説明

免疫原組成物

本発明は、不活性化ポリオウイルス(IPV)の乾燥固体または高粘稠性液体製剤と安定剤とを含む免疫原組成物であって、IPVがその抗原性および/または免疫原性を保持する、上記組成物に関する。抗原性/免疫原性を保持するIPVの乾燥製剤を生産する方法について記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫原性を保持する不活性化ポリオウイルス(IPV)の乾燥固体または高粘稠性液体製剤を含む免疫原組成物に関する。本発明はまた、IPVの乾燥固体または高粘稠性液体製剤を含むワクチンも包含する。本発明のさらに別の形態は、乾燥固体または高粘稠性液体の形態で不活性化ポリオウイルス(IPV)を保存する方法である。この方法は、安定剤の溶液中にIPVと細菌多糖を懸濁または溶解させることによりサンプルを調製し、このサンプルから溶剤が消失するような温度および圧力に該サンプルを供することを含む。圧力および温度条件は、溶剤が除去され、サンプルが乾燥して、固体または高粘稠性液体を形成するように維持もしくは調節する。このような製剤は、使用前に再構成することも、直接使用することもできる。
【背景技術】
【0002】
IPVは、ワクチンの成分としてよく知られているが、これは、例えば、Infanrix penta(登録商標)のように、液体の形態で製剤化されている。IPVを凍結乾燥する工程には抗原性の低減が伴うため、乾燥した形態のIPVを含む有効なワクチンを製剤化することは困難である。乾燥したワクチン製剤は、特に、細菌多糖の場合、知られている。ヘモフィルスインフルエンザb型(Hib)のPRP多糖が、例えば、Infanrix hexa(登録商標)(WO99/48525)のように、乾燥固体の形態で頻繁に製剤化されている。
【0003】
IPVの乾燥製剤が有利であるのにはいくつかの理由がある。乾燥製剤は、優れた貯蔵性を有するため、IPV含有ワクチンの貯蔵寿命を延ばすことができる。IPVを乾燥させることができれば、IPVをより融通性の高いワクチン成分にし、以前は不可能であった新規の組合せワクチンに製剤化することが可能になる。ワクチンによっては、液体と乾燥固体成分を含むものもあり、これらは投与の直前に混合する(例えば、Infanrix hexa(登録商標))。Infanrix Hexaは、乾燥Hib成分を含んでいるが、これは使用の直前にDTPa-HepB-IPVで再形成する。IPVを乾燥固体形態のHibと一緒に製剤化することにより、IPVと不適合性であったかもしれない別の成分を当該ワクチンの液体部に添加することが可能になる。
【0004】
当分野では、ワクチン成分を乾燥させるための数種の技法が知られている。伝統的に、これは、当該物質の溶液を調製し、サンプルを凍結させる凍結乾燥方法を用いて達成されてきた。一次乾燥段階では、減圧条件下での氷からの昇華によって大部分の水が除去され、多孔性の「ケーク」が形成される。通常、これに続いて、二次乾燥段階が行なわれるが、その際、圧力および温度を変えて、固体「ケーク」から水を蒸発させる。こうして得られた凍結乾燥サンプルは、液体製剤と比較して安定性が優れている。しかし、凍結乾燥方法は、時間がかかるため、生産工程において律速段階となりうる。
【0005】
大型の乾燥ユニットで多数のサンプルを回分凍結乾燥させる場合には、製品のばらつきも問題である。凍結乾燥機の棚における条件は、それぞれの位置によって変動し、そのために、異なる条件下、異なる速度でサンプルの凍結乾燥が行なわれることになる。生ウイルスなど、特定の生物材料の場合、凍結乾燥工程の間に活性の有意な低減が起こりうる(Pikal(1994)ACS Symposium 567: 120-133)。多くの凍結乾燥物質は依然として環境温度で不安定である(Carpenterら(1994)ACS Symposium 567; 134-147)。
【0006】
凍結工程によって生じる損傷は、ポリオールのような凍結保護剤の使用によりある程度まで防止することができる。さらに、工程の間サンプルを凍結せずに、沸騰により水を除去することによる、凍結乾燥方法の改善もなされている(WO96/40077;米国特許第6306345号)。この方法は、好適な溶剤中のガラスマトリックス形成材料と、保存しようとするサンプルとの混合物を調製し、混合物から多量の溶剤を蒸発させてシロップを取得し、このシロップを沸騰させるのに十分な圧力および温度に供することにより、残留溶剤を除去することを含む。
【0007】
同様の方法が米国特許第5,766,520号に記載されているが、この方法は、水を部分的に除去して粘稠液体を形成し、このシロップを減圧に供することによりこれを「沸騰」させた後、実質的に100℃より低い温度で乾燥させることを含む。この方法もやはり通常の凍結乾燥に伴う問題のいくつかをはらんでいる。この方法を大型凍結乾燥機で実施する場合、サンプルは、それが配置された棚の位置により異なる速度で乾燥するが、これによって、乾燥工程中、サンプルにそれぞれ異なる量の活性の低減が起こる。このために、バッチ内にばらつきが生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
現在まで、高度の抗原性および/または免疫原性を保持するIPVの乾燥固体ワクチン製剤の製造に成功した例は報告されていない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従って、本発明は、乾燥組成物または高粘稠性液体の形態で製剤化されたIPVと安定剤とを含む免疫原組成物であって、再形成後にポリオウイルスに対する免疫応答を生み出すことができる上記免疫原組成物を開示する。安定剤の存在は、抗原の保存に重要であり、ポリオールは有効であることが示されている。IPVは、細菌多糖の存在下で乾燥させるのが好ましい。この細菌多糖は、抗原性および/または免疫原性に関して、本来の抗原をより高いパーセンテージで保持することを可能にする。本発明は、好ましくは、ポリオールと細菌多糖の存在下で、IPVを含む組成物を保存する方法であって、IPVの抗原性および/または免疫原性を保持する、上記方法を包含する。多糖の存在下でIPVを凍結乾燥すると、IPV単独の凍結乾燥と比較して、IPVの抗原保持が改善される。加えて、乾燥固体または高粘稠性液体の形態をしたIPVと一緒に製剤化することにより、Hibの免疫原性も増強される。特に、液体DTPワクチン(以下に記載)で即座に再形成する場合、本発明者らは、DTPワクチンの水酸化アルミニウム成分により、IPVが存在しないケースに比べ、Hib力価が低減しないことをみいだした。
【0010】
用いる乾燥方法は、IPVの抗原性および/または免疫原性の保持にも影響を与える可能性がある。IPVを乾燥するための泡乾燥方法は、通常の凍結乾燥技術よりもIPVの抗原性を保持する点で効果的である。驚くことに、泡乾燥方法に凍結ステップを組み込んでも、抗原性を消失させず、むしろ迅速かつ効果的な保存方法の開発につながった。本発明のさらに好ましい方法は、凍結または泡形成を実施せずにIPV含有サンプルを乾燥させることにより、高レベルのIPVの抗原性および/または免疫原性を保持し、乾燥製剤、好ましくは高粘稠性液体製剤の生成をもたらす。
【0011】
本発明は、貯蔵安定性の利点を有するIPVの乾燥製剤を提供する。乾燥製剤は、投与の直前に迅速かつ容易に再構成することができる。好ましい泡乾燥方法を用いた場合には、ケークの表面積が大きくなるため、泡沫ケークが極めて容易に再形成される。
【0012】
IPVおよびHibの乾燥固体または高粘稠性液体製剤におけるさらなる利点として、Hib成分の免疫原性の増強がある。多成分ワクチンにおいては、ワクチン製剤の他の部分がHib免疫原性の妨害を引き起こす可能性があることはよく知られている(WO96/40242、WO97/00697)。特に、投与前に乾燥IPV-Hib組成物をジフテリア、破傷風および百日咳成分と混合する場合、Hibを含む乾燥製剤にIPVを含有させると、上記の問題を軽減することができる。
【0013】
通常の凍結乾燥法を用いて、細菌性多糖の存在下でIPVの凍結乾燥が可能であるが、泡乾燥技術、もしくは凍結または泡形成を含まない穏やかな乾燥方法を用いるのが好ましい。これらの方法は、さらに優れたIPVの抗原性および/または免疫原性の保持をもたらし、得られるケークもこれまでより容易かつ迅速に再構成が可能である。上記の方法には、標準的凍結乾燥技術より迅速で、しかもエネルギー効率が高いという利点もある。凍結乾燥ステップは、ワクチン生産において律速段階であることが多いため、好ましい方法の使用により、工場に追加投資することなく、ワクチン生産のレベルを高めることができる。また、好ましい泡乾燥方法に凍結ステップを導入すれば、バッチ再現性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
詳細な説明
本発明の免疫原組成物
本発明は、IPVと安定剤を含む、乾燥固体または高粘稠性液体の形態で製剤化された免疫原組成物であって、再構成後にIPVの抗原性および/または免疫原性を保持する、上記免疫原組成物を含む。IPVの乾燥固体または高粘稠性液体の製剤は、好ましくは再構成および接種後に、ポリオウイルスに対する免疫応答、好ましくは、防御免疫応答を生じさせることができる。
【0015】
IPVは、不活性化ポリオウイルス(好ましくはワクチン分野で標準的であるように1、2および3型を含むが、最も好ましくはソークポリオワクチンである)として定義される。IPVのワクチン用量は、20〜80、好ましくは40または80 D-抗原単位の1型(Mahoney)、4〜16、好ましくは8または16 D-抗原単位の2型(MEF-1)、ならびに20〜64、好ましくは32または64 D-抗原単位の3型(Saukett)を含む。
【0016】
本発明の方法で乾燥する場合、好ましくは、ポリオウイルス1、2および3型のうちの1つ、2つ、もしくは3つ全部の抗原性を保持し;さらに好ましくは、1型;2型;3型;1型と2型;1型と3型;2型と3型;もしくは1型、2型および3型の抗原性を、乾燥工程に供しなかった対照サンプルの抗原性の少なくとも40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%もしくは98%のレベルで保持する。これは、水溶液での乾燥固体または高粘稠性液体の再構成後、いずれかの適当な方法(ポリオウイルス1型、2型および/または3型に対するポリクローナルおよび/またはモノクローナル抗体を用いるELISAなど)により測定することができる。
【0017】
本発明の方法により乾燥する場合、好ましくは、ポリオウイルス1、2および3型のうちの1つ、2つ、もしくは3つ全部の免疫原性を保持し;さらに好ましくは、1型;2型;3型;1型と2型;1型と3型;2型と3型;もしくは1型、2型および3型の免疫原性を、乾燥工程に供しなかった対照サンプルの抗原性の少なくとも40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%もしくは98%のレベルで保持する。これは、水溶液での乾燥固体または高粘稠性液体の再構成後、いずれかの適当な方法により測定することができる。好ましい方法では、乾燥製剤を水溶液中で再構成し、動物、好ましくはラットに接種する。適当な時間の経過後、被接種動物から抗血清を採取し、セロコンバージョンを試験する。非乾燥の対照サンプルと比較して、少なくとも0.4、0.5、0.6、0.7、0.8もしくは0.9の相対効力が達成されるのが好ましい。
【0018】
乾燥固体組成物は、凍結乾燥、昇華、蒸発もしくは脱水の方法により、残留溶剤が15%、12%、10%、7%、5%、4%、好ましくは3%、2%もしくは最も好ましくは1%以下となるように、溶剤を除去した製剤である。「乾燥固体」という用語は、固体の外観をしたガラス、ゴムもしくは結晶質固体を含む。前述した方法のいずれかを用いることにより、このような乾燥固体を製造することができる。溶剤は、昇華、沸騰もしくは蒸発、好ましくは蒸発により除去する。
【0019】
高粘稠性液体は、溶剤の含有率が15%、12%、10%、好ましくは、8%、5%、4%、3%、2%もしくは1%以下の物質として定義する。高粘稠性液体は、活性薬剤を、4℃で少なくとも3、6、9、12もしくは24ヶ月間安定した状態で保存するのに十分に低い溶剤含有率を有し、活性薬剤はこの期間にわたってその抗原性および/または免疫原性の少なくとも40%、50%、60%、好ましくは70%、80%、90%、95%を保持することができる。高粘稠性液体は、泡形成に関与する泡沫の形成に暴露されていない。好ましくは、高粘稠性液体は、ガラス以外の固体の外観をしており、数日、好ましくは数週間、さらに好ましくは数ヶ月の間非常にゆっくりと流動することができる。
【0020】
本発明の免疫原性組成物は、IPVと安定剤、ならびに好ましくは細菌性多糖を含む、乾燥固体または高粘稠性液体の形態で製剤化する。安定剤は、以下に記載する組成物のいずれかである。細菌性多糖は、任意の細菌、好ましくは、髄膜炎菌、ヘモフィルスインフルエンザb型、肺炎連鎖球菌、A群連鎖球菌、B群連鎖球菌、黄色ブドウ球菌もしくは表皮ブドウ球菌のうち1種以上に由来する莢膜多糖を含む。
