説明

免疫原特異的アジュバントとしての組換えタンパク粒

ワクチンまたは接種物用の免疫原特異的アジュバントが開示される。このアジュバントは、ペプチド結合された2つの部分を含む組換え融合タンパク質を含有する粒子状組換えタンパク粒様会合体(RPBLA)からなる。第一の部分はタンパク粒誘導配列(PBIS)であり、第二の部分は、その配列がワクチンまたは接種物に存在するかまたはワクチンまたは接種物により誘導される病原性ポリペプチド配列のものであるT細胞刺激免疫原性ポリペプチドである。このアジュバントは、事前のプライミングワクチン接種または接種無しで宿主動物に接種物として用いられた場合に、その病原性配列に対する抗体の生産またはT細胞の活性化を誘導しない。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2008年10月10日に出願された米国仮出願第61/104,403号の利益を主張するものであり、その開示内容は引用することにより本明細書の一部とされる。
【発明の背景】
【0002】
技術分野
本発明は、ワクチンまたは接種物用の免疫原特異的アジュバントを提供する。より具体的には、本発明は、組換え融合タンパク質を含有する組換えタンパク粒様会合体(RPBLA)を含んでなるワクチンまたは接種物アジュバントを提供する。該組換え融合タンパク質は、ペプチド結合された2つの配列を含み、一方の配列はタンパク粒誘導配列(PBIS)であり、他方は、ワクチンまたは接種物に存在するかまたはワクチンまたは接種物によりコードされる病原性ポリペプチド配列の一部に相当するT細胞刺激性ポリペプチドである。
【0003】
背景技術
タンパク粒(PB)は、タンパク質の蓄積に特化した細胞下のオルガネラ(または大きな小胞、直径約1〜3ミクロンで膜に取り囲まれている)。それらは天然では、種子などのいくつかの特定の植物組織で形成され、発芽や実生成長のための主要なアミノ酸供給源として働く。
【0004】
貯蔵タンパク質は、ERまたは液胞のいずれかに封入されるべく、シグナルペプチドを介して小胞体(ER)の管腔に同時翻訳により挿入され(Galili et al., 1993 Trends Cell Biol. 3:437-443)、これらの細胞下コンパートメント内で多量体単位へと組み立てられ、(ER)由来タンパク粒(PB)またはタンパク質貯蔵液胞(PSV)と呼ばれる特定のオルガネラを発達させる(Okita and Rogers, 1996 Annu. Rev. Plant Physiol Mol. Biol. 47:327-350; Herman and Larkins, 1999 Plant Cell 11:601-613; Sanderfoot and Raikel, 1999 Plant Cell 11:629-642)。
【0005】
双子葉(dicotiledoneous)植物の貯蔵タンパク質は、7Sグロブリンまたはビシリン種、11Sグロブリンまたはレグミン種タンパク質などの主として可溶性のタンパク質であり、他のタンパク質(すなわち、プロテアーゼ阻害剤、タンパク質分解酵素、レクチンなど)、糖類および塩類とともにPSV内に隔離されている。
【0006】
PSVとは対照的に、PB(1〜3ミクロン)は主として、穀類の疎水性高い貯蔵タンパク質(トウモロコシのゼインおよびコムギのグリアジンなど)であるプロラミンを隔離し、他の補助的タンパク質を欠いている(Herman et al., 1999 Plant Cell 11:601-613)。
【0007】
現在のところ、ER体を除き、植物種子以外の組織に見られたPBは無い。ER体は小型(0.2〜0.4マイクロメーター)で、アラビドプシス(Arabidopsis)の葉で傷や昆虫による咀嚼によってのみ形成され、通常の条件下では生じない(Matsushima et al., 2003 Plant J. 33:493-502)。
【0008】
植物PBの形成、貯蔵タンパク質の組み立ておよび標的化を研究するために遺伝子工学的アプローチが用いられている。アラビドプシスおよびタバコにおいて組換えタンパク質、主として植物貯蔵タンパク質が発現され、封入される場合、PBを含まない植物組織(栄養組織としての)はこれらのオルガネラを「de novo」発達させないことが示されている(Bagga et al., 1997 Plant Cell 9:1683-1696およびBagga et al., 1995 Plant Physiol. 107:13-23, および米国特許第5,990,384号、および同第5,215,912号、および同第5,589,616号;ならびにGeli et al., 1994 Plant Cell 6:1911-1922)。
【0009】
トウモロコシβ−ゼインは、トランスジェニックタバコ植物で発現されると、葉細胞において新たに形成されたER由来PBに正確に標的化された(Bagga et al., 1995 Plant Physiol. 107:13-23)。トウモロコシγ−ゼイン、およびアラビドプシス植物で発現された末端切断型γ−ゼインcDNAもまた、葉の新規なER由来PBに蓄積する(Geli et al., 1994 Plant Cell 6:1911-1922)。トウモロコシ内胚乳で発現されたリシン豊富γ−ゼイン(Torrent et al. 1997 Plant Mol. Biol. 34(1):139-149)はトウモロコシPBに蓄積し、内因性ゼインと同時局在した。α−ゼイン遺伝子を発現するトランスジェニックタバコ植物は、α−ゼインがPBを形成できないことが示された。しかしながら、αおよびγ−ゼインが同時発現した場合には、α−ゼインの安定性が高まり、両タンパク質がER由来タンパク粒内で同時局在した(Coleman et al., 1996 Plant Cell 8:2335-2345)。また、メチオニン豊富な10kDa δ−ゼインで形質転換さされたトランスジェニックダイズでも、新たなPBの形成が記載されている(Bagga et al., 2000 Plant Sci. 150:21-28)。
【0010】
組換え貯蔵タンパク質はまた、ツメガエル(Xenopus)卵母細胞および酵母などの非植物宿主系でも直径約100〜約400nmのPB様オルガネラにおいて組み立てられる。Rosenberg et al., 1993 Plant Physiol 102:61-69は、酵母におけるコムギγ−グリアジンの発現を報告している。適正に発現された遺伝子およびタンパク質はER由来PBに蓄積された。ツメガエル卵母細胞において、Torrent et al., 1994 Planta 192:512-518は、γゼインはまた、そのタンパク質をコードする転写物が卵母細胞に注入された際にも、PB様オルガネラに蓄積することを示している。α−ゼインを用いたHurkman et al., 1981 J. Cell Biol. 87:292-299およびγ−グリアジンを用いたAltschuler et al., 1993 Plant Cell 5:443-450もツメガエル卵母細胞で同様の結果を得ている。
【0011】
バイオテクノロジー(遺伝子工学)の分野の基本的功績の1つは、機能性食品的または工業的使用のためのタンパク質を生産するために生物を遺伝子操作できるということである。細菌、酵母、作物および哺乳類細胞培養の発酵培養液から組換えタンパク質を生産および回収する方法が提供されている。宿主細胞におけるタンパク質発現のための種々のアプローチが記載されている。これらのアプローチの不可欠な目的は、タンパク質の発現レベル、タンパク質の安定性およびタンパク質の回収である(Menkhaus et al., 2004 Biotechnol. Prog. 20: 1001-1014; Evangelista et al., 1998 Biotechnol. Prog. 14:607-614)。
【0012】
タンパク質の回収に伴う問題を解決し得る1つの戦略が分泌である。しかしながら、分泌には、低い発現レベルや産物の不安定性が伴う場合がある。もう1つの戦略は、細胞内の最も有益な場所における組換えタンパク質の蓄積である。この戦略は、テトラペプチドのC末端延長(HDEL/KDEL)を操作することにより組換えタンパク質をERに向けることによって広く用いられている(Conrad and Fiedler, 1998 Plant Mol. Biol. 38:101-109)。
【0013】
異種タンパク質と融合された植物貯蔵タンパク質または貯蔵タンパク質ドメインを含む融合タンパク質が、組換えタンパク質をERに向けるもう1つのアプローチとされている(WO2004003207)。1つの興味深い融合戦略が、植物油体の構成タンパク質であるオレオシンと融合された組換えタンパク質の生産である。油体の特異な特徴には、二相系を用いてタンパク質を容易に回収できるという利点がある(van Rooijen and Moloney, 1995 Bio/Technology 13:72-77)。
【0014】
植物細胞では、異種タンパク質が首尾よく発現されており(総説:Horn et al., 2004 Plant Cell Rep. 22:711-720; Twyman et al., 2003, Trends in Biotechnology 21:570-578; Ma et al., 1995, Science 268: 716-719; Richter et al., 2000 Nat. Biotechnol. 18:1167-1171)、組換えタンパク質の発現がER由来PBまたはPSV(PSV)に向けられたものもある。Yang et al., 2003 Planta 216:597-603は、イネ種子において、グルテリンおよびグロブリン貯蔵タンパク質の種子特異的プロモーターを用いてヒトリゾチームを発現させた。免疫細胞化学的結果は、組換えタンパク質がER−PB内に局在し、内因性のイネグロブリンおよびグルテリンとともに蓄積することを示した。トランスジェニックタバコ植物におけるヒトサイトメガロウイルス(hCMV)の糖タンパク質Bの発現が、イネのグルテリンプロモーターを用いて行われた(Tackaberry et al., 1999 Vaccine 17:3020-3029)。最近では、Arcalis et al., 2004 Plant Physiology 136:1-10がイネ種子においてC末端延長(KDEL)を伴うヒト血清アルブミン(HSA)を発現させた。組換えHSAはPSV内に内因性のイネ貯蔵タンパク質とともに蓄積した。
【0015】
生物工場としての植物の適用の1つの障害が、下流プロセシングに関してさらなる研究必要であるということである。植物からのタンパク質精製は、植物系の複雑さのために困難な仕事である。抽出物の植物固形分は大きく、濃厚で、比較的高い(9〜20重量%)(総説Menkhaus et al., 2004 Biotechnol. Prog. 20:1001-1014参照)。現在のところ、組換えタンパク質精製技術には、抽出物の清澄化、脂質および色素を除去するための溶媒処理ならびにいくつかのイオン交換およびゲル濾過クロマトグラフィーカラムによるタンパク質またはペプチドの精製が含まれる。既存のプロトコールは、各植物宿主系および組換えタンパク質に特異的な溶媒または水溶液の使用に頼るものである。当技術分野では、形質転換宿主から組換えタンパク質を回収するための効率的かつ一般的な手順が必要である。この必要は、特に、植物宿主で生産れた組換えタンパク質を単離しなければならない場合に関係する。宿主およびタンパク質が多様なこと、また、それらの間で物理化学的形質が異なるために、組換え産物を濃縮および回収するには効率的な方法が必要であった。
【0016】
免疫アジュバントは、ワクチンおよび接種物に対する特異的免疫応答を増強する薬剤である。免疫アジュバントは、ワクチンまたは接種物に配合された際に、全般的または特異的に、その調製物中の免疫原性材料に対する特異的免疫応答を加速化する、延長する、またはその質を高める働きをする任意の物質または処方物と定義することができる。
【0017】
アジュバントという言葉は、助けるまたは補助するを意味するラテン語の動詞「adjuvare」から来たものである。アジュバントの作用機序は、(1)ワクチンまたは接種物免疫原の生物学的または免疫学的半減期の延長;(2)抗原(免疫原)を提示細胞(APC)への免疫原送達、ならびにAPCによる抗原(免疫原)のプロセシングおよび提示の改善;および(3)免疫調節サイトカインの生産の誘導を含む。
【0018】
天然の病原体または他の因子の活性を模倣する生物活性の保有は、特に免疫されたヒトまたは他の動物において有効であるべき適切な免疫応答を誘導しなければならないワクチンまたは接種物に関連する。いくつかの新規なワクチンおよび接種物は、完全不活性化または生弱毒ワクチンよりも安全であると考えられる合成、組換えまたは高純度サブユニット免疫原(抗原)からなる。しかしながら、弱毒または死滅病原体ワクチンに一般に伴っている病原体関連免疫調節アジュバント成分は、このような合成、組換えまたは高純度サブユニット免疫原からは除かれ、このため、このような調製物の免疫原性は弱くなっている場合が多い。
【0019】
食作用は、アポトーシス細胞または微生物そのものなどの大粒子が別の細胞に侵入することを含む。この細胞の大粒子を飲み込む能力は、単細胞生物においておそらく栄養機能として現れたものであるが、複雑な生物はこの食作用機構を付加的な機能を満たすために利用した。例えば、マクロファージ、B細胞または樹状細胞により行われる免疫原の食作用は生得免疫および適応免疫において重要なプロセスに相当する。実際、食作用およびその後のファゴソームにおける微生物の死滅は細胞内病原体に対する生物の生得的防御の基礎をなしている。さらに、特定のリンパ球を活性化するために食細胞により提供されるファゴソーム管腔における病原体の分解および抗原ペプチドの生産も食作用と適応免疫を結びつける(Jutras et al., 2005 Annual Review in Cell Development Biology. 21:511?527)。
【0020】
飲み込まれた粒子上および粒子内に存在するタンパク質は、ファゴソーム内の一連の分解性プロテアーゼに遭遇する。さらに、この破壊的環境は、MHCクラスII分子と結合することができるペプチドを生じる。新たに形成された免疫原−MHCクラスII複合体は、CD4+T細胞への提示のために細胞表面に送達される(Boes et al., 2002 Nature 418:983-988)。これらの細胞の活性化は、B細胞の増殖および分化を助けるIL−4およびIL−5などのサイトカインのTh2サブセットを誘導し、体液型免疫応答に関連する。
