説明

免疫活性化能を有するカラム

【課題】高い免疫活性化能を有し、癌などの治療に好適に使用し得るカラムを提供する。
【解決手段】リポタイコ酸を水不溶性担体に固定化してなる材料と免疫抑制物質除去材料とを充填剤として有することを特徴とするカラム。前記リポタイコ酸は、溶血性連鎖状球菌または枯草菌に由来するものであることが好ましく、前記免疫抑制物質除去材料は、TGF−βまたは免疫抑制酸性蛋白を吸着する材料であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫活性化能を有するカラムに関する。特に、感染症や癌治療に使用できる体外循環治療用カラムに関する。
【背景技術】
【0002】
先進国では寿命の延長に伴い、癌で死亡する人の割合が急増している。また、高齢化による感染症の増加も問題である。これらは加齢による免疫能低下が原因と考えられる。腫瘍の治療には、主として抗癌剤が使われるが、抗癌剤は腫瘍細胞だけでなく、正常な骨髄細胞をも破壊するので、患者の免疫能が低下する。従って、免疫を下げず、免疫を高めるような方法の出現が望まれる。その一つとして白血球を体外に導き、免疫を高めるような材料に接触させる方法が考えられる。
【0003】
このような体外循環用の細胞活性化材は以前も考えられていて、グラム陰性菌細胞壁由来のリポポリサッカライドを固定化した繊維(非特許文献1)やレクチンの一種であるポークウッドマイトジェンを固定化したビーズ(非特許文献2)が報告されている。しかし、これらのリガンドであるリポポリサッカライド、ポークウッドマイトジェンはいずれも毒性の強い物質であるので、これらをカラム管(筒体)に詰めて、体外循環を行った場合は、万一、これらのリガンドが担体から血液中に遊離して全身に回った時、患者がショックを起こす危険がある。また、癌患者の血液中には免疫担当細胞の活性化を妨げる免疫抑制物質が癌の進行と共に増加してくるので、免疫活性化材料だけでは免疫細胞活性化が十分に進まない。
【0004】
別の治療方法として患者の末梢血リンパ球を体外で培養・増殖させてから患者に戻す活性化リンパ球療法(非特許文献3)があり、臨床にも使われているが、治療効果は十分ではない。その理由は、上記と同じく患者血液中に免疫を抑える蛋白質や細胞が存在するためである。また、このように体外で培養する方法は、前述のカラムを用いて体外循環治療を行う方法と異なり、培養中に病原菌が混入して感染症が起きる危険があり、また、多大な培養コストもかかる。
したがって、高い免疫活性化能を有し、安全性に優れたカラムが望まれている。
【非特許文献1】Tani T, et al. Therapeutic Apheresis 4,167-172, 2000.
【非特許文献2】Numa K, et al. Cancer Immunol Immunother, 32, 125-130, 1990.
【非特許文献3】Lancet 2000: 356, 802-807
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題を解消するために、免疫を効率良く活性化でき、感染症や癌治療にも有効に使用できるカラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記課題を解決するために、免疫活性化能力が高く、安全性および経済性の高いカラムが得られないか、種々検討した結果、トランスフォーミンググロースファクター−β(以下TGF−βと略称する)や免疫抑制酸性蛋白等の免疫抑制物質を除去する材料と、リポタイコ酸を水不溶性担体に固定化してなる材料を一緒に充填したカラムがラット脾細胞の細胞性免疫を活性化することを見出し、本発明に到達した。
【0007】
すなわち本発明は、リポタイコ酸を水不溶性担体に固定化してなる材料と免疫抑制物質除去材料とを充填剤として有することを特徴とするカラムである。該カラムは、体循環治療用カラムとして用いるのに好適である。
【0008】
前記リポタイコ酸は合成することも可能であるが、グラム陽性菌由来のものが好ましい。特に安全性に優れたリポタイコ酸として、溶血性連鎖球菌及び枯草菌に由来するものを挙げることができる。
【0009】
