説明

免疫学的に活性な組成物

本発明は、付着した標的分子の有無にかかわらず、1つ又は複数のタンパク質、ペプチド、核酸、炭水化物、脂質又はその他の生物活性物質からなる微粒子担体系を提供する。さらに、本発明は、免疫修飾組成物並びに、非感染及び感染宿主の両方における防御免疫応答の誘発方法のほか、免疫寛容性の誘導方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防御免疫又は寛容性を誘導することができる免疫学的に活性な組成物を提供する。非感染及び感染宿主のいずれにおいても防御免疫を誘導する組成物は、抗原エピトープから成るが、免疫「回避」に関与する又は寛容性を誘導するエピトープを、除外又は排除する。防御免疫は、病原体関連分子パターン及び/又は、抗原エピトープを伴う若しくは伴わない担体を含む組成物によっても誘導することができる。寛容性を誘導する別の免疫学的に活性な組成物は、担体の有無にかかわらず、病原体回避(phatogen escape)に重要なエスケープエピトープ又は分子パターンを含む。さらに、本発明は、このような免疫学的に活性な分子の同定方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
免疫学の進歩は、病原体を制御する先天性免疫応答及び適応免疫応答の誘導要件を含む、免疫モジュレーターの開発に不可欠な免疫因子を同定した。
【0003】
広範な抗生物質耐性の出現に伴い、免疫モジュレーターは、細胞内病原体を含む微生物に対する長期防御を与える最も有効なアプローチとなりえる。免疫モジュレーターに対する現在の関心の中心は、新規ベクター、有効な担体、及びアジュバント系の開発を必要としている。
【0004】
病原体は、Th2応答及び寛容性も誘導することができるため、これを理解することは、自己免疫疾患、移植及びその他の医学的適用に関する免疫モジュレーターの開発に使用されることができる。ほとんどの病原体は、皮膚及び粘膜を介して生体に侵入する。したがって、これらの投与経路は、皮膚、気道、消化管、又は性器を介して侵入する感染に対する免疫調節に特によく適している。従来のワクチンは、実際の感染部位から離れて非経口的に投与され、これらの粘膜応答はあまり顕著ではない。
【0005】
現在、Toll様受容体(TLR)の他に、先天性免疫応答に重要な役割を果たす、他の受容体及び経路があることが明らかになっている。この一例が、細胞内微生物の微生物モチーフを認識するヌクレオチド−オリゴマー化ドメイン(NOD)タンパク質である。細胞外マトリックスタンパク質であるミンジン(Mindin)もまた、幾つかの細菌表面成分に対する炎症反応メディエーターである。これら及びその他の研究は、先天性免疫には、TLRシグナル伝達とは無関係の別の因子が関与していること、NFκB又はIL−1産生が、感染の制御に不十分である可能性があることを示唆している。
【0006】
感染制御に関与する先天性免疫の典型要素は、以下の通りである。(1)炎症誘発性反応:NFκBの媒介、多くの炎症物質を活性化し、過剰刺激はショックをもたらすことができる、(2)カチオン性宿主防御ペプチド:細菌病原体関連分子パターン(PAMP)及びシグナル伝達分子により刺激されたペプチド産生の増加、(3)食細胞の活性化:好中球及びマクロファージにおける細胞内殺菌の増加(いずれも酸化及び非酸化機構が増大し、サイトカイン産生が増加)、(4)走化性:食細胞の内皮接着、感染部位への細胞移動、漏出の増加、(5)細胞外殺菌機構:補体の活性化、鉄キレート化の増大、抗微生物ペプチドの分泌、分解酵素の産生、(6)感染汚染:フィブリノーゲン活性化を介した血栓形成、(7)創傷修復:線維芽細胞の増殖及び接着、血管新生、並びに(8)適応免疫応答:B及びT細胞の活性化(樹状細胞を介すことが多い)。
【0007】
先天性免疫の刺激は、インターフェロン、モノホスホリル脂質A、イミキモド、CpGヌクレオチド又はカチオン性ペプチドの使用により実現することができる。しかし、先天性免疫は、感染を回避する能力に限界があり、このようなシナリオでは適応免疫応答がこれに取って代わる。
【0008】
樹状細胞は、先天性免疫及び適応免疫を結びつけるのに不可欠であることが近年認識されており、この知識により、免疫学者は、免疫原性に乏しい抗原に対する免疫調節戦略をデザインすることが可能になった。樹状細胞(DC)は、骨髄系及びリンパ系両方の前駆体に由来するが、主要な抗原提示細胞(APC)である。DCは、あらゆる組織に存在し、感染期には、侵入病原体との接触を開始する主要な免疫細胞となる。これらは、先天性免疫応答及び適応免疫応答の間の架け橋である。
【0009】
内皮及び上皮細胞、単球、マクロファージ及び未成熟DCを含むその他の細胞は、病原体パターン認識受容体(TLR受容体、レクチンドメイン受容体及びその他の受容体)を発現する。病原体パターン認識受容体は、グラム陰性菌由来のリポ多糖類、グラム陽性菌由来のリポテイコ酸、ペプチドグリカン、ペプチドグリカン関連リポタンパク質、細菌DNA並びにグラム陰性菌及びグラム陽性菌由来のフラジェリンのほか、ウイルスRNAなど、病原体により共有された病原体関連分子保存構造(略してPAMP)を結合する。異なる細胞は、個々の病原体に適した反応を可能にする異なる受容体を発現する。活性化されると、未成熟な抗原捕捉DCは、MHCクラスII及びクラスIの状況で抗原を提示することができる、成熟した抗原提示DCへ分化するほか、表面のCD80及びCD86などの共刺激分子の発現をアップレギュレートする。
【0010】
成熟し活性化されたDCは、二次リンパ器官(リンパ節、脾臓、パイエル板)へ移動し、そこでT細胞領域へ移動する。DCのT細胞との相互作用及びT細胞刺激は、サイトカイン、ケモカイン、並びに細胞内接着分子(I−CAM)、白血球機能関連分子1(LFA−1)、及び樹状細胞特異的ICAMグラビングノンインテグリン(dendritic cell specific ICAM grabbing nonintegrin)(DC−SIGN)などの接着分子に依存する。
【0011】
局所サイトカイン環境及び抗原に応じて、細胞性T−ヘルパー(Th1)免疫応答及び体液性抗体媒介性Th2又はTreg指向性免疫応答は、さまざまな程度に誘発される。抗原投与量は、Th1/Th2分化を方向づけることが明らかにされており、高用量は、Th−1応答を、低用量はTh−2応答を優先的に刺激する。抗原タンパク質を表示する担体装置及びDNAワクチンは、未成熟樹状細胞により取り込まれ、免疫応答をもたらすことが明らかにされている。したがって、DCは、免疫系調節開発の唯一の標的ではないものの主要な標的であることを意味する。
【0012】
粘膜DCは、具体的には、ピノサイトーシス及び受容体媒介性エンドサイトーシスの両方を介して、外からの侵入者を捕食することによる、防御の重要な最前線を提供する。DCは、生体粘膜は、生体の内と外の間のバリアのような働きをするため、膜免疫における必須の役割を果たす。DCは、気道及び腸の内膜に見出すことができる。ランゲルハンス細胞は、皮膚及び粘膜に見られるDC集団である。DC及びM細胞は、抗原を腸の免疫誘導部位である下層のリンパ濾胞へ輸送する。類似の鼻及び気管支関連リンパ組織は、気道で説明されている。この系は、消化管において重要であるが、気道では、下層のDCネットワークが、より重要となりうる。
【0013】
経口投与の場合、免疫モジュレーターは、胃及び上部の腸を未分解状態で通過しなければならない。このような分解は、鼻、眼又は生殖器投与経路では生じそうにない。続いて、免疫モジュレーターは、腸上皮を介して吸収されなければならない。こうして免疫モジュレーターは吸収され、続いて、抗原提示細胞により免疫担当細胞に提示されることができる。免疫担当細胞は、上皮、固有層又は基底膜の下に位置する。したがって、免疫モジュレーターの成分は、これらにこのバリアを通過させる担体により調製されなければならない。粒子担体と結合した場合、分子は、パイエル板のM細胞により、バリアを越えて輸送されることができる。
【0014】
生物活性分子の早期の分解又は放出は、粒子ベースのワクチン及び薬剤送達技術の開発を妨げてきた。これは、公表されている文献においては、注入される対応物と同等の反応を得るのに高用量の抗原/薬剤が未だに必要とされる理由を説明するものと考えられる。抗原及び薬剤の活用の低さを別にすれば、その他の主な批判は、パイエル板(PP)におけるM細胞の粒子輸送能の低さ、ヒトにおいて誘導される免疫及びその他の応答の不十分さについて言及している。パイエル板の上皮M細胞は、特定の細菌、ウイルス及び原虫の腸からの輸送を可能にすることが知られている。幾つかの研究は、最大直径10μmのサイズ依存性取り込みは、M細胞、DC及びCaco−2細胞により生じうることを示している。
【0015】
M細胞並びにPP及びPP周辺に存在するさまざまなタイプの樹状細胞(DC)による、粒子の取り込みに関する近年の情報は、関与する機構の理解を可能にする。Beyer(Beyer Tら、「抗原送達装置としての細菌担体及びウイルス様粒子:抗原提示における樹状細胞の役割(Bacterial carriers and virus−like−particles as antigen delivery devices:Role of dendritic cells in antigen presentation)」、Curr.Drug Targets−Infect.Disord、2001年1、287〜302頁)はベーカー酵母細胞(サッカロマイセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae))のPPへの取り込み及び動態を追跡し、これを、粘膜を介した輸送の不活性モデルと仮定した。
【0016】
さまざまなタイプの食菌、抗原プロセシングマクロファージ又は樹状細胞への輸送に匹敵する典型的な時間依存性が、M細胞、M細胞下の細胞内ポケット、及び基底膜下のスペースにおける酵母細胞の分布についても見られた。DCが位置する場所に応じて、これらは、活性化時に、Th1又はTh2指向性サイトカインを産生するPP微小環境において、異なる機能を有することがわかった。サイトカイン及びケモカインの微小環境は、次いで、Th細胞のTh1及びTh2サブセットへの分化をそれぞれ決定し、同様にT細胞の生存又はアポトーシスに影響するであろう。
【0017】
さらに、B細胞の分化及び粘膜形質細胞のホーミングは、別々のサイトカイン(TGF−βに加えてIL−6、IL−4、IL−5、及びIL−10)及び特定のホーミング受容体、aにより制御される。故に、粘膜には利用可能な機構が存在すると思われ、この機構により、免疫系の粘膜調節は、より分化された免疫応答を誘導でき、他の投与経路で得られるよりも自然感染に対する応答をより上手く模倣できると結論することができる。
【0018】
これまで提案されてきたDC、これらの前駆体及びさまざまなDCサブタイプについては、多くのことが知られているが、DCの最大の機能的複雑性及び可塑性は、特定のワクチンが、DC、並びにこれに続くTh1、Th2及びTreg応答に与える影響についての予測を困難にする。しかし、成熟DCに関しインビトロで得られた幾つかの結果は、これらが類似の特徴を示すことから、リンパ器官から単離された成熟DCに外挿することができる(Shortman K.ら、「マウス及びヒトの樹状細胞サブタイプ(Mouse and human dentritic cell subtypes)」、Nat.Rev.Immunol.2002年Mar 2(3):151−61頁)。例えば、マイコプラズマリポペプチドMALP−2の、DC応答の潜在調節能が、インビトロで研究されている(Weigt H.ら、「合成マイコプラズマ由来リポペプチドMALP−2は樹状細胞の成熟及び機能を誘導する(Synthetic mycoplasma−derived lipopeptide MALP−2 induces maturation and function of dendritic cells)」、Immunobiology 2003年、207(3):223〜33頁)。DCのMALP−2処理は、CD80、CD86発現、並びに生物活性TNF−α及びIL−10の放出を誘導したほか、自己リンパ球増殖、並びに後者によるIL−4、IL−5及びγ−INFの産生を誘導した。これらの特徴は、T細胞を刺激する能力と相互作用するため、インビボにおいてMALP−2がDCに影響する可能性を示唆している。
【0019】
合成担体は、MHCクラスI及びIIに関する抗原提示の免疫刺激効果を可能にすることができる。合成担体は、さまざまな応用可能性に合わせることができる、多目的システムに発展させることができる。これらの担体の特徴は、免疫応答の結果及び効率を大幅に左右することができる。粒子などの合成担体は、品質保証並びにワクチン開発及び生産の妥当性確認という障害を容易にし、故に承認及び市場に出すまでの時間を短縮することができる。
【0020】
さまざまな感染性微生物の幾つかの免疫刺激成分(ペプチド、タンパク質、脂質又は多糖類)は、ワクチン接種に使用することができる。これらの成分は、微生物から合成、精製する、又は組換えDNA技術により生成することができる。しかし、これらは、遊離可溶型で経口又は非経口投与される場合、適切なアジュバントが必要となる。
【0021】
幾つかの粒子ベース系が、さまざまな抗原及び薬剤の担体として試験されている。キトサン、ポリ−DL−乳酸、又はポリアクリルデンプン微粒子は、薬剤担体系としてこれまでに記載がある。このような系の例は、米国特許第5,603,960号及び第6,521,431号に記載されている。1つの報告では、モデル抗原である、共有結合されたヒト血清アルブミン(HSA)を伴うデンプン微粒子は、非経口投与された場合、マウスにおける強力なアジュバントとして機能し、微粒子単独では免疫原性を示さないことが観察された。
【0022】
しかし、取り込みは、担体の構造及び接着特性の可能性に最も依存すると考えられることも、指摘されるべきである。アガロース及びその他の多糖類は、異なる粘膜とのこれらの相互作用を改善し、取り込みを促進することができる、固有の粘膜接着特性を有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明により、免疫学的に活性な組成物、又は防御免疫若しくは寛容性を誘導する組成物のための新規の組成物が説明される。非感染及び感染宿主のいずれにおいても防御免疫応答を誘導する組成物は、抗原エピトープから成るが、免疫「回避」に関与する又は寛容性を誘導するエピトープを、除外又は排除する。防御免疫は、病原体関連分子パターン及び/又は、抗原エピトープを伴う若しくは伴わない担体を含む組成物によっても誘導することができる。寛容性を誘導する別の免疫学的に活性な組成物は、担体の有無にかかわらず、病原体回避(phatogen escape)に重要なエスケープエピトープ(escape epitope)又は分子パターンを含む。さらに、本発明は、このような免疫学的に活性な分子の同定方法を提供する。適切な例は、修飾マイコプラズマ抗原が付着した又は付着していない、病原体関連分子パターン(PAMP)認識分子である。こうした分子組成物は、非感染及び感染宿主のいずれにおいても、抗マイコプラズマ免疫応答を調節するように思われる。抗原の幾つかは、寛容性又は免疫回避を誘導する。
【課題を解決するための手段】
【0024】
したがって、本発明の1つの態様は、防御免疫を誘導する免疫学的に活性な組成物であり、
(1)少なくとも1つの病原体関連分子パターンと、
(2)場合により、少なくとも1つの免疫活性な抗原又は抗原エピトープと、
(3)組成物を生物に送達することにより防御免疫を誘導するのに有効な、少なくとも1つの担体と
を含む組成物である。
【0025】
多くの場合、少なくとも1つの免疫活性な抗原又は抗原エピトープを含むことが望ましい。適切な例は、さらに以下で説明される。一般的に、少なくとも1つの免疫活性な抗原エピトープは、エスケープエピトープを持たない。これは、選択圧を防止する上で重要である。さもなければ、選択圧は、病原体の進化をもたらすことになり、病原体の複製は免疫応答では遮断されない。選択圧が重要であると思われる病原体の例は、急速に変異するインフルエンザウイルスである。インフルエンザウイルスの変異はきわめて急速なため、ヒト疾患を引き起こしそうなインフルエンザの特定の株又は複数の株に対し免疫を提供するには、インフルエンザのシーズンごとに新規ワクチンを調製する必要がある。選択圧が重要であると思われる病原体の別の例は、やはり急速に変異するヒト免疫不全ウイルス(HIV)である。
【0026】
本発明の別の態様は、寛容性を誘導する免疫学的に活性な組成物であり、