【0021】
ヘモフィルスインフルエンザb型のPRP莢膜多糖が乾燥固体または高粘稠性液体の形態で存在するのが好ましい。別の好ましい実施形態では、免疫原組成物は、髄膜炎菌の血清群A、C、W-135およびYのうち1種以上に由来する莢膜多糖(髄膜炎菌多糖)の乾燥固体または高粘稠性液体の製剤を含む。別の好ましい実施形態は、肺炎連鎖球菌に由来する莢膜多糖の乾燥固体または高粘稠性液体の製剤を含む。肺炎球菌莢膜多糖抗原は、血清型1、2、3、4、5、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19A、19F、20、22F、23Fおよび33F(最も好ましくは、血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19Fおよび23F)から選択するのが好ましい。別の好ましい実施形態は、黄色ブドウ球菌の5型、8型、もしくは336型莢膜多糖を含む。別の好ましい実施形態は、表皮ブドウ球菌のI型、II型もしくはIII型莢膜多糖を含む。別の好ましい実施形態は、B群連鎖球菌のIa型、Ic型、II型もしくはIII型莢膜多糖を含む。別の好ましい実施形態は、A群連鎖球菌の莢膜多糖を含むが、好ましくは、さらに少なくとも1種のMタンパク質、さらに好ましくは多種のMタンパク質を含む。
【0022】
本発明の一実施形態では、細菌性多糖は、全長のもので、精製された天然多糖である。本発明の別の実施形態では、多糖のサイズは、多糖のサイズを小さくして取扱い性を高めるために、2〜20反復単位(times)、好ましくは2〜5反復単位、5〜10反復単位、10〜15反復単位もしくは15〜20反復単位とする。好ましい実施形態では、オリゴ糖を用いる。オリゴ糖は、典型的に2〜20反復単位を含む。
【0023】
本発明は、乾燥固体または高粘稠性液体の形態をした、1種以上の細菌性多糖とIPVを含む免疫原組成物を包含する。IPVは、1種以上のHib(ヘモフィルスインフルエンザb型)PRP多糖および/または髄膜炎菌A、C、Wおよび/またはY多糖および/または肺炎球菌多糖と組み合わせるのが好ましい。最も好ましくは、上記活性薬剤は以下のものを含む:IPVとHib;IPVとMenC;IPVとHibとMenC;IPVとMenAおよびC;IPVとHibとMenAおよびC;IPVとHibとMenA、CおよびY;もしくはIPVとHibとMenCおよびY。
【0024】
上に挙げた活性薬剤は、以下に記載するように1種以上の肺炎球菌莢膜多糖も含んでよい。
【0025】
多糖を用いる前記組成物では、オリゴ糖を使用してもよい(前述した通り)。
【0026】
これらの組成物にアジュバントを添加してもよい(以下に記載する通り)が、これらは、アジュバントを含有しない、もしくはこれらはアルミニウム塩を含まないのが好ましい。
【0027】
好ましくは、多糖またはオリゴ糖を、Tヘルパーエピトープを含むペプチドまたは担体タンパク質にコンジュゲートする(以下に記載する通り)。
【0028】
本発明の免疫原組成物に存在する莢膜多糖は、破傷風トキソイド、破傷風トキソイド断片C、ジフテリアトキソイド、CRM197、ニューモリシン、プロテインD(米国特許第6342224号)などの担体タンパク質とコンジュゲートしていない、もしくはコンジュゲートしている。破傷風毒素、ジフテリア毒素およびニューモリシンは、遺伝子突然変異および/または好ましくは化学的処理、のいずれかにより無毒化する。本発明の好ましい実施形態は、破傷風トキソイドとコンジュゲートしたHibを有する。
【0029】
本発明の免疫原組成物に1種以上のコンジュゲートした多糖が存在する場合には、これらの多糖は、同じ担体タンパク質または別の担体タンパク質とコンジュゲートさせる。本発明の好ましい実施形態は、担体タンパク質とコンジュゲートした髄膜炎菌多糖を含む。コンジュゲートしたHibおよび髄膜炎菌多糖が存在する場合には、これらは、同じ担体タンパク質または別の担体タンパク質とコンジュゲートさせる。
【0030】
多糖コンジュゲートはどんな周知の結合方法でも調製することができる。好ましい結合方法では、多糖はチオエーテル結合を介して結合させる。このコンジュゲーション方法は、1-シアノ-4-ジメチルアミノピリジニウムテトラフルオロボレート(CDAP)で多糖を活性化することにより、シアン酸エステルを形成することに基づく。したがって、活性化した多糖は、直接もしくはスペーサー基を介して、担体タンパク質上のアミノ基に結合することができる。好ましくは、異種結合化学(チオエーテル結合の形成を含む)を用いて、シアン酸エステルをヘキサンジアミンと結合させ、アミノ誘導体化多糖を担体タンパク質とコンジュゲートさせる。このようなコンジュゲートは、PCT公開出願WO93/15760 Uniformed Services Universityに記載されている。
【0031】
前記のコンジュゲートは、米国特許第4365170号(Jennings)および米国特許第4673574号(Anderson)に記載されるような直接的な還元的アミノ化方法により調製することもできる。これ以外の方法が、欧州特許第0-161-188号、欧州特許第208375号および欧州特許第0-477508号に記載されている。
【0032】
さらに別の方法は、カルボジイミド縮合による、アジピン酸ヒドラジド(ADH)で誘導体化した臭化シアン活性化多糖とタンパク質担体の結合を含む(Chu Cら、Infect. Immunity, 1983 245 256)。
【0033】
本発明の免疫原組成物の一部として組み込まれる多糖は、アジュバント、好ましくはアルミニウム塩(リン酸アルミニウムまたは水酸化アルミニウム)、最も好ましくはリン酸アルミニウムに吸着させても、させなくてもよい。
【0034】
本発明の免疫原組成物は、乾燥工程中の損傷を防止するのに役立つ安定剤を含む。本発明の方法を用いて、乾燥固体、泡沫ガラスもしくは高粘稠性液体組成物の形態のいずれかにかかわらず、以下に記載する安定剤(ガラス形成ポリオールを含む)のどれでも免疫原組成物に組み込むことができる。好ましい安定剤としては、スクロース、ソルビトール、ラクトースおよびトレハロースが挙げられる。
【0035】
本発明の方法により乾燥させる好ましい組合せは、乾燥成分を再構成するのに用いられる乾燥した製剤または液体製剤である組合せワクチンにおいて他の抗原と組み合わせることができる。
【0036】
その他の成分
これ以外にも、IPVと安定剤を含む本発明の乾燥固体または高粘稠性液体製剤は、別のワクチン成分と製剤化することができる。好ましいワクチンは、IPVと細菌性多糖の乾燥固体または高粘稠性液体製剤であって、別のワクチン成分を含む液体製剤と混合することができる上記製剤を含む。液体成分で固体成分を再構成した後、完全ワクチンを注射により投与する。
【0037】
別の成分として髄膜炎菌、肺炎連鎖球菌、A群連鎖球菌、B群連鎖球菌、黄色ブドウ球菌もしくは表皮ブドウ球菌のうち1種以上に由来する莢膜多糖が挙げられる。好ましい実施形態では、免疫原組成物は、髄膜炎菌の血清群A、C、W-135およびYの1種以上に由来する莢膜多糖を含む。別の好ましい実施形態は、肺炎連鎖球菌に由来する莢膜多糖を含む。肺炎連鎖球菌莢膜多糖抗原は、血清型1、2、3、4、5、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19A、19F、20、22F、23Fおよび33F(最も好ましくは、血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19Fおよび23F)から選択するのが好ましい。別の好ましい実施形態は、黄色ブドウ球菌の5型、8型もしくは336型莢膜多糖を含む。さらに別の好ましい実施形態は、表皮ブドウ球菌のI型、II型もしくはIII型莢膜多糖を含む。さらに別の好ましい実施形態は、B群ブドウ球菌のIa型、Ic型、II型もしくはIII型莢膜多糖を含む。さらに別の好ましい実施形態は、A群ブドウ球菌の莢膜多糖を含み、好ましくは少なくとも1種のMタンパク質、さらに好ましくは多種のMタンパク質を含む。
【0038】
本発明の免疫原組成物は、タンパク質抗原と一緒に製剤化することができる。好ましい肺炎球菌タンパク質抗原は、肺炎球菌(肺炎球菌の生活環の少なくとも一部の間に宿主の免疫系により認識される)の外側表面に露出させた肺炎球菌タンパク質、もしくは肺炎球菌により分泌または放出されるタンパク質である。最も好ましくは、上記タンパク質は、肺炎連鎖球菌の毒素、付着因子、2成分シグナルトランデューサー、もしくはリポタンパク質、あるいはそれらの断片である。特に好ましいタンパク質として、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:ニューモリシン(好ましくは、化学的処理または突然変異により無毒化されたもの)[[Mitchellら、Nucleic Acids Res. 1990 Jul 11; 18(13): 4010 "Comparison of pneumolysin genes and proteins from Streptococcus pneumoniae types 1 and 2."、Mitchellら、Biochim Biophys Acta 1989 Jan 23; 1007(1): 67-72 "Expression of the pneumolysin gene in Escherichia coli: rapid purification and biological properties."、WO 96/05859 (A. Cyanamid), WO 90/06951 (Patonら), WO 99/03884 (NAVA)];PspAおよびそれらの膜貫通領域欠失変異体(米国特許第5804193号、Brilesら);PspCおよびそれらの膜貫通領域欠失変異体(WO97/09994、Brilesら);PsaAおよびそれらの膜貫通領域欠失変異体(Berry & Paton, Infect Immun 1996 Dec;64(12):5255-62 "Sequence heterogeneity of PsaA, a 37-kilodalton putative adhesin essential for virulence of Streptococcus pneumoniae");肺炎球菌コリン結合タンパク質およびその膜貫通領域欠失変異体;CbpAおよびその膜貫通領域欠失変異体(WO 97/41151、WO 99/51266);グリセラルデヒド-3-リン酸-デヒドロゲナーゼ(Infect. Immun. 1996 64:3544);HSP70(WO 96/40928);PcpA(Sanchez-Beatoら、FEMS Microbiol Lett 1998, 164:207-14);M様タンパク質(欧州特許第0837130号)および付着因子18627(欧州特許第0834568号)。上記以外の好ましい肺炎球菌タンパク質抗原は、WO 98/18931に開示されたもの、特に、WO 98/18930およびPCT/US99/30390で選択されているものである。
【0039】
本発明の免疫原組成物と一緒に製剤化するための好ましいナイセリア属タンパク質を以下に挙げる:TbpA(WO93/06861;欧州特許第586266号;WO92/03467;米国特許第5912336号)、TbpB(WO93/06861;欧州特許第586266号), Hsf(WO99/31132)、NspA(WO96/29412)、Hap(PCT/欧州特許第99/02766号)、PorA、PorB、OMP85(また、D15としても知られる)(WO00/23595)、PilQ(PCT/欧州特許第99/03603号)、PldA(PCT/欧州特許第99/06718号)、FrpB(WO96/31618、配列番号38を参照)、FrpAまたはFrpC、もしくは少なくとも30、50、100、500、750アミノ酸からなる、両者に共通の保存部分(WO92/01460)、LbpAおよび/またはLbpB(PCT/欧州特許第98/05117号; Schryversら、Med. Microbiol. 1999 32: 1117)、FhaB (WO98/02547)、HasR(PCT/欧州特許第99/05989号)、lipo02(PCT/欧州特許第99/08315号)、MltA(WO99/57280)ならびにctrA(PCT/欧州特許第00/00135号)。ナイセリア属のタンパク質は、精製されたタンパク質、または外膜小胞製剤の一部として添加することができる。
【0040】
免疫原組成物は、ジフテリア、破傷風および百日咳菌感染のうち1種以上に対する防御をもたらす抗原と一緒に製剤化するのが好ましい。百日咳菌成分は、死滅した全細胞百日咳菌(Pw)であるか、または好ましくはPT、FHAおよび69kDaペルタクチンからの少なくとも1種(好ましくは2種または3種すべて)の抗原を含む無細胞性百日咳菌(Pa)であり、その他の特定の無細胞性ワクチンは凝集原(例えば、Fim2およびFim3など)も含み、これらのワクチンも本発明での使用が考えられる。典型的には、ジフテリアおよび破傷風に対する防御をもたらす抗原は、ジフテリアトキソイドと破傷風トキソイドである。トキソイドは、例えば、ホルムアルデヒドでの処理後、化学的に不活性化した毒素であるか、あるいは、1以上の点突然変異の導入により不活性化した毒素である。