前記免疫抑制物質除去材料は、TGF−βあるいは免疫抑制酸性蛋白を吸着する材料であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、免疫活性化能が高いカラムを得ることができる。特に、感染症や癌治療にも有効に使用できる体外循環治療用カラムが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明でいうリポタイコ酸を水不溶性担体に固定化してなる材料(以下、リポタイコ酸固定化材料と略する)とは、溶血性連鎖状球菌、枯草菌、黄色ブドウ球菌等で代表されるグラム陽性菌の細胞壁に存在する化合物として知られているリポタイコ酸を水不溶性担体に化学結合で固定化したものを意味する。リポタイコ酸は菌体をブタノール等の有機溶媒で抽出した後、混入するタンパク質を分解・除去し、適宜、クロマト精製して、純粋な形で得ることができる(J.Immunotherapy 1993:13:232-242)。
【0012】
リポタイコ酸を固定する前記水不溶性担体は、一般に重合体から構成されることが好ましい。前記重合体は、リポタイコ酸が分子内にアミノ基や水酸基を有するので、これらのアミノ基あるいは水酸基と共有結合を形成しうる官能基を持つ重合体(反応性重合体)であることが必要である。
その官能基の具体例としては、クロルメチル基、ブロムメチル基、ヨードメチル基等で代表されるハロメチル基や、クロルアセチル基、ブロムアセチル基、ヨードアセチル基等で代表されるハロアセチル基等の活性ハロゲン含有基、イソチオシアナート基、イソシアナート基、アルデヒド基、カルボキシル基などおよびこれらの誘導体が好ましく用いられる。
重合体としては、ポリスチレン、ポリビニルトルエンで代表されるビニル芳香族化合物重合体、芳香族ポリスルホン重合体、芳香族ポリエーテルイミド、芳香族ポリイミド重合体、ポリアクリル酸エステル系重合体、ポリメタアクリル酸エステル系重合体ポリビニールアルコール系重合体、ポリ塩化ビニル、ガラス等が挙げられる。
好ましい水不溶性担体を構成する反応性重合体の具体例をあげると、芳香族化合物重合体の芳香核の一部が下記一般式(1)
−(CHn −A−(CHm −Y (1)
(式中、nは0以上20以下の整数を表し、mは0以上20以下の整数を表し、nとmは同一でも異なっていてもよい。Aは酸素原子、硫黄原子、窒素原子、尿素基、アミド基またはメチレン基を示し、YはCl、Br、I、−N=C=O、−N=C=Sを表す)で示される官能基を結合しているものが挙げられる。
【0013】
本発明の上記担体に用いられる重合体(および共重合体)の分子量は、成型できるものであればよく特に制限はないが、成形性の良さから、通常、5万以上500万以下、とりわけ、10万以上100万以下のものが好ましく用いられる。
【0014】
当該重合体中における官能基の適正な量、即ち、官能基密度は幹となる重合体の化学構造および用途によって異なるが、少なすぎるとその機能が発現されず、多すぎるとリポタイコ酸固定時に利用されず残り、無駄になる。従って、例えば、一般式(1)で表される官能基を有する芳香族化合物重合体の場合、官能基の量は、通常、繰り返し単位(単量体)当たり0.001〜4個、とりわけ、0.01〜1個が好ましい。
【0015】
リポタイコ酸の固定化密度は、少なすぎるとその機能が発現されず、多すぎると利用されずに無駄になる。従って、リポタイコ酸の量は、通常、繰り返し単位当たり0.0000001〜0.04個、とりわけ、0.00001〜0.005個が好ましい。しかし、体外循環治療用カラムの充填剤として用いる場合、材料表面に固定化されたリポタイコ酸は血液細胞と接触できるので、有効に働くが、内部に存在するリポタイコ酸は血液細胞と接触する機会が無いので、有効に働かない。従って、リポタイコ酸の固定化密度は、リポタイコ酸固定化材料表面での密度が重要である。その観点からはリポタイコ酸を固定化した重合体を成形するよりは、反応性重合体の成形品をリポタイコ酸の溶液に入れて固定化する方法で製造する方が好ましい。その他、溶媒に可溶な反応性重合体の溶液中に繊維等の既存の成型品を浸して、反応性重合体を塗布したものを、リポタイコ酸の溶液に入れて固定化する方法で製造する方法も好ましい。
一方、体外循環治療用カラムとして用いる場合、安全に体外に取り出せる血液量はヒトの場合、200mLと言われているので、カラムの大きさ、言い換えれば、充填できる材料の量には限界がある。これらを勘案すると、リポタイコ酸の固定化密度は0.01mg/g〜10mg/gが好ましく、リポタイコ酸の効率的利用の観点で0.1mg/g〜1mg/gがさらに好ましい。
担体に固定化されたリポタイコ酸の量は、固定化時の固定化反応母液中に残存するリポタイコ酸量から簡便に求めることができるが、リポタイコ酸固定化材料を分析して求めることも可能である。