(a)少なくとも1種類の病原体関連分子パターンと、
(b)少なくとも1つの免疫活性な抗原又は抗原エピトープと、
(c)組成物を生物に送達することにより寛容性を誘導するのに有効な、少なくとも1つの担体と
を含む組成物である。
【0027】
典型的には、免疫活性な抗原エピトープは、ペプチド、タンパク質、組換えペプチド若しくはマルチペプチド、組換えタンパク質、脂質、炭水化物、核酸若しくはその他の生物活性分子、又はこれらのいずれかの組合せである。典型的には、免疫活性な抗原エピトープは、ペプチド又はタンパク質であり、前記ペプチド又はタンパク質は、免疫調節性転写後調節を有する。典型的には、転写後調節は、炭水化物及び/又は脂質部分を含む。典型的には、転写後調節は、末端マンノシル化を含む。この代替では、典型的には、免疫調節の末端マンノシル化物質が、免疫防御組成物から著減している。これらは、酸化ステップにより、酵素処理により、又は糖特異的親和性結合により、著減することができる。或いは、転写後調節は、脂質部分を含み、前記脂質部分は、脱脂により除去される。
【0028】
典型的には、免疫活性な抗原エピトープは、ペプチド又はタンパク質であり、前記免疫活性ペプチド又はタンパク質は、免疫調節性転写後修飾を有さない。また、典型的には、免疫活性ペプチド又はタンパク質は、N−グリコシル化及び/又はリポイル化が可能なアミノ酸配列を有さない。別の好ましい代替では、免疫活性な抗原エピトープは、ペプチド又はタンパク質であり、前記免疫活性ペプチド又はタンパク質は、細胞表面グリコサミノグリカン(GAG)を結合可能なアミノ酸配列を有する。典型的には、これらのアミノ酸配列は、本来多塩基性であり、一般式XBBXBX、XBBBXXBX、BBXXBBBXXBB、BBBXXB、BXBXB、BBB、BXBXXXBXB、又はBXBXXXXXBXBを有し、ここで、Bは塩基性アミノ酸であり、Xはいずれか他のアミノ酸である。典型的には、GAG結合アミノ酸配列は、病原体が細胞表面に結合するのを干渉可能なペプチド又はタンパク質に対する抗体を産生するのに使用される。GAGは、ヘパリン及びこの類似体からなる群から選択される。免疫活性な抗原ペプチド又はタンパク質は、単独又は抗体と併用して、補体活性化活性を有することができる。免疫活性な抗原エピトープは、単一のマルチペプチドに合体される複数のペプチドであることができる。免疫活性な抗原エピトープは、T細胞エピトープ及びB細胞エピトープの両方を含むことができる。
【0029】
典型的には、病原体関連分子パターンは、
(1)TLR1受容体アゴニストと、
(2)TLR2受容体アゴニストと、
(3)TLR3受容体アゴニストと、
(4)TLR4受容体アゴニストと、
(5)TLR5受容体アゴニストと、
(6)TLR6受容体アゴニストと、
(7)TLR7受容体アゴニストと、
(8)TLR8受容体アゴニストと、
(9)TLR9受容体アゴニストと、
(10)NOD−1アゴニストと、
(11)NOD−2アゴニストと、
(12)DC−SIGNと、
(13)L−SIGNと、
(14)マンノース受容体と
からなる群から選択される。
【0030】
病原体関連分子パターンは、NOD−1アゴニスト又はNOD−2アゴニストである場合、前記NOD−1アゴニスト又はNOD−2アゴニストは、細菌のペプチドグリカン及び細菌のペプチドグリカン誘導体からなる群から選択することができる。
【0031】
本発明の別の態様は、病原体のグリコサミノグリカン結合を干渉することが可能な免疫活性エピトープを同定する方法であり、
(1)ヘパリン吸着を行うステップと、
(2)免疫親和性選択を行うステップと、
(3)場合により、免疫活性ペプチドを生成するため、免疫親和性選択により単離された1種類のタンパク質又は複数のタンパク質のタンパク質分解を行うステップと
を含む。免疫親和性選択は、当技術分野でよく知られた方法、例えば、G.T.Hermansonら、「固定化親和性リガンド技術(Immobilized Affinity Ligand Techniques)」(Academic Press,Inc.、サンディエゴ、1992年)に記載された方法により行うことができるが、他の方法もまた、当技術分野において既知である。
【0032】
本発明のなお別の態様は、直鎖多塩基モチーフを用いるバイオインフォマティクス解析法により配列データを解析することを含む、病原体のグリコサミノグリカン結合を干渉可能な免疫活性ペプチドの同定方法である。
【0033】
本発明のいっそう別の態様は、免疫活性ペプチドを活性化する補体を同定する方法であり、
(1)補体結合抗体の補体タンパク質への結合を行うステップと、
(2)タンパク質抗原の免疫親和性選択に前記抗体を使用するステップと、
(3)場合により、単離されたタンパク質抗原のタンパク質分解を行うステップと
を含む。
【0034】
これらの方法により生成される免疫活性ペプチドも、本発明の態様である。さらに、防御抗体は、宿主生物における疾患を克服するための、同定された免疫活性ペプチドに基づくことができる。
【0035】
上述の組成物では、分子は、混合物として存在することができる。或いは、分子は、化学的に結合することができる。担体は、典型的には微粒子である。好ましくは、微粒子は、狭いサイズ分布範囲を有し、多孔性である。典型的には、微粒子は、直径約10μm未満であり、より典型的には、微粒子は、直径約5μm未満である。典型的には、微粒子は、生体高分子でできている。1つの代替では、免疫活性な抗原エピトープは、微粒子に非共有結合している。別の代替では、免疫活性な抗原エピトープは、微粒子に共有結合している。1つを超える免疫活性名抗原エピトープ及び1つを超えるパターン認識受容体アゴニストは、微粒子と結合していることができる。1つを超えるパターン認識受容体アゴニストは、微粒子と結合していることができる。
【0036】
本発明の別の態様は、対象における免疫応答の誘発方法であり、微粒子と結合している少なくとも1つの免疫活性な抗原エピトープ及び少なくとも1つの病原体認識(PR)受容体アゴニストを含む組成物の免疫学的に有効な量を投与するステップを含み、前記微粒子は、病原体よりも小さい又は同じサイズ範囲にある。組成物は、1つを超える病原体認識受容体アゴニストを含むことができる。
【0037】
本発明のなお別の態様は、対象における免疫応答を誘発するための免疫学的に活性な組成物のインビボ送達の方法であり、微粒子と結合している少なくとも1つの病原体認識(PR)受容体アゴニストを含む組成物の免疫学的に有効な量を投与するステップを含み、前記微粒子は、病原体よりも小さい又は同じサイズ範囲にある。
【0038】
本発明のいっそう別の態様は、対象における免疫応答を誘発するための免疫学的に活性な組成物のインビボ送達の方法であり、微粒子と結合している少なくとも1つの免疫活性な抗原エピトープ及び少なくとも1つの病原体認識(PR)受容体アゴニストを含む組成物の免疫学的に有効な量を投与するステップを含み、前記微粒子は、病原体よりも小さい又は同じサイズ範囲にある。
【0039】
本発明の別の態様は、少なくとも1つの病原体に対する防御免疫応答を誘発する方法であり、微粒子と結合している1つ又は複数の免疫活性な抗原エピトープと、PR受容体アゴニストの組合せとを含む組成物の免疫学的に有効な量を、単回又は複数回投与するステップを含み、前記微粒子は、病原体よりも小さい又は同じサイズ範囲にあり、免疫応答は、Th1若しくはTh2応答又は両方の組合せを含む。
【0040】
本発明のなお別の態様は、少なくとも1つの病原体に対する防御免疫応答を誘発する方法であり、微粒子と結合している1つ又は複数の免疫活性な抗原エピトープ(免疫学的回避機構に関与する抗原を除く)と、PR受容体アゴニストの組合せとを含む組成物の免疫学的に有効な量を、単回又は複数回投与するステップを含み、前記微粒子は、病原体よりも小さい又は同じサイズ範囲にある。
【0041】
本発明による投与又は送達方法では、組成物の投与は、粘膜経路、非経口経路、又は皮膚経路を介して起こることができる。或いは、他の投与経路を使用することができる。
【0042】
本発明による免疫を誘導する方法では、典型的には、免疫応答は、病原性微生物におけるグリコサミノグリカン結合要素を干渉する。
【0043】
或いは、本発明による組成物は、免疫学的寛容性を誘発する方法に使用することができる。免疫学的に活性な物質に対する寛容性を誘発する方法は、微粒子と結合している1つ又は複数の免疫活性な抗原エピトープと、PRRアゴニストの組合せとを含む組成物の免疫学的に有効な量を投与するステップを含み、前記微粒子は、病原体よりも小さい又は同じサイズ範囲にあり、免疫応答は、免疫機能又は免疫回避の調節応答又は下方制御を誘導することを含む。組成物は、脂質含有部分を有する免疫活性な抗原エピトープを中に含むことができる。免疫学的に活性な脂質含有部分は、免疫活性な抗原エピトープとは独立に微粒子に結合することができる。免疫学的に活性な脂質含有部分は、炭水化物成分を有することができる。炭水化物成分は、N−グリコシル化の結果でありうる。免疫活性な抗原エピトープは、アスパラギン、スレオニン及びセリンからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸を含むモチーフを含み、前記モチーフは、Asp−X−Ser又はAsp−X−Thrモチーフであり、ここで、Xは、プロリン以外のいずれかのアミノ酸でありうる。
【0044】
以下の発明は、明細書、添付の特許請求の範囲、及び添付図面を参照することで理解が深まるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
本発明は、免疫学的に活性な組成物、特定の細胞集団に対する分子を標的し、動物モデルにおける応答を誘発する方法、及び対象組成物を生成する方法を説明する。
【0046】
幾つかの疾患又は症状のため、及びワクチンが現在利用不可能であるか又は効果がない病原体から防御するため、より効果的な免疫モジュレーター及び送達賦形剤を作製する必要がある。
【0047】
弱毒化され、死滅され、又は遺伝子組み換えされた病原体を用いる従来型のワクチンは、病原体の分子パターン、及びこれと、免疫系の病原体認識受容体(PRR)との相互作用が決定する免疫応答に限定される。慢性感染を定着することができる成功した病原体は、生体の免疫応答を回避させる分子パターンを有するのに対し、インフルエンザウイルスなどの他の病原体は、自らを維持するため、ウイルス取り込みの増加をもたらす抗体の産生など、結果として回避を生じる変異(抗原不連続変異及び連続変異)を用いる。
【0048】
一般に、病原体特異的抗体は、幾つかの方法で感染制御に重要な役割を果たす。しかし、幾つかの例では、特異的抗原の存在は、病原体にとって有益となりうる。この活性は、感染の抗体依存性感染増強現象(ADE)として知られる。感染のADEは、病原体特異的抗体が、病原体の、Fc受容体との相互作用を介した単球/マクロファージ及び顆粒球細胞への侵入(時として、ウイルスなどの病原体の複製)を増強する現象である。この現象は、公衆衛生及び動物衛生において重要な、多数の科及び属を代表する病原体について、インビトロ及びインビボで報告されている。M.ガリセプティカムなどのこれらの病原体は、マクロファージにおける選択的複製、持続を確立する能力、及び抗原多様性など、幾つかの共通する特徴を共有する。
【0049】
幾つかの病原体では、感染のADEは、ワクチン接種による疾患制御にとって大きな関心事項となっている。その結果、ADEを最小限化した、又はADEのリスクのないワクチン開発に対する多くのアプローチが行われている。ADE又は中和に関連した病原体エピトープの同定は、この目的にとって重要である。さらに、ADEを介した病原体侵入後の細胞事象を明確に理解することが、効率的な介入法を開発する上で不可欠となっている。しかし、ADEのメカニズムは、依然としてよく理解されていない。したがって、これらの病原体に対する有効なワクチンを開発することは困難である。したがって、本発明者らは、重要な細胞接着機構の干渉により防御免疫に重要であるモチーフを同定し、回避のない防御免疫を誘導するため、製剤から除外する必要のあるモチーフを同定した。本発明者らは、回避又は寛容性を誘導するモチーフも同定した。
【0050】
本発明者らは、特定の細胞に対する免疫学的に活性な分子を、天然アガロースなどの多糖類からなる担体で標的し、その結果、先天性及び適応免疫応答、並びに感染からの防御の両方を免疫調節する可能性を調べた。本発明は、他の受容体も同様に他の粒子により標的することができる他の適用において、使用できることは明らかである。アガロースは、天然の多糖類であり、生分解性の、哺乳類細胞に適合することが証明されたD−ガラクトースポリマーであるという利点を有する。非経口投与されたアガロース微粒子は、弱いマクロファージ活性能、及び水酸化アルミニウムと同等のアジュバント特性を示すことが見出されている(Gronlund H.ら、「炭水化物ベースの粒子:アレルゲン特異的免疫療法のための新規アジュバント(Carbohydrate−based particles:a new adjuvant for allergen−specific immunotherapy)」、Immunology 2002年107、523〜529頁)。
【0051】
エンドユーザーの観点から、ワクチン製品は、冷蔵貯蔵を必要とせず、さらに有効期限が長いことが重要である。アガロース粒子は、これらの要件を満足することができる。また、ワクチン又は薬剤送達賦形剤の投与は、できるだけ簡単であることが重要である。これが、ニードルフリーの、粘膜的に、特に経口的に投与可能な組成物が、非経口投与に比べて有利な理由である。しかし、経口適用は、消化系の作用による安定性の問題を抱えている。
【0052】
本発明者らは、多孔性アガロースマトリックスと結合した抗原は、GI管内の分解から保護されることができると考えた。リガンド及び粒子の間の結合は、同じ抗原プロセシング細胞が、アジュバント及び抗原を取り込むのを確実にする。また、アガロース微粒子のサイズ(<5μm)は、粒子をパイエル板(PP)に到達させるのに適したものにすることができる。
【0053】
アジュバントとしての非メチル化CpG DNA、Poly I:C又はMALP−2の有効性は、病原体関連分子パターン(PAMP)モチーフが、抗原と共固定化された場合、免疫学的に活性な組成物の粘膜表面における取り込みを、適切なPAMP受容体を発現するさまざまなAPCにより、標的にするであろうことを示唆する。
【0054】
さまざまなDCサブセット及びその他の免疫成分細胞は、異なるパターン認識受容体を有する。リガンドの組合せにより、細胞の適切なサブセットの標的化を実現することができる。
【0055】
したがって、本発明者らは、Toll様受容体(TLR)、レクチン受容体又はNOD受容体アゴニストなどの受容体アゴニスト(PAMP受容体)分子は、生物活性分子と共に担体に共固定化されるべきであると考えた。本発明者らは、免疫学的に活性な組成物の接着特性、標的化及び取り込みは、免疫系が、デザインされた「合成微生物」に曝露されるため改善されることができ、これにより、こうした免疫モジュレーターの、標的化された取り込み及び有効性は大幅に高まり、目的に合った免疫応答を得ることができると考えた。目的に合った標的化は、薬物動態を改善し、このようなデザインされた免疫モジュレーターが引き起こす可能性のある副作用を減少することもできるであろう。
【0056】
Toll様受容体(TLR)及びNOD、レクチン受容体等は、微生物由来分子に対する病原体パターン認識受容体である。これらは、先天性及び適応免疫系の一次センサーである。10種類のTLR(TLR1〜10)が、現在同定されている。各々は、1つ又は複数の特異的リガンドを認識し、シグナル伝達を行う。新たに発見された受容体及び受容体相互作用は、細菌産物による細胞活性化に関与することが定期的に見出されている。これら受容体間の連携は、リガンド識別及び反応特異性を精緻化する役目を果たすようになるという証拠が集まっている。脂質ラフトにおける受容体のクラスタリングも、リガンド結合後に見出されている。こうした研究は、骨髄分化の一次応答遺伝子88(MyD88)依存性及び非依存性経路も明らかにした。
【0057】