【0021】
多くの証拠が、食作用を受けた病原体に対する免疫応答におけるMHCクラスII経路の明らかな関与に加え、マイコバクテリア属、サルモネラ菌属、ブルセラ属およびリーシュマニア属を含む病原体に由来する免疫原が免疫原の交差提示を惹起し得るということを示している。すなわち、MHCクラスI依存性応答による食作用により飲み込まれた免疫原の提示は、CD8+細胞傷害性T細胞の増殖を促進する(Ackerman et al., 2004 Nature Immunology 5(7):678-684; Kaufmann et al., 2005 Current Opinions in Immunology 17(1):79-87)。
【0022】
樹状細胞は免疫系を誘導するために中枢的な免疫原提示の役割を果たす(Blander et al., Nature Immunology 2006 10:1029-1035)。数は少ないが、樹状細胞は最も専門性の高いAPCであり、免疫反応を促進および調節する双方の能力を有する(Lau et al. 2003 Gut 52:307-314)。樹状細胞は免疫原の提示、特に、一次免疫応答の誘導に重要であるが、マクロファージは炎症部位において最も顕著なAPC型であり、壊死およびアポトーシス材料を排除するのに特化されている。マクロファージはAPCとして働き得るだけでなく、それらが活性化される手段に応じて、炎症促進または抗炎症的役割のいずれか遂行し得る。
【0023】
APCが適応免疫(体液性および細胞性)の誘導および調節に中枢的役割を果たしていることを考えれば、これらの細胞による免疫原の認識および食作用は免疫化プロセスにおいて重要な工程であると考えられる。マクロファージによる食作用を研究するために、蛍光粒子の取り込みに基づく多様な技術が開発されている(Vergne et al,. 1998 Analytical Biochemistry 255:127-132)。
【0024】
獣医学用ワクチンにおける重要な側面は、考えられる種の遺伝的多様性と異なる種で働く遺伝システムの必要性である。野生生物を含む多くの種でこれらの分子について最小限の知識しか得られていないので、この多様性はかなりの程度まで細胞表面マーカーおよびサイトカインなどの免疫モジュレーターへの分子標的技術の使用を制限する。よって、生得的免疫応答の万能活性化シグナル(すなわち、異なる種でも同一である)に頼るアジュバントが好ましいものである。これらの要件を考慮に入れると、粒子状ワクチン送達は獣医学用および野生生物ワクチンの戦略に十分好適である(Scheerlinck et al., 2004 Methods 40:118-124)。
【0025】
第三世界諸国では、子宮頸癌(cc)は癌関連の死亡の主因の1つである。この疾病から死亡する女性の約80%が、早期発見のためのスクリーニングプログラムおよび処置の医療基盤を利用できない貧困諸国に由来する。これに対し、先進世界では、細胞学的スクリーニングプログラムの結果としてここ50年の間、死亡率は減少している(米国では70%)[American Cancer Society, Cancer facts and figures 2004. Atlanta, GA.]。外科術、放射線療法または化学療法によるcc患者の処置は、生活の質の著しい低下をもたらす。最適な処置が利用できるとしても、全cc患者の約40%がこの疾病で死亡する[Gatta et al., 1998 Eur J Cancer 34(14 Spec.No.):2218?2225]。よって、有効かつ安全な治療用ワクチンの開発が必要とされる。
【0026】
子宮頸上皮内新生物(CIN)およびccなどの前癌状態の発生に必要な事象は、hr−HPVのよる感染である[Walboomers et al., 1999 J Pathol 189(1):12-19]。これまでに120を超えるHPVタイプが確認され[de Villiers et al., 2004 Virology 324(1):17?27]、そのうち18がccと関連することが分かっている[Munoz et al., 2003 N Engl J Med 348(6):518-527]。
【0027】
HPV−16は症例の約50%の原因となっている[Bosch et al., 1995 J Natl Cancer Inst 87(11):796-802]。hr−HPVの癌タンパク質E7はもっぱら、かつ一貫してHPV感染腫瘍細胞のより発現されるという事実[von Knebel Doeberitz et al., 1994 J Virol 68(5):2811-2821]により、そのタンパクはccおよびその前悪性異形成に対して向けられる免疫療法の特異的標的に相当する。しかしながら、E7タンパク質は、細胞周期制御に干渉することにより機能する形質転換活性を有する癌タンパク質である。E7はpRB(網膜芽細胞腫)腫瘍サプレッサータンパク質を不活性化することにより細胞増殖調節を変化させ[Dyson et al., 1989 Science 243(4893):934-937; Munger et al., 1992 Cancer Surv 12:197-217]、2つの金属結合モチーフ(C−XX−C)[Edmonds et al., 1989 J Virol 63(6):2650-2656; Watanabe et al., 1990 J Virol 64(1):207-214]。
【0028】
安全上の理由で、機能的癌遺伝子はヒトに適用することができない。従って、HPV−16 E7の発癌特性を不活性化する試みがなされた。形質転換能に関連するE7癌遺伝子の部位に点突然変異を導入した研究者もいた[Shi et al., 1999 J Virol 73(9):7877-7881; Smahel et al., 2001 Virology 281(2):231-238]し、HLA(ヒト白血球抗原)に限られた単一エピトープを用いた研究者もいた[Doan et al., 2000 Cancer Res 60(11):2810-2815; Velders et al., 2001 J Immunol 166(9):5366-5373]。しかしながら、これらのアプローチは、ワクチン有効性に潜在的に関連する天然エピトープの望まない欠如を招き得る。
【0029】
本発明者らの目的は、広範囲のMHC制限にわたるいくつかまたは可能性のある全ての天然T細胞エピトープを提供することであった。結論として、患者のHLA−ハプロタイプについての予備知識は必要でない。このことは特に非近交ヒト集団で重要である。
【0030】
さらに、ワクチンに存在する総てのHLA−制限エレメントを含むより強力な免疫応答が誘導され得る。「原理証明」は第一世代の人工HPV−16 E7遺伝子(HPV−16 E7SH)を用いた研究でなされた[Osen et al., 2001 Vaccine 19(30):4276-4286]。その研究では、マウスにおいて再配列された一次配列を有する癌タンパク質がなおE7WT特異的CTLを誘導するが、形質転換特性を欠いていることが示された。その研究は、1型単純ヘルペスウイルスのVP22遺伝子との融合がマウスにおいてCTL応答を増強するという初期の知見を利用したものである[Michel et al., 2002 Virology 294(1):47-59]。
【0031】
HIV−1ウイルスは、そのRNAを取り巻くタンパク質と糖タンパク質の数層、ならびにタンパク質インテグラーゼおよび逆転写酵素からなる。RNAはキャプシドタンパク質(CA)p24により封入される。このキャプシド環境はまた、インテグラーゼおよび逆転写酵素などの他のウイルスタンパク質も含む。そして、キャプシドは基質タンパク質(MA)p17の層のより封入される。この基質タンパク質は脂質二重層またはエンベロープに関連している。
【0032】
世界のいろいろな地方で流行している1型ヒト免疫不全ウイルス(HIV−1)サブタイプの大きな多様性は、広域予防HIV−1ワクチンの開発の大きな障害となっている。よって、その地方の伝染病により密接に適合するワクチンを開発することが必要であり得る(Morris et al., 2001)。南アフリカでは、サブタイプC感染が優勢であり(UNAIDS, 2006)、このサブタイプの単離物が南アフリカでのDNAワクチンの開発に選択された(Williamson et al., 2003)。この候補ワクチンが構築および特性決定されており(van Harmelen et al., 2003)、近く臨床試験で評価される予定である。
【0033】
HIVまたはシミアン免疫不全ウイルス(SIV)/シミアン−ヒト免疫不全ウイルス(SHIV)抗原をコードするDNAワクチンが包括的に研究され、動物モデルならびにヒトで体液性応答と細胞性免疫応答の双方を誘導することが示されている[Boyer et al., 1997 J Infect Dis. 176(6):1501-1509; Calarota et al., 1998 Lancet 351(9112):1320-1325; Estcourt et al., Immunol. Rev. 2004 199:144-155; Letvin et al., 1997 Proc Natl Acad Sci U S A. 94(17):9378-9383; Yasutomi et al., 1996 J Virol.70(1):678-681]。しかしながら、DNAワクチンは安全であることが示されているものの、免疫かがもたらす免疫応答のレベルは低く、一時的である。異種プライム−ブースト免疫計画におけるそれらの使用[Casimiro et al., 2003 J Virol.77(13):7663-7668; Cherpelis et al., 2001 Immunol Lett. 79(1-2):47-55; Leung et al., 2004 AIDS 18(7):991-1001; Pal et al., 2006 Virology 348(2):341-353; Robinson et al., 1999 Int J Mol Med. 4(5):549-555; Suh et al., 2006 Vaccine 24(11):1811-1820. Epub 2005 Oct 25]を含め、DNAワクチンを増強するための種々のアプローチが試験されている[Barouch et al., 2000 Intervirology 43(4-6):282-287; Hemmi et al., 2003 J Immunol 170(6):3059-3064; Raviprakash et al., 2003 Virology.315(2):345-352]。
【0034】
HIV−1 Gag遺伝子は、HIVウイルス粒子の構造を構成する主要なタンパク質である前駆体タンパク質Pr55 Gagをコードする。ウイルス粒子の成熟時、Gagはウイルスプロテアーゼにより、キャプシド(CA)タンパク質p24、基質タンパク質p17ならびにタンパク質p7およびp6を含むいくつかのより小さなタンパク質へと切断される。
【0035】
HIV−1 Pr55gag前駆体タンパク質は、非複製かつ非感染性ウイルス様粒子(VLP)へと自己集合する能力を有し[Deml et al., 1997 Virology 235(1):26-39; Mergener et al., 1992 Virology 186(1):25-39; Sakuragi et al., 2002 Proc Natl Acad Sci U S A 99(12):7956-7961; Wagner et al., 1994 Behring Inst Mitt (95):23-34; Wagner et al., 1996 Virology 220(1):128-140]、非ヒト霊長類(NHP)(Montefiori et al., 2001 J Virol. 75(21):10200-10207; Paliard et al., 2000 AIDS Res Hum Retroviruses 16(3):273-282]を含む動物において強い体液性および細胞性免疫応答を惹起する[Deml et al., 1997 Virology 235(1):26-39; Deml et al., 2004 Methods Mol Med 94:133-157; Jaffray et al., 2004 J Gen Virol. 85(Pt 2):409-413]。最近、Chege et al., J Gen Virol 2008 89:2214-2227が、サブタイプC Pr55gag VLPは適合したDNAワクチンで初回免疫されたヒヒを極めて有効に追加免疫することができることを示した。
【0036】
さらに、HIV−1 Pr55gag VLPは安全で、生産が容易であり、キメラ免疫原を含む可能性を有する(Doan et al., 2005; Halsey et al., 2008)。HIV−1のものに近いそれらの粒子の性質および大きさは、HIV−1 Pr55gag VLPが非粒子状免疫原よりも良好に免疫系を刺激可能とする。
【0037】
上記のように、p24タンパク質はウイルス粒子の、外面キャプシド層を形成する。このタンパク質は、HIVプロテオームの他の部分に比べて高い密度の細胞傷害性Tリンパ球(CTL)エピトープを有し(Novitsky et al., J. Virol. 2002 76(20):10155-10168)、これはワクチン候補として用いた場合に、広域の免疫応答を誘導するのにより有効とする。また、p24抗体の力価が皮下している個体においてAIDSのリスクが大幅に高まることが示されている。このことは、高い抗p24抗体力価は無病状態を維持するのに必要である可能性があることを示唆する。
【0038】
さらに、HIV−1 Pr55gag VLPは安全で、生産が容易であり、キメラ免疫原を有する可能性を有する[Doan et al., 2005 Rev Med Virol. 15(2):75-88; Halsey et al., 2008 Virus Res. 2008 133(2):259-268. Epub 2008 Mar 10]。HIV−1のものに近いそれらの粒子の性質および大きさは、HIV−1 Pr55gag VLPが非粒子状免疫原よりも良好に免疫系を刺激可能とする。
【0039】
