トレポネーマ・ヒオディセンテリエ(T. hyodysenteriae);寄生生物、例えばプラスモジウム属の種 (Plasmodium spp.)、例えば熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum);トキソプラズマ属の種(Toxoplasma spp.)、例えばトキソプラズマ・ゴンヂ(T. gondii) (例えばSAG2、SAG3、Tg34);エントアメーバ属の種(Entamoeba spp.)、例えば赤痢アメーバ(E. histolytica);バベシア属の種(spp.)、例えばバベシア・ミクロチ(B. microti);トリパノソーマ属の種(Trypanosoma spp.)、例えばトリパノソーマ・クルージ(T. cruzi);ギアルディア属の種(Giardia spp.)、例えばランブル鞭毛虫(G. lamblia);リーシュマニア属の種(Leshmania spp.)、例えばリーシュマニア・メジャー(L. major);ニューモシスチス属の種(Pneumocystis spp.)、例えばニューモシスティス・カリニ(P. carinii);トリコモナス属の種(Trichomonas spp.)、例えば膣トリコモナス(T. vaginalis);シストストーマ属の種(Schisostoma spp.)、例えばマンソン住血吸虫 (S. mansoni);、或いは酵母、例えばカンジダ属真菌種 (Candida spp.)、例えばカンジダ・アルビカンス (C. albicans);クリプトコックス属真菌種(Cryptococcus spp.)、例えばクリプトコックス・ネオファルマンス(C. neoformans)。
【0043】
マイコバクテリウム・ツベルクロシス(M. tuberculosis)の他の具体的な抗原は、例えばTb Ra12、Tb H9、Tb Ra35、Tb38-1、Erd 14、DPV、MTI、MSL、mTTC2及びhTCC1である(WO 99/51748)。マイコバクテリウム・ツベルクロシス(M. tuberculosis)のタンパク質はまた、融合タンパク質及びそれらの変異体も含み、該タンパク質においては少なくとも2つ、又は少なくとも3つのマイコバクテリウム・ツベルクロシスのポリペプチドがより大きなタンパク質に融合している。融合物の例としては、Ra12-TbH9-Ra35、Erd14-DPV-MTI、DPV-MTI-MSL、Erd14-DPV-MTI-MSL-mTCC2、Erd14-DPV-MTI-MSL、DPV-MTI-MSL-mTCC2、TbH9-DPV-MTIが挙げられる(WO 99/51748)。
【0044】
クラミジア(Chlamydia)の大部分の抗原には、例えば高分子量タンパク質(HWMP) (WO 99/17741)、ORF3 (EP 366 412)、及び推定膜タンパク質(Pmps)が含まれる。ワクチン製剤の他のクラミジア(Chlamydia)抗原は、WO 99/28475に記載の群から選択されうる。
【0045】
細菌性抗原は、ストレプトコッカス属細菌種(Streptococcus spp)、例えばストレプトコッカス・ニゥモニエ(S. pneumoniae)(例えば莢膜多糖及びそのコンジュゲート、PsaA、PspA、ストレプトリシン、コリン結合タンパク質)、並びにタンパク質抗原ニューモリジン(Pneumolysin:肺炎球菌産生毒素)(Biochem Biophys Acta, 1989, 67, 1007; Rubins ら、Microbial Pathogenesis, 25, 337-342)及びその突然変異解毒化誘導体(WO 90/06951; WO 99/03884)に由来してもよい。他の細菌性抗原は、ヘモフィルス属細菌種(Hemophilus spp.)、例えばヘモフィルス・インフルエンザB型(H. influenzae type B)(例えばPRP及びそのコンジュゲート)、型分類不能のヘモフィルス・インフルエンザ、例えばOMP26、高分子量アドヘジン、P5、P6、タンパク質D及びリポタンパク質D、並びにフィンブリン及びフィンブリン由来ペプチド(US 5,843,464)又はそれらの多コピー変異体もしくは融合タンパク質に由来してもよい。
【0046】
B型肝炎表面抗原の誘導体は、当技術分野において周知であり、とりわけ、欧州特許出願EP-A-414 374、EP-A-0304 578及びEP 198-474に記載のPreS1, PreS2 S抗原を含む。1つの実施形態において、HBV抗原はHBVポリメラーゼである(Ji Hoon Jeongら、1996, BBRC 223, 264-271; Lee H.J.ら、Biotechnol. Lett. 15, 821-826)。HIV-由来抗原についてもまた検討されており、例えば特にCHO細胞内で発現される場合のHIV-1 抗原gp120が挙げられる。
【0047】
本発明の免疫原性組成物は、ヒトパピローマウイルス(HPV 6a、6b、11、16、18、31、 33、35、39、45、51、52、56、58、59及び68)に由来する抗原、特に陰部疣を引き起こすと考えられるHPV血清型(HPV 6又はHPV 11など)、及び子宮頸癌を引き起こすHPVウイルス(HPV16、HPV18など) に由来する抗原を含んでもよい。適当なHPV抗原は、E1、E2、E4、E5、E6、E7、L1及びL2である。陰部疣の予防又は治療用の融合体の形態の例としては、L1粒子又はキャプソマー、並びにHPV 6及びHPV 11タンパク質E6、E7、L1及びL2から選択される1以上の抗原を含む融合タンパク質が挙げられる。融合タンパク質の形態の例としては、WO96/26277に開示されているL2E7、及びWO99/10375に開示されているタンパク質D(1/3)-E7が挙げられる。HPVの子宮頸部感染症又は癌の予防又は治療用のワクチンの組成物はHPV 16又は18抗原を含み得る。例えば、L1もしくはL2抗原単量体、又はウイルス様粒子(VLP)として共に存在するL1もしくはL2抗原、又はVLPもしくはキャプソマー構造中に単独で存在するL1タンパク質単独である。このような抗原、ウイルス様粒子及びキャプソマーは、それ自体公知である。例えば、WO94/00152、WO94/20137、WO94/05792及びWO93/02184を参照されたい。
【0048】
付加的な初期タンパク質が、単独で、又はE7、E2もしくはE5などの融合タンパク質として含まれていてもよい。この実施形態は、L1E7融合タンパク質を含むVLPを含む(WO96/11272)。HPV 16抗原は、HPV 16由来の、タンパク質D - E6もしくはE7融合体を形成するようタンパク質D担体と融合した初期タンパク質E6 もしくはE7、又はそれらの組合せ、又はE6 もしくはE7とL2との組合せを含み得る (WO96/26277)。或いは、HPV 16又は18初期タンパク質E6及びE7は、単一の分子、例えばタンパク質D- E6/E7融合体中に存在し得る。他の融合体は、場合によってHPV 18由来のE6及びE7タンパク質の一方又は双方を含む。例えば、タンパク質D - E6 もしくはタンパク質D - E7融合タンパク質又はタンパク質D E6/E7融合タンパク質の形態で含み得る。融合体は、他のHPV株、例えばHPV 31株又は33株由来の抗原を含むことができる。
【0049】
マラリアを引き起こす寄生生物に由来する抗原についてもまた意図されている。例えば、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodia falciparum)に由来する抗原は、RTS,S 及びTRAPを含む。RTSは、B型肝炎表面抗原のpreS2部分の4アミノ酸を介してB型肝炎ウイルスの表面(S)抗原に連結された熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)の環状スポロゾイト(CS)タンパク質のC末端部分を実質的に全て含むハイブリッドタンパク質である。RTSの全構造は、WO93/10152に開示されている。酵母内で発現された場合、RTSはリポタンパク質粒子として産生され、HBV由来のS抗原と共に共発現された場合、RTS は、RTS,Sとして公知の混合粒子を産生する。TRAP抗原は、WO90/01496に記載されている。本発明の1つの実施形態は、抗原調製物がRTS,S抗原とTRAP抗原との組合せを含む融合体である。この融合体の成分の候補となりうる他のプラスモジウム抗原としては、熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)MSP1、AMA1、MSP3、EBA、GLURP、RAP1、RAP2、セクエストリン(Sequestrin)、PfEMP1、Pf332、LSA1、LSA3、STARP、SALSA、PfEXP1、Pfs25、Pfs28、PFS27/25、Pfs16、Pfs48/45、Pfs230及びそのプラスモジウム属の種(Plasmodium spp.)におけるそれらの類似体が挙げられる。
【0050】