【0041】
前記以外にも、本発明の免疫原組成物は、1個の容器に乾燥固体、泡沫ガラス、もしくは高粘稠性液体を、また別の容器に液体DTPaまたはDTPwを含むキットとして提供することもできる。このようなキットは、例えば、同じ注射器ではあるが、別々の室に収容される乾燥および液体成分を含む二室注射器を含む。次に、乾燥成分を単一ワクチンとして注射する直前に液体ワクチンで再構成する。従って、例えば、本発明の乾燥固体、泡沫ガラス、もしくは高粘稠性液体を液体DTPaまたはDTPwワクチン(好ましくは、その場で)で再形成し、単一ワクチンとして投与する。DTPaまたはDTPwワクチンは、典型的に、リン酸アルミニウムおよび/または水酸化アルミニウムなどのアルミニウム塩を用いて、少なくとも部分的に増強する(例えば、GlaxoSmithKline Biologicals s.a.のInfanrix(登録商標)およびTritanrix(登録商標)ワクチン)。
【0042】
免疫原組成物は、随意に、型分類不能のヘモフィルスインフルエンザ、RSVに対して宿主を防御することができる1種以上の抗原、および/またはインフルエンザウイルスに対して宿主を防御することができる1種以上の抗原と一緒に製剤化する。好ましい型別不能のヘモフィルスインフルエンザタンパク質抗原としては、フィンブリンタンパク質(米国特許第5766608号)、それに由来するペプチドを含む融合物(例:LB1融合物)(米国特許第5843464号−Ohio State Research Foundation)、OMP26、P6、プロテインD、TbpA、TbpB、Hia、Hmw1、Hmw2、Hap、ならびにD15が挙げられる。
【0043】
好ましいインフルエンザウイルス抗原としては全ウイルス、生きたまたは不活性化したウイルス、卵またはMDCK細胞において増殖させた分断インフルエンザウイルス、もしくはベロ細胞または全インフルエンザウィーロソーム(R. Gluck, Vaccine, 1992, 10, 915-920に記載されている)、あるいはそれらの精製または組換えタンパク質(例えば、HA、NP、NA、またはMタンパク質あるいはこれらの組合せ)が挙げられる。
【0044】
好ましいRSV(呼吸器合胞体ウイルス)抗原としては、F糖タンパク質、G糖タンパク質、HNタンパク質、Mタンパク質もしくはこれらの誘導体が含まれる。
【0045】
DTP-Hibを含む組合せワクチンは当分野では知られている。しかし、Hibを他の抗原と単純に混合するいくつかの製剤に付随する問題がある。注意深く製剤化しないと、ワクチンの他の成分による干渉のために、Hib成分に対して生じる抗体力価は、別々に接種した同用量のHibにより誘発されるものより低くなる恐れがある。この問題は、当分野ではよく知られ、様々な方法で取り組まれているが、HibとIPVを一緒に、乾燥固体または高粘稠性液体の形態で製剤化する本発明の免疫原組成物は、この問題に対する別の解決法を提供する。
【0046】
本発明の免疫原組成物は、IPVとHibがキットの一構成要素に存在し、前記のようなそれ以外の成分が、第2構成要素、例えば、本明細書に記載する二室注射器に存在するというワクチンキットの一部をなすものでもよい。上記2つの成分は、ワクチン投与の直前に混合する。このような製剤では、IPVとHibを含む成分は、乾燥固体、泡沫ガラスもしくは高粘稠性液体であるのが好ましいが、随意に液体として製剤化してもよい。この製剤によって、Hib成分に対する抗体力価が生じるが、これは、ヘモフィルスインフルエンザb型病原体に対する防御をもたらすのに臨床上許容されるものである。典型的には、組合せワクチンにおける抗体力価は、1価のHibワクチンにおける同用量のHibにより誘発される力価の少なくとも85%、90%、好ましくは約100%以上である。
【0047】
本発明のワクチン
以上説明した本発明の免疫原組成物は、ワクチンとして製剤化するのが好ましい。好ましくは、ワクチンは、免疫原に対する免疫応答を増強するのに十分な量のアジュバントを含む。適当なアジュバントとして、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウムのようなアルミニウム塩、スクアレン混合物(SAF-1)、ムラミルペプチド、サポニン誘導体、マイコバクテリウム細胞壁製剤、モノホスホリルリピドA、ミコール酸誘導体、非イオン性ブロック共重合体界面活性剤、クイル(Quil)A、コレラ毒素Bサブユニット、ポルホルファゼンおよび誘導体、ならびに免疫刺激複合体(ISOCOM)、例えば、Takahashiらにより(1990)Nature 344:873-875に記載されているものなど。獣医学での使用や、動物における抗体の産生のためには、フロイントアジュバントのマイトジェン成分を用いることができる。
【0048】
本発明のワクチン製剤は、使用前に再構成するのが好ましい。再構成は、ワクチンの液体成分と、本発明の乾燥固体、泡沫ガラスもしくは高粘稠性液体を混合することを含む。本発明はまた、本発明の免疫原組成物またはワクチンを含む、撥水性の内部表面を有する容器も包含する。このような容器の使用は、管の底部に残った乾燥組成物を、より再構成しやすい形態にするため、有利である。
【0049】
保存サンプルに着色染料を含有させることにより、本発明の乾燥組成物の視覚化を容易にするのが有利である。これは、特に、使用前に再構成する際、乾燥固体または高粘稠性液体が完全に再構成されたことを確認するために重要である。この着色染料は、中性pHでその色を維持し、患者への注射に適合するものが好ましい。最も好ましくは、着色染料はフェノールレッドである。
【0050】
すべての免疫原組成物またはワクチンに関して、免疫原の免疫学的に有効な量は、経験に基づいて決定しなければならない。考慮すべき因子として、免疫原性、免疫原がアジュバントまたは担体タンパク質もしくはその他の担体と複合体化する、あるいは、共有結合するか否か、投与経路、ならびに投与しようとする免疫用量の回数が挙げられる。このような因子は、ワクチンの分野では知られており、十分免疫学者の技量の範囲内にあり、過度の実験をしなくても決定することができる。
【0051】
本発明の免疫原組成物には、様々な濃度で物質が存在しうる。典型的には、物質の最低濃度は、その意図する使用を達成するのに必要な量であるが、最高濃度は元の混合物内に溶解しているか、または均質に懸濁した状態で維持される最大量である。例えば、治療薬剤の最小量は、好ましくは、単一の治療に有効な用量を提供するものである。泡沫ガラスを結晶化の前に形成する場合には、超飽和溶液を用いることもできる。生物活性物質の場合には、最低濃度は、再構成時の生物活性に必要な量であり、最高濃度は、均質な懸濁液を維持できない濃度点である。単一用量単位の場合に、その量は、単一治療用途の量である。一般的に、各用量が1〜100μg、好ましくは5〜50μg、最も好ましくは5〜25μgのタンパク質抗原を含むことが望まれる。細菌性多糖の好ましい用量は、10〜20μg、10〜5μg、5〜2.5μgもしくは2.5〜1μgである。物質の好ましい量は、物質によって異なるが、当業者により容易に決定することができる。
【0052】
本発明の方法
本発明の方法は、IPVと安定剤を含む組成物を保存し、IPVの抗原性を保持する組成物を提供することを目的とする。好ましくは、乾燥しようとするサンプルに、細菌性多糖を組み込む。
【0053】
一実施形態では、本発明の方法は、以下のステップを含んでなる、IPVの乾燥を含む:
−安定剤の溶液中にIPVを懸濁または溶解させることにより保存サンプルを調製するが、その際、細菌性多糖および/またはガラス形成ポリオールが保存サンプル中に存在するのが好ましく;
−上記保存サンプルを、溶剤が該保存サンプルから消失するような温度および圧力条件に供し;
−上記保存サンプルが乾燥し、IPVの抗原性および/または免疫原性が保持される固体または高粘稠性液体を形成するまで溶剤を除去する。
【0054】
好ましい実施形態では、乾燥前に保存サンプルを撥水性の内部を有する容器に入れる。
【0055】
本発明の別の方法は、以下のステップを含んでなる泡乾燥を含む:
−安定剤の溶液中にIPVを懸濁または溶解させることにより保存サンプルを調製するが、その際、細菌多糖および/またはガラス形成ポリオールが保存サンプル中に存在するのが好ましく;
−上記保存サンプルを、保存サンプルが泡を形成するような温度および圧力条件に供し;
−上記泡が乾燥し、IPVの抗原性および/または免疫原性が保持される固体を形成するまで溶剤を除去する。
【0056】
本発明の好ましい泡乾燥方法は、撥水性の内部表面を有する容器を用い、以下のステップを含む:
−安定剤の溶液中にIPVと、好ましくは細菌性多糖を懸濁または溶解させることにより保存サンプルを調製し;
−上記保存サンプルを撥水性の内部表面を有する容器に入れ;
−上記保存サンプルの入った容器を、該保存サンプルが泡を形成するような温度および圧力条件に供し;
−上記泡が乾燥し、IPVの抗原性および/または免疫原性が保持される固体を形成するまで溶剤を除去する。
【0057】
前述した本発明の泡乾燥方法は、随意に凍結ステップを含む。保存サンプルは完全または部分的に凍結させることができる。従って、本発明のいくつかの方法は、以下のステップを含む:
−安定剤の溶液中にIPVと、好ましくは細菌性多糖を懸濁または溶解させ、この混合物を凍結させることにより、少なくとも部分的に凍結した保存サンプルを調製し;
−上記少なくとも部分的に凍結した保存サンプルを、該保存サンプルが泡を形成するような温度および圧力条件に供し;
−上記泡が乾燥し、IPVの抗原性および/または免疫原性が保持される固体を形成するまで溶剤を除去する。
【0058】
前記方法の凍結ステップは、減圧によって、蒸発による凍結を起こす、急速凍結法によるものが好ましい。これによって、抗原消失が少ないサンプルの急速凍結が起こる。従って、本発明の方法は、以下のステップを含む:
−安定剤の溶液中にIPVと、好ましくは細菌性多糖を懸濁または溶解させることにより保存サンプルを調製し;
−上記保存サンプルを、該保存サンプルが少なくとも部分的に凍結するような減圧に供し;
−上記少なくとも部分的に凍結した保存サンプルを、該保存サンプルが泡を形成するような温度および圧力条件に供し;
−上記泡が乾燥し、IPVの抗原性および/または免疫原性が保持される固体を形成するまで溶剤を除去する。
【0059】
本発明の別の好ましい方法は、IPVを保存するのに用いられ、以下のステップを含む:
−安定剤の溶液中にIPVを懸濁または溶解させることにより保存サンプルを調製し;
−上記保存サンプルが、泡立って泡を形成したり、また好ましくは凍結したりすることなく、蒸発により溶剤が消失するような温度および圧力条件に前記保存サンプルを供し;
−上記サンプルが乾燥し、IPVの抗原性および/または免疫原性が保持される高粘稠性液体を形成するまで溶剤を除去する。
【0060】
本発明の方法は、IPVの抗原性および/または免疫原性が維持される長期間の貯蔵に耐えることができるIPVの製剤を生産する。IPVは、4℃で少なくとも3、6、9、12、24ヶ月の貯蔵期間中、その本来の抗原性および/または免疫原性の少なくとも40%、50%、60%、70%、好ましくは、80%、90%、95%を保持するのが好ましい。抗原性および免疫原性は、適当な方法、例えば、前記の方法を用いて、適当な水性溶液でIPVを再構成後測定する。
【0061】
凍結または泡形成のない乾燥方法は、乾燥させようとする活性薬剤が、乾燥工程中、泡形成を伴う泡立ちまたは凍結を被るために、活性および/または抗原性を消失しやすい場合、特に使用に適している。また、ガラス形成ポリオールの濃度が低い方が有利である場合、および/または乾燥工程が短い方が好ましい場合の使用にも特に適している。
【0062】
安定剤
本発明の方法に用いようとする安定剤は、ガラス形成ポリオールを含むのが好ましい。適当な物質には、限定するものではないが、炭水化物および非炭水化物ポリオールなどのすべてのポリオールが含まれる。好ましくは、安定化ポリオールは、変性、凝集もしくはその他の手段による活性の実質的な低減なしに、活性薬剤を貯蔵することを可能にする。特に適切な物質として、糖、糖アルコール、および炭水化物誘導体が挙げられる。好ましくは、ガラス形成ポリオールは、炭水化物またはその誘導体であり、グルコース、マルツロース、イソ−マルツロース、ラクツロース、スクロース、マルトース、ラクトース、イソ−マルトース、マルチトール、ラクチトール、パラチニト、トレハロース、ラフィノース、スタキオース、メレチトースもしくはデキストラン、最も好ましくはトレハロース、スクロース、ソルビトール、ラフィノース、マニトール、ラクトース、ラクチトールもしくはパラチニトが挙げられる。
【0063】
細菌性多糖は、安定剤として作用し、本発明の好ましい実施形態は、安定剤の成分として細菌性多糖を含む。この実施形態において、細菌性多糖は、安定剤と免疫原の2つの役割を果たす。
【0064】