上記のように、p24タンパク質はウイルス粒子の、外面キャプシド層を形成する。このタンパク質は、HIVプロテオームの他の部分に比べて高い密度の細胞傷害性Tリンパ球(CTL)エピトープを有し(Novitsky et al., J. Virol. 2002 76(20):10155-10168)、これはワクチン候補として用いた場合に、広域の免疫応答を誘導するのにより有効とする。また、p24抗体の力価が皮下している個体においてAIDSのリスクが大幅に高まることが示されている。このことは、高い抗p24抗体力価は無病状態を維持するのに必要である可能性があることを示唆する。
【0040】
基質タンパク質p17は、ウイルスの組み立てと放出に必要な膜内結合を促進する(Dorfman et al., 1994 J Virol 68(12):8180-8187]。タンパク質p17はまた、ウイルスの組込み前複合体の核への輸送にも関与する(Burkinsky et al., 1993)。p24とともに融合されると、このp17/p24(p41)複合体は、HIV−1ゲノム中最高密度のCTLエピトープを含む(Novitsky et al., J. Virol. 2002 76(20):10155-10168)。
【0041】
HIV−1逆転写酵素(RT)は、DNA鋳型を作製し、RNAからDNAを合成するRNA依存性DNAポリメラーゼである。それはウイルス複製に不可欠である。HIV−1 RTはHIV−1プロテアーゼ(PR)によりPr160gag−polポリタンパク質から切断される。HIV−1に対するいくつかのCTLエピトープがRTにおいて確認されているが、それらはGag特異的エピトープに次ぐものであると思われる[Dela Cruz et al., 2000 Int Immunol 12(9):1293-1302]。
【0042】
いくつかの研究が、免疫応答の増強が異種プライム−ブースト接種計画により達成可能であることを示している。マウスのプライム接種として用いられるpTHGagCと呼ばれるHIV−1 DNAワクチンは、Pr55Gagウイルス様粒子(VLP)により有効に追加免疫されることが示されている(Chege et al., J. Gen. Virol. 2008 89:2214-2227)。p24はHIVプロテオームの他の部分に比べて最も高い密度の細胞傷害性Tリンパ球(CTL)エピトープを有するp24を含むタンパク粒の粒子の性質は、免疫系が初回免疫された後に免疫応答を拡大する類似の追加免疫作用を持ち得ると思われた。また、p41およびRTなどの種々のHIV−1抗原を含むタンパク粒の組合せを用いると、5つのAIDS遺伝子、gag、逆転写酵素、ポリタンパク質として発現されるtatおよびnef遺伝子、ならびに末端切断型env遺伝子(gp150)を含む多遺伝子DNAワクチン「grttn」(Burgers et al., AIDS Research and Human Retroviruses 2008 24(2):195-206)の使用において示されているように免疫応答が広がるものと思われた。
【発明の概要】
【0043】
本発明は、ワクチンまたは接種物用の免疫原特異的アジュバントを意図する。アジュバントは、組換え融合タンパク質を含有する粒子状組換えタンパク粒様会合体(RPBLA)からなる。組換え融合タンパク質はペプチド結合された2つの部分を含み、一方の配列がプロラミン配列などのタンパク粒誘導配列(PBIS)であり、他方が、その配列がワクチンまたは接種物に存在するかまたはワクチンまたは接種物により誘導される病原性ポリペプチド配列のものであるT細胞刺激免疫原性ポリペプチドである。アジュバントは、事前のプライミングワクチン接種(priming vaccination)または接種(inoculation)無しで接種物中に用いられた場合、その病原性配列に対する抗体の生産またはT細胞の活性化を誘導しない。意図されるアジュバントは一般に、薬学上許容される希釈剤に溶解または分散された、アジュバントとしての有効量で用いられる。
【0044】
定義
「抗原」とは、抗体または受容体が結合するものを表して、また、CD4+T細胞の生成など、抗体の生産または細胞応答を誘導するものを表して歴史的に用いられてきた。より最近の用法では抗原の意味を抗体または受容体が結合するものに限定し、「免疫原」という用語は、抗体生産または細胞応答を誘導するものとして用いられる。本明細書で述べられているものが免疫原性かつ抗原性の双方である場合には、それを免疫原というか抗原というかは、一般にその意図される用法に従ってなされる。
【0045】
「抗原決定基」とは、抗体結合部位またはT細胞受容体が免疫学的に結合する抗原の実際の構造的部分を意味する。この用語はまた「エピトープ」と互換的に用いられる。
【0046】
本明細書において「融合タンパク質」とは、それらの個々のカルボキシ末端およびアミノ末端アミノ酸残基の間のペプチド結合によりエンド−エンド(ヘッド−テール)で機能的に連結されている、自然界では通常連結が見られない少なくとも2つのアミノ酸残基配列を含むポリペプチドを表す。本発明の融合タンパク質は、ワクチンまたは接種物が向けられる病原体(標的)中に存在するT細胞刺激ポリペプチド(例えば、ペプチドまたはタンパク質)である第二の配列と連結されたタンパク粒誘導配列(PBIS)のキメラである。
【0047】
本明細書において「免疫原特異的」とは、意図される組換えアジュバントとより一般的なアジュバントとのアジュバント活性を区別するために用いられる。より詳しくは、意図される免疫原特異的アジュバントは、そのアジュバントのアミノ酸残基配列を含む免疫原に対する細胞(T細胞)免疫応答を増強し、免疫系を全般的に活性化するのではない。よって、ワクチンまたは接種物はあるアミノ酸残基配列を共通に持つか、またはアジュバントと共通の配列をコードする。
【0048】
「接種物」は、一般に水もまた含む薬学上許容される希釈組成物中に溶解または分散した免疫原的に有効な量の免疫原性キメラ粒子を含んでなる組成物である。免疫を必要とする、または抗体または活性化T細胞の誘導が望まれる、哺乳類(例えば、マウス、イヌ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ウシ、サル、無尾猿またはヒト)または鳥類(例えば、ニワトリ、シチメンチョウ、アヒルまたはガチョウ)などの宿主動物に投与した場合に、接種物は接種された宿主動物において、キメラの免疫原と免疫反応する抗体の生産などのB細胞および/またはT細胞応答(刺激)を誘導し、かつ/または免疫原に応答するT細胞を誘導する。「ワクチン」は、ワクチンにより誘導された抗体が免疫原と免疫反応する、または活性化T細胞がその免疫原に応答するだけでなく、in vivoにおいてその免疫原が由来する病原体と免疫反応し、その病態からの保護を提供するタイプの接種物である。
【0049】
「T細胞性免疫」とは、抗体または補体を含まないが、抗原に応答して、マクロファージ、ナチュラルキラー細胞(NK)、抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球の活性化、および種々のサイトカインの放出を含む免疫応答を意味する。歴史的に免疫系は、免疫の保護機能を体液(細胞不含体液または血清)中に見出すことがでできる体液性免疫と、免疫の保護機能が細胞に関連している細胞性免疫の2つの支流に分けられてきた。CD4細胞またはヘルパーT細胞は種々の病原体に対して保護を提供する。T細胞性免疫は、外来抗原に感受したT細胞、特に細胞傷害性T細胞が標的細胞を攻撃し、それらを溶解する場合に生じる免疫応答である。細胞傷害性を指示する他、T細胞はマクロファージを活性化するリンホカインの生産を刺激することができる。細胞媒介免疫応答は、病原体、自己免疫疾患、ある種の後天的アレルギー、ある種の腫瘍および他の免疫反応に対する防御において重要である。
【発明の具体的説明】
【0050】
本発明は、ワクチンまたは接種物用の免疫原特異的アジュバントを意図する。このアジュバントは、組換え融合タンパク質を含有する粒子状組換えタンパク粒様会合体(RPBLA)からなる。組換え融合タンパク質は、ペプチド結合された2つの部分を含み、一方の配列が、好ましいプロラミン配列などのタンパク粒誘導配列(PBIS)であり、他方が、その配列が(a)ポリペプチド含有ワクチンまたは接種物中に存在する病原性ポリペプチド配列中に存在するか、または(b)核酸ワクチンまたは接種物によりコードされるT細胞刺激免疫原性もしくは接種(inoculation)またはさらなる免疫原による事前のプライミング無しで宿主動物に用いられる濃度で、その宿主動物において、その病原性配列と免疫反応しないか、またはその病原性配列に対してT細胞の活性化を誘導する抗体の生産を誘導しない。
【0051】
本発明はまた、それを必要とする被験体において免疫原性ペプチドに対するT細胞性免疫応答を誘導する方法を意図し、その方法は、それを必要とする被験体への、
(i)組換え融合タンパク質(該組換え融合タンパク質はペプチド結合された2つの部分を含み、第一の部分がタンパク粒誘導配列(PBIS)であり、第二の部分が免疫原性ポリペプチドである)を含有する粒子状組換えタンパク粒様会合体(RPBLA)および
(ii)融合タンパク質をコードする核酸分子(該組換え融合タンパク質はペプチド結合された2つの部分を含み、第一の部分がタンパク粒誘導配列(PBIS)であり、第二の部分が免疫原性ポリペプチドである)
の群から選択されるワクチンの投与を含んでなる。
【0052】
好ましい実施態様では、本発明の方法は、第一の部分のPBIS形成部分がプロラミン配列を含むRPBLAを用いて行われる。さらにより好ましい実施態様では、プロラミン配列は、γ−ゼイン、α−ゼイン、δ−ゼイン、β−ゼイン、イネプロラミンおよびγ−グリアジンからなる群から選択されるプロラミン中に存在する。
【0053】
好ましい実施態様では、PBIS配列は、タンパク質をRPBLA発現細胞の小胞体(ER)に向けるシグナルペプチド配列をさらに含む。
【0054】
好ましい実施態様では、RPBLAを形成する融合タンパク質に用いられる免疫原性ペプチドは、T細胞免疫応答を刺激し得るペプチドである。
【0055】
別の好ましい実施態様では、本発明の方法は、免疫原性ポリペプチド配列が
(i)HPV E7遺伝子によりコードされるポリペプチド、
(ii)HIV−1 gag遺伝子によりコードされるポリペプチド、および
(iii)HIV−1 pol遺伝子によりコードされるポリペプチド
の群から選択される、第二の部分を含んでなるRPBLAを用いて行われる。
【0056】
好ましい実施態様では、本発明の方法は、in vitroにおいて精製組換え融合タンパク質から組み立てられる粒子状組換えタンパク粒様会合体(RPBLA)を用いて行われる。
【0057】
より好ましい実施態様では、本発明の方法の投与工程に先行して、免疫原性ポリペプチドまたは該免疫原性ポリペプチドをコードする核酸を含んでなる組成物を用いたプライミングワクチン接種または接種(inoculation)の工程が行われる。
【0058】
さらにより好ましい実施態様では、プライミングワクチン接種または刺激工程に用いられる免疫原性ポリペプチドを含んでなる組成物は、
(i)組換え融合タンパク質(該組換え融合タンパク質はペプチド結合された2つの部分を含み、第一の部分がタンパク粒誘導配列(PBIS)であり、第二の部分がT細胞刺激免疫原性ポリペプチドである)を含有する粒子状組換えタンパク粒様会合体(RPBLA)、
(ii)免疫原性ポリペプチドをコードする核酸分子、および
(iii)融合タンパク質をコードする核酸分子(該組換え融合タンパク質はペプチド結合された2つの部分を含み、第一の部分がタンパク粒誘導配列(PBIS)であり、第二の部分が免疫原性ポリペプチドである)
の群から選択される。
【0059】
好ましい実施態様では、RPBLAを形成する融合タンパク質に用いられる免疫原性ペプチドは、T細胞免疫応答を刺激し得るペプチドである。
【0060】
より好ましい実施態様では、ワクチンは筋肉内に投与する。
【0061】
別の態様では、本発明は、それを必要とする被験体において、免疫原性ペプチドに対してT細胞性免疫応答を誘導する方法で用いるためのワクチンに関し、該ワクチンは、
(i)組換え融合タンパク質(該組換え融合タンパク質はペプチド結合された2つの部分を含み、第一の部分がタンパク粒誘導配列(PBIS)であり、第二の部分が免疫原性ポリペプチドである)を含有する粒子状組換えタンパク粒様会合体(RPBLA)および
(ii)融合タンパク質をコードする核酸分子(該組換え融合タンパク質はペプチド結合された2つの部分を含み、第一の部分がタンパク粒誘導配列(PBIS)であり、第二の部分が免疫原性ポリペプチドである)
の群から選択される。
【0062】
意図されるアジュバントは、抗病原体ワクチンまたは接種物とともに、または抗病原体ワクチンまたは接種物に対するブーストとして別に投与することができる。このようなワクチンまたは接種物は、細菌もしくはウイルスなどの弱毒生病原体もしくは死滅病原体、病原体のあるタンパク質部分のみを含むサブユニットワクチンまたは接種物、または担体に結合されたポリペプチドからなる免疫原を含むワクチンもしくは接種物(該ワクチンまたは接種物の免疫原性部分はアジュバントにも存在するポリペプチド配列を含む)を含み得る。このワクチンまたは接種物は、DNAまたはRNAワクチンなどの核酸調製物であり、この核酸は、アジュバントにも存在する免疫原性アミノ酸配列をコードする。ワクチンおよび接種物はそれ自体周知のものである。
【0063】
意図されるアジュバントは、発現されたRPBLAの調製物として、またはRPBLAをコードする一本鎖もしくは二本鎖DNA配列などの核酸調製物として投与することができる。後者の場合には、RPBLAは宿主動物においてin vivoで発現される。いずれの場合でも、アジュバント組成物を形成するために発現されたRPBLAまたは核酸が溶解または分散される培地も周知である。
【0064】
RPBLAの特定の部分をコードする例示的核酸配列は以下に示されている。当技術分野で周知のように、異なる動物においてアミノ酸残基をコードするには特定のコドンが好ましく、結果として、当業者は所望の発限度を得るために特定の核酸配列を修正することができる。さらに、ヒトを含む動物宿主において外来核酸およびそれらのコードされるタンパク質を発現させるためにはいくつかのベクターが周知である。発現すると、コードされているポリペプチドはin vivoにおいて自己組み立てをしてRPBLAを形成する。
【0065】