各TLRは、細胞外ロイシンリッチ領域、及びToll/IL−1Rホモロジー(TIR)ドメインと呼ばれる保護領域を含有する細胞内タンパク質を有し、活性化されると、MyD88依存型のシグナル伝達においてMyD88タンパク質の動員をもたらす、タイプI膜貫通受容体である。一部の微生物病原体は、例えば、細胞内グラム陽性菌ペプチドグリカン検出の場合のように、TLR、NOD−1及びNOD−2のロイシンリッチ領域により、形質細胞に直接取り込まれ、活性を発揮することもできる。しかし、これらのさまざまな経路は、NF−кβの核転座及び炎症遺伝子の活性化及び異なるサイトカインの産生に収斂するように思われる。TLR7、8及び9のライゲーションは、IFN−α及びIL−12p70をもたらし、交差提示/CTLにより強力なTh1応答を誘発する。TLR3の活性化は、IFN−α及びTh1応答をもたらす一方、TLR5は、IL−12p70を介してTh1を誘導し、TLR4は、IL−12p70及びIFN−α産生を介してTh1を誘導し、全てが交差提示/CTLに至る。しかし、TLR1、2及び6のライゲーションは、高いIL−10レベルにより弱いIL−12p70応答を誘導し、DC−SIGNなど、幾つかの他のPRR(病原体認識受容体)と共にTh0/Th2/TReg応答をもたらす。
【0058】
TLR−4は、この受容体ファミリーのうち、最も幅広く研究されている。TLR−4が、グラム陰性菌由来の多糖類及びグラム陽性菌由来のリポテイコ酸を認識するのに対し、TLR−2は、細菌のリポタンパク質/リポペプチド、マイコバクテリア又はマイコプラズマの成分を結合することが知られている。
【0059】
Lps2変異は、TLR−3及びTLR−4 MyD88依存性経路におけるTIR耐性アダプタータンパク質(TIRAP)の役割を同定した。TIRAPは、TLR−2及びTLR−4の下流における別の細胞内プレーヤーであることが発見されている。MyD88依存性経路は、DCのLPS媒介性成熟の制御に関与することも示された。TLR−1及びTLR−6は、TLR−2受容体を伴うヘテロダイマーの他の部分として機能することが知られている。
【0060】
TLR−3は、ウイルス二本鎖RNAを認識する。TLR−5は、グラム陰性及び陽性菌由来のフラジェリンの受容体として同定され、MyD88を介してシグナル伝達された。TLR−7は、一本鎖RNA、並びにイミキモド、R−848、ブロピリミン及びロキソリビンなどの小さな合成免疫修飾物質に応答する。TLR−9は、非メチル化細菌DNAを検出することが知られている。CpG DNAオリゴヌクレオチドは、ワクチン開発のため、アジュバントとしての作用能及びヒト樹状細胞の刺激能が現在調べられている。
【0061】
TLR−4、TLR−7及びTLR−9は、ワクチン開発に関して特に重要である。ヒトTLR−8は、最近、一本鎖RNA及びレシキモド(R−848)の受容体として同定された。TLR−7、TLR8及びTLR−9は、最近、リガンドがエンドソーム/リソソーム区画において認識される、TLR受容体ファミリーのサブグループと考えられることが提案されている。
【0062】
C型(カルシウム依存性)レクチン受容体(CLR)も発現されており、これらは、ウイルス、細菌及びその他の病原体の表面糖タンパク質において多く見られる保存オリゴ糖に結合する。DCにより発現されるCLRには、マンノース受容体(CD206)、DEC−205(CD205)、ランゲリン(CD207)及びDC特異的細胞間接着分子3−グラビングノンインテグリン(DC−specific intercellular adhesion molecule 3−grabbing nonintegrin)(DC−SIGN;CD209)がある。これらの受容体は、DC及び他の組織のさまざまなサブセットにおいて発現が異なるだけでなく、異なるオリゴ糖も認識するため、異なるリガンド間を識別する。
【0063】
DC−SIGNは、HIV、エボラウイルス、CMV、デングウイルス、C型肝炎ウイルスなどの幾つかのウイルス、及びマイコバクテリアなどの細菌を結合し、インターナライズする、44kDaのタイプII膜貫通タンパク質であるが、他の受容体も関与している。他の病原体も、DC−SIGNと相互作用することができる。これは、ICAM−3を介した天然T細胞の相互作用を媒介する上でも、及びDC特異的ICAM−2依存性移動プロセスを媒介するローリング受容体としても、DCの機能においてきわめて重要である。
【0064】
TLR及び他の免疫認識受容体の間の連携は、これまでに説明されている。この一例は、デクチン−1及びTLR2による炎症反応の協同決定である。酵母細胞壁などの複雑な粒子は、TLR2〜TLR6、デクチン−1及びCD14を含む複数の先天性免疫受容体により認識される。TLR2〜TLR6へテロダイマーは、NF−кB並びにケモカイン及びTNF−αなどのサイトカインの産生を活性化する。デクチン−1は、細胞壁のα−グルカンを認識し、食作用を引き起こすほか、NADPH−オキシダーゼによる反応性酸素産生を活性化する。さらに、デクチン−1シグナリングは、TLR2〜TLR6シグナリングと合わさって、IL−12などの特定のサイトカイン産生を増強する。
【0065】
TLR受容体間の、及び他の受容体との連携、並びに細胞内分子下流機構間の相互作用のため、リポテイコ酸、CpG DNA及びペプチドグリカンなどの微生物病原体化合物間の相乗効果を観察することは、驚くにはあたらず、TLRアクチベーターのアジュバントとしての効果は、免疫モジュレーターの開発に併用される場合、増幅されることができることを示唆している。
【0066】
適切なPRR(病原体認識受容体)リガンドの、生物活性分子による共固定化は、免疫応答の標的調節を可能にすることができ、強力な細胞性応答(比較的強力なTh1の影響下)及び/又は体液性応答(Th2の影響下)をもたらすことになる。或いは、異なる組成物で免疫された場合は、免疫寛容性が得られる。
【0067】
強力な細胞性応答は、確立された体液性免疫又は寛容性の存在下でも誘導されることは可能であろう。このように、本発明者らは、非感染及び感染宿主のいずれにおいても、効率的な免疫モジュレーターの開発を期待することができる。このような結果は、ワクチン接種の使用を大いに高めるであろう。
【0068】
本発明者らは、鶏をマイコプラズマに曝露する前にワクチン接種した場合、マイコプラズマ・ガリセプティカム感染株に対して著しい防御が得られる鶏モデル系を確立した。さらに、特徴的な病理学的症状の好転も、感染前動物において観察されたことは、こうしたワクチンが感染した群れの治療に有効であることを示唆している。微生物のさまざまな株の抗生物質耐性が広まっていること、並びに抗生物質の家畜への予防的使用を認めることに対する一般市民及び規制当局の関心が高まっていることから、これは重要である。さらに、本発明者らは、この方法で防御反応を誘発するには、1羽あたりごく少量の抗原(10μg)しか必要とせず、抗原を組み込んだ微粒子を用いる、文献に記載された100μg超とは対照的であることを見出した(Brayden,D.2001年、European Journal of Pharmaceutical Sciences 14:183〜189頁)。これは、免疫モジュレーター分子が、鶏の腸を移動中も分解されず、標的化された粘膜免疫細胞へ効果的な形で送達されることを示唆する。これは、既存の免疫学的に活性な組成物に比べ著しい改善である。
【0069】
しかし、抗原投与量の増加に伴い、防御効果の低下が観察されたことは、免疫親和性精製抗原の中に、免疫抑制成分が存在することを示唆する。DC−SIGNは、病原体の回避機構に関与している。DC−SIGNは、脂質分子を含有する高マンノースに特異的なC型レクチンである。マイコプラズマ膜は、高率の脂質からなり、さまざまなマイコプラズマは、コンカナバリンA親和性樹脂を結合することが示されている。このことは、マイコプラズマ表面におけるマンノースの存在を示唆する。本発明者らは、末端マンノース部分を含有する精製タンパク質における転写後リポマンナン修飾を含む、転写後N−グリコシル化分子を含む免疫学的回避に関与する分子が、この作用を媒介している可能性があると仮定した。次いで、酵素分解又は化学分解による末端マンノースの除去が行われた。さらに、末端マンノシル化リポタンパク質が、マンノース特異的固定化レクチン−コンカナバリンA(ConA)カラムに吸着された。
【0070】
ConAカラムは、精製抗原成分の約三分の一を保持し、この抗原により調製されたワクチンは、抗原濃度の上昇に伴い、最も高い防御効果及び線形の用量反応を示した。一方、ConAカラムから回収された抗原は、鶏において炎症反応の抑制を引き起こしたが、鶏の内臓には、きわめて高レベルの病原体の存在が認められた。これらM.ガリセプティカムのマンノシル化成分は、病原体の回避機構に関与し、結果的に免疫抑制及び病原体に対する寛容性の発現をもたらすと考えられる。本発明者らは、適正な抗原特性は、免疫応答を防御又は寛容性のどちらかへシフトさせるのを促すことができることも実証した。これは、本発明者らの仮説を裏付け、リポマンナン転写後修飾は、宿主における病原体寛容性を誘導することができるという、マイコプラズマ固定化膜で行われた観察も裏付けるものである。この理解は今や、寛容性の誘導可能性、又は既存の免疫応答の抑制可能性という特性を付与された免疫調節微粒子を調製するのに使用することができる。抗原の転写後脂質修飾も、病原体に対する寛容性の発現に役割を果たす。したがって、本発明者らは、有効であることが証明された精製抗原の脱アシル化も試み、マイコプラズマの病理学的機構における脂質の役割を確認した。
【0071】
これらの実験から得られた主な結論は、天然タンパク質の分析から得られたエピトープワクチンは、防御免疫を実現しようとする場合、グリコシル化及び/又はリポイル化を受けることができるアミノ酸(Asn、Thr、Ser)に富むエピトープを含有すべきではないが、これらのアミノ酸モチーフを組み込んだリガンドは、寛容性の誘導に使用されうる、というものである。このことは、本発明による組成物及び方法に多様な使い方をもたらす。
【0072】
これに続く研究では、本発明者らは、防御に関与する抗原エピトープを同定するため、ワクチン接種され防御された動物由来の血液及び血清を使用した。このように、本発明者らは、大規模なマイコプラズマの生産及び抗原タンパク質の精製は、多くの適用で多大な費用が発生しうるため、エピトープベースのワクチンの科学的根拠を構築することに集中した。先の研究では、本発明者らは、さまざまなマイコプラズマが、ヘパリン及びヘパリンアナログと結合することができることを明らかにした(Szathmary,S.ら「マイコプラズマの固相吸着剤との結合(Binding of mycoplasmas to solid phase adsorbents)」、Acta Vet Hung、2005年、53(3):299〜307頁)。グリコサミノグリカン(GAG)は、哺乳類細胞表面で発現され、病原体表面のグリコサミノグリカン結合タンパク質は、標的細胞への接着を媒介する(Wadstrom T、Ljungh A「組織接着及び侵入におけるグリコサミノグリカン結合微生物タンパク質:微生物病原性の重要事象(Glycosaminoglycan−binding microbial proteins in tissue adhesion and invasion:key events in microbial pathogenicity)」、J Med Microbiol、1999年、48(3):223〜233頁)。ある領域の大部分が塩基性アミノ酸であることを特徴とする、幾つかのタイプのコンセンサス配列が報告されている:XBBXBX、XBBBXXBX、BBXXBBBXXBB、BBBXXB、BXBXB、BBB、BXBXXXBXB、又はBXBXXXXXBXB。ここで、Bは、塩基性アミノ酸であり、Xは、いずれか他のアミノ酸である。これに対する別の見方は、直鎖塩基モチーフが、病原体機構に関与しているというものである。これらの配列は、病原体による粘膜侵入機構の最初のステップとして恐らく機能する付着にとって不可欠である。したがって、この能力の中和は、感染を防止し、場合によっては、多様な病原微生物に対する広域スペクトル療法の開発を可能にすることができる。この可能性は、ワクチン開発の基盤として以前には認識されてこなかった。本発明者らは、GAG結合ドメインに隣接する又は立体的に近接する抗原エピトープは、中和している可能性があり、こうした結合部位が、場合によっては、中和エピトープ内に組み込まれる可能性をもたらすと考えた。
【0073】
したがって、本発明者らは、Heparin Actigel樹脂(Sterogene Bioseparations,Inc.、カールスバッド、CA)における親和性クロマトグラフィーにより、M.ガリセプティカム由来のヘパリン結合タンパク質の単離を進めた。続いて、本発明者らは、M.ガリセプティカムに対するワクチンを接種した鶏から得られた中和血清から、IgGを精製した。精製IgGは、活性化樹脂のActigel ALD(Sterogene Bioseparations,Inc.、カールスバッド、CA)に固定化され、単離されたヘパリン結合タンパク質は、カラムに吸着された。結合タンパク質は、トリプシンをカラムに添加して分解され、ヘパリン結合配列を含む免疫原性エピトープを含有するペプチド断片は、配列情報を得るため、溶出され、MALDI−MSにより分析された。このようなエピトープに対するこのような抗原エピトープ又はモノクローナル抗体により精製されたIgGは、インビボで投与された場合、感染宿主に防御免疫を与えることもできる。或いは、キモトリプシン、エラスターゼ、ブロメライン、V−8プロテアーゼ、ペプシン、及びサーモリシンなど、当技術分野で既知の他のタンパク質分解酵素を、トリプシンの代わりに使用することができる。
【0074】
平行実験では、本発明者らは、分離されたヘパリン結合タンパク質を、Heparin Actigelに再吸着し、結合タンパク質の同様のトリプシン消化を行った。樹脂から回収されたフラグメントも、MALDI−MSで配列情報が分析された。
【0075】
補体系を利用する、オプソニン食作用に関与するエピトープの同定も重要である。具体的には、補体結合抗体は、固定化されたC1qカラムにおいて、ワクチン接種された鶏血清から精製され、こうした抗体は、こうした応答を誘導することができるエピトープの同定に使用される。精製IgGは、続いて固定化され、MG粗溶解物からタンパク質抗原を得るのに使用される。結合したタンパク質は、カラムにおいてプロテアーゼにより消化され、エピトープ配列が溶出され、配列情報を得るためMALDI−MSで分析された。このような抗原エピトープ、又はこのようなエピトープに対するモノクローナル抗体を用いて精製されたIgGは、インビボで投与された場合、感染宿主に防御免疫も与えることができる。
【0076】
現行の幾つかの微生物ベースのワクチンに関する重要な問題は、免疫刺激エピトープ及び免疫抑制エピトープと、病原体自体に存在するPRRアゴニストの混合物(このうち幾つかは、Th1、幾つかのTh2又はTreg応答を誘導する)との同時投与である。これらのワクチンは、宿主におけるさまざまな病原菌の持続を克服せず、これを臨床疾患のない「病原体工場」に変えることができる。このアプローチは、病原体に選択圧を加えることすらでき、より病原性の強い株の発生をもたらすことができる。反対に、本発明者らの戦略は、免疫応答からの病原体の回避に関与するエピトープ及び/又はPRRアゴニストを除外する一方、適切な免疫応答特異的PRRアゴニスト分子と共に、まさに免疫刺激エピトープを含有する、人工的な「病原体模倣」微粒子の作製であった。同定されたエピトープは、スプライシング配列、又は特定の抗原エピトープペプチド間のリンカーを提示する単一のマルチペプチドに結合することもできる。このアプローチにより、持続性病原体が引き起こす間違った免疫応答は克服され、細胞性及び体液性応答のバランスの取れた混合が生まれ、病原菌の根絶につながる。回避エピトープ又はPRRアゴニストは、望ましくない自己免疫応答を無効にするのに必要な場合、寛容性の発現に利用することができる。
【0077】
典型的には、生物学的活性分子は、免疫刺激剤、免疫阻害剤、又は免疫学的寛容性を誘導する物質といった、免疫機能を調節する免疫原又は別の分子などの免疫系により、活性となる。
【0078】