炭水化物としては、限定するものではないが、単糖、二糖、三糖、オリゴ糖およびそれらの対応する糖アルコール、ポリヒドロキシル化合物、例えば、炭水化物誘導体および化学的に改変した炭水化物、ヒドロキシエチルデンプンおよび糖共重合体が挙げられる。天然および合成炭水化物のいずれも使用に適している。合成炭水化物としては、限定するものではないが、チオールまたは炭素結合により置換されたグリコシド結合を有するものが挙げられる。炭水化物のDおよびL形態のいずれを用いてもよい。炭水化物は、還元または非還元のいずれでもよい。還元炭水化物を用いる場合には、メイラード反応の阻害剤を添加するのが好ましい。
【0065】
本発明における使用に適した還元炭水化物は、当分野では周知であり、限定するものではないが、グルコース、マルトース、ラクトース、フルコトース、ガラクトース、マンノース、マルツロースおよびラクツロースが挙げられる。非還元炭水化物としては、限定するものではないが、糖アルコールおよびその他の直鎖ポリアルコールから選択されるポリヒドロキシル化合物の非還元グリコシドが挙げられる。その他の有用な炭水化物として、ラフィノース、スタキオース、メレチトース、デキストラン、スクロース、セリビオース、マンノビオースおよび糖アルコールが挙げられる。糖アルコールグリコシドは、好ましくはモノグリコシドであり、特に、ラクトース、マルトース、ラクツロースおよびマルツロースのような二糖の還元により得られる化合物である。
【0066】
特に好ましい炭水化物は、トレハロース、スクロース、ソルビトール、マルチトール、ラクチトール、パラチニトおよびグルコピラノシル-1→6-マンニトールである。
【0067】
アミノ酸は、安定剤として作用し、単独でも、好ましくはポリオールと組み合わせて用いてもよい。好ましいアミノ酸として、グリシン、アラニン、アルギニン、リシンおよびグルタミンが挙げられるが、任意のアミノ酸、またはアミノ酸、ペプチド、加水分解したタンパク質もしくはタンパク質(例えば、血清アルブミン)の組合せも安定剤として作用しうる。
【0068】
好ましくは、保存サンプルは、本発明の乾燥固体または高粘稠性液体における、結晶形成を阻害することができる成分を含む。塩ならびにアミノ酸およびフェノールレッドを含むその他の分子は結晶形成を阻害する。
【0069】
本発明の方法に用いられる安定剤の濃度は、1%〜50%重量/容量、好ましくは1〜5%、5〜10%、5〜10%、15〜20%、20〜25%もしくは25〜50%、最も好ましくは25%(w/v)以下である。必要な安定剤の量は、存在する塩の量に比例する。従って、安定剤のレベルは3%〜10%が好ましいが、塩の含量が高いサンプルを乾燥するには、これより高い10%〜25%(w/v)の濃度を必要とする場合もある。
【0070】
容器
様々な混合物と多様な容器形状およびサイズを同時に処理することができる。理想的には、用いる容器サイズは、初期混合物を含み、形成されたその乾燥製剤の容量を収容するのに十分なものである。典型的には、これは、ガラス形成材料の質量、容器の表面積、泡が生じるか否かを決定する温度および圧力条件によって決定される。ガラス形成材料の質量は、粘稠なシロップをもたらし、随意に、泡形成するのに十分なものでなければならないが、これは、事実上容器表面の単位面積当たりの最小質量として解釈される。この比は、用いる混合物および容器によって変動するが、当業者であれば、本明細書に記載する手順に従い、経験に基づき容易に決定することができる。ホイートン(Wheaton)成形およびチューブカットバイアルを含む上記のような容器のいずれを用いてもよい。
【0071】
本発明の方法では、撥水性の内部表面を有する容器を用いるのが好ましい。これは、例えば、シリコーン処理により、内部表面を疎水性組成物でコーティングすることによって達成される。シリコーン処理は、当業者には周知の方法により達成される。一方法では、シリコーンのエマルションで容器の内部を満たした後、高温、典型的には、350℃のオーブンで処理することにより、容器をシリコーン処理する。あるいは、撥水性内部表面は、撥水性組成物から製造される容器によって達成する。
【0072】
容器の撥水性内部表面によって、泡形成が起こりやすくなり、かつ再現性も高くなる。これにより、保存サンプルに用いるポリオール濃度を低くすることができるため、サンプルを乾燥するのに必要な時間が短縮され、活性薬剤を損なうポリオールとのメイラード反応もしくはその他の相互作用の効果が低減する。保存サンプルがワクチンを含む場合には、こうして得られた泡沫ガラスは、存在するポリオールの量が低いため、迅速かつ容易に再構成され、得られるワクチン溶液の粘稠性が低いことから投与が容易になる。撥水性内部表面により、乾燥固体または高粘稠性液体の再構成が容易になる。というのは、これによって、サンプルが容器の底部にそのまま残りやすくなるため、効果的に再構成するのが容易になるからである。
【0073】
本発明では単一の形態を用いることも可能であるが、1種以上の安定剤、1種以上の添加剤、ならびに1種以上の物質が存在してもよい。これら成分の有効量は、当業者によって容易に決定される。
【0074】
溶剤
保存サンプルは、IPVと安定剤を水に溶解/懸濁させて、水溶液をつくることにより製造される。好ましくは、保存サンプル中に、5〜98容量%、さらに好ましくは80〜98容量%、最も好ましくは85〜98容量%で水が存在する。
【0075】
溶剤の量は、含有させようとする物質および安定剤、ならびに添加剤に応じて変動し、これらに左右される。必要な最小量は、各種成分を可溶化させるのに必要な量である。しかし、物質を均質に分散させた懸濁液を用いてもよい。特定の実施形態における成分の適切な量は、本明細書に記載する例を参照にして当業者により容易に決定することができる。
【0076】
各種の添加剤を保存サンプルに添加することができる。典型的には、添加剤は、泡形成および/または乾燥工程を向上させ、ならびに/あるいは物質の可溶化に寄与する。あるいは、添加剤は、固体に含有させた物質の安定性に寄与する。1種以上の添加剤が存在してもよい。
【0077】
一例として、揮発性/発泡性塩の添加により、初期容量を大きくし、その結果、泡沫ガラス内の表面積を増大させることができるため、優れた泡形成の実施と、さらに高速の乾燥が可能になる。本明細書で用いる揮発性塩とは、泡沫ガラスを製造するために用いる条件下で揮発する塩のことである。適当な揮発性塩の例として、限定するものではないが、酢酸アンモニウム、重炭酸アンモニウムおよび炭酸アンモニウムが挙げられる。また、分解して気体産物となる塩も、泡形成の向上と共に高速乾燥を実現する。このような塩の例として、重炭酸ナトリウムおよびメタ重亜硫酸ナトリウムがある。好ましくは、揮発性塩は、約0.01〜5Mの量で存在する。5M以下の濃度が本発明での使用に適している。こうして得られた泡沫ガラスは、均質な泡立体構造を有し、揮発性/発泡性塩を用いない泡沫ガラスと比較して有意に乾燥している。
【0078】
別の適当な添加剤は、泡安定剤であり、これは、揮発性または分解性塩のいずれかと組み合わせて用いることができる。これは、両親媒性分子(すなわち、リン脂質および界面活性剤など)のような界面活性成分、あるいは、グアーガムおよびその誘導体のような増粘剤など、発泡シロップの粘稠性を高める物質のいずれでもよい。
【0079】
別の添加剤は、メイラード反応阻害剤である。物質および/またはガラスマトリックス形成材料がカルボニルおよびアミノ、イミノまたはグアニジノ基を含む場合には、上記組成物はさらに、組成物中のアミノ基と反応性カルボニル基の縮合を実質的に阻止するのに有効な量の、少なくとも1種の生理学的に許容されるメイラード反応阻害剤を含む。メイラード反応阻害剤は、当分野で知られるいずれのものでもよい。この阻害剤は、アミノ基と反応性カルボニル基の縮合を阻止する、もしくは実質的に阻止するのに十分な量存在する。典型的には、アミノ基は上記物質上に存在し、カルボニル基がガラスマトリックス形成材料上に存在するか、またはその反対である。しかし、アミノ酸とカルボニル基は、上記物質または炭水化物のいずれかの分子内に存在することもある。
【0080】
様々な種類の化合物が、メイラード反応への阻害作用を示すことが知られており、従って、本明細書に記載した組成物に使用できる。これらの化合物は、一般にメイラード反応の競合的または非競合的阻害剤である。競合的阻害剤としては、限定するものではないが、アミノ酸残基(DおよびLの両方)、アミノ酸残基とペプチドの組合せが挙げられる。特に好ましいものは、リシン、アルギニン、ヒスチジンおよびトリプトファンである。リシンとアルギニンは最も効果的である。多くの非競合的阻害剤が知られている。そのようなものとして、限定するものではないが、アミノグアニジンと誘導体、ならびにアンホテリシンBがある。公開された欧州特許出願第0 433 679号にも、適当なメイラード反応阻害剤(4-ヒドロキシ-5,8-ジオキソキノリン誘導体など)が記載されている。
【0081】
活性薬剤
本発明の方法は、不活性化ポリオウイルス(IPV:好ましくは、ワクチン分野で標準的であるように、1、2および3型を含み、最も好ましくはソークポリオワクチン)を保存するために用いられる。IPVは、20〜80、好ましくは40または8D-抗原単位の1型(Mahoney)、4〜20、好ましくは8または16 D-抗原単位の2型(MEF-1)および20〜64、好ましくは32または64 D-抗原単位の3型(Saukett)を含む。IPVワクチン製剤は、好ましくは別のワクチン成分を含む水溶液での再構成後に注射するのが適している。
【0082】
本発明の方法により組み込まれる細菌性多糖は、例えば、髄膜炎菌、ヘモフィルスインフルエンザb型、肺炎連鎖球菌、A群連鎖球菌、B群連鎖球菌、黄色ブドウ球菌もしくは表皮ブドウ球菌のうち1種以上に由来する莢膜多糖であり、好ましくは、ヘモフィルスインフルエンザのPRP莢膜多糖である。また、好ましい莢膜多糖には、髄膜炎菌の血清群A、C、W-135およびYのうちの1種以上に由来するものも含まれる。さらに好ましい莢膜多糖は、肺炎連鎖球菌に由来するものである。肺炎球菌莢膜多糖抗原は、血清型1、2、3、4、5、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19A、19F、20、22F、23Fおよび33F(最も好ましくは血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19Fおよび23F)から選択する。別の好ましい実施形態は、黄色ブドウ球菌の5型、8型または336型莢膜多糖を含む。別の好ましい多糖としては、表皮ブドウ球菌のI型、II型またはIII型莢膜多糖、B群連鎖球菌のIa型、Ic型、II型またはIII型莢膜多糖が挙げられる。別の好ましい多糖として、A群連鎖球菌の莢膜多糖、好ましくは少なくとも1種のMタンパク質、さらに好ましくは多種のMタンパク質をさらに含むものが挙げられる。
【0083】
本発明の方法を用いて保存しようとする活性薬剤の好ましい組合せは、IPVを含む。IPVは、Hib PRP多糖ならびに/あるいは髄膜炎菌A、C、Wおよび/またはY多糖ならびに/あるいは肺炎球菌多糖の1種以上を含む細菌性多糖と組み合わせるのが好ましい。好ましい組合せを以下に挙げる:IPVとHib;IPVとMenC;IPVとMenAおよびC;IPVとHibとMenCまたはIPV、Hib、MenAおよびC。各細菌性多糖は、1〜5μg、5〜10μg、10〜20μgもしくは20〜40μgの用量で存在する。
【0084】
細菌性多糖は、破傷風トキソイド、破傷風トキソイド断片C、ジフテリアトキソイド、CRM197、ニューモリシンまたはプロテインDのような担体タンパク質とコンジュゲートしているか、またはコンジュゲートしていない(米国特許第6342224号)。
【0085】
多糖コンジュゲートは、周知の結合方法のいずれかで調製する。好ましいコンジュゲーション方法は、1-シアノ-4-ジメチルアミノピリジウムテトラフルオロボレート(CDAP)を用いて多糖を活性化して、シアン酸エステルを形成することを利用する。活性化多糖は、直接、またはスペーサー基を介して担体タンパク質上のアミノ基に結合する。好ましくは、シアン酸エステルをヘキサンジアミンと結合し、アミノ−誘導体化多糖は、チオエーテル結合の形成を含む異種連結を用いて、担体タンパク質とコンジュゲートする。このようなコンジュゲートは、PCT公開出願WO93/15760 Uniformed Services Universityに記載されている。
【0086】
コンジュゲートは、随意に、米国特許第4365170号(Jennings)および米国特許第4673574号(Anderson)に記載されているような直接的な還元的アミノ化方法により調製される。その他の方法が欧州特許第0 161 188号、欧州特許第208375号および欧州特許第0 477508号に記載されている。
【0087】
別の方法は、カルボジイミド縮合による、アジピン酸ヒドラジド(ADH)で誘導体化した臭化シアン活性化多糖と、タンパク質担体の結合を含むものである(Chu C.ら、Infect. Immunity, 1983 245 256)。
【0088】
乾燥工程