HIV−1ウイルスに関するいくつかの例示的アジュバントのT細胞刺激免疫原性ポリペプチド部分を以下に述べる。これらのアジュバントでは、gag遺伝子の全部分を含んでなるDNAワクチンが用いられる。HIV−1 gag遺伝子は、P24キャプシド(CA)、P17マトリックス(MA)、および2つのヌクレオキャプシドタンパク質(NC)P6とP9の4つのタンパク質をコードする。例示的アジュバントの融合タンパク質は、gagによりコードされるP24配列またはP24とP17配列の融合から得られるP41配列、およびHIV−1 pol遺伝子によりコードされる逆転写酵素(RT)を含む。
【0066】
同様に、免疫原は、そのT細胞刺激免疫原性ポリペプチド部分が、以下のT細胞エピトープの表における表面タンパク質のPreS1および/またはPreS2部分を含む表面タンパク質の例示されている配列を含むアジュバントを使用することができるので、B型肝炎ウイルス(HBV)に対するワクチンまたは接種物は、表面(HBsAg)タンパク質の1以上を用いる。このようなワクチンの1つに、酵母細胞で生産され、Merck Research Laboratoriesにより開発されたB型肝炎表面抗原(HBsAg)に由来する非感染性サブユニットウイルスワクチンである、RECOMBIVAX HB(登録商標)B型肝炎ワクチンの名称で販売されているものがある。同様に、HBVコアに基づく米国特許第7,351,413号のワクチンは、以下のT細胞エピトープの表に示される1以上のコア配列の使用により、アジュバントを提供することができる。さらなるアジュバントは、以下の表または文献から得られる他のT細胞エピトープの配列を用いて、本明細書に述べられているように作製することができる。
【0067】
意図されるアジュバントは一般に、アジュバント組成物として薬学上許容される希釈剤中に溶解または分散された、アジュバントとしての有効量で用いられる。使用量は種々の宿主動物で使用するT細胞刺激免疫原性ポリペプチドおよび使用する構築物によって広く異なり得る。典型的な量は、宿主体重1キログラム(kg)当たりRPBLA約1マイクログラム(μg)(μg/kg)〜宿主体重1キログラム(kg)当たりRPBLA約1ミリグラム(mg)(mg/kg)である。より通常の量は、約5μg/宿主体重kg〜約0.5mg/宿主体重kgである。
【0068】
希釈剤は一般に水性であり、1以上の付加的アジュバント、バッファー、塩および増粘剤を含み得る。希釈剤の成分は、以下に述べるように、ワクチンまたは接種物中にしばしば存在するものである。
【0069】
タンパク粒およびタンパク粒誘導配列
タンパク粒(PB)は唯一種子で適宜そう呼ばれているので、他の植物器官および非高等植物で生産される類似の構造は一般に合成PBまたは「組換えタンパク粒様集合物」(RPBLA)と呼ばれる。このようなRPBLAは、細胞の小胞体(ER)と会合して見られる膜に封入された融合タンパク質である。
【0070】
「精製RPBLA」は、通常メルカプタン含有試薬での化学的還元により膜が除去されたRPBLAの膜不含調製物、および膜および他の発現関連不純物から融合タンパク質を遊離させるためのクロマトグラフィー的手段によって精製された融合タンパク質である。得られた精製タンパク質はその後、in vitroで再組み立てされて精製RPBLA粒子を形成する。その粒子の再形成は一般に、塩および酸化環境の存在下、水性組成物中で起こる。このような精製RPBLAの形成を以下に示す。
【0071】
意図されるRPBLAは、細胞の形質転換に用いる核酸に対して外来の細胞で発現される組換え生産される融合タンパク質(ポリペプチド)である。ポリペプチドが発現される細胞は宿主細胞であり、細胞または無傷の生物の細胞であり得る。無傷の生物はそれ自体、細菌もしくは真菌などの単細胞生物、または多細胞植物または動物(ヒトを含む)の群であり得る。ヒトが宿主である場合、そのヒトは核酸コード型のアジュバントのレシピエントであり、アジュバントは処置計画の一部として投与される。
【0072】
生きている生物では、タンパク質またはポリペプチドのアミノ酸残基配列は、遺伝コードを介して、そのタンパク質をコードする遺伝子のデオキシリボ核酸(DNA)配列に直接関連する。よって、周知の遺伝コードの縮重により、所望により同じ融合タンパク質アミノ酸残基配列をコードするが、前述の遺伝子配列と、2つの配列が高ストリンジェンシーではハイブリダイズしないが、中ストリンジェンシーではハイブリダイズするように十分に異なるように、さらなるDNAおよび対応するRNA配列(核酸)を作製することができる。
【0073】
高ストリンジェンシー条件は、6×SSC中、約50℃〜55℃の温度でのoハイブリダイゼーションと1〜3×SSC中、68℃の温度での最終洗浄を含んでなると定義することができる。中ストリンジェンシー条件は、0.2〜0.3M NaCl中、約50℃〜約65℃の温度でのハイブリダイゼーション、次いで、0.2×SSC、0.1%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)中、約50℃〜約55℃での洗浄を含んでなる。
【0074】
本明細書では、(1)目的のタンパク粒誘導配列(PBIS)およびポリペプチドを含む融合タンパク質それ自体をコードする、またはその相補物をコードする核酸配列(DNA配列またはRNA配列)も意図される。周知のように、意図される核酸配列などの核酸配列は、本明細書の他所に述べられているように、適当な発現系において適当なプロモーターを機能的に連結されている場合に発現される。
【0075】
種々の宿主がしばしば、特定のアミノ酸残基をコードするために用いられる特定のコドンに優先性を有する。このようなコドンの優先性は周知であり、所望の融合タンパク質配列をコードするDNA配列は、例えば、融合タンパク質が発現される特定の宿主に関して宿主に好ましいコドンが用いられるように、in vitro突然変異誘発を用いて変更することができる。
【0076】
RPBLAは通常、約0.5〜約3ミクロン(μ)、通常には約1μの直径を有する一般に球形で存在する。場合によっては、RPBLAは不定形で、寸法が広く異なる場合があるが、なおERとの会合が見られる。
【0077】
RPBLAの密度は一般に、内因性宿主細胞タンパク質の実質的に総てのものよりも大きく、一般に約1.1〜約1.35g/mlである。意図されるRPBLAが高密度なのは、組換え融合タンパク質の多量体としての組み立ておよび蓄積の一般的能力のためである。
【0078】
アジュバントとして用いる意図されるRPBLAは植物で発現される必要はない。むしろ、公開米国出願第20060121573号に開示されているように、RPBLAは他の形質転換真核生物、特に形質転換哺乳類細胞で発現させることができる。
【0079】
アジュバントRPBLAの融合タンパク質は、天然タンパク質または遺伝子操作核酸により発現されるポリペプチドに見られるように、ペプチド結合によりともに連結された2つのタンパク質配列を含む。意図される融合タンパク質では、一方の配列がプロラミンの配列などのタンパク粒誘導配列(PBIS)であり、他方が生物学的に活性な免疫原性ポリペプチドである。この2つの部分のいずれかは融合タンパク質のN末端にあってもよい。しかしながら、PBISをN末端に持つことが好ましい。
【0080】
意図されるタンパク粒誘導配列(PBIS)は好ましくは、高等植物由来の全部または一部である。PBISの例示的な限定されない例としては、貯蔵タンパク質または修飾貯蔵タンパク質、例えば、プロラミンまたは修飾プロラミン、プロラミンドメインまたは修飾プロラミンドメインが挙げられる。プロラミンはShewry et al., 2002 J. Exp. Bot. 53(370):947-958に総説されている。好ましいPBIS配列は、本明細書に述べられているγ−ゼイン、α−ゼイン、δ−ゼイン、β−ゼイン、イネプロラミンおよびγ−グリアジンなどのプロラミン化合物配列中に存在する。
【0081】
PBISは、RPBLA発現細胞の小胞体(ER)にタンパク質を向ける配列を含む。その配列はしばしばリーダー配列またはシグナルペプチドと呼ばれ、そのPBISの残りの部分と同じ植物に由来してもよいし、あるいは異なる植物または動物または真菌に由来してもよい。例示的シグナルペプチドとしては、WO2004003207(US20040005660)に示されている19残基のγ−ゼインシグナルペプチド配列、α−グリアジンの19残基のシグナルペプチド配列または21残基のγ−グリアジンシグナルペプチド配列(Altschuler et al., 1993 Plant Cell 5:443-450; Sugiyama et al., 1986 Plant Sci. 44:205-209;ならびにRafalski et al., 1984 EMBO J 3(6):1409-11415およびその中の引用を参照)がある。PR10クラスの病原関連タンパク質は25残基のシグナルペプチド配列を含み、これも本明細書において有用である。同様の機能を有する他の植物および動物由来のシグナルペプチドも文献で報告されている。
【0082】
タンパク質をERに向ける役割を担うシグナルペプチドの特徴は包括的に研究されている(von Heijne et al., 2001 Biochim. Biophys. Acta Dec 12 1541(1-2):114-119)。シグナルペプチドは一次構造に相同性を持たないが、中央の疎水性h−領域と親水性NおよびC末端フランキング領域の共通の三部分構造を有する。これらの類似性と、タンパク質が明らかに共通の経路を用いてER膜を介して輸送されるという事実は、異なるタンパク質間または異なる門に属す異なる生物に由来するタンパク質間であってもシグナルペプチドを交換することを可能とする(Martoglio et al., 1998 Trends Cell Biol. Oct; 8(10):410-415参照)。よって、PBISは、高等植物とは異なる門に由来するタンパク質のシグナルペプチドを含み得る。
【0083】
全プロラミン配列を使用する必要はないと理解すべきである。むしろ、以下に述べるように、全プロラミン配列を使用することができるが、必要なのは一部だけである。
【0084】
トウモロコシの貯蔵タンパク質であるγ−ゼイン(DNAおよびアミノ酸残基配列を以下に示す)は、4つのトウモロコシプロラミンのうちの1つであり、トウモロコシ内胚乳中の全タンパク質の10〜15%に相当する。他の穀類プロラミンについては、αおよびγ−ゼインは粗面ERの細胞質側の膜結合ポリソーム中で生合成され、管腔内で組み立てられ、その後、ER由来タンパク粒中に隔離される(Herman et al., 1999 Plant Cell 11:601-613; Ludevid et al., 1984 Plant Mol. Biol. 3:277-234; Torrent et al., 1986 Plant Mol. Biol. 7:93-403)。
【0085】
γ−ゼインは、i)19アミノ酸のペプチドシグナル、ii)ヘキサペプチドPPPVHLの8つのユニットを含むリピートドメイン(配列番号2)[(53アミノ酸残基(aa)]、iii)プロリン残基が他のアミノ酸に変更されたProXドメイン(29aa)およびiv)疎水性システイン豊富C末端ドメイン(111aa)の4つの特徴的なドメインからなる。
【0086】
γ−ゼインのER由来RPBLA中での組み立て能は種子に限定されない。実際、γ−ゼイン遺伝子はトランスジェニックアラビドプシス植物で構成的に発現された場合、この貯蔵タンパク質は葉肉細胞のER由来PBLS内に蓄積された(Geli et al., 1994 Plant Cell 6:1911-1922)。このγ−ゼインのER由来タンパク粒への堆積を担うシグナルを探したところ(プロラミンはER保持のためのKDELシグナルを持たない)、タンデムリピートドメインを含む〆プロリン豊富N末端ドメインがER保持に必要であったことが示された。この研究ではまた、C末端ドメインがタンパク粒形成にも関与している可能性があることが示唆されたが、最近のデータ(WO2004003207A1)では、ERにおける保持およびタンパク粒形成の誘導にはプロリン豊富N末端ドメインが必要かつ十分であることを示されている。しかしながら、これらのドメインがタンパク粒の組み立てを促進する機構はまだ知られていなが、in vitro研究からの証拠は、γ−ゼインのN末端部分が規則正しい構造に自己組み立て可能であることを示唆している。
【0087】
γ−ゼインに基づくPBISは、少なくとも1つのリピートおよびProXドメインのアミノ末端9残基、より好ましくは、全Pro−Xドメインを含むことが好ましい。γ−ゼインのC末端部分は必要ではないが、存在してもよい。それらの配列はUS20040005660に示され、それぞれRX3およびP4と呼ばれ、以下にも示す。
【0088】
α、β、δおよびγの4つの異なるタイプのゼインがある。それらは内胚乳発達の際にER由来タンパク粒中に連続的に蓄積する。β−ゼインおよびδ−ゼインはトウモロコシPB中には多量には蓄積しないが、それらは栄養組織中で安定であり、タバコ植物で発現させた場合にER由来タンパク粒様構造に堆積された(Bagga et al., 1997 Plant Cell Sep 9(9):1683-1696) 。この結果は、β−ゼインならびにδ−ゼインが、ER保持およびPB形成を誘導し得ることを示唆する。
【0089】
コムギプロラミン貯蔵タンパク質グリアジンはK/HDELを欠いたタンパク質群であり、ERを介したその輸送は複雑であると思われる。これらのタンパク質はER内に隔離され、そこで保持されて高密度タンパク粒へとパッケージングされるか、またはゴルジ体によってERから液胞へ輸送される(Altschuler et al., 1993 Plant Cell 5:443-450)。
【0090】
グリアジンは、別々に折りたたまれた2つの自律的領域を含む天然キメラであると思われる。N末端はグルタミンおよびプロリン豊富な約7〜約16のタンデムリピートからなる。タンデムリピートの配列は異なるグリアジン間で異なるが、1つまたはその他のコンセンサス配列PQQPFPQ(配列番号3)、PQQQPPFS(配列番号4)およびPQQPQ(配列番号5)に基づく。このタンパク質のC末端領域は分子内ジスルフィド結合を形成する6〜8つのシステインを含む。Altschuler et al.らの研究は、N末端領域とコンセンサス配列がγ−グリアジンからのERにおけるPB形成を担っていることを示す(Altschuler et al., 1993 Plant Cell 5:443-450)。
【0091】
例示的な有用プロラミン型配列は、下表にそれらのGenBank識別番号とともに示されている。
【0092】
【表1】