生物活性分子は、微粒子と非共有結合又は共有結合することができる。共有結合の方法は、当技術分野で周知であり、例えば、P.Tijssen、「酵素イムノアッセイの実践と理論(Practice and Theory of Enzyme Immunoassays)」(Elsevier、アムステルダム、1985年、pp.283〜289頁、S.S.Wong、「タンパク質結合と架橋結合の化学(Chemistry of Protein Conjugation and Crosslinking)」(CRC Press、ボカラトン、フロリダ、1993年)、T.E.Creighton(編)、「タンパク質機能:実践的アプローチ(Protein Function:A Practical Approach)」(IRL Press、オックスフォード、1989年)、G.T.Hermanson、「バイオコンジュゲート法(Bioconjugate Techniques)」(Academic Press、サンディエゴ、1996年)に記載されている。これらはみな、参照により本明細書に組み込まれている。典型的には、微粒子がアガロースの場合、生物活性分子は、アガロースのヒドロキシル基に付着する。一般に、多糖類のヒドロキシル残基は、続く求核置換に適した離脱基を含有する媒介反応性誘導体を形成する、特定の化合物により活性化することができる。アミン(例えば、タンパク質又はペプチドにおけるリシン基)などの求核試薬により活性化されたこれらのヒドロキシル基反応は、生物活性分子をアガロースに架橋する、安定な共有結合をもたらす。適切な試薬には、カルボニルジイミダゾール、クロロギ酸誘導体、塩化トレシル、塩化トシル、臭化シアン、ジビニルスルホン、塩化シアヌル、及びビスエポキシドがある。或いは、アガロースなどの炭水化物のヒドロキシル基は、クロロ酢酸で修飾してカルボン酸官能基を生成することができる。別の代替としては、アミン官能基は、多糖類において生成することができる。すなわち、炭水化物分子又は生成したアルデヒドの還元末端は、低鎖長(すなわち、典型的には、鎖中に約6炭素原子未満)のジアミン化合物と反応させて、続く抱合反応に使用することができる、短いアルキルアミンスペーサーを産生することができる。ヒドラジド基は、ビス−ヒドラジド化合物により同様に生成することができる。その結果得られる官能基は、次いで、さまざまな反応により生物活性分子と結合させることができる。例えば、カルボキシル基が生成される場合、これらは、次いで混合酸無水物法、ジシクロヘキシルカルボジイミドを用いるカルボジイミド法、及びN−ヒドロキシスクシンイミドエステル法により、タンパク質又はペプチドに結合させることができる。脂肪族アミンは、カルボジイミド、トリレン−2,4−ジイソシアナート、若しくはマレミド(malemide)化合物、特に、マレミド誘導体のN−ヒドロキシスクシンイミドエステルを含め、さまざまな方法でタンパク質又はペプチドに結合することができる。このような化合物の例は、4−(N−マレイミドメチル)−シクロヘキサン−1−カルボン酸である。別の例は、m−マレイミドメンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステルである。使用することのできるさらに別の試薬は、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオン酸塩である。また、ジメチルピメリミデート、ジメチルアジピミデート、又はジメチルスベリミデートなどの二官能性エステルも、アミノ基含有部分をタンパク質と結合させることができる。ペプチド、タンパク質、及び炭水化物、並びに他の化合物を含む化合物の、固相担体に対する他の共有結合方法は、当技術分野で周知である。非共有結合の方法は、相互作用を安定化することができる水素結合、疎水結合、及び塩結合など、複数の非共有結合性相互作用に左右される。
【0079】
典型的には、生物活性分子は、1つ又は複数のペプチド、タンパク質、組換えペプチド、組換えタンパク質、脂質、炭水化物、核酸、糖タンパク質、又は糖脂質である。これらの組合せも、複数の生物活性分子が同じ微粒子と結合されるように使用することができる。
【0080】
免疫活性分子がペプチド又はタンパク質の場合、免疫調節性転写後修飾を受けることができる。典型的には、これらは、糖及び/又は脂質部分を含む。例は、末端マンノシル化である。しかし、他の糖残基も、タンパク質又はペプチドに付加することができる。或いは、免疫活性分子は、免疫活性分子製剤が、実質的に末端マンノシル化分子において著減するような方法で分離することができる。この著減は、過ヨウ素酸塩などの酸化工程、典型的には加水分解酵素による酵素処理、又は糖特異的親和性結合、及び続く著減断片の精製により行うことができる。末端マンノシル化残基の他の著減方法も、当技術分野で周知である。
【0081】
同様に、免疫活性分子は、免疫活性分子製剤が、実質的に免疫調節性転写後修飾部分を含有する脂質において著減するような方法で分離することができる。これは、化学的加水分解により、又はペンタデカン酸による共沈により行うことができる。或いは、免疫調節性転写後修飾部分を含有する脂質は、荷電界面活性剤により遮断することができる。特に適した界面活性剤は、セチルトリメチルアンモニウムクロライドである。類似の第4級アンモニウム界面活性剤も、代わりに使用することができる。
【0082】
場合により存在する標的分子は、典型的には病原体パターン認識分子である。1つの代替では、病原体パターン認識分子は、TLR1受容体アゴニスト、TLR2受容体アゴニスト、TLR3受容体アゴニスト、TLR4受容体アゴニスト、TLR5受容体アゴニスト、TLR6受容体アゴニスト、TLR7受容体アゴニスト、TLR8受容体アゴニスト、TLR9受容体アゴニストなどのTLR受容体アゴニストである。別の代替では、病原体パターン認識分子は、NOD−1アゴニスト又はNOD−2アゴニストNODタンパク質アゴニストである。典型的には、NODタンパク質アゴニストは、細菌のペプチドグリカン又は細菌のペプチドグリカン誘導体である。
【0083】
免疫活性分子などの1つを超える生物活性分子、及び1つを超える病原体パターン認識分子は、存在する場合、組成物に組み込むことができ、安定に微粒子と結合していることができる。
【0084】
本発明の別の態様は、上述した組成物の免疫学的に有効な量を対象に投与して、対象における免疫応答を誘発する方法である。典型的には、組成物には、病原体パターン認識分子などの標的分子も含まれる。1つを超える免疫活性分子及び1つを超える病原体パターン認識分子を、組成物に組み込むことができる。
【0085】
本発明のなお別の態様は、上述した組成物の有効な量を、活性した免疫系を有する生物に投与することを含む、免疫学的に活性な組成物のインビボ送達の方法である。この場合もやはり、1つを超える免疫活性分子及び1つを超える病原体パターン認識分子を、組成物に組み込むことができる。免疫学的に活性な組成物のインビボでの送達は、粘膜表面、非経口経路、皮膚経路、又は皮下経路を介することができる。他の投与経路も使用することができる。
【0086】
本発明のいっそう別の態様は、上述の通り、微粒子と安定に結合している、1つ又は複数の免疫学的に活性な分子(すなわち、免疫原)及びTLR受容体アゴニストの組合せとを含む組成物の免疫学的に有効な量を対象に投与して、対象における病原体に対する防御免疫応答を誘発することを含む、少なくとも1つの病原体に対する防御免疫を誘発する方法である。防御免疫応答は、Th1若しくはTh2応答又はTh1及びTh2応答の両方の組合せを含む。投与は、単回又は複数回により行うことができる。
【0087】
本発明のなお別の態様は、微粒子と安定に結合している1つ又は複数の免疫学的に活性な分子(すなわち、免疫原)並びにTLR受容体アゴニスト及びNODタンパク質アゴニストの組合せとを含む組成物の免疫学的に有効な量を対象に投与して、対象における免疫学的に活性な物質に対する寛容性を誘発することを含む、免疫学的に活性な物質に対する寛容性を誘発する方法である。免疫学的に活性な分子は、免疫学的に活性な分子の残りの部分とは独立に微粒子に付着することができる、脂質含有部分を有することができる。或いは、免疫学的に活性な脂質含有部分は、さらに炭水化物基を含むことができる。
【0088】
本発明による組成物の毒性及び治療効果は、例えば、LD50(集団の50%に対する致死量)及びED50(集団の50%に治療効果のある量)を決定するための、標準的な薬学的手順により細胞培養物又は実験動物において判定することができる。毒性及び治療効果間の用量比が、治療指標であり、LD50/ED50の比で表すことができる。大きな治療指標を示す化合物が好ましい。これらの細胞培養アッセイ及び動物試験から得られたデータは、ヒト又は他の動物で使用するさまざまな投与量を作成するのに使用することができる。このような組成物の投与量は、好ましくは、毒性の少ない、又は毒性のないED50を含む血中濃度の範囲内にある。投与量は、使用される投与形態、及び使用される投与経路に応じてこの範囲内で変わることができる。
【0089】
本発明による任意の組成物では、治療有効量は、細胞培養アッセイから最初に予測することができる。例えば、用量は、細胞培養で判定したIC50を含む血中血漿濃度範囲(すなわち、免疫系パラメータを測定する際、組成物の効果に関し半分の最大反応を実現する試験組成物の濃度)を得るために、動物モデルで作成することができる。こうした情報は、ヒトにおける有用な投与量をより正確に決定するのに使用することができる。血漿レベルは、例えば、HPLCにより測定することができる。
【0090】
正確な製剤、投与経路及び投与量は、個々の医師により患者の状態を考慮して選択されることができる。(例えば、Finglら、「治療の薬理学的基礎(The Pharmacological Basis of Therapeutics)」、1975年、第1章、1頁参照)。注意すべきは、担当医が、毒性又は臓器障害のため、どのように、いつ、投与を終了、中断、又は調節するかを知ろうとすることである。反対に、担当医は、臨床反応が適切でない場合、治療を高レベルまで調節する(毒性を除外しつつ)ことも知るであろう。目的とする障害管理における投与量の大きさは、治療する症状の重篤度及び投与経路により変わるであろう。症状の重篤度は、例えば、一部には、標準的な予後評価方法により評価することができる。さらに、用量及び恐らく投与頻度も、年齢、体重、及び個々の患者の反応により変わるであろう。上述したものと匹敵するプログラムは、獣医薬において使用することができる。
【0091】
本発明の実践のため本明細書に記載された組成物を、全身投与に適した投与量で調製するための、薬学的に許容可能な担体の使用は、本発明の範囲内である。適正な担体の選択及び適当な製造実践により、本発明の組成物、特に、溶液として調製されたものは、静脈注射など、非経口投与することができる。組成物は、当技術分野でよく知られた薬学的に許容可能な担体を用いて、粘膜又は皮下投与に適した投与量に容易に調製することができる。
【0092】
本発明は、以下の実施例により説明される。これらの実施例は、説明目的のためだけに含まれるものであり、本発明を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0093】
(実施例1)
微粒子の選択
1〜10μm範囲のアガロース微粒子は、Sterogene Bioseparations,Inc.(カールスバッド、CA)により生成され、Saturn DigiSizer 5200(Micromeritis Instrument Corp)により試験された。図1に示されたデータは、粒子分布が、75%は5μm未満、24%は5〜10μm、1%は10μm超であることを示している。
【0094】
(実施例2)
マイコプラズマ・ガリセプティカム(MG)の培養
マイコプラズマ成長培地0.1mlに、M.ガリセプティカム(K781R−16P)の凍結乾燥形態を添加し、37℃のインキュベーターの培地1.5mLに入れた。マイコプラズマの増殖を、色の変化(ピンクからオレンジ又は黄色)により、又は寒天プレートにプレーティングしコロニーをチェックしてモニターした。大量(10〜15L)のマイコプラズマ培養物は、感染培養物を新鮮培地に移して成長させた。続いて、培養物を5500rpmで30分間遠心分離した。上清のOD280が0.2未満になるまで、PBSによりペレットの洗浄を行った(5500rpmで20分間)。ペレットを、20mLのPBSで再懸濁した。
【0095】
(実施例3)
MG抗原精製のための免疫親和性カラムの製造
ステップ1:
抗M.ガリセプティカム鶏血清64mlに、脱イオン(DI)水128mLをガラスビーカー中で添加した。溶液のpHを、氷酢酸で4.5に調節した。溶液を、急速に攪拌したが、飛沫又は発泡しないように注意した。CAP−8沈殿溶液(Sterogene Bioseparations,Inc.、カールスバッド、CA)を、10分間勢いよく振盪した。続いて、CAP−8沈殿溶液64mlを計り分け、1〜2分間の攪拌により形成されたボルテックスの側壁にゆっくり添加した。次いで、攪拌速度を、溶液を動かすだけの速さまで落とした。溶液を室温で30分間攪拌し、次いで、適当な大きさにした遠心チューブに移し、沈殿物を5500rpmで15分間遠沈した。上清を容器にデカントし、ペレットを20mMの酢酸ナトリウム20mL、pH4.8バッファで1回洗浄した。上清を、0.22μmシリンジフィルターで濾過した。
【0096】
ステップ2:
SP Thruput Plusカチオン交換樹脂(Sterogene Bioseparations,Inc.、カールスバッド、CA)を、3ベッドボリュームの1M NaOHで10分間懸濁し、次いで、DI水で中性になるまで洗浄した。続いて、10ベッドボリュームの0.5M 酢酸ナトリウム、pH4.8で洗浄し、次いで、20ベッドボリュームのDI水で洗浄した。樹脂を、15ベッドボリュームの20mM 酢酸ナトリウム、pH4.8と平衡化し、20mM 酢酸、pH4.8パッキングバッファを用いてカラムに充填した。ステップ1の上清を、3mL/分の流速でカラムに充填し、カラムを20mM 酢酸ナトリウム、pH4.8バッファで洗浄した。フロースルー及び洗浄液を合わせた。20mM 酢酸ナトリウム、pH4.8に対するOD280を測定した。カラムを50mM リン酸ナトリウム、300mM NaCl、pH8.0バッファ、及び測定したOD280溶離剤で溶出した。
【0097】
ステップ3:
Actigel ALD活性化樹脂(Sterogene Bioseparations,Inc.、カールスバッド、CA)20mlに、精製した抗M.ガリセプティカム鶏IgG溶液を10mg/mLで添加し、続いて10.5mLの1M シアノ水素化ホウ素ナトリウム(ALD Coupling Solution、Sterogene Bioseparations,Inc.、カールスバッド、CA)を添加した。懸濁液を、20時間、2〜8℃で静かに混合し、続いてDI水で大規模洗浄した。樹脂をPBS中に、pH7.0、2〜8℃で貯蔵した。
【0098】
(実施例4)
MG抗原の精製
ステップ1:
洗浄したMG濃縮物20mlに、0.2gのMega−10界面活性剤を添加し、20時間室温で混合した。20時間のインキュベーション後、懸濁液に1mLのTriton−X100も添加し、室温でさらに1時間混合を続けた。続いて、5,000rpmで10分間遠沈した。上清をペレットから分離し、200mlのPBS、pH7.2を上清に添加した。MGタンパク質溶液は、2〜8℃で5日間保管した。
【0099】
ステップ2:
20mLベッドボリュームの抗MG鶏IgG−Actigelカラムを、5ベッドボリュームのPBS、pH7.2で流速3mL/分にて平衡化した。MGタンパク質溶液を、カラムに8〜15mL/分で充填した。フロースルーを別のボトルに回収した。カラムを、10ベッドボリュームのPBS、pH7.2で流速8〜15mL/分にて洗浄し、次いで、20〜40mLの0.1M クエン酸、pH2.5で同じ流速にて溶出した。溶出液のpHは、2MのTrisで直ちに7.2に調整した。全抗原を吸着するため、この精製を、カラムのフロースルーにより少なくとも5回繰り返した。全溶出液を合わせて、粉糖により透析バッグで一晩、2〜8℃で濃縮した。濃縮液を、5LのPBS、pH7.2に対して2〜8℃で一晩透析した。ブラッドフォードタンパク質分析を行い、血清アルブミンを基準として精製抗原の濃度を判定した。
【0100】
(実施例5)
活性化アガロース微粒子
粒子を2つの異なる方法で活性化した。第一の活性化方法は、Sterogene Bioseparations,Inc.(カールスバッド、CA)により、きわめて安定したリガンド結合を提供する市販の専用アルデヒドリンケージケミストリー(aldehyde linkage chemistry)を用いて行われた。この化学反応の別の利点は、固定化の再現性の高さにある。この専用アルデヒドケミストリーは、さまざまなリガンドの連続固定化を可能にする。
【0101】
別の活性化は、臭化シアン(CNBr)活性化方法を用いて行った。簡単には、アガロース微粒子30mLに、30mLの2M 炭酸ナトリウム溶液を添加し、氷槽で3〜5分間、混合せずに保管した。次いで、1.5gのCNBrを秤量し、9mLのアセトニトリルで溶解した。直ぐに、CNBr溶液を樹脂混合物に添加し、氷槽で2分間勢いよく混合した。続いて、4,500rpm、2℃で5分間遠沈して、20ベッドボリュームの氷水で洗浄した。
