説明

免疫抑制を逆転させるための免疫治療

【課題】癌患者を免疫する一貫した、そして効果的な方法を開発すること。
【解決手段】本発明は、未処置のT細胞および回復したT細胞免疫の産生を誘導することによる免疫低下を克服するための方法を提供する。すなわち、本発明は、免疫の回復を提供する。本発明は、さらに、未処置のT細胞の産生を誘導する工程および未処置のT細胞を適切な部位で、内因性または外因性の抗原に曝露する工程を含包するワクチン免疫治療の方法を提供する。加えて、本発明は、局所的リンパ節で、免疫樹状細胞の分化および成熟を促すことによって、局所的リンパ節での免疫化の障害を取り除き、かつ生成した成熟樹状細胞によってプロセシングされたペプチドの提示を可能にし、そのようにT細胞の免疫化を得るために腫瘍ペプチドをT細胞に曝露するための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌患者および持続性の病変(例えば、感染)を有する患者のためのワクチン治療に関する。さらに詳細には、本発明は、内因性および外因性の腫瘍ペプチドまたはタンパク質の両方ならびに他の持続性の病変由来のそれらのペプチドおよびタンパク質に対して免疫抑制を有する患者を免疫するワクチン免疫治療に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト癌が抗原を有し、この抗原が、宿主の免疫系に作用する場合、腫瘍の退行を導くことが、段々明らかになってきている。これらの抗原は、血清学および細胞免疫のアプローチの両方により定義されてきた。これは、B細胞エピトープおよびT細胞エピトープの両方の定義を導いた(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3)。これらの結果に基づき、腫瘍の退行を誘導することは、癌免疫治療専門家の目標がとなった。しかしながら、歴史的好首尾な努力は、頻度および成果において散発的かつ一般に小さいものであった。
【0003】
癌患者を免疫するための取り組みにおける基本的な問題は、腫瘍を有する状態が、腫瘍および宿主の破壊された免疫系の両方に由来する免疫抑制メカニズムに関係することであり(非特許文献4)、これによって、免疫化を困難にし、また、現在まで一貫した基礎を築けなかった。免疫抑制または免疫の減少は、免疫系の応答する能力の減少に関する。そのような抑制は、薬物または疾患により誘導され得る。この状態は、処置による薬物誘導、AIDSの場合のようなウイルス誘導または癌のような病態による誘導であり得る。この状態における免疫系は、有効に機能しなくなる。
【0004】
種々の腫瘍免疫化ストラテジーが、開発されている。しかしながら、これらのストラテジーの全ては、複雑でありまた、感染性疾患について使用される慣用的な免疫化ストラテジーから非常に逸脱する(非特許文献5)。1つのそのような腫瘍免疫化ストラテジーは、Theratope(商標登録)、鍵穴リムペット(limpet)ヘモシアニンと結合したシアリルTポリサッカライドムチン抗原ならびにDetox(登録商標)マイコバクテリウムアジュバンドおよび低用量シクロホスファミド(非特許文献6)を含む。しかしながら、転移性の乳癌および卵巣癌を有する患者における、このワクチンを使用は、低い割合の患者において主要な臨床的応答を生じている。主要な臨床的応答とは、50%より多い腫瘍の減少を意味する。
【0005】
遺伝子治療はまた、パピロ−マウイルス発現遺伝子についての発現ベクターのようなアデノウイルス構成物を使用することを試みている。ペプチド16は、頸部癌を有する患者のための免疫化のために使用され、そして低い割合の患者において大きな臨床的応答を生じている(非特許文献7)。
【0006】
樹状細胞が媒介する治療がまた、試みられており、ここで樹状細胞は、前立腺特異的抗原(PSA)のオリゴペプチドフラグメントでパルスされた。前立腺特異的膜抗原(PSMA)は、転移性前立腺癌を有する患者において、低い割合の患者において大きな臨床的応答で使用されている(非特許文献8;非特許文献9)。
【0007】
さらに、自己発生腫瘍は、悪性黒色腫を有する癌患者を免疫するために低容量のシクロホスファミドおよびBCGと共に使用された。しかしながら、臨床的応答は、ほとんど報告されていない(非特許文献10)。種々のワクチンアジュバンドと共にMAGE抗原を使用することを含む別のストラテジーが試みられた。さらに、これは、悪性黒色腫を有する患者における応答(もしあれば)をほとんど生じない。
【0008】
Doyleらのいくつかの米国特許(特許文献1;特許文献2;特許文献3;特許文献4;特許文献5)は、インターロイキン−2(IL−2)を用いた患者の免疫応答を増強する方法を開示する。この方法は、感染症に対する応答における使用、および免疫原となることが既知の抗原を使用する最初の機能について開示される。限定的適用可能性が、示された。上述のように、癌の処置は、異なる複数のアプローチを要求することが既知である。現在まで、IL−2による処置は、腎細胞および悪性黒色腫の2つの癌において、小さな効果を示す(20%未満の応答割合)。一般に、扁平上皮細胞の頭部および首の癌、頸部癌ならびに前立腺癌において、効果的でないと考えられる。それゆえ、これらの使用について、認可されていない。このため、癌の処置における小ペプチドの使用に対して、Doyleらの特許の方法を適用することは、当業者の技術の範囲内にはない。
【0009】
健常な患者における、複雑な構造および高分子量の既知の「古典的」な抗原を用いる予防に対する免疫抑制患者における(一般に不成功)、腫瘍抗原または腫瘍ペプチドを用いた処置(一般的に不成功)を対比させることは重要である。前者は、簡便であり、そして最新のウイルスワクチンは、それらの効果を実証している。後者は、30年間の熱心な努力にもかかわらず、慣用技術としては、ほぼ不可能である。
【0010】
本発明は、樹状細胞によりプロセシングおよび提示されるかまたは内因的に環境(リンパ節)に対して投与される内因性のペプチドで免疫することに関するが、それらに限らない。ここで、樹状細胞は、調整され、そしてT細胞に対して効果的にこれらのペプチドを提示する。この目標は、多くの免疫学者によって、克服不可能であると考えられている。ペプチドは、小さすぎて効果的な抗原にならず、それらの半減期は短く、それらは、患者が免疫寛容である自己抗原をしばしば変異させず、そして得られた応答は、自己免疫を誘導するに等しい。
【0011】
上記のストラテジーのいくつかにおいて、腫瘍関連抗原に対する細胞および/または腫瘍免疫は、誘導されてきた(非特許文献11;非特許文献12;非特許文献13;非特許文献14)。これは、特に腫瘍の退行と共同する。それにもかかわらず、そのような処置の成功割合は、わずかでありまた、一定しない(30%未満)。
【0012】
従って、癌患者を免疫する一貫した、そして効果的な方法を開発することが有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第5,503,841号明細書
【特許文献2】米国特許第5,800,810号明細書
【特許文献3】米国特許第6,060,068号明細書
【特許文献4】米国特許第5,643,565号明細書
【特許文献5】米国特許第5,100,664号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Sahin,Uら、Curr Opin Immunol、9:709−715(1997)
【非特許文献2】Van der Eynde,Bら、Curr Opin Immunol、9:684−693(1997)
【非特許文献3】Wang,RFら、Immunologic Reviews、170:85−100(1999)
【非特許文献4】Kavanaugh,DYら、Hematol−Oncol Clinics of North Amer、10(4):927−951(1996)
【非特許文献5】Weber,J Tumor Medscape Anthology、3:2(2000)
【非特許文献6】Maclean GDら、J Immunother Emphasis Tumor Immunol.、19(4):309−316(1996)
【非特許文献7】Borysiewickz,LKら、Lancet、347:1524−1527(1996)
【非特許文献8】Sanda,MGら、Urology、52:2(1999)
【非特許文献9】Murphy,GPら、The Prostate、38:43−78(1999)
【非特許文献10】Mastrangelo MJら、Seminars in Oncology、23(6):773−781(1996)
【非特許文献11】Weber,J Tumor Medscape Anthology、3:2(2000)
【非特許文献12】Maclean,GDら、J Immunother Emphasis Tumor Immunol、19(4):309−316(1996)
【非特許文献13】Borysiewickz,LKら、Lancet、347:1524−1527(1996)
【非特許文献14】Sanda,MGら、Urology、52:2(1999)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
(発明の要旨)
本発明に従って、未処置のT細胞および回復したT細胞免疫の産生を誘導することによる免疫低下を克服するための方法を提供する。すなわち、本発明は、免疫の回復を提供する。本発明は、さらに、未処置のT細胞の産生を誘導する工程および未処置のT細胞を適切な部位で、内因性または外因性の抗原に曝露する工程を含包するワクチン免疫治療の方法を提供する。加えて、本発明は、局所的リンパ節で、免疫樹状細胞の分化および成熟を促すことによって、局所的リンパ節での免疫化の障害を取り除き、かつ生成した成熟樹状細胞によってプロセシングされたペプチドの提示を可能にし、そのようにT細胞の免疫化を得るために腫瘍ペプチドをT細胞に曝露するための方法を提供する。さらに、本発明は、癌または他の持続性の病変に対して内因的または外因的に投与された抗原に対して、アジュバンドとして有効量の天然のサイトカイン混合物を投与することによる癌および他の持続性の病変を治療する方法を提供する。
【0016】
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
局所的リンパ節における非ブロック免疫のための方法であって:
局所的リンパ節における樹状細胞の成熟および活性化を促進する工程;および
T細胞に対する抗原の得られた成熟樹状細胞による提示を可能にして、該抗原に対する該T細胞の免疫を得る工程、
を含包する、方法。
(項目2)
前記促進工程が、処置される病変に局所的なリンパ節に流れるリンパ液にリンパ節に未処置のサイトカイン混合物(NCM)+チモシンαを外リンパ的に投与する工程としてさらに規定される、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記病変が、癌または他の持続性病変である、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記持続性病変が、感染性である、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記抗原が、内因性抗原である、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記抗原が、外因性抗原である、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記投与工程が、NCM+チモシンαを外リンパ的、結節内的、リンパ内的、脾臓内的、皮下的、筋肉内的または皮内的に注射する工程としてさらに規定される、項目2に記載の方法。
(項目8)
外因性抗原およびNCM+チモシンαからなるアジュバンドを効果的な量投与することにより、癌または持続性病変に対する免疫を誘導する、方法
(項目9)
前記投与工程が、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IL−10、IL−12、δIFN、FGM−CFS+チモシンαを含むNCMを投与する工程としてさらに規定される、項目7に記載の方法。
(項目10)
前記投与工程が、NCM+チモシンαを外リンパ的、結節内的、リンパ内的、脾臓内的、皮下的、筋肉内的または皮内的に注射する工程としてさらに規定される、項目8に記載の方法。
(項目11)
未処置のT細胞の産生を誘導すること、およびT細胞の免疫応答を回復させることよってT細胞の消耗を克服するための方法。
(項目12)
前記誘導工程が、NCM+チモシンαを投与する工程としてさらに規定される、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記投与工程が、NCM+チモシンαを、外リンパ的、結節内的、リンパ内的、脾臓内的、皮下的、筋肉内的または皮内的に注射する工程としてさらに規定される、項目11に記載の方法。
(項目14)