【0093】
さらなる有用な配列は、Altschul et al., 1997 Nucleic Acids Res. 25:3389-3402に記載されているように、以下に示すものなどのクエリーを用いて、全非冗長GenBank CDS translations+PDB+SwissProt+PIR+PRF(環境サンプルを除く)データベースでBLAST検索を行うことによって得られる。
【0094】
【化1】

【0095】
例示的修飾プロラミンは、(a)シグナルペプチド配列、(b)タンパク質γ−ゼインのリピートドメインヘキサペプチドPPPVHL(配列番号2)の1以上のコピーの配列(全ドメインは8つのヘキサペプチドユニットを含む)および(c)γ−ゼインのProXドメインの全部または一部の配列を含む。例示的な特定の修飾プロラミンはR3、RX3およびP4として以下に示されるポリペプチドを含む(そのDNAおよびアミノ酸残基配列も以下に示す)。
【0096】
特に好ましいプロラミンは、公開出願WO2004003207に開示されているγ−ゼインおよびその成分部分、イネrP13タンパク質および22kDaトウモロコシα−ゼインおよびそのN末端断片を含む。γ−ゼイン、イネおよびα−ゼインタンパク質のDNAおよびアミノ酸残基配列を以下に示す。
【0097】
27kDのγ−ゼイン
【化2】


【0098】
RX3
【化3】

【0099】
R3
【化4】

【0100】
P4
【化5】

【0101】
X10
【化6】

【0102】
クローンと相同な13kDのイネプロラミンrP13−AB016504 Sha et al., 1996 Biosci. Biotechnol. Biochem. 60(2):335-337; Wen et al., 1993 Plant Physiol. 101(3):1115-1116; Kawagoe et al., 2005 Plant Cell 17(4):1141-1153; Mullins et al., 2004 J. Agric. Food Chem. 52(8):2242-2246; Mitsukawa et al., 1999 Biosci. Biotechnol. Biochem. 63(11):1851-1858
【化7】

【0103】
22kDのトウモロコシα−ゼインの22aZtN末端断片−V01475 Kim et al., 2002 Plant Cell 14(3):655-672; Woo et al., 2001 Plant Cell 13(10):2297-2317; Matsushima et al., 1997 Biochim. Biophys. Acta 1339(1):14-22; Thompson et al., 1992 Plant Mol. Biol. 18(4):827-833
【化8】

【0104】
γ−グリアジン前駆体−AAA34272−Scheets et al., 1988 Plant Sci. 57:141-150
【化9】


【0105】
βゼイン−AF371264−Woo et al., (2001) Plant Cell 13 (10), 2297-2317
【化10】

【0106】
δゼイン10kD−AF371266−Woo et al., (2001) Plant Cell 13 (10), 2297-2317、およびKirihara et al., (1988) Gene. Nov 30;71(2):359-70
【化11】

【0107】
シグナルペプチド
【化12】

【0108】
T細胞刺激免疫原性ポリペプチド
文献で、多数のT細胞刺激免疫原性ポリペプチド配列が同定されている。一部のリストを下表に、1文字コードを用いて示す。
【0109】
【表2】



【0110】
引用文献:
【表3】

【0111】
好ましいT細胞刺激免疫原性配列の群はHPV−16のE7遺伝子に存在する。これまでに述べられている。治療用DNAワクチン候補[Osen et al., 2001 Vaccine 19(30):4276?4286]を臨床試験に用いるためのワクチンへと転じるため、安全性をさらに高めた。このために、異種遺伝子を融合させた。むしろ、免疫原性は遺伝子の前にKozak配列[Kozak et al., 1987 Nucleic Acids Res 15(20):8125?8148]を置くことにより増強された[Steinberg et al., 2005 Vaccine 23(9):1149-1157]。ヒトに適用可能である[Hanke et al., 2000 Nat Med 6(9):951?955]プラスミド−ベクターpTHamp[Hanke et al., (1998) Vaccine 16(4):426?435]が選択された。多くの発現ベクターが知られており、DNAワクチンに用いるために利用可能である。例えば、米国特許第7,351,813B2号ならびにEP1026253B1およびその中の引用を参照。
【0112】
より重要なことには、E7はそれ自体、再設計されたものである。配列は、タンパク質の形質転換特性に重要な場所(pRB−結合部位、C−X−X−Cモチーフ)で正確に分析され、「コア」遺伝子として「シャッフルされた」順序で再組み立てされている。この配列はヒトに最適な(マウスとほぼ同一)コドンであった。切り出しにより破壊された元の接合部は、野生型配列を再構成する組換え事象を最小限にするために非コドン至適化配列を用いた「附属部分」として付加された(図6も参照)。
【0113】
腫瘍保護および退縮研究で、腫瘍ワクチンの免疫原性および有効性に対する第一印象が得られる。しかしながらこれらの研究は、ヒトにおいて誘導される応答を完全に反映するものではない。抗原負荷樹状細胞(DC)によるヒトリンパ球の「in vitro免疫」をヒト応答のモデルとして使用することができる[Nonn et al., 2003 J Cancer Res Clin Oncol 129(9):511?520]。DNAトランスフェクションによるDCの負荷は好適な技術であり[Lohmann et al., 2000 Cancer Gene Ther 7(4):605?614]、特異的T細胞プライミングによりDNAワクチン候補の潜在的免疫原性が確認される。
【0114】
以下に示される結果は、第二世代のHPV−16 E7SH DNAワクチン候補がマウスにおいてin vivoで、また、ヒトリンパ球のin vitro免疫の後に特異的免疫を誘導し、従って、安全な治療用HPV−ワクチンを提供し得ることを示す。
【0115】
HPV−16 E7SHタンパク質を発現する遺伝子の配列は5’から3’方向へ次の通りである。
【化13】

【0116】
好ましいT細胞刺激免疫原性配列ももう1つの群はHIV−1に存在する。特に好ましい実践では、HIV−1に含まれるポリペプチド配列はHIV−1 gag遺伝子によりコードされる。よって、これらの配列は、gag遺伝子によりコードされる〆P24、P17、P6またはP9タンパク質、またはP41ポリペプチドなどのポリペプチドに存在する。
【0117】
特定のT細胞刺激免疫原性配列はそれ自体、HIV−1または他のいずれかの病原体に一個のポリペプチドとして存在する必要はない。むしろ、このような配列は、病原性ゲノムのオープンリーディングフレームによりコードされる一個のポリペプチドまたはタンパク質性材料の一部として存在する。
【0118】
本明細書で有用な特定のT細胞刺激免疫原性配列を以下に示す。
【化14】