本明細書において用いられる「免疫原性組成物」という用語は、患者に投与されると、該患者の免疫応答に正に作用する組成物を意味する最も広い意味に用いられる。免疫原性組成物は患者に、細胞性免疫応答、例えばCTL又は体液性免疫応答例えば抗体誘発のいずれかの、増強された全身又は局所免疫応答を提供する。特に、本発明による免疫原性組成物は、有効量の抗原ポリペプチド/タンパク質特に腫瘍関連抗原、又はその免疫原性誘導体特にその断片、又はコード化ポリヌクレオチド、及び製薬上許容可能な担体を含む製剤に関連することが可能である。安全かつ有効な量は、必要であればアジュバントに関連して、ヒトに投与された場合に、検出可能な免疫応答、例えば体液性応答(抗体)もしくは細胞性応答を生じ、又は典型的なワクチンにおける重大で有害な副作用を起こすことなく免疫系を免疫調節する能力を有するタンパク質の用量を意味する。このような量は、特定のどの免疫原が用いられ、それがどのように与えられるかによって異なる。一般的には、各用量には、1〜5000μgのタンパク質、例えば1〜1000μgのタンパク質、例えば1〜500μgのタンパク質、例えば1〜100μgのタンパク質、例えば1 〜50μgのタンパク質が含まれるであろうと予期される。特定のワクチンの最適量は、被験者における適切な免疫応答の観察を含む標準的な調査によって確認することができる。初回ワクチン接種に続いて、被験者は、十分に間隔をあけた1回又は数回の追加免疫付与を受けることが可能である。ワクチン製剤は、通常Vaccine Design (”The subunit and adjuvant approach” (eds. Powell M.F. & Newman M.J). (1995) Plenum Press New York)に記載されている。リポソーム内へのカプセル化は、Fullerton,米国特許第4,235,877号により記載されている。
【0051】
免疫原性抗原ポリペプチドは、該ポリペプチドを発現する患者に由来する抗血清及び/又はT細胞についての免疫アッセイ(例えばELISA又はT細胞活性化アッセイ)中で検出可能に反応するポリペプチドを指す。当業者に周知の技術を用いて免疫原性活性のスクリーニングを行うことができる。例えば、このようなスクリーニングは、Harlow およびLane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988に記載されたような方法を用いて実施することができる。1つの具体例においては、ポリペプチドは固体支持体上に固定され、患者の血清に接触させられて、血清中の抗体が固定されたポリペプチドに結合することを可能としうる。非結合性の血清はその後除去され、例えば125I-標識タンパク質Aを用いて結合した抗体を検出することができる。
【0052】
本発明のポリペプチド抗原は、SDS PAGEによる可視化で、例えば少なくとも純度80%又は例えば純度90%で提供される。このポリペプチド抗体は、SDS PAGEによって単一のバンドとして出現しうる。
【0053】
抗原の免疫原性誘導体、例えば抗原の免疫原性断片又は部分、特に腫瘍関連抗原又は腫瘍特異的抗原の誘導体もまた、本発明により包含される。本明細書中使用する「免疫原性断片」は、該ポリペプチドを認識するB細胞及び/又はT細胞表面抗原受容体に対してそれ自体免疫学的に反応性の(すなわち、特異的に結合する)断片である。免疫原性部分は通常、周知の技術、例えばPaul, Fundamental Immunology, 3rd ed., 243-247 (Raven Press, 1993)及びそこに引用されている参考文献中に要約されている技術などを用いて同定することができる。これらの技術は、抗原特異的抗体、抗血清及び/又はT細胞株もしくはT細胞クローンと反応する能力のためのポリペプチドのスクリーニングを含む。本明細書において使用される、抗血清及び抗体は、これらが1つの抗原に特異的に結合する(すなわち、ELISA又は他の免疫アッセイにおいて該タンパク質と反応し、無関係のタンパク質とは検出可能に反応しない)場合、「抗原特異的」である。このような抗血清及び抗体は、本明細書に記載のとおりに、周知の技術を用いて調製することができる。
【0054】
1つの実施形態において、ポリペプチドの免疫原性部分は、実質的には全長ポリペプチドの反応性以下ではないレベルで抗血清及び/又はT細胞と、反応する部分である(例えば、ELISA及び/又はT細胞反応性アッセイ中)。該免疫原性部分の免疫原性活性のレベルは、全長ポリペプチドの免疫原性の少なくとも約50%、もしくは少なくとも約70%、又は90%以上でありうる。ある場合には、免疫原性部分は、対応する全長ポリペプチドの免疫原性活性より大きい免疫原性活性のレベルを有する、例えば約100%もしくは150%又はそれ以上の免疫原性活性を有することが確認されるであろう。特定の他の実施形態において、具体的な免疫原性部分は、N末端リーダー配列及び/又は膜貫通ドメインが欠失されているペプチドを含むことができる。他の具体的な免疫原性部分は、成熟タンパク質と比較してN-及び/又はC-末端のわずかな欠失(例えば約1〜50アミノ酸、例えば約1〜30アミノ酸、例えば約5〜15アミノ酸)を含むであろう。
【0055】
別の実施形態において、本発明の具体的な免疫原性組成物、例えばワクチン組成物は、上記のポリペプチドを1以上コードするポリヌクレオチドを含み、該ポリペプチドはin situで生成される。該ポリヌクレオチドは、多様な公知の送達系のいずれかの送達系内で投与することが可能である。実際、多数の遺伝子送達技術が当技術分野において周知であり、例えばRolland,Crit. Rev. Therap. Drug Carrier Systems 15:143-198, 1998及び引用された参考文献に記載された送達技術が知られている。適当なポリヌクレオチド発現系は、当然、患者内で発現するために必要なDNA調節配列(好適なプロモータ、および終結シグナル)を含むであろう。或いは、細菌性送達系は細胞表面にポリペプチドの免疫原性部分を発現する、又はそのようなエピトープを分泌する細菌(例えばBacillus-Calmette-Guerrin)の投与を含むことができる。
【0056】
本発明の1つの実施形態において、ポリヌクレオチドは「裸の(naked)」DNAとして投与/送達される。例えば、Ulmerら、Science 259:1745-1749, 1993 及びCohenによって概説された Science 259:1691-1692, 1993.に記載のとおりである。裸のDNAの取り込みは、DNAを細胞内に効率的に輸送される生分解性ビーズ上にコーティングすることによって増大させることが可能である。1つの実施形態において、該組成物は皮内に送達される。特に、該組成物は遺伝子銃(特に微粒子銃)投与技術によって送達される。この投与技術は、例えばHaynesら、J Biotechnology 44: 37-42 (1996)に記載されるように、ベクターをビーズ(例えば金)上にコーティングし、その後、高圧で表皮内に投与することを含む。
【0057】
1つの具体例においては、Powderject Pharmaceuticals PLC (Oxford, UK)及び Powderject Vaccines Inc. (Madison, WI)によって製造された装置などを用いて、ガス推進粒子加速を達成することができる。幾つかの例が、米国特許第5,846,796号、同第6,010,478号、同第5,865,796号、同第5,584,807号及び欧州特許第0500 799号に記載されている。この方法は無針デリバリー法を提供し、微細粒子の乾燥粉末製剤、例えばポリヌクレオチドは、携帯型デバイスによって生成されたヘリウムガス噴射によって高速まで加速される。該携帯型デバイスは、粒子を目的の標的組織、通常は皮膚内へと発射する。粒子は、0.4〜4.0μm、例えば0.6〜2.0μm直径の金ビーズとこれらの上にコートされたDNAとのコンジュゲートであってよく、「遺伝子銃」内に取り付けるためのカートリッジ又はカセット内に収納される。
【0058】
関連する実施形態において、本発明による組成物のガス推進無針注入に有用な他のデバイス及び方法は、Bioject, Inc. (Portland, OR)によって提供されるデバイス及び方法を含み、その幾つかの例は米国特許第4,790,824号、同第5,064,413号、同第5,312,335号、同第5,383,851号、同第5,399,163号、同第5,520,639号及び同第5,993,412号に記載されている。
【0059】
従って、特定の実施形態において、本明細書中に記載されている免疫原性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、多数の、ウイルスに基づく公知の系のいずれかを用いて発現するために適当な哺乳動物の宿主細胞に導入される。1つの具体的な実施形態においては、レトロウイルスが遺伝子送達系のための便利かつ有効なプラットフォームを提供する。本発明によるポリペプチドをコードする、選択されたヌクレオチド配列は、当技術分野において公知の技術を用いてベクターに挿入され、レトロウイルス粒子中にパッケージングされることが可能である。該組換えウイルスはその後単離され、被験者に送達されることが可能である。多数の具体的なレトロウイルス系が記載されている(例えば、米国特許番号第5,219,740号、Miller及び Rosman (1989) BioTechniques 7:980-990、Miller, A.D. (1990) Human Gene Therapy 1:5-14、Scarpaら(1991) Virology 180:849-852、Burnsら(1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:8033-8037、並びにBoris-Lawrie及びTemin (1993) Cur. Opin. Genet. Develop. 3:102-109。
【0060】