前記投与工程であって、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、δIFN、およびチモシンαを含むNCMを注射する工程としてさらに規定される項目12に記載の方法。
(項目15)
前記投与工程が、NCMの注射1回あたり約150〜600単位のIL−2を投与することを含包する、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記ブロック工程および誘導工程であってが、シクロホスファミドおよび非ステロイド抗炎症薬(NSAID)を同時送達する工程としてさらに規定される、項目11に記載の方法。
(項目17)
癌または持続性病変由来の内因性または外因性投与抗原に対するアジュバンドとして効果的な量のNCMを投与することにより厳しく免疫抑制された患者における癌または他の宿存性病変を処置する方法。
(項目18)
前記投与工程が、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、TNFαおよびδIFN+チモシンαを含むNCMを注射する工程としてさらに規定される、項目14に記載の方法。
(項目19)
前記投与工程であって、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、TNFαおよびδIFN+チモシンαを含むNCMを注射する工程としてさらに規定される、項目18に記載の方法。
(項目20)
処置される内因性の病変により直接的または間接的にT細胞の内因性の抑制をブロックすることをさらに包含する、項目17に記載の方法。
(項目21)
前記ブロック工程および誘導工程が、シクロホスファミドおよび非ステロイド抗炎症薬(NSAID)を同時送達する工程をさらに規定される、項目17に記載の方法。
(項目22)
前記NSAIDが、インドメタシン、イブプロフェン、ビオックス、セレブレックスおよび他の関連する処置化合物を含む群から選択される、項目21に記載の方法。
(項目23)
ワクチン免疫治療の方法であって、以下の工程:
未処置のT細胞の産生を誘導する工程;および
該未処置のT細胞を内因性抗原または外因性抗原に曝露する工程、
を含包する、方法。
(項目24)
前記曝露工程が、未処置のT細胞を、病変を有する患者の局所的な結節において内因的に産生されたペプチド調製物レジデントに曝露する工程としてさらに規定される、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記病変が癌性または感染性である、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記曝露工程が、外因的に産生された抗原を投与する工程としてさらに規定される、項目23に記載の方法。
(項目27)
前記抗原が、他の非免疫性ペプチドである、項目23に記載の方法。
(項目28)
前記曝露工程が、処置される病変から遠位の末梢リンパ節における成熟ペプチド提示樹状細胞でT細胞を免疫する工程としてさらに規定される、項目23に記載の方法。
(項目29)
有効量のNCMを投与することによりリンパ球減少症を処置する方法。
(項目30)
免疫を誘導する方法であって:
インビボにおける樹状細胞成熟により未処置の非許容T細胞に対する有効な抗原の産生を誘導することで、T細胞およびB細胞のクローン増殖を誘導し、それによって患者における免疫を誘導することによって免疫を誘導する方法。
(項目31)
腫瘍を崩壊にいたる血行性の拡散により腫瘍内に浸潤するさらなる工程を含包する、項目29に記載の方法。
(項目32)
免疫を誘導する方法であって:
有効な抗原の産生および存在を許容する局所的リンパ節における環境を生じること;ならびに
リンパ節の通路中の樹状細胞の直系の細胞が減少し、癌患者において蓄積していくことで、抗原がT細胞にとって免疫抗原性になることにより免疫を誘導する、方法。
【0017】
添付の図面と関連させて考えた場合、同様のものが、以下の詳細な説明を参照して、本発明の他の利点がよりよく理解されるので、本発明の他の利点より容易に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、PHAに対する連続的対脈動的曝露を使用した種々の培地におけるNCMの比較を表す。
【図2】図2は、PHAに対する連続的曝露での細胞濃度の影響を表すグラフである。
【図3】図3は、2倍の濃度(2μg/ml)のPHAを用いた、図1と同様の棒グラフを表す。
【図4】図4は、脾臓細胞に関するIL−2の1mlあたりの単位に対するチミジン取り込み量のグラフを表す。
【図5】図5は、胸腺細胞に関する図2と同様のグラフである;
【図6】図6は、IL−1、IL−2またはILの組み合わせ、NCMまたは生理食塩水で処理した、退縮した胸腺を有するマウスについてのコントロール対インビボの割合を示したグラフである。
【図7】図7はまた、組換えIL−1、IL−2、IL−1+IL−2およびNCMによる処置の比較を表すグラフである。
【図8】図8は、脾臓細胞マーカーおよび胸腺マーカーに対するインビボでのNCM処理の効果を表すグラフである。
【図9】図9は、脾臓細胞マーカーおよび胸腺マーカーに対するインビボでのNCM処理の効果を表す棒グラフである。
【図10】図10は、コントロール培地またはNCMを用いたインビボの処理の後、種々の組み換えインターロイキンまたはNCMを含むインビトロ培地に対する脾臓細胞および脾臓細胞応答を表すグラフである。
【図11】図11は、コントロール培地またはNCMを用いたインビボで、培地、種々のインターロイキン、またはNCMに対する、インビトロでの脾臓細胞および胸腺細胞の応答を表す棒グラフである。
【図12】図12は、インビボで、コントロールまたはNCMでの処置の後の、インビトロでの、ConAおよびPHAに対する脾臓細胞および胸腺細胞における応答を示す。
【図13】図13は、インビボでの、コントロールまたはNCMでの処置の後の、インビトロでの、ConAおよびPHAに対する脾臓細胞および胸腺細胞における応答を示す。
【図14】図14は、コントロール、および癌コントロール、または扁平上皮細胞の頭部および頸部癌(H&NSCC)を有するIRX−2(NCM)処置した集団におけるリンパ節の大きさを示す棒グラフである。
【図15】図15は、2つの棒グラフを示し、コントロールならびに頭部および頸部の扁平上皮癌のコントロールならびにNCM(IRX−2)で処置した患者において、1つ目は、T細胞の領域を示し、2番目は、密度を示す。
【図16】図16は、3つの処置群におけるB細胞領域および卵胞を示す2つの棒グラフである。
【図17】図17は、3つの処置群における、他の細胞および洞組織球増殖の比較を示す。
【図18】図18は、結節Bおよび結節Tならびに癌Bおよび癌Tが、プロットに一致することを示すグラフである。
【図19】図19は、NCM+チモシンαの10日間の処置により誘導されるIRX−3処置患者の血液におけるリンパ球集団の増加を示す。
【図20】図20は、NCM+チモシンαの10日間の処置により誘導されるIRX−3処置患者の血液における未処置のT細胞(CD45RA+)および記憶T細胞の増加を示す。
【図21】図21は、インビボでの生理食塩水、チモシンα(5μg/動物/日)、NCM(50単位のIL−2相当)およびチモシンα(5μg/動物/日)+NCM(50単位のIL−2相当)で処置の後、インビトロでの、培地(無色)、rIL−1(塗りつぶし)、rIL−2(網掛け)、およびNCM(斜線)に対する胸腺細胞の応答の棒グラフである。
【図22】図22は、図21におけるように、インビボでの生理食塩水、チモシンα、NCMおよびチモシンα+NCMで処置の後、インビトロでの、培地(無色)、rIL−1(塗りつぶし)、rIL−2(網掛け)、およびNCM(斜線)に対する脾臓細胞の応答の棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(発明の詳細な説明)
一般に、本発明は、ワクチン免疫治療を利用して患者を処置するための方法を提供し、ここで、患者は、免疫が抑制されている。免疫抑制とは、患者が、減少した細胞性免疫を有し、従って新しい抗原に対する応答能力を損なうことを意味する。
【0020】
Tリンパ球減少(血液中の低いT細胞レベル)は、細胞性免疫欠乏の診断的特徴であり;存在するリンパ球の機能欠損が、別の特徴である。Tリンパ球減少を処置するための一般的に受け入れられている(臨床的認可)方法は、存在しない。骨髄移植片(±胸腺移植片)が、重篤な複合免疫欠乏(SCID−先天的、照射または化学療法誘導性)の場合において使用されてきた。組み換えIL−2は、AIDSにおいて、強い毒性によるいくらかの効果と共に試みられている。
【0021】
新しいT細胞を生成し、Tリンパ球減少を補正することを試みる2つの方法がある。1つの方法(rIL−2治療におけるのと同様)は、既に血漿(すなわち、記憶T細胞(CD45RO)(血液、リンパ節および脾臓)中にT細胞を展開する。もう1つの方法は、胸腺における、骨髄由来の前駆体からの新しいT細胞の調製を含む。これは、子供において、自然に起こり、成人では起こらない。これらの新規の細胞は、最近「胸腺エミグレス」と呼ばれ、そしてそれらは、「未処置の」T細胞の表面マーカー(すなわち、CD45RAを有する。NCM治療(+チモシンα1)は、それら新規のT細胞の産生および既に存在する記憶T細胞を展開することをもたらす。
【0022】
さらに詳細には、本発明は、内因性または外因性処置のいずれかで投与される、抗原に対する免疫応答を提供する免疫化に関する新たな発見を利用する。過去に、そのような抗原は、免疫原であると考えられており、一方で、本発明において使用される他の抗原は、以前、免疫原性でないと見なされていた。そのような抗原の例として、MAGE−1タンパク質由来のEADPTGHSY(黒色腫)、MAGE−3由来のEVDPIGHLY(肺癌)、MAGE−3由来のEVDPIGHLY(肺癌)および多くの他のもの(Belloneら、Immunology Today、20(10):457−462(1999)を参照のこと)が挙げられる。
【0023】
本発明は、このような免疫が、以前、不可能であると考えられていた被験体において、免疫を得るための、いくらかの一般的で新しく得られた方法の工程を利用する。より詳細には、本発明は、未処置のT細胞の産生を誘導することによって、重篤な免疫低下を克服するための方法を提供する。用語「未処置の」T細胞は、これらのT細胞は、成人においてさえまだ抗原に曝露されていない新しく産生されたT細胞を意味する。この段階にあるそのようなT細胞は、細胞上に露出された腫瘍ペプチドのような抗原を有する成熟樹状細胞による提示の際に、なお特異的になり得る、非特異的である。このように、本発明は、新規のT細胞を補充または生成する。これは、一般に、未処置のサイトカイン混合物(NCM)を投与することによって達成される。NCMは、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IL−10、IL−12、δIFN、TNFαならびにG−およびGM−CSF+チモシンα1の両方を含む。これらの構成成分の量および割合は、以下に詳しく述べる。好ましくは、約150〜600単位のIL−2が、NCMおよび1.6mgのチモシンα1中に含まれる。
【0024】
好ましくは、チモシンα1を含むNCMは、処置される腫瘍または持続性の病変のような病変に局所的なリンパ節に流れるようリンパ管周辺に注射される。癌のような病変の局所的なリンパ節に流れ込む、リンパ管への外リンパ投与は、重大である。腫瘍周辺注射は、応答進行にさえ、ほとんど関係せず、従って、禁忌である。10日の注射スキームは、最適であり、臨床的に効果的であるので、20日の注射プロトコルは、TH1応答を減少させ、そして癌へのリンパ系浸潤により測定される場合、より所望されないTH2応答の方に移行する傾向にある。両側からの注射は、効果的である。根治的頚部郭清術が行われた場合、反対側性注射が有効である。
【0025】
種々の癌病変に起因するようなT細胞の内因的抑制をブロックするのが好ましい。ブロッキングは、低用量シクロフォスファミドおよび非ステロイド抗炎症薬物(NSAID)の共送達により達成される。NSAIDの選択物は、インドメタシンである。インドメタシンは、最も効果的なNSAIDであり、その一方でまた、おそらく最も毒性である。Celebrex(登録商標)およびVioxx(登録商標)、Cox II NSAIDは、効果がより小さい。Vioxx(登録商標)は、より毒性であり得、多くの患者において胃炎を引き起こす。イブプロフェンは、効果的であったが、組織学的応答は、TH1媒介応答よりはTH2媒介応答の特徴であり、これは、より所望されない。NSAIDの副作用は、プロトンインヒビターおよびプロスタグランジンEアナログを用いて、集中的に処置されるものである。亜鉛および総合ビタミン剤は、T細胞免疫を回復させるのに有用な薬剤である。対照抑制(cintrasuppression)およびNCMを用いない亜鉛での処置は、効果がない。
【0026】