【0102】
(実施例6)
MG抗原と微粒子のカップリング
カップリング反応は、精製抗原のアミノ基及び微粒子のアルデヒド基又はCNBr活性化基の間で起こる。アルデヒド活性化粒子を用いる場合、カップリングは、実施例3で記載したカップリング試薬、シアノ水素化ホウ素ナトリウムにより媒介された。抗原を、10μg/0.2mL及び50μg/0.2mL微粒子の濃度で固定化した。
【0103】
別のカップリング反応では、CNBr活性化微粒子を、同じ抗原濃度で以下のように使用した。15mLのCNBr活性化微粒子に、精製MG抗原溶液をpH8.0で添加した。溶液を2〜8℃で20時間、静かに混合した。上清を遠心分離により分離し、樹脂を10ベッドボリュームのDI水で洗浄した。
結合樹脂は、LAL水中で2〜8℃にて貯蔵した。ブラッドフォードタンパク質分析を用いて上清の非結合タンパク質を測定した。
【0104】
(実施例7)
マイコプラズマ膜の調製及びカップリング
濃縮マイコプラズマ抗原3.0mLに、80mLの加圧滅菌DI水を添加し、攪拌棒で37℃にて1時間混合した。溶液を、5000rpmで30分間遠心分離し、ペレットを、加圧滅菌水で2回洗浄した。ペレットを、10mLのPBSでもどした。1.5mLのCNBr活性化微粒子に、0.1M NaHCO、pH8で1:3に希釈した0.5mLの精製ペレットを添加した。溶液を、2〜8℃で20時間、静かに混合した。上清を遠心分離により分離し、樹脂を10ベッドボリュームのDI水で洗浄した。結合樹脂は、LAL水中で2〜8℃にて貯蔵した。ブラッドフォードタンパク質分析を用いて上清の非結合タンパク質を測定した。
【0105】
(実施例8)
NOD1受容体活性剤と微粒子のカップリング
2μg/0.2mL樹脂におけるペプチドグリカン(PG)を、0.1M NaHCO中で溶解し、実施例6により調製したCNBr活性化微粒子に添加した。2〜8℃で一晩反応するままにした。上清は、遠心分離により分離し、樹脂は、貯蔵培地でもあるLAL用水で完全に洗浄した。
【0106】
(実施例9)
TLR3活性剤と微粒子のカップリング
10μg/0.2mLビーズにおけるPoly I:Cを、実施例6により、0.1M NaHCO中でpH8にてCNBr活性化微粒子に固定化した。2〜8℃で一晩反応するままにした。上清は、遠心分離により分離し、樹脂は、貯蔵培地でもあるLAL用水で完全に洗浄した。
【0107】
(実施例10)
TLR4活性剤と微粒子のカップリング
2μg/0.2mL樹脂における細菌のリポ多糖類を、0.1M NaHCO中でpH8にて溶解し、実施例6によりCNBr活性化微粒子に固定化した。2〜8℃で一晩反応するままにした。上清は、遠心分離により分離し、樹脂は、貯蔵培地でもあるLAL用水で完全に洗浄した。
【0108】
(実施例11)
TLR5活性剤と微粒子のカップリング
2μg/0.2mL樹脂におけるフラジェリンを、0.1M NaHCO中でpH8にて溶解し、実施例6によりCNBr活性化微粒子に固定化した。2〜8℃で一晩反応するままにした。上清は、遠心分離により分離し、樹脂は、貯蔵培地でもあるLAL用水で完全に洗浄した。
【0109】
(実施例12)
TLR1及びTLR6活性剤と微粒子のカップリング
2μg/0.2mL樹脂におけるマイコプラズマMALP−2含有表面抗原を、0.1M NaHCO中でpH8にて溶解し、実施例6によりCNBr活性化微粒子に固定化した。2〜8℃で一晩反応するままにした。上清は、遠心分離により分離し、樹脂は、貯蔵培地でもあるLAL用水で完全に洗浄した。
【0110】
(実施例13)
TLR7/TLR8活性剤と微粒子のカップリング
2μg/0.2mL樹脂における一本鎖RNA又は抗ウイルス性イミダゾキノリンイミキモド(Aldara)を、0.1M NaHCO中でpH8にて溶解し、実施例6によりCNBr活性化微粒子に固定化した。2〜8℃で一晩反応するままにした。上清は、遠心分離により分離し、樹脂は、貯蔵培地でもあるLAL用水で完全に洗浄した。
【0111】
(実施例14)
TLR9活性剤と微粒子のカップリング
10μg/0.2mL樹脂におけるCpG DNAを、0.1M NaHCO中でpH8にて溶解し、実施例6によるCNBr活性化微粒子に固定化した。2〜8℃で一晩反応するままにした。上清は、遠心分離により分離し、樹脂は、貯蔵培地でもあるLAL用水で完全に洗浄した。
【0112】
(実施例15)
組合せPAMP認識受容体アゴニスト分子組成物の微粒子への固定化
NOD1アゴニスト並びにTLRアゴニスト4及び9を、それぞれ2μg/0.2mL樹脂、10μg/0.2mL樹脂及び2μg/0.2mL樹脂において、0.1M NaHCO中でpH8にて混合し、実施例6によるCNBr活性化微粒子に固定化した。2〜8℃で一晩反応するままにした。上清は、遠心分離により分離し、樹脂はLAL用水で完全に洗浄し、同じLAL用水に2〜8℃で貯蔵した。
【0113】
(実施例16)
組合せPAMP認識受容体アゴニスト分子組成物を伴うMG抗原の微粒子への固定化
MG抗原を、実施例6に記載の条件下で1時間結合させた。続いて、実施例13に記載のTLRアゴニスト混合物を添加し、2〜8℃で一晩反応が進むままにした。上清は、遠心分離により分離し、樹脂は、貯蔵培地でもあるLAL用水で完全に洗浄した。
【0114】
(実施例17)
動物試験I
結果は、3つの実験の平均である。
【0115】
3日齢のヒヨコ(M.ガリセプティカム(MG)及びM.シノビエ(M.Synoviae)(MS)が認められず、ELISAでMG及びMS母性抗体が検出されない)を、ワクチン接種した。各群を鶏10羽とした。実験14日目に、鶏をM.ガリセプティカムRlow株に曝露した。試験は、28日目に終了した。
【0116】
各群は、以下のように設定した。
G1〜G5 曝露前に微粒子ワクチン組成物により治療
G1=微粒子(0.2mL/鶏)による経口治療のみ、及び曝露
G2=M.ガリセプティカム親和性精製抗原(10μg/投与)を伴う微粒子(0.2mL/鶏)による経口治療、及び曝露
G3=受容体アゴニスト(10μg細菌DNA(大腸菌(E.coli))+2μg大腸菌LPS及び2μgペプチドグリカン/投与)を伴う微粒子(0.2mL/鶏)による経口治療、及び曝露
G4=M.ガリセプティカム親和性精製抗原(10μg/投与)及び受容体アゴニスト(10μg細菌DNA(大腸菌(E.coli))+2μg大腸菌LPS及び2μgペプチドグリカン/投与)を伴う微粒子(0.2mL/鶏)による経口治療、並びに曝露
G5=M.ガリセプティカム膜(10/投与)を伴う微粒子(0.2mL/鶏)による経口治療
G6〜G7 曝露後に微粒子ワクチン組成物により治療
G6=曝露、並びにM.ガリセプティカム親和性精製抗原(10μg/投与)及び受容体アゴニスト(10μg細菌DNA(大腸菌(E.coli))+2μg大腸菌LPS及び2μgペプチドグリカン/投与)を伴う微粒子(0.2mL/鶏)による曝露後の経口治療
G7=曝露、及び受容体アゴニスト(10μg細菌DNA(大腸菌(E.coli))+2μg大腸菌LPS及び2μgペプチドグリカン/投与)を伴う微粒子(0.2mL/鶏)による曝露後の経口治療
G8及びG9 陽性及び陰性対照群
G8=曝露及び未治療
G9=非曝露及び未治療
【0117】
タイムライン
1日目:群G1〜G9を設定。実験鶏が、母性抗体陰性であること、並びにM.ガリセプティカム及びM.シノビエの有無を確認するため、ELISAアッセイ、PCR、並びにM.ガリセプティカム及びM.シノビエの培養用に、鶏10羽を屠殺した。
【0118】
0日目:曝露前にG1〜G5をワクチン接種
【0119】
14日目:群G1〜G8の曝露
【0120】
15日目:曝露後に群G6〜G7をワクチン接種
【0121】
28日目:G1〜G9。特定の臓器(気管、気嚢及び肺)からM.ガリセプティカム(MG)を分離するための安楽死、剖検、及びプレーティング。気管及び肺の組織学的実験を行った。
【0122】
14日目及び28日目:血清平板凝集(SPA)試験及びブロッキングELISAによりMG特異的抗体を試験するための血清を得るため、鶏を採血した。
【0123】
1日目、合計90羽の、1日齢のブロイラー種鶏を、8群の1つに割り当てた(10羽/群)。鶏の個体の体重を記録した。鶏は、各群の平均体重が著しく違わないように割り付けた。各鶏は、治療に応じて色付け及び番号付けしたウィングタグで識別し、然るべき形で体重を記録した。
【0124】
治療
0日目、G1〜G5の鶏を、異なるワクチン組成物(0.2mL/1mL PBS/鶏)で治療した。用量は上記に記載されている。G6〜G7を、曝露後15日目に治療した。
【0125】
曝露
14日目、8群の鶏G1〜G8を、約8.0 log10 CFU/mlのウイルス価で、M.ガリセプティカム毒性R株の新鮮ブロス培養物により曝露した。この新鮮ブロス培養物10mlを、スプレー法でこれらの群それぞれに投与した。簡単には、鶏を0.22立方メートルの隔離ユニットに入れた。次いで、10mlの新鮮なM.ガリセプティカムR株培養物を、1気圧下、約100秒間スプレーし、鶏を20分間曝露した。(実験室では、この方法により幾つかの実験で好成績が得られた)。
【0126】
安楽死及び病変
28日目、実験研究の最後に、全群を安楽死させた。各鶏を剖検し、MGに関連した肉眼病変を採点した。気管、左右の胸気嚢及び腹膜における浸出液の有無を記録した。病変は、以下の方式により採点した。
気管:0=浸出液なし、1=わずかな発赤及び少量の浸出液、2=粘膜の発赤、浸出液
左右の気嚢:0=病変なし、1=漿液性浸出液、2=フィブリン小片を伴う漿液性浸出液、3=漿液性、線維性浸出液、わずかに肥厚した気嚢、4=多量の線維性浸出液、きわめて肥厚した気嚢壁
腹膜:0=浸出液なし、1=漿液性浸出液、2=フィブリン小片を伴う漿液性浸出液、3=漿液性−線維性浸出液
【0127】
MG分離
剖検実験の間、気管、胸気嚢、肝臓、肺、脾臓、腎臓及び心臓を綿棒で無菌採取した。綿棒からの物質を、次いでマイコプラズマ寒天(MA)にプレーティングし、5%COインキュベーターで37℃にてインキュベートした。2、4、及び7日目に、次いで、1週間間隔で最大3週間、プレートのマイコプラズマを観察した。陽性コロニーをPCRで試験し、M.ガリセプティカム及びM.シノビエを同定した。
【0128】
剖検
MG曝露に、重大な病変を気嚢及び腹膜に認めた。しかし、粒子プラス受容体アゴニスト(G3、G6 p<0.001)、粒子プラス精製抗原(G2、p<0.001)及び精製抗原プラス受容体アゴニスト(G4、G6 p<0.001)で治療した群では、対照(G8)未治療、曝露群及び粒子のみによる治療群(G1)に比べて、病変スコアの大幅な低下が記録された。しかし、粒子プラス精製抗原又は粒子プラス精製抗原プラス受容体アゴニストでは、これらが曝露前に投与された場合、曝露後投与に比べて好成績が得られた。G5を、粒子に固定化したM.ガリセプティカム膜で治療した場合、幾つかのケースの病変は、曝露群自体より顕著であった。このことから、M.ガリセプティカム膜によるワクチン接種は、病原体による曝露に対する適切な免疫応答を妨げ、免疫抑制を引き起こし、より著明な感染をもたらすという結論に至る。
【0129】
マイコプラズマの再分離
マイコプラズマは、非ワクチン接種の、感染した対照鶏の内臓から再分離されることができる。非ワクチン接種対照群(G8、p<0.01)及び粒子のみによる治療群(G1、p<0.001〜0.01)又は粒子プラス受容体アゴニスト治療群(G3、G7 p<0.05)と比べて、再分離率(呼吸器+内臓からの)の著しい低下が、受容体アゴニストの有無にかかわらず、粒子プラス精製抗原治療群(G2、G4、G6)で認められた。しかし、粒子プラス受容体アゴニスト治療群(G3、G6)及び対照群(G8)の間には、再分離率の著しい低下(p<0.05)があった。実験群の呼吸管(気管、肺、気嚢)又は他の内臓(肝臓、脾臓、腎臓及び心臓)からのマイコプラズマの再分離率を比較した場合、類似する結果が得られた。G5を、粒子に固定化したM.ガリセプティカム膜で治療した場合、幾つかのケースで臓器からのM.ガリセプティカムの再分離率は、曝露群自体よりも高かった。このことから、M.ガリセプティカム膜によるワクチン接種は、病原体による曝露に対する適切な免疫応答を妨げ、免疫抑制を引き起こし、より著明な感染をもたらすという結論に至る。
【0130】
結果を表1に示す。
【表1】

【0131】
血清学的結果
各群の血清学的応答は、実験の最後に違いが見られた。非治療の、曝露群(G8)の応答は、粒子のみによる治療群(G1)と違わなかった。同時に、粒子のみによる治療群(G1)に比べ、有意に強い応答が、粒子プラス精製抗原及びPRRアゴニスト治療群(G4)で見られた(p<0.05)。粒子プラス精製抗原治療群(G2)に比べ、PRRを加えた場合(G4、G6)、有意に高い血清学的応答が見られた(p<0.05)。抗原及びPRRを伴う粒子を曝露前(G4)又は曝露後(G6)に使用した場合、血清学的結果の間に有意差は見られなかった。
【0132】
考察
M.ガリセプティカムは、気管、気嚢及び肺のコロニー形成を伴う著しい炎症を、気嚢及び腹膜で引き起こすことができる。マイコプラズマも、内臓からしばしば検出されうる。本発明者らは、異なるPRRアゴニスト分子と共に共有結合で固定化された免疫親和性精製抗原を有する、微生物のサイズ範囲(<5μm)の微粒子からなる、新しいタイプの「病原体模倣」免疫学的活性組成物を開発した。
【0133】
本発明者らの結果は、いかなる修飾も施さない粒子は、いかなる免疫応答も刺激しないことを示した。粒子単独では、M.ガリセプティカムによって引き起こされた腹膜炎及び気嚢炎から鶏を防御することも、マイコプラズマによる臓器のコロニー形成を防止することもなかった。
【0134】
粒子を、抗原を伴わないPRRアゴニストで被膜した場合、マイコプラズマ曝露に対する血清学的応答が影響されることはなかった。しかし、マイコプラズマによる臓器のコロニー形成は減少し、病変スコアは低下した。これは、PRRアゴニストは、防御の増加をもたらす先天性免疫応答を刺激又は増大するという、本発明者らのインビトロでの観察を裏付けるものである。しかし、適用された免疫モジュレーターの量は、病原性の高い株による大量の曝露から鶏を十分に守ることができなかった。このことは、先天性免疫系についても知られているが、これは、先天性免疫系が一般に、大量の病原体を克服するには不十分なためである。しかし、データは、この新規な免疫モジュレーターは、鶏を少量の曝露から守る可能性があることを示している。
【0135】
精製抗原を、PRRアゴニストで被膜した粒子に添加した場合、マイコプラズマ特異的な血清学的応答を高めることができる。臓器のコロニー形成は、著しく減少し、病変スコアは低かった。この効果は、ワクチンを粘膜的に、及び曝露前に導入した場合、より顕著であったが、類似の好ましい効果は、ワクチンを曝露後に粘膜投与した場合も見られた。
【0136】
興味深い観察は、抗原濃度の上昇(最大50μg/投与)は、実際にワクチンの防御効果を低下させる点であった。このことは、親和性精製抗原における免疫抑制成分の存在を示唆する。こうした成分を同定し、これらの影響を排除するため、新たな動物試験をデザインした(以下参照)。
【0137】
ワクチン接種後、曝露前に、ワクチン接種した鶏を毎日調べて、ワクチンの安全性を評価した。鶏は、臨床的に健康であることがわかり、ワクチンの副作用は示されなかった。鶏の飼料及び水の消費量は、非ワクチン接種群と比べて変わりなかった。試験の過程で剖検した鶏は、炎症徴候又は臓器サイズ/重量の変化が見られなかった。ワクチンは、安全であると思われる。
【0138】
(実施例18)
親和性精製MG抗原を、先の実施例に記載されたように調製した。精製抗原を、固定化前に以下の処理のため3群に分けた。
【0139】
1.エンドグリコシダーゼH分解
抗原53.6ml(約1.5mg)に、2.5単位の酵素を添加し、37℃で一晩インキュベートした。翌日、混合物を、冷却し固定化したマンナンカラム(5mL)に通過させ、フロースルーを回収した。この試料をEndoH抗原と命名した。
【0140】
2.過ヨウ素酸塩処理
抗原53.6mL(約1.5mg)に、固体過ヨウ素酸ナトリウムを最終濃度が15mMになるまで添加し、混合後1時間冷却した。2倍モル過剰でグリセリンを添加し、試料をさらに1時間インキュベートした。PBSに対し透析を一晩行った。透析した試料を過ヨウ素酸塩(PJ)抗原と命名した。
【0141】
3.ConA結合抗原の除去
精製抗原(53.6mL中約1.5mg)を、2mL固定化ConAカラムに通過させた。フロースルーを回収した。この試料をConAフロースルーと命名した。結合抗原を、50mM TRIS、pH9.5中で1M アルファ−メチルマンノグルコシドにより溶出した。この試料をConA溶出と命名した。