後者の方法としては、リポタイコ酸固定化材料を抗リポタイコ酸抗体水溶液に浸して、抗原-抗体結合を進行させたあと、当該水溶液中に残存する遊離抗体量を測定し、反応前の抗体量との差を求めることにより容易に定量することができる。その他、リポタイコ酸固定化材料を酸で加水分解処理した後、加水分解液中に含まれるグリセリン、リン酸、グルコース、アミノ糖、アミノ酸、長鎖脂肪酸などを高速液体クロマトグラフィーなどで分析することによって定量することも可能である。
【0016】
本発明のリポタイコ酸固定化材料の製造は、対応するリポタイコ酸の溶液に、水不溶性担体を加え、そのまま、あるいは、必要に応じて縮合剤を加えることによって達成することができる。具体的には、担体がハロメチル基やハロアセチル基等の活性ハロゲン基を有する場合は、リポタイコ酸水溶液のpHを7〜12に調整することにより固定化反応を進めることができる。また、担体がイソチオシアナート基、イソシアナート基を有する場合は、反応液に触媒として第3級アミンを加えることにより進めることができる。この場合、尿素結合やチオウレイド結合、もしくは、チオ尿素結合やチオウレイド結合でリポタイコ酸を固定化する。担体がカルボキシル基を有する場合は、反応液にジシクロヘキシルカルボジイミドや水溶性カルボジイミドなどのペプチド縮合剤を加えることにより得ることができる。
反応溶媒としては、リポタイコ酸を溶解するものであれば、良く、特に限定されないが、水のほか、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドおよびN−メチルピロリドンなどの担体を膨潤させる有機溶媒が好ましく用いられる。
【0017】
本発明でいう免疫抑制物質除去材料とは、TGF−β、免疫抑制酸性蛋白、インターロイキン−6(以下IL−6と略称する)、プロスタグランジンE2(以下PGE2と略称する)、可溶性Fasなどの癌細胞に対する免疫を抑制する物質を効率よく吸着する材料を意味する。とりわけ、TGF−βは、キラー細胞やナチュラルキラー細胞などの細胞性免疫を強力に抑制するので、TGF−βの吸着性に優れた材料(特に潜在型TGF−βを吸着できる材料)が好ましく用いられる。
免疫抑制物質除去材料の具体例としては、多孔質の水不溶性担体に、N,N−ジメチルブチルアンモニウム基、N,N−ジメチルヘキシルアンモニウム基、N,N−ジメチルオクチルアンモニウム基、N,N,N−トリエチルアンモニウム基、N,N,N−トリn−プロピルアンモニウム基等の親水性アミノ基を有するものが挙げられる。
その製造方法としては、活性ハロゲン基含有多孔質の水不溶性担体にN,N−ジメチルブチルアミン、N,N−ジメチルヘキシルアミン、N,N−ジメチルオクチルアミン、トリエチルアミン、トリn−プロピルアミン基等を反応させることによって容易に得ることができる。反応はジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドおよびN−メチルピロリドンなどの担体を膨潤させる有機溶媒を用い、室温から100℃の温度で1〜10時間加熱することにより達成できる。この際、少量のヨウ化カリウムを共存させると、反応速度が大きくなる。
前記活性ハロゲン基含有多孔質水不溶性担体としては、活性ハロゲン基を有するビニル芳香族化合物重合体、芳香族ポリスルホン重合体、ポリエーテルイミド、芳香族ポリイミド重合体等の芳香族化合物重合体が挙げられる。その具体例をあげると、ポリスチレン繊維をN−ヒドロキシメチル−2−クロルアセトアミドでアミドメチル化して得られるクロルアセトアミドメチル化繊維が上げられる。
【0018】
本発明にかかる免疫抑制物質除去材料の重合体中における前記親水性アミノ基の適正な量、即ち、官能基密度は幹となる重合体の化学構造および用途によって異なるが、少なすぎるとその機能が発現されず、多すぎると利用されずに無駄になる。従って、親水性アミノ基の量は、通常、繰り返し単位(単量体)当たり0.001〜4個、とりわけ、0.01〜1個が好ましい。
【0019】
本発明にかかるカラムの構成としては、免疫抑制物質を除去してからの方が免疫細胞の活性化が起こりやすいため、通常、カラムの上流側に免疫抑制物質除去材料を、カラムの下流側にリポタイコ酸固定化材料を充填して用いる。充填する免疫抑制物質除去材料とリポタイコ酸固定化材料の量は患者の状態や治療目的に応じて決定される。