一実施形態では、本発明の方法は、安定剤の存在下、好ましくは細菌性多糖の存在下でIPVを乾燥することを含む。この方法では、保存サンプルを低い温度および圧力条件に供する。温度は20℃または0℃以下、好ましくは−10℃または−20℃以下、さらに好ましくは−40℃または−60℃以下まで下げる。圧力は、1mバール以下、好ましくは、0.5、0.1mバール以下、さらに好ましくは0.05または0.01mバール以下まで下げる。低下させた温度および圧力条件を少なくとも10、12、16、20、好ましくは24、36、さらに好ましくは48または72時間維持する。保存サンプルが乾燥して固体を形成するまで溶剤を除去する。
【0089】
本発明全体を通じて、固体は、サンプルが乾燥するに従い形成されるガラス、ゴムおよび結晶を含む。このような固体は、10〜20%または5〜10%、好ましくは5〜6%、4〜5%、または3〜4%、または2〜3%、さらに好ましくは1〜2%または0〜1%(w/w)の含水率を保持する。
【0090】
泡乾燥
本発明の好ましい方法は、保存サンプルを上記のような圧力および温度条件に供することにより、サンプルが発泡を開始し、泡を形成するようにすることを含む。
【0091】
保存サンプル内部の温度は、蒸発過程の吸熱性のためにサンプル外部の温度とは異なってくる。温度に関する基準は、保存サンプル外部の条件、例えば、工業用の大型凍結乾燥機を用いる場合には、棚の温度に左右される。これは、通常、凍結乾燥機の温度設定に対応している。
【0092】
本発明の好ましい実施形態は、温度条件は維持しながら圧力を下げることにより達成する。温度を0℃以上、好ましくは10℃〜15℃;15℃〜20℃;20℃〜25℃;25℃〜30℃;あるいは、30℃〜37℃の温度設定を維持しながら、圧力は、8、7、6、好ましくは5、4、3、さらに好ましくは2、1.5、1、最も好ましくは0.8または0.5mバール以下に調節する。これらの条件を少なくとも1、2、3、4、5、8、10、12、16もしくは24時間維持する。
【0093】
本発明の別の実施形態は、低い圧力条件を維持しながら、温度を変化させることにより、泡形成を達成する。温度設定を20℃以上、好ましくは20℃〜30℃;30℃〜40℃;40℃〜50℃;もしくは50℃〜70℃まで上昇させる;あるいは、温度設定を10℃〜50℃、好ましくは20℃〜40℃、さらに好ましくは25℃〜35℃まで上昇させる。圧力条件は、8、7、6、好ましくは、5、4、3、さらに好ましくは、2、1.5、1、最も好ましくは0.8または0.5mバール以下の低いレベルに維持する。これらの条件を少なくとも1、2、3、4、5、8、10、12、16もしくは24時間維持する。
【0094】
溶剤を除去することにより、泡沫ガラスを形成する
本発明の泡乾燥方法の後続の段階は、泡が乾燥し、固体を形成するまで溶剤を除去することを含む。本発明の一実施形態では、これは、泡形成を達成するために用いられる圧力および温度条件を維持することにより達成される。例えば、温度設定を0℃以上、好ましくは2℃〜10℃、10℃〜20℃;20℃〜30℃;30℃〜35℃;35℃〜40℃、最も好ましくは5℃〜25℃の温度に維持しながら、圧力を8、7、6、好ましくは5、4、3、さらに好ましくは2、1.5、1、最も好ましくは0.8または0.5mバール以下に維持する。これらの温度および圧力条件を1、2、3、4、5、6、8、10、12、18時間以上維持することにより、溶剤の含有率が10、8、5、4、好ましくは3、2もしくは最も好ましくは1%(w/w)以下の固体を取得する。
【0095】
本発明の別の実施形態は、溶剤を除去する間の温度設定を工程の初期に維持していたものより高い温度設定に上昇させる。これは、サンプルから溶剤をより迅速に除くことを可能にする利点があるため、本発明の方法をさらに短い時間で完了することができる。例えば、圧力を8、7、6、好ましくは5、4、3、さらに好ましくは2、1.5、1、最も好ましくは0.8または0.5mバール以下に維持しながら、温度設定を0℃以上、好ましくは2℃〜10℃、10℃〜20℃;20℃〜30℃;30℃〜40℃;40℃〜50℃;50℃〜60℃まで上昇させる。これらの温度および圧力条件を1、2、3、4、5、6、8、10、12、18時間以上維持することにより、含水率が10、8、5、4、好ましくは3、2もしくは最も好ましくは1%(w/w)以下の固体を取得する。
【0096】
本発明の別の実施形態は、溶剤除去の間の圧力設定を、泡形成の間に使用した圧力設定より低くする。これは、サンプルから溶剤をより迅速に除くことを可能にする利点があるため、本発明の方法をさらに短い時間で完了することができる。例えば、温度を0℃以上、好ましくは10℃〜20℃;20℃〜30℃;30℃〜35℃もしくは40℃以上に維持しながら、圧力設定を5、4、3、好ましくは2、1、0.8、さらに好ましくは0.5、0.1、最も好ましくは0.05または0.01mバール以下まで下げる。これらの温度および圧力条件を1、2、3、4、5、6、8、10、12、18時間以上維持することにより、溶剤の含有率が5、4、好ましくは3または2、もしくはさらに好ましくは1%(w/w)以下の固体を取得する。
【0097】
凍結ステップを含む泡乾燥
本発明の方法は、随意に、サンプルを凍結することを含む。泡乾燥の前にサンプルを凍結することは、バッチ内のサンプル同士の再現性を高めるという利点がある。これは、すべてのサンプルが、凍結されるという同じ物理的条件から工程を開始するためである。保存サンプルは、完全または部分的に凍結させることができる。
【0098】
凍結は、随意に、サンプルを減圧に供する前に、サンプルを凍結させるのに適した時間、0℃以下の温度に保存サンプルを放置することにより実施する。好ましくは、用いる温度は、−10℃、−15℃、−20℃、−30℃、−40℃、−70℃もしくは−140℃以下である。サンプルを0℃以下の温度に1、2、3、4、5、6、8、16時間以上放置することにより、凍結を実施することができる。
【0099】
いくつかのサンプル、特に、細胞調製物またはその他の生物系など、溶剤の結晶形成により損傷を受けやすいサンプルの場合には、毎時0.1、0.5、1、2、3、4、5℃以下の速度でゆっくりとサンプルを凍結させるのが好ましい。それ以外の組成物は、例えば、液体窒素中での急速凍結により、即座に凍結することによってさらに効果的に保存される。この方法は、特にタンパク質またはウイルス粒子に有益である。また、蒸発による凍結でも、サンプルの急速凍結が起こる。
【0100】
あるいは、サンプルが完全または部分的に凍結するような減圧にサンプルを供することにより、保存サンプルを凍結する。このような急速凍結は、バルク凍結乾燥機において、0℃、10℃、15℃、20℃、30℃、37℃以上の棚温度で実施する。好ましくは、棚温度は、5〜35℃、さらに好ましくは10〜20℃、最も好ましくは15℃である。圧力は、随意に、初め200mバールまで5、10、20、30、60分以上減圧することにより、脱気を行なう。サンプルを凍結するためには、圧力を2、1、0.5、0.2、0.1mバール以下の圧力までさらに減圧する。この圧力は、サンプルが完全または部分的に凍結するまで、少なくとも5、10、20もしくは30分維持する。
【0101】
これに続く泡形成と、溶剤の除去による固体形成の各ステップは、前述した通りである。
【0102】
本発明の好ましい実施形態では、凍結乾燥機内でサンプルを凍結するステップおよび泡形成ステップは、一定の温度で、好ましくは圧力条件を変えながら、実施する。
【0103】
別の好ましい実施形態では、凍結乾燥機内でのサンプル凍結、泡形成、および溶剤の除去による固体形成の各ステップは、一定温度で、好ましくは圧力条件を変えながら実施する。
【0104】
本発明の別の実施形態では、サンプル凍結、泡形成、および溶剤の除去による固体形成の際の各ステップ中、圧力および温度条件の両方が異なる。
【0105】
本発明の方法では、撥水性の内部表面を有する容器を用いるのが好ましい。これは、例えば、シリコーン処理により、内部表面を疎水性組成物でコーティングすることによって達成される。シリコーン処理は、当業者には周知の方法により達成される。あるいは、撥水性内部表面は、撥水性組成物から製造される容器によって達成する。
【0106】
容器の撥水性内部表面によって、泡形成が起こりやすくなり、再現性も高くなる。これにより、保存サンプルに用いるポリオール濃度を低くすることができるため、サンプルを乾燥するのに必要な時間が短縮され、ポリオールと活性薬剤のメイラード反応もしくはその他の有害な相互作用の影響が低減する。保存サンプルがワクチンを含む場合には、こうして得られた固体は、存在するポリオールの量が低いため、迅速に再構成され、また、得られるワクチン溶液の粘稠性が低いことから投与が容易になる。
【0107】
凍結または泡形成のない乾燥
本発明の特に好ましい方法は、安定剤、好ましくは細菌性多糖の存在下で、IPVを凍結または泡形成にさらすことを避ける穏やかな方法を用いてIPVを乾燥することを含み、これにより乾燥工程の間にIPVが被るストレスを低減し、かつ高度の抗原性が保持される。
【0108】
この方法は、特に、ガラス形成ポリオールの濃度が低い場合における使用に適しており、例えば、10%(w/w)以下、さらに好ましくは5%(w/w)以下が有利で、乾燥時間が短い方が好ましい。
【0109】
蒸発による溶剤の消失(蒸発乾燥−ステップb)
凍結または泡形成のない乾燥の方法は、保存サンプルを凍結したり、泡形成のために泡立たせたりすることなく、該サンプルが蒸発により溶剤を消失するような圧力および温度条件に保存サンプルを供することを含む。
【0110】
保存サンプル内部の温度は、蒸発過程の吸熱性のためにサンプル外部の温度とは異なることもある。温度に関する基準は、保存サンプル外部の条件、例えば、工業用の大型凍結乾燥機を用いる場合には、棚の温度に左右される。これは、通常、凍結乾燥機の温度設定に対応している。
【0111】
随意に、本発明の方法には、保存サンプルを脱気させる先行ステップが存在する。圧力は200mバール以下、好ましくは200〜35mバールまで少なくとも5分減圧した後、さらに減圧する。
【0112】
本発明の好ましい実施形態は、温度条件を制御しながら減圧することにより蒸発乾燥を達成する。温度設定を0℃以上、好ましくは4℃〜37℃、4℃〜10℃、10℃〜15℃;15℃〜20℃;20℃〜25℃;25℃〜30℃;もしくは 30℃〜37℃;あるいは37℃〜45℃の温度に維持しながら、圧力を30、25、20、好ましくは、15、12、最も好ましくは10、8、7、6、5、4、3、2もしくは1mバール以下に調節する。これらの条件を少なくとも1、2、3、4、5、8、10、12、16もしくは24時間、好ましくは2〜4時間、4〜6時間、6〜8時間、8〜12時間もしくは12〜18時間維持する。特に好ましい実施形態では、圧力を2mバール以上に維持するが、その際、温度設定を15℃にすることにより、サンプルの凍結を防止する。好ましい実施形態では、温度を15℃に維持し、圧力を5〜10mバール、さらに好ましくは6〜9mバール、最も好ましくは約8mバールに設定する。これより高い温度設定を用いる場合には、サンプルを凍結させることなく、前記よりやや低い圧力が可能であり、低い温度設定を用いる場合には、圧力を前記より高いレベルに維持して凍結を防止しなければならない。好ましくは、蒸発速度が遅くなり、これによりサンプルの温度がサンプル外部とほぼ同じになるのに十分な時間、前記の条件を維持する。
【0113】
好ましくは、保存サンプルは、凍結したり、泡形成のために沸騰させたりせずに、溶剤を消失させて粘稠性液体または高粘稠性液体を形成すべきである。
【0114】
粘稠な液体を形成するための溶剤除去
続く本発明の方法の段階は、泡形成および好ましくは凍結することなく保存サンプルが乾燥して、粘稠な液体を形成するまで、溶剤を除去することを含む。
【0115】
本発明の一実施形態では、これは、圧力および温度条件を第1蒸発乾燥段階で使用したものに維持することにより達成される。例えば、温度設定を0℃以上、好ましくは5℃〜37℃、5℃〜10℃、10℃〜15℃;15℃〜20℃;20℃〜25℃;25℃〜30℃;もしくは 30℃〜37℃の温度に維持しながら、圧力を30、25、20、好ましくは15、12、最も好ましくは10、8、7、6、5、4、3、2もしくは1mバール以下に維持する。温度設定が15℃の場合には、5〜10mバール、好ましくは6〜9mバール、最も好ましくは約8mバールの圧力を4〜24時間、好ましくは1〜4時間、4〜8時間、8〜12時間もしくは12〜16時間維持する。これらの温度および圧力条件を少なくとも1、2、3、4、5、6、8、10、12、18時間以上維持することにより、溶剤の含有率が15、12、好ましくは10、8、5、4、3、2もしくは1%(w/w)以下の高粘稠性液体を取得する。
【0116】