要約すると、最小限のレジメンは、シクロホスファミドおよびNSAIDを用いた対照抑制とNCM+チモシンα1を用いたリンパ周囲処置である。代替のレジメンは、亜鉛およびビタミン(おそらくセレンの添加を含む)をさらに含むレジメンとして以前に言及される。好ましい投薬は、50〜75mgの亜鉛である。標準的な総合ビタミン剤が、投与され得る。亜鉛は、利用可能なグルコン酸であり得る。
【0027】
臨床応答を最大にするために、そして生存率の最大の増加にために、リンパ球浸潤の程度および型は、重要である。90:10の比の顆粒球:マクロファージが、最適である。T細胞浸潤および/またはB細胞浸潤は、好ましくは、拡散および集中であり、末梢ではない。20%以下の軽い浸潤は、忍耐力のいる臨床応答に関連しない。組織学的サンプルにおける腫瘍の退行および断片化は、良好な応答を反映することにおいて好ましい。
【0028】
リンパ節は、少なくとも5つの局面を含包する良好な応答に対する要所を変化させる。リンパ節拡大であって、サイズの減少を誘導された腫瘍の単なる逆転ではなく、通常と比較したサイズの全体的な増加がないリンパ節拡大が好ましい。増加したT細胞およびB細胞領域は、免疫を示す。本データは、洞組織球増殖症(SH)は、活性化されない成熟樹状細胞(CD68+CD83+DC)の蓄積であり、この成熟細胞が摂取され、プロセスされた腫瘍抗原を有するが、成熟不可能であり、および細胞毒T細胞およびB細胞をもたらすTH1有効細胞およびTH2有効細胞を刺激可能な未処置のT細胞にこれらの腫瘍ペプチドを提示することを示す。SHの除去およびDCの活性化の悪化は、本発明に対して重要である。
【0029】
このように、本発明は、以下でより詳細に考察するように、局所的リンパ節における樹状細胞の成熟および活性化を促進することにより、局所的リンパ節での免疫をブロックしないために提供され、そして、成熟樹状細胞によるこのように生成した小ペプチド(一般に、9アミノ酸長)のT細胞への提示、T細胞の免疫を得る。さらに、成熟樹状細胞の誘導が、要求される。最後に、Tリンパ球減少症患者における末梢血Tリンパ球の動員が、外因性腫瘍ペプチドを提示する樹状細胞に対して応答可能な未処置のT細胞の誘導の存在下で、所望される(Sprent、ら、Science、293:245−248(2001)を参照のこと)。
【0030】
上記を考慮して、本発明の重要な機構的な特徴は、有効なペプチド抗原提示を生じるインビボの樹状細胞の成熟である。本明細書中に示される実施例に基づいて、CD45RA分化を決定づけられていない陽性未処置のT細胞の増加が、見出される。これは、TおよびB細胞コロニー性増殖を導き、患者において免疫をつくる。この血行性拡散による腫瘍への得られた浸潤は、頑健性腫瘍の破壊を導く。本明細書のデータに見られるように、この結果は、免疫学的記憶に起因して生存率を増加する(Sprentら、参照のこと)。
【0031】
外来的に提供される合成腫瘍ペプチドまたは抽出された腫瘍ペプチドは(Belloneら、を参照のこと)、B細胞と共にかまたはB細胞無しに、前もってプライムされるか、または同時にプライムされる局所リンパ節または末梢リンパ節に送達され、そして腫瘍抗原特異的T細胞を生じ得ることが、論理的に予測される。例が、以下に記載される。上記を考慮して、NCMおよびチモシンα1+他の抗原の作用は、任意の腫瘍抗原に関する限り有用であることが、結論され得る(合成および内因性ペプチドおよびタンパク質)。これらのペプチドの多くは、通常、免疫原性ではなく、そして、成熟し、活性化された樹状細胞により提示された場合にのみ、免疫化された未処置のT細胞において、有効である。このように、免疫T細胞の出現は、樹状細胞が、作られまたは適切に働くことを許容すること事実上を意味する。樹状細胞の活性化および成熟は、癌免疫欠損およびT細胞における周知の欠陥例えば、数の減少ならびにアレルギーおよび推定アポトーシスに関する機能における重要な因子と見なされている。
【0032】
本発明に従って送達されたプロトコルおよび薬物(medicant)をより詳細に参照して、本発明は、未処置のサイトカイン混合物+チモシンα1を、癌患者および他の病変を有する患者または抗原産生疾患状態を有する患者のような患者を免疫するために利用する。より詳細には、本発明は、その中にNCM+チモシンα1および腫瘍関連抗原を含む有効量の組成物を投与することによって、癌に対する癌患者の免疫応答を増強するための方法を利用する(NCM+チモシンα1は、免疫応答を誘導するためのアジュバンドとして作用する)。
【0033】
腫瘍関連抗原は、癌を有する患者の局所的リンパ節における外因的に産生される腫瘍ペプチド調製物残基あるいは、それらのリンパ節内か、または近傍において外因的に投与された腫瘍抗原調製物と組み合わせてのいずれかであり得る。たとえ、ペプチドが、それらが完全であるために、腫瘍関連タンパク質抗原がさらにそのようである免疫原であることが期待されない場合でさえ、腫瘍ペプチドおよび抗原は、本明細書中に含まれる。
【0034】
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、低用量のシクロホスファミドに関して以下に規定されるように、NCM+チモシンα1+腫瘍関連または特異的抗原シクロオキシゲナーゼインヒビターおよび本発明の組成物の効果をさらに増加させることが示されている他の類似の組成物の投与を含む。NCMとチモシンα1との組み合わせは、他に効果的な抗原であることが発見されない限りは、抗原に対する免疫応答を生成するアジュバントである。さらに、このアジュバントの効果は、重篤に免疫が欠損する患者において達成される。
【0035】
上述のことを明らかにし、そして、さらに規定するために、以下の定義が、提供される。「アジュバント」とは、特定の抗原に対する免疫応答を増強する能力を有する組成物を意味する。効果的であるために、アジュバンドは、抗原部位にか、または近傍に送達されなければならない。そのような能力は、免疫媒介防御における有意な増加により明らかになる。免疫の増強は、代表的には、抗原に対して惹起された抗体の力価の有意な増加(通常、10倍より大きい)により明らかになる。細胞性免疫の増強は、陽性肌試験、細胞毒性T細胞アッセイ、δIFNまたはIL−2についてのELISPOTアッセイ、または本明細書に記載のような腫瘍へのT細胞浸潤により測定され得る。
【0036】
「腫瘍関連抗原」とは、類似タンパク質またはペプチド(これらは、以前、エキソビボで樹状細胞のパルス発生により働くことが示されていた)、または他の等価な抗原を意味する。これとしては、PSMAペプチド、MAGEペプチド(Sahin,Uら、Curr Opin Immunol 9:709−715(1997);Wang,RFら、Immunologic Reviews 170:85−100(1999))、パピロ−マウイルスペプチド(E6およびE7)、MAGEフラグメント。または他の類似の抗原が挙げられるが、これらに限定されない。これらの抗原は、以前、抗原のサイズ(すなわち、抗原が小さすぎる)または免疫原性特性(すなわち、自己抗原)を有さないと以前考えられていたことのいずれかに基づいて、患者を処置することにおいて、有効であると見なされていなかった。
【0037】
非組み換えサイトカイン混合物であるNCMは、米国特許第5,632,983号および米国特許第5,698,194号に記載のように定義される。簡単には、NCMは、4−アミノキノノロン抗生物質の連続的存在下において、およびマイトジェンの連続的または断続的存在を用いて、調製される(好ましい実施形態においては、PHAである)。
【0038】
HIV陰性であり、肝炎ウイルス陰性の複数のドナー由来の好中球および赤血球を含まない蓄積されたリンパ球(一般に軟膜由来)は、混合リンパ応答(MLR)を引き起こすように使用される。さらに、好ましい実施形態において、50ドナーまでは、各時間、MLR応答が、各調製物についておよびバリエーションの中からでさえ一定であることを保証するための混合物を産生するために使用された。
【0039】
代替の実施形態において、自己リンパ球は、NCMを生成するために使用される。これらの事例では、患者は、ウイルスを有さくてもよい。さらに、自己リンパ球が、使用される場合、それらは、必要であれば患者に戻され得る。代替の実施形態において、動物は、獣医学的用途についての細胞源であり得る。
【0040】
リンパ球は、組織培養容器中の固定化マイトジェンの存在下で培養される。好ましい実施形態において、マイトジェンは、製造業者の指示書に記載のように、細胞の部分集団の選択のために、表面活性化細胞培養フラスコの表面上に固定化される(AISD MICROCELLECTORTM T−25プレート)。しかし、他の「パニング」技術を組み込んだ方法、またはセファロース4Bビーズに結合させる方法のような培養容器の表面上にマイトジェンを固定化する他の方法は、細胞単離分野において周知なように使用され得る。選別のための固定化細胞の使用は、当該分野において周知である。
【0041】
これらのマイトジェンは、一般に、レクチンおよびリンパ球を刺激してサイトカインを産生するモノクローナル抗体から選択される。好ましい実施形態において、フィトヘマグルチニン(PHA)またはOKT3(Orthoclone(登録商標)、Ortho Pharmaceuticals)が、使用される。B細胞を刺激するコンカナバリンA(ConA)またはアメリカヤマゴボウマイトジェンのような他のレクチンが、使用され得る。CD、CD28、CD45のような、T細胞レセプターに対するモノクローナル抗体は、マイトジェンとして使用され得る。抗CD28および抗CD45抗体は、IL−2の高産生源であることが報告されている(Deansら、(1989);Juneら、(1989))。さらに、抗リンパ球グロブリン(ALG)は、T細胞についてのマイトジェン活性を有する。加えて、マイトジェンの組み合わせは、リンパ球の部分母集団の組み合わせを活性化するために使用され得る。PHAは、好ましい実施形態において使用され、そして約25μg/mlの開始濃度でコートされる。
【0042】
リンパ球は、無血清培地において、マイトジェンへの連続的な曝露、すなわち洗浄なしに、24〜48時間インキュベートされた。好ましい実施形態において、培地は、X vivo−10培地またはX vivo−15培地のいずれかである(Whittaker)。これは、製造業者の説明書において記載されるような患者においてIL−2/LAKを注入するための、無血清培地であり、かつFDA承認培地である。RPMI−1640(Sigma)のようなヒトリンパ球増殖を支持し得る無血清培地はまた、使用され得る。
【0043】
培地はまた、4−アミノキノロン抗生物質を含む。好ましい実施形態において、抗生物質は、キプロフロキサチン(Ciprofloxacin)である。この抗生物質は、無菌状態を維持するために使用され、そしてリンホカインを大量生産するために使用される。キプロフロキサンおよび関連抗生物質は、可溶性マイトジェンおよび血清の存在下で、IL−2および他のサイトカインを増加させることが報告されている(Riesenbeckら、(1994))。それらは、血清の非存在下で効果的であることは報告されていない。キプロフロキサンは、好ましい実施形態において、約20〜約200μg/mlの濃度で、より好ましい実施形態において、約80μg/mlの濃度で使用される。
【0044】
上清は、取り除かれ、そして本発明のNCMの供給源である。上清は、例1に示されるようなマイトジェンの遊離物である。動物および初期のヒトの研究は、濃縮されていない。
【0045】
ヒト血清アルブミン(HSA)は、血清中でNCMを安定化させるために加えられ得る。HSAは、ヒトの使用のためのFDAによって承認されているので、HSAは、ヒトでない供給源由来の血清アルブミンの代わりに使用される。
【0046】
この上清のサイトカインプロファイルは、確立された以下のアッセイの利用である。上清のインターロイキン用量は、IL−2についてのバイオアッセイおよび他のインターロイキン、CSF、TNFおよびIFNについてのELISAによって確認される。滅菌性は、試験され、そして内毒性は、細胞分解産物アッセイによって測定される。詳細には、以下のアッセイおよびキットは、好ましい実施形態において使用される:IFN−γELISA(ENDOGEN)、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−6、IL−7、IL−8、GM−CSF、G−CSFおよびTNF−αELISA(R&D Systems)。Gillisら、(1978)のIL−2バイオアッセイは、既知の標準IL−2と比較した単位/mlとして表現される(Schiapparelli Biosystems,Inc.,Fairfield,NJ)。
【0047】
好ましい実施形態(ここで、PHAは、マイトジェンとして使用される)において、上清についてのサイトカインプロファイルは、次のプロファイルを有する:
【0048】
【表1】

【0049】