さらに、多数の具体的なアデノウイルスに基づく系もまた記載されている。宿主ゲノムに組み込まれるレトロウイルスとは異なり、アデノウイルスは、染色体外性を持続し、このため挿入性変異原性に伴うリスクを最小化する(Haj-Ahmad及びGraham (1986) J. Virol. 57:267-274、Bettら(1993) J. Virol. 67:5911-5921、Mittereder ら (1994) Human Gene Therapy 5:717-729、Sethら(1994) J. Virol. 68:933-940、Barrら(1994) Gene Therapy 1:51-58、Berkner, K. L. (1988) BioTechniques 6:616-629及びRichら(1993) Human Gene Therapy 4:461-476)。ヒトはAdHu5などの一般的なヒトアデノウイルス血清型に感染することがあるため、かなりの割合の人々が、アデノウイルスに応答する中和抗体を有し、この中和抗体は、組換えワクチンに基づく系において異種抗原に対する免疫応答に影響を及ぼし得る。チンパンジーアデノウイルス68(AdC68, Fitzgeraldら(2003) J. Immunol 170(3):1416-22))などの非ヒト霊長類アデノウイルスベクターは、既存の中和抗体応答の不利益を受けることなく代替的なアデノウイルス系を提供することができる。
【0061】
多様なアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター系もまたポリヌクレオチド送達のために開発されている。AAVベクターは、当技術分野において周知の技術を用いて容易に構築することができる。例えば、米国特許第5,173,414号及び同第5,139,941号、国際公開WO 92/01070 及びWO 93/03769、Lebkowskiら(1988) Molec. Cell. Biol. 8:3988-3996、Vincentら(1990) Vaccines 90 (Cold Spring Harbor Laboratory Press)、 Carter, B. J. (1992) Current Opinion in Biotechnology 3:533-539、Muzyczka, N. (1992) Current Topics in Microbiol. and Immunol. 158:97-129、Kotin, R. M. (1994) Human Gene Therapy 5:793-801、Shelling及びSmith (1994) Gene Therapy 1:165-169、及びZhouら(1994) J. Exp. Med. 179:1867-1875を参照されたい。
【0062】
遺伝子導入による、本発明のポリペプチドをコードする核酸分子の送達に有用なさらなるウイルスベクターは、ワクシニア・ウイルス及び禽痘ウイルスなどのポックスウイルス族に由来するウイルスベクターを含む。一例として、新規な分子を発現するワクシニア・ウイルス組換え体を下記のように構築することができる。先ず、ポリペプチドをコードするDNAが適当なベクターに挿入されて、それによってこのDNAはワクシニアプロモーターに隣接し、ワクシニアDNA配列、例えばチミジンキナーゼ(TK)をコードする配列に隣接する。このベクターはその後、細胞をトランスフェクトするために用いられ、この細胞は同時にワクチン感染させられる。相同的組換えは、ワクシニアプロモーターに加えて目的のポリペプチドをコードする遺伝子をウイルスゲノムに挿入するのに役立つ。得られたTK sup.(-)組換え体は、5-ブロモデオキシウリジンの存在下で該細胞を培養し、5-ブロモデオキシウリジン抵抗性のウイルスプラークを選ぶことによって選択することができる。
【0063】
ワクシニアベースの感染/トランスフェクション系は、本明細書中に記載の1以上のポリペプチドの、生物の宿主細胞における誘導性、一過的発現又は共発現を提供するために便利に用いることが可能である。この特定の系において、細胞は先ずバクテリオファージT7 RNAポリメラーゼをコードするワクシニアウイルス組換体にin vitroで感染させられる。このポリメラーゼは該組換体中で優れた特異性を示し、T7プロモーターを保有する鋳型のみを転写する。感染後、細胞はポリヌクレオチド、すなわちT7プロモーターによって作動する目的のポリヌクレオチドでトランスフェクトされる。細胞質でワクシニアウイルス組換体から発現されたポリメラーゼは、トランスフェクトされたDNAをRNAへと転写し、該RNAはその後、宿主の翻訳機構によってポリペプチドへと翻訳される。該方法は、大量のRNAの、高レベル、一過的な細胞質産生及びその翻訳産物を提供する。例えば、Elroy-Stein及び Moss, Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1990) 87:6743-6747; Fuerstら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1986) 83:8122-8126を参照されたい。
【0064】
或いは、目的のコーディング配列を送達するために、アビポックス・ウイルス、例えば鶏痘ウイルス及びカナリア痘ウイルスを使用することも可能である。哺乳動物の病原菌に由来する免疫原を発現する組換えアビポックス・ウイルスは、非トリ類種に投与された場合には、防護免疫を与えるということが知られている。アビポックスベクターの使用は、ヒト及び他の哺乳類種において特に望ましい。なぜなら、アビポックス属のメンバーは、感受性のトリ種においてのみ生産的に複製することが可能であり、従って哺乳類の細胞には感染性ではないからである。組換えアビポックス・ウイルスの製造方法は、当技術分野において公知であり、ワクシニアウイルスの製造に関して上記のとおり、遺伝子組換えを用いる。例えば、WO 91/12882、WO 89/03429及びWO 92/03545を参照されたい。
【0065】
多数のアルファウイルスベクターのいずれかを、本発明のポリヌクレオチド組成物の送達に用いることもできる。例えば、米国特許第5,843,723号、同第6,015,686号、同第6,008,035号及び同第6,015,694号に記載のベクターである。ベネズエラウマ脳炎(Venezuelan Equine Encephalitis)(VEE)に基づく特定のベクターもまた使用することが可能であり、その具体例は米国特許第5,505,947号及び同第5,643,576号に見出すことができる。
【0066】
抗原ペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むベクターは、予防又は治療上に有効でありうる量で投与される。投与量は、一回の服用量あたりヌクレオチドにして1ピコグラム〜16ミリグラム、例えば粒子による送達については1ピコグラム〜10マイクログラム、他の経路については例えば10マイクログラム〜16ミリグラムの範囲内である。正確な量は、免疫される患者の体重及び投与の経路によって相当に異なる。
【0067】
裸のポリヌクレオチド又はベクターを患者に導入するための適切な技術はまた、適当なビヒクルを用いた局所的な適用も含む。核酸は、皮膚又は粘膜表面に対して局所的に投与されることができる。例えば鼻腔内、経口、膣内又は直腸内投与である。裸のポリヌクレオチド又はベクターは、製薬上許容可能な賦形剤、例えばリン酸緩衝食塩水(PBS)と共存することができる。DNAの取り込みは、ブピバカインなどの促進剤の使用によってさらに促進されることが可能であり、該促進剤はDNA製剤と別個であっても、又はDNA製剤に含まれてもいずれでもよい。核酸を直接受容者に投与するための他の方法は、超音波、電気刺激、エレクトロポレーション及びUS 5,697,901に記載されているマイクロシーディング(microseeding)を含む。
【0068】
核酸構築物の取り込みは、例えばトランスフェクション剤の使用を含む幾つかの公知のトランスフェクション技術によって増強することが可能である。これらの薬剤の例としては、カチオン性薬剤、例えばリン酸カルシウム並びにDEAE-デキストラン及びリポフェクタント、例えばリポフェクタム及びトランスフェクタムが挙げられる。投与されるべき核酸の用量は、変更することができる。
【0069】
さらに別の実施形態において、本発明の免疫原性組成物は、抗体、又は血清、又はFab及びF( ab’)2断片などの抗体のドメインを含む。例えば抗体は、モノクローナル抗体又はその断片である。有効量は通常、患者の体重1kgにつき、100μg〜500mg
、例えば1mg〜50mgである。従って、本発明の方法は、受動免疫療法又は受動免疫学的予防を含む。
【0070】
本発明の免疫原性組成物及びIL-18ポリペプチドは、筋肉内、皮下、腹腔内又は静脈内などの多数の経路によって送達することができる。
【0071】
本発明のIL-18ポリペプチド又はその生物活性断片は、Th1型優位の免疫応答を誘導するものである。高レベルのTh1型サイトカイン(例えばIFN-γ、TNFα、IL-2、 IL-12、IL-18等)は、投与された抗原に対する細胞仲介性免疫応答の誘導に有利に働く傾向がある。一方、高レベルのTh2型サイトカイン(例えばIL-4、IL-5、IL-6及びIL-10)は、体液性免疫応答の誘導に有利に働く傾向にある。サイトカインのファミリーの概説については、Mosmann及びCoffman, Ann. Rev. Immunol. 7:145-173, 1989を参照されたい。「IL-18」又は「IL-18 ポリペプチド」とは、EP0692536、EP 0712931、EP0767178及びWO97/2441中に開示されたIL-18ポリペプチドを意味する。IL-18ポリペプチド誘導体又は変異体は、図1に示される配列番号6(ヒトIL-18)又は配列番号7(マウスIL-18)のアミノ酸配列と、配列番号6及び配列番号7各々の全長にわたって、少なくとも70%の同一性、例えば少なくとも80%の同一性、例えば少なくとも90%の同一性、例えば少なくとも95%の同一性、例えば少なくとも97〜99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドを含む。このようなポリペプチドは、配列番号6及び配列番号7のアミノ酸を各々含有するポリペプチドを含む。IL-18ポリペプチドは、配列番号6及び配列番号7に示されたアミノ酸配列を有してもよい。IL-18断片もまた意図されており、これはIL-18の生物学的(抗原性又は免疫原性)活性、例えばIFN-γの誘導を示すことができるIL-18断片である。IL-18生物活性断片及び/又はIL-18免疫原性断片を用いることができる。