本発明の別の実施形態は、溶剤を除去する際の温度設定を工程の初期に維持したものより高い温度設定に上昇させる。これにより、サンプルから溶剤がより迅速に除去されるため、本発明の方法をさらに短い時間で完了することができる。例えば、圧力を30、25、20、好ましくは15、12、最も好ましくは10、8、7、6、5、4、3、2もしくは1mバール以下に維持しながら、温度設定を0℃以上、さらに好ましくは20℃以上、好ましくは5℃〜37℃、5℃〜10℃、10℃〜20℃;20℃〜30℃;さらに好ましくは30℃〜40℃;さらに好ましくは40℃〜50℃;最も好ましくは50℃〜60℃まで上昇させる。これらの温度および圧力条件を1、2、3、4、5、6、8、10、12、18時間以上維持することにより、(溶剤の含有率が)15、12、好ましくは10、8、5、4、3、2もしくは1%以下の固体を取得する。この実施形態の場合、上記の方法をうまく実施するためには、活性薬剤が、この方法に用いる温度で熱安定性でなければならない。
【0117】
本発明の好ましい実施形態は、溶剤を除去する際(ステップc)の圧力設定を工程の初期(ステップb)に使用したものより低い圧力設定に下げる。これにより、サンプルから溶剤がより迅速に除去されるため、本発明の方法をさらに短い時間で完了することができる。これはまた、高率の溶剤の除去を可能にする。例えば、温度を0℃以上、好ましくは10℃〜20℃;20℃〜30℃;30℃〜35℃もしくは40℃以上に維持しながら、圧力設定を7、6、好ましくは5、4、3、さらに好ましくは2、1.5、1、最も好ましくは0.8、0.5、0.2、0.1、0.05、0.02、0.01、もしくは0.005mバール以下に設定する。これらの温度および圧力条件を1、2、3、4、5、6、8、10、12もしくは18時間以上維持することにより、溶剤の含有率が15、12、好ましくは10、8、5、4、3、2もしくは1%(w/w)以下の固体を取得する。尚、溶剤の含有率は、Karl Fischer電量計湿度分析装置(Eur. J. Pharm. Biopharm.(2000)50;277-284)により測定するのが好ましい。
【0118】
好ましくは、ステップb)およびc)は、18時間、さらに好ましくは16、14、12、最も好ましくは10、8、6もしくは4時間以内に完了すべきである。
【0119】
乾燥組成物は、蒸発、沸騰、もしくは昇華により溶剤を除去した組成物であり、残った溶剤の含有率は、15、12、10、さらに好ましくは8、5、4、3、2もしくは1%(w/w)以下(Karl Fischer法により測定するのが好ましい)である。好ましい溶剤含有率の範囲は、1〜3%、3〜5%、5〜10%もしくは10〜15%(w/w)である。この用語には、高粘稠性液体、ならびに乾燥泡沫ガラスおよび凍結乾燥固体も含まれる。
【0120】
高粘稠性液体は、沸騰させない蒸発により溶剤を除去した物質であって、残った溶剤の含有率が、15、12、10、好ましくは8、5、4、3、2もしくは1%(w/w)以下(Karl Fischer法により測定するのが好ましい)の物質として定義される。好ましい溶剤含有率の範囲は、1〜3%、3〜5%、5〜10%もしくは10〜15%(w/w)である。高粘稠性液体は、活性薬剤が4℃で少なくとも3、6、9、12もしくは24ヶ月間安定状態で保存され、この期間を通じて活性薬剤がその活性および/または抗原性の少なくとも40、50、60、好ましくは70、80、90もしくは95%を保持するように十分に低い溶剤含有率を有する。好ましくは、高粘稠性液体は、ガラス以外の固体の外観を有し、2、4もしくは6日、さらに好ましくは1、2、3、4、6、7、10もしくは12ヶ月にわたって非常に低速で流動することができる。極めて低速の流動は、高粘稠性液体を入れた容器を逆さにして、この液体が流動するのが観察されるまで室温で放置することにより測定することができる。好ましい実施形態では、高粘稠性液体は、逆さにした位置で2、4もしくは6日、好ましくは2、3もしくは4週間、さらに好ましくは2、4、6、8、10もしくは12ヶ月たっても流動しないように見えるであろう。
【0121】
粘稠液体は、溶剤除去の第1段階(その終了時に、大部分の溶剤がサンプルから消失している)を経た生成物として定義される。この時点は、蒸発の速度が低下し、大量蒸発の吸熱効果が失われるに従い、サンプルの温度が周囲温度に戻ることから認識することができる。
【0122】
泡沫ガラスは、ガラス形成ポリオールを含む乾燥組成物であり、これは、保存サンプルが激しく泡立つまたは沸騰することにより、サンプルが乾燥するにつれ泡が形成されるような温度および圧力条件に上記保存サンプルを供する方法によって形成される。
【0123】
本明細書に引用する参照文献または特許出願はすべて、参照として本明細書に組み込むものとする。
【実施例】
【0124】
以下の実施例は、特に詳細な記載のない限り、当業者にはよく知られ、常用される標準的方法を用いて実施する。これらの実施例は例示的であり、本発明を制限するものではない。
【0125】
実施例1.蒸発凍結方法
この方法は、棚温度を1℃以内に調節することができるHeto Drywinner 8-85凍結乾燥機を用いて実施したが、その際、冷却器の最終温度は−85℃であり、圧力を放出弁で調節し、生成物の温度を測定するのに6つの熱電対が利用可能である。
【0126】
保存サンプルは、安定剤(10%テレハロースまたは3.5%スクロースのいずれか)と活性薬剤を水溶液に添加することにより調製した。全工程中棚温度を15℃の定温度設定に維持した凍結乾燥機にサンプルを入れた。圧力を初め200mバールまで下げ、このレベルに10分維持した後、さらに減圧した。1.5mバールで、溶液は、図1に示すように、蒸発冷却のために凍結し始めた。圧力をさらに0.1mバールまで下げることにより、サンプルを完全に凍結させた。次に、圧力を0.8mバール〜3.5mバールまで上昇させたが、この時点から、サンプルから水が消失するにつれ泡が形成された。この実験条件下で、水しか含まない対照サンプルでは沸騰が認められなかった。サンプルは、沸騰ではなく、蒸発によって水を放出していると考えられる。上記条件下で18時間後、サンプルを乾燥させると、泡を形成した溶液は泡沫ガラスになった。
【0127】
37℃までの別の温度設定に棚温度を維持しながら、前記と同様の方法を首尾よく実施した。
【0128】
実施例2.凍結条件の確立
水にスクロースを溶解させて1%、5%、10%および20%溶液を得ることにより、サンプルを調製した。全工程中棚温度を15℃に維持した凍結乾燥機にサンプルを入れた。圧力を初め200mバールまで下げ、このレベルに10分維持した後、さらに50mバール、5mバール、2.5mバール、0.75mバール、0.4mバールおよび0.2mバールまで減圧した。各圧力レベルを20分維持することにより温度を均衡させてから、熱電対を用いてサンプルの温度を読み取った。様々なスクロース濃度のサンプルに熱電対を装着した。表1に記録した温度は、温度の平均値である。
【0129】
結果
存在するスクロースの濃度とは無関係に、サンプルはすべて1.66〜1.11mバールで凍結した。様々な圧力で測定した温度は、三重点曲線から推定されるものに非常に近かった。従って、スクロースの存在は、様々な圧力でのサンプルの温度に大きな影響を与えるものではないようだ。
【0130】
本発明の好ましい方法では、サンプルを凍結させないようにする必要がある。これは、15℃の棚温度を用いて、圧力を2mバール以上に維持することにより達成することができる。これより低い温度の場合、圧力を上記より高いレベルに維持しなければならいのに対し、より高い温度を用いる場合には、サンプルを凍結させることなく、圧力をさらに下げることができる。
【表1】

【0131】
実施例3.様々な糖濃度のサンプルについての泡形成条件
0%、5%、10%、15%、20%、25%および50%スクロースを含む保存サンプルを調製した。全工程中棚温度を15℃に維持した凍結乾燥機にサンプルを入れた。圧力を初め200mバールまで下げ、このレベルに10分維持した後、さらに減圧した。さらに0.1mバールまで減圧することにより、サンプルを完全に凍結させた。続いて、次の実験では、圧力を0.788mバール、0.812mバールもしくは3.5mバールまで上昇させた。これらの条件を3.5mバールおよび0.812mバール実験では3時間、0.788mバール実験では6時間維持した。各サンプルの物理的特徴を評価した。
【0132】
結果
表2からわかるように、3.5mバールの圧力では、確実な泡の形成には50%という高いスクロース濃度が必要であった。対照的に、0.8mバールの低圧では、10〜25%の低いスクロース濃度で、確実な泡形成が可能であった。低いスクロース濃度の使用は、例えば、ワクチンに用いようとする保存サンプルに有利であると考えられる。従って、0.8mバールと10〜25%のスクロース含有率を用いる方法が好ましい。
【表2】

【0133】
実施例4.シリコーン処理した容器を用いる効果
5%、10%、15%および25%スクロースを含む保存サンプルを調製し、バイアルに添加した。これらバイアルのうちいくつかはシリコーン処理済である。一実験では、全工程中棚温度を15℃に維持した凍結乾燥機にサンプルを入れた。圧力を初め200mバールまで下げ、このレベルに10分維持した後、さらに減圧した。さらに2.8mバールまで3時間減圧した。この間、圧力は、水蒸気の存在が減少するにつれ2.00mバールまで低下した。各サンプルの物理的特徴を評価した。
【0134】
第2の実験では、全工程中棚温度を37℃に維持した凍結乾燥機にサンプルを入れた。圧力を初め200mバールまで下げ、このレベルに10分維持した後、さらに減圧した。さらに2.4mバールまで3時間減圧した。この間、圧力は、水蒸気の存在が減少するにつれ1.06mバールまで下降した。各サンプルの物理的特徴を評価した。
【0135】
結果
シリコーン処理は、サンプルの脱気に効果があった。200mバールまでの減圧により、シリコーン処理済バイアル中のサンプルに脱気が起こったが、非シリコーン処理のバイアルには起こらなかった。脱気は、サンプルの泡立ちにより認められた。
【0136】
バイアルのシリコーン処理はまた、泡形成を起こりやすくし、再現性を高めた(表3)。バイアルのシリコーン処理により、低いポリオール濃度で泡形成が再現可能に起こる。ポリオール濃度が低いと、サンプルを乾燥させるのに必要な時間の長さが短縮され、活性薬剤を損なうポリオールとのメイラード反応またはその他の相互作用の影響が低減する。該当するサンプルがワクチンの場合には、これによってサンプルの粘稠性が低下するため、投与しやすくなる。
【表3】

【0137】
実施例5.通常の凍結乾燥または泡乾燥によるHib-IPVの保存の比較
保存しようとする活性薬剤は、ヘモフィルスインフルエンザb型(Hib)のPRP多糖と不活性化ポリオウイルス(IPV)の3つの株との混合物であった。3.15%スクロース溶液または10%トレハロース溶液のいずれかにHib-IPVを溶解させることにより、保存サンプルを製造した。
【0138】
大型凍結乾燥機において3日実施する必要がある通常のサンプル凍結乾燥、または、実施例1に記載した泡乾燥方法のいずれかを用いて、サンプルを凍結乾燥した。
【0139】
サンプルを水で再構成し、ELISAを用いて、3つのポリオウイルス株の抗原性の保持を評価した。3つのポリクローナル抗体と3つのモノクローナル抗体(各株に対して1つ)を個別のELISAに用いた。凍結乾燥または泡乾燥手順を経ていないサンプルで得られた読取り値の百分率として結果を表示する。
【0140】
10匹のマウスからなるグループに、再構成したIPV-Hibを接種して、マウスから採血し、例えば、ELISAまたはウエスタンブロッティングによってIPVおよびHib多糖に対する抗体のレベルをモニタリングすることにより、in vivoでの免疫原性について保存サンプルを評価した。防御の度合いはチャレンジマウスモデルで評価する。
【0141】
結果
ポリオールとしてスクロースまたはトレハロースのいずれかを用いると、通常の凍結乾燥を用いる場合と比較して、泡乾燥法を用いた方がIPVの抗原性は良好に維持された。
【表4】

【0142】
実施例6.Hib多糖の存在下におけるIPV凍結乾燥の防御効果
3.15%スクロースと、IPVあるいはIPVおよびHib多糖との混合物を含む保存サンプルを調製した。これらのサンプルをHeto Drywinner 8-85凍結乾燥機に入れ、−32℃の温度設定で40時間凍結乾燥させた後、4℃で16時間連続乾燥した。
【0143】
サンプルを水で再構成し、ELISAを用いて、3つのポリオウイルス株の抗原性の保持を評価した。3つのモノクローナル抗体(各株に対して1つ)を個別のELISAに用いて、再構成した凍結乾燥サンプルの抗原保持度を、凍結していない対照サンプルと比較して評価した。凍結乾燥または泡乾燥手順を経ていないサンプルについて得られた読取り値の百分率として結果を表示する。
【0144】
結果
表5に示すように、IPVを含む保存サンプルにHib多糖が存在すると、IPV抗原を単独で凍結乾燥させた場合に達成されたものより、凍結乾燥後のIPV抗原の保持が向上した。Hib多糖は、安定剤としてスクロースを含有させて達成される効果に加え、IPV抗原性に保存効果をもたらす。
【表5】

【0145】
実施例7.IPV-Hib凍結乾燥に対する様々な安定剤の効果