【0142】
抗原処理
抗原の特性を表2に示す。
【表2】


EndoH処理では、処理した抗原の初期量は、2.51mgであった。(この製剤53.6ml、及び0.0246mg/mlの先のM.ガリセプティカム製剤40.3ml)
【0143】
(実施例19)
動物試験II
結果は、3つの実験の平均である。3日齢のヒヨコ(M.ガリセプティカム(MG)及びM.シノビエ(M.Synoviae)(MS)が認められず、ELISAでMG及びMS母性抗体が検出されない)を、ワクチン接種した。各群を鶏10羽とした。実験14日目に、鶏をM.ガリセプティカムRlow株に曝露した。試験は、28日目に終了した。
各群は、以下のように設定した。
G1=非曝露及び未治療
G2=曝露及び未治療
曝露前2週間に治療
G3=M.ガリセプティカム親和性精製抗原(10μg/投与)及びTLRアゴニスト(10μg細菌DNA(大腸菌)+2μg大腸菌LPS及び2μgペプチドグリカン/投与)を伴う微粒子(0.2mL/鶏)による経口治療、並びに曝露
G4=M.ガリセプティカム親和性精製抗原(50μg/投与)及びTLRアゴニスト(10μg細菌DNA(大腸菌)+2μg大腸菌LPS及び2μgペプチドグリカン/投与)を伴う微粒子(0.2mL/鶏)による経口治療、並びに曝露
G5=M.ガリセプティカム親和性精製ConA吸着抗原(10μg)を伴う微粒子(0.2mL/鶏)による経口治療、及び曝露
G6=M.ガリセプティカム親和性精製EndoH分解抗原(10μg)を伴う微粒子(0.2mL/鶏)による経口治療、及び曝露
G7=M.ガリセプティカム親和性精製過ヨウ素酸塩酸化抗原(10μg)を伴う微粒子(0.2mL/鶏)による経口治療、及び曝露
G8=M.ガリセプティカム親和性精製ConA吸着抗原(10μg)+TLRアゴニスト(10μg細菌DNA(大腸菌)+2μg大腸菌LPS及び2μgペプチドグリカン/投与)を伴う微粒子(0.2mL/鶏)による経口治療、及び曝露
G9=M.ガリセプティカム親和性精製ConA吸着抗原(50μg)+TLRアゴニスト(10μg細菌DNA(大腸菌)+2μg大腸菌LPS及び2μgペプチドグリカン/投与)を伴う微粒子(0.2mL/鶏)による経口治療、及び曝露
G10=M.ガリセプティカム親和性精製EndoH分解抗原(10μg)+TLRアゴニスト(10μg細菌DNA(大腸菌)+2μg大腸菌LPS及び2μgペプチドグリカン/投与)を伴う微粒子(0.2mL/鶏)による経口治療、及び曝露
G11=M.ガリセプティカム親和性精製EndoH分解抗原(50μg)+TLRアゴニスト(10μg細菌DNA(大腸菌)+2μg大腸菌LPS及び2μgペプチドグリカン/投与)を伴う微粒子(0.2mL/鶏)による経口治療、及び曝露
G12=M.ガリセプティカム親和性精製過ヨウ素酸塩酸化抗原(10μg)+TLRアゴニスト(10μg細菌DNA(大腸菌)+2μg大腸菌LPS及び2μgペプチドグリカン/投与)を伴う微粒子(0.2mL/鶏)による経口治療、及び曝露
G13=M.ガリセプティカム親和性精製過ヨウ素酸塩酸化抗原(50μg)+TLRアゴニスト(10μg細菌DNA(大腸菌)+2μg大腸菌LPS及び2μgペプチドグリカン/投与)を伴う微粒子(0.2mL/鶏)による経口治療、及び曝露
G14=M.ガリセプティカム親和性精製EndoH分解抗原(10μg)+TLRアゴニスト(10μg細菌DNA(大腸菌)+2μg大腸菌LPS及び2μgペプチドグリカン/投与)を伴う微粒子(0.2mL/鶏)プラスアミノグアニジン(腹腔内)による7日間の経口治療、及び曝露
G15=ビーズ上のM.ガリセプティカム抗原ConA溶出を伴う微粒子(0.2mL/鶏)による経口治療、及び曝露
【0144】
タイムライン
1日目:群G1〜G15を設定。実験鶏が、母性抗体陰性であること、及びマイコプラズマの有無を確認するため、ELISAアッセイ、PCR、並びにM.ガリセプティカム及びM.シノビエの培養用に、鶏10羽を屠殺した。
【0145】
0日目:曝露前にG3〜G14をワクチン接種
14日目:群G2〜G15の曝露
【0146】
28日目:G1〜G15。特定の臓器(気管、気嚢及び肺)からM.ガリセプティカム(MG)を分離するための安楽死、剖検、及びプレーティング。気管及び肺の組織学的実験を行った。
【0147】
14日目及び28日目:血清平板凝集(SPA)試験及びブロッキングELISAによりMG特異的抗体を試験するための血清を得るため、鶏を採血した。
【0148】
1日目、合計150羽の、1日齢のブロイラー種鶏を、15群の1つに割り当てた(10羽/群)。鶏の個体の体重を記録した。鶏は、各群の平均体重が著しく違わないように割り付けた。各鶏は、治療に応じて色付け及び番号付けしたウィングタグで識別し、然るべき形で体重を記録した。
【0149】
曝露
14日目、14群の鶏G2〜G15を、約8.0 log10 CFU/mlのウイルス価で、M.ガリセプティカム毒性R株の新鮮ブロス培養物により曝露した。この新鮮ブロス培養物10mlを、スプレー法でこれらの群それぞれに投与した。簡単には、鶏を0.22立方メートルの隔離ユニットに入れた。次いで、10mlの新鮮なM.ガリセプティカムR株培養物を、1気圧下、約100秒間スプレーし、鶏を20分間曝露した。(実験室では、この方法により幾つかの実験で好成績が得られた)。
【0150】
安楽死及び病変
28日目、実験研究の最後に、全群を安楽死させた。各鶏を剖検し、MGに関連した肉眼病変を採点した。気管、左右の胸気嚢及び腹膜における浸出液の有無を記録した。病変は、以下の方式により採点した。
気管:0=浸出液なし、1=わずかな発赤及び少量の浸出液、2=粘膜の発赤、浸出液
左右の気嚢:0=病変なし、1=漿液性浸出液、2=フィブリン小片を伴う漿液性浸出液、3=漿液性、線維性浸出液、わずかに肥厚した気嚢壁、4=多量の線維性浸出液、きわめて肥厚した気嚢壁
腹膜:0=浸出液なし、1=漿液性浸出液、2=フィブリン小片を伴う漿液性浸出液、3=漿液性−線維性浸出液
【0151】
結果
結果を表3に示す。
【表3】

【0152】
MG分離
剖検実験の間、気管、胸気嚢、肝臓、肺、脾臓、腎臓及び心臓を綿棒で無菌採取した。綿棒からの物質を、次いでマイコプラズマ寒天(MA)にプレーティングし、5%COインキュベーターで37℃にてインキュベートした。2、4、及び7日目に、次いで、1週間間隔で最大3週間、プレートのマイコプラズマを観察した。陽性コロニーをPCRで試験し、M.ガリセプティカム及びM.シノビエを同定した。
【0153】
剖検及び再分離
MG曝露後に、重大な病変を気嚢及び腹膜に認めた。しかし、精製抗原プラスTLRでワクチン接種した群(このうち最も良好な群は、ConAカラム著減抗原(G9)であった)は、対照未治療、曝露群に比べて、病変スコア及び再分離率の大幅な低下が記録された。しかし、ConA溶出抗原画分G15では、病変スコアは高く、再分離率は陽性対照群と同じであった。このことから、このM.ガリセプティカム抗原画分によるワクチン接種は、病原体による曝露に対する適切な免疫応答を妨げ、免疫抑制を引き起こし、より著明な感染をもたらすという結論に至る。
【0154】
考察
これらの実験の結果は、免疫抑制抗原の親和性精製抗原プールからの除去が、ワクチン組成物の防御効果を著しく改善したことを示している。さらに、抗原における転写後修飾を含有する糖の化学修飾又は酵素分解もまた、防御免疫の改善をもたらした。
【0155】
反対に、本発明者らは、分離した、微粒子に結合した免疫抑制抗原の投与は、免疫抑制及び、病原体に対する寛容性の発現をもたらすことも見出した。こうして、本発明者らは、適正な抗原特性は、免疫応答を防御又は寛容性のどちらかへシフトさせることができることを実証した。これらは両方とも、免疫応答を調節する合理的な方法を開発する上で重要な意味を持つ。続いて、本発明者らは、免疫応答の発現に関与する別の抗原表面決定基を標的にすることにした。
【0156】
(実施例20)
親和性精製MG抗原を、先の実施例に記載されたように調製した。精製抗原を、固定化前に以下の処理のため3群に分けた。
【0157】
1.MG抗原脱アシル化
抗原27mL(約0.65mg)に、8mLの1M NaOH及び10mgのペンタデカン酸を添加し、溶液を、70℃で45分間静かに攪拌した。次いで、pHを8.0に調節し、沈殿物を、3,000rmpで5分間、遠心分離により除去した。この試料を脱アシル化抗原と命名した。
【0158】
2.過ヨウ素酸塩処理
これは、実施例18よりストリンジェントな反応を意図したものである。抗原25mL(約0.6mg)に、固体過ヨウ素酸ナトリウムを最終濃度が80mMになるまで添加し、混合後2.5時間、室温で保管した。次いで、2倍のモルアクセス(molar access)でグリセリンを添加し、試料をさらに1時間インキュベートした。PBSに対し透析を一晩行った。透析した試料を過ヨウ素酸塩抗原と命名した。
【0159】
(実施例21)
動物試験III
結果は、3つの実験の平均である。3日齢のヒヨコ(M.ガリセプティカム(MG)及びM.シノビエ(M.Synoviae)(MS)が認められず、ELISAでMG及びMS母性抗体が検出されない)を、ワクチン接種した。各群を鶏10羽とした。実験14日目に、鶏をM.ガリセプティカムRlow株に曝露した。試験は、28日目に終了した。
【0160】
各群は、以下のように設定した。
G1=非曝露及び未治療
G2=曝露及び未治療
曝露前2週間に治療:
G3=M.ガリセプティカム親和性精製、ConA吸着抗原(10μg/投与)+TLRアゴニスト(10μg細菌DNA(大腸菌)+2μg大腸菌LPS及び2μgペプチドグリカン/投与)を伴う微粒子(0.2mL/鶏)による経口治療、及び曝露
G4=M.ガリセプティカム親和性精製、脱アシル化抗原(10μg/投与)+TLRアゴニスト(10μg細菌DNA(大腸菌)+2μg大腸菌LPS及び2μgペプチドグリカン/投与)を伴う微粒子(0.2mL/鶏)による経口治療、及び曝露
G5=M.ガリセプティカム親和性精製、ConA吸着抗原(10μg)+TLRアゴニスト(25μg poly I:C+10μg細菌DNA+2μgペプチドグリカン/投与)を伴う微粒子(0.2mL/鶏)による経口治療、及び曝露
G6=M.ガリセプティカム親和性精製、過ヨウ素酸塩処理された脱アシル化抗原(10μg)+TLRアゴニスト(10μg poly I:C+10μg細菌DNA、及び2μgペプチドグリカン/投与)を伴う微粒子(0.2mL/鶏)による経口治療、及び曝露
曝露後1日目に治療:
G7=M.ガリセプティカム親和性精製ConA吸着抗原(10μg)+TLRアゴニスト(25μg poly I:C+10μg細菌DNA、及び2μgペプチドグリカン/投与)を伴う微粒子(0.2mL/鶏)による経口治療
G8=M.ガリセプティカム親和性精製、過ヨウ素酸塩処理された脱アシル化抗原(10μg)+TLRアゴニスト(25μg poly I:C+10μg細菌DNA、及び2μgペプチドグリカン/投与)を伴う微粒子(0.2mL/鶏)による経口治療、及び曝露
【0161】
タイムライン
1日目:群G1〜G9を設定。実験鶏が、母性抗体陰性であること、及びマイコプラズマの有無を確認するため、ELISAアッセイ、PCR、並びにM.ガリセプティカム及びM.シノビエの培養用に、鶏10羽を屠殺した。
【0162】
0日目:曝露前にG3〜G6をワクチン接種
【0163】
14日目:群G2〜G9の曝露
【0164】
15日目:曝露後に群G7〜G9をワクチン接種
【0165】
28日目:G1〜G9。特定の臓器(気管、気嚢及び肺)からM.ガリセプティカム(MG)を分離するための安楽死、剖検、及びプレーティング。気管及び肺の組織学的実験を行った。
【0166】
14日目及び28日目:血清平板凝集(SPA)試験及びブロッキングELISAによりMG特異的抗体を試験するための血清を得るため、鶏を採血した。
【0167】
1日目、合計90羽の、1日齢のブロイラー種鶏を、9群の1つに割り当てた(10羽/群)。鶏の個体の体重を記録した。鶏は、各群の平均体重が著しく違わないように割り付けた。各鶏は、治療に応じて色付け及び番号付けしたウィングタグで識別し、然るべき形で体重を記録した。
【0168】
曝露
14日目、9群の鶏G2〜G9を、約8.0 log10 CFU/mlのウイルス価で、M.ガリセプティカム毒性R株の新鮮ブロス培養物により曝露した。この新鮮ブロス培養物10mlを、スプレー法でこれらの群それぞれに投与した。簡単には、鶏を0.22立方メートルの隔離ユニットに入れた。次いで、10mlの新鮮なM.ガリセプティカムR株培養物を、1気圧下、約100秒間スプレーし、鶏を20分間曝露した。
【0169】
安楽死及び病変
28日目、実験研究の最後に、全群を安楽死させた。各鶏を剖検し、MGに関連した肉眼病変を採点した。気管、左右の胸気嚢及び腹膜における浸出液の有無を記録した。病変は、以下の方式により採点した。
気管:0=浸出液なし、1=わずかな発赤及び少量の浸出液、2=粘膜の発赤、浸出液
左右の気嚢:0=病変なし、1=漿液性浸出液、2=フィブリン小片を伴う漿液性浸出液、3=漿液性、線維性浸出液、わずかに肥厚した気嚢壁、4=多量の線維性浸出液、きわめて肥厚した気嚢壁
腹膜:0=浸出液なし、1=漿液性浸出液、2=フィブリン小片を伴う漿液性浸出液、3=漿液性−線維性浸出液
【0170】
結果
結果を表4に示す。
【表4】

【0171】
MG分離
剖検実験の間、気管、胸気嚢、肝臓、肺、脾臓、腎臓及び心臓を綿棒で無菌採取した。綿棒からの物質を、次いでマイコプラズマ寒天(MA)にプレーティングし、5%COインキュベーターで37℃にてインキュベートした。2、4、及び7日目に、次いで、1週間間隔で最大3週間、プレートのマイコプラズマを観察した。陽性コロニーをPCRで試験し、M.ガリセプティカム及びM.シノビエを同定した。
【0172】
剖検及び再分離
MG曝露後に、重大な病変を気嚢及び腹膜に認めた。しかし、処理された精製抗原プラスTLR群でワクチン接種した群で、病変スコア及び再分離率の大幅な低下が記録され、全群は同程度の結果であり、対照未治療曝露群に比べ、脱アシル化抗原(G4)が最も良かった。感染後にワクチン接種した群では、ConA処理抗原プラスTLR3、4、9が最も良い結果をもたらした。感染後であっても、この組成物により防御免疫を得ることは可能であるように思われる。
【0173】
考察
これらの実験の結果は、免疫抑制回避抗原又は抗原決定基の親和性精製抗原プールからの除去又は遮断が、ワクチン組成物の防御効果を著しく改善したことを示している。さらに、抗原における転写後修飾(N−グリコシル化)を含有する糖の除去及び化学修飾もまた、防御免疫の改善をもたらした。さらに、抗原の脂質部分が、化学的に除去され、又は遮断されたことも、著しい免疫防御効果につながった。
【0174】
本発明者らは、適正な抗原修飾により、免疫応答を防御へシフトさせることができることを再び実証した。これは、免疫応答を調節する合理的なアプローチを開発する上で、きわめて重要な意味を持つ。続いて、本発明者らは、個々の免疫応答を組織培養で再現するインビトロ系を設定した。こうした系は、免疫学的に活性な組成物により生じた免疫応答に関する予測値を有することができ、故に製品開発サイクルを短縮することができる。
【0175】
(実施例22)
インビトロ試験
TNF−α分泌を、末梢血から調製したPBMCで測定し、ペプチドグリカン(PepG)(Sigma、セントルイス、MI)、細菌CpG DNA(KM Biomedicals、オーロラ、OH;リムルス変形細胞溶解物アッセイ(Limulus Amoebocyte lysate assay)で測定したLPS<0.2EU/ml)、又は両方により処理した。TNF−αを、5時間のインキュベーション後、培養上清からELISAにより測定した。
【0176】
先天性免疫系の代表である、単球の組織因子(TF)を、TNF−α分析に使用される、対応するPMBC培養物から評価した。TFは、TF ELISA(Imubindキット、American Diagnostica、グリニッチ、CT)向けにメーカーにより推奨されたTriton−X100で接着細胞から抽出した。
【0177】