マイトージェンの固定化は、用量パルス技術よりも高量のNCMを生産する。例えば、無血清培地においてPHAと共にパルス技術によるインターロイキンの産生は、0〜20単位/ml培地でIL−2を産生する(米国特許第4,390,623号および米国特許第4,464,355号)。しかし、本方法は、インターロイキンを過剰に誘導するため、および約8〜140単位/mlのIL−2を産生するために4−アミノキノロン抗生物質を無血清培地に加えることによりパルス技術で産生を増加し得る。動物の研究により予測されるように、未処置のインターロイキン混合物(NIM)として特徴付けられるこの調製物は、用量あたり200単位のIL−2で、頭部および頸部癌を有するリンパ球増殖症患者の血液におけるTリンパ球の数を増加させる(Haddenら、(1994))。この結果は、NCM中のIL−2の量の5000倍を超える用量で報告されていない。このように、NCMについてのIL−2等価用量が、その潜在力の指針として使用されることに注目することは重要であり、そしてNCMの生物学的活性の全てが、IL−2の生物学的活性であることを含意することは、意味がない。
【0050】
本発明の好ましい実施形態において、4−アミノキノロン抗生物質の固定化および存在によるマイトジェンに対する連続的曝露を利用することにより、一般低に生成されるNCMは、100〜353単位/ml(調製物の潜在力の指針)でIL−2を含む。それほど好ましくない実施形態において、本発明は、4−アミノキノロン抗生物質およびNIMを生成するマイトジェンの断続的存在で、実施され得る。この組み合わせは、パルス化したマイトジェンを用いる他の従来の技術的方法よりも大きいサイトカインレベルを産生するが、用量は、本発明の好ましい実施形態でみられるレベルを産生しない。
【0051】
本発明はまた、PHAのようなマイトジェンをパルス化しただけでなく4−アミノキノロンの連続的存在下で産生される未処置の非遺伝子組み換えインターロイキン混合物(NIM)で実施され得る。NIM調製物のような他の免疫調節未処置の非組み換えサイトカイン調製物はまた、本発明において使用され得る。種々の調製物が、IL−2含量によって比較され、そして投与量は、IL−2等価物として参照される。
【0052】
本発明において、胸腺ペプチドは、免疫改変剤サイトカイン調製物と共に共投与で使用される。チモシンα(T−α)またはその類似物および断片が、本発明の好ましい実施形態において、使用される。さらに、チモシンα11およびプロチモシンおよびそれらの類似物のような他の胸腺ペプチドが、使用され得る。チモシンα1配列を含む断片、胸腺ペプチド、アナログが、使用され得る。
【0053】
アナログは、一般に、機能的に関連ある任意の部位にわたって少なくとも70%相同である。さらに好ましい実施形態において、この相同性は、少なくとも80%であり、また胸腺ペプチド、特にチモシンαに対して95%の相同性に近いものである。この類似物のアミノ酸配列は、少なくとも1つの残基が、欠失され、挿入され、または置換される場合、胸腺ペプチドのアミノ酸配列と異なり得る。グリコシル化における差異によって、類似物を生成され得る。米国特許第4,116,951号:同4,353,821号;同4,466,918号;同4,470,926号,同4,612,365号;および同4,910,296号に記載されるようなアナログが、そのようなアナログの例でありまた、本発明において使用され得る。
【0054】
部分的に特徴付けられるNCMは、以前に、成長し、免疫抑制されたマウスにおいてT細胞の発達および機能を促進することにおいて効果的であることが示されてきた。チモシンαはまた、老齢の免疫抑制されたマウスにおいて、T細胞の発達および機能を防御し、そして、NCM+チモシンαの組み合わせは、脾臓において、新しいT細胞を産生するためのその作用において、劇的であった(米国特許第5,698,194号)。頭部および頚部の癌を有する免疫抑制された患者に対するこのNCMを添加するときに、NCMで処置した癌患者の血液におけるTリンパ球の固定化が、CDおよびCD45RAの両方を有する未処置のT細胞の増加をもたらすことが本願において初めて実証された。これは、成人が、未処置のT細胞を生成し得ることを最初に示したものの1つである。NCM+チモシンαは、NCM処置に耐性のある放射線照射された患者における「未処置の」T細胞の増加を生じた。以前の引用(Mackall,ら、New Eng J Medicine 332:143−149(1995);およびMackallによる概説Stem Cells 18:10−18(2000))は、子供でなく、成人において、癌の化学治療および/または放射線治療のためにT細胞を補完した後に、新しいT細胞を生成することの不可能性を考察しまた、試みることの問題を考察する。一般に、ヒト成人において、新しいT細胞は、生成されないという原理がある。しかし、強力な化学治療のための骨髄移植の後に、成人において、新しいT細胞が、生成され得ることの証拠がある。リンパ球数における増加は、HIVに罹患した患者において、遺伝子組み換えインターロイキン−2を用いた長期の治療および強力な治療を達成しているけれども、時代おくれである非分子治療は、これを達成し得ている。これらは、胸腺由来のT細胞であり、また、おそらく既存の抹消T細胞の増大であることがはっきりと証明されていない。
【0055】
以前に、Cortesinaら、は、頭部および頚部癌を有する患者において、リンパ周辺的に未処置のIL−2を用い、そして、白血球(Valente,Gら、Modern Pathol 3(6):702−708(1990))によるいくつかの腫瘍浸潤により、いくつか腫瘍退行を誘導した(Cortesina,Gら、Cancer 62:2482−2485(1988))。処置不可能な再発が生じ、この応答は、非特異的であり、記憶なしであると称され、非免疫原性である(Cortesina,Gら、Br J Cancer 69:572−577(1994))。遺伝子組み換えIL−2を用いた最初の観察を確かめるための反復試行が、実質的に成功しなかった(Hadden,J.W.,Int’I J Immunopharmacol,11/12:629−644(1997))。
【0056】
本発明の方法は、免疫治療成分の十分な局所集中をもたらすための、当業者において公知である外リンパ注射または他の注射を用いてNCM+チモシンαを使用することを含む。好ましい実施形態において、この注射は、頚部において行われるが、処置される疾患により要求される他の部位において適用され得る。この処置は、高い割合の患者において臨床的退行を誘導しまた、患者は、頭部および頚部癌において観察される改善および再発の無い生存を示し(Hadden,JWら、Arch Otolarygol Head Neck Surg 120:395−403(1994);Meneses Aら、Arch Pathol Lab Med 122:447−454(1998);Barrera,Jら、Arch Otolaryngol Head Neck Surg,126:345−351(2000);Whitesideら、Cancer Res 53:564−5662(1993))、遺伝子組み換えIl−2の腫瘍注射は、T細胞リンパ球の浸潤をもたらしたが、有意な臨床応答はなかった。リンパ節周辺注射と組み合わせたMultikine(Celsci website)の150人までの患者に対する腫瘍周辺注射は、本研究において観察される高い割合の応答である40%と比較して10%未満の応答率を生じる有意な腫瘍応答(すなわち、11人の患者のみにおいて50%を超える)をもたらした。加えて、かれらは、観察された50%の非応答者を示したが、本願出願人は20%のみを観察した。
【0057】
本願出願人は、腫瘍周辺注射および腫瘍内注射が、始めにNCMプロトコルに対して陽性応答を有していた患者においてさえ疾患の進行に関連し得、そのためその恩恵を台無しにすることを得ることを観測する。腫瘍周辺注射は、このため禁忌とされ、そして本発明の一部としては除外される。このことによって、本出願人は、以下の理解に到達した:腫瘍は、免疫の部位ではなく、そして本願は、局所的なリンパ節が免疫の部位であることを実証した。次に、局所的リンパ節の公表されていない解析は、局所的リンパ節が、想定された腫瘍抗原に対する免疫化の部位であることを示すデータを明らかにした(図14〜18)。様々な腫瘍抗原の数の同定と共に、そのような抗原の存在がもたらす長年にわたる難問があり、その問題は、免疫化プロトコルにおいて、有効的に使用されている。散発的陽性例が、報告されているが、多くの場合、データは陰性である。抗原提示の問題は、ここ10年において、注目され、そして樹状細胞は、腫瘍由来の小ペプチドの提示において、重要な働き手として明らかにされている(DeLaughら、Curr Opn in
Immunol 12:583−588(2000);Buchereauら、Ann
Rev of Immunol 18:767−811(2000);Albertら、Nature 392:86−89(1998))。
【0058】
手短には、腫瘍抗原が適切に免疫原となるために、これらは、ネクローシス性腫瘍細胞よりはアポトーシス性腫瘍細胞から生じなければならない(AlbertがNatureにおいて言及した)。これらは、大きな組織球の形態を有する未処置の樹状細胞によって捕獲される必要がある。これらの未処置の樹状細胞は、調整し(エンドサイトーシス、貪食作用および消化)、そしてT細胞に対する提示についてのMHC溝において消化された抗原のペプチド断片(一般に、9アミノ酸)を提示する成熟樹状細胞に発展する。応答のために、T細胞は、MHCにおいてT細胞に対して提示されるベき抗原および種々の共刺激を有さなければならない(BanchereauおよびDeLaugh)。
【0059】
Murphyら(1999)のような研究者は、培地中に生成され、次に腫瘍抗原と共にパルスされた樹状細胞を利用し、そして前立腺特異的膜抗原ペプチドに対して免疫された患者において、小さい度合いの成功を達成している。不幸なことに、パルス樹状細胞のこのアプローチは、扱いづらくまた、むしろ効率が悪い。本明細書において、本出願人は、癌における集積し、樹状細胞の直系の細胞であるリンパ節洞において存在する細胞を示す。NCMプロトコルを用いたインビボ処置の後に、これらの細胞は、消失し、そして次に抗原は、最終的にはT細胞についての免疫原になる。次に、これらは、腫瘍に対して応答し得る。従って、本発明の重要な局面は、局所的リンパ節において、効果的な抗原プロセシングおよび提示を可能にする微小環境を生成し得ることである。この免疫によって、病変および腫瘍に輸送され得る細胞を誘導する。これは、樹状細胞による適切な抗原の事実上の証明である。さらに、NCMで処置された患者は、臨床的に15%および病理学的に50%までに、遠方転移をほとんど起こさない。これは、局所免疫のみよりは全身免疫が、処置によって誘導されることを示す。これは、既存の分野における組成物にわたる極端な改善である。なぜなら、既存の分野の組成物は、最良では、転移疾患に対する一貫性のない効果である。全身免疫を引き起こすための本発明の組成物の能力は、さらに効果的効率の良い処置を可能にする。
【0060】
文献は(Hadden,JW、Int’l J Immunopahrmacol 11/12:629−544(1997);Hadden,JW,Immunology and immunotherapy of Breast Cancer:An Update,Int’l J Immunopharmacol 21:79−101(1999))、癌の2つの主要なタイプであるSCCおよび腺癌の両方について、リンパ節は、局所的なリンパ管の組織増殖を含む腫瘍に関する異常に関連し、リンパ節涸渇およびアネルギー性腫瘍関連リンパ球(これは、細胞外拡張およびIL−2による回復を伴う腫瘍細胞に対する反応し得る)の存在を反映する。次に、転移に伴って、リンパ節涸渇および機能の減圧が、生じる。加えて、そのような患者の無関係な頸部リンパ節は、平均サイズにおける減少ならびに頭部および頸部癌に関連するリンパ管組織増殖における増加を示す。(図14〜17を参照のこと)。
【0061】
本発明の組成物としては、未処置のサイトカイン混合物+内因性または外因性の腫瘍関連抗原のいずれかが挙げられる。さらに、シクロホスファミド、シクロオキシゲナーゼインヒビター、亜鉛および本発明の組成物の効果をさらに増加させることが示されている他の類似の組成物が挙げられる。
【0062】
癌、HIV感染、加齢、腎移植片および他のそのような欠乏に関連する細胞性免疫欠乏を有する患者の処置のための免疫化は、本発明の組成物と共に達成され得る。
【0063】
処置のための投与およびプロトコルは、以下に示す。
【0064】
(遺伝子産物および/または合成抗原の送達)
本発明の組成物(NCMを含む)および外因性抗原は、投与され、そして適切な免疫化を達成するために投薬され、個々の患者の臨床的状態、投与部位および方法、投与の予定を立てること、患者の年齢、性別および体重に考慮する。本明細書において、目的のための薬学的「有効量」は、このように当該分野において公知であるそのような考察により決定される。この量は、免疫化(腫瘍減少、断片化および浸潤を含むがこれらに限らない)、生存率またはより急速な回復、症状の改善または除去を達成するために有効でなければならない。