【0072】
IL-18ポリペプチドは、成熟タンパク質の形態であってもよく、融合タンパク質などのより大きなタンパク質の一部であってもよい。IL-18変異体もまた意図されており、該変異体は、保存アミノ酸の置換によって変化したポリペプチドであってその残基が同種の特質をもつ別の残基に置換されている。典型的なこのような置換は、アラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシン間、セリンとトレオニンとの間、酸性残基のアスパラギン酸とグルタミン酸との間、アスパラギンとグルタミンとの間、塩基性残基のリシンとアルギニンとの間、又は芳香族残基のフェニルアラニンとチロシンとの間で起こる。変異体は任意の組合せで、幾つかの、5〜10、1〜5、1〜3、1〜2又は1アミノ酸が置換され、欠失され又は付加されて用いることができる。IL-18生物活性断片についてもまた検討されている。「生物活性断片」は、実質的に全長IL-18と同一の生物活性を保持しているIL-18断片を意味する。生物活性とは、下記の特性のいずれかを意味する:ナチュラルキラー(NK)細胞活性及びTh1細胞応答の増強(NK;NKT細胞の活性化、活性化T細胞の増殖の誘導)、抗-血管新生活性、活性化NK、NKT細胞及びT細胞上のFasリガンドの発現の増強、IFNg、GM-CSF及び他のサイトカイン例えばTh1型サイトカインの産生増大、自然免疫並びにTh1-及びTh2-仲介応答の双方を刺激する能力。
【0073】
特に、IL-18の生物活性断片は、KG-1アッセイ系によってin vitroで測定されるような、IFNg産生を増大させる能力を保持している断片である。ヒトIL-18受容体を発現するヒト骨髄単球性細胞株(KG-1)は、IL-18を用いた処理に対して、IFNgの産生(分泌)(ELISAで測定される)及びNfKBの活性化を増大させることによって応答するであろう(Matsuko Taniguchiら,J. Immunological Methods, 1998, 217, 97-102)。
【0074】
本発明のIL-18ポリペプチドは、任意の適当な方法で作製されることができる。この方法は、天然のポリペプチドを単離すること、該ポリペプチドを組換え的又は合成的に産生すること等を含む。このような作製方法は、当技術分野においてよく理解されている。
【0075】
本発明による免疫原性組成物は、製薬上許容可能な賦形剤又は担体を有利に含むことができる。担体分子は、担体生物、例えば生細菌性ベクターもしくは細菌性担体株、水、生理食塩水、又は他の免疫賦活化学物質を含む幾つかの形態を包含することができる。担体は、水、生理食塩水、又は他の緩衝生理溶液でありうる。担体分子はまた、多孔質ポリマー粒子、例えばマイクロビーズ又はナノ粒子、及び金属塩粒子を含むことが可能であり、該金属塩粒子としては、例えば水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウムもしくはリン酸カルシウム、もしくはリン酸マグネシウム、リン酸鉄、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、水酸化マグネシウム、又は複塩、例えばリン酸アンモニウム-鉄、リン酸カリウム-鉄、リン酸カルシウム-鉄、炭酸カルシウム-マグネシウム、又はこれらの塩の任意の混合物が挙げられる。
【0076】
本明細書において提供される複合製剤を投与すると、患者はTh1-及びTh2-型応答を含む免疫応答を支持するであろう。
【0077】
本発明の実施形態の範囲内において、免疫原性組成物は、別のアジュバント、例えば主にTh1型の免疫応答を誘導するアジュバントを付加的に含むことができる。TH-1誘導アジュバントは、リポ多糖誘導アジュバント、例えば腸内細菌リポ多糖(LPS)、3D-MPL、QS21、 QS21とコレステロールとの混合物、及びCpGオリゴヌクレオチド又は2以上の該アジュバントの混合物を含むアジュバントの群から選択することが可能である。主にTh1型応答を誘発するための特定のアジュバントは、例えば、モノホスホリルリピドA、例えば3 -O-脱アシル化モノホスホリルリピドAとアルミニウム塩との混合物を含むことができる。MPL(登録商標)アジュバントは、Corixa Corporation (Seattle, WA;例えば、米国特許第4,436,727号、4,877,611号、4,866,034号及び4,912,094号を参照されたい)から入手することができる。
【0078】
1つの実施形態において、本発明の免疫原性組成物は、サポニンアジュバント、例えばクウィルA(Quil A)の非毒性画分、例えばQS-17又はQS-21、例えばQS-21を付加的に含むことができる。
【0079】
サポニンは、Lacaille-Dubois, M及びWagner H. (1996. サポニンの生物学的及び薬理学的活性の概説。Phytomedicine vol 2 pp 363-386)中に教示されている。サポニンは、植物界及び海洋動物界において広く分布しているステロイド又はトリテルペン配糖体である。サポニンは、水中でコロイド溶液を形成し、振ると泡立ち、コレステロールを沈殿させることで知られている。サポニンが細胞膜の近くにある場合、膜中に孔様構造を作り出し、膜の破裂を引き起こす。赤血球の溶血はこの現象の一例であり、全てではないが、特定のサポニンの特性である。
【0080】
サポニンは、全身投与用のワクチン内のアジュバントとして公知である。個々のサポニンのアジュバント及び溶血活性は、当技術分野において広く研究されてきた(Lacaille-Dubois and Wagner、上記を参照)。例えば、クウィルA (Quil A)(南米産樹木キラヤ・サポナリア・モリナ(Quillaja Saponaria Molina)の樹皮に由来)、及びその画分は、米国5,057,540及び “Saponins as vaccine adjuvants”, Kensil, C. R., Crit Rev Ther Drug Carrier Syst, 1996, 12 (1-2):1-55、及びEP 0 362 279 B1に記載されている。免疫刺激複合体(Immune Stimulating Complexes (ISCOMS))と呼ばれる粒状構造は、クウィルA (Quil A)又はその画分を含み、ワクチンの製造に用いられている(Morein, B., EP 0 109 942 B1)。これらの構造は、アジュバント活性を有することが報告されている(EP 0 109 942 B1; WO 96/11711)。溶血性サポニンQS21及びQS17(クウィルA のHPLC精製画分)は有効な全身アジュバントとして記載されており、その製造は米国特許第5,057,540号及びEP 0 362 279 B1に開示されている。これらの参考文献中にはまた、全身ワクチン用の有効なアジュバントとして作用するQS7の使用(クウィル-Aの非溶血性画分)が記載されている。QS21の使用は、Kensil ら(1991. J. Immunology vol 146, 431-437)中にさらに記載されている。QS21とポリソルベート又はシクロデキストリンとの組合せもまた公知である(WO 99/10008)。クウィルA、例えばQS21及びQS7の画分を含む粒状アジュバント系は、WO 96/33739及びWO 96/11711に記載されている。
【0081】
全身ワクチンの研究に使用されている他のサポニンは、カスミソウ(Gypsophila)
及びサボンソウ(Saponaria)などの他の植物種に由来するサポニンを含む(Bomfordら、Vaccine, 10(9):572-577, 1992)。
【0082】
サポニンはまた、粘膜適用ワクチン研究において使用されることが公知であり、免疫応答の誘導において様々な成功に遭遇している。クウィル-A (Quil-A)サポニンは、抗原が鼻腔内投与された場合には免疫応答の誘導に効果がないことが従来示されている(Gizurarsonら1994. Vaccine Research 3, 23-29)。一方、他の著者らはこのアジュバントを首尾良く使用している(Maharaj ら、Can.J.Microbiol, 1986, 32(5):414-20; Chavali及びCampbell, Immunobiology, 174(3):347-59)。クウィルAサポニンを含む免疫刺激複合体(ISCOMs)は、胃内及び鼻腔内ワクチン製剤に使用されてアジュバント活性を示している(McI Mowatら、1991, Immunology, 72, 317-322; McI Mowat及びDonachie, Immunology Today, 12, 383-385)。クウィルAの非毒性画分であるQS21もまた、経口又は鼻腔内アジュバントとして記載されている(Suminoら、J.Virol., 1998, 72(6):4931-9; WO98/56415)。
【0083】
1つの強化された製剤は、CpG-含有オリゴヌクレオチドとサポニン誘導体との組合せを含むことが可能であり、例えばWO00/09159及びWO00/62800中に開示されているCpGと QS21との組合せが挙げられる。このような製剤は、水中油エマルション及びトコフェロールを付加的に含むことができる。従って、さらなる実施形態において、本発明の免疫原性組成物は、CpGオリゴヌクレオチドとサポニン、例えばQS21との組合せを含み、場合により水中油エマルション中に製剤化される。該製剤は、場合により3D-MPL(登録商標)アジュバントを付加的に含む。QS-21は、そのより低い反応原性組成物中で提供されることが可能であり、該組成物中ではQS-21はWO 96/33739中に記載のとおりコレステロールでクエンチされる。