【0119】
【化15】

【0120】
【化16】


【0121】
【化17】


【0122】
【化18】

【0123】
意図されるアジュバントのT細胞刺激免疫原性は、周知の種々の技術によって測定することができる。有用な実践では、宿主動物に意図されるRPBLAワクチンまたは接種物を接種し、その後、末梢単核血液細胞(PMBC)を回収する。次に、これらのPMBCをin vitroにおいて生物学的に活性なポリペプチド(T細胞免疫原)の存在下で、約3〜4日の期間培養する。培養されたPMBCを次に増殖またはIL−2、IFN−γのGM−CSFなどのサイトカインの分泌に関してアッセイする。T細胞活性化に関するアッセイは当技術分野で周知である。例えば、米国特許第5,478,726号およびその中に引用されている技術を参照。
【0124】
意図されるアジュバントは一般に、回収されたRPBLA粒子から、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、酢酸緩衝生理食塩水(ABS)またはリンゲル溶液などの、水性組成物を形成するための生理学的に耐用性のある(許容される)希釈ビヒクル中にRPBLAを分散させることにより調製される。希釈ビヒクルはまた、周知のように、落花生油、スクアランおよびスクアレンなどの油性材料を含むこともできる。
【0125】
有効成分としてタンパク質性材料を含むアジュバントの調製も当技術分野で十分に理解されている。一般に、このようなアジュバントは、溶液または懸濁液のいずれかとして非経口剤形で調製され、また、注射前に液体に溶解または懸濁させるのに好適な固体形態で調製することもできる。調製物を乳化させることもでき、特に好ましい。
【0126】
免疫原的に活性なRPBLAは多くの場合、薬学上許容され、かつ、有効成分に適合する賦形剤と混合される。好適な賦形剤は、例えば、デキストロース、グリセロールまたはエタノールなどおよびその組合せである。さらに所望により、アジュバントは、組成物の免疫原的有効性を増強する、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤などの微量の補助物質を含むことができる。
【0127】
さらに詳細に述べなくとも、当業者ならば以上の説明および以下に詳説される実施例を用いて本発明を最大限に利用できるものと考えられる。よって、以下の好ましい具体的実施態様は単に例示であって、開示の残りの部分を何ら限定するものではないと解釈される。
【実施例】
【0128】
実施例1:プラスミドの構築および植物の形質転換
クローニングされたSouth African HIV単離株Du422(GenBank受託番号AF544010)からの、HIV−1 p24、p41およびRTをコードするDNAを、PCRを用いてZera(登録商標)と融合し、その後、大腸菌で、A.ツメファシエンス(A.tumefaciens)バイナリー発現ベクターpTRAc(Meyers, BMC Biotechnology 2008 8:53)にクローニングし、組換えクローンpTRAcRX3p24、pTRAcRX3p41およびpTRAcRX3RTを得た。
【0129】
HPV−16 E7SH遺伝子を、[Steinberg et al., 2995 Vaccine 23(9):1149-1157]に記載されているように3連続のPCR反応により操作した。得られたHPV16 E7SH遺伝子をPCRにより増幅し、タンパク質の5’末端にエンテロキナーゼ部位を付加した。次に、この構築物を、RX3 GFP融合遺伝子を含んだA.ツメファシエンスバイナリーベクターpTRA C[Mclean et al., 2007 J Gen Virol 88:1460-1469]中のGFPを置き換えることによってRX3と融合させた。
【0130】
この組換えクローンを大腸菌から精製し、コンピテント宿主A.ツメファシエンスGV3101::pMP90RK細胞にエレクトロポレーションを行った。pTRAcRX3p24、pTRAcRX3p41、pTRAcRX3RTおよびpRX3E7SHを含む組換えA.ツメファシエンス培養物を6週齢のN.ベンサミアナ(N. benthamiana)植物に、ニードルとシリンジを用いて注射浸透させた。一時的タンパク質発現を増強するためにこれらの葉に、サイレンシングサプレッサーpBIN−NSを含むA.ツメファシエンスLBA4404の同時浸透を行った。浸透植物を22℃、16時間:8時間の明暗周期下で生長させた。
【0131】
一時的に発現されたRX3融合タンパク質の回収および精製
浸透させた葉の組織 およそ10gを液体窒素中で摩砕し、20mlのバッファーPBP3(100mM Tris pH8、50mM KCl、6mM MgCl2、10mM EDTAおよび0.4M NaCl)に再懸濁させた。この懸濁液を3分間ホモジナイズした後、ミラクロス(Calbiochem(登録商標), San Diego, CAから入手可能な孔径22〜25mmのレーヨンポリエステルとアクリル系結合剤からなる、ゼラチン状のホモジネートおよびプロトプラスト単離用の迅速濾材)で濾過した。濾液を密度ステップ勾配の上にのせた。この勾配はバッファーPBP3で作製した7ml容の15、25、35および45%濃度Optiprep(登録商標)密度勾配媒体からなった。この勾配をBeckman SW28ローターにて4℃、80000Xgで2分間遠心分離した。ペレットを500μlのバッファーPBP3に再懸濁させ、分析のためにアリコートを保存した。残りを−70℃で保存した。
【0132】
実施例2:マウスの免疫
HIV群試験
雌BALB/cマウス(8〜10週齢)を適当数の群に分けた(5匹/群)。
群1−vDNAプライム
群2−vDNAプライム+vDNAブースト
群3−vDNAプライム+RPBLAブースト
群4−RPBLAプライム
【0133】
プライムおよびブースト接種に用いたDNAワクチン(vDNA)は、(i)Aldevron, Fargo, ND, USAのより製造され、1mg DNA/ml生理食塩水に再懸濁させたDu422 HIV−1サブタイプC Gag(van Harmelen, 2003)を発現するpTHGagC、および(ii)5つのHIV−1サブタイプC遺伝子gag、逆転写酵素(RT)、tatおよびnefを発現するpVRCgrttn(Burgers et al., AIDS Research and Human Retroviruses 2008 24(2):195-206)に相当する。このvDNA(100μg DNA/100μl生理食塩水)を、各前脛骨筋に50μlを注射することにより投与した。
【0134】
対応するRX3融合タンパク質(RX3−p24、RX3−p41およびRX3−RT)を含むRPBLAの筋肉内接種では、対応するRPBLA画分100μlを上記のように単離し、生理食塩水バッファーに再懸濁させた。以下の量のRPBLAを前脛骨筋に注射した:RX3−p24は3.6μg;RX3−p41は3.1μg;およびRX3−RTは4μg。
【0135】
HPV群試験
DNAワクチン接種
6〜8週齢の雌C57BL/6マウスの各前脛骨筋に、DNAを注射する5〜6日前に10μMのカルジオトキシン50μlを注射した。ワクチン接種では、50μlのプラスミドDNA(1μg/PBSμl)を各前処理筋肉に注射した。10日後にマウスを犠牲にし、脾臓から脾細胞を単離した。
【0136】
腫瘍保護および退縮
腫瘍保護および退縮試験は本質的に(Ohlschlager et al., Vaccine 2006 24(2):2880-2893)に記載されているように行った。プロトコールの具体的な修正は対応する実施例に示されている。
【0137】
実施例3:IFN−γおよびIL−2 ELISPOTアッセイ
HIV抗原
12日目または40日目に回収し、各群マウス5匹からプールした脾臓から脾細胞の単細胞懸濁液を調製した。IFN−γ ELISPOT応答を、マウスIL−2またはIFN−γ ELISPOTセット(BD Pharmingen)を用いて測定した。脾細胞を最終容量200μlのR10培養培地(10%熱不活性化FCS(Gibco)を加えた、15mM β−メルカプトエタノール、100Uペニシリン/mlおよび100?μgストレプトマイシンを含有するRPMI)中、5×10/ウェルで、3反復で播種した。
【0138】
ペプチド(純度>95%、Bachem, Switzerland)GagCD8 AMQMLKDTI(配列番号116)、gag CD4(13)NPPIPVGDIYKRWIIGLNK(配列番号117)、gag CD4(17)FRDYVDRFFKTLRAEQATQE(配列番号118)、RT(CD8)VYYDPSKDLIA(配列番号120)、またはRT(CD4)PKVKQWPLTEVKIKALTAI(配列番号119)をアッセイにおける刺激として、終濃度4μg/mlで用いた。H−2K?結合ペプチドTYSTVASSL(配列番号1)(Elizabeth Reap, AlphaVaxから入手)を含む反応またはペプチドを含まない反応をバックグラウンド対照として用いた。22時間目に検出抗体を用いてスポットを検出し、Nova Redで現像した後、CTL Analyzer(Cellular Technology, OH, USA)をImmunospotバージョン3.0ソフトウエアとともに用いて計数した。3反復のウェルでのスポットの平均数を計算し、結果を10脾細胞当たりのスポット形成単位(SFU)の平均値±標準偏差(SD)で表す。各マウス群で、ペプチドの不在下、および無関連のペプチドの存在下で得られた平均バックグラウンドスポット+この平均の1標準偏差を陽性応答のカットオフとみなした。
【0139】
HPV抗原
総ての試験で、ELISPOTは(Steinberg et al., 2005 Vaccine 23:1149?1157)に本質的に記載されているようにex vivoで行った。ネズミIFN−γElispotアッセイはex vivoで、また、最初に(Ohlschlager et al., 2006)に記載されているように各in vitro再負荷の5または6日後に行った。グランザイムB Elispotアッセイは、IFN−γElispotアッセイと同様に行った。このアッセイでは、抗マウスグランザイム捕捉抗体(100ng/ウェル、クローンR4−6A2;PharMingen, San Diego, USA)およびビオチン化抗マウスグランザイム検出抗体(50ng/ウェル、クローンXMG1.2;PharMingen, San Diego, USA)を用いた。
【0140】
実施例4:抗血清のウエスタンブロット
ウエスタンブロットはLAV Blot I市販キット(Biorad)を用いて行った。接種マウスからのマウス血清を用い、アルカリ性ホスファターゼコンジュゲートヤギ抗マウスIgGで抗体を検出した。
【0141】
実施例5:アグロインフィルトレーションされたタバコ葉からの密度勾配によるRX3−p24、RX3−p41またはRX3−RT含有RPBLAの単離(精製)
対応する構築物(pRX3−p24、pRX3−p41またはpRX3−RT)でアグロインフィルトレーションされた葉組織およそ10gを液体窒素中で摩砕し、20mlのバッファーPBP3(100mM Tris pH8、50mM KCl、6mM MgCl2、10mM EDTAおよび0.4M NaCl)に再懸濁させた。これを、ポリトロンホモジナイザーを用いて氷上で3分間ホモジナイズした後、ミラクロスで濾過した。対応する濾液を、バッファーPBP3で作製した7ml容の15、25、35および45%濃度Optiprep(登録商標)密度勾配媒体を含んでなる密度ステップ勾配の上にのせた。この勾配をBeckman SW28ローターにて4℃、80,000xgで2時間遠心分離した。ペレットを500μlのバッファーPBP3に再懸濁させ、光学顕微鏡でRPBLAの存在を確認し、分析のためにアリコートを保存した。残りを−70℃で保存した。
【0142】
RPBLA画分が対応するRX3融合タンパク質を含んでいるかどうかを確認するため、そのアリコートを、融合タンパク質の完全性を確認するための抗RX3抗体および抗p24抗体を用い、ウエスタンブロットにより分析した(図1)。免疫原の量は、標品としてのHIV−1 p17/p24(p41とも呼ばれる)およびHIV−1 RTのウエスタンブロット希釈液の濃度測定分析により定量した。対応する免疫原の濃度は、RX3−p24では36ng/μl、RX3−p41では31ng/μlおよびRX−RTではおよそ40ng/μlと評価された。
【0143】
実施例6:RX3−p24の筋肉内接種におより誘発された細胞応答の測定
RX3−p24含有RPBLAの投与により誘発された細胞性免疫応答を測定するため、4群のマウスに次のように接種した:(i)DNAワクチンを接種したマウス(pTHGagx1)、(ii)DNAワクチンを接種し、別の用量の同じおよびDNAワクチンで追加免疫したマウス(pTHGagx2)、(iii)DNAワクチンを接種し、RX3−p24を含むが、さらなるDNAを含まないRPBLAで追加免疫したマウス(pTHGag+RX3−p24)、および(iv)RX3−p24単独を含むRPBLAを接種したマウス(RX3−p24)。
【0144】
IFN−γおよびIL−2 ELISPOTアッセイでは、DNAワクチン単独を接種したマウス(pTHGagx1)は細胞応答を誘導したことが示された。図2に示されるように、CD4ならびにCD8 T細胞は、刺激ペプチドgag CD8、gag CD4(13)またはgag CD4(17)とともにインキュベートした場合、無関連のペプチドとともにインキュベートされたT細胞に比べて、多量のIFN−γおよびIL−2を分泌した。予測されたように、また、これまでに示されているように、2回のDNAワクチンで追加免疫したマウス(pTHGagx2)は、いっそう大きな細胞応答を示した(pTHGag群に比べて4倍)。
【0145】
RX3−p24単独を含むRPBLAを接種したマウス群(RX3−p24)で同じアッセイを行ったところ、有意な応答は見られなかった。この結果は、RPBLA内に凝集した免疫原は細胞応答を誘発することができないことを示唆した。しかしながらやはり、〆DNAワクチンを接種し、RX3−p24を含むがさらなるDNAを含まないRPBLAを含有する2回目の接種物で追加免疫したマウス(pTHGag+RX3−p24)からのT細胞に対してIFN−γおよびIL−2 ELISPOTアッセイを行ったところ、pTHGagx1群に比べて3倍高い驚くべき細胞応答が見られた。p24マウス群で見られた細胞応答の欠場は、おそらく、より高い量のRPBLAを接種すべきであることを示す。
【0146】
これらのデータは、RPBLAが細胞応答を誘導し得る好適な免疫原提供ビヒクルであることを示唆する。
【0147】
実施例7:RX3−p24の筋肉内接種により誘発される体液性応答の測定
AIDSのリスクは、p24抗体の力価が低下した個体で著しく高まることが示されており、これは高い抗p24抗体力価が無病状態の維持に必要であり得ることを示唆している。
【0148】
p24抗原に対する抗体の存在を調べるため、HIVウイルスタンパク質の提示を含むストリップ[LAV Blot I市販キット(Biorad)]を4つの接種群(pTHGagx1、pTHGagx2、pTHGag+RX3−p24およびRX3−p24)のマウス血清とともにインキュベートした。p24タンパク質に対する抗体は、DNAワクチンを接種し、2回目のDNA接種またはRX3−p24を含むが、さらなるDNAを含まないRPBLAで追加免疫したマウスでのみ検出された(図3;pTHGagx2およびpTHGag+RX3−p24マウス群)。興味深いことに、この2つ目の群から生じた抗体はp24タンパク質の他、全長Gagタンパク質(p55)も認識し、このことは、pTHGagx1群に比べてpTHGag+RX3−p24マウス群ではより高い力価の抗体が生産されることを示唆する。
【0149】
実施例8:RX3−p41の筋肉内接種により誘発される細胞応答の測定
従前に示されているように、HIV Gagタンパク質のp17およびp24断片(p17/24)の融合から得られたp41は、HIV−1ゲノムにおいて最も高い密度のCTLエピトープを含む(Novitsky et al., J. Virol. 2002 76(20):10155-10168)。これに関して、RX3−p41融合タンパク質を含むRPBLAの、免疫系の細胞応答誘発効率を調べた。
【0150】
従前に実施例6で見られたように、IFN−γおよびIL−2 ELISPOTアッセイは、単回用量のDNAワクチンを接種したマウスは小さな細胞応答を誘発し、これはこのDNAワクチンの2回目の接種でマウスを追加免疫した場合に有意に高まったことを示した(図4においてpTHGagx1とpTHGagx2を比較)。RX3−p41で追加免疫したマウス群(pTHGag+RX3−p41)からの脾細胞は、それらがgagCD4(13)およびgagCD4(17)刺激ペプチドとともにインキュベートされた場合のpTHGagx2群よりもはるかに多量のIFNγおよびIL−2を分泌したことを指摘することは興味深い(図4)。IFNγおよびIL−2の分泌は、pTHGag+RX3−p41マウス群の脾細胞をgagCD8刺激ペプチドとともにインキュベートすることにより増加しなかったが、免疫系の細胞応答は、RX3−p41融合タンパク質を含むRPBLAの接種により効果的に追加免疫されると結論付けることができる。
【0151】
実施例9:RX3−RTの筋肉内接種により誘発される細胞応答の測定
HIVに対して有効な多価ワクチンは数種の抗原を含むことから、HIVウイルスタンパク質RTを用いて同様の研究を行った。
【0152】
IFNγ ELISPOTアッセイは、単回用量のDNAワクチンを接種したマウス(pVRCgrttnx1)が誘導した細胞応答は極めて低かったことを示した。刺激ペプチドRT単独とともにインキュベートしたCD8 T細胞(CD8)は、無関連のペプチドTYSTVASSL(配列番号1;図5)とともにインキュベートした同じ細胞よりも多量のIFN−γを分泌した。2回目のDNAワクチン(pVRCgrttnx2)またはRX3−RTを含むRPBLA(pVRCgrttn+RX3−RT)による追加免疫は、細胞応答の一般的誘導を観察するために必要であった。図5は、対応する刺激ペプチドとともにインキュベートしたCD4およびCD8 T細胞は、対照処置(無関連ペプチドの不在または存在)に比べて多量のIFN−γおよびIL−2を分泌したことを示す。
【0153】
実施例10:RX3−p24、RX3−41またはRX3−RTを発現するDNAワクチンの筋肉内接種により誘発される免疫応答の測定
HIV抗原をコードするDNAワクチンは包括的に研究され、動物モデルならびにヒトにおいて体液性および細胞性双方の免疫応答を誘導することが示されている(Estcourt et al., Immunol. Rev. 2004 199:144-155)。しかしながら、DNAワクチンは安全であることが示されているが、免疫は低く、かつ、一時的レベルの免疫応答を生じるに過ぎなかった。
【0154】
pTHGagはマウスモデルにおいて強力な細胞傷害性リンパ球応答を誘導することが示されている。種々の細胞系で発現されたPr55Gagは組み立てられ、原形質膜から発芽し、高免疫原性ウイルス様粒子(VLP)を形成することができる。RPBLAは、それらの組み立てが、ウイルス粒子の形成に関与するウイルスタンパク質ではないRX3の凝集能により誘導されることから、従来のVLPとはみなすことができない。しかしながら、RX3−24、RX3−41、RX3−RTおよびRX3E7SHを含むRPBLAを発現するDNAワクチンの適合性を調べた。興味深いことに、対応するpTH由来ベクター(pTHRX3−p24、pTHRX3−p41、pTHRX3−RTおよびpTHRX3−E7SH)がひと度これまでの研究のpTHGagとして投与されると、有意な体液性および細胞性免疫応答が見られた。この予期しない結果は、RPBLAが、このオルガネラがER中に保存され、原形質膜から発芽して高免疫原性ウイルス様粒子(VLP)を形成するとは思われないにもかかわらず、DNAワクチン接種により投与可能であることを示す。
【0155】
実施例11:in vitroで組み立てられたRPBLAの接種により誘発される免疫応答の測定
密度勾配によるRPBLAの単離はRPBLA高富化画分の回収を可能とするが、ある程度の夾雑物が一緒に精製される。夾雑物をできる限り除去するために、融合タンパク質(RX3−p24、RX3−p41、RX3−RTおよびRX3−E7SH)を対応するRPBLA画分から20mM Tris pH8、2%DOC、10mM DTTに可溶化し、軽く振盪させながら室温で1時間インキュベートし、RP−FPLCにて精製した。95%を超える純度で〆RX3融合タンパク質を含有する溶出画分をプールし、凍結乾燥させた。対応するペレットを蒸留水中、200mMのNaClおよび50mMのCaClの存在下で回収した。これらの条件で、RX3ペプチドを含む融合タンパク質は自発的に再組み立てられ、in vitroにおいて植物ERの外部でRPBLAを再形成する。
【0156】
対応するRX3融合タンパク質を含む、in vitroで組み立てられたRPBLAをマウスに接種したところ、IFNγ、IL−2およびグランザイムB ELISPOTアッセイは、RPBLAが、in vivo形成されたRPBLAを用いて行ったものと同じ研究で有意な細胞応答を追加免疫することが示された。この驚くべき結果は、in vitroで組み立てられたRPBLAが細胞応答誘導能を維持することを示唆する。
【0157】
RX3融合タンパク質は以下の条件でin vitro組み立ておよびRPBLA形成を誘導することができる:(i)溶液のpH値の低下、(ii)塩含量の上昇、(iii)還元剤濃度の低減または除去、(iv)酸化剤の付加、(v)温度の低下、またはこの因子の組合せ。明らかに、in vitroRPBLAは膜に取り囲まれていない。in vitro組み立ての誘導に好ましい塩はNaCl、CaClおよびKClであり、好ましいpH値は7より低い。
【0158】
従前に示されているように、二重免疫応答(細胞性および体液性)はAIDSに対してより高い保護効果をもたらす。DNAワクチンで初回免疫し、対応するin vitroで組み立てられたRPBLAで追加免疫したマウスにおいて、p24、p41およびRT抗原に対する抗体の存在は、HIVストリップ(LAV Blot I市販キット(Biorad))を用いることで示された。
【0159】
実施例12:アグロインフィルトレーションされたタバコ葉からの密度勾配によるRX3−E7SH含有RPBLAの単離(精製)
RX3と融合されたHPV−16抗原E7SH(pRX3−E7SH)でアグロインフィルトレーションされた葉組織およそ10gを液体窒素中で摩砕し、20mlのバッファーPBP3(100mM Tris pH8、50mM KCl、6mM MgCl2、10mM EDTAおよび0.4M NaCl)に再懸濁させた。これを、ポリトロンホモジナイザーを用いて氷上で3分間ホモジナイズした後、ミラクロスで濾過した。対応する濾液を、バッファーPBP3で作製した7ml容の15、25、35および45%濃度Optiprep(登録商標)密度勾配媒体を含んでなる密度ステップ勾配の上にのせた。この勾配をBeckman SW28ローターにて4℃、80,000xgで2時間遠心分離した。ペレットを500μlのバッファーPBP3に再懸濁させ、光学顕微鏡でRPBLAの存在を確認し、分析のためにアリコートを保存した。残りを−70℃で保存した。
【0160】
RX2−E7SH融合タンパク質の遺伝子配列を以下に5’から3’方向に示す。
【化19】