結果を図2に示す(P及びDに続く数字はそれぞれ、PepG及びbactDNAの濃度(μg/ml)をそれぞれ示している。左から右に、これらはP3+D15,P3+D5、P3+D1.5、P1+D15、P1+D5、P1+D1.5、P0.3+D15、P0.3+D5,及びP0.3+D1.5)。PepG(白いバー)、又は細菌のCpG DNA(黒いバー)、又は単独で添加した場合と同じ濃度で両者を同時に添加(斜線バー)して処理した後の、PBMC(A)及び組織因子(B)により分泌されたTNF−α。P及びDに続く数字はそれぞれ、PepG及びbactDNAの濃度(μg/ml)をそれぞれ示している。試験した全濃度で、PepG(3又は1.5μg/mL)及びCpG DNAの単独での効果の合計を比較した場合、並びにPepG及びbactDNAを共に添加した場合、TNF−α及びTFのp<0.05;スチューデントT検定(n=4)。これは、3つのうちの代表的な実験である。
【0178】
本結果は、PBMCにおけるPepG及びbactDNAによるTNF−α及びTFの同時誘導、並びに2つの分子間の相乗効果を示している。これには、共通の下流シグナル伝達経路に対する直接的影響、又はPepG及びbactDNAの作用後に分泌される化合物が媒介する間接的影響が関与していると考えられる。TNF−αは、発熱物質に対する宿主反応の重要な初期メディエーターであり、敗血性ショックの代謝、血液動態、組織及びサイトカインカスケード反応の全領域を誘因することが可能な、唯一の内因性メディエーターである。bactDNA及びPepGの相乗効果は、敗血症の病原体に影響する。ここでは、各分子は、インビボでの濃度は低いものの、先に仮定された通り、互いの効果を増幅するように思われる。
【0179】
さまざまなTh1及びTh2応答の、さまざまな粒子組成物によるインビトロでの誘導の実証
末梢血単核細胞を、健常なボランティアからの末梢血のフィコール分離により調製した。単核細胞を、1.5ml RPMI−1640(Irvine Scientific,Irvine、CA)で10細胞/mlの濃度でプレーティングし、100 U/mlペニシリン/ストレプトマイシン、2mMグルタミン及び3%ウシ胎仔血清を補充し、微粒子0.15mL(滅菌PBS中)と共に18時間インキュベートした。微粒子は、ConAにより露出された(Con A−stripped)又は過ヨウ素酸ナトリウム処理された抗原のほか、以下のグラフに示されたTLRアゴニスト2、3、4及び9を含有した。ビーズの調製は、実施例19に記載されている。
【0180】
結果を、図3(グレーのバー、TNF−αx100、黒いバー、IL−10)及び図4に示す。ここでは、TNF−α/IL−10の比が示されている。
【0181】
TNF−α及びIL−10比の分析は、TLR2、4、8と共固定されたConA著減抗原が、インビボでの結果との相関が見られる、最も顕著なTh1応答をもたらすことを証明した(実施例19参照)。この組成物は、動物におけるマイコプラズマ曝露に対する最も高い防御効果を一貫してもたらした。
【0182】
(実施例23)
免疫モジュレーター微粒子に対する細胞性応答の特徴をさらに明らかにするため、本発明者らは、樹状細胞をこうした微粒子に曝露した。本発明者らは、MHC I及びMHC II分子、並びに共刺激分子CD80及びCD86のアップレギュレーションを観察した。どちらかのPRRアゴニストの組合せが存在することは、処理18時間後の樹状細胞表面におけるMHC IIの増加を測定するのに必要と思われる。細胞表面のMHCの存在は、動的過程であるため、細胞表面のMHC分子の増加を観察するには、ConA Agビーズでは異なるインキュベーション時間が必要となる可能性がある。MHCは、T細胞への抗原提示を可能にし、CD86は、T細胞のCD28と相互作用する。樹状細胞による同時の抗原提示、及びB7共刺激リガンド(CD80及びCD86など)相互作用は、T細胞活性化をもたらす。これらインビトロでのデータは、樹状細胞変異の顕著な特徴であり、先天性及び適応免疫の誘導を必要とする変化を、微粒子が誘導することを示している。
【0183】
樹状細胞表面におけるMHC I及びMHC II並びにCD80及びCD86の発現は、さまざまな微粒子製剤に曝露後18時間目に決定した:抗原又はPRRアゴニストが固定化されなかった対照微粒子(対照)、及び以下のPRRアゴニストの組合せの有無にかかわらず、ConA結合抗原が著減したM.ガリセプティカム抗原が固定化された微粒子(ConA Ag):1)PepG、LPS、細菌DNA(bactDNA)(ConA Ag+PRR2、4、9)又は2)poly I:C、LPS、bactDNA(ConA Ag+PRR3、4、9)。樹状細胞におけるMHC II及びCD86の誘導を、図5に示す。
【0184】
結果は、DCによるTNF−α分泌に与える微粒子の影響を示している。対照微粒子は、馴化培地におけるTNF−αの検出可能な分泌を誘導しなかった。微粒子の他の3つのタイプ(ConA結合抗原著減後のM.ガリセプティカム抗原、及びPepGに共固定化された類似の抗原、LPS、bactDNA及びpoly I:C)は、対照微粒子に比べてDCによる多量のTNF−αを誘導した。興味深いことに、免疫モジュレーターとしての細菌化合物の存在は、抗原単独に比べてTNF−αの発生は低かった。これらの結果は、微粒子がDCと相互作用しており、TLR及びNOD受容体を活性化して、免疫系細胞におけるこれらの分子の既知の効果に応じて生理反応を発生することができることを示している。本発明者らは、微粒子がDCを標的にすることができることを実証した。
【0185】
(実施例24)
ヘパリン結合タンパク質のMGからの精製
M.ガリセプティカムを、実施例2に記載の通りに成長させ、濃縮し洗浄したマイコプラズマを、実施例4のステップ1に開示の通りに不活化した。簡単には、MG膜粗タンパク質75mLに、0.75Mega−10を添加し、溶液を室温で20時間混合した。続いて、3.75mlのTriton X−100を溶液に添加し、室温でさらに1時間混合した。溶液を5,000rpmで10分間遠沈し、上清をペレットから分離した。次いで、Trisバッファ75ml(20mM Tris、0.1M NaCl、pH7.2)を上清に添加した。Heparin−Actigelカラムを、5ベッドボリュームのTrisバッファにより流速3ml/分で平衡化した。MGタンパク質溶液をカラムに流速8〜15ml/分で充填し、フロースルーを別のボトルに回収した。カラムを、10ベッドボリュームのTrisバッファにより流速8〜15ml/分で洗浄し、2M NaCl含有Trisバッファにより流速8〜15ml/分で溶出した。カラムを10ベッドボリュームのTrisバッファで洗浄後、MGタンパク質溶液をカラムに再び加え、上述した通りに溶出を繰り返した。溶出物をプールし、3,500MWカットオフ透析チューブ法により、Trisバッファに対し透析した。タンパク質アッセイを行い、溶出したタンパク質濃度を判定した。
【0186】
(実施例25)
中和血清からのIgGの精製及び免疫親和性カラムの製造
ワクチン接種した、中和鶏血清からのIgG大量精製及びActigel ALDへの固定化を実施例3により行った。
【0187】
(実施例26)
免疫親和性カラムに結合したヘパリン結合MGタンパク質のトリプシン消化
精製MGタンパク質2mgを、2mlの免疫親和性カラムに添加し、15分間結合させた。カラムを、10mlのTrisバッファB(50mM Tris、pH7.5、0.1M NaCl)で洗浄した。トリプシン溶液(TrisバッファB中20μg/ml)を添加し、スラリーを37℃で1時間、静かに攪拌した。フラグメント及び遊離酵素をTrisバッファBで洗い流し、結合したペプチドを0.1Mのクエン酸、pH2.5で溶出した。溶出物を続いてcc.NHOHで中和、濃縮し、C−18逆相スピンカラム(Pierce)精製し、ペプチド組成物をMALDI−TOFで分析した。
【0188】
(実施例27)
ヘパリンカラムに結合したヘパリン結合MGタンパク質のトリプシン消化
精製MGタンパク質2mgを、2mlのHeparin Actigelカラムに添加し、1時間結合させた。カラムを、10mlのTrisバッファBで洗浄した。トリプシン溶液(TrisバッファB中20μg/ml)を添加し、スラリーを37℃で1時間、静かに攪拌した。フラグメントをTrisバッファBで洗い流し、結合したペプチドを1MのNaClを含有するTrisバッファBで溶出した。溶出物を濃縮し、C−18逆相スピンカラム(Pierce)で精製し、ペプチド組成物をMALDI−TOFで分析した。
【0189】
(実施例28)
C1qタンパク質の精製及び固定化
C1qの精製を、McKay,EJ「さまざまな動物種由来血漿C1qを精製するための簡単な2段階手順(A simple two−step procedure for the purification of plasma C1q from different animal species)」、Immunol Letters、1981年3:303〜308頁の方法により行った。精製したC1qを、米国特許第5,801,063号に記載された本発明者らの手順の適応により、Aminogel(Sterogene Bioseparations,Inc.、カールスバッド、CA)に3mg/mlで固定化した。
【0190】
(実施例29)
補体結合IgGの精製及び固定化
実施例24により精製されたポリクローナル中和抗体を、固定化C1qの10mlカラムに加え、TrisバッファBで平衡化し、30分間結合させた。非結合抗体を、10ベッドボリュームのTrisバッファBで洗浄して除去し、結合抗体を、1M NaClを含有する同じバッファで溶出した。精製されたIgGを、続いてActigel ALDに3mg/mlで固定化した。
【0191】
(実施例30)
免疫親和性カラムに結合した補体活性化MGタンパク質のトリプシン消化
M.ガリセプティカムを、実施例2に記載の通りに成長させ、濃縮し洗浄したマイコプラズマを、実施例4のステップ1に開示の通りに不活化した。固定化した補体活性化抗体の10mLカラムに、MG溶解物30mlを3ml/分で加えた。カラムを、20ベッドボリュームのTrisバッファBにより流速8ml/分で洗浄し、非特異的吸着タンパク質を除去した。トリプシン溶液(TrisバッファB中20μg/ml)を添加し、スラリーを37℃で1時間、静かに攪拌した。フラグメントをTrisバッファBで洗浄して除去し、結合したペプチドを0.1Mのクエン酸、pH2.5で溶出した。溶出物を続いてcc.NHOHで中和、濃縮し、C−18逆相スピンカラム(Pierce)で精製し、ペプチド組成物をMALDI−TOFで分析した。
【0192】
免疫学的に活性なペプチドの例は、以下の組成を有することが示されている:Lys−Leu−Ala−Leu−Thr−Ser−Glu−Ile−Thr−Glu−Glu−Ile−Tyr−Pro−Ser−Ala−Pro−Lys−Val−Ser−Arg−Lys−Gln−Arg−Gly−Val−His−Gly−Phe−Ser−Glu−Pro−Thr−Ser(SEQ ID NO:1)。重要なことは、このペプチドが、GAG/ヘパリン結合領域Arg−Lys−Gln−Argを含有する点である。別の有用な配列は、Leu−Leu−Ala−Lys−Lys−Thr−Asp−Lys−Ser−Val−Ser−Pro−Gln−Ala−Ser−Leu−Thr(SEQ ID NO:2)である。これらの配列は、エンドプロテイナーゼの切断部位を含有するリンカーペプチドに結合することができる。こうしたリンカー配列の例は、LIKFRSN(Leu−Ile−Lys−Phe−Arg−Ser−Asn)(SEQ ID NO:3)である。他のリンカー配列は、当技術分野で知られている。
【0193】
(実施例31)
抗原ペプチドエピトープ及びマルチエピトープペプチドの合成
抗原ペプチドをFMOC方法により合成した。
【0194】
(実施例32)
ワクチンのための防御抗原ペプチドの確認
抗原ペプチドを、ワクチン接種した鶏の中和血清と混合し、固定化したヘパリンに対する結合阻害を競合ELISAにより判定した。ペプチド試料を、ELISAプレートのウェルに吸着した。続いて、ウェルを、ブロッキング溶液でブロックし、免疫及び非免疫対照抗血清を、続いてウェルに添加し、一晩4℃でインキュベートした。非特異的タンパク質を、洗浄液で除去した後、100μg/mlのビオチン標識ヘパリンを添加し、ブロッキングバッファ中で1時間希釈した。非結合ヘパリンを、3回、各10分間洗浄した後、ストレプトアビジンペルオキシダーゼを添加し、ブロッキングバッファ中で1時間、1:3,000に希釈した。過剰な結合体を、3回、各10分間、洗浄バッファで洗浄して除去し、3,3’−ジアミノベンジジン溶液を添加して発色させた。シグナルは、中和抗体の存在に反比例する。
【0195】
(実施例33)
病原体抗原タンパク質のバイオインフォマティクス解析は、高い抗原能のエピトープの同定をもたらすこともできる。こうした解析は、これまでにM.ガリセプティカムMGAタンパク質について行われている。抗原領域を、直鎖塩基モチーフの文脈でさらに解析した。こうした抗原性の高い予測直鎖モチーフは、以下の配列である:MHC Iエピトープ 10−merは、LLAKKTDKSV(SEQ ID NO:4)、MHC II 15−merは、LLAKKTDKSVSPAQAS(SEQ ID NO:5)である。これらの領域は、SYFPEITHI法(www.syfpeithi.de)により同定した。これは、直鎖塩基モチーフは、実際に抗原性向の高いスポットの内側に含まれていることを示す。バイオインフォマティクス解析は、J.Pevsner、「バイオインフォマティクス及び機能ゲノミクス(Bioinformatics and Functional Genomics)」、(Wiley−Liss、Hoboken、N.J.、2003年)に記載されたものなど、当技術分野で周知の方法により、当技術分野で周知のデータマイニング及びマッチング並びに配列比較のためのデータベース及びコンピュータ解析法を用いて、行うことができる。
【0196】
(実施例34)
抗原エピトープ抗体の精製
精製抗原ペプチドを、末端ビオチン標識で合成する。ビオチン標識ペプチドを、1mg/ml濃度でAvidin Actigel(Sterogene Bioseparations,Inc.、カールスバッド、CA)に固定化する。ワクチン接種した鶏由来の中和抗血清を、飽和濃度で添加し、非特異的結合タンパク質を、リン酸緩衝液生理食塩水(PBS)、pH7.2で洗浄して除去した。特異的抗体は、Actisep Elution Medium(Sterogene Bioseparations,Inc.、カールスバッド、CA)で溶出する。
【0197】
本発明の利点
本発明は、例えば、免疫応答を誘導する、防御免疫応答を誘発する、又は寛容性を誘発するなどの目的に合わせることのできる、改善された免疫調節組成物及び方法を提供する。これらの組成物は、安定であり、免疫応答に所望の効果をもたらすため、幅広い免疫原及び標的分子により調製することができる。これら組成物は、このような物質の非経口投与の追加となる投与経路を提供する。これらは、免疫原及び標的分子の時期尚早の分解又は放出を防止する。粒子は、粒子と粘膜との相互作用を改善し、取り込みを促すことができる固有の粘膜接着特性を有する。これらは、追加のアジュバントを必要としない。
【0198】
本発明による方法及び組成物は、ワクチンとして使用することを意図した組成物から適当な回避エピトープを排除して免疫回避の発生を防ぐために、免疫回避におけるN−グリコサミノグリカン(マンノシル化)の役割を利用する。これらはまた、グリコサミノグリカン/ヘパリンの直鎖結合モチーフの同定、及びこのような結合を干渉する方法も利用する。本発明による方法及び組成物は、さらに、補体活性化エピトープを同定するために開発された方法を使用する。さらに、本発明による方法及び組成物は、幾つかのTLRアゴニストの使用は、免疫応答を大幅に増強するという発見を利用する。抗原及びTLRアゴニストはみな、粘膜リンパ系の単一細胞を標的にすることができる。本発明の別の改善された態様は、単一粒子における合成T細胞及びB細胞エピトープの使用である。
【0199】
本明細書に説明として記載された本発明は、本明細書に具体的には開示されていない、いずれの要素、限定を欠いた状態で、適切に実践することができる。故に、例えば、「含む、含有する(comprising、including、containing)」等の用語は、広く、限定することなく読まれるべきである。さらに、本明細書で使用された用語及び表現は、限定用語ではなく、説明用語として使用されており、今後示される、及び記載されるいずれかの均等物、又はこのいずれかの部分を除外するような用語及び表現を使用するつもりはなく、本発明の請求の範囲内でさまざまな修正が可能であることがわかる。故に、本発明は、好ましい実施形態及び選択的機能により具体的に開示されているが、本明細書に開示されている本発明の修正及びバリエーションは、当業者により復元されることができること、このような修正及びバリエーションは、本明細書に開示されている本発明の範囲内にあるとみなされることを理解すべきである。本発明は、本明細書で幅広く及び一般的に記載された。一般的な公開の範囲内にあるより狭義の種及び亜属分類もそれぞれ、これらの発明の部分を形成する。これには、削除した物質が具体的にこの中に存在するか否かにかかわらず、いずれかの対象を前記属から除去するという消極的な限定を条件に、各発明の一般的な説明が含まれる。