【0084】
別の実施形態において、本発明の免疫原性組成物は、腸内細菌性リポ多糖誘導アジュバント、例えば、モノホスホリルリピドA、例えば3-O-脱アシル化モノホスホリルリピドAを付加的に含む。
【0085】
腸内細菌性リポ多糖(LPS)は、アジュバント中での使用はその毒性作用によって縮小されるが、免疫系の有効な刺激因子であることが長く公知となっている。還元末端グルコサミンからのコア炭水化物群及びリン酸の除去によって作製される、LPSの非毒性誘導体、モノホスホリルリピドA(MPL)は、Ribiら (1986, Immunology and Immunopharmacology of bacterial endotoxins, Plenum Publ. Corp., NY, p407-419)により記載されており、下記の構造を有する:
【化1】

【0086】
モノホスホリルリピドA(MPL)のさらなる解毒型は、二糖類骨格の3位からのアシル鎖の除去によって生じ、3-O-脱アシル化モノホスホリルリピドA (3D-MPL)と呼ばれる。3D-MPLは、GB 2122204B中に教示される方法によって精製及び調製することが可能であり、その参考文献もまた、ジホスホリルリピドA、及びその3-O-脱アシル化変異体の調製を開示する。3D-MPLの1つの形態は、直径0.2μm以下の小さな粒子サイズを有するエマルションの形態であり、その製造方法はWO94/21292に開示されている。モノホスホリルリピドAと界面活性剤とを含む水性製剤は、WO98/43670A2に開示されている。
【0087】
本発明のアジュバント化合物中に製剤化されるべき細菌リポ多糖誘導アジュバントは、細菌源から精製及び加工することが可能であるか、或いは合成することが可能である。例えば、精製されたモノホスホリルリピドAは、Ribi ら1986 (前出)に記載されており、サルモネラ種(Salmonella sp.)に由来する3-O-脱アシル化モノホスホリル又はジホスホリルリピドAは、GB 2220211及びUS 4,912,094に記載されている。他の精製された及び合成のリポ多糖は記載されている(WO98/01139、 US 6,005,099 及びEP 0 729 473 B1、Hilgersら、1986, Int.Arch.Allergy.Immunol., 79(4):392-6、Hilgersら、1987, Immunology, 60(1):141-6、及びEP 0549074B1)。使用できる細菌リポ多糖アジュバントは、US 6,005,099及びEP0729 473B1に記載されている3D-MPL及びβ(1-6)グルコサミン二糖である。
【0088】
従って、本発明において使用できるLPS誘導体は、LPS又はMPL又は3D-MPLと構造が類似する、これらの免疫賦活剤である。本発明の別の局面においては、LPS誘導体は、MPLの上記構造の一部分であるアシル化単糖であってもよい。
【0089】
1つの二糖アジュバントは、以下の式:
【化2】

【0090】
[式中、R2はH又はPO3H2であってよく、R3は1つのアシル鎖又はβ-ヒドロキシミリストイル又は以下の式
【化3】

【0091】
[式中、X及びYは、0から約20までの値を有する]
を有する3-アシルオキシアシル残基であってよい]
であらわされる精製された又は合成のリピドAである。
【0092】
3D-MPLとキラヤ・サポナリア・モリナ(Quillaja Saponaria molina)の樹皮に由来するサポニンアジュバントとの組合せは、EP 0761 231Bに記載されている。WO 95/17210は、スクアレン、α-トコフェロール、及びポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(TWEEN80)に基づくアジュバントエマルション系を開示し、該エマルション系は免疫賦活剤QS21と共に、場合により3D-MPLと共に製剤化される。
【0093】
従って、別の実施形態において、本発明による免疫原性組成物は(1)抗原又はその免疫原性断片、及び(2) CpGアジュバントと、サポニンアジュバント例えばQS21、例えばそのコレステロールでクエンチされた形態の3D-MPLを含むリストから選択される1以上のアジュバントとの組合せ、並びに水中油エマルションを含む。
【0094】
1つのさらなる実施形態において、本発明による免疫原性組成物は、モノホスホリルリピドAのCpGアジュバントへの組合せを含み、、モノホスホリルリピドAとサポニンアジュバントとの組合せ、例えばWO94/00153に記載されるような、3D-MPL(登録商標)アジュバントとQS21との組合せか、又はWO96/33739に記載のように、QS21がコレステロールでクエンチされる、より反応原性の低い組成物を含むことが可能である。他の製剤は、QS-21に加えて水中油エマルション及びトコフェロールを含むことができる。CpGアジュバントに加えることが可能な、水中油エマルション中の、QS21、3D-MPL(登録商標)アジュバント及びトコフェロールの組合せを用いる別の製剤は、WO95/17210に記載されている。従って、本発明による免疫原性組成物は、抗原、例えば腫瘍関連抗原、CpGアジュバント、サポニンアジュバント、例えばQS-21を含み、場合により3D-MPL(登録商標)アジュバントを共に含み、場合によりQS-21に加えて水中油エマルションとトコフェロールとを含む。例えばQS-21は、コレステロールでクエンチされる。
【0095】
或いは、本発明の免疫原性組成物中のサポニンアジュバントは、キトサン又は他のポリカチオン性ポリマー、ポリラクチド及びポリラクチド-コ-グリコリド粒子、ポリ-N-アセチルグルコサミンに基づくポリマーマトリクス、多糖又は化学修飾多糖からなる粒子、リポソーム及びリピドベースの粒子、グリセロールモノエステルからなる粒子等からなるワクチンビヒクルと組み合わせることが可能である。サポニンはまた、コレステロールの存在下、リポソーム又は免疫刺激複合体(ISCOMs)などの粒状構造を形成するように製剤化することが可能である。さらに、該サポニンは、非粒状溶液もしくは懸濁液中、又は寡層薄膜(paucilamelar)リポソームもしくは免疫刺激複合体(ISCOM)などの粒状構造中のいずれにおいても、ポリオキシエチレンエーテル又はエステルと共に製剤化されることができる。サポニンはまた、粘度を増大させるためにCarbopol(登録商標)などの賦形剤と共に製剤化することが可能であり、又はラクトースなどの粉末賦形剤と共に乾燥粉末形態に製剤化することが可能である。
【0096】
ワクチン及び免疫原性組成物は、単位用量又は多用量容器、例えば密封されたアンプル又はバイアル中に存在することが可能である。このような容器は、使用するまで製剤の無菌性を保つために密封することが可能である。一般的には、製剤は油性もしくは水性ビヒクル中の懸濁液、溶液又はエマルションとして保存することが可能である。或いは、ワクチン又は免疫原性組成物は、使用直前に無菌液体担体の添加のみを必要とする凍結乾燥状態で保存することが可能である。
【0097】
多様な送達ビヒクルのいずれかを、腫瘍細胞を標的とする抗原特異的免疫応答の産生を促進するために、免疫原性組成物及びワクチン中に用いることができる。本発明の一つの実施形態によれば、本明細書中に記載されている免疫原性組成物は、抗原提示細胞(APC)例えば樹状細胞、マクロファージ、B細胞、単球及び効率的な抗原提示細胞(APC)となるように操作されうる他の細胞によって宿主へと送達される。抗原提示細胞(APC)は、抗原提示能力を増大し、T細胞応答の活性化及び/又は維持を改善し、それ自体で抗腫瘍効果を有し、及び/又は受容者と免疫学的に適合する(すなわち、HLAハプロタイプが適合する)ように遺伝子改変されても、されなくともよい。抗原提示細胞(APC)は、通常、腫瘍及び腫瘍周辺組織を含む、多様な生体液及び器官のいずれかから単離することが可能であり、自系、同種異系、同系又は異種細胞でありうる。
【0098】
本発明の特定の実施形態は、抗原提示細胞として樹状細胞又はその前駆体を用いることができる。樹状細胞は非常に有効な抗原提示細胞(APC)であり(Banchereau J. 及びSteinman R.M., Nature, 1998, 392:245-251)、予防又は治療の抗腫瘍免疫を誘発するための生理的アジュバントとして有効であることが示されている(Timmerman J.M. 及びLevy R., Ann. Rev. Med, 1999, 50:507-529を参照されたい)。一般的に、樹状細胞はその典型的な形状(in situにおいては星状、in vitroにおいては際立った細胞質突起(樹状突起)がみられる)、高い効率で抗原を取込み、処理し、提示する能力、及びナイーブT細胞の応答を活性化する能力に基づいて同定することができる。樹状細胞は当然、in vivo又はex vivoにおいて通例は樹状細胞上に見られない特定の細胞表面受容体又はリガンドを発現するように操作されることが可能であり、このように改変された樹状細胞は本発明により意図されている。樹状細胞の代替として、分泌小胞抗原を取込んだ樹状細胞(エキソソームと呼ばれる)をワクチンに用いることができる(Zitvogel L. ら、Nature Med., 1998, 4:594-600を参照されたい)。従って、in vitroで本明細書に記載のポリペプチドを取込むことによって改変され、又はin vitroで本明細書に記載のポリペプチドを発現するように遺伝子改変された有効量の樹状細胞又は抗原提示細胞、及び製薬上有効な担体を含む免疫賦活製剤、例えばワクチンが提供される。