【0065】
本発明の方法において、本発明の化合物は、種々の方法において投与され得る。それらは、組成物として、または薬学的受容可能塩として投与され得、そして単独または薬学的に受容可能担体、希釈剤、アジュバンドおよび賦形剤と活性成分との組み合わせとして投与され得ることに留意されるべきである。その化合物は、皮内または皮下、リンパ周辺またはリンパ内、結節内、脾内あるいは筋肉内、腹腔内および胸郭内に投与され得る。化合物のインプラントはまた、有用であり得る。処置された患者は、恒温動物であり、特に人間を含む哺乳類である。薬学的受容可能担体、希釈剤、アジュバンドおよび賦形剤ならびにインプラント担体は、一般に本発明の活性成分と反応しない、不活性、無毒の固体あるいは液体充填物、希釈剤またはカプセル化した材料をいう。
【0066】
用量は、単一用量または数日にわたる複数用量であり得る。
【0067】
本発明の化合物を非経口的に投与する場合、それは、一般に単位用量注射可能形態(溶液、懸濁液、乳濁液)で形成される。注射に適した薬学的処方物としては、無菌水溶性水溶液または懸濁液および無菌の注射可能溶液または分散液に再溶解するための無菌粉末が挙げられる。担体は、溶媒または分散培地であり得る(例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール(PE)など)、その適した混合物および野菜油を含む)。PEGは、化学的改変(NCE)サイトカイン調製物(ペギレーション)を含むことが、注目すべきである。
【0068】
適切な流動性は、例えばレシチンのようなコートティングの使用、分散液の場合における必要な粒子サイズの保持、および界面活性化剤の使用によって維持され得る。綿実油、ごま油、オリーブオイル、大豆油、コーン油、ひまわり油またはピーナッツ油のような非水性賦形剤およびミリスチン酸イソプロピルのようなエステルはまた、化合組成物のための溶媒システムとして使用され得る。加えて、組成物の安定性、無菌性および等張性を高める抗菌的防腐剤、抗酸化剤、キレート剤および添加され得る緩衝化液を含む種々の添加剤が、加えられ得る。微生物の作用の阻害は、種々の抗菌および抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸など)により確保され得る。多くの場合、等張液(例えば、糖、塩化ナトリウムなど)を含むことが望ましい。注射可能薬学形態の遅延された吸収は、吸収を遅延させる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)の使用によってもたらされ得る。しかし、本発明に従って使用される任意の賦形剤、希釈剤または添加剤は、この化合物と適合性であるべきである。
【0069】
ペプチドは、重合され得、あるいは当該分野において周知のオボアルブミンまたはヒト血清アルブミンのような担体に結合し得る。
【0070】
無菌的注射可能溶液は、所望のような種々の他の成分を有する適切な溶媒の要求される量で、本発明の実施において利用される化合物に組み込むことによって調製され得る。
【0071】
本発明の薬理学的処方は、種々の賦形剤、添加剤および希釈剤のような任意の適合性担体を含む注射可能処方物において、患者に投与され得るか;または本発明の有用な化合物は、遅延放出皮下インプラントまたはモノクローナル抗体、ベクター送達、イオン導入、ポリマーマトリクス、リポソームおよびミクロスフィアのような標的送達システムの形態で、非経口的に、患者に投与され得る。本発明における有用な送達システムの例としては、以下が挙げられる:米国特許第5,225、182号;5,169,383号;5,167,616号;4,959,217号;4,925,678号;4,487,603号;4,486,194号;4,447,233号;4,447,224号;4,439,196号;および4,475,196号。多くの他のそのようなインプラント、送達システムおよびモジュールは、当業者において周知である。
【0072】
一般に、NCMの最初の用量は、チモシンα1と同時にか、または一般的および好ましくは同日に、1つの薬物、続いて他の薬物を投与することによっての、いずれかにで投与され得る。NCMは、効果を失いまた、毒性を増加するような高用量(>1000単位/用量)を使用しないことが重要であるので、低用量(200〜500単位)のIL−2等価物で投与される。
【0073】
さらに詳細には、上述のことは、自系あるいは規定されたタンパク質のまたはペプチドのいずれかの腫瘍抗原に対して癌患者を免疫するためのアジュバンドとしてNCMを使用するためのプロトコルを提供する。
【0074】
【表2】

抗原+NCM+チモシンα投与の経路は、好ましくは頸部である。なぜならば、頸部は、アクセス可能で、そして頸部は、体のリンパ節の30%より多くのリンパ節を含み、そして全身免疫が、結果に想定され得る。
【0075】
低用量シクロホスファミドは、細胞性免疫を増加し、そして癌を有するマウスおよび患者におけるリンパ球による減少を減少させるために使用され得(Berd,D、Prog
in Clin Biol Res 288:449−458(1989);Bert,Dら、Canc Res 47:3317−3321(1987)、そして癌患者の効果的な免疫治療において採用されている(Weber,J.Medscape Anthology 3:2(2000);Murphy,GPら、The Prostate 38:43−78(1999);Hadden,JWら、Arch Otolaryngol Head Neck Surg 120:395−403(1994))。
【0076】
亜鉛欠乏は、改善された細胞性免疫に関し、そして亜鉛での処置は、マウスにおいて免疫回復する(Hadden,JW、Int’l J Immunopharmacol 17:696−701(19995);Saha,Aら、Int’l J Immunopharmacol 17:729−734(1995))。
【0077】
インドメタシンのようなシクロオキシゲナーゼインヒビター(COXi)が、使用される。癌は、プロスタグランジンを産生し、そしてプロスタグランジンのホストマクロファージ産生を誘導する(Hadden,JW、The Immunopharmacology of Head and Neck Cancer:An Update、Int’l J Immunopharmacol 11/12:629−644(1997))。プロスタグランジンは、T細胞について免疫抑制することが公知であり、シクロオキシゲナーゼインヒビターでのPG合成の阻害が、適切である。
【0078】
(組み換えタンパク質精製)
Marshakら、Strategies for Protein Purification and Characterization,a Laboratory Course Manual、CSHL Press(1996)。
【0079】
(抗原の用量および頻度)
1〜1000μg、好ましくは10〜50μgが、使用される。抗原の形態は、可溶性である(必要である場合のみ部分重合または担体に結合される)。
【0080】
日程 1日目、12日目、21日目
(Pre−RX) 12日目、21日目、31日目
注射部位 局部注射、すなわち頸部注射
期待される応答は、腫瘍退行であり、そして腫瘍病理学的変化が、退行、断片化、リンパ球浸潤である)。抗原に対する体液性免疫(RAIまたはELISA)ならびに抗原に対する細胞性免疫(インビトロリンパ球増殖における皮内皮膚試験またはELISPOT ASSAY)が、期待される。
【0081】
PSMAのようなオリゴヌクレオチド、MAGE断片、E6ペプチドおよびE7ペプチドは、通常、担体に対する結合または樹状細胞状にパルスされることなしに免疫源でない。従って、効果的免疫化が、起こることが期待されない。効果的免疫化を有してさえ、腫瘍退行は、この方法により特に前立腺および頸部でのような距離で、意外なことであると見なされる。転移性疾患の退行は、常に、免疫治療で、意外なことである。臨床的応答の度合いおよび頻度は、有効性における因子であり、従ってこのアプローチは、斬新である。診断皮膚試験は、より効果的な免疫化に対する別のガイドである。患者は、IRX−2(NCM)およびより良い応答を誘導するチモシンαで前処置され得る(NCMの増加およびPHA皮膚試験およびリンパ球数ならびにリンパ節障害の逆転)。
【0082】
これは、アジュバンドストラテジーを作製する
1)免疫回復およびアジュバンドの組み合わせる;
2)免疫原性ペプチドおよびタンパク質の作製する;
3)遠隔での腫瘍退行に影響を与えるための免疫応答の度合いを得る;
4)腫瘍抗原ならびにペプチドおよび/または炭水化物を含むハプテンの全形態に拡張する。
【0083】
HIV陽性患者、状況を取り扱うことが難しいもの、腎移植片、加齢などにおいて、AIDSウィルスワクチンにおけるのと同様に、適用可能性の範囲に拡張し得る。
【0084】
プロトコルの評価の前に、患者は、MHC制限ペプチドおよび1つ以上の腫瘍ペプチドについて試験された皮膚について合致したHLAである。100μgの1つ以上の腫瘍ペプチドは、以下に考察されるNCMプロトコルを使用し、NCM+チモシンαで頸部において、NCM連続投与を1日目および10日目にリンパ周辺投与される。この組み合わせは、21日目まで繰り返された。腫瘍応答および組織学に加えて、ペプチドに対する免疫反応は、皮膚試験の繰り返しまたは他の当該分野において公知の方法によってモニターされる。
【0085】
以下の例は、NCM+チモシンα1の免疫回復効果およびアジュバンド効果を提供するための本発明の有用性を示す。例に紹介されるように、参考文献が、米国特許第5,632,983号(’983特許)(本明細書の発明者と同一の発明者を有する特許)に作製される。’983特許は、胸腺細胞(図21)および脾細胞(図22)に対するインビボの処置から得られたデータを示す。このデータは、コントロール培地(白抜き棒)、rIL−1(塗りつぶし棒)、rIL−2(網掛け)およびNCM(斜線)を用いた刺激に対するインビトロ応答を示す。チモシンαおよびNCM単独は、両方の中心リンパ組織において、多くの応答を増加させる。全ての4つの応答について、劇的かつ高い有意な増加を生じる組み合わせ。このデータは、マウスのインビボにおいてのみ示されていた。
【実施例】
【0086】
(実施例1)
細胞培養に関する全ての工程を、無菌条件下で、実施する。本明細書に記載されない細胞免疫学の一般的な方法を、MishellおよびShiigi(Selected Methods in Cellular Immunulogy(1981))ならびに当該分野で公知のような細胞免疫学技術について一般的な参考文献に記載されるように実施する。
(天然サイトカイン混合物(NCM)の調製)
複数のHIV陰性、肝炎ウィルス陰性ドナー由来のヒト血液のバフィーコート白血球を採取する。代替の実施形態において、動物を獣医学的使用のための細胞源である。ドナー由来の細胞を貯め、フィコールへパキュー(hypaque)グラジエント(Pharmacia)上に層にし、好中球および赤血球のないリンパ球を得た。当業者において公知の同様の開始リンパ球集団を生成する代替の方法を使用し得た。
【0087】
リンパ球を洗浄し、そして細胞の部分集合の選択のための表面活性化細胞培養フラスコ(固定された刺激物(すなわち、PHA様マイトージェン)を含む)(MICROCELLECTORTM T−25 Cell Culture Flasks)に、X vivo−10(Whittaker Bioproducts)培地中で分配した。実施例の1つのセットにおいて、X vivo−15およびX vivo−20培地を指示されたように使用した。刺激物についての固定化工程は、フラスコにおいて、パニング手順(すなわち、細胞の分離)のための種々の物質を固定化するために、製造業者よって記載されているとおりである。あるいは、リンパ球を刺激物(例えば、PHAに2〜4時間)に曝露し、次に3回洗浄した。
【0088】
細胞をX vivo−10培地中で、80μg/mlシプロフラキサチン(Miles
Lab)と共に37℃、CO/空気のインキュベーター中で24〜48時間インキュベートした。あるいは、RPMI 1640培地を使用した(Webbら、(1973))。全般的に、HSAを0.1〜05%で使用した(重量/体積)。インキュベーションの後、上清を取り出し、そして採取した。HSAを含まない培地を生成のために使用する場合、さらなるインターロイキンを安定化するためにヒト血清アルブミン(HSA)を、加え得る。上清を4℃〜−70℃で保存する。
(上清の特徴づけ)
貯えた上清を、残存するインターロイキン(IL−1、IL−15、TNFおよびIFN)についてのIL−2およびELISAのためのバイオアッセイによりサイトカイン含量を測定することで特徴付ける。無菌性を、チオグリコレートブロス中での培養によって試験し、外毒素を当該分野において公知のリムルス溶解物アッセイにより測定した。
(サイトカイン含有の上清の標準化:)
各上清を、比較を行い得るように投与濃度または量のどちらかにより標準化する。