体外循環治療用カラムとして用いる場合は、患者の負担をできるだけ少なくするよう設計する必要がある。ヒトの血液量は概ね体重の13分の一であるので、体循環治療用カラムの内容積の大きさは体重1kgあたり8mL以下であることが好ましい。体循環治療用カラム管内に免疫抑制物質除去材料とリポタイコ酸固定化材料を充填する際、カラム内における血液の流路を確保する必要があるので、充填できる材料の量は容積1mLあたり0.5g以下となる。繊維は嵩高いので、両材料に繊維状の担体を用いる場合の適正な充填量は内容積1mLあたり0.1〜0.4g、より好ましくは、0.1〜0.3gである。免疫抑制物質除去材料とリポタイコ酸固定化材料との充填比率は両者が共に繊維状である場合、重量比で1:4〜4:1が好ましい。血液中の免疫抑制物質が多い場合は免疫抑制物質除去材料の割合を多くするのが好ましい。
【0020】
本発明のリポタイコ酸固定化材料及び免疫抑制物質除去材料の形状は、繊維、膜、フイルム、中空糸、不織布、粒状物およびこれらの高次加工品であり、用途に応じ、適宜、選択される。これらは、体外循環用カラムの形で、癌治療用として用いることができる。
【実施例】
【0021】
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。なお、本実施例中のリポタイコ酸の濃度分析、担癌ラットの調製およびラットの体外循環は以下に従った。
1.リポタイコ酸濃度の分析
フェノール硫酸法で求めた。即ち、直径20mmのガラス製試験管にリポタイコ酸を含有する水溶液2mLと5%フェノール水1mLを加えた後、5mLの濃硫酸を急速に添加し、振とうした。この液を30分間静置した後、485nmの吸光度を測定し、検量線から濃度を求めた。なお、検量線作成の際、反応触媒としてトリエチルアミンを使用した場合は、処理前の溶液の吸光度から得たトリエチルアミンを同濃度になるよう加え、検量線を作製した。
2.担癌ラットの調製
4−ジメチルアミノアゾベンゼン誘発肝癌細胞KDH−8{矢野 諭、北海道医誌、68巻5号、654−664(1993)}をリン酸緩衝生理食塩水に浮遊させ、2×106個/mL濃度の液0.5mLを、WKAH/Hkmラット(雄、10週令)の背部皮下に接種して、担癌ラットを調製した。
3.ラットの体外循環
(体外循環治療用カラム)
免疫抑制物質除去材料をカラム入り口側に、リポタイコ酸固定化材料を出口側に充填し、体外循環治療用カラムを作成した。カラムと回路に70%アルコールを通液して滅菌した後、体外循環直前にヘパリン添加生理食塩液(15単位/mL)15mLを2mL/分の速度で流した。
(体外循環)
体重約350gの担癌ラットをネンブタールで全身麻酔し、左大腿の動脈と静脈にカニュレーションし、動脈から脱血し、マイクロチューブポンプを用いて、体外循環治療用カラムを通過させ、静脈に返血した。血流速度2mL/分で1h体外循環した。体外循環中ヘパリンを100単位/時間で持続投与した。
【0022】
[実施例1]
(カラムの作製)
1.水不溶性担体原糸の調製
36島の海島複合繊維であって、島が更に芯鞘複合によりなるものを次の成分を用いて、紡糸速度800m/分、延伸倍率3倍の製糸条件で得た。
島の芯成分;ポリプロピレン
島の鞘成分;ポリスチレン90重量%、ポリプロピレン10重量%
海成分;エチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とし、共重合成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸3wt%含む共重合ポリエステル
複合比率(重量比率);芯:鞘:海=40:40:20
この繊維の海成分を熱苛性ソーダ水溶液で溶解し、芯鞘型のポリプロピレン補強ポリスチレン繊維として、直径4μmの原糸1を得た。
【0023】
2.水不溶性担体1の調製
ニトロベンゼン700mLと硫酸460mLの混合液にパラホルムアルデヒド3.6g(0.2%)を加え、20℃で溶解した後、0℃に冷却し、127g(7%)のN−メチロール−α−クロルアセトアミドを加えて、5℃以下で溶解した。これに39gの上記原糸1を浸し、室温で2時間静置した。その後、繊維を取り出し、大過剰の冷メタノール中に入れ、洗浄した。繊維をメタノールで良く洗った後、水洗し、乾燥して、57.5gのα−クロルアセトアミドメチル化ポリスチレン繊維(水不溶性担体1)を得た(繰り返し単位当たりの官能基密度;1)。
【0024】
3.水不溶性担体2の調製
チオシアン化ナトリウム20gを400mLのジメチルホルムアミド400mlに溶かした溶液に13gの水不溶性担体1を浸し、室温で48時間浸漬した。繊維を取り出し、水洗後、真空乾燥して、13gのα−チオイソシアナトアセトアミドメチル化ポリスチレン繊維(水不溶性担体2)を得た。
【0025】
4.リポタイコ酸固定化材料1の調製