IPV-Hibを含み、3.15%スクロース;2.5%ソルビトール、0.8%グルタミンおよび0.01%HAS;MMR安定剤およびラクトース;3%グリシン、2%アルギニンおよび4%スクロース;もしくは4%スクロースおよび2%グリシンのいずれかを安定剤として用いる保存サンプルを調製した。実験には、2倍濃度のIPV-Hibを用いて、安定剤として3.15%スクロースを含むサンプルも含まれた。バッチ凍結乾燥機における通常の3日間の凍結乾燥サイクルを用いて、サンプルを凍結乾燥させた。
【0146】
サンプルを水で再構成し、ELISAを用いて、3つのポリオウイルス株の抗原性の保持を評価した。3つのポリクローナル抗体と3つのモノクローナル抗体(各株に対して1つ)を個別のELISAに用いた。凍結乾燥または泡乾燥手順を経ていないサンプルについて得られた読取り値の百分率として結果を表示する。
【0147】
10匹のマウスからなるグループに、再構成したIPV-Hibを接種した後、マウスから採血し、例えば、ELISAまたはウエスタンブロッティングを用いて、IPVおよびHib多糖に対する抗体のレベルをモニタリングすることにより、in vivoでの免疫原性について保存サンプルを評価した。防御度をチャレンジマウスモデルにおいて評価する。
【0148】
結果
IPVの用量を40/8/32 DU/用量から80/16/64 DU/用量に増加すると、表6に示すようにIPVの抗原性の保持が増大した。また、安定剤の変動も抗原の保持に影響を与え、4%スクロース/2%グリシンおよび2.5%ソルビトール/0.8%グルタミン/0.01%HASは、ELISAデータが示すように抗原の高い保持をもたらした。
【表6】

【0149】
実施例8.凍結乾燥、泡乾燥もしくは凍結ステップを含む泡乾燥後のサンプル品質の再現性
活性薬剤として、IPV、おたふく風邪、麻疹、風疹、水痘帯状疱疹ウイルス、CMV、肝炎、HSV1、HSV2、呼吸器合胞体ウイルス、デング熱、パラミクソウイルス科(例えば、パラインフルエンザ)、トガウイルス科およびインフルエンザウイルス、および/またはHibを含む保存サンプルを調製する。ポリオールを含む水溶液に活性薬剤を溶解させる。凍結乾燥、実施例1に記載のプロトコルに従う凍結ステップを用いた泡乾燥、あるいは、実施例4に記載のプロトコルを用いた凍結ステップなしの泡乾燥のいずれかにより、複数のサンプルを保存する。水溶液でサンプルを再構成し、その活性を評価する。これは、天然の抗原に特異的な抗体を用いる、実施例5に記載のELISAアッセイを用いて達成される。生存ウイルスの場合には、ウイルスを用いて適当な宿主細胞を感染させ、プラーク形成または免疫細胞化学により感染力を評価することによって、各サンプルの力価を確認する。免疫原組成物またはワクチンを泡乾燥させる場合には、泡乾燥または凍結乾燥したワクチンで動物のグループを免疫し、例えば、第1回免疫から14日および28日後に免疫応答を増強することにより、動物モデルにおいて免疫原性の保持を試験することができる。免疫スケジュールの終了時に動物から血清を単離し、標準的アッセイ、例えば、ELISA、免疫細胞化学、ウエスタンブロッティング、免疫沈降、血清殺菌アッセイもしくは凝集アッセイにより、ワクチンに対する血清の力価を試験する。最初に、凍結乾燥、凍結ステップを含む泡乾燥、もしくは凍結ステップを含まない泡乾燥後に活性薬剤の活性を比較することにより、結果を収集した。次に、サンプルを3つの保存方法の各々で処理した後、活性の範囲を比較することにより保存方法の再現度を評価した。
【0150】
実施例9.凍結乾燥、および泡乾燥により保存した活性薬剤の長期貯蔵
活性薬剤として、IPV、おたふく風邪、麻疹、風疹、水痘帯状疱疹ウイルス、CMV、肝炎、HSV1、HSV2、呼吸器合胞体ウイルス、デング熱、パラミクソウイルス科(例えば、パラインフルエンザ)、トガウイルス科およびインフルエンザウイルス、および/またはHibを含む保存サンプルを調製する。ポリオールを含む水溶液に活性薬剤を溶解させる。凍結乾燥、実施例1に記載のプロトコルに従う凍結ステップを用いた泡乾燥、あるいは、実施例4に記載のプロトコルを用いた凍結ステップなしの泡乾燥のいずれかにより、複数のサンプルを保存する。37℃または23℃で7日間貯蔵することによりサンプルをねかし、4℃で維持したサンプルと活性を比較する。水溶液でサンプルを再構成し、その活性を評価する。これは、天然の抗原に特異的な抗体を用いる、実施例5に記載のELISAアッセイを用いて達成される。生存ウイルスの場合には、ウイルスを用いて適当な宿主細胞を感染させ、プラーク形成または免疫細胞化学により感染力を評価することによって、各サンプルの力価を確認する。最初に、高温で貯蔵後の活性薬剤の活性を、4℃で貯蔵したものと比較することにより、結果を収集した。次に、サンプルを各セットの条件に供した後、活性の範囲を比較することにより保存方法の再現度を評価した。
【0151】
実施例10.凍結または泡形成を含まない乾燥方法
5%、10%、15%および25%スクロースを含む保存サンプルを調製し、バイアルに添加した。全工程中15℃の温度設定にした凍結乾燥機にサンプルを入れた。圧力を初め200mバールまで下げ、このレベルに10分維持して脱気させた後、さらに減圧した。さらに8mバールまで2〜3時間減圧するが、その間、サンプル内部の熱電対は、蒸発冷却のためにサンプル温度が4℃まで低下するのを示した。2、3時間後、サンプルの温度は15℃に戻ったため、これらの温度および圧力条件下での蒸発が完了に近いことがわかった。上記方法のこの段階中、サンプルは泡形成のために沸騰したり、凍結したりしないことから、サンプル内の活性薬剤は可能な限り小さいストレスにしかさらされていない。サンプルは、固体の外観をしており、最終生産物と類似していた。
【0152】
棚温度設定を15℃に維持しながら、圧力をさらに0.1mバールに下げることにより、さらなるサンプルの乾燥を達成した。これらの条件をさらに10〜16時間維持した。この段階の間、蒸発速度が遅かったので、サンプル温度は15℃のままにした。更なる乾燥が起こり、得られたサンプルは固体の外観をしていた。サンプルを逆さにしておくと、サンプル内容物は数日または数ヶ月にわたって非常にゆっくりと流動し、サンプルが高い粘稠性の液体ガラスであることを示す。図2から、高粘稠性液体を含む容器を、この高粘稠液体の流動を直ちに起こすことなく逆さにできることがわかる。
【0153】
実施例11.凍結または泡形成を含まない乾燥後のIPV免疫原性の保持
実施例10の方法に従い乾燥させたサンプルは、凍結または泡形成に伴う泡立ちに関連するストレスを被っていない。IPVを乾燥するのにこの方法を用いた場合、この方法が高レベルの抗原保持をもたらすか否かを決定する実験を実施した。
【0154】
安定剤として10%スクロースまたは10%トレハロースを含む水溶液中にIPVを再懸濁させる、3つの個別の実験を実施した。シリコーン処理済のバイアルにサンプルを入れ、これらバイアルをHeto Drywinner 8-85凍結乾燥機内に配置し、温度を15℃に設定した。圧力を初め35mバールまで減圧することにより、サンプルを脱気した。10分後、圧力をさらに8mバールまで減圧し、このレベルに2時間維持した。この期間中温度設定を15℃に維持し、サンプル内部の温度をモニタリングした。水がサンプルから蒸発するに従い、温度は4℃まで下降したが、2時間が経過する頃には、蒸発速度が遅くなるにつれ温度は15℃まで戻った。これらの条件下で泡立ちまたは泡形成は起こらなかった。その後、圧力をさらに0.1mバールまで下げ、これらの条件を最初の2つの実験では16時間以上、第3の実験では10時間以上維持した。
【0155】
サンプルを水で再構成し、ELISAを用いて、3つのポリオウイルス株の抗原性の保持を評価した。3型IPVに対するモノクローナル抗体をELISAで用いることにより、凍結していない対照サンプルと比較して、再構成した凍結乾燥サンプルの抗原保持度を評価した。乾燥手順を経ていないサンプルについて得られた読取り値の百分率として結果を表示する。
【0156】
結果
乾燥したサンプルは、固体の外観をしていたが、室温で容器を逆さにすると、数日にわたってこの乾燥固体は流動することができたため、高粘稠性液体/ガラスの形態であることがわかった。
【表7】

【0157】
3型IPV抗原保持のこれらレベルは、以下に示す凍結乾燥結果と比較すると、非常に好ましいものである。凍結乾燥では、3型に対するモノクローナル抗体を用いた場合、同じELISAフォーマットで、一般に低い値が認められた。
【表8】

【0158】
実施例12.高粘稠性液体/ガラスの形態で貯蔵される乾燥IPVの長期貯蔵安定性
実施例11に記載される方法を用いて乾燥したIPVを4℃で9ヶ月間貯蔵した。150 mM NaClを含む水でサンプルを再構成し、ELISAを用いて、3つのポリオウイルス株の抗原性の保持を評価した。3つのモノクローナル抗体(各株に対して1つ)を個別のELISAに用いて、再構成した貯蔵サンプルにおける抗原保持度を評価した。貯蔵前の同じバッチからの再構成したサンプルに対して同様のELISAを実施した。すべての結果を、乾燥させていない対照サンプルと比較した。乾燥手順を経ていないサンプルについて得られた読取り値の百分率として結果を表示する。
【0159】
結果
【表9】

【0160】
従って、実施例11に記載した方法により乾燥させたIPVは、抗原性を失うことなく、4℃で少なくとも9ヶ月間貯蔵することができる。
【0161】
実施例13.非乾燥のIPVに対する、乾燥による高粘稠性液体形成および再構成後のIPVのin vivoでの免疫原性の比較
10匹のウィスターラットからなるグループに、実施例10に開示した方法を用いて、10%スクロースの存在下で乾燥させ、高粘稠性液体を形成し、再構成したIPVの様々な希釈液を接種した。10匹のウィスターラットからなる別のグループに、乾燥しない以外は同様に調製したIPVの対照サンプルを接種した。
【0162】
21日後、血清をすべてのラットから採取し、1型、2型および3型ポリオウイルスを用いて、個別の免疫沈降アッセイで血清を試験した。
【0163】
結果を以下の表10に示す。表10は以下を含む:a)各IPV希釈液に応答したラットの数、b)免疫沈降アッセイにより評価した50%のラットが血清変換することを確実にするのに必要な用量であるED50、ならびにc)非乾燥の対照IPVに対する、乾燥および再構成IPVの相対効力。
【表10】

JLE017/05は、IPVバッチであり、これを乾燥させて高粘稠性液体を形成した後、再構成した。JLE097は、乾燥させていない参照である。
【0164】
表10から、IPVの各希釈液を接種した応答ラットの数は、乾燥させ再構成したIPVの2つのバッチと非乾燥の参照サンプルとで類似していることがわかる。一般に、1型IPVが最も優れた免疫応答を誘発し、2型はこれよりやや少数のラットで免疫応答を誘発した。3型は最も弱い免疫応答を誘発した。
【0165】
乾燥させて高粘稠性液体を形成する方法は、IPVが免疫沈降抗体をin vivoで誘発する能力を損なわない。1.0の相対効力(RP)読取り値から、サンプルが参照サンプルと同等の応答を誘発することがわかる。乾燥サンプルのいずれも3つの型のポリオウイルスすべてについて1.0に近いRP読取り値をもたらすが、これは、乾燥工程が、サンプルが免疫応答を誘発する能力に影響しないことを示している。
【0166】
実施例14.安定剤としてスクロースまたはトレハロースを用いた高粘稠性液体を形成するための乾燥が、IPVがin vivoで免疫沈降免疫応答を誘発する能力に及ぼす影響
10匹のウィスターラットからなるグループに、実施例2に記載したように10%スクロースまたは10%トレハロースの存在下で乾燥させた後、再構成したIPVを接種した。10匹のウィスターラットからなる別のグループに、参照サンプルとして、乾燥していない同量のIPVを接種した。
【0167】
21日後、すべてのラットから血清を回収し、実施例5に記載したように、免疫中和アッセイを用いて、1型、2型および3型ポリオウイルスの各々に対して産生した免疫中和抗体の量を評価した。
【0168】
相対効力は、各サンプルについて、非乾燥の参照サンプルにより誘発された免疫応答と比較することにより計算した。
【0169】
結果を表11に示す。
【表11】

【0170】
サンプルに残った水分の量は、Karl Fischer法により測定したところ、安定剤としてスクロースを用いた場合(約5%水分が残る)の方が、安定剤としてトレハロースを用いる(約10%が残る)より低かった。
【0171】
スクロースとトレハロースの両方が、乾燥工程中、IPVを安定化するのに有効であり、再構成したIPVは、様々な型のポリオウイルスのほとんどについて1.0に近い相対効力値が得られた。相対効力は、免疫原性を比較的容易に失う3型ポリオウイルスについて特に優れていた。
【0172】
実施例15:Karl Fischerによる水分の測定
Karl Fischer滴定分析計(Aqua 30.00−Elektrochemie Halle)で分析を実施した。サンプルの重量を計量し、80℃の温度設定でオーブンに配置した。サンプルを窒素ガスで洗浄し、ヒドラナル試薬(Riedel de Hahn)に添加して、電量計により分析を実施した。
【図面の簡単な説明】
【0173】