【0099】
樹状細胞及び前駆体は、末梢血、骨髄、腫瘍浸潤細胞、腫瘍周囲組織浸潤細胞、リンパ節、脾臓、皮膚、臍帯血、又は他の適当な組織又は体液のいずれかから得ることができる。例えば、樹状細胞はGM-CSF、IL-4、IL-13及び/又はTNFαなどのサイトカインの組合せを末梢血から回収した単球の培養物に添加することによってex vivoで分化することができる。或いは、末梢血、臍帯血又は骨髄から回収されたCD34陽性細胞は、GM-CSF、IL-3、TNFα、CD40リガンド、リポ多糖LPS、flt3リガンド及び/又は樹状細胞の分化、成熟及び増殖を誘導する他の化合物の組合せの培地へ添加することにより樹状細胞へと分化することができる。樹上細胞は、従来「未成熟」及び「成熟」細胞として分類されており、簡単な方法で2つのよく特徴付けられた表現型を識別することが可能となる。しかし、この用語は、分化の、可能性のある全ての中間段階を排除すると解釈されるべきではない。未成熟樹状細胞は、Fcγ受容体及びマンノース受容体の高発現と相関する、抗原取込み及びプロセシングの高い能力を有する抗原提示細胞(APC)として特徴付けられる。成熟表現型は通常、これらのマーカーは低発現するが、T細胞活性化に関与する細胞表面分子、例えばクラスI及びクラスII MHC、接着分子(例えば、CD54及びCD11)並びに共刺激分子(例えば、CD40、CD80、CD86及び4-1BB)は高発現することによって特徴付けられる。
【0100】
抗原提示細胞(APCs)は通常、腫瘍ポリペプチド又はその免疫原性部分が細胞表面に発現されるように、腫瘍タンパク質(例えば、MAGE-3、Her2/neu、又はそれらの誘導体)をコードするポリヌクレオチドでトランスフェクトされることが可能である。このようなトランスフェクションはex vivoで起こり、このようにトランスフェクトされた細胞を含む組成物又はワクチンはその後、本明細書に記載のように治療目的に用いられる。或いは、樹状又は他の抗原提示細胞を標的とする遺伝子送達ビヒクルを患者に投与することが可能であり、その結果in vivoでトランスフェクションが起こる。樹上細胞のin vivo及びex vivoトランスフェクションは通常、当技術分野において公知のいずれかの方法、例えばWO 97/24447中に記載の方法、又はMahvi D.M.らImmunology and Cell Biology, 1997, 75:456-460により記載された遺伝子銃アプローチを用いて実施することができる。樹状細胞の抗原取り込みは、樹状細胞又は前駆細胞を、腫瘍ポリペプチド、DNA(裸のもしくはプラスミドベクター内)もしくはRNAと共に、又は抗原発現組換え細菌もしくはウイルス(例えば、ワクシニア、鶏痘、アデノウイルスもしくはレトロウイルスのベクター)と共にインキュベートすることによって達成されることが可能である。
【0101】
他の適当な送達系は、ミクロスフェアを含み、該ミクロスフェアにおいては、抗原物質が生分解性ポリマー/ミクロスフェアに組み込まれ又はコンジュゲートしており、このため抗原物質は適当な医薬担体と混合され、ワクチンとして使用することができる。「ミクロスフェア」という用語は通常、実質的に球状で、10nm〜2mmの範囲内の直径を有するコロイド粒子を表すために用いられる。非常に広範囲な天然及び合成ポリマーから製造されるミクロスフェアは、多様な生物医学的用途を有することが判明している。この送達系は、効力を得るためには複数の処理を要する短いin vivo半減期を有するタンパク質、又は生体液中で不安定であるか、もしくはその相対的に高い分子量のために消化管から完全には吸収されないタンパク質に特に有利である。幾つかのポリマーがタンパク質放出用のマトリクスとして記載されている。適当なポリマーには、ゼラチン、コラーゲン、アルギナート、デキストランが含まれる。送達系には、生分解性ポリ(DL-乳酸)(PLA)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLG)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)及び共重合体ポリ(DL-乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)が含まれうる。他の系には、不均一ヒドロゲル、例えば、親水性ポリ-(エチレングリコール)(PEG)及び疎水性ポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT) をベースとする反復ブロックを含有するポリ(エーテル エステル)多ブロック共重合体、又はポリ(エチレングリコール)-テレフタル酸/ポリ(-ブチレンテレフタレート)(PEGT/PBT) (Sohier らEur. J. Pharm及びBiopharm, 2003, 55, 221-228)が含まれる。系は、例えばPLGA、PLA及びPEGT/PBTのように 1〜3月間にわたり徐放をもたらすことができる。
【0102】
治療レジメンは、当該患者の大きさ及び種、投与される核酸ワクチン及び/又はタンパク質組成物の量、投与経路、使用されるいずれかのアジュバント化合物の力価及び用量並びに熟練した医師にとっては明らかな他の要因によって大きく異なる。
【0103】
本発明は、下記の非限定的な実施例を参照することによりさらに説明される。
【実施例】
【0104】
実施例I
CpGをベースとする免疫原性組成物を用いるワクチン製剤
I.1. リポソーム製剤中にQS21とCpGとを含有する免疫原性製剤(AS15アジュバント):
このアジュバント系AS15は、WO 00/62800に以前記載されている。
【0105】
AS15は、2つのアジュバント系である、AS01B及びAS07Aの新規な組合せである。AS01Bは、3D-MPLとQS21とを含むリポソームからなり、AS07Aはリン酸緩衝食塩水(PBS)中のCpG 7909 (CpG 2006としても公知)からなる。
【0106】
3D-MPL: は、グラム陰性細菌サルモネラ・ミネソタ(Salmonella minnesota)のリポ多糖(LPS)に由来する免疫賦活剤である。MPLは脱アシル化されており、リピドA部分上のリン酸基を欠く。この化学的処理は、免疫賦活特性を維持したまま毒性を劇的に減少させる(Ribi, 1986)。Ribi Immunochemistryは、MPLを製造し、GSK- Biologicalsに供給している。
【0107】
QS21: は、南米産樹木キラヤ・サポナリア・モリナ(Quillaja saponaria Molina)の樹皮から抽出された天然のサポニン分子である。樹皮の粗抽出液から個々のサポニンを分離するために開発された精製技術によって、特定のサポニンであるQS21の単離を可能とした。QS21は、親成分と比較して強いアジュバント活性及び低い毒性を示すトリテルペン配糖体である。QS21は、幾つかのサブユニットAgに対するMHCクラスI拘束性CTLを活性化し、Ag特異性リンパ球増殖を賦活することが示されている(Kensil, 1992)。Aquila (正式にはCambridge Biotech Corporation)は、QS21を製造し、GSK-Biologicalsに供給している。
【0108】
CpG: CpGODN 7909は、24塩基長の合成一本鎖ホスホロチオエートオリゴデオキシ-ヌ
クレオチド(ODN)である。その塩基配列である5’-TCGTCGTTTTGTCGTTTTGTCGTT-3’は、ヒト免疫系の賦活のために最適化されている。CpG DNA、又はCpG モチーフを含有する合成ODNは、樹状細胞、単球及びマクロファージを活性化してTH1様サイトカインを分泌し、細胞溶解性T細胞の産生を含むTH1 T細胞応答を誘導し、ナチュラルキラー細胞を賦活してIFNgを分泌し、その溶解活性を増大させることが知られている。該合成ODNはまた、B細胞を活性化して増殖させる(Krieg Aら1995 Nature 374: 546、Chu R ら 1997 J. Exp. Med. 186: 1623)。CpG7909は、ヒトゲノムの任意の既知の配列に対するアンチセンスではない。CpG7909は、Coley Pharmaceutical Group, Inc., MA, USによって開発され、製造されている専売アジュバントである。
【0109】
CpGを用いた処方:
処方は、注入期間実施された。1匹のマウスに対する注入量は、50又は100μlであった。リポソーム中にCpG、3D-MPL及びQS21を含む典型的な処方は、以下のとおりに実施される:20μg〜25μgの抗原は、等張性のためにH2O及びPBS pH 7.4を用いた希釈した。5分後、QS21/コレステロールが1/5の重量比(DQと呼ばれる)でリポソームと混合したQS21(0.5μg)を処方物に加えた。30分後、10μgのCpG(ODN 2006)を、防腐剤としての1μg /mlチオマーサル添加の30分前に加えた。全てのインキュベーションは、室温で攪拌しながら行った。
【0110】
I.2. CpGとAS02(AS02は、水中油エマルション中のQS21と3 -O-脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MPL))とを含有する免疫原性製剤:
アジュバント系AS02については、WO 95/17210に先に記載されている。
【0111】
3D-MPL: は、上記に記載のとおりである。
【0112】
QS21: は、上記に記載のとおりである。
【0113】
油/水エマルションは、乳化剤として、2種の油(トコフェロール及びスクアレン)で作られる有機相と、PBS含有Tween 80の水相とからなる。該エマルションは、5%スクアレン、5%トコフェロール、0.4% Tween 80を含み、平均粒子サイズ180 nmを有していて、SB62として公知である(WO 95/17210を参照されたい)。