【0200】
さらに、ある発明の特徴又は態様が、マーカッシュグループに関して記載されている場合、当業者であれば、したがって、この発明は、マーカッシュグループの個々のメンバー又はメンバーのサブグループのいずれかに関して記載されていることがわかるであろう。上記の記載は、例示を意図したものであり、限定を意図したものではないことも理解されよう。上記の記載を検討する際、多くの実施形態が当業者には明白であろう。本発明の範囲はしたがって、上記の記載の参照により決定されるべきではなく、添付の特許請求の範囲、並びにこのような特許請求の範囲が権利を付与する均等物の全範囲を参照することにより決定されるべきである。特許公報を含め、あらゆる論文及び参考文献の開示は、参照により本明細書に組み込まれている。
【図面の簡単な説明】
【0201】
【図1】本発明による微粒子担体組成物での使用に適したアガロース微粒子の粒子分布を示すグラフである(実施例1)。
【図2】ペプチドグリカン(PepG)(白いバー)、又は細菌のCpG DNA(bactDNA)(黒いバー)、又は単独で添加した場合と同じ濃度で両者を同時に添加(斜線バー)して処理した後の、PBMCによるTNF−α分泌(A)又は組織因子の分泌(B)を示すグラフである。P及びDに続く数字はそれぞれ、PepG及びbactDNAの濃度(μg/ml)をそれぞれ示している。左から右に、これらはP3+D15、P3+D5、P3+D1.5、P1+D15、P1+D5、P1+D1.5、P0.3+D15、P0.3+D5,及びP0.3+D1.5である。
【図3】ConAにより露出された(Con A−stripped)又は過ヨウ素酸ナトリウム処理された抗原のほか、さまざまな組合せのTLR2、TLR3、TLR4、及びTLR9アゴニストにより、さまざまな方法で調製された粒子によるさまざまなTh1及びTh2応答の誘導を示すグラフである(グレーのバー、TNF−αx100、黒いバー、IL−10)。
【図4】図3について、さまざまな方法で調製された粒子で処理された単球の、TNF−α/IL−10比を示すグラフである。
【図5】微粒子製剤に曝露後の樹状細胞におけるMHC−II及びCD86の誘導を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防御免疫を誘導する免疫学的に活性な組成物であって、
(a)少なくとも1種類の病原体関連分子パターンと、
(b)場合により、少なくとも1つの免疫活性な抗原又は抗原エピトープと、
(c)前記組成物を生物に送達することにより防御免疫を誘導するのに有効な、少なくとも1つの担体と
を含む、上記組成物。
【請求項2】
少なくとも1つの免疫活性な抗原又は抗原エピトープを含む、請求項1に記載の免疫学的に活性な組成物。
【請求項3】
寛容性を誘導する免疫学的に活性な組成物であって、
(a)少なくとも1種類の病原体関連分子パターンと、
(b)少なくとも1つの免疫活性な抗原エピトープと、
(c)前記組成物を生物に送達することにより寛容性を誘導するのに有効な、少なくとも1つの担体と
を含む、上記組成物。
【請求項4】
少なくとも1つの免疫活性な抗原エピトープが、エスケープエピトープを持たない、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
免疫活性な抗原エピトープが、ペプチド、タンパク質、組換えペプチド若しくはマルチペプチド、組換えタンパク質、脂質、炭水化物、核酸若しくはその他の生物活性分子、又はこれらのいずれかの組合せである、請求項2又は3に記載の組成物。
【請求項6】
免疫活性な抗原エピトープが、ペプチド又はタンパク質であり、前記ペプチド又はタンパク質は、免疫調節性転写後調節を有する、請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
転写後調節が、炭水化物及び/又は脂質部分を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
転写後調節が、末端マンノシル化を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
免疫調節の末端マンノシル化物質が、免疫防御組成物から著減した、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
末端マンノシル化免疫活性物質が、酸化ステップにより組成物から著減した、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
末端マンノシル化免疫活性物質が、酵素処理により組成物から著減した、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
末端マンノシル化免疫活性物質が、糖特異的親和性結合により組成物から著減した、請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
転写後調節が、脂質部分を含み、前記脂質部分は、脱脂により除去される、請求項7に記載の組成物。
【請求項14】
免疫活性な抗原エピトープが、ペプチド又はタンパク質であり、前記免疫活性ペプチド又はタンパク質は、免疫調節性転写後修飾を有さない、請求項2に記載の組成物。
【請求項15】
免疫活性な抗原エピトープが、ペプチド又はタンパク質であり、前記免疫活性ペプチド又はタンパク質は、N−グリコシル化及び/又はリポイル化が可能なアミノ酸配列を有さない、請求項2に記載の組成物。
【請求項16】
免疫活性な抗原エピトープが、ペプチド又はタンパク質であり、前記免疫活性なタンパク質又はペプチドは、細胞表面グリコサミノグリカン(GAG)を結合可能なアミノ酸配列を有する、請求項2又は3に記載の組成物。
【請求項17】
アミノ酸配列が、本来多塩基性であり、一般式XBBXBX、XBBBXXBX、BBXXBBBXXBB、BBBXXB、BXBXB、BBB、BXBXXXBXB、又はBXBXXXXXBXBを有し、ここで、Bは塩基性アミノ酸であり、Xはいずれか他のアミノ酸である、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
GAG結合アミノ酸配列が、病原体が細胞表面に結合するのを干渉可能なペプチド又はタンパク質に対する抗体を産生するのに使用される、請求項16に記載の組成物。
【請求項19】
免疫活性な抗原エピトープが、病原体がGAGを介して細胞表面に結合するのを干渉可能なエピトープに対する抗体を産生するのに使用される、請求項2に記載の組成物。
【請求項20】
免疫活性な抗原ペプチド又はタンパク質が、ヘパリン及びこの類似体からなる群から選択されるGAGを結合可能なアミノ酸配列を有する、請求項18に記載の組成物。
【請求項21】
免疫活性な抗原ペプチド又はタンパク質が、単独又は抗体と併用して、補体活性化活性を有する、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
免疫活性な抗原エピトープが、単一のマルチペプチドに合体される複数のペプチドである、請求項2に記載の組成物。
【請求項23】
免疫活性な抗原エピトープが、T細胞エピトープ及びB細胞エピトープの両方を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項24】
病原体関連分子パターンが、
(a)TLR1受容体アゴニストと、
(b)TLR2受容体アゴニストと、
(c)TLR3受容体アゴニストと、
(d)TLR4受容体アゴニストと、
(e)TLR5受容体アゴニストと、
(f)TLR6受容体アゴニストと、
(g)TLR7受容体アゴニストと、
(h)TLR8受容体アゴニストと、
(i)TLR9受容体アゴニストと、
(j)NOD−1アゴニストと、
(k)NOD−2アゴニストと、
(l)DC−SIGNと、
(m)L−SIGNと、
(n)マンノース受容体と
からなる群から選択される、請求項1又は3に記載の組成物。
【請求項25】
病原体関連分子パターンが、NOD−1アゴニスト又はNOD−2アゴニストであり、前記NOD−1アゴニスト又はNOD−2アゴニストは、細菌のペプチドグリカン及び細菌のペプチドグリカン誘導体からなる群から選択される、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
(a)ヘパリン吸着を行うステップと、
(b)免疫親和性選択を行うステップと、
(c)場合により、免疫活性ペプチドを生成するため、免疫親和性選択により単離された1種類のタンパク質又は複数のタンパク質のタンパク質分解を行うステップと
を含む、病原体のグリコサミノグリカン結合を干渉可能な免疫活性ペプチドを同定する方法。
【請求項27】
直鎖多塩基モチーフを用いるバイオインフォマティクス解析法により配列データを解析することを含む、病原体のグリコサミノグリカン結合を干渉することが可能な免疫活性ペプチドを同定する方法。
【請求項28】
(a)補体結合抗体の補体タンパク質への結合を行うステップと、
(b)タンパク質抗原の免疫親和性選択に前記抗体を使用するステップと、
(c)場合により、単離されたタンパク質抗原のタンパク質分解を行うステップと
からなるステップを含む、免疫活性ペプチドを活性化する補体を同定する方法。
【請求項29】
請求項26、27、又は28に記載の方法で生成される免疫活性ペプチド。
【請求項30】
宿主生物における疾患を克服するための、請求項29に記載の同定された免疫活性ペプチドに基づく防御抗体。
【請求項31】
分子が、混合物として存在する、請求項1、2又は3に記載の組成物。
【請求項32】
分子が、化学的に結合している、請求項1、2又は3に記載の組成物。
【請求項33】
担体が、微粒子である、請求項1、2又は3に記載の組成物。
【請求項34】
微粒子が、狭いサイズ分布範囲を有する、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
微粒子が、多孔性である、請求項33に記載の組成物。
【請求項36】
微粒子が、直径約10μm未満である、請求項33に記載の組成物。
【請求項37】
微粒子が、直径約5μm未満である、請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
微粒子が、生体高分子でできている、請求項33に記載の組成物。
【請求項39】
免疫活性な抗原エピトープが、微粒子に非共有結合している、請求項33に記載の組成物。
【請求項40】
免疫活性な抗原エピトープが、微粒子に共有結合している、請求項33に記載の組成物。
【請求項41】
対象における免疫応答を誘発する方法であって、微粒子と結合している少なくとも1つの免疫活性な抗原エピトープ及び少なくとも1つの病原体認識(PR)受容体アゴニストを含む組成物の免疫学的に有効な量を投与するステップを含み、前記微粒子が、病原体よりも小さい又は同じサイズ範囲にある、上記方法。
【請求項42】
組成物が、1つを超える病原体認識受容体アゴニストを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
1つを超える免疫活性な抗原エピトープ及び1つを超えるパターン認識受容体アゴニストが、微粒子と結合している、請求項33に記載の組成物。
【請求項44】
1つを超える免疫活性な抗原エピトープが、T細胞エピトープ及びB細胞エピトープの両方を含む、請求項43に記載の組成物。
【請求項45】
1つを超えるパターン認識受容体アゴニストが、微粒子と結合している、請求項33に記載の組成物。
【請求項46】
対象における免疫応答を誘発するための免疫学的に活性な組成物のインビボ送達の方法であって、微粒子と結合している少なくとも1つの病原体認識(PR)受容体アゴニストを含む組成物の免疫学的に有効な量を投与するステップを含み、前記微粒子が、病原体よりも小さい又は同じサイズ範囲にある、上記方法。
【請求項47】
対象における免疫応答を誘発するための免疫学的に活性な組成物のインビボ送達の方法であって、微粒子と結合している少なくとも1つの免疫活性な抗原エピトープ及び少なくとも1つの病原体認識(PR)受容体アゴニストを含む組成物の免疫学的に有効な量を投与するステップを含み、前記微粒子が、病原体よりも小さい又は同じサイズ範囲にある、上記方法。
【請求項48】
組成物の投与が、粘膜経路を介して起こる、請求項41、46又は47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
組成物の投与が、非経口経路を介して起こる、請求項41、46又は47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
組成物の投与が、皮膚経路を介して起こる、請求項41、46又は47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
少なくとも1つの病原体に対する防御免疫応答を誘発する方法であって、微粒子と結合している1つ又は複数の免疫活性な抗原エピトープと、PR受容体アゴニストの組合せとを含む組成物の免疫学的に有効な量を、単回又は複数回投与するステップを含み、前記微粒子が、病原体よりも小さい又は同じサイズ範囲にあり、免疫応答が、Th1若しくはTh2応答又は両方の組合せを含む、上記方法。
【請求項52】
少なくとも1つの病原体に対する防御免疫応答を誘発する方法であって、微粒子と結合している1つ又は複数の免疫活性な抗原エピトープ(免疫学的回避機構に関与する抗原を除く)と、PR受容体アゴニストの組合せとを含む組成物の免疫学的に有効な量を、単回又は複数回投与するステップを含み、前記微粒子が、病原体よりも小さい又は同じサイズ範囲にある、上記方法。
【請求項53】
免疫応答が、病原微生物におけるグリコサミノグリカン結合要素を干渉する、請求項41、46、47、51、又は52に記載の方法。
【請求項54】
免疫学的に活性な物質に対する寛容性を誘発する方法であって、微粒子と結合している1つ又は複数の免疫活性な抗原エピトープと、PRRアゴニストの組合せとを含む組成物の免疫学的に有効な量を投与するステップを含み、前記微粒子が、病原体よりも小さい又は同じサイズ範囲にあり、前記免疫応答が、免疫機能又は免疫回避の調節応答又は下方制御を誘導することを含む、上記方法。
【請求項55】
組成物が、脂質含有部分を有する免疫活性な抗原エピトープを中に含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
免疫学的に活性な脂質含有部分が、免疫活性な抗原エピトープとは独立に微粒子に結合した、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
免疫学的に活性な脂質含有部分が、炭水化物成分を有する、請求項54に記載の方法。
【請求項58】
炭水化物成分が、N−グリコシル化の結果である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
免疫活性な抗原エピトープが、アスパラギン、スレオニン及びセリンからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸を含むモチーフを含み、前記モチーフは、Asp−X−Ser又はAsp−X−Thrモチーフであり、ここで、Xは、プロリン以外のいずれかのアミノ酸でありうる、請求項54に記載の方法。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−529976(P2008−529976A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−553350(P2007−553350)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【国際出願番号】PCT/US2006/003349
【国際公開番号】WO2006/081576
【国際公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(507255086)ガレンバイオ、インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】