【図1A−B】泡乾燥方法の様々な段階における保存サンプルの入ったバイアルの写真。Aは液体製剤の形態で凍結乾燥機に導入した際の保存サンプルの外観を示す。Bは 圧力を1.5mバールまで下げた際の保存サンプルの外観を示す。サンプルは、各バイアルでの条件が異なるため、少しずつ異なる速度で凍結し始める。
【図1C−D】泡乾燥方法の様々な段階における保存サンプルの入ったバイアルの写真。Cは0.1mバールでの保存サンプルの外観を示す。その際、サンプルは完全に凍結している。Dは圧力を0.8〜3.5mバールまで上げた際の保存サンプルの外観を示す。保存サンプルが泡を形成し、溶剤が蒸発するに従い、泡沫ガラスが形成される。
【図2】逆さにしたバイアル内の高粘稠性液体の写真を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IPVと安定剤とを含み、乾燥組成物の形態で製剤化された免疫原組成物であって、再構成後に、ポリオウイルスに対する免疫応答を生じさせることができる上記免疫原組成物。
【請求項2】
いずれも乾燥組成物の形態で製剤化されたIPVと安定剤とを含む、請求項1に記載の免疫原組成物であって、再構成後に、ポリオウイルスに対する免疫応答を生じさせることができる上記免疫原組成物。
【請求項3】
ヘモフィルスインフルエンザb型(Hib)からの莢膜多糖またはオリゴ糖抗原を含む、請求項1または2に記載の免疫原組成物。
【請求項4】
前記多糖またはオリゴ糖が担体タンパク質とコンジュゲートした、請求項2または3に記載の免疫原組成物。
【請求項5】
前記多糖またはオリゴ糖が破傷風トキソイドとコンジュゲートした、請求項4に記載の免疫原組成物。
【請求項6】
前記多糖またはオリゴ糖がリン酸アルミニウムに吸着した、請求項3〜5に記載の免疫原組成物。
【請求項7】
髄膜炎菌Cに由来する莢膜多糖またはオリゴ糖を含む、請求項1〜6に記載の免疫原組成物。
【請求項8】
髄膜炎菌A、YもしくはWのいずれかまたはこれらの組合せに由来する莢膜多糖あるいはオリゴ糖を含む、請求項1〜7に記載の免疫原組成物。
【請求項9】
前記髄膜炎菌多糖またはオリゴ糖が担体タンパク質とコンジュゲートした、請求項7〜8に記載の免疫原組成物。
【請求項10】
同じタイプの担体タンパク質とコンジュゲートしたHib多糖またはオリゴ糖と少なくとも1種の髄膜炎菌多糖またはオリゴ糖とを含む、請求項9に記載の免疫原組成物。
【請求項11】
異なる担体タンパク質とコンジュゲートしたHib多糖またはオリゴ糖と少なくとも1種の髄膜炎菌多糖またはオリゴ糖とを含む、請求項9に記載の免疫原組成物。
【請求項12】
フェノールレッドをさらに含む、請求項1〜11に記載の免疫原組成物。
【請求項13】
前記乾燥組成物が凍結乾燥されている、請求項1〜12に記載の免疫原組成物。
【請求項14】
前記乾燥組成物が泡沫ガラスである、請求項1〜13に記載の免疫原組成物。
【請求項15】
前記乾燥組成物が高粘稠性液体である、請求項1〜12に記載の免疫原組成物。
【請求項16】
前記高粘稠性液体が凍結されていない、請求項15に記載の免疫原組成物。
【請求項17】
請求項1〜16に記載の免疫原組成物を水溶液で再構成するステップを含む、ワクチン製造方法。
【請求項18】
前記水溶液がジフテリアトキソイド、破傷風トキソイドおよび百日咳抗原(無細胞性または全細胞)を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記DTPワクチンを水酸化アルミニウムで少なくとも部分的に増強する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記水溶液が、B型肝炎表面抗原を含む、請求項18または19に記載のワクチン製造方法。
【請求項21】
1つの容器に請求項1〜16の免疫原組成物を、また、第2の容器に液体DTP(無細胞性または全細胞)ワクチンを含むキット。
【請求項22】
第2の容器にB型肝炎表面抗原をさらに含む、請求項21に記載のキット。
【請求項23】
請求項1〜16に記載の免疫原組成物を含むワクチン。
【請求項24】
使用前に水溶液で再構成する請求項23に記載のワクチン。
【請求項25】
請求項23〜24に記載のワクチンを含む、撥水性の内部表面を有する容器。
【請求項26】
IPVと安定剤とを含む組成物の保存方法であって、以下のステップを含んでなる、上記方法:
a)安定剤の溶液中にIPVを懸濁または溶解させることにより保存サンプルを調製し;
b)上記保存サンプルを、溶剤が該保存サンプルから消失するような温度および圧力条件に供し;
c)上記保存サンプルが乾燥し、IPVの抗原性が保持される固体または高粘稠性液体を形成するまで溶剤を除去する。
【請求項27】
撥水性の内部表面を有する容器内で上記保存サンプルを乾燥させる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記ステップb)の間に、保存サンプルが泡立ち、泡を形成する、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
前記サンプルを少なくとも部分的に凍結させた後、乾燥工程を開始する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記ステップb)の間に、保存サンプルが少なくとも部分的に凍結する、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記ステップb)において、泡形成に関与する泡立ちまたは凍結なしに、保存サンプルが蒸発により溶剤を放出するような温度および圧力条件に該保存サンプルを供して、粘稠液体を形成し、前記ステップc)の間に、保存サンプルが乾燥して高粘稠性液体を形成するまで溶剤を除去する、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
前記保存サンプルが細菌多糖を含む、請求項26〜31に記載の方法。
【請求項33】
前記保存サンプルがHib多糖またはオリゴ糖を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記保存サンプルが、髄膜炎菌A、C、YもしくはWのいずれかまたはこれらの組み合わせに由来する多糖またはオリゴ糖を含む、請求項32〜33に記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全てが乾燥組成物の形態で製剤化されているIPVと細菌性多糖もしくはオリゴ糖と安定剤とを含み、再構成後にポリオウイルスに対する免疫応答を生じさせることができる免疫原組成物。
【請求項2】
ヘモフィルスインフルエンザb型(Hib)由来の莢膜多糖またはオリゴ糖抗原を含む、請求項1に記載の免疫原組成物。
【請求項3】
前記多糖またはオリゴ糖が担体タンパク質とコンジュゲートしている、請求項1または2に記載の免疫原組成物。
【請求項4】
前記多糖またはオリゴ糖が破傷風トキソイドとコンジュゲートしている、請求項3に記載の免疫原組成物。
【請求項5】
前記多糖またはオリゴ糖がリン酸アルミニウムに吸着されている、請求項2〜4のいずれか1項に記載の免疫原組成物。
【請求項6】
髄膜炎菌C由来の莢膜多糖またはオリゴ糖を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の免疫原組成物。
【請求項7】
髄膜炎菌A、YもしくはWのいずれか、またはこれらの組合せに由来する莢膜多糖あるいはオリゴ糖をさらに含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の免疫原組成物。
【請求項8】
髄膜炎菌多糖またはオリゴ糖が担体タンパク質とコンジュゲートしている、請求項6または7に記載の免疫原組成物。
【請求項9】
同じタイプの担体タンパク質とコンジュゲートしたHib多糖もしくはオリゴ糖と少なくとも1種の髄膜炎菌多糖もしくはオリゴ糖とを含む、請求項8に記載の免疫原組成物。
【請求項10】
異なる担体タンパク質とコンジュゲートしたHib多糖もしくはオリゴ糖と少なくとも1種の髄膜炎菌多糖もしくはオリゴ糖とを含む、請求項8に記載の免疫原組成物。
【請求項11】
フェノールレッドをさらに含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の免疫原組成物。
【請求項12】
前記乾燥組成物が凍結乾燥されている、請求項1〜11のいずれか1項に記載の免疫原組成物。
【請求項13】
前記乾燥組成物が泡沫ガラスである、請求項1〜12のいずれか1項に記載の免疫原組成物。
【請求項14】
前記乾燥組成物が高粘稠性液体である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の免疫原組成物。
【請求項15】
前記高粘稠性液体が凍結されていない、請求項14に記載の免疫原組成物。
【請求項16】
水溶液中で請求項1〜15のいずれかに記載の免疫原組成物を再構築する工程を含む、ワクチンの製造方法。
【請求項17】
前記水溶液がジフテリアトキソイド、破傷風トキソイドおよび百日咳抗原(無細胞性または全細胞)を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記DTPワクチンが水酸化アルミニウムで少なくとも部分的に免疫増強されている、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記水溶液がB型肝炎表面抗原を含む、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
1つの容器に請求項1〜15のいずれかに記載の免疫原組成物を、第2の容器に液体DTP(無細胞性または全細胞)ワクチンをそれぞれ含むキット。
【請求項21】
第2の容器にB型肝炎表面抗原をさらに含む、請求項20に記載のキット。
【請求項22】
請求項1〜15のいずれかに記載の免疫原組成物を含むワクチン。
【請求項23】
使用前に水溶液中で再構成される、請求項22に記載のワクチン。
【請求項24】
請求項22または23に記載のワクチンを含む、撥水性の内部表面を有する容器。
【請求項25】
IPVと細菌性多糖もしくはオリゴ糖と安定剤とを含む組成物の保存方法であって、以下の工程:
(a)安定剤の溶液中でIPVと細菌性多糖またはオリゴ糖を懸濁または溶解することにより保存サンプルを調製すること、
(b)前記保存サンプルを、保存サンプルから溶剤が消失するような温度および圧力条件に供すること、
(c)前記保存サンプルが乾燥して、IPVの抗原性を保持した固体または高粘稠性液体を形成するまで溶剤を除去すること、
を含む上記方法
【請求項26】
前記保存サンプルを撥水性の内部表面を有する容器中で乾燥させる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記工程b)の間に、保存サンプルが泡立ち、泡を形成する、請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
前記サンプルを少なくとも部分的に凍結させた後、乾燥工程を開始する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記工程b)の間に、保存サンプルが少なくとも部分的に凍結されるようになる、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記工程b)において、泡形成に関与する泡立ちまたは凍結なしに、保存サンプルが蒸発により溶剤が放出するような温度および圧力条件に該保存サンプルを供することにより、粘稠液体を形成し、前記工程c)の間に、保存サンプルが乾燥して高粘稠性液体を形成するまで溶剤を除去する、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
前記保存サンプルがHib多糖またはオリゴ糖を含む、請求項26〜30のいずれか1項に記載の方法
【請求項32】
前記保存サンプルが、髄膜炎菌A、C、YもしくはWのいずれか、またはこれらの組み合わせに由来する多糖あるいはオリゴ糖を含む、請求項26〜31のいずれか1項に記載の方法。

【図1A−B】
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【図1C−D】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−512406(P2006−512406A)
【公表日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−501818(P2005−501818)
【出願日】平成15年10月30日(2003.10.30)
【国際出願番号】PCT/EP2003/012160
【国際公開番号】WO2004/039399
【国際公開日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【出願人】(397062700)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (37)
【Fターム(参考)】