【0114】
エマルションSB62の調製 (2倍濃縮):
Tween 80は、リン酸緩衝食塩水中(PBS)に溶解され、PBS中に2%溶液を生じる。100mlの2倍濃縮エマルションを提供するために、5gのDLアルファトコフェロール及び5mlのスクアレンがボルテックスされ、十分に混合される。90mlのPBS/Tween溶液が添加され、十分に混合される。生じる該エマルションはその後シリンジを通され、最終的にはM110Sマイクロフルイディクス装置を用いてマイクロ流動化される。生じる該油滴は、約180nmの大きさを有する。
【0115】
CpGを用いた処方:
油/水エマルション中に3D-MPL及びQS21を含む標準的な処方は、以下のとおりに実施される:CpGオリゴヌクレオチド(100μg)及び防腐剤としての1μg /mlチオマーサルを含む、SB62 (50μl)、MPL (20μg)、QS21 (20μg)の逐次添加の前に、20μg〜25μgの抗原が、PBS pH 6.8の10倍濃縮物及びH2O中で希釈される。各成分の量は、必要に応じて変更することができる。全てのインキュベーションは、室温で攪拌しながら行われる。
【0116】
実施例II
TC1 Her2治療モデルにおける、AS15でアジュバント化されたHer2/neuワクチンと組み合わせたmIL18の効果
II.1. 実験計画
ワクチン
Her-2/neuワクチンは、ECD-PhDであり、細胞外ドメイン全体(アミノ酸1〜645を含む)と、リン酸化ドメインを含む細胞内ドメインの免疫原性部分とを含む。このようなワクチン構築物は、WO00/44899中に開示されており、dHER2と呼ばれる。
【0117】
このdHER2タンパク質は、抗原をH2O、サッカロース及びNaH2PO4/K2HPO4の混合物中で希釈することによってCpGと共凍結乾燥された。5分後、凍結乾燥前にCpG ODN 7909を添加し、625μg / mlのHer2neu、1250μg/mlのCpG、3.15%のサッカロース及び5 mMのpH 7のPO4を含有する最終バルクを得た。最終バルクは、3日サイクルで凍結乾燥した。即席処方のため、CpG及び抗原を含有する凍結乾燥されたケーキは、100μg / mlのMPL及びDQを含有する625μlのAS01B 希釈液で再懸濁した。
【0118】
動物は、25μgのHer2/neu、50μgのCpG並びに 5μgのMPL及びDQを含む50μlを注入した。
【0119】
HER-2/neuを発現する腫瘍モデル
これらの実験中で用いた腫瘍モデル:TC1HER2は、HER-2/neuをコードする組換えレトロウイルスを用いたTC1細胞(John’s Hopkins University, Baltimoreの Dr T.C. Wuにより提供)のレトロウイルス形質導入によって作製した。
【0120】
個々のクローンを、単離し、増幅しHER2/neu及びMHCクラスI発現の安定性をフロー・サイトメトリーによって確認した。
【0121】
マウスのグループ:
5 匹のメスCB6F1マウス4グループは、0日目に2x10e6 TC1Her2 cl8細胞の皮下(SC)接種を受け、その後、以下のいずれかのワクチン接種を受けた:
グループ1: PBS
グループ2: 7日目から27日目まで100μgのmIL18 (マウス)を毎日注入(SC)
グループ3: 7日目と14日目に25μgのAS15中dHER2タンパク質(1M)
グループ4: ワクチンとmIL18との組合せ
II.2 In vivoでの腫瘍の増殖及び死亡率
結果は、図2及び表1に示す。
【表1】

【0122】
II.3結論
マウス組換えIL-18の反復注入と組み合わせた、アジュバント(AS15)中に製剤化した組換え精製HER-2/neuタンパク質(dHER2)の使用に基づくワクチンストラテジーによって、HER-2/neu抗原を発現する予め樹立された腫瘍に関して、ワクチン組成物又はIL-18のみを用いたワクチン接種ストラテジーと比較した場合に、改善された結果が得られた。AS15アジュバント中に製剤化された組換えdHERタンパク質の使用に基づくワクチン接種は、HER-2/neu抗原を発現するこれらの腫瘍細胞の接種に対してマウスを非常に効率的に保護することが以前に示されている。この保護は、HER-2/neu抗原に対して特異的であり、長期免疫記憶の誘導に関連する。このさらにストリンジェントな治療モデルにおいて、腫瘍が予め樹立されていた場合、ワクチン接種の有効性は低く、成長している腫瘍に対して限られた効果のみを有することが示されている(これらの条件下で完全に腫瘍を拒絶したマウスはない)。しかし驚くべきことに、両方の処理が同時に行われた場合、相乗効果が観察され、60%のマウスが完全に腫瘍に羅患しないままである一方、40%のマウスのみが小さな腫瘍を発症する。結論としては、表1に示されるように、mIL-18とワクチンとを組み合わせることには明らかに利点がある。これは、ワクチンによるHER-2/neu特異的T細胞応答の誘導とIL-18の反復注入による免疫系の活性化との両方が腫瘍退縮に至るために重要であることを意味しうる。
【0123】
実施例III
TC1 Mage3治療モデルにおける、AS15でアジュバント化したMAGE-3ワクチンとの組み合わせにおけるmIL18の効果
III.1. 実験計画
ワクチン
Mage3腫瘍抗原を発現する腫瘍モデルは、Mage3をコードするDNAプラスミド(PcDNA3 Mage3)の伝統的なトランスフェクションによるTC1親細胞の遺伝子改変によって作製した(TC1Mage3)。この腫瘍モデルは、Mage3をコードするPcDNA3プラスミドで親TC1細胞(John’s Hopkins University, Baltimore のT.C. Wu より提供)をトランスフェクトすることによって作成された。このトランスフェクションは、キットの提供者の(Gibco BRL Life Technologies, cat no 18324-012)推奨によるリポフェクタミンを用いて実施した。
【0124】
これらの細胞は腫瘍原性であり、2x10e6 TC1 Mage3細胞を接種したマウスの100%が腫瘍を発症した。
【0125】
5 匹のメスC57BL/6マウス4グループは、0日目に2x10e6 TC1 Mage3細胞の皮下(SC)接種を受け、その後以下のいずれかのワクチン接種を受けた
グループ1: PBS
グループ2: 7日目から27日目まで100μgのmIL18 (マウス)を毎日注入(SC)
グループ3: 7日目と14日目に10μgのAS15中Mage3タンパク質(1M)
グループ4: ワクチンとmIL18との組合せ
AS15中Mage3のワクチン接種、IL18注入及び組合せ治療の腫瘍退縮を誘導する能力を調べる。ワクチン接種又は/及びIL18治療の免疫パラメータに及ぼす効果もまた測定する(リンパ増殖、サイトカイン産生など)。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1A】ヒトIL-18ポリペプチド配列を示す。
【図1B】マウスIL-18ポリペプチド配列を示す。
【図2】TCl Her2治療モデルにおけるin vivoでの腫瘍の増殖を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
安全かつ有効な量の1)IL-18ポリペプチド又はその生物活性断片もしくは変異体と、2)抗原又はその免疫原性誘導体及びCpGアジュバントを含む免疫原性組成物とを、哺乳類に投与することを含む、哺乳類において抗原に対する免疫応答を増強する方法。
【請求項2】
前記抗原又はその免疫原性誘導体が、ヒト免疫不全ウイルスHIV-1、ヒト単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、ロタウイルス、エプスタインバー・ウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、肝炎ウイルス、例えばB型肝炎ウイルス、A型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスおよびE型肝炎ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、パラインフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、ヒトパピローマウイルス、フラビウイルス又はインフルエンザウイルス、ナイセリア属細菌種(Neisseria spp)、モラクセラ属細菌種(Moraxella spp)、ボルデテラ属細菌種(Bordetella spp)、マイコバクテリウム・ツベルクロシス(M. tuberculosis)を含むマイコバクテリウム属細菌種(Mycobacterium spp)、腸管毒性大腸菌(enterotoxic E. coli)を含むエシェリキア属細菌種(Escherichia spp)、サルモネラ属細菌種(Salmonella spp)、リステリア属細菌種(Listeria spp)、ヘリコバクター属細菌種(Helicobacter spp)、スタフィロコッカス・アウレウス(S. aureus)、スタフィロコッカス・エピデルミディス(S. epidermidis)を含むスタフィロコッカス属細菌種(Staphylococcus spp.)、ボレリア属細菌種(Borrelia spp)、クラミジア・トラコマチス(C. trachomatis)、クラミジア・ニューモニエ(C. pneumoniae)を含むクラミジア属細菌種 (Chlamydia spp.)、熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)を含むプラスモジウム属の種 (Plasmodium spp.)、トキソプラズマ属の種 (Toxoplasma spp.)、カンジダ属真菌種(Candida spp.)を含む群から選択される生物に由来する、請求項2に記載の方法。