(上清からコンタミネーションを取り除く:)
使用する場合、DNAおよびウィルスの除去は、静脈内ガンマグロブリンおよびモノクローナル抗体のために使用されているような限外濾過、カラムクロマトグラフィー、ウィルス保持(retentive)フィルター、エタノール分画、ポリエチレングリコール/ベントナイト沈降、ガンマ放射線、および/または溶媒剤/界面活性剤処理などの技術を採用する(例えば、IGIV News Update brochure)。
(モデル)
加齢したマウスにおいて、ヒドロコルチゾン誘導胸腺退行のモデルを、特に指示のない限りは使用した(Hadden JWら、Int’l J Immunopharmacol 17:821−828(1995)。
【0089】
(実験室動物)
胸腺の退行の始まった、加齢し、繁殖しなくなったメスBALB/cマウス(Life
Science、St. Petersburg,FL)をインビボ試験に使用した。マウスの体重を一致させ、そして無作為に5つの群に分けた。動物を、任意に水を飲むことができる条件で、標準的実験室飼料で飼育した。全てのマウスを(コントロール群は除いて)、2日連続で、ヒドロコルチゾン(0.9%塩化ナトリウム0.1ml中5mg/マウス)で腹腔内(i.p.)に処置し、化学的に胸腺除去および脾臓重量の減少を誘導した。
【0090】
ヒドロコルチソン処置成体マウスは、2日目に、急激な胸腺退行(コントロールの30%未満)および脾臓サイズの減少(コントロールの80%未満)を示し、10日目までの進行性回復を示した。
(実験設計)
各処置群は、5匹の動物を有し、各実験は、2〜5回繰り返した。処置を、3日目に腹腔内(i.p.)で始め、合計5日の間、1日に1回、続けた。処置群に、テキストに指示されるような以下のインビボ処置の1つを用いて、注射した。
【0091】
・1.発熱物質を含まない生理食塩水(コントロール)
・2.組換えインターロイキン−1(rIL−1;4ng);
・3.組換えインターロイキン−2(rIL−2;50単位);
・4.rIL−1+rIL−2(それぞれ4ng+50単位);
・5.未処置のサイトカイン混合物(NCM;50単位(IL−2相当))
8日目に、マウスを計量し、頚椎脱臼により屠殺し、そして脾臓および胸腺を取り出し、計量した。その器官をすり潰し、残った赤血球を、塩化アンモニウムを使用して溶解し(MishellおよびShiigi(1981))、そして細胞を数えた。
【0092】
次に、種々の物質に対する細胞の増殖応答を、決定した。細胞のサンプルを、5%仔ウシ血清、ペニシリン(100U/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)および2−メルカプトエタノール(2×10−5M)を含むRPMI1640培地中で、37℃、5%COで細胞培養するために調製した。細胞を、4連で、1.5×10/mlの濃度で、0.2mlマイクロウェルプレートにプレートし、そしてテキストに指示されるような以下の1つと共に、72時間インキュベートした。
【0093】
・1.コントロール希釈液(完全RPMI1640培地)
・2.rIL−2(1ng/ml);
・3.rIL−2(2単位/ml);
・4.NCM(2単位/ml(IL−2相当));
・5.コンカナバリンA(ConA;1.5μg/ml);
・6.フィトヘマグルチニン(PHA;0.5μg/ml)
培養を、終了して、トリチウム化チミジン(3H−チミジン;New England
Nuclear、Boston、MA:比活性6.7Ci/mM)の18時間のパルスを用いてDNA合成(およびそれによって細胞増殖)を測定し、複数の自動サンプル採取機を用いて採取し、そして液体シンチレーションカウントのために処理した。マーカー研究をまた、Haddenら、(1992)に述べられるように実施した。結果を、各動物について3サンプルからcpmの相加平均として表した。異なる動物で得られたデータの表示を簡単にするために、異なる動物のデータをプールし、そして一緒に計算し、いくつかの場合において、コントロールに対する割合として表し、他を平均の標準誤差(SEM)について平均+ブラケットとして表した。
(統計的解析)
スチューデントT検定を必要に応じてデータを解析するために使用した。
(結果)
この目的は、血清の非存在下および上清中に十分な量のPHAを生じない方法において、高レベルのインターロイキン−2を産生するようにリンパ球を刺激するための方法を見出すことあった。これを行うために、PHAを、細胞サブセットの選択のために、「パニング」細胞分離についての業者の説明書に記載されるように、表面活性化細胞培養フラスコ(AIS MICROCELLECTORTM T−25 プレート)に固定化したか、または細胞にパルスし、その後洗浄した(パルス技術)。
【0094】
これらの実験で使用した培地は、X vivo−10(Whittaker)であり、そして、インターロイキン−2リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞プロトコルのためのヒトに対する投与について、U.S. Food and Drug Adiministrationによって認可された。最小必須培地(MEM)またはRPMI−1640(Sigma)のようなヒトリンパ球増殖を支持し得る無血清培地もまた、使用し得た。
【0095】
最初の実験は、PHA(HA−16、Murex Diagnostics Ltd.、Dartford、UK)が、業者によって述べられる技術によって固定化され得ることを示し、7.5〜15×10/mlの細胞数の適切な最適状件、24時間〜48時間の曝露時間、および25μg/mlまたは50μg/mlのPHA濃度下で、無血清上清中にIL−2の高用量が、得られ得た。この収量は、洗浄および無血清培地中でシプロフラキサン(NIM)との次の培養が後に続く、PHA(NI)に対する短時間の曝露を使用するパルス技術よりも優れていた(表I)。このため、このフラスコ手順を、NCM混合物を生成のために使用した。
【0096】
【表3】

細胞無しにインキュベートしたフラスコからの無細胞上清を、残留PHAが、増殖応答を引き起こすために十分な量で存在するか否かを決定するために、ヒトリンパ球で試験した。0.01μg/mlより多い残渣PHAはいずれも、そのような応答を与えた。細胞の非存在下において、少量のPHAを、40〜48時間にて上清中で観察された;しかし、PHA(25μg/ml)を、24時間だけ使用した場合、これらのレベルは、無視できた。従って、24時間のインキュベーションを最適と見なした。
【0097】
本発明において、X vivo−10、X vivo−15およびX vivo−20(Whittaker)ならびにMEMの比較を行い、そして図1〜3に示した。X vivo−10およびX vivo−15は、IL−2リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞プロトコルのためのヒトに対する投与について、U.S. Food and Drug Adiministrationによって認可された。NCMの生成を、1μg/mlのPHAパルスに対する曝露に対して連続曝露を利用して、異なる培地において比較した(図1)。細胞濃縮の影響を、1μg/mlのPHA(図2)および2μg/mlのPHA(図3)に対する連続的曝露で調べた。これらの因子の最適な組み合わせは、2μg/mlのPHAで2.5×10/mlまたは5.0×10/mlの細胞濃度、あるいは1μg/mlのPHAで5×10細胞/mlの濃度で、X vivo−10中で固定化することによる連続曝露であることが見出された。細胞あたりの収量は、2.5×10細胞/mlで最も効率が良かったので、2μg/mlのPHAの濃度を最適として選択した。
【0098】
予備実験を、フラスコではなくチューブにおいて、PHAに対する曝露の後、ヒト白血球からのサイトカイン産生を増強するための、シプロフラキサチンおよび2つの他の4−アミノキノロン抗生物質(ノルフロキサシンおよびオフロキサシン)についてのパラメーターを決定するために実施した。表IIは、これらの4−アミノキノロン抗生物質の各々が、IL−1、IL−2、IL−6、IFN−γ、TNFαおよびG−CSFの産生を増強したことを示す。IL−8産生が、最高であった。IL−3、IL−4およびIL−7は、これらの環境下で、全ての上清において検出不可能であった。これらの結果は、これらの無血清条件下で、80μg/mlで試験した全ての4−アミノキノロンが、無血清条件下でPHA誘導サイトカイン産生を増強することを示す。
【0099】
【表4】

Tリンパ球の増殖をおよびサイトカインの産生を誘導するモノクローナル抗体OTK−3(Ortho)が、これらの条件下で刺激物質として使用され得るいなかもまた、決定した。表IIIは、OKT−3誘導サイトカインは、実施例1に記載のフラスコ中でインキュベートされた細胞でPHA+シプロフラキサチンによって誘導されるサイトカインに類似することを示す。IL−3、IL−4、IL−5およびIL−7は、いずれの刺激物のセットでも、検出されなかった。OKT−3は、PHAおよびシプロフラキサチン(CIPRO)と組み合わせた場合、いくつかのILについて小さい相加効果を生じた。
【0100】
【表5】

インビトロで、rIL−1に対するNCMの優位性を示すために、マウス脾臓細胞および胸腺細胞を、バイオアッセイにより決定されるようなIL−2の比較可能レベルで、MEMおよびrIL−2で培養し、そしてDNA合成を、トリチウム化チミジン取り込みにより測定した。NCMは、IL−2含量に基づいて、rIL−2より、脾臓細胞(図4)および胸腺細胞(図5)のより多い増殖を誘導する。
【0101】
図6および図7に記載のような一連の実験において、退縮胸腺を有するマウスを、インビボで、rIL−1、rIL−2、これらの因子の組み合わせ、NCMまたは生理食塩水(コントロール)で処置した。脾臓および胸腺を取り出し、細胞をインターロイキン(IL−1、IL−2)、NCMおよびマイトジェンConAに対する細胞増殖応答について試験した。これらの結果を、生理食塩水処置されたコントロールに対する割合として表す。rIL−1、rIL−2およびそれらの組み合わせ(rIL−1およびrIL−2)を用いたインビボ処置には、IL−1、IL−2、NCMまたはConAを用いたインビトロ刺激に対して、脾臓細胞(図6)または胸腺細胞(図7)の増殖応答を増加させる有意な効果はなかった。インビボのNCM処置は、4つ全ての刺激物に対して脾臓細胞および胸腺細胞の両方を有意に増加させた。これらの結果は、刺激に対するこれらの細胞の高められた感受性および/または応答細胞の数の増加と一致する。
【0102】
図8および図9は、脾臓細胞および胸腺細胞マーカーに対するインビボのNCM処置の効果を示す。非成熟T細胞は、−−によって示され、そして特に胸腺においてTリンパ細胞前駆体を示し得る。NCMは、脾臓および胸腺においてこの集団を比例して増加させた。未成熟T細胞を、++によって示し、そしてこの集団は、NCM処置によって胸腺と比例して減少される。成熟T細胞を、CD4+およびCD8+によって示す。NCMは、胸腺における成熟T細胞の割合および脾臓における成熟T細胞の数を増加させた。これらの結果は、T細胞前駆体を増加させるNCMの効果、および胸腺における成熟T細胞へのそれらの発達を促進するNCMの効果と一致する。
【0103】
図10および図11は、インビボでのヒドロコルチゾンモデルにおける、コントロール培地またはNCMでの処置後の、培地(RPMI)、rIL−1(IL−1)、rIL−2(IL2)またはNCMに対するインビトロの脾臓細胞応答および胸腺細胞応答を示す。マウスを、本明細書中に上記されるように処置した。これらのデータは、NCMが、バックグランド脾臓細胞応答、IL−1およびIL−2に対する脾臓細胞応答を増加するが、NCMおよびバックグランド胸腺細胞、ならびにIL−1、IL−2およびNCMに対する胸腺細胞応答を増加しないことを示す。
【0104】
図12および図13は、インビボでコントロール培地またはNCMで処置した後の、ConAおよびPHAに対するインビトロの脾臓細胞応答および胸腺細胞応答を示す。マウスを、本明細書中に上記されるように処置した。
【0105】
インビトロでの研究は、増殖シグナルに対し脾臓細胞および胸腺細胞を感作することにおいて、等用量で、rIL−2に対するNCMの優位性を示す。胸腺細胞に対する影響は、同様に分化の促進を反映する。NCM組成物(rIL−1でも、rIL−2でもまたはそれらの組み合わせでもなく)が、インビボのTリンパ球機能(IL応答)および発達(マイトジェン応答および細胞マーカー)を強力に促進し、免疫系の刺激あるいは損傷または欠損した免疫系のなお部分的機能を回復することを必要とするあらゆる治療測定において、治療的に適切である。例えば、化学治療剤は、免疫応答に関連する、Tリンパ球を含む細胞を損傷し得る。本発明は、Tリンパ球機能および発達を刺激することによって損傷した場合、部分的または全体的のいずれかで、免疫システムの特性を回復し得る。
【0106】
(実施例2)