【0161】
RPBLA画分が対応するRX3融合タンパク質を含んでいることを確認するため、そのアリコートを、融合タンパク質の完全性を確認するための抗RX3を用い、ウエスタンブロットにより分析した(図7)。
【0162】
実施例13:RX3−E7SHの接種により誘発される細胞応答の測定
RPBLAを含むRX3−E7SHの投与により誘導される細胞性免疫応答を測定するため、5つのマウス群に以下のように接種した:(i)E7SH抗原を含むDNAワクチンで背一種したマウス(pTHamp−E7SH)、(ii)配列:
【化20】



を有する対応するDNAワクチン陰性対照を接種したマウス(pTHamp)、(iii)RX3−E7SHを含むRPBLAを接種したマウス(RX3−E7SH)、(iv)RX3−E7SHおよびフロイントの不完全アジュバントを含むRPBLAで同時接種したマウス(RX3−E7SH/IFA)および最後に(v)RPBLAの陰性対照として、Gfpと融合したRX3を含むRPBLAを接種したマウス(RX3−Gfp)。
【0163】
予期されたように、IFN−γおよびグランザイムB ELISPOTアッセイは、DNAワクチンを接種したマウス(pTHamp−E7SH)が細胞応答を誘導したことを明らかに示した。図8に示されるように、pTHamp−E7SH DNAワクチンを接種したマウスからの脾細胞は、E7SH抗原の不在下でDNAワクチンを接種したマウス(pTHamp)からのものに比べて有意に多量のIFN−γおよびグランザイムBを分泌した。
【0164】
驚くことに、また、RX3−E7SHを含むRPBLAを接種したマウス(RX3−E7SH)から単離された脾細胞は、IFA同時投与の存在下または不在下でも多量のIFN−γおよびグランザイムB(pTHamp−E7SHマウス群と同等)を放出することが認められた(図8)。対照として、RX3−Gfp群で見られた陰性結果は、RPBLAの投与によりE7SHに対する非特異的細胞応答を誘発されないことを示す。
【0165】
これらの結果は、RPBLA粒子中でRX3との融合物として投与されたE7SH抗原は細胞応答を効果的に誘発することができることを明らかに示す。最大効果を達成するためにアジュバントが必要とされないという事実は、RPBLA中のRX3−E7SHが細胞応答を誘導し得る有効な抗原提示ビヒクルであることを示す。この結論は、有効な細胞応答を誘導するためにIFAをオボアルブミン(OVA)と同時投与する必要があるという知見により裏付けられた(図9)。
【0166】
オボアルブミンのアミノ酸配列を1文字コードで以下に示す。
【化21】

【0167】
実施例14:RX3−E7SH接種 により誘導される脾細胞の細胞溶解活性の測定
特異的に活性化された脾細胞が細胞溶解活性を持っていたかどうかを調べるために、51Cr放出アッセイを行った。51Cr放出アッセイは、他所に記載されているように[Steinberg et al., (2005) Vaccine 23(9):1149?1157]、ネズミ脾臓細胞のin vitro再負荷から5〜6日後に行った。特定の標的(RX3−E7またはpTHamp−E7SH細胞)の特異的溶解が、タンパク質およびDNAに基づくワクチンの対照標的(RX3−GfpまたはpTHamp細胞)の溶解より少なくとも10%高かった場合の動物を陽性とスコアリングした。初回のin vitro再負荷後に、E7WT発現RMA−E7形質転換体に対する強い特異的細胞溶解活性が示された(下表参照)。
【0168】
【表4】