【請求項3】
安全かつ有効な量の1)IL-18ポリペプチド又はその生物活性断片もしくは変異体と、2)腫瘍関連抗原又はその免疫原性誘導体及びCpGアジュバントを含む免疫原性組成物とを、必要とする患者に投与することを含む、患者における癌の重篤度を軽減する方法。
【請求項4】
腫瘍関連抗原又はその免疫原性誘導体が、MAGEファミリー、PRAME、BAGE、LAGE 1、 LAGE 2、SAGE、HAGE、XAGE、PSA、PAP、PSCA、プロステイン(prostein)、P501S、HASH2、クリプト(Cripto)、B726、NY-BR1.1、P510、MUC-1、プロスターゼ(Prostase)、STEAP、チロシナーゼ、テロメラーゼ、スルビビン(survivin)、CASB616、P53、又はher 2 neuに由来する抗原を含む群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記IL-18ポリペプチド又はその生物活性断片もしくは変異体と免疫原性組成物とが同時に、別々に又は任意の順序で連続的に投与される、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記IL-18ポリペプチド又はその生物活性断片もしくは変異体と免疫原性組成物とが複合医薬製剤の形態で同時に投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記IL-18ポリペプチド又はその生物活性断片もしくは誘導体がヒト又はマウスに由来する、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
IL-18が、配列番号6もしくは配列番号7又はその生物活性断片もしくは誘導体のポリペプチドである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記CpGアジュバントが、プリン、プリン、C、G、ピリミジン、ピリミジン配列を含む、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記CpGアジュバントが、TCC ATG ACG TTC CTG ACG TT (配列番号1)、TCT CCC AGC GTG CGC CAT (配列番号2)、ACC GAT GAC GTC GCC GGT GAC GGC ACC ACG (配列番号3)、TCG TCG TTT TGT CGT TTT GTC GTT (配列番号4)、TCC ATG ACG TTC CTG ATG CT (配列番号5)を含む群から選択される、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記CpGアジュバントが、少なくとも3つのヌクレオチドで隔てられた少なくとも2つの非メチル化CG反復を含む、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記免疫賦活性オリゴヌクレオチドが、6つのヌクレオチドで隔てられた少なくとも2つの非メチル化CG反復を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
1)IL-18ポリペプチド又はその生物活性断片もしくは変異体と、2)抗原及びCpGアジュバントを含む免疫原性組成物との個々の成分を活性成分として含み、該活性成分が、感染症、癌、自己免疫疾患及び関連する症状の予防及び/又は治療のための同時、分離又は連続使用に用いられる複合製剤。
【請求項14】
成分(1)及び(2)が1つの組成物中に混合されている、請求項13に記載の複合製剤。
【請求項15】
前記免疫原性組成物が、腫瘍関連抗原又はその免疫原性誘導体を含み、癌に対して予防又は治療活性を有する、請求項13又は14に記載の複合製剤。
【請求項16】
前記腫瘍関連抗原又はその免疫原性誘導体が、MAGEファミリー、PRAME、BAGE、LAGE 1、 LAGE 2、SAGE、HAGE、XAGE、PSA、PAP、PSCA、プロステイン(prostein)、P501S、HASH2、クリプト(Cripto)、B726、NY-BR1.1、P510、MUC-1、プロスターゼ(Prostase)、STEAP、チロシナーゼ、テロメラーゼ、スルビビン(survivin)、CASB616、P53、又はher 2 neuに由来する抗原を含む群から選択される、請求項15に記載の複合製剤。
【請求項17】
前記IL-18ポリペプチド又はその生物活性断片もしくは誘導体がヒト又はマウスに由来する、請求項13〜16のいずれかに記載の複合製剤。
【請求項18】
IL-18が、配列番号6もしくは配列番号7又はその生物活性断片もしくは誘導体のポリペプチドである、請求項17に記載の複合製剤。
【請求項19】
前記CpGアジュバントが、請求項9〜12のいずれかに定義されているものである、請求項13〜18のいずれかに記載の複合製剤。
【請求項20】
前記免疫原性組成物が、3D-MPL、QS21、QS21とコレステロールとの混合物、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、トコフェロール、及び水中油エマルション又は
前記アジュバントの2種以上の組合せを含む群から選択される免疫賦活性化学物質を付加的に含む、請求項13〜19のいずれかに記載の複合製剤。
【請求項21】
前記免疫原性組成物アジュバントが、3D-MPL、CpG、QS21、コレステロール、水中油エマルションを含む、請求項20に記載の複合製剤。
【請求項22】
前記水中油エマルションが、スクアレン、トコフェロール及びポリオキシエチレンソルビタンモノオレート(Tween 80)を含む、請求項21に記載の複合製剤。
【請求項23】
前記免疫原性組成物が、QS21、コレステロール及びCpGアジュバントを含む、請求項20に記載の複合製剤。
【請求項24】
双方の活性成分が、注射剤の形態である、請求項13〜23のいずれかに記載の複合製剤。
【請求項25】
1)IL-18ポリペプチド又はその生物活性断片と、2)抗原もしくはその免疫原性誘導体及びCpGアジュバントを含む免疫原性組成物との個々の成分を活性成分として含み、該活性成分が、感染症、癌及び自己免疫疾患の予防及び/又は治療のための同時、分離又は連続使用に用いられる医薬品キット。
【請求項26】
前記免疫原性組成物が、腫瘍関連抗原又はその免疫原性誘導体を含み、癌に対して予防又は治療活性を有する、請求項25に記載の医薬品キット。
【請求項27】
前記腫瘍関連抗原又はその免疫原性誘導体が、MAGEファミリー、PRAME、BAGE、LAGE 1、 LAGE 2、SAGE、HAGE、XAGE、PSA、PAP、PSCA、プロステイン(prostein)、P501S、HASH2、クリプト(Cripto)、B726、NY-BR1.1、P510、MUC-1、プロスターゼ(Prostase)、STEAP、チロシナーゼ、テロメラーゼ、スルビビン(survivin)、CASB616、P53、又はher 2 neuに由来する抗原を含む群から選択される、請求項26に記載の医薬品キット。
【請求項28】
医療で用いるための、請求項13〜23のいずれかに記載の複合製剤。
【請求項29】
請求項13〜24のいずれかに記載の複合製剤の使用を含む、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
感染症、癌、自己免疫疾患及び関連する症状に羅患し又は罹りやすく、かつ抗原又はその免疫原性誘導体及びCpGアジュバントを含む免疫原性組成物で既にプライミングされた患者の予防及び/又は治療のための医薬品の製造における、IL-18ポリペプチド又はその生物活性断片もしくは誘導体の使用。
【請求項31】
感染症、癌、自己免疫疾患及び関連する症状に羅患し又は罹りやすく、かつIL-18ポリペプチド又はその生物活性断片もしくは誘導体で既にプライミングされた患者の治療のための医薬品の製造において、抗原又はその免疫原性誘導体とCpGアジュバントとを含む免疫原性組成物の使用。
【請求項32】
前記抗原が、腫瘍関連抗原であり、該癌が、乳癌、肺癌、NSCLC、大腸癌、メラノーマ(黒色腫)、卵巣癌、膀胱癌、頭頸部扁平上皮癌、食道癌を含む群から選択される、請求項30又は31に記載の使用。
【請求項33】
前記IL-18ポリペプチド又はその生物活性断片もしくは誘導体がヒト又はマウスに由来する、請求項30〜32のいずれかに記載の使用。
【請求項34】
IL-18が、配列番号6もしくは配列番号7又はその生物活性断片もしくは誘導体のポリペプチドである、請求項33に記載の使用。
【請求項35】
前記CpGアジュバントが、請求項9〜12のいずれかに定義されているものである、請求項30〜34のいずれかに記載の使用。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−508273(P2007−508273A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530156(P2006−530156)
【出願日】平成16年10月11日(2004.10.11)
【国際出願番号】PCT/EP2004/011621
【国際公開番号】WO2005/039630
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(397062700)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (37)
【出願人】(597173680)スミスクライン ビーチャム コーポレーション (157)
【Fターム(参考)】