NCM+低用量シクロホスファミド、インドメタシンおよび亜鉛を有する、頚部における局部リンパ周辺注射が、扁平上皮頭部および頚部の癌(H&NSCC)を有する患者の高い割合において、改善された再発のない生存の証拠とともに、臨床的退行を誘導したことが示される(Hadden JWら、Arch Otolaryngol Head Neck Surg 120:396−403(1994);Meneses Aら、Arch Pathol Lab Med 122:447−454(1998);Barrera Jら、Arch Otolaryngol Head Neck Surg 126:345−351(2000))。全体として、病理学的検体において、少ない応答(25%〜50%)の腫瘍縮小および腫瘍減少を含め、90%より多くが応答し、そして大部分は、50%より大きい腫瘍減少を有した。
【0107】
Bリンパ球およびTリンパ球の両方が、腫瘍を浸潤することが観察されたので、これらの応答は、免疫退行によって媒介されることが、推測される。治療は、重大な毒性を伴わなかった。
【0108】
いくつかの非公開な観察が、この推察を立証するように働き、そして本発明を導く。
【0109】
1) NCMの組み合わせによるリンパ球減少癌患者の処置は、顕著なリンパ球の流動化を生じた;ここで、解析されたこれらの患者は、CD45RA陽性T細胞(すなわち、未処置のT細胞(表I))における増加を示した。
【0110】
2) H&NSCCを有する患者におけるNCMの腫瘍内注射または腫瘍周辺注射は、反回性免疫治療誘導性腫瘍退行または腫瘍の進行のいずれかを生じた。従って腫瘍は、免疫化の部位ではない。
【0111】
3) 局部リンパ節の解析は、局部リンパ節が、仮定された腫瘍抗原に対する免疫化部位であることを示す非公開のデータを明らかにした(図14〜18を参照せよ)。
【0112】
4) NCMで処置したこれらの患者は、臨床的に期待される15%、および病理学的に50%までの転移を発症し、このことは、局所免疫だけでなく全身免疫が誘導されたことを示す。
【0113】
5) 患者を、処置の前に、0.1mlのNCMに対する皮膚試験で前試験した。陽性皮膚試験(24時間で70.3mm)を有するそれらの90%より多くは、強力な臨床的および病理学的応答を有した。陰性皮膚試験を有する患者は、応答が弱いかまたは全くなかった。この皮膚試験は、良好な応答者を選択するようである。
【0114】
これらのTリンパ球減少患者(通常=1600に対し、T細胞数752)において、多くの増加がTリンパ球数において観察された((CD)752→1020)。重要なことには、「未処置の」CD45RA陽性T細胞の対応する増加(532→782)があった。以前言及したように、これらの増加は、一般的に成体、特にNCMのような薬理学的治療を伴う成体において起こるとは考えられない。これらの細胞は、おそらく最近胸腺から遊出したものであり、そして腫瘍抗原のような新しい抗原に対して応答する主要な新しい能力であると見なされ得る。あらかじめ存在するCD45RA陽性細胞は、腫瘍抗原に対して応答せず、そして腫瘍誘導免疫抑制(アネルギー)に起因して、それを行い得ないものであり得る。
【0115】
文献(Hadden JW、Intl J Immunopharmacol 11/12:629−644(1997);Hadden JW、Intl J Immunopharmacol 21:79−101(1999))は、2つの主要な癌のタイプであるSCCおよび腺癌の両方について、局所リンパ節が、腫瘍に関する異常(洞組織増殖、リンパ涸渇およびしばしば(IL−2を有する)腫瘍細胞と反応し得る腫瘍関連リンパ球の存在を含む)を反映することを示す。転移と共にリンパの涸渇および機能低下が、起こる。無関係の頸部リンパ節10のH&NSCCおよび10コントロールに関連しない非公開の解析は、平均サイズの減少およびH&NSCCに関連する洞組織増殖の増加を示した(図14〜17)。
【0116】
【表6】

NCM(IRX−2)プロトコル(Hadden JWら、Arch Otolaryngol Head Neck Surg 120:395−403(1994);Meneses Aら、Arch Pathol Lab Med 122:447−454(1998);Barrera Jら、Arch Otolaryngol Head Neck Surg 126:345−351(2000))の1サイクルで処置した後、関連する頸部リンパ節は、図14〜17に示される変化を示した。NCMで処理しないH&NSCCを有する患者の局部リンパ節と比較して、これらのリンパ節は、サイズ、T細胞領域および濃度における有意な増大ならびに胚中心およびリンパ管組織増殖ならびにうっ血の減少を示す。増加T細胞領域および濃度を有する処置された患者のリンパ節は、全て刺激され、そしてコントロールの節より多かった。従って、これらの節は、通常に回復されるだけでなく、T細胞優勢(H&NSCCにおける生存率に関連する既知の陽性)の結果を示した(Hadden JW、Intl J Immunopharmacol 11/12:629−644(1997))。
【0117】
重要なことには、B細胞およびT細胞領域に関するリンパ節の変化が、T細胞およびB細胞の浸潤を反映するそれらの腫瘍における変化に関連する場合、高い度合い相関がT細胞(p<0.01)およびB細胞(0.01以下)ならびに全体のリンパ節の存在(p<0.001)について得られた(図18)。これらの変化は、病理学的基準および臨床的診断基準によって腫瘍減少に相関する。これらの発見は、腫瘍反応が、直接的でありまた、リンパ節の変化に明確に関連すること、ならびに腫瘍反応が、依存変数としてリンパ節の変化を反映すことを示す。これらの発見は、どのように免疫系が一般に働くのかについての知識に結び付けられ(Roitt,Iら、Male D Immunology、JB Lippincott Co、Phila、PA(1989))、サイトカイン遺伝子(Maass Gら、Proc Natl Acad Sci USA 92:5540−5542(1995))を用いたその後のトランスフェクションは、NCMプロトコルが、リンパ節レベルで未だ同定されていない腫瘍抗原に対してそれらの患者を免疫することを示す。これまで、自己腫瘍抗原での免疫を反映したリンパ節の変化についての証拠を提示した者はいない。これは、遠方転移の減少を生じるための効果において、以前効果がなかったかまたは、乏しい効果の腫瘍抗原での免疫を誘導することを試みるために良好な開始点であると考えられる。
【0118】
(実施例3)
2人の患者を、頭部または頸部リンパ腫を処置した。誘導された患者は、このプロトコルに携わることを承諾した頭部および頚部癌を有する患者であった。次のスキームは、以下:
処置の前に、患者を、0.1mlのNCMで前腕の皮下で皮膚試験した。領域に印をつけ、24時間後、試験を読み取った。試験は、誘導および紅斑が、3mmより大きかった場合、陽性と見なした。
【0119】
NCMの各サイクルは、以下のように21日間であった。
【0120】
【表7】

(症例1)
患者は、来院時に3ヶ月の左下顎領域が存在する病原が存在する23歳男性であった。救急処置室で、彼は、堅い直径にして約6.5cmの左顎下三角のリンパ腺症(部分的に深いレベルで固定されていた)を有していることが判明した。身体検査の残りは、正常であった。切開バイオプシーは、ホジキンリンパ腫を示した。病変は、ECIIA期であった。NCMの1サイクルの処置を行い、リンパ腺症が直径1cmだけサイズが減少するような乏しい応答を得た。NCM処置後に得られたバイオプシーリポートは、60%の正常なリンパ球浸潤を示す病変を示し、そして新形成(40%)の残りは、壊死を示した。生存した腫瘍細胞は、認められなかった。
【0121】
これに続いて、患者の頸部において、3600radの放射線照射で処置した。
【0122】
(症例2)
患者は、痛みを供なう頸部中央腫瘍ならびに10kgの体重減少が存在する82歳、男性であった。身体検査で、右口蓋扁桃に腫瘍が認められ、約4×3cmに拡大し、扁桃中央に潰瘍を有していた。頸部において、測定された右下顎リンパ節は、約2×2cmならびに約5×5cmのレベルIIおよびレベルIIIのリンパ節の大きさであった。身体検査の残りは、正常であった。扁桃および頸部リンパ節の切開生検は、明らかに中間グレードの非ホジキンリンパ腫混合を示した。
【0123】
患者を2サイクルのNCMに曝し、扁桃および頸部腺症の直径で1cmの縮小を確認した。NCM投与後の形態学的レポートは、生存腫瘍20%、断片化そして、壊死したもの30%および正常リンパ球浸潤50%を示した。
【0124】
患者を、6サイクル以降で、化学治療を行い、後に全線量4600radで外的放射線治療(RT)した。彼は、RT後8ヶ月で、後頭部レベルで副腎過形成を再発した。患者は、頸部癌が原因で3ヵ月後に死亡した。
【0125】
(実施例4)
未処置の早いステージ(臨床的ステージIB1、IB2およびIIA)の頸部癌を有する10人の患者を、IRX−2として局所的、リンパ周辺的注射(10日間の注射)で処置21日後に、子宮の完全摘出を行った。IRX−2開始1日前に、患者を、300mg/mでシクロホスファミドの単回の静脈投与した。経口インドメタシンまたはイブプロフェンおよび亜鉛サルフェートを1日目〜21日目まで投与した。臨床的ならびに形態学的応答、毒性および疾患のない生存を評価した。
【0126】
全ての患者のNCM処置が完了し、そして応答および毒性を評価した。臨床応答は、患者の50%(3人の部分的応答(PR)、2人の乏しい応答(MR)(25%を越え、50%未満の減少))で認められた。7人の患者を外科手術した。病理学的に、腫瘍の断片化に伴う腫瘍の減少が、5症例にて認められた。むしろリンパ球、形質細胞、好中球、マクロファージおよび赤血球を誘導した腫瘍を浸潤する細胞型の、より異形なパターンが存在する。重度の痛みおよび注射の際の少しの出血ならびにインドメタシンに対する胃不耐性を除いて、処置は、非常に受け入れられた。24ヶ月目の追跡調査の後、9人の患者が、疾患から解放された。
【0127】
この以前の未公開な研究によって、腫瘍周辺のNCMが、初期の未処置頚部癌において免疫媒介腫瘍応答を誘導することを示す。
【0128】
(実施例5)
原発性肝細胞癌腫からの肝臓転移を有する2人の患者を、NCMの脾臓内注射(1回以上の注射)で処置した。プロトコルは、H&NSCC、頸部またはリンパ腫の症例について以前に述べられるようなものとは別である。進行した肝細胞癌腫を有する1人の患者は、断層撮影法により確かめられた部分応答を有した。組織学は、利用不できない。他の患者は、外科手術により確かめられた部分応答を有した。組織学的検査は、腫瘍の縮小、断片化およびリンパ球浸潤を示した。
(実施例6)
ペニスの扁平上皮癌(ヒトパピローマウィルスに関連する)を有する4人の患者を、上記のNCMプロトコルで処置した。4人全員が、臨床的部分応答を有し、そして外科手術標本は、腫瘍の減少および断片化ならびにH&NSCC癌患者に特徴的なリンパ球浸潤を示した。
【0129】
(実施例7)
マウスを、アジュバンド(5@)としてミョウバン(体積1:1)を有するオボアルブミン100μgに結合したPMSAペプチドまたはNCM(20単位のIL−2に等価)(5@)で、3回(site)(1日目、14日目および21日目)免疫した。動物を、オボアルブミン(100μg)(2@)またはペプチド(100μg)(3@)で、28日目に皮膚試験した。2匹の動物を、陽性皮膚試験でオボアルブミンに応答したペプチドなしでオボアルブミン+NCMで処置した。オボアルブミン+ミョウバンで処置した2匹の動物は、応答しなかった。3匹のうち2匹の動物をオボアルブミン+NCMおよび応答したNCMで処置した。オボアルブミン+ペプチドおよび応答したミョウバンで処置した動物はいなかった。従って、NCMは、腫瘍ペプチドおよび抗原としてのオボアルブミンの両方にとってミョウバンに対して優れたアジュバンドである。
【0130】
(実施例8)
(段階I/II研究;リンパ球減少患者におけるNCM、NCM+チモシンα1
放射線治療の後に、患者は、総リンパ球数、CDならびにTリンパ球(CDおよびCDの部分集合を含む)の顕著な低下を示す:(CDが、CDより低下したために、CD/CD比は、2から1付近まで低下する)。18ヶ月の追跡調査の間、これらのレベルは、回復しなかった(Wolfら、(1985))。外科手術前に、Tリンパ球減少患者のNCM処置に続いて、リンパ球数は、有意に増加した(Verasteguiら、(1999))。
【0131】
一連の放射線治療後のTリンパ球減少患者を、IRX−2(NCM)(7人の患者)あるいはIRX−2(NCM)およびチモシンα1(7人の患者)で処置した。開始時に、両方の群の患者は、平均800のリンパ球数を有していた。患者を、10日間にわたって毎日、1mlのIRX−2(ELISAによると約150単位のIL−2、バイオアッセイによると640単位のIL−2)またはIRX−2+のチモシンα1(1.6mg/ml)を用いて(照射された領域を避けるために)頸部または腋窩におけるリンパ周辺注射で処置した。リンパ球数および種々の単核細胞部分集合(CD2、CD3、CD4、CD8、CD16、CD19、CD25 CD45 RO RAおよび56)を、0日目および約12日目にFACSによって分析した。IRX−2で処置した患者は、12日目に平均リンパ球数において変化を示さず(800から700に)、以下において変化を示さなかった:
T細胞およびT細胞部分集合数(示さず)
B細胞数(CD19−示さず)
マクロファージ(CD16−示さず)
非Tリンパ球および非Bリンパ球数: (259から265に)
CD45 RA数: (279から290に)。
【0132】
NCM+チモシンα1で処置した全7人の患者は、以下の増加を示した:
総リンパ球数 800→914 p=NS
非T細胞および非B細胞 261→451 p<0.05
CD45 RA 221→443 p<0.05。
【0133】
NCM+チモシンα1で処置した7人の患者のうち4人は、非T細胞、非B細胞またはマクロファージにおける有意な変化なしに、平均リンパ球数、非Tリンパ球数、非Bリンパ球数およびCD45RA数ならびにCD45RO数において顕著な増加を示した(図19および図20)。非T細胞、非B細胞は、CD56陰性(NK細胞ではない)であり、そして、CD45RA陽性と十分に相関があった。
【0134】
4人の患者は、処置後、TLCの増加を示した。これらの患者を、CDについて長期間研究した。4人の患者は、成熟プロセスの明確な状況を示した。
【0135】
開始時に、末梢血リンパ球のほぼ1/3は、非Tおよび非Bであった。処置と共に、これらのデータは、T細胞の3集団を含む450個のリンパ球の、早い日数(10〜12日)での漸増を示す:それらの約1/2は、CDCDCD45RACDまたはCD(すなわち、未処置の成熟T細胞);残りの約1/4は、非Tおよび非Bであるが、CD45RAではなく、そして残りの3/4は、CD+CDである。これらの後者は、免疫T細胞であった。2週間と2週間+3ヶ月の間、TCL増加は持続し、CDおよびαBTcr(1人の患者のみ)は、CDおよびCDの両方と同じように漸増した。このことは、完全な成熟T細胞への漸進的な成熟を示す。同様に、CD45RO細胞は増加し、このことは、新しい記憶細胞が産生されること、この記憶細胞が抗原を露出し、そして免疫されることを意味する。
【0136】
(6週間にわたるCDCDCD45RACDまたはCDリンパ球)
3人の患者は、処置の早期と後期(1〜3ヶ月)の結果を比較すると総リンパ球数(TLC)において、正味の増加(gain)を示さなかった(TLC 967→933)が、いくつかの観察を以下に記した:
3人全員が、示した
CD45RAにおける増加 +173
非T非Bにおける減少 −159
CDにおける増加 +101
Bにおける増加 +75
CDおよびCDにおいて増加はなかった −−−
αBTcr増加(1人の患者) +155
これらの変化は、ほとんど半分のヌル細胞(非T,非Bマーカーを意味する)から初期T細胞CD3+、CD45RA、αBTcrR、CDCDへの本質的な移行を意味する。この移行は、約170細胞/mmまたは細胞の約20%を含む;B細胞が含まれる場合、それは、細胞の25%を含む。この主要な本質的な移行は、免疫治療に関連して、以前にはみられなかった。それは、これらの癌患者において存在する未成熟細胞の主要な異常な循環集団(少なくとも一部分、T細胞直系(おそらく両方)に、コミットされる170−T:75−B)を示す。NCM+チモシンα1の処置は、より成熟したT細胞への主要な移行を誘導したが、それらは、成熟T細胞のCDおよびCDの性質を欠く。ヌル細胞の存在は、癌および他の免疫欠損において顕著であり、循環中での未成熟CD4CD8T細胞の誘導は、以前に観察されていない。
【0137】
これらのデータは、NCMおよびチモシンα1での処置の結果として新しいT細胞の誘導および成熟を立証する。血管内の一過性のT細胞は、成熟体に成長した、すなわち
CDCD45RACDサブセット→CDCD45RACDTCRCD
CDサブセット→CD2,3CDサブセットおよびCD2,3CD部分
集合。
【0138】
これらの細胞が、成熟している場所は、推測の題材である。通常、これらの事象は、胸腺において起こると考えられている。一般に、これらの患者は、新しいT細胞を生成不可能な退縮した胸腺を有すると考えられる。本発明の組成物および方法は、明らかに骨髄T細胞前駆体(おそらく低い度合いで、初期B細胞である)の増加および動員(mobilization)を誘導し、骨髄T細胞前駆対は、胸腺内外を行き来するかまたは胸腺外で分化するかのいずれかである。記憶細胞の漸進的な出現は、これらの新しいCD45RA未処置のT細胞が、抗原曝露に応答してCD45RO記憶細胞に移行することを示す点において重要である。
【0139】
感染性病原体または腫瘍の処置において使用されるアジュバンドの定義に従って、これらの特徴が、必要条件である:
1.リンパ球減少症が存在する場合、抗原に対して反応し得る「未処置の」細胞の存在および生成;
2.成熟樹状細胞によってT細胞に提示され得る内因的または外因的に投与されたペプチドの存在;および
3.局部リンパ節のような免疫を生成可能な環境における、特にTHタイプの強健な免疫を生成するアジュバンド+抗原の作用。この細胞性免疫またはT細胞免疫は、ほとんどの病原体および腫瘍に対する抵抗性について中心的であると考えられる。
【0140】
NCMは、低用量のシクロフォスファミドおよびインドメタシンのようなNSAIDを用いたストラテジーにおいて、癌に対する免疫化に導くリンパ節の変化(樹状細胞の成熟を含む)を作り出し得、腫瘍減少および断片化によって特徴付けられる免疫拒絶を作り出し得また、重度のリンパ浸潤を作りだし得る。NCM+チモシンα1との組み合わせは、さらにより活性になることが予測される。
【0141】
以下の例において、NCMを、頭部および頚部扁平上皮癌(H&HSCC)を処置するために、チモシンα1+低用量シクロホスファミドおよびインドメタシン組み合わせにおいて採用した。X線照射による激しい免疫抑制に続くこのタイプの再発癌は、癌免疫治療コミュニティーによって、あらゆる免疫治療の形態を受け入れられないと考えられていることは、注目すべきである。NCMは、いくらかの患者において、再発H&NSCCを和らげるために効果的であったが、治癒の可能性はないと考えられた。
【0142】
次の一組の実施例は、腫瘍および/または慢性的/潜在的感染に関連する内因性抗原に対する反応を記載する。
【0143】
(実施例9)
患者は、部分的舌切除した舌のステージII SCC(T)について処置した68歳女性、喫煙者であった。10ヵ月後、患者は、残った舌の基部に1×1cmの局部再発をした。患者を、ELISAにより250単位のIL−2を含む上記のNCMプロトコルを用いて処置したが、加えて、1.6mgのチモシンα1(Zadaxin/Thymalfin)を、NCMの10箇所のリンパ周辺注射と共に投与した。患者は、6000から900にリンパ球数の増加(その内、約300は、CDCDCDCD45RA未処置のTリンパ球)を示した。毒性は、観察されなかった。腫瘍は、さらなる処置なしに完全な臨床的退行に向かった。局所的各試験片の形態学的試験は、腫瘍細胞が無いことを示し且つ、顕著なリンパ浸潤を示した。この免疫退行は、外因性腫瘍ペプチドとの組み合わせにおけるNCM+チモシンα1混合物について、抗腫瘍アジュバンド潜在能力を例示する。
【0144】
3つのさらなる実施例は、内因性病原体関連抗原のアジュバンドとして働くNCM+チモシンα1の作用を示す。
【0145】
(実施例10)
患者は、放射線処置された頚部癌を有する30歳、女性であった。患者は、パピローマウィルス感染の徴候であるコンジローム瘤(性病のいぼ)の長い経歴(3年以上)を有する。X線治療に続く持続性リンパ球減少は、脇の下の10日間の注射で、チモチンα1(それぞれ、250単位のIL−2+1.6mg)との組み合わせにおけるNCMの使用を促した(低用量シクロホスファミドおよびインドメタシンなしに)。処置の開始に続く3〜4週間、コンジローム瘤は、完全に退行しまた、再発しなかった。リンパ球数は、4週間を超えて、800から1300mmに上昇した。他の処置は、しなかった。
【0146】
NCM+チモシンα1は、HPVに対する誘導免疫を有し、従って性感染性のいぼの退行を誘導したと解釈される。
【0147】
(実施例11)
患者は、NCMプロトコル+外科手術(上顎切除および放射線治療)で処置したステージIV H&NSCC歯肉癌を有する56歳、男性であった。持続性リンパ球減少および鵞口瘡(oral thrush)のために、患者を、脇の下の10日間のリンパ周辺注射で、NCM+チモチンα1(それぞれ、250単位のIL−2相当+1.6mg)で処置した。彼のリンパ球数は、1500mmの高さに上昇した。治療の開始に続く3週間、彼は、おたふく風邪感染の代表的な上顎唾液腺炎にかかった。これは、他の処置なしに自然に治った。患者はまた、鵞口瘡(カンジダ感染)において、縮小を有した。この状況において、NCM+チモシンα1は、根絶やしに、従って、別の菌性抗原ならびにウィルス抗原についてアジュバンドとして働くと解釈される。
【0148】
(実施例12)
舌のH&NSCC癌を有する66歳、女性を、処置した。放射線治療の結果、患者は、1.5年の間、持続的鵞口瘡(カンジダ)およびリンパ球減少症に罹患した。患者を、上の実施例におけるようにNCM+チモシンα1と組み合わせて、10日間のリンパ周辺注射で処置した。処置の後、患者のリンパ球数は、800から1200/mmへ上昇し、口部カンジダは、他の処置なしに完全に消散しまた、再発しなかった。NCM+チモシンα1の組み合わせは、カンジダアルビカン(albican)による慢性的寄生の消散を導くカンジダアルビカン抗原に対する免疫を誘導するアジュバンドであると解釈される。
【0149】
上記4つの実施例は、NCM+チモシンα1が、免疫および状況の回復を誘導するためにどのように外因性腫瘍抗原、ウィルス抗原または菌性抗原で処置されるかを例示する。腫瘍抗原の場合において、低用量シクロホスファアミドでの逆抑制は、免疫化を引き起こすための腫瘍誘導免疫抑制を阻害する必要性があった。これら上記の実施例は、この組み合わせが、同様に、古典的アジュバンドプロトコル(すなわち、癌または感染の阻害または処置において、腫瘍または病原体抗原あるいはペプチドと混合すること)において、外因性投与抗原を有するアジュバンドであることを予測する。
【0150】
前記のことの斬新さは、次の3点に基づく。
【0151】
1. リンパ球数は、放射線治療に続く18ヶ月にわたる観察において、上昇しないかまたは、わずかに上昇した(Wolfら、Arch Otolaryngol 111:716−725(1985));
2. 胸腺移植のある、なしにかかわらない骨髄を含むあらゆる2週間の処置期間に続く6週間にわたる、CDCDCD45RA→CDCDCD45RACDCD→CDCDCD45RACDCDまたはCDリンパ球の循環血における漸進的増加が観察された者は、いなかった。これは、他の処置なしに自然に解消された。この出来事の進行は、胸腺において起こると考えられまた、ここで考えられるように成体において起こらないと考えられる;および
3.処置の開始(この状況下での免疫応答についての時間が期待されるような処置)に続く3週間以内の癌、2つのウィルス感染(1つは良性腫瘍、1つは性感染性いぼ)および病原菌感染の完全消散は、完全には期待されない。
【0152】
本願を通じて、米国特許を含む種々の公表が、著者および年度ならびに数々の特許によって引用される。この公表についての全引用は、以下に列挙される。それら全体におけるこれらの公表の開示は、本発明が関連する当該分野をより完全に記載するため、本願に参考として本明細書に援用される。
【0153】
本発明は、例証的法則で記載されておりまた、使用される専門用語は、限定的な言葉よりは自然な説明の言葉であるよう意図されることが理解される。
【0154】
言うまでも無く、本発明の多くの改変体および変異体は、上記の教示の観点において可能である。このため、説明された発明の範囲内であることが理解されまた、本発明は、特別な説明なしに実施可能である。
【0155】
【化2】

【0156】
【化3】

【0157】
【化4】

【0158】
【化5】

【0159】
【化6】

【0160】
【化7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2009−197032(P2009−197032A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−139689(P2009−139689)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【分割の表示】特願2003−537573(P2003−537573)の分割
【原出願日】平成14年10月26日(2002.10.26)
【出願人】(503156286)アイアールエックス セラピューティクス, インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】