Streptococcus pyrogenes由来のリポタイコ酸(シグマ社)10mgをPBSに溶かして100mLとし、これに6.0gの水不溶性担体2を加え、室温で1h振とうした後、トリエチルアミン0.2mLを加え、室温で48h振とうした。繊維を取り出し、水洗し、リポタイコ酸固定化材1を得た。固定化前と固定化後の水溶液のリポタイコ酸濃度の差から固定化量を算出した。固定化密度は0.61mg/gであった。
【0026】
5.免疫抑制物質除去材料1の調製
N,N−ジメチルヘキシルアミン50gとヨウ化カリウム8gを360mLのDMFに溶かした溶液に5gの水不溶性担体1を浸し、80℃のバス中で3時間加熱した。水不溶性担体を取り出して、1モル/Lの濃度の食塩水に浸漬した後、水洗し、真空乾燥して、7.8gのジメチルヘキシルアンモニウム化繊維(免疫抑制物質除去材料1)を得た(繰り返し単位当たりの官能基密度;0.92)。
【0027】
6.カラム1の調製
内径1cm内容積2mlのポリプロピレン製円筒形カラム管に対し、200mgの免疫抑制物質除去材料1をカラム入り口側に、60mgのStreptococcus pyrogenes由来リポタイコ酸固定化材料1を出口側に充填し、体外循環治療用カラム(カラム1)を作製した。
【0028】
[実施例2]
(体外循環治療の効果の検討)
腫瘍接種7日後に、体重約350gの担癌ラット4匹を、カラム1を用いて、体外循環治療した。血流速度2mL/分で1h体外循環した。体外循環中ヘパリン100単位/hを持続投与した。
4匹中1匹の腫瘍が消失・完治した。残りの3匹の平均生存日数は64.0±1.9日であった。
これに対し、無治療担癌ラット4匹の平均生存日数は54.8±3.0日であった。
【0029】
[比較例1]
リポタイコ酸固定化材料のみを充填したカラムを用いて体外循環治療を行い、その効果を検討した。
1.比較カラム1の調製
内径1cm内容積2mlのポリプロピレン製円筒形カラム管に60mgの上記リポタイコ酸固定化材料1を充填して、体外循環治療用カラム(比較カラム1)を調製した。
2.担癌ラットの調製と体外循環治療
腫瘍接種7日後に、体重約350gの担癌ラット3匹を、比較カラム1を用いて、体外循環治療した。血流速度2mL/分で1h体外循環した。体外循環中ヘパリン100単位/hを持続投与した。
4匹の平均生存日数は56.7日であった。
【0030】
[比較例2]
免疫抑制物質除去材料のみを充填したカラムを用いて体外循環治療を行い、その効果を検討した。
1.比較カラム2の調製
内径1cm内容積2mlのポリプロピレン製円筒形カラム管に0.2gの免疫抑制物質除去材料1を充填して、体外循環治療用カラム(比較カラム2)を調製した。
2.担癌ラットの調製と体外循環治療
腫瘍接種7日後に、体重約350gの担癌ラット3匹を、比較カラム2を用いて、体外循環治療した。血流速度2mL/分で1h体外循環した。体外循環中ヘパリン100単位/hを持続投与した。
4匹の平均生存日数は55.3日であった。
【0031】
以上の結果から、本発明に係るカラムが、体外循環治療に有効であることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リポタイコ酸を水不溶性担体に固定化してなる材料と免疫抑制物質除去材料とを充填剤として有することを特徴とするカラム。
【請求項2】
前記リポタイコ酸がグラム陽性菌に由来するものであることを特徴とする請求項1に記載のカラム。
【請求項3】
前記リポタイコ酸が溶血性連鎖状球菌に由来するものであることを特徴とする請求項1に記載のカラム。
【請求項4】
前記リポタイコ酸が枯草菌に由来するものであることを特徴とする請求項1に記載のカラム。
【請求項5】
前記免疫抑制物質除去材料がトランスフォーミンググロースファクター−βを吸着する材料であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のカラム。
【請求項6】
前記免疫抑制物質除去材料が免疫抑制酸性蛋白を吸着する材料であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のカラム。
【請求項7】
体外循環治療用であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のカラム。

【公開番号】特開2008−6171(P2008−6171A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−181382(P2006−181382)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(899000046)関西ティー・エル・オー株式会社 (75)
【Fターム(参考)】