【0169】
驚くべきことに、RMA−E7細胞の特異的溶解率の平均はRX3−E7SH群(33%)およびpTHamp−E7SH免疫動物(26%)に匹敵し、対応する対照群RX3−Gfp(12%)およびpTHamp(8%)よりも有意に高かった。この結果は、RX3−E7SH RPBLAが、DNAワクチンpTHamp−E7SHを用いてすでに示されたもの[Ohlschlager et al., (2006) Vaccine 24:2880-2893]と同様に有効に、E7発現細胞に対して特異的細胞溶解活性を誘導できたことを示す。さらに、RX3−E7SH融合タンパク質を含むRPBLAがIFAと同時に投与された場合には細胞溶解活性は増大しなかったという事実(表のRX3−E7SH/IFA群参照)は、より低い用量であっても細胞溶解作用を誘発するのに有効であることを示唆し、RPBLAが特異的細胞溶解作用を誘発するのに有効な投与ビヒクルとなるという考えを裏付ける。
【0170】
細胞溶解応答が腫瘍増殖[Akazawa, 2004 Cancer Res 64:757?764]およびウイルス感染(Vine et al., 2004 J Immunol 173:5121-5129]の管理に重要な要素であることが広く実証されていることを付け加えておくことが重要である。
【0171】
実施例15:RX3−E7SHを接種したマウスにおける腫瘍増殖の測定
治療用腫瘍ワクチンの目的は定着腫瘍を根絶する有効な免疫応答を誘導することである。よって、in vivoにおいて定着したE7発現腫瘍細胞を管理することができた細胞性免疫応答を誘導できるかどうかを決定するためにE7SH遺伝子によるワクチン接種を検討した。4つの腫瘍退縮試験において、計80匹の動物に腫瘍形成用量の同系C3腫瘍細胞を移植した(0日目)。5〜18日目に腫瘍が平均サイズ4〜9mmに達した際に、動物に(i)100μgのE7SHコードプラスミド(pTHamp−E7SH)、(ii)100μgのエンプティーpTHampベクター(pTHamp)、(iii)5μgのRX3−E7SHを含有するRPBLA(RX3−E7SH)、および(iv)IFA と同時投与される同量のRX3−E7SH RPBLA(RX3−E7SH/IFA)を接種した(0日目)。腫瘍サイズを、試験の終了時まで(14日目)、定規で計ることにより2日おきに測定した。
【0172】
図10Aに示されるように、対照DNAベクターを接種したマウス(pTHamp)の腫瘍サイズは徐々に大きくなり、接種14日後に最大平均サイズ110mmに達した。RX3−E7SHを含むRPBLAを接種したマウスでは、腫瘍増殖は有意に低下した。この試験を通して、RX3−E7SHマウス群は対照群よりも小さな腫瘍を示し、14日目には平均値40mmに達した。このRX3−E7SH接種の保護効果は、E7発現腫瘍に対して良好な治療ワクチンであることが報告されている[Ohlschlager et al., (2006) Vaccine 24:2880-2893]DNAワクチンpTHamp−E7SHに匹敵するものであることを指摘することは興味深い。さらに、従前に示されているように、RX3−E7SHを含むRPBLAとIFAの同時投与(RX3−E7SH/IFA)は、アジュバントの不在下で同量のRX3−E7SH含有RPBLA(RX3−E7SH)の保護効果を増大させなかったという事実は、より低量のRX3−E7SHでE7発現腫瘍の増殖に対して保護が得られるということを示唆する。
【0173】
RPBLA調製物中に存在する何らかの夾雑物による、またはRX3ポリペプチドそれ自体による非特異的な腫瘍増殖の低下を排除するため、独立した試験で同量のRX3−Gfp含有RPBLAを接種したところ、pTHamp DNA対照群を比較した際に腫瘍増殖に対する効果は見られなかった(図10B参照)。
【0174】
マウスにはRX3−E7SHを含むRPBLAを1回だけ接種したことを指摘しておかなければならない。プライムブースト試験では、治療効果が増強されると予測される。
【0175】
実施例16:RX3−E7SHを接種したマウスにおける腫瘍増殖に対する保護効果
治療ワクチンに加え、RPBLAに基づく保護的(予防)ワクチンの適用という目的を考慮に入れ、RX3−E7SH含有RPBLAがE7発現同系腫瘍の増殖から動物を保護することができるかどうかを決定するために、再負荷試験を行った。
【0176】
腫瘍退縮試験の終了から3週間後に、腫瘍退縮試験後に完全退縮を示したマウスの左大腿に、100μl PBS中、0.5×10C3細胞を再び皮下注射した。最初のC3接種は右大腿に行った。対照として、同数の非免疫マウスに同じ処理を施した。この注射から20日後に、総ての対照マウスは100〜400mmの範囲の大きさの腫瘍を示したが、免疫マウスは腫瘍を発達させず、従って、腫瘍増殖からの明確な保護を示した(図11参照)。
【0177】
本明細書に挙げられている特許、特許出願および文献はそれぞれ引用することにより本明細書の一部とされる。冠詞の「a」または「an」は1以上を含むものとする。
【0178】
以上の記載および実施例は例示を意図するものであって、限定と考えるべきでない。本発明の精神および範囲内で他のバリエーションも可能であり、それら自体当業者ならば容易に思い至るであろう。
【図面の簡単な説明】
【0179】
【図1】3つのパネル(図1A、図1Bおよび図1C)は、RX3−p24、RX3−p41およびRX3−RTでアグロインフィルトレーション(agroinfiltrated)を行ったタバコ植物から単離されたRPBLA画分のウエスタンブロットによる分析を示す。対応するRPBLA画分調製物中の全長RX3融合タンパク質の存在は、以下の抗体:(i)RX3を認識するαR8、(ii)p41およびp24抗原を認識するαp24sおよび(iii)RT抗原を認識するαRTを用いることにより確認した。
【図2】BALB/cマウスのワクチン接種後のp24細胞応答のIFN−γ(図2A)およびIL−2(図2B)ELISPOT分析を示す2つのグラフを含む。示された免疫原の接種は、方法に明示されているように行った。対応するELISPOTアッセイにおける反応は、示されたGagペプチド、無関連のペプチド(Irrel pept)またはペプチド不在(Med)で3回行い、バーはスポット形成単位(sfu)の平均値±SD/106脾細胞である。データはマウス5匹/群からプールした脾細胞を用いた代表的試験からものである。
【図3】マウス血清中の抗Gag抗体のウエスタンブロット検出を示す。マウス血清中の抗Gag抗体の含量は、方法に記載されているように市販のウエスタンブロットストリップを用いて検出した。Pos,陽性対照血清;Neg,陰性対照血清;d40,示され、方法に記載されているような接種後40日目に採取したマウス血清;d0,接種前のマウス血清。各ストリップセットの接種計画はストリップの右に示され、これらは(i)単回gag DNA接種(pTHGagx1)、(ii)gag DNAプライム−gag DNA追加免疫(pTHGagx2)、(iii)gag DNAプライム−RX3−p24追加免疫(pTHGagC+RX3−p24)、(iv)単回RX3−p24接種(RX3−p24)であった。
【図4】BALB/cマウスのワクチン接種後のp41細胞応答のIFN−γ(図4A)およびIL−2(図4B)ELISPOT分析を示す2つのグラフを含む。示された免疫原の接種は、方法に明示されているように行った。対応するELISPOTアッセイにおける反応は、示されたGagペプチド、無関連のペプチドTYSTVASSL(配列番号1;irrel pept)またはペプチド不在(Med)で3回行い、バーはスポット形成単位(sfu)の平均値±SD/106脾細胞である。データはマウス5匹/群からプールした脾細胞を用いた代表的試験からものである。
【図5】BALB/cマウスのワクチン接種のRT細胞応答のIL-2(図5A)およびIFN−γ(図5B)ELISPOT分析を示す2つのグラフを含む。示された免疫原の接種は、方法に明示されているように行った。対応するELISPOTアッセイにおける反応は、示されたGagペプチド、無関連のペプチドTYSTVASSL(配列番号1;irrel pept)またはペプチド不在(Med)で3回行い、バーはスポット形成単位(sfu)の平均値±SD/106脾細胞である。データはマウス5匹/群からプールした脾細胞を用いた代表的試験からものである。
【図6】人工HPV−16 E7SH遺伝子のマップである。HPV−16 E7野生型遺伝子(E7WT、上)をpRB結合部位に相当する位置(nt72/73)と2つのC−X−X−Cモチーフの間(nt177/178およびnt276/277)で切り出した。得られた4つの断片a、b、cおよびdを再配列(「シャッフル」)し、配列a、d、c、bを含むコアエレメントを形成した。接合部a−b、b−cおよびc−dにおける推定CTLエピトープの欠損を避けるため、これらの配列(3×27nt=3×9アミノ酸)を附属部分として付加し、完全なHPV−16 E7SH遺伝子を形成した。「野生型復帰組換え」の潜在的リスクを最小にするため、コアエレメントのコドンを、kazusa.or.jp/codon/に見出すことができるKazusaコドン利用データベースに従ってヒトにおける発現のために至適化した。Kozak配列は翻訳を増強するために遺伝子の前に付加した。
【図7】RX3−E7SHでアグロインフィルトレーションを行ったタバコ植物から単離されたRPBLA画分のウエスタンブロットによる分析を示す。対応するRPBLA画分調製物における全長RX3融合タンパク質の存在を、E7SH抗体を用いることにより確認した。
【図8】DNAおよびRPBLA免疫後のC57BL/6マウスにおけるCTL応答を示す2つのグラフ(図8Aおよび図8B)を含む。マウス4匹/群の各前脛骨筋に1回、(i)50μgエンプティープラスミド(pTHamp)、(ii)50μgE7SH発現プラスミド(pTHamp−E7SH)、(iii)またはRX3−Gfp融合タンパク質(RX3−Gfp)を含む5μgのRPBLAの大腿への皮下接種、(iv)RX3−E7SH融合タンパク質(RX3−E7SH)を含む5μgのRPBLA、または(v)RX3−E7SH融合タンパク質を含む5μgのRPBLAと100μlのIFA(100μlバッファー中5μgのRX3−E7SH+100μlのIFA)筋肉内免疫を行った。ex vivo IFN−γおよびGranzyme B Elispotアッセイを行った。各バーは個々の動物からの活性化T細胞の数を表す。
【図9】RPBLA免疫後のC57BL/6マウスにおけるCTL応答のグラフである。マウス匹/群の前脛骨筋に1回、(i)RX3−Gfp融合タンパク質(RX3−Gfp)を含む5μgのRPBLA、(ii)RX3−E7SH融合タンパク質(RX3−E7SH)を含む5μgのRPBLA、(iii)RX3−E7SH融合タンパク質を含む5μgのRPBLAと100μlのIFA(RX3−E7SH/IFA)、(iv)5μgのオボアルブミン(OVA)、または(v)5μgのオボアルブミンと100μlのIFA(OVA/IFA)の筋肉内またはsc(上記の通り免疫を行った。ex vivo Granzyme B Elispotアッセイを行った。各バーは個々の動物からの活性化T細胞の数を表す。
【図10】図10Aおよび図10Bとしての2部は、(i)100μgエンプティープラスミド(pTHamp)、(ii)100μgE7SH発現プラスミド(pTHamp−E7SH)、(iii)RX3−Gfp融合タンパク質(RX3−Gfp)を含む5μgのRPBLA、(iv)RX3−E7SH融合タンパク質(RX3−E7SH)を含む5μgのRPBLA、または(v)RX3−E7SH融合タンパク質を含む5μgのRPBLAと100μlのIFA(RX3−E7SH/IFA)で免疫した後のC57BL/6マウスにおけるC3腫瘍の増殖を示す。示されているデータは、0〜14日目までの腫瘍の表面積サイズを示す。図10Aは、腫瘍退縮に対するDNAとRPBLAの免疫効果の比較を示し、図10Bは、E7SH抗原を欠いたDNAおよびRPBLA免疫における非特異的な腫瘍退縮効果は無いことを示す。
【図11】(i)100μgE7SH発現プラスミド(pTHamp−E7SH)、(ii)RX3−E7SH融合タンパク質(RX3−E7SH)を含む5μgのRPBLA、または(iii)RX3−E7SH融合タンパク質を含む5μgのRPBLAと100μlのIFA(RX3−E7SH/IFA)による免疫後の再負荷試験に対する腫瘍増殖の結果を示すグラフである。図10の腫瘍退縮試験後に完全退縮を示したマウスの大腿に、腫瘍退縮試験の完了3週間後に、100μl PBS中、0.5×106C3細胞を再び皮下注射した。対照として、同数の非免疫マウスに同じ処置を施した。この注射から20日後に、総ての対照マウスは腫瘍増殖を示したが、免疫マウスに腫瘍を発達させたものは無かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする被験体において免疫原性ペプチドに対するT細胞性免疫応答を誘導する方法であって、それを必要とする被験体への、
(i)組換え融合タンパク質(該組換え融合タンパク質はペプチド結合された2つの部分を含み、第一の部分がタンパク粒誘導配列(PBIS)であり、第二の部分が免疫原性ポリペプチドである)を含有する粒子状組換えタンパク粒様会合体(RPBLA)および
(ii)融合タンパク質をコードする核酸分子(該組換え融合タンパク質はペプチド結合された2つの部分を含み、第一の部分がタンパク粒誘導配列(PBIS)であり、第二の部分が免疫原性ポリペプチドである)
の群から選択されるワクチンの投与を含んでなる、方法。
【請求項2】
PBISがプロラミン配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
プロラミン配列が、γ−ゼイン、α−ゼイン、δ−ゼイン、β−ゼイン、イネプロラミンおよびγ−グリアジンからなる群から選択されるプロラミン中に存在する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
PBIS配列が、タンパク質をRPBLA発現細胞の小胞体(ER)に向けるシグナルペプチド配列をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
免疫原性ポリペプチド配列が、
(i)HPV E7遺伝子によりコードされるポリペプチド、
(ii)HIV−1 gag遺伝子によりコードされるポリペプチド、および
(iii)HIV−1 pol遺伝子によりコードされるポリペプチド
の群から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
粒子状組換えタンパク粒様会合体(RPBLA)が、精製組換え融合タンパク質からin vitroで組み立てられる、請求項15〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
投与工程に先行して、免疫原性ポリペプチドまたは免疫原性ポリペプチドをコードする核酸を含んでなる組成物を用いたプライミングワクチン接種または接種の工程が行われる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
プライミングワクチン接種または刺激工程に用いられる免疫原性ポリペプチドを含んでなる組成物が、
(i)組換え融合タンパク質(該組換え融合タンパク質はペプチド結合された2つの部分を含み、第一の部分がタンパク粒誘導配列(PBIS)であり、第二の部分が免疫原性ポリペプチドである)を含有する粒子状組換えタンパク粒様会合体(RPBLA)、
(ii)免疫原性ポリペプチドをコードする核酸分子、および
(iii)融合タンパク質をコードする核酸分子(該組換え融合タンパク質はペプチド結合された2つの部分を含み、第一の部分がタンパク粒誘導配列(PBIS)であり、第二の部分が免疫原性ポリペプチドである)
の群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ワクチンが筋肉内に投与される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
組換え融合タンパク質(該組換え融合タンパク質はペプチド結合された2つの部分を含み、第一の部分がタンパク粒誘導配列(PBIS)であり、第二の部分がT細胞刺激免疫原性ポリペプチドであり、該ポリペプチドの配列が、ワクチンまたは接種物に存在するかまたはワクチンまたは接種物により誘導される病原性ポリペプチド配列のものである)を含有する粒子状組換えタンパク粒様会合体(RPBLA)を含んでなるワクチンまたは接種物用の免疫原特異的アジュバントであって、事前のプライミングワクチン接種または接種無しで接種物中に用いられる濃度で、その病原性配列に対する抗体の生産またはT細胞の活性化を誘導しない、免疫原特異的アジュバント。
【請求項11】
PBISがプロラミン配列を含む、請求項10に記載の免疫原特異的アジュバント。
【請求項12】
PBIS配列が、タンパク質をRPBLA発現細胞の小胞体(ER)に向けるシグナルペプチド配列をさらに含む、請求項11に記載の免疫原特異的アジュバント。
【請求項13】
前記プロラミン配列が、γ−ゼイン、α−ゼイン、δ−ゼイン、β−ゼイン、イネプロラミンおよびγ−グリアジンからなる群から選択されるプロラミン中に存在する、請求項12に記載の免疫原特異的アジュバント。
【請求項14】
前記第二の部分であるT細胞刺激免疫原性ポリペプチド配列がHPV E7遺伝子によりコードされるものである、請求項10に記載の免疫原特異的アジュバント。
【請求項15】
前記第二の部分であるT細胞刺激免疫原性ポリペプチド配列がHIV−1に存在するものである、請求項10に記載の免疫原特異的アジュバント。
【請求項16】
HIV−1に含まれるポリペプチドが、HIV−1 gag遺伝子によりコードされるものである、請求項15に記載の免疫原特異的アジュバント。
【請求項17】
粒子状組換えタンパク粒様会合体(RPBLA)が、組換え融合タンパク質が精製された後にin vitroで組み立てられる、請求項10に記載の免疫原特異的アジュバント。
【請求項18】
薬学上許容される希釈剤中に溶解または分散された、アジュバントとしての有効量で存在する請求項10に記載のアジュバントを含んでなる、アジュバント組成物。
【請求項19】
希釈剤が水性である、請求項18に記載のアジュバント組成物。
【請求項20】
組換え融合タンパク質(該組換え融合タンパク質はペプチド結合された2つの部分を含み、第一の部分がタンパク粒誘導配列(PBIS)であり、第二の部分がT細胞刺激免疫原性ポリペプチドであり、該ポリペプチドの配列が、ワクチンまたは接種物に存在するかまたはワクチンまたは接種物により誘導される病原性ポリペプチド配列のものである)を含有する粒子状組換えタンパク粒様会合体(RPBLA)をコードする核酸分子を含んでなるワクチンまたは接種物用の免疫原特異的アジュバントであって、事前のプライミングワクチン接種または接種無しで接種物として用いられる場合に、その病原性配列に対する抗体の生産またはT細胞の活性化を誘導しない、免疫原特異的アジュバント。
【請求項21】
PBISがプロラミン配列を含む、請求項20に記載の免疫原特異的アジュバント。
【請求項22】
PBIS配列が、タンパク質をRPBLA発現細胞の小胞体(ER)に向けるシグナルペプチド配列をさらに含む、請求項20に記載の免疫原特異的アジュバント。
【請求項23】
前記プロラミン配列が、γ−ゼイン、α−ゼイン、δ−ゼイン、β−ゼイン、イネプロラミンおよびγ−グリアジンからなる群から選択されるプロラミン中に存在する、請求項22に記載の免疫原特異的アジュバント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2012−505184(P2012−505184A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530504(P2011−530504)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【国際出願番号】PCT/EP2009/063223
【国際公開番号】WO2010/040847
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(505003218)エラ、ビオテック、ソシエダッド、アノニマ (4)
【氏名又は名称原語表記】ERA BIOTECH, S.A.
【Fターム